(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】排水処理装置及び排水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20240815BHJP
H01M 8/16 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
H01M8/16
(21)【出願番号】P 2020000564
(22)【出願日】2020-01-06
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2019153267
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】清川 達則
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-148776(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143634(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/016590(WO,A1)
【文献】特開2000-200615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46- 1/48
H01M 8/00- 8/2495
H01M 12/00-16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に対する処理を行う排水処理装置であって、
前記被処理水が処理された後の処理水と電極を接触させ、発電を行う発電部と、
前記発電部の電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させる接触効率向上手段と、を備え、
前記接触効率向上手段は、前記被処理水に硫化水素または硫化水素イオンを供給し、前記電極表面における前記電極反応成分の濃度を高めることにより接触効率を向上させることを特徴とする、排水処理装置。
【請求項2】
被処理水に対する処理を行う排水処理装置であって、
前記被処理水が処理された後の処理水と電極を接触させ、発電を行う発電部と、
前記発電部の電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させる接触効率向上手段と、を備え、
前記接触効率向上手段は、前記電極に界面活性剤または酵素を供給して前記電極表面に堆積した堆積物を分散して離散させ、前記電極表面における堆積物を除去することにより接触効率を向上させることを特徴とする、排水処理装置。
【請求項3】
被処理水に対する処理を行う排水処理方法であって、
前記被処理水が処理された後の処理水と電極を接触させ、発電を行う発電工程と、
前記発電工程における電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させる接触効率向上工程と、を備え、
前記接触効率向上工程は、前記被処理水に硫化水素または硫化水素イオンを供給し、前記電極表面における前記電極反応成分の濃度を高めることにより接触効率を向上させることを特徴とする、排水処理方法。
【請求項4】
被処理水に対する処理を行う排水処理方法であって、
前記被処理水が処理された後の処理水と電極を接触させ、発電を行う発電工程と、
前記発電工程の電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させる接触効率向上工程と、を備え、
前記接触効率向上工程は、前記電極に
界面活性剤または酵素を供給して前記電極表面に堆積した堆積物を分散して離散させ、前記電極表面における堆積物を除去することにより接触効率を向上させることを特徴とする、排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理装置及び排水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被処理水を処理する排水処理としては、様々な処理方法が知られている。このような排水処理は、被処理水に含まれる成分や、排出される被処理水の量などのように、被処理水自体に係る物性上の特徴や、処理効率とコストのバランスなどのように、排水処理を実施するための設備や運用に係る特徴などを考慮し、処理方法が選択されている。
また、排水処理においては、異なる排水処理方法を複数組み合わせることで、排水処理の効率化を図ることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、有機物を含む被処理水の処理として、被処理水中に一対の電極を浸漬し、電気化学処理を行った後、被処理水を生物処理する排水処理について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、電気化学処理と生物処理とを組み合わせた排水処理においては、それぞれの処理ごとに反応効率のよい反応を進行させ、排水処理全体としての処理効率を向上させることが可能となる。その一方で、一般的に、電気化学処理は電力消費に係るランニングコストの負担が大きいという課題がある。特許文献1に記載された排水処理では、電気化学処理単独よりはランニングコストの低減が可能とされている。しかしながら、特許文献1に記載された排水処理では、排水処理の系外から電気化学処理及び生物処理に係るエネルギーを供給する必要がある。したがって、排水処理時における更なる省エネルギー化が求められている。
【0006】
近年、排水処理時における設備駆動電力を抑え、省エネルギー化に優れるものとするために、排水処理の工程上でエネルギーの回収・利用が可能な技術が検討されている。
このような技術の一つとして、生物処理により発生したバイオガスを利用したエネルギーの回収が行われているが、バイオガスの貯留・精製設備や、バイオガスの燃焼により得られた熱エネルギーをガスエンジンやガスタービンを介して電気エネルギーに変換する設備など、付帯設備が必要となる。したがって、排水処理において、より簡便かつ効率的にエネルギーを回収・利用する技術が求められている。
【0007】
排水処理においてエネルギーを簡便かつ効率的に回収する技術としては、排水処理工程上に電極を設け、電極反応により直接電気エネルギーを回収することが考えられる。この際、電極反応によるエネルギー回収と同時に、処理水に対する電気化学処理を行うことができ、排水処理の効率向上と省エネルギー化の実現が期待できる。このとき、電極反応が可能な成分(以下、「電極反応成分」という。)と、電極表面との接触が十分ではないと、電極反応効率が低下することが懸念される。
【0008】
本発明の課題は、排水処理において、電極反応によるエネルギーの回収・利用を可能とするとともに、電極反応効率の低下を抑制することができる排水処理装置及び排水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、排水処理において、被処理水を処理した後の処理水に含まれる成分を用いて発電(電極反応)を行うことにより、効率的なエネルギーの回収・利用が可能となること、及び、電極反応成分と電極表面との接触を向上させるための手段を設けることで、電極反応の効率低下を抑制することが可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の排水処理装置及び排水処理方法である。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の排水処理装置は、被処理水に対する処理を行う排水処理装置であって、被処理水が処理された後の処理水と電極を接触させ、発電を行う発電部と、発電部の電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させる接触効率向上手段とを備えるという特徴を有する。
【0011】
本発明の排水処理装置は、排水処理装置に電極を用いた発電部を設置することで、排水処理における一連の処理過程の中で発電を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、被処理水を処理した後の処理水に含まれる成分を用いて電極反応を行うことで、排水処理工程内で生成する成分を有効活用することが可能となる。さらに、発電部の電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させる接触効率向上手段を備えることにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び電気化学処理の効率向上が可能となる。
【0012】
また、本発明の排水処理装置の一実施態様としては、接触効率向上手段は、被処理水に対する処理工程を利用するという特徴を有する。
この特徴によれば、被処理水の処理手段と接触効率向上手段を兼用させ、発電部の電極表面と電極反応成分との接触効率向上に係る付帯設備を削減することができる。これにより、ランニングコストを大幅に低減することが可能となる。
【0013】
また、本発明の排水処理装置の一実施態様としては、接触効率向上手段は、電極表面に対し、電極反応成分の移動速度を制御する移動速度制御手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、電極表面に対して速やかに電極反応成分を供給することが可能となる。これにより、電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させることで、電極反応の効率低下を抑制し、発電効率の向上が可能となる。
【0014】
また、本発明の排水処理装置の一実施態様としては、接触効率向上手段は、電極反応成分の濃度を制御する濃度制御手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、電極反応に関与する電極反応成分量を増大させることが可能となる。これにより、電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させることで、電極反応の効率低下を抑制し、発電効率の向上が可能となる。
【0015】
また、本発明の排水処理装置の一実施態様としては、接触効率向上手段は、電極表面に堆積した堆積物を洗浄する洗浄手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、電極表面の堆積物を除去することが可能となる。これにより、電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させることができ、電極反応の効率低下を抑制し、発電効率の向上が可能となる。
【0016】
また、本発明の排水処理装置の一実施態様としては、洗浄手段は、電極表面に堆積した堆積物に外力を与えて剥離する剥離手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、電極表面の堆積物を物理的に剥離するため、堆積物の種類によらず高い洗浄効果を奏する。
【0017】
また、本発明の排水処理装置の一実施態様としては、洗浄手段は、電極表面に堆積した堆積物を溶解する溶解手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、新たに加える装置構成が少なく、設備の小型化が可能である。また、特に電極表面が多孔質である場合、多孔質内に堆積した堆積物に対して高い洗浄効果を奏する。
【0018】
また、本発明の排水処理装置の一実施態様としては、洗浄手段は、電極表面に堆積した堆積物を分散して離散させる分散手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、堆積物を一度分散させ、電極表面から離散させるため、電極表面に対する負荷が少ない状態で洗浄を行うことが可能となる。また、特に電極表面が多孔質である場合、多孔質内に堆積した堆積物に対しても高い洗浄効果を奏する。
【0019】
