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特許7538463ガラスクロス、プリプレグおよびプリント配線板
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  • 特許-ガラスクロス、プリプレグおよびプリント配線板 図1
  • 特許-ガラスクロス、プリプレグおよびプリント配線板 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】ガラスクロス、プリプレグおよびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/267 20210101AFI20240815BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240815BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20240815BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
D03D15/267
C08J5/24
D03D1/00 A
H05K1/03 610T
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024536204
(86)(22)【出願日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 JP2024011104
【審査請求日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2023057561
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】浦林 裕平
(72)【発明者】
【氏名】池尻 広隆
(72)【発明者】
【氏名】菅野 直大
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-249333(JP,A)
【文献】特表平09-503256(JP,A)
【文献】特開平09-324340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08 - 15/14
C08J 5/04 - 5/10
C08J 5/24
D03D 1/00 - 27/18
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
請求項1記載のガラスクロスを含むことを特徴とする、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスクロス、プリプレグおよびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスクロスの経糸に用いられる経糸用ガラスストランドは、製織の際に筬または綜絖との接触による損傷を防止するために、経糸用保護剤が塗布されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-102483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記経糸用保護剤が塗布された経糸用ガラスストランドを用いて製織されたガラスクロスは、局所的に経糸用ガラスストランドに対して樹脂が完全に浸透するまでの時間(以下、含浸時間と呼ぶことがある)が不均一になるという不都合がある。含浸時間が不均一な経糸用ガラスストランドを含むガラスクロスに樹脂を含浸して、プリプレグを製造する際に、ガラスクロスを樹脂に浸漬する時間を、該ガラスクロス中の経糸用ガラスストランドに含まれる含浸時間の短い部分に合わせると、該ガラスクロス中の経糸用ガラスストランドに含まれる含浸時間の長い部分と樹脂との密着性が低下してしまう。部分的にでもガラスクロスと樹脂との密着性が低下すると、ガラスクロスを含むプリプレグ全体として絶縁信頼性が低下する一因となる。一方、ガラスクロスを樹脂に浸漬する時間を、経糸用ガラストランドの含浸時間の長い箇所に合わせると、プリプレグ製造にかかる時間が長くなり、製造効率が悪化する。
【0005】
本発明は、かかる不都合を解消して、経糸用ガラスストランドに対する樹脂の含浸時間が不均一になることを抑制することができるガラスクロスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記経糸用保護剤が塗布された経糸用ガラスストランドを用いて製織されたガラスクロスにおいて、局所的に経糸用ガラスストランドに対する樹脂の含浸時間が不均一になる理由について検討した。この結果、本発明者らは、前記経糸用保護剤が塗布された経糸用ガラスストランドでは、乾燥状態により該経糸用ガラスストランドを構成する複数本のガラスフィラメントにブロッキングと呼ばれる領域が生じ、経糸用ガラスストランドにおける該ブロッキングの個数の分布と、該経糸用ストランドを用いて製織されたガラスクロスを含むプリプレグの絶縁信頼性とに、ガラスクロス表面に塗布されるシランカップリング剤の影響よりはるかに弱いものの、弱い相関があることを知見した。前記ブロッキングは、経糸用ガラスストランドを構成する3~4本のガラスフィラメントが相互に外周面で隙間なく接触することにより形成され、該経糸用ガラスストランドの長さ方向に垂直な断面において、3~4本の該ガラスフィラメントの外周面に囲まれて隙間なく閉じた領域をいう。
