(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】トキソプラズマ原虫由来のIMC、ROP18及びMIC8を同時発現するウイルス様粒子、及びこれを含む薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/002 20060101AFI20240815BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20240815BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20240815BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240815BHJP
A61P 33/02 20060101ALI20240815BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20240815BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20240815BHJP
C12N 15/44 20060101ALN20240815BHJP
C12N 15/30 20060101ALN20240815BHJP
【FI】
A61K39/002
A61K39/145
A61K31/522
A61P43/00 121
A61P33/02
C12N7/01
C12N15/63 Z
C12N15/44 ZNA
C12N15/30
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020000954
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0001828
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 Frontiers in Immunology,January 2019 Volume 9,Article 3073で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】520006964
【氏名又は名称】ヘルス・パーク・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Health Park co,.ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】パク・ヒョヌ
(72)【発明者】
【氏名】チン・フイ
(72)【発明者】
【氏名】チュエン・フー・シ
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】PLoS ONE,2019年08月29日,14(8),e0220865
【文献】Vaccine,2012年,31,58-83
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 7/01
A61K 39/145
A61K 39/002
A61P 33/02
A61K 31/522
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス様粒子を有効成分として含む、トキソプラズマ原虫感染症の予防または治療用薬学的組成物であって、
前記ウイルス様粒子は、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(Influenza virus matrix protein 1;M1)と
トキソプラズマ原虫由来の内膜複合体タンパク質(Inner membrane complex;IMC)、ロプトリータンパク質18(Rhoptry protein 18;ROP18)及びミクロネームタンパク質8(Microneme protein 8;MIC8)とを含む表面抗原タンパク質を含み、
前記薬学的組成物は、シトシン-ホスホロチオエート-グアニン(CpG)と共に、対象者に鼻腔内投与される、前記薬学的組成物。
【請求項2】
前記インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)は、
配列番号1のアミノ酸配列で構成され、前記内膜複合体タンパク質(IMC)は、
配列番号2のアミノ酸配列で構成され、前記ロプトリータンパク質18(ROP18)は
配列番号3のアミノ酸配列で構成され、前記ミクロネームタンパク質8(MIC8)は
配列番号4のアミノ酸配列で構成される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)は、
配列番号5の核酸配列によってコーディングされ、前記内膜複合体タンパク質(IMC)は、
配列番号6の核酸配列によってコーディングされ、前記ロプトリータンパク質18(ROP18)は
配列番号7の核酸配列によってコーディングされ、前記ミクロネームタンパク質8(MIC8)は
配列番号8の核酸配列によってコーディングされる、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
対象者に1回ないし3回投与される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の薬学的組成物を人間ではない、対象者に免疫学的有効量で投与する段階を含むトキソプラズマ原虫感染症の予防または治療方法。
【請求項6】
トキソプラズマ原虫感染症の予防または治療用薬剤を製造するための請求項1から4のいずれか1つに記載の薬学的組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トキソプラズマ原虫ウイルス様粒子(virus-like particles;VLP)及びその用途に関するものであり、詳細には、構造タンパク質としてインフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1を含み、トキソプラズマ原虫由来の内膜複合体タンパク質、ロプトリータンパク質18及びミクロネームタンパク質8を含む表面抗原タンパク質を含むトキソプラズマ原虫感染症の予防または治療用ウイルス様粒子、及びこれを含む薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)は、コクシジウム亜綱(subclass of coccidia)に属するアピコンプレクサである。トキソプラズマ原虫は、細胞内寄生虫(obligare intercellular parasite)として全世界的に分布する人間及び動物に対するトキソプラズマ症(Toxoplasmosis)を引き起こす原因原虫である。
【0003】
トキソプラズマ原虫は大きく、オーシスト(oocyst)、タキゾイト(tachyzoit)、ブラディゾイト(bradyzoit)、シゾント(schizont)及びガメトサイト(gametocyte)段階の5つの発育段階を経る。トキソプラズマ原虫は終宿主である猫の糞便のオーシスト(oocyst)によって汚染された水または野菜を摂取することによって感染したり、中間宿主である豚、羊、牛などの肉類に嚢胞(cyst)として存在するトキソプラズマ原虫を摂食する時に感染し得る。
【0004】
全世界の人口の約3分の1以上がトキソプラズマ原虫に感染されたと推定され、韓国国内でもグループによって2ないし25%の感染率を示すと報告されている。
【0005】
産婦がトキソプラズマ原虫に感染した時、トキソプラズマ原虫のトロホゾイト(trophozoite)は胎盤を通じて胎児を感染させ得る。トキソプラズマ原虫の感染によって、初期の胎児は流産または死産に至り得、中後期の胎児は正常に分娩したにもかかわらず、視力損傷、水頭症、知的障害などの先天奇形を持ち得る。
【0006】
また、健康的な個体に感染したトキソプラズマ原虫は免疫系細胞、細網内皮細胞などを破壊してリンパ腺炎、脈絡網膜炎、脳脊髄炎などの疾病を誘発し得、宿主の免疫不全時に脳で増殖した嚢胞が活性化され、髄膜炎または脈絡網膜炎を引き起こし得る。
【0007】
一方、マラリアの治療剤としても使用されるピリメタミン(pyrimethamine)がトキソプラズマ症の治療剤として最も広く使用されているが、妊娠中には治療効果があまり表れず、その他にスピラマイシン(spiramycin)は薬効が大きくないため、予防用として使われている。
【0008】
また、ピリメタミンと併用されるスルファ剤(sulfa drug)であるスルファメトキサゾール(sulfamethoxazole)は、骨髄抑制を起こして血小板数を減少させることができ、葉酸との併用投与によりアレルギー反応、腎臓障害、血液障害、悪心、嘔吐などの副作用を誘発することができる。
【0009】
しかし、現在、最も広く使われている抗トキソプラズマ原虫剤のスルファ剤やピリメタミンは、耐性の増加により治療効果が徐々に減少しており、抗体を生成させ、トキソプラズマ原虫に対する免疫力を付与し得るワクチンも開発されていない実情である。
【0010】
一方、実際のウイルスの構造と形態学的に類似したウイルス様粒子は、いくつかのウイルスに対するワクチン抗原として提案されてきた(Roldao A, Mellado MC, Castilho LR, Carrondo MJ, Alves PM: Expert review of vaccines 2010, 9:1149-1176;Kang SM, Kim MC, Compans RW: Expert review of vaccines 2012, 11:995-1007;Kushnir N, Streatfield SJ, Yusibov V: Vaccine 2012, 31:58-83).
【0011】
ウイルス様粒子は、免疫原組成物に使用するための抗原として、最近多くの注目を集めている。ウイルス様粒子は、野生型ウイルスと類似した形態として、1つ以上の表面タンパク質を含有して体内の免疫反応を誘導し得る。ウイルス様粒子は、野生型ウイルスとは異なって遺伝物質が欠如していることから、免疫系を活性化させることができるにもかかわらず、非感染性であるため、非常に安全である。
【0012】
本発明者らは、トキソプラズマ原虫に直接作用する従来の治療剤とは異なり、体内の免疫反応を誘導して、安全で耐性の問題がなく、トキソプラズマ症に対する予防及び治療効果に優れた新規な形態のウイルス様粒子を開発しようとした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、トキソプラズマ原虫に対する体内の免疫反応を誘導し得る新規な形態のウイルス様粒子、すなわち構造タンパク質としてインフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1を含み、トキソプラズマ原虫由来の内膜複合体タンパク質、ロプトリータンパク質18及びミクロネームタンパク質8を含む表面抗原タンパク質を含むトキソプラズマ原虫感染症の予防または治療用ウイルス様粒子及びこれの用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面によると、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(Influenza virus matrix protein 1;M1);及びトキソプラズマ原虫由来の内膜複合体タンパク質(Inner membrane complex;IMC)、ロプトリータンパク質18(Rhoptry protein 18;ROP18)及びミクロネームタンパク質8(Microneme protein 8;MIC8)を含む表面抗原タンパク質を含むウイルス様粒子が提供される。
【0015】
