IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北海道ポラコン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-積雪防止装置 図1
  • 特許-積雪防止装置 図2
  • 特許-積雪防止装置 図3
  • 特許-積雪防止装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】積雪防止装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/16 20060101AFI20240815BHJP
   E01H 5/00 20060101ALN20240815BHJP
【FI】
E04H9/16 K
E04H9/16 L
E01H5/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020143548
(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公開番号】P2022038855
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】594043100
【氏名又は名称】北海道ポラコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 茂
(72)【発明者】
【氏名】中島 康成
(72)【発明者】
【氏名】相原 貴弘
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-278054(JP,A)
【文献】特開2018-188915(JP,A)
【文献】特開2018-178516(JP,A)
【文献】特開平02-173593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00-9/16
E01H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に溶解する固体の凍結防止剤が収容される第1容器と、前記第1容器と互いの内部が連通し、前記凍結防止剤を水に溶解した水溶液が収容される第2容器とが一体に形成された容器ユニットと、
前記第2容器に設けられ、積雪を防止する対象へ向けて前記水溶液を送り出す第1ポンプと、
前記第1ポンプと一端が接続され、前記対象へ延びている筒状部材と、
前記第1ポンプへ向かう前記水溶液から固体を分離する第1固液分離材と、
を備え
前記第1容器と前記第2容器とに仕切る仕切り部材に、前記第1容器と前記第2容器との内部同士を連通させる開口部が形成されており、
前記第1固液分離材が前記開口部に設けられている積雪防止装置。
【請求項2】
水に溶解する固体の凍結防止剤が収容され、側壁に第1開口部が形成されている第1容器と、
壁に第2開口部が形成されて前記第1容器と互いの内部が連通し、前記凍結防止剤を水に溶解した水溶液が収容される第2容器と、
前記第2容器に設けられ、積雪を防止する対象へ向けて前記水溶液を送り出す第1ポンプと、
前記第1ポンプと一端が接続され、前記対象へ延びている筒状部材と、
前記第1ポンプへ向かう前記水溶液から固体を分離する第1固液分離材と、
前記第1開口部と前記第2開口部とを接続する
を備え
前記第1固液分離材は前記第1開口部と前記第2開口部と前記管とのいずれかに設けられている積雪防止装置。
【請求項3】
前記第1開口部は、前記第1容器の深さの半分よりも低い位置に形成されており、
前記第2開口部は、前記第2容器の深さの半分よりも低い位置に形成されている請求項2に記載の積雪防止装置。
【請求項4】
前記対象から回収した回収液を収容する第3容器と、
前記第3容器の前記回収液を前記第1容器へ送り出す第2ポンプと、
前記第2ポンプの前記回収液の取り込み口に設けられ、前記第2ポンプへ向かう前記回収液から固体を分離する第2固液分離材と、
を備える請求項1ないし3のいずれか1項に記載の積雪防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積雪防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
路面での積雪は、自動車による交通事故や、歩道における人の転倒など、事故の原因となっている。また、屋根に積もった雪は、例えば落下により人の怪我を招くこともある。
【0003】
