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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】靴下およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41B 11/00 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
A41B11/00 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018123250
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020002499
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-01-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】593065110
【氏名又は名称】イイダ靴下株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】飯田 拓二
(72)【発明者】
【氏名】野田 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】白仁田 達郎
【合議体】
【審判長】金丸 治之
【審判官】稲葉 大紀
【審判官】田口 傑
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-250002(JP,A)
【文献】登録実用新案第3127628(JP,U)
【文献】特開2004-36059(JP,A)
【文献】特開平11-50303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸編みにより編成される対称形状の筒状編体で形成され、筒状編体の中間から内外を反転させて折り返して二重構造とした靴下において、
前記筒状編体における両端の各ルーズコース部に隣接する末端部位、前記中間の折返部位、及び前記二つの末端部位と折返部位との各中間部位であって、前記筒状編体の任意の一側側に、丸編機の一部を非編成部分として残りの編成部分を順次目増やしの編成及び順次目減らしの編成からなる膨出部を前記折返部位を中心にして左右対称に5箇所形成し、当該5箇所の膨出部のうち前記折返部位の膨出部が同一の目増やし及び目減らしにて対称に編成される筒状編体とし、
当該筒状編体を中間の折返部位から内外を反転させて各末端部位の膨出部を一致させて積層して前記各ルーズコース部を互いに縫合してなるつま先部と、
当該積層された中間部位の各膨出部を一致積層して形成された踵部と、当該積層された折返部位で対称線を折り曲げ線として同一形状の表面と裏面とを重畳させて形成された1つの膨出部からなる舌片状のツマミ部を靴下本体の踵部から靴下本体の後方かつ上方に突出した形状とする開口部と、を備えることを特徴とする
靴下。
【請求項2】
請求項1に記載の靴下において、
前記筒状編体を中間の折返部位から内外を反転されて外側となる側の前記筒状編体を構成する編み糸が、内側となる側の前記筒状編体を構成する編み糸よりも、太い及び/又は硬いことを特徴とする
靴下。
【請求項3】
丸編みにより編成される対称形状の筒状編体で形成され、筒状編体の中間から内外を反転させて折り返して二重構造とした靴下の製造方法において、
前記筒状編体における両端の各ルーズコース部に隣接する末端部位、前記中間の折返部位、及び前記二つの末端部位と折返部位との各中間部位であって、前記筒状編体の任意の一側側に、丸編機の一部を非編成部分として残りの編成部分を順次目増やしの編成及び順次目減らしの編成からなる膨出部を前記折返部位を中心にして左右対称に5箇所形成し、当該5箇所の膨出部のうち前記折返部位の膨出部を同一の目増やし及び目減らしにて対称に編成する膨出部形成工程と、
当該筒状編体を前記中間の折返部位の対称線を折り目として内外を反転させて各中間部位及び各末端部位の膨出部を一致させて積層し、当該積層された折返部位で前記対称線を折り目として同一形状の表面と裏面とを重畳させ、当該重畳により1つの膨出部からなる舌片状のツマミ部を形成し、当該ツマミ部を靴下本体の踵部から靴下本体の後方かつ上方に突出した形状とする開口部を形成する積層工程と、
当該積層工程により積層された前記各ルーズコース部を互いに縫合する縫合工程と、
を含むことを特徴とする
