(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
H02P 25/092 20160101AFI20240815BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240815BHJP
【FI】
H02P25/092
H02M7/48 E
(21)【出願番号】P 2023089290
(22)【出願日】2023-05-30
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】521210667
【氏名又は名称】株式会社A.H.MotorLab
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】新口 昇
(72)【発明者】
【氏名】乙坂 純香
(72)【発明者】
【氏名】児玉 保久
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-006285(JP,A)
【文献】特開2013-078253(JP,A)
【文献】特開2022-080187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M7/42-7/98
H02P4/00
25/08-25/098
29/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであるモータ部と、
前記モータ部に電力を供給するスイッチインバータ部と、
前記スイッチインバータ部に含まれる各スイッチを制御するスイッチ制御部と、
前記モータ部と前記スイッチインバータ部の間に設けられた電流センサ部とを備えるモータ装置であって、
前記モータ部にはA相、B相、C相、D相、E相およびF相の巻線が巻回されており、
前記スイッチインバータ部は、前記A相、前記C相および前記E相に電流を供給する第1系統と、前記B相、前記D相および前記F相に電流を供給する第2系統を有し、
前記電流センサ部は、
前記第1系統のうち所定の2相の電流値を検出
し、電気角1周期において前記電流値の平均から第1直流電流値を算出し、検出した前記所定の2相の電流値と前記第1直流電流値とに基づいて、他の1相の電流値を算出し、
前記第2系統のうち所定の2相の電流値を検出し、電気角1周期において前記電流値の平均から第2直流電流値を算出し、検出した前記所定の2相の電流値と前記第2直流電流値とに基づいて、他の1相の電流値を算出し、
前記スイッチ制御部は、前記電流センサの検出結果および算出結果に基づいて前記スイッチインバータ部を
パルス制御することを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
回転子が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであるモータ部と、
前記モータ部に電力を供給するスイッチインバータ部と、
前記スイッチインバータ部に含まれる各スイッチを制御するスイッチ制御部と、
前記モータ部と前記スイッチインバータ部の間に設けられた電流センサ部とを備えるモータ装置であって、
前記モータ部にはA相、B相、C相、D相、E相およびF相の巻線が巻回されており、
前記スイッチインバータ部は、前記A相、前記C相および前記E相に電流を供給する第1系統と、前記B相、前記D相および前記F相に電流を供給する第2系統を有し、
前記電流センサ部は、
前記第1系統のうち所定の2相の電流値を検出し、
DC電圧指令部が設定した直流電圧成分と相間抵抗から第1直流電流値を算出し、検出した前記所定の2相の電流値と前記第1直流電流値とに基づいて、他の1相の電流値を算出し、
前記第2系統のうち所定の2相の電流値を検出し、DC電圧指令部が設定した直流電圧成分と相間抵抗から第2直流電流値を算出し、検出した前記所定の2相の電流値と前記第2直流電流値とに基づいて、他の1相の電流値を算出し、
前記スイッチ制御部は、前記電流センサの検出結果および算出結果に基づいて前記スイッチインバータ部を
ベクトル制御することを特徴とするモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置に関し、特に、回転子に強磁性体を用いるスイッチトリラクタンスモータのモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な技術分野において、交流の周波数を変化させることで回転数を制御でき、安定した回転数を得られる三相モータが動力源として用いられている。また、回転子に強磁性体を用いるスイッチトリラクタンスモータも提案されている(例えば特許文献1を参照)。また、複数の相を備えた多相巻線を複数系統備えたモータ装置も提案されている。