こうしたことから、積雪には従来から種々の対策が講じられてきており、また、対応策としての手法が開示されている。例えば特許文献1は、屋根板の下面部の配管に、ボイラで温めたお湯を通し、循環させることで屋根の雪を溶かす装置を開示している。一方で、特許文献2は、ボイラ等で加温することを要さない融雪システムを開示している。この特許文献2に記載される融雪システムは、不凍液を水が溜められているタンク内へ秤量し混合することで濃度管理された不凍液とし、この不凍液を圧送ポンプにより屋根に送って散水することで融雪している。散水された液は雨樋により回収されてタンクへ戻され、タンクと屋根との間で循環する。また、固体の凍結防止剤が流通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開1999-30055号公報
【文献】特開2007-278054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置では、前述した通り屋根板の下面部に専用の管を配設する必要があり、更にボイラを設ける必要がある。そのため特許文献1の装置は、施工も装置も大掛かりであり、その結果、費用がかさみ、設置場所の確保にも問題がある。また、特許文献2の融雪システムは、不凍液の濃度を管理するために、濃度監視センサーや補充ポンプが備えられ、また、秤量する工程も行っている。そのため、この融雪システムは構成が複雑である。
【0006】
そこで、本発明は、大掛かりな施工を要せず、より簡便な構成の積雪防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の積雪防止装置は、第1容器と第2容器とが一体に形成された容器ユニットと、第1ポンプと、筒状部材と、第1固液分離材とを備える。第1容器は水に溶解する固体の凍結防止剤が収容される。第2容器は第1容器と互いの内部が連通し、凍結防止剤を水に溶解した水溶液が収容される。第1ポンプは第2容器に設けられ、積雪を防止する対象へ向けて水溶液を送り出す。筒状部材は第1ポンプと一端が接続され、上記対象へ延びている。第1固液分離材は、第1ポンプへ向かう水溶液から固体を分離する。第1容器と第2容器とに仕切る仕切り部材に、第1容器と第2容器との内部同士を連通させる開口部が形成されており、第1固液分離材が開口部に設けられている。
【0009】
本発明の積雪防止装置は、第1容器と、第2容器と、第1ポンプと、筒状部材と、第1固液分離材と、管とを備える。第1容器は、水に溶解する固体の凍結防止剤が収容され、側壁に第1開口部が形成されている。第2容器は側壁に第2開口部が形成されて、第1容器と互いの内部が連通し、凍結防止剤を水に溶解した水溶液が収容される。第1ポンプは、第2容器に設けられ、積雪を防止する対象へ向けて水溶液を送り出す。筒状部材は、第1ポンプと一端が接続され、上記対象へ延びている。第1固液分離材は、第1ポンプへ向かう水溶液から固体を分離する。管は、第1開口部と第2開口部とを接続する。第1固液分離材は第1開口部と第2開口部ととのいずれかに設けられている。
【0010】
第1開口部は、第1容器の深さの半分よりも低い位置に形成されており、第2開口部は、第2容器の深さの半分よりも低い位置に形成されていることが好ましい。
【0011】
上記対象から回収した回収液を収容する第3容器と、第3容器の回収液を第1容器へ送り出す第2ポンプと、第2ポンプの回収液の取り込み口に設けられ、第2ポンプへ向かう回収液から固体を分離する第2固液分離材と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大掛かりな施工を要せず、より簡便な構成で積雪の防止を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態である積雪防止装置の説明図である。
図2】第1タンクと第2タンクとの側方から見たときの断面図である。
図3】第3タンクを側方からみたときの断面図である。
図4】第1タンクと第2タンクとが一体に形成された容器ユニットの側方から見たときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示す積雪防止装置11は本発明の実施形態の一例である。積雪防止装置11は、降雪時におけるトタン製の屋根13の積雪を防止するためのものである。積雪を防止する対象(以下、積雪防止対象と称する)は特に限定するものではなく、家の屋根や工場の屋根などの高所にある物でもよく、道路や駐車場、階段など地面に近い低所にある物でも良い。また、積雪防止対象を構成している素材も限定はなく、トタンと異なる金属、合成樹脂、木、石などでも良い。
【0015】
積雪防止装置11は第1タンク15と、第2タンク17と、第3タンク18と、空タンク19とを備え、凍結防止剤21(図2参照)を水に溶解した水溶液23(図2参照)で雪を押し流し、また、溶かすことにより積雪を防止する。積雪防止装置11は、図1において矢印で示すように、水溶液23を屋根13との間で循環させて用いる。大まかには、積雪防止装置11は、第1タンク15の中の水溶液23を第2タンク17へ流れ込ませて、屋根13の上、すなわち屋根13の外表面へ供給し、第3タンク18により回収して第1タンク15へ戻す。雪が溶けた水により水溶液23が薄まって増量し、増量によって第3タンク18に入りきらない場合には、入りきらない分が余剰分として第3タンク18から空タンク19へ送られる。
