(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】電動シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
B60N2/07
(21)【出願番号】P 2021054534
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】517251797
【氏名又は名称】株式会社TF-METAL
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】今村 貴史
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-265735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0094683(US,A1)
【文献】特開平10-147164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0264288(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に沿って配設された左右一対のレール組立体
を有する電動シートスライド装置であって、
前記レール組立体は、
車両のフロアに固定される一対のロアレールと、
前記一対のロアレールに対してスライド可能に取り付けられ、かつ車両用シート
に取り付けられる一対のアッパレールと、
前記各アッパレールと各ロアレールの間の内部に回転可能に配置され、それぞれの外周に雄ねじが形成された一対のスクリューシャフトと、
前記各ロアレールに固定され、前記各スクリューシャフトの雄ねじが螺合される雌ねじ孔を有する一対のナット部材と、
前記各アッパレールに固定され、前記各スクリューシャフトをそれぞれ回転駆動するギア機構を備えた一対のギアボックスと、
前記一対のアッパレールの間に配置された電動モータの出力軸と少なくとも前記一方のギア機構の入力軸とを連結する伝達部材と、
前記電動モータの筒状のモータハウジングの前記一方のギアボックス側の一端に設けられ、前記伝達部材の一方のギアボックス側の軸方向一端部が挿入可能な第1
筒部と、該第1
筒部の外周面から径方向へ突出した回り止め部と、を有するモータ側保持部材と、
前記一方のギアボックスの上端部に設けられ、前記第1筒部と軸方向から対向すると共に、前記伝達部材の軸方向他端部が挿入可能な第2筒部を有するギア側保持部材と、
前記モータ側保持部材とギア側保持部材との間に延出して配置されて、前記一方のギアボックスとギア側保持部材、前記第1筒部及び前記伝達部材を上側から覆うと共に下面が開放された保護カバーと、
を備え、
前記保護カバーは、
前記伝達部材の軸方向で前記モータ側保持部材側となる一端部内に該軸方向に沿って設けられ、前記第1筒部を軸方向から挿入可能な挿入穴と、前記挿入穴の内周面に設けられ、前記回り止め部が軸方向から係入可能な切欠溝と、を有し、
前記軸方向で前記一方のギアボックス側となる他端部に設けられ、前記一方のギアボックスの上部を覆う上壁部と、該上壁部から下方に突設され、前記一方のギアボックスに設けられた係止凹部に上方から弾性的に係止可能な係止爪と、
を備えたことを特徴とする電動シートスライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動シートスライド装置であって、
前記伝達部材は、前記入力軸と出力軸のそれぞれの内部軸方向に形成された連結用孔に挿入される軸方向の両端部の横断面形状が非円形状に形成されたフレキシブルシャフトと、該フレキシブルシャフトの両端部を除く全体を覆う外側チューブと、を有し、前記外側チューブの軸方向の両端部が、前記第1筒部と第2筒部の各内部に挿入され、
前記保護カバーの一端部側の挿入穴の開放された先端部の下面に、下方に開いた開口部が形成され、
該開口部は、前記軸方向に直交する開口幅が前記外側チューブの外径よりも大きく、かつ、前記第1筒部の外径よりも小さく形成され、
前記挿入穴は、内径が先端部の開口部から内部軸方向に向かって漸次小さくなるテーパ状に形成されていることを特徴とする電動シートスライド装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電動シートスライド装置であって、
前記保護カバーは、車体幅方向で対向する一側壁と他側壁がそれぞれ内外二重壁に形成され、このそれぞれの内外二重壁の間にリブが介設されると共に、前記一側壁と他側壁のそれぞれ対向する内側壁に、前記外側チューブを挟持状態に保持する各一対の保持片を有することを特徴とする電動シートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用の電動シートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用の電動シートスライド装置としては、以下の特許文献1、2に記載されているものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載された電動シートスライド装置は、車フロアに車体前後方向に沿って配置固定される一対のロアレールと、この各ロアレールに長手方向に沿って摺動可能に嵌合し、車両用シートに結合される一対のアッパレールと、この各アッパレールの内部長手方向に沿って配置されて外周に雄ねじが形成された一対のスクリューシャフトと、各ロアレールの内部所定位置に固定されて、各スクリューシャフトが螺合する雌ねじ孔を有する一対のナット部材と、電動モータの回転速度を減速して前記スクリューシャフトを回転駆動するギア機構を収容したギアボックスと、を備えている。