靴下の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた履き心地と共に、容易に着脱可能な靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、室内用途の靴下のニーズが高まっている。室内用途の靴下が必要とされる施設として、例えば、介護施設が挙げられる。介護施設では、床に直接触れて歩行する必要があるため、硬さのある床上の歩行に際して穏やかな履き心地のものが求められている。さらに、介護施設内の利用者が容易に着脱できるものが求められている。
【0003】
このような靴下は、従来の靴下と部屋履きの靴下との中間に位置付けられる新しいタイプの靴下であり、今後の需要を見込んで活発に開発が行われている。従来、この種の靴下としては、連続した筒状に編成された編地を折り返すことによって二重構造を形成する靴下が知られている。
【0004】
例えば、従来の靴下としては、その靴下外層及び靴下内層の少なくとも足甲部、底部、レッグ部及び履口部は、少なくとも1本の表糸をパイル編みのシンカー乗せ編みにて編成するとともに、裏糸としてゴム糸又はカバリングヤーンをコース方向に1目ないし3目飛ばしながら編み込んで構成されている一方、上記靴下外層及び靴下内層の踵部は平編みにて編成された二重構造の靴下が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、例えば、従来の靴下としては、全体が内布及び外布からなる二重構造の靴下であって、該外布が該内布の全体を覆う袋状にて、該内布及び該外布の挿入口部を縫着して二重構造をなし、据え置き時に該挿入口部が開口状態を維持し、且つ該挿入口部から踵部にかけて立体的な筒型状に自立して形成されてなる靴下が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-038304号公報
【文献】特開2009-114563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の靴下では、例えば上記の特許文献1に示されるように、二重構造の靴下を形成するために、平編みやパイル編みのシンカー乗せ編み等を組み合わせた複雑な編み構造を用いるものでは、高い縫製技術や高い製造コストが必要となる。また、着脱時には、当該複雑な編み構造に起因して、生地の一部に対して偏った強い張力が発生し易いこととなり、生地に伸び及び損傷を与え、生地の消耗が早いものとなる。
【0008】
また、例えば上記の特許文献2に示されるように、二重構造の靴下を形成するために、内布及び外布の挿入口部を縫着することによって二重構造を形成するものでは、着用時に挿入口部の縫着箇所が着用者の足に当たり、履き心地の面で難がある。
【0009】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、簡素な構成で、優れた着脱容易性と穏やかな履き心地を有する靴下を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る靴下は、丸編みにより編成される対称形状の筒状編体で形成され、筒状編体の中間から内外を反転させて折り返して二重構造とした靴下において、前記筒状編体における両端の各ルーズコース部に隣接する末端部位、前記中間の折返部位、及び前記二つの末端部位と折返部位との各中間部位であって、前記筒状編体の任意の一側側に、丸編機の一部を非編成部分として残りの編成部分を順次目増やしの編成及び順次目減らしの編成からなる膨出部を形成した筒状編体とし、当該各膨出部が形成された筒状編体を中間の折返部位から内外を反転させて各中間部位及び各末端部位の膨出部を一致させて積層して前記各ルーズコース部を互いに縫合し、当該積層された中間部位で形成された踵部と、当該積層された末端部位で形成されたつま先部と、当該積層された折返部位で形成された舌片状のツマミ部を有する開口部と、を備えるものである。
【0011】
このように、本発明に係る靴下は、前記筒状編体における両端の各ルーズコース部に隣接する末端部位、前記中間の折返部位、及び前記二つの末端部位と折返部位との各中間部位であって、前記筒状編体の任意の一側側に、丸編機の一部を非編成部分として残りの編成部分を順次目増やしの編成及び順次目減らしの編成からなる膨出部を形成した筒状編体とし、当該各膨出部が形成された筒状編体を中間の折返部位から内外を反転させて各中間部位及び各末端部位の膨出部を一致させて積層して前記各ルーズコース部を互いに縫合し、当該積層された中間部位で形成された踵部と、当該積層された末端部位で形成されたつま先部と、当該積層された折返部位で形成された舌片状のツマミ部を有する開口部と、を備えることから、靴下全体にわたって密な二重構造を有すると共に、着用者の足を差し入れる開口部分が部分的な張力を要することなく確実に開放状態とすることができることとなり、高い断熱性が得られると共に、開口形状を維持して装着動作を確実且つ容易に行うことができる。また、前記折返部位の膨出部から形成される舌片状のツマミ部を有する開口部を備えることから、当該折返部位の膨出部を折り畳んで拡開状の舌片状からなるツマミ部が靴下の後上方へ突出することとなり、ツマミ部を片手で持って靴下の開口部に足先を挿入するのみで容易且つ確実に靴下の装着が可能となる。