【0016】
図2に示す第1タンク15は、外形が直方体に形成されて容量が500L(リットル)である。第1タンク15は凍結防止剤21が収容される第1容器の一例であり、凍結防止剤21の少なくとも一部は水に溶解した状態で収容される。第1タンク15は、凍結防止剤21が収容され、上部が開放された容器本体としての第1タンク本体15aと、第1タンク本体15aの開放した上部を開閉する第1蓋15bとを有する。第1タンク本体15aの側壁には第1開口部15cと流入開口15dとの2つの開口部が形成されている。これら第1開口部15cと流入開口15dとの各々は第1タンク本体15aの底部20近くに形成されている。第1開口部15cと流入開口15dとは、互いに対面する位置に形成されている。本例の第1タンク15と第2タンク17とは後述のように互いに異なる大きさであるが、図2は説明の便宜上、第1タンク15と第2タンク17とを同一の寸法で描いている。第1タンク15と第2タンク17とは異なる大きさでも同一の大きさでも良い。
【0017】
第1タンク15の外形は、直方体には限られず、円柱状でも良い。第1タンク15の容量は積雪防止対象に合わせて任意に変更可能である。また、第1蓋15bが第1タンク本体15aと一体に形成されても良い。その場合には、凍結防止剤21を供給する供給口を上部に形成しておく。第1開口部15cと流入開口15dとが形成される位置は、各々一側面の底面に近く低い位置であれば、その相互の位置関係も含め限定されない。また、水溶液23を循環させない場合は、流入開口15dを閉塞する構成としてもよく、流入開口15dを形成しなくても良い。第1開口部15cは、第2タンク17との間で水溶液23が流入及び流出する観点から水溶液23の液面より低い位置に形成し、底部20に近い位置であるほど好ましい。例えば、第1開口部15cは、上端22が第1タンク15の深さD15の半分の位置24よりも低い位置、すなわち底部20からの高さがD15×1/2である位置24よりも低い位置に形成する。
【0018】
一般に、固体の凍結防止剤は凝固点降下により凍結させないようにするものであり、主に塩化ナトリウムが使用されている。また、固体の融雪剤は水に溶解する際の発熱により融雪するものであり、主に塩化カルシウムが使用されている。これらは、雪や氷に対する作用のメカニズムが互いに異なるものであるが、混合されて流通していることがしばしばあり、凍結防止剤であり融雪剤でもあるとして存在している。本実施形態では、凍結防止剤と融雪剤とは作用のメカニズムは異なるものの積雪を防止する機能を共通して有することから、これらをまとめて凍結防止剤と称する。すなわち、融雪剤は凍結防止剤21として用いることができる。
【0019】
第1タンク15には、水に溶解する固体の凍結防止剤21が収容される。本例では、固体の凍結防止剤21としてNCMサビナックス(株式会社東宏、目安含有割合:塩化ナトリウム80%、塩化カリウム20%)を用いている。過飽和状態とするべく、可溶量を超えた量の凍結防止剤21を投入する。例えば塩化ナトリウムの溶解度は水100gに対し35.9g、塩化カリウムの溶解度は36.0gである(25℃)ところ、温度環境も考慮しつつ十分な量を投入する。このように、第1タンク15に収容する凍結防止剤21の量は、凍結を防止する成分(本例では塩化ナトリウムと塩化カリウム)の水に対する溶解度に基づいて設定することが好ましく、凍結を防止する成分が上記溶解度を超えて過剰量となるように設定することが好ましい。固形の凍結防止剤21は、水に溶解性があるものであれば任意に選択でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カルシウム、酢酸カリウム、尿素などがある。また、収容する量も使用する凍結防止剤の溶解度を下回らない量であればよい。
【0020】
積雪防止装置11の水溶液23が循環して通過する循環経路には、屋根13に十分な流量で水溶液23を流すために十分な量の水溶液23が入れられ、第1タンク15も本例では任意の十分な量の水溶液23が入れられた状態にされる。第1タンク15には、水に溶解する固体の凍結防止剤21が収容されていることから、水が案内されることにより水溶液23が入れられた状態となる。また、上述した固体の凍結防止剤21の収容されている量から上記水溶液は飽和状態である。
【0021】
