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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】ポリテトラフルオロエチレン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/18 20060101AFI20240815BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240815BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C08L27/18
C08K5/09
C08K5/42
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2024006293
(22)【出願日】2024-01-18
(65)【公開番号】P2024102031
(43)【公開日】2024-07-30
【審査請求日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2023006173
(32)【優先日】2023-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈人
(72)【発明者】
【氏名】山中 拓
(72)【発明者】
【氏名】山本 絵美
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 亮太
(72)【発明者】
【氏名】西村 賢汰
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-126769(JP,A)
【文献】国際公開第2021/015291(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/162623(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレンと、下記一般式(1)で示される化合物及び下記一般式(2)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含み、水分含有量が0.020質量%以下であるポリテトラフルオロエチレン組成物。
一般式(1):(H-(CFm-1-COO)
(式中、mは4~20である。Mは、H、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(2):(H-(CF-SO
(式中、nは4~20である。MはH、金属原子、NR (Rは前記と同じ)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。qは1又は2である。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、Mは、H又はNHであり、前記一般式(2)において、Mは、H又はNHである請求項1記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項3】
前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量は、前記ポリテトラフルオロエチレン組成物に対し、99.95質量%以上である請求項1又は2に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項4】
前記ポリテトラフルオロエチレン組成物に対する化合物(1)の含有量が1質量ppb以上、1000質量ppb以下であり、化合物(2)の含有量が5000質量ppb以下である請求項1又は2に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項5】
前記ポリテトラフルオロエチレン組成物は、下記一般式(3)で示される化合物を実質的に含まない請求項4に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
一般式(3):(H-(CF-SO
(式中、MはH、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。qは1又は2である。)
【請求項6】
一般式(3)で示される化合物の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレンに対して25質量ppb以下である請求項5に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項7】
前記ポリテトラフルオロエチレン組成物は、下記一般式(4)で示される化合物及び下記一般式(4’)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、それらの含有量がいずれも、前記ポリテトラフルオロエチレン組成物に対して1000質量ppb以下である請求項1又は2に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
一般式(4):(H-(CF15-COO)
(式中、Mは、H、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(4’):(H-(CF16-COO)
(式中、Mは、H、金属原子、NR (Rは前記と同じ)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
【請求項8】
前記ポリテトラフルオロエチレン組成物は、下記一般式(5)で示される化合物及び下記一般式(5’)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、それらの含有量がいずれも、前記ポリテトラフルオロエチレン組成物に対して1000質量ppb以下である請求項1又は2に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
一般式(5):(H-(CF13-COO)
(式中、Mは、H、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(5’):(H-(CF14-COO)
(式中、Mは、H、金属原子、NR (Rは前記と同じ)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
【請求項9】
前記ポリテトラフルオロエチレン組成物の平均一次粒子径が100~500nmである請求項1又は2に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項10】
前記ポリテトラフルオロエチレン組成物のリダクションレシオ100における押出圧力が10MPa以上である請求項1又は2に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項11】
前記ポリテトラフルオロエチレン組成物は、延伸可能である請求項1又は2に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項12】
前記ポリテトラフルオロエチレンは、テトラフルオロエチレン単位、及び、テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む請求項1又は2に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項13】
前記変性モノマーは、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン及びクロロトリフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項12に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項14】
破断強度が10.0N以上であり、0.1%質量減少温度が400℃以下であり、水分含有量が0.020質量%以下であるポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項15】
破断強度が10.0N以上であり、1.0%質量減少温度が492℃以下であり、水分含有量が0.020質量%以下であるポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項16】
破断強度が10.0N以上であり、熱安定指数(TII)が20以上であり、水分含有量が0.020質量%以下であるポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項17】
標準比重が2.200以下であり、0.1%質量減少温度が400℃以下であり、水分含有量が0.020質量%以下であるポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項18】
標準比重が2.200以下であり、1.0%質量減少温度が492℃以下であり、水分含有量が0.020質量%以下であるポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項19】
標準比重が2.130以上であり、1.0%質量減少温度が470℃以上である請求項18に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項20】
前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量は、前記ポリテトラフルオロエチレン組成物に対し、99.95質量%以上である請求項18又は19のいずれかに記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項21】
電池用バインダーに使用される請求項1、2、1419のいずれかに記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリテトラフルオロエチレン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ファインパウダーは、電気絶縁性、耐水性、耐薬品性、耐熱性、クリーン性に優れる等の理由から、絶縁テープ、同軸ケーブルや酸素センサの被覆材、あるいは燃料や飲料水用のチューブ類等に用いられる。これらはPTFEファインパウダーのペースト押出成形によって製造される。近年では、各種用途での部材軽量化が進み、例えば被覆材では薄肉化が求められている。
【0003】
また、PTFEファインパウダーのペースト押出によって得られたテープを高度に延伸することによって多孔質材料に加工できることから、耐水透湿膜やフィルタ濾材も製造でき、衣類や分離膜、エアフィルター等の広範な用途に応用されている。
【0004】
PTFEファインパウダーは、テトラフルオロエチレン(TFE)の乳化重合により製造される。
【0005】
特許文献1には、炭化水素系界面活性剤を使用する乳化重合で得られたフッ素化ポリマー樹脂を酸化剤に曝露させることにより、フッ素化ポリマー樹脂の熱誘起変色を低減させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2015-516029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、炭化水素系界面活性剤を用いて得られたポリテトラフルオロエチレン組成物であっても、水分量や不純物量を低減できるポリテトラフルオロエチレン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示(1)はポリテトラフルオロエチレンと、下記一般式(1)で示される化合物及び下記一般式(2)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含み、水分を実質的に含まないポリテトラフルオロエチレン組成物である。
一般式(1):(H-(CFm-1-COO)
(式中、mは4~20である。Mは、H、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(2):(H-(CF-SO
(式中、nは4~20である。MはH、金属原子、NR (Rは前記と同じ)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。qは1又は2である。)
【0009】
本開示(2)は前記一般式(1)において、Mは、H又はNHであり、前記一般式(2)において、Mは、H又はNHである本開示(1)記載のポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0010】
本開示(3)は前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量は、前記ポリテトラフルオロエチレン組成物に対し、99.95質量%以上である本開示(1)又は(2)に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0011】
本開示(4)は前記ポリテトラフルオロエチレン組成物に対する化合物(1)の含有量が1質量ppb以上、1000質量ppb以下であり、化合物(2)の含有量が5000質量ppb以下である本開示(1)~(3)のいずれかに記載のポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0012】
本開示(5)は前記ポリテトラフルオロエチレン組成物は、下記一般式(3)で示される化合物を実質的に含まない本開示(4)に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物である。
一般式(3):(H-(CF-SO
(式中、MはH、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。qは1又は2である。)
【0013】
本開示(6)は一般式(3)で示される化合物の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレンに対して25質量ppb以下である本開示(5)に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0014】
本開示(7)は前記ポリテトラフルオロエチレン組成物は、下記一般式(4)で示される化合物及び下記一般式(4’)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、それらの含有量がいずれも、前記ポリテトラフルオロエチレン組成物に対して1000質量ppb以下である本開示(1)~(6)のいずれかに記載のポリテトラフルオロエチレン組成物である。
一般式(4):(H-(CF15-COO)
(式中、Mは、H、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(4’):(H-(CF16-COO)
(式中、Mは、H、金属原子、NR (Rは前記と同じ)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
【0015】
本開示(8)は前記ポリテトラフルオロエチレン組成物は、下記一般式(5)で示される化合物及び下記一般式(5’)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、それらの含有量がいずれも、前記ポリテトラフルオロエチレン組成物に対して1000質量ppb以下である本開示(1)~(7)のいずれかに記載のポリテトラフルオロエチレン組成物である。
一般式(5):(H-(CF13-COO)
(式中、Mは、H、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(5’):(H-(CF14-COO)
(式中、Mは、H、金属原子、NR (Rは前記と同じ)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
【0016】
本開示(9)は前記ポリテトラフルオロエチレン組成物の平均一次粒子径が100~500nmである本開示(1)~(8)のいずれかに記載のポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0017】
本開示(10)は前記ポリテトラフルオロエチレン組成物に対し、前記水分の含有量が0.050質量%以下である本開示(1)~(9)のいずれかに記載のポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0018】
本開示(11)は前記ポリテトラフルオロエチレン組成物のリダクションレシオ100における押出圧力が10MPa以上である本開示(1)~(10)のいずれかに記載のポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0019】
本開示(12)は前記ポリテトラフルオロエチレン組成物は、延伸可能である本開示(1)~(11)のいずれかに記載のポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0020】
本開示(13)は前記ポリテトラフルオロエチレンは、テトラフルオロエチレン単位、及び、テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む本開示(1)~(12)のいずれかに記載のポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0021】
本開示(14)は前記変性モノマーは、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン及びクロロトリフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種である本開示(13)に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0022】
本開示(15)は破断強度が10.0N以上であり、0.1%質量減少温度が400℃以下であり、水分を実質的に含まないポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0023】
本開示(16)は破断強度が10.0N以上であり、1.0%質量減少温度が492℃以下であり、水分を実質的に含まないポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0024】
本開示(17)は破断強度が10.0N以上であり、熱安定指数(TII)が20以上であり、水分を実質的に含まないポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0025】
本開示(18)は標準比重が2.200以下であり、0.1%質量減少温度が400℃以下であり、水分を実質的に含まないポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0026】
本開示(19)は標準比重が2.200以下であり、1.0%質量減少温度が492℃以下であり、水分を実質的に含まないポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0027】
本開示(20)は標準比重が2.130以上であり、1.0%質量減少温度が470℃以上である本開示(19)に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0028】
本開示(21)は前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量は、前記ポリテトラフルオロエチレン組成物に対し、99.95質量%以上である本開示(19)又は(20)のいずれかに記載のポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【0029】
本開示(22)は電池用バインダーに使用される本開示(1)~(21)のいずれかに記載のポリテトラフルオロエチレン組成物である。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、炭化水素系界面活性剤を用いて得られたポリテトラフルオロエチレン組成物であっても、水分量や不純物量を低減できるポリテトラフルオロエチレン組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示において、「有機基」は、1個以上の炭素原子を含有する基、又は有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
上記有機基としては、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
【0032】
本明細書において、炭化水素系界面活性剤が有する有機基は、フッ素を含まない有機基であることが好ましい。
【0033】
以下、本開示を具体的に説明する。
【0034】
本開示は、PTFEと、下記一般式(1)で示される化合物及び下記一般式(2)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含み、水分を実質的に含まないPTFE組成物(以下、本開示のPTFE組成物(1)ともいう。)を提供する。
一般式(1):(H-(CFm-1-COO)
(式中、mは4~20である。Mは、H、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(2):(H-(CF-SO
(式中、nは4~20である。MはH、金属原子、NR (Rは上記と同じ)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。qは1又は2である。)
【0035】
本開示は、破断強度が10.0N以上であり、0.1%質量減少温度が400℃以下であり、水分を実質的に含まないPTFE組成物(以下、本開示のPTFE組成物(2)ともいう。)も提供する。
【0036】
本開示は、破断強度が10.0N以上であり、1.0%質量減少温度が492℃以下であり、水分を実質的に含まないPTFE組成物(以下、本開示のPTFE組成物(3)ともいう。)も提供する。
【0037】
本開示は、破断強度が10.0N以上であり、熱安定指数(TII)が20以上であり、水分を実質的に含まないPTFE組成物(以下、本開示のPTFE組成物(4)ともいう。)も提供する。
【0038】
本開示は、標準比重が2.200以下であり、0.1%質量減少温度が400℃以下であり、水分を実質的に含まないPTFE組成物(以下、本開示のPTFE組成物(5)ともいう。)も提供する。
【0039】
本開示は、標準比重が2.200以下であり、1.0%質量減少温度が492℃以下であり、水分を実質的に含まないPTFE組成物(以下、本開示のPTFE組成物(6)ともいう。)も提供する。
【0040】
本明細書では、特に断りのない限り、本開示のPTFE組成物(1)~(6)をまとめて「本開示のPTFE組成物」というものとする。
【0041】
本開示のPTFE組成物は、上記構成を有するので、炭化水素系界面活性剤を用いて得られたPTFE組成物でありながら、水分量が少なく、また、不純物量が少ないため、水分や不純物が残留することによる不具合(例えば、着色)が発生しにくい。
【0042】
本開示のPTFE組成物(1)は、下記一般式(1)で示される化合物(以下、化合物(1)ともいう。)及び下記一般式(2)で示される化合物(以下、化合物(2)ともいう。)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む。本開示のPTFE組成物(2)~(6)は、上記化合物を含むものであってよい。
一般式(1):(H-(CFm-1-COO)
(式中、mは4~20である。Mは、H、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(2):(H-(CF-SO
(式中、nは4~20である。MはH、金属原子、NR (Rは上記と同じ)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。qは1又は2である。)
【0043】
上記M及びMとしての上記金属原子としては、1、2価の金属原子が挙げられ、アルカリ金属(1族)又はアルカリ土類金属(2族)が挙げられ、具体的には、Na、K、Li等が例示される。
4つのRは、同一でも異なっていてもよい。Rとしては、H又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましい。
上記M及びMは、H、アルカリ金属又はNHであることが好ましく、H又はNHであることがより好ましい。
【0044】
上記M及びMとしての上記金属原子としては、1、2価の金属原子が挙げられ、アルカリ金属(1族)又はアルカリ土類金属(2族)が挙げられ、具体的には、Na、K、Li等が例示される。
4つのRは、同一でも異なっていてもよい。Rとしては、H又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましい。
また、Rは、フッ素を含まない有機基であることが好ましい。
【0045】
一般式(1)において、mは6以上が好ましく、8以上がより好ましく、11以上が更に好ましく、13以上が更により好ましく、15以上が特に好ましく、また、18以下が好ましく、16以下がより好ましい。
一般式(2)において、nは6以上が好ましく、8以上がより好ましく、11以上が更に好ましく、13以上が更により好ましく、15以上が特に好ましく、また、18以下が好ましく、16以下がより好ましい。
【0046】
化合物(1)及び/又は(2)を含むPTFE組成物は、炭化水素系界面活性剤を用いることにより得られる。すなわち、本開示のPTFE組成物(1)は、PTFEと、化合物(1)及び/又は(2)とともに、炭化水素系界面活性剤を含んでいてもよい。本開示のPTFE組成物(1)中の炭化水素系界面活性剤の含有量は特に限定されないが、通常、100質量ppm~10質量%である。
上記炭化水素系界面活性剤は、炭素原子に結合した水素原子のうち、フッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0047】
本開示のPTFE組成物が化合物(1)を含む(含有量が0を超える)場合、化合物(1)の含有量は、上記PTFE組成物に対して10質量ppm以下であってよく、5000質量ppb以下であることが好ましく、1000質量ppb以下であることがより好ましく、500質量ppb以下であることが更に好ましく、100質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが更により好ましく、15質量ppb以下であることが更により好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されないが、定量下限未満であってよく、0.1質量ppbであってよく、1質量ppbであってもよい。
【0048】
本開示のPTFE組成物が化合物(2)を含む(含有量が0を超える)場合、化合物(2)の含有量は、上記PTFE組成物に対して10質量ppm以下であってよく、5000質量ppb以下であることが好ましく、1000質量ppb以下であることがより好ましく、500質量ppb以下であることが更に好ましく、100質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが更により好ましく、15質量ppb以下であることが更により好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されないが、定量下限未満であってよく、0.1質量ppbであってよく、1質量ppbであってもよい。
【0049】
本開示のPTFE組成物は、下記一般式(3)で示される化合物(以下、化合物(3)ともいう。)を実質的に含まないことが好ましい。
一般式(3):(H-(CF-SO
(式中、MはH、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。qは1又は2である。)
【0050】
化合物(3)を実質的に含まないとは、化合物(3)の含有量が上記PTFE組成物に対して25質量ppb以下であることを意味する。化合物(3)の含有量は、上記PTFE組成物に対して20質量ppb以下であることが好ましく、15質量ppb以下であることがより好ましく、10質量ppb以下であることが更に好ましい。下限は特に限定されないが、0質量ppbであってよく、0.1質量ppbであってもよく、1質量ppbであってもよい。
【0051】
本開示のPTFE組成物は、下記一般式(4)で示される化合物(以下、化合物(4)ともいう。)及び下記一般式(4’)で示される化合物(以下、化合物(4’)ともいう。)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、それらの含有量がいずれも、上記PTFE組成物に対して1000質量ppb以下であることが好ましい。
一般式(4):(H-(CF15-COO)
(式中、Mは、H、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(4’):(H-(CF16-COO)
(式中、Mは、H、金属原子、NR (Rは上記と同じ)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
【0052】
本開示のPTFE組成物が化合物(4)を含む(含有量が0を超える)場合、化合物(4)の含有量は、上記PTFE組成物に対して500質量ppb以下であることがより好ましく、250質量ppb以下であることが更に好ましく、100質量ppb以下であることが更により好ましく、50質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが更により好ましく、15質量ppb以下であることが更により好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されないが、定量下限未満であってよく、0.1質量ppbであってよく、1質量ppbであってもよい。
【0053】
本開示のPTFE組成物が化合物(4’)を含む(含有量が0を超える)場合、化合物(4’)の含有量は、上記PTFE組成物に対して500質量ppb以下であることがより好ましく、250質量ppb以下であることが更に好ましく、100質量ppb以下であることが更により好ましく、50質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが更により好ましく、15質量ppb以下であることが更により好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されないが、定量下限未満であってよく、0.1質量ppbであってよく、1質量ppbであってもよい。
【0054】
本開示のPTFE組成物は、下記一般式(5)で示される化合物(以下、化合物(5)ともいう。)及び下記一般式(5’)で示される化合物(以下、化合物(5’)ともいう。)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、それらの含有量がいずれも、上記PTFE組成物に対して1000質量ppb以下であることが好ましい。
一般式(5):(H-(CF13-COO)
(式中、Mは、H、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は炭素数1~10の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
一般式(5’):(H-(CF14-COO)
(式中、Mは、H、金属原子、NR (Rは上記と同じ)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。pは1又は2である。)
【0055】
本開示のPTFE組成物が化合物(5)を含む(含有量が0を超える)場合、化合物(5)の含有量は、上記PTFE組成物に対して500質量ppb以下であることがより好ましく、250質量ppb以下であることが更に好ましく、100質量ppb以下であることが更により好ましく、50質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが更により好ましく、15質量ppb以下であることが更により好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されないが、定量下限未満であってよく、0.1質量ppbであってよく、1質量ppbであってもよい。
【0056】
本開示のPTFE組成物が化合物(5’)を含む(含有量が0を超える)場合、化合物(5’)の含有量は、上記PTFE組成物に対して500質量ppb以下であることがより好ましく、250質量ppb以下であることが更に好ましく、100質量ppb以下であることが更により好ましく、50質量ppb以下であることが更により好ましく、25質量ppb以下であることが更により好ましく、15質量ppb以下であることが更により好ましく、10質量ppb以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されないが、定量下限未満であってよく、0.1質量ppbであってよく、1質量ppbであってもよい。
【0057】
化合物(1)、(2)、(3)、(4)、(4’)、(5)及び(5’)の含有量は、後述する実施例に記載するように、液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて測定した値である。
【0058】
本開示のPTFE組成物におけるPTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体であってもよいし、TFEに基づく重合単位(TFE単位)と、変性モノマーに基づく重合単位(以下「変性モノマー単位」とも記載する)とを含む変性PTFEであってもよい。上記変性PTFEは、99.0質量%以上のTFE単位と、1.0質量%以下の変性モノマー単位とを含むものであってよい。また、上記変性PTFEは、TFE単位及び変性モノマー単位のみからなるものであってよい。
上記PTFEとしては、延伸性が向上する点で、上記変性PTFEが好ましい。
TFEの単独重合体とは、全重合単位中TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく重合単位の含有量が0.0001質量%未満のものを指す。
【0059】
上記変性PTFEは、延伸性が向上する点で、変性モノマー単位の含有量が全重合単位に対し
0.00001~10質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、5.0質量%が好ましく、3.0質量%がより好ましく、1.0質量%が更に好ましく、0.90質量%が更により好ましく、0.80質量%が更により好ましく、0.50質量%が更により好ましく、0.40質量%が更により好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.20質量%が更により好ましく、0.15質量%が更により好ましく、0.10質量%が更により好ましく、0.08質量%が更により好ましく、0.05質量%が特に好ましく、0.03質量%が最も好ましい。
本明細書において、上記変性モノマー単位とは、PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分を意味する。
【0060】
上述した各重合単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0061】
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のパーハロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル:パーフルオロアリルエーテル;(パーフルオロアルキル)エチレン、エチレン等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0062】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(A):
CF=CF-ORf (A)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0063】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(A)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0064】
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0065】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、上記一般式(A)において、Rfが炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
【0066】
【化1】
【0067】
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
【0068】
【化2】
【0069】
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
【0070】
(パーフルオロアルキル)エチレン〔PFAE〕としては特に限定されず、例えば、(パーフルオロブチル)エチレン〔PFBE〕、(パーフルオロヘキシル)エチレン等が挙げられる。
【0071】
パーフルオロアリルエーテルとしては、例えば、一般式(B):
CF=CF-CF-ORf (B)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマーが挙げられる。
【0072】
上記Rfは、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基又は炭素数1~10のパーフルオロアルコキシアルキル基が好ましい。上記パーフルオロアリルエーテルとしては、CF=CF-CF-O-CF、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、CF=CF-CF-O-CFCFCFが更に好ましい。
【0073】
上記変性モノマーとしては、延伸性が向上する点で、PAVE、HFP、VDF及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、HFP、VDF及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、PMVE及びHFPからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0074】
上記PTFEは、コアシェル構造を有していてもよい。コアシェル構造を有するPTFEとしては、例えば、粒子中に高分子量のPTFEのコアと、より低分子量のPTFE又は変性のPTFEのシェルとを含む変性PTFEが挙げられる。このような変性PTFEとしては、例えば、特表2005-527652号公報に記載されるPTFEが挙げられる。
【0075】
上記PTFEは、延伸性が向上する点で、吸熱ピーク温度が320℃以上であることが好ましく、325℃以上であることがより好ましく、330℃以上であることが更に好ましく、335℃以上であることが更により好ましく、340℃以上であることが更により好ましく、342℃以上であることが更により好ましく、344℃以上であることが特に好ましい。上記吸熱ピーク温度は、また、350℃以下であることが好ましい。
上記吸熱ピーク温度は、300℃以上の温度に加熱した履歴がないフッ素樹脂について10℃/分の昇温速度で示差走査熱量測定〔DSC〕を行って得られた融解熱曲線における極小点に対応する温度である。1つの融解ピーク中に極小点が2つ以上ある場合は、それぞれを吸熱ピーク温度とする。
【0076】
上記PTFEは、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線において、333~347℃の範囲に1つ以上の吸熱ピークが現れ、上記融解熱曲線から算出される290~350℃の融解熱量が62mJ/mg以上であることが好ましい。
【0077】
上記PTFEは、押出圧力が一層低く、破断強度が一層高くなる点で、数平均分子量(Mn)が0.5×10以上であることが好ましく、1.0×10以上であることがより好ましく、1.5×10以上であることが更に好ましく、2.0×10以上であることが更により好ましく、3.0×10以上であることが特に好ましい。上記数平均分子量は、また、20.0×10以下であることが好ましく、15.0×10以下であることがより好ましく、12.0×10以下であることが更に好ましく、10.0×10以下であることが更により好ましく、8.0×10以下であることが特に好ましい。
上記数平均分子量は、フッ素樹脂を溶融後に示差走査型熱量計(DSC)の降温測定を行って見積もった結晶化熱から、下記の文献に記載の方法に従って求めた分子量である。測定は5回行い、最大値及び最小値を除いた3つの値の平均値を採用する。
文献:Suwa,T.;Takehisa,M.;Machi,S.,J.Appl.Polym.Sci.vol.17,pp.3253(1973).