【0003】
従来の三相巻線を2系統備えたモータ装置では、第1系統の三相巻線としてA相コイル、E相コイル、C相コイルを有し、第2系統の三相巻線としてD相コイル、B相コイル、F相コイルを有している。このような従来のモータ装置では、各相に対応したスイッチを用いて、各相の巻線に電流が流れるタイミングを交互に切替えることで、各相のコイルに適切に電流が流れて、スイッチトリラクタンスモータを回転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来のモータ装置では、各コイルに流れる相電流を検知することで、スイッチインバータ部の各スイッチを制御して、相電流をフィードバック制御している。そのため、スイッチインバータ部の各相とモータ装置の各相巻線との間にシャント抵抗を接続して、電流センサによって各相の電流を検知する必要があった。しかし、モータ装置の相数が増加するほどシャント抵抗と電流センサの必要数も増加し、装置の小型化やコスト低減が困難であるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、各相に流れる電流を検出するために必要な電流センサ数を低減しながらも、適切な回転制御を継続できるモータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のモータ装置は、回転子が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであるモータ部と、前記モータ部に電力を供給するスイッチインバータ部と、前記スイッチインバータ部に含まれる各スイッチを制御するスイッチ制御部と、前記モータ部と前記スイッチインバータ部の間に設けられた電流センサ部とを備えるモータ装置であって、前記モータ部にはA相、B相、C相、D相、E相およびF相の巻線が巻回されており、前記スイッチインバータ部は、前記A相、前記C相および前記E相に電流を供給する第1系統と、前記B相、前記D相および前記F相に電流を供給する第2系統を有し、前記電流センサ部は、前記第1系統のうち所定の2相の電流値を検出し、電気角1周期において前記電流値の平均から第1直流電流値を算出し、検出した前記所定の2相の電流値と前記第1直流電流値とに基づいて、他の1相の電流値を算出し、前記第2系統のうち所定の2相の電流値を検出し、電気角1周期において前記電流値の平均から第2直流電流値を算出し、検出した前記所定の2相の電流値と前記第2直流電流値とに基づいて、他の1相の電流値を算出し、前記スイッチ制御部は、前記電流センサの検出結果および算出結果に基づいて前記スイッチインバータ部をパルス制御することを特徴とする。
【0008】
このような本発明のモータ装置では、第1系統と第2系統のうち2相の電流値を検出し、他の1相の電流値を算出することで、各相に流れる電流を検出するために必要な電流センサ数を低減しながらも、適切な回転制御を継続できる。
【0011】
また上記課題を解決するために、本発明のモータ装置は、回転子が強磁性体で構成されたスイッチトリラクタンスモータであるモータ部と、前記モータ部に電力を供給するスイッチインバータ部と、前記スイッチインバータ部に含まれる各スイッチを制御するスイッチ制御部と、前記モータ部と前記スイッチインバータ部の間に設けられた電流センサ部とを備えるモータ装置であって、前記モータ部にはA相、B相、C相、D相、E相およびF相の巻線が巻回されており、前記スイッチインバータ部は、前記A相、前記C相および前記E相に電流を供給する第1系統と、前記B相、前記D相および前記F相に電流を供給する第2系統を有し、前記電流センサ部は、前記第1系統のうち所定の2相の電流値を検出し、DC電圧指令部が設定した直流電圧成分と相間抵抗から第1直流電流値を算出し、検出した前記所定の2相の電流値と前記第1直流電流値とに基づいて、他の1相の電流値を算出し、前記第2系統のうち所定の2相の電流値を検出し、DC電圧指令部が設定した直流電圧成分と相間抵抗から第2直流電流値を算出し、検出した前記所定の2相の電流値と前記第2直流電流値とに基づいて、他の1相の電流値を算出し、前記スイッチ制御部は、前記電流センサの検出結果および算出結果に基づいて前記スイッチインバータ部をベクトル制御することを特徴とするモータ装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、各相に流れる電流を検出するために必要な電流センサ数を低減しながらも、適切な回転制御を継続できるモータ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係るモータ装置100の構成例を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係るモータ装置100のパルス駆動時における電流波形を示すグラフである。