第2タンク17は、外形が直方体に形成されて、容量が1000L(リットル)である。第2タンク17は、第1タンク15から入り込んだ水溶液23が収容されている。第2タンク17は、上部が開放された容器本体としての第2タンク本体17aと、第2タンク本体17aの開放した上部を開閉する第2蓋17bとを有する。第2タンク本体17aの側壁には第2開口部17cと流出開口17dとの2つの開口部が形成されている。これら第2開口部17cと流出開口17dとの各々は第1タンク15と同様に第2タンク本体17aの底部(符号無し)近くに形成されている。第2開口部17cと流出開口17dとは、互いに対面する位置に形成されている。
【0022】
第2タンク17の外形は、直方体には限られず、円柱状でも良い。第2タンク17の容量は積雪防止対象に合わせて任意に変更可能である。また、第2蓋17bが第2タンク本体17aと一体に形成されても良い。第2開口部17cと流出開口17dとが形成される位置は、各々一側面の底面に近く低い位置であれば、その相互の位置関係も含め限定されない。第2開口部17cは、第1タンク15との連通の観点から水溶液23の液面より低い位置に形成し、第1タンク15と同様に第2タンク本体17aの底部(符号無し)に近い位置であるほど好ましい。すなわち、第2開口部17cの上端(符号無し)が第2タンク17の深さD17の半分の位置(符号無し)よりも低い位置に形成される。
【0023】
積雪防止装置11には、第1タンク15と第2タンク17との互いの内部を連通させるために、第1タンク15の第1開口部15cと第2タンク17の第2開口部17cを接続する連通管25が設けられている。連通管25は、円筒状であり、一端が第1開口部15cに接続され、他端が第2開口部17cに接続されている。なお、この例では、第1開口部15cは、第1タンク本体15aの側壁から円筒状に突出した突出部に形成してある。また、第2開口部17cも同様には、第2タンク本体17aの側壁から円筒状に突出した突出部に形成してある。そこで、連通管25は、第1開口部15cと第2開口部17cとが形成されている各々の突出部に嵌め合わせられるサイズの円筒状としてある。ただし連通管25の形状は限定されず、角筒状でもよく、蛇腹状でもよい。
【0024】
また、固体と液体とを分離するために第1メッシュ材26が、第1開口部15cに設けられている。具体的には、図2に示すように、第1開口部15cが形成されている側壁の貫通孔を覆う状態に設けられている。第1メッシュ材26は金属製の目開き1mmのものを使用している。第1メッシュ材26は第1固液分離材の一例であり、溶け残っている固体の凍結防止剤21が第2タンク17へ進入することを防止するものである。したがって、第1メッシュ材26は、第1開口部15cを通過する水溶液23から固体のまま残っている凍結防止剤21を分離できればよいので、例えば第1開口部15cを外側から覆う状態に設けてもよい。第1固液分離材は第1メッシュ材26に限定されるものではなく、濾布や不織布、金網、多孔質材などでもよい。
【0025】
第1タンク15の内部と第2タンク17の内部とを連通させていることから、水溶液23が第1開口部15cと第2開口部17cと連通管25とを介して自由に行き来することが出来る。そのため、第1タンク15と第2タンク17とのそれぞれの水溶液23は同一の濃度であり、第1タンク15の水溶液23の液面の高さと第2タンク17の液面の高さとは同一となる。また、上記液面の高さは循環の観点から流出開口17dの上端の位置より高いことが好ましい。第1メッシュ材26を第1開口部15cまたは第2開口部17cに設けない場合には、連通管25の一端に第1メッシュ材26を設けてもよい。
【0026】
また、第1タンク15と第2タンク17との各内部を互いに連通させる観点から、第1開口部15cと第2開口部17cとを直接接続してもよい。接続する方法としては、例えば第1開口部15cと第2開口部17cとが形成されている円筒状の各突出部の先端に、外側に向けて折れ曲がった形状にフランジ(図示無し)を設け、互いのフランジをボルトとナットを用いて繋ぐ方法が挙げられる。フランジ同士を接続したときの第1開口部15cと第2開口部17cとの境界に第1メッシュ材26を設ける。このように第1開口部15cと第2開口部17cとを直接接続することにより、連通管25を設けることなく第1タンク15の内部と第2タンク17の内部とを連通させることができる。第1メッシュ材26の洗浄や交換、積雪防止装置11の簡略化の観点から第1開口部15cと第2開口部17cとを直接接続することが好ましい。
【0027】
第2タンク17は、液面の高さが所定の第1の高さ以上であること、及び、所定の第2の高さ以下であることを検知する第1センサ27が設けられている。第1センサ27が第1の高さ以上に液面を検知すると、制御部28に信号が送られて第1ポンプ29に伝達され、第1ポンプ29が動作する。第1センサ27が第2の高さ以下に液面を検知すると、制御部28に信号が送られて第1ポンプ29に伝達され、第1ポンプ29が停止する。また、第1センサ27の代わりに、液面の高さが第1の高さ以上であることを検知するセンサと第2の高さ以下であることを検知するセンサとを一組として用いてもよい。センサの数や設置する位置等は検知方式に応じて決定すればよい。検知方式としては、例えばレーザ式やフロート式、振動式などが挙げられる。