【0078】
本開示のPTFE組成物における上記PTFEの含有量は、上記PTFE組成物に対し、95.0質量%以上であってよく、98.0質量%以上であることが好ましく、99.0質量%以上であることがより好ましく、99.5質量%以上であることが更に好ましく、99.9質量%以上であることが特に好ましく、99.95質量%以上であることが最も好ましい。
【0079】
本開示のPTFE組成物は、水分を実質的に含まない。これにより、押出圧力が安定しており、延伸強度が安定した一軸延伸体や、膜の均質性が高く、外観が良好であり、圧損、捕集効率等の膜性能が安定した二軸延伸膜を製造することができる。水分を実質的に含まないとは、上記PTFE組成物に対する水分含有量が0.050質量%以下であることを意味する。
上記水分含有量は、0.040質量%以下であることが好ましく、0.020質量%以下であることがより好ましく、0.010質量%以下であることが更に好ましく、0.005質量%以下であることが更により好ましく、0.002質量%以下であることが特に好ましい。
上記水分含有量は、以下の方法により測定する。
PTFE組成物を150℃で2時間加熱した前後の質量を測定し、以下の式に従って算出する。試料を3回取り、それぞれ算出した後、平均を求め、当該平均値を採用する。
水分含有量(質量%)=[(加熱前のPTFE組成物の質量(g))-(加熱後のPTFE組成物の質量(g))]/(加熱前のPTFE組成物の質量(g))×100
【0080】
本開示のPTFE組成物は、分子量1000以下の含フッ素化合物(ただし、上述した化合物(1)及び(2)は除く。)を実質的に含まないことが好ましい。上記含フッ素化合物を実質的に含まないとは、上記含フッ素化合物の量が、上記PTFE組成物に対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、10質量ppb未満であることが更に好ましく、5質量ppb以下であることが更により好ましく、3質量ppb以下であることが更により好ましく、1質量ppb以下であることが更により好ましく、1質量ppb未満であることが特に好ましい。下限は特に限定されず、定量下限未満の量であってよい。
【0081】
上記分子量1000以下の含フッ素化合物の量は、以下の方法により測定する。
試料を1g秤量し、メタノールを10g(12.6ml)加え、60分間の超音波処理を行ない、抽出液を得る。得られた抽出液を適宜窒素パージで濃縮し、濃縮後の抽出液中の含フッ素化合物をLC/MS/MS測定する。得られたLC/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる含フッ素化合物の構造式との一致を確認する。標準物質の5水準以上の含有量の水溶液を作製し、それぞれの含有量の水溶液のLC/MS分析を行ない、含有量と、その含有量に対するエリア面積と関係をプロットし、検量線を描く。上記検量線を用いて、抽出液中の含フッ素化合物のLC/MSクロマトグラムのエリア面積を、含フッ素化合物の含有量に換算する。
なお、この測定方法における定量下限は10質量ppbである。
【0082】
上記分子量1000以下の含フッ素化合物の量は、以下の方法によっても測定することができる。
試料を1g秤量し、メタノールを10g(12.6ml)加え、60℃で2時間、超音波処理を行ない、室温で静置した後、固形分を除き、抽出液を得る。得られた抽出液を適宜窒素パージで濃縮し、濃縮後の抽出液中の含フッ素化合物をLC/MS/MS測定する。得られたLC/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる含フッ素化合物の構造式との一致を確認する。濃度既知の含フッ素化合物のメタノール標準溶液を5水準調製し、液体クロマトグラフ質量分析計を用いて測定を行い、それぞれの濃度範囲において、メタノール標準溶液濃度とピークの積分値から一次近似を用い、検量線を作成する。上記検量線から、抽出液に含まれる含フッ素化合物の含有量を測定し、試料に含まれる含フッ素化合物の含有量を換算する。
なお、この測定方法における定量下限は1質量ppbである。
【0083】
上記分子量1000以下の含フッ素化合物としては、例えば、分子量1000g/mol以下の親水基を有する含フッ素化合物が挙げられる。上記含フッ素化合物の分子量は、800以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。
含フッ素界面活性剤の存在下で行う重合により得られる重合粒子には、PTFE以外に、含フッ素界面活性剤が含まれることが通常である。本明細書において、含フッ素界面活性剤は、重合時に使用されるものである。
上記分子量1000以下の含フッ素化合物は、重合の際に添加されていない化合物、例えば、重合途中で副生する化合物であってよい。
なお、上記分子量1000以下の含フッ素化合物は、アニオン性部とカチオン性部とを含む場合は、アニオン性部の分子量が1000以下であるフッ素を含む化合物を意味する。上記分子量1000以下の含フッ素化合物には、PTFEは含まれないものとする。
【0084】
上記親水基としては、例えば、-COOM、-SOM、又は、-SOMであってよく、-COOM、-SOM(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。)等のアニオン性基が挙げられる。
【0085】
上記含フッ素界面活性剤としては、アニオン性部分の分子量が1000以下のフッ素を含む界面活性剤(アニオン性含フッ素界面活性剤)を用いることもできる。上記「アニオン性部分」は、上記含フッ素界面活性剤のカチオンを除く部分を意味する。例えば、F(CFn1COOMの場合には、「F(CFn1COO」の部分である。
上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(N):
n0-Rfn0-Y (N
(式中、Xn0は、H、Cl又は及びFである。Rfn0は、炭素数3~20で、鎖状、分枝鎖状又は環状で、一部又は全てのHがFにより置換されたアルキレン基であり、該アルキレン基は1つ以上のエーテル結合を含んでもよく、一部のHがClにより置換されていてもよい。Yはアニオン性基である。)で表される化合物が挙げられる。
のアニオン性基は、-COOM、-SOM、又は、-SOMであってよく、-COOM、又は、-SOMであってよい。
Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、例えば、Na、K又はLiである。
としては、H又はC1-10の有機基であってよく、H又はC1-4の有機基であってよく、H又はC1-4のアルキル基であってよい。
Mは、H、金属原子又はNR であってよく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR であってよく、H、Na、K、Li又はNHであってよい。
上記Rfn0は、Hの50%以上がフッ素に置換されているものであってよい。
【0086】
上記含フッ素界面活性剤は、1種の含フッ素界面活性剤であってもよいし、2種以上の含フッ素界面活性剤を含有する混合物であってもよい。
【0087】
上記含フッ素界面活性剤としては、例えば、以下の式で表される化合物が挙げられる。含フッ素界面活性剤は、これらの化合物の混合物であってよい。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、及び、
【化3】
(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムである。Rは、H又は有機基である。)。
本開示のPTFE組成物は、上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないことが好ましい。
【0088】
上記の各式において、Mは、H、金属原子又はNR であってよく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR であってよく、H、Na、K、Li又はNHであってよい。
は、H又はC1-10の有機基であってよく、H又はC1-4の有機基であってよく、H又はC1-4のアルキル基であってよい。
【0089】
本開示のPTFE組成物が上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないものであると、押出圧力が安定しており、延伸強度が安定した一軸延伸体や、膜の均質性が高く、外観が良好であり、圧損、捕集効率等の膜性能が安定した二軸延伸膜を製造することができる。
上記式で表される含フッ素化合物のいずれをも実質的に含まないとは、当該含フッ素化合物の量が、上記PTFE組成物に対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、10質量ppb未満であることが更に好ましく、5質量ppb以下であることが更により好ましく、3質量ppb以下であることが更により好ましく、1質量ppb以下であることが更により好ましく、1質量ppb未満であることが特に好ましい。下限は特に限定されず、定量下限未満の量であってよい。
【0090】
本開示のPTFE組成物は、下記一般式:
[Cn-12n-1COO]M
(式中、nは9~14の整数、好ましくは9~12の整数、Mはカチオンを表す。)で表される含フッ素化合物を実質的に含まないことも好ましい。これにより、押出圧力が安定しており、延伸強度が安定した一軸延伸体や、膜の均質性が高く、外観が良好であり、圧損、捕集効率等の膜性能が安定した二軸延伸膜を製造することができる。
上記式中のカチオンMを構成するMは、上述したMと同様である。
上記式で表される含フッ素化合物を実質的に含まないとは、当該含フッ素化合物の量が、上記PTFE組成物に対し25質量ppb以下であることを意味する。
上記含フッ素化合物の量は、25質量ppb未満であることが好ましく、10質量ppb以下であることがより好ましく、10質量ppb未満であることが更に好ましく、5質量ppb以下であることが更により好ましく、3質量ppb以下であることが更により好ましく、1質量ppb以下であることが更により好ましく、1質量ppb未満であることが特に好ましい。下限は特に限定されず、定量下限未満の量であってよい。
【0091】
本開示のPTFE組成物は、非溶融二次加工性を有することが好ましい。上記非溶融二次加工性とは、ASTM D-1238及びD-2116に準拠して、融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質、言い換えると、溶融温度領域でも容易に流動しない性質を意味する。
【0092】
本開示のPTFE組成物(1)、(3)、(4)及び(6)は、0.1%質量減少温度が400℃以下であってよい。本開示のPTFE組成物(2)及び(5)は、0.1%質量減少温度が400℃以下である。
0.1%質量減少温度が400℃以下であるPTFE組成物は、炭化水素系界面活性剤を用いることにより得られる。
上記0.1%質量減少温度は、350℃以上であってよい。
上記0.1%質量減少温度は、下記方法にて測定した値である。
300℃以上の温度に加熱した履歴のないPTFEの組成物約10mgを精秤し、専用のアルミパンに収納してTG・DTA(示差熱・熱重量同時測定装置)を測定する。0.1%質量減少温度は、アルミパンを大気雰囲気下、25℃から600℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温させ、0.1mass%の重量減少した点に対応する温度とする。
【0093】
本開示のPTFE組成物(1)、(2)、(4)及び(5)は、1.0%質量減少温度が492℃以下であってよい。本開示のPTFE組成物(3)及び(6)は、1.0%質量減少温度が492℃以下である。
1.0%質量減少温度が492℃以下であるPTFE組成物は、炭化水素系界面活性剤を用いることにより得られる。
上記1.0%質量減少温度は、400℃以上であってよく、420℃以上であってもよく、450℃以上であってもよく、470℃以上であってもよい。
上記1.0%質量減少温度は、下記方法にて測定した値である。
300℃以上の温度に加熱した履歴のないPTFEの組成物約10mgを精秤し、専用のアルミパンに収納してTG・DTA(示差熱・熱重量同時測定装置)を測定する。1.0%質量減少温度は、アルミパンを大気雰囲気下、25℃から600℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温させ、1.0mass%の重量減少した点に対応する温度とする。
【0094】
本開示のPTFE組成物(1)~(3)、(5)及び(6)は、TIIが20以上であることが好ましい。本開示のPTFE組成物(4)は、熱不安定指数(TII)が20以上である。
TIIが20以上であるPTFE組成物は、炭化水素系界面活性剤を用いることにより得られる。TIIは、25以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、35以上であることが更に好ましく、40以上であることが特に好ましい。TIIは、また、100以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましく、50以下であることが更に好ましい。
上記TIIは、ASTM D 4895-89に準拠して測定する。
【0095】
本開示のPTFE組成物(1)、(5)及び(6)は、破断強度が10.0N以上であることが好ましい。本開示のPTFE組成物(2)~(4)は、破断強度が10.0N以上である。破断強度が10.0N以上であると、PTFE一軸延伸体の強度が一層向上する。
上記破断強度は、13.0N以上であることがより好ましく、16.0N以上であることが更に好ましく、19.0N以上であることが更により好ましく、22.0N以上であることが更により好ましく、25.0N以上であることが更により好ましく、28.0N以上であることが更により好ましく、30.0N以上であることが更により好ましく、32.0N以上であることが更により好ましく、35.0N以上であることが特に好ましい。破断強度は高ければ高いほどよいが、100.0N以下であってよく、80.0N以下であってもよく、50.0N以下であってもよい。
上記破断強度は、下記方法で求めた値である。
後述の延伸試験で得られた延伸ビード(ビードをストレッチすることによって作製されたもの)について、5.0cmのゲージ長である可動ジョーにおいて挟んで固定し、25℃で300mm/分の速度で引っ張り試験を行い、破断した時の強度を破断強度として測定する。
【0096】
本開示のPTFE組成物(1)~(4)は、SSGが2.200以下であることが好ましい。本開示のPTFE組成物(5)及び(6)は、標準比重(SSG)が2.200以下である。SSGが2.200以下であると、延伸性が向上する。
上記SSGは、2.190以下であることがより好ましく、2.180以下であることが更に好ましく、2.175以下であることが更により好ましく、2.170以下であることが殊更に好ましく、2.165以下であることが特に好ましい。
上記SSGは、また、2.130以上であることが好ましい。
上記SSGは、ASTM D 4895に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定する。
【0097】
本開示のPTFE組成物は、押出物の強度を向上させる点で、リダクションレシオ(RR)100における押出圧力が10MPa以上であることが好ましく、12MPa以上であることがより好ましく、15MPa以上であることが更に好ましく、16MPa以上であることが更により好ましく、17MPa以上であることが特に好ましい。
RR100における押出圧力は、また、加工性が向上する点で、50MPa以下であることが好ましく、40MPa以下であることがより好ましく、35MPa以下であることが更に好ましく、30MPa以下であることが更により好ましく、25MPa以下であることが更により好ましく、20MPa以下であることが特に好ましい。
【0098】
RR100における押出圧力は、特開2002-201217号公報記載の方法に準拠し、下記方法で求める。
PTFE組成物100gに、潤滑剤(商品名:アイソパーH(登録商標)、エクソン社製)21.7gを添加し、室温にてガラスビン中で3分間混合する。次いで、ガラスビンを、押出前少なくとも1時間、室温(25℃)に放置し、潤滑化樹脂を得る。潤滑化樹脂をオリフィス(直径2.5mm、ランド長11mm、導入角30°)を通して、室温で100:1の減速比でペースト押出し、均一なビード(beading;押出成形体)を得る。押出スピード、すなわち、ラムスピードは、20インチ/分(51cm/分)とする。ペースト押出において押出負荷が平衡状態になった時の負荷を測定し、ペースト押出に用いたシリンダーの断面積で除することにより、押出圧力を算出する。
【0099】
本開示のPTFE組成物は、押出物の強度を向上させる点で、RR300における押出圧力が18MPa以上であることが好ましく、23MPa以上であることがより好ましく、25MPa以上であることが更に好ましく、28MPa以上であることが更により好ましく、30MPa以上であることが殊更に好ましく、32MPa以上であることが特に好ましい。
RR300における押出圧力は、また、加工性が向上する点で、45MPa以下であることが好ましく、40MPa以下であることがより好ましい。
【0100】
RR300における押出圧力は、以下の方法により測定する。
PTFE組成物50gと押出助剤としての炭化水素油(商品名:アイソパーE、エクソンモービル社製)11.00gとをポリエチレン容器内で3分間混合する。室温(25±2℃)で、押出機のシリンダーに上記混合物を充填し、シリンダーに挿入したピストンに0.47MPaの負荷をかけて1分間保持する。次にラム速度18mm/minでオリフィスから押出する。オリフィスの断面積に対するシリンダーの断面積の比(リダクションレシオ)は300である。押出操作の後半において、圧力が平衡状態になったときの荷重(N)をシリンダー断面積で除した値を押出圧力(MPa)とする。
【0101】
本開示のPTFE組成物は、PTFE一軸延伸体の強度を向上させる点で、延伸可能であることが好ましい。
延伸可能であるとは、以下の延伸試験において延伸体が得られることを意味する。
上記のRR100でのペースト押出により得られたビードを230℃で30分加熱することにより、潤滑剤をビードから除去する。次に、ビード(押出成形体)を適当な長さに切断し、クランプ間隔が1.5インチ(38mm)となるよう、各末端をクランプに固定し、空気循環炉中で300℃に加熱する。次いでクランプを所望のストレッチ(総ストレッチ)に相当する分離距離となるまで所望の速度(ストレッチ速度)で離し、延伸試験(ストレッチ試験)を実施する。このストレッチ方法は、押出スピード(84cm/分でなく51cm/分)が異なることを除いて、本質的に米国特許第4,576,869号明細書に開示された方法に従う。『ストレッチ』とは、延伸による長さの増加であり、通常元の長さに対する比率として表される。ストレッチ方法においてストレッチ速度は、1000%/秒であり、上記総ストレッチは2400%である。
【0102】
本開示のPTFE組成物は、PTFE一軸延伸体の強度を一層向上させる点で、24倍に延伸可能であることが好ましい。
24倍に延伸可能であるとは、上記の延伸試験の延伸中に破断しないことを意味する。
【0103】
本開示のPTFE組成物は、平均一次粒子径が100~500nmであることが好ましい。平均一次粒子径が上記範囲内にあることにより、上記PTFEの分子量が高く、押出圧力が安定しており、延伸強度が安定した一軸延伸体や、膜の均質性が高く、外観が良好であり、圧損、捕集効率等の膜性能が安定した二軸延伸膜を製造することができる。
上記平均一次粒子径は、400nm以下であることがより好ましく、350nm以下であることが更に好ましく、330nm以下であることが更により好ましく、320nm以下であることが更により好ましく、300nm以下であることが更により好ましく、280nm以下であることが更により好ましく、250nm以下であることが特に好ましく、また、150nm以上であることがより好ましく、170nm以上であることが更に好ましく、200nm以上であることが更により好ましい。
上記平均一次粒子径は、以下の方法により測定する。
PTFE水性分散液を水で固形分濃度が0.15質量%になるまで希釈し、得られた希釈ラテックスの単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向径を測定して決定した数基準長さ平均一次粒子径とを測定して、検量線を作成した。この検量線を用いて、各試料の550nmの投射光の実測透過率から平均一次粒子径を決定とする。
また、平均一次粒子径は、動的光散乱法によっても測定できる。動的光散乱法においては、固形分濃度を約1.0質量%に調整したPTFE水性分散液を作製し、ELSZ-1000S(大塚電子社製)を使用して25℃、積算70回にて測定した。溶媒(水)の屈折率は1.3328、溶媒(水)の粘度は0.8878mPa・sとする。
【0104】
本開示のPTFE組成物は、平均二次粒子径が350μm以上であってよく、400μm以上であることが好ましく、450μm以上であることがより好ましく、500μm以上であることが更に好ましく、550μm以上であることが更により好ましく、600μm以上であることが特に好ましく、また、1000μm以下であることが好ましく、900μm以下であることがより好ましく、800μm以下であることが更に好ましく、700μm以下であることが更により好ましい。
上記平均二次粒子径は、JIS K 6891に準拠して測定する。
【0105】
本開示のPTFE組成物は、取り扱い性に優れる点で、平均アスペクト比が2.0以下であってよく、1.8以下であることが好ましく、1.7以下であることがより好ましく、1.6以下であることが更に好ましく、1.5以下であることが更により好ましく、1.4以下であることが更により好ましく、1.3以下であることが殊更に好ましく、1.2以下であることが特に好ましく、1.1以下であることが最も好ましい。上記平均アスペクト比は、また、1.0以上であってよい。
上記平均アスペクト比は、PTFE組成物、又は、固形分濃度が約1質量%となるように希釈したPTFE水性分散液を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した200個以上の粒子について画像処理を行い、その長径と短径の比の平均より求める。
【0106】
本開示のPTFE組成物は、取り扱い性に優れる点で、見掛密度が0.40g/ml以上であることが好ましく、0.43g/ml以上であることがより好ましく、0.45g/ml以上であることが更に好ましく、0.48g/ml以上であることが更により好ましく、0.50g/ml以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、0.70g/mlであっても構わない。
上記見掛密度は、JIS K 6892に準拠して測定する。
【0107】
本開示のPTFE組成物は、例えば、炭化水素系界面活性剤を用いた乳化重合によりPTFEの水性分散液を得る工程(A)、上記水性分散液を凝析して湿潤粉末を得る工程(B)、及び、上記湿潤粉末を乾燥させる工程(C)を含む製造方法によって好適に製造することができる。
上記炭化水素系界面活性剤は、炭素原子に結合した水素原子のうち、フッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0108】
上記炭化水素系界面活性剤は、カルボン酸型炭化水素系界面活性剤であることが好ましい。上記カルボン酸型炭化水素系界面活性剤としては、カルボキシル基(-COOH)又はカルボキシル基の水素原子が無機陽イオン(例えば、金属原子、アンモニウム等)で置換された基を有するものであれば限定されず、例えば、後述する特定の炭化水素系界面活性剤、その他の界面活性能を有する化合物の中から、カルボキシル基又はカルボキシル基の水素原子が無機陽イオンに置換された基を有する炭化水素系界面活性剤を使用することができる。
【0109】
上記炭化水素系界面活性剤は、スルホン酸型炭化水素系界面活性剤であることも好ましい。上記スルホン酸型炭化水素系界面活性剤としては、-SOH基、-OSOH基、又はこれらの基の水素原子が無機陽イオン(例えば、金属原子、アンモニウム等)で置換された基を有するものであれば限定されず、例えば、後述する特定の炭化水素系界面活性剤、その他の界面活性能を有する化合物の中から、-SOH基、-OSOH基、又はこれらの基の水素原子が無機陽イオンに置換された基を有する炭化水素系界面活性剤を使用することができる。
【0110】
上記炭化水素系界面活性剤は、乳化性能が良好となる点で、水溶性を示すことが好ましい。炭化水素系界面活性剤が水溶性を示すとは、85℃において炭化水素系界面活性剤が溶解する対水最大濃度が100質量ppm以上であることを意味する。上記対水最大濃度は500質量ppm以上であることが好ましく、1000質量ppm以上であることがより好ましく、2000質量ppm以上であることが更に好ましく、3000質量ppm以上であることが更により好ましく、5000質量ppm以上であることが更により好ましく、1質量%以上であることが更により好ましく、3質量%以上であることが更により好ましく、5質量%以上であることが更により好ましく、10質量%以上であることが特に好ましく、また、50質量%以下であってよい。
【0111】
工程(A)は、特定の炭化水素系界面活性剤の存在下、テトラフルオロエチレンのみの乳化重合、又は、テトラフルオロエチレンと上記テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーとの乳化重合を水性媒体中で行う工程、及び、上記工程において、特定の炭化水素系界面活性剤を連続的に添加する工程を含むことが好ましい。
【0112】
特定の炭化水素系界面活性剤を連続的に添加するとは、例えば、特定の炭化水素系界面活性剤を一括ではなく、経時的に、かつ、間断なく又は分割して、添加することである。特定の炭化水素系界面活性剤は、例えば、カルボニル基(但し、カルボキシ基中のカルボニル基を除く)を1つ以上有する炭化水素系界面活性剤、又は、カルボニル基(但し、カルボキシ基中のカルボニル基を除く)を1つ以上有する炭化水素系界面活性剤にラジカル処理または酸化処理を行った炭化水素系界面活性剤である。上記ラジカル処理とは、カルボニル基(但し、カルボキシ基中のカルボニル基を除く)を1つ以上有する炭化水素系界面活性剤にラジカルを発生させる処理であればよく、例えば、反応器に、脱イオン水、炭化水素系界面活性剤を加え、反応器を密閉し、系内を窒素で置換し、反応器を昇温・昇圧した後、重合開始剤を仕込み、一定時間撹拌した後、反応器を大気圧になるまで脱圧を行い、冷却を行う処理である。上記酸化処理とは、カルボニル基(但し、カルボキシ基中のカルボニル基を除く)を1つ以上有する炭化水素系界面活性剤に酸化剤を添加させる処理である。酸化剤としては、例えば、酸素、オゾン、過酸化水素水、酸化マンガン(IV)、過マンガン酸カリウム、二クロム酸カリウム、硝酸、二酸化硫黄などが挙げられる。上記製造方法により、従来の含フッ素界面活性剤を使用せずとも、従来の含フッ素界面活性剤を使用する製造方法と同等の分子量を有するPTFEを製造可能である。
【0113】
上記製造方法において、上記特定の炭化水素系界面活性剤を連続的に添加する工程は、水性媒体中に形成されるPTFEの固形分含有量が0.60質量%未満であるときに、炭化水素系界面活性剤を水性媒体中に添加し始めるものであることが好ましい。0.5質量%以下であるときに、上記特定の炭化水素系界面活性剤を水性媒体中に添加し始めるものであることが好ましい。上記特定の炭化水素系界面活性剤は、上記固形分含有量が0.3質量%以下であるときに添加し始めることがより好ましく、0.2質量%以下であるときに添加し始めることが更に好ましく、0.1質量%以下であるときに添加し始めることが更により好ましく、重合開始とともに、添加し始めることが特に好ましい。上記固形分含有量は、水性媒体及びPTFEの合計に対する濃度である。
【0114】
上記の特定の炭化水素系界面活性剤を連続的に添加する工程において、上記特定の炭化水素系界面活性剤の添加量は、水性媒体100質量%に対して0.01~10質量%であることが好ましい。より好ましい下限は0.05質量%であり、更に好ましい下限は0.1質量%であり、より好ましい上限は5質量%であり、更に好ましい上限は1質量%である。
【0115】
上記の特定の炭化水素系界面活性剤の存在下、テトラフルオロエチレンのみの乳化重合、又は、テトラフルオロエチレンと上記テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーとの乳化重合を水性媒体中で行う工程において、上記特定の炭化水素系界面活性剤の量は、多いことが好ましく、水性媒体100質量%に対して0.0001~10質量%であることが好ましい。より好ましい下限は0.001質量%であり、より好ましい上限は1質量%である。0.0001質量%未満であると、分散力が不充分となるおそれがあり、10質量%を超えると、量に見合った効果が得られず、却って重合速度の低下や反応停止が起こるおそれがある。上記特定の炭化水素系界面活性剤の量は、使用するモノマーの種類、目的とするPTFEの分子量等によって適宜決定される。
【0116】
上記特定の炭化水素系界面活性剤としては、式:R-X(式中、Rは、カルボニル基(但し、カルボキシ基中のカルボニル基を除く)を1つ以上有する炭素数1~2000のフッ素非含有有機基であり、Xは、-OSO、-COOX又は-SO(Xは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、RはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。))で示される界面活性剤、及び、後述する界面活性剤(e)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。Rは、炭素数が500以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、50以下であることが更に好ましく、30以下であることが更により好ましい。
上記特定の炭化水素系界面活性剤としては、下記式(a):
【化4】
(式中、R1aは、炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素原子に結合した水素原子がヒドロキシ基又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよく、炭素数が2以上の場合はカルボニル基を含んでもよく、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を形成していてもよい。R2a及びR3aは、独立に、単結合又は2価の連結基である。R1a、R2a及びR3aは、炭素数が合計で6以上である。Xは、H、金属原子、NR4a 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R4aはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。R1a、R2a及びR3aは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)で示される界面活性剤(a)、下記式(b):
【化5】
(式中、R1bは、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を形成していてもよい。R2b及びR4bは、独立に、H又は置換基である。R3bは、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基である。nは、1以上の整数である。p及びqは、独立に、0以上の整数である。Xは、H、金属原子、NR5b 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R5bはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。R1b、R2b、R3b及びR4bは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。Lは、単結合、-CO-B-*、-OCO-B-*、-CONR6b-B-*、-NR6bCO-B-*、又は、-CO-(但し、-CO-B-、-OCO-B-、-CONR6b-B-、-NRCO-B-に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1から10のアルキレン基であり、R6bは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1~4のアルキル基である。*は、式中の-OSOに結合する側を指す。)で示される界面活性剤(b)、下記式(c):
【化6】
(式中、R1cは、炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素原子に結合した水素原子がヒドロキシ基又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよく、炭素数が2以上の場合はカルボニル基を含んでもよく、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を形成していてもよい。R2c及びR3cは、独立に、単結合又は2価の連結基である。R1c、R2c及びR3cは、炭素数が合計で5以上である。Aは、-COOX又は-SO(Xは、H、金属原子、NR4c 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R4cはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。)である。R1c、R2c及びR3cは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)で示される界面活性剤(c)、下記式(d):
【化7】
(式中、R1dは、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでも環を形成していてもよい。R2d及びR4dは、独立に、H又は置換基である。R3dは、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基である。nは、1以上の整数である。p及びqは、独立に、0以上の整数である。Aは、-SO又は-COOX(Xは、H、金属原子、NR5d 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R5dはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。)である。R1d、R2d、R3d及びR4dは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。Lは、単結合、-CO-B-*、-OCO-B-*、-CONR6d-B-*、-NR6dCO-B-*、又は、-CO-(但し、-CO-B-、-OCO-B-、-CONR6d-B-、-NR6dCO-B-に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1から10のアルキレン基であり、R6dは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1~4のアルキル基である。*は、式中のAに結合する側を指す。)で示される界面活性剤(d)、及び、下記式(e):
【化8】
(式中、R1e~R5eはH又は一価の置換基を表し、但し、R1e及びR3eのうち、少なくとも1つは、一般式:-Y-R6eで示される基、R2e及びR5eのうち、少なくとも1つは、一般式:-X-Aで示される基、又は、一般式:-Y-R6eで示される基を表す。
また、Xは、各出現において同一又は異なって、2価の連結基、又は、結合手;
は、各出現において同一又は異なって、-COOM、-SO又は-OSO(Mは、H、金属原子、NR7e 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7eは、H又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基));
は、各出現において同一又は異なって、-S(=O)-、-O-、-COO-、-OCO-、-CONR8e-及び-NR8eCO-からなる群より選択される2価の連結基、又は、結合手、R8eはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基);
6eは、各出現において同一又は異なって、カルボニル基、エステル基、アミド基及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種を炭素-炭素原子間に含んでもよい炭素数2以上のアルキル基;
を表す。
1e~R5eのうち、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)で示される界面活性剤(e)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0117】
界面活性剤(a)について説明する。
【0118】
式(a)中、R1aは、炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3以上の環状のアルキル基である。
上記アルキル基は、炭素数が3以上の場合、2つの炭素原子間にカルボニル基(-C(=O)-)を含んでもよい。また、上記アルキル基は、炭素数が2以上の場合、上記アルキル基の末端に上記カルボニル基を含むこともできる。すなわち、CH-C(=O)-で示されるアセチル基等のアシル基も、上記アルキル基に含まれる。
また、上記アルキル基は、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含むこともできるし、環を形成することもできる。上記複素環としては、不飽和複素環が好ましく、含酸素不飽和複素環がより好ましく、例えば、フラン環等が挙げられる。R1aにおいて、2価の複素環が2つの炭素原子間に挿入されていてもよいし、2価の複素環が末端に位置して-C(=O)-と結合してもよいし、1価の複素環が上記アルキル基の末端に位置してもよい。
