IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 石原産業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】農薬製剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/00 20060101AFI20240815BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20240815BHJP
   A01N 43/28 20060101ALI20240815BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20240815BHJP
   A01N 43/56 20060101ALI20240815BHJP
   A01N 47/06 20060101ALI20240815BHJP
   A01N 47/34 20060101ALI20240815BHJP
   A01P 7/00 20060101ALI20240815BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
A01N25/00 101
A01N25/02
A01N43/28
A01N43/40 101D
A01N43/56 D
A01N47/06 D
A01N47/34 C
A01P7/00
A01P13/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021537233
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2020028744
(87)【国際公開番号】W WO2021024836
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2019143474
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】佐野 光夫
(72)【発明者】
【氏名】粟津 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】岡田 隆士
(72)【発明者】
【氏名】石橋 優
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐介
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-519160(JP,A)
【文献】特表2007-520448(JP,A)
【文献】特開2008-169176(JP,A)
【文献】特開2005-336266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
C07F
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、(c)式(I)で表されるシリコーン系化合物、及び(d)有機溶媒を含有する農薬製剤であって、前記(a)、(b)及び(c)が、(d)に溶解した、農薬製剤。
【化1】
(式中、Rは各々独立して、炭素数1~20のアルキル基であり、pは0~3の整数であり、qは1~2の整数である。)
【請求項2】
波長660nmの光の透過率が94%以上である、請求項1に記載の農薬製剤。
【請求項3】
(b)界面活性剤が、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の農薬製剤。
【請求項4】
(b)界面活性剤が、ポリオキシアルキレン型界面活性剤、ブロックコポリマー型界面活性剤、スルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤及びリン酸エステル型界面活性剤からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の農薬製剤。
【請求項5】
(c)式(I)で表されるシリコーン系化合物が式(II)で表される化合物である、請求項1に記載の農薬製剤。
【化2】
【請求項6】
(d)有機溶媒が、アミド、スルホキシド、ケトン、ラクトン、ピロリドン、アルコール、エーテル及びエステルからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の農薬製剤。
【請求項7】
(d)有機溶媒が、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコール、シクロヘキサノール、n-ヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及び2-メチルグルタル酸ジメチルからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の農薬製剤。
【請求項8】
SL剤(Soluble concentrate)、DC剤(Dispersible concentrate)、又はME剤(Microemulsion)である、請求項1に記載の農薬製剤。
【請求項9】
(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、及び(d)有機溶媒を含有する混合物中に、(c)式(I)で表されるシリコーン系化合物を溶解させて、(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、(c)式(I)で表されるシリコーン系化合物及び(d)有機溶媒を含有する農薬製剤の水希釈液の泡立ちを抑制する方法。
【化3】
(式中、Rは各々独立して、炭素数1~20のアルキル基であり、pは0~3の整数であり、qは1~2の整数である)
【請求項10】
(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、及び(d)有機溶媒を含有する混合物中に、(c)式(I)で表されるシリコーン系化合物を溶解させて、(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、(c)式(I)で表されるシリコーン系化合物及び(d)有機溶媒を含有する農薬製剤の水希釈液の泡立ちを抑制する、式(I)で表されるシリコーン系化合物の使用。
【化4】
(式中、Rは各々独立して、炭素数1~20のアルキル基であり、pは0~3の整数であり、qは1~2の整数である。)
【請求項11】
(a)農薬有効成分が溶解した農薬製剤の製造における、(b)界面活性剤、(c)式(I)で表されるシリコーン系化合物、及び(d)有機溶媒の組合せの使用。
【化5】
(式中、Rは各々独立して、炭素数1~20のアルキル基であり、pは0~3の整数であり、qは1~2の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬製剤に関する。より詳細には、農薬有効成分が溶解し、水希釈時の泡立ちが抑制された農薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、農薬有効成分、特に、水不溶性又は水難溶性の農薬有効成分に対して、農薬有効成分が溶解した農薬製剤が検討されている(特許文献1及び2)。このような農薬製剤は、通常、農薬有効成分及び当該農薬有効成分を溶解させる溶媒に加えて、農薬有効成分の可溶化及び/又は効力増強、農薬製剤の安定化等の目的で界面活性剤を含有している。さらにまた、農薬登録にあたっては、剤形毎に定められた要件を具備する必要があり、例えば、農薬有効成分に加えて、農薬製剤に含有される他の成分も溶媒に溶解した農薬製剤においては、その性状が澄明であることが求められる。
【0003】
農薬製剤は、使用時に、通常、水で希釈されて、植物体やその生育場所に施用される。ここで、農薬製剤が界面活性剤を含有している場合、農薬製剤を水に希釈する際に、泡が発生しやすくなり、特に、農薬有効成分が水不溶性又は水難溶性の場合には、界面活性剤の含有量が増えるため、泡が発生する可能性が高まる。そのため、水希釈時に消泡剤を添加したり、農薬製剤自体に消泡剤が添加されるが、使用者の利便性を考慮すると、農薬製剤自体に消泡剤が含まれることが望ましい。そして、有効成分が溶解した農薬製剤においては、農薬製剤の均一性を保つために、消泡剤も溶解していることが望まれる。