【0007】
なお、隙間なく閉じたとは、接触する2本のガラスフィラメントにおいて、片方のガラスフィラメントの外周面と、もう一方のガラスフィラメントの外周面との最短距離が、0.3μm未満であることを意味する。
【0008】
本発明者らは、前記ブロッキングについてさらに検討を重ね、前記ガラスクロスにおけるブロッキング分散数を特定の範囲とすることにより、該ガラスクロスの経糸用ガラスストランドに対する樹脂の含浸時間が不均一になることを抑制することができることを知見した。
【0009】
そこで、本発明のガラスクロスは、前記目的を達成するために、複数本のガラスフィラメントからなるガラスストランドを経糸および緯糸として備えるガラスクロスであって、次式(1)で示されるブロッキング分散数が、0.027~0.077の範囲にあることを特徴とする。
|Bmax-Bmin|/N ・・・(1)
(ただし、Bmaxは、経糸用ガラスストランドの糸幅方向に均等な幅の領域となるようにして、経糸用ガラスストランドを、左側領域、中心領域、右側領域の3つの領域に分け、それぞれの領域におけるブロッキング数を測定したときの、ブロッキング数の最大値であり、Bminはブロッキング数の最小値であって、Nは経糸用ガラスストランドに含まれるガラスフィラメントの本数である)
【0010】
本発明のガラスクロスによれば、ブロッキング分散数が前記範囲にあることにより、該ガラスクロスに樹脂を含浸させる際に、該ガラスクロス全体で経糸用ガラスストランドに対する樹脂の含浸時間が不均一になることを抑制することができるので、プリプレグとしたときに、プリプレグの製造効率を悪化させることなく、ガラスクロスと樹脂との間で優れた密着性を得ることができる。
【0011】
経糸用ガラスストランドに対する樹脂の含浸時間が不均一になることを抑制できるとは、後述の方法で測定される経糸用ガラスストランドに対する樹脂の含浸時間のムラが1.0分以下であることを意味する。
【0012】
本発明のガラスクロスでは、ブロッキング分散数が0.077超であるときには、局所的に経糸用ガラスストランドに対する樹脂の含浸時間が不均一になり、プリプレグとしたときに、プリプレグの製造効率が悪化してしまうか、ガラスクロスと樹脂との間で優れた密着性を得ることができない。また、本発明のガラスクロスでは、ブロッキング分散数が0.027未満であるときには、ガラスストランド同士が粘着しやすくなり、製織の際に毛羽や切断の発生を抑制することができない。
【0013】
また、本発明のプリプレグおよびプリント配線板は、本発明のガラスクロスを含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のガラスクロスに用いられる経糸用ガラスストランドの断面を示す電子顕微鏡写真の模写図。
図2】ブロッキング数の測定方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0016】
本実施形態のガラスクロスは、複数本のガラスフィラメントからなるガラスストランドを経糸および緯糸として備えるガラスクロスにおいて、次式(1)で示されるブロッキング分散数が、0.027~0.077の範囲にある。
|Bmax-Bmin|/N ・・・(1)
(ただし、Bmaxは、経糸用ガラスストランドの糸幅方向に均等な幅の領域となるようにして、経糸用ガラスストランドを、左側領域、中心領域、右側領域の3つの領域に分け、それぞれの領域におけるブロッキング数を測定したときの、ブロッキング数の最大値であり、Bminはブロッキング数の最小値であって、Nは経糸用ガラスストランドに含まれるガラスフィラメントの本数である。)
【0017】
本実施形態のガラスクロスによれば、ブロッキング分散数が前記範囲にあることにより、該ガラスクロスに樹脂を含浸させる際に、該ガラスクロス全体で経糸用ガラスストランドに対する樹脂の含浸時間が不均一になることを抑制することができるので、プリプレグとしたときに、プリプレグの製造効率を悪化させることなく、ガラスクロスと樹脂との間で優れた密着性を得ることができる。
【0018】
本実施形態のガラスクロスにおいて、前記ブロッキング分散数は、好ましくは、0.045~0.070の範囲にあり、より好ましくは、0.055~0.064の範囲にある。
【0019】
本実施形態のガラスクロスは、例えば、次のようにして製造することができる。
【0020】
まず、所望の組成を有するガラス繊維用ガラス組成物となるように調合されたガラス原料をガラス溶融炉で溶融して溶融ガラス(ガラス繊維用ガラス組成物の溶融物)とする。
【0021】
本実施形態のガラスクロスにおいて、前記ガラス繊維用ガラス組成は特に限定されず、例えば、最も汎用的であるEガラス組成、高強度高弾性率ガラス組成、高弾性率易製造性ガラス組成、及び、低誘電率低誘電正接ガラス組成等を挙げることができる。
【0022】
前記Eガラス組成は、ガラス繊維の全量に対し52.0~56.0質量%の範囲のSiOと、12.0~16.0質量%の範囲のAlと、合計で20.0~25.0質量%の範囲のMgO及びCaOと、5.0~10.0質量%の範囲のBとを含む組成である。
【0023】