【0012】
また、本発明に係る靴下は必要に応じて、前記筒状編体を中間の折返部位から内外を反転されて外側となる側の前記筒状編体を構成する編み糸が、内側となる側の前記筒状編体を構成する編み糸よりも、太い及び/又は硬いことである。このように、本発明に係る靴下は、前記筒状編体を中間の折返部位から内外を反転されて外側となる側の前記筒状編体を構成する編み糸が、内側となる側の前記筒状編体を構成する編み糸よりも、太い及び/又は硬いことから、着用者が足を入れて履く側(内側)は柔らかく形成されると共に、地面に直接接触する側(外側)は頑丈に形成されることとなり、地面に対する歩き易さと、心地よい履き心地を両立することができる。
【0013】
また、本発明に係る靴下の製造方法は、丸編みにより編成される対称形状の筒状編体で形成され、筒状編体の中間から内外を反転させて折り返して二重構造とした靴下の製造方法において、前記筒状編体における両端の各ルーズコース部に隣接する末端部位、前記中間の折返部位、及び前記二つの末端部位と折返部位との各中間部位であって、前記筒状編体の任意の一側側に、丸編機の一部を非編成部分として残りの編成部分を順次目増やしの編成及び順次目減らしの編成からなる膨出部を形成する膨出部形成工程と、当該各膨出部が形成された筒状編体を中間の折返部位から内外を反転させて各中間部位及び各末端部位の膨出部を一致させて積層する積層工程と、当該積層工程により積層された前記各ルーズコース部を互いに縫合する縫合工程と、を含むものである。
【0014】
このように、本発明に係る靴下の製造方法は、前記筒状編体における両端の各ルーズコース部に隣接する末端部位、前記中間の折返部位、及び前記二つの末端部位と折返部位との各中間部位であって、前記筒状編体の任意の一側側に、丸編機の一部を非編成部分として残りの編成部分を順次目増やしの編成及び順次目減らしの編成からなる膨出部を形成する膨出部形成工程と、当該各膨出部が形成された筒状編体を中間の折返部位から内外を反転させて各中間部位及び各末端部位の膨出部を一致させて積層する積層工程と、当該積層工程により積層された前記各ルーズコース部を互いに縫合する縫合工程と、を含むことから、簡素な縫合のみによって、靴下全体にわたって均質で密な二重構造が形成されると共に、着用者の足の差入口となる開口部分が部分的な張力を要することなく確実に開放状態とすることができることとなり、高い断熱性が得られると共に、開口形状を維持して装着動作を確実且つ容易に実行できる靴下が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係る靴下を構成する筒状編体の構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る靴下の製造過程を順次説明する説明図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る靴下を製造するフローチャートである。
図4】本発明の第1の実施形態に係る靴下の形成を順次説明する説明図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る靴下の外観斜視図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る筒状編体の構成図(a)及び靴下の外観斜視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る靴下及びその製造方法を上記図1図5に基づいて説明する。
【0017】
本実施形態に係る靴下は、丸編みにより編成される対称形状の筒状編体で形成され、筒状編体の中間から内外を反転させて折り返して二重構造とした靴下であり、前記筒状編体における両端の各ルーズコース部に隣接する末端部位、前記中間の折返部位、及び前記二つの末端部位と折返部位との各中間部位であって、前記筒状編体の任意の一側側に、丸編機の一部を非編成部分として残りの編成部分を順次目増やしの編成及び順次目減らしの編成からなる膨出部を形成した筒状編体とし、当該各膨出部が形成された筒状編体を中間の折返部位から内外を反転させて各中間部位及び各末端部位の膨出部を一致させて積層して前記各ルーズコース部を互いに縫合し、当該積層された中間部位で形成された踵部と、当該積層された末端部位で形成されたつま先部と、当該積層された折返部位で形成された舌片状のツマミ部を有する開口部と、を備える構成である。