【0004】
農薬製剤に使用される消泡剤としては、シリコーン系消泡剤(例えば、シリコーンオイルや変性シリコーンオイル、シリカ等のフィラーを含有するシリコーンオイル等)が挙げられる。例えば、特許文献3には、農薬用展着剤として使用するための、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンと、当該成分に起因する泡立ちを抑制するための成分として、グリセリン変性オルガノポリシロキサンとを含有する組成物が開示されている。また、特許文献4には、特許文献3に開示の組成物では既に発生している泡を消す能力が不十分であるとして、さらにポリオキシアルキレン/パーフルオロアルキル共変性オルガノポリシロキサンを含有する組成物が開示されている。しかしながら、特許文献3及び4はいずれも、農薬有効成分が有機溶媒に溶解した農薬製剤に関するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第92/10937号パンフレット
【文献】国際公開第2009/113712号パンフレット
【文献】特開2005-336266号
【文献】特開2008-169176号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
農薬有効成分、特に、水不溶性又は水難溶性の農薬有効成分の効力を十分に発揮させるためには、農薬有効成分が溶解した農薬製剤であることが望ましく、農薬有効成分に加えて、農薬製剤に含有される他の成分も溶解した、澄明な性状を有する農薬製剤であることがさらに望ましい。加えて、農薬製剤の使用場面では、水希釈時の泡立ちが激しくなると、散布液を調製するタンクから泡が溢れ出る場合がある。したがって、農薬有効成分が溶解し、農薬有効成分に加えて、農薬製剤に含有される他の成分も溶解した、澄明な性状を有する農薬製剤であって、水希釈時の泡立ちが抑制された農薬製剤が希求されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、(c)式(I)で表されるシリコーン系化合物(以下、単に「(c)シリコーン系化合物」と称することがある)、及び(d)有機溶媒を含有する農薬製剤であって、前記(a)、(b)及び(c)が(d)に溶解した、農薬製剤を提供する。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、Rは各々独立して、炭素数1~20のアルキル基であり、pは0~3の整数であり、qは1~2の整数である。)
【0010】
また、本発明は、(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、及び(d)有機溶媒を含有する混合物中に、(c)シリコーン系化合物を溶解させて、(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、(c)シリコーン系化合物及び(d)有機溶媒を含有する農薬製剤の水希釈液の泡立ちを抑制する方法、並びに(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、及び(d)有機溶媒を含有する混合物中に、(c)シリコーン系化合物を溶解させて、(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、(c)シリコーン系化合物及び(d)有機溶媒を含有する農薬製剤の水希釈液の泡立ちを抑制する、シリコーン系化合物の使用を提供する。さらに、本発明は、(a)農薬有効成分が溶解した農薬製剤、特に、(a)農薬有効成分に加えて、農薬製剤に含有される他の成分も溶解した、澄明な性状を有する農薬製剤の製造における、(b)界面活性剤、(c)シリコーン系化合物、及び(d)有機溶媒の組合せにも関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、農薬有効成分の効力を十分に発揮するとともに、農薬製剤の使用の際には、水希釈時の泡立ちが抑制された、農薬製剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の農薬製剤は、(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、(c)シリコーン系化合物、及び(d)有機溶媒を含有し、かつ(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、及び(c)シリコーン系化合物が、(d)有機溶媒に溶解していることを特徴とする。
【0013】
本発明の農薬製剤は、農薬製剤に含有される全ての成分が均一に溶解して、澄明液体の性状(即ち、視認できる浮遊物質及び沈殿物がない)を有することが好ましく、例えば、国際的なガイドラインである国際農薬工業連盟(CLI)、国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機構(WHO)又は経済協力開発機構(OECD)や、各国のガイドラインに適合する性状を有することがより好ましい。
【0014】
より詳細には、澄明液体の性状を有する本発明の農薬製剤は、可視光領域の波長における光の透過率が、通常94%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、更により好ましくは99%以上である。なお、透過率を測定する波長は、測定する農薬製剤の色等に応じて、適宜選択することができるが、例えば、波長590~750nm、好ましくは、600~700nm、より好ましくは、660nmである。
【0015】
より具体的には、光の透過率は、農薬製剤の吸光度を、上記の波長の光で、紫外可視分光光度計(例えば、UV-2550(島津製作所製))を用いて測定し(温度:室温、光路長:100mm、石英セル容量:3.7mL)、下記式を用いて得られる透過率である。なお、ブランクの相違により、透過率の測定値が相違する場合があるが、例えば、ブランクとして、水、アルコール類、又は(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤及び(d)有機溶媒を含有する農薬製剤を使用することができ、より好ましくは(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤及び(d)有機溶媒を含む農薬製剤をブランクとして使用することができる。
【0016】
【数1】
【0017】
本発明の農薬製剤は、(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、及び(c)シリコーン系化合物が、(d)有機溶媒に溶解している限り、本技術分野で使用される任意の液状の剤形を取ることができる。より詳細には、本発明の農薬製剤は、農薬製剤に含有される全ての成分が均一に溶解して、澄明液体の性状を有する、SL剤(soluble concentrate)、DC剤(dispersible concentrate)、ME剤(microemulsion)、LS剤(Solution for seed treatment)又はAL剤(other liquids to be applied undiluted)等の剤形を取ることができ、SL剤(soluble concentrate)、DC剤(dispersible concentrate)及びME剤(microemulsion)が特に好ましい。
【0018】
本発明の(b)界面活性剤、(c)シリコーン系化合物及び(d)有機溶媒の組合せは、後述する実施例に示すように、様々な溶解度、作用性を有する(a)農薬有効成分に適用することが可能である。したがって、本発明において、(a)農薬有効成分は、その溶解度、作用性等に限定されることなく、本技術分野において公知のあらゆる農薬有効成分、例えば、除草剤、殺虫剤、殺菌剤及び植物調整剤からなる群から選択される1又は複数(例えば、1、2、3、4)の有効成分を使用することができる。より詳細には、(a)農薬有効成分として、例えば、「The Pesticide Manual」(eighteenth Edition、The British Crop Protection Council、2018)、「農薬ハンドブック」(社団法人日本植物防疫協会、2016)に記載されている農薬有効成分を使用することができる。また、本発明の(a)農薬有効成分には、現在開発中又は将来開発される農薬有効成分も包含する。