一実施形態において、上記インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)は、配列番号1のアミノ酸配列で構成されることができ、上記内膜複合体タンパク質(IMC)は、配列番号2のアミノ酸配列で構成されることができ、上記ロプトリータンパク質18(ROP18)は、配列番号3のアミノ酸配列で構成されることができ、上記ミクロネームタンパク質8(MIC8)は、配列番号4のアミノ酸配列で構成されることができる。
【0016】
一実施形態において、上記インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)は、配列番号5の核酸配列によってコーディングされることができ、上記内膜複合体タンパク質(IMC)は、配列番号6の核酸配列によってコーディングされることができ、上記ロプトリータンパク質18(ROP18)は、配列番号7の核酸配列によってコーディングされることができ、上記ミクロネームタンパク質8(MIC8)は、配列番号8の核酸配列によってコーディングされることができる。
【0017】
本発明の他の側面によると、上記ウイルス様粒子を有効成分として含むトキソプラズマ原虫感染症の予防または治療用の薬学的組成物が提供される。
【0018】
一実施態様において、上記薬学的組成物は、対象者に鼻腔内投与される。
【0019】
一実施態様において、上記薬学的組成物は、シトシン-ホスホロチオエート-グアニン(CpG)と共に投与される。
【0020】
一実施態様において、上記薬学的組成物は、対象者に1回ないし3回投与される。
【0021】
本発明の他の側面によると、上記ウイルス様粒子を対象者に免疫学的有効量で投与する段階を含む、トキソプラズマ原虫感染症の予防または治療方法を提供する。
【0022】
本発明の他の側面によると、トキソプラズマ原虫感染症の予防または治療の用途で使用するための、上記ウイルス様粒子を含む組成物を提供する。
【0023】
本発明の他の側面によると、トキソプラズマ原虫感染症の予防または治療用薬剤を製造するための、上記ウイルス様粒子を含む組成物の用途を提供する。
【0024】
本発明の他の側面によると、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)をコーディングする核酸配列;内膜複合体タンパク質(IMC)をコーディングする核酸配列;ロプトリータンパク質18(ROP18)をコーディングする核酸配列;及びミクロネームタンパク質8(MIC8)をコーディングする核酸配列を含むウイルス様粒子の製造用発現ベクターが提供される。
【0025】
本発明の他の側面によると、上記発現ベクターにより形質転換された宿主細胞が提供される。
【0026】
一実施形態において、上記宿主細胞は、微生物、動物細胞、植物細胞、動物に由来した培養細胞または植物に由来した培養細胞であってもよい。
【0027】
本発明の他の側面によると、上記発現ベクターで宿主細胞を形質転換する段階と、上記宿主細胞を培養してウイルス様粒子を発現させる段階とを含む、ウイルス様粒子の製造方法が提供される。
【発明の效果】
【0028】
本発明のウイルス様粒子は、トキソプラズマ原虫感染による炎症性サイトカインの生成を抑制し、マウス体内のトキソプラズマ原虫嚢胞の生成を抑制するのみならず、トキソプラズマ原虫に対して著しく高いレベルの免疫性を提供することができる。
【0029】
本発明のトキソプラズマ原虫から由来した3以上のタンパク質を同時発現するウイルス様粒子は、特に優れたトキソプラズマ原虫-特異的抗体反応を誘導することができ、固体内の抗炎症性サイトカインの生成を促進して炎症反応を減少させ、また、固体内のトキソプラズマ原虫嚢胞の大きさ及び数を著しく減少させ、固体の生存率及び体重の維持に寄与することで、上記固体を効果的に保護することができる。
【0030】
本発明の効果は、上記の効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または請求の範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】M1とIMC、ROP18、MIC8を同時発現するTG146 VLP、及びM1とIMC(TG1)を含むVLP(TG1 VLP)、M1とROP18(TG4)を含むVLP(TG4 VLP)、M1とMIC8(TG6)を含むVLP(TG6 VLP)を1:1:1の割合で組み合わせたTG1/TG4/TG6 VLPの概略図及びこれをウェスタンブロットで分析した結果を示す図である:(A)TG146 VLPの概略図;(B)TG1/TG4/TG6 VLPの概略図;(C)TG146 VLPのウェスタンブロットの結果;(D)TG1/TG4/TG6 VLPのウェスタンブロットの結果。
【
図2】TG1 VLP、TG4 VLP、TG6 VLP、及びTG146 VLPを透過電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を示す図である:(A)TG1 VLP;(B)TG4 VLP;(C)TG6 VLP;(D)TG146 VLP。
【
図3】陰性対照群(Naive)、TG1/TG4/TG6 VLPを注入した群(TG1/TG4/TG6)、TG146 VLPを注入した群(TG146)の1次(prime)及び2次(boost)免疫化の後、血清内トキソプラズマ原虫-特異的抗体反応のレベルと各群の寄生虫中和活性のレベルを示す図である:(A)1次免疫化後IgGレベル;(B)2次免疫化後IgGレベル;(C)寄生虫中和活性。
【
図4】陰性対照群(Naive)、陽性対照群(Naive+Cha)、TG1/TG4/TG6 VLPを注入した群(TG1/TG4/TG6+Cha)、TG146 VLPを注入した群(TG146+Cha)のチャレンジ感染後のマウスの脾臓細胞からのT細胞(CD4
+及びCD8
+)の分布をフローサイトメトリー分析で分析した結果を示す図である。
【
図5】陰性対照群(Naive)、陽性対照群(Naive+Cha)、TG1/TG4/TG6 VLPを注入した群(TG1/TG4/TG6+Cha)、TG146 VLPを注入した群(TG146+Cha)のチャレンジ感染後のマウスの脾臓細胞からの胚中心B細胞(GC)の分布をフローサイトメトリー分析で分析した結果を示す図である。
【
図6】陰性対照群(Naive)、陽性対照群(Naive+Cha)、TG1/TG4/TG6 VLPを注入した群(TG1/TG4/TG6+Cha)、TG146 VLPを注入した群(TG146+Cha)のチャレンジ感染後のマウスの脾臓からアポトーシス(apoptosis)反応レベルを確認した結果を示す図である。
【
図7】陽性対照群(Naive+Cha)、TG1/TG4/TG6 VLPを注入した群(TG1/TG4/TG6+Cha)及びTG146 VLPを注入した群(TG146+Cha)のチャレンジ感染後の体重変化及び生存率をモニタリングした結果及び寄生虫複製の抑制レベルを示す図である:(A)生存率;(B)体重の変化;(C)寄生虫複製の抑制レベル。
【
図8】トキソプラズマ原虫VLPとCpGの併用投与に関する1回免疫化の動物実験の概略図である。
【
図9】1回免疫化の動物実験時の陰性対照群(Naive)、TG146 VLPをIM経路で注入した群(TG146 VLPs(IM))、TG146 VLPをIN経路で注入した群(TG146 VLPs(IN))、TG146 VLP及びCpGをIM経路で共に注入した群(TG146 VLPs+CpG(IM))、TG146 VLP及びCpGをIN経路で共に注入した群(TG146 VLPs+CpG(IN))の免疫化の1週間後(week 1)、免疫化の4週間後(week 4)、及びチャレンジ感染後の血清内のトキソプラズマ原虫-特異的IgG及びIgAのレベルを示す図である。
【
図10】1回免疫化の動物実験時の各群のチャレンジ感染後の脾臓及び腸間膜リンパ節(mesenteric lymph node;MLN)のフローサイトメトリー分析の結果を示す図である。
【
図11】1回免疫化の動物実験時の各群のチャレンジ感染後の炎症性サイトカインのレベルを示す図である。
【
図12】1回免疫化の動物実験時の各群のチャレンジ感染後の脳組織の嚢胞の大きさ及び数を示す図である。
【
図13】1回免疫化の動物実験時の各群のチャレンジ感染後の体重の変化及び生存率をモニタリングした結果を示す図である。
【
図14】トキソプラズマ原虫VLPとCpGの併用投与に関する2回免疫化の動物実験の概略図である。
【
図15】2回免疫化の動物実験時の陰性対照群(Naive)、TG146 VLPをIM経路で注入した群(TG146 VLPs(IM))、TG146 VLPをIN経路で注入した群(TG146 VLPs(IN))、TG146 VLP及びCpGをIM経路で共に注入した群(TG146 VLPs+CpG(IM))、TG146 VLP及びCpGをIN経路で共に注入した群(TG146 VLPs+CpG(IN))の1次(prime)免疫化、2次(boost)免疫化及びチャレンジ感染後の血清内のトキソプラズマ原虫-特異的IgG及びIgAのレベルを示す図である。
【
図16】2回免疫化の動物実験時の各群のチャレンジ感染後の脾臓及び腸間膜リンパ節(MLN)のフローサイトメトリー分析の結果を示す図である。
【
図17】2回免疫化の動物実験時の各群のチャレンジ感染後の炎症性サイトカインのレベルを示す図である。
【
図18】2回免疫化の動物実験時の各群のチャレンジ感染後の脳組織の嚢胞の大きさ及び数を示す図である。
【
図19】2回免疫化の動物実験時の各群のチャレンジ感染後の体重の変化及び生存率をモニタリングした結果を示す図である。
【
図20】トキソプラズマ原虫VLPとCpGの併用投与に関する3回免疫化の動物実験の概略図である。
【
図21】3回免疫化の動物実験時の陰性対照群(Naive)、TG146 VLPをIM経路で注入した群(TG146 VLPs(IM))、TG146 VLPをIN経路で注入した群(TG146 VLPs(IN))、TG146 VLP及びCpGをIM経路で共に注入した群(TG146 VLPs+CpG(IM))、TG146 VLP及びCpGをIN経路で共に注入した群(TG146 VLPs+CpG(IN))の1次免疫化、2次免疫化、3次免疫化及びチャレンジ感染後の血清内のトキソプラズマ原虫-特異的IgG及びIgAのレベルを示す図である。
【
図22】3回免疫化の動物実験時の各群のチャレンジ感染後の脾臓及び腸間膜リンパ節(MLN)のフローサイトメトリー分析の結果を示す図である。
【
図23】3回免疫化の動物実験時の各群のチャレンジ感染後の炎症性サイトカインのレベルを示す図である。
【
図24】3回免疫化の動物実験時の各群のチャレンジ感染後の脳組織の嚢胞の大きさ及び数を示す図である。
【
図25】3回免疫化の動物実験時の各群のチャレンジ感染後の体重の変化及び生存率をモニタリングした結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、添付した図面を参照して、本発明を説明することにする。しかし、本発明は、多様な異なる形態で具現化してもよく、したがって、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。
【0033】
或る部分が何らかの構成要素を「含む」というとき、それを否定する別の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに備え得ることを意味する。
【0034】
別に定義されていなければ、分子生物学、微生物学、タンパク質精製、タンパク質工学、及びDNA配列分析及び当業者の能力の範囲内で組換えDNAの分野において一般的に使用される通常の技術によって行われ得る。上記の技術は、当業者に知られており、多くの標準化された教材及び参考著書に記述されている。
【0035】
本明細書に別に定義されていなければ、使用されているすべての技術及び科学用語は、当業界に通常の技術者が通常理解しているような意味を持つ。
【0036】
本明細書に含まれる用語を含む多様な科学的辞典がよく知られており、当業界において利用可能である。本明細書に説明されているものに類似、または等価である任意の方法及び物質が、本願の実行または試験に使用されていると発見されるものの、いくつかの方法及び物質が記載されている。当業者が使用する脈絡に沿って、多様に使用することができるため、特定の方法論、プロトコル、及び試薬で本発明が制限されるものではない。
