(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】パイプコンベヤにおけるローリング監視システム
(51)【国際特許分類】
B65G 15/08 20060101AFI20240815BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240815BHJP
B65G 43/02 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B65G15/08 Z
G01B11/00 A
B65G43/02 Z
(21)【出願番号】P 2021001998
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000228707
【氏名又は名称】日本コンベヤ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】中谷 充雅
(72)【発明者】
【氏名】長田 壮平
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-204212(JP,A)
【文献】特開2002-286422(JP,A)
【文献】特開2020-180916(JP,A)
【文献】特開2016-094259(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101674991(CN,A)
【文献】特開平05-105221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/08
G01B 11/00
B65G 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環走行する無端のベルト(13)をパイプ状に丸め、被搬送物を包み込むようにして搬送するパイプコンベヤ(10)に付設され、前記ベルト(13)が走行に伴い蛇行するローリングを生じていないか検知するローリング監視システムにおいて、
前記パイプ状に丸まったベルト(13)の外周を
扇状に拡散する角度の範囲でスキャンして高さ方向の変位を測定する非接触のセンサ(20)を、ベルト(13)の周方向に間隔をあけて複数個配置し、
前記センサ(20)の測定結果に基づいて、一定のライン数ごとにイメージ画像を作成し、前記センサ(20)が測定した高さが不連続的に大きく変わる箇所を、前記ベルト(13)の重合部(13a)で外側となったエッジ(13b)の位置として検出
し、前記エッジ(13b)の位置が正常範囲にあるか、軽度又は重度の異常範囲にあるかを判定することを特徴とするパイプコンベヤにおけるローリング監視システム。
【請求項2】
前記エッジ(13b)の位置座標を予め設定した位置判定用のしきい値と比較して、ベルト(13)が正常に走行しているかローリングを生じているかを判定することを特徴とする請求項1に記載のパイプコンベヤにおけるローリング監視システム。
【請求項3】
前記イメージ画像の範囲で前記ベルト(13)の断面形状を表すプロファイル画像を作成するとともに、前記エッジ(13b)の位置における段差の大きさを計測することを特徴とする請求項1又は2に記載のパイプコンベヤにおけるローリング監視システム。
【請求項4】
前記エッジ(13b)の位置における段差の大きさは、前記ベルト(13)の幅方向における左右いずれかの側を基準として計測し、その段差の大きさと予め設定した重合状態判定用のしきい値とを比較することにより、前記ベルト(13)の重合部(13a)での内側と外側の関係が正常であるか反転しているかを判定することを特徴とする請求項3に記載のパイプコンベヤにおけるローリング監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パイプコンベヤにおいて、ベルトの蛇行現象であるローリングを生じていないかセンサを使用して監視するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
砕石や粉体の搬送に適したパイプコンベヤとして、下記特許文献1には、
図10に示すようなものが記載されている。このパイプコンベヤは、ヘッドプーリ51とテールプーリ52とに掛け回された無端のベルト53を、経路の中間部でパイプ状に丸め、被搬送物50を包み込むようにして搬送することにより、キャリヤ側での荷こぼれや粉塵の飛散を防止するとともに、リターン側でのベルト53の表面に付着した被搬送物50の落下による環境汚染を防止するものである。
