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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】流体切替弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20240815BHJP
   F16K 5/06 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F02M37/00 311K
F16K5/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021016049
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022119070
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000208064
【氏名又は名称】大洋技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119585
【弁理士】
【氏名又は名称】東田 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 拓
(72)【発明者】
【氏名】森 克巳
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-192678(JP,A)
【文献】特開昭59-170497(JP,A)
【文献】特開昭47-36017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00-37/54
F16K 5/00- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状をしたバルブ室と、このバルブ室と軸方向に連続する円筒状の回動支持部と、前記バルブ室に径方向に開口し流体を前記バルブ室に流入する流体入口通路と、前記バルブ室に径方向に開口し前記バルブ室より流体を流出する流体出口通路とを有するバルブボディと、
このバルブボディの前記回動支持部及び前記バルブ室内に回動可能に配置されるバルブ部材とを備え、
前記回動支持部及び前記バルブ室は、前記バルブ室側が閉じ、前記回動支持部側が開く有底筒形状をしており、前記流体入口通路及び前記流体出口通路は、前記バルブ室に径方向に開口し、
前記バルブ部材は、大径部及び小径部を有する多段円柱形状をして、前記大径部が前記回動支持部により回動自在に支持され、前記小径部が前記バルブ室内に保持され、
前記バルブ部材は、弾力性を有する樹脂製であり、
前記バルブ部材の外周には、前記大径部に位置する肩部から前記小径部に向かい、かつ、前記流体入口通路及び前記流体出口通路の少なくともいずれか一方と対向する位置に向かって伸びる腕部を一体形成すると共に、この腕部の先端に前記流体入口通路及び前記流体出口通路の少なくともいずれか一方を閉じる半球形状のシール部を一体形成し、
前記回動支持部と前記バルブ室とは同一径の円筒形状であり、
前記バルブ部材を前記バルブボディより取り出した状態では、前記バルブ部材の中心軸から前記シール部の先端までの距離は、前記大径部の外径より大きく、前記バルブ部材を前記バルブボディに配置した状態では、前記肩部及び前記腕部の弾性変形により、前記シール部は前記バルブ室内に配置され、
前記シール部が前記流体入口通路及び前記流体出口通路の少なくともいずれか一方を閉じる状態で、前記肩部及び前記腕部の弾性変形に伴う弾性及び前記バルブ部材に前記腕部と一体形成された前記シール部の弾性により、前記シール部が前記流体入口通路及び前記流体出口通路の少なくともいずれか一方に押圧される
ことを特徴とする流体切替弁。
【請求項2】
前記バルブ部材の外周のうち、前記大径部には、Oリング保持溝が形成され、このOリング保持溝に保持されたOリングにより、流体の前記バルブ室からの流出を防止する
ことを特徴とする請求項1に記載の流体切替弁。
【請求項3】
筒形状をしたバルブ室と、このバルブ室と軸方向に連続する円筒状の回動支持部と、前記バルブ室に径方向に開口し流体を前記バルブ室に流入する流体入口通路と、前記バルブ室に径方向に開口し前記バルブ室より流体を流出する流体出口通路とを有するバルブボディと、
このバルブボディの前記回動支持部及び前記バルブ室内に回動可能に配置されるバルブ部材とを備え、