【0037】
本明細書で使用されているように、単数形は、文脈が明確に、特に指示しなければ、複数の対象を含む。また、別の指示がなければ、核酸はそれぞれ左から右に、5’から3’方向に書かれ、アミノ酸配列は左から右に、アミノからカルボキシル方向に書かれる。
【0038】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0039】
本発明の一側面によると、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1);及びトキソプラズマ原虫由来の内膜複合体タンパク質(IMC)、ロプトリータンパク質18(ROP18)及びミクロネームタンパク質8(MIC8)を含む表面抗原タンパク質を含むウイルス様粒子が提供される。
【0040】
本発明の「ウイルス様粒子(VLP)」は、ウイルス性タンパク質を伴うか、伴わない非感染性のウイルス性サブユニットを意味する。例えば、上記ウイルス様粒子は、DNAまたはRNAゲノムが完全に欠如し得る。特に、本発明の一実施形態によるウイルス様粒子は、遺伝工学的な方法によって製造されることができ、構造タンパク質(core protein)としてインフルエンザウイルス由来のマトリックスタンパク質1(M1)を含んでもよい。本発明のウイルス様粒子は、別の原因感染体、すなわちトキソプラズマ原虫がなくても、遺伝工学的な方法によって製造されることができるため、高い生産性及び経済性を具現することができる。
【0041】
本発明の「インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)」は、インフルエンザウイルスの構造タンパク質として、インフルエンザウイルスの外皮(envelop)である脂肪層の内側にコート(coat)を形成する基質タンパク質(matrix protein)を意味する。上記インフルエンザウイルスは、A、B及びCと命名されたサブタイプで構成される。上記インフルエンザウイルスは、コアと、ウイルスの外皮との間の連結体として作用するマトリックスタンパク質1(M1)の層で取り囲まれて外形をなし、上記M1タンパク質は、インフルエンザウイルス様粒子の開発において、構造タンパク質として広く使用されることができる。
【0042】
本発明のウイルス様粒子は、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)を構造タンパク質として含んでもよく、上記インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)の表面には、トキソプラズマ原虫に由来した1つ以上の表面抗原タンパク質を含んでもよい。
【0043】
本発明のウイルス様粒子は、表面にトキソプラズマ原虫に由来した表面抗原タンパク質を含んでいるため、特定の固体に取り込まれたとき、トキソプラズマ原虫に特異的な免疫反応を誘導することができる。したがって、本発明のウイルス様粒子は、上記固体にトキソプラズマ原虫に対する免疫力を付与することができる。
【0044】
本発明のウイルス様粒子は、当該技術分野で広く知られている方法により製造され得る。例えば、本発明のウイルス様粒子は構造タンパク質及び表面抗原タンパク質をコーディングする組換えDNA分子を用いて、所定の宿主細胞を形質転換させた後、培養して製造されることができ、細胞内で発現されたタンパク質が細胞表面で組み立てられた後、培養上清液に排出され得る。本発明のウイルス様粒子は、固体内で抗原として作用し、樹状細胞(dendritic cells)のような抗原提示細胞との反応を通じて、TまたはB免疫細胞に抗原を提示し得る。
【0045】
本発明のウイルス様粒子は、トキソプラズマ原虫に由来した表面抗原タンパク質を含んでいるものの、その他の遺伝物質は含まないため、増殖が不可能で毒性がなく安全であることから、トキソプラズマ原虫に対するワクチンとして使用され得る。本発明のウイルス様粒子の表面に導入された抗原タンパク質は、純粋に分離された組換えタンパク質に比べて高い抗原性を有し、効果的な中和抗体を形成し得る。
【0046】
本発明の「表面抗原タンパク質」は、それぞれの抗体またはT細胞受容体による認識の基本要素または最小単位であり、上記抗体またはT細胞受容体が結合する特定のドメイン、領域または分子構造を意味する。本発明の表面抗原タンパク質は、トキソプラズマ原虫に由来することができ、トキソプラズマ原虫に対する免疫活性を誘導することができれば、特に制限されない。
【0047】
一実施形態において、本発明の表面抗原タンパク質は、トキソプラズマ原虫に由来したSAG1(Membrane-associated surface antigen)、SAG2、GRA1(secreted dense-granule protein)、GRA2、GRA4、GRA7、MIC1(Microneme protein)、MIC2、MIC4、MIC6、MIC7、MIC8、MIC9、MIC10、MIC11、ROP1、ROP2、ROP3、ROP4、ROP5、ROP6、ROP7、ROP8、ROP9、ROP10、ROP11、ROP12、ROP13、ROP14、ROP15、ROP16、ROP17、ROP18、M2AP(MIC2 associated protein)、AMA1(Plasmodium apical membrane antigen 1)及びBAG1など多様な種類のタンパク質を含んでもよく、好ましくは内膜IMC、ROP18及びMIC8を同時に含んでもよい。
【0048】
本発明の「内膜複合体タンパク質(Inner membrane complex)」は、原形質膜の基底をなす平坦化肺胞を構成する表面膜システムとして、細胞骨格ネットワークと連結している。
【0049】
本発明の内膜複合体タンパク質は、寄生体複製、細胞運動、及び宿主細胞への侵入において重要な役割を果たす。上記内膜複合体タンパク質は、トキソプラズマ原虫内で新規細胞の形成に関与し、複製された染色質及び細胞器官は、細胞分裂の過程として、骨格の組み立てと密接に関連する(Sheffield and Melton、1968)。
【0050】
本発明の「ロプトリータンパク質18(Rhoptry protein 18)」は、活性寄生虫の宿主細胞内への侵入に関与するトキソプラズマ原虫由来のロプトリータンパク質の一種類として、トキソプラズマ原虫の宿主細胞への寄生に必須的なタンパク質であり、細胞に対する認識、侵入、及び遺伝的破壊に基づくビルレンス(virulence)と密接に関係する。上記ロプトリータンパク質は、多様な種類が知られており、トキソプラズマ原虫に対する宿主細胞の効果的な免疫反応を誘導する潜在的な抗原標的であってもよい。
【0051】
本発明の「ミクロネームタンパク質8(Microneme protein 8)」は、トキソプラズマ原虫の宿主細胞寄生に必須的なタンパク質であり、細胞に対する認識、侵入、及び遺伝的破壊に基づくビルレンス(virulence)と密接に関係する。上記ミクロネームタンパク質は、多様な種類が知られており、トキソプラズマ原虫に対する宿主細胞の効果的な免疫反応を誘導する潜在的な抗原標的として研究されたことがある。
【0052】
特に、本発明者らは内膜複合体タンパク質(IMC)、ロプトリータンパク質18(ROP18)及びミクロネームタンパク質8(MIC8)を同時発現するウイルス様粒子ワクチンが感染による炎症性サイトカインの生成を抑制し、マウスの体内寄生虫の生成を抑制するのみならず、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)と融合した形態として固体内に取り込まれるとき、トキソプラズマ原虫に対する高いレベルの免疫性を提供し得ることを確認した。
【0053】
具体的には、内膜複合体タンパク質(IMC)、ロプトリータンパク質18(ROP18)またはミクロネームタンパク質8(MIC8)を単独で発現するウイルス様粒子ワクチンに比べて、内膜複合体タンパク質(IMC)、ロプトリータンパク質18(ROP18)及びミクロネームタンパク質8(MIC8)を同時発現するウイルス様粒子ワクチンは免疫化後、対象者におけるトキソプラズマ原虫-特異的抗体反応のレベル、T細胞及びB細胞反応のレベル及び対象者の生存率をさらに上昇させることができ、対象者の体重減少率及び寄生虫負荷(parasite burden)をさらに低下させ得る。
【0054】
一実施形態において、本発明のインフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)は、配列番号1のアミノ酸配列で構成されることができ、内膜複合体タンパク質(IMC)は、配列番号2のアミノ酸配列で構成されることができ、ロプトリータンパク質18(ROP18)は配列番号3のアミノ酸配列で構成されることができ、ミクロネームタンパク質8(MIC 8)は、配列番号4のアミノ酸配列で構成されることができる。
【0055】
本発明の配列番号1ないし4は、公知の配列であり、下記の通りに表示される。
【0056】
<配列番号1>インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)のアミノ酸配列(GenBank Accession No. ABO21712.1)
【0057】
<配列番号2>内膜複合体タンパク質(IMC)のアミノ酸配列(GenBank Accession No. ADV15617)
【0058】
<配列番号3>ロプトリータンパク質ROP18のアミノ酸配列(GenBank Accession No. CAJ27113)
【0059】
<配列番号4>ミクロネームタンパク質8(MIC 8)のアミノ酸配列(GenBank Accession No. AAK19757)
【0060】
また、本発明のインフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)は、配列番号5の核酸配列によってコーディングされることができ、内膜複合体タンパク質(IMC)は、配列番号6の核酸配列によってコーディングされることができ、ロプトリータンパク質18(ROP18)は、配列番号7の核酸配列によってコーディングされることができ、ミクロネームタンパク質8(MIC8)は、配列番号8の核酸配列によってコーディングされることができる。
【0061】
本発明の配列番号5ないし8は、公知の配列であり、下記の通りに表示される。
【0062】
<配列番号5>インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)をコーディングする核酸配列(GenBank Accession No. EF467824)
【0063】
<配列番号6>内膜複合体タンパク質(IMC)をコーディングする核酸配列(GenBank Accession No. HQ012579)
【0064】
<配列番号7>ロプトリータンパク質ROP18をコーディングする核酸配列(GenBank Accession No. AM075204)
【0065】
<配列番号8>ミクロネームタンパク質8(MIC 8)をコーディングする核酸配列(GenBank Accession No. AF353165)
【0066】
本発明のインフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1);内膜複合体タンパク質(IMC)、ロプトリータンパク質18(ROP18)またはミクロネームタンパク質8(MIC8)は、それぞれ上記配列番号1ないし4のアミノ酸配列で構成されたタンパク質の機能的同等物を含む。
【0067】
上記「機能的同等物」は、アミノ酸の付加、置換または欠失の結果、配列番号1ないし4のアミノ酸配列と少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列相同性を有するもので、配列番号1ないし4のアミノ酸配列と実質的に同質の生理活性を有するタンパク質を意味する。