また、本発明の排水処理装置の一実施態様としては、洗浄手段は、電極表面の周辺環境を変化させる周辺環境変化手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、堆積物が微生物を含む場合、電極表面の周辺環境を変化させることで、微生物が環境変化に耐えられず、電極表面から離れる方向に微生物を自発的に移動させることが可能となる。これにより、電極表面から効果的に微生物を剥離させることが可能となり、電極表面に対する高い洗浄効果を得ることができる。
【0020】
また、上記課題を解決するための本発明の排水処理方法としては、被処理水に対する処理を行う排水処理方法であって、被処理水が処理された後の処理水と電極を接触させ、発電を行う発電工程と、発電工程における電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させる接触効率向上工程とを備えるという特徴を有する。
本発明の排水処理方法は、排水処理において電極を用いた発電工程を設けることで、排水処理における一連の処理過程の中で発電を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、被処理水を処理した後の処理水に含まれる電極反応成分を用いて電極反応を行うことで、排水処理工程内で生成する成分を有効活用することが可能となる。さらに、電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させる接触効率向上工程を備えることにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び電気化学処理の効率向上が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、排水処理において、電極反応によるエネルギーの回収・利用を可能とするとともに、電極反応効率の低下を抑制することができる排水処理装置及び排水処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施態様における排水処理装置の概略説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施態様の排水処理装置における接触効率向上手段(移動速度制御手段)を示す概略説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施態様の排水処理装置における移動速度制御手段の別態様を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施態様の排水処理装置における移動速度制御手段の別態様を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施態様の排水処理装置における接触効率向上手段(濃度制御手段)の別態様を示す概略説明図である。
【
図6】本発明の第1の実施態様の排水処理装置における濃度制御手段の別態様を示す概略説明図である。
【
図7】本発明の第2の実施態様における排水処理装置の概略説明図である。
【
図8】本発明の第2の実施態様の排水処理装置における接触効率向上手段(洗浄手段)を示す概略説明図である。
【
図9】本発明の第2の実施態様の排水処理装置における洗浄手段の別態様を示す概略説明図である。
【
図10】本発明の第2の実施態様の排水処理装置における洗浄手段の別態様を示す概略説明図である。
【
図11】本発明の第2の実施態様の排水処理装置における洗浄手段の別態様を示す概略説明図である。
【
図12】本発明の第2の実施態様の排水処理装置における洗浄手段の別態様を示す概略説明図である。
【
図13】本発明の第3の実施態様における排水処理装置の概略説明図である。
【
図14】本発明の第3の実施態様における排水処理装置の別態様を示す概略説明図である。
【
図15】本発明の第4の実施態様における排水処理装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る排水処理装置及び排水処理方法の実施態様を詳細に説明する。本発明における排水処理方法は、本発明における排水処理装置の作動の説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する排水処理装置及び排水処理方法については、本発明に係る排水処理装置及び排水処理方法を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0024】
本発明の排水処理装置において、処理対象である被処理水は、処理を経ることで電極反応成分を生成するものであれば特に限定されない。このような物質としては、例えば、還元性物質が挙げられる。また、具体的な被処理水の例としては、例えば、食品工場、化学工場、紙パルプ工場等の各種工場から排出される工業排水や、下水などの生活排水などが挙げられる。なお、以下の実施態様においては、被処理水として、処理を経ることで還元性物質が生成するものについて主に説明するが、これに限定されるものではない。
【0025】
また、本発明において、被処理水中に含まれる還元性物質とは、電子供与体として機能するものであればよく、特に限定されない。ある物質が電子供与体として機能するか否かは、電子受容体として機能する物質(以下、単に「電子受容体」と呼ぶ)との組み合わせによって相対的に決まるものである。つまり、本発明における還元性物質は、電子受容体よりも電子を放出しやすいもの、すなわち電子受容体よりも酸化還元電位が低いものとすることが挙げられる。例えば、電子受容体として酸素を用いた場合、本発明における還元性物質は、酸素よりも酸化還元電位が低いものであればよく、このような還元性物質としては、硫化水素、水素、アンモニアなどが挙げられる。
【0026】
なお、本発明において、電極反応成分とは、電極反応が可能な物質を指すものである。また、本発明の電極反応成分は、電子の受け渡しに係る機能は特に限定されず、電子供与体あるいは電子受容体として機能するものを指している。すなわち、本発明の電極反応成分としては、例えば、上述した還元性物質やその電子受容体などが挙げられる。
【0027】
〔第1の実施態様〕
(排水処理装置)
図1は、本発明の第1の実施態様における排水処理装置の構造を示す概略説明図である。
本実施態様における排水処理装置1Aは、
図1に示すように、処理槽2と、発電部3と、接触効率向上手段4とを備えるものである。また、排水処理装置1Aは、処理槽2に被処理水Wを導入する導入配管L1と、処理槽2と発電部3を接続し、処理槽2で被処理水Wが処理された後の処理水W1を発電部3に供給する接続配管L2と、電極反応後の処理水W2を発電部3から排出する排出配管L3とを備えている。さらに、
図1において、排出配管L3の後段には反応槽5が設けられている。
【0028】
(処理槽)
処理槽2は、被処理水Wに対して処理を行うための槽である。
処理槽2で行う処理は、被処理水W中に含まれる処理対象に合った処理であり、処理後の処理水W1中に還元性物質を含むものであれば、特に制限されない。例えば、生物処理、化学処理(薬剤添加、オゾン処理など)などが挙げられるが、人体に対して有害な物質の使用及び生成を伴うことがなく、かつ比較的低コスト処理が可能な生物処理とすることが望ましい。
さらに、生物処理としては、例えば、嫌気的な環境下での生物処理(嫌気処理)として、酸生成菌及びメタン生成菌によるメタン発酵や、脱窒菌により硝酸・亜硝酸の還元を行う脱窒処理や、硫酸還元菌により硫酸の還元を行う硫酸還元処理等が挙げられる。また、好気的な環境下での生物処理(好気処理)として、活性汚泥を用いる活性汚泥処理などが挙げられる。なお、生物処理としては、曝気動力が不要で、余剰汚泥がほとんど発生しないことなど、導入のメリットが高いことから、嫌気処理が好ましい。さらに、処理コストや生成ガスの有用性の観点から、メタンを生成するメタン発酵が特に好ましい。
【0029】
処理槽2において、嫌気処理のうち、特にメタン発酵を行う場合、被処理水W中には、メタンのほか、硫化水素、水素、アンモニア等が生成する。なお、これら生成物は、本発明における還元性物質に相当するものである。
【0030】
処理槽2で処理された被処理水Wは還元性物質を含有する処理水W1となり、接続配管L2を介して、発電部3へ導入される。
【0031】
(発電部)
発電部3は、処理水W1中の還元性物質を電子供与体として発電を行うためのものである。
本実施態様の発電部3は、
図1に示すように、処理槽2の後段に設けられ、第1のセル31a及び第2のセル31bと、セル31a、31bの間を仕切るように設けられたイオン交換体35と、セル31a、31bにそれぞれ配置された電極33a、33bとを備えている。ここで、第1のセル31aは、処理槽2から接続配管L2を介して導入された処理水W1が電極33aに接触するように形成されており、第1のセル31aに配置された電極33aはアノードとして機能する。一方、第2のセル31bは、電子受容体を貯留ないしは供給するように形成されており、第2のセル31bに配置された電極33bはカソードとして機能する。また、電極33a、33bは導線により外部回路と接続されている(不図示)。これにより、発電部3において、還元性物質が電子供与体として作用することで発生する電気エネルギーの回収及び利用が可能となる。
【0032】
第1のセル31aは、電極33aを備え、処理水W1が電極33aに接触するように形成されているものであればよく、特に素材や形状は問わない。例えば、
図1に示すように、接続配管L2を介して処理水導入口32aから導入された処理水W1を一時的に貯留可能なスペースを有し、電極33aに接触した後の処理水W2を処理水排出口32bから排出するための排出配管L3を備えるものとすること等が挙げられる。これにより、処理水W1中の還元性物質は電子供与体として電極33aに電子を供与した後、排出配管L3を介して速やかに排出される。なお、処理水導入口32a及び処理水排出口32bの位置関係は特に限定されない。例えば、
図1に示すように、処理水導入口32aを第1のセル31aの側面に設け、処理水排出口32bを第1のセル31aの底面に設けるもののほか、
図4で示すように、処理水導入口32a及び処理水排出口32bを第1のセル31aの側面に設け、処理水導入口32aよりも垂直方向に高い位置に処理水排出口32bを設けるものなどが挙げられる。
なお、接続配管L2及び/又は排出配管L3に、バルブ等の流量調整機構を設けるものとしてもよい。これにより、電極33aに接触させる処理水W1の量及び流速を調整し、電極33aに対する物質移動速度を制御することが可能となる。
【0033】
排出配管L3を介して排出された処理水W2は、河川などへの放流が可能な水質を満たすものであれば、そのまま放流することが可能である。また、
図1に示すように、排出配管L3の後段に、処理水W2を更に処理するための反応槽5を設け、処理水W3として系外へ排出するものとしてもよい。反応槽5としては、処理水W2が系外あるいは河川への放流が可能な水質となるように処理できるものであれば特に限定されない。例えば、曝気槽やpH調整槽などが挙げられる。
【0034】
第2のセル31bは、電極33bを備え、処理水W1中の還元性物質に対する電子受容体を貯留ないしは供給するように形成されているものであればよく、特に素材や形状は問わない。
【0035】
ここで、電子受容体の形態は、気体、液体のいずれであってもよい。なお、液体としては、固体薬剤を溶解させた溶液であってもよく、気体を混合(溶解)させた溶液であってもよい。
本実施態様において電子受容体の具体的な例については、例えば、気体としては、酸素及び酸素を含む気体が挙げられる。なお、酸素を含む気体とは、空気のように混合物として酸素を含むものや、二酸化炭素のように化合物を構成する元素として酸素を含むものが挙げられる。電子受容体として気体を用いた場合、反応後に排出したものの処理が不要(あるいは容易)であることや、入手に係るコストを低減できるという利点がある。なお、これらの利点を最大限活用するためには、電子受容体として、空気を用いることが特に好ましい。
また、本実施態様において電子受容体の他の例としては、例えば、液体として、溶存酸素を含む溶液や、フェリシアン化カリウム水溶液のような酸化剤の水溶液等が挙げられる。電子受容体として液体を用いた場合、電子受容体として効果の高い化合物(酸化剤)の取り扱いが容易となるため、発電効率をより向上させることができるという利点がある。なお、発電効率を向上させるという観点からすると、電子受容体としては、フェリシアン化カリウム水溶液を用いることが特に好ましい。
