(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】ドライバー
(51)【国際特許分類】
B25B 15/00 20060101AFI20240815BHJP
B25B 23/16 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B25B15/00 630D
B25B23/16 A
(21)【出願番号】P 2020181281
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391005271
【氏名又は名称】株式会社新亀製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】藤本 健文
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0170394(US,A1)
【文献】実開昭57-068762(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0089119(US,A1)
【文献】中国実用新案第201769142(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 15/00 - 15/06
B25B 23/16
B25G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寸法の短い握り柄の先端部に嵌合凸部を形成し、寸法の長い握り柄の後端部に嵌合凹部を形成し、この嵌合凹部に前記嵌合凸部を嵌脱自在として連結したものとしており、
前記短い握り柄は、短ビットを前部に突出させたものとし、前記長い握り柄は、嵌合凹部の底面からこの長い握り柄の前部にかけて挿入穴を設け、この挿入穴に前記短ビットを挿脱自在として保持すると共に、長ビットを前部に突出させて
おり、
前記嵌合凸部は多角柱とし、この多角柱の各角部に突出させた突起部を設けたものとし、前記嵌合凹部は嵌合凸部に合致する多角穴とし、この多角穴の各隅部に前記突起部に合致する溝部を設けていることを特徴とするドライバー。
【請求項2】
寸法の短い握り柄の先端部に嵌合凸部を形成し、寸法の長い握り柄の後端部に嵌合凹部を形成し、この嵌合凹部に前記嵌合凸部を嵌脱自在として連結したものとしており、
前記短い握り柄は、短ビットを前部に突出させたものとし、前記長い握り柄は、嵌合凹部の底面からこの長い握り柄の前部にかけて挿入穴を設け、この挿入穴に前記短ビットを挿脱自在として保持すると共に、長ビットを前部に突出させており、
前記短い握り柄は、嵌合凸部の前端からこの短い握り柄の後部にかけて挿入穴を設け、この挿入穴に短ビットを挿脱自在として保持したものとし、前記長い握り柄は、前端から後部にかけて挿入穴を設け、この挿入穴に長ビットを挿脱自在として保持して
おり、
前記嵌合凸部は多角柱とし、この多角柱の各角部に突出させた突起部を設けたものとし、前記嵌合凹部は嵌合凸部に合致する多角穴とし、この多角穴の各隅部に前記突起部に合致する溝部を設けていることを特徴とするドライバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場などのネジやボルト等の締め付け場所に応じて、握り柄の長さを変えることができるドライバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のドライバーには、建築現場などのネジやボルト等の締め付け場所に応じて使用するために、握り柄の長いものや短いものが多種類存在し、ビットの保持機構などに色々な工夫を凝らしている。
【0003】
例えば、握り柄の長いものでは、
図8に示したように、握り柄11の先端部に固着したビットホルダー12に、ビットBの差し込み穴13付きのナット14を突設したものが存在する(特許文献1)。
【0004】
さらに、握り柄の長いものでは、
図9に示したように、複数個所に周溝21を形成したビット軸22と、ビット軸22を回転不能に保持する保持筒23を設けると共に内部をこのビット軸22の挿入孔24とした握り柄25とからなるものとしており、ビット軸22を握り柄25の保持筒23に差し込んだ状態において、このビット軸22のいずれかの周溝21をロックするようにしたものが存在する(特許文献2)。
【0005】
そして、握り柄の短いものでは、
図10に示したように、ビットホルダー31を備えた交換可能なドライバーとしており、握り柄32の直径方向にビット33の軸長より長くした収納孔34を貫通し、収納孔34の内周面に、この収納孔34へ収納した交換用ビット33を弾力的に保持する凸部35aが形成された板バネ35を設けたものが存在する(特許文献3)。
【0006】
また、握り柄の短いものでは、
図11に示したように、使用者の手の平に収まる程度の大きさとした握り柄41の前端に軸部42を突設したドライバーとしており、握り柄41を略円筒胴形状とし、握り柄41の径を通常寸法の手持ちドライバーの握り柄と略同一径とし、握り柄41の厚みを使用者の手の指の腹に収まる程度の寸法としたものが存在する(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-245174号公報