【
図3】第2実施形態に係るモータ装置100の構成例を示す模式図である。
【
図4】第3実施形態に係るモータ装置200の構成例を示すブロック図である。
【
図5】第3実施形態に係るモータ装置200のベクトル駆動時における電流波形を示すグラフである。
【
図6】
参考例に係るモータ装置300の構成例を示すブロック図である。
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係るモータ装置100の構成例を示す模式図である。
図1に示すように本実施形態のモータ装置100は、モータ部10と、スイッチインバータ部20と、スイッチ制御部30と、電流センサ部40とを備えている。
【0017】
モータ部10は、回転子(ロータ)11と、回転子11の周囲に配置された固定子(ステータ)12を備えている。また、回転子11には、外周に沿って強磁性体からなるロータティース(突極)が配置されている。また固定子12は、コアバック部とその内周に突出して形成された複数のティース部13を備えている。また、各ティース部13に巻線(コイル)14が、A相巻線~F相巻線巻として巻回されている。
図1に示した例では、モータ装置100は10突極12スロットのスイッチトリラクタンスモータを構成しているが、突極数Pとスロット数Sは、10突極12スロットには限定されない。また、ティース部13への各相の巻回方法も集中巻きに限定されず分布巻きであってもよい。
【0018】
コアバック部は、回転子11の外側に回転子11の外周を円周状に取り囲むように配置された部分であり、内周に複数のティース部13が等間隔に突出して形成されている。コアバック部には公知のものを用いることができ、構成する材料や構造は限定されない。また、コアバック部よりも外周には別途モータハウジング等の部材が設けられている。
【0019】
ティース部13は、コアバック部の内周面から回転子11に向かって突出して形成された突起状部分であり、各ティース部13は同じ長さと形状で形成されると共に等間隔に配置されており、各ティース部13の間には間隔が設けられてスロットを構成している。各ティース部13およびスロットには、巻線14が巻回されており、巻線14に電流が流れることでティース部13に磁界が発生する。
【0020】
図1に示した例では、各巻線14は固定子12の円周に沿って順にA相、B相、C相、D相、E相、F相、A相、B相、C相、D相、E相、F相、として12スロットが配置されている。ここで、A相、C相、E相の三相の組み合わせと、B相、D相、F相の三相の組み合わせが、それぞれ三相交流で駆動される第1系統および第2系統の三相巻線を構成している。
【0021】
スイッチインバータ部20は、電源電圧(+V)と接地電圧(0V)の間に6つのスイッチSA~SFが並列に接続されている。スイッチSA,SC,SEは、下流側に還流ダイオードDA、DC,DEが直列接続され、スイッチSB,SD,SFは、上流側に還流ダイオードDB,DD,DFが直列接続されている。これにより、A相~F相の合計6個のスイッチ(スイッチSA~スイッチSF)と6個の還流ダイオードDA~DFで三相非対称型のスイッチインバータ部20が構成されている。各スイッチは、それぞれドレインが電源電圧側(上流側)に接続され、ソースが接地電圧側(下流側)に接続されている。また、各スイッチとしてMOSFETを用いる場合には、ソースとドレインの間に寄生ダイオードが並列に逆接続された等価回路となる。また、各スイッチはスイッチ制御部30によって動作が制御される。
【0022】
スイッチ制御部30は、予め定められたプログラムに従って情報処理を行い、モータ装置100の各部を制御する演算部であり、CPU(中央演算処理装置:Central Processing Unit)等で実現される。また、スイッチ制御部30はモータ装置100の各部から情報を取得してプログラムに従って演算処理を行う。スイッチ制御部30には、メモリー装置や入出力装置、表示装置などが接続され、プログラムやデータの記録、演算結果の出力や表示等を行うこととしてもよい。またスイッチ制御部30は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、当該プログラムを実行することで本発明におけるモータ装置100の制御方法を実行する。