前記高強度高弾性率ガラス組成は、ガラス繊維の全量に対し60.0~70.0質量%の範囲のSiOと、20.0~30.0質量%の範囲のAlと、5.0~15.0質量%の範囲のMgOと、0~1.5質量%の範囲のFeと、合計で0~0.2質量%の範囲のNaO、KO及びLiOとを含む組成である。前記高強度高弾性率ガラス組成は、好ましくは、0.15~1.50質量%の範囲のFeと、0.01~0.10質量%の範囲のZrOと、合計で0.02~0.20質量%の範囲のNaO、KO及びLiOとを含む組成である。
【0024】
前記高弾性率易製造性ガラス組成は、ガラス繊維の全量に対し57.0~60.0質量%の範囲のSiOと、17.5~20.0質量%の範囲のAlと、8.5~12.0質量%の範囲のMgOと、10.0~13.0質量%の範囲のCaOと、0.5~1.5質量%の範囲のBとを含み、かつ、合計で98.0質量%以上の範囲のSiO、Al、MgO及びCaOとを含む組成である。
【0025】
前記低誘電率低誘電正接ガラス組成は、ガラス繊維全量に対し48.0~62.0質量%の範囲のSiOと、17.0~26.0質量%の範囲のBと、9.0~18.0質量%の範囲のAlと、0.1~9.0質量%の範囲のCaOと、0~6.0質量%の範囲のMgOと、合計で0.05~0.5質量%の範囲のNaO、KO及びLiOと、0~5.0質量%の範囲のTiOと、0~6.0質量%の範囲のSrOと、合計で0~3.0質量%の範囲のF及びClと、0~6.0質量%の範囲のPとを含む組成である。
【0026】
前述したガラス組成の各成分の含有量の測定は、軽元素であるLiについてはICP発光分光分析装置を用いて行うことができ、その他の元素は波長分散型蛍光X線分析装置を用いて行うことができる。ガラス組成の各成分の含有量の測定は、具体的には次のようにして行うことができる。
【0027】
まず、ガラスクロスを適宜の大きさに裁断した後、白金ルツボに入れ、電気炉中で1400~1650℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。ここで、ガラスクロス表面に有機物が付着している場合、又は、ガラス繊維が有機物(樹脂)中に主に強化材として含まれている場合には、例えば、300~650℃のマッフル炉で2~24時間程度加熱する等して、有機物を除去してから用いる。
【0028】
次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、該ガラスカレットを粉砕し粉末化して、ガラス粉末とする。軽元素であるLiについては前記ガラス粉末を酸で加熱分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素は前記ガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて定量分析する。これらの定量分析結果を酸化物換算して各成分の含有量及び全量を計算し、これらの数値から前述した各成分の含有量(質量%)を求めることができる。
【0029】
次に、前記溶融ガラスを数個から数千個のノズルチップを形成したノズルプレートを有する容器(ブッシング)から吐出し、高速で巻き取ることにより引き伸ばしながら冷却し、固化して繊維状とする(この操作を「紡糸」と言うことがある)ことによりガラスフィラメントが形成される。前記ブッシングは、例えば、白金等の貴金属により形成されている。
【0030】
ここで、1個のノズルチップ又は孔から吐出され、冷却・固化されたガラスフィラメントは、通常、真円形の断面形状を備え、3.0~10.0μmの範囲の直径を有する。
【0031】
前記ガラスフィラメントを構成するガラス繊維の弾性率は、特に限定されないが、例えば、40~120GPaの範囲であり、71~110GPaの範囲であることが好ましい。従来、経糸用ガラスストランドに対する樹脂の含浸時間が長い傾向にあるから、本発明によって含浸時間のムラを低減する効果がより顕著であるという観点からは、80~100GPaの範囲であることがより好ましい。また、前記ガラスフィラメントを構成するガラス繊維の強度は、特に限定されないが、例えば、1.5~6.0GPaの範囲であり、3.5~5.2GPaの範囲であることが好ましい。
【0032】
前記ガラスフィラメントを構成するガラス繊維の弾性率および強度は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0033】
次に、前記のようにして形成された前記ガラスフィラメント20~300本にアプリケーターで集束剤(一次サイズ剤ということがある)を塗布して集束させて、コレットに巻取ることにより、ガラスストランド(ガラス繊維束)が形成される。
【0034】
前記ガラスストランドにおいて、前記ガラスフィラメントの繊維径が10μm超、または、ガラスフィラメントの本数が300本超であると、該ガラスストランドを製織して得られたガラスクロスを十分に軽量化できない傾向がある。また、前記ガラスストランドにおいて、前記ガラスフィラメントの繊維径が3μm未満であると、毛羽や切断の発生を防ぐために製造効率が低下し、該ガラスフィラメントの本数が20本未満であると、該ガラスストランドを製織して得られたガラスクロスをプリプレグとした際に、ピンホールの発生を抑制することが困難になる傾向がある。
【0035】
前記ガラスストランドにおいて、前記ガラスフィラメントの繊維径は、好ましくは、3.0~10.0μmの範囲であり、より好ましくは、4.8~9.0μmの範囲であり、さらに好ましくは、6.0~8.0μmの範囲である。また、前記ガラスストランドにおいて、前記ガラスフィラメントの本数は、好ましくは、20~300本の範囲であり、より好ましくは、120~250本の範囲である。