【0018】
この対称形状の筒状編体の構成図を図1に示す。前記膨出部としては、図1に示すように、筒状編体の一端側(A)から他端側(B)に向かって、一端側(A)のルーズコース部(一端側ルーズコース部11)に隣接する末端部に編成される第1末端膨出部21、一端側(A)の前記中間部位に編成される第1中間膨出部41、前記折返部位に編成される折返膨出部61、他端側(B)の前記中間部位に編成される第2中間膨出部42、他端側(B)のルーズコース部(他端側ルーズコース部12)に隣接する末端部に編成される第2末端膨出部22、の5つの膨出部を備えて構成される。
【0019】
本実施形態に係る靴下の製造方法を図2の説明図及び図3のフローチャートに従って説明する。
【0020】
本実施形態に係る靴下の製造方法としては、前記筒状編体における両端の各ルーズコース部に隣接する末端部位、前記中間の折返部位、及び前記二つの末端部位と折返部位との各中間部位であって、前記筒状編体の任意の一側側に、丸編機の一部を非編成部分として残りの編成部分を順次目増やしの編成及び順次目減らしの編成からなる膨出部(上述した5つの膨出部)を形成する(膨出部形成工程)。
【0021】
前記筒状編体の任意の一側側に前記膨出部が編成されることとは、図1で示したように、前記各膨出部の位置が、前記筒状編体の同一の側(平置きした場合の外側)に編成されることを指す。
【0022】
前記筒状編体の一方に前記膨出部(袋状の編地)を編成する方法は、編み機のシリンダの半周にある長バットニードルを非編成レベル(センター・カムの上面)に上げスイッチ・カムによって上げ、残る半周の短ッバットニードルにてシリンダの正逆往復回転により針上げピッカー及び針下げによる目減らし及び目増やしを行って編成することができる。
【0023】
すなわち、図2(a)で示すように、先ず、筒状編体の一端側(A)でルーズコース部(一端側ルーズコース部11)を編立てる(S101)。筒状編体の一端側(A)から他端側(B)に向かう方向Lに沿って、この一端側ルーズコース部11に隣接する末端部に、丸編機の一部を非編成部分として残りの編成部分を順次目増やしで第1末端目増やし部21aを編成し、その後に順次目減らしで第1末端目減らし部21bを編成して最初の膨出部(第1末端膨出部21)を編立てる(S102)。この第1末端膨出部21を編成後、この第1末端膨出部21に連続して、他端側(B)に向かって周方向の編目数を一定にして筒編で編立て、筒状部(一端側末端筒状部31)を形成する(S103)。
【0024】
2番目の膨出部として、図2(b)で示すように、一端側(A)の前記中間部位に、丸編機の一部を非編成部分として残りの編成部分を順次目増やしで第1中間目増やし部41aを編成し、その後に順次目減らしで第1中間目減らし部41bを編成して前記第1中間膨出部41を編立てる(S104)。この第1中間膨出部41を編成後、この第1中間膨出部41に連続して、他端側(B)に向かって周方向の編目数を一定にして筒編で編立て、筒状部(一端側中央筒状部51)を形成する(S105)。
【0025】
3番目の膨出部として、図2(c)で示すように、前記折返膨出部61を、前記折返部位に、丸編機の一部を非編成部分として残りの編成部分を順次目増やしで折返目増やし部61aを編成し、その後に順次目減らしで折返目減らし部61bを編成して編立てる(S106)。この折返膨出部61を編成後、この折返膨出部61に連続して、他端側(B)に向かって周方向の編目数を一定にして、前記一端側中央筒状部51と同じ長手方向の長さNで、筒編で編立て、筒状部(他端側中央筒状部52)を形成する(S107)。
【0026】
4番目の膨出部として、図2(d)で示すように、前記他端側中央筒状部52の他端側(B)の端部である他端側(B)の前記中間部位に、丸編機の一部を非編成部分として残りの編成部分を順次目増やしで第2中間目増やし部42aを編成し、その後に順次目減らしで第2中間目減らし部42bを編成して前記第2中間膨出部42を編立てる(S108)。この第2中間膨出部42を編成後、この第2中間膨出部42に連続して、他端側(B)に向かって周方向の編目数を一定にして、前記一端側末端筒状部31と同じ長手方向の長さNで、筒編で編立て、筒状部(他端側末端筒状部32)を形成する(S109)。
【0027】
