(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20240815BHJP
【FI】
A61M25/10 510
(21)【出願番号】P 2020103092
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591245624
【氏名又は名称】株式会社東海メディカルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】滝川 愛子
(72)【発明者】
【氏名】吉戸 新之介
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-316976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管と外管とからなる長尺なシャフトと、
遠位端が前記内管と直接又は間接的に接合されるとともに、近位端が前記外管と直接又は間接的に接合され、前記内管と前記外管との間に形成されるサブルーメンを介して内部に供給される拡張流体の圧力によって拡張及び収縮するバルーンと、を有するバルーンカテーテルにおいて、
前記バルーンは、近位端側のテーパー部の少なくとも一部に傾斜角度が異なる部分を有し、かつ前記テーパー部の近位端側に設けられ、前記外管と接合される接合円筒部と前記テーパー部との境界部が長軸方向にずれており、
前記
バルーンの近位端と前記外管との接続位置は、前記バルーンの前記接合円筒部の途中で接合され、前記バルーンを拡張又は膨張させた場合に、傾斜角度が小さい小テーパー部と前記接合円筒部との境界部から傾斜角度の大きい大テーパー部と前記接合円筒部との境界との間隔では小テーパー部が拡張しやすくなり、小テーパー側の前記サブルーメンの隙間が広くなることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記テーパー部と筒状部との境界は、長軸方向の同じ位置で円周状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
長軸との角度が最も小さい前記テーパー部と、長軸との角度が最も大きい前記テーパー部とは、前記バルーンの中心軸に対して反対側の円周に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
長軸との角度が最も小さい前記テーパー部と前記接合円筒部との境界部と、長軸との角度が最も大きい前記テーパー部と前記接合円筒部との境界部との間隔aと、
長軸との角度が最も大きい前記テーパー部と前記接合円筒部との境界部と、長軸との角度が最も大きい前記テーパー部と前記筒状部との境界との間隔bとは、
その間隔の比a:bが1:1~1:8であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
長軸との角度が最も小さい前記テーパー部と長軸との角度αは、10°~55°であり、長軸との角度が最も大きい前記テーパー部と長軸との角度βは、15°~90°であって、かつ角度βと角度αの角度差β-αは、2°~80°であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
長軸との角度が最も大きい前記テーパー部は、前記テーパー部の途中において傾斜角度が変化する角度変化部を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
長軸との角度が最も小さい前記テーパー部と前記接合円筒部との境界部と、長軸との角度が最も大きい前記テーパー部と前記接合円筒部との境界部との間隔aと、
長軸との角度が最も大きい前記テーパー部と前記接合円筒部との境界部と、長軸との角度が最も大きい前記テーパー部と前記筒状部との境界との間隔bとは、
その間隔の比a:bが1:1~1:8であることを特徴とする請求項6に記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
長軸との角度が最も小さい前記テーパー部と長軸との角度をα、長軸との角度が最も大きい前記テーパー部と長軸との角度をβ、角度変化部における長軸との角度をγとした場合に、|α-γ|=0°~10°であって、β-α=0°~80°であることを特徴とする請求項6又は7に記載のバルーンカテーテル。ただし、|α-γ|は絶対値を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
冠状動脈、四肢動脈、腎動脈及び末梢血管などの血管内の血流の一時的な遮断、制御、血管内診断又は治療に使用する目的においてバルーンカテーテルが使用されている。
【0003】
血管狭窄部位を通過させる際、バルーンを体外に取り出す際の抵抗を大幅に低減し、またバルーン拡張状態、収縮状態で血管狭窄部位を通過させる際に正常な血管を損傷させるおそれがないバルーンカテーテルを提供するため、カテーテルシャフトの遠位端に、直管部と、この直管部の両端に隣接し漸次縮径する近位側および遠位側テーパー部と、これらテーパー部両端に隣接する近位側および遠位側スリーブ部を有してなるバルーンを接合して構成される医療用バルーンカテーテルであって、前記テーパー部の傾斜角度を周方向に亘って周期的に変化させ、当該テーパー部と前記直管部の境界が波形状となるものが提案されている(特許文献1)。
【0004】