【0003】
そして、特許文献1に記載されたパイプコンベヤでは、ベルト53の重合部において、外側になる部分の裏面と内側になる部分の表面とに、それぞれ磁石54,55を貼り付けておき、磁気センサによりベルト53の捩れを検出することを特徴としている。
【0004】
また、下記特許文献2には、
図11に示すように、パイプ状に丸められたベルト61の重合部61aへ向けて、周方向に直角をなし明るさに差がある2箇所の照明具62,63から投光し、ベルト61の重合部61aのエッジで影を発生させ、2箇所の投光位置の中間で固定カメラ64が撮影した映像を画像処理アンプ65で画像処理して、ベルト61の重合部61aの位置を検出し、その位置が一定になるように調芯ローラを制御することにより、ローリングを回避するローリング監視システムが記載されている。このシステムでは、ベルト61にローリング検出のために磁石等の付着物を取り付ける必要はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-91356号公報
【文献】特開2005-255314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載されたローリング監視システムでは、照明具62,63からベルト61の重合部61aへ向けて強い光を照射する必要があるため、電力の消費が大きく、また、強い光が暗い坑道内などで周囲の作業員の視野に入ると、眩惑を生じたりする恐れがある。
【0007】
また、周囲の明るさの変化により撮影画像が変化するため、検出が安定せず、周辺照度を一定にしておくか、外乱光を遮断する囲いを設置するなどの処置が必要となる。
【0008】
また、ベルト61で包まれる搬送物の有無によってベルト61の検査面の形状が変わると、照明の当たり方が変わってしまい、正確な検査が行われなくなるほか、固定カメラ64の焦点位置からベルト61の検査面がずれて、鮮明な画像を得られなくなり、画像処理が困難になるという問題がある。
【0009】
さらに、ベルト61の重合部61aにおける内側と外側の関係が反転した場合、2箇所の照明具62,63からの投光による影が不鮮明になり、ベルト61の重合部61aを検出できず、深刻な異常を検出できなくなる恐れもある。
【0010】
そこで、この発明は、省電力で強い光を照射することなく、非接触でパイプコンベヤにおけるベルトのローリング及び重合部の反転を、簡便な設備で安定して検出できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明は、循環走行する無端のベルトをパイプ状に丸め、被搬送物を包み込むようにして搬送するパイプコンベヤに付設され、前記ベルトが走行に伴い蛇行するローリングを生じていないか検知するローリング監視システムにおいて、
前記パイプ状に丸まったベルトの外周をスキャンして高さ方向の変位を測定する非接触のセンサを、ベルトの周方向に間隔をあけて複数個配置し、
前記センサの測定結果に基づいて、一定のライン数ごとにイメージ画像を作成し、前記センサが測定した高さが不連続的に大きく変わる箇所を、前記ベルトの重合部で外側となったエッジの位置として検出することとしたのである。
【0012】
また、前記エッジの位置座標を予め設定した位置判定用のしきい値と比較して、ベルトが正常に走行しているかローリングを生じているかを判定することとしたのである。
【0013】
また、前記イメージ画像の範囲で前記ベルトの断面形状を表すプロファイル画像を作成するとともに、前記エッジの位置における段差の大きさを計測することとしたのである。
【0014】
そして、前記エッジの位置における段差の大きさは、前記ベルトの幅方向における左右いずれかの側を基準として計測し、その段差の大きさと予め設定した重合状態判定用のしきい値とを比較することにより、前記ベルトの重合部での内側と外側の関係が正常であるか反転しているかを判定することとしたのである。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係るパイプコンベヤにおけるローリング監視システムでは、ベルトの重合部で外側となったエッジの位置を検出するセンサとして、パイプ状に丸まったベルトの外周をスキャンして高さ方向の変位を測定するものを使用し、高さの変化から検出したエッジの位置座標と位置判定用のしきい値との比較によりベルトのローリングの有無を判定するので、ベルトの重合部へ向けて強い光を照射する必要がなく、電力消費が抑制され、周囲の明るさの影響をあまり受けず、ベルトの検査面の形状が変わっても、ローリングを安定して検出することができる。
