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特許7538518脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム
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  • 特許-脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム 図1
  • 特許-脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム 図2
  • 特許-脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム 図3
  • 特許-脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム 図4
  • 特許-脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム 図5
  • 特許-脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム 図6
  • 特許-脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム 図7
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  • 特許-脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム 図9
  • 特許-脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム 図10
  • 特許-脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム 図11
  • 特許-脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム 図12
  • 特許-脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム 図13
  • 特許-脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム 図14
  • 特許-脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム 図15
  • 特許-脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム 図16
  • 特許-脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム 図17
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/291 20210101AFI20240815BHJP
   A61B 5/256 20210101ALI20240815BHJP
   A61B 5/263 20210101ALI20240815BHJP
   A61B 5/273 20210101ALI20240815BHJP
   A61B 5/369 20210101ALI20240815BHJP
   A61B 5/245 20210101ALI20240815BHJP
【FI】
A61B5/291
A61B5/256 110
A61B5/263
A61B5/273
A61B5/369
A61B5/245
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020091937
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2020195777
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2019099938
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅也
(72)【発明者】
【氏名】小崎 瑞貴
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直也
(72)【発明者】
【氏名】水野 嶺
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-154570(JP,A)
【文献】特表2018-518227(JP,A)
【文献】特開2017-074370(JP,A)
【文献】特開2017-202289(JP,A)
【文献】特表2009-530064(JP,A)
【文献】特開2015-221138(JP,A)
【文献】国際公開第2019/050007(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭皮に当接させて電気的情報を取得する機能を有する1又は複数の頭皮接地部と、
前記頭皮接地部の周囲に配置された1又は複数のガイド体と、
複数の前記頭皮接地部の内側領域に形成されるか、あるいは前記頭皮接地部の少なくとも1つと共用されるウェット電極装着部と、
前記ウェット電極装着部に対して着脱可能なウェット部材と、
を備え、
前記ウェット電極装着部は突起状の部分を有し、前記ウェット部材は繊維束で構成され、前記ウェット部材を前記ウェット電極装着部に装着する際には前記突起状の部分に前記ウェット部材を刺して保持させ、
前記ウェット電極装着部に前記ウェット部材が装着された際にウェット電極として使用され、前記ウェット電極装着部から前記ウェット部材が外された際にドライ電極として使用されることを特徴とする脳活動計測用電極。
【請求項2】
前記繊維束は同一方向に延出される繊維で構成され、前記脳活動計測用電極を頭皮に接地させる方向が前記繊維束の繊維延出方向に略沿った方向となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の脳活動計測用電極。
【請求項3】
頭皮に当接させて電気的情報を取得する機能を有する1又は複数の頭皮接地部と、
前記頭皮接地部の周囲に配置された1又は複数のガイド体と、
複数の前記頭皮接地部の内側領域に形成されるか、あるいは前記頭皮接地部の少なくとも1つと共用されるウェット電極装着部と、
前記ウェット電極装着部に対して着脱可能なウェット部材と、
を備え、
前記ウェット電極装着部は突起状の部分を有し、前記ウェット部材は導電性ゲルで構成され、前記ウェット部材を前記ウェット電極装着部に装着する際には前記突起状の部分に前記ウェット部材を刺して保持させ、
前記ウェット電極装着部に前記ウェット部材が装着された際にウェット電極として使用され、前記ウェット電極装着部から前記ウェット部材が外された際にドライ電極として使用されることを特徴とする脳活動計測用電極。
【請求項4】
前記突起状の部分の先端に、隣接する前記突起状の外周に対して外方に膨らんだストッパ部を有するようにしたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の脳活動計測用電極。
【請求項5】
前記突起状の部分は、前記ガイド体よりも短尺に構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の脳活動計測用電極。
【請求項6】
前記ガイド体は前記頭皮接地部と同長又は長尺に構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の脳活動計測用電極。
【請求項7】
前記ガイド体は複数が散点的に前記頭皮接地部を包囲する位置に配置されていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の脳活動計測用電極。
【請求項8】
前記ガイド体は先端側が外方に開いていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の脳活動計測用電極。
【請求項9】
前記ガイド体は可撓性を有する素材よりなり、先端側が外方に向けて反って開いていることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の脳活動計測用電極。
【請求項10】
複数の前記頭皮接地部は本体中心を回転中心として回転対称となるように配置されていることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の脳活動計測用電極。
【請求項11】
前記頭皮接地部は導電性能を有する合成樹脂素材から構成されていることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の脳活動計測用電極。
【請求項12】
前記頭皮接地部及び前記ウェット電極装着部は合成樹脂成形品として一体成形されていることを特徴とする請求項11に記載の脳活動計測用電極。
【請求項13】
前記頭皮接地部と前記ガイド体とはそれぞれ異なる素材から構成されていることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の脳活動計測用電極。
【請求項14】
前記頭皮接地部の上部位置には電極固定部が形成されていることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の脳活動計測用電極。
【請求項15】
前記脳活動は脳波として記録されることを特徴とする請求項1~14のいずれかに記載の脳活動計測用電極。
【請求項16】
前記脳活動は脳磁界として記録されることを特徴とする請求項1~15のいずれかに記載の脳活動計測用電極。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載の脳活動計測用電極を頭部装着用のベースに取り付けた頭部装着装置。
【請求項18】
前記脳活動計測用電極は、脳活動信号を増幅する増幅装置に固定されていることを特徴とする請求項17に記載の頭部装着装置。
【請求項19】
前記増幅装置は前記ベース側に固定され、前記脳活動計測用電極は前記増幅装置のキャッチ部に支持されていることを特徴とする請求項18に記載の頭部装着装置。
【請求項20】
前記脳活動計測用電極は前記増幅装置のキャッチ部に対して着脱可能とされていることを特徴とする請求項19に記載の頭部装着装置。
【請求項21】
前記増幅装置と、前記頭皮接地部の上部に形成された頭部装着用のベース保持部と、によって前記ベースを挟んでいることを特徴とする請求項1~20のいずれかに記載の頭部装着装置。
【請求項22】
請求項1~16のいずれかに記載の脳活動計測用電極を備え、前記脳活動計測用電極によって得られた脳活動信号に基づいて脳活動を計測する脳活動計測システム。
【請求項23】