【0004】
また、前記左右のアッパレールに架け渡された長尺ブラケットを有している。この長尺ブラケットは、前記電動モータとギアボックスを保持するようになっている。また、前記長尺ブラケットには、前記電動モータと各ギアボックスの前面及び下面を覆う保護カバーが取り付けられている。
【0005】
特許文献2に記載の電動シートスライド装置は、左右のアッパレールに、一対のギアボックスを組み付けるための一対の開口がそれぞれ形成され、一方の開口には、モータを組み付けるためのモータ固定ブラケットによって塞がれている。他方のアッパレールに設けられた補強ブラケットと前記モータ固定ブラケットとの間には、該両ブラケットを橋渡しする橋渡しブラケットが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-052495号公報
【文献】特開2015-003590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の保護カバーや特許文献2に記載の橋渡しブラケットは、いずれも自身の撓み変形を利用したはめ込み式の方法で長尺ブラケットやアッパレールに組み付けられている。これらの組み付け作業は、撓み変形を利用して上下方向から行うようになっていることから、組み付け作業性が悪く、この取り付け作業能率の低下を招いている。
【0008】
本発明は、前記従来技術の技術的課題に鑑みて案出されたもので、保護カバーを、モータハウジングとギアボックスの第1、第2筒部に対してワンタッチで組み付けるようにすることによって、この組み付け作業能率の向上が図れる電動シートスライド装置を提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様として、車体前後方向に沿って配設された左右一対のレール組立体を有する電動シートスライド装置であって、
前記レール組立体は、
車両のフロアに固定される一対のロアレールと、
前記一対のロアレールに対してスライド可能に取り付けられ、かつ車両用シートに取り付けられる一対のアッパレールと、
前記各アッパレールと各ロアレールの間の内部に回転可能に配置され、それぞれの外周に雄ねじが形成された一対のスクリューシャフトと、
前記各ロアレールに固定され、前記各スクリューシャフトの雄ねじが螺合される雌ねじ孔を有する一対のナット部材と、
前記各アッパレールに固定され、前記各スクリューシャフトをそれぞれ回転駆動するギア機構を備えた一対のギアボックスと、
前記一対のアッパレールの間に配置された電動モータの出力軸と少なくとも前記一方のギア機構の入力軸とを連結する伝達部材と、
前記電動モータの筒状のモータハウジングの前記一方のギアボックス側の一端に設けられ、前記伝達部材の一方のギアボックス側の軸方向一端部が挿入可能な第1筒部と、該第1筒部の外周面から径方向へ突出した回り止め部と、を有するモータ側保持部材と、
前記一方のギアボックスの上端部に設けられ、前記第1筒部と軸方向から対向すると共に、前記伝達部材の軸方向他端部が挿入可能な第2筒部を有するギア側保持部材と、
前記モータ側保持部材とギア側保持部材との間に延出して配置されて、前記一方のギアボックスとギア側保持部材、前記第1筒部及び前記伝達部材を上側から覆うと共に下面が開放された保護カバーと、
を備え、
前記保護カバーは、
前記伝達部材の軸方向で前記モータ側保持部材側となる一端部内に該軸方向に沿って設けられ、前記第1筒部を軸方向から挿入可能な挿入穴と、前記挿入穴の内周面に設けられ、前記回り止め部が軸方向から係入可能な切欠溝と、を有し、
前記軸方向で前記一方のギアボックス側となる他端部に設けられ、前記一方のギアボックスの上部を覆う上壁部と、該上壁部から下方に突設され、前記一方のギアボックスに設けられた係止凹部に上方から弾性的に係止可能な係止爪と、
を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ギアボックスなどに対する保護カバーの組み付け作業が容易になり、該組み付け作業能率の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る電動シートスライド装置の実施形態に供されるレール組立体を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に供されるレール組立体の一方側を示す分解斜視図である。
【
図3】本実施形態に供される基本構成部材の縦断面図である。
【
図4】本実施形態に供されるレール組立体に保護カバーを組み付けた状態を示す斜視図である。
【
図5】本実施形態に供される保護カバーの斜視図である。
【