【0068】
上記「実質的に同質の生理活性」は、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1);内膜複合体タンパク質(IMC)、ロプトリータンパク質18(ROP18)またはミクロネームタンパク質8(MIC8)との構造的、機能的相同性により、トキソプラズマ原虫に対する特異的な免疫反応を誘導し得るウイルス様粒子としての活性を意味する。
【0069】
本発明の他の側面によると、本発明のウイルス様粒子を有効成分として含むトキソプラズマ原虫感染症の予防または治療用の薬学的組成物が提供される。
【0070】
上記トキソプラズマ原虫感染症は、トキソプラズマ原虫の感染によって起り得るすべての疾患及び症状を含む。トキソプラズマ原虫は、体内の多様な部位、例えばリンパ腺、脳、肺、心筋、脾臓、骨髄、腎臓、副腎、神経系などに寄生することができ、 タキゾイト(tachyzoite)は細網内皮系と循環系内皮細胞の中で活発に分裂及び増殖して組職を壊死させ得る。また、感染部位に応じて、多様な疾病及び症状を引き起こし得るが、例えば、リンパ腺炎、脈絡網膜炎、髄膜炎、脳脊髄炎、肝炎、筋肉炎、心筋炎、肺炎、細尿管疾患などを含み得る、これに限定されるものではない。
【0071】
本発明の薬学的組成物は、本発明のウイルス様粒子を有効成分として含む。例えば、本発明の薬学的組成物は、形質転換宿主細胞そのもの、または形質転換細胞の乾燥粉末の形態、その培養液またはその濃縮液など、ウイルス様粒子の分離精製された多様な形態で使用されてもよい。
【0072】
上記薬学的組成物は、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リポソーム、イスコム(iscom)補助剤、合成グリコペプチド、カルボキシポリメチレン、細菌細胞壁、細菌細胞壁の誘導体、細菌ワクチン、動物ポックスウイルスタンパク質、ウイルス一部(subviral)粒子補助剤、コレラ毒素、N、N-ジオクタデシル-N’、N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-プロパンジアミン、モノホスホリル脂質A、ジメチルジオクタデシル-アンモニウムブロマイド及びその混合物からなる群から選択された1つ以上の第2補助剤をさらに含んでもよい。
【0073】
また、本発明の薬学的組成物は、医学的に許容可能な担体を含み得る。上記「医学的に許容可能な担体」は、任意の、及びすべての溶媒、分散媒質、コーティング剤、抗原補強剤、安定剤、希釈剤、保存剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張性作用剤、吸着遅延剤などを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0074】
上記薬学的組成物に含まれ得る担体、賦形剤、希釈剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、カルシウムホスフェイト、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート、及び鉱物油などを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0075】
また、本発明の薬学的組成物は、本発明が属する技術分野で通常的に用いられる方法で製造し得る。本発明の薬学的組成物は、経口型または非経口型製剤で製造することができ、好ましくは、非経口型製剤の注射液剤で製造し、真皮内、筋肉内、腹膜内、静脈内、皮下内、鼻腔内、または硬膜外(eidural)経路で投与してもよい。好ましくは、本発明の薬学的組成物は、対象者に、筋肉内または鼻腔内投与される。さらに好ましくは、本発明の薬学的組成物は、対象者に鼻腔内投与される。
【0076】
具体的には、本発明の薬学的組成物を鼻腔内投与時、投与後の対象者の脾臓及び腸間膜リンパ節(MLN)内T細胞及びB細胞反応のレベルをさらに上昇させることができ、炎症性サイトカインのレベル、脳内嚢胞の大きさと数、対象者の体重減少率をさらに低下させ得る。
【0077】
具体的には、本発明の薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形及び滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用してもよい。
【0078】
製剤化する場合には、通常的に使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤が共に使用されてもよい。
【0079】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどと共に使用され得る。また、上記賦形剤の以外に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤が使用されてもよい。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが使用されてもよく、通常的に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に多様な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが使用されてもよい。
【0080】
非経口投与のための製剤としては、滅菌した水溶液、非水溶性剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤が使用され得る。非水溶性製剤、懸濁剤は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されてもよい。
【0081】
本発明の薬学的組成物は、免疫学的有効量で対象者に投与し得る。上記「免疫学的有効量」とは、トキソプラズマ原虫感染症の予防または治療効果を示し得る程度の十分な量と、副作用や深刻なまたは過度な免疫反応を起こさない程度の量を意味し、正確な投与濃度は、投与される特定の免疫原によって異なり、予防接種対象者の年齢、体重、健康、性別、対象者の薬物に対する敏感度、投与経路、投与方法など医学分野でよく知られている要素に応じて、当業者によって容易に決定されてもよいが、例えば、1日0.0001ないし50mg/kgまたは0.001ないし50mg/kgで投与してもよい。投与は、一日に一回投与することもでき、数回に分けて投与することもできる。上記投与量は、いかなる面でも、本発明の範囲を限定するものではない。
【0082】
本発明の薬学的組成物は、対象者にワクチン組成物で投与される場合、1回ないし3回、好ましくは2回ないし3回、さらに好ましくは3回投与されてもよい。本発明の薬学的組成物の投与回数が増加するほど、抗体反応のレベルをさらに上昇させることができ、炎症性サイトカインのレベル及び脳内嚢胞数をさらに低下させ得る。
【0083】
また、本発明の薬学的組成物は、ウイルス様粒子の免疫活性を増強させることできる追加のアジュバントを含むか、追加のアジュバントと同時または順次的に対象者に併用投与してもよい。本発明のウイルス様粒子と共に使用可能なアジュバントは、当業界でワクチン組成物の免疫性向上のために使用される通常のアジュバントであることができ、例えば、シトシン-ホスホロチオエート-グアニン(CpG)、フラジェリン(Flagellin)、水酸化アルミニウム(Aluminium Hydroxide)、モノホスホリル脂質A(Monophosphoryl Lipid A)、グルコピラノシル脂質A(glucopyranosyl lipid A)、コレラトキシン(Cholera toxin)、QS21(Quillaja saponaria)などを含む。好ましくは、上記アジュバントは、シトシン-ホスホロチオエート-グアニン(CpG)を含む。
【0084】
具体的には、本発明の薬学的組成物をシトシン-ホスホロチオエート-グアニン(CpG)と共に投与時、投与後の対象者内トキソプラズマ原虫-特異的抗体反応のレベル、及びT細胞及びB細胞反応のレベルを著しく上昇させることができ、炎症性サイトカインのレベル、脳内の嚢胞の大きさと数、対象者の体重減少率を大きく低下させ得る。
【0085】
本発明の他の側面によると、トキソプラズマ原虫感染症の予防または治療に使用されるための上記ウイルス様粒子の用途及び上記疾患治療剤の製造のための上記ウイルス様粒子の用途が提供される。
【0086】
具体的には、本発明は、トキソプラズマ原虫感染症の予防または治療用途で使用するための、上記ウイルス様粒子を含む組成物に関する。
【0087】
本発明は、さらに、トキソプラズマ原虫感染症の予防または治療用薬剤を製造するための、上記ウイルス様粒子を含む組成物の用途に関する。
【0088】
本発明の他の側面によると、上記ウイルス様粒子を対象者に免疫学的有効量で投与する段階を含むトキソプラズマ原虫感染症の予防または治療方法を提供する。
【0089】
具体的には、本発明は、上記ウイルス様粒子をトキソプラズマ原虫感染症の予防または治療が要求される対象者に免疫学的有効量で投与する段階を含むトキソプラズマ原虫感染症の予防または治療方法に関する。
【0090】
本発明の他の側面によると、インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)をコーディングする核酸配列;内膜複合体タンパク質(IMC)をコーディングする核酸配列;ロプトリータンパク質18(ROP18)をコーディングする核酸配列;及びミクロネームタンパク質8(MIC8)をコーディングする核酸配列を含むウイルス様粒子の製造用発現ベクターが提供される。
【0091】
本発明の発現ベクターは、連結されている核酸断片を運搬するのに用いられる核酸分子を意味する。本発明の発現ベクターは、バクテリア、プラスミド、ファージ、コスミド、エピソーム、ウイルス及び挿入可能なDNA断片(すなわち、相同組換えによって宿主細胞のゲノムの中へ挿入可能な断片)が使用されてもよいが、これに限定されるものではない。上記プラスミドは、ベクターの一種として、内部にさらにDNA断片を連結させ得る環型の二本鎖DNAループを意味する。また、ウイルスベクターは、さらなるDNAをウイルスゲノムの中に連結させ得る。
【0092】
本発明の発現ベクターは、動作可能に連結された目的タンパク質を、コーディングする遺伝子の発現を指示することができるベクターを意味する。一般的に、組換えDNA技術の使用において発現ベクターはプラスミド形態であるため、プラスミド及びベクターという用語が相互交換的に使用され得る。しかし、ウイルスベクターのように同一の機能を果たす別の形態の発現ベクターも含み得る。
【0093】