請求項17~21のいずれかに記載の頭部装着装置を備え、前記脳活動計測用電極によって得られた脳活動信号に基づいて脳活動を計測する脳活動計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脳活動を計測するために使用される脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳波計測において被験者の頭部に電極を接置させる方法として、ウェット式とドライ式がある。ウェット式は、例えば電極の接置箇所の頭髪を掻き分け頭皮を露出させてから、必要に応じてアルコール等で頭皮上の皮脂を取り除き、導電性ジェルや導電性ペーストを塗布した皿電極等の電極を頭皮に接地させるものである。この場合、接触抵抗を下げることができるため、パッシブ型の脳波計であってもノイズ混入の少ない脳波を取得することができる。しかし、アルコール等で皮脂を取り除いたり、脳波計測時に被験者の頭部に導電性ジェルや導電性ペーストを塗布しなければならないため、研究や医療用途等での精密な脳波計測以外にはなかなか普及していない。また、パッシブ型の脳波計では、電極から差動増幅器(アンプ)をつなぐ電極線が被験者に触れたり、動くことでノイズ源になるという問題があり、特に動作を伴う脳活動の計測は難しい。
このようなことから、様々なドライ式の電極の開発がされている。ドライ式の電極とは、金属や導電性樹脂等を用いるものである。ドライ式の電極は、ウェット式のように、被験者の頭部に導電性ジェルや導電性ペーストを塗布したり、接地前にアルコール等で皮脂を取り除いたりすることは必須ではない。そのため、研究、医療目的だけでなく、ヘルスケア等の産業用途にも期待されている。ドライ式の電極では、ウェット式の電極を導電性ペースト等を用いて接置する場合に比べて接触抵抗が下がらないため、脳波に環境由来等のノイズが混入しやすい。そのため、通常、ドライ式の電極は電極の近傍にプリアンプを配置するアクティブ電極と組み合わせて用いられる。アクティブ電極では、プリアンプにより、電極と差動増幅器(アンプ)をつなぐ電極線由来のノイズの発生は抑えられることとなり、被験者が動いている場合であっても電極線由来のノイズの少ない脳波の計測が可能になる。ドライ式の電極はドライ電極、ウェット式の電極はウェット電極と呼ばれる。
【0003】
ドライ式の電極は、ウェット式のように被験者の頭部に導電性ジェルや導電性ペーストを塗布したり、接地前にアルコール等で皮脂を取り除いたりすることは必須ではない。しかし一方、ドライ式の電極では導電性ペースト等を介して電極を頭皮に接置しないため、脳波キャップやヘッドセット等による、被験者の頭部に対して何らかの電極を固定して接地する手段と共に用いる必要がある。また、ドライ式の電極では、導電性ペースト等を介して電極を頭皮に接置しないため、電極と頭皮の間に毛髪が挟まることを回避して通電できるような電極形状を工夫する必要がある。ドライ式の電極はアクティブ電極と組み合わせることで接触抵抗が比較的高くても脳波の波形が精度よく記録できるものであるが、脳波の被計測者の頭皮の肌質や体質、室温や湿度等の環境の影響等により、接触抵抗がほとんど下がらず、十分な精度で脳波が記録できないこともある。
【0004】
ドライ式の電極の例として特許文献1を示す。特許文献1は、導電性を示す樹脂製の電極、その電極を使用した頭部装着装置及び脳活動計測システムに関するものであり、例えば図31に示すような円盤138に多数の円柱状の突起部139を有する電極が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-202289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように「多数の円柱状の突起(頭皮接地部)」を有する電極は、脳波キャップやヘッドセット等の電極を固定する手段と共に用いられる場合、以下のような課題を有する。
まず、このような電極では、図16(a)のように、「多数の円柱状の突起」が頭皮に対して全体として正対して接地することを想定して設計されている。電極中心線は、頭皮の面方向に対して垂直となっている。「多数の円柱状の突起」は、間の髪の毛を避けて電極の一部が頭皮に接触する可能性を上げると共に、頭皮にかかる電極からの力を分散させる。しかし、発明者らの検討では、脳波キャップやヘッドセット等の電極を固定する手段でこの電極を用いると、図16(b)のように突起の1本、もしくは、隣接する2本だけが頭皮に接し、その他突起が浮いた状態になって電極にかかる力の釣り合いが取れてしまう現象がかなりの割合で発生する。
脳波キャップのように布や網等で電極を接地させる場合であれば、電極1つ1つの向きを確認して直せばよいのであるが、1つ1つの電極を調整するのに手間がかかり、時には図16(b)のように電極が浮いている状態になっているのに気付かないこともある。また、特にヘッドセットの場合には、脳波キャップよりも電極の向きの調整の自由度が劣るため、図16(b)のようになってしまった電極の向きを直すことが困難であることがある。その場合、脳波の波形自体は円柱状の突起の先端が頭皮に接地しているため、計測することはできる。しかし、破線で示すような電極を頭皮に押さえる力が全て頭皮と接地している円柱状の突起の先端にかかってしまうため、被験者に痛みが生じてしまう可能性がある。発明者らの検討では、図16(b)のような状態で釣り合いが取れてしまいやすい電極位置は、特に、図17に示した前頭部(frontal)、正中前頭部(midline frontal)、頭頂部(parietal)、正中頭頂部(midline parietal)の電極を中心とした電極である。これらの電極位置は電極が斜めから(すなわちある一点から)頭皮に接地しやすく、個人の頭部形状の差も大きく、電極が接地される際の角度も様々となるためである。
通常、このような装着時の電極の向きの課題について改善するには、ヘッドセット等の電極保持部の稼働機構を工夫することがまず解決方法として考えられるが、電極そのものを工夫して頭皮に対して斜めに接地されにくくできれば、なおよい。
以上のように、特許文献1に示されているようなドライ式の電極の課題として、脳波キャップやヘッドセット等の電極を固定する手段と共に用いられる場合に、どのようにして装着時の手間なく頭皮に対して斜めに接地されにくくするかということが挙げられる。
また、特許文献1に示されているようなドライ式の電極のもう1つの課題として、ドライ式の電極では、脳波の被計測者の頭皮の肌質や体質等により接触抵抗がほとんど下がらなかったり、同じ被計測者であっても室温や湿度等の環境により接触抵抗がほとんど下がらなかったりして十分な精度で計測できないことがあるということが挙げられる。ドライ式の電極はウェット式の電極に比べてヘルスケア用途など研究・医療用途以外での可能性を秘めているが、必ずしも全ての場合に計測できるものではなく、必要に応じて簡易な手段で計測できるリカバリー手段を持ったドライ式電極が望まれる。
本発明は、このような問題点に鑑み、例えば脳波キャップやヘッドセット等の電極を固定する手段と共に用いられる場合に、被験者の頭部形状によらず電極が正対して頭皮に当接されやすく、かつ、ドライ式で計測しにくい場合に簡易に計測可能にするリカバリー手段を持った脳活動計測用電極、その電極を備えた頭部装着装置及び脳活動計測システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために第1の手段では、頭皮に当接させて電気的情報を取得する機能を有する1又は複数の頭皮接地部と、前記頭皮接地部の周囲に配置された1又は複数のガイド体と、複数の前記頭皮接地部の内側領域に形成されるか、あるいは前記頭皮接地部の少なくとも1つと共用されるウェット電極装着部と、前記ウェット電極装着部に対して着脱可能なウェット部材と、を備え、前記ウェット電極装着部に前記ウェット部材が装着された際にウェット電極として使用され、前記ウェット電極装着部から前記ウェット部材が外された際にドライ電極として使用されるようにした。
「ガイド体」によって、脳活動計測用電極が傾いて頭皮に当接しようとする場合には頭皮接地部よりも外側のガイド体のいずれかの先端が先に頭皮に接地することとなり、脳活動計測用電極を頭部装着装置に固定して使用した際に、先に頭皮に接地したガイド体のいずれかの先端が支点となって脳活動計測用電極が頭皮に接地されることになる。このとき、ガイド体を有さず頭皮接地部のいずれかの先端が先に頭皮に接地する場合と比較し、ガイド体を有するようにすることで、電極中心線からガイド体のいずれかの先端が離れた位置になることにより、脳活動計測用電極が斜めに頭皮に当接している場合にモーメントを生じやすくなる。そのため、脳活動計測用電極が斜め状態となって一部の頭皮接地部の先端のみで頭皮に接地されてしまうという不具合が生じにくく、脳活動計測用電極が頭皮に正対して接地しやすくなる。尚、電極中心線とは図16(a)に示すように、脳活動計測用電極が頭皮に正対した時に電極中心位置において頭皮に対して垂直となる線のことを言う。
「ウェット電極装着部」に「ウェット部材」を装着又は取り外しすることにより、脳活動計測用電極はウェット電極としてもドライ電極としても使うことができる。この脳活動計測用電極はウェット部材をウェット電極装着部に装着すればウェット電極となり、ウェット部材をウェット電極装着部から外せばドライ電極となるため、ウェット電極として用いるか、ドライ電極として用いるかを容易に選択することができる。
「ウェット電極装着部」は複数の頭皮接地部の内側領域に形成されるか、又は頭皮接地部の少なくとも1つをウェット電極装着部として共用できるようにしたものである。複数の頭皮接地部の内側領域に形成する場合にはウェット電極装着部の周囲(外側)に頭皮接地部が存在することとなり、脳活動計測用電極を頭皮に当接させる際にはまず頭皮接地部が頭皮に当接することになる。そのため、脳活動計測用電極にウェット部材を脱着して使う時にウェット電極装着部が存在することが頭皮接地部が頭皮に当接することの妨げとならない。また、ウェット部材を装着して使う時に頭皮接地部が頭皮に当接する際にウェット部材も頭皮に当接しやすくなる。また、頭皮接地部の形状とウェット電極装着部の形状を独立させてそれぞれの機能ごとに構造設計することが可能とできる。一方で、頭皮接地部の少なくとも1つをウェット電極装着部として共用できるようにする場合には、当該の頭皮接地部は、ウェット部材を脱着して使う場合に頭皮接地部として頭皮に当接することになり、また、ウェット部材を装着して使う場合に当該頭皮接地部はウェット部材を脳活動計測用電極に固定するためのウェット電極装着部となることになる。この頭皮接地部は、ウェット電極装着部を兼ねることができる頭皮接地部であり、同じ形状であってもウェット部材を装着して使うか外して使うかにより頭皮接地部とウェット電極装着部の2つの役割を持つことになる。このように2つの役割を持たせることにより、脳活動計測用電極の構造を簡易にできる。ウェット電極を兼ねることができる頭皮接地部は、複数の頭皮接地部の内側領域に形成されていてもよく、内側領域であるかに係らず、複数の頭皮接地部の少なくとも1つをウェット電極を兼ねることができる頭皮接地部としてもよいが、ウェット電極を兼ねることができる頭皮接地部は、複数の頭皮接地部の内側領域に形成されていることがより好ましい。