【0019】
上記(a)農薬有効成分の好ましい具体例としては、限定されるものではないが、
アリールオキシプロピオン酸エステル系化合物、イミダゾリノン系化合物、ウレア系化合物、オキサゾリジンジオン系化合物、オキシアセトアミド系化合物、カーバメート系化合物、カフェンストロール、クミルロン、グリシン系化合物、クロロアセトアミド系化合物、ジフェニルエーテル系化合物、スルホニルウレア系化合物、ダイムロン、チオカーバメート系化合物、トリケトン系化合物、トリアゾリノン系化合物、トリアジン系化合物、ビピリジリウム系化合物、ピリジンカルボン酸系化合物、ピラクロニル、ピラゾール系化合物、ピリブチカルブ、フェニルピリダジン系化合物、フェノキシカルボン酸系化合物、ブロモブチド、ペラルゴン酸、ベンゾフラン系化合物、ベンゾイルピラゾール系化合物、ベンゾチアジアジノン系化合物、ホスフィン酸系化合物などの除草剤;
アベルメクチン系化合物、クロルピクリン、ジアミド系化合物、スピノシン系化合物、セミカルバゾン系化合物、ピレスロイド系化合物、ピレトリン系化合物、ピリジンアゾメチン誘導体系化合物、フェニルピラゾール系化合物、ブプロフェジン、フロニカミド、ベンゾイルウレア系化合物、ネオニコチノイド系化合物、ピリプロキシフェン、有機リン系化合物などの殺虫剤;
アシルアラニン系化合物、アニリノピリミジン系化合物、イソオキサゾール系化合物、イミダゾール系化合物、イミダゾリノン系化合物、エチルアミノチアゾールカルボキサミド系化合物、オキシイミノアセトアミド系化合物、カーバメート系化合物、グアニジン系化合物、クロロニトリル系化合物、桂皮酸アミド系化合物、シアノアセトアミドオキシム系化合物、シアノイミダゾール系化合物、ジチオカーバメート系化合物、2,6-ジニトロアニリン系化合物、チオファネート系化合物、トリアゾール系化合物、トリアゾリンチオン系化合物、トルアミド系化合物、バリンアミドカーバメート系化合物、ビスグアニジン系化合物、フェニルオキソエチルチオフェンアミド系化合物、フェニルピロール系化合物、フタルイミド系化合物、ベンゾイルピリジン系化合物、ペプチジルピリミジンヌクレオチド系化合物、ベンゾイソチアゾール系化合物、ホスホナート系化合物、メトキシアクリレート系化合物、メトキシアセトアミド系化合物などの殺菌剤;
等が挙げられる。
【0020】
さらにより好ましい具体例としては、
ピラゾール系化合物(例:トルピラレートなど)、スルホニルウレア系化合物(例:ニコスルフロン、フラザスルフロン、フルセトスルフロンなど)、アリールオキシプロピオン酸エステル系化合物(例:フルアジホップ-Pなど)、フェノキシカルボン酸系化合物(例:2,4-PAエチルなど)、トリケトン系化合物(例:ランコトリオンなど)などの除草剤;
ジアミド系化合物(例:シクラニリプロール、クロラントラニリプロール、シアントラニリプロール、フルベンジアミドなど)、フロニカミド、ベンゾイルウレア系化合物(例:クロルフルアズロンなど)、有機リン系化合物(例:ホスチアゼート、クロルピリホス、カズサホス、イミシアホスなど)、ピレスロイド系化合物(例:λシハロスリン、ビフェントリン、βシハロスリン、シラフルオフェンなど)、ネオニコチノイド系化合物(例:イミダクロプリド、アセタミプリド、チアメトキサムなど)、カーバメート系化合物(例:メソミル、オキサミル、カルボフラン、カルボスルファンなど)、アベルメクチン系化合物(例:アバメクチン、エマメクチン安息香酸塩など)などの殺虫剤;
シアノイミダゾール系化合物(例:シアゾファミドなど)、2,6-ニトロアニリン系化合物(例:フルアジナムなど)、フェニルオキソエチルチオフェンアミド系化合物(例:イソフェタミドなど)、ベンゾイルピリジン系化合物(例:ピリオフェノンなど)、ビスグアニジン系化合物(例:イミノクタジンアルベシル酸塩など)、イミダゾール系化合物(例:トリフルミゾールなど)、ポリオキシンなどの殺菌剤;
等が挙げられる。
【0021】
本発明は、(a)農薬有効成分の効力を発揮させる観点から、(a)農薬有効成分の効力の発揮に問題を生じる場合がある水不溶性又は水難溶性の農薬有効成分に対して特に有用である。ここで、水不溶性又は水難溶性の農薬有効成分とは、水に溶解しないか、又は20℃での水への溶解度が、通常、10ppm以下、特に、1ppm以下である、農薬有効成分を意味する。
【0022】
農薬製剤中の(a)農薬有効成分の含有量は、農薬製剤に溶解できる量であれば、特に限定されない。例えば、(a)農薬有効成分の含有量は、農薬製剤に対して、通常0.1~40重量%、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは、0.1~20重量%である。複数の(a)農薬有効成分が含有される場合、上記の含有量は、複数の(a)農薬有効成分の合計の含有量を意味する。
【0023】
本発明において、後述する実施例に示すように、様々な構造、特性を有する(b)界面活性剤を使用することが可能である。したがって、本発明において、(b)界面活性剤は、その構造、特性等に限定されることなく、本技術分野において公知のあらゆる界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群から選択される1又は複数(例えば、1、2、3、4)の界面活性剤を使用することができる。中でも、(b)界面活性剤として、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤から選択される1又は複数の界面活性剤が好ましい。
【0024】
(b)界面活性剤の具体例としては、
ポリオキシアルキレン型界面活性剤、ブロックコポリマー型界面活性剤、多価アルコール型界面活性剤などの非イオン性界面活性剤;
スルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤、リン酸エステル型界面活性剤、カルボン酸型界面活性剤などのアニオン性界面活性剤;
アミン塩型界面活性剤、アンモニウム塩型界面活性剤などのカチオン性界面活性剤;
ベタイン型界面活性剤、アミンオキシド型界面活性剤などの両性界面活性剤;ならびに
アミノ酸型界面活性剤が挙げられる。
【0025】
(b)界面活性剤のうち、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤の好ましい具体例を以下に列挙する。
ポリオキシアルキレン型界面活性剤:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアリールアリールエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテルのポリマー、ポリオキシアルキレン樹脂酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド及びポリオキシアルキレンジメチルシロキサンなど。これらに含まれるポリオキシアルキレン部分としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンが挙げられ、脂肪酸部分は、C8~C18のものが挙げられる。また、アリールの置換基はモノ、ジ、トリが含まれる。
ブロックコポリマー型界面活性剤:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーアルキルフェニルエーテルなど。これらに含まれるアルキル部分は、C8~C12のものが挙げられる。
【0026】