【0119】
なお、本明細書において、上記アルキル基の「炭素数」には、カルボニル基を構成する炭素原子の数及び上記複素環を構成する炭素原子の数も含めるものとする。例えば、CH-C(=O)-CH-で示される基は炭素数が3であり、CH-C(=O)-C-C(=O)-C-で示される基は炭素数が7であり、CH-C(=O)-で示される基は炭素数が2である。
【0120】
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(-OH)又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:-O-C(=O)-R101a(式中、R101aはアルキル基)で示される基が挙げられる。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0121】
式中、R2a及びR3aは、独立に、単結合又は2価の連結基である。
2a及びR3aは、独立に、単結合又は炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基又は炭素数3以上の環状のアルキレン基であることが好ましい。
2a及びR3aを構成する上記アルキレン基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
【0122】
上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(-OH)又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:-O-C(=O)-R102a(式中、R102aはアルキル基)で示される基が挙げられる。
上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキレン基であることが好ましい。
【0123】
1a、R2a及びR3aは、炭素数が合計で6以上である。合計の炭素数としては、8以上が好ましく、9以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、20以下が好ましく、18以下がより好ましく、15以下が更に好ましい。
1a、R2a及びR3aは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。
【0124】
式(a)中、Xは、H、金属原子、NR4a 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R4aはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。4つのR4aは、同一でも異なっていてもよい。R4aにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R4aとしては、H又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましく、H又は炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
としては、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR4a が好ましく、水に溶解しやすいことから、H、Na、K、Li又はNHがより好ましく、水に更に溶解しやすいことから、Na、K又はNHが更に好ましく、Na又はNHが特に好ましく、除去が容易であることから、NHが最も好ましい。XがNHであると、上記界面活性剤の水性媒体への溶解性が優れるとともに、PTFE中又は最終製品中に金属成分が残留しにくい。
【0125】
1aとしては、カルボニル基を含まない炭素数1~8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、カルボニル基を含まない炭素数3~8の環状のアルキル基、1~10個のカルボニル基を含む炭素数2~45の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、カルボニル基を含む炭素数3~45の環状のアルキル基、又は、炭素数が3~45の1価又は2価の複素環を含むアルキル基が好ましい。
【0126】
また、R1aとしては、下記式:
【化9】
(式中、n11aは0~10の整数であり、R11aは炭素数1~5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3~5の環状のアルキル基であり、R12aは炭素数0~3のアルキレン基である。n11aが2~10の整数である場合、R12aは各々同じであっても異なっていてもよい。)で示される基がより好ましい。
【0127】
11aとしては、0~5の整数が好ましく、0~3の整数がより好ましく、1~3の整数が更に好ましい。
【0128】
11aとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
11aとしての上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(-OH)又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。

上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:-O-C(=O)-R103a(式中、R103aはアルキル基)で示される基が挙げられる。
11aとしての上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0129】
12aは炭素数0~3のアルキレン基である。上記炭素数は1~3が好ましい。
12aとしての上記アルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状であってよい。
12aとしての上記アルキレン基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。R12aとしては、エチレン基(-C-)又はプロピレン基(-C-)がより好ましい。
12aとしての上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(-OH)又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:-O-C(=O)-R104a(式中、R104aはアルキル基)で示される基が挙げられる。
12aとしての上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキレン基であることが好ましい。
【0130】
2a及びR3aとしては、独立に、カルボニル基を含まない炭素数1以上のアルキレン基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~3のアルキレン基がより好ましく、エチレン基(-C-)又はプロピレン基(-C-)が更に好ましい。
【0131】
界面活性剤(a)としては、次の界面活性剤が例示できる。各式中、Xは上述のとおりである。
【0132】
【化10】
【0133】
【化11】
【0134】
【化12】
【0135】
【化13】
【0136】
【化14】
【0137】
【化15】
【0138】
【化16】
【0139】
【化17】
【0140】
界面活性剤(a)は、例えば、国際公開第2020/022355号に記載される製造方法により製造することができる。
【0141】
次に界面活性剤(b)について説明する。
【0142】
式(b)中、R1bは、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基である。
上記アルキル基は、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含むこともできるし、環を形成することもできる。上記複素環としては、不飽和複素環が好ましく、含酸素不飽和複素環がより好ましく、例えば、フラン環等が挙げられる。R1bにおいて、2価の複素環が2つの炭素原子間に挿入されていてもよいし、2価の複素環が末端に位置して-C(=O)-と結合してもよいし、1価の複素環が上記アルキル基の末端に位置してもよい。
【0143】
なお、本明細書において、上記アルキル基の「炭素数」には、上記複素環を構成する炭素原子の数も含めるものとする。
【0144】
1bとしての上記アルキル基が有してもよい上記置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3~10の環状のアルキル基、ヒドロキシ基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0145】
1bとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
【0146】
1bとしては、置換基を有してもよい炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3~10の環状のアルキル基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はカルボニル基を含まない炭素数3~10の環状のアルキル基がより好ましく、置換基を有さない炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、置換基を有さない炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更により好ましく、メチル基(-CH)又はエチル基(-C)が特に好ましく、メチル基(-CH)が最も好ましい。
【0147】
式(b)中、R2b及びR4bは、独立に、H又は置換基である。複数個のR2b及びR4bは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0148】
2b及びR4bとしての上記置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3~10の環状のアルキル基、ヒドロキシ基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0149】
2b及びR4bとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
【0150】
2b及びR4bとしての上記アルキル基としては、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はカルボニル基を含まない炭素数3~10の環状のアルキル基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、置換基を有さない炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、メチル基(-CH)又はエチル基(-C)が特に好ましい。
【0151】
2b及びR4bとしては、独立に、H又はカルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、H又は置換基を有さない炭素数1~3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、H、メチル基(-CH)又はエチル基(-C)が更により好ましく、Hが特に好ましい。
【0152】
式(b)中、R3bは、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基である。R3bは、複数個存在する場合、同一でも異なっていてもよい。
【0153】
上記アルキレン基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキレン基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
【0154】
上記アルキレン基としては、置換基を有してもよい炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基又は置換基を有してもよい炭素数3~10の環状のアルキレン基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基又はカルボニル基を含まない炭素数3~10の環状のアルキレン基が好ましく、置換基を有さない炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基がより好ましく、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-C-)、イソプロピレン基(-CH(CH)CH-)又はプロピレン基(-C-)が更に好ましい。
【0155】
1b、R2b、R3b及びR4bは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよいが、環を形成していないことが好ましい。
【0156】
式(b)中、nは、1以上の整数である。nとしては、1~40の整数が好ましく、1~30の整数がより好ましく、5~25の整数が更に好ましく、5~9、11~25の整数が特に好ましい。
【0157】
式(b)中、p及びqは、独立に、0以上の整数である。pとしては、0~10の整数が好ましく、0又は1がより好ましい。qとしては、0~10の整数が好ましく、0~5の整数がより好ましい。
【0158】
n、p及びqは、合計が5以上の整数であることが好ましい。n、p及びqの合計は8以上の整数であることがより好ましい。n、p及びqの合計はまた、60以下の整数であることが好ましく、50以下の整数であることがより好ましく、40以下の整数であることが更に好ましい。
【0159】
式(b)中、Xは、H、金属原子、NR5b 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R5bはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。4つのR5bは、同一でも異なっていてもよい。R5bにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R5bとしては、H又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましく、H又は炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。Xは金属原子又はNR5b (R5bは上記のとおり)であってよい。
としては、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR5b が好ましく、水に溶解しやすいことから、H、Na、K、Li又はNHがより好ましく、水に更に溶解しやすいことから、Na、K又はNHが更に好ましく、Na又はNHが特に好ましく、除去が容易であることから、NHが最も好ましい。XがNHであると、上記界面活性剤の水性媒体への溶解性が優れるとともに、PTFE中又は最終製品中に金属成分が残留しにくい。
【0160】
式(b)中、Lは、単結合、-CO-B-*、-OCO-B-*、-CONR6b-B-*、-NR6bCO-B-*、又は、-CO-(但し、-CO-B-、-OCO-B-、-CONR6b-B-、-NRCO-B-に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基であり、R6bは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1~4のアルキル基である。上記アルキレン基は、炭素数が1~5であることがより好ましい。また、上記Rは、H又はメチル基であることがより好ましい。*は、式中の-OSOに結合する側を指す。
【0161】
Lは単結合であることが好ましい。
【0162】
界面活性剤(b)としては、下記式:
【化18】
(式中、R1b、R2b、L、n及びXは、上記のとおり。)で示される化合物が好ましい。
【0163】
上記界面活性剤(b)は、H-NMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト2.0~5.0ppmの領域に観測される全ピーク強度の積分値が10%以上であることが好ましい。
【0164】
上記界面活性剤(b)は、H-NMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト2.0~5.0ppmの領域に観測される全ピーク強度の積分値が上記範囲内にあることが好ましい。この場合、上記界面活性剤は分子中にケトン構造を有することが好ましい。
【0165】
上記界面活性剤(b)において、上記積分値は、15以上がより好ましく、95以下が好ましく、80以下がより好ましく、70以下が更に好ましい。
【0166】
上記積分値は、重水溶媒にて室温下に測定する。重水を4.79ppmとする。
【0167】
界面活性剤(b)としては、例えば、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHOSONa、
(CHCC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
(CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
(CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHCHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHCHCHCHC(O)CHCHCHCHCHCHOSONa、
CHCHCHCHCHC(O)CHCHCHCHCHOSONa、
CHCHCHCHCHCHC(O)CHCHCHCHOSONa、
CHCHCHCHCHCHCHC(O)CHCHCHOSONa、
CHCHCHCHCHCHCHCHC(O)CHCHOSONa、
CHCHCHCHCHCHCHCHCHC(O)CHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHOCHCHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHC(O)NHCHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHNHC(O)CHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHC(O)OSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHC(O)OCHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHOC(O)CHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHOSOH、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHOSOLi、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHOSOK、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONH
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCH(CHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
(CHCC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
(CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
(CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHCHCHCHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHCHCHCHCHCHCHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHOSONa、
CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHC(O)CHCHCHCHOSONa、
CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOCHCHOSONa、
CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHC(O)NHCHCHOSONa、
CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHNHC(O)CHCHOSONa、
CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHC(O)OCHCHOSONa、
CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOC(O)CHCHOSONa、
CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHC(O)OSONa、
CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSOH、
CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSOLi、
CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSOK、
CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONH
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHOSONa等が挙げられる。
【0168】
界面活性剤(b)は、例えば、国際公開第2020/022355号に記載される製造方法により製造することができる。
【0169】
次に、界面活性剤(c)について説明する。
【0170】
式(c)中、R1cは、炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3以上の環状のアルキル基である。
上記アルキル基は、炭素数が3以上の場合、2つの炭素原子間にカルボニル基(-C(=O)-)を含んでもよい。また、上記アルキル基は、炭素数が2以上の場合、上記アルキル基の末端に上記カルボニル基を含むこともできる。すなわち、CH-C(=O)-で示されるアセチル基等のアシル基も、上記アルキル基に含まれる。
また、上記アルキル基は、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含むこともできるし、環を形成することもできる。上記複素環としては、不飽和複素環が好ましく、含酸素不飽和複素環がより好ましく、例えば、フラン環等が挙げられる。R1cにおいて、2価の複素環が2つの炭素原子間に挿入されていてもよいし、2価の複素環が末端に位置して-C(=O)-と結合してもよいし、1価の複素環が上記アルキル基の末端に位置してもよい。
【0171】
なお、本明細書において、上記アルキル基の「炭素数」には、カルボニル基を構成する炭素原子の数及び上記複素環を構成する炭素原子の数も含めるものとする。例えば、CH-C(=O)-CH-で示される基は炭素数が3であり、CH-C(=O)-C-C(=O)-C-で示される基は炭素数が7であり、CH-C(=O)-で示される基は炭素数が2である。
【0172】
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(-OH)又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:-O-C(=O)-R101c(式中、R101cはアルキル基)で示される基が挙げられる。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0173】
式(c)中、R2c及びR3cは、独立に、単結合又は2価の連結基である。
2c及びR3cは、独立に、単結合又は炭素数1以上の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基又は炭素数3以上の環状のアルキレン基であることが好ましい。
2c及びR3cを構成する上記アルキレン基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
【0174】
上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(-OH)又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキレン基であることが好ましい。
【0175】
1c、R2c及びR3cは、炭素数が合計で5以上である。合計の炭素数としては、7以上が好ましく、9以上がより好ましく、20以下が好ましく、18以下がより好ましく、15以下が更に好ましい。
1c、R2c及びR3cは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。
【0176】
式(c)中、式中、Aは、-COOX又は-SO(Xは、H、金属原子、NR4c 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R4cはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。)である。R4cにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R4cとしては、H又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましく、H又は炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
としては、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR4c が好ましく、水に溶解しやすいことから、H、Na、K、Li又はNHがより好ましく、水に更に溶解しやすいことから、Na、K又はNHが更に好ましく、Na又はNHが特に好ましく、除去が容易であることから、NHが最も好ましい。XがNHであると、上記界面活性剤の水性媒体への溶解性が優れるとともに、PTFE中又は最終製品中に金属成分が残留しにくい。
【0177】
1cとしては、カルボニル基を含まない炭素数1~8の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、カルボニル基を含まない炭素数3~8の環状のアルキル基、1~10個のカルボニル基を含む炭素数2~45の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、カルボニル基を含む炭素数3~45の環状のアルキル基、又は、炭素数が3~45の1価又は2価の複素環を含むアルキル基が好ましい。
【0178】
また、R1cとしては、下記式:
【化19】
(式中、n11cは0~10の整数であり、R11cは炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3~5の環状のアルキル基であり、R12cは炭素数0~3のアルキレン基である。n11cが2~10の整数である場合、R12cは各々同じであっても異なっていてもよい。)で示される基がより好ましい。
【0179】
11cとしては、0~5の整数が好ましく、0~3の整数がより好ましく、1~3の整数が更に好ましい。
【0180】
11cとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
11cとしての上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(-OH)又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:-O-C(=O)-R103c(式中、R103cはアルキル基)で示される基が挙げられる。
11cとしての上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0181】
12cは炭素数0~3のアルキレン基である。上記炭素数は1~3が好ましい。
12cとしての上記アルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状であってよい。
12cとしての上記アルキレン基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。R12cとしては、エチレン基(-C-)又はプロピレン基(-C-)がより好ましい。
12cとしての上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子が官能基により置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基(-OH)又はエステル結合を含む1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)により置換されていてもよいが、如何なる官能基によっても置換されていないことが好ましい。
上記エステル結合を含む1価の有機基としては、式:-O-C(=O)-R104c(式中、R104cはアルキル基)で示される基が挙げられる。
12cとしての上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキレン基であることが好ましい。
【0182】
2c及びR3cとしては、独立に、カルボニル基を含まない炭素数1以上のアルキレン基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~3のアルキレン基がより好ましく、エチレン基(-C-)又はプロピレン基(-C-)が更に好ましい。
【0183】
上記界面活性剤(c)としては、次の界面活性剤が例示できる。各式中、Aは上述のとおりである。
【0184】
【化20】
【0185】
【化21】
【0186】
【化22】
【0187】
【化23】
【0188】
【化24】
【0189】
【化25】
【0190】
【化26】
【0191】
【化27】
【0192】
界面活性剤(c)は、例えば、国際公開第2020/022355号に記載される製造方法により製造することができる。
【0193】
次に、界面活性剤(d)について説明する。
【0194】
式(d)中、R1dは、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基である。
上記アルキル基は、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含むこともできるし、環を形成することもできる。上記複素環としては、不飽和複素環が好ましく、含酸素不飽和複素環がより好ましく、例えば、フラン環等が挙げられる。R1dにおいて、2価の複素環が2つの炭素原子間に挿入されていてもよいし、2価の複素環が末端に位置して-C(=O)-と結合してもよいし、1価の複素環が上記アルキル基の末端に位置してもよい。
【0195】
なお、本明細書において、上記アルキル基の「炭素数」には、上記複素環を構成する炭素原子の数も含めるものとする。
【0196】
1dとしての上記アルキル基が有してもよい上記置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3~10の環状のアルキル基、ヒドロキシ基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0197】
1dとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
【0198】
1dとしては、置換基を有してもよい炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3~10の環状のアルキル基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はカルボニル基を含まない炭素数3~10の環状のアルキル基がより好ましく、置換基を有さない炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、置換基を有さない炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更により好ましく、メチル基(-CH)又はエチル基(-C)が特に好ましく、メチル基(-CH)が最も好ましい。
【0199】
式(d)中、R2d及びR4dは、独立に、H又は置換基である。複数個のR2d及びR4dは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0200】
2d及びR4dとしての上記置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3~10の環状のアルキル基、ヒドロキシ基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0201】
2d及びR4dとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
【0202】
2d及びR4dとしての上記アルキル基としては、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はカルボニル基を含まない炭素数3~10の環状のアルキル基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、置換基を有さない炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、メチル基(-CH)又はエチル基(-C)が特に好ましい。
【0203】
2d及びR4dとしては、独立に、H又はカルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、H又は置換基を有さない炭素数1~3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、H、メチル基(-CH)又はエチル基(-C)が更により好ましく、Hが特に好ましい。
【0204】
式(d)中、R3dは、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基である。R3dは、複数個存在する場合、同一でも異なっていてもよい。
【0205】
上記アルキレン基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキレン基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
【0206】
上記アルキレン基としては、置換基を有してもよい炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基又は置換基を有してもよい炭素数3~10の環状のアルキレン基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基又はカルボニル基を含まない炭素数3~10の環状のアルキレン基が好ましく、置換基を有さない炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基がより好ましく、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-C-)、イソプロピレン基(-CH(CH)CH-)又はプロピレン基(-C-)が更に好ましい。
【0207】
1d、R2d、R3d及びR4dは、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。
【0208】
式(d)中、nは、1以上の整数である。nとしては、1~40の整数が好ましく、1~30の整数がより好ましく、5~25の整数が更に好ましい。
【0209】
式(d)中、p及びqは、独立に、0以上の整数である。pとしては、0~10の整数が好ましく、0又は1がより好ましい。qとしては、0~10の整数が好ましく、0~5の整数がより好ましい。
【0210】
n、p及びqは、合計が6以上の整数であることが好ましい。n、p及びqの合計は8以上の整数であることがより好ましい。n、p及びqの合計はまた、60以下の整数であることが好ましく、50以下の整数であることがより好ましく、40以下の整数であることが更に好ましい。
【0211】
式(d)中、Aは、-SO又は-COOX(Xは、H、金属原子、NR5d 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R5dはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。)である。R5dにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R5dとしては、H又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましく、H又は炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。Xは金属原子又はNR5d (R5dは上記のとおり)であってよい。
としては、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR5d が好ましく、水に溶解しやすいことから、H、Na、K、Li又はNHがより好ましく、水に更に溶解しやすいことから、Na、K又はNHが更に好ましく、Na又はNHが特に好ましく、除去が容易であることから、NHが最も好ましい。XがNHであると、上記界面活性剤の水性媒体への溶解性が優れるとともに、PTFE中又は最終製品中に金属成分が残留しにくい。