ドライ電極はウェット部材を装着することでウェット電極として機能させることができるようになる。例えば外側の頭皮接地部をドライ電極とし、内側のウェット電極と併せてドライ式とウェット式の両方を備えた電極を提供できるようにすることができる。これは特に脳活動が脳波である時に好適である。脳波計測においてドライ式の電極の場合には被験者の体質や気温、湿度等により接触抵抗が下がりにくいことがあるが、ウェット電極装着部を形成することで、必要に応じてドライ式の電極にウェット電極を組み合わせられることとなり、どのような被験者や気温、湿度であってもノイズの少ない脳波波形を取得することができるようになる。
「ウェット部材」は、生理食塩水、導電性水溶液または導電性ジェルなどのイオンを含む物質を保持(含有)できるように構成された繊維束や繊維塊、ゲル状物質などである。ウェット部材はドライ電極の導電性を補助したり、ドライ電極をウェット電極に変更するためのものである。ウェット部材の先端部には少なくとも一方の正の曲率がついており、先端が細くなっていることで髪の毛を避けて頭皮に当接しやすい形状であることがよい。ウェット部材は可撓性を有することがウェット電極装着部に装着した時に保持されやすいためよい。ウェット部材の厚さ(高さ方向)は特に限定するものではなく、シート状のように厚さ1mm以下でもよい。また、特に2mm~8mm程度であるとウェット電極装着部に装着したり脱着したりという取扱がしやすいためよい。
「脳活動計測用電極」は、電極を頭皮に接地させる際には、例えば脳波キャップやヘッドセット、ヘッドバンド等の頭部装着装置により頭部に固定されるとよい。ヘッドセットは、脳活動計測用電極を頭部に固定する機構・構造を有するものであり眼鏡やヘッドホン、VRディスプレイ等のデバイスと組み合わせた複合形状も含まれる。頭皮接地部は、ドライ電極もウェット電極も使用可能であるが、脳波計測用の導電性ペーストや導電性ジェル、生理食塩水等を含浸させた綿等を用いずとも、脳活動を計測できるドライ電極であることがよい。
「ガイド体」は、特に形状は問わない。ガイド体は1つでも複数でもよい。ガイド体の先端は電極を頭皮に接地する際の支点とするため突起状であることがよい。突起状とすることで毛髪を避け、電極を正対して当接させた際に電極が浮き上がることを減らすことができる。この突起は円錐状や円柱状でもよいが、横2.5~5mm程度の「楕円錐台」または「面状」とすることでガイド体が頭皮に当接する際の接地形状を「点」から「線」にでき、頭皮にかかる圧力を減らすことができるため更によい。頭皮にかかる圧力を減らすことで、脳活動計測用電極を被装用者が装着する際の痛みや圧迫感を減少させることができる。ガイド体は頭皮接地部の周囲にあるとよく、最外周の頭皮接地部はガイド体を兼ねてもよい。最外周の頭皮接地部がガイド体を兼ねる場合には、脳活動計測用電極を装着する際に脳活動計測用電極が傾いて頭皮に当接しようとする場合には最外周の頭皮接地部を兼ねたガイド体のいずれか先端がまず頭皮に接地し、先に頭皮に接地したガイド体のいずれかの先端が支点となって脳活動計測用電極が頭皮に正対させて接地することになる。脳活動計測用電極が頭皮に接地した後は、ガイド体は頭皮接地部としての役目を果たす。ガイド体が頭皮接地部を兼ねたガイド体である場合には、ガイド体は導電性素材よりなることが脳活動を取得できるためよい。また、ガイド体が頭皮接地部を兼ねたガイド体である場合には、頭皮接地部の頭皮への接地径、すなわち最外周のガイド体の接地径はφ6~15mmがよい。あまりに狭いと頭皮と電極との接触の可能性が落ちてしまうし、広すぎると脳活動を取得する部位が広がってしまい、計測する脳活動が劣化することとなる。
ガイド体が頭皮接地部を兼ねたガイド体ではなく、ガイド体と頭皮接地部が別の場合には、ガイド体は例えば非導電性素材を用いるか、または、脳活動計測用電極との間に絶縁体を配置させるようにして絶縁されているとよい。ガイド体からの脳活動の混入を無くすことで、脳活動を高い精度で記録できるためである。
ガイド体は頭皮接地部を兼ねる場合であっても兼ねない場合であっても、ガイド体は可撓性があるとよい。撓むことで頭皮に接地させた際の頭皮への押圧力が軽減されるからである。ここで、ガイド体の可撓性が頭皮接地部の可撓性が低い(変形しにくい)素材であるかほぼ同じ可撓性である場合には、ガイド体の先端は、頭皮接地部の先端と同一平面上にあるか、頭皮接地部の先端よりも0.5~1mm程度頭皮から離れた位置になることがよい。脳活動の計測のためには頭皮接地部を頭皮に接地させる必要がある一方で、頭皮接地部があまり大きく飛び出てしまうとガイド体としての役割を果たさなくなってしまうためである。また、ガイド体の可撓性が頭皮接地部の可撓性よりも著しく大きい(変形しやすい)場合には、ガイド体の先端は、頭皮接地部の先端の平面よりもより頭皮側に長くするとよい。その場合、ガイド体が撓むことで電極の向きが頭皮に対して正対しやすくなる。ガイド体が頭皮接地部を兼ねたガイド体でない場合には、頭皮接地部の頭皮への接地径はφ6~15mmがよく、ガイド体の最外周の径は頭皮接地部の頭皮への接地径よりも半径で3mm~5mm大きいことがよい。頭皮接地部の頭皮への接地径があまりに狭いと頭皮と電極との接触の可能性が落ちてしまうし、広すぎると脳活動を取得する部位が広がってしまい、計測する脳活動が劣化することとなる。
「頭皮接地部」は特に形状は問わない。頭皮接地部は複数がよい。頭皮接地部は脳活動を電気的情報として取得するため導電性能があるとよい。金属でもよいが、導電性能を有する合成樹脂素材でもよい。
【0008】
ここに「脳活動」は一般に外部から電流が流れることで発生する磁場や異なる位置での電位差(電圧差)、酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン等の吸光による近赤外線の光量差として計測でき、そのため本発明の「脳活動計測用電極」としては、例えば、脳の神経活動に伴う電流変化(電位差の変化)を計測する脳波計測用の電極や、脳活動に伴う電流の変化を磁場の変化として計測する脳磁界(脳磁場)計測用の電極や、脳活動に伴う脳の血流(酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン量等)の変化を近赤外線の受光量の変化として計測する近赤外分光計測用のプローブに使用することがよい。特に、脳活動を電位差(電圧差)として記録する場合(脳波計測)においては、ドライ電極であることが被験者への計測負担を減らすことができるため好ましい。脳活動は、電位差(電圧差)として記録する脳波であることがよい。また、脳活動は、磁場の変化として記録する脳磁界であることが好ましい。これらの脳活動は、神経活動に伴うニューロン活動をミリ秒単位で計測するものであり、脳活動計測用電極を頭皮に対して正対して接地することで高い精度で脳活動を記録できるようになるためである。
ここに「頭皮に当接」とは、脳活動計測用電極を用いて脳活動を計測する際に、脳活動が電位差、磁場変化、近赤外線の受光量等のデータとして取得できるように脳活動計測用電極が頭皮に接触又は近接していることである。脳活動計測用電極は頭皮に密着していることが好ましいが、必ずしも密着している必要は無く、脳活動がデータとして取得できれば、多少頭皮から離れていたり、間に頭髪が挟まれていても構わない。
これら定義は以下の手段においても同様である。
【0009】
また、第2の手段として、前記ウェット電極装着部は突起状の部分を有し、前記ウェット部材は繊維束で構成され、前記突起状の部分に前記ウェット部材を刺して保持するようにした。
突起状の部分が繊維束で構成されたウェット部材に刺さることとなるため取り付けや取り外しがしやすく、また一旦突起状の部分に刺されるとウェット電極は突起状の部分を周囲から支えることとなって突起状の部分から抜けにくくなるため、突起状の部分を有することは繊維束からなるウェット電極の保持手段としてよい。そのようにすることで、ウェット電極装着部で強い力で保持することができるようになるため、被験者の頭皮に電極を接地させる際にウェット部材が脱落することがない。ウェット部材は、頭皮接地部の側面に接していても接していなくてもよい。頭皮接地部の側面に接する場合にはウェット部材保持時の安定性が増すことになる。一方で、頭皮接地部の側面にウェット部材を接しないで保持する場合には、ウェット部材がクッションとしての役目を果たしやすくなるためよい。このような保持は、突起状の部分に繊維束で構成されたウェット部材を刺して保持することで可能になるものである。突起状の部分は先端の径がφ0.5~1mm程度の円錐台や先端の長手方向の径が0.5~1.5mm程度の楕円錐台であることがウェット部材が保持しやすく、かつ、ウェット電極装着部を頭皮接地部と兼ねる場合であっても頭皮に装着した際の装着感が良くなるためよい。
繊維束からなるウェット部材の繊維素材は、繊維束を形成できる素材であれば特に問わない。天然繊維である植物性繊維や動物性繊維、化学繊維である無機繊維や精製繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維等を用いることができる。植物性繊維とは、綿、カボック、麻(リネン)、ヘンプ、ジュート、サイザル麻、やし、いぐさ等である。動物性繊維とは、絹、羊毛、アルパカ、アンゴラ、カシミヤ、キャメル、モヘア、ラクダ、ダウン、フェザー等である。無機繊維とは、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維等である。精製繊維とは、リヨセル・テンセル等である。再生繊維とは、レーヨン、ビスコースレーヨン、ポリノジック、キュプラ、再生セルロース繊維等である。半合成繊維とは、アセテート、トリアセテート、プロミックス等である。合成繊維とは、ナイロン、ポリエステル、アクリル、アクリル系、ビニロン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ビニリデン、アラミド、ポリアリレート、PBO、エチレンビニルアルコール、アクリレート、ポリ乳酸等である。繊維束は例えば柱状に押し出したり延出するなどして形成することができる。吸水性を有する繊維素材であっても非吸水性を有する繊維素材であってもよいが、非吸水性の素材の方がベタつかないためよい。繊維束は柱状の繊維束を形成しておき、繊維束の先端を金型等を用いて面取りしたり、R形状にすることがよい。繊維束の先端を細くすることで、髪の毛を避け易くなる。繊維束の直径は、、φ4~10mm程度がよい。ウェット部材は、生理食塩水や導電性ジェルを染み込ませて用いることがよい。ウェット部材に染み込ませるのは生理食塩水を用いるのが、計測後の洗髪が必要ないため特によい。ウェット部材を繊維束としておくことで、毛細管現象により生理食塩水や導電性ジェルが染み込みやすくなり、短時間で繊維束の内部に生理食塩水や導電性ジェルを浸透させることができよい。通常、生理食塩水は導電性ジェルに比べて蒸発しやすく、長時間の計測には適さないが、ウェット部材を繊維束とすることで相対的に外部と接触している面積が減るため比較的長時間の計測でも計測データの劣化が起きにくくなる。生理食塩水や導電性ジェルには少量のアルコールやグリセリン等の粘性や液体の極性を変化させる物質を含んでもよい。繊維束の繊維はカーボンや導電性繊維であってもよい。繊維自体に導電性を持たせることでウェット部材に浸透している生理食塩水や導電性ジェルが少なくなっても安定して計測することができる。また、生理食塩水や導電性ジェルのような導電物質を用いなくても計測することができる。繊維束からなるウェット部材は、ディスポーザブルであり、被験者ごとや計測日ごとに取り替えるようにすることが衛生面からよい。ドライ電極の表面はアルコール等で清掃可能であるが、ウェット電極で生理食塩水等を保持する機構を一体としてしまうと表面の使用後の清掃は困難であるためである。