スルホン酸型界面活性剤:アルキルスルホン酸、アルケンスルホン酸、アルキンスルホン酸、アリールスルホン酸、アルキルアリールスルホン酸、アリールスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルアリールスルホン酸ホルマリン縮合物、α-オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、リグニンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸ハーフエステル、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸及びスチレンスルホン酸とメタアクリル酸の共重合物等のスルホン酸、並びにこれらスルホン酸の塩など。これらに含まれるアルキル部分又はオレフィン部分としては、C8~C22のものが挙げられ、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩などが挙げられる。また、アリールには、モノ、ジ又はトリ置換アリールが含まれる。
硫酸エステル型界面活性剤:アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアリールアリールエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーの硫酸エステル、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化脂肪酸及び硫酸化オレフィン等の硫酸エステル、並びにこれら硫酸エステルの塩など。これらに含まれるアルキル部分としては、C8~C18のものが挙げられ、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩などが挙げられる。また、アリールの置換基はモノ、ジ、トリが含まれる。
リン酸エステル型界面活性剤:アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルリン酸エステル並びにこれらのリン酸の塩など。これらに含まれるアルキル部分としては、C8~C18のものが挙げられ、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩などが挙げられる。
カルボン酸型界面活性剤:脂肪酸、金属石鹸、アルキルエーテルカルボン酸、アシル乳酸、N-アシルアミノ酸、ポリカルボン酸並びにこれらの塩など。これらに含まれるアルキル部分としては、C8~C18のものが挙げられ、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩などが挙げられる。
【0027】
(b)界面活性剤のうち、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤のさらに好ましい具体例を以下に列挙する。
ポリオキシアルキレン型界面活性剤:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(例:ポリオキシエチレンアルキルエーテルなど)、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル(例:ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル)、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル(例:ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルなど)、ポリオキシアルキレンヒマシ油(例:ポリオキシエチレンヒマシ油など)、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル(例:ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなど)、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル(例:ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなど)、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル(例:ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル)、ポリオキシアルキレンジメチルシロキサン(例:ポリオキシエチレンジメチルシロキサンなど)など
ブロックコポリマー型界面活性剤:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなど
スルホン酸型界面活性剤:アルキルアリールスルホン酸又はその塩(例:アルキルベンゼンスルホン酸カルシウムなど)、アリールスルホン酸又はその塩、アルキルスルホン酸又はその塩、リグニンスルホン酸又はその塩、アルキルスルホコハク酸又はその塩など
硫酸エステル型界面活性剤:アルキル硫酸エステル又はその塩(例:ラウリル硫酸ナトリウムなど)、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル又はその塩(例:ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸塩など)、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル又はその塩(例:ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩など)など
リン酸エステル型界面活性剤:アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルリン酸エステルなど
カルボン酸型界面活性剤:脂肪酸、金属石鹸、アルキルエーテルカルボン酸、N-アシルアミノ酸、ポリカルボン酸など
また、(b)界面活性剤として、アミン塩型界面活性剤(例:ポリオキシエチレン牛脂アミンなど)、アミノ酸型界面活性剤:N-アシルアミノ酸塩(例:N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミンなど)なども好ましい。
【0028】
下記に、それぞれの(b)界面活性剤の商品名の一例を示す。なお、下記の表中、TOHO:東邦化学工業株式会社、DAIICHI:第一工業製薬株式会社、ASAHI:旭化成ファインケム株式会社、NIKKO:日光ケミカルズ株式会社である。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
農薬製剤中の(b)界面活性剤の含有量は、(a)農薬有効成分を農薬製剤に溶解できる量であれば、特に限定されない。例えば、(b)界面活性剤の含有量は、農薬製剤に対して、通常0.1~60重量%、好ましくは0.1~50重量%、より好ましくは、0.1~40重量%である。複数の(b)界面活性剤が含有される場合、上記の含有量は、複数の(b)界面活性剤の合計の含有量を意味する。
【0033】
(c)シリコーン系化合物は、式(I):
【0034】
【化2】
【0035】
(式中、Rは各々独立して、炭素数1~20のアルキル基であり、pは0~3の整数であり、qは1~2の整数である。)で表されるシリコーン系化合物である。
【0036】
式(I)で表されるシリコーン系化合物は、好ましくは、式(II):
【化3】
で表される化合物である。
【0037】
消泡剤として使用されるシリコーン系化合物には、本技術分野において利用可能な種々の市販品があるが、消泡効果の付与を目的として、主成分が有機溶媒と混和しにくいシリコーン油であったり、フィラーが含まれていたりして、農薬製剤に含有される全ての成分が均一に溶解して、澄明液体の性状を有する農薬製剤に適用できるものはなかった。本発明者らは、上記特定の(c)シリコーン系化合物を使用することにより、本発明の農薬製剤に澄明な性状を付与しながら、農薬製剤の水希釈の際には、農薬製剤の水希釈液の泡立ちを抑制することが可能であることを見出した。
【0038】
農薬製剤中の(c)シリコーン系化合物の含有量は、その効果を発揮し、農薬製剤に溶解できる量であれば、特に限定されない。例えば、(c)シリコーン系化合物の含有量は、農薬製剤に対して、通常0.01~10重量%、好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.01~1重量%である。