【0028】
第1ポンプ29は、第2タンク17に設けられており、一端が第2タンク17と繋がれており、他端が供給管30に接続されている。第1ポンプ29は、第2タンク17から取り込まれた水溶液23を屋根13へ向けて供給管30を介して送る。第1タンク15の内部にある水溶液23は連通管25を通って第2タンク17へ流れ込み、第1ポンプ29により屋根13へ送られる。第2タンク17と繋がれている一端側には、水溶液23に固体のものが含まれていた場合にその固体を吸引しないように第1メッシュ材26を設けている。これにより、固体の状態の凍結防止剤21を第1ポンプ29へ通さないようにしている。凍結防止剤21が第1ポンプ29内に入り込まないようにする観点から、第1ポンプ29の水溶液23が取り込まれる流出開口17dに第1メッシュ材26を設けることが好ましい。また、第1ポンプ29の水溶液23を取り込む取り込み口(図示なし)に可撓性ホースの一端を接続して、他端を第2タンク17内の水溶液23中に配置する構造を採っても良い。
【0029】
供給管30は、第2タンク17の内部の水溶液23を屋根13へ供給するための流路を形成し、屋根13まで延びている。本例では、円筒状で耐蝕性がある金属製のものを使用しており、供給管30は複数の任意の形状を組み合わせることにより、任意の流路を形成する。供給管30は、屋根13の位置や大きさなどにより適宜選択可能である。例えば、直径をより大きくした複数の管部材(図示無し)で供給管30を形成してもよいし、可撓性を有する管、すなわち可撓性ホースを供給管30として使用することができる。形状、材質は限定されないが、使用する水溶液に対して耐蝕性を有することが好ましい。
【0030】
また、積雪防止対象が地面の舗装などの、積雪防止装置11を設置している位置と近い場合には、供給管30を介さずに水溶液23を散布する散布管(図示無し)を第1ポンプ29に直接接続して使用してもよい。
【0031】
散布管(図示無し)は供給された水溶液23を屋根13に散布する。本例では、万遍なく水溶液23が行き渡るように8か所に貫通孔を有している。8つの貫通孔は、管の長手方向に等間隔で開いている。散布管の形状は限定されるものではなく、散布方法も限定されない。液滴として出すものや液状に流出するもの、霧状に噴霧するものでもよい。また、積雪防止対象を万遍なく覆うことが出来るかぎり、散布管を配置する位置や貫通孔の個数は限定されるものではなく、積雪を防止する対象の形状や面積、傾斜などの条件に合わせて適宜選択することが好ましい。
【0032】
降雪センサ(図示無し)が屋根13に設けられている。降雪センサは気温センサ(図示無し)とカメラ(図示無し)とを有し、気温センサにより気温が5℃未満と検知し、かつ、カメラにより垂直通過物を検知した場合、制御部28へ信号が送られる。降雪センサは上記構成に限られず、積雪の重さや積雪による電気伝導度の変化により検出するものでもよい。
【0033】
排出管(図示無し)が屋根13に設けられている。本例で排出管は円筒状で耐蝕性がある金属製のものを使用している。形状、材質は限定されないが、使用する水溶液に対して耐蝕性を有することが好ましい。また、排出管は複数の任意の形状を組み合わせることにより、任意の流路を形成する。屋根13に流れる水溶液23と雪が融解したことによる水とが混合して排出管により排出される。
【0034】
図3に示す第3タンク18は、外形が直方体で形成されており、容量は250Lである。上面とされる面に回収管31の一端が接続している。他端は上記の排出管と接続しており、水溶液23と積雪防止の効果により雪が融解したことによる水との混合液である回収液33が回収管31を介して第3タンク18により回収される。第3タンク18の外形は、直方体に限られず、円柱状でもよい。また、容量は積雪防止対象に応じて任意に変更可能である。
【0035】
第3タンク18は、空タンク19(図1参照)を備えており、回収液33が第3タンク18の容量を超えて過剰に存在する場合は、空タンク19へ過剰分が排出される。排出の方法は任意に選択でき、例えばポンプ(図示無し)で排出してもよく、電磁弁等により制御して排出してもよい。本例では、積雪防止装置11の構成の簡便性と軽量化との観点から、第3タンク18からのオーバーフローにより排出する。また、空タンク19は任意で複数個備えることができ、本例では図3に示すように第1空タンク19a、第2空タンク19b、第3空タンク19cの3つを備えている。積雪防止装置11を使用する場所(例えば地域)の降雪量に応じて空タンク19の数を決定することが好ましく、この観点から本例より多くても少なくてもよい。
【0036】