図8】本実施形態に供される保護カバーを伝達部材などに上方から被せようとしている状態を示す斜視図である。
【
図10】本実施形態に供される保護カバーの一端部を第1筒部に組み付けようとしている状態を示し、(a)はその側面図、(b)はその斜視図である。
【
図11】一端部を組み付けた後に保護カバーの他端部を一方のギアボックスに組み付けた後の状態を示し、(a)はその側面図、(b)はその斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電動シートスライド装置を車両に用いた実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0013】
図1は本発明に係る電動シートスライド装置の実施形態に供されるレール組立体を示す斜視図、
図2は本発明の実施形態に供されるレール組立体の一方側を示す分解斜視図、
図3は本実施形態に供される基本構成部材の縦断面図である。
【0014】
なお、本明細書における「上下方向」とは、電動シートスライド装置が車体のフロア面に固定された状態での上下方向であり、車体のフロア面に直交する方向、すなわち車体の高さ方向である。また、本明細書における「前後方向」とは、
図1に矢印で示す電動シートスライド装置が固定される車体の前後方向である。
【0015】
電動シートスライド装置は、
図1~
図3に示すように、車両用シートの左右両側に車体前後方向に沿って配設された左右一対のレール組立体を備えている。
【0016】
このレール組立体は、車体のフロア(図示せず)に前後方向に沿って配置される金属製の一対のロアレール1と、各ロアレール1に対してロアレール長手方向に沿ってスライド可能に取り付けられた金属製の一対のアッパレール2と、該各アッパレール2の内部に回転可能に支持された金属製の棒状部材である一対のスクリューシャフト3と、該各スクリューシャフト3の前端部に設けた後述のセレーション部32と係合して、各スクリューシャフト3を回転駆動するギア機構を備えた一対の第1、第2ギアボックス4、5と、両アッパレール2の間に配置されて、第1、第2ギアボックス4,5の内部にそれぞれ設けられたギア機構を、伝達部材8、16を介して回転駆動する電動モータ6と、各ロアレール1に固定されて、各スクリューシャフト3が螺合(噛み合い)される雌ねじ孔40をするナット部材7と、各アッパレール2に前後方向の負荷が作用した際に、各アッパレール2が各ロアレール1内をスライドする際の摩擦抵抗を低減する図外の複数のスライドガイド部材と、を有している。
【0017】
各ロアレール1に各アッパレール2と各ギアボックス4、5を組み込んだ組立体は、図外の車両用シートとフロアとの間に左右一対で一組として、それぞれ車両前後方向に沿って平行に配置される。
【0018】
各ロアレール1は、
図1及び
図2に示すように、車体のフロア面に固定されるロアレール底壁11及びロアレール底壁11両側の一対のロアレール外側壁12を有して上部が開口する断面U字形状のロアレール本体13と、各ロアレール外側壁12の先端から内側に向かってそれぞれ延出した一対のロアレール上壁14と、各ロアレール上壁14の先端からロアレール底壁11に向かってそれぞれ延出した一対のロアレール内側壁15と、を有している。
【0019】
対向する一対のロアレール内側壁15の間の距離は、ロアレール1に収容されるアッパレール2がスライド可能となるように設定されている。
【0020】
各ロアレール1は、長手方向の前後二箇所がレッグブラケット20a、20bを介して車体のフロアに固定される。レッグブラケット20a、20bは、リベットによってロアレール底壁11に固定される。
【0021】
アッパレール2は、
図1及び
図2に示すように、シートの裏側に固定されるアッパレール頂壁21とアッパレール頂壁21の両側の一対のアッパレール側壁22とを有して下部が開口する断面U字形状のアッパレール本体23と、各アッパレール側壁22の先端から外側上方へ折り返し状に折れ曲がりながら延出するアッパレール屈曲壁24と、を有している。アッパレール2には、アッパレール頂壁21に形成された複数のボルト挿入孔21aに下方から挿入された図外のボルトを介して車両用シートが取り付けられている。
【0022】
各アッパレール屈曲壁24の先端は、アッパレール2をロアレール1に取り付けた際に、ロアレール外側壁12とロアレール内側壁15との間に入り込んでいる。つまり、各アッパレール屈曲壁24の先端は、ロアレール内側壁15と重なり合っている。
【0023】
また、アッパレール2は、
図2に示すように、前端部2aと後端部2bのアッパレール頂壁21及びアッパレール側壁22に前後2つの補強プレート27を配置固定するための所定幅の2つのスリット25が形成されている。各スリット25は、アッパレール頂壁21及び側壁22に形成されて、補強プレート27の上面と両側面に設けられた各突部が係止して該各補強プレート27をアッパレール2にかしめ固定するようになっている。この各補強プレート27は、中央にスクリューシャフト3が回転可能に挿通される貫通孔27aが形成されている。
【0024】