このようなバルーンカテーテルは、内管と外管とを有する二重管構造のカテーテルシャフトと、このカテーテルシャフトの先端側に取り付けられるバルーンと、を備えている。二重管構造のカテーテルシャフトは、一般的に、内管のメインルーメンにはガイドワイヤやステント等の治療器具が挿入される挿通路として機能し、内管と外管との間のサブルーメンがバルーン拡張用流体の流路として機能する。サブルーメンは、バルーンの内側と連通しており、バルーン拡張用流体をサブルーメンから導入したり、排出したりすることによって、バルーンを拡張させたり、収縮させたりすることができる。
【0005】
バルーンを拡張させる際に、バルーンを作製する際の成形時のバルーンの形状以上に拡張した場合、バルーンの端部においてバルーンが反転してしまうことがある。このように反転されたバルーンは、バルーンの圧力によって外管を内管側へ押圧し、サブルーメンを閉塞する現象が起きる可能性がある。このサブルーメンが閉塞されると、バルーン拡張流体の導入又は排出に影響を及ぼす可能性があり、バルーンを拡張させたり、収縮させたりすることが困難となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、バルーンを血管内で拡張させた場合に、反転しづらい形状のバルーンカテーテルを提供するとともに、バルーンが反転した場合であっても、サブルーメンを閉塞させることを防止することができるバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0009】
本発明にかかるバルーンカテーテルは、内管と外管とからなる長尺なシャフトと、
遠位端が前記内管と直接又は間接的に接合されるとともに、近位端が前記外管と直接又は間接的に接合され、前記内管と前記外管との間に形成されるサブルーメンを介して内部に供給される拡張流体の圧力によって拡張及び収縮するバルーンと、を有するバルーンカテーテルにおいて、
前記バルーンは、近位端側のテーパー部の少なくとも一部に傾斜角度が異なる部分を有し、かつ前記テーパー部の近位端側に設けられ、前記外管と接合される接合円筒部と前記テーパー部との境界部が長軸方向にずれていることを特徴とする。
【0010】
本発明にかかるバルーンカテーテルによれば、バルーン近位側のテーパー部の角度が部位によって異なり、かつ外管とテーパー部の境界部が長軸方向にずれているので、バルーンをバルーン拡張流体で拡張させた場合に、外管が均一に内管側に押圧されて縮むことなく、所定の方向へ外管が移動することになる。そのため、サブルーメンが完全に閉塞することを防止することができ、バルーン拡張流体の流れを妨げることを防止することができる。そのため、バルーンの拡張及び収縮を確実に行うことができる。
【0011】
また、本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、前記テーパー部と筒状部との境界は、長軸方向の同じ位置で円周状に形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0012】
かかる構成を採用することによって、バルーンの筒状部の拡張に影響を与えることなく、筒状部を均一に拡張させることができる。
【0013】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、長軸との角度が最も小さい前記テーパー部と、長軸との角度が最も大きい前記テーパー部とは、前記バルーンの中心軸に対して反対側の円周に形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0014】
かかる構成を採用することによって、拡張時長軸との角度が最も小さいテーパー部の部位は、外管を内管に対して離れる方向に力が働き、長軸との角度が最も大きいテーパー部の部分は、外管を内管に対して近づく方向に力が働くため、力が加わる方向がほぼ同一方向となるため、より効率的にサブルーメンに隙間を形成することができる。
【0015】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、長軸との角度が最も小さい前記テーパー部と前記接合円筒部との境界部と、長軸との角度が最も大きい前記テーパー部と前記接合円筒部との境界部との間隔aと、
長軸との角度が最も大きい前記テーパー部と前記接合円筒部との境界部と、長軸との角度が最も大きい前記テーパー部と前記筒状部との境界との間隔bとは、
その間隔の比a:bが1:1~1:8であることを特徴とするものであってもよい。
【0016】
かかる範囲に設定することによって、長軸との角度が最も小さいテーパー部の部位が反転することを妨げることができ、長軸の角度が最も大きいテーパー部の方をより反転しやすくすることができる。
【0017】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、長軸との角度が最も小さい前記テーパー部と長軸との角度αは、10°~55°であり、より好ましくは10°~30°であり、長軸との角度が最も大きい前記テーパー部と長軸との角度βは、15°~90°であり、かつ角度βと角度αの角度差β-αは、2°~80°であることを特徴とするものであってもよい。
【0018】
かかる範囲に設定することで、より効率よくサブルーメンの隙間を確保することができる。
【0019】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、
長軸との角度が最も大きい前記テーパー部は、前記テーパー部の途中において傾斜角度が変化する角度変化部を有することを特徴とするものであってもよい。
【0020】