【0212】
式(d)中、Lは、単結合、-CO-B-*、-OCO-B-*、-CONR6d-B-*、-NR6dCO-B-*、又は、-CO-(但し、-CO-B-、-OCO-B-、-CONR6d-B-、-NR6dCO-B-に含まれるカルボニル基を除く。)であり、Bは単結合もしくは置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基であり、R6dは、H又は置換基を有していてもよい、炭素数1~4のアルキル基である。上記アルキレン基は、炭素数が1~5であることがより好ましい。また、上記R6dは、H又はメチル基であることがより好ましい。*は、式中のAに結合する側を指す。
【0213】
Lは単結合であることが好ましい。
【0214】
上記界面活性剤は、H-NMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト2.0~5.0ppmの領域に観測される全ピーク強度の積分値が10以上であることが好ましい。
【0215】
上記界面活性剤は、H-NMRスペクトルにおいて、ケミカルシフト2.0~5.0ppmの領域に観測される全ピーク強度の積分値が上記範囲内にあることが好ましい。この場合、上記界面活性剤は分子中にケトン構造を有することが好ましい。
【0216】
上記界面活性剤において、上記積分値は、15以上がより好ましく、95以下が好ましく、80以下がより好ましく、70以下が更に好ましい。
【0217】
上記積分値は、重水溶媒にて室温下に測定する。重水を4.79ppmとする。
【0218】
上記界面活性剤(d)としては、例えば、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCOOK、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCOONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCOONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCOONa、
CHC(O)CHCHCHCHCOONa、
CHC(O)CHCHCHCOONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCOONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCOONa、
(CHCC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCOONa、
(CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCOONa、
(CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCOONa、
CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCOONa、
CHCHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCOONa、
CHCHCHCHC(O)CHCHCHCHCHCOONa、
CHCHCHCHCHC(O)CHCHCHCHCOONa、
CHCHCHCHCHCHC(O)CHCHCHCOONa、
CHCHCHCHCHCHCHC(O)CHCHCOONa、
CHCHCHCHCHCHCHCHC(O)CHCOONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHOCHCHCOONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHC(O)NHCHCOOK、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHNHC(O)CHCOOK、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHC(O)OCHCOONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHOC(O)CHCOONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHC(O)COONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHC(O)COOH、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHC(O)COOLi、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHC(O)COONH
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHC(O)COONa、CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHC(CHCOOK、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHSONa、
(CHCC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHSONa、
(CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHSONa、
(CHCHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHSONa、
CHC(O)CHCHCHSONa、
CHC(O)CHCHSONa、
CHC(O)CHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHOCHCHCHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHC(O)NHCHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHNHC(O)CHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHC(O)SONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHC(O)OCHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHOC(O)CHSONa、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHSOH、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHSOK、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHSOLi、
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHSONH
CHC(O)CHCHCHCHCHCHCHCHC(CHSONa
等が挙げられる。
【0219】
界面活性剤(d)は、例えば、国際公開第2020/022355号に記載される製造方法により製造することができる。
【0220】
次に、界面活性剤(e)について説明する。
【0221】
式(e)中、R1e~R5eはH又は一価の置換基を表し、但し、R1e及びR3eのうち、少なくとも1つは、一般式:-Y-R6eで示される基、R2e及びR5eのうち、少なくとも1つは、一般式:-X-Aで示される基、又は、一般式:-Y-R6eで示される基を表す。R1e~R5eのうち、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。
【0222】
1eとしての上記アルキル基が有してもよい上記置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3~10の環状のアルキル基、ヒドロキシ基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0223】
1eとしての上記アルキル基は、カルボニル基を含まないことが好ましい。
上記アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基は、如何なる置換基も有していないことが好ましい。
【0224】
1eとしては、置換基を有してもよい炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数3~10の環状のアルキル基が好ましく、カルボニル基を含まない炭素数1~10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はカルボニル基を含まない炭素数3~10の環状のアルキル基がより好ましく、置換基を有さない炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、置換基を有さない炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更により好ましく、メチル基(-CH)又はエチル基(-C)が特に好ましく、メチル基(-CH)が最も好ましい。
【0225】
一価の置換基としては、一般式:-Y-R6eで示される基、一般式:-X-Aで示される基、-H、置換基を有していてもよいC1-20のアルキル基、-NH、-NHR9e(R9eは有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))、-OH、-COOR9e(R9eは有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))又は-OR9e(R9eは有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))が好ましい。上記アルキル基の炭素数は1~10が好ましい。
【0226】
9eとしては、C1-10のアルキル基又はC1-10のアルキルカルボニル基が好ましく、C1-4のアルキル基又はC1-4のアルキルカルボニル基がより好ましい。
【0227】
式中、Xは、各出現において同一又は異なって、2価の連結基、又は、結合手を表す。
6eがカルボニル基、エステル基、アミド基及びスルホニル基のいずれをも含まない場合は、Xはカルボニル基、エステル基、アミド基及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種を含む2価の連結基であることが好ましい。
【0228】
としては、-CO-、-S(=O)-、-O-、-COO-、-OCO-、-S(=O)-O-、-O-S(=O)-、-CONR8e-及び-NR8eCO-からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む2価の連結基、C1-10のアルキレン基、又は、結合手が好ましい。R8eはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)を表す。
【0229】
8eにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R8eとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましく、Hが更により好ましい。
【0230】
式(e)中、Aは、各出現において同一又は異なって、-COOM、-SO又は-OSO(Mは、H、金属原子、NR7e 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7eはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。4つのR7eは、同一でも異なっていてもよい。)を表す。式(e)において、Aは-COOMであることが好適な態様の一つである。
【0231】
7eにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R7eとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
【0232】
としては、H、金属原子又はNR7e が好ましく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR7e がより好ましく、H、Na、K、Li又はNHが更に好ましく、Na、K又はNHが更により好ましく、Na又はNHが特に好ましく、NHが最も好ましい。
【0233】
式(e)中、Yは、各出現において同一又は異なって、-S(=O)-、-O-、-COO-、-OCO-、-CONR8e-及び-NR8eCO-からなる群より選択される2価の連結基、又は、結合手、R8eはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)を表す。
【0234】
としては、結合手、-O-、-COO-、-OCO-、-CONR8e-及び-NR8eCO-からなる群より選択される2価の連結基が好ましく、結合手、-COO-及び-OCO-からなる群より選択される2価の連結基がより好ましい。
【0235】
8eにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R8eとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましく、Hが更により好ましい。
【0236】
式(e)中、R6eは、各出現において同一又は異なって、カルボニル基、エステル基、アミド基及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種を炭素-炭素原子間に含んでもよい炭素数2以上のアルキル基を表す。上記R6eの有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)の炭素数は、2~20が好ましく、2~10がより好ましい。
【0237】
6eのアルキル基は、炭素-炭素原子間にカルボニル基、エステル基、アミド基及びスルホニル基からなる群より選択される少なくとも1種を1又は2以上含むことができるが、上記アルキル基の末端にこれらの基を含まない。上記R6eのアルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0238】
6eとしては、
一般式:-R10e-CO-R11eで示される基、
一般式:-R10e-COO-R11eで示される基、
一般式:-R11eで示される基、
一般式:-R10e-NR8eCO-R11eで示される基、又は、
一般式:-R10e-CONR8e-R11eで示される基、
(式中、R8eはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)を表す。R10eはアルキレン基、R11eは置換基を有してもよいアルキル基)が好ましい。
6eとしては、一般式:-R10e-CO-R11eで示される基がより好ましい。
【0239】
8eにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R8eとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましく、Hが更により好ましい。
【0240】
10eのアルキレン基の炭素数は、1以上が好ましく、3以上がより好ましく、20以下が好ましく、12以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、8以下が特に好ましい。また、R10eのアルキレン基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、3~10が更に好ましい。
【0241】
11eのアルキル基の炭素数は、1~20であってよく、1~15が好ましく、1~12がより好ましく、1~10が更に好ましく、1~8が更により好ましく、1~6が殊更好ましく、1~3が尚更に好ましく、1又は2が特に好ましく、1が最も好ましい。また、上記R11eのアルキル基は、1級炭素、2級炭素、3級炭素のみで構成されていることが好ましく、1級炭素、2級炭素のみで構成されるのが特に好ましい。すなわち、R11eとしては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が好ましく、特にメチル基が最も好ましい。
【0242】
式(e)において、R2e及びR5eのうち、少なくとも1つは、一般式:-X-Aで示される基であり、該Aは-COOMであることも好適な態様の一つである。
【0243】
界面活性剤(e)としては、一般式(e-1)で示される化合物、一般式(e-2)で示される化合物又は一般式(e-3)で示される化合物が好ましく、一般式(e-1)で示される化合物又は一般式(e-2)で示される化合物がより好ましい。
【0244】
一般式(e-1):
【化28】
(式中、R3e~R6e、X、A及びYは、上記のとおり。)
【0245】
一般式(e-2):
【化29】
(式中、R4e~R6e、X、A及びYは、上記のとおり。)
【0246】
一般式(e-3):
【化30】
(式中、R2e、R4e~R6e、X、A及びYは、上記のとおり。)
【0247】
一般式:-X-Aで示される基としては、
-COOM
-R12eCOOM
-SO
-OSO
-R12eSO
-R12eOSO
-OCO-R12e-COOM
-OCO-R12e-SO
-OCO-R12e-OSO
-COO-R12e-COOM
-COO-R12e-SO
-COO-R12e-OSO
-CONR8e-R12e-COOM
-CONR8e-R12e-SO
-CONR8e-R12e-OSO
-NR8eCO-R12e-COOM
-NR8eCO-R12e-SO
-NR8eCO-R12e-OSO
-OS(=O)-R12e-COOM
-OS(=O)-R12e-SO、又は
-OS(=O)-R12e-OSO
(式中、R8e及びMは、上記のとおり。R12eはC1-10のアルキレン基。)が好ましい。
上記R12eのアルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキレン基であることが好ましい。
【0248】
一般式:-Y-R6eで示される基としては、
一般式:-R10e-CO-R11eで示される基、
一般式:-OCO-R10e-CO-R11eで示される基、
一般式:-COO-R10e-CO-R11eで示される基、
一般式:-OCO-R10e-COO-R11eで示される基、
一般式:-COO-R11eで示される基、
一般式:-NR8eCO-R10e-CO-R11eで示される基、又は、
一般式:-CONR8e-R10e-NR8eCO-R11eで示される基
(式中、R8e、R10e及びR11eは上記のとおり。)が好ましい。
【0249】
式中、R4e及びR5eとしては、独立に、H又はC1-4のアルキル基が好ましい。
上記R4e及びR5eのアルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0250】
一般式(e-1)におけるR3eとしては、H又は置換基を有していてもよいC1-20のアルキル基が好ましく、H又は置換基を有していないC1-20のアルキル基がより好ましく、Hが更に好ましい。
上記R3eのアルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0251】
一般式(e-3)におけるR2eとしては、H、OH又は置換基を有していてもよいC1-20のアルキル基が好ましく、H、OH又は置換基を有していないC1-20のアルキル基がより好ましく、H又はOHが更に好ましい。
上記R2eのアルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の75%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、50%以下がハロゲン原子により置換されていてもよく、25%以下がハロゲン原子により置換されていてもよいが、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を含まない非ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0252】
界面活性剤(e)は、公知の製造方法により製造することができる。
【0253】
上記特定の炭化水素系界面活性剤は、カルボン酸型炭化水素系界面活性剤であることも好ましい。上記カルボン酸型炭化水素系界面活性剤としては、カルボキシ基(-COOH)又はカルボキシ基の水素原子が無機陽イオン(例えば、金属原子、アンモニウム等)で置換された基を有するものであれば限定されず、例えば、上述した特定の炭化水素系界面活性剤の中から、カルボキシ基又はカルボキシ基の水素原子が無機陽イオンに置換された基を有する炭化水素系界面活性剤を使用することができる。
上記カルボン酸型炭化水素系界面活性剤は、炭素原子に結合した水素原子のうち、フッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0254】
上記カルボン酸型炭化水素系界面活性剤として好ましくは、上記式(c)で示される界面活性剤(c)、及び、上記式(d)で示される界面活性剤(d)からなる群より選択される少なくとも1種のうち、カルボキシ基(-COOH)又はカルボキシ基の水素原子が無機陽イオン(例えば、金属原子、アンモニウム等)で置換された基を有するものが好ましい。
【0255】
上記特定の炭化水素系界面活性剤は、スルホン酸型炭化水素系界面活性剤であることもまた好ましい。上記スルホン酸型炭化水素系界面活性剤としては、-SOH基、-OSOH基、又はこれらの基の水素原子が無機陽イオン(例えば、金属原子、アンモニウム等)で置換された基を有するものであれば限定されず、例えば、上述した特定の炭化水素系界面活性剤の中から、-SOH基、-OSOH基、又はこれらの基の水素原子が無機陽イオンに置換された基を有する炭化水素系界面活性剤を使用することができる。
上記スルホン酸型炭化水素系界面活性剤は、炭素原子に結合した水素原子のうち、フッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0256】
本開示のPTFE組成物は、上記特定の炭化水素系界面活性剤を少なくとも1種用いれば、効率よく製造することが可能である。また、本開示のPTFE組成物は、上記特定の炭化水素系界面活性剤を2種以上同時に用いて製造してもよいし、揮発性を有するもの又はPTFEからなる成形体等に残存してもよいものであれば、上記特定の炭化水素系界面活性剤以外のその他の界面活性能を有する化合物を同時に使用して製造してもよい。
【0257】
上記その他の界面活性能を有する化合物としては、例えば、特表2013-542308号公報、特表2013-542309号公報、特表2013-542310号公報に記載されているもの等を使用することができる。
【0258】
その他の界面活性能を有する化合物は、同じ分子上に親水性部分及び疎水性部分を有する界面活性剤、例えば、炭化水素系界面活性剤(ただし、上記特定の炭化水素系界面活性剤を除く)であってよい。これらは、カチオン性、非イオン性またはアニオン性であってよい。
上記化合物は、炭素原子に結合した水素原子のうち、フッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0259】
カチオン性界面活性剤は、通常、アルキル化臭化アンモニウムなどのアルキル化ハロゲン化アンモニウムなどの正に帯電した親水性部分と、長鎖脂肪酸などの疎水性部分を有する。
上記カチオン性界面活性剤は、炭素原子に結合した水素原子のうち、フッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0260】
アニオン性界面活性剤は、通常、カルボン酸塩、スルホン酸塩又は硫酸塩などの親水性部分と、アルキルなどの長鎖炭化水素部分である疎水性部分とを有する。
上記アニオン性界面活性剤は、炭素原子に結合した水素原子のうち、フッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0261】
非イオン性界面活性剤は、通常、帯電した基を含まず、長鎖炭化水素である疎水性部分を有する。非イオン性界面活性剤の親水性部分は、エチレンオキシドとの重合から誘導されるエチレンエーテルの鎖などの水溶性官能基を含む。
上記非イオン性界面活性剤は、炭素原子に結合した水素原子のうち、フッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0262】
非イオン性界面活性剤の例
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、グリセロールエステル、それらの誘導体。
【0263】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等。
【0264】
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの具体例:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等。
【0265】
ポリオキシエチレンアルキルエステルの具体例:ポリエチレングリコールモノラウリレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート等。
【0266】
ソルビタンアルキルエステルの具体例:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等。
【0267】
ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルの具体例:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等。
【0268】
グリセロールエステルの具体例:モノミリスチン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロール等。
【0269】
上記誘導体の具体例:ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニル-ホルムアルデヒド凝縮物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート等。
【0270】
上記エーテル及びエステルは、10~18のHLB値を有してよい。
【0271】
非イオン性界面活性剤としては、Dow Chemical Company製のTriton(登録商標)Xシリーズ(X15、X45、X100等)、Tergitol(登録商標)15-Sシリーズ、Tergitol(登録商標)TMNシリーズ(TMN-6、TMN-10、TMN-100等)、Tergitol(登録商標)Lシリーズ、BASF製のPluronic(登録商標)Rシリーズ(31R1、17R2、10R5、25R4(m~22、n~23))、Iconol(登録商標)TDAシリーズ(TDA-6、TDA-9、TDA-10)等が挙げられる。
【0272】
アニオン性の炭化水素系界面活性剤としては、Resolution Performance Products社製のVersatic(登録商標)10、BASF社製のAvanel Sシリーズ(S-70、S-74等)等が挙げられる。
【0273】
その他の界面活性能を有する化合物としては、R-L-M(式中、Rが、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでもよいし、環を形成していてもよい。Lが、-ArSO 、-SO 、-SO-、-PO 又は-COOであり、Mが、H、金属原子、NR (Rは、同一でも異なっていてもよく、H又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基))、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。-ArSO は、アリールスルホン酸塩である。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。Rは、H又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましい。
具体的には、ラウリル酸に代表されるようなCH-(CH-L-M(式中、nが、6~17の整数である。LおよびMが、上記と同じ)によって表されるものが挙げられる。
Rが、12~16個の炭素原子を有するアルキル基であり、L-Mが、硫酸塩又はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であるものの混合物も使用できる。
その他の界面活性能を有する化合物としては、R(-L-M)(式中、Rが、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキレン基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでもよいし、環を形成していてもよい。Lが、-ArSO 、-SO 、-SO-、-PO 又は-COOであり、Mが、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、Rは、H又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)、-ArSO は、アリールスルホン酸塩である。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
その他の界面活性能を有する化合物としては、R(-L-M)(式中、Rが、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキリジン基、又は、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキリジン基であり、炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでもよいし、環を形成していてもよい。Lが、-ArSO 、-SO 、-SO-、-PO 又は-COOであり、Mが、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、RはH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。-ArSO は、アリールスルホン酸塩である。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
【0274】
シロキサン炭化水素系界面活性剤としては、Silicone Surfactants,R.M.Hill,Marcel Dekker,Inc.,ISBN:0-8247-00104に記載されているものが挙げられる。シロキサン界面活性剤の構造は、明確な疎水性部分および親水性部分を含む。疎水性部分は、1つ以上のジヒドロカルビルシロキサン単位を含み、ここで、シリコーン原子上の置換基が、完全に炭化水素である。
ヒドロカルビル基の炭素原子が、フッ素などのハロゲンによって置換され得る場合に、水素原子によって完全に置換されるという意味では、これらのシロキサン界面活性剤は、炭化水素界面活性剤とみなすこともでき、すなわち、ヒドロカルビル基の炭素原子上の一価置換基は水素である。
上記シロキサン界面活性剤は、炭素原子に結合した水素原子のうち、フッ素原子で置換された割合が50%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、0%(フッ素原子で全く置換されていない)が最も好ましい。
【0275】
シロキサン炭化水素系界面活性剤の親水性部分は、スルフェート、スルホネート、ホスホネート、リン酸エステル、カルボキシレート、カーボネート、スルホサクシネート、タウレート(遊離酸、塩またはエステルとしての)、ホスフィンオキシド、ベタイン、ベタインコポリオール、第4級アンモニウム塩などのイオン性基を含む1つ以上の極性部分を含んでもよい。イオン性疎水性部分は、イオン的に官能化されたシロキサングラフトも含み得る。
このようなシロキサン炭化水素系界面活性剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン-グラフト-(メタ)アクリル酸塩、ポリジメチルシロキサン-グラフト-ポリアクリレート塩およびポリジメチルシロキサングラフト化第4級アミンが挙げられる。
シロキサン界面活性剤の親水性部分の極性部分は、ポリエチレンオキシド(PEO)、および混合されたポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドポリエーテル(PEO/PPO)などのポリエーテル;単糖類および二糖類;およびピロリジノンなどの水溶性複素環によって形成される非イオン性基を含み得る。エチレンオキシド対プロピレンオキシド(EO/PO)の比率は、混合されたポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドポリエーテルにおいて変化され得る。
【0276】
シロキサン炭化水素系界面活性剤の親水性部分は、イオン性部分と非イオン性部分との組合せも含み得る。このような部分としては、例えば、イオン的に末端官能化されたまたはランダムに官能化されたポリエーテルまたはポリオールが挙げられる。本開示の実施に好ましいのは、非イオン性部分を有するシロキサン、すなわち、非イオン性シロキサン炭化水素系界面活性剤である。
【0277】
シロキサン炭化水素系界面活性剤の構造の疎水性および親水性部分の配置は、ジブロックポリマー(AB)、トリブロックポリマー(ABA)(ここで、「B」は、分子のシロキサン部分を表す)、またはマルチブロックポリマーの形態をとってもよい。あるいは、シロキサン炭化水素系界面活性剤は、グラフトポリマーを含んでいてもよい。
【0278】
シロキサン炭化水素系界面活性剤については、米国特許第6,841,616号明細書にも開示されている。
【0279】
シロキサンベースのアニオン性炭化水素系界面活性剤としては、Lubrizol Advanced Materials,Inc.社製のNoveon(登録商標)Consumer Specialtiesから入手可能なSilSenseTMPE-100シリコーン、SilSenseTMCA-1シリコーン等が挙げられる。
【0280】
アニオン性の炭化水素系界面活性剤としては、Akzo Nobel Surface Chemistry LLC社製のスルホサクシネート界面活性剤Lankropol(登録商標)K8300等も挙げられる。
スルホサクシネート界面活性剤としては、スルホコハク酸ジイソデシルNa塩、(Clariant社製のEmulsogen(登録商標)SB10)、スルホコハク酸ジイソトリデシルNa塩(Cesapinia Chemicals社製のPolirol(登録商標)TR/LNA)等が挙げられる。
【0281】
その他の界面活性能を有する化合物としては、Omnova Solutions,Inc.社製のPolyFox(登録商標)界面活性剤(PolyFoxTMPF-156A、PolyFoxTMPF-136A等)も挙げられる。
【0282】
その他の界面活性能を有する化合物としては、アニオン性の炭化水素系界面活性剤であることが好ましい。アニオン性の炭化水素系界面活性剤としては上述したものを採用できるが、例えば、下記の炭化水素系界面活性剤を好適に採用できる。
【0283】
上記アニオン性の炭化水素系界面活性剤としては、例えば、下記式(α):
100-COOM (α)
(式中、R100は、1個以上の炭素原子を含有する1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。Mは、H、金属原子、NR101 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R101はH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。)で示される化合物(α)が挙げられる。R101の有機基としてはアルキル基が好ましい。R101としてはH又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましく、H又は炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。
界面活性能の観点から、R100の炭素数は2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。また、水溶性の観点から、R100の炭素数は、29個以下であることが好ましく、23個以下がより好ましい。
上記Mの金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。Mとしては、H、金属原子又はNR101 が好ましく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR101 がより好ましく、H、Na、K、Li又はNHが更に好ましく、Na、K又はNHが更により好ましく、Na又はNHが特に好ましく、NHが最も好ましい。
【0284】
上記化合物(α)としては、R102-COOM(式中、R102が、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキレン基又はアルケニレン基、若しくは、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基、アルケニル基、アルキレン基又はアルケニレン基であり、これらはエーテル結合を含んでもよい。炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでもよいし、環を形成していてもよい。Mは上記と同じ。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