【0010】
また、第3の手段として、前記繊維束は同一方向に延出される繊維で構成され、前記脳活動計測用電極を頭皮に接地させる方向が前記繊維束の繊維延出方向に略沿った方向となるようにした。
ウェット部材の繊維束がこの向きであると、突起状の部分がウェット部材の繊維方向に沿って刺さることとなって取り付けやすく、またランダムな繊維塊の状態よりも繊維方向が揃っていることからウェット部材は押し広げられた繊維束によって突起状の部分を周囲からより強く支えることとなって突起状の部分から抜けにくくなるためよりよい。また、繊維束の繊維方向が電極と垂直方向とすることにより、頭皮と電極との間に導電性物質の通路が形成され、通電の経路ができやすくなるためよい。
また、第4の手段として、前記ウェット電極装着部は突起状の部分を有し、前記ウェット部材は導電性ゲルで構成され、前記突起状の部分に前記ウェット部材を刺して保持するようにした。
「導電性ゲル」としては、例えば、導電性のハイドロゲルやイオンを担持した高分子ゲルなど公知の導電性ゲルを用いることができる。導電性ゲルには予め水分や生理食塩水等を含ませておいてもよく、使用時に水分や生理食塩水等を含ませてもよい。導電性ゲルの機械的な強度は一般的に高くなく、長時間保持することが難しいが突起状の部分に刺して保持することで簡易にウェット部材を装着や脱着できることになる。
また、第5の手段として、前記突起状の部分の先端に、隣接する前記突起状の外周に対して外方に膨らんだストッパ部を有するようにした。
これによって繊維束で構成されたウェット部材がより突起状の部分に強く保持されることとなる。
また、第6の手段として、前記突起状の部分は、前記ガイド体よりも短尺に構成されているようにした。
これによってウェット部材を装着して用いる場合には、突起状の部分に保持されたウェット部材の先端がガイド体よりも過度に飛び出さないことになり、脳活動計測用電極を頭皮に当接する際にまずガイド体が頭皮に接地しやすくなる。また、ウェット部材を非装着(脱着)して用いる場合には、ガイド体の方が突起状の部分よりも長尺であることにより脳活動計測用電極を頭皮に当接する際にまずガイド体が頭皮に接地することになる。このようなガイド体と突起状の部分の機能は、特に、前記突起状の部分をガイド体よりも1mm~2mm短尺に構成した場合にバランスが取れて実現できよい。
【0011】
また、第7の手段として、前記ガイド体は前記頭皮接地部と同長又は長尺に構成されているようにした。
ガイド体が頭皮接地部よりも周囲にある場合、すなわち、電極中心線から離れた位置にある場合、ガイド体が頭皮接地部と同長又は長尺であると、電極中心線からガイド体の先端が離れた位置になり、確実に先にガイド体先端が頭皮に当接するため脳活動計測用電極が斜め状態となって一部の頭皮接地部の先端のみで接地されてしまうという不具合が生じにくくなる。特に、ガイド体が可撓性を持つ素材よりなる場合にはガイド体が頭皮接地部よりも長尺であると脳活動計測用電極を被装着者に装着する際に、頭皮接地部が頭皮に接地するまでガイド体が撓み、また、接地後はガイド体が頭皮に対して反発するためクッション性が増し装着時の痛みや圧迫感を軽減できることになるためよい。このようにガイド体が頭皮接地部よりも長尺である場合には、ガイド体は、頭皮に当接する際にはいずれかのガイド体の先端が先に当接し支点となる事によりガイド体として機能し、頭皮接地部が頭皮に当接後はクッション体として機能することになるためよい。
ここで前記ガイド体、前記頭皮接地部の「長さ」は電極中心位置での「高さ方向の長さ」が脳活動計測用電極が頭皮に正対して接地された時の電極の当たり具合と関連するため重要である。例えば、実施の形態1の図3(a)に示した電極5のガイド体であるガイド突起13と頭皮接地部である第1の突起9は、外方に開いている分、ガイド体の方が長くなっているが、中心位置での高さ(高さ方向の長さ)は、ガイド体と頭皮接地部は同じである。そのため、頭皮に正対して当接した際には、ガイド体と頭皮接地部が頭皮表面に等しく当たることになる。
また、第8の手段として前記ガイド体は複数が散点的に前記頭皮接地部を包囲する位置に配置されているようにした。
このように散点的に配置されたガイド体が頭皮接地部を包囲することで、電極が頭皮に当接する際にどのような方向に傾いても、ガイド体のいずれかが先に頭皮に接地することとなり、一部の頭皮接地部の先端のみで接地されてしまうという不具合が解消されやすくなる。
【0012】
また、第9の手段として、前記ガイド体は先端側が外方に開いているようにした。
このようにすることで、電極が傾いて頭皮に接近した際に電極中心線から離れた外位置でガイド体が先に当接しやすくなり、モーメントが発生して傾きが修正されることとなる。この際にガイド体はなるべく電極の本体中心から遠い位置、例えば本体の縁近くで外方に開いていることがモーメントが大きくなってよりよい。また、ガイド体が可撓性を持つ素材の場合には、ガイド体の先端が外方に開いていると電極装着時および電極装着中の痛みや圧迫感を和らげるクッション体として働くことになるためよい。特に電極接地部がガイド体よりも短尺として構成されている場合にガイド体はクッション体としての機能が高くなるためよい。
また、第10の手段として、前記ガイド体は可撓性を有する素材よりなり、先端側が外方に向けて反って開いているようにした。
「先端側が外方に向けて反って開いている」とは、経線方向が二次曲線状に内に凸となるように緩やかに曲がっていることである。このようにすることで、ガイド体のいずれかの先端が頭皮に接地し、支点となる場合にガイド体にクッション性を持たせることができ、頭皮接地部が当接するまでの間の装着時の痛みを軽減することができる。また、頭皮接地部が当接した後、すなわち電極装着中にガイド体がクッション体となり電極装着中の痛みや圧迫感を感じにくくすることができるためよい。
また、第11の手段として、複数の前記頭皮接地部は本体中心を回転中心として回転対称となるように配置されているようにした。
これによって電極がどのような方向でどのように傾いてもその周囲にガイド体があるため、どのような方向に傾いても一部の頭皮接地部の先端のみで接地されてしまうという不具合が解消されやすくなる。
【0013】
また第12の手段として、前記頭皮接地部は導電性能を有する合成樹脂素材から構成されているようにした。
導電性能を有する合成樹脂素材から構成することで、金属素材に比べて被験者の頭部が冷たく感じることがなくなり、柔らかな素材(「柔軟な材料」)を使用することができるため被験者にとって使いやすい脳活動計測用電極を提供することができる。
ここに、「導電性能を有する合成樹脂素材」は、合成樹脂自体が導電性能を有する場合と、導電性がない合成樹脂に導電性物質を含有させて導電性能を有するようにした場合の両方を含む。導電性がない合成樹脂に導電性物質を含有させて導電性能を有するようにした場合には、導電性のない合成樹脂素材に導電性物質を含有させても、導電性のない合成樹脂素材に導電性物質を含有した物質をコーティングしてもよい。また、合成樹脂素材自体が導電性を有する場合に、導電性物質を含有した物質をコーティングしてもよい。合成樹脂に導電性物質を含有させる場合には微細な導電性物質群を含有することがよい。「導電性物質群」としては、例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、アルミ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノブラシ、ポリチオフェン系、ポリアセチレン系、ポリアニリン系、ポリピロール系、PEDOT/PSS等である。ここで「微細」とは、繊維状や粉状の少なくともいずれか一方の形態である。繊維状や粉状以外の形態(例えば粒状や太い繊維状)の導電性物質を含んでいてもよい。
このような素材で電極全体を構成すれば、合成樹脂素材をベースにしていても十分な導電性を得られることとなり、成形性がよく低コストのプラスチック素材を使用することが可能となる。
「合成樹脂素材」としては、熱可塑性や熱硬化性のプラスチック、合成ゴムやあるいは熱可塑性エラストマーを含み、例えばスチレン系熱可塑エラストマー、オレフィン系熱可塑エラストマー、ウレタン系熱可塑エラストマー、塩化ビニル系熱可塑エラストマー、ポリアミド系熱可塑エラストマー、エステル系熱可塑エラストマー、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ乳酸、ナイロン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ABS樹脂、AS樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、シリコーン樹脂(シリコーンゴム)、エチレン・プロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、フッ素ゴム等をいう。
「柔軟な材料」は、例えば可撓性があって、外部からの圧力を受けて曲げたり押したりすることで変形するものの圧力がなくなることで元の形状に復帰する素材である上記では、例えば合成ゴムや熱可塑性エラストマーやあるいは発砲プラスチックを含み、例えばスチレン系熱可塑エラストマー、オレフィン系熱可塑エラストマー、ウレタン系熱可塑エラストマー、塩化ビニル系熱可塑エラストマー、ポリアミド系熱可塑エラストマー、エステル系熱可塑エラストマー、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、フッ素ゴム、軟質ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム等がよい。「柔軟な材料」で構成されるのは頭皮接地部だけではなく、電極全体を柔軟な材料で構成するようにしてもよい。
【0014】
また第13の手段として、前記頭皮接地部及び前記ウェット電極装着部は合成樹脂成形品として一体成形されているようにした。
一体的に成形できればコスト的に有利となる他、耐久性を向上させることができるからである。また、脳活動計測用電極は被験者の頭部に装着するものであるからできる限り簡易な構造とすることで電極本体の重量も下げることができるためよい。頭皮接地部及びウェット電極装着部の部分のみでなく脳活動計測用電極全体として一体成形することがよりよい。特に頭皮接地部がウェット電極装着部を兼ねる場合には、同材料で一体成形されていることがよい。
また第14の手段として、前記頭皮接地部と前記ガイド体とはそれぞれ異なる素材から構成されているようにした。