かかる構成を採用することによって、長軸との角度が最も小さいテーパー部と長軸との角度αと、長軸との角度が最も大きいテーパー部と長軸との角度βとの差を大きくすることができ、より効果的にサブルーメンの隙間を確保することができる。
【0021】
さらに、本発明にかかるテーパー部の途中において傾斜角度が変化する角度変化部を有するバルーンカテーテルにおいて、長軸との角度が最も小さい前記テーパー部と前記接合円筒部との境界部と、長軸との角度が最も大きい前記テーパー部と前記接合円筒部との境界部との間隔aと、
長軸との角度が最も大きい前記テーパー部と前記接合円筒部との境界部と、長軸との角度が最も大きい前記テーパー部と前記筒状部との境界との間隔bとは、
その間隔の比a:bが1:1~1:8であることを特徴とするものであってもよい。
【0022】
かかる範囲に設定することによって、長軸との角度が最も小さいテーパー部の部位が反転することを妨げることができ、長軸との角度が最も大きいテーパー部の方をより反転しやすくすることができる。
【0023】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、
長軸との角度が最も小さい前記テーパー部と長軸との角度をα、長軸との角度が最も大きいテーパー部と長軸との角度をβ、角度変化部における長軸との角度をγとした場合に、|α-γ|=0°~10°であって、β-α=0°~80°であることを特徴とするものであってもよい。ただし、|α-γ|は絶対値を表す。
【0024】
かかる範囲に設定することで、より効率よくサブルーメンの隙間を確保することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかるバルーンカテーテルによれば、バルーンを血管内で拡張させた場合に、反転しづらい形状のバルーンカテーテルを提供するとともに、バルーンが反転した場合であっても、サブルーメンを閉塞させることを防止することができるバルーンカテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかるバルーンカテーテル100の模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態にかかるバルーンカテーテル100のバルーン20を示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態にかかるバルーンカテーテル100のバルーン20の別実施形態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態にかかるバルーンカテーテル100のバルーン20を拡張させた状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態にかかるバルーンカテーテル100のバルーン20をさらに拡張させた状態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、比較例にかかるバルーン29を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施例1にかかるバルーンカテーテルの実験結果を示す表である。
【
図8】
図8は、第2実施形態にかかるバルーンカテーテル100のバルーン20を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施例2~実施例14までのバルーン20の形態を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明にかかるバルーンカテーテル100の実施形態について、図を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。なお、説明の便宜のため、特許請求の範囲及び明細書において、「遠位」及び「近位」とは、
図1に示すように、バルーンカテーテル100に対して、手元側を「近位」といい、先端側を「遠位」という。
【0028】
本発明にかかるバルーンカテーテル100は、主として、
図1及び
図2に示すように、内管11と外管12とからなる長尺なシャフト10と、シャフト10の遠位端側に設けられたバルーン20と、を備えている。
【0029】
シャフト10は、内管11及び外管12の二重管構造となっており、内管11内のメインルーメン11aは、主としてガイドワイヤや医療用機器等を通すために使用され、内管11と外管12との間のサブルーメン12aは、バルーン20内と連通しており、主としてバルーン20を拡張するための拡張用流体を導入するための流路として使用される。内管11は、バルーン20の遠位端側まで延びており、遠位端又は遠位端近傍でバルーン20の遠位端側と直接又はリングを介して間接的に液密に接合され、内管11はバルーン20内に配置されている。外管12は、バルーン20の近位端側まで延びており、外管12の遠位端又は遠位端近傍とバルーン20の近位端が直接又はリングを介して間接的に液密に接合されている。
【0030】
内管11は、チューブ状の樹脂で作製されており、例えば、高密度ポリエチレン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリプロピレン、又はフッ素樹脂等が挙げられる。
【0031】
外管12も、チューブ状の樹脂で作製されており、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエチレン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン又はポリプロピレン等を挙げることができる。
【0032】