【0039】
(d)有機溶媒は、(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、及び(c)シリコーン系化合物を溶解することが可能であって、かつ農薬製剤の水希釈液が容易に調製可能である限り、本技術分野において使用が可能な任意の有機溶媒である。(d)有機溶媒としては、水混和性の有機溶媒、例えば、アミド、スルホキシド、ケトン、ラクトン、ピロリドン、アルコール、エーテル、エステル等;水との混和性が劣る有機溶媒、例えば、脂肪族エステル、芳香族ナフサ、植物油等;及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
また、農薬製剤が澄明液体の性状を維持する限り、農薬製剤は水を含有していてもよい。有機溶媒は、農薬製剤の水希釈液の調製に適した、水混和性の有機溶媒が好ましく、水に任意の割合で溶解することができる水溶解度を有する有機溶媒が更に好ましい。
【0040】
(d)有機溶媒のより好ましい具体例を以下に列挙する。
アミド:N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルデカンアミド
ピロリドン:N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン
スルホキシド:ジメチルスルホキシド
ケトン:シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン
ラクトン:γ-ブチロラクトン
アルコール:プロピレングリコール、シクロヘキサノール、n-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、2-フェノキシエタノール、ポリプロピレングリコール
エーテル:プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン
エステル:2-メチルグルタル酸ジメチル、二塩基酸エステル
【0041】
これらの有機溶媒の中でも、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコール、シクロヘキサノール、n-ヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及び2-メチルグルタル酸ジメチルからなる群から選択される1種以上がより好ましい。
【0042】
農薬製剤中の(d)有機溶媒の含有量は、(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤及び(c)シリコーン系化合物を溶解できる量であれば、特に限定されない。例えば、(d)有機溶媒の含有量は、農薬製剤に対して、通常1~99重量%、好ましくは20~99重量%、より好ましくは40~90重量%である。複数の(d)有機溶媒が含有される場合、上記の含有量は、複数の(d)有機溶媒の合計の含有量を意味する。
【0043】
なお、農薬製剤が、水との混和性が劣る有機溶媒を含有する場合、泡立ちを抑制しながら、均一な水希釈液を得るために、(b)界面活性剤及び/又は(c)シリコーン系化合物の含有量を増加させることが望ましい場合がある。
【0044】
本発明の農薬製剤において、(a)農薬有効成分と(b)界面活性剤との重量比は、通常1:5~5:1、好ましくは1:3~3:1、より好ましくは1:2~2:1である。
本発明の農薬製剤において、(a)農薬有効成分と(c)シリコーン系化合物との重量比は、通常200:1~1:1、好ましくは100:1~1:1、より好ましくは50:1~1:1である。
本発明の農薬製剤において、(b)界面活性剤と(d)有機溶媒との重量比は、通常1:50~1:1、好ましくは1:30~1:1、より好ましくは1:15~1:1である。
本発明の農薬製剤において、(c)シリコーン系化合物と(d)有機溶媒との重量比は、通常1:1000~1:10、好ましくは1:500~1:10、より好ましくは1:300~1:10である。
【0045】
本発明の農薬製剤は、必要に応じて、凍結防止剤(例:プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール等)、pH調整剤(例:酢酸、リン酸、クエン酸、ホウ酸、トリス塩基、水酸化ナトリウムなど)、アジュバント(エステル化レイプシード(アブラナ)オイル、メチル化ダイズ油、ポリオキシエチレンジメチルシロキサン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルメチル化レイプシードオイル、ヒドロキシプロピルヘプタメチルトリシロキサンなど)、結合剤(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなど)、防腐剤などの他の補助剤をさらに含んでいてもよい。
【0046】
本発明の農薬製剤は、通常の農薬製剤の調製方法に従って製造することができる。具体的には、(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、(c)シリコーン系化合物及び(d)有機溶媒、並びに、必要により他の補助剤を、任意の順序で混合、溶解させることによって、製造することができる。また、本発明の農薬製剤の製造において、必要により、溶解を補助するために、30~80℃程度に加熱してもよい。
調製方法の具体例としては、
(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤及び(c)シリコーン系化合物を、(d)有機溶媒に溶解させることによって調製する方法;
(a)農薬有効成分及び(b)界面活性剤を(d)有機溶媒に溶解させた組成物に、(c)シリコーン系化合物を添加することによって調製する方法;
(a)農薬有効成分及び(c)シリコーン系化合物を(d)有機溶媒に溶解させた組成物に、(b)界面活性剤を添加することによって調整する方法;
(c)シリコーン系化合物を(d)有機溶媒に溶解させた組成物に、(a)農薬有効成分及び(b)界面活性剤を添加することによって調製する方法;
(b)界面活性剤及び(c)シリコーン系化合物を(d)有機溶媒に溶解させた組成物に、(a)農薬有効成分を溶解させることによって調製する方法
などが挙げられる。
【0047】
農薬製剤の使用場面では、本発明の農薬製剤を、例えば、10倍~10000倍の容量の水で希釈して、散布液を調製し、本技術分野における公知の施用方法に従って、施用することができる。なお、散布液を調製する際には、本発明の農薬製剤は泡立ちが抑制されているが、空気を巻き込まないように、出来るだけ水中で攪拌操作を行って、散布液を調製することがより好ましい。また、本発明の農薬製剤を所定量の水で希釈して散布液を調製する際に、本技術分野において通常使用されている市販の、他の農薬製剤、展着剤(例えば、植物油エステル系のActirob B、Destiny、phase II、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのPersist Ultra、シリコーン系のDyne-Amic、SYL-TACなど)や肥料(例えば葉面散布肥料、HB-101(天然植物活力液)、ニーム資材)などを添加して散布液を調製することも可能であり、このような態様においても、本発明の農薬製剤による泡立ちを抑制する効果は発揮される。
【0048】
以下、本発明の望ましい態様を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[1](a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、(c)式(I)で表されるシリコーン系化合物、及び(d)有機溶媒を含有する農薬製剤であって、上記(a)、(b)及び(c)が(d)に溶解した、農薬製剤。
【0049】
【化4】
【0050】
(式中、Rは各々独立して、炭素数1~20のアルキル基であり、pは0~3の整数であり、qは1~2の整数である。)
[2]澄明液体の性状を有する、[1]に記載の農薬製剤。
[3]波長590~750nmの光の透過率が94%以上である、[1]又は[2]に記載の農薬製剤。