具体的には、CH-(CH-COOM(式中、nが、2~28の整数である。Mは上記と同じ)によって表されるものが挙げられる。
【0285】
上記化合物(α)は、乳化安定性の観点で、カルボニル基(但し、カルボキシ基中のカルボニル基を除く)を含まないものであってもよい。
上記カルボニル基を含まない炭化水素含有界面活性剤としては、例えば、下記式(A1):
103-COO-M (A1)
(式中、R103は、6~17個の炭素原子を含有するアルキル基、アルケニル基、アルキレン基又はアルケニレン基であり、これらはエーテル結合を含んでもよい。Mは、H、金属原子、NR101 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。R101は、同一又は異なって、H又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。)の化合物が好ましく例示される。
上記式(A1)において、R103は、アルキル基又はアルケニル基(これらはエーテル基を含んでいてもよい)であることが好ましい。上記R103におけるアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。上記R103の炭素数は限定されないが、例えば、2~29である。
【0286】
上記アルキル基が直鎖状である場合、R103の炭素数は3~29であることが好ましく、5~23であることがより好ましい。上記アルキル基が分岐状である場合、R103の炭素数は5~35であることが好ましく、11~23であることがより好ましい。
上記アルケニル基が直鎖状である場合、R103の炭素数は2~29であることが好ましく、9~23であることがより好ましい。上記アルケニル基が分岐状である場合、R103の炭素数は2~29であることが好ましく、9~23であることがより好ましい。
【0287】
上記アルキル基及びアルケニル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ビニル基等が挙げられる。
【0288】
上記化合物(α)としては、例えば、ブチル酸、バレリアン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、(9,12,15)-リノレン酸、(6,9,12)リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、8、11-エイコサジエン酸、ミード酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ピノレン酸、α-エレオステアリン酸、β-エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸、及びこれらの塩が挙げられる。
特に、ラウリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、及び、これらの塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
上記塩としては、カルボキシ基の水素が上述した式Mの金属原子、NR11 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムであるものが挙げられるが特に限定されない。
【0289】
上記アニオン性の炭化水素系界面活性剤としては、また、例えば、下記式(β):
100-SOM (β)
(式中、R100は、1個以上の炭素原子を含有する1価の有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。Mは、H、金属原子、NR101 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R101はH又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)であり、同一でも異なっていてもよい。)で示される化合物(β)も挙げられる。R101の有機基としてはアルキル基が好ましい。R101としてはH又は炭素数1~10の有機基が好ましく、H又は炭素数1~4の有機基がより好ましく、H又は炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。
界面活性能の観点から、R100の炭素数は2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。また、水溶性の観点から、R100の炭素数は、29個以下であることが好ましく、23個以下がより好ましい。
上記Mの金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。Mとしては、H、金属原子又はNR101 が好ましく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR101 がより好ましく、H、Na、K、Li又はNHが更に好ましく、Na、K又はNHが更により好ましく、Na又はNHが特に好ましく、NHが最も好ましい。
【0290】
上記化合物(β)としては、R102-SOM(式中、R102が、置換基を有してもよい炭素数1以上の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキレン基又はアルケニレン基、若しくは、置換基を有してもよい炭素数3以上の環状のアルキル基、アルケニル基、アルキレン基又はアルケニレン基であり、これらはエーテル結合を含んでもよい。炭素数が3以上の場合は1価又は2価の複素環を含んでもよいし、環を形成していてもよい。Mは上記と同じ。)によって表されるアニオン性界面活性剤も挙げられる。
具体的には、CH-(CH-SOM(式中、nが、2~28の整数である。Mは上記と同じ)によって表されるものが挙げられる。
【0291】
上記化合物(β)は、乳化安定性の観点で、カルボニル基(但し、カルボキシ基中のカルボニル基を除く)を含まないものであってもよい。
上記カルボニル基を含まない炭化水素含有界面活性剤としては、例えば、下記式(B1):
103-SO-M (B1)
(式中、R103は、6~17個の炭素原子を含有するアルキル基、アルケニル基、アルキレン基又はアルケニレン基であり、これらはエーテル結合を含んでもよい。Mは、H、金属原子、NR101 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムである。R101は、同一又は異なって、H又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である。)の化合物が好ましく例示される。
上記式(B1)において、R103は、アルキル基又はアルケニル基(これらはエーテル基を含んでいてもよい)であることが好ましい。上記R103におけるアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。上記R103の炭素数は限定されないが、例えば、2~29である。
【0292】
上記アルキル基が直鎖状である場合、R103の炭素数は3~29であることが好ましく、5~23であることがより好ましい。上記アルキル基が分岐状である場合、R103の炭素数は5~35であることが好ましく、11~23であることがより好ましい。
上記アルケニル基が直鎖状である場合、R103の炭素数は2~29であることが好ましく、9~23であることがより好ましい。上記アルケニル基が分岐状である場合、R103の炭素数は2~29であることが好ましく、9~23であることがより好ましい。
【0293】
上記アルキル基及びアルケニル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ビニル基等が挙げられる。
【0294】
上記化合物(β)としては、例えば、脂肪族系、不飽和脂肪族系、芳香族系等のスルホン酸、脂肪族系、不飽和脂肪族系、芳香族系等の硫酸エステル、及びこれらの塩が挙げられる。
上記スルホン酸としては、例えば、1-ヘキサンスルホン酸、1-オクタンスルホン酸、1-デカンスルホン酸、1-ドデカンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、DBS、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸が挙げられ、上記硫酸エステルとしては、例えば、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルファスルホ脂肪酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、ラウリル硫酸、ミリスチル硫酸、ラウレス硫酸、ポリオキシエチレンアルキルフェノールスルホン酸が挙げられる。
上記化合物(β)としては、特に、飽和脂肪族、芳香族の硫酸エステル、及び、これらの塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルファスルホ脂肪酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、ラウリル硫酸、ミリスチル硫酸、ラウレス硫酸、ポリオキシエチレンアルキルフェノールスルホン酸、及び、これらの塩からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
上記塩としては、スルホン酸基の水素が上述した式Mの金属原子、NR11 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムであるものが挙げられるが特に限定されない。
【0295】
上記アニオン性の炭化水素系界面活性剤としては、下記式(1-0A):
【化31】
(式中、R1A~R5Aは、H、炭素-炭素原子間にエステル基を含んでもよい1価の炭化水素基、又は、一般式:-X-Aで示される基である。但し、R2A及びR5Aの少なくとも1つは、一般式:-X-Aで示される基を表す。
は、各出現において同一又は異なって、2価の炭化水素基、又は、結合手;
Aは、各出現において同一又は異なって、-COOM(Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、Rは、H又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基));
1A~R5Aのうち、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)で示される界面活性剤(1-0A)等も挙げられる。
【0296】
一般式(1-0A)中、R1A~R5Aにおいて、炭素-炭素原子間にエステル基を含んでもよい1価の炭化水素基の炭素数は1~50であることが好ましく、5~20であることがより好ましい。R1A~R5Aのうち、いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。上記炭素-炭素原子間にエステル基を含んでもよい1価の炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。
式中、Xにおいて、2価の炭化水素基の炭素数は1~50であることが好ましく、5~20であることがより好ましい。上記2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アルカンジイル基等が挙げられ、アルキレン基が好ましい。
【0297】
一般式(1-0A)中、R2A及びR5Aのいずれか1つが、上記一般式:-X-Aで示される基であることが好ましく、R2Aが上記一般式:-X-Aで示される基であることがより好ましい。
【0298】
一般式(1-0A)中、好適な態様としては、R2Aが、一般式:-X-Aで示される基であり、R1A、R3A、R4A及びR5AがHである態様である。この場合、Xは結合手又は炭素数1~5のアルキレン基であることが好ましい。
【0299】
一般式(1-0A)中、好適な態様としてはまた、R2Aが、一般式:-X-Aで示される基であり、R1A及びR3Aが-Y-Rで示される基であり、Yは、各出現において同一又は異なって、-COO-、-OCO-、又は、結合手であり、Rは各出現において同一又は異なって、炭素数2以上のアルキル基である態様である。この場合、R4A及びR5AがHであることが好ましい。
【0300】
一般式(1-0A)で表される炭化水素系界面活性剤としては、例えば、グルタル酸又はその塩、アジピン酸又はその塩、ピメリン酸又はその塩、スベリン酸又はその塩、アゼライン酸又はその塩、セバシン酸又はその塩等が挙げられる。
また、一般式(1-0A)で表される脂肪族型のカルボン酸型炭化水素系界面活性剤は2鎖2親水基型合成界面活性剤であってもよく、例えば、ジェミニ型界面活性剤として、ジェミニサ-フ(中京油脂株式会社)、Gemsurf α142(炭素数12 ラウリル基)、Gemsurf α102(炭素数10)、Gemsurf α182(炭素数14)等が挙げられる。
【0301】
上記アニオン性の炭化水素系界面活性剤としては、下記式I:
R-(XZ) (I)
(式中、Rは、1つ以上の飽和又は不飽和、非環式又は環式の脂肪族基を含む疎水性炭化水素部分である。1つ以上の脂肪族基中のCH、CH及びCH基の合計に対するCH基の合計の百分率は少なくとも約70%であり、疎水性部分はシロキサン単位を含まない。各Xは、同じであっても異なっていてもよく、イオン性親水性部分を表す。各Zは、同じであっても異なっていてもよく、イオン性親水性部分の1つ以上の対イオンを表す。nは、1~3である。)で示される化合物Iも挙げられる。
【0302】
化合物Iは、フルオロモノマーの乳化重合において重合開始剤及び/又は成長するフルオロポリマーラジカルとの低い反応性を示す。
【0303】
化合物Iは、次式:
【化32】
(式中、Yは、水素、アンモニウム、四級アンモニウム、窒素複素環、アルカリ金属、又はアルカリ土類である。)で示される置換部分を含むことが好ましい。
【0304】
化合物Iは、下記式II:
【化33】
(式中、R2’及びR2’’’は、同じであるか又は異なり、4~16個の炭素原子を有する飽和又は不飽和、非環式又は環式の脂肪族基であり、R2’及びR2’’’基中のCH、CH及びCH基の合計に対するCH基の合計の百分率は少なくとも約70%であるか、又はR2’及びR2’’’は、互いに結合して、エーテル又はエステル結合を含有し得る飽和又は不飽和脂肪族環を形成し得る。ただし、環中のCH、CH及びCH基の合計に対するCH基の合計の百分率は少なくとも約70%である。Rは、水素、メトキシ、エトキシ又はフェノキシである。Yは、水素、アンモニウム、四級アンモニウム、窒素複素環、アルカリ金属、又はアルカリ土類である。)で示される化合物IIであることが好ましい。
【0305】
化合物IIとしては、例えば、以下の化合物が好ましい。
【化34】
上記式中のYは、水素、アンモニウム、又はアルカリ金属であってよい。
【0306】
化合物Iは、下記式III:
【化35】
(式中、R、R4’、及びR4’’は、同じであるか又は異なり、水素あるいは4~16個の炭素原子を有する飽和又は不飽和、非環式又は環式の脂肪族基であり、R、R4’、及びR4’’基におけるCH、CH及びCH基の合計に対するCHの合計の百分率が少なくとも約70%である。ただし、R、R4’、及びR4’’のうちの少なくとも1つは水素ではなく、R4’及びR4’’が水素である場合、Rは水素ではなく、Rが水素である場合、R4’及びR4’’は水素ではない。Yは、水素、アンモニウム、四級アンモニウム、窒素複素環、アルカリ金属、又はアルカリ土類である。)で示される化合物IIIであることも好ましい。
【0307】
化合物IIIとしては、例えば、以下の化合物が好ましい。
【化36】
上記式中のYは、水素、アンモニウム、又はアルカリ金属であってよい。
【0308】
本開示の製造方法においては、上記炭化水素系界面活性剤を2種以上同時に用いてもよい。
【0309】
本開示のPTFE組成物は、上記特定の炭化水素系界面活性剤を使用しない場合でも、炭化水素系界面活性剤及び重合開始剤の存在下、pHが4.0以上の水性媒体中で、テトラフルオロエチレンのみ、又は、テトラフルオロエチレンと上記テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーとを重合してPTFEを得る重合工程を含む製造方法により得ることができる。
従来、PTFEを製造するための重合工程は酸性を示す重合開始剤が使用されていたため、重合で使用される水性媒体のpHは4.0未満であった。本開示者等が鋭意検討したところ、意外なことに、重合に用いる水性媒体のpHを4.0以上にすることによって重合の安定性が向上し、分子量が高いPTFEを製造することができることが見出された。
上記製造方法は、pHが4.0以上の水性媒体中でテトラフルオロエチレンのみ、又は、テトラフルオロエチレンと上記テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーとを重合する。上記pHは4.0以上であればよく、4.0超が好ましく、4.5以上がより好ましく、5.0以上が更に好ましく、5.5以上が更により好ましく、6.0以上が殊更に好ましく、6.5以上が特に好ましく、7.0以上が特に好ましく、7.5以上が特に好ましく、8.0以上が特に好ましい。上記pHの上限値は特に限定されないが、例えば、13.0以下であってよい。重合槽の腐食の観点からは、12.0以下であることが好ましく、11.5以下であることがより好ましく、11.0以下であることがより好ましい。
上記pHは、pHメーターにより測定することができる。
【0310】
上記製造方法において、水性媒体のpHを4.0以上にする方法は限定されないが、例えば、アルカリ性水溶液を使用したり、アルカリ性を示す水性分散液を使用したり、pH調整剤を使用したりすることによってpHを4.0以上にすることができるが、特に限定されるものではない。
また、水性媒体に溶解させた時に酸性を示す重合開始剤を使用する場合でも、更に、水酸化ナトリウム等のアルカリ化合物を加えることでpHを4.0以上に調整することもできる。上記アルカリ化合物としては、水に溶けて電離し、OHを生じる化合物であればよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;アミン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。上記重合工程は、アルカリ化合物を水性媒体に添加する工程を含んでもよい。
【0311】
上記製造方法は、重合工程の全ての期間において水性媒体のpHが4.0以上であってもよい。また、重合工程の中盤においてpHが4.0以上であってもよいし、重合工程の後半でpHが4.0以上であってもよい。また、重合工程の中盤及び後半でpHが4.0以上であってもよい。
例えば、上記重合工程は、ポリマー固形分濃度が3質量%以上である時に、水性媒体のpHが4.0以上であることが好ましい。言い換えると、上記製造方法は、炭化水素系界面活性剤及び重合開始剤の存在下、水性媒体中でテトラフルオロエチレンのみ、又は、テトラフルオロエチレンと上記テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーとを重合してPTFEを得る重合工程を含み、上記水性媒体は、ポリマー固形分濃度が3質量%以上である時にpHが4.0以上であることが好ましい。上記水性媒体は、ポリマー固形分濃度が5質量%以上である時にpHが4.0以上であることがより好ましく、ポリマー固形分濃度が8質量%以上である時にpHが4.0以上であることが更に好ましく、ポリマー固形分濃度が10質量%以上である時にpHが4.0以上であることが更により好ましく、ポリマー固形分濃度が15質量%以上である時にpHが4.0以上であることが殊更に好ましく、ポリマー固形分濃度が18質量%以上である時にpHが4.0以上であることが特に好ましく、20質量%以上である時にpHが4.0以上であることがより好ましく、25質量%以上である時にpHが4.0以上であることが更に好ましい。
また、上記重合工程は、ポリマー固形分濃度が25質量%となった時点から重合終了まで水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることが好ましく、20質量%となった時点から重合終了まで水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることがより好ましく、18質量%となった時点から重合終了まで水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることが更に好ましく、15質量%となった時点から重合終了まで水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることが更により好ましく、10質量%となった時点から重合終了まで水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることが殊更に好ましく、8質量%となった時点から重合終了まで水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることが特に好ましく、5質量%となった時点から重合終了まで水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることがより好ましく、3質量%となった時点から重合終了まで水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることが更に好ましい。
また、上記重合工程は、ポリマー固形分濃度が15質量%未満である時に、水性媒体のpHが4.0以上であることも好ましい。上記重合工程は、ポリマー固形分濃度が3質量%以上、15質量%未満である時に、水性媒体のpHが4.0以上であることがより好ましく、5質量%以上、15質量%未満である時に、水性媒体のpHが4.0以上であることがより好ましく、8質量%以上、15質量%未満である時に、水性媒体のpHが4.0以上であることが更に好ましく、10質量%以上、15質量%未満である時に、水性媒体のpHが4.0以上であることが更により好ましい。
また、上記重合工程は、ポリマー固形分濃度が10質量%以上、15質量%までの間、水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることが好ましく、8質量%以上、15質量%までの間、水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることがより好ましく、5質量%以上、15質量%までの間、水性媒体のpHを4.0以上で維持するものであることが更に好ましい。
上記水性媒体のpHは、いずれの場合においても、4.0超が好ましく、4.5以上がより好ましく、5.0以上が更に好ましく、5.5以上が更により好ましく、6.0以上が殊更に好ましく、6.5以上が特に好ましく、7.0以上がより好ましく、7.5以上が更に好ましく、8.0以上が更により好ましい。
【0312】
上記重合工程は、重合開始の時点から、ポリマー固形分濃度が3質量%(好ましくは5質量%、より好ましくは8質量%、更に好ましくは10質量%、更により好ましくは15質量%、殊更に好ましくは18質量%、殊更により好ましくは20質量%、特に好ましくは25質量%)の時点迄の60%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上、殊更に好ましくは99%以上、特に好ましくは100%)の期間で水性媒体のpHが4.0以上であることが好ましい。
上記重合工程は、ポリマー固形分濃度が10質量%(好ましくは8質量、より好ましくは5質量%、更に好ましくは3質量%、更により好ましくは重合開始)の時点から、ポリマー固形分濃度が15質量%の時点迄の60%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上、殊更に好ましくは99%以上、特に好ましくは100%)の期間で水性媒体のpHが4.0以上であることが好ましい。
上記重合工程は、ポリマー固形分濃度が15質量%の時点から、ポリマー固形分濃度が18質量%(好ましくは20質量%、より好ましくは25質量%)の時点迄の60%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上、殊更に好ましくは99%以上、特に好ましくは100%)の期間で水性媒体のpHが4.0以上であることが好ましい。
上記重合工程は、ポリマー固形分濃度が25質量%(好ましくは20質量、より好ましくは18質量%、更に好ましくは15質量%、更により好ましくは10質量%、殊更に好ましくは8質量%、特に好ましくは5質量%、より好ましくは3質量%、更に好ましくは重合開始)の時点から、重合終了時点迄の60%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上、特に好ましくは100%)の期間で水性媒体のpHが4.0以上であることが好ましい。
上記水性媒体のpHは、いずれの場合においても、4.0超が好ましく、4.5以上がより好ましく、5.0以上が更に好ましく、5.5以上が更により好ましく、6.0以上が殊更に好ましく、6.5以上が特に好ましく、7.0以上がより好ましく、7.5以上が更に好ましく、8.0以上が更により好ましい。
【0313】
上記製造方法において、上記炭化水素系界面活性剤は、フッ素を含まない炭化水素系界面活性剤であり、アニオン性の炭化水素系界面活性剤であることが好ましく、カルボン酸型の炭化水素系界面活性剤であることがより好ましい。アニオン性炭化水素系界面活性剤及びカルボン酸型の炭化水素系界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、上述したその他の界面活性能を有する化合物の中で例示した化合物(α)等を好適に使用できる。
【0314】
上記製造方法において、上記炭化水素系界面活性剤は、フッ素を含まない炭化水素系界面活性剤であり、アニオン性の炭化水素系界面活性剤であることが好ましく、スルホン酸型の炭化水素系界面活性剤であることもまた、好ましい。アニオン性炭化水素系界面活性剤及びスルホン酸型の炭化水素系界面活性剤としては特に限定されない。例えば、上述したその他の界面活性能を有する化合物の中で例示した化合物(β)等を好適に使用できる。
【0315】
本開示のPTFE組成物は、上記特定の炭化水素系界面活性剤を使用しない場合でも、アニオン性の炭化水素系界面活性剤及び重合開始剤の存在下、水性媒体中で、テトラフルオロエチレンのみ、又は、テトラフルオロエチレンと上記テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーとを重合してPTFEを得る重合工程を含み、上記炭化水素系界面活性剤が、該炭化水素系界面活性剤の塩を含む工程によっても得ることができる。言い換えると、上記重合工程におけるアニオン性の炭化水素系界面活性剤の少なくとも一部が塩の形態である。
本開示者等が鋭意検討したところ、意外なことに、アニオン性の炭化水素系界面活性剤が、アニオン性の炭化水素系界面活性剤の塩を含むことによって重合の安定性が向上し、分子量が大きいPTFEを製造することができることが見出された。
これは、塩を含むことによりアニオン性の界面活性剤の水溶性が向上し、乳化性能を示しやすくなることによるものであると考えられる。
上記アニオン性の炭化水素系界面活性剤については後述する。
上記アニオン性の炭化水素系界面活性剤が、該炭化水素系界面活性剤の塩を含むことは、導電率の測定により確認することができる。
上記製造方法において、上記アニオン性の炭化水素系界面活性剤は、アニオン性の炭化水素系界面活性剤の塩の濃度が、アニオン性の炭化水素系界面活性剤の総質量に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が更により好ましく、90質量%以上が殊更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
上記塩の割合は、溶液濃度と導電率により測定することができる。
上記製造方法において、上記炭化水素系界面活性剤は、カルボン酸型の炭化水素系界面活性剤であることがより好ましい。上記炭化水素系界面活性剤は、フッ素を含まない。
アニオン性の炭化水素系界面活性剤の塩において、酸の水素原子を置き換える陽イオン(但し、水素原子を除く)は、例えば、金属原子、NR (Rは、各々、同一でも異なっていてもよく、H又は有機基(好ましくはフッ素を含まない有機基)である)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムである。上記RはH又はアルキル基が好ましく、H又は炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、H又は炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。
アニオン性の炭化水素系界面活性剤の塩における上記陽イオンとしては、金属原子、又は、NR が好ましく、NR がより好ましく、NHが更に好ましい。
導電率は、温度の影響が大きく変化することから、恒温槽を用いて、サンプル液温を25℃に保ち、pHメーターのセルの温度も同じにしてから導電率を測定する。
【0316】
上記製造方法において、上記重合工程は、実質的に有機酸の形態の上記炭化水素系界面活性剤の非存在下で重合するものであることが好ましい。実質的に有機酸の形態の前記炭化水素系界面活性剤の非存在下で重合するものであることによって、重合の安定性がより向上し、高分子量のPTFEを得ることができる。
実質的に有機酸の形態の上記炭化水素系界面活性剤の非存在下とは、有機酸の濃度が得られた水性分散液の質量に対して、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0.05質量%以下が殊更好ましく、0.01質量%以下が特に好ましい。
本明細書中で「有機酸」とは、酸性を示す有機化合物を意味する。有機酸としては、-COOH基を有するカルボン酸や、-SOH基を有するスルホン酸等が挙げられ、有機酸を含む水溶液のpHを調整するのが容易であるとの観点からカルボン酸が好ましい。
また、「有機酸の形態」とは、有機酸に含まれる酸性基(例えば、-COOH基、-SOH基等)のHが遊離していない形態である。
上記製造方法において、上記炭化水素系界面活性剤は、アニオン性の炭化水素系界面活性剤である。
【0317】
上記重合工程において、重合開始時の炭化水素系界面活性剤の量は、水性媒体に対して50ppm超であることが好ましい。重合開始時の炭化水素系界面活性剤の量は、好ましくは60ppm以上であり、より好ましくは70ppm以上であり、更に好ましくは80ppm以上であり、更により好ましくは100ppm以上である。上限は特に限定されないが、例えば、10000ppmであることが好ましく、5000ppmであることがより好ましい。重合開始時の炭化水素系界面活性剤の量は、上記範囲であることによって、より平均一次粒子径が小さく、より安定性に優れる水性分散液を得ることができる。
なお、重合は、反応器中の気体TFEがPTFEになり、反応器中の圧力降下が起こる時に開始したということができる。米国特許第3,391,099号明細書(Punderson)には、重合プロセスの2つの別個の段階、まず、核形成部位としてのポリマー核の形成、および次に、確立された粒子の重合を含む成長段階からなる、水性媒体中のテトラフルオロエチレンの分散重合が開示されている。なお、重合は通常、重合されるモノマーと重合開始剤との両方が反応器に充填された時に開始される。また、本開示では、核形成部位の形成に関する添加剤を核形成剤とする。
【0318】
上記重合工程は、炭化水素系界面活性剤を含む組成物を重合開始後に添加する添加工程を含むことが好ましい。上記添加工程によって、重合の安定性がより向上し、より高分子量のPTFEが得られる。
上記炭化水素系界面活性剤は、例えば、固体(例えば、炭化水素系界面活性剤の粉末)の形態であってもよいし、液体の形態であってもよい。
上記組成物は、炭化水素系界面活性剤を含むものであればよく、炭化水素系界面活性剤のみからなるものであってもよいし、炭化水素系界面活性剤と液状媒体とを含む炭化水素系界面活性剤の溶液又は分散体であってもよい。従って、上記添加工程は、炭化水素系界面活性剤単体又は炭化水素系界面活性剤を含む組成物を重合開始後に添加する工程ということもできる。
炭化水素系界面活性剤は1種類に限定されず、2種類以上の混合物であってもよい。
上記液状媒体としては、水性媒体及び有機溶媒のいずれでもよく、水性媒体及び有機溶媒を組み合わせて用いてもよい。
上記組成物として具体的には、炭化水素系界面活性剤が水性媒体に溶解した水溶液、炭化水素系界面活性剤が水性媒体に分散した水性分散液等が挙げられる。
【0319】
上記添加工程において添加される炭化水素系界面活性剤は、水性媒体に対して、0.0001~10質量%であることが好ましい。水性媒体に対して、より好ましくは、0.001質量%以上であり、更に好ましくは、0.01質量%以上であり、特に好ましくは、0.05質量%以上である。また、水性媒体に対して、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは、3質量%以下であり、特に好ましくは、1質量%以下である。
【0320】
重合の安定性が向上し、より高分子量のPTFEが得られることから、上記組成物は、炭化水素系界面活性剤を含み、pHが5.0以上である水溶液であることが好ましい。
上記水溶液のpHは、6.0以上がより好ましく、6.5以上が更に好ましく、7.0以上が更により好ましく、7.5以上が殊更に好ましく、8.0以上が特に好ましい。また、pHの上限は特に限定されないが、12.0以下であってよく、また、11.0以下であってもよい。
【0321】
上記添加工程における炭化水素系界面活性剤は、アニオン性炭化水素系界面活性剤であることが好ましく、カルボン酸型の炭化水素系界面活性剤であることがより好ましい。
アニオン性炭化水素系界面活性剤及びカルボン酸型の炭化水素系界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、上述したその他の界面活性能を有する化合物の中で例示した化合物(α)等を好適に使用できる。
【0322】
上記重合工程及び添加工程で使用するカルボン酸型の炭化水素系界面活性剤としては、上記界面活性剤(e)、上述した式:R(-L-M)によって表されるアニオン性界面活性剤、及び、上述した式:R(-L-M)によって表されるアニオン性界面活性剤のうち、カルボキシ基(-COOH)又はカルボキシ基の水素原子が無機陽イオン(例えば、金属原子、アンモニウム等)で置換された基を有するもの、上記化合物(α)、上記界面活性剤(1-0A)、並びに、これらの界面活性剤にラジカル処理または酸化処理を行ったものからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記カルボン酸型の炭化水素系界面活性剤は、1種で用いてもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
上記化合物(α)には、上述した式:R102-COOM(式中、R102及びMは上記と同じ。)によって表されるアニオン性の炭化水素系界面活性剤(好ましくは、式(A1)で表される化合物)だけでなく、上述した式:R-L-M(式中、R、L及びMは上記と同じ)によって表されるアニオン性界面活性剤、上記界面活性剤(c)及び上記界面活性剤(d)のうち、カルボキシ基(-COOH)又はカルボキシ基の水素原子が無機陽イオン(例えば、金属原子、アンモニウム等)で置換された基を有するもの等も含まれる。
【0323】
上記カルボン酸型の炭化水素系界面活性剤は、上記化合物(α)が好ましく、上記式(A1)で表される化合物、上記式(c)においてAが-COOXである化合物、上記式(d)においてAが-COOXである化合物、上記式(e)においてAが-COOMである化合物、上記式(1-0A)においてAが-COOMである化合物、並びに、これらの化合物にラジカル処理または酸化処理を行ったものからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、上記式(A1)で表される化合物及び該化合物にラジカル処理または酸化処理を行ったものからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。
特に、ラウリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、及び、これらの塩、並びに、これらの化合物にラジカル処理または酸化処理を行ったものからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。上記塩としては、カルボキシ基の水素が上述した式Mの金属原子、NR101 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム、又は、置換基を有していてもよいホスホニウムであるものが挙げられるが特に限定されない。
【0324】
上記製造方法は、実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に、テトラフルオロエチレンを重合するものであることが好ましい。
上記製造方法において「実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に」とは、水性媒体に対して含フッ素界面活性剤が10質量ppm以下であることを意味し、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは10質量ppb未満であり、更により好ましくは1質量ppb以下であり、特に好ましくは1質量ppb未満である。
「実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に」とは、また、含フッ素界面活性剤の意図的な添加がないことも意味する。
【0325】
上記含フッ素界面活性剤としては、アニオン性含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