例えば、上記発現ベクターは、pET-3a-d、pET-9a-d、pET-11a-d、pET-12a-c、pET-14b、pET-15b、pET-16b、pET-17b、pET-17xb、pET-19b、pET-20b(+)、pET-21a-d(+)、pET-22b(+)、pET-23a-d(+)、pET-24a-d(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a-c(+)、pET-29a-c(+)、pET-30a-c(+)、pET-30 Ek/LIC、pET-30 Xa/LIC、pET-31b(+)、pET-32a-c(+)、pET-32 Ek/LIC、pET-32 Xa/LIC、pET-33b(+)、pET-34b(+)、pET-35b(+)、pET-36b(+)、pET-37b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a-c(+)、pET-41 Ek/LIC、pET-42a-c(+)、pET-43.1a-c(+)、pET-43.1 Ek/LIC、pET-44a-c(+)、pRSETA、pRSETB、pRSETC、pESC-HIS、pESC-LEU、pESC-TRP、pESC-URA、Gateway pYES-DEST52、pAO815、pGAPZ A、pGAPZ B、pGAPZ C、pGAPα A、pGAPα B、pGAPα C、pPIC3.5K、pPIC6 A、pPIC6 B、pPIC6 C、pPIC6α A、pPIC6α B、pPIC6α C、pPIC9K、pYC2/CT、pYD1 Yeast Display Vector、pYES2、pYES2/CT、pYES2/NT A、pYES2/NT B、pYES2/NT C、pYES2/CT、pYES2.1、pYES-DEST52、pTEF1/Zeo、pFLD1、PichiaPinkTM、p427-TEF、p417-CYC、pGAL-MF、p427-TEF、p417-CYC、PTEF-MF、pBY011、pSGP47、pSGP46、pSGP36、pSGP40、ZM552、pAG303GAL-ccdB、pAG414GALccdB、pAS404、pBridge、pGAD-GH、pGAD T7、pGBK T7、pHIS-2、pOBD2、pRS408、pRS410、pRS418、pRS420、pRS428、yeast micron A form、pRS403、pRS404、pRS405、pRS406、pYJ403、pYJ404、pYJ405またはpYJ406であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0094】
一方、本発明の発現ベクターは、宿主細胞内に導入され、上記導入されたベクターにより形質転換された宿主細胞は、上記ウイルス様粒子を生産し得る。このとき、上記ベクターは、宿主生物体によって認識されるプロモーターを含み得る。
【0095】
上記プロモーターはSBE4、3TP、PAI-1、p15、p21、CAGA12、hINS、A3、NFAT、NFKB、AP1、IFNG、IL4、IL17A、IL10、GPD、TEF、ADH、CYC、INU1、PGK1、PHO5、TRP1、GAL1、GAL10、GUT2、tac、T7、T5、nmt、fbp1、AOX1、AOX2、MOX1及びFMD1プロモーターからなる群から選択されてもよいが、宿主細胞または発現条件など、多様な変数を考慮して変えてもよい。
【0096】
本発明のウイルス様粒子をコーディングする核酸配列は、上記プロモーター配列と動作可能に連結(operably linked)され得る。上記「動作可能に連結される(operably linked)」は、一つの核酸断片が別の核酸断片と結合してその機能または発現が別の核酸断片によって影響を受けることを意味する。すなわち、本発明のウイルス様粒子をコーディングする遺伝子は、ベクター内にあるプロモーターと作動可能に連結されて発現が調節され得る。
【0097】
一方、本発明の発現ベクターは、さらなる調節配列をさらに含んでもよい。上記調節配列は、ファージMS-2のレプリカーゼ遺伝子のシャイン-ダルガーノ配列及びバクテリオファージλのcIIのシャイン-ダルガーノ配列であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0098】
また、本発明の発現ベクターは、形質転換された宿主細胞を選別するのに必要な適切なマーカー遺伝子を含んでもよい。上記マーカー遺伝子は、抗生剤抵抗性遺伝子または蛍光タンパク質遺伝子であってもよく、上記抗生剤抵抗性遺伝子は、ヒグロマイシン抵抗性遺伝子、カナマイシン抵抗性遺伝子、クロラムフェニコール抵抗性遺伝子及びテトラサイクリン抵抗性遺伝子からなる群から選択されてもよいが、これに限定されるものではない。上記蛍光タンパク質遺伝子は、酵母-強化緑色蛍光タンパク質(yeast-enhanced green fluorescent protein;yEGFP)遺伝子、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein;GFP)遺伝子、青色蛍光タンパク質(blue fluorescent protein;BFP)遺伝子、及び赤色蛍光タンパク質(red fluorescent protein;RFP)遺伝子からなる群から選択されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0099】
本発明の他の側面によると、本発明の発現ベクターによって形質転換された宿主細胞が提供される。本発明の宿主細胞は、ウイルスによって感染されることができ、ウイルス様粒子によって免疫されることできるすべての有機体を意味する。本発明の宿主細胞は、形質転換によって代謝操作されてもよい。
【0100】
一実施形態において、本発明の宿主細胞は、微生物、動物細胞、植物細胞、動物に由来した培養細胞、または植物に由来した培養細胞であってもよい。上記適切な宿主細胞は、自然に発生するか、または野生型宿主細胞(wild-type host cell)であってもよく、または変化した宿主細胞であってもよい。上記野生型宿主細胞は、組換え方法によって遺伝的に変化されていない宿主細胞であってもよい。
【0101】
本発明の宿主細胞は、工学的方法によって形質転換されて特定の遺伝子を効率的に発現することができれば、その種類は特に制限されず、好ましくは昆虫細胞であってもよい。上記昆虫細胞としては、遺伝子発現のための宿主システムとして開発されたか、または市販されているすべての細胞が使用されてもよく、例えば、スポドプテラ・フルギペルダ昆虫細胞(Spodoptera frugiperda)SF21、SF9、トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)、アンティカーサ・ゲムミタリス(Anticarsa gemmitalis)、ボンビクス・モリ(Bombyx mori)、エスティグメネ・アクレア(Estigmene acrea)、ヘリオティス・ビレッセンス(Heliothis virescens)、ロイカニア・セパラタ(Leucania separata)、リマントリア・ディスパール(Lymantria dispar)、マラカソマ・ディスストリア(Malacasoma disstria)、マメストラ・ブラシカエ(Mammestra brassicae)、マンドゥカ・セクスタ(Manduca sexta)、プルテラ・ジロステラ(Plutella zylostella)、スポドプテラ・エクシグア(Spodoptera exigua)及びスポドプテラ・リトラリス(Spodoptera littorlis)からなる群から1つ以上選択されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0102】
上記「代謝操作された(metabolically engineered)」または「代謝操作(metabolic engineering)」は、微生物において、アルコールまたはタンパク質のような目的とする代謝産物の生産のために、生合成遺伝子、オペロンに関連する遺伝子、及びこれらの核酸配列の制御要因(control elements)の合理的な経路のデザインとアセンブリを伴ってもよい。
【0103】
上記「代謝操作された」は、遺伝子操作と適切な培養条件を用いた転写(transcription)、翻訳(translation)、タンパク質の安定性(protein stability)とタンパク質の機能性(protein functionality)の調節と最適化による代謝の流れ(metabolic flux)の最適化をさらに含んでもよい。
【0104】
生合成遺伝子は、宿主に外来性であるか、突然変異誘発(mutagenesis)、組換え(recombination)または内因性宿主細胞で異種発現制御配列との関連により変形されることで、宿主(例えば、微生物)に異種性であってもよい。適切な培養条件は、培養培地pH、イオン強度、栄養含量などの条件、温度、酸素、二酸化炭素、窒素含量、湿度、及び上記微生物の物質代謝作用による化合物の生産を可能にする、その他の培養条件を含んでもよい。宿主細胞として機能し得る微生物に適合した培養条件は、当該技術分野で広く知られている。
【0105】
したがって、上記「代謝操作された(engineered)」または「変形された(modified)」宿主細胞は遺伝物質を選択された宿主または親微生物内に導入して、細胞の生理と生化学を変形または変更することにより、生産することができる。遺伝物質の導入を通じて、親微生物は、新しい性質、例えば、新しい細胞内代謝産物またはより多い量の細胞内代謝産物を生産する能力を獲得することができる。
【0106】
例えば、遺伝物質の親微生物内への導入は、化学物質を生産する新規または変形された能力をもたらし得る。親微生物に導入された遺伝物質は、化学物質の生産のための生合成経路に関与する1つ以上の酵素をコーディングする遺伝子または遺伝子の一部を含み、これらの遺伝子の発現または発現調節のための追加的な構成要素、例えば、プロモーター配列を含むこともできる。
【0107】
上記「変化された宿主細胞(altered host cell)」は、遺伝的に設計された宿主細胞を意味し、ここで目的タンパク質は、発現のレベルで生成されるか発現のレベルよりさらに大きいレベルで生成されるか、本質的に同一の成長条件の下で成長する未変化の、または野生型宿主細胞内における目的タンパク質の発現のレベルより大きい発現のレベルで発現され得る。上記「変形された宿主細胞(modified host cell)」は、目的タンパク質をコーディングする遺伝子を過剰発現するように遺伝的に設計された野生型または変化された宿主細胞を意味する。上記変形された宿主細胞は、野生型または変化された親宿主細胞より、さらに高いレベルで目的タンパク質を発現し得る。
【0108】
一方、上記「形質転換」は、上記ベクターを微生物または特定細胞内へ運搬する方法を意味し、形質転換しようとする細胞が原核細胞である場合には、CaCl2方法(Cohen、S.N. et al.、Proc.Natl. Acac.Sci.USA、9:2110-2114(1973))、ハナハン法(Cohen、S.N. et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、9:2110-2114(1973);及びHanahan、D、.、J. Mol.Biol.、166:557-580(1983))、及びエレクトロポレーション(Dower、W.J. et al.、Nucleic.Acids Res.、16:6127-6145(1988))などにより実施され得る。
【0109】
形質転換しようとする細胞が真核細胞である場合には、微細注入法(Capecchi、M.R.、Cell、22:479(1980))、カルシウムホスフェイト沈殿法(Graham、F.L. et al.、Virology、52:456(1973))、エレクトロポレーション(Neumann、E. et al.、EMBO J.、1:841(1982))、リポソーム-媒介形質感染法(Wong、T.K. et al.、Gene、10:87(1980))、DEAE-デキストラン処理法(Gopal、Mol.Cell.Biol.、5:1188-1190(1985))、及び遺伝子ボンバードメント(Yang et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.、87:9568-9572(1990))などを用いて実施してもよいが、これに限定されるものではない。
【0110】
酵母のような真菌の形質転換の場合には、一般的にリチウムアセテート(Lithium acetate、R.D. Gietz、Yeast 11、355-360(1995))、及びヒートショック(Keisuke Matsuura、Journal of Bioscience and Bioengineering、Vol.100、5;538-544(2005))を用いた形質転換法とエレクトロポレーション(Nina SkoluckaAsian、Pacific Journal of Tropical Biomedicine、94-98(2011))によって実施されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0111】