前記回動支持部及び前記バルブ室は、前記バルブ室側が閉じ、前記回動支持部側が開く有底筒形状をしており、前記流体入口通路及び前記流体出口通路は、前記バルブ室に径方向に開口し、
前記バルブ部材は、大径部及び小径部を有する多段円柱形状をして、前記大径部が前記回動支持部により回動自在に支持され、前記小径部が前記バルブ室内に保持され、
前記バルブ部材は、弾力性を有する樹脂製であり、
前記バルブ部材の外周には、前記大径部に位置する肩部から前記小径部に向かい、かつ、前記流体入口通路及び前記流体出口通路の少なくともいずれか一方と対向する位置に向かって伸びる腕部を一体形成すると共に、この腕部の先端に前記流体入口通路及び前記流体出口通路の少なくともいずれか一方を閉じる半球形状のシール部を一体形成し、
このシール部が前記流体入口通路及び前記流体出口通路の少なくともいずれか一方を閉じる状態で、前記肩部及び前記腕部の弾性により、前記シール部が前記流体入口通路及び前記流体出口通路の少なくともいずれか一方に押圧され、
前記バルブ部材の外周のうち、前記大径部には、Oリング保持溝が形成され、このOリング保持溝に保持されたOリングにより、流体の前記バルブ室からの流出を防止し、
前記回動支持部及び前記大径部のうち、前記Oリング保持溝より前記回動支持部の解放端側には、前記バルブ部材の前記バルブ室からの抜け止めを行う抜け止め機構が設けられる
ことを特徴とする流体切替弁。
【請求項4】
筒形状をしたバルブ室と、このバルブ室と軸方向に連続する円筒状の回動支持部と、前記バルブ室に径方向に開口し流体を前記バルブ室に流入する流体入口通路と、前記バルブ室に径方向に開口し前記バルブ室より流体を流出する流体出口通路とを有するバルブボディと、
このバルブボディの前記回動支持部及び前記バルブ室内に回動可能に配置されるバルブ部材とを備え、
前記回動支持部及び前記バルブ室は、前記バルブ室側が閉じ、前記回動支持部側が開く有底筒形状をしており、前記流体入口通路及び前記流体出口通路は、前記バルブ室に径方向に開口し、
前記バルブ部材は、大径部及び小径部を有する多段円柱形状をして、前記大径部が前記回動支持部により回動自在に支持され、前記小径部が前記バルブ室内に保持され、
前記バルブ部材は、弾力性を有する樹脂製であり、
前記バルブ部材の外周には、前記大径部に位置する肩部から前記小径部に向かい、かつ、前記流体入口通路及び前記流体出口通路の少なくともいずれか一方と対向する位置に向かって伸びる腕部を一体形成すると共に、この腕部の先端に前記流体入口通路及び前記流体出口通路の少なくともいずれか一方を閉じる半球形状のシール部を一体形成し、
このシール部が前記流体入口通路及び前記流体出口通路の少なくともいずれか一方を閉じる状態で、前記肩部及び前記腕部の弾性により、前記シール部が前記流体入口通路及び前記流体出口通路の少なくともいずれか一方に押圧され、
前記バルブ部材の外周のうち、前記小径部と前記腕部との間には、前記シール部が前記流体入口通路及び前記流体出口通路の少なくともいずれか一方を閉じる状態で、前記シール部を前記流体入口通路及び前記流体出口通路の少なくともいずれか一方に向けて押圧する補助弾性部材が配置される
ことを特徴とする流体切替弁。
【請求項5】
前記流体入口通路及び前記流体出口通路は、前記バルブ室を挟んで対向配置される
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の流体切替弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件の開示は流体の流路を切り替える切替弁に関し、例えば、エンジンに供給される燃料の切り替え等に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
流体の切替弁として、特許文献1に示されるように、バルブ部材の回動位置により流体出口通路の開閉切り替えを行うものが知られている。特許文献1では、バルブ部材とバルブ室とのシールを行うために、円錐状のバルブ室内に円錐形のバルブ部材を回動可能に配置し、かつ、バルブ部材をバルブ室の小径側にバネで押圧していた。
【0003】
また、特許文献2に示すように、シール部材をバルブ部材とバルブ室との間に介在させて、シール部材によりバルブ室とバルブ部材とのシールを行うことも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭63-104842号公報