【0036】
第2のセル31bとしては、例えば、
図1に示すように、第2のセル31bに、気体状の電子受容体(酸素、空気など)を電極33bに対して供給するために、気体を供給するための電子受容体供給口34a及び反応後の気体を排出するための電子受容体排出口34bを設けることが挙げられる。また、第2のセル31bの他の例としては、第2のセル31bに、液体を貯留可能なスペースを設け、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bとして、それぞれ電子受容体の溶液の供給及び反応後の溶液の排出が可能なものを設けること等が挙げられる。これにより、電極33aからの電子を、電極33bを介して電子受容体が受け取ることができ、電極33aと電極33bの間に電流が流れて発電が行われる。また、反応後の電子受容体は電子受容体排出口34bを介して速やかに発電部3の外部に排出される。
なお、電子受容体供給口34a及び/又は電子受容体排出口34bにバルブ等の流量調整機構を設け、第2のセル31bにおける電子受容体の濃度を調整できるものとしてもよい。さらに、電極33aにおける反応により生成した電子量に応じた電子受容体濃度が維持されるように流量調整機構を制御する制御機構を設けるものとしてもよい。これにより、電極33a及び電極33b間の電子移動に係る反応効率の低下を抑制し、発電効率の低下を抑制することが可能となる。
【0037】
図1において、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bは、それぞれ1つずつ設けたものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bを複数設けるものとしてもよい。特に、電子受容体として酸素を含む気体を用いた場合、後述するように、電極33bにおける反応によって水が生成する。したがって、電子受容体排出口34bを複数設ける場合、例えば、気体を排出するものと液体を排出するものをそれぞれ分けて設けること等が挙げられる。
【0038】
イオン交換体35は、イオンを透過することのできる公知の構成であればよく、特に限定するものではない。特に、電極33a(アノード側)で発生する水素イオンを透過することのできる陽イオン交換膜とすることが挙げられる。これにより、電極33a(アノード側)から電極33b(カソード側)へ水素イオンが移動することで、電極33bでの電子受容体の反応効率を高めることができ、発電効率を向上させることができる。また、イオン交換体35は、酸素透過性が低いものとすることがより好ましい。これにより、電極33b(カソード側)に供給される電子受容体(酸素)が電極33a側に移動することを抑制し、電極33aにおける電子供与体の反応効率が酸素により低下することを抑制することが可能となる。
なお、
図1において、イオン交換体35は、電極33a及び電極33bと別体として設けるものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、イオン交換能を有する材料と電極33a及び/又は電極33bを一体とすること等が挙げられる。これにより、発電部3全体を小型化することが可能となるとともに、メンテナンス作業に係る時間短縮が可能となる。
【0039】
電極33aは、処理水W1中の還元性物質から電子を回収する電極であり、いわゆるアノードとして機能するものである。また、本実施態様における電極33aは、処理槽2で処理された後の処理水W1と接触するように第1のセル31a内に配置されている。
【0040】
電極33aとしては、アノードとして機能するものであればよく、材質及び形状については特に限定されない。電極33aの材質及び形状については、材料調達や加工に係るコスト、電極33aにおける還元性物質の反応効率などを鑑みて、適宜選択することができる。電極33aの材質の例としては、例えば、電気化学分野で電極材料として広く用いられている炭素や金属(ステンレス、白金、銅等)が挙げられる。また、電極33aの形状の例としては、例えば、平板状、棒状、メッシュ状などが挙げられる。
【0041】
電極33bは、電極33aの対極であって、電子受容体へ電子を受け渡す電極であり、いわゆるカソードとして機能するものである。また、本実施態様における電極33bは、第2のセル31b内に配置されている。
【0042】
電極33bとしては、カソードとして機能するものであればよく、材質及び形状については特に限定されない。電極33bの材質及び形状については、材料調達や加工に係るコスト、電極33bにおける電子受容体の反応効率などを鑑みて、適宜選択することができる。電極33bの材質の例としては、例えば、電気化学分野で電極材料として広く用いられている炭素や金属(ステンレス、白金、銅等)が挙げられる。また、電極33bの形状の例としては、例えば、平板状、棒状、メッシュ状などが挙げられる。
【0043】
第2のセル31b内に供給される電子受容体が気体(空気)である場合、電極33bは、一方の面は気体と接するが、もう一方の面は処理水W1と接する。このため、電極33bは、いわゆるエアカソードとして適した形態とすることが好ましい。エアカソードとして適した形態としては、例えば、気体透過性と不透水性の両方の性質を備えることが挙げられる。電極33bが気体透過性を備えた形態とすることにより、電子受容体である気体を電極33bで効果的に反応させることが可能となる。また、電極33bが不透水性を備えることにより、第1のセル31a内の処理水W1が電極33bを透過し、第2のセル31b内に流入することを抑制することが可能となる。このような電極33bの具体例としては、炭素繊維からなるものや、金属メッシュ表面に対して気体透過性及び不透水性を有する材料の塗布あるいはフィルムの積層等の表面処理を行ったもの等が挙げられる。なお、ここでの不透水性とは、水を通さないことを指し、例えば、電極33bを防水化、撥水化、疎水化、あるいは止水化することについても、不透水性を備えることに含まれるものである。
【0044】
以下、排水処理装置1における発電について詳細に説明する。
図1に基づき、本発明の第1の実施態様の排水処理装置における発電に係る反応及び工程を説明する。本実施態様の配管における発電に係る反応及び工程は、被処理水Wを嫌気処理することで生成した還元性物質を電子供与体として用い、空気(酸素)を電子受容体として用いるものについて説明するものである。
なお、
図1に基づく反応及び工程に係る説明は、本実施態様における発電の一例について示すものであり、これに限定されるものではない。また、以下の説明は、処理槽2から発電部3に係る反応及び工程について述べたものであり、その他の構成(導入配管L1、排出配管L3及び反応槽5など)に係る反応及び工程については説明を省略している。さらに、反応R1~R4及び工程S1~S3の表記については、説明のために番号を付したものであり、反応及び工程順序を特定するものではない。
【0045】
図1に示すように、処理槽2に導入された被処理水Wは、処理槽2内の嫌気性微生物(酸生成菌及びメタン生成菌)により嫌気処理される(工程S1)。このとき、メタンのほかに、還元性物質(水素、硫化水素、アンモニア等)が生成する。
【0046】
処理槽2で処理され、還元性物質を含む処理水W1は、接続配管L2を介して発電部3における第1のセル31a内に導入される(工程S2)。ここで、還元性物質(水素、硫化水素、アンモニア等)が電極33aに接触することで、還元性物質が電子供与体として機能し、電極33aへ電子が供与される。このとき、電子供与体として機能する還元性物質として、硫化水素を例にとると、電極33aにおける反応(反応R1)は、以下の反応式(式1)で示される。
【数1】
【0047】
また、硫化水素の一部は硫化水素イオンとして反応する。このときの反応は、以下の反応式(式2)で示される。
【数2】
【0048】
式1及び式2で示されるように、反応R1において、処理槽2で処理された後の処理水W1に含まれる硫化水素は電極33aに電子を供与するとともに、硫化水素自身は酸化処理されることで無害化、無臭化する。このため、本実施態様の排水処理装置は、発電とともに、脱硫・脱臭が可能となるという効果も奏する。なお、硫化水素以外の有害物質・臭気物質である還元性物質(アンモニア等)についても、同様に電子供与体として機能し、反応が進行することで、無害化・無臭化が可能になる。
【0049】
式1及び式2に示された反応式に基づき、電極33aにおける反応が進行した後、電子は電極33aから導線を介して電極33bへ移動する(反応R2)。なお、このとき、電極33aにおける反応で生成した水素イオンは、イオン交換体35を介して第2のセル31b側へ移動する(反応R3)。
【0050】
一方、第2のセル31bには、電子受容体供給口34aから電子受容体として空気(酸素)を導入する(工程S3)。ここで、反応R2により、電極33aから電極33bに移動した電子を、電極33bを介して電子受容体が受け取る。また、このとき、反応R3により、イオン交換体35を介して第2のセル31b側に移動した水素イオンも電子受容体(酸素)と反応する。このときの電極33bにおける反応(反応R4)は、以下の反応式(式3)で示される。
【数3】
【0051】
上述した反応R1~R4及び工程S1~S3に基づき、電極33aと電極33bの間に電流が流れる。これにより、本実施態様の排水処理装置における発電が行われる。
また、発電により得られた電気エネルギーは、電極33a及び電極33bに接続した外部回路を通じて回収・利用することができる。なお、電気エネルギーの利用については、特に限定されない。例えば、排水処理装置の設備駆動に用いるものであってもよく、排水処理装置外で利用するものであってもよい。
【0052】
(接触効率向上手段)
接触効率向上手段4は、発電部3における電極33a及び/又は電極33bの表面に対し、電極反応成分の接触効率を向上させるためのものである。
【0053】
本実施態様における電極33aは、上述したように、処理水W1中の還元性物質から直接電子を回収するものである。したがって、電極33aに対し、電極反応成分である還元性物質の接触効率を向上させることにより、電極反応効率の低下を抑制し、発電効率を向上させることができる。同様に、電極33bに対しても、電極反応成分である電子受容体の接触効率を向上させることにより、電極反応効率の低下を抑制し、発電効果を向上させることが可能となる。
【0054】
接触効率向上手段4としては、電極33a及び/又は電極33bの表面に対し、電極反応成分の接触効率を向上させることができるものであればよく、特に限定されない。本実施態様における接触効率向上手段4としては、例えば、電極33a及び/又は電極33bの表面に対する電極反応成分の移動速度を速めるものや、電極反応成分の濃度を高めるものなどが挙げられる。
また、接触効率向上手段4は、被処理水Wを処理する処理工程を利用することが好ましい。これにより、被処理水Wの処理手段と接触効率向上手段4を兼用させ、電極と電極反応成分の接触効率向上に係る付帯設備を削減し、ランニングコストを大幅に低減することができる。
【0055】
以下、接触効率向上手段4の具体例について説明する。なお、以下に示す接触効率向上手段4に係る説明は、本実施態様における接触効率向上手段4の一例について示すものであり、これに限定されるものではない。
【0056】
本実施態様における接触効率向上手段4の例としては、電極33a及び/又は電極33bの表面に対し、電極反応成分の移動速度を制御する移動速度制御手段6を設けることが挙げられる。
【0057】
移動速度制御手段6としては、電極33a及び/又は電極33bの表面に対し、電極反応成分の移動速度を制御し、少なくとも電極反応成分の移動速度を速めることができるものが挙げられる。具体的には、発電部3に対して処理水W1を供給する際の流速を制御するものや、発電部3のセル(第1のセル31a、第2のセル31b)内で乱流を生じさせるもの等が挙げられる。
ここで、移動速度制御手段6として処理水W1全体の流速を制御するものを用いる場合、処理水W1の全体量を鑑みると、この流速制御には多大な動力を必要とすることが想定される。したがって、移動速度制御手段5としては、発電部3のセル内において乱流を形成し、電極反応成分の移動速度を速めることができるものが好ましい。さらに、発電部3内の電極表面近傍において乱流を形成するものがより好ましい。これにより、電極反応成分の移動速度の制御に係る動力を抑制することができ、省エネルギー化及び省コスト化が可能となる。