5番目の膨出部として、図2(e)で示すように、前記他端側末端筒状部32の他端側(B)の端部である他端側(B)の前記末端部位に、前記第2末端膨出部22を編立てる(S110)。この第2末端膨出部22を編成後、この第2末端膨出部22から他端側(B)の末端に向かって、他端側(B)のルーズコース部(他端側ルーズコース部12)を編立てる(S111)。
【0028】
この一連の製造過程によって、5つの膨出部として、前記第1末端膨出部21、前記第1中間膨出部41、前記折返膨出部61、前記第2末端膨出部22、前記第2中間膨出部42が順に編立てられ、図2(e)で示されるように、前記筒状編体の全体が編み立てられる。
【0029】
上記のようにして得られた前記各膨出部(5つの膨出部)が形成された筒状編体を中間の折返部位から内外を反転させて各中間部位及び各末端部位の膨出部を一致させて積層する(積層工程:S201)。この積層工程により積層された2つの各ルーズコース部(一端側ルーズコース部11及び他端側ルーズコース部12)を互いに縫合する(縫合工程:S301)。
【0030】
すなわち、先ず、図4(a)で示される筒状編体に対して、図4(b)で示すように、筒状編体の一端側(A)から他端側(B)に向かう方向Mに沿って、前記第1末端膨出部21近傍の内外、及び前記第1中間膨出部41近傍の内外を反転させる。次に、図4(c)で示すように、前記折返膨出部61近傍の内外を反転させる。次に、図4(d)で示すように、前記第2中間膨出部42近傍の内外を反転させる。次に、図4(e)で示すように、前記第2末端膨出部22近傍の内外を反転させる。
【0031】
このようにして、各膨出部が形成された筒状編体は、中間の折返部位から内外を反転させて各中間部位及び各末端部位の膨出部を一致させて積層され、対応する各膨出部(前記第1末端膨出部21と前記第2末端膨出部22、及び、前記第1中間膨出部41と前記第2中間膨出部42)が互いに重なり合った二重構造が形成される。
【0032】
次に、図4(e)で示されるように、重なり合って開口状態を形成している2つの各ルーズコース部(一端側ルーズコース部11及び他端側ルーズコース部12)に対して、先かがりを行うことによって互いに縫合する。当該先かがりによる縫合によって、図4(f)で示すように、上記開口状態が閉じて縫合部10が形成され、靴下のつま先部20が形成される。当該先かがりは、ダイヤル・リンキング機によって目差しをして縫い合わせること(リンキング)によって行うことが可能であり、この他にも、メロー・ミシンを用いて行うことも可能である。当該先かがりを行った後、各ルーズコース部の余り生地を切断し、この切断された余り生地(端切れ)は廃棄する。
【0033】
当該縫合によって、図5で示すように、前記中間部位に編み立てられた第1中間膨出部41と第2中間膨出部42が一致して積層して縫合され、靴下の踵部40が二重構造で形成されると共に、前記折返部位に編み立てられた折返膨出部61が折り返されることによって、舌片状のツマミ部60aを有する開口部60が二重構造で形成される。。
【0034】
このように、本実施形態に係る靴下では、上記各膨出部が形成された筒状編体を中間の折返部位から内外を反転させて各中間部位及び各末端部位の膨出部を一致させて積層して縫合し、前記各ルーズコース部(一端側ルーズコース部11及び他端側ルーズコース部12)が互いに縫合されて形成されるつま先部20を備えることから、靴下全体にわたって密な二重構造を有すると共に、開口部分が部分的な張力を要することなく確実に確実に開放状態とすることができることとなり、高い断熱性が得られると共に、開口部60における開口形状が維持されることによって、着用者の装着動作を確実且つ容易に行うことができる。
【0035】
この開口部60が有する舌片状のツマミ部60aは、袋状に膨出する編地で形成された前記折返膨出部61を、二つ折りに折曲して重ね合わせて形成されることから、舌片状に突出する先端部分がやや拡開した状態で垂れ下がるように形成される。
【0036】
このように、本実施形態に係る靴下は、前記折返部位の膨出部(前記折返膨出部61)から形成される舌片状のツマミ部60aを備えることから、前記折返部位の膨出部(前記折返膨出部61)を折り畳んで拡開状の舌片状からなるツマミ部60aが靴下の後上方へ突出することとなり、ツマミ部60aを片手で持って靴下の開口部に足先を挿入するのみで容易且つ確実に靴下の装着が可能となる。
【0037】
なお、靴下の開口部60をダブルウェルト(袋編)に編立ててメークアップ編成を行うことも可能であり、このメークアップ編成後にゴム糸を挿入した編地で口ゴム部を形成することも可能であり、靴下の開口部分における折り返し部分の緩み、ズレ等を防止して開口部分の剛性を確保し、しっかりとした硬さの履き口を形成することができ、履き易さをさらに向上させることができる。