【文献】実開昭60-185769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただ、いずれのものも、バネやシール部材を別に設ける必要があり、部品点数が増えて、組付け工数が増加し、コストアップの要因となっていた。
【0006】
本件開示は、上記点に鑑み、バルブ室内にバルブ部材を回動自在に配置する構造を前提とし、流体入口通路及び流体出口通路の少なくともいずれか一方のシールを確実に行うことができることを課題とする。かつ、部品点数を極力低減して組付けコストも含めコスト低減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1は、筒形状をしたバルブ室とこのバルブ室と軸方向に連続する円筒状の回動支持部とバルブ室に径方向に開口し流体をバルブ室に流入する流体入口通路とバルブ室に径方向に開口しバルブ室より流体を流出する流体出口通路とを有するバルブボディと、このバルブボディの回動支持部及びバルブ室内に回動可能に配置されるバルブ部材とを備える流体切替弁である。
【0008】
そして、回動支持部及びバルブ室は、バルブ室側が閉じ、回動支持部側が開く有底筒形状をしており、流体入口通路及び流体出口通路は、バルブ室に径方向に開口している。また、バルブ部材は、大径部及び小径部を有する多段円柱形状をして、大径部が回動支持部により回動自在に支持され、小径部がバルブ室内に保持されている。かつ、バルブ部材は、弾力性を有する樹脂製である。
【0009】
そして、バルブ部材の外周には、大径部に位置する肩部から小径部に向かい、かつ、流体入口通路及び流体出口通路の少なくともいずれか一方と対向する位置に向かって伸びる腕部を一体形成すると共に、この腕部の先端に流体入口通路及び流体出口通路の少なくともいずれか一方を閉じる半球形状のシール部を一体形成している。そして、回動支持部とバルブ室とは同一径の円筒形状であり、バルブ部材をバルブボディより取り出した状態では、バルブ部材の中心軸からシール部の先端までの距離は大径部の外径より大きく、バルブ部材をバルブボディに配置した状態では、肩部及び腕部の弾性変形によりシール部はバルブ室内に配置されている。その為、シール部が流体入口通路及び流体出口通路の少なくともいずれか一方を閉じる状態で、肩部及び腕部の弾性変形に伴う弾性及びバルブ部材に腕部と一体形成されたシール部の弾性により、シール部が流体入口通路及び流体出口通路の少なくともいずれか一方に押圧される構造である。
【0010】
本開示の第1によれば、バルブ部材の大径部、小径部、肩部、腕部、及びシール部を一体成形しているので、単に、バルブ部材をバルブボディに挿入するのみで、シール部の組付けを完了させることができる。かつ、シール部はバルブ部材の弾力性によって、流体入口通路及び流体出口通路の少なくともいずれか一方に押圧されるので、流体入口通路及び流体出口通路の少なくともいずれか一方のシールを確実に行うことができる。
【0011】
本開示の第2は、バルブ部材の外周のうち、大径部には、Oリング保持溝が形成される。そして、このOリング保持溝に保持されたOリングにより、流体のバルブ室からの流出を防止している。本開示の第2によれば、Oリングでバルブ室のシールを達成することが可能である。
【0012】
本開示の第3では、バルブボディ及びバルブ部材のうち、Oリング保持溝より回動支持部の解放端側に、バルブのバルブ室からの抜け止めを行う抜け止め機構が設けられている。この抜け止め機構により、バルブ部材はバルブ室に確実に保持される。
【0013】
本開示の第4は、バルブ部材の外周のうち、小径部と腕部との間に、シール部が流体入口通路及び流体出口通路の少なくともいずれか一方を閉じる状態で、シール部を流体入口通路及び流体出口通路の少なくともいずれか一方に向けて押圧する補助弾性部材が配置されている。バルブ部材の弾力性に加えて、補助弾性部材の弾力性も利用でき、流体入口通路及び流体出口通路の少なくともいずれか一方のシールを確実にすることができる。
【0014】
本開示の第5では、流体入口通路及び流体出口通路は、バルブ室を挟んで対向配置されている。バルブ部材の弾力性をバランスよく利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、流体切替弁の第1実施形態の断面図である。
図2図2は、図1図示バルブ部材の正面図である。
図3図3は、図1図示バルブ部材の斜視図である。