【0058】
移動速度制御手段6の具体例としては、電極33a及び電極33bの表面に対して流体(気体又は液体)を供給し、乱流を形成することが挙げられる。
図2は、本実施態様の移動速度制御手段6として、電極33a及び電極33bの表面に対して流体を供給するものを用いた際の概略説明図である。なお、
図2は、排水処理装置1Aにおける発電部3周辺の拡大図であり、処理槽2及び反応槽5については図示を省略している。
【0059】
図2に示すように、移動速度制御手段6として、第1のセル31a及び第2のセル31bにそれぞれ流体供給口61a、61bと流体供給手段62を設け、電極33a及び電極33bの表面近傍に流体が供給されるように配置することが挙げられる。なお、
図2における破線の矢印は、流体の移動方向を示している。
【0060】
流体供給手段62としては、流体を供給することができるものであればよく、特に限定されない。なお、流体供給手段62としては、流体を圧縮可能な設備を設け、圧縮流体を供給するものとしてもよい。圧縮流体を用いることで、電極33a及び電極33bの表面近傍における乱流形成に係る流速制御を容易に行うことが可能となる。
【0061】
流体供給手段62から供給する流体として気体を用いる場合、例えば、被処理水Wを処理する処理工程から発生する気体を供給することや、被処理水Wを処理する処理工程で使用する気体を一部流用して供給するものなどが挙げられる。より具体的には、処理槽2で発生するバイオガスを回収して流体供給口61a、61bから供給することや、反応槽5を曝気槽とした際の曝気用気体の一部を流体供給口61a、61bから供給すること等が挙げられる。これにより、被処理水Wの処理手段と移動速度制御手段6の気体供給源を兼用することができ、処理コストの低減が可能となる。
【0062】
また、流体供給手段62から供給する流体として液体を用いる場合、例えば、被処理水Wを処理する処理工程で使用する液体を一部流用して供給するものなどが挙げられる。より具体的には、反応槽5で処理された後の処理水W3の一部を流体供給口61a、61bから供給することや、排出配管L3内の処理水W2の一部を流体供給口61a、61bから供給すること等が挙げられる。これにより、被処理水Wの処理手段と移動速度制御手段6の液体供給源を兼用することができ、処理コストの低減が可能となる。
【0063】
移動速度制御手段6の別の態様として、
図2に示した流体供給口61a、61bを別体として設けることなく、処理水導入口32a、処理水排出口32b、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bを、流体供給口61a、61bとして兼用させることが挙げられる。これにより、発電部3に接触効率向上手段4(移動速度制御手段6)としての新たな構造を設ける必要がなく、設備コストの低減が可能となる。
【0064】
また、移動速度制御手段6において、第1のセル31a及び第2のセル31b内に供給された流体は、そのまま処理水や電子受容体等とともに処理水排出口32b及び電子受容体排出口34bから排出するものとしてもよいが、供給した流体を回収する回収手段63を設けるものとしてもよい。特に、移動速度制御手段6の流体として処理槽2から発生したバイオガスを用いた場合、流体の回収手段63を設けることが好ましい。これにより、発電部3で使用したバイオガスを、再度エネルギー源として回収・利用することができ、排水処理装置1Aとしてエネルギー回収・利用効率を高めることが可能となる。
【0065】
回収手段63としては、移動速度制御手段6における流体を、第1のセル31a及び第2のセル31bから排出・回収することができるものであればよく、特に限定されない。
【0066】
図3及び
図4は、本実施態様における排水処理装置1Aの別態様を示す概略説明図である。
図3及び
図4における排水処理装置1Aは、
図2で示した移動速度制御手段6において回収手段63を設けるものに係る概略説明図である。
【0067】
図3に示すように、流体の回収手段63として第1のセル31a及び第2のセル31bに流体排出口64a及び64bを設け、第1のセル31a及び第2のセル31b内に供給したバイオガスは、流体排出口64a及び64bから回収することが挙げられる。
また、流体の回収手段63の他の例としては、処理水排出口32b及び電子受容体排出口34bから排出された流体を分離・回収する気液分離部65を備えることが挙げられる。例えば、
図4に示すように、処理水排出口32bに接続されている排出配管L3上に気液分離部65を設け、第1のセル31a内に供給したバイオガスを回収することが挙げられる。このとき、
図4で示すように、処理水導入口32a及び処理水排出口32bを第1のセル31aの側面に設け、処理水導入口32aよりも垂直方向に高い位置に処理水排出口32bを設けるものとすることが好ましい。これにより、流体(バイオガス)が混合した状態の処理水W2を効率よく回収することが可能となる。
さらに、回収手段63(流体排出口64a及び64b、あるいは気液分離部65)の後段には、ガスの貯留設備等、バイオガスの利用に係る設備を設けることが好ましい(不図示)。これにより、回収手段63で回収したバイオガスについて、エネルギー源としての利用が容易となる。
【0068】
ここで、第1のセル31a内の処理水W1あるいは第2のセル31b内の溶液に対し、バイオガスを供給し、回収手段63を介して回収する場合、バイオガス中に含まれる水溶性の成分(特に硫化水素)が処理水W1等に溶解し、除去することが可能となる。これにより、排水処理装置1Aには、排水処理及び発電以外に、バイオガス精製や脱硫の機能も付与させることが可能となる。
【0069】
移動速度制御手段6の別の態様としては、第1のセル31a及び第2のセル31b内に撹拌機構を設け、乱流を形成することが挙げられる。これにより、外部からの流体供給に係る構造を設けることがなく、電極表面に対する電極反応成分の移動速度を制御することが可能となる。また、撹拌機構の駆動制御により、電極反応成分の移動速度を容易に制御することが可能となる。
【0070】
本実施態様における接触効率向上手段4の他の例としては、電極反応成分の濃度を制御する濃度制御手段7を設けることが挙げられる。
【0071】
濃度制御手段7としては、発電部3における電極反応成分の濃度を制御し、少なくとも電極反応成分の濃度を高めることができるものが挙げられる。具体的には、発電部3に対して電極反応成分を追加供給するものや、発電部3内の電極反応成分を電極33a及び電極33bの近傍に集約するもの等が挙げられる。
【0072】
濃度制御手段7の具体例としては、第1のセル31a及び第2のセル31b内に、電極反応成分を追加供給することが挙げられる。
図5は、本実施態様の濃度制御手段7として、第1のセル31a及び第2のセル31b内に電極反応成分を追加供給するものを用いた際の概略説明図である。なお、
図5は、排水処理装置1Aにおける発電部3周辺の拡大図であり、処理槽2及び反応槽5については図示を省略している。
【0073】
図5に示すように、濃度制御手段7として、第1のセル31a及び第2のセル31bにそれぞれ電極反応成分添加口71a、71bと電極反応成分添加手段72を設けることが挙げられる。
【0074】
電極反応成分添加手段72は、第1のセル31a及び第2のセル31bに対して電極反応成分を追加供給することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、電極反応成分添加手段72としては、電極反応成分を貯留する貯留部や、電極反応成分の添加量を決定・調整するための制御部等を備えること等が挙げられる。
【0075】
電極反応成分添加手段72により添加される電極反応成分の種類は、電極33a及び電極33bそれぞれにおいて、電極反応が進行するものであればよく、特に限定されない。例えば、第1のセル31aには、電極反応成分添加手段72を介し、電極反応成分として還元性物質を添加することが挙げられる。一方、第2のセル31bは、電極反応成分添加手段72を介し、電極反応成分として電子受容体を添加することが挙げられる。
【0076】
なお、上述した移動速度制御手段6における流体として電極反応成分を用いることで、電極反応成分添加手段72の機能を兼ねるものとしてもよい。これにより、発電部3の電極表面と電極反応成分との接触効率をより一層向上させることが可能となる。特に、処理槽2からのバイオガスを発電部3の第1のセル31aに供給し、移動速度制御手段6における流体及び電極反応成分添加手段72における電極反応成分として活用することが好ましい。このとき、バイオガス中の水溶性成分(特に硫化水素)が処理水W1内に溶解し、処理水W1中の還元性物質濃度が高まる一方で、バイオガスからは硫化水素を除去することが可能となる。これにより、発電効率が向上するという効果に加え、バイオガス精製や脱硫の機能も備えることができるという効果も奏する。
【0077】
また、濃度制御手段7の他の具体例としては、発電部3内の電極反応成分を電極33a及び電極33bの近傍に集約することが挙げられる。
図6は、本実施態様の濃度制御手段7として、電極33a及び電極33bの近傍に電極反応成分を集約するものを用いた際の概略説明図である。なお、
図6は、排水処理装置1Aにおける発電部3周辺の拡大図であり、処理槽2及び反応槽5については図示を省略している。
【0078】
図6に示すように、濃度制御手段7として、第1のセル31a及び第2のセル31bに吸着材73を備えるものが挙げられる。
【0079】
吸着材73は、電極反応成分を吸着することができるものであればよく、材質や形状については特に限定されない。例えば、第1のセル31aには、電極反応成分として還元性物質を吸着することができる吸着材73を設けることが挙げられる。一方、第2のセル31bには、電極反応成分として電子受容体を吸着することができる吸着材73を設けることが挙げられる。また、吸着材73は、電極33a及び電極33bの近傍に設けるものであってもよく、電極33a及び電極33bとして多孔質からなるものを用い、電極33a及び電極33b自体が吸着材73としての機能を有するものとしてもよい。これにより、電極33a及び電極33bの近傍に電極反応成分を集約し、電極反応成分の濃度を制御することが可能となる。
【0080】
本実施態様における接触効率向上手段4は、作動に係る条件を適宜設定することが可能である。例えば、発電部3の駆動時(発電時)において、常に作動させるものであってもよく、作動の間隔やタイミング等を定期あるいは不定期に変更するものであってもよい。これにより、排水処理装置1Aによる発電を効率的に実施することができる作動条件を設定し、効率的なエネルギーの回収・利用を行うことが可能となる。
【0081】
本実施態様における排水処理装置1Aは、電極33a及び電極33bの表面に堆積物が堆積することを抑制するために、移動速度制御手段6や濃度制御手段7の作動条件を設定するものとしてもよい。また、電極表面の堆積物を除去するために、移動速度制御手段6や濃度制御手段7自体が、後述する洗浄手段8の機能を兼ねるものとしてもよい。これにより、接触効率向上手段4を、電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させるための複数の機能を備えるものとし、装置構成を簡略化することができる。
【0082】
また、本実施態様における排水処理装置1Aは、被処理水W中の還元性物質を電子供与体として用い、電気化学反応(電極反応)により発電を行い、エネルギーを回収・利用するものである。一般に、電気化学反応を行う場合、実際に電気化学反応を行う箇所(発電部3)以外へ電子が移動することで、電気化学反応の効率が低下するという問題が生じる。したがって、本実施態様における排水処理装置1Aは電気化学反応を行う箇所(発電部3)以外を絶縁処理することが好ましい。絶縁処理の具体例としては、例えば、処理槽2及び反応槽5を絶縁体の上部に設置することのほか、処理槽2及び反応槽5の外壁あるいは内壁を絶縁体で構成することや、処理槽2及び反応槽5の外壁あるいは内壁を絶縁材料でコーティングすることなどが挙げられる。また、導入配管L1、接続配管L2及び排出配管L3の絶縁処理としては、例えば、それぞれの配管を絶縁体からなるものとすることや、それぞれの配管に絶縁材料をコーティングすること等が挙げられる。