【0023】
電流センサ部40は、モータ部10とスイッチインバータ部20の間に設けられて、電流値の検出と算出を行う部分である。
図1では、電流センサ部40はシャント抵抗RA~RDを有する例を示している。シャント抵抗RA~RDは、それぞれスイッチインバータ部20のA相~D相と、モータ部10のA相巻線~D相巻線の間に直列に接続された抵抗である。電流センサ部40は、シャント抵抗RA~RDの両端における電位差を測定することで、A相~D相に流れる電流値ia~idを逐次検出することができる。ここで、
図1に示した例では、スイッチインバータ部20のE相、F相と、モータ部10のE相巻線、F相巻線の間にはシャント抵抗を設けず、電流センサ部40ではE相とF相に流れる電流値を直接検出していない。ここではE相とF相にシャント抵抗を設けない例を示したが、第1系統と第2系統の三相交流における各々2相にシャント抵抗を設ければ、どの相であってもよい。
【0024】
上述したように第1系統の三相巻線はA相、C相、E相の組み合わせであり、第2系統の三相巻線はB相、D相、F相の組み合わせである。したがって
図1に示した例では、第1系統の三相巻線についてA相とC相の2相について電流値ia,icをシャント抵抗RA,RCで検出し、A相とC相で検出した電流値ia,icから他の1相であるE相の電流値ieを算出する。また、第2系統の三相巻線についてB相とD相の2相について電流値ib,idをシャント抵抗RB,RDで検出し、B相とD相で検出した電流値ib,idから他の1相であるF相の電流値ifを算出する。
【0025】
図2は本実施形態に係るモータ装置100のパルス駆動時における電流波形を示すグラフである。グラフ中の横軸は時間を示し、縦軸は各相に流れる電流値を示している。また、電流センサ部40で検出した電流値iaは太い実線で示し、電流値icは一点鎖線で示し、電流値ibは細い破線で示し、電流値idは二点鎖線で示している。また、電流センサ部40で算出した電流値ieは細い実線で示し、電流値ifは太い破線で示している。
【0026】
パルス駆動においては、スイッチ制御部30はスイッチインバータ部20の各スイッチSA~SFに対して、電気角1周期において180度ずつ交互にオンとオフが繰り返される制御信号を送出する。また、スイッチSA~SFに印加される制御信号の位相は60度ずつ異なっており、第1系統であるスイッチSA,SC,SEと、第2系統であるスイッチSB,SD,SFでは、オンとオフが反転した制御信号となっている。
【0027】
電流センサ部40は、上述したようにシャント抵抗RA~RDの両端の電位差を測定することで、電流値ia,ic,ib,idの変化を経時的に検出している。このとき、三相交流である第1系統のA相、C相、E相では、三相の電流値を合計した直流電流値idcが一定となっている。同様に、三相交流である第2系統のB相、D相、F相では、三相の電流値を合計した直流電流値-idcが一定となっている。したがって、電流センサ部40は、直流電流値idc,-idcと、電流値ia,ic,ib,idに基づいて、電流値ie,ifを算出することができる。より具体的には、電流センサ部40はie=idc-(ia+ic)と、if=-idc-(ib+id)を計算することで電流値ie,ifを算出する。
【0028】
また電流センサ部40は、回転子11の回転速度から電気角1周期の時間を計算し、電気角1周期における電流値ia,ic,ib,idの値に基づいて、直流電流値idc,-idcを算出する。ここで、回転子11の回転速度は、従来公知の技術を用いることで電流センサ部40によって取得することができる。より具体的には、直流電流値idcとは、電流値iaまたは電流値icの平均値から算出することができ、直流電流値-idcは、電流値ibまたは電流値idの平均値から算出することができる。より正確に直流電流値idc,-idcを算出するためには、電流値iaと電流値icの平均値から直流電流値idcを算出し、電流値ibと電流値idの平均値から直流電流値-idcを算出することが好ましい。
図2には、電気角1周期に相当する期間を両矢印で示し、電流値ia,icの平均値である直流電流値idcと、電流値ib,idの平均値である直流電流値-idcを実線で示している。
【0029】
上述したように本実施形態のモータ装置100では、第1系統と第2系統のうち2相ずつの電流値ia,ic,ib,idを検出し、他の1相ずつの電流値ie,ifを算出することで、各相に流れる電流を検出するために必要な電流センサ数を低減しながらも、スイッチ制御部30でパルス制御により適切な回転制御を継続できる。