【0036】
次に、形成されたガラスストランドを、経糸用ガラスストランドおよび緯糸用ガラスストランドとし、該経糸用ガラスストランドに経糸用保護剤(前記一次サイズ剤に対して二次サイズ剤ということがある)を塗布する。前記経糸用保護剤としては、被膜形成剤成分がデンプン系又はPVA(ポリビニルアルコール)系であるサイズ剤を挙げることができる。前記経糸用保護剤は、潤滑剤、乳化剤、柔軟剤、防腐剤、帯電防止剤、有機溶剤等を含有していてもよい。前記経糸用保護剤としては、例えば、該経糸用保護剤の全量に対して、5.0質量%のポリビニルアルコール(PVA)と、1.0質量%の澱粉と、0.5質量%のパラフィンワックスと、93.5質量%の水とを含むものを挙げることができるが、これに限定されることはない。
【0037】
前記ガラスクロスにおける前記経糸用保護剤の付着量は、前記ガラスストランド100質量部に対して0.1~3.0質量部であることが好ましく、0.5~1.5質量部であることがより好ましい。
【0038】
前記経糸用ガラスストランドに前記経糸用保護剤を塗布する操作は、該経糸用ガラスストランドを、張力を調整しながら、該経糸用保護剤を含む処理液が収容された処理槽中に通過させ、次いで所定の乾燥強度指数となるようにライン速度を調整して、例えば、100~250℃の範囲の雰囲気温度の乾燥機中を、例えば、0.1~1.0分の範囲の時間で通過させることにより行うことができる。前記乾燥機の雰囲気温度は、100~150℃の範囲であることが好ましく、前記通過させる時間は0.1~0.35分の範囲であることが好ましい。前記乾燥強度指数は、乾燥時間(分)と乾燥機の雰囲気温度(℃)との積で表され、例えば、25.0~35.0の範囲にある。
【0039】
前記経糸用ガラスストランドでは、前記経糸用保護剤を塗布し、張力を調整しながら、運搬されることで、経糸用ストランド内部のガラスフィラメントの配置が緩和される。その後乾燥することにより、経糸用保護剤の被膜化が促進されることで、前記フィラメントの配置が固定化され、局部的に前記ブロッキングが形成される。ここで、経糸用ストランドにかかる張力は、70~120Nの範囲であることが好ましい。
【0040】
前記ブロッキングは、ガラスストランドの長さ方向に垂直な断面において、3~4本のガラスフィラメントの外周面に囲まれて隙間なく閉じた領域をいう。
【0041】
前記経糸用ガラスストランドでは、前記乾燥強度指数が大きいほど、経糸用ガラスストランドの乾燥が促進される。この結果、経糸用ガラスストランドの外縁部における経糸用保護剤の被膜化が促進され、ストランド内部のガラスフィラメントの配置が緩和される前にストランド形状が固定化されてしまうために、中央部のブロッキング数が多くなり、ブロッキング分散数が大きくなる。一方で、前記乾燥強度指数が小さいと、経糸用保護剤の乾燥が不充分であるため、該経糸用ガラスストランド同士が粘着し、製織時に経糸同士を引きはがす際に、毛羽や切断の原因となる。
【0042】
なお、前記緯糸用ガラスストランドは、前記集束剤が塗布されているのみであり、前記経糸用保護剤は全く塗布されていない。
【0043】
次に、前記経糸用ガラスストランドを経糸とし、前記緯糸用ガラスストランドを緯糸として製織することにより本実施形態のガラスクロスの一つの実施形態である第1のガラスクロスを得ることができる。前記製織は、それ自体公知の織機により行うことができ、前記織機としては、例えば、エアージェット又はウォータージェット等のジェット式織機、シャトル式織機、レピア織機等を挙げることができる。また、前記織機による織り方としては、例えば、平織、朱子織、ななこ織、綾織等を挙げることができ、製造効率の観点から平織が好ましい。
【0044】
次に、前記第1のガラスクロスに、脱油処理、表面処理、または、開繊処理を施すことにより、本実施形態のガラスクロスの一つの実施形態である第2のガラスクロスを得ることができる。前記脱油処理、表面処理、または、開繊処理の順序は特に限定されず、いずれの処理を最初に行ってもよい。
【0045】
前記脱油処理は、前記第1のガラスクロスを、350~400℃の範囲の雰囲気温度の加熱炉内に、40~80時間の範囲の時間で配置することにより、該第1のガラスクロスに付着している前記集束剤と前記経糸用保護剤とを加熱分解する。
【0046】
前記表面処理は、前記第1のガラスクロスを、表面処理剤溶液に浸漬し、余分な水分を絞液した後、80~180℃の範囲の温度で、1~30分の範囲の時間、加熱乾燥することで行うことができる。
【0047】
前記表面処理剤溶液としては、シランカップリング剤、弱酸(例えば、酢酸、クエン酸、プロピオン酸等)、界面活性剤を含むものを用いることができる。
【0048】
前記シランカップリング剤としては、アミノシラン、クロルシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、(メタ)アクリルシランを挙げることができる。本実施形態では、前記シランカップリング剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0049】
アミノシランとしては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0050】
クロルシランとしては、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0051】