【0083】
以上のように、本実施態様の排水処理装置及び排水処理方法により、排水処理における一連の処理過程の中で発電を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施し、エネルギーの回収・利用が可能となる。また、被処理水を処理した後の処理水に含まれる成分を用いて電極反応を行うことで、排水処理工程内で生成する成分を有効活用することが可能となる。さらに、発電部の電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させる接触効率向上手段を備えることにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び電気化学処理の効率向上が可能となる。
【0084】
特に、接触効率向上手段として、電極表面に対し、前記電極反応成分の移動速度を制御する移動速度制御手段を備えることにより、電極表面に対して速やかに電極反応成分を供給することが可能となる。これにより、電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させることができ、電極反応の効率低下を抑制し、発電効率の向上が可能となる。
【0085】
また、接触効率向上手段として、電極反応成分の濃度を制御する濃度制御手段を備えることにより、電極反応に関与する電極反応成分量を増大させることが可能となる。これにより、電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させることができ、電極反応の効率低下を抑制し、発電効率の向上が可能となる。
【0086】
さらに、接触効率向上手段として、上述した移動速度制限手段及び濃度制御手段を兼ねるものを用いることで、より一層電極反応の効率低下を抑制することが可能となる。特に、処理槽で発生したバイオガスを活用し、移動速度制御手段における乱流形成のための流体、及び、濃度制御手段における追加供給のための電極反応成分として用いることで、発電部の電極表面と電極反応成分との接触効率をより一層向上させるとともに、バイオガス中の水溶性成分(特に硫化水素)を除去することが可能となる。したがって、本実施態様における排水処理装置及び排水処理方法は、排水処理及び発電以外に、バイオガス精製や脱硫の機能も備えることができるという効果も奏する。
【0087】
〔第2の実施態様〕
図7は、本発明の第2の実施態様における排水処理装置を示す概略説明図である。
第2の実施態様に係る排水処理装置1Bは、接触効率向上手段4として、電極33a及び電極33bの表面に堆積した堆積物を洗浄する洗浄手段8を設けるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0088】
電極33aの表面には、式1及び式2に示すように、電極反応により生成した生成物(硫黄など)や、処理槽2から発電部3に一部流入した微生物などが電極33aの表面に付着し、堆積物として堆積する。このとき、電極33aに対する還元性物質の物質移動速度が堆積物により阻害され、電極反応効率を低下させるという問題が生じる。また、電極33bにおいても同様に、電子受容体として導入した物質及び混入した不純物が電極33bに付着し、堆積物として堆積することで、電極反応の効率が低下するという問題が生じる。したがって、接触効率向上手段4として洗浄手段8を設けることで、電極表面の堆積物を除去し、電極と電極反応成分との接触効率を向上させることができる。また、発電部3における電極反応効率の低下を抑制し、発電効率を向上させることができる。
【0089】
洗浄手段8は、発電部3における電極33a及び電極33bの表面を洗浄し、電極反応効率の低下を抑制するためのものである。
洗浄手段8としては、電極33a及び電極33bの表面に堆積した堆積物を除去することができるものであればよく、特に限定されない。なお、本実施態様における洗浄手段8としては、電極33a及び電極33bを発電部3内に留めたまま洗浄を行うものや、発電部3から電極33a及び電極33bを取り出して洗浄を行うものが挙げられるが、洗浄効果や作業の容易さ等を鑑みて適宜選択することが可能である。
【0090】
以下、洗浄手段の具体例について説明する。なお、以下に示す洗浄手段8に係る説明は、本実施態様における洗浄手段8の一例について示すものであり、これに限定されるものではない。
【0091】
本実施態様の洗浄手段8としては、電極表面に堆積した堆積物に外力を与えて剥離する剥離手段8Aを備えるものが挙げられる。
剥離手段8Aとしては、堆積物に外力を与えて剥離させることができるものであればよく、例えば、電極33a及び電極33bの表面を機械的に擦る手段や、電極33a及び電極33bの表面に堆積した堆積物に対し、気体や液体による剪断力を与える手段などが挙げられる。洗浄手段8として剥離手段8Aを用いることで、堆積物を強制的に電極33a及び電極33bの表面から引き剥がすことができ、堆積物の種類によらず高い洗浄効果を得ることができる。また、剥離手段8Aを用いることで、洗浄手段8によって第1のセル31a及び第2のセル31b内の環境条件(pH、各種化合物の濃度等)を変えることなく洗浄を行うことができる。
【0092】
剥離手段8Aの具体例としては、スポンジやスクレーパーなど、電極33a及び電極33bの表面を擦る部材を設けることが挙げられる。
電極33a及び電極33bの表面を擦る部材を用いる例としては、電極33a及び電極33bの表面を自動的に擦ることができるように駆動部や制御部を設け、洗浄の頻度やタイミングを設定するものとすることが挙げられる。これにより、電極33a及び電極33bの表面に堆積した堆積物の洗浄作業が容易となる。また、定期的に部材を動かすことで、堆積物が電極33a及び電極33bの表面に堆積すること自体を抑制することが可能となる。
また、電極33a及び電極33bの表面を擦る部材を用いる別の例としては、作業者が電極33a及び電極33bの表面を直接洗浄するものとすることが挙げられる。これにより、電極33a及び電極33bの表面の洗浄とともに、作業者の目視によるメンテナンスを行うことが可能となる。
【0093】
剥離手段8Aの他の具体例としては、電極33a及び電極33bの表面に対して気泡や圧縮流体(気体又は液体)を当てることが挙げられる。
図8は、本実施態様の剥離手段8Aとして、電極33a及び電極33bの表面に対して流体(気体又は液体)を当てるものを用いた際の概略説明図である。なお、
図8は、排水処理装置1Bにおける発電部3周辺の拡大図であり、処理槽2及び反応槽5については図示を省略している。
【0094】
図8に示すように、剥離手段8Aとして、第1のセル31a及び第2のセル31bにそれぞれ流体供給口81a、81bと流体供給手段82を設け、電極33a及び電極33bの表面に流体が当たるように配置することが挙げられる。なお、
図8における破線の矢印は、流体の移動方向を示している。また、流体供給口81a、81bと流体供給手段82は、上述した移動速度制御手段6における流体供給口61a、61bと流体供給手段62と同様の構造を有するものとし、移動速度制御手段6と剥離手段8Aの機能を兼ねるものとしてもよい。
【0095】
流体供給手段82としては、流体を供給することができるものであればよく、特に限定されない。
【0096】
流体供給手段82から供給する流体として気体を用いる場合、例えば、被処理水Wを処理する処理工程から発生する気体を供給することや、被処理水Wを処理する処理工程で使用する気体を一部流用して供給するものなどが挙げられる。より具体的には、処理槽2で発生するバイオガスを回収して流体供給口81a、81bから供給することや、反応槽5を曝気槽とした際の曝気用気体の一部を流体供給口81a、81bから供給すること等が挙げられる。これにより、被処理水Wの処理手段と洗浄手段8の気体供給源を兼用することができ、処理コストの低減が可能となる。このとき、流体供給手段82として、気体を圧縮可能な設備(ブロワー、コンプレッサー等)を設け、圧縮気体を供給するものとしてもよい。圧縮気体を用いることで、電極33a及び電極33bの表面に堆積した堆積物に対する剪断力が強まり、洗浄効果を高めることができる。
【0097】
また、流体供給手段82から供給する流体として液体を用いる場合、例えば、被処理水Wを処理する処理工程で使用する液体を一部流用して供給するものなどが挙げられる。より具体的には、反応槽5で処理された後の処理水W3の一部を流体供給口81a、81bから供給することや、排出配管L3内の処理水W2の一部を流体供給口81a、81bから供給すること等が挙げられる。これにより、被処理水Wの処理手段と洗浄手段8の液体供給源を兼用することができ、処理コストの低減が可能となる。このとき、流体供給手段82として、液体を圧縮可能な設備(高圧ポンプ等)を設け、高圧液体を供給するものとしてもよい。高圧液体を用いることで、電極33a及び電極33bの表面に堆積した堆積物に対する剪断力が強まり、洗浄効果を高めることができる。
【0098】
剥離手段8Aとして、流体供給口81a、81bと流体供給手段82を設ける場合、
図8に示すように、流体の移動方向は、処理水W1及び電子受容体の移動方向と逆方向になることが好ましい。これにより、処理水W1及び電子受容体の移動方向に沿って電極33a及び電極33bの表面に堆積した堆積物に対し、逆方向の剪断力を加えて剥離することになるため、洗浄効果をより一層高めることができる。
【0099】
剥離手段8Aの別の態様として、
図8に示した流体供給口81a、81bを別体として設けることなく、処理水導入口32a、処理水排出口32b、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bを、流体供給口81a、81bとして兼用させることが挙げられる。これにより、発電部3に洗浄手段8としての新たな構造を設ける必要がなく、設備コストの低減が可能となる。
【0100】
図9は、本実施態様の剥離手段8Aの別態様を示した概略説明図である。なお、
図9は、排水処理装置1Bにおける発電部3周辺の拡大図であり、処理槽2及び反応槽5については図示を省略している。また、
図9における破線の矢印は、流体の移動方向を示している。
【0101】
図9に示すように、剥離手段8Aとしては、例えば、接続配管L2及び排出配管L3上に液体の加圧が可能なポンプP1、P2を設け、電極33aの表面に向けて高圧液体を供給して洗浄することが挙げられる。このとき、接続配管L2側から処理水導入口32aに向かって高圧液体を供給することや、排出配管L3側から処理水排出口32bに向かって高圧液体を供給することが挙げられる。また、このとき、
図9に示すように、接続配管L2上のポンプP1と排出配管L3上のポンプP2の駆動を切り換える制御部83を設けるものとしてもよい。これにより、通常の排水処理工程と洗浄工程の切り換えを容易に行うことができる。また、接続配管L2側及び排出配管L3側から交互に高圧液体を供給可能なものとしてもよい。これにより、電極33a表面の洗浄効果を向上させることが可能となる。
【0102】
また、
図9に示すように、剥離手段8Aとしては、例えば、電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bから圧縮流体を供給することで、電極33bの表面を洗浄することが挙げられる。このとき、被処理水Wを処理する処理工程から発生した気体や、被処理水Wの処理に用いた流体などをポンプなどで圧縮し、供給するものとしてもよい(不図示)。これにより、剥離手段8Aとして新たに設ける構造を最小限とし、設備コストを低減することが可能となる。
【0103】
また、剥離手段8Aにおいて、第1のセル31a及び第2のセル31b内に供給された流体は、洗浄後、処理水排出口32b及び電子受容体排出口34bから排出するものとしてもよく、別途、流体排出口(不図示)を設けて排出させるものとしてもよい。特に、剥離手段8Aの流体として処理槽2から発生したバイオガスを用いた場合、流体排出口から洗浄後の流体を回収することが好ましい。なお、洗浄後の流体を回収する場合、上述した回収手段63と同様の構造を設けることなどが挙げられる。これにより、洗浄後の流体をバイオガスとして再度回収・利用することができ、排水処理装置1Bとしてエネルギー回収・利用効率を高めることが可能となる。
【0104】