本発明の他の側面によると、本発明の発現ベクターで宿主細胞を形質転換する段階;及び上記宿主細胞を培養してウイルス様粒子を発現させる段階を含む、ウイルス様粒子の製造方法が提供される。
【0112】
本発明の形質転換された宿主細胞はバッチ、供給-バッチまたは連続発酵条件下で培養されることができ、上記宿主細胞は、形質転換により上記ウイルス様粒子を発現し得るため、上記培養された宿主細胞から、本発明のウイルス様粒子タンパク質を収得し得る。
【0113】
このとき、古典的なバッチ発酵方法は、閉鎖的なシステムを使用することができ、上記培養媒質は発酵が実行される前に製造され、上記媒質に有機体を接種し、上記媒質に如何なる成分の添加がなくても発酵が起き得る。
【0114】
特定の場合において、成長媒質の上記炭素源の内容物ではない、上記pH及び酸素含量は、バッチ方法の間変化され得る。バッチシステムの上記代謝物及び細胞バイオマスは絶えず発酵が停止されるまで変化し得る。バッチシステムで、細胞は静止された誘導期(lag phase)から高度成長の対数期(log phase )にわたって進捗し、 最終的に、成長率が減少または止まった、静止期(stationary phase)になり得る。一般的な期間において、対数期の上記細胞は大部分のタンパク質を作り得る。
【0115】
標準バッチシステムの変形は、「供給-バッチ発酵」システムである。上記システムで、栄養(例えば、炭素源、窒素源、O2、及び、通常的に、その他の栄養)は、それらの培養物の濃度が限界値未満に低下する時に添加されてもよい。
【0116】
供給-バッチシステムは、異化生成物抑制が細胞の代謝を抑制し、媒質が媒質内で栄養素を限られた量で有することが望ましい時に有用であり得る。供給-バッチシステムにおける実際の栄養濃度の測定は、pH、溶存酸素、及びCO2のような排気ガスの部分圧のような測定可能な因子の変化に基づいて予測され得る。バッチ及び供給-バッチ発酵は、一般的なシステムとして当業界に広く知られている。
【0117】
継続的発酵は定義された培養媒質が継続してバイオリアクター(bioreactor)に添加されるとともに、条件化された媒質の同一の量が過程の間、同時に除去される開放型システムである。継続的発酵は、一般に、細胞が、最初は対数期の成長にある一定の高密度の培養物を保持し得る。継続的発酵は、細胞の成長または最終生成物の濃度に影響を及ぼす一つの因子、または任意の数の因子を操作が可能である。
【0118】
例えば、炭素源または窒素源のような制限栄養素は固定された速度で、その他のすべてのパラメータは適宜に維持されてもよい。
【0119】
別のシステムにおいて、多くの成長に影響を与える因子は、培地の濁度によって測定される細胞の濃度が一定に維持される間、継続して変化してもよい。継続的システムは、一定の状態の成長条件を維持しようとする。したがって、媒質が抜けていくことによる細胞の損失は、発酵における細胞成長速度に対してバランスがとれ得る。生成物の形成の速度を最大化する技術のみならず、継続的発酵の過程の間、栄養素及び成長因子を保持する方法は、当業界に知られている。
【0120】
本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明の記載内容に基づいて、各構成の種類、導入の割合などを変化させて適用することができ、上記変形にも関わらず、同等の技術的効果が実現される場合であれば、本発明の技術的思考に含まれると言える。
【0121】
以下、実施例を通じて、本発明をさらに詳しく述べるが、下記一実施例により本発明が制限されないことは自明である。
【0122】
実施例1:組合せウイルス様粒子(TG1/TG4/TG6 VLP)の製造
本願実施例で使用されるインフルエンザウイルスマトリックスタンパク質1(M1)の遺伝子は、インフルエンザウイルスをMDCK細胞に形質感染させた後、細胞を粉砕して、ウイルスを収得し、得られたRNAをプライマーを用いてPCRを通じて増幅して得ており、トキソプラズマ原虫内膜複合体タンパク質(TG1)、トキソプラズマ原虫ロプトリータンパク質18(TG4)及びトキソプラズマ原虫ミクロネームタンパク質8(TG6)の遺伝子は、トキソプラズマ原虫のRH strainを砕いてRNAを収得した後、プライマーを用いてPCRを通じて増幅して得た。TG1 VLP、TG4 VLP及びTG6 VLPを生成するために、下記図式に示したように、これらの得られた遺伝子をpFastBacベクターにそれぞれ挿入してdh5a細胞にクローニングし、その後、得られた遺伝子をdh10bacベクターに再度クローニングした。dh10bacベクターの遺伝子を昆虫細胞であるsf9細胞に挿入して目的とする遺伝子の抗原のタンパク質を収得した。
トキソプラズマ原虫内膜複合体タンパク質(TG1)の遺伝子は、正方向プライマー(5’-AAAGAATTCACCATGGGGAACACGGCGTGCTG-3’)及び逆方向プライマー(5’-TTACTCGAGTTAGTTTCTGTCGTTGCTTGC-3’)を用いてPCRを通じて増幅した。
トキソプラズマ原虫ロプトリータンパク質18(TG4)の遺伝子は、正方向プライマー(5’-CGGGATCCATGTTTTCGGTACAGCGGCCA-3’)及び逆方向プライマー(5’-GCGTCGACTTATTCTGTGTGGAGATGTTCCTG-3’)を用いてPCRを通じて増幅した。
トキソプラズマ原虫ミクロネームタンパク質8(TG6)遺伝子は、正方向プライマー(5’-AAAGAATTCACCATGAAGGCCAATCGAATATG-3’)及び逆方向プライマー(5’-TTACTCCAGTTAGGACCAGATACCGCCCGA-3’)を用いてPCRを通じて増幅した。
インフルエンザマトリックスタンパク質1(M1)遺伝子は、正方向プライマー(5’-AAAGAATTCACCATGAGTCTTCTAACCGAGGT-3’)及び逆方向プライマー(5’-TTACTCGAGTTACTCTAGCTCTATGTTGAC-3’)を用いてRT-PCRを通じて増幅した。
【0123】
(1) TG1 VLPの製造
IMC(TG1)遺伝子を制限酵素部位(EcoR I及びXho I)を有するpFastBacベクターに、M1遺伝子を制限酵素部位(EcoR I及びXho I)を有するpFastBacベクターにそれぞれ導入し、各pFastBacベクターのIMC(TG1)またはM1遺伝子の導入の有無をEcoR I及びXho I制限酵素でカッティングして確認した。
導入された遺伝子の核酸配列は、DNA sequencing(Eurofins MWG Operon)によって公知された配列(IMC:HQ012579、M1:EF467824)と同一のものと確認された。
次いで、TG1を発現する組換えバキュロウイルス(rBV)及びM1を発現する組換えバキュロウイルス(rBV)を製造するために、各pFastBacベクターをwhite/blueスクリーニングによって形質転換させ、cellfectin II(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を使用してSF9細胞内へDNA形質感染させ、組換えバキュロウイルス(rBVs)をBac-to-Bac発現システム(Invitrogen)を通じて、製造社のマニュアルに基づいて製造した。
TG1 VLPはTG1を発現する組換えrBV及びM1を発現する組換えrBVによって共同-感染されたSF9昆虫細胞で生産された。Sf9細胞培養上清液を感染後の3日目に回収し、次いで6000rpmで30分間、4℃で遠心分離して細胞を除去した。上清液内のVLPを精製してペレット化させた。
TG1 VLPは、4℃でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で一晩の間、再懸濁されており、不連続スクロース勾配(20-30-60%)を通じて、4℃、45,000xgで1時間にわたって回収され精製された。タンパク質濃度は、QuantiPro BCA Assay Kit(Sigma-Aldrich)によって決定された。
【0124】
(2) TG4 VLPの製造
IMC(TG1)遺伝子の代わりにROP18(TG4)遺伝子を制限酵素部位(BamHI及びXbaI)を有するpFastBacベクターに導入してTG4を発現する組換えrBVを製造したこと以外は、TG1 VLPの製造方法と同一の方法でTG4を発現する組換えrBV及びM1を発現する組換えrBVによって共同-感染されたSF9昆虫細胞でTG4 VLPを製造した。このとき、pFastBacベクターのROP18(TG4)遺伝子の導入の有無をBamHI及びXbaI制限酵素でカッティングして確認した。
導入された遺伝子の核酸配列は、DNA sequencing(Eurofins MWG Operon)によって公知された配列(ROP18:AM075204、M1:EF467824)と同一のものと確認された。
【0125】
(3) TG6 VLPの製造
IMC(TG1)遺伝子の代わりにMIC8(TG6)遺伝子を制限酵素部位(EcoRI及びXhoI)を有するpFastBacベクターに導入してTG6を発現する組換えrBVを製造したこと以外は、TG1 VLPの製造方法と同一の方法でTG6を発現する組換えrBV及びM1を発現する組換えrBVによって共同-感染されたSF9昆虫細胞でTG6 VLPを製造した。このとき、pFastBacベクターのMIC8(TG6)遺伝子の導入の有無をEcoRI及びXhoI制限酵素でカッティングして確認した。
導入された遺伝子の核酸配列は、DNA sequencing(Eurofins MWG Operon)によって公知された配列(MIC8:AF353165、M1:EF467824)と同一のものと確認された。
【0126】
(4)組合せウイルス様粒子(TG1/TG4/TG6 VLP)の製造
上記のそれぞれ製造されたTG1 VLP、TG4 VLP及びTG6 VLPを1:1:1の割合で組み合わせて組合せウイルス様粒子(TG1/TG4/TG6 VLP)を生成した。
【0127】
実施例2:多重-抗原ウイルス様粒子(TG146 VLP)の製造
多重-抗原ウイルス様粒子(TG146 VLP)は、SF9昆虫細胞を、実施例1で製造されたTG1、TG4、TG6及びM1をそれぞれ発現する組換えrBVsで共同-感染させて生産した。感染されたSF9細胞培養上清液をTG1 VLPの製造方法と同一の方法で回収及びペレット化してTG1、TG4及びTG6を同時発現するTG146 VLPを製造した。
【0128】
実施例1及び2で製造されたVLPは、次の通りである。
【0129】
【0130】
実験例1:ウイルス様粒子の特性化
多重-抗原ウイルス様粒子(TG146 VLP)及び組合せウイルス様粒子(TG1/TG4/TG6 VLP)は、ウェスタンブロット及び電子顕微鏡法によって確認した。27μg、9μg、3μgの濃度のTG1 VLP、TG4 VLP、TG6 VLP及びTG146 VLPを各レーンにSDS-PAGEのためにローディングし、ウェスタンブロットで可視化した。ウェスタンブロットによりTG1、TG4、TG6及びM1タンパク質を検出するために、プローブ(probe)として、抗-トキソプラズマ原虫ポリクローナル抗体及び抗-M1モノクローナル抗体(Abcam、Cambridge、UK)を使用した。抗-トキソプラズマ原虫ポリクローナル抗体は、トキソプラズマ原虫ME49に感染したBALB/cマウスから収得した。
その結果、TG1 VLP及びTG146 VLPに含まれたTG1タンパク質(17KDa)、TG4 VLP及びTG146 VLPに含まれたTG4タンパク質(61KDa)、TG6 VLP及びTG146 VLPに含まれたTG6タンパク質(75KDa)が確認されており(
図1C)、及び各VLPに含まれたM1タンパク質(28KDa)が確認された(
図1D)。