エポキシシランとしては、β-(3,4 -エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキ
シシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0052】
メルカプトシランとしては、γ-メルカプトトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0053】
ビニルシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0054】
(メタ)アクリルシランとしては、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0055】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。本実施形態では、前記界面活性剤を単独で用いてもよく、又は、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0056】
前記開繊処理としては、例えば、前記第1のガラスクロスの経糸に30~200Nの範囲の張力をかけながら、水流圧力による開繊、液体を媒体とした高周波の振動による開繊、面圧を有する流体の圧力による開繊、ロールによる加圧での開繊等を行い、経糸及び緯糸の糸幅を拡幅する処理を挙げることができる。
【0057】
本実施形態のガラスクロスの実施態様の一つである前記第1のガラスクロスまたは前記第2のガラスクロスにおいて、経糸または緯糸の織密度は、例えば、20~160本/25mmの範囲であり、好ましくは50~80本/25mmの範囲である。また、前記第1のガラスクロスまたは前記第2のガラスクロスにおいて、経糸または緯糸の糸幅は、例えば、80~600μmの範囲であり、好ましくは、250~450μmの範囲であり、より好ましくは、300~400μmの範囲である。また、前記第1のガラスクロスまたは前記第2のガラスクロスの厚さは、例えば、8~200μmの範囲であり、好ましくは、70~170μmの範囲であり、より好ましくは、91~140μmの範囲である。また、前記第1のガラスクロスまたは第2のガラスクロスの幅は、例えば、800~2000mmの範囲である。
【0058】
また、本実施形態のガラスクロスの実施態様の一つである前記第1のガラスクロスまたは前記第2のガラスクロスは、(フィラメント径)×(フィラメント本数)/(糸幅)によって定義される平均段数が、例えば、0.6~4.5の範囲であり、好ましくは2.5~4.0の範囲であり、より好ましくは、3.0~3.8の範囲である。前記第1のガラスクロスまたは前記第2のガラスクロスは、前記平均段数が0.6未満では、ブロッキング分散数が過小になる傾向にあり、前記平均段数が4.5超では、該第1のガラスクロスまたは該第2のガラスクロスに対する樹脂の含浸時間が長くなる傾向にある。
【0059】
前記ブロッキング数の測定は、次のようにして行うことができる。まず、前記ガラスクロスの幅方向の一方の端部より200mm内側の点、もう一方の端部から200mm内側の点、および、ガラスクロスの幅方向の中央の点の3点において、各点を中心とした100mm×100mmの大きさのガラスクロス片を切り出す。なお、ガラスクロスの幅が800mm未満である場合には、ガラスクロスの幅が1000mmである場合を基準として、その幅に比例して、前記端部からの距離およびガラスクロス片の大きさを変更して、ガラスクロス片を切り出してもよい。
【0060】
次に、切り出したガラスクロス片を、エポキシ樹脂に包埋してエポキシ樹脂を硬化させ、硬化したエポキシ樹脂を経糸の長さ方向に対して垂直な断面が観察可能な程度に研磨して、ブロッキング分散数測定用試験片とする。このとき、前記試験片の一方の端部から5mmの位置にある経糸用ガラスストランドを選択し、試験片の研磨面を走査型電子顕微鏡により倍率1600倍で観察する。
【0061】
前記ブロッキングは、前記製織後の第1のガラスクロスに前記脱油処理、表面処理、または、開繊処理を施した後にも維持されている。そのため、前記ブロッキング数の測定には、前記第1のガラスクロスを用いてもよく、前記第2のガラスクロスを用いてもよい。
【0062】
次に、前記第2のガラスクロスを用いて前記ブロッキング数の測定を行う場合について説明する。
【0063】
図1は、前記試験片の研磨面の一部を示す電子顕微鏡写真の模写図であり、前記第2のガラスクロスの断面を示し、符号1は経糸用ガラスストランド、符号3は緯糸用ガラスストランドを示す。経糸用ガラスストランド1は複数のガラスフィラメント2が集束されてなる。
【0064】
次に、図2に示すように、糸幅Lである前記経糸用ガラスストランド1を、ストランド断面の幅方向に、それぞれの幅L、L、Lが均一(L=L=L、L+L+L=L)になるようにして、左側領域1a、中心領域1b、右側領域1cの3つの領域に分け、それぞれの領域1a、1b、1cにおけるブロッキング数を測定する。前記3つの領域1a、1b、1cにおけるブロッキング数のうち、最大値をBmax、最小値をBmin、前記経糸用ガラスストランド1に含まれるガラスフィラメント2の本数をNとするときに、|Bmax-Bmin|/Nを該経糸用ガラスストランドのブロッキング分散数とする。
【0065】