上記アニオン性含フッ素界面活性剤は、例えば、アニオン性基を除く部分の総炭素数が20以下のフッ素原子を含む界面活性剤であってよい。
【0326】
上記含フッ素界面活性剤としてはまた、アニオン性部分の分子量が1000以下、好ましくは800以下のフッ素を含む界面活性剤であってよい。
なお、上記「アニオン性部分」は、上記含フッ素界面活性剤のカチオンを除く部分を意味する。例えば、後述する式(I)で表されるF(CFn1COOMの場合には、「F(CFn1COO」の部分である。
【0327】
上記含フッ素界面活性剤としてはまた、LogPOWが3.5以下の含フッ素界面活性剤が挙げられる。上記LogPOWは、1-オクタノールと水との分配係数であり、LogP[式中、Pは、含フッ素界面活性剤を含有するオクタノール/水(1:1)混合液が相分離した際のオクタノール中の含フッ素界面活性剤濃度/水中の含フッ素界面活性剤濃度比を表す]で表されるものである。
上記LogPOWは、カラム;TOSOH ODS-120Tカラム(φ4.6mm×250mm、東ソー(株)製)、溶離液;アセトニトリル/0.6質量%HClO4水=1/1(vol/vol%)、流速;1.0ml/分、サンプル量;300μL、カラム温度;40℃、検出光;UV210nmの条件で、既知のオクタノール/水分配係数を有する標準物質(ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸及びデカン酸)についてHPLCを行い、各溶出時間と既知のオクタノール/水分配係数との検量線を作成し、この検量線に基づき、試料液におけるHPLCの溶出時間から算出する。
【0328】
上記含フッ素界面活性剤として具体的には、米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、米国特許出願公開第2007/0015865号明細書、米国特許出願公開第2007/0015866号明細書、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書、米国特許出願公開第2007/0117914号明細書、米国特許出願公開第2007/142541号明細書、米国特許出願公開第2008/0015319号明細書、米国特許第3250808号明細書、米国特許第3271341号明細書、特開2003-119204号公報、国際公開第2005/042593号、国際公開第2008/060461号、国際公開第2007/046377号、国際公開第2007/119526号、国際公開第2007/046482号、国際公開第2007/046345号、米国特許出願公開第2014/0228531号、国際公開第2013/189824号、国際公開第2013/189826号に記載されたもの等が挙げられる。
【0329】
上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(N):
n0-Rfn0-Y (N
(式中、Xn0は、H、Cl又は及びFである。Rfn0は、炭素数3~20で、鎖状、分枝鎖状または環状で、一部または全てのHがFにより置換されたアルキレン基であり、該アルキレン基は1つ以上のエーテル結合を含んでもよく、一部のHがClにより置換されていてもよい。Yはアニオン性基である。)で表される化合物が挙げられる。
のアニオン性基は、-COOM、-SOM、又は、-SOMであってよく、-COOM、又は、-SOMであってよい。
Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、例えば、Na、K又はLiである。
としては、H又はC1-10の有機基であってよく、H又はC1-4の有機基であってよく、H又はC1-4のアルキル基であってよい。
Mは、H、金属原子又はNR であってよく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR であってよく、H、Na、K、Li又はNHであってよい。
上記Rfn0は、Hの50%以上がフッ素に置換されているものであってよい。
【0330】
上記一般式(N)で表される化合物としては、
下記一般式(N):
n0-(CFm1-Y (N
(式中、Xn0は、H、Cl及びFであり、m1は3~15の整数であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn1-O-(CF(CF)CFO)m2CFXn1-Y (N
(式中、Rfn1は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、m2は、0~3の整数であり、Xn1は、F又はCFであり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn2(CHm3-(Rfn3-Y (N
(式中、Rfn2は、炭素数1~13のエーテル結合を含み得る、部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、m3は、1~3の整数であり、Rfn3は、直鎖状又は分岐状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、qは0又は1であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn4-O-(CYn1n2CF-Y (N
(式中、Rfn4は、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Yn1及びYn2は、同一若しくは異なって、H又はFであり、pは0又は1であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、及び、
下記一般式(N):
【化37】
(式中、Xn2、Xn3及びXn4は、同一若しくは異なってもよく、H、F、又は、炭素数1~6のエーテル結合を含んでよい直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基である。Rfn5は、炭素数1~3のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキレン基であり、Lは連結基であり、Yは、上記定義したものである。但し、Xn2、Xn3、Xn4及びRfn5の合計炭素数は18以下である。)で表される化合物が挙げられる。
【0331】
上記一般式(N)で表される化合物としてより具体的には、下記一般式(I)で表されるパーフルオロカルボン酸(I)、下記一般式(II)で表されるω-Hパーフルオロカルボン酸(II)、下記一般式(III)で表されるパーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)、下記一般式(IV)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)、下記一般式(V)で表されるパーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)、下記一般式(VI)で表されるパーフルオロアルキルスルホン酸(VI)、下記一般式(VII)で表されるω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)、下記一般式(VIII)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)、下記一般式(IX)で表されるアルキルアルキレンカルボン酸(IX)、下記一般式(X)で表されるフルオロカルボン酸(X)、下記一般式(XI)で表されるアルコキシフルオロスルホン酸(XI)、及び、下記一般式(XII)で表される化合物(XII)、が挙げられる。
【0332】
上記パーフルオロカルボン酸(I)は、下記一般式(I)
F(CFn1COOM (I)
(式中、n1は、3~14の整数であり、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。)で表されるものである。
【0333】
上記ω-Hパーフルオロカルボン酸(II)は、下記一般式(II)
H(CFn2COOM (II)
(式中、n2は、4~15の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0334】
上記パーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)は、下記一般式(III)
Rf-O-(CF(CF)CFO)n3CF(CF)COOM (III)
(式中、Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、n3は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0335】
上記パーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)は、下記一般式(IV)
Rf(CHn4RfCOOM (IV)
(式中、Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、Rfは、直鎖状又は分岐状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基、n4は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0336】
上記アルコキシフルオロカルボン酸(V)は、下記一般式(V)
Rf-O-CYCF-COOM (V)
(式中、Rfは、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Y及びYは、同一若しくは異なって、H又はFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0337】
上記パーフルオロアルキルスルホン酸(VI)は、下記一般式(VI)
F(CFn5SOM (VI)
(式中、n5は、3~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0338】
上記ω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)は、下記一般式(VII)
H(CFn6SOM (VII)
(式中、n6は、4~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0339】
上記パーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)は、下記一般式(VIII)
Rf(CHn7SOM (VIII)
(式中、Rfは、炭素数1~13のパーフルオロアルキル基であり、n7は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0340】
上記アルキルアルキレンカルボン酸(IX)は、下記一般式(IX)
Rf(CHn8COOM (IX)
(式中、Rfは、炭素数1~13のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、n8は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0341】
上記フルオロカルボン酸(X)は、下記一般式(X)
Rf-O-Rf-O-CF-COOM (X)
(式中、Rfは、炭素数1~6のエーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rfは、炭素数1~6の直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0342】
上記アルコキシフルオロスルホン酸(XI)は、下記一般式(XI)
Rf-O-CYCF-SOM (XI)
(式中、Rfは、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状であって、塩素を含んでもよい、部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Y及びYは、同一若しくは異なって、H又はFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0343】
上記化合物(XII)は、下記一般式(XII):
【化38】
(式中、X、X及びXは、同一若しくは異なってもよく、H、F及び炭素数1~6のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rf10は、炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、Lは連結基であり、Yはアニオン性基である。)で表されるものである。
は、-COOM、-SOM、又は、-SOMであってよく、-SOM、又は、COOMであってよい(式中、Mは上記定義したものである。)。
Lとしては、例えば、単結合、炭素数1~10のエーテル結合を含みうる部分又は完全フッ素化されたアルキレン基が挙げられる。
【0344】
上述したように上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、カルボン酸系含フッ素界面活性剤、スルホン酸系含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0345】
本開示のPTFE組成物は、ラジカル捕捉剤及び重合開始剤の分解剤からなる群より選択される少なくとも1種を添加する添加工程を含む製造方法により好適に製造できる。上記添加工程は、上述した乳化重合を水性媒体中で行う工程中に行われる。ラジカル捕捉剤又は重合開始剤の分解剤を添加することで、重合中のラジカル濃度を調整することができる。ラジカル濃度を低下させる観点からはラジカル捕捉剤が好ましい。
【0346】
上記ラジカル捕捉剤としては、重合系内の遊離基に付加もしくは連鎖移動した後に再開始能力を有しない化合物が用いられる。具体的には、一次ラジカルまたは成長ラジカルと容易に連鎖移動反応を起こし、その後単量体と反応しない安定ラジカルを生成するか、あるいは、一次ラジカルまたは成長ラジカルと容易に付加反応を起こして安定ラジカルを生成するような機能を有する化合物が用いられる。
一般的に連鎖移動剤と呼ばれるものは、その活性は連鎖移動定数と再開始効率で特徴づけられるが連鎖移動剤の中でも再開始効率がほとんど0%のものがラジカル捕捉剤と称される。
上記ラジカル捕捉剤は、例えば、重合温度におけるTFEとの連鎖移動定数が重合速度定数より大きく、かつ、再開始効率が実質的にゼロ%の化合物ということもできる。「再開始効率が実質的にゼロ%」とは、発生したラジカルがラジカル捕捉剤を安定ラジカルにすることを意味する。
好ましくは、重合温度におけるTFEとの連鎖移動定数(Cs)(=連鎖移動速度定数(kc)/重合速度定数(kp))が0.1より大きい化合物であり、上記化合物は、連鎖移動定数(Cs)が0.5以上であることがより好ましく、1.0以上であることが更に好ましく、5.0以上であることが更により好ましく、10以上であることが特に好ましい。
【0347】
本開示における上記ラジカル捕捉剤としては、例えば、芳香族ヒドロキシ化合物、芳香族アミン類、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、キノン化合物、テルペン、チオシアン酸塩、及び、塩化第二銅(CuCl)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
芳香族ヒドロキシ化合物としては、非置換フェノール、多価フェノール、サリチル酸、m-又はp-のサリチル酸、没食子酸、ナフトール等が挙げられる。
上記非置換フェノールとしては、о-、m-又はp-のニトロフェノール、о-、m-又はp-のアミノフェノール、p-ニトロソフェノール等が挙げられる。多価フェノールとしては、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシン、ナフトレゾルシノール等が挙げられる。
芳香族アミン類としては、о-、m-又はp-のフェニレンジアミン、ベンジジン等が挙げられる。
上記キノン化合物としては、о-、m-又はp-のベンゾキノン、1,4-ナフトキノン、アリザリン等が挙げられる。
チオシアン酸塩としては、チオシアン酸アンモン(NHSCN)、チオシアン酸カリ(KSCN)、チオシアン酸ソーダ(NaSCN)等が挙げられる。
上記ラジカル捕捉剤としては、なかでも、芳香族ヒドロキシ化合物が好ましく、非置換フェノール又は多価フェノールがより好ましく、ハイドロキノンが更に好ましい。
【0348】
上記ラジカル捕捉剤の添加量は、標準比重を小さくする観点から、重合開始剤濃度の3~500%(モル基準)に相当する量が好ましい。より好ましい下限は5%(モル基準)であり、更に好ましくは8%(モル基準)であり、更に好ましくは10%(モル基準)であり、更により好ましくは15%(モル基準)であり、殊更に好ましくは20%(モル基準)であり、特に好ましくは25%(モル基準)であり、特に好ましくは30%(モル基準)であり、特に好ましくは35%(モル基準)である。より好ましい上限は400%(モル基準)であり、更に好ましくは300%(モル基準)であり、更により好ましくは200%(モル基準)であり、殊更に好ましくは100%(モル基準)である。
【0349】
重合開始剤の分解剤としては、使用する重合開始剤を分解できる化合物であればよく、例えば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、ジイミン塩、シュウ酸、シュウ酸塩、銅塩、及び、鉄塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
上記重合開始剤の分解剤の添加量は、重合開始剤(後述するレドックス開始剤)として組み合わされる酸化剤の量に対して、25~300質量%の範囲で添加する。好ましくは25~150質量%、更に好ましくは50~100質量%である。
上記重合開始剤の分解剤の添加量は、標準比重を小さくする観点から、重合開始剤濃度の3~500%(モル基準)に相当する量が好ましい。より好ましい下限は5%(モル基準)であり、更に好ましくは8%(モル基準)であり、更に好ましくは10%(モル基準)であり、更に好ましくは13%(モル基準)であり、更により好ましくは15%(モル基準)である。より好ましい上限は400%(モル基準)であり、更に好ましくは300%(モル基準)であり、更により好ましくは200%(モル基準)であり、殊更に好ましくは100%(モル基準)である。
【0350】
ラジカル捕捉剤及び重合開始剤の分解剤からなる群より選択される少なくとも1種は、水性媒体中に形成されるPTFEの濃度が5質量%以上である時に添加することが好ましい。より好ましくは、10質量%以上である時である。
また、水性媒体中に形成されるPTFEの濃度が40質量%以下である時に添加することが好ましい。より好ましくは、35質量%以下である時であり、更に好ましくは、30質量%以下である時である。
【0351】
上記添加工程は、ラジカル捕捉剤及び重合開始剤の分解剤からなる群より選択される少なくとも1種を連続的に添加する工程であってもよい。
ラジカル捕捉剤及び重合開始剤の分解剤からなる群より選択される少なくとも1種を連続的に添加するとは、例えば、ラジカル捕捉剤及び重合開始剤の分解剤からなる群より選択される少なくとも1種を一括ではなく、経時的に、かつ、間断なく又は分割して、添加することである。
【0352】
上記重合工程は、更に核形成剤の存在下に、テトラフルオロエチレンを重合するものであってもよい。
【0353】
上記核形成剤としては、例えば、フルオロポリエーテル、非イオン性界面活性剤、及び、連鎖移動剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
この場合、上記重合工程は、炭化水素系界面活性剤及び上記核形成剤の存在下に、水性媒体中でテトラフルオロエチレンを重合することによりPTFEを得る工程であることが好ましい。
【0354】
上記フルオロポリエーテルとしては、パーフルオロポリエーテルが好ましい。
【0355】
上記フルオロポリエーテルは、式(1a)~(1d)で表される繰り返し単位を有するものであることが好ましい。
(-CFCF-CF-O-) (1a)
(-CF-CF-CF-O-) (1b)
(-CF-CF-O-)-(-CF-O-) (1c)
(-CF-CFCF-O-)-(-CF-O-) (1d)
(式(1a)~(1d)中、m及びnは1以上の整数である。)
【0356】
上記フルオロポリエーテルとしては、フルオロポリエーテル酸又はその塩が好ましく、上記フルオロポリエーテル酸は、カルボン酸、スルホン酸、スルホンアミド、又は、ホスホン酸であることが好ましく、カルボン酸であることがより好ましい。フルオロポリエーテル酸又はその塩のなかでも、フルオロポリエーテル酸の塩が好ましく、フルオロポリエーテル酸のアンモニウム塩がより好ましく、フルオロポリエーテルカルボン酸のアンモニウム塩が更に好ましい。
【0357】
上記フルオロポリエーテル酸又はその塩は、分子の主鎖中の酸素原子が、1~3個の炭素原子を有する飽和フルオロカーボン基により分離されているいずれかの鎖構造を有することが可能である。2種以上のタイプのフルオロカーボン基が分子中に存在し得る。
【0358】
上記フルオロポリエーテル酸又はその塩としては、下記式:
CF-CF-CF-O(-CFCF-CF-O-)CFCF-COOH、
CF-CF-CF-O(-CF-CF-CF-O-)-CF-CFCOOH、又は、
HOOC-CF-O(-CF-CF-O-)-(-CF-O-)CFCOOH
(式中、m及びnは前記と同じ。)
で表わされる化合物又はそれらの塩であることが好ましい。
【0359】
これらの構造は、J.Appl.Polymer Sci.、57、797(1995年)においてKasaiにより検討されている。ここに開示されているとおり、このようなフルオロポリエーテルは、一端または両端に、カルボン酸基またはその塩を有することが可能である。同様に、このようなフルオロポリエーテルは、一端または両端に、スルホン酸またはホスホン酸基またはその塩を有し得る。加えて、両端に酸官能基を有するフルオロポリエーテルは、異なる基を各端部に有し得る。単官能性フルオロポリエーテルについて、分子の他端は通常は過フッ素化されているが、水素または塩素原子を含有していてもよい。
【0360】
一端または両端に酸基を有するフルオロポリエーテルは、少なくとも2つのエーテル酸素、好ましくは少なくとも4つのエーテル酸素、およびさらにより好ましくは少なくとも6つのエーテル酸素を有する。好ましくは、エーテル酸素を分離するフルオロカーボン基の少なくとも1つ、より好ましくはこのようなフルオロカーボン基の少なくとも2つは、2または3個の炭素原子を有する。さらにより好ましくは、エーテル酸素を分離するフルオロカーボン基の少なくとも50%が2または3個の炭素原子を有する。また、好ましくは、フルオロポリエーテルは合計で少なくとも15個の炭素原子を有し、例えば、上記の繰り返し単位構造中のnまたはn+mの好ましい最小値は、少なくとも5である。酸基を一端または両端に有する2種以上のフルオロポリエーテルを、本開示による方法において用いることが可能である。典型的には、単一種の特定のフルオロポリエーテル化合物の製造において特別な注意が払われない限り、フルオロポリエーテルは、平均分子量に対する分子量範囲内の様々な割合で複数種の化合物を含有し得る。
【0361】
上記フルオロポリエーテルは、数平均分子量が800g/mol以上であることが好ましい。フルオロポリエーテル酸又はその塩は、水性媒体中への分散が困難であるおそれがあることから、数平均分子量が6000g/mol未満であることが好ましい。フルオロポリエーテル酸又はその塩は、数平均分子量が800~3500g/molであることがより好ましく、1000~2500g/molであることが更に好ましい。
【0362】
上記フルオロポリエーテルの量は、水性媒体に対して5~3000ppmであることが好ましく、5~2000ppmであることがより好ましく、さらに好ましい下限は10ppm、さらに好ましい上限は、100ppmである。
【0363】
上記核形成剤としての非イオン性界面活性剤としては、上述した非イオン性界面活性剤が挙げられ、フッ素を含有しない非イオン性界面活性剤であることが好ましい。例えば、上記非イオン性界面活性剤としては、下記一般式(i)
-O-A-H (i)
(式中、Rは、炭素数8~18の直鎖状若しくは分岐鎖状の1級又は2級アルキル基であり、Aは、ポリオキシアルキレン鎖である。)により表される化合物が挙げられる。
の炭素数は10~16が好ましく、12~16がより好ましい。Rの炭素数が18以下であると水性分散液の良好な分散安定性が得られやすい。またRの炭素数が18を超えると流動温度が高いため取扱い難い。Rの炭素数が8より小さいと水性分散液の表面張力が高くなり、浸透性やぬれ性が低下しやすい。
【0364】
ポリオキシアルキレン鎖はオキシエチレンとオキシプロピレンとからなるものであってもよい。オキシエチレン基の平均繰り返し数5~20およびオキシプロピレン基の平均繰り返し数0~2からなるポリオキシアルキレン鎖であり、親水基である。オキシエチレン単位数は、通常提供される広いまたは狭い単峰性分布、またはブレンドすることによって得られるより広いまたは二峰性分布のいずれかを含み得る。オキシプロピレン基の平均繰り返し数が0超の場合、ポリオキシアルキレン鎖におけるオキシエチレン基とオキシプロピレン基はブロック状に配列しても、ランダム状に配列してもよい。
水性分散液の粘度および安定性の点からは、オキシエチレン基の平均繰り返し数7~12およびオキシプロピレン基の平均繰り返し数0~2より構成されるポリオキシアルキレン鎖が好ましい。特にAがオキシプロピレン基を平均して0.5~1.5有すると低起泡性が良好であり好ましい。
【0365】
より好ましくは、Rは、(R’)(R’’)HC-であり、ここで、R’及びR’’は、同じか又は異なる直鎖、分岐鎖、又は環式のアルキル基であり、炭素原子の合計量は、少なくとも5個、好ましくは7~17個である。好ましくは、R’またはR’’のうちの少なくとも一つは、分岐状または環状炭化水素基である。
【0366】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例としては、C1327-O-(CO)10-H、C1225-O-(CO)10-H、C1021CH(CH)CH-O-(CO)-H、C1327-O-(CO)-(CH(CH)CHO)-H、C1633-O-(CO)10-H、HC(C11)(C15)-O-(CO)-H等が挙げられる。上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルの市販品としては、例えば、Genapol X080(製品名、クラリアント社製)、ノイゲンTDS-80(商品名)を例とするノイゲンTDSシリーズ(第一工業製薬社製)、レオコールTD-90(商品名)を例とするレオコールTDシリーズ(ライオン社製)、ライオノール(登録商標)TDシリーズ(ライオン社製)、T-Det A138(商品名)を例とするT-Det Aシリーズ(Harcros Chemicals社製)、タージトール(登録商標)15Sシリーズ(ダウ社製)等が挙げられる。
【0367】
上記非イオン界面活性剤は、平均約4~約18個のエチレンオキシド単位を有する2,6,8-トリメチル-4-ノナノールのエトキシレート、平均約6~約12個のエチレンオキシド単位を有する2,6,8-トリメチル-4-ノナノールのエトキシレート、またはその混合物であることも好ましい。この種類の非イオン性界面活性剤は、例えば、TERGITOL TMN-6、TERGITOL TMN-10、及びTERGITOL TMN-100X(いずれも製品名、Dow Chemical社製)としても市販されている。
【0368】
また、非イオン性界面活性剤の疎水基は、アルキルフェノール基、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基の何れかであってもよい。
例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系非イオン性化合物としては、例えば、下記一般式(ii)
-C-O-A-H (ii)
(式中、Rは、炭素数4~12の直鎖状又は分岐鎖状の1級若しくは2級のアルキル基であり、Aは、ポリオキシアルキレン鎖である。)で示される化合物が挙げられる。記ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系非イオン性化合物として具体的には、トライトン(登録商標)X-100(製品名、Dow Chemical社製)等が挙げられる。
【0369】
上記非イオン性界面活性剤としてはポリオール化合物も挙げられる。具体的には、国際公開第2011/014715号に記載されたもの等が挙げられる。
ポリオール化合物の典型例としては、ポリオール単位として1個以上の糖単位を有する化合物が挙げられる。糖単位は、少なくとも1個の長鎖を含有するように変性されてもよい。少なくとも1つの長鎖部分を含有する好適なポリオール化合物としては、例えば、アルキルグリコシド、変性アルキルグリコシド、糖エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。糖としては、単糖、オリゴ糖、及びソルビタンが挙げられるが、これらに限定されない。単糖としては、五炭糖及び六炭糖が挙げられる。単糖の典型例としては、リボース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、アラビノース、キシロースが挙げられる。オリゴ糖としては、2~10個の同一又は異なる単糖のオリゴマーが挙げられる。オリゴ糖の例としては、サッカロース、マルトース、ラクトース、ラフィノース、及びイソマルトースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0370】
典型的に、ポリオール化合物として使用するのに好適な糖としては、4個の炭素原子と1個のヘテロ原子(典型的に、酸素又は硫黄であるが、好ましくは酸素原子)との五員環を含有する環状化合物、又は5個の炭素原子と上述のような1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子との六員環を含有する環状化合物が挙げられる。これらは、炭素環原子に結合している少なくとも2個の又は少なくとも3個のヒドロキシ基(-OH基)を更に含有する。典型的に、糖は、エーテル又はエステル結合が長鎖残基と糖部分との間に作製されるように、炭素環原子に結合しているヒドロキシ基(及び/又はヒドロキシアルキル基)の水素原子のうちの1個以上が、長鎖残基によって置換されているという点で変性されている。
糖系ポリオールは、1個の糖単位又は複数の糖単位を含有してもよい。1個の糖単位又は複数の糖単位は、上述のような長鎖部分で変性されてもよい。糖系ポリオール化合物の特定の例としては、グリコシド、糖エステル、ソルビタンエステル、並びにこれらの混合物及び組み合わせが挙げられる。
【0371】
ポリオール化合物の好ましい種類は、アルキル又は変性アルキルグルコシドである。これらの種類の界面活性剤は、少なくとも1個のグルコース部分を含有する。
【化39】
(式中、xは、0、1、2、3、4、又は5を表し、R及びRは、独立して、H又は少なくとも6個の炭素原子を含有する長鎖単位を表すが、但しR及びRのうちの少なくとも1個はHではない)によって表される化合物が挙げられる。R及びRの典型例としては、脂肪族アルコール残基が挙げられる。脂肪族アルコールの例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、テトラデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、エイコサン酸、及びこれらの組み合わせ挙げられる。
上記の式は、ピラノース形態のグルコースを示すアルキルポリグルコシドの特定の例を表すが、他の糖又は同じ糖であるが異なる鏡像異性体又はジアステレオマー形態である糖を用いてもよいことが理解される。
アルキルグルコシドは、例えば、グルコース、デンプン、又はn-ブチルグルコシドと脂肪族アルコールとの酸触媒反応によって入手可能であり、これからは、典型例に、様々なアルキルグルコシドの混合物が得られる(Alkylpolygylcoside,Rompp,Lexikon Chemie,Version 2.0,Stuttgart/New York,Georg Thieme Verlag,1999)。脂肪族アルコールの例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、テトラデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、エイコサン酸、及びこれらの組み合わせ挙げられる。また、アルキルグルコシドは、Cognis GmbH,Dusseldorf,Germanyから商品名GLUCOPON又はDISPONILとして市販されている。
【0372】
その他の非イオン性界面活性剤として、BASFからPluronic(登録商標)Rシリーズとして供給される二官能基ブロックコポリマー、BASF CorporationからIconol(登録商標)TDAシリーズとして供給されるトリデシルアルコールアルコキシレート、炭化水素含有シロキサン界面活性剤、好ましくは炭化水素界面活性剤であり、ここで、上記のヒドロカルビル基は、フッ素などのハロゲンによって置換され得る場合に、水素原子によって完全に置換され、それによって、これらのシロキサン界面活性剤は、炭化水素界面活性剤とみなすこともでき、すなわち、ヒドロカルビル基上の一価置換基は水素である。
【0373】
また、上記製造方法において、上記特定の炭化水素系界面活性剤と、所望により用いるその他の界面活性能を有する化合物に加え、各化合物を安定化するため添加剤を使用することができる。上記添加剤としては、緩衝剤、pH調整剤、安定化助剤、分散安定剤などが挙げられる。
【0374】
安定化助剤としては、パラフィンワックス、フッ素系オイル、フッ素系溶剤、シリコーンオイルなどが好ましい。安定化助剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。安定化助剤としては、パラフィンワックスがより好ましい。パラフィンワックスとしては、室温で液体でも、半固体でも、固体であってもよいが、炭素数12以上の飽和炭化水素が好ましい。パラフィンワックスの融点は、通常40~65℃が好ましく、50~65℃がより好ましい。
【0375】
安定化助剤の使用量は、使用する水性媒体の質量基準で0.1~12質量%が好ましく、0.1~8質量%がより好ましい。安定化助剤は十分に疎水的で、TFEの乳化重合後にPTFE水性乳化液と完全に分離されて、コンタミ成分とならないことが望ましい。
【0376】
上記製造方法において、乳化重合は、重合反応器に、水性媒体、上記炭化水素系界面活性剤、モノマー及び必要に応じて他の添加剤を仕込み、反応器の内容物を撹拌し、そして反応器を所定の重合温度に保持し、次に所定量の重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行うことができる。重合反応開始後に、目的に応じて、モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤及び上記界面活性剤等を追加添加してもよい。上記炭化水素系界面活性剤を重合反応が開始した後に添加してもよい。
【0377】
上記乳化重合において、重合温度、重合圧力は、使用するモノマーの種類、目的とするPTFEの分子量、反応速度によって適宜決定される。通常、重合温度は、5~150℃であり、10℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。また、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。
重合圧力は、0.05~10MPaGである。重合圧力は、0.3MPaG以上がより好ましく、0.5MPaG以上が更に好ましい。また、5.0MPaG以下がより好ましく、3.0MPaG以下が更に好ましい。
特に、得量を向上させる観点からは、1.0MPaG以上が好ましく、1.2MPaG以上がより好ましく、1.5MPaG以上が更に好ましく、1.8MPaG以上が更により好ましく、2.0MPaG以上が特に好ましい。
【0378】
上記乳化重合において、炭化水素系界面活性剤は、水性媒体中に形成されるPTFEの濃度が0.60質量%未満であるときに添加することが好ましい。より好ましくは、上記濃度が0.50質量%以下であり、更に好ましくは0.36質量%以下であり、更により好ましくは0.30質量%以下であり、殊更に好ましくは0.20質量%以下であり、特に好ましくは0.10質量%以下であり、重合開始とともに、添加することが最も好ましい。上記濃度は、水性媒体及びPTFEの合計に対する濃度である。
また、上記乳化重合において、重合開始時の炭化水素系界面活性剤の量は、水性媒体に対して1ppm以上であることが好ましい。重合開始時の炭化水素系界面活性剤の量は、好ましくは10ppm以上であり、より好ましくは50ppm以上であり、更に好ましくは100ppm以上であり、更により好ましくは200ppm以上である。上限は特に限定されないが、例えば、100000ppmであることが好ましく、50000ppmであることがより好ましい。重合開始時の炭化水素系界面活性剤の量は、上記範囲であることによって、より平均一次粒子径が小さく、より安定性に優れる水性分散液を得ることができる。
【0379】
上記重合開始剤としては、上記重合温度範囲でラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、公知の油溶性及び/又は水溶性の重合開始剤を使用することができる。更に、還元剤等と組み合わせてレドックスとして重合を開始することもできる。上記重合開始剤の濃度は、モノマーの種類、目的とするPTFEの分子量、反応速度によって適宜決定される。
【0380】
上記重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル重合開始剤を使用できる。
【0381】