【文献】実用新案登録第3117527号公報
【文献】実公昭60-24541号公報
【文献】特開2006-159364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のドライバーでは、握り柄の長いものや短いものが単独でしか存在しないため、建築現場などのネジやボルト等の締め付け場所に応じて、握り柄の長さの適したものを使用するには、握り柄の長いものと短いものを、さらには必要に応じて中ぐらいものも用意しなければならず、持ち運んだり、保管するのに不便であるという課題を有していた。
【0009】
そこで、本発明は、従来のドライバーが有する課題を解決するものであり、握り柄の長いものや短いものを何本も持ち運んだり、保管する必要がなく、建築現場などで分離し、長さを変えて、そのネジやボルト等の締め付け場所に応じたものを用いることができるドライバーを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため、本発明のドライバーは、寸法の短い握り柄1の先端部に嵌合凸部2を形成し、寸法の長い握り柄3の後端部に嵌合凹部4を形成し、この嵌合凹部4に前記嵌合凸部2を嵌脱自在として連結したものとしている。そして、前記短い握り柄1は、短ビットBaを前部に突出させたものとし、前記長い握り柄3は、嵌合凹部4の底面4bからこの長い握り柄3の前部にかけて挿入穴3aを設け、この挿入穴3aに前記短ビットBaを挿脱自在として保持すると共に、長ビットBbを前部に突出させている。さらに、前記嵌合凸部2は多角柱とし、この多角柱の各角部に突出させた突起部2aを設けたものとし、前記嵌合凹部4は嵌合凸部2に合致する多角穴とし、この多角穴の各隅部に前記突起部2aに合致する溝部4aを設けたものとしている。
【0011】
本発明のドライバーにおいて、前記短い握り柄1は、嵌合凸部2の前端からこの短い握り柄1の後部にかけて挿入穴1aを設け、この挿入穴1aに短ビットBaを挿脱自在として保持したものとし、前記長い握り柄3は、前端から後部にかけて挿入穴3bを設け、この挿入穴3bに長ビットBbを挿脱自在として保持している。
【発明の効果】
【0014】
本発明のドライバーは、以上に述べたように構成されているので、建築現場などで分離し、長さを変えて、そのネジやボルト等の締め付け場所に応じたものを用いることができるものとなり、持ち運んだり、保管するのにも便利なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のドライバーの一実施形態を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す本発明のドライバーを分離した状態の一部破断平面図である。
【
図3】
図1中のA-A線による本発明のドライバーの断面図である。
【
図4】
図2中のB-B線による本発明のドライバーの断面図である。
【
図5】
図2中のC-C線による本発明のドライバーの断面図である。
【
図6】
図2中のD-D線による本発明のドライバーの断面図である。
【
図7】
図2中のE-E線による本発明のドライバーの断面図である。
【
図8】従来のドライバーの第一例を示す断面図である。
【
図9】従来のドライバーの第二例を示す断面図である。
【
図10】従来のドライバーの第三例を示す要部破断平面図である。
【
図11】従来のドライバーの第四例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のドライバーを実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
本発明のドライバーは、寸法の短い握り柄1の先端部に嵌合凸部2を形成し、寸法の長い握り柄3の後端部に嵌合凹部4を形成し、この嵌合凹部4に前記嵌合凸部2を嵌脱自在として連結したものとしている。
【0018】
前記握り柄1は握り柄3より短く、前記握り柄3は握り柄1より長ければ、特にその寸法は限定されることはないが、前記握り柄1の全長Laは、4~6cm程度が好ましく、前記握り柄3の全長Lbは、6~10cm程度が好ましい。
【0019】
前記握り柄1は、嵌合凸部2の前端からこの握り柄1の後部にかけて挿入穴1aを設けており、この挿入穴1aに短ビットBaを挿脱自在として保持し、この短ビットBaを前部に突出させている。前記握り柄1は、加工性などにおいて合成樹脂製とするのが好ましく、胴体部の周囲には複数のリブ1bを設けており、手で持ったときに滑らないようにして締め付け作業をし易くしている。
【0020】
前記挿入穴1aは、握り柄1に内装された保持筒5の筒穴としている。この保持筒5は、強度性などにおいて金属製とするのが好ましく、中間部には挿入穴1aに連通する縦孔5aを設け、この縦孔5aを包囲するCリングなどの支持体6に設けた突起6aを、前記縦孔5aから挿入穴1aに突出させている。そして、この突起6aを前記挿入穴1aに挿入した短ビットBaの側面に押し当てることにより、この短ビットBaが前記挿入穴1aに挿脱自在として保持されるようにしている。なお、前記短ビットBaは、このようにして握り柄1に挿脱自在として保持されるようにしているが、握り柄1に固定したものとしてもよい。