本実施態様の洗浄手段8の別の態様としては、電極表面に堆積した堆積物を溶解する溶解手段8Bを備えるものが挙げられる。
溶解手段8Bとしては、堆積物を溶解させることができるものであればよく、例えば、電極33a及び電極33bに対して堆積物を溶解させる薬剤を添加する手段や、電極33a及び電極33b間の電圧・電流を制御する電気化学的手段などが挙げられる。洗浄手段8として溶解手段8Bを用いることで、新たに加える装置構成が少なく、設備の小型化が可能である。また、特に電極33a及び電極33bの表面が多孔質である場合、電極33a及び電極33bの表面及び内部に堆積した堆積物に対して高い洗浄効果を奏する。
【0105】
溶解手段8Bの具体例としては、堆積物を溶解させる薬剤を添加することが挙げられる。
図10は、本実施態様の溶解手段8Bとして、電極33a及び電極33bの表面に対して薬剤を添加するものを用いた際の概略説明図である。なお、
図10は、排水処理装置1Bにおける発電部3周辺の拡大図であり、処理槽2及び反応槽5については図示を省略している。
【0106】
図10に示すように、溶解手段8Bとして薬剤を添加するものを用いる例としては、第1のセル31a及び第2のセル31bにそれぞれ薬剤添加口84a、84bと薬剤供給手段85を設け、電極33a及び電極33bの表面に堆積した堆積物に対して薬剤が供給されるように配置することが挙げられる。なお、
図10における破線の矢印は、薬剤の添加方向を示している。
【0107】
薬剤添加手段85は、第1のセル31a及び第2のセル31bに対して薬剤を添加することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、薬剤添加手段85としては、薬剤を貯留する貯留部や、薬剤の添加量を決定・調整するための制御部等を備えること等が挙げられる。
【0108】
薬剤添加手段85により添加される薬剤の種類は、堆積物を溶解させることができるものであればよく、特に限定されない。薬剤としては、例えば、塩酸、硫酸などの酸や、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリを用いることが挙げられる。また、被処理水Wを処理する処理工程で使用されるpH調整剤などの薬剤を利用するものとしてもよい。これにより、洗浄手段8のために新たな薬剤を用意する必要がなく、ランニングコストを低減させることが可能となる。
【0109】
溶解手段8Bとして、薬剤添加口84a、84bと薬剤添加手段85を設ける場合、
図10に示すように、薬剤の添加方向は、電極33a及び電極33bの上部から下部に向かうようにすることが好ましい。特に、第1のセル31a及び第2のセル31b内に貯留されているものが液体である場合、電極33a及び電極33bの上部から薬剤を添加することで、セル31a、31b内に薬剤が速やかに拡散する。これにより、電極33a及び電極33bの表面全体に効率的に薬剤が行き渡るため、洗浄効果を高めることが可能となる。
【0110】
また、接続配管L2に薬剤添加手段85を接続し、薬剤を処理水導入口32aから電極33aに対して供給するものとしてもよい。これにより、薬剤添加口84aを別体として設ける必要がなくなるため、装置構成の簡略化が可能となる。
【0111】
溶解手段8Bの別の態様として、電極33a及び電極33bと接続するように電圧・電流制御装置を設け、電気化学的処理を行うことが挙げられる。より具体的には、電極33a及び電極33b間に高電圧を印加することや、発電時の電極反応とは逆の方向に電流を流すこと等が挙げられる。これにより、電極33a及び電極33bが多孔質であった場合、電極33a及び電極33bの表面及び多孔質内に堆積した堆積物を効果的に溶解させることが可能となる。特に、堆積物が主に電極反応により生成したものからなる場合において、発電時の電極反応とは逆の方向に電流を流すことによって、堆積物を強制的に酸化(又は還元)させることができ、高い洗浄効果を奏する。
【0112】
本実施態様の洗浄手段8の別の態様としては、電極表面に堆積した堆積物を分散して離散させる分散手段8Cを備えるものが挙げられる。
分散手段8Cとしては、電極表面の堆積物を分散させ、その結果電極表面から堆積物を離散させることができるものであればよく、例えば、電極33a及び電極33bに対して堆積物の分散効果がある薬剤を添加する手段や、電極33a及び電極33b表面に対して振動を与える手段などが挙げられる。洗浄手段8として分散手段8Cを用いることで、堆積物を一度分散させ、電極33a及び電極33bの表面から離散させるため、電極33a及び電極33b表面に対する負荷が少ない状態で洗浄を行うことが可能となる。また、電極33a及び電極33bが多孔質である場合、多孔質内に堆積した堆積物に対しても高い洗浄効果を奏する。
【0113】
分散手段8Cの具体例としては、堆積物を分散させる効果がある薬剤を添加することが挙げられる。
図11は、本実施態様の分散手段8Cとして、電極33a及び電極33bの表面に対して薬剤を添加するものを用いた際の概略説明図である。なお、
図11は、排水処理装置1Bにおける発電部3周辺の拡大図であり、処理槽2及び反応槽5については図示を省略している。
【0114】
図11に示すように、分散手段8Cとして薬剤を添加するものを用いる例としては、第1のセル31a及び第2のセル31bにそれぞれ薬剤添加口86a、86bと薬剤供給手段87を設け、電極33a及び電極33bの表面に堆積した堆積物に対して薬剤が供給されるように配置することが挙げられる。なお、
図11における破線の矢印は、薬剤の添加方向を示している。
【0115】
薬剤添加手段87は、第1のセル31a及び第2のセル31bに対して薬剤を添加することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、薬剤添加手段87としては、薬剤を貯留する貯留部や、薬剤の添加量を決定・調整するための制御部等を備えること等が挙げられる。
【0116】
薬剤添加手段87により添加される薬剤の種類は、堆積物を分散させることができるものであればよく、特に限定されない。薬剤としては、例えば、界面活性剤、酵素などを用いることが挙げられる。このとき用いる薬剤は、電極33a及び電極33bに対する腐食などの影響が小さく、電極33a及び電極33bの表面に対し必要以上の負荷をかけることがないという効果がある。また、特に堆積物が主に微生物からなる場合、界面活性剤や酵素を用いることで、電極33a及び電極33bの表面で微生物を分散させ、電極33a及び電極33bの表面から微生物を離散させることが可能となる。これにより、電極33a及び電極33bの表面で死滅した微生物が堆積物として残り続けることを回避し、発電効率(電極反応効率)の低下を抑制することが可能となる。
【0117】
分散手段8Cとして、薬剤添加口86a、86bと薬剤添加手段87を設ける場合、
図11に示すように、薬剤の添加方向は、電極33a及び電極33bの上部から下部に向かうようにすることが好ましい。特に、第1のセル31a及び第2のセル31b内に貯留されているものが液体である場合、電極33a及び電極33bの上部から薬剤を添加することで、セル31a、31b内に薬剤が速やかに拡散する。これにより、電極33a及び電極33bの表面全体に効率的に薬剤が行き渡るため、洗浄効果を高めることが可能となる。
【0118】
また、接続配管L2に薬剤添加手段87を接続し、薬剤を処理水導入口32aから電極33aに対して供給するものとしてもよい。これにより、薬剤添加口86aを別体として設ける必要がなくなるため、装置構成の簡略化が可能となる。
【0119】
分散手段8Cの別の態様として、電極33a及び電極33bに対して振動を与えることが挙げられる。より具体的には、電極33a及び電極33bに対して超音波を照射することができるように超音波発生装置を配設すること等が挙げられる。これにより、電極33a及び電極33bの表面に堆積した堆積物を細分化して分散させ、電極33a及び電極33bの表面から離散させることが可能となる。特に、堆積物が微生物の集合体である場合や、電極反応による生成物が塊状になっている場合などにおいて、超音波によって一旦細分化させることができるため、電極33a及び電極33bの表面には負荷をかけることなく堆積物を容易に引き剥がすことが可能となる。
【0120】
本実施態様の洗浄手段8の別の態様としては、電極表面の周辺環境を変化させる周辺環境変化手段8Dを備えるものが挙げられる。
周辺環境変化手段8Dとしては、電極表面の周辺環境を変化させるものであればよく、例えば、加熱・冷却のような温度制御手段、第1のセル31a及び第2のセル31b内の物性を変化させる添加物を供給する手段、堆積物に一定のダメージを与える手段などが挙げられる。洗浄手段8として周辺環境変化手段8Dを用いることで、堆積物が微生物を含む場合、微生物が電極表面周辺の環境変化に耐えられず、電極表面から離れる方向に微生物を自発的に移動させることが可能となる。これにより、電極表面から効果的に微生物を剥離させることが可能となり、電極表面に対する高い洗浄効果を得ることができる。
【0121】
周辺環境変化手段8Dの具体例としては、第1のセル31a及び第2のセル31b内の物性を変化させる添加物を供給することが挙げられる。
図12は、本実施態様の周辺環境変化手段8Dとして、電極33a及び電極33bの表面に対して添加物を供給するものを用いた際の概略説明図である。なお、
図12は、排水処理装置1Bにおける発電部3周辺の拡大図であり、処理槽2及び反応槽5については図示を省略している。
【0122】
図12に示すように、周辺環境変化手段8Dとして添加物を供給するものを用いる例としては、第1のセル31a及び第2のセル31bにそれぞれ添加物供給口88a、88bと添加物供給手段89を設け、電極33a及び電極33bの表面及び堆積した堆積物の周辺環境を変化させることが挙げられる。なお、
図12における破線の矢印は、添加物の添加方向を示している。
【0123】
添加物供給手段89は、第1のセル31a及び第2のセル31bに対して添加物を供給することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、添加物供給手段89としては、添加物を貯留する貯留部や、添加物の供給量を決定・調整するための制御部等を備えること等が挙げられる。
【0124】
添加物供給手段89により供給される添加物の種類は、第1のセル31a及び第2のセル31b内の物性を変化させることができるものであればよく、特に限定されない。添加物としては、例えば、塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの塩類や、電解水などのイオンを含まないものを用いることが挙げられる。これにより、第1のセル31a及び第2のセル31b内の塩濃度を変えることができ、その結果、電極33a及び電極33bの表面周辺における浸透圧が変化し、微生物が電極33a及び電極33bの表面から自発的に移動することを促すことができる。
【0125】
周辺環境変化手段8Dとして、添加物供給口88a、88bと添加物供給手段89を設ける場合、
図12に示すように、添加物の供給方向は、電極33a及び電極33bの上部から下部に向かうようにすることが好ましい。特に、第1のセル31a及び第2のセル31b内に貯留されているものが液体である場合、電極33a及び電極33bの上部から添加物を供給することで、電極33a及び電極33bの表面に沿って添加物が広がっていく。これにより、電極33a及び電極33bの表面周辺における物性変化を効果的に行うことができ、洗浄効果を高めることが可能となる。
【0126】
周辺環境変化手段8Dの別の態様として、堆積物に一定のダメージを与えることが挙げられる。より具体的には、電極33a及び電極33b表面の堆積物が微生物である場合に、微生物に対して塩素やオゾンを供給することや、紫外線を照射すること等が挙げられる。これにより、電極33a及び電極33bの表面に堆積した堆積物(微生物)に対して一定のダメージを与えることができる。このとき、微生物はダメージを与えられるという環境変化に耐えられず、自発的に電極33a及び電極33bの表面から移動するように促すことが可能となる。なお、塩素やオゾンの供給量、あるいは紫外線照射量が過多になると、微生物が電極33a及び電極33bの表面で死滅してしまい、堆積物となって残存する。したがって、塩素やオゾンの供給量、あるいは紫外線照射量は抑えることが好ましく、これにより、ランニングコストを低減させることができるという効果も奏する。