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジt-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などが、また、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロバレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロ-デカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドのジ[パーフロロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などが代表的なものとしてあげられる。
油溶性ラジカル重合開始剤としては、フッ素原子を含まないものが好ましい。
【0382】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、t-ブチルパーマレエート、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどがあげられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤も併せて含んでもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1~20倍であってよい。
【0383】
例えば、30℃以下の低温で重合を実施する場合等では、重合開始剤として、酸化剤と還元剤を組み合わせるレドックス開始剤を用いるのが好ましい。酸化剤としては、過硫酸塩、有機過酸化物、過マンガン酸カリウム、三酢酸マンガン、セリウム硝酸アンモニウム、臭素酸塩等が挙げられる。還元剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。開始剤の分解速度を上げるため、レドックス開始剤の組み合わせには、銅塩、鉄塩を加えることも好ましい。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
【0384】
上記レドックス開始剤としては、酸化剤が、過マンガン酸又はその塩、過硫酸塩、三酢酸マンガン、セリウム(IV)塩、若しくは、臭素酸又はその塩であり、還元剤が、ジカルボン酸又はその塩、若しくは、ジイミンであることが好ましい。
より好ましくは、酸化剤が、過マンガン酸又はその塩、過硫酸塩、若しくは、臭素酸又はその塩であり、還元剤が、ジカルボン酸又はその塩である。
【0385】
上記レドックス開始剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、過マンガン酸カリウム/シュウ酸アンモニウム、三酢酸マンガン/シュウ酸、三酢酸マンガン/シュウ酸アンモニウム、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸アンモニウム等の組合せが挙げられる。
レドックス開始剤を用いる場合は、酸化剤又は還元剤のいずれかをあらかじめ重合槽に仕込み、ついでもう一方を連続的又は断続的に加えて重合を開始させてもよい。例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸アンモニウムを用いる場合、重合槽にシュウ酸アンモニウムを仕込み、そこへ過マンガン酸カリウムを連続的に添加することが好ましい。
なお、本明細書のレドックス開始剤において、「過マンガン酸カリウム/シュウ酸アンモニウム」と記載した場合、過マンガン酸カリウムとシュウ酸アンモニウムとの組合せを意味する。他の化合物においても同じである。
上記レドックス開始剤としては、レドックス開始剤水溶液のpHを4.0以上とすることができる酸化剤又は還元剤を使用することが好ましい。上記レドックス開始剤水溶液とは、酸化剤の0.50質量%濃度水溶液、または、還元剤の0.50質量%濃度水溶液を意味する。
すなわち、酸化剤の0.50質量%濃度水溶液、及び、還元剤の0.50質量%濃度水溶液の少なくとも一方のpHが4.0以上であればよく、酸化剤の0.50質量%濃度水溶液、及び、還元剤の0.50質量%濃度水溶液の両方のpHが4.0以上であることが好ましい。
上記レドックス開始剤水溶液(酸化剤の0.50質量%濃度水溶液、又は、還元剤の0.50質量%濃度水溶液)のpHは、それぞれ、5.0以上がより好ましく、5.5以上が更に好ましく、6.0以上が特に好ましい。
【0386】
上記レドックス開始剤は特に、塩である酸化剤と塩である還元剤との組み合わせであることが好ましい。
例えば、上記塩である酸化剤は、過硫酸塩、過マンガン酸塩、セリウム(IV)塩及び臭素酸塩からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、過マンガン酸塩が更に好ましく、過マンガン酸カリウムが特に好ましい。
また、上記塩である還元剤は、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩及び臭素酸塩からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、シュウ酸塩が更に好ましく、シュウ酸アンモニウムが特に好ましい。
【0387】
上記レドックス開始剤として具体的には、過マンガン酸カリウム/シュウ酸アンモニウム、臭素酸カリウム/亜硫酸アンモニウム、三酢酸マンガン/シュウ酸アンモニウム、及び、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、過マンガン酸カリウム/シュウ酸アンモニウム、臭素酸カリウム/亜硫酸アンモニウム、及び、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0388】
上記重合工程でレドックス開始剤を用いることによって、得られるPTFEの分子量を高くすることができる。そのため、SSGを小さくすることができ、延伸可能なものとすることができる。
また、上記重合工程でレドックス開始剤を用いることによって、水性分散液中に生成されるPTFEの粒子数を多くすることができる。また、PTFEの得量を高くすることもできる。
レドックス開始剤を使用する場合、重合初期に酸化剤と還元剤を一括で添加してもよいし、重合初期に還元剤を一括で添加し、酸化剤を連続して添加してもよいし、重合初期に酸化剤を一括で添加し、還元剤を連続して添加してもよいし、酸化剤と還元剤の両方を連続して添加してもよい。
重合開始剤としてレドックス開始剤を使用する場合、水性媒体に対して、酸化剤の添加量が5~10000ppmであることが好ましく、10~1000ppmであることがより好ましく、還元剤の添加量が5~10000ppmであることが好ましく、10~1000ppmであることがより好ましい。
また、上記重合工程でレドックス開始剤を用いる場合、重合温度は、100℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましく、90℃以下が更に好ましい。また、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましい。
【0389】
重合開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(たとえば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱で除熱を行いながら、反応温度を上昇させてもよい範囲であり、より好ましい上限は、装置面から重合反応熱を除熱できる範囲である。より具体的には、例えば、水性媒体に対して1ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、50ppm以上が更に好ましい。また、100000ppm以下が好ましく、10000ppm以下がより好ましく、5000ppm以下が更に好ましい。
【0390】
上記水性媒体は、重合を行わせる反応媒体であって、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
【0391】
上記乳化重合において、更に、目的に応じて、公知の連鎖移動剤を添加し、重合速度、分子量の調整を行うこともできる。
【0392】
上記連鎖移動剤としては、たとえばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジメチルなどのエステル類のほか、イソペンタン、メタン、エタン、プロパン、イソブタン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、各種メルカプタン、四塩化炭素などの各種ハロゲン化炭化水素、シクロヘキサンなどがあげられる。
【0393】
連鎖移動剤として臭素化合物又はヨウ素化合物を使用してもよい。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用して行う重合方法としては、たとえば、実質的に無酸素状態で、臭素化合物又はヨウ素化合物の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーの重合を行う方法があげられる(ヨウ素移動重合法)。使用する臭素化合物又はヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、一般式:
Br
(式中、xおよびyはそれぞれ0~2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、Rは炭素数1~16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1~3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物があげられる。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用することによって、ヨウ素または臭素が重合体に導入され、架橋点として機能する。
【0394】
ヨウ素化合物としては、たとえば1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、2-ヨードパーフルオロプロパン、1,3-ジヨード-2-クロロパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,5-ジヨード-2,4-ジクロロパーフルオロペンタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン、1,12-ジヨードパーフルオロドデカン、1,16-ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2-ジヨードエタン、1,3-ジヨード-n-プロパン、CFBr、BrCFCFBr、CFCFBrCFBr、CFClBr、BrCFCFClBr、CFBrClCFClBr、BrCFCFCFBr、BrCFCFBrOCF、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、3-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、2-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2-ヨードエチル)および(2-ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0395】
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、2-ヨードパーフルオロプロパンを用いるのが好ましい。
【0396】
上記連鎖移動剤の使用量は、通常、供給されるフルオロモノマー全量に対して、1~50,000ppmであり、好ましくは1~20,000ppmである。
【0397】
上記連鎖移動剤は、重合開始前に一括して反応容器中に添加してもよいし、重合開始後に一括して添加してもよいし、重合中に複数回に分割して添加してもよいし、また、重合中に連続的に添加してもよい。
【0398】
上記製造方法によりPTFE水性分散液を得ることができる。上記PTFE水性分散液は、通常、PTFEと、化合物(1)及び/又は(2)と、水性媒体とを含む。PTFE水性分散液の固形分濃度は限定されないが、例えば、1.0~70質量%であってよい。上記固形分濃度は、8.0質量%以上が好ましく、10.0質量%以上がより好ましく、また、60.0質量%以下が好ましく、50.0質量%以下がより好ましい。
上記製造方法において、付着量は、最終的に得られたPTFEに対して、3.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下が更に好ましく、0.7質量%以下が更により好ましく、0.6質量%以下が特に好ましい。
【0399】
工程(B)における凝析は、公知の方法により行うことができる。
上記PTFEの水性分散液に対して凝析を行う場合、通常、ポリマーラテックス等の重合により得た水性分散液を、水を用いて10~25質量%のポリマー濃度(好ましくは10~20質量%のポリマー濃度)になるように希釈し、場合によっては、pHを中性又はアルカリ性に調整した後、撹拌機付きの容器中で反応中の撹拌よりも激しく撹拌して行う。上記凝析は、メタノール、アセトン等の水溶性有機化合物、硝酸カリウム、炭酸アンモニウム等の無機塩や、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸等を凝析剤として添加しながら撹拌を行ってもよい。上記凝析は、また、インラインミキサー等を使用して連続的に行ってもよい。
【0400】
凝析方法としては、撹拌による凝析法、超音波凝析法、ウルトラファインバブルを用いた凝析法、アルカリを用いた凝析法、酸を用いた凝析法、酸化剤を用いた凝析法、有機溶剤を用いた凝析法、および、ラジカル発生剤を用いた凝析法からなる群より選択される少なくとも1種の凝析法が好ましい。本開示の製造方法においては、また、水性分散液を撹拌しながら、超音波凝析法、ウルトラファインバブルを用いた凝析法、アルカリを用いた凝析法、酸を用いた凝析法、酸化剤を用いた凝析法、有機溶剤を用いた凝析法、および、ラジカル発生剤を用いた凝析法からなる群より選択される少なくとも1種の凝析法を用いて、非溶融加工性PTFEを凝析させることも好ましい。
【0401】
後述するように、熱処理を比較的低温で行うと、湿潤粉末中の親水基を有する含フッ素化合物の含有量を十分に低減することができず、それによって、安定した押出圧力で押出成形することができる非溶融加工性PTFEが得られないことがある。一方で、熱処理温度が高すぎると、湿潤粉末中の親水基を有する含フッ素化合物の含有量を低減することができるものの、得られる非溶融加工性PTFEの押出圧力が高くなりすぎる。熱処理を比較的低温で行い、なおかつ、上記の方法により凝析を行うことによって、親水基を有する含フッ素化合物の十分な除去と、低い押出圧力の安定化とを、見事に両立させることができる。
【0402】
非溶融加工性PTFEを凝析させる水性分散液の温度は、3~95℃であってよく、5℃以上であってよく、10℃以上であってよく、85℃以下であってよく、75℃以下であってよく、60℃以下であってよい。
【0403】
撹拌による凝析法においては、非溶融加工性PTFE粒子が凝析する程度に水性分散液を強く撹拌する。撹拌は、たとえば、撹拌機付きの容器を用いて行うことができる。撹拌による凝析法による凝析は、インラインミキサー等を使用して連続的に行ってもよい。
【0404】
超音波凝析法においては、非溶融加工性PTFE粒子が凝析する程度の強い超音波を水性分散液に対して照射する。
【0405】
超音波の出力は、好ましくは100W以上であり、より好ましくは200W以上であり、さらに好ましくは300W以上であり、尚さらに好ましくは400W以上であり、特に好ましくは500W以上であり、好ましくは3000W以下であり、より好ましくは1000W以下であり、さらに好ましくは800W以下である。
【0406】
超音波の周波数は、好ましくは15kHz以上であり、より好ましくは20kHz以上であり、さらに好ましくは25kHz以上であり、尚さらに好ましくは30kHz以上であり、特に好ましくは40kHz以上であり、好ましくは100kHz以下であり、より好ましくは80kHz以下であり、さらに好ましくは50kHz以下である。
【0407】
超音波の照射時間は、好ましくは60秒以上であり、より好ましくは300秒以上であり、好ましくは20分以下である。
【0408】
超音波の照射は、市販の超音波発生装置を用いて行うことができる。超音波照射装置としては、市販の超音波発信装置(例えば、超音波ホモジナイザー)、超音波発信器、循環式超音波照射機、超音波振動子、超音波洗浄器などが挙げられる。
【0409】
超音波を照射する具体的な方法としては、例えば、超音波ホモジナイザーのノズル部分を水性分散液に浸して行う方法や、PTFE水性分散液を導入した容器に投げ込み式の超音波振動子を浸して照射する方法、予め水性媒体などを仕込んだ超音波洗浄器にPTFE水性分散液が入った容器を導入し照射する方法、槽型に製作された超音波洗浄器や超音波発信器にPTFE分散液を導入し照射する方法、棒状超音波照射体を備えた槽にPTFE水性分散液を導入し、超音波を照射する方法等が挙げられる。水性分散液を撹拌しながら、水性分散液に超音波を照射することも好ましい。
【0410】
ウルトラファインバブルを用いた凝析法においては、非溶融加工性PTFE粒子が凝析する程度の量のウルトラファインバブルを水性分散液中に発生させる。ウルトラファインバブルとは、直径が1μm以下の気泡である。ウルトラファインバブルは、たとえば、水性分散液に超音波を照射し、キャビテーションを起こすことによって、発生させることができる。ウルトラファインバルを発生させた水性分散液を撹拌することも好ましい。
【0411】
ウルトラファインバブルによる処理の時間は、好ましくは60秒以上であり、より好ましくは300秒以上であり、好ましくは20分以下である。
【0412】
アルカリを用いた凝析法においては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等のアルカリを用いることができる。アンモニアとしては、炭酸水素アンモニウムまたは炭酸アンモニウムが好ましい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムおよびアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。アルカリを含有する水性分散液を撹拌することも好ましい。
【0413】
親水基を有する含フッ素化合物として、アニオン性基を有する含フッ素化合物を含有する水性分散液に対して、アルカリを用いて凝析を行った場合には、含フッ素化合物のアニオン性基が塩型に変換されることにより含フッ素化合物の水溶性が高くなるので、凝析により得られる湿潤粉末の洗浄によって湿潤粉末中から含フッ素化合物を除去しやすい利点がある。洗浄後も湿潤粉末中に残留する塩型のアニオン性基を有する含フッ素化合物は、揮発しにくいことから、湿潤粉末の熱処理によっても除去しにくい傾向があるが、熱処理前に湿潤粉末を、酸を用いて洗浄しておくと、含フッ素化合物の含有量を一層円滑に低減することができる。したがって、アルカリを用いて凝析を行った後、得られた湿潤粉末を酸を用いて洗浄し、洗浄した湿潤粉末を熱処理することも、好適な実施形態の一つである。
【0414】
酸を用いた凝析法においては、有機酸または無機酸を用いることができる。酸としては、熱処理時に残留しにくい観点から無機酸が好ましく、特に、硝酸、硫酸、発煙硫酸、過塩素酸および塩酸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、硝酸、硫酸および塩酸からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。上記有機酸としては、コハク酸、シュウ酸、クエン酸、トリフルオロ酢酸等などが挙げられる。酸の添加量は限定されず、水性分散液のpH等によって適宜設定すればよい。酸を含有する水性分散液を撹拌することも好ましい。
【0415】
酸化剤を用いた凝析法においては、無機酸およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。無機酸としては、亜硝酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、過硫酸、塩酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、フッ素化水素酸、臭素酸、ヨウ素酸、リン酸、ホウ酸、クロム酸、ニクロム酸、過マンガン酸などが挙げられる。無機酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、銀塩などが挙げられる。酸化剤としては、硝酸およびその塩、ならびに、過塩素酸およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、硝酸塩および過塩素酸塩からなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましく、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウムおよび過塩素酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。2以上の酸化剤を組み合わせて用いてもよい。たとえば、無機酸と無機酸塩とを組み合わせて用いてもよいし、硝酸と硝酸塩(たとえば、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムなど)を組み合わせて用いてもよい。酸化剤を含有する水性分散液を撹拌することも好ましい。
【0416】
酸化剤の添加量は、水性分散液中の非溶融加工性PTFEに対して、好ましくは0.01~20質量%であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。一実施形態において、水性分散液に酸化剤を添加し、撹拌を行うことにより、非溶融加工性PTFEを凝析させる。
【0417】
有機溶剤を用いた凝析法においては、たとえば、以下の有機溶剤を用いることができる。
アルコール;
酢酸、プロピオン酸、エトキシ酢酸、吉草酸などのカルボン酸;
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、炭酸ジメチルなどのエステル;
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、3-メチル-2-シクロペンテノンなどのケトン;
ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル
【0418】
有機溶剤としては、なかでも、アルコールが好ましい。アルコールは、一価アルコール、二価アルコールおよび三価アルコールのいずれであってもよい。アルコールとしては、一価アルコールが好ましい。アルコールの炭素数は、好ましくは2~7であり、より好ましくは3以上であり、より好ましくは5以下であり、さらに好ましくは4以下である。有機溶剤としては、メタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-ブタノールおよび1-ペンタノールからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、1-プロパノール、2-プロパノール、2-ブタノールおよび1-ペンタノールからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、1-プロパノール、2-ブタノールおよび1-ペンタノールからなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましい。
【0419】
有機溶剤の添加量は、水性分散液中の非溶融加工性PTFEに対して、好ましくは1.0質量%以上に相当する重量である。凝析に用いる有機溶剤の量は、より好ましくは5.0質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは50倍に相当する重量以下の量、より好ましくは10倍に相当する重量以下の量、更に好ましくは5倍に相当する重量以下の量である。有機溶剤を含有する水性分散液を撹拌することも好ましい。
【0420】
ラジカル発生剤を用いた凝析法においては、水溶性ラジカル発生剤を好適に用いることができる。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、無機過酸化物、有機アゾ化合物、酸化剤と還元剤との組み合わせなどが挙げられ、無機過酸化物、有機過酸化物および酸化剤と還元剤との組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。一実施形態において、水性分散液にラジカル発生剤を添加し、水性分散液をラジカル発生剤の分解温度以上に加熱して、非溶融加工性PTFEを凝析させる。ラジカル発生剤を含有する水性分散液を撹拌することも好ましい。
【0421】
無機過酸化物としては、水溶性無機過酸化物が好ましい。無機過酸化物としては、過酸化水素、過塩素酸塩、過ホウ酸塩、過リン酸塩、過炭酸塩、過硫酸塩などが挙げられ、過硫酸塩が好ましい。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、過硫酸アンモニウムがより好ましい。
【0422】
有機過酸化物としては、水溶性有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシドなどのパーオキシジカーボネートが挙げられる。
【0423】
ラジカル発生剤として、酸化剤と還元剤との組み合わせて用いることができる。酸化剤と還元剤とを組み合わせて用いることにより、酸化剤と還元剤とのレドックス反応によってラジカル発生剤からラジカルを発生させることができるので、熱処理の際の温度を低下させることができる。
【0424】
酸化剤としては、過硫酸塩、有機過酸化物、過マンガン酸カリウム、三酢酸マンガン、セリウム硝酸アンモニウムなどが挙げられる。還元剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。酸化剤の分解速度を上げるため、銅塩、鉄塩を添加することも好ましい。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
【0425】
ラジカル発生剤を含有する水性分散液の加熱温度は、ラジカル発生剤が分解してラジカルが発生する温度(分解温度)以上であれば特に限定されないが、好ましくは35℃以上であり、より好ましくは40℃以上であり、さらに好ましくは45℃以上であり、特に好ましくは50℃以上であり、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは110℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下であり、特に好ましくは90℃以下である。
【0426】
本開示の製造方法においては、非溶融加工性PTFEの凝析により生じた凝析物を回収することにより湿潤粉末を得た後、湿潤粉末を洗浄することが好ましい。洗浄の回数は、1回であってよいし、2回以上であってよい。
【0427】
洗浄方法としては、撹拌による洗浄法、超音波洗浄法、ウルトラファインバブルを用いた洗浄法、アルカリを用いた洗浄法、酸を用いた洗浄法、および、ラジカル発生剤を用いた洗浄法からなる群より選択される少なくとも1種の洗浄法が好ましい。
【0428】
後述するように、熱処理を比較的低温で行うと、湿潤粉末中の親水基を有する含フッ素化合物の含有量を十分に低減することができず、それによって、安定した押出圧力で押出成形することができる非溶融加工性PTFEが得られないことがある。一方で、熱処理温度が高すぎると、湿潤粉末中の親水基を有する含フッ素化合物の含有量を低減することができるものの、得られる非溶融加工性PTFEの押出圧力が高くなりすぎる。熱処理を比較的低温で行い、なおかつ、上記の方法により洗浄を行うことによって、親水基を有する含フッ素化合物の十分な除去と、低い押出圧力の安定化とを、見事に両立させることができる。さらに、熱処理を比較的低温で行い、上記の方法により凝析を行い、なおかつ、上記の方法により洗浄を行うことによって、親水基を有する含フッ素化合物の十分な除去と、低い押出圧力の安定化とを、一層容易に、見事に両立させることができる。
【0429】
湿潤粉末を洗浄する際の温度は、3~95℃であってよい。湿潤粉末を洗浄する際の温度は、5℃以上または10℃以上であってよい。湿潤粉末を洗浄する際の温度は、85℃以下、75℃以下または60℃以下であってよい。
【0430】
撹拌による洗浄法においては、湿潤粉末を水中に投入し、水を撹拌する。撹拌は、たとえば、撹拌機付きの容器を用いて行うことができる。洗浄は複数回行うことが好ましい。複数回洗浄を行う場合、最終の洗浄は30℃以下で行うことがより好ましい。
【0431】
超音波洗浄法においては、湿潤粉末を液体中に投入し、液体に対して超音波を照射する。液体としては、水またはアルコールが挙げられる。アルコールとしては、メタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-ブタノールおよび1-ペンタノールからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、メタノールがより好ましい。
【0432】
超音波の出力は、好ましくは100W以上であり、より好ましくは200W以上であり、さらに好ましくは300W以上であり、尚さらに好ましくは400W以上であり、特に好ましくは500W以上であり、好ましくは3000W以下であり、より好ましくは1000W以下であり、さらに好ましくは800W以下である。
【0433】
超音波の周波数は、好ましくは15kHz以上であり、より好ましくは20kHz以上であり、さらに好ましくは25kHz以上であり、尚さらに好ましくは30kHz以上であり、特に好ましくは40kHz以上であり、好ましくは100kHz以下であり、より好ましくは80kHz以下であり、さらに好ましくは50kHz以下である。
【0434】
超音波の照射時間は、好ましくは60秒以上であり、より好ましくは300秒以上であり、好ましくは180分以下であり、より好ましくは150分以下であり、さらに好ましくは120分以下であり、特に好ましくは20分以下である。
【0435】
超音波の照射は、市販の超音波発生装置を用いて行うことができる。超音波照射装置としては、市販の超音波発信装置(例えば、超音波ホモジナイザー)、超音波発信器、循環式超音波照射機、超音波振動子、超音波洗浄器などが挙げられる。
【0436】
粉末および液体に対して超音波を照射する具体的な方法としては、例えば、超音波ホモジナイザーのノズル部分を液体に浸して行う方法や、液体を導入した容器に投げ込み式の超音波振動子を浸して照射する方法、予め水性媒体などを仕込んだ超音波洗浄器に液体が入った容器を導入し照射する方法、槽型に製作された超音波洗浄器や超音波発信器に液体を導入し照射する方法、棒状超音波照射体を備えた槽に液体を導入し、超音波を照射する方法等が挙げられる。
【0437】
ウルトラファインバブルを用いた洗浄法においては、湿潤粉末を水中に投入し、ウルトラファインバブルを、水中に発生させる。ウルトラファインバブルとは、直径が1μm以下の気泡である。ウルトラファインバブルは、たとえば、水に超音波を照射し、キャビテーションを起こすことによって、発生させることができる。
【0438】
ウルトラファインバブルによる洗浄の時間は、好ましくは60秒以上であり、より好ましくは300秒以上であり、好ましくは20分以下である。
【0439】
アルカリを用いた洗浄法においては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等のアルカリを用いることができる。アンモニアとしては、炭酸水素アンモニウムまたは炭酸アンモニウムが好ましい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムおよびアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0440】
親水基を有する含フッ素化合物として、アニオン性基を有する含フッ素化合物を含有する湿潤粉末に対して、アルカリを用いて洗浄を行った場合には、含フッ素化合物のアニオン性基が塩型に変換されることにより含フッ素化合物の水溶性が高くなるので、得られる湿潤粉末の洗浄によって湿潤粉末中から含フッ素化合物を除去しやすい利点がある。洗浄後も湿潤粉末中に残留する塩型のアニオン性基を有する含フッ素化合物は、揮発しにくいことから、湿潤粉末の熱処理によっても除去しにくい傾向があるが、熱処理前に湿潤粉末を、酸を用いて洗浄しておくと、含フッ素化合物の含有量を一層円滑に低減することができる。したがって、湿潤粉末をアルカリを用いて洗浄し、次に湿潤粉末を酸を用いて洗浄し、洗浄した湿潤粉末を熱処理することも、好適な実施形態の一つである。
【0441】
酸を用いた洗浄法においては、有機酸または無機酸を用いることができるが、熱処理時に残留しにくい観点から無機酸が好ましく、特に、硝酸、硫酸、発煙硫酸、過塩素酸および塩酸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、硝酸、硫酸および塩酸からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。上記有機酸としては、コハク酸、シュウ酸、クエン酸、トリフルオロ酢酸等などが挙げられる。酸の添加量は限定されず、粉末を含む水のpH等によって適宜設定すればよい。一実施形態において、湿潤粉末および酸を水に投入し、水を撹拌することにより、洗浄を行う。
【0442】
ラジカル発生剤を用いた洗浄法においては、水溶性ラジカル発生剤を好適に用いることができる。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、無機過酸化物、有機アゾ化合物、酸化剤と還元剤との組み合わせなどが挙げられ、無機過酸化物、有機過酸化物および酸化剤と還元剤との組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。一実施形態において、湿潤粉末およびラジカル発生剤を水に投入し、水をラジカル発生剤の分解温度以上に加熱し、撹拌することにより、洗浄を行う。
【0443】
洗浄に用いるラジカル発生剤として、ラジカル発生剤を用いた凝析法において用いることができるラジカル発生剤を用いることができる。
【0444】
水の加熱温度は、ラジカル発生剤が分解してラジカルが発生する温度(分解温度)以上であれば特に限定されないが、好ましくは35℃以上であり、より好ましくは40℃以上であり、さらに好ましくは45℃以上であり、特に好ましくは50℃以上であり、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは110℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下であり、特に好ましくは90℃以下である。
【0445】
本開示の製造方法においては、湿潤粉末を洗浄した後、洗浄した湿潤粉末に対して、熱処理を行うことが好ましい。上記熱処理は、工程(C)として実施することもできる。
【0446】
熱処理する湿潤粉末の水分含有量は、湿潤粉末に対し10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、また、150質量%以下であることが好ましく、100質量%以下であることがより好ましい。
【0447】
熱処理の温度は、好ましくは10~280℃である。熱処理の温度は、100℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上または160℃以上であってよい。熱処理の温度は、230℃以下、210℃以下、200℃以下、190℃以下、185℃以下または180℃以下であってよい。本開示の製造方法においては、このように、比較的低温で熱処理を行うことが好ましい。比較的低温で熱処理を行うことによって、親水基を有する含フッ素化合物の含有量が低減されており、低い押出圧力および安定した押出圧力で押出成形することができる非溶融加工性PTFEを製造することができる。
【0448】
熱処理の時間は、好ましくは5~3000分間である。熱処理の時間は、10分間以上、15分間以上、20分間以上、30分間以上、50分間以上、100分間以上、150分間以上または200分間以上であってよい。熱処理の時間は、2500分間以下または2000分間以下であってよい。本開示の製造方法においては、比較的低温で比較的長時間の熱処理を行うことが好ましい。
【0449】
熱処理は、空気中で行うことができる。また、熱処理を、酸素リッチガスまたはオゾン含有ガス中で行うと、親水基を有する含フッ素化合物の含有量の低減を一層促進させることができる。
【0450】
熱処理の方法としては、湿潤粉末に熱風を接触させることにより行う方法、または、水蒸気の存在下に湿潤粉末を加熱することにより行う方法が好ましい。熱処理を比較的低温で行うと、湿潤粉末中の親水基を有する含フッ素化合物の含有量を十分に低減することができず、それによって、安定した押出圧力で押出成形することができる非溶融加工性PTFEが得られないことがある。一方で、熱処理温度が高すぎると、湿潤粉末中の親水基を有する含フッ素化合物の含有量を低減することができるものの、得られる非溶融加工性PTFEの押出圧力が高くなりすぎる。湿潤粉末を上記した温度範囲内で熱処理することに加えて、熱風または水蒸気を用いて熱処理を行うことによって、親水基を有する含フッ素化合物の十分な除去と、低い押出圧力の安定化とを、見事に両立させることができる。
【0451】
熱風を用いた熱処理は、湿潤粉末に熱風を吹き付けることにより行うことができる。一実施形態において、湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置し、配置した湿潤粉末に対して、熱風を吹き付ける。別の一実施形態においては、湿潤粉末を乾燥機内に配置し、乾燥機内で熱風を循環させることにより、熱風を吹き付ける。