第3タンク18は、液面の高さが所定の第3の高さ以上であることと、所定の第4の高さ以下であることとを検知する第2センサ35が設けられている。第2センサ35が第3の高さ以上に液面を検知すると、制御部28に信号が送られて第2ポンプ37に伝達され、第2ポンプ37が動作する。第2センサ35が第4の高さ以下に液面を検知すると、制御部28に信号が送られて第2ポンプ37に伝達され、第2ポンプ37が停止する。また、第2センサ35の代わりに、液面の高さが第3の高さ以上であることを検知するセンサと第4の所定の高さ以下であることを検知するセンサとを一組として用いてもよい。センサの数や設置する位置等は検知方式に応じて決定すればよい。検知方式としては、例えばレーザ式やフロート式、振動式などが挙げられる。さらに、第1センサ27と第2センサ35とを互いに連動させてもよい。その場合は、第1センサ27が第2の高さ以下に液面を検知し、かつ、第2センサ37が第3の高さ以上に液面を検知したことを条件として、第2ポンプ37が動作する。すなわち、上記条件を満たさなければ、第2ポンプ37は停止している。第2ポンプ37が動作しない場合は、第3タンク18から空タンク19へ回収液33がオーバーフローにより排出される。
【0037】
第2ポンプ37は、第3タンク18に設けられており、液体以外を吸引しないように第2メッシュ材36を有した一端が第3タンク18と繋がれており、他端が第1タンク15へ回収液33を流入させる流入管39と接続されている。第2メッシュ材36は第2固液分離材の一例である。第2メッシュ材36は第3タンク18から送られる回収液33に固体(異物等)が含まれている場合にその固体を第2ポンプ37へ通さない。固体が第2ポンプ37内に入り込まないようにする観点から、第2ポンプ37の回収液33の取り込み口に第2メッシュ材36を設けることが好ましい。また、第3タンク18へ固体が入り込まないようにするためには第2メッシュ材36を回収管31の一端に設ければよい。また、第2ポンプ37の回収液33を取り込む取り込み口(図示なし)に可撓性ホースの一端を接続して、他端を第3タンク18内の回収液33中に配置する構造を採っても良い。
【0038】
流入管39は一端が上述した第2ポンプ37に接続され、他端が第1タンク15の流入開口15dと接続されている。流入管39は、円筒状で金属製のものを使用している。形状や材質は限定されず、また、複数の任意の形状を組み合わせることにより、任意の流路を形成する。流入管39は、流す水量により適宜選択でき、例えば、管の直径を大きくしたり、管として可撓性ホースを使用することができる。
【0039】
次に上記構成の作用を説明する。図1に示すように、第1タンク15の凍結防止剤の水溶液23が第2タンク17へ流れ込み、屋根13へ供給され、水溶液23が散布され屋根13の上面を流れることで積雪を防止する。屋根を流れた水溶液23と雪が溶けた水とが混ざり合った回収液33を第3タンク18に回収する。この回収液33が第1タンク15へ戻ることで水溶液23が屋根13を介して循環する。第3タンク18の回収液33が一定量以上になると第3タンク18から空タンク19へ排出される。空タンク19の回収液33は、再利用してもよいし、地面に撒くなどにより廃棄してもよい。第1空タンク19a,第2空タンク19b,第3空タンク19c,・・・を図3に示すように直列に接続している場合には、最下流の空タンクからの過剰分を地面に撒くなど廃棄してよい。積雪防止対象である屋根13の面積は10mであるが、水溶液23を対象領域に十分に供給できる限り、面積の広狭は問わない。
【0040】
上記のように水溶液23の循環により雪を溶かす場合には、図2に示す第1タンク15内へ凍結防止剤21を入れ(投入し)、積雪防止装置11を水溶液23が連続的に循環するのに十分な量の水を第1タンク15に入れる。第1タンク15は500Lの容量であり、寸法としては1m×1m×0.5mであることから、屋根13の面積10mに対して小型なタンクが使用されている。第1タンク15の容量に基づいて凍結防止剤21を225kg投入している。水に溶解する固体の凍結防止剤21を使用しているから、水を第1タンク15に入れることで凍結防止剤21の水溶液23が第1タンク15でつくられる。積雪防止装置11は、凍結防止剤21を第1タンク15に直接投入することができる構成であり、供給するポンプが不要で、凍結防止剤21の秤量も不要であるから、簡便な構成である。
【0041】
水溶液23が第1メッシュ材26を通過して第2タンク17へ流れ込むことにより、第2タンク17に水溶液23が貯留されて収容した状態になる。第1メッシュ材26が第1タンク15に設けられているから、固体の状態で残っている凍結防止剤21は第1タンク15に留まる。また、第1タンク15と第2タンク17とは互いの内部が連通管25を介して連通しているから、水溶液23は第1タンク15と第2タンク17との間を行き来することができる。そのため、第1タンク15内と第2タンク17内とで水溶液23の濃度差による移流、表面張力の変化による対流が発生し、収容されている状態にするだけで水溶液23の濃度が均一となる。この作用により、凍結防止剤を水に溶解させるための撹拌装置やヒータ(ボイラ、加熱機器等)などを必要としないことから、簡便な構成となっている。また、積雪防止対象に管の配設をすることが容易であるから、大掛かりな施工が不要である。