【0127】
本実施態様の排水処理装置1Bにおける洗浄手段8としては、上記した剥離手段8A、溶解手段8B、分散手段8C及び周辺環境変化手段8Dをそれぞれ単独で行うものに限定されるものではなく、上記手段8A~8Dを複数組み合わせるものとしてもよい。これにより、堆積物の種類によって好適な洗浄手段8を選択して実施することが可能となり、より高い洗浄効果が得られる。特に、洗浄手段8の手段8B~8Dにおいて、第1のセル31a及び第2のセル31b内に薬剤・添加物などの添加を行う構成については、添加する薬剤や添加物を変更することのみで、それぞれの手段8B~8Dを実施することが可能である。したがって、堆積物の種類に応じて手段8B~8Dを容易に切り換えることができ、効果的な洗浄を行うことが可能となる。
【0128】
また、本実施態様の排水処理装置1Bにおいては、第1の実施態様と同様の工程により発電を行うことが可能である。
【0129】
以上のように、本実施態様の排水処理装置及び排水処理方法により、接触効率向上手段として、電極表面に堆積した堆積物を洗浄する洗浄手段を備えることで、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び電気化学処理の効率向上が可能となる。
【0130】
また、電極表面に堆積物が堆積することで、発電部3内におけるセル(第1のセル31a及び第2のセル31b)内の容積減や、電極(電極33a及び電極33b)内部の詰まりが生じ、圧力損失の要因となることがある。したがって、本実施態様における排水処理装置及び排水処理方法のように、接触効率向上手段として洗浄手段を設け、電極表面の堆積物を除去することにより、装置内の圧力損失を抑制することも可能となる。
【0131】
〔第3の実施態様〕
図13は、本発明の第3の実施態様における排水処理装置を示す概略説明図である。また、
図14は、本発明の第3の実施態様における排水処理装置の別態様を示す概略説明図である。
第3の実施態様に係る排水処理装置1Cは、処理槽2が、酸生成槽21とメタン発酵槽22からなるものである。また、発電部3が、処理槽2(酸生成槽21及びメタン発酵槽22)に設けられた循環流路上に設けられるものである。ここで、
図13と
図14に示す排水処理装置1Cは、それぞれ発電部3の設置箇所が異なるものを示している。なお、接触効率向上手段4としては、第1の実施態様及び第2の実施態様に示した接触効率向上手段4のうち、いずれの手段(移動速度制御手段6、濃度制御手段7及び洗浄手段8)を適用するものであってもよく、特に限定されない。また、第1の実施態様及び第2の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0132】
本実施態様における排水処理装置1Cは、
図13及び
図14に示すように、処理槽2は、接続配管L4により接続された酸生成槽21とメタン発酵槽22からなり、循環配管L5により酸生成槽21とメタン発酵槽22間には循環流路が形成されており、また、循環配管L6によりメタン発酵槽22内における循環流路が形成されているものである。
なお、
図13に示す排水処理装置1Cにおいては、発電部3が循環配管L5上に設けられている。一方、
図14に示す排水処理装置1Cにおいては、発電部3が循環配管L6上に設けられている。
【0133】
本実施態様における処理槽2は、酸生成槽21及びメタン発酵槽22を備えるものである。また、酸生成槽21及びメタン発酵槽22は、内部に収容する微生物により、被処理水Wを嫌気処理するための反応槽である。なお、酸生成槽21及びメタン発酵槽22は、嫌気的条件の維持のために、天井を有し、閉じた空間を形成していることが好ましい。
【0134】
酸生成槽21は、導入配管L1により導入される被処理水Wに対し、内部に収容する酸生成菌(主として嫌気性の酸生成菌)により、糖、蛋白質及び油分などの固体や高分子有機物を分解して、単糖類、アミノ酸、低級脂肪酸及び酢酸を生成する酸生成処理を行うものである。酸生成槽21で処理された被処理水Wは、接続配管L4を介してメタン発酵槽22へ供給される。
【0135】
なお、酸生成槽21は、内部の水温調整手段、pH調整剤の投入手段、菌が必要とする栄養源である窒素、リン、コバルト及びニッケル等の金属類を添加する手段を備えたものとしてもよい(不図示)。
【0136】
メタン発酵槽22は、接続配管L4により供給される酸生成槽21で処理された被処理水Wに含まれる単糖類、アミノ酸、低級脂肪酸及び酢酸等からメタンを生成するメタン発酵処理を行うものである。メタン発酵処理は、浮遊法、固定床法、流動床法、UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)法、EGSB(Expanded Granular Sludge Bed)法等により保持されたメタン生成菌により溶存酸素のない嫌気性雰囲気で行うものである。
【0137】
メタン発酵槽22には、嫌気処理に適した嫌気性菌が存在するグラニュール層が形成される。そして、酸生成槽21から被処理水Wがメタン発酵槽22内に導入されると、グラニュール層に含まれる嫌気性菌によってメタン発酵が行われる。その結果、メタン発酵槽22内では、メタン及び二酸化炭素を主成分とするガスが発生するとともに、還元性物質を含む処理水W1を生成する。なお、メタン発酵槽22の内部には気固液分離手段であるセトラー23が設けられていてもよい。メタン発酵槽22内で発生したガスは槽外に放出又は回収される(不図示)。また、メタン発酵槽22で生成された処理水W3は排出配管L7を介して処理系外に排出される。
【0138】
なお、メタン発酵槽22は、さらに付帯する各種設備を設けることができる。例えば、内部の水温調整手段、pH調整剤の投入手段、菌が必要とする栄養源である窒素、リン、コバルト及びニッケル等の金属類を添加する手段を備えたものとしてもよい(不図示)。
【0139】
メタン発酵槽22は、メタン発酵槽22内で発生したガスのうち、メタンガスの回収、精製及び貯留を行う手段を備えるものとすることが好ましい。これにより、発電部3による発電以外に、被処理水Wから有用なエネルギー源であるメタンガスを回収して有効利用することが可能となる。
また、メタン発酵槽22は、メタン発酵槽22内で発生したガスのうち、二酸化炭素ガスの回収、精製及び貯留を行う手段を備え、発電部3における電子受容体供給口34aから第2のセル31b内へ二酸化炭素ガスを導入可能な手段を備えるものとしてもよい。これにより、二酸化炭素ガスを電子受容体として有効利用することが可能となり、電子受容体の供給コストを低減させることが可能となる。また、二酸化炭素ガスを移動速度制御手段6あるいは洗浄手段8の剥離手段8Aにおける流体として用いるものとしてもよい。これにより、メタン発酵槽22で発生したガスの有効利用が可能となるとともに、移動速度制御手段6又は洗浄手段8に用いる気体供給源に係るコストを低減させることが可能となる。
【0140】
さらに、本実施態様におけるメタン発酵槽22は、循環配管L5及び/又は循環配管L6を備えている。循環配管L5は、メタン発酵槽22上部の被処理水Wを酸生成槽21に供給するものであり、酸生成槽21とメタン発酵槽22間の循環流路を形成するものである。また、循環配管L6は、メタン発酵槽22上部の被処理水Wをメタン発酵槽22下部に供給するものであり、メタン発酵槽22内における循環流路が形成されている。
【0141】
本実施態様における発電部3は、循環配管L5及び循環配管L6により形成される循環流路上に設けられるものである。
【0142】
図13に示すように、循環配管L5上に発電部3を設けるものについては、メタン発酵槽22からの処理水W1を第1のセル31aに供給し、電極33aにおける反応後の処理水W2は、循環配管L5を介して、酸生成槽21に供給される。このとき、電極33aにおける反応後の処理水W2は、式1や式2に示すように水素イオン濃度が上昇し、pHが酸性を示す溶液となる。一般に、酸生成槽21内の反応を好適に進行させるためには、酸生成槽21内のpHは酸性寄りにあることが好ましいことが知られている。したがって、発電部3から酸生成槽21に排出される被処理水Wは、酸生成槽21内の反応を好条件下で進行するためのpH調整剤として利用するものとしてもよい。また、酸生成槽21側の循環配管L5上に、バルブなどの流量調整機構や活性炭などの吸着処理手段を設けるものとしてもよい。これにより、発電部3から排出される処理水W2が酸生成槽21内に流入することで酸生成槽21内のpH範囲が適切な範囲から外れる場合、処理水W2の流入量を制御することや酸生成槽21内の被処理水WのpHを制御することができ、酸生成槽21内の反応に対する阻害を抑制することが可能となる。
【0143】
図13に示した本実施態様の排水処理装置1Cにおける接触効率向上手段4としては、第2の実施態様に示した洗浄手段8の溶解手段8Bを用いることが挙げられる。より具体的には、例えば、
図13に示すように、酸生成槽21内のpHを調整する薬剤(pH調整剤)を添加するためのpH調整手段24を設け、pH調整手段24で用いる薬剤の一部を、第2の実施態様に示した洗浄手段8の溶解手段8Bにおける薬剤添加手段85に導入することが挙げられる。これにより、洗浄手段8としての薬剤供給源に係るコストを低減させることが可能となる。また、洗浄後の処理水W2自体を再度pH調整剤として活用することも可能となる。
【0144】
また、
図14に示すように、循環配管L6上に発電部3を設けるものについては、メタン発酵槽22上部からの処理水W1を第1のセル31aに供給し、電極33aにおける反応後の処理水W2は、循環配管L6を介して、メタン発酵槽22下部に供給される。このとき、電極33aにおける反応後の処理水W2は、式1や式2に示すように溶存する硫化水素の濃度が低下した溶液となる。メタン発酵槽22内のグラニュール層に含まれるメタン菌は、硫化水素により代謝を阻害されることが知られている。このため、発電部3からメタン発酵槽22下部に排出される処理水W2は、メタン発酵を阻害することなくメタン発酵槽22内を循環することができるという効果を奏する。
【0145】
図14に示した本実施態様の排水処理装置1Cにおける接触効率向上手段4としては、第1の実施態様に示した移動速度制御手段6あるいは第2の実施態様に示した洗浄手段8の剥離手段8Aを用いることが挙げられる。より具体的には、例えば、
図14に示すように、循環配管L6上にポンプを設け、第2の実施態様に示した剥離手段8AにおけるポンプP1、P2及び制御部83からなる洗浄手段8を設けるものとすることが挙げられる。なお、
図14では、ポンプP1及び制御部83は省略している。メタン発酵槽22内の被処理水Wを循環させる場合、被処理水Wの循環を円滑に行うため、循環配管L6にはポンプP1に当たるものが設けられる。したがって、接触効率向上手段4(洗浄手段8)として新たに設ける構造が少なくなるため、設備コストを低減させることが可能となる。
【0146】
図14に示した本実施態様の排水処理装置1Cにおける接触効率向上手段4として、薬剤を添加する手段(洗浄手段8の溶解手段8B等)を用いる場合、薬剤を含んだ処理水W2をメタン発酵槽22に供給することで、メタン発酵槽22内のグラニュール層に含まれる菌の活性を低下させるおそれがある。したがって、処理水W2が導入される循環配管L6上に分岐配管及び流路切換機構を設け、分岐配管は反応槽5に接続させることが好ましい。これにより、菌の活性を低下させる薬剤を含んだ処理水W2については、分岐配管を介して反応槽5に導入し、メタン発酵槽22内の菌の活性が低下することを抑制することができる。なお、それ以外の洗浄手段8による処理水W2は、メタン発酵槽22に導入し循環させることができるため、流路切替機構により、処理水W2の導入先を適宜切り換えることで、排水処理効率の低下を抑制することが可能となる。
【0147】
以上のように、本実施態様における排水処理装置1Cは、処理槽2を酸生成槽21及びメタン発酵槽22とで構成することにより、それぞれの処理(酸生成処理及びメタン発酵)に適した条件下で排水処理を行うことができるため、排水処理効率をより向上させることができる。