【0016】
また、センサにより計測した段差の大きさと重合状態判定用のしきい値との比較からベルトの捩じれの前兆である重合部の反転を検出することができるので、ローリング方向の変化を事前に察知することができ、重合部の反転が生じやすいカーブコンベヤ等においても、迅速にローリングに対処することができる。
【0017】
そして、センサの検出値によりベルトの重合部のイメージ画像及び断面形状を表すプロファイル画像を作成するので、カメラで撮影した画像によらなくても、監視員がベルトの走行状態の異常を的確に感知して、ローリングを解消するための操作をすることができ、センサと連動したローリング修正装置のような大がかりな設備を導入する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明に係るローリング監視システムを備えたパイプコンベヤの(1A)全体概略側面図、(1B)ヘッドシュートの縦断正面図
【
図2】同上の(2A)ベルトがローラによりパイプ状に丸められた部分を示す断面図、(2B)ローラの配置を示す側面図
【
図3】同上のセンサの配置及びローリング検知イメージを示す縦断面図
【
図4】同上のローリングを生じていないベルトの状態、センサの検出値により作成されたイメージ画像及びプロファイル画像を示す図
【
図5】同上の一方へローリングを生じているベルトの状態、イメージ画像及びプロファイル画像を示す図
【
図6】同上の他方へローリングを生じているベルトの状態、イメージ画像及びプロファイル画像を示す図
【
図7】同上の重合部が反転したベルトの状態、イメージ画像及びプロファイル画像を示す図
【
図8】同上の重合部が検出できないベルトの状態、イメージ画像及びプロファイル画像を示す図
【
図9】同上の重合部の外側が大きく浮き上がったベルトの状態、イメージ画像及びプロファイル画像を示す図
【
図10】特許文献1に記載のパイプコンベヤを示す概略斜視図
【
図11】特許文献2に記載のパイプコンベヤにおける固定カメラを使用した画像処理によるローリング監視システムを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1及び
図2は、トンネルの工事において、被搬送物である掘削土を坑外へ搬出するため、上流側のトラフコンベヤ1に直交して坑口側へ延びるように配置されるパイプコンベヤ10を示している。トラフコンベヤ1から排出された掘削土は、ヘッドシュート2に蓄積され、ヘッドシュート2からパイプコンベヤ10へ落下して供給される。ヘッドシュート2は、電動式のバッファプレート3を備えており、バッファプレート3を揺動させて、パイプコンベヤ10に対する掘削土の供給位置を調整することができる。
【0021】
パイプコンベヤ10は、ヘッドプーリ11とテールプーリ12とに掛け回された無端のベルト13を、キャリヤ側とリターン側のそれぞれの経路の中間部でローラ14によりパイプ状に丸め、被搬送物である掘削土を包み込むようにして搬送するものである。
【0022】
パイプコンベヤ10においては、ローリング監視システムとして、ベルト13がキャリヤ側でパイプ状に丸まった直後の位置に、ベルト13の外周をスキャンして高さ方向の変位を測定するセンサ20が設けられている。なお、センサ20を設ける位置は、ベルト13の動的特性や周囲の状況に応じて、パイプコンベヤ10の経路の中間部やヘッド寄りとすることもある。センサ20は、
図3に示すように、ベルト13の上方に周方向に間隔をあけて複数個(図示のものでは3個)配置されている。
【0023】
センサ20としては、例えば、青色半導体レーザーを照射するキーエンス社製のレーザー変位計LJ-X8900やIX-150を使用するほか、赤外線を拡散照射し、ベルト13の形状を捉えて画像処理するものとしてもよい。
【0024】
このローリング監視システムでは、センサ20からベルト13の外周へ向けてレーザー光線を照射し、その反射によりベルト13の外周の高さ方向の変位を測定して、ベルト13の重合部13aで外側となったエッジ13bの位置が正常範囲にあるか、軽度又は重度の異常位置にあるかを判定する。通常、2個又は3個のセンサ20により、パイプ状に丸まったベルト13の外周の上半分をほぼ網羅できる。
【0025】
具体的には、
図4に示すように、センサ20の測定結果に基づいて、一定のライン数ごとにイメージ画像を作成し、さらに、イメージ画像の範囲で断面形状を表すプロファイル画像を作成する。なお、ベルト13の状態を示す図とイメージ画像及びプロファイル画像とは、左右が逆になっている。