上記測定を、前記3点から切り出した各ガラスクロス片においてそれぞれ隣り合う5本の経糸用ガラスストランドについて行い、計15本の経糸用ガラスストランドのブロッキング分散数を測定し、その平均値をガラスクロスのブロッキング分散数とし、15本の経糸用ガラスストランドのブロッキング分散数の標準偏差をガラスクロスのブロッキング分散数の標準偏差とする。
【0066】
本実施形態のガラスクロスの実施態様の一つである前記第1のガラスクロスまたは前記第2のガラスクロスにおいて、前記ブロッキング分散数の標準偏差は、0.006~0.070の範囲であることが好ましく、0.016~0.022の範囲であることがより好ましい。
【0067】
本実施形態のプリプレグ、または、プリント配線板は、前記第1のガラスクロスまたは前記第2のガラスクロスと、該第1のガラスクロスまたは該第2のガラスクロスに含浸された熱可塑性樹脂、または、熱硬化性樹脂を含む。
【0068】
本実施形態のプリプレグ、または、プリント配線板において、前述した第1のガラスクロスまたは第2のガラスクロスに含浸される樹脂は、特に限定されない。このような樹脂として、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、変性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化性変性ポリフェニレンエーテル樹脂等を挙げることができる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリブチレンテレフタート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、熱可塑性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性変性ポリフェニレンエーテル樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。
【0069】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例
【0070】
〔実施例1〕
まず、表1に示すガラス組成(ガラス繊維の全量に対して、65.00質量%のSiOと、25.00質量%のAlと、9.50質量%のMgOと、0.05質量%のCaOと、0.30質量%のFeと、0.05質量%のZrOと、合計で0.10質量%のLiO、NaOおよびKOと、0.00質量%のBと、0.00質量%のTiOと、0.00質量%のFとを含む高強度高弾性率ガラス組成)からなり、真円形の断面形状を備えるフィラメント径7.0μmであるガラスフィラメントが196本集束されてなるガラスストランドを作成した。
【0071】
次に、全量に対して、5.0質量%のポリビニルアルコール(PVA)と、1.0質量%の澱粉と、0.5質量%のパラフィンワックスと、93.5質量%の水とからなる経糸用保護剤を含む経糸用保護剤処理液を調製した。
【0072】
次に、前記のようにして形成されたガラスストランドを、経糸用ガラスストランドおよび緯糸用ガラスストランドとし、該経糸用ガラスストランドに前記経糸用保護剤を塗布した。前記経糸用ガラスストランドに前記経糸用保護剤を塗布する操作は、該経糸用ガラスストランドを前記経糸用保護剤処理液が収容された処理槽中に通過させ、次いで乾燥強度指数が31.5となるようにライン速度を調整して、雰囲気温度が100~150℃の範囲にある乾燥機中を通過させることにより行った。
【0073】
なお、前記緯糸用ガラスストランドは、前記集束剤が塗布されているのみであり、前記経糸用保護剤は全く塗布されていない。
【0074】
次に、前記経糸用ガラスストランドを経糸とし、前記緯糸用ガラスストランドを緯糸として、エアージェット式織機を用いて製織し、該経糸の織密度を65本/25mmとし、該緯糸の織密度を62本/25mmとて、平織の第1のガラスクロスを得た。
【0075】
次に、前記第1のガラスクロスに脱油処理、表面処理及び開繊処理を施して、本実施例のガラスクロスとしての第2のガラスクロスを得た。前記脱油処理は、前記第1のガラスクロスを雰囲気温度が350℃~400℃の加熱炉内に60時間配置し、該第1のガラスクロスに付着している集束剤と経糸用保護剤とを加熱分解した。また、前記表面処理は、前記第1のガラスクロスにシランカップリング剤を塗布し、130℃の加熱炉内に連続的に通しながら該シランカップリング剤を硬化させることにより行った。また、前記開繊処理は、前記第1のガラスクロスの経糸に50Nの張力をかけ、3.0MPaに設定した水流圧力により行った。前記開繊処理においては、張力検出器により検出された張力の値を、前記第1のガラスクロスを搬送するガイドローラにフィードバックし、該ガイドローラの位置を変化させることにより張力を調整した。
【0076】
なお、開繊処理以外の工程でガラスクロスの経糸にかかる張力は、70~120Nの範囲である。
【0077】
以上の処理により、前記第2のガラスクロスは、糸幅372μm、平均段数3.7の経糸と、糸幅365μm、平均段数3.8の緯糸とを備え、厚さ96μmとなった。結果を表1に示す。
【0078】
本実施例で得られた前記第2のガラスクロスについて、次に示す方法により、ブロッキング分散数を測定し、ブロッキング分散数の標準偏差を求め、該第2のガラスクロスを構成するガラス繊維のガラス繊維弾性率およびガラス繊維強度を測定する一方、該第2のガラスクロスに対する樹脂の含浸時間を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