各スクリューシャフト3は、アッパレール本体23の一対のアッパレール側壁22の間に配置される。スクリューシャフト3は、ナット部材7を貫通するスクリューシャフト本体31と、前端部に設けられ、第1、第2ギアボックス4、5が取り付けられるセレーション部32と、後端部に設けられ、アッパレール2の後端面に取り付けられたエンドキャップ34に回転可能に支持される小径軸部33と、を有している。
【0025】
スクリューシャフト本体31は、外周面に後述するナット部材7の雌ねじ孔40に螺着して噛み合う雄ねじ31aが形成されている。
【0026】
セレーション部32は、スクリューシャフト3の車両前方側の前端部に設けられ、組付時にナット部材7の雌ねじ孔40に干渉しないように、スクリューシャフト本体31よりも小径に形成されている。セレーション部32は、各ギアボックス4を貫通するものであり、外周面に後述するウォームホイール43と嵌合する雄セレーション歯が形成されている。
【0027】
小径軸部33は、スクリューシャフト3の車体後方側端部に設けられ、ストッパ部材(圧入ナット)28を介してエンドキャップ34の筒状部34a内に回転可能に支持されている。また小径軸部33は、ナット部材7の雌ねじ孔40に干渉しないように、スクリューシャフト本体31よりも小径の円柱状に形成されている。
【0028】
スクリューシャフト3は、セレーション部32の先端部に設けたねじ部32aに螺着したナット35により、後方への抜け出しが防止されている。このナット35は、ギアボックス4を挟んで対向するワッシャ36を介してスクリューシャフト軸方向でギアボックス4の後述するウォームホイール43を挟み込んでいる。
【0029】
各スクリューシャフト3と各ナット部材7は、各ロアレール1に対して各アッパレール2を軸方向に移動させるねじ機構を構成している。
【0030】
第1、第2ギアボックス4、5は、
図1~
図3に示すように、例えば亜鉛合金材によって左右方向へ分割可能なボックス状に形成されて、それぞれの分割面を合わせてピンかしめによって結合されている。
【0031】
図1中、左側の第1ギアボックス4は、ボックス本体の電動モータ6側の内側面にギア側保持部材である第2筒部9が電動モータ6方向へ突出して設けられている。この第2筒部9は、
図3にも示すように、細長い円筒状に形成されてボックス本体と一体に設けられ、内部軸方向に伝達部材8の後述するフレキシブルシャフト8aの一端部8cが挿入される挿入孔9aが貫通形成されている。また、第2筒部9は、挿入孔9aの軸方向の一端開口部側の内周面に伝達部材8の後述する外側チューブ8bの一端部が挿入保持される大径孔9bが所定長さで形成されている。
【0032】
また、第1ギアボックス4は、
図1及び
図2に示すように、両側壁の上部に後述する保護カバー50の他端部53に設けられた一対の係止爪58が上方から係止する一対の係止凹部4a、4aが設けられている。
【0033】
図1中、右側の第2ギアボックス5は、
図2及び
図3に示すように、ボックス本体の電動モータ6側の内側面に第3筒部10が電動モータ6方向へ突出して設けられている。第3筒部10は、細長い円筒状に形成されてボックス本体と一体に設けられ、内部軸方向に第2伝達部材16が挿入される挿入孔10aが貫通形成されている。また、第3筒部10は、電動モータ6側の先端部に大径円筒状の保持部10bが一体に設けられている。この保持部10bは、電動モータ6のモータハウジング6aの後述する円筒部6dに軸方向から被嵌している共に、外周に一体に有する一対のブラケットを介して2本のボルト17によってモータハウジング6aに固定されている。第2伝達部材16は、一本の棒軸状に形成されて、軸方向の一端部16aがギア機構を構成するウォーム42の入力軸42aに設けた異形孔に挿入されて一体回転可能に連結され、軸方向の他端部16bが電動モータ6の一方の出力軸6cに軸方向から連結されている。
【0034】
第1、第2ギアボックス4,5は、それぞれギア機構を内蔵しており、
図2に示すピン部材46によりアッパレール2の両側壁22の前端部2aにかしめ固定されている。
【0035】
各ギア機構は、
図3に示すように、樹脂製のウォーム42と、それに噛み合う樹脂製のウォームホイール43と、からなるウォームギアと、を有している。
【0036】
各ウォーム42は、電動モータ6により第1、第2伝達部材8、16を介して正転または逆転方向に回転駆動する。各ウォーム42が、正転または逆転方向に回転駆動されると、それに噛み合っている各ウォームホイール43が回転する。
【0037】
ウォームホイール43は、中央孔の内周面にスクリューシャフト3のセレーション部32の雄セレーションに嵌合する雌セレーション部44が設けられている。
【0038】
従って、各スクリューシャフト3は、各ウォームホイール43が各ウォーム42の回転に伴って回転することでアッパレール2に支持された状態で回転する。アッパレール2は、各スクリューシャフト3がロアレール1に固定されたナット部材7に螺合されていることから、ウォームホイール43が回転すると、ロアレール1に対して前進または後進方向にスライド移動することになる。
【0039】
電動モータ6は、一般的な構造であって、