バルーン20は、樹脂製のフィルム状の中空体で形成されており、内部に気体又は液体からなる拡張用流体を供給することにより圧力により拡張し、吸引することにより収縮可能に形成されている。バルーン20を構成する材料としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマー又はポリウレタンを挙げることができる。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「拡張」とは、バルーン20の素材が伸張して膨張する場合も含む。
【0033】
バルーン20は、
図2に示すように、内部が空洞の円柱状の筒状部22と、近位端に設けられるテーパー部21と遠位端に設けられるテーパー部25と、テーパー部21の近位端側に設けられ、外管12と接合される接合円筒部26と、を備えている。本発明にかかるバルーン20は、近位側のテーパー部21の長軸S(カテーテルシャフトの長さ方向)に対する傾斜角度が途中で変化するテーパー部21の角度が異なる部分を有している。具体的には、バルーン20の断面の一部が、
図2に示すように、一方側のテーパー部21aの長手方向に対する角度αが他方側のテーパー部21bの長手方向に対する角度βよりも小さく形成されている。第1実施形態においては、バルーン20の中心軸に対して反対側となる円周にそれぞれのテーパー部G1及びG2がそれぞれ長軸との角度αが最も小さいテーパー部21a(以下、「小テーパー部」ともいう。)と長軸との角度βが最も大きいテーパー部21b(以下、「大テーパー部」ともいう。)としているが、小テーパー部G1と大テーパー部G2は、必ずしも円周に対して反対側でなくてもよく、小テーパー部G1に対して90°より大きく270°よりも小さい範囲(
図2のRの範囲)に大テーパー部G2が位置していればよい。また、テーパー部21と筒状部22との境界22aは、長軸S方向の同じ位置で円周状に形成されている。そのため、小テーパー部21aと接合円筒部26との境界部23a(接合円筒部26からのテーパー部の開始位置)と、大テーパー部21bと接合円筒部26との境界部23b(接合円筒部26からテーパー部の開始位置)は、長手方向にずれて形成されることになる。この際に、小テーパー部21aから大テーパー部21bまでの間のテーパー部21は、
図2に示すように、半周ずつ異なるテーパー角度となるように作製しても良いし(符号40参照)、
図3に示すように、徐々に角度αから角度βとなるように作製してもよい(符号41参照)。なお、バルーン20の近位端と外管12との接続位置は特に限定するものではなく、
図2のB-B断面図に示すように、バルーン20の接合円筒部26の途中で接合してもよいし、
図2の右上の円に示したように、外管12の端部が、小テーパー部21aと接合円筒部26との境界部23aと、大テーパー部21bと接合円筒部26との境界部23bになるようにしてもよい。
【0034】
このようにして作製されたバルーンカテーテル100は、バルーン20が拡張する際に、近位側のテーパー部21は、全周に渡って均一に拡張又は膨張するのではなく、
図4に示すように、それぞれ小テーパー部21a及び大テーパー部21bは、境界部23a、23bまで拡張又は膨らみやすくなる。そのため、小テーパー部21aと接合円筒部26との境界部23aから大テーパー部21bと接合円筒部26との境界23bの間隔aは、小テーパー部21aのみが拡張しやすくなる。この部分の拡張により、バルーン20の小テーパー部21aは、
図4の矢印に示すように拡張する方向に力が加わり、大テーパー部21b側には拡張する方向に力が加わらないので、外管12は全体的に小テーパー部21a側に力が加わることになり、外管12は内管11に対して位置がずれて、大テーパー部21b側の外管12と内管11との隙間は小さくなり、反対側の小テーパー部21a側の外管12と内管11との間は隙間が広くなる。よって、サブルーメン12aは、全体が閉塞することなく、小テーパー部21a側に確実にバルーン拡張用流体の流路が確保され、バルーン20の拡張(膨張)及び収縮ができなくなることを防止することができる。この状態からさらにバルーン20を拡張させると、
図5に示すように、バルーン20が反転する場合がある。この場合も均一に反転することはなく、大テーパー部21b側の角度βが大きいため、より反転する方向に力が大きく働き、大テーパー部21b側が先に反転することになる。この反転により、さらに、大テーパー部21b側の反転したバルーン20が外管12を内管11側に押圧することになり、反対側の小テーパー部21a側の外管12と内管11との間はさらに広くなって隙間が確保される。
【0035】
小テーパー部21aと接合円筒部26との境界部23aから大テーパー部21bと接合円筒部26の境界部23bの長軸方向の間隔aと、境界部23bから境界22aまでの長軸方向の間隔bとは、その間隔の比a:bが1:1~1:8であるとよい。また、バルーン20の小テーパー部21a側の角度αは、10°~55°、より好ましくは10°~30°で、大テーパー部21bの角度βは、15°~90°、より好ましくは22°~45°であって、かつ角度差β-αは、2°~80°、より好ましくは10°~35°であることが好ましい。なお、ここでの角度α、βとは、バルーン20が膨張することなく(伸展することなく)、拡張した状態での角度をいう。かかる範囲に設定することによって、上述した内管11と外管12との移動がスムーズに行われ、確実にサブルーメン12aにバルーン拡張用流体の流路が確保される。
【0036】
(実施例1)