【0026】
これに伴い、センサ20が測定した高さが不連続的に大きく変わる箇所を、ベルト13の重合部13aで外側となったエッジ13bの位置として検出し、エッジ13bの位置の段差の大きさを計測する。このとき、エッジ13bの位置に基づいて、プログラムにより段差の大きさの補正を行う。
【0027】
そして、エッジ13bの位置座標を予め設定した位置判定用のしきい値と比較して、ベルト13が正常に走行しているかローリングを生じているかを判定する。
図4は、ベルト13がローリングせずに正常に走行している状態を示している。
【0028】
また、
図5は、一方(図では時計回り方向)へローリングを生じているベルト13の状態と、作成されたイメージ画像及びプロファイル画像を示し、
図6は、他方(図では反時計回り方向)へローリングを生じているベルト13の状態と、作成されたイメージ画像及びプロファイル画像を示している。
【0029】
また、エッジ13bの位置における段差の大きさは、ベルト13の幅方向における左右いずれかの側を基準として計測し、その段差の大きさを予め設定した重合状態判定用のしきい値と比較することにより、
図4に示すように、ベルト13の重合部13aでの内側と外側の関係が正常であるか、
図7に示すように、内側と外側の関係が反転しているかを判定できるようにしている。
【0030】
なお、
図8に示すように、ベルト13の外周の下半分に重合部13aが位置するような状態では、ベルト13のエッジ13bの位置を検出できないので、ベルト13が極めて大きくローリングしている等の異常が生じていると判定する。
【0031】
また、このローリング監視システムでは、
図9に示すように、ベルト13の重合部13aが上半部にあれば、外側のベルト13が大きく浮き上がっている場合でも、ベルト13のエッジ13bの位置を問題なく検出することができる。
【0032】
上記のように、このパイプコンベヤにおけるローリング監視システムでは、ベルト13の重合部13aで外側となったエッジ13bの位置を検出するセンサ20として、パイプ状に丸まったベルト13の外周をスキャンして高さ方向の変位を測定するものを使用し、高さの変化から検出したエッジ13bの位置座標と位置判定用のしきい値との比較によりベルト13のローリングの有無を判定することとしたので、ベルト13の重合部13aへ向けて強い光を照射する必要がなく、電力の消費が抑制され、周囲の明るさの影響をあまり受けず、搬送物の有無によってベルト13の検査面の形状が変わっても、ローリングを安定して検出することができる。
【0033】
また、センサ20により計測した段差の大きさと重合状態判定用のしきい値との比較からベルト13の捩じれの前兆である重合部13aの反転を検出することができるので、ローリング方向の変化を事前に察知することができ、重合部13aの反転が生じやすいカーブコンベヤ等においても、迅速にローリングに対処することができる。
【0034】
そして、センサ20の検出値によりベルト13の重合部13aのイメージ画像及び断面形状を表すプロファイル画像を作成するので、カメラで撮影した画像によらなくても、監視員がベルト13の走行状態の異常を的確に感知して、ローリングを解消するための操作をすることができ、センサ20と連動したローリング修正装置のような大がかりな設備を導入する必要がない。
【0035】
なお、上記ローリング監視システムと、
図1に示すヘッドシュート2のバッファプレート3の制御部とを連動させ、上記ローリング監視システムから送られるベルト13のローリング方向及び程度の信号に基づいて、ヘッドシュート2のバッファプレート3を揺動させ、ベルト13の幅方向における掘削土の供給位置を調整し、ベルト13のローリングを自動的に修正するようにしてもよい。
【0036】
また、ベルト13を支持しているローラ14の一群を電動式の自動調芯ローラとし、上記ローリング監視システムから送られるベルト13のローリング方向及び程度の信号に基づいて、自動調芯ローラをベルト13の走行方向に対して左右に振り、ベルト13のローリングを自動的に修正するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 トラフコンベヤ
2 ヘッドシュート
3 バッファプレート
10 パイプコンベヤ
11 ヘッドプーリ
12 テールプーリ
13 ベルト
13a 重合部
13b エッジ
14 ローラ
20 センサ