例えば、頭皮接地部を導電性素材とし、ガイド体を非導電性素材としたり、ガイド体を頭皮接地部とは異なる導電性素材とし絶縁体を本体との間に配置して電気信号を遮断するようにすることができる。また、頭皮接地部を金属製素材とし、ガイド体を非導電性合成樹脂素材としたりすることができる。
【0015】
また第15の手段として、前記頭皮接地部の上部位置には電極固定部が形成されているようにした。
電極固定部は脳活動計測用電極を固定するための部位である。これによって、脳活動計測用電極を電極固定部を使用して例えばヘッドキャップやヘッドセットのような頭部装着用のベースに固定することができる。このような電極固定部は頭皮接地部及びガイド体ともに一体成形されていればコスト的に有利となる。また、脳活動計測用電極は被験者の頭部に装着するものであるからできる限り簡易な構造とすることで電極本体の重量も下げることができるためよい。
また第16の手段として、前記脳活動は脳波として記録されているようにした。
また第17の手段として、前記脳活動は脳磁界として記録されているようにした。
これらのような脳活動を用いることで、時間分解能が高く、ミリ秒単位の脳活動も計測することが可能となる。これらの脳活動は、脳活動計測用電極の頭皮への当接状態により計測データの品質が決まってくる。被験者の状態や環境によりドライ式にウェット式を組み合わせた計測ができることは特に好適である。
【0016】
また、第18の手段として、手段1~17のいずれかに記載の脳活動計測用電極を頭部装着用のベースに取り付けて頭部装着装置を構成するようにした。
このような上記の脳活動計測用電極を備えた具体的な頭部装着装置であれば、特にペーストやジェルを用いないドライ電極において電極を頭部に保持できるため、頭皮に当接させることが容易となる。また、生理食塩水や導電性水溶液、導電性ジェル等を含有させたウェット部材をウェット電極装着部に装着して用いる場合にも、電極を固定できるためよい。特に電極固定部を介して取り付けることがよい。ここに「頭部装着装置」とは電極位置に穴の開いたヘッドキャップ、電極を頭部に装着するためのヘッドセット、ヘッドバンド等のことである。このような「頭部装着装置」では、被験者に装着している時に電極の向きを調整しにくく、電極の向きが頭皮に対して正対していなくても気づかないことも起こり得るが、脳活動計測用電極が自立的に正対するようになることによって頭部装着装置の装着時に1つ1つの電極の向きを調整する手間、1つ1つの電極の向きが正しく当接されているかを確認する必要が無くなるためよい。
また、第19の手段として、前記脳活動計測用電極に脳活動信号を増幅する増幅装置に固定されているようにした。
これによって計測された脳波を直ちに増幅装置で増幅することで、外部からの電波や磁場の影響が小さくなるため、外部ノイズの少ない質の良い脳波を取得することができる。
また、第20の手段として、前記増幅装置は前記ベース側に固定され、前記脳活動計測用電極は前記増幅装置のキャッチ部に支持されているようにした。
これによって、増幅装置をベース側の部材として前もって取り付け、そのような増幅装置に脳活動計測用電極を取り付けるようにできるため、脳活動計測用電極のみを単独でベース側に取り付けることができ、作業性が向上する。
また、第21の手段として、前記脳活動計測用電極は前記増幅装置のキャッチ部に対して着脱可能とされているようにした。
これによって脳活動計測用電極のベース側への固定作業を簡単に行うことができる。
また、第22の手段として、前記増幅装置と、前記頭皮接地部の上部に形成された頭部装着用のベース保持部と、によって前記ベースを挟んでいるようにした。
これによって脳活動計測用電極はベースに対してしっかりと所定の位置で固定されることとなる。このようにしっかり固定された脳活動計測用電極を備える頭部装着装置をかぶるだけで被験者の脳活動の計測が可能となる。
【0017】
また、第23の手段として、第1~第17のいずれかの手段の脳活動計測用電極を備え、前記脳活動計測用電極によって得られた脳活動信号に基づいて脳活動を計測するようにした。
このようにすることで、被験者に電極を装着する手間を低減することができ、計測準備時間を短縮した脳活動計測システムを提供することができる。また、この脳活動計測システムを用いることで、装着時の被験者に対する負担を軽減して質の高い計測データを得ることができるようになる。これは脳活動の計測では、脳活動計測用電極を装着している時に痛み、不快感等が発生してしまうと目的としていない痛み、不快感等の脳活動の計測になってしまうなどのため、脳活動計測用電極の装着感が目的とする脳活動を取得するために重要であるためである。
また、第24の手段として、第18~第22のいずれかの手段の頭部装着装置を備え、前記脳活動計測用電極によって得られた脳活動信号に基づいて脳活動を計測するようにした。
このようにすることで、被験者に頭部装着装置を装着する手間を低減することができ、計測準備時間を短縮した脳活動計測システムを提供することができる。また、この脳活動計測システムを用いることで、装着時の被験者に対する負担を軽減して質の高い計測データを得ることができるようになる。これは脳活動の計測では、頭部装着装置を装着している時に痛み、不快感等が発生してしまうと目的としていない痛み、不快感等の脳活動の計測になってしまうためである。脳活動計測用電極の装着由来の痛み、不快感等を軽減することにより、頭部装着装置を装着している時の痛み、不快感等を軽減することができることとなる。
上述した第1~第24の手段の各発明は、任意に組み合わせることができる。特に、第1の手段の構成を備えて、第2~第24の手段の各発明の少なくともいずれか1つの構成と組み合わせを備えると良い。第1~第24の手段の各発明の任意の構成要素を抽出し、他の構成要素と組み合わせてもよい。
【発明の効果】
【0018】
上記発明では、脳活動計測用電極を使用した際に、被験者の頭部形状によらずに脳活動計測用電極が斜めの状態で釣り合わず、正対して頭皮に当接されやすくなり、電極が頭皮に当接後は電極装着による被験者への負担を減らすことができる。また、被験者の体質や気温、湿度等により脳活動の計測値が得られにくい場合に電極構成を簡易に調整できることになり、どのような場合でも被験者の負担少なく適切な計測値が得られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施の形態において脳活動計測システムを使用している状態の模式的な説明図。
図2】第1の実施の形態の電気的構成を説明するブロック図。
図3】第1の実施の形態において使用する電極の(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は平面図、(d)は(b)のA-A断面図。
図4】第1の実施の形態において使用するガイド部材の一部破断正面図。
図5】第1の実施の形態において(a)はキャップ本体に電極を取り付けた状態の部分拡大一部断面説明図、(b)は(a)の電極を頭皮に接地させた状態の説明図。
図6】第1の実施の形態において電極が傾いてガイド体の先端が頭皮に接地した状態の説明図。
図7】第2の実施の形態において使用する電極の(a)は繊維束を第2の突起に突き刺す直前の状態を説明する説明図、(b)は繊維束を第2の突起に突き刺した状態の断面図。
図8】第3の実施の形態において使用する電極の(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は(b)のB-B断面図。
図9】第4の実施の形態において使用する電極の(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は底面図。
図10】第4の実施の形態の電極の製造工程において(a)は第1の成形品の正面図、(b)は第1の成形品を金型にセットした状態の説明図。(c)は第1の成形品に装着して使用することができるウェット部材の底面図、(d)は(c)のB-B線での断面図。
図11】他の実施の形態において使用する電極の(a)は正面図、(b)は頭部装着装置本体に電極を取り付けた状態の説明図。
図12】第1の実施の形態の変形例を説明する断面図。
図13】他の実施の形態の脳活動計測システムを使用している状態の模式的な説明図。
図14】第5の実施の形態において使用する電極であって(a)は正面図、(b)は(a)の電極を頭皮に接地させた状態の説明図。
図15】第6の実施の形態において使用する電極であって(a)は正面図、(b)は(a)の電極を頭皮に接地させた状態の説明図、(c)はウェット部材を装着した(a)の電極を頭皮に接地させた状態の説明図、(d)はウェット部材を装着状態を変更した(a)の電極を頭皮に接地させた状態の説明図、(e)はウェット部材の底面図。
図16】従来の電極において(a)は頭皮に正しく接地した状態の説明図、(b)は傾いて頭皮に接地し、斜めで釣り合っている状態の説明図。
図17】頭皮に電極を接地させた際に電極が斜め状態で釣り合いやすい領域を説明した頭部領域の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面に基づいて説明する。
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態の脳活動計測システムとしての脳波計測システムは頭部装着装置としてのヘッドセット1と、第1の増幅装置としての差動アンプ2と、コンピュータ3から構成されている。ヘッドセット1はいわゆる「カチューシャ」と我が国で呼称される弾力を持ったC字型のヘアバンドの外観の頭部に装着する硬質のフレームからなる脳波を取得する装置である。ヘッドセット1の裏面には脳電位(電圧)計測用の複数の電極5が固着されている。計測者はヘッドセット1を電極5が脳波を反映した脳電位(電圧)を計測するための決められた位置(本実施の形態では電極5は3個であり、図15の前頭部のF3、Fz、F4の位置の例とする)となるように被験者の頭部に装着する。図1では差動アンプ2を有線でヘッドセット1と繋げている例であるが、差動アンプ2をヘッドセット1に内蔵したり、差動アンプ2とヘッドセット1を無線通信で繋げるなどのバリエーションは自由である。
【0021】
図3図5に示すように、第1の実施の形態の電極5は電極本体6と電極本体6に嵌合されたガイド部材7とが組み合わされて構成されている。まず、電極本体6について説明する。第1の実施の形態の電極5は、ウェット電極装着部である突起11にウェット部材を装着せずに、すなわち脱着した状態で使用する場合の例である。
電極本体6は導電性のある柔らかい素材によって一体成形品として構成されている。素材としては、柔軟性のある合成樹脂から適宜選んだものが使用可能である。第1の実施の形態では一例としてそれ自体は導電性ではない合成樹脂素材(例えば、ポリカーボネートやポリウレタン樹脂)が使用され、導電性繊維であるカーボン繊維が分散状に混入されている。第1の実施の形態では一例として合成樹脂中に長さ約2.0mmのカーボン繊維を重量比で5%加えられている。