図3に示すように、内部にステータやロータなどの電気部品が収容された金属材からなるモータハウジング6aと、モータハウジング6aの内蔵されたロータの中央から左右軸方向へ延出した金属材からなる一対の出力軸6b、6cと、を有している。
【0040】
モータハウジング6aは、
図1及び
図3に示すように、両アッパレール2,2方向に延びた円筒状に形成されて、第1ギアボックス4側の一端部に第1筒部18が取り付けられている。第1筒部18は、樹脂材でモータハウジング6aの一部を覆うように一体に形成されて、内部軸方向に第1伝達部材8のフレキシブルシャフト8aの他端部8dと外側チューブ8bの他端部が挿入される挿入孔18aが貫通形成されている。第1筒部18は、モータハウジング6aの一端部外周に被嵌固定された有底円筒状の大径円筒部18bが一体に設けられている。また、第1筒部18は、
図1に示すように、外周面の円周方向の所定位置に軸方向に沿った回り止め部19が径方向へ突設されている。この回り止め部19は、細長い板状に形成されて、大径円筒部18bの第1ギアボックス4側の端縁から第1筒部18の軸方向に沿って第1ギアボックス4方向へ延出している。第1筒部18と回り止め部19とによってモータ側保持部材が構成されている。
【0041】
電動モータ6は、第1、第2ギアボックス4、5の各ギア機構(ウォーム42、ウォームホイール43)と回転させて、各スクリューシャフト3を介して、アッパレール2に固定された車両用シートのロアレール1に対するロアレール長手方向(車両前後方向)に沿った位置を調節可能なものである。
【0042】
第1伝達部材8は、
図1及び
図3(a)に示すように、フレキシブルシャフト8aと、該フレキシブルシャフト8aの外周面を被覆した外側チューブ8bと、を有している。
【0043】
フレキシブルシャフト8aは、撓み変形可能に形成されて、外側チューブ8bから突出した一端部8cが第2筒部9内から一方のウォーム42の入力軸42aの孔部に挿入(連結)されている。外側チューブ8bから突出した他端部8dは、第1筒部18内から電動モータ6の他方の出力軸6bの孔部に挿入(連結)されている。第1ギアボックス4のウォーム42の入力軸42aの孔部と、電動モータ6の一方の出力軸6bの孔部は、それぞれ横断面形状が非円形状(ほぼ四角形状)に形成されている。一方、フレキシブルシャフト8aの一端部8cと他端部8dは、
図3(b)(c)に示すように、横断面形状が各孔部の断面形状に合わせて非円形状(ほぼ四角形状)に形成されて、前記両孔部に対して形状を合わせつつ係入された後には、各孔部との自由な相対回転が規制されるようになっている。これによって、電動モータ6の回転力が、フレキシブルシャフト8aを介して第1ギアボックス4のギア機構(ウォーム42,ウォームホイール43)を介して一方のスクリューシャフト31に効率良く伝達されるようになっている。
【0044】
外側チューブ8bは、可撓性のある合成樹脂材によって形成されて、前述したように、一端部が第2筒部9の大径孔9bに挿通固定され、他端部が第1筒部18の第1挿通孔18aに挿通固定されている。
【0045】
ナット部材7は、
図2に示すように、ブラケット7aと、該ブラケット7aの内部に弾性部材7cと一緒に保持されたナット構成部7bと、を有している。
【0046】
ブラケット7aは、オーム形状に折曲形成され、車体前後方向に有する一対のブラケット片38にそれぞれ形成された挿入孔に挿入される一対のリベット45によってロアレール1のロアレール底壁11上面に位置決め固定される。ブラケット7aは、両ブラケット片38の対向縁から立ち上がった一対の立ち上がり片39にスクリューシャフト3が回転可能に挿入されるシャフト挿入孔39aが貫通形成されている。
【0047】
ナット構成部7bは、金属材によってブロック状に形成され、内部軸方向(車体前後方向)にスクリューシャフト3の雄ねじ31aが螺合する(噛み合う)雌ねじ孔40が貫通形成されている。
【0048】
弾性部材7cは、例えばゴム材をU字形状に折曲してなり、ナット構成部7bに嵌合しつつブラケット7aの内部に保持されていると共に、一対の立ち上がり片にスクリューシャフト3が挿入される一対の挿入孔41が貫通形成されている。
【0049】
図外のスライドガイド部材は、ロアレール外側壁12とアッパレール屈曲壁24との間に配置されている。スライドガイド部材は、リテーナの上下にそれぞれ複数のスチールボールを保持させた公知の構造であり、ロアレール1とアッパレール2の長手方向での両者が重なり合う範囲の前後二箇所に設けられる。
【0050】
なお、各アッパレール2は、該各アッパレール2に設けた図外のストッパ部がロアレール1のロアレール底壁11の前後位置に切り起こして設けられた前後一対のストッパ片11a、11bに当接して最大前後移動位置が規制されるようになっている。
【0051】
図4は本実施形態に供されるレール組立体に保護カバーを組み付けた状態を示す斜視図、
図5は本実施形態に供される保護カバーの斜視図、
図6は
図5のA-A線断面図、
図7は保護カバーの底面図である。
図8は保護カバーを伝達部材などに上方から被せようとしている状態を示す斜視図、
図9は
図8のB矢視図である。
【0052】
第1ギアボックス4と電動モータ6側の第1筒部18との間には、