小テーパー部21aの角度αが12.5°で、大テーパー部の21bの角度βが15°で、テーパー部21と接合円筒部26と境目のずれが0.37mmのバルーン20を有し、バルーン直径がΦ8でバルーン容量が、0.5mlのバルーン20を有するバルーンカテーテル100を用意した(実施例1)。実施例1に係るバルーンカテーテル100のバルーン20を水中におき、バルーン20内に水を0.5ml注入し、その後直ちにバルーンを収縮させる操作を10回繰り返し、拡張及び収縮が可能か否かを確認した。比較例として、
図6に示すように、小テーパー部21aの角度αが12.5°で、大テーパー部の21bの角度βが15°で、大テーパー部21bと接合円筒部との境界部と、小テーパー部と接合円筒部との境界部と、が長軸方向にずれがないバルーン29を使用したカテーテルを使用して、同様に、チューブ内に0.5ml注入し、その後直ちにバルーン29をしぼませる操作を10回繰り返し、拡張及び収縮が可能か否かをそれぞれサンプル5で確認した。結果を
図7に示す。
図7の結果の通り、実施例にかかるカテーテルのバルーンは、一度もバルーンの拡張及び収縮に問題は発生しなかったが、同様の角度のテーパー部を有するバルーンであっても、大テーパー部21bと接合円筒部との境界部と、小テーパー部と接合円筒部との境界部と、が長軸方向にずれがないバルーン29は、多くの収縮不良が発生した。
【0037】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかるバルーンカテーテル100が、
図8に示されている。第2実施形態にかかるバルーンカテーテル100のシャフト10は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0038】
第2実施形態にかかるバルーンカテーテル100は、バルーン20の近位側のテーパー部21の長手方向に対する傾斜角度が半周途中で変化し、対向するテーパー部の角度が異なる部分を有する点は第1実施形態と同様である。第2実施形態では、長手方向に対する角度の大きい大テーパー部21bの途中又は中腹で角度が変化する角度変化部21cを有する点が異なる。かかる構成を採用することによって、小テーパー部21aと接合円筒部26との境界部23aから大テーパー部21bと接合円筒部26との境界部23bの長軸方向の間隔aが同じであっても、第1実施形態と比較して、大テーパー部21bと長軸との角度βを大きくすることができるとともに、途中又は中腹部に外面側に山形となるようにクセづけすることができるので、より大テーパー部21b側が膨らみやすくなり、大テーパー部21b側が先に反転することになるため、より確実に大テーパー部21b側の反転したバルーン20が外管12を内管11に押圧することになり、反対側の小テーパー部21a側の外管12と内管11との間の隙間を確保することができる。また、小テーパー21a側が反転する可能性を低減することができる。
【0039】
なお、
図8に示すように、小テーパー部21aの接合円筒部26との境界部23bにおける長軸方向に対する角度をα、大テーパー部21bの接合円筒部26との境界部23bにおける長軸方向に対する角度をβ、途中の角度変化部21cの長軸方向に対する角度をγとした場合に、以下の関係がなりたつ。
(1)β>γ≧α
(2)β>α≧γ
(3)β≧γ>α
(4)β≧α>γ
【0040】
また、小テーパー部21aと接合円筒部26との境界部23aとし、大テーパー部21bと接合円筒部26との境界部23bとした場合に、境界部23aから境界部23bの長軸方向の間隔aと、境界部23bから境界22aまでの長軸方向の間隔bとは、その間隔の比a:bが1:1~1:8であるとよい。より好ましくは、角度αと角度γとが同じ角度、すなわち角度α-角度γ=0のときは、角度β-角度αが10°~30°であって、a:bの間隔の比が1.0:1.9~1.0:6.9であるとよい。また、角度αと角度γとが同じ角度、すなわち角度α-角度γ=0であって、角度β-角度αが30°より大きく80°以下である場合には、a:bの間隔の比が1:1~1:8であるとよい。また、角度α-角度γ=0°以上10°以下又は角度γ-角度α=0°以上10°以下であって、角度β-角度αが10°~30°である場合には、a:bの間隔の比が1:1~1:8であるとよい。
【0041】
以下、角度α、角度β及び角度γ、間隔a、間隔bに加えて、大テーパー部21bと接合円筒部26との境界部23bから角度変化部21cまでの長軸方向の間隔を間隔dとし、角度変化部21cからテーパー部21と筒状部22との境界22aまでの間隔を間隔cとした場合に、それぞれの値を
図9に示すバルーン(実施例2~実施例14)を使用して、実施例1と同様に、バルーンカテーテル100のバルーン20を水中におき、バルーン20内に水を0.5ml注入し、その後直ちにバルーンを収縮させる操作を10回繰り返し、拡張及び収縮が可能か否かを確認した。その結果、いずれも拡張、収縮において問題がなかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
上述した実施の形態で示すように、手術用のバルーンカテーテルとして産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
10…シャフト、11…内管、11a…メインルーメン、12…外管、12a…サブルーメン、20…バルーン、21…テーパー部、21a…小テーパー部、21b…大テーパー部、21c…角度変化部、22…筒状部、22a…境界、23a…境界部、23b…境界部、25…テーパー部、26…接合円筒部、29…バルーン、100…バルーンカテーテル