【0042】
連通管25を介さずに、第1タンク15に設けられた第1開口部15cと第2タンク17に設けられた第2開口部17cとを互いに接する状態で接続する場合は、第1タンク15の内部と第2タンク17の内部とが、連通管25を用いた場合に比べてより近く位置する。そのため、第1タンク15の内部の水溶液23と第2タンク17の内部の水溶液23と濃度が効率良く飽和状態になる。第1メッシュ材26は上記接続したときの第1開口部15cと第2開口部17cとの境界に設けてある。
【0043】
本例は、外気温が約-3℃の屋外で実施しており、この時の水溶液23の濃度は26.3%である。例えば0℃の水に対する塩化ナトリウムの溶解度は、水100gに対して35.65gであることから、塩化ナトリウム水溶液の飽和状態の濃度が26.28%と算出される。これにより、本例の水溶液23は上述した通り、濃度が26.3%であるため飽和状態に達していることがわかる。本例は、凍結防止剤21を過剰量投入して、過飽和状態としており、センサなどによる濃度の管理が不要であるから、簡便な構成である。
【0044】
上記液面の高さが所定の高さ以上であることを検知する第1センサ27に達すると、第1センサ27から制御部28へ信号が送られ、第1ポンプ29が作動する。ここで、降雪が降雪センサ(図示無し)により検知され、この検知に応答して第1ポンプ29が動作する。これにより、第2タンク17に収容されている水溶液23が、屋根13に向けて延びている供給管30を通って屋根13の上へ供給される。第1ポンプ29が「作動する」とは、ポンプとしての送液の機能を発揮する前の準備(待機)状態となっていることを意味し、「動作する」とは、ポンプとしての送液の機能を発揮する状態になっていることを意味する。そのため、降雪センサによる降雪が検知に応答して、「作動状態」から「動作状態」へ切り替わりポンプとして送液する。
【0045】
第1ポンプ29が第2タンク17に設けられていることから、固体を含まない水溶液23を供給管30へ送ることができる。これにより、第1ポンプ29の内部に固体が入り込むことが防がれる。
【0046】
供給管30が第1ポンプ29に接続されていることから、第2タンク17から離れた積雪防止対象に対しても効果を発揮することができる。供給管30は積雪防止対象の面積や位置に応じて形状、長さや大きさを適宜決定されることにより、面積に応じた量の供給ができる。その他にも、供給管30は建物間の狭い空間を通すことが出来たり、工場内の配管の間を任意に通すことが出来る。そのため、第1タンク15、第2タンク17等は建物に隣接したスペースや工場のわずかなスペースに配し、供給管30を積雪防止対象へ延ばすだけで積雪が防止される。このように、大掛かりな施工が不要であり、設置場所の自由度も高い。
【0047】
屋根13へ供給された水溶液23が、散布管(図示無し)により屋根13の上に満遍なく散布される。本例では、屋根13の面積が10mであり、8つの貫通孔が開いている散布管から16.5L/minの流量で散布することで屋根13の上の表面の全域に水溶液23を接触させている。この面積と流量との関係(対応)は実施の一例である。散布された水溶液23は、雪を融解しながら流れて、融解した雪から発生した水と混ざりあって排出管(図示無し)へと通じて屋根13から排出される。
【0048】
屋根13から排出された水溶液23と雪解け水との混合液は回収され、回収液33として、回収管31を通って第3タンク18へ収容される。本例では、降雪量が9L/hであり、回収液33の濃度は26.1%であった。水溶液23の濃度が26.3%であったことから、上記降雪量の条件では、雪解け水により水溶液23の濃度が0.2%下がっていた。回収液33が送られてきて回収液33の液面が第2センサ35に達すると、第2センサ35から制御部28へ信号が送られ、第2ポンプ37が作動する。降雪が降雪センサにより検知されると、第2ポンプ37が動作し、第3タンク18に収容されている回収液33が流入管39を介して第1タンク15へ送り出される。なお、第2ポンプ37の「作動」及び「動作」は、第1ポンプ29の「作動」及び「動作」と同じ意味である。
【0049】
第1タンク15へ戻された回収液33は、第1タンク15に残っているまたは新たに補充されて収容されている固体の凍結防止剤21の溶解により、水溶液の濃度が飽和状態へ戻ることで水溶液23として再度屋根13に供される。
【0050】