図4に示すように、第1ギアボックス4と第2筒部9、第1筒部18及び伝達部材8全体を上下方向の上側から覆う保護カバー50が配置されている。
【0053】
この保護カバー50は、
図4~
図7に示すように、合成樹脂材によって下側が開放された横断面ほぼ矩形な逆U字形状に形成されて、第1ギアボックス4から第1筒部18まで延出している。すなわち、保護カバー50は、平板状の上壁部50aと、該上壁部50aの車体前後の両端縁から下方に延びた両側壁部50b、50bとを有している。この各壁部50a、50b、50bによって構成された保護カバー50は、長手方向に長い中央部51と、該中央部51の第1筒部18側の端縁から延出し、横断面形状が中央部51よりも大きな一端部52と、中央部51の第1ギアボックス4側の端縁から延出し、横断面形状が中央部51により大きな他端部53と、を有している。中央部51と両端部52,53は傾斜状の連結壁54、54によって連結されている。
【0054】
図7に示すように、保護カバー50(c)の両側壁部50b、50bは、それぞれ一定の隙間をもった内外二重壁によって構成されて、この内外二重壁の長手方向の所定位置に補強用の複数のリブ50cが設けられている。
【0055】
中央部51は、上壁部50aに長手方向の一定間隔の3箇所に3つの矩形孔50dが上下方向へ貫通形成されている。また、両側壁部50b、50bの内側壁の各矩形孔50dが位置する下部には、各一対の保持片55が内方へ対向して突出している。このそれぞれ対向する各保持片55は、内外へ撓み変形可能な弾性力を有し、保護カバー50を組み付けた際に、外側チューブ8bの外面を弾性力で挟持状態に保持するようになっている。
【0056】
一端部52は、
図5~
図7にも示すように、下側が開放されたボックス状に形成され、肉厚な前端壁52aが内側に凹んで形成され、複数のリブ状の壁片からなる内部には第1筒部18が挿入可能な第1挿入穴56が設けられている。この第1挿入穴56は、内周面の内径が先端部から内部軸方向にわたって漸次小さく形成されて、奥に向かって縮径テーパ状に形成されている。また、第1挿入穴56は、前端壁52aとこれより内側の次の壁片52bの下部が切り欠かれてアーチ状に形成されて、それぞれ下部に第1開口部56aが形成されている。この第1開口部56aは、挿入穴56の開放された先端部の先端側から内部軸方向に沿って形成されており、軸方向に直交する開口幅Wが外側チューブ8bの外径よりも大きく、かつ、第1筒部18の外径よりも小さく形成されている。
【0057】
第1開口部56aの内周面の所定位置には、第1筒部18の回り止め部19が軸方向から差し込まれる切欠溝である回転規制溝59が開口部56aの軸方向に沿って形成されている。なお、回転規制溝59は、予め第1筒部18をモータハウジング6aに対して所定位置に回転固定させて回り止め部19が位置決めされ位置に対応した箇所に形成されている。
【0058】
なお、本実施形態では、回転規制溝59を一箇所設けているが、長手方向の中心線を基準として対称位置(左右対称)に二箇所設けるようにしてもよい。この場合、電動モータを左右のレール組立体で逆向きに配置する場合でも同じ保護カバーを使用でき、共用化を図ることができる。
【0059】
他端部53は、
図5、
図9にも示すように、下部が切りかかれたボックス状に形成され、後端壁53aから中央部51方向に行くに従って漸次低くなる階段状に切り欠かれている。また、他端部53には、複数のリブ状の壁片からなる内部に、第2筒部9が挿入可能な第2挿入穴57が設けられている。この第2挿入穴57と第1挿入穴56を含む全体が、後端部53aから前端部52aまで内部軸方向に沿って貫通しており、全体がアーチ状に形成されている。また、第2挿入穴57は、後端壁53aと各壁片53b、53cの下部が切り欠かれて第2開口部57aが形成されている。つまり、この第2開口部57aは、第2挿入穴57の下部全体に形成されて、第2挿入穴57全体がアーチ状に形成されている。また、第2開口部57aは、軸方向に直交する開口幅W1が第2筒部9の外径よりも大きく形成されている。
【0060】
また、他端部53は、
図7及び
図9に示すように、上壁部50a’の後端壁53a近傍の下面に一対の係止爪58が一体に設けられている。この両係止爪58は、上壁部50a’の下面から垂下状態に設けられていると共に、互いに左右方向(拡縮方向)へ弾性変形可能に形成されている。両係止爪58は、対向する内面が突起状に形成されて、第1ギアボックス4の両係止凹部4aに弾性的に係止することによって、他端部53を第1ギアボックス4に対して安定かつ確実に保持するようになっている。
〔本実施形態の保護カバーの組み付け手順〕
次に、
図10及び
図11を用いて本実施形態における保護カバー50の組み付け手順を説明する。
図10(a)(b)は保護カバー50の一端部52を電動モータ6側に組み付ける状態を示す説明図、
図11(a)(b)は保護カバー50の一端部52が組み付けられた後に他端部53を第1ギアボックス4側に組み付ける状態を示す説明図である。
【0061】
予め、車両用シートの下部に各アッパレール2が結合され、各ロアレール1や各アッパレール2の間に、第1、第2ギアボックス4,5や電動モータ6などが取り付けられている。また、