【0030】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図3を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図3は、本実施形態に係るモータ装置100の構成例を示す模式図である。本実施形態では、スイッチインバータ部20として12スイッチインバータを用いる点が第1実施形態とは異なっている。
【0031】
スイッチインバータ部20は、電源電圧(+V)と接地電圧(0V)の間に6つのスイッチ群(A群~F群)が並列に接続されている。各スイッチ群には、上流と下流に2つずつスイッチSA1,SA2と、スイッチSB1,SB2と、スイッチSC1,SC2とスイッチSD1,SD2と、スイッチSE1,SE2と、スイッチSF1,SF2が直列接続されており、合計12個のスイッチによって、モータ部10のA相巻線~F相巻線に対応した6相スイッチインバータのスイッチA相~スイッチF相が構成されている。
【0032】
各スイッチSA1~SF2は、それぞれドレインが電源電圧側(上流側)に接続され、ソースが接地電圧側(下流側)に接続されている。また、各スイッチとしてMOSFETを用いる場合には、ソースとドレインの間に寄生ダイオードが並列に逆接続された等価回路となる。また、各スイッチはスイッチ制御部30によって動作が制御される。
【0033】
本実施形態のモータ装置100でも、第1系統と第2系統のうち2相ずつの電流値ia,ic,ib,idを検出し、他の1相ずつの電流値ie,ifを算出することで、各相に流れる電流を検出するために必要な電流センサ数を低減しながらも、スイッチ制御部30でパルス制御により適切な回転制御を継続できる。
【0034】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図4、
図5を用いて説明する。
図4は、本実施形態に係るモータ装置200の構成例を示すブロック図である。本実施形態では、スイッチ制御部30がベクトル制御によってスイッチインバータ部20を制御する点が第1実施形態とは異なっている。モータ装置200の具体的な制御方法は、特許第7010405号等に記載された方法を用いることができる。
【0035】
図4に示すように本実施形態のモータ装置200は、モータ部10と、スイッチインバータ部20と、スイッチ制御部30と、電流センサ部40とを備えている。また、スイッチ制御部30は、仮想三相電流算出部31と、三相dq変換部32と、PI制御部33と、目標電流設定部34と、三相逆dq変換部35と、DC電圧指令部36を備えている。
【0036】
仮想三相電流算出部31は、電流センサ部40で検出および算出した各相の電流値ia~ifに基づいて、仮想の三相電流として相電流iu,iv,iwを求める。ここで、各相の電流値ia~ifは、第1系統と第2系統の三相巻線における所定の2相の電流値を検出し、検出した2相の電流値と直流電流値から他の1相の電流値を算出することで得られる。具体的な電流値の算出方法については後述する。また、仮想の三相電流は、第1系統と第2系統における対応する各相の平均を算出することで得られる。
【0037】
三相dq変換部32は、得られた仮想三相電流iu,iv,iwを三相dq変換して、回転座標系に変換しd軸電流idとq軸電流iqを求める。PI制御部33は、d軸電流idとq軸電流iqを入力値としてPI制御を行い、電流制御または回転速度制御のために電圧値vd,vqを得る。目標電流設定部34は、PI制御部33におけるd軸電流idとq軸電流iqの目標値を設定する。三相逆dq変換部35は、回転座標系である電圧値vd,vqに三相逆dq変換を行って交流指令電圧Vu,Vv,Vwを得る。DC電圧指令部36は、スイッチインバータ部20に印加する直流電圧成分vdc,-vdcを設定する。ここで、PI制御部33でのPI制御は公知の技術を用いることができる。
【0038】
図4に示したように、スイッチ制御部30でのベクトル制御によって、直流電圧成分vdc,-vdcと交流指令電圧Vu,Vv,Vwに基づいて、スイッチインバータ部20の各相には制御信号が印加される。これにより、第1系統および第2系統の三相巻線をベクトル制御して、モータ部10を回転駆動することができる。
【0039】
図5は、本実施形態に係るモータ装置200のベクトル駆動時における電流波形を示すグラフである。グラフ中の横軸は時間を示し、縦軸は各相に流れる電流値を示している。また、電流センサ部40で検出した電流値iaは太い実線で示し、電流値icは一点鎖線で示し、電流値ibは細い破線で示し、電流値idは二点鎖線で示している。また、電流センサ部40で算出した電流値ieは細い実線で示し、電流値ifは太い破線で示している。