大きさの測定のためには、TG1 VLP、TG4 VLP、TG6 VLP及びTG146 VLPを媒質染色しており、これを透過電子顕微鏡(TEM)(JEOL 2100、JEOL USA、Inc.;Peabody、MA、USA)で観察した。
電子顕微鏡により、上記各VLPの形態は、表面にスパイクが形成された形態で観察されており、大きさは約40~120nmで観察された(
図2)。
【0131】
実験例2:動物モデルにおけるトキソプラズマ原虫VLPの防御免疫試験
2-1.動物モデルの作製
7週齢のBALB/c雌マウスをランダムに別の実験グループ(グループ当たり20匹)に分け、TG146 VLPまたはTG1/TG4/TG6 VLPを投与した。0及び4週目に各グループのマウスを鼻腔内(IN)免疫化するために、60μgのTG146 VLP、及びTG1 VLP、TG4 VLP、TG6 VLPをそれぞれ20μgずつ組み合わせた総60μgのTG1/TG4/TG6 VLPを使用した。2次免疫化の4週間後、マウスをトキソプラズマ原虫(GT1)1×103タキゾイトで腹腔内(IP)注射することで、チャレンジさせた。各グループの10匹のマウスは、チャレンジ-後7日目に犠牲され、腹膜液、及び脾臓のサンプルを採取した。生きている各グループの10匹のマウスは、体重の変化及び生存率をモニタリングするために死亡するまで毎日観察した。
【0132】
2-2.トキソプラズマ原虫-特異的抗体反応及び抗体中和活性試験
1次(prime)及び2次(boost)免疫化後の4週目に、すべてのグループからマウスの血清を採取した。ナイーブマウスの血清を陰性対照群として使用し、トキソプラズマ原虫(ME49)に感染したマウスの血清を陽性対照群として使用した。トキソプラズマ原虫-特異的IgG抗体を酵素-結合免疫吸着分析法(ELISA)で分析した。平らな96―ウェル免疫プレートを4℃で一晩ウェル当たり0.05Mのカーボネート‐ビカーボネート緩衝液(pH 9.6)中、0.5μg/mLの最終濃度で100μLのトキソプラズマ原虫抗原でコーティングした。その後、ウェル当たり100μLの血清サンプル(PBST(Phosphate Buffered Saline with Tween 20)で1:100で希釈)を1次抗体反応として37℃で2時間、プレートで恒温処理した。PBST中のHRP-コンジュゲートされた塩素抗-マウスIgG(100μL/ウェル、PBSTで1:2、000で希釈)をトキソプラズマ原虫-特異的IgG反応を測定するために使用した。
一方、2次免疫化後4週目に、マウスの血清を採取し、補体を56℃で30分間不活性化させた。その後、免疫化からの血清50μLを37℃で1時間トキソプラズマ原虫(GT1)100タキゾイトと共に恒温処理した。タキゾイト及び血清の混合物を使用してナイーブマウス(各グループの10匹のマウス)を腹腔内(IP)感染させた。タキゾイト及びPBSの混合物を対照群として使用した。感染後7日目に、マウスの腹腔からトキソプラズマ原虫のタキゾイトを採取して顕微鏡下で血球系チャンバーで計数した。
その結果、
図3に示されたように、トキソプラズマ原虫-特異的IgG抗体が1次免疫化(
図3A)及び2次免疫化(
図3B)以後に誘導されたことがわかったし、特に、多重-抗原VLP(TG146)グループが組合せVLP(TG1/TG4/TG6)グループに比べて2次免疫化後トキソプラズマ原虫-特異的IgG抗体反応のレベルが有意的に高かったことがわかった(*P<0.05)。また、VLP免疫化されたマウスの血清を使用して血清中和活性を評価した結果、PBS対照群及びナイーブマウスの血清に比べて、多重-抗原VLP(TG146)及び組合せVLP(TG1/TG4/TG6)の血清のいずれもトキソプラズマ原虫(GT1)の複製を有意に抑制した(
図3C、*P<0.05)。
【0133】
2-3.免疫細胞反応試験
チャレンジ感染後7日目に、マウスの脾臓細胞からのT細胞(CD4
+及びCD8
+)及び胚中心B細胞(GC)の分布をフローサイトメトリー分析で分析した。簡単に、染色緩衝液(0.1 M PBS中2%ウシ血清アルブミン及び0.1%アジ化ナトリウム)で1×10
6の脾臓細胞(各チューブ)をFc Block(clone 2.4G2;BD Biosciences、CA、USA)と共に4℃で15分間恒温処理した。表面染色のために、細胞を表面抗体(CD3e-PE-Cy5、CD4-FITC、CD8a-PE、B220-FITC、GL7-PE;BD Biosciences、CA、USA)と共に4℃で30分間恒温処理した。脾臓細胞を染色緩衝液で洗浄し、BD Accuri C6フローサイトメーター(BD Biosciences、CA、USA)を使用して獲得前4℃で30分間、4%パラホルムアルデヒドで固定した。データをC6解析ソフトウェア(BD Biosciences、CA、USA)を使用して分析した。
その結果、
図4及び5に示されたように、チャレンジ-後7日目に、陽性対照群のマウスのグループ(Naive+Cha)に比べて、多重-抗原VLPで免疫化されたグループ(TG146+Cha)または組合せVLPで免疫化されたグループ(TG1/TG4/TG6+Cha)で有意的に高いレベルのCD4
+T細胞及びCD8
+T細胞が発見された(
図4、*P<0.05)。特に、組合せVLPで免疫化されたグループ(TG1/TG4/TG6+Cha)に比べて、多重-抗原VLPで免疫化されたグループ(TG146+Cha)で有意に高いレベルのCD4
+T細胞の反応が発見された(*P<0.05)。また、多重-抗原VLPで免疫化されたグループ(TG146+Cha)は組合せVLPで免疫化されたグループ(TG1/TG4/TG6+Cha)に比べて有意にさらに高いレベルの胚中心B細胞の反応を示した(
図5、*P<0.05)。このことから、TG1、TG4及びTG6を同時発現するウイルス様粒子ワクチンの著しく優れた免疫反応レベルを確認した。
【0134】
2-4.アポトーシス分析
脾臓細胞のアポトーシスを分析するために、アネキシンV及びPIをBDアポトーシス検出キットI(BD Biosciences、CA、USA)を使用して染色した。脾臓細胞をチャレンジ-後7日目に収集した。その後、結合緩衝液中1×10
5細胞を400×gで10分間遠心分離して上清液を廃棄した。細胞を5μlアネキシンV-FITC及びPIで室温で15分間、暗闇の中で染色した。死滅細胞の数をBD Accuri C6フローサイトメーター(BD Biosciences、CA、USA)で測定し、C6解析ソフトウェア(BD Biosciences、CA、USA)で分析した。
その結果、
図6に示されたように、非-免疫化された陽性対照群(Naive+Cha)で有意に高いレベルのアポトーシス反応が発見されたのに対し、多重-抗原VLPで免疫化されたグループ(TG146+Cha)や組合せVLPで免疫化されたグループ(TG1/TG4/TG6+Cha)は有意に低いレベルのアポトーシス反応を起した。特に、組合せVLPで免疫化されたグループ(TG1/TG4/TG6+Cha)に比べて、多重-抗原VLPで免疫化されたグループ(TG146+Cha)が有意に低いレベルのアポトーシス反応を示した(*P<0.05)。
【0135】
2-5.トキソプラズマ原虫へのチャレンジ感染に対する生存率、体重の変化及び寄生虫負荷試験
前述のように、VLPワクチンの保護的効能を測定するために、免疫化されたマウス及び対照群マウスを2次免疫化後の4週目に、致死のトキソプラズマ原虫GT1種(1×10
3タキゾイト)で腹腔内(IP)注射によってチャレンジさせた。また、VLPワクチンの効能を評価するために、チャレンジ感染後7日目に、マウスの腹腔からトキソプラズマ原虫のタキゾイトを採取した後、計数した。
その結果、
図7に示されたように、すべてのマウスがチャレンジ後14日以内に死亡した他のグループ(Naive+Cha、TG1/TG4/TG6+Cha)に比べて、多重-抗原VLPで免疫化されたグループ(TG146+Cha)でマウスは、14日まで一部生存した(
図7A)。また、多重-抗原VLPで免疫化されたマウス(TG146+Cha)は11日目に10.5%の体重損失のみを示したのに対し、組合せVLPで免疫化されたマウス(TG1/TG4/TG6+Cha)は13日目に21.5%、及び陽性対照群のマウス(Naive+Cha)は9日目に16.8%の体重損失を示した(
図7B)。最後に、多重-抗原VLPで免疫化されたマウス(TG146+Cha)または組合せVLPで免疫化されたマウス(TG1/TG4/TG6+Cha)は、非-免疫化された陽性対照群(Naive+Cha)に比べて寄生虫の複製を大幅に抑制し(
図7C、*P<0.05)、特に、TG146+ChaはTG1/TG4/TG6+Chaに比べて有意に高い寄生虫の複製抑制を示した(*P<0.05)。このことから、TG146 VLPでマウスを免疫化する場合、トキソプラズマ原虫感染症をより効果的に抑制できることが分かる。
【0136】
実験例3:動物モデルにおけるトキソプラズマ原虫VLPとCpGの併用投与試験
3-1.1回免疫化の動物実験
3-1-1.動物モデルの作製
図8に示されたように、7週齢のBALB/c雌マウスをランダムに別の実験グループ(グループ当たり6匹)に分け、200μgのTG146VLPまたは200μgのTG146 VLP+10μgの免疫補強剤CpGを0日目に筋肉内(IM)または鼻腔内(IN)投与した(1次免疫化)。1次免疫化の30日後、マウスを致死量のトキソプラズマ原虫ME49 450嚢胞で口腔経路を通じてチャレンジさせた。各グループの3匹のマウスは、チャレンジ-後30日目に犠牲され、脳、脾臓、及び腸間膜リンパ節(MLN)を分離して免疫細胞の活性を確認し、血清における抗体反応、脳における炎症反応、脳で検出された嚢胞の大きさと数を確認した。生きている各グループの3匹のマウスは、体重の変化及び生存率をモニタリングした。
【0137】
3-1-2.トキソプラズマ原虫-特異的抗体反応試験
チャレンジ感染後30日目にマウスの血清を採取した後、実験例2-2と同一の方法でELISAでIgG及びIgAのレベルを測定するのに使用した。
その結果、
図9に示されたように、非-免疫化された陰性対照群(Naive)に比べて、IN経路の免疫化及びIM経路の免疫化でいずれもTG146 VLPを投与したグループ(TG146 VLPs)とTG146 VLP及びCpGを共に投与したグループ(TG146 VLPs+CpG)の抗体の反応レベルがすべて有意に高く、特にIM経路の免疫化に比べてIN経路の免疫化は、さらに高いレベルの血清IgAを誘導した(*P<0.05、**P<0.01)。
【0138】
3-1-3.免疫細胞反応試験
チャレンジ感染後30日目に分離したマウスの脾臓及び腸間膜リンパ節(MLN)からCD4
+T細胞、CD8
+T細胞、胚中心B細胞及びB細胞の活性を実験例2-3と同一の方法で分析した。
その結果、
図10に示されたように、チャレンジ-後30日目に、IN経路の免疫化でTG146 VLPグループに比べてTG146 VLPs+CpGグループの脾臓及びMLN内CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、胚中心B細胞及びB細胞のレベルが有意に高かく、IM経路の場合、脾臓内CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、胚中心B細胞及びB細胞、及びMLN内CD4
+T細胞、胚中心B細胞及びB細胞のレベルが有意にさらに高かった(*P<0.05)。特に、IM経路の免疫化に比べてIN経路の免疫化は、さらに高いレベルの脾臓及びMLN内CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、胚中心B細胞及びB細胞の反応を誘導した。
【0139】
3-1-4.炎症反応試験
免疫化されたマウスの感染後の炎症反応が抑制される程度を確認するために、チャレンジ-後30日目に分離されたマウスの脳を粉砕し、10000RPMで5分間遠心分離した後、上清液で炎症性サイトカイン(IFN-γ及びIL-6)の濃度を製造社の指針に基づきELISAキット(BD Biosciences、San Jose、CA、USA)を使用して測定した。