電極本体6は取り付け部6Aと、取り付け部6Aの下側にフランジ状に周囲に張り出した接地部ベース6Bを備えている。取り付け部6Aは面円形の柱状の中実体であり上下方向における中間位置付近に取り付け用のくびれ部8が形成されている。接地部ベース6Bは円板状の外形とされ、周縁にはガイド体としてのガイド部材7が嵌合される段差部10が形成されている。接地部ベース6Bの裏面には頭皮接地部としての6つの同形状の第1の突起9が接地部ベース6Bの周縁寄りに接地部ベース6Bの中心から等距離等間隔となるように形成されている。第1の突起9は電極本体6の取り付け方向に沿って、つまり想定される頭皮に対して正対する接地部ベース6Bの裏面に対して直交方向に立設(実際は下垂して形成)されている。第1の突起9は接地部ベース6Bの中心を回転中心として回転対称に配置されている。第1の突起9は横断面円形の棒状の外形とされ先端(下端)が半球状に面取り加工されている。接地部ベース6Bの裏面であって第1の突起9に包囲された内側領域にはウェット電極装着部としての4つの同形状の第2の突起11が形成されている。ウェット電極装着部である第2の突起11は長い円錐台形状とされている。第2の突起11は接地部ベース6Bの中心を回転中心として回転対称に配置されている。
本第1の実施の形態では第1の突起9の長さ(中心位置での長さ(高さ))は10mm、径は2mmとした。第2の突起11の長さ(中心位置での長さ(高さ))は3mmとされている。
【0022】
次にガイド部材7について説明する。
ガイド部材7は導電性を有する電極本体6よりも相対的に硬い素材によって一体成形品として構成されている。素材としては、柔軟性のある合成樹脂等から適宜選んだものが使用可能である。第1の実施の形態では一例として導電性ではない合成樹脂素材(例えば、ポリカーボネートやポリウレタン)が使用されている。
図4に示すように、ガイド部材7は中央に円形の透孔12が形成されたリング状のベース板14を備えている。ベース板14の周囲に等間隔となるように6つのガイド体としての同形状のガイド突起13が形成されている。ガイド突起13は横断面円形の棒状の外形とされ先端(下端)が半球状に面取り加工されている。各ガイド突起13は第1の突起9とは異なり先端が外方に向いて、つまり外開きとなるように傾斜して立設されている。この角度は第1の突起9の延出方向に対して概ね10~45度程度の角度とされる。本第1の実施の形態ではガイド突起13の長さ(中心位置での長さ(高さ))は10mm、径は2mmとされている。
図3(d)に示すように、ガイド部材7は電極本体6の取り付け部6A上方から接地部ベース6B上に載置されるように嵌合させ接着剤で固定する。ガイド部材7のベース板14は接地部ベース6Bの段差部10に係合される。この際に図3(b)に示すように、ガイド突起13は接地部ベース6Bの中心から第1の突起9の幅方向中央に延ばした仮想線にその幅方向中央が配置されるように調整する。つまり、ガイド突起13は第1の突起9に隣接した外方向位置に配置される。すべてのガイド突起13の先端とすべての第1の突起9の先端は同一平面上に存在する。尚、接着剤を用いなくとも電極本体6にガイド部材7のベース板14が嵌まる溝を構成しておき、その溝にベース板14を嵌め込んで保持するようにするなどのアレンジは自由にできる。
【0023】
このように構成された電極5は、図5(a)のようにプリアンプ15に対して取り付け部6が無理嵌め状に挿入されヘッドセット1に固着される。
第2の増幅装置としてのプリアンプ15は柔軟な素材(例えば発砲ポリウレタン)から構成され、内部には増幅装置本体となる電子基盤15aが収納されている。プリアンプ15はヘッドセット1裏面の可撓性のある取り付けプレート16に固着されている。プリアンプ15の下面から内部にかけては電極5の取り付け部6Aに対応する形状のキャッチ部としての凹部17が形成されている。電極5は取り付け部6Aによってプリアンプ15に対して着脱可能とされている。電子基板15aの内側は電極本体6と電気的にコンタクトする構造を持っている。各電極5のプリアンプ15はそれぞれケーブル18を介して差動アンプ2に接続され、差動アンプ2はケーブル19を介してコンピュータ3に接続されている。
次に図2に基づいて第1の実施の形態に使用する脳波計測システムの電気的構成について説明する。
上記各電極5はプリアンプ15と差動アンプ2を介して差動アンプ2内に配設されたインターフェース20に接続され、インターフェース20を介してコンピュータ3に取得した脳波として電位データ(電圧データ)が出力される。
プリアンプ15は各電極5ごとに装着され、取得したその位置での脳波電圧を増幅する。差動アンプ2は差動増幅回路を備え、図示しないリファレンス電極から得られた脳波電圧と電位差を算出し増幅する。更に差動アンプ2は内蔵されたフィルター回路によってノイズを低減する機能を有する。差動アンプ2で増幅された電位データは検出対象データとしてケーブル19を介してコンピュータ3に出力される。
コンピュータ3はCPU(中央処理装置)21や記憶装置22及びその周辺装置によって構成されている。CPU21は記憶装置に保存されているプログラムに基づいて演算処理を行う。記憶装置22にはCPU21の動作を制御するためのプログラム、複数のプログラムに共通して適用できる機能を管理するOA処理プログラム(例えば、日本語入力機能や印刷機能等)等の基本プログラムが格納されている。更に、電位データを取り込むプログラム、電位差を算出するプログラム、計測データの信頼度を算出するプログラム、電位データを解析し表示するプログラム等が格納されている。CPU21には入力装置23(マウス、キーボード等)、及びモニター24が接続されている。モニター24に得られた脳波や差分等の計測結果を表示させることができる。
【0024】
上記のように構成されたヘッドセット1及び電極5の使用方法とその作用について説明する。
被験者が図1のようにヘッドセット1を装着することで、取り付けプレート16に固定された図5(a)の状態の電極5は、頭皮に対して押圧されることとなる。この際に、電極5が傾くことがなければ図5(b)のようにすべての第1の突起9は頭皮に先端が当接することとなり、頭皮にヘッドセット1の押圧力が作用するものの荷重は分散されるため頭皮が痛いというほどではない。
しかし、前頭部は個人の頭部形状の差が大きく、人によっては電極が接地される際の角度が必ずしもこの図5(b)のような理想的な当接状態ではなく、例えば図6のような角度をもって電極5が頭皮に接地する可能性がある。人の頭部形状は個人差が大きいため、全ての電極位置で図6のような角度を持って全曲の先端が頭皮に接地する可能性があるが、発明者の検討では、特に図17に示した前頭部(frontal)、正中前頭部(midline frontal)、頭頂部(parietal)、正中頭頂部(midline parietal)の電極を中心とした電極(図15のF3、Fz、F4、P3、Pz、P4及びその周囲の電極)でその可能性が大きい。
ここで、図16(b)の従来例を比較対象として図6を説明する。
図16(b)に示すように、第1の実施の形態のガイド突起13のような部材のない従来の構成では頭皮接地部である突起が当接した状態で釣り合いが取れてしまうことがある。つまり、図16(b)では荷重のかかる方向はちょうど突起が当接した位置において頭部方向となり頭部装着装置(実施の形態ではヘッドセット1)の大きな荷重が一点で頭部に集中してしまうこととなる。
【0025】
一方、図6ではガイド突起13は接地部ベース6Bの外側寄りに配置され、なおかつ下端が外方向に開くように傾斜して形成されているため、想定される程度の傾きではガイド突起13の当接位置付近に荷重の重心が来てしまうことはない。また、ガイド突起13は頭皮接地部である第1の突起9の外側でかつ第1の突起9よりも長尺である。
つまり、ガイド突起13があることで、常に荷重の重心がガイド突起13よりも内側になるように配置され、また電極5が傾いている場合には常にガイド突起13が先に頭皮に接地するように構成されている。
そのため電極5が頭皮に斜めに接近すると、まず、ガイド突起13先端が頭皮に接地し、その接地点を中心に図6の矢印のように電極5は頭皮と接地部ベース6Bの裏面が正対する方向にモーメントが作用することになる。この作用によって傾いた電極5の姿勢が修正され第1の突起9が頭皮に接地するようになる。そして第1の突起9が頭皮に接地することで電気的情報を取得することができるようになる。
尚、理論上は電極5の角度が極端に急になればガイド突起13の位置まで荷重の重心が来てしまうことになるが、それは電極5が90度近く傾斜してしまうことであり、第1の実施の形態のヘッドセット1構成ではそこまでは大きく傾くことはない。ここで想定しているのは被験者の頭部形状の差異等に基づく電極5の傾斜である。
【0026】
上記のように構成することで、第1の実施の形態では次のような効果が奏される。
(1)装用者がヘッドセット1を装着する際に、電極5が頭皮に対して傾いている際には頭皮への接近に伴ってガイド突起13が、まず被験者の頭皮に接地し、これを基点として電極5がモーメントによって角度を修正されるような動きをする。そのため被験者の頭部形状に差が多少あって電極5が頭皮に対して傾いて当接されても確実に頭皮接地部である第1の突起9を接地させることができ、電極5が頭皮に正対して当接されることとなり、正確な電気的情報の取得に寄与する。
(2)第1の突起9は回転対称となっており、なおかつそれぞれの第1の突起9の外方にガイド突起13が配置されているため、電極5がどの方向に傾いても角度が修正されることとなる。
(3)ガイド突起13は先端側が外向きに開いているため、ガイド突起13が接地する頭皮とガイド突起13の間が狭角となるためモーメントが生じやすくなっている。
(4)ガイド突起13の先端側が外向きに開いているため、すなわち末端側は内向きに閉じているため、ヘッドセット1の電極保持部を広くする必要がなく、ヘッドセット1の設計自由度を高くすることができる。
【0027】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は第1の実施の形態の電極5のバリエーションである。第1の実施の形態では第2の突起11にウェット部材を装着せずにドライ式電極として使用した例を示したが、第2の実施の形態はウェット部材を装着したドライ式とウェット式の両方を兼ね備えた電極5を説明する。第1の実施の形態と共通する構成の詳しい説明は省略し、第1の実施の形態の電極5とは異なる点を主として説明する。図面において第1の実施の形態の電極5と共通する部材については共通する番号を付して詳しい説明は省略する。
図7(a)及び(b)に示すように、第2の実施の形態の電極5の第2の突起11にはウェット部材である繊維束31が装着されている。繊維束31は円柱形状の繊維の集合体であり、先端が面取りされている。繊維束31の直径はφ10mm、長さは8mmとなっている。繊維束31はナイロン繊維が束になったものである。
【0028】