図1に示すように、伝達部材8のフレキシブルシャフト8aの両端部8c、8dと外側チューブ8bの両端部が、第2ギアボックス5のウォーム42や第1筒部18、並びに第1ギアボックス4のウォーム42や第2筒部9にそれぞれ挿入して連結されている。
【0062】
この状態で、まず、保護カバー50の中央部51や他端部53を手で持って、伝達部材8を上方から覆うように配置して一端部52を第1筒部18側に被嵌する。具体的には、
図8及び
図10(a)(b)に示すように、保護カバー50の一端部52側を第1筒部18に向かって斜め上方から覆いながら第1開口部56aを第1筒部18に上から嵌合させると共に、回転規制溝59に回り止め部19を軸方向から係入しつつ保護カバー50を電動モータ6方向へ最大に押し込む。つまり、保護カバー50を、一端部52の前端壁52aが大径円筒部18bの先端壁に突き当たるまで最大に押し込む。これによって、保護カバー50は、回り止め部19により自由な回転が規制されつつ周方向に位置決め保持される。一方、第1筒部18が、第1挿入穴56内に挿入されると共に、第1開口部56aの孔縁で抱持状態に保持される。
【0063】
この状態では、保護カバー50は、
図8及び
図10(a)(b)に示すように、他端部53が第1ギアボックス4の上方に傾斜状に載置されている。
【0064】
この状態から、保護カバー50の他端部53(上壁部50a’)を、上下方向の下方へ押圧する。そうすると、
図11(a)(b)に示すように、第2筒部9が、第2開口部57aを介して第2挿入穴57に嵌合保持される。同時に、他端部53の一対の係止爪58が、第1ギアボックス4の両側面上部で拡径状に弾性変形しつつ各係止凹部4aに入り込むと縮径変形して該各係止凹部4a弾性復帰力によって係止する。
【0065】
これによって、保護カバー50は、伝達部材8全体を覆いつつ両端部52,53が第1、第2筒部18,9に確実に嵌合固定されると共に、ワンタッチで組み付けることが可能になる。この結果、該保護カバー50の組み付け作業能率の向上が図れる。
【0066】
特に、保護カバー50の一端部52と他端部53の第1,第2挿入穴56,57に第1、第2開口部56a、57aを設けたことから、第1、第2筒部18,9への組み付け作業が容易になる。また、第1挿入穴56をテーパ状に形成したことによって第1筒部18への挿入作業が容易になる。
【0067】
本実施形態では、従来の保護カバーの構造に対して、保護カバー50の他端部53に一対の係止爪58を設けて第1ギアボックス4に係止凹部4aを設けるだけで対応が可能であることから、構造が簡素化されると共に、コストの低減化が図れる。
【0068】
さらに、保護カバー50は、一端部52の第1挿入穴56に第1筒部18が軸方向から挿入保持され、他端部53側では、一対の係止爪58が一対の係止凹部4aに係止するため、保護カバー50全体を安定かつ確実に保持することが可能になる。
【0069】
なお、保護カバー50を取り外すときは、他端部53を引っ張り上げて係止爪58を弾性力に抗して係止凹部4aから外すと共に、この状態で保護カバー50を電動モータ6と反対方向に引き出すと第1筒部18から第1挿入穴56が抜け出るので、保護カバー50全体を簡単に取り外すことが可能である。
【0070】
さらに、保護カバー50は、両側壁部50b、50bがそれぞれ内外二重構造になっていることから、十分な剛性を確保できると共に、二重壁部を複数のリブ50cによって結合したのでさらに剛性が高くなり、耐久性の向上が図れる。
【0071】
また、前述のように、保護カバー50を伝達部材8に被せた際に、各保持片55,55によって外側チューブ8bが挟持状態に保持されることから、外側チューブ8bを介して伝達部材8が保護カバー50内で安定に保持されると共に、各保持片55,55が外部から見えないので外観品質が向上する。
【0072】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば伝達部材としては、フレキシブルシャフト以外のシャフトを適用することが可能である。また、本実施形態では、保護カバー50の係止爪58を、ギアボックス4の係止凹部に係止しているが、係止凹部をアッパレール2側に設けて係止するようにしてもよい。
【0073】
また、本発明の電動シートスライド装置を、車両の他に船舶に使用することも可能である。
【0074】
以上説明した実施形態に基づく電動シートスライド装置としては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
【0075】
その1つの態様として、車両用シートの左右両側に車体前後方向に沿って配設された左右一対のレール組立体は、
車両のフロアに固定される一対のロアレールと、
前記一対のロアレールに対してスライド可能に取り付けられ、かつ車両用シートが取り付けられる一対のアッパレールと、
前記各アッパレールと各ロアレールの間の内部に回転可能に配置され、それぞれの外周に雄ねじが形成された一対のスクリューシャフトと、
前記各ロアレールに固定され、前記各スクリューシャフトの雄ねじが螺合される雌ねじ孔を有する一対のナット部材と、
前記各アッパレールに固定され、前記各スクリューシャフトをそれぞれ回転駆動するギア機構を備えた一対のギアボックスと、