[4]波長660nmの光の透過率が94%以上である、[1]又は[2]に記載の農薬製剤。
[5](b)界面活性剤が、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤からなる群から選択される1種以上である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の農薬製剤。
[6](b)界面活性剤が、ポリオキシアルキレン型界面活性剤、ブロックコポリマー型界面活性剤、スルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤及びリン酸エステル型界面活性剤からなる群から選択される1種以上である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の農薬製剤。
[7](c)式(I)で表されるシリコーン系化合物が式(II)で表される化合物である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の農薬製剤。
【0051】
【化5】
【0052】
[8](d)有機溶媒が、アミド、スルホキシド、ケトン、ラクトン、ピロリドン、アルコール、エーテル及びエステルからなる群から選択される1種以上である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の農薬製剤。
[9](d)有機溶媒が、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコール、シクロヘキサノール、n-ヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及び2-メチルグルタル酸ジメチルからなる群から選択される1種以上である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の農薬製剤。
[10]農薬製剤中の、(d)有機溶媒の含有量が1~99重量%である、[1]~[9]のいずれか1つに記載の農薬製剤。
[11]農薬製剤中の、(c)シリコーン系化合物の含有量が0.01~10重量%である、[1]~[10]のいずれか1つに記載の農薬製剤。
[12]SL剤(Soluble concentrate)、DC剤(Dispersible concentrate)、又はME剤(Microemulsion)である、[1]~[11]のいずれか1つに記載の農薬製剤。
[13](a)農薬有効成分が、ピラゾール系化合物(好ましくは、トルピラレートなど)、スルホニルウレア系化合物(好ましくは、ニコスルフロン、フラザスルフロン、フルセトスルフロンなど)、アリールオキシプロピオン酸エステル系化合物(好ましくは、フルアジホップ-Pなど)、トリケトン系化合物(好ましくは、ランコトリオンなど)などの除草剤;
ジアミド系化合物(好ましくは、シクラニリプロール、クロラントラニリプロール、シアントラニリプロール、フルベンジアミドなど)、フロニカミド、ベンゾイルウレア系化合物(好ましくは、クロルフルアズロンなど)、有機リン系化合物(好ましくは、ホスチアゼート、クロルピリホス、カズサホス、イミシアホスなど、より好ましくは、ホスチアゼートなど)、ネオニコチノイド系化合物(好ましくは、イミダクロプリド、アセタミプリド、チアメトキサムなど)などの殺虫剤;および
シアノイミダゾール系化合物(好ましくは、シアゾファミドなど)、2,6-ニトロアニリン系化合物(好ましくは、フルアジナムなど)、フェニルオキソエチルチオフェンアミド系化合物(好ましくは、イソフェタミドなど)、ベンゾイルピリジン系化合物(好ましくは、ピリオフェノンなど)などの殺菌剤
からなる群から選択される1種以上である、[1]~[12]のいずれか1つに記載の農薬製剤。
【0053】
[14](a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、及び(d)有機溶媒を含有する混合物中に、(c)式(I)で表されるシリコーン系化合物を溶解させて、(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、(c)シリコーン系化合物及び(d)有機溶媒を含有する農薬製剤の水希釈液の泡立ちを抑制する方法。
【0054】
【化6】
【0055】
(式中、Rは各々独立して、炭素数1~20のアルキル基であり、pは0~3の整数であり、qは1~2の整数である)
[15]農薬製剤が、澄明液体の性状を有する、[14]に記載の方法。
[16]農薬製剤の波長590~750nmの光の透過率が94%以上である、[14]又は[15]に記載の方法。
[17]農薬製剤の波長660nmの光の透過率が94%以上である、[14]又は[15]に記載の方法。
[18](b)界面活性剤が、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤からなる群から選択される1種以上である、[14]~[17]のいずれか1つに記載の方法。
[19](b)界面活性剤が、ポリオキシアルキレン型界面活性剤、ブロックコポリマー型界面活性剤、スルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤及びリン酸エステル型界面活性剤からなる群から選択される1種以上である、[14]~[17]のいずれか1つに記載の方法。
[20](c)式(I)で表されるシリコーン系化合物が、式(II)で表される化合物である、[14]~[19]のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
【化7】
【0057】
[21](d)有機溶媒が、アミド、スルホキシド、ケトン、ラクトン、ピロリドン、アルコール、エーテル及びエステルからなる群から選択される1種以上である、[14]~[20]のいずれか1つに記載の方法。
[22](d)有機溶媒が、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコール、シクロヘキサノール、n-ヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及び2-メチルグルタル酸ジメチルからなる群から選択される1種以上である、[14]~[20]のいずれか1つに記載の方法。
[23]農薬製剤中の、(d)有機溶媒の含有量が1~99重量%である、[14]~[22]のいずれか1つに記載の方法。
[24]農薬製剤中の、(c)シリコーン系化合物の含有量が0.01~10重量%である、[14]~[23]のいずれか1つに記載の方法。
[25]農薬製剤が、SL剤(Soluble concentrate)、DC剤(Dispersible concentrate)、又はME剤(Microemulsion)である、[14]~[24]のいずれか1つに記載の方法。
[26](a)農薬有効成分が、ピラゾール系化合物(好ましくは、トルピラレートなど)、スルホニルウレア系化合物(好ましくは、ニコスルフロン、フラザスルフロン、フルセトスルフロンなど)、アリールオキシプロピオン酸エステル系化合物(好ましくは、フルアジホップ-Pなど)、トリケトン系化合物(好ましくは、ランコトリオンなど)などの除草剤;
ジアミド系化合物(好ましくは、シクラニリプロール、クロラントラニリプロール、シアントラニリプロール、フルベンジアミドなど)、フロニカミド、ベンゾイルウレア系化合物(好ましくは、クロルフルアズロンなど)、有機リン系化合物(好ましくは、ホスチアゼート、クロルピリホス、カズサホス、イミシアホスなど、より好ましくは、ホスチアゼートなど)、ネオニコチノイド系化合物(好ましくは、イミダクロプリド、アセタミプリド、チアメトキサムなど)などの殺虫剤;および
シアノイミダゾール系化合物(好ましくは、シアゾファミドなど)、2,6-ニトロアニリン系化合物(好ましくは、フルアジナムなど)、フェニルオキソエチルチオフェンアミド系化合物(好ましくは、イソフェタミドなど)、ベンゾイルピリジン系化合物(好ましくは、ピリオフェノンなど)などの殺菌剤からなる群から選択される1種以上である、[14]~[25]のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