【0038】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る靴下は、前記第1の実施形態と同じく、前記縫合部10、前記つま先部20、前記第1末端膨出部21、前記第2末端膨出部22、前記踵部40、前記第1中間膨出部41、前記第2中間膨出部42、前記開口部60、及び前記折返膨出部61とを備える構成であり、さらに、前記筒状編体を中間の折返部位から内外を反転されて外側となる側の前記筒状編体を構成する編み糸が、内側となる側の前記筒状編体を構成する編み糸よりも、太い及び/又は硬いこと(すなわち、太いか、又は硬いか、或いは太くて硬いこと)である構成である。
【0039】
すなわち、図6(a)に示すように、丸編みにより編成される対称形状の筒状編体の一端側(A)にあるX側(図の右半分)を前記外側となる側とし、他端側(B)にあるY側(図の左半分)を前記内側となる側とした場合に、Xを構成する編み糸が、Yを構成する編み糸よりも、太い及び/又は硬いことである構成である。
【0040】
本実施形態に係る靴下は、例えば、前記外側となる編み糸が、前記内側となる側の編み糸よりも、高いデニール値(D)を有するものである。例えば、前記外側となる側の編み糸が100~200Dであり、前記内側となる側の編み糸が50~100Dである。この他にも、この編み糸の太さについては、テクス値(tex)を用いて示すこともできる。テクス値(tex)は、上述したデニール値(D)の1/9に換算して扱うことができる。
【0041】
また、この編み糸の硬さについては、例えば、綿、絹、麻等の天然繊維を用いることによって、より硬い編み糸を構成することができる。例えば、本実施形態に係る靴下は、例えば、前記外側となる編み糸が、天然繊維を含んで構成されると共に、前記内側となる側の編み糸が、ナイロン等の合成繊維で構成されることもできる。このように、前記内側となる側の編み糸と前記外側となる側の編み糸とを異なる素材から構成することによって、前記太さ及び/又は硬さの違いを構成することが可能である。この他にも、編み糸に炭素繊維(カーボン繊維)を用いることによって、編み糸の摩擦力が高められ、当該編み糸で構成された生地の滑り難さが向上されることとなり、より高い履き心地を得ることができる。
【0042】
この構成によって、前記反転後に、図6(b)に示すように、靴下の外側(前記X側)を構成する編み糸が、靴下の内側(前記Y側)を構成する編み糸よりも、太い及び/又は硬い靴下が形成されることから、着用者が足を入れて履く側には柔らかく形成されると共に、地面に直接接触する側には頑丈に形成されることとなり、心地よい履き心地と共に、地面に対して歩き易さを両立することができる。
【0043】
なお、本発明の第2の実施形態に係る靴下は、前記第2の実施形態と同じく、前記ツマミ部60aを備える構成とすることも可能であり、この場合には、前記折返部位の膨出部(前記折返膨出部61)を折り畳んで拡開状の舌片状からなるツマミ部60aが靴下の後上方へ突出することとなり、このツマミ部60aを片手で持って靴下の開口部に足先を挿入するのみで容易且つ確実に靴下の装着が可能となる。
【0044】
なお、上記の各実施形態において、前記各膨出部は、順次目増やしの編成及び順次目減らしの編成からなるものであり、順次目増やしの編成及び順次目減らしの編成のうちどちらが先に編成されていてもよい。すなわち、順次目増やしの編成の後に、順次目減らしの編成が形成されていてもよいし、順次目減らしの編成の後に、順次目増やしの編成が形成されていてもよい。この他にも、各膨出部は、順次目増やしの編成及び順次目減らしの編成のうちのいずれか1つの編成から構成することも可能である。すなわち、前記各膨出部は、順次目増やしの編成のみからなることや、順次目減らしの編成のみからなることも可能であり、その場合には、簡素な製造工程によって靴下を製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
10 縫合部
11 一端側ルーズコース部
12 他端側ルーズコース部
20 つま先部
21 第1末端膨出部
21a 第1末端目増やし部
21b 第1末端目減らし部
22 第2末端膨出部
22a 第2末端目増やし部
22b 第2末端目減らし部
31 一端側末端筒状部
32 他端側末端筒状部
40 踵部
41 第1中間膨出部
41a 第1中間目増やし部
41b 第1中間目減らし部
42 第2中間膨出部
42a 第2中間目増やし部
42b 第2中間目減らし部
51 一端側中央筒状部
52 他端側中央筒状部
60 開口部
60a ツマミ部
61 折返膨出部
61a 折返目増やし部
61b 折返目減らし部
図1
図2
図3
図4
図5
図6