【0040】
本実施形態では、DC電圧指令部36が設定した直流電圧成分vdcと-vdcが判明しているため、各相の間の抵抗値である相間抵抗Rから直流電流値idc=2vdc/Rを算出することができる。同様に、直流電流値-idc=-2vdc/Rを算出することができる。ここで相間抵抗Rは、モータ装置300における抵抗値を測定することで得られる。
【0041】
したがって、電流センサ部40は、直流電流値idc,-idcと、電流値ia,ic,ib,idに基づいて、電流値ie,ifを算出することができる。より具体的には、電流センサ部40はie=idc-(ia+ic)と、if=-idc-(ib+id)を計算することで電流値ie,ifを算出する。
【0042】
上述したように本実施形態のモータ装置200でも、第1系統と第2系統のうち2相ずつの電流値ia,ic,ib,idを検出し、他の1相ずつの電流値ie,ifを算出することで、各相に流れる電流を検出するために必要な電流センサ数を低減しながらも、スイッチ制御部30でベクトル制御により適切な回転制御を継続できる。
【0043】
(
参考例)
次に、本発明の
参考例について
図6を用いて説明する。
図6は、
本参考例に係るモータ装置300の構成例を示すブロック図である。
本参考例では、相間抵抗Rから直流電流値Idcを算出するのではなく、直流電流値Idcをフィードバック制御する点が第3実施形態とは異なっている。
【0044】
図6に示すように本
参考例のモータ装置300は、モータ部10と、スイッチインバータ部20と、スイッチ制御部30と、電流センサ部40とを備えている。また、スイッチ制御部30は、仮想三相電流算出部31と、三相dq変換部32と、PI制御部33と、目標電流設定部34と、三相逆dq変換部35と、DC電圧指令部36と、DC電流検出部37と、ローパスフィルタと、PI制御部38と、目標DC設定部39とを備えている。
【0045】
DC電流検出部37は、電流センサ部40で検出および算出した各相の電流値ia~ifに基づいて、第1系統と第2系統でオフセットしている直流電流値idcとして、idc=(ia-id)/2、idc=(ic-if)/2、idc=(ie-ib)/2によって直流電流値idcを求める。ローパスフィルタは、DC電流検出部37で算出された直流電流値idcの高周波成分をカットする部分である。PI制御部38は、ローパスフィルタを通過してきた直流電流値idcを入力値としてPI制御を行い、第1系統と第2系統の信号波において、直流成分となる直流指令電圧+Vdcと-Vdcを得る。目標DC設定部39は、PI制御部38の目標電流値を設定する。ここで、PI制御部38でのPI制御は公知の技術を用いることができる。
【0046】
図6に示したように、スイッチ制御部30でのベクトル制御によって、直流電圧成分vdc,-vdcと交流指令電圧Vu,Vv,Vwに基づいて、スイッチインバータ部20の各相には制御信号が印加される。また、DC電流検出部37、ローパスフィルタ、PI制御部38および目標DC設定部39を用いて、直流電流値idcをフィードバック制御することで、相間抵抗Rによらず同じ制御方法で第1系統および第2系統の三相巻線をベクトル制御して、モータ部10を回転駆動することができる。
【0047】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
100,200,300…モータ装置
10…モータ部
11…回転子
12…固定子
13…ティース部
14…巻線
20…スイッチインバータ部
30…スイッチ制御部
31…仮想三相電流算出部
32…三相dq変換部
33…PI制御部
34…目標電流設定部
35…三相逆dq変換部
36…DC電圧指令部
37…DC電流検出部
38…PI制御部
39…目標DC設定部
40…電流センサ部
【要約】
【課題】各相に流れる電流を検出するために必要な電流センサ数を低減しながらも、適切な回転制御を継続できるモータ装置を提供する。
【解決手段】モータ部(10)にはA相、B相、C相、D相、E相およびF相の巻線が巻回されており、スイッチインバータ部(20)はA相、C相およびE相に電流を供給する第1系統と、B相、D相およびF相に電流を供給する第2系統を有し、電流センサ部(40)は第1系統のうち所定の2相の電流値を検出し他の1相の電流値を算出し、第2系統のうち所定の2相の電流値を検出し他の1相の電流値を算出し、スイッチ制御部(30)は電流センサ部(40)の検出結果および算出結果に基づいてスイッチインバータ部(20)を制御するモータ装置(100)。
【選択図】
図1