ヘッドセット1に配置された電極5に繊維束31を取り付ける際にはその操作をする者は、まず、繊維束31を生理食塩水につけ、繊維束31の内部に生理食塩水を保持させる。または導電性ジェルを繊維束31に垂らして保持させる。生理食塩水や導電性ジェル等の導電性物質を保持した繊維束31を電極5の接地部ベース6B裏面の第1の突起9に包囲された領域の対向位置に配置し、繊維束31を電極5の第1の突起9内部の領域に押し込んでいく。その際に、繊維束31は繊維の延出方向が第1の突起9や第2の突起11の長手方向、つまり電極5を頭皮に接地させる方向となるような向きとして押し込むようにする。
繊維束31を押し込むと繊維束31の周囲は第1の突起9に軽く接触することとなる、第2の突起11はその先端側から繊維束31に刺さり繊維束31内に埋没していく。この際に第2の突起11は繊維束31の繊維の延出方向に略沿った方向に刺さることとなるため、第2の突起11は刺さりやすく、また一旦刺されば第2の突起11によって外方に押しやられた繊維の復帰する反発力によって保持される力が作用することとなるので繊維束31は第2の突起11から抜けにくくなる。また、第2の実施の形態では繊維束31は周囲の第1の突起9にも接触しているため、より抜けにくくなる。
このように構成することで、第2の実施の形態では上記第1の実施の形態の(1)~(4)の効果に加えて、
(5)ドライ式とウェット式の両方を兼ね備えた電極5をヘッドセット1に使用することができるため、確実かつ正確に電気的情報の取得することができる。
(6)被験者の体質や気温、湿度の影響などでドライ電極では脳波の取得が難しい時に、必要に応じてウェット部材を装着しウェット電極として計測できることとなる。また、ウェット部材がなくても計測できる時にはドライ電極として被験者の脳波を計測できることとなる。
【0029】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態は第1の実施の形態の電極5のバリエーションである。そのため第1及び第2の実施の形態と共通する構成の詳しい説明は省略し、第1の実施の形態の電極5とは異なる点を主として説明する。図面において第1の実施の形態の電極5と共通する部材については共通する番号を付して詳しい説明は省略する。
図8(a)~(c)に示すように、第3の実施の形態の電極25は第1の実施の形態の電極5と同様に電極本体26とガイド部材27とが組み合わされて構成されている。ガイド部材27については第1の実施の形態の電極5のガイド部材7とまったく同じ構成である。電極本体26は第1の実施の形態の電極5の電極本体6とは頭皮接地部である第1の突起29の構成と第2の突起30のみ異なる。そのため、第1の突起29の構成と第2の突起30について詳しく説明する。
接地部ベース6Bの裏面には頭皮接地部としての6つの同形状の第1の突起29が接地部ベース6Bの中心から等距離等間隔となるように形成されている。第1の突起29は横断面円形の棒状の外形とされ先端(下端)が半球状に面取り加工されている。第1の実施の形態の第1の突起9が接地部ベース6B裏面の面方向に対して直交する方向に延出されているのに対して、第3の実施の形態の各第1の突起29は隣接するガイド部材27の各ガイド突起13と同じ角度でかつ同じ方向の傾斜を与えられている。つまり、第1の突起29は接地部ベース6Bに対して傾いて形成されている。第1の突起29は基部側が接地部ベース6B裏面の中心寄りに移動することとなり、接地部ベース6B裏面の中心寄り領域の面積が狭くなるため第1の実施の形態の第2の突起11が4つ設けられているのに対して第3の実施の形態では対応する第2の突起30は接地部ベース6Bの中央に1つのみ形成されている。第3の実施の形態でもすべてのガイド突起13の先端とすべての第1の突起29の先端は同一平面上に存在する。
このような構成とすることで、第3の実施の形態では上記第1の実施の形態の(1)~(6)の効果に加えて、
(7)第1の突起29の形成位置を接地部ベース6Bの中央寄りに移動することができるため、接地部ベース6Bを小さく構成することが可能である。その結果、電極25を小型化することができヘッドセット1のような頭部装着装置取り付ける際の設計の自由度が増すこととなる。
(8)電極25に第2の実施の形態のよう繊維束31を使用してドライ式とウェット式の両方を兼ね備えた電極25として使用する際に、繊維束31を接地部ベース6B方向に押し込んでいくと第2の突起30が繊維束31に刺さる際の作用は第2の実施の形態と同様であるが、第1の突起29は基部側が狭くなっているため、繊維束31は第1の突起29の基部寄りで強く保持されることとなる。
【0030】
(第4の実施の形態)
第1~第3の実施の形態は別体の電極本体6(26)とガイド部材7(27)を組み合わせて構成した電極5(25)の例示としての実施の形態を示した。第4の実施の形態ではこれらが一体的である場合を説明する。第4の実施の形態の電極35も図1に示すヘッドセット1に装着して使用するものであるが、ヘッドセット1及びその周辺機器の電気的構成や頭部装着装置側への取り付け構造等は省略し、電極35に特化して説明する
図9(a)~(c)に示すように、第4実施の形態の電極35は円錐台形状の電極本体36を備えている。電極本体36は経線方向が二次曲線状に外に凸となるように緩やかに膨らんだ外周とされ、電極本体36の上面36aと底面36bは平面で互いに平行となるように構成されている。電極本体36の上面36aには電極固定部37が形成されている。電極固定部37は横断面円形の柱部37aと柱部37aの上部に形成された球状連結部7bとから構成されている。電極固定部37はプリアンプ15への通電部としての役割をする。電極本体36の底面36bには第1の頭皮接地部としての4本の突起38が形成されている。ウェット電極装着部と頭皮接地部を兼ねた突起38は断面円形の円柱形状とされ、下方に向かって突出されている。突起38は底面36b中央位置から等距離となる四方に点対称あるいは鏡像対象となるように配置されている。突起38の下端角部は滑らかに面取りされている。
【0031】
電極本体36の外周の下方寄り位置(上下方向において中央寄りも下側)には第2の頭皮接地部としての第1の脚部39と第2の脚部40が放射状に配置形成されている。第1の脚部39と第2の脚部40は電極本体36の外周の同じ高さ位置から4本ずつが交互にかつ等間隔に延出されるように配置されている。第1の脚部39と第2の脚部40はそれぞれ電極本体36外周を基部として外方に延出される横断面円形の長尺の第1の湾曲部39aと第2の湾曲部40aを備えている。第1の湾曲部39aは第2の湾曲部40aと同じ太さに構成されているが、第1の湾曲部39aは第2の湾曲部40aに対して相対的に長尺とされている。つまり、長さの異なる第2の頭皮接地部が混在するような構成である。第1の湾曲部39a及び第2の湾曲部40aは外に凸となるように湾曲して外方に延出され、かつ下方に向かって緩やかに下垂されている。第1の湾曲部39aと第2の湾曲部40aの先端には当接部41が形成されている。当接部41は第1の湾曲部39aと第2の湾曲部40aの先端を膨らませたような球状の形態とされている。図9(c)に示すように当接部41は球状の頂点位置がちょうど下方向を指向する。図9(b)に示すように、第1の脚部39の当接部41は第2の脚部40の当接部41よりも下方に配置され、図9(c)に示すように、底面視において第1の脚部39の当接部41と第2の脚部40の当接部41は電極本体36の中心から等距離となるように配置されている。
寸法の一例として第4の実施の形態の電極35は外径が14mm、高さが12mm、第1及び第2の湾曲部39a、40aの横断面円形の直径が1.2mm、当接部41の直径が2.4mm、突起38の高さが1.5mm、断面円形の直径が1.2mmとされている。
【0032】
このような外観構成の電極35は2色成形によって2種類の合成樹脂から構成されている。電極36の成形は次のような手順で行う。
まず、図10(a)に示すように、第1の成形品43を成形する。第1の成形品43は図示しない金型で成形する。第1の成形品43は将来的に電極本体36の一部と電極固定部37と突起38と第2の脚部40とになる部分を有している。
図10(b)に示すように、金型44内に第1の成形品43を配置する。金型44の第1の成形品43の周囲には破線で示すような形状のキャビティ45が形成される。キャビティ45内に溶融樹脂を充填し、固化後に金型44から離型することで第1の成形品43を包囲するように第2の成形品、つまりが電極36が成形される(図9(a)~(c)の状態)。
電極36において、第1の成形品43は導電性のある柔らかい素材(可撓性のある素材)によって一体成形品として構成されている。素材としては、柔軟性のある合成樹脂から適宜選んだものが使用可能である。一例としてそれ自体は導電性ではない合成樹脂素材(例えば、ポリカーボネートやポリウレタン樹脂、シリコーン)が使用され、導電性繊維であるカーボン繊維が分散状に混入されている。第4の実施の形態では一例として合成樹脂中に長さ約2.0mmのカーボン繊維を重量比で15%加えられており、導電性を有している。
一方電極36外皮となるキャビティ45で成形される電極本体36の一部と第1の脚部39とになる部分は非導電性である。一例として導電性ではない熱硬化性の合成樹脂(例えばシリコーン樹脂)で構成されている。また脚部39は柔軟性のある素材より構成されている。
電極35の4つの突起38には、図10(c)及び(d)に図示した突起38と同形状の窪み61のついたウェット部材60を装着または脱着できるようになっている。ウェット部材60は、イオンを担持したゲル(導電性ゲル)で形成されており、水を含有させたものである。
【0033】
このような構成の電極35は、突起38にウェット部材60を装着せずに用いる場合には、ヘッドセット1の裏面に第1の実施の形態と同様に固着され、被験者がヘッドセット1を装着した際に、電極35が傾いて頭皮に接地した場合には、足の長い第1の脚部39の当接部41がまず接地することとなり、この接地点を基準に電極35は電極本体36の底面36bと正対する方向にモーメントが作用して姿勢が修正されることとなる。また、同時に脚部39が外方に撓むことにより電極35の向きが頭皮に対して正対する向きになることになり、頭皮当接部である脚部40の先端の当接部41が頭皮に当接することになる。電極35は、脚部39及び脚部40が可撓性ある素材であることから当接部41が頭皮に当接した後、更に脚部40と脚部39が広がり、突起38が頭皮に当接することで電極の姿勢が安定する。このとき突起38は頭皮当接部として機能することになる。一方で、電極35の突起38にウェット部材60を装着して用いる場合には、頭皮当接部である脚部40の先端の当接部41が頭皮に当接した後、更に脚部40と脚部39が広がり、ウェット部材60の先端が頭皮に当接して電極の姿勢が安定する。このとき突起38はウェット電極装着部として機能することになる。
このような構成とすることで、第4の実施の形態では上記第1の実施の形態の(1)~(4)と第2の実施の形態の(5)~(6)の効果に加えて、第1及び第2の脚部39、40が頭皮に接地すると第1の湾曲部39aや第2の湾曲部40aが撓むため荷重が一気にかからずクッション性が得られ頭皮が痛くなりにくい。また、突起38に頭皮接地部とウェット電極装着部の2つの役割を持たせることにより、簡易な電極構成でありながら装着感が良く、高い精度で脳活動を記録できる電極を提供できることとなる。