〔ブロッキング分散数およびその標準偏差〕
まず、前記第2のガラスクロスの幅方向の一方の端部より200mm内側の点、もう一方の端部から200mm内側の点、および、幅方向の中央の点の3点において、各点を中心とした100mm×100mmの大きさのガラスクロス片を切り出す。次に、切り出したガラスクロス片を、エポキシ樹脂に包埋してエポキシ樹脂を硬化させ、硬化したエポキシ樹脂を経糸の長さ方向に対して垂直な断面が観察可能な程度に研磨して、ブロッキング分散数測定用試験片とし、該試験片の一方の端部から5mmの位置にある経糸用ガラスストランドを選択して、試験片の研磨面を走査型電子顕微鏡で観察することによりブロッキング数を測定する。
【0080】
前記ブロッキング数の測定は、糸幅がLである経糸用ガラスストランド1を、それぞれの幅L、L、Lが均一(L=L=L、L+L+L=L)になるようにして、左側領域1a、中心領域1b、右側領域1cの3つの領域に分け、それぞれの領域1a、1b、1cを走査型電子顕微鏡により倍率1600倍で観察することにより行う。
【0081】
そして、前記3つの領域1a、1b、1cにおけるブロッキング数のうち、最大値をBmax、最小値をBmin、前記経糸用ガラスストランド1に含まれるガラスフィラメント2の本数をNとするときに、|Bmax-Bmin|/Nを該経糸用ガラススストランドのブロッキング分散数とする。
【0082】
前記測定を、前記3点から切り出した各ガラスクロス片においてそれぞれ隣り合う5本の経糸用ガラスストランドについて行い、計15本の経糸用ガラスストランドのブロッキング分散数を測定し、その平均値を第2のガラスクロスのブロッキング分散数とする。
【0083】
また、前記15本の経糸用ガラスストランドのブロッキング分散数の標準偏差を第2のガラスクロスのブロッキング分散数の標準偏差とする。
【0084】
〔ガラス繊維強度〕
まず、実施例または比較例のガラス繊維と全く同一のガラス組成となるように、調合されたガラス原料を、1400~1650℃のマッフル炉で0.5~24時間加熱することで得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した。次に、得られたガラスカレットを容器底部に1つの円形ノズルチップを有する小型の筒型白金製ブッシング内に投入し、投入したガラスカレットの粘度が1000±150ポイズとなるように所定の温度にブッシングを加熱して、ガラスカレットを溶融し、溶融ガラスを得る。前記白金製ブッシングのノズルチップから吐出した溶融ガラスをガラス繊維径が13±2μmとなるように巻き取り機で所定の速度で巻き取り、引き伸ばしながら冷却固化して、真円形の断面形状を備えたガラスフィラメントを得る。前記白金製ブッシングのノズルチップと巻き取り機の間の一本のガラスフィラメント(モノフィラメント)を採取し、接触や摩擦による劣化を極力抑えた状態のガラスフィラメントを引張強度評価用サンプルとして採取する。次に、得られたガラスフィラメントを、後述する2つのつかみ部と2つのサポート部とを備える台紙の短辺の中心点同士を結ぶ線に合わせて長辺方向に配置して接着し、モノフィラメント試験片を作製する。次に、得られたガラスフィラメントの直径を走査型電子顕微鏡(日立株式会社製、商品名:S-3400)で測定し、得られた直径からガラスフィラメントの断面積を算出する。次に、前記台紙中の2つのつかみ部を引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、商品名:卓上型材料試験機STB-1225S)の、つかみ具間距離が25mmに設定された上下つかみ具にセットし、前記台紙中の2つのサポート部を切除し、前記ガラスフィラメントのみでつかみ部が接続された状態にした後、クロスヘッド速度5mm/分で引張試験を行う。次に、ガラスフィラメントが破断した時の最大荷重値を、ガラスフィラメントの断面積で除することで引張強度を算出する。測定中に糸抜けや糸折れ等の不完全な破断が生じた前記モノフィラメント試験片は除外し、n=30の前記引張強度の平均値を算出することで、ガラス繊維強度を測定する。
【0085】
なお、前記台紙は、25mmの短辺および50mmの長辺を備え、またその内部の中央に、短辺が15mm、長辺が25mmである切り抜き部を、前記台紙の短辺および長辺と前記切り抜き部の短辺および長辺とがそれぞれ平行になるように備え、前記切り抜き部の短辺と前記台紙の短辺との間に、引張試験機のつかみ具にセットされるつかみ部を備え、また、前記切り抜き部の長辺と前記台紙の長辺との間に、前記2つのつかみ部を接続して支持するサポート部を備える。
【0086】
〔ガラス繊維弾性率〕
まず、前述のガラス繊維強度の測定方法と全く同一にして、ガラスフィラメントの引張試験を行う。次に、2点間のひずみε=0.0005およびε=0.0025に対応する応力をそれぞれσ、σとし、応力の差(σ-σ)をひずみの差(ε-ε)で除することで引張弾性率を算出する。測定中に糸抜けが生じたモノフィラメント試験片は除外し、n=15の前記引張弾性率の平均値を算出することで、ガラス繊維弾性率を測定する。
【0087】
〔樹脂の含浸時間〕
まず、前記第2のガラスクロスの幅方向の一方の端部より200mm内側の点、もう一方の端部から200mm内側の点、および、幅方向の中央の点の3点において、各点を中心とした60mm×40mmの大きさのガラスクロス片を切り出し、含浸性評価試験片とする。