【0452】
湿潤粉末に吹き付ける熱風の風速は、0.01m/s以上、0.03m/s以上、0.05m/s以上、0.10m/s以上、0.20m/s以上、0.30m/s以上または0.40m/s以上であってよい。また、湿潤粉末に吹き付ける熱風の風速は、10m/s以下、5.0m/s以下、3.0m/s以下、2.0m/s以下または1.0m/s以下であってよい。
【0453】
湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置し、配置した湿潤粉末に対して、熱風を吹き付ける熱処理方法(本開示において、「通気乾燥処理」ということがある)における処理時間は、5分以上、10分以上、15分以上、20分以上、30分以上、40分以上、50分以上、60分以上または80分以上であってよく、300分以下または200分以下であってよい。
【0454】
湿潤粉末に吹き付ける熱風の温度は、熱処理の温度として上記したとおりである。通気乾燥処理における処理温度(熱風の温度)は、150℃超、155℃以上、160℃以上、165℃以上、170℃以上、175℃以上または180℃以上であってよい。また、通気乾燥処理における処理温度(熱風の温度)は、260℃以下、235℃以下、230℃以下、225℃以下、220℃以下、215℃以下または210℃以下であってよい。
【0455】
通気乾燥処理において、たとえば、処理温度(熱風の温度)を250℃超280℃以下とし、なおかつ、処理時間を50分以下とすることができる。また、通気乾燥処理において、たとえば、処理温度(熱風の温度)を200℃超250℃以下とし、なおかつ、処理時間を100分以下とすることができる。また、通気乾燥処理において、たとえば、処理温度(熱風の温度)を150℃超200℃以下とし、なおかつ、処理時間を200分以下とすることができる。
【0456】
通気乾燥処理における熱風の風速は、0.01m/s以上、0.03m/s以上、0.05m/s以上または0.10m/s以上であってよい。また、通気乾燥処理における熱風の風速は、10m/s以下、5.0m/s以下、3.0m/s以下、2.0m/s以下または1.0m/s以下であってよい。
【0457】
熱処理工程で電気炉を使用する場合では、電気炉内に、ガス、空気または水蒸気を供給する量、電気炉内に、ガス、空気または水蒸気を循環させる量、電気炉外に、ガス、空気または水蒸気を排出する量などを調節することができる。
【0458】
電気炉から排出するガス、空気または水蒸気の量の割合は、電気炉内で循環する量に対して3容量%以上、5%容量以上または10%容量以上であってよく、95容量%以下、80容量%以下または75%容量以下であってよい。
【0459】
通気乾燥処理における電気炉から排出するガス、空気または水蒸気の量の割合は、電気炉内で循環する量に対して、3容量%以上、5%容量以上または10%容量以上であってよく、50容量%以下、40容量%以下または30容量%以下であってよい。
【0460】
熱風循環式乾燥処理における電気炉から排出するガス、空気または水蒸気の量の割合は、電気炉内で循環するに対して、10容量%以上、20%容量以上または30%容量以上であってよく、95容量%以下、80容量%以下または75容量%以下であってよい。
【0461】
熱処理温度が200℃超えの場合には、電気炉から排出するガス、空気または水蒸気の量の割合は、電気炉内で循環する量に対して、3容量%以上、5%容量以上または10%容量以上であってよく、50容量%以下、40容量%以下または30容量%以下であってよい。
【0462】
熱処理温度が200℃以下の場合には、電気炉から排出するガス、空気または水蒸気の量の割合は、電気炉内で循環するに対して、10容量%以上、20%容量以上または30%容量以上であってよく、95容量%以下、80容量%以下または75容量%以下であってよい。
【0463】
湿潤粉末を乾燥機内に配置し、乾燥機内で熱風を循環させることにより、熱風を吹き付ける熱処理方法(本開示において、「熱風循環式乾燥処理」ということがある)における処理時間は、120分以上、180分以上、240分以上または300分以上であってよく、1500分以下または1200分以下であってよい。
【0464】
湿潤粉末に吹き付ける熱風の温度は、熱処理の温度として上記したとおりである。また、熱風循環式乾燥処理における処理温度(熱風の温度)は、150℃超、155℃以上、160℃以上、165℃以上、170℃以上、175℃以上または180℃以上であってよく、235℃以下、230℃以下、225℃以下、220℃以下、215℃以下または210℃以下であってよい。
【0465】
熱風循環式乾燥処理における熱風の風速は、0.10m/s以上、0.50m/s以上または1.0m/s以上であってよく、10m/s以下または5.0m/s以下であってよい。
【0466】
熱処理は、湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置した状態で、行うことができる。底面及び/又は側面に通気性のある容器は、熱処理温度に耐え得るものであればよいが、ステンレス等の金属製であることが好ましい。
【0467】
底面及び/又は側面に通気性のある容器としては、底面及び/又は側面に通気性を有するトレー(バット)が好ましく、底面及び/又は側面がメッシュで作製されたトレー(メッシュトレー)が更に好ましい。上記メッシュは、織網とパンチングメタルのいずれかであることが好ましい。メッシュが織網である場合の織り方としては、例えば、平織、綾織、平畳織、綾畳織が挙げられる。さらに、メッシュと織地を組み合わせる方法も挙げられる。
【0468】
上記織地は、オーブン内のトレー乾燥で用いられる穴開き鍋のライナーか或はオーブン内で運転される連続ベルトのような形態であってもよく、連続ベルトの場合の工程段階は連続実施である、即ち該ベルト通路の1つの末端の所に該凝集物を連続的に置きそしてこのベルト通路の反対側末端から精製されたPTFE微粉を連続的に取り出すが、ここでは、該凝集物の浅い床が該通路に沿って1つの末端から反対側の末端に移動しながら連続的に加熱空気にさらされる。いずれの形態においても、この織地は該凝集物のための直接的な支持体であり、追加的ポリマーの精製で再使用可能である。
【0469】
この織地は如何なる構造のものであってもよく、例えば使用する織地の形態に応じて要求される寸法一体性を与えるニット、スパンボンデッド(spunbonded)または織物などであってもよい。ニットまたは織物構造の場合この織地を糸から作成し、そしてスパンボンデッド構造の場合一般に繊維から作成する。この織地を構成する糸または繊維は、場合しだいで、該精製段階中該加熱空気を通すが該PTFE凝集物/微粉粒子を上に保持する(即ち該PTFE微粉を通さない)開口部を、この織地を構成する糸または繊維の間に与える。この織地内の開口部は該PTFE微粉を保持する目的で小さくなければならないが、上記開口部はまた、精製を適度な熱風接触時間で行うに充分な速度で該加熱空気および蒸発した汚染物を通すに充分なほど大きくなければならない。
【0470】
上記メッシュの目開きは、2000μm以下(ASTM規格の10メッシュ以上)が好ましく、595μm以下(30メッシュ以上)がより好ましく、297μm以下(50メッシュ以上)が更に好ましく、177μm以下(80メッシュ以上)が更により好ましく、149μm以下(100メッシュ以上)が殊更に好ましく、74μm以下(200メッシュ以上)が特に好ましい。また、25μm以上(500メッシュ以下)が好ましい。
【0471】
上記メッシュがパンチングメタルである場合の開孔率は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましい。また、95%以下が好ましい。
【0472】
湿潤粉末の配置量は、10g/cm以下であることが好ましく、8g/cm以下であることがより好ましく、5g/cm以下であることが更に好ましく、3g/cm以下であることが特に好ましく、また、0.01g/cm以上であることが好ましく、0.05g/cm以上であることがより好ましく、0.1g/cm以上であることが更に好ましい。
【0473】
水蒸気を用いた熱処理は、湿潤粉末に高温のスチームを吹き付けることにより行うことができる。一実施形態において、湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置し、配置した湿潤粉末に対して、高温のスチームを吹き付ける。
【0474】
水蒸気を用いた熱処理は、常圧下または加圧下に行うことができる。水蒸気を用いた熱処理を行う際の圧力は、0.10~4.0MPaであってよい。加圧下で行う熱処理の圧力は、0.10MPa超であってよく、0.2MPa以下であってよい。
【0475】
水蒸気を用いた熱処理を、減圧下に行ってもよい。減圧下で行う熱処理の圧力は、0.10MPa未満または0.09MPa以下であってよく、0.01MPa以上であってよい。
【0476】
水蒸気を用いた熱処理における処理時間は、5分以上、10分以上、15分以上、30分以上または40分以上であってよく、10時間以下、8時間以下、6時間以下または4時間以下であってよい。
【0477】
湿潤粉末に吹き付ける水蒸気の温度は、熱処理の温度として上記したとおりである。また、水蒸気を用いた熱処理における処理温度(水蒸気の温度)は、100℃以上、120℃以上、140℃以上、160以上または170℃以上であってよく、350℃以下、300℃以下、250℃以下、230℃以下または210℃以下であってよい。
【0478】
水蒸気を用いた熱処理における加熱蒸気発生量は、1kg/h以上、3kg/h以上、5kg/h以上または10kg/h以上であってよく、500kg/h以下、300kg/h以下、100kg/h以下、50kg/h以下または30kg/h以下であってよい。
【0479】
熱処理は、電気炉又はスチーム炉を用いて行うことができる。例えば、並行流箱型電気炉、通気式箱型電気炉、通気式コンベア式電気炉、トンネル電気炉、バンド電気炉、ターボ縦型電気炉、輻射式コンベア式電気炉、流動層電気炉、通気回転電気炉、溝型撹拌電気炉、多段円盤電気炉、真空電気炉、円筒電気炉、振動電気炉、凍結電気炉、ドラム電気炉、溝型電気炉、逆円錐型電気炉、押出し電気炉、水蒸気加熱管束回転電気炉、赤外線電気炉、過熱水蒸気電気炉、高周波電気炉、マイクロウェーブ電気炉、攪拌式電気炉、気流式電気炉、熱風循環式電気炉等の電気炉、又は、上記に対応するスチーム炉(上記各電気炉の装置名における電気炉をスチーム炉に読み替えた装置)を用いて行うことができる。
【0480】
熱処理により、湿潤粉末を乾燥させることも好ましい。常圧下または加圧下で水蒸気の存在下に湿潤粉末を加熱する場合などには、湿潤粉末が十分に乾燥されないことが通常であるので、熱処理後に湿潤粉末を乾燥して、非溶融加工性PTFE粉末を得ることが好ましい。
【0481】
湿潤粉末の熱処理、または、熱処理および乾燥により、通常は、水分含有量が湿潤粉末に対し0.01質量%以下または0.005質量%以下である非溶融加工性PTFE粉末を得ることができる。
【0482】
工程(C)において、上記乾燥は、通常、上記湿潤粉末をあまり流動させない状態、好ましくは静置の状態を保ちながら、真空、高周波、熱風等の手段を用いて行う。粉末同士の、特に高温での摩擦は、一般にファインパウダー型のPTFEに好ましくない影響を与える。これは、この種のPTFEからなる粒子が小さな剪断力によっても簡単にフィブリル化して、元の安定な粒子構造の状態を失う性質を持っているからである。
上記乾燥の温度は、押出圧力が低下する観点では、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、230℃以下が更に好ましく、210℃以下が更により好ましく、190℃以下が更により好ましく、170℃以下が特に好ましい。破断強度が向上する観点では、10℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、150℃以上が更に好ましく、170℃以上が更により好ましく、190℃以上が更により好ましく、210℃以上が特に好ましい。上記強度比を一層高くするために、この温度範囲で適宜調整することが好ましい。
【0483】
工程(C)においては、工程(B)で得られた湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置し、130~300℃の温度で2時間以上の時間熱処理することが好ましい。このように極めて限定された条件下で熱処理することにより、分子量1000以下の含フッ素化合物を水とともに効率よく除去することができ、上述した化合物(1)及び(2)の含有量並びに水分の含有量を上述の範囲内とすることができる。
【0484】
工程(C)における熱処理の温度は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、140℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましく、180℃以上であることが更により好ましく、200℃以上であることが更に好ましく、220℃以上であることが特に好ましく、また、280℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましい。
【0485】
工程(C)における熱処理の時間は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、5時間以上であることが好ましく、10時間以上であることがより好ましく、15時間以上であることが更に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、100時間であることが好ましく、50時間であることがより好ましく、30時間であることが更に好ましい。
【0486】
工程(C)における風速は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、0.01m/s以上であることが好ましく、0.03m/s以上であることがより好ましく、0.05m/s以上であることが更に好ましく、0.1m/s以上であることが更により好ましい。また、粉末の飛び散りを抑制する観点で、50m/s以下が好ましく、30m/s以下がより好ましく、10m/s以下が更に好ましい。
【0487】
工程(C)における熱処理は、電気炉又はスチーム炉を用いて行うことができる。例えば、並行流箱型電気炉、通気式箱型電気炉、通気式コンベア式電気炉、バンド電気炉、輻射式コンベア式電気炉、流動層電気炉、真空電気炉、攪拌式電気炉、気流式電気炉、熱風循環式電気炉等の電気炉、又は、上記に対応するスチーム炉(上記各電気炉の装置名における電気炉をスチーム炉に読み替えた装置)を用いて行うことができる。水分を一層効率よく除去できる点で、並行流箱型電気炉、通気式箱型電気炉、通気式コンベア式電気炉、バンド電気炉、流動層電気炉、熱風循環式電気炉、上記に対応するスチーム炉(上記各電気炉の装置名における電気炉をスチーム炉に読み替えた装置)が好ましい。
【0488】
工程(C)における熱処理は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、上記湿潤粉末を底面及び/又は側面に通気性のある容器に配置して行うことが好ましい。上記底面及び/又は側面に通気性のある容器は、上記熱処理温度に耐え得るものであればよいが、ステンレス等の金属製であることが好ましい。
上記底面及び/又は側面に通気性のある容器としては、底面及び/又は側面に通気性を有するトレー(バット)が好ましく、底面及び/又は側面がメッシュで作製されたトレー(メッシュトレー)が更に好ましい。
上記メッシュは、織網とパンチングメタルのいずれかであることが好ましい。
上記メッシュの目開きは、2000μm以下(ASTM規格の10メッシュ以上)が好ましく、595μm以下(30メッシュ以上)がより好ましく、297μm以下(50メッシュ以上)が更に好ましく、177μm以下(80メッシュ以上)が更により好ましく、149μm以下(100メッシュ以上)が殊更に好ましく、74μm以下(200メッシュ以上)が特に好ましい。また、25μm以上(500メッシュ以下)が好ましい。
上記メッシュが織網である場合の織り方としては、例えば、平織、綾織、平畳織、綾畳織が挙げられる。
上記メッシュがパンチングメタルである場合の開孔率は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましい。また、95%以下が好ましい。
【0489】
工程(C)において、上記湿潤粉末の配置量は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、10g/cm以下であることが好ましく、8g/cm以下であることがより好ましく、5g/cm以下であることが更に好ましく、3g/cm以下であることが特に好ましく、また、0.01g/cm以上であることが好ましく、0.05g/cm以上であることがより好ましく、0.1g/cm以上であることが更に好ましい。
【0490】
工程(C)において熱処理する湿潤粉末の水分含有量は、水分及び含フッ素化合物を一層効率よく除去できる点で、上記湿潤粉末に対し10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、また、150質量%以下であることが好ましく、100質量%以下であることがより好ましい。
【0491】
本開示のPTFEファインパウダーは、従来公知のPTFEファインパウダーと比べても何ら劣ることのない優れた物性を有し、従来公知のPTFEファインパウダーと同じ方法で使用でき、同じ用途に使用することができる。
【0492】
本開示のPTFEファインパウダーは、成形体の原料として特に有用である。本開示のPTFEファインパウダーを用いた成形体も、本開示の好適な態様である。
【0493】
上記成形体は、本開示のPTFEファインパウダーを成形することで得ることができる。
【0494】
上記成形は、特に限定されないが、通常、ペースト押出にて行う。
上記ペースト押出は、所望する成形体の形状、用途等に応じて適宜条件を設定して行うことができ、例えば、押出助剤を混合して約1~24時間熟成し、圧力0.5~5.0MPaにて予備成形を行った後、押出圧力2~100MPaにて押出を行い、360~460℃にて焼成することにより行うことができる。
【0495】
上記成形体は、例えば、航空機、自動車、医療機器、精密機械等において、耐熱性や耐薬品性が要求されるプリント基板、電線被覆、チューブ等として好適に使用することができ、なかでも、芯線密着強度等が要求される電線被覆材、又は、医薬用チューブ等のチューブとして使用することが好ましい。
【0496】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例
【0497】
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0498】
各種物性は下記方法にて測定した。
【0499】
<ポリマー固形分濃度>
PTFE水性分散液1gを、送風乾燥機中で150℃、60分の条件で乾燥し、水性分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率で表した値を採用した。
【0500】
<平均一次粒子径>
PTFE水性分散液を水で固形分濃度が0.15質量%になるまで希釈し、得られた希釈ラテックスの単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向径を測定して決定した数基準長さ平均一次粒子径とを測定して、検量線を作成した。この検量線を用いて、各試料の550nmの投射光の実測透過率から平均一次粒子径を決定した。
【0501】
<水分含有量>
約20gのPTFE組成物を150℃、2時間加熱した前後の質量を測定し、以下の式に従って算出した。試料を3回取り、それぞれ算出した後、平均を求め、当該平均値を採用した。
水分含有量(質量%)=[(加熱前のPTFE組成物の質量(g))-(加熱後のPTFE組成物の質量(g))]/(加熱前のPTFE組成物の質量(g))×100
【0502】
<標準比重(SSG)>
ASTM D4895 89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定した。
【0503】
<熱不安定指数(TII)>
ASTM D 4895-89に準拠して測定した。
【0504】
<変性モノマーの含有量>
HFP含有量は、PTFE組成物をプレス成形することで薄膜ディスクを作製し、薄膜ディスクをFT-IR測定した赤外線吸光度から、982cm-1における吸光度/935cm-1における吸光度の比に0.3を乗じて求めた。
【0505】
<吸熱ピーク温度>
吸熱ピーク温度は、300℃以上の温度に加熱した履歴のないPTFEの組成物約10mgを精秤し、専用のアルミパンに収納して、TG/DTA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて測定した。吸熱ピーク温度は、アルミパンを大気雰囲気下、25℃から600℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温させることにより示差熱(DTA)曲線を得て、得られた示差熱(DTA)曲線における極小値に対応する温度とした。
【0506】
<0.1%質量減少温度>
300℃以上の温度に加熱した履歴のないPTFEの組成物約10mgを精秤し、専用のアルミパンに収納してTG・DTA(示差熱・熱重量同時測定装置)を測定した。0.1%質量減少温度は、アルミパンを大気雰囲気下、25℃から600℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温させ、0.1mass%の重量減少した点に対応する温度とした。
【0507】
<1.0%質量減少温度>
300℃以上の温度に加熱した履歴のないPTFEの組成物約10mgを精秤し、専用のアルミパンに収納してTG・DTA(示差熱・熱重量同時測定装置)を測定した。1.0%質量減少温度は、アルミパンを大気雰囲気下、25℃から600℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温させ、1.0mass%の重量減少した点に対応する温度とした。
【0508】
<押出圧力>
押出圧力は、特開2002-201217号公報記載の方法に準拠し、下記方法で求めた。
PTFE組成物100gに、潤滑剤(商品名:アイソパーH(登録商標)、エクソン社製)21.7gを添加し、室温にてガラスビン中で3分間混合した。次いで、ガラスビンを、押出前少なくとも1時間、室温(25℃)に放置し、潤滑化樹脂を得た。潤滑化樹脂をオリフィス(直径2.5mm、ランド長11mm、導入角30°)を通して、室温で100:1の減速比でペースト押出し、均一なビード(beading;押出成形体)を得た。押出スピード、すなわち、ラムスピードは、20インチ/分(51cm/分)とした。ペースト押出において押出負荷が平衡状態になった時の負荷を測定し、ペースト押出に用いたシリンダーの断面積で除することにより、押出圧力を算出した。
【0509】
<延伸試験>
延伸試験、及び破断強度の測定は、特開2002-201217号公報記載の方法に準拠し、下記方法で実施した。
上記のペースト押出により得られたビードを230℃で30分加熱することにより、潤滑剤をビードから除去した。次に、ビード(押出成形体)を適当な長さに切断し、クランプ間隔が1.5インチ(38mm)となるよう、各末端をクランプに固定し、空気循環炉中で300℃に加熱した。次いでクランプを所望のストレッチ(総ストレッチ)に相当する分離距離となるまで所望の速度(ストレッチ速度)で離し、延伸試験(ストレッチ試験)を実施した。このストレッチ方法は、押出スピード(84cm/分でなく51cm/分)が異なることを除いて、本質的に米国特許第4,576,869号明細書に開示された方法に従った。『ストレッチ』とは、延伸による長さの増加であり、通常元の長さに対する比率として表される。ストレッチ方法においてストレッチ速度は、1000%/秒であり、上記総ストレッチは2400%であった。上記延伸試験において破断しなかったものを延伸可能とした。
【0510】
<破断強度>
上記延伸試験で得られた延伸ビード(ビードをストレッチすることによって作製されたもの)について、5.0cmのゲージ長の可動ジョーに挟んで固定し、25℃で300mm/分の速度で引っ張り試験を行い、破断した時の強度を破断強度として測定した。
【0511】
<フッ素を含む特定の化合物の含有量>
液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて下記条件で測定した。
【0512】
〔一般式(1)で示される化合物の含有量測定方法〕
組成物からの抽出
組成物1gにメタノール10g(12.6mL)を加え、60分間の超音波処理を行い、一般式(1)で示される化合物を含む上澄み液を抽出した。得られた抽出液を適宜窒素パージで濃縮し、濃縮した抽出液を得た。
【0513】
抽出液に含まれる一般式(1)で示される化合物の含有量測定
抽出液に含まれる一般式(1)で示される化合物の含有量はパーフルオロオクタン酸に換算することにより求めた。
【0514】
パーフルオロオクタン酸の検量線
1ng/mL~100ng/mLの濃度既知のパーフルオロオクタン酸のメタノール標準溶液を5水準調製し、液体クロマトグラフ質量分析計(Waters, LC-MS ACQUITY UPLC/TQD)を用いて測定を行った。それぞれのサンプル濃度とピークの積分値から一次近似を用い、下記関係式(1)によりa、bを求めた。
A=a×X+b (1)
A:パーフルオロオクタン酸のピーク面積
X:パーフルオロオクタン酸の濃度(ng/mL)
【0515】
測定機器構成とLC-MS測定条件
【表1】
【0516】
MRM測定パラメータ
【表2】
【0517】
抽出液に含まれる炭素数が4以上、20以下の一般式(1)で示される化合物の含有量
液体クロマトグラフ質量分析計を用い、炭素数が4以上20以下の一般式(1)で示される化合物を測定した。抽出した液相について、MRM法を用いて各炭素数の一般式(1)で示される化合物のピーク面積を求めた。
【0518】
MRM測定パラメータ
【表3】
【0519】
抽出液中の炭素数mの一般式(1)で示される化合物の含有量は下記式(3)を用いて算出した。式(3)のa、bは式(1)より求めた。
XCm=((ACm-b)/a)×((50×m+45)/413) (3)
XCm:抽出溶液中の炭素数m)の一般式(1)で示される化合物の含有量(ng/mL)
ACm:抽出溶液中の炭素数mの一般式(1)で示される化合物のピーク面積
この測定における定量限界は1ng/mLである。
【0520】
組成物中に含まれる炭素数mの一般式(1)で示される化合物の含有量
組成物中に含まれる炭素数mの一般式(1)で示される化合物の含有量は下記式(4)により求めた。
YCm=XCm×12.6 (4)
YCm:組成物中に含まれる炭素数mの一般式(1)で示される化合物の含有量(ppb対PTFE)
定量下限は10質量ppbであった。
【0521】
〔一般式(2)で示される化合物の含有量測定方法〕
組成物からの抽出
組成物1gにメタノール10g(12.6mL)を加え、60分間の超音波処理を行い、一般式(2)で示される化合物を含む上澄み液を抽出した。得られた抽出液を適宜窒素パージで濃縮し、濃縮した抽出液を得た。
【0522】
抽出液に含まれる一般式(2)で示される化合物の含有量測定
抽出液に含まれる一般式(2)で示される化合物の含有量はパーフルオロオクタンスルホン酸に換算することにより求めた。
【0523】
パーフルオロオクタンスルホン酸の検量線
1ng/mL~100ng/mLの濃度既知のパーフルオロオクタンスルホン酸のメタノール標準溶液を5水準調製し、液体クロマトグラフ質量分析計(Waters, LC-MS ACQUITY UPLC/TQD)を用いて測定を行った。それぞれのサンプル濃度とピークの積分値から一次近似を用い、下記関係式(1)によりa、bを求めた。
A=a×X+b (1)
A:パーフルオロオクタンスルホン酸のピーク面積
X:パーフルオロオクタンスルホン酸の濃度(ng/mL)
【0524】
測定機器構成とLC-MS測定条件
【表4】
【0525】
MRM測定パラメータ
【表5】
【0526】
抽出液に含まれる炭素数が4以上、20以下の一般式(2)で示される化合物の含有量
液体クロマトグラフ質量分析計を用い、炭素数が4以上20以下の一般式(2)で示される化合物を測定した。抽出した液相について、MRM法を用いて各炭素数の一般式(2)で示される化合物のピーク面積を求めた。
【0527】
MRM測定パラメータ
【表6】
【0528】
抽出液中の炭素数nの一般式(2)で示される化合物の含有量は下記式(3)を用いて算出した。式(3)のa、bは式(1)より求めた。
XSn=((ASn-b)/a)×((50×n+81)/499) (3)
XSn:抽出溶液中の炭素数nの一般式(2)で示される化合物の含有量(ng/mL)
ASn:抽出溶液中の炭素数nの一般式(2)で示される化合物のピーク面積
この測定における定量限界は1ng/mLである。
【0529】
組成物中に含まれる炭素数nの一般式(2)で示される化合物の含有量
組成物中に含まれる炭素数nの一般式(2)で示される化合物の含有量は下記式(4)により求めた。
YSn=XSn×12.6 (4)
YSn:組成物中に含まれる炭素数nの一般式(2)で示される化合物の含有量(ppb対PTFE)
定量下限は10質量ppbであった。
【0530】
調製例1
16gの脱イオン水に0.273gのラウリン酸を入れて攪拌しながら2.77gのアンモニア2.8%濃度水溶液を徐々に加えて水溶液Cを得た。
100gの脱イオン水に10gのラウリン酸を入れて攪拌しながら25gのアンモニア10%濃度水溶液を徐々に加えて水溶液Dを得た。このときのpHは、9.6を示した。
【0531】
製造例1
内容積3LのSUS製の撹拌機付き反応器に1748gの脱イオン水、90gのパラフィンワックス、調製例1で得られた水溶液C、0.5gのシュウ酸アンモニウムを加えた。この時の水性分散液のpHは9.0であった。反応器を密閉し、系内を窒素で置換を行ない、酸素を取り除いた。反応器を70℃に昇温し、2.0gのHFPを加え、更に、TFEにて昇圧し、2.70MPaとした。重合開始剤として、0.5質量%濃度の過マンガン酸カリウム水溶液を反応器に連続的に仕込み始めたところ、圧力の低下が起こり、反応が開始した。反応圧を2.70MPa一定となるようにTFEを仕込んだ。80gのTFEを仕込んだ時に撹拌を停止し、反応圧が大気圧になるまで脱圧を行なった。
直ちに、反応器にTFEを充填し、反応圧を2.70MPaとし、撹拌を再開して、反応を継続した。同時に、調製例1で得られた水溶液Dを反応器に連続的に仕込み始めた。680gのTFEを仕込んだ時に、撹拌を停止し、反応器を大気圧になるまで脱圧を行なった。反応終了までに56.0gの過マンガン酸カリウム水溶液と26.2gの水溶液Dを仕込んだ。水性分散液を反応器から取り出し、冷却後、パラフィンワックスを分離し、PTFE水性分散液を得た。得られたPTFE水性分散液のpHは8.8、固形分濃度は27.1質量%、一次粒子径は220nmであった。
【0532】
比較例1
製造例1で得られたPTFE水性分散液を脱イオン水にて固形分濃度が13質量%となるように希釈し撹拌機付きの容器内で激しく攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約52質量%であった。
得られた湿潤粉末をステンレス製の平板トレー(底面及び側面に通気性のないトレー)に配置し(配置量:2.0g/cm)、180℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。5時間後、平板トレーを取り出し、平板トレーを空冷させた後、PTFE組成物を得た。
得られたPTFE組成物の水分含有量は、0.131質量%、押出圧力は11.6MPa、延伸可能であり、破断強度は8.7Nであった。
得られたPTFE組成物の物性を下記表7及び8に示す。
【0533】
実施例1
熱処理時間を18時間に変更する以外は比較例1と同様にしてPTFE組成物を得た。
得られたPTFE組成物の水分含有量は0.025質量%、標準比重は2.170、熱不安定指数は44、HFP含有量は0.002質量%、0.1質量%減少温度は386℃、1.0質量%減少温度は490℃、吸熱ピーク温度は342℃であった。押出圧力は20.8MPa、延伸可能であり、破断強度は25.8Nであった。
得られたPTFE組成物の物性を下記表7及び8に示す。
【0534】
実施例2
平板トレーをメッシュトレーに、熱処理温度を210℃に変更する以外は実施例1と同様にしてPTFE組成物を得た。
得られたPTFE組成物の水分含有量は0.002質量%、標準比重は2.170、熱不安定指数は44、HFP含有量は0.002質量%、0.1質量%減少温度は391℃、1.0質量%減少温度は491℃、吸熱ピーク温度は342℃であった。押出圧力は24.9MPa、延伸可能であり、破断強度は32.2Nであった。
得られたPTFE組成物の物性を下記表7及び8に示す。
【0535】
実施例3
熱処理温度を240℃に変更する以外は実施例2と同様にしてPTFE組成物を得た。
得られたPTFE組成物の水分含有量は0.001質量%、標準比重は2.170、熱不安定指数は44、HFP含有量は0.002質量%、0.1質量%減少温度は391℃、1.0質量%減少温度は491℃、吸熱ピーク温度は342℃であった。押出圧力は27.0MPa、延伸可能であり、破断強度は35.1Nであった。
得られたPTFE組成物中に含まれるm=4~20の一般式(1)で示される化合物の含有量、n=4~20の一般式(2)で示される化合物の含有量は、定量下限未満(10質量ppb未満)であった。
【0536】
調製例2
10-ウンデセン-1-オール(16g)、1,4-ベンゾキノン(10.2g)、DMF(160mL)、水(16mL)及びPdCl2(0.34g)の混合物を90℃で12時間加熱撹拌した。
その後減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣を分液及びカラムクロマトグラフィーで精製し、11-ヒドロキシウンデカン-2-オン(15.4g)を得た。
11-ヒドロキシウンデカン-2-オン(13g)、三酸化硫黄トリエチルアミン錯体(13.9g)、テトラヒドロフラン(140mL)の混合物を50℃下12時間撹拌した。ナトリウムメトキシド(3.8g)/メタノール(12mL)溶液を反応液に滴下した。
析出固体を減圧濾過し、酢酸エチルで洗浄し、10-オキソウンデシル硫酸ナトリウム(15.5g)(以下、界面活性剤Aという)を得た。
内容積1Lの攪拌機付きガラス製の反応器に、588.6gの脱イオン水、70.0gの界面活性剤Aを加え、反応器を密閉し、系内を窒素で置換を行い、酸素を取り除いた。反応器を90℃に昇温し、窒素で0.4MPaGに昇圧する。41.4gの過硫酸アンモニウム(APS)を仕込み、3時間撹拌した。撹拌を停止し、反応器を大気圧になるまで脱圧を行い、冷却を行い、界面活性剤水溶液Bを得た。
【0537】
製造例2
内容積6Lの攪拌機付きSUS製の反応器に、3600gの脱イオン脱気水、180gのパラフィンワックス、及び0.540gの界面活性剤Aを加え、反応器を密閉し、系内を窒素で置換を行い、酸素を取り除いた。反応器を70℃に昇温し、TFEを反応器に充填して、反応器を2.70MPaにする。重合開始剤として0.620gの過硫酸アンモニウム(APS)、1.488gのジコハク酸パーオキサイド(DSP)を仕込んだ。反応圧が2.70MPa一定となるようにTFEを仕込んだ。TFEを仕込み始めたと同時に界面活性剤水溶液Bを連続的に仕込み始めた。TFEを540g仕込んだ時に、0.76gのハイドロキノンを溶かした脱イオン脱気水を20g添加し、TFEを1200g仕込んだ時に撹拌を停止し、反応器が大気圧になるまで脱圧を行なった。反応終了までに界面活性剤水溶液Bは103g仕込んだ。内容物を反応器より取り出して、冷却後、パラフィンワックスを分離し、PTFE水性分散液を得た。
得られたPTFE水性分散液の固形分含有量は25.9質量%であり、平均一次粒子径は、290nmであった。
【0538】
実施例4
製造例2で得られたPTFE水性分散液を脱イオン水にて固形分濃度が13質量%となるように希釈し撹拌機付きの容器内で激しく攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。湿潤粉末の水分含有量は約52質量%であった。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:2.0g/cm)、210℃の熱風循環式電気炉内でメッシュトレーを熱処理した。18時間後、メッシュトレーを取り出し、メッシュトレーを空冷させた後、PTFE組成物を得た。
得られたPTFE組成物の水分含有量は0.001質量%、標準比重は2.151、熱不安定指数は42、0.1質量%減少温度は397℃、1.0質量%減少温度は492℃、吸熱ピーク温度は342℃であった。押出圧力は18.9MPa、延伸可能であり、破断強度は20.2Nであった。
得られたPTFE組成物の物性を下記表7及び8に示す。
【0539】
実施例5
製造例1で得られたPTFE水性分散液を脱イオン水にて固形分濃度が13質量%となるように希釈し撹拌機付きの容器内で激しく攪拌し凝固させた後、水と濾別し、湿潤粉末を得た。
得られた湿潤粉末をステンレス製のメッシュトレーに配置し(配置量:1.2g/cm)、高温過熱蒸気発生装置を備えた炉内に180℃の過熱水蒸気を20kg/hrの速度で導入し、180℃の炉内で、7時間熱処理し、PTFE組成物を得た。
得られたPTFE組成物の水分含有量は0.002質量%、標準比重は2.170、熱不安定指数は44、0.1質量%減少温度は391℃、1.0質量%減少温度は491℃、吸熱ピーク温度は342℃であり、押出圧力は19.1MPa、延伸可能であった。
(H-(CFm-1-COO)H(式中、mは13、14である。)の含有量は、PTFE組成物に対して10質量ppb未満、(H-(CF-SO)H(式中、nは4~20である。)の含有量は10質量ppb未満であった。
【0540】
【表7】
【0541】
【表8】