【0034】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態は第1の実施の形態の電極5のバリエーションである。そのため第1の実施の形態と共通する構成の詳しい説明は省略し、第1の実施の形態の電極5とは異なる点を主として説明する。図面において第1の実施の形態の電極5と共通する部材については共通する番号を付して詳しい説明は省略する。第5の実施の形態はガイド体を可撓性のある素材で構成し、頭皮装着部をガイド体より短尺にした例である。
図14(a)のように電極70の頭皮装着部である第1の突起71はガイド体であるガイド突起72より短尺である。例えば第5の実施の形態では第1の突起71の長さ(中心位置での長さ(高さ))は8.5mm、ガイド突起の長さは10mmとされている。使用の際に電極70ではガイド突起72のいずれかがまず頭皮に当接して支点としての役割を果たしたのち、図14(b)のように電極が頭皮面に対して正対して当接し、その際、ガイド突起72が外方に向かって撓んで広がることになる。このガイド突起72が広がる過程において、ガイド突起72が可撓性を有することからクッションとして働き、装着中の頭皮に対する圧力を弱め、装着感が向上することとなる。また、図14(b)のように電極が頭皮に当接している際にもガイド突起72に可撓性があるため電極が頭皮に対して押さえつけられすぎると適切に反発し、頭皮に対する過度の圧力を防止する。このように可撓性のあるガイド突起72はクッション体としての役割を有する。
【0035】
(第6の実施の形態)
第6の実施の形態は第1の実施の形態の電極5のバリエーションである。そのため第1の実施の形態と共通する構成の詳しい説明は省略し、第1の実施の形態の電極5とは異なる点を主として説明する。図面において第1の実施の形態の電極5と共通する部材については共通する番号を付して詳しい説明は省略する。図15(a)に示すように、第6の実施の形態は電極80を可撓性及び導電性のある素材で一体成形した電極の例であり、ガイド体と頭皮接地部、および、頭皮接地部とウェット電極装着部を兼ねることができる。
電極80はガイド体としての複数の(本実施の形態では均等の間隔で6本)第1の脚81と、頭皮接地部としての複数の(本実施の形態では均等の間隔で6本)第2の脚82とを備えている。第1の脚81は第2の脚82を包囲している。第1の脚81は横断面円形の棒状部材であり先端が半球状に面取り加工されている。第1の脚81は電極中心から見て外側に向かって斜めに延出され、かつ電極中心から見て外側に向かって凹となるように構成されている。第2の脚82は先端ほど先細りの長尺の円錐台形状に構成されている。第2の脚82は接地部ベース6Bの裏面からの直線距離で第1の脚81よりも若干短く構成されている。
このような構成の電極80を使用する際には、第1の脚81は電極が頭皮に当接する際にまず最外周のいずれかが頭皮に当接し、支点となる事でガイド体となり、図15(b)のようにウェット部材を装着せずに用いる場合には、頭皮に正対した後はこの第1の脚81は第2の脚82が頭皮に当接するまで広がることとなる。このとき脚81、脚82は頭皮接地部として機能する。図15(c)のウェット部材83は導電性ゲルであり脚82に装着可能な形状に成型されているものである。図15(c)のようにウェット部材83を第2の脚82に装着して用いる場合には、第1の脚81はガイド体として機能した後、ウェット部材83が頭皮に当接するまで広がることになる。このとき、第2の脚82はウェット電極装着部であり、脚81がガイド部を兼ねた頭皮接地部となる。このように電極80はウェット部材を組み合わせるかどうかにより図15(b)ようにドライ電極としても図15(c)のようにウェット電極としても用いることができ、被験者の体質や環境(気温・室温)などに合わせて簡易な手順で電極の特性を変更することができる。尚、ウェット部材83には図示しない小さな切れ込みが第2の脚82先端位置に対応して形成されており、切れ込みに第2の脚82を刺して固定するようにする。例えばウェット部材83の素材が繊維束であれば切り込みは不要である。
【0036】
この例のようにガイド体と頭皮接地部、頭皮接地部とウェット電極装着部の少なくともいずれかを共用できるようにすると、電極をコンパクトかつ簡易な構造にできるためよい。一方で、ガイド体と頭皮接地部、頭皮接地部とウェット電極装着部を共用しない場合には、それぞれを別の機能として設計が容易になり、それぞれに適した材料硬度や導電性を選ぶことができるためよい。ウェット部材の形状や材料、ウェット部材に含ませる導電性物質は、ガイド体や頭皮接地部の形状や材料硬度とあわせ、ウェット部材を装着したときの頭皮接地状態を想定して決定されていることがよい。
ガイド体が可撓性を有する素材よりなる場合、図15(a)の第1の脚81のようにガイド体の罫線方向の断面は、電極中心から見て外側に向かって凹(内に向かって凸)になっていることが特によい。このように外側に向かって凹とすることで、ガイド体が頭皮に当接する際にガイド体としての第1の脚81がすでに曲がっている方向に曲がることになる事から、クッション体として頭皮に対する圧力を適切に減じやすくなる。また、当接時に電極が頭皮に向かって押さえつけられたとしても適切に反発することになるためよい。
【0037】
次に、ウェット部材83のバリエーションとして図15(e)のウェット部材84を使用する場合について説明する。ウェット部材84は、生理食塩水を含浸させた繊維束で構成されており、各第2の脚82の間隔と第2の脚82に取り付ける際の取り付け高さに応じた径の透孔85が形成されている。ウェット部材84はウェット電極装着部(第2の脚82)の先端ではなくウェット電極装着部の途中に配置するために使用される。図15(d)に示すように、ウェット部材84の透孔85に第2の脚82を嵌挿させた状態で電極80を頭皮へ当接させるようにする。このとき、ウェット部材84は頭皮に接していないがウェット部材90を装着している第2の脚82が頭皮接地部となり、ウェット部材84に含まれている生理食塩水がウェット電極装着部を伝わり頭皮面に到達するようになる。これによって頭皮面が乾燥しやすく接触抵抗が下がりにくいような場合であっても十分な精度で脳活動を計測できることとなる。
【0038】
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・上記第1~第6の実施の形態の各電極5、25、35、70、80の形態やサイズは一例であって、他の形態で実施することも自由である。
・上記第1~第6の実施の形態の各電極5、25、35、70、80はプリアンプ15に形成したキャッチ部(凹部17)に無理嵌め状に嵌めて取り付けるようにしていたが、例えば、図11(a)及び(b)のように構成してもよい。
図11(a)に示すように電極45は第4の実施の形態の電極35の電極固定部37を円柱状とした電極固定部42と、外周に雄ネジ部42aを形成した構成である。雄ネジ部42a下部位置にはフランジ部43が一体成形によって形成されている。電極45は導電性素材によって一体成形で構成されている。
このような電極45は、ヘッドセット1に対してプリアンプ49とフランジ部43とによって固定される。プリアンプ49は円盤状の薄板形状の外観とされ、中央の透孔には電極固定部42の雄ネジ部42aのネジと螺合可能なキャッチ部としての雌ネジ部49aが形成されている。プリアンプ49をヘッドセット1内側の取り付けプレート50の取り付け孔51上に配置し、取り付けプレート50の内側から雄ネジ部42aを外側に挿通させ、キャップ本体53の上側(内側)で雄ネジ部42aをプリアンプ49の雌ネジ部49aと螺合・締結させる。図9(b)に示すように、しっかりと締結した状態でプリアンプ49とフランジ部43によって取り付けプレート50は挟まれ電極45は取り付けプレート50に固定される。尚、このような締結状態から雌ネジ部49aに対して雄ネジ部42aを相対的に逆方向に回動させることで電極45の取り付けプレート50から取り外しが可能である。
尚、図11(a)及び(b)では第4の実施の形態の電極35の形状を例に取ったが、他の実施の形態に適用してももちろんよい。
【0039】
上記第1~第3の実施の形態の各電極5、25において、第2の突起11(30)は先端ほど先細りの長尺の円錐台形状であったが、例えば図12に示すように、先端に膨出形状の例えば球状のストッパ47を設けるようにしてもよい。これによって繊維束31がより第2の突起11(30)から抜けにくくなる。
上記第1~第4の実施の形態では各電極5、25、35はヘッドセット1に対して取り付ける構成であったが、ヘッドセット1は頭部装着装置の一例であり、他の頭部装着装置に取り付けるようにしてもよい。例えば図13に示すように可撓性のある布等からなるヘッドキャップ53に適用するようにしてもよい。
・上記第1~第3の実施の形態ではガイド体13は非導電体で構成するようにしていたが、例えば電極本体6とガイド部材7との境界面に絶縁体層を配置し、ガイド部材7を導電物質で製造するようにしてもよい。
・上記実施の形態では例えば電極本体6に導電性を持たせるために合成樹脂素材に導電性の微粒子としてカーボン繊維を混合するようにしていた。しかし、このような導電性微粒子を素材自体に混合しなくとも、例えば導電性物質を電極表面にコーティングしたり、導電性物質その物で電極を構成するなどの別の方法でも本発明は実現でき、本発明に含まれる。
・各電極5、25、35を固定する際には必ずしもプリアンプを使用しなくともよい。プリアンプとは別の手段で各電極5、25、35を固定してもよい。
・上記実施の形態では合成樹脂素材を用いた電極の例を示したが、電極は金属であってもよい。金属の場合には例えば図8を例にすると頭皮に接する第1の突起部29の先端と第2の突起部30の先端は金や銀/塩化銀等でメッキされているのがよい。また、ガイド体であるガイド突起13は、導電性を有しない樹脂素材で形成されることがよい。ガイド突起13を金属で構成する場合には、電極6とガイド突起13との間を絶縁するとよい。
・差動アンプ2とコンピュータ3をつなぐインターフェース20は、上記実施の形態では有線で接続された例を説明したが、無線等による通信でもよい。また、プリアンプと差動アンプ間の情報伝達も有線に限定されず無線等による通信を用いることも本発明のバリエーションに含む。
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成に限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
また、意匠出願への変更出願により、全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材としてもよいし、その部材の部分としてもよい。
【符号の説明】
【0040】
5、25、35、45、70、80…電極、9、29、71…頭皮接地部としての突起、13、72…ガイド体としてのガイド突起、81…ガイド体としての第1の脚、82…頭皮接地部としての第2の脚。
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