【0088】
次に、前記含浸性評価試験片をベンジルアルコールに浸漬し、浸漬直後からベンジルアルコールが該含浸性評価用試験片に完全に浸透するまでの時間を経糸方向、および緯糸方向で、それぞれ測定する。各測定点につき、それぞれ5枚の含浸性評価用試験片を用いて測定を行い、測定点ごとに平均値を算出する。
【0089】
そして、各測定点での経糸および緯糸の含浸時間のうち、最大値と最小値との差を、含浸時間のムラとする。
【0090】
前記ベンジルアルコールは、屈折率がガラスフィラメントと近似しているので、前記含浸性評価試験片をベンジルアルコールに浸漬した際に、含浸部分は、ガラスストランドのガラスフィラメント間にベンジルアルコールが浸透して透明に見え、未含浸部分は、ガラスフィラメント間に存在する空気と屈折率差を生じ不透明に見えるため、含浸したかどうか容易に視認することができる。
【0091】
〔実施例2〕
本実施例では、ガラス繊維用ガラス組成物を表1に示すガラス組成(ガラス繊維の全量に対して、54.60質量%のSiOと、14.10質量%のAlと、1.20質量%のMgOと、22.40質量%のCaOと、0.20質量%のFeと、0.00質量%のZrOと、合計で0.50質量%のLiO、NaOおよびKOと、6.10質量%のBと、0.30質量%のTiOと、0.60質量%のFとを含むEガラス組成)からなるフィラメント径4.0μmであるガラスフィラメントが41本集束されてなるガラスストランドを作成した。
【0092】
次に、前記のようにして形成されたガラスストランドを、経糸用ガラスストランドおよび緯糸用ガラスストランドとし、経糸および緯糸の織密度を95本/25mmとした以外は、実施例1と全く同一にして、平織の第1のガラスクロスを得た。
【0093】
次に、開繊処理における水圧を1.0MPaに設定した以外は、実施例1と全く同一にして、前記第1のガラスクロスに、脱油処理、表面処理及び開繊処理を施して、本実施例のガラスクロスとしての第2のガラスクロスを得た。
【0094】
本実施例の第2のガラスクロスは、糸幅120μm、平均段数1.4の経糸と、糸幅185μm、平均段数0.9の緯糸とを備え、厚さ13μmであった。結果を表1に示す。
【0095】
次に、本実施例で得られた前記第2のガラスクロスを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、ブロッキング分散数を測定し、ブロッキング分散数の標準偏差を求め、該第2のガラスクロスを構成するガラス繊維のガラス繊維弾性率およびガラス繊維強度を測定する一方、該第2のガラスクロスに対する樹脂の含浸時間を測定した。結果を表1に示す。
【0096】
〔比較例1〕
本比較例では、経糸用ガラスストランドに前記経糸用保護剤を塗布する操作における乾燥強度指数が40.9となるようにライン速度を調整した以外は、実施例1と全く同一にして、本比較例のガラスクロスとしての第2のガラスクロスを得た。
【0097】
本比較例の前記第2のガラスクロスは、糸幅374μm、平均段数3.7の経糸と、糸幅360μm、平均段数3.8の緯糸とを備え、厚さ96μmであった。結果を表1に示す。
【0098】
次に、本比較例で得られた前記第2のガラスクロスを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、ブロッキング分散数を測定し、ブロッキング分散数の標準偏差を求め、該第2のガラスクロスを構成するガラス繊維のガラス繊維弾性率およびガラス繊維強度を測定する一方、該第2のガラスクロスに対する樹脂の含浸時間を測定した。結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1から、実施例1および実施例2のガラスクロスによれば、ブロッキング分散数が0.027~0.077の範囲にあることにより、経糸用ガラスストランドに対する樹脂の含浸時間のムラが1.0分以下であって、該含浸時間が不均一になることを抑制することができることが明らかである。一方、比較例1のガラスクロスでは、クロス端部の経糸用ガラスストランドおよび緯糸用ガラスストランドの含浸時間は実施例1と同等であり、緯糸の含浸時間のムラは1.0分以下であるものの、ブロッキング分散数が0.077超の0.094であることにより、経糸用ガラスストランドに対する樹脂の含浸時間のムラが1.5であって、実施例1および実施例2のガラスクロスより大きく、該含浸時間が不均一になることが明らかである。
【要約】
発明が解決しようとする課題は、経糸用ガラスストランドに対する樹脂の含浸時間が不均一になることを抑制することができ、プリプレグとしたときに、プリプレグの製造効率を悪化させることなくガラスクロスと樹脂との間で優れた密着性を得ることができるガラスクロスを提供することである。本発明のガラスクロスは、複数本のガラスフィラメント2からなるガラスストランド1を経糸および緯糸として備え、次式(1)で示されるブロッキング分散数が、0.027~0.077の範囲にある。
|Bmax-Bmin|/N ・・・(1)
(ただし、Bmaxは、経糸用ガラスストランドの糸幅方向に均等な幅の領域となるようにして、経糸用ガラスストランドを、左側領域、中心領域、右側領域の3つの領域に分け、それぞれの領域におけるブロッキング数を測定したときの、ブロッキング数の最大値であり、Bminはブロッキング数の最小値であって、Nは経糸用ガラスストランドに含まれるガラスフィラメントの本数である。)
図1
図2