降雪量が多い状況で、積雪防止の効果により多量の雪解け水が発生した場合、第3タンク18に収容されている回収液33が一定量以上になると、オーバーフローにより回収液33が空タンク19へ排出される。複数の空タンク19が直列に連結されているから第1空タンク19aから第2空タンク19b、第3空タンク19cへと排出されていく。なお、複数の空タンク19を第3タンク18に対して並列に接続してもよい。その場合には、第1空タンク19aから第2空タンク19b、第3空タンク19cへと、第3タンク18からのオーバーフロー先を切り替えればよい。
【0051】
制御部28は、第1ポンプ29と第2ポンプ37とを制御する。降雪センサが降雪を検知すると制御部28に信号が送られ、この信号が動作命令として第1ポンプ29と第2ポンプ37とのそれぞれに送られる。第1センサ27が液面を検知して第1ポンプ29が作動している場合には第1ポンプ29が動作して水溶液23の屋根13への供給が始まる。同様に第2センサ35が液面を検知して第2ポンプ37が作動している場合には第2ポンプ37が動作して回収液33が第1タンク15へ送られる。送られた回収液33は固体の凍結防止剤21の溶解により飽和状態となり、水溶液23として第1ポンプ29により屋根13へ供給されていく。このようにして積雪防止装置11においては水溶液23及び回収液33が循環していく。なお、この例では、第3タンク18を設けることにより、凍結防止剤21及び水溶液23を循環して繰り返し使用しているが、第3タンク18を設けずに、屋根13からそのまま廃棄としてもよく、すなわち循環させなくてもよい。凍結防止剤21を含む水溶液23は環境及び人体にとって安全だからである。その場合には、屋根に予め設けた雨樋を介して廃棄してもよいし、雨樋とは別に屋根に水溶液23と雪が溶けた水との混合液を受け取る受取り部(図示無し)を設けて、この受取り部を介して廃棄してもよい。
【0052】
また、この例では第1メッシュ材26を、第1開口部15cと、流出開口17dとの2か所に設けてある。しかし、第1メッシュ材26は、第1ポンプへ向かう水溶液から固体を分離して除去するためのものであるから、水溶液の流れ方向において第1ポンプの上流側の1か所に設けていればよい。
【0053】
上記の例では、第1容器としての第1タンク15と第2容器としての第2タンク17とが連通管25を介して接続しているが、第1容器と第2容器とが一体に形成されていてもよい。図4に示す容器ユニット40は、第1タンク40aと第2タンク40bとが一体に形成されており、内部空間を水平方向において2つに仕切るための仕切り部材41が備えられている。容器ユニット40は、1面を開放している構造であり、解放している面を上面としたとき、上面の対面を底面とし、上面と底面を繋ぐ4面を側面とする。上面には容器蓋40cを有し、1つの側面の底面に近い部分に容器流入開口40dを有し、その対面の底面に近い部分に容器流出開口40eが形成されている。また、容器蓋40cを有さずに上面が塞がれている形状でも良く、解放した状態でも良いが、容器内の洗浄や作業性、異物の混入を防止する観点から上面は開閉できる状態にすることが好ましい。容器流入開口40dと容器流出開口40eとが形成される位置は各々一側面の底面に近く低い位置であれば、その相互の位置関係も含め限定されない。
【0054】
仕切り部材41は、板状に形成されており、容器ユニット40の内部に起立した姿勢で設けられている。仕切り部材41には、第1タンク40aと第2タンク40bとの内部同士を連通させる連通開口部42が形成されており、第1メッシュ材26が設けられている。仕切り部材41は、第1タンク40aと第2タンク40bとに連通開口部42以外の部分で隙間を生じさせない形状、大きさであれば良い。連通開口部42は開口の大きさに限定されず第1メッシュ材26の大きさに合わせれば良い。
【0055】
この例の容器ユニット40を備える積雪防止装置(図示せず)も積雪防止装置11と同様に、撹拌装置やヒータが不要であり、このように構成が簡便である。また、容器ユニットが軽量、小型であるから、容器ユニット40を備える積雪防止装置は、大掛かりな施工を要しない。
【0056】
また、容器ユニット40は第1タンク40aと第2タンク40bとが一体に形成されており、上述した開口部同士を接続する場合に比べて更に効率良く水溶液23の濃度が飽和状態になる。第1タンク40aと第2タンク40bとの間に仕切り部材41を備えて、形成された連通開口部42に第1メッシュ材26を設けてある。これにより、第1ポンプ29の内部に固体が入り込むことが防がれる。
【符号の説明】
【0057】
11 積雪防止装置
13 屋根
15,40a 第1タンク
15c 第1開口部
17,40b 第2タンク
17c 第2開口部
18 第3タンク
19 空タンク
23 水溶液
25 連通管
26 第1メッシュ材
29 第1ポンプ
37 第2ポンプ
36 第2メッシュ材
30 供給管
40 容器ユニット
41 仕切り部材
D15,D17 深さ
図1
図2
図3
図4