また、本実施態様における排水処理装置1Cは、発電部3の設置箇所を処理槽2(酸生成槽21及びメタン発酵槽22)に設けられた循環流路上とすることにより、第1のセル31a側に供給された処理水W1を、反応後、もう一度処理槽2(酸生成槽21又はメタン発酵槽22)に供給することになる。したがって、被処理水Wが繰り返し処理されることになり、発電部3から排出される処理水W2に対しても排水処理を向上させることが可能となる。また、このとき発電部3から排出される処理水W2を処理槽2(酸生成槽21又はメタン発酵槽22)に再導入することで、処理槽2における反応を好条件下で進行させることを可能とするという効果も奏する。
【0148】
なお、本実施態様の排水処理装置1Cにおいて、排出配管L7を介して排出された処理水W3は、河川などへの放流が可能な水質を満たすものであれば、そのまま放流することが可能である。また、排出配管L7の後段に、第1の実施態様に示した反応槽5を設けるものとしてもよい。これにより、反応槽5による処理を経ることで更に被処理水Wに対する処理効率を向上させ、排水処理装置1Cから被処理水Wを系外に放出することが可能となる。
【0149】
また、本実施態様の排水処理装置1Cにおいては、第1の実施態様と同様の工程により発電を行うことが可能である。なお、本実施態様における排水処理装置1Cにおける接触効率向上手段4は、
図13及び
図14に示した組み合わせに限定されるものではなく、排水処理装置全体としての構造簡略化や、被処理水Wの処理手段と接触効率向上手段4の兼用が容易となる構造などを考慮し、接触効率向上手段4を適宜選択することができる。
【0150】
〔第4の実施態様〕
図15は、本発明の第4の実施態様における排水処理装置を示す概略説明図である。
第4の実施態様に係る排水処理装置1Dは、
図15に示すように、第1の実施態様又は第2の実施態様に係る排水処理装置1A、1Bにおいて、反応槽5を曝気槽51とし、曝気槽51と発電部3の第2のセル31bに設けられた電子受容体供給口34aとを接続配管L8で接続するものである。なお、第1の実施態様又は第2の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0151】
本実施態様における排水処理装置1Dは、曝気槽51内の処理水W2を発電部3に供給して、発電部3における電子受容体として用いるものである。なお、接続配管L8により発電部3に供給されるもの以外の処理水W2については、処理水W3として系外へ排出する。
【0152】
曝気槽51は、曝気装置52により、槽内に導入された処理水W2に対し、酸素を含む気体(酸素、空気など)の曝気を行い、好気性微生物による好気処理や溶存酸素による酸化反応を進行させるものである。
本実施態様における曝気槽51は、
図15に示すように、発電部3の第1のセル31aから排出された処理水W2が導入され、導入された処理水W2に対して曝気を行うものに限定されない。曝気槽51の他の例としては、例えば、処理槽2から直接処理水W1を導入し、曝気を行うもの等が挙げられる。
【0153】
曝気装置52は、酸素を含む気体を曝気槽51内の処理水W2に供給することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、曝気処理において広く用いられているものとして、ブロワーと曝気管の組み合わせからなるもの等が挙げられる。
【0154】
曝気槽51内には、曝気装置52により酸素を含む気体が導入されるため、曝気槽51内の処理水W2は、溶存酸素を含む液体となっている。したがって、接続配管L8を介して発電部3の第2のセル31b内に導入した処理水W2は、発電部3における電子受容体となる。これにより、排水処理装置1D内における処理工程で発生するものを有効活用した発電を行うことができる。
【0155】
発電部3において電子受容体として用いられた後の処理水W3は、電子受容体排出口34bから排出される。このとき、排出された処理水W3は河川などへの放流が可能な水質を満たすものであれば、そのまま放流することが可能である。また、排出された処理水W3を曝気槽51に返送し、再度曝気処理を行うものとしてもよい。これにより、系外へ放流する処理水W3の水質制御をより確実に行うことが可能となる。
【0156】
本実施態様の排水処理装置1Dにおける接触効率向上手段4としては、第1の実施態様及び第2の実施態様に示した接触効率向上手段4のうち、いずれの手段(移動速度制御手段6、濃度制御手段7及び洗浄手段8)を適用するものであってもよく、特に限定されない。例えば、排水処理装置1Dにおける接触効率向上手段4としては、第1の実施態様に示した移動速度制御手段6あるいは第2の実施態様に示した洗浄手段8である溶解手段8Bを適用することが挙げられる。より具体的には、例えば、曝気槽51内の処理水W2を、接続配管L9を介して第1のセル31aに導入することが挙げられる。このとき、処理水W2は、移動速度制御手段6における流体として機能する。また、後述するように、処理水W2には微生物が含まれているため、処理水W2中の微生物が、溶解手段8Bにおける堆積物を溶解させる薬剤の代わりとして機能する。
【0157】
式1及び式2に示したように、電極33aの表面には析出した硫黄が堆積物となって堆積している。一方、曝気槽51内では好気条件下において硫黄を亜硫酸イオンに酸化する好気性微生物が存在している(式4)。
【数4】
【0158】
したがって、曝気槽51内の処理水W2を電極33a側に導入することで、電極33a表面の硫黄が溶解して電極33aの表面が洗浄される。
また、洗浄手段8として、電極33aを発電部3から取り出し、曝気槽51内に浸漬するものとしてもよい。これにより、被処理水Wの処理手段と電極の洗浄手段8を兼用させ、電極の洗浄に係る付帯設備を削減することができ、ランニングコストを大幅に低減することが可能となる。
【0159】
また、本実施態様の排水処理装置1Dは、曝気槽51内の処理水W2を発電部3に導入するため、電極33a及び電極33bの表面には、主に微生物からなる堆積物が堆積しやすい状態となっている。したがって、上記した溶解手段8Bに加え、剥離手段8A、分散手段8C及び周辺環境変化手段8Dのいずれかを更に備え、電極33a及び電極33bの表面に堆積した微生物を引き剥がすものとすることが好ましい。これにより、電極33a及び電極33bの表面の洗浄効率を向上させることが可能となる。
【0160】
以上のように、本実施態様における排水処理装置1Dは、排水処理装置1D内で進行する処理工程で生じたものを、発電部3における電子供与体及び電子受容体として利用することができ、発電に係るランニングコストを低減させることが可能となる。
【0161】
また、本実施態様の排水処理装置1Dにおいては、第1の実施態様と同様の工程により発電を行うことが可能である。なお、本実施態様における排水処理装置1Dにおける接触効率向上手段4は、
図15に示した組み合わせに限定されるものではなく、排水処理装置全体としての構造簡略化や、被処理水Wの処理手段と接触効率向上手段4の兼用が容易となる構造などを考慮し、接触効率向上手段4を適宜選択することができる。
【0162】
なお、上述した実施態様は、排水処理装置及び排水処理方法の一例を示すものである。本発明に係る排水処理装置及び排水処理方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る排水処理装置及び排水処理方法を変形してもよい。
【0163】
例えば、本実施態様における排水処理装置は、複数の発電部を備えるものとしてもよい。例えば、第1の実施態様に示した発電部と、第3の実施態様に示した発電部の両方を備え、複数箇所で発電を行うこと等が挙げられる。これにより、排水処理装置内での被処理水Wの処理工程を有効活用した発電を複数箇所で行うことが可能となるとともに、排水処理効率と発電効率の両方を向上させることが可能となる。
【0164】
また、例えば、本実施態様における排水処理装置の電極33a及び電極33bを、電極33a及び電極33bの表面が露出した状態で筐体内に配置し、発電部3から取り出し可能とした電極ユニットとして発電部3に設けるものとしてもよい。これにより、電極33a及び電極33bの洗浄において、発電部3から取り出して洗浄することが容易となる。
【0165】
また、例えば、本実施態様における排水処理装置は、発電部3として、処理槽2(メタン発酵槽22)内のセトラー23部分に電極33a及び電極33bを設けるものとしてもよい。なお、セトラー23近傍に電極33a及び電極33bを設けるものであってもよく、セトラー23そのものを電極33a及び電極33bとして利用するものであってもよい。これにより、発電部3が処理槽2内に組み込まれる形となるため、より一層の設備の小型化が可能となる。
【0166】
また、例えば、本実施態様における排水処理装置は、電極33bを曝気槽51内に設け、曝気槽51が発電部3の第2のセル31bとして機能するものとしてもよい。これにより、発電部3と反応槽5(曝気槽51)を一体化し、より一層の設備の小型化が可能となる。
【0167】
また、例えば、本実施態様における排水処理装置は、絶縁機構を設けるものとしてもよい。絶縁機構は、発電部3で反応する処理水W1以外の処理水(処理水W2)を絶縁することができるものであればよく、特に限定されない。
絶縁機構による絶縁手段としては、例えば、発電部3の電極33aと処理水W2との電気的な接触(液絡)の解消あるいは液絡時間の短縮が挙げられる。このような液絡解消手段又は液絡時間の短縮手段の例としては、処理水W2の流れを不連続(断続的)とする手段や、処理水W2に空気などの絶縁体を介在させる手段、あるいはこれらの手段を組み合わせるもの等が挙げられる。これにより、発電部3で生成した電子が電極33a及び電極33bの間以外に流れることを防ぎ、発電効率を向上させるものである。
なお、本実施態様における排水処理装置は、第1の実施態様に示したような排水処理装置を構成する構造物(処理槽や配管)に係る絶縁を併せて行うものとしてもよい。これにより、より一層の絶縁効果を得ることができ、発電部3における発電効率を向上させることが可能となる。
【0168】
さらに、例えば、本実施態様における排水処理装置は、一部の構造を省略し、装置構成をより簡略化するものとしてもよい。
省略可能な構造としては、例えば、イオン交換体35が挙げられる。これにより、発電部3の簡略化が可能となるとともに、メンテナンス作業が容易となる。
また、省略可能な構造の他の例としては、第2のセル31bにおける電子受容体供給口34a及び電子受容体排出口34bが挙げられる。これにより、発電部3をより簡略化することが可能となる。このとき、電極33bの一面が処理水W1又はイオン交換体35に接触し、もう一方の面が全体的に外気(空気)に直接接触する構造とすること等が挙げられる。さらに、外気側の電極33b表面に交換又は洗浄容易な通気性素材を設けることが好ましい。これにより、塵などの固体不純物が電極33b表面に付着することを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明の排水処理装置及び排水処理方法は、被処理水を処理する排水処理に利用される。特に、被処理水を処理することにより還元性物質が発生する排水処理において、好適に利用されるものである。
【符号の説明】
【0170】
1A,1B,1C,1D 排水処理装置、2 処理槽、21 酸生成槽、22 メタン発酵槽、23 セトラー、24 pH調整手段、3 発電部、31a 第1のセル、31b 第2のセル、32a 処理水導入口、32b 処理水排出口、33a,33b 電極、34a 電子受容体供給口、34b 電子受容体排出口、35 イオン交換体、4 接触効率向上手段、5 反応槽、51 曝気槽、52 曝気装置、6 移動速度制御手段、61a,61b 流体供給口、62 流体供給手段、63 回収手段、64a,64b 流体排出口、65 気液分離部、7 濃度制御手段、71a,71b 電極反応成分添加口、72 電極反応成分添加手段、73 吸着材、8 洗浄手段、8A 剥離手段、8B 溶解手段、8C 分散手段、8D 周辺環境変化手段、81a,81b 流体供給口、82 流体供給手段、83 制御部、84a,84b 薬剤添加口、85 薬剤添加手段、86a,86b 薬剤添加口、87 薬剤添加手段、88a,88b 添加物供給口、89 添加物供給手段、L1 導入配管、L2 接続配管、L3,L7 排出配管、L4,L8,L9 接続配管、L5,L6 循環配管、W 被処理水、W1,W2,W3 処理水