[27](a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、及び(d)有機溶媒を含有する混合物中に、(c)式(I)で表されるシリコーン系化合物を溶解させて、(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤、(c)シリコーン系化合物及び(d)有機溶媒を含有する農薬製剤の水希釈液の泡立ちを抑制する、式(I)で表されるシリコーン系化合物の使用。
【0059】
【化8】
【0060】
(式中、Rは各々独立して、炭素数1~20のアルキル基であり、pは0~3の整数であり、qは1~2の整数である。)
[28]農薬製剤が、澄明液体の性状を有する、[27]に記載の使用。
[29]農薬製剤の波長590~750nmの光の透過率が94%以上である、[27]又は[28]に記載の使用。
[30]農薬製剤の波長660nmの光の透過率が94%以上である、[27]又は[28]に記載の使用。
[31](b)界面活性剤が、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤からなる群から選択される1種以上である、[27]~[30]のいずれか1つに記載の使用。
[32](b)界面活性剤が、ポリオキシアルキレン型界面活性剤、ブロックコポリマー型界面活性剤、スルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤及びリン酸エステル型界面活性剤からなる群から選択される1種以上である、[27]~[30]のいずれか1つに記載の使用。
[33]式(I)で表されるシリコーン系化合物が式(II)で表される化合物である、[27]~[31]のいずれか1つに記載の使用。
【0061】
【化9】
【0062】
[34](d)有機溶媒が、アミド、スルホキシド、ケトン、ラクトン、ピロリドン、アルコール、エーテル及びエステルからなる群から選択される1種以上である、[27]~[33]のいずれか1つに記載の使用。
[35](d)有機溶媒が、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコール、シクロヘキサノール、n-ヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及び2-メチルグルタル酸ジメチルからなる群から選択される1種以上である、[27]~[33]のいずれか1つに記載の使用。
[36]農薬製剤中の、(d)有機溶媒の含有量が1~99重量%である、[27]~[35]のいずれか1つに記載の使用。
[37]農薬製剤中の、式(I)で表されるシリコーン系化合物の含有量が0.01~10重量%である、[27]~[36]のいずれか1つに記載の使用。
[38]農薬製剤が、SL剤(Soluble concentrate)、DC剤(Dispersible concentrate)、又はME剤(Microemulsion)である、[27]~[37]のいずれか1つに記載の使用。
[39](a)農薬有効成分が、
ピラゾール系化合物(好ましくは、トルピラレートなど)、スルホニルウレア系化合物(好ましくは、ニコスルフロン、フラザスルフロン、フルセトスルフロンなど)、アリールオキシプロピオン酸エステル系化合物(好ましくは、フルアジホップ-Pなど)、トリケトン系化合物(好ましくは、ランコトリオンなど)などの除草剤;
ジアミド系化合物(好ましくは、シクラニリプロール、クロラントラニリプロール、シアントラニリプロール、フルベンジアミドなど)、フロニカミド、ベンゾイルウレア系化合物(好ましくは、クロルフルアズロンなど)、有機リン系化合物(好ましくは、ホスチアゼート、クロルピリホス、カズサホス、イミシアホスなど、より好ましくは、ホスチアゼートなど)、ネオニコチノイド系化合物(好ましくは、イミダクロプリド、アセタミプリド、チアメトキサムなど)などの殺虫剤;および
シアノイミダゾール系化合物(好ましくは、シアゾファミドなど)、2,6-ニトロアニリン系化合物(好ましくは、フルアジナムなど)、フェニルオキソエチルチオフェンアミド系化合物(好ましくは、イソフェタミドなど)、ベンゾイルピリジン系化合物(好ましくは、ピリオフェノンなど)などの殺菌剤
からなる群から選択される1種以上である、[27]~[38]のいずれか1つに記載の使用。
【0063】
[40](a)農薬有効成分が溶解した農薬製剤の製造における、(b)界面活性剤、(c)下記式(I)で表されるシリコーン系化合物、及び(d)有機溶媒の組合せ。
【0064】
【化10】
【0065】
(式中、Rは各々独立して、炭素数1~20のアルキル基であり、pは0~3の整数であり、qは1~2の整数である。)
[41]農薬製剤が、澄明液体の性状を有する、[40]に記載の組合せ。
[42]農薬製剤の波長590~750nmの光の透過率が94%以上である、[40]又は[41]に記載の組合せ。
[43]農薬製剤の波長660nmの光の透過率が94%以上である、[40]又は[41]に記載の組合せ。
[44](b)界面活性剤が、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤からなる群から選択される1種以上である、[40]~[43]のいずれか1つに記載の組合せ。
[45](b)界面活性剤が、ポリオキシアルキレン型界面活性剤、ブロックコポリマー型界面活性剤、スルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤及びリン酸エステル型界面活性剤からなる群から選択される1種以上である、[40]~[43]のいずれか1つに記載の組合せ。
[46]式(I)で表されるシリコーン系化合物が式(II)で表される化合物である、[40]~[45]のいずれか1つに記載の組合せ。
【0066】
【化11】
【0067】
[47](d)有機溶媒が、アミド、スルホキシド、ケトン、ラクトン、ピロリドン、アルコール、エーテル及びエステルからなる群から選択される1種以上である、[40]~[46]のいずれか1つに記載の組合せ。
[48](d)有機溶媒が、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコール、シクロヘキサノール、n-ヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及び2-メチルグルタル酸ジメチルからなる群から選択される1種以上である、[40]~[47]のいずれか1つに記載の組合せ。
[49]農薬製剤中の、(d)有機溶媒の含有量が1~99重量%である、[40]~[48]のいずれか1つに記載の組み合わせ。
[50]農薬製剤中の、式(I)で表されるシリコーン系化合物の含有量が0.01~10重量%である、[40]~[49]のいずれか1つに記載の組み合わせ。
[51]農薬製剤が、SL剤(Soluble concentrate)、DC剤(Dispersible concentrate)、又はME剤(Microemulsion)である、[40]~[50]のいずれか1つに記載の組合せ。
[52](a)農薬有効成分が溶解した農薬製剤の製造における、(b)界面活性剤、(c)式(I)で表されるシリコーン系化合物、及び(d)有機溶媒の組合せの使用。
【0068】
【化12】
(式中、Rは各々独立して、炭素数1~20のアルキル基であり、pは0~3の整数であり、qは1~2の整数である。)
【0069】
[53]農薬製剤が、澄明液体の性状を有する、[52]に記載の組合せの使用。
[54]農薬製剤の波長590~750nmの光の透過率が94%以上である、[52]又は[53]に記載の組合せの使用。
[55]農薬製剤の波長660nmの光の透過率が94%以上である、[52]又は[53]に記載の組合せの使用。
[56](b)界面活性剤が、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤からなる群から選択される1種以上である、[52]~[55]のいずれか1つに記載の組合せの使用。