前記一対のアッパレールの間に配置された電動モータの出力軸と少なくとも前記一方のギア機構の入力軸とを連結する伝達部材と、
前記電動モータの筒状のモータハウジングの前記一方のギアボックス側の一端に設けられ、前記伝達部材の一方のギアボックス側の軸方向一端部が挿入可能な第1筒状部と、該第1筒状部の外周面から径方向へ突出した回り止め部と、を有するモータ側保持部材と、
前記一方のギアボックスの上端部に設けられ、前記第1筒部と軸方向から対向すると共に、前記伝達部材の軸方向他端部が挿入可能な第2筒部を有するギア側保持部材と、
前記モータ側保持部材とギア側保持部材との間に延出して配置されて、前記一方のギアボックスとギア側保持部材、前記第1筒部及び前記伝達部材を上側から覆うと共に下面が開放された保護カバーと、
を備え、
前記保護カバーは、
前記伝達部材の軸方向で前記モータ側保持部材側となる一端部内に該軸方向に沿って設けられ、前記第1筒部を軸方向から挿入可能な挿入穴と、前記挿入穴の内周面に設けられ、前記回り止め部が軸方向から係入可能な切欠溝と、を有し、
前記軸方向で前記一方のギアボックス側となる他端部に設けられ、前記一方のギアボックスの上部を覆う上壁部と、該上壁部から下方に突設され、前記一方のギアボックスに設けられた係止凹部に上方から弾性的に係止可能な係止爪と、
を備えている。
【0076】
この発明の態様によれば、保護カバーを、一方のアッパレール側から他方のアッパレール側にスライドするように移動させて、一端部側に有する切欠溝をモータ側保持部材の回り止め部に位置を合わせつつ挿入穴に第1筒部を所定位置まで挿入させる。これによって、保護カバーの一端部側のモータ側保持部材に対する位置決めと保持が行われる。その後、傾斜上方にある保護カバーの他端部(上壁部)を押し下げると、上壁部の係止爪が一方のギアボックスの係止凹部に弾性的に係止する。
【0077】
これによって、保護カバーを、車両用シートの側面側からワンタッチで組み付けることができるので、この組付作業が容易になる。
【0078】
また、従来構造に対して、本発明は一方のギアボックスに係止凹部を設けるだけで対応が可能であることから、構造が簡素化されると共に、コストの低減化が図れる。
【0079】
さらに好ましくは、 前記伝達部材は、前記入力軸と出力軸のそれぞれの内部軸方向に形成された連結用孔に挿入される軸方向の両端部の横断面形状が非円形状に形成されたフレキシブルシャフトと、該フレキシブルシャフトの両端部を除く全体を覆う外側チューブと、を有し、前記外側チューブの軸方向の両端部が、前記第1筒部と第2筒部の各内部に挿入され、
前記保護カバーの一端部側の挿入穴の開放された先端部の下面に、下方に開いた開口部が形成され、
該開口部は、前記軸方向に直交する開口幅が前記外側チューブの外径よりも大きく、かつ、前記第1筒部の外径よりも小さく形成され、
前記挿入穴は、内径が先端部の開口部から内部軸方向に向かって漸次小さくなるテーパ状に形成されている。
【0080】
この発明の態様によれば、フレキシブルシャフトと外側チューブを、モータハウジング側の第1筒部と一方のギアボックスの第2筒部にそれぞれ挿入して連結する。その後、保護カバーを、まず、外側チューブの上方から被せながら一端部の開口部を第1筒部の径方向両側面に上方から合わせつつ挿入穴に第1筒部を挿入させる。次に、保護カバーの他端部(上壁部)を下方へ押し込んで係止爪を係止凹部に係止させるだけで組付作業が完了する。特に、前記開口部を設け、さらに挿入穴をテーパ状に形成したことによって第1筒部への挿入作業が容易になる。
【0081】
さらに好ましくは、前記保護カバーは、車体幅方向で対向する一側壁と他側壁がそれぞれ内外二重壁に形成され、このそれぞれの内外二重壁の間にリブが介設されると共に、前記一側壁と他側壁のそれぞれ対向する内側壁に、前記外側チューブを挟持状態に保持する各一対の保持片を有している。
【0082】
この発明の態様によれば、保護カバーは、両側壁がそれぞれ内外二重構造になっていることから、十分な剛性を確保できると共に、内外二重壁をリブによって結合したのでさらに剛性が高くなり、耐久性の向上が図れる。
【0083】
また、保護カバーを伝達部材に被せた際に、各保持片によって外側チューブが挟持状態に保持されることから、前記外側チューブを介して伝達部材が保護カバー内で安定に保持されると共に、各保持片が外部から見えないので外観品質が向上する。
【符号の説明】
【0084】
1…ロアレール、2…アッパレール、3…スクリューシャフト、4…第1ギアボックス、5…第2ギアボックス、6…電動モータ、6a…モータハウジング、6b…出力軸、6c…出力軸、7…ナット部材、8…伝達部材、8a…フレキシブルシャフト、8b…外側チューブ、9…第2筒部(ギア側保持部材)、9a…挿入孔、18…第1筒部(モータ側保持部材)、18a…挿入孔、18b…大径円筒部、19…回り止め部、31…スクリューシャフト本体、31a…雄ねじ、40…雌ねじ孔、50…保護カバー、50a…上壁部、50b…両側壁部、51…中央部、52…一端部、53…他端部、55…保持片、56…第1挿入穴、56a…第1開口部、57…第2挿入穴、57a…第2開口部、59…回転規制溝(切欠溝)。