その結果、
図11に示されたように、高いレベルの炎症性サイトカインIFN-γ及びIL-6を示し、脳で高い炎症反応が誘導された陽性対照群(Naive+cha)に比べて、IN経路の免疫化及びIM経路の免疫化でいずれもTG146 VLP及びTG146 VLP+CpGで免疫化されたマウスの脳細胞で、低いレベルのIFN-γ及びIL-6が測定されており、その中でも、TG146 VLP+CpGで免疫化されたグループで、TG146 VLPで免疫化されたグループに比べて有意に低いレベルのIFN-γ及びIL-6を示した(*P<0.05)。
【0140】
3-1-5.感染による脳内嚢胞の大きさと数の試験
チャレンジ-後30日目に分離されたマウスの脳を粉砕し、脳組織を採取し、シリンジを使用して、400μlPBSで均質化した。均質化された溶液を45%Percollに再懸濁した後、4℃、12100RPMで20分間遠心分離した。その後、嚢胞層を慎重に収集し、PBSで6000RPMで20分間洗浄した。収集された嚢胞5μlを顕微鏡(Leica DMi8、Leica、Wetzlar、Germany)で5つの領域下で、5回繰り返して計数した。
その結果、
図12に示されたように、TG146 VLP+CpGで鼻腔内免疫化された場合、嚢胞の大きさが最も小さく、TG146 VLP及びTG146 VLP+CpGで免疫化された場合、IN経路の免疫化及びIM経路の免疫化でいずれも嚢胞数が著しく減少し、その中でも、TG146 VLP+CpGで免疫化されたグループで、TG146 VLPで免疫化されたグループに比べて有意に少ない数の嚢胞を示した(*P<0.05)。
【0141】
3-1-6.感染による生存率及び体重の変化試験
VLP接種後30日目にトキソプラズマ原虫ME49をチャレンジ感染させ、35日間、各グループのマウスの生存率と体重変化率を測定した。
その結果、
図13に示されたように、陽性対照群(Naive+Cha)の場合、感染後35日目にすべて死亡したが、INまたはIM経路の免疫化グループ(TG146 VLP及びTG146 VLP+CpG)の場合では、すべてのマウスが生存した。また、体重の変化を観察した結果、TG146 VLP+CpGで鼻腔内免疫化された場合、最も少ない体重減少率を示した。
【0142】
3-2.2回免疫化の動物実験
3-2-1.動物モデルの作製
図14に示されたように、実験例3-1の200μgのTG146VLPまたは200μgのTG146 VLP+10μgのCpGをIMまたはIN経路で接種したマウスを、1次免疫化後30日目にそれぞれ120μgのTG146VLPまたは120μgのTG146 VLP+5μgのCpGを同一の経路で投与した(2次免疫化)。2次免疫化の30日後、マウスを致死量のトキソプラズマ原虫ME49 450嚢胞で口腔経路を通じてチャレンジ感染させた後、感染の程度が最大化される感染後30日目にマウスを犠牲にして、脳、脾臓及び腸間膜リンパ節(MLN)を分離し、免疫細胞の活性を確認し、血清における抗体反応、脳における炎症反応、脳で検出された嚢胞の大きさと数を確認した。生きている各グループのマウスは、体重の変化及び生存率をモニタリングした。
【0143】
3-2-2.トキソプラズマ原虫-特異的抗体反応試験
1回免疫化の動物実験のように、1次及び2次免疫化、及びチャレンジ感染後30日目に収得したマウスの血清におけるIgG及びIgAの抗体反応を確認した。
その結果、
図15に示されたように、CpGが追加的に接種されたマウスのグループでチャレンジ感染後の抗体反応のレベルが有意に高く、その中でも、IM経路の免疫化に比べてIN経路の免疫化は、より高いレベルの血清IgAを誘導した(*P<0.05、**P<0.01)。
【0144】
3-2-3.免疫細胞反応試験
1回免疫化の動物実験のように、チャレンジ感染後30日目に分離したマウスの脾臓及び腸間膜リンパ節(MLN)からCD4
+T細胞、CD8
+T細胞、胚中心B細胞及びB細胞の活性を分析した。
その結果、
図16に示されたように、チャレンジ-後30日目に、IN経路の免疫化及びIM経路の免疫化でいずれも陽性対照群(Naive+Cha)に比べて免疫化グループ(TG146 VLP及びTG146 VLP+CpG)で脾臓及びMLN内CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、胚中心B細胞及びB細胞のレベルが有意に高く(*P<0.05)、特に、IM経路の免疫化に比べてIN経路の免疫化は、さらに高いレベルの免疫細胞反応を誘導し、脾臓より腸間膜リンパ節(MLN)から、さらに高いレベルの免疫細胞活性が現れた。
【0145】
3-2-4.炎症反応試験
1回免疫化の動物実験のように、チャレンジ-後30日目に分離されたマウスの脳で炎症反応を確認し、炎症反応の指標である炎症性サイトカインIFN-γ及びIL-6のレベルを分析し、グループ間比較した。
その結果、
図17に示されたように、陽性対照群(Naive+cha)で炎症性サイトカインIFN-γ及びIL-6のレベルが最も高く、その他の免疫化グループ(TG146 VLP及びTG146 VLP+CpG)ではIN経路の免疫化及びIM経路の免疫化でいずれも有意に低いレベルのIFN-γ及びIL-6を示した。その中でも、CpGが追加的に接種されたマウスのグループで、そうでないマウスのグループよりもさらに低いレベルのIFN-γ及びIL-6を示した(*P<0.05)。
【0146】
3-2-5.感染による脳内嚢胞の大きさと数の試験
1回免疫化の動物実験のように、チャレンジ-後30日目に分離されたマウスの脳で収集された嚢胞の大きさと数を確認した。
その結果、
図18に示されたように、陽性対照群(Naive+cha)はINまたはIM経路の免疫化グループ(TG146 VLP及びTG146 VLP+CpG)に比べて極めて多い嚢胞数の差を示し、免疫化グループの中では、TG146 VLP+CpGで鼻腔内免疫化させた場合の嚢胞数が最も少なかった。免疫化グループ間の嚢胞の大きさの差は大きくなかったが、この場合にも、Naive+chaに比べてTG146 VLP+CpG(IN)における嚢胞の大きさが最も小さかった(*P<0.05)。
【0147】
3-2-6.感染による生存率及び体重の変化試験
1回免疫化の動物実験のように、チャレンジ-後35日間、各グループのマウスの生存率と体重変化率を測定した。
その結果、
図19に示されるように、陽性対照群(Naive+c ha)の場合、感染後35日目にすべて死亡したが、INまたはIM経路の免疫化グループ(TG146 VLP及びTG146 VLP+CpG)の場合では、すべてのマウスが生存しており、体重の変化も少なかった。
【0148】
3-3.3回免疫化の動物実験
3-3-1.動物モデルの作製
図20に示されたように、200μgのTG146VLPまたは200μgのTG146 VLP+10μgのCpGをIMまたはIN経路で接種した後(1次免疫化、実験例3-1)、120μgのTG146VLPまたは120μgのTG146 VLP+5μgのCpGを接種した(2次免疫化、実験例3-2)マウスに、2次免疫化の30日後に2次免疫化と同一の量で免疫化させた(3次免疫化)。3次免疫化後の30日目にマウスを致死量のトキソプラズマ原虫ME49 450嚢胞で口腔経路を通じてチャレンジ感染させた後、感染の程度が最大化される感染後30日目にマウスを犠牲にして、脳、脾臓及び腸間膜リンパ節(MLN)を分離し、免疫細胞の活性を確認し、血清における抗体反応、脳における炎症反応、脳で検出された嚢胞の大きさと数を確認した。生きている各グループのマウスは、体重の変化及び生存率をモニタリングした。
【0149】
3-3-2.トキソプラズマ原虫-特異的抗体反応試験
1回及び2回免疫化の動物実験のように、1次、2次及び3次免疫化、及びチャレンジ感染後30日目に収得したマウスの血清におけるIgG及びIgAの抗体反応を確認した。
その結果、
図21に示されたように、免疫化の回数に応じて次第に増加するIgG抗体の反応レベルを確認することができ、陽性対照群(Naive+c ha)に比べて有意に高い免疫反応を示した。また、IM経路の免疫化に比べてIN経路の免疫化は、より高いレベルの血清IgAを誘導した(*P<0.05、***P<0.001)。
【0150】
3-3-3.免疫細胞反応試験
1回及び2回免疫化の動物実験のように、チャレンジ感染後30日目に分離したマウスの脾臓及び腸間膜リンパ節(MLN)からCD4
+T細胞、CD8
+T細胞、胚中心B細胞及びB細胞の活性を分析した。
その結果、
図22に示されたように、IN経路の免疫化においてTG146 VLPグループに比べてTG146 VLP+CpGグループの脾臓及びMLN内のCD4
+T細胞、CD8
+T細胞、胚中心B細胞及びB細胞のレベルが有意にさらに高く、IM経路の場合、脾臓内のCD8
+T細胞及びB細胞、及びMLN内のCD4
+T細胞、胚中心B細胞及びB細胞のレベルが有意にさらに高かった(*P<0.05)。特に、追加的にTG146 VLP及びCpGを鼻腔内接種した場合、最も優れた免疫細胞活性が現れた。
【0151】
3-3-4.炎症反応試験
1回及び2回免疫化の動物実験のように、チャレンジ-後30日目に分離されたマウスの脳で炎症反応を確認し、炎症反応の指標である炎症性サイトカインIFN-γ及びIL-6のレベルを分析して、グループ間で比較した。
その結果、
図23に示されたように、陽性対照群(Naive+cha)で炎症性サイトカインIFN-γ及びIL-6のレベルが最も高く、その他の免疫化グループ(TG146 VLP及びTG146 VLP+CpG)ではIN経路の免疫化及びIM経路の免疫化でいずれも有意に低いレベルのIFN-γ及びIL-6を示した。その中でも、CpGが追加的に接種されたマウスのグループで、さらに低いレベルのIFN-γ及びIL-6を示した(*P<0.05)。また、1次及び2次免疫化以後、分析した炎症反応試験の結果と比較したとき、3次免疫化において著しく低下した炎症反応の結果を確認することができた(
図11、17、及び23)。
【0152】
3-3-5.感染による脳内嚢胞の大きさと数の試験
1回及び2回免疫化の動物実験のように、チャレンジ-後30日目に分離されたマウスの脳で収集された嚢胞の大きさと数を確認した。
その結果、1次及び2次免疫化の後分離した脳における嚢胞数より、3次免疫化の時の嚢胞数が著しく減少したことを確認することができ(
図12、18及び24)、
図24に示されたように、TG146 VLP+CpGで鼻腔内免疫化させた場合の嚢胞数が最も少なかった。嚢胞の大きさもNaive+chaに比べてTG146 VLP+CpG(IN)における嚢胞の大きさが最も小さかった(*P<0.05)。
【0153】
3-3-6.感染による生存率及び体重の変化試験
1回及び2回免疫化の動物実験のように、チャレンジ-後35日間、各グループのマウスの生存率と体重変化率を測定した。
その結果、
図25に示されたように、陽性対照群(Naive+c ha)の場合、感染後35日目にすべて死亡したが、INまたはIM経路の免疫化グループ(TG146 VLP及びTG146 VLP+CpG)の場合では、すべてのマウスが生存し、体重変化も少なかった。
【0154】
発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本発明の技術的思考や必須的な特徴を変更せずに、別の具体的な形態に容易に変形し得ることを理解できるだろう。したがって、上述の実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。例えば、単一型で説明されている各構成要素は、分散されて実施されることもでき、同様に、分散されたものと説明されている構成要素も結合された形態で実施され得る。
【0155】
本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって示され、請求の範囲の意味及び範囲並びにその均等概念から導出される、すべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【配列表】