[57](b)界面活性剤が、ポリオキシアルキレン型界面活性剤、ブロックコポリマー型界面活性剤、スルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤及びリン酸エステル型界面活性剤からなる群から選択される1種以上である、[52]~[55]のいずれか1つに記載の組合せの使用。
[58]式(I)で表されるシリコーン系化合物が式(II)で表される化合物である、[52]~[57]のいずれか1つに記載の組合せの使用。
【0070】
【化13】
【0071】
[59](d)有機溶媒が、アミド、スルホキシド、ケトン、ラクトン、ピロリドン、アルコール、エーテル及びエステルからなる群から選択される1種以上である、[52]~[58]のいずれか1つに記載の組合せの使用。
[60](d)有機溶媒が、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコール、シクロヘキサノール、n-ヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及び2-メチルグルタル酸ジメチルからなる群から選択される1種以上である、[52]~[58]のいずれか1つに記載の組合せの使用。
[61]農薬製剤中の、(d)有機溶媒の含有量が1~99重量%である、[52]~[60]のいずれか1つに記載の組み合わせの使用。
[62]農薬製剤中の、(c)シリコーン系化合物の含有量が0.01~10重量%である、[52]~[61]のいずれか1つに記載の組み合わせの使用。
[63]農薬製剤が、SL剤(Soluble concentrate)、DC剤(Dispersible concentrate)、又はME剤(Microemulsion)である、[52]~[62]のいずれか1つに記載の組合せの使用。
【実施例
【0072】
本発明を、具体例を挙げて、詳細に説明するが、本発明は以下の例のみに限定されるものではない。
【0073】
農薬製剤の調製
以下の第1表~第7表に示す量の各成分を混合し、農薬製剤を調製した。なお、数字は重量部を表す。
使用した(b)界面活性剤を下記に列挙する。
【0074】
【表4】
【0075】
試験方法
(1)農薬製剤の外観の観察
調製した農薬製剤の外観を目視観察し、以下の基準で評価した。
〇:濁りなし
×:濁りあり
(2)透過率の測定
調製した農薬製剤の吸光度を、660nmの波長の光で、(a)農薬有効成分、(b)界面活性剤及び(d)有機溶媒を含む農薬製剤をブランクとして使用し、紫外可視分光光度計UV-2550(島津製作所製)を用いて、測定し(室温、光路長:100mm、石英セル容量:3.7mL)、透過率を求めた。
(3)起泡性の評価
25±5℃で、250mLの蓋付メスシリンダーに200mLの水を入れ、農薬製剤を、それぞれ0.2g添加した。蓋をしたメスシリンダーを、約1分間に計30回転倒させ、その後1分間静置した後の泡の体積を測定した。なお、実施例1では、1分間静置後に、濾過を行い、濾過後の泡の体積も測定した。
【0076】
実施例1:(c)シリコーン系化合物の評価
下記の第1表に示す(a)~(d)を用いて、農薬製剤を作成し、外観観察、透過率の測定及び起泡性の評価を行った。結果を第1表に示す。第1表において、No.1-1が本発明区、No.1-2~1-9が比較区である。なお、実施例1においては、農薬製剤の濾過前及び濾過後の両方で、透過率の測定、及び上述の方法にて起泡性の評価を行った。
【0077】
【表5】
【0078】
第1表に示すように、本発明区の農薬製剤は、澄明な性状を有し(すなわち、外観:〇、透過率が94%以上)、式(II)で表されるシリコーン系化合物を含むことにより、農薬製剤を水に希釈したときの泡立ちが顕著に抑制されることが分かった。一方、本分野において利用されている様々な(c’)消泡剤では、澄明な性状の付与と泡立ちの抑制を両立できなかった。
【0079】
実施例2:(b)界面活性剤の評価1
本発明の適用範囲を確認するために、(d)有機溶媒としてジメチルスルホキシド、及び様々な(b)界面活性剤を用いて、農薬製剤を作成し、その外観観察及び起泡性の評価を行った。結果を第2-1表及び第2-2表に示す。第2-1表は本発明区、第2-2表は(c)シリコーン系化合物を含まない比較区である。
【0080】
【表6】
【表7】
【0081】
様々な界面活性剤を使用した場合においても、澄明な性状の農薬製剤が得られ、(c)シリコーン系化合物による泡立ちの抑制効果が確認された。
【0082】
実施例3:(b)界面活性剤の評価2
(a)農薬有効成分の存在下で、実施例2に示した効果が発揮されるかを評価するために、(d)有機溶媒としてジメチルスルホキシド、及び様々な(b)界面活性剤を用いて、農薬製剤を作成し、その外観観察及び起泡性の評価を行った。結果を第3-1表及び第3-2表に示す。第3-1表は本発明区、第3-2表は(c)シリコーン系化合物を含まない比較区である。なお、(a)農薬有効成分として、溶解度が異なるシクラニリプロール(水溶解度:0.1ppm)及びフロニカミド(水溶解度:5200ppm)を使用した。
【0083】
【表8】
【表9】
【0084】
(a)農薬有効成分の存在中においても、様々な(b)界面活性剤を使用して、澄明な性状の農薬製剤が得られ、(c)シリコーン系化合物による泡立ちの抑制効果が確認された。
【0085】
実施例4:(d)有機溶媒の評価1
(b)界面活性剤としてソルポールT-20、及び様々な(d)有機溶媒を用いて、農薬製剤を作成し、その外観観察及び起泡性の評価を行った。結果を第4-1表及び第4-2表に示す。第4-1表は本発明区、第4-2表は(c)シリコーン系化合物を含まない比較区である。
【0086】
【表10】
【表11】
【0087】
実施例1及び2で使用したジメチルスルホキシドと同様に、他の有機溶媒においても、澄明な性状の農薬製剤が得られ、(c)シリコーン系化合物による泡立ちの抑制効果が確認された。
【0088】
実施例5:(d)有機溶媒の評価2
(a)農薬有効成分の存在下で、実施例4に示した効果が発揮されるかを評価するために、(b)界面活性剤としてソルポールT-20、及び様々な(d)有機溶媒を用いて、農薬製剤を作成し、その外観観察及び起泡性の評価を行った。結果を第5-1表~第5-4表に示す。各表のうち、第5-1表および第5-3表は本発明区、第5-2表及び第5-4表は(c)シリコーン系化合物を含まない比較区である。なお、(a)農薬有効成分として、溶解度が異なる、シクラニリプロール及びフロニカミドを使用した。
【0089】
【表12】
【表13】
【0090】
【表14】
【表15】
【0091】
(a)農薬有効成分の存在中においても、様々な(d)有機溶媒を使用して、澄明な性状の農薬製剤が得られ、(c)シリコーン系化合物による泡立ちの抑制効果が確認された。
【0092】
実施例2~5に示すように、本発明の(b)界面活性剤、(c)シリコーン系化合物及び(d)有機溶媒の組合せにより、様々な(a)農薬有効成分を含む澄明な性状の、水希釈時の泡立ちが抑制された農薬製剤を製造できることが明らかになった。
製剤例
以下に、本発明の農薬製剤の一例として、製剤例を示す。
【0093】
【表16】
【0094】
使用例
本分野において、農薬製剤を水で希釈する際に、他の農薬製剤、展着剤、肥料等と共に水で希釈して散布液を調製する(タンクミックス)場合がある。このような使用態様においても、本発明の泡立ちを抑制する効果が維持され、散布液の調製に支障がないかを確認した。
具体的には、本発明の農薬製剤として、シクラニリプロール(1.0重量部)、(b)-1(2.0重量部)、式(II)の化合物(0.5重量部)、ジメチルスルホキシド(96.5重量部)を含有する農薬製剤を調製し、当該農薬製剤を500倍の水で希釈する際に、種々の展着剤及び肥料(Actirob B、Destiny、Dyne-Amic、Persist Ultra、phase II、SYL-TAC、Version、TIPO、ニームオイル、トマト元気液肥、住友液肥2号;いずれも商品名)と混合して、散布液を調製した。その結果、いずれの場合も支障なく、散布液を調製することが可能であった。
なお、2019年8月5日に出願された日本特許出願2019-143474号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。