【0021】
また、前記挿入穴1aは六角穴とし、短ビットBaは六角ビットとしているが、前記挿入穴1aは六角穴以外の角穴とし、短ビットBaは挿入穴1aに対応する角ビットとすることもできる。
【0022】
前記嵌合凸部2は、六角柱などの多角柱とすることができるが、
図6に示したように、多角柱の各角部に、放射方向に突出させた突起部2aを設けたものとしている。また、前記嵌合凹部4は、嵌合凸部2に合致する六角穴などの多角穴とすることができるが、
図7に示したように、多角穴の各隅部に、前記突起部2aに合致する溝部4aを設けたものとしている。このようにすることにより、前記嵌合凹部4に嵌合凸部2を嵌合させたときの接触面積が増え、両者の嵌合強度が高められることになる。
【0023】
前記握り柄3は、嵌合凹部4の底面4bからこの握り柄3の前部にかけて挿入穴3aを設けており、この挿入穴3aに前記短ビットBaを挿脱自在として保持している。さらに、前記握り柄3は、前端から後部にかけて挿入穴3bを設けており、この挿入穴3bに長ビットBbを挿脱自在として保持し、この長ビットBbを前部に突出させている。前記握り柄1は、加工性などにおいて合成樹脂製とするのが好ましく、胴体部の周囲には複数のリブ3cを設けており、手で持ったときに滑らないようにして締め付け作業をし易くしている。
【0024】
前記挿入穴3aは、握り柄3に内装された保持筒7の筒穴としている。この保持筒7は、強度性などにおいて金属製とするのが好ましく、後部には挿入穴3aに連通する縦孔7aを設け、この縦孔7aを包囲するCリングなどの支持体8に設けた突起8aを、前記縦孔7aから挿入穴3aに突出させている。そして、この突起8aを前記挿入穴3aに挿入した短ビットBaの側面に押し当てることにより、この短ビットBaが前記挿入穴3aに挿脱自在として保持されるようにしている。
【0025】
前記挿入穴3bは、握り柄3に内装された前記保持筒7の筒穴としている。この保持筒7の前部には、前記挿入穴3bに連通する縦孔7bを設け、この縦孔7bを包囲するCリングなどの支持体9に設けた突起9aを、前記縦孔7bから挿入穴3bに突出させている。そして、この突起9aを前記挿入穴3bに挿入した長ビットBbの側面に押し当てることにより、この長ビットBbが前記挿入穴3bに挿脱自在として保持されるようにしている。なお、前記長ビットBbは、このようにして握り柄3に挿脱自在として保持されるようにしているが、握り柄3に固定したものとしてもよい。
【0026】
また、前記挿入穴3a、3bは六角穴とし、短ビットBa、長ビットBbは六角ビットとしているが、前記挿入穴3a、3bは六角穴以外の角穴とし、短ビットBa、長ビットBbは挿入穴3a、3bに対応する角ビットとすることもできる。さらに、前記短ビットBaは長ビットBbより短く、前記長ビットBbは短ビットBaより長ければ、特にその寸法は限定されることはないが、前記短ビットBaの全長Lcは、6~8cm程度が好ましく、前記長ビットBbの全長Ldは、10~15cm程度が好ましい。
【0027】
このように構成された本発明のドライバーは、建築現場などにおいてネジやボルト等の締め付け作業を、次のようにして行うことができる。
【0028】
先ず、本発明のドライバーは、
図1に示したように、短い握り柄1に長い握り柄3を連結した状態では、短い握り柄1のリブ1bを設けた辺りの胴体部を手に持って、長い握り柄3の長ビットBbによって、ネジやボルト等の締め付け作業を行うことができる。
【0029】
さらに、本発明のドライバーは、
図2に示したように、短い握り柄1から長い握り柄3を分離した状態では、短い握り柄1のリブ1bを設けた辺りの胴体部を手に持って、短い握り柄1の短ビットBaによって、ネジやボルト等の締め付け作業を行ったり、長い握り柄を2のリブ3cを設けた辺りの胴体部を手に持って、長い握り柄3の長ビットBbによって、ネジやボルト等の締め付け作業を行うことができる。
【0030】
したがって、本発明のドライバーは、以上に述べたように三通りの長さに変えて、ネジやボルト等の締め付け作業を行うことができるので、ネジやボルト等の締め付け場所に応じたものを用いることができる。
【0031】
さらに、本発明のドライバーは、三本のドライバーを用意しないでも、一本で三通りの長さに変えることができるので、持ち運んだり、保管するのにも便利なものとなる。
【0032】
また、本発明のドライバーは、短ビットBaを短い握り柄1に挿脱自在として保持したり、長ビットBbを長い握り柄3に挿脱自在として保持したものでは、締め付けるネジやボルト等の頭部に応じた各種のビット頭を有した短ビットBaおよび長ビットBbに差し替えることができる。
【0033】
しかも、本発明のドライバーは、各種のビット頭を有した短ビットBaおよび長ビットBbに差し替えることができるので、各種のビット頭を有したビットを備えたドライバーを多数本、用意しなくてよくなり、持ち運んだり、保管するのにも、よりいっそう便利なものとなる。
【符号の説明】
【0034】
1 握り柄
1a 挿入穴
2 嵌合凸部
2a 突起部
3 握り柄
3a 挿入穴
3b 挿入穴
4 嵌合凹部
4a 溝部
4b 底面
Ba 短ビット
Bb 長ビット