図4図4は、図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図5は、流体切替弁の他の実施形態の断面図である。
図6図6は、流体切替弁の他の実施形態の断面図である。
図7図7は、流体切替弁の使用例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図7は、流体切替弁100の使用例を示す。この使用例では流体切替弁100は、燃料タンク900とエンジン910の気化器920との間に配置される燃料切替弁として利用される。燃料が重力によりエンジン910に供給されるよう、燃料タンク900はエンジン910の上方に配置される。901は、燃料タンク900の燃料供給口を閉じるキャップである。
【0017】
そして、燃料タンク900と流体切替弁100とは、燃料パイプ930により連結され、流体切替弁100と気化器920とは燃料パイプ931により連結される。なお、本例で、エンジン910は発電機940や高圧洗浄機の駆動に用いられる。
【0018】
図1に示すように、流体切替弁100は、バルブボディ200と、バルブ部材300とを備える。バルブボディ200は、ポリアセタールPOMの樹脂製である。そして、流体入口通路210と流体出口通路220とが左右に突出形成されている。流体入口通路210には、図示していないが、燃料パイプに挿入された際の抜け止めとなる係止部が所外周に突出形成されている。流体出口通路220にも、同様に、燃料パイプに挿入された際の抜け止めとなる係止部が外周に突出形成されている。
【0019】
流体入口通路210の入口通路穴211は、2.3ミリメートル程度である。また、流体出口通路220の出口通路穴221の径も同様に2.3ミリメートル程度である。入口通路穴211と出口通路穴221とは180度離れて対向している。
【0020】
バルブボディ200の中心軸周りには、断面円形上の回動支持部230が形成されている。回動支持部230は、内径は15ミリメートル程度である。回動支持部230の下方には、流体入口通路210及び流体出口通路220が開口するバルブ室240が形成されている。回動支持部230とバルブ室240とは連続した同一径の円筒形状である。
【0021】
バルブ部材300は、ナイロン樹脂製で、バルブボディ200の回動支持部230に嵌り合って回動する大径部310と、この大径部310の下方に一体形成されバルブ室240内を回動する小径部320を備えている。大径部310及び小径部320は共に円柱形状で、大径部310の外径は回動支持部230の内径と略同じ15ミリメートル程度である。小径部の更に下方には、より小径の中心軸部330部が形成され、中心軸部330は、バルブボディ200に形成された軸受部245によって支持されている。なお、小径部320の外径は6ミリメートル程度で、中心軸部330の外径は3ミリメートル程度である。
【0022】
大径部310の外周には抜け止め凸部311が全周に1ミリメートル程度突出形成され、この抜け止め凸部311が回動支持部230の抜け止め凹部231に嵌り合う。この抜け止め凸部311と抜け止め凹部231との嵌合で、抜け止め機構が構成される。
【0023】
大径部310の外周のうち、抜け止め凸部311より小径部320側にはOリング保持溝312が形成され、Oリング保持溝312にはOリング500が保持される。このOリング500は回動支持部230の内周と密着し、バルブ室240より燃料が漏出するのを防いでいる。
【0024】
バルブ部材300の大径部310と小径部320との境界は肩部340となり、肩部340より腕部350が小径部320に向かい、かつ、流体入口通路210及び流体出口通路220と対向する位置に向かって伸びている。そして、腕部350の先端には、流体入口通路210及び流体出口通路220を閉じる半球形状のシール部360が一体に形成されている。半球形状としたのは、流体入口通路210の開口部212及び流体出口通路220の開口部222を良好にシールすることができ、かつ、流体入口通路210及び流体出口通路220に必要以上に嵌り込むことが無いようにするためで、その直径は5ミリメートル程度である。なお、本開示において、半球形状は正確な半球形状に限定されるものではなく、なだらかな曲面が膨出した形状を意味する。
【0025】
図2及び図3に示すように、バルブ部材300をバルブボディ200より取り出した状態では、腕部350は径方向外側に向けてやや傾斜した形状となっている。また、バルブ部材300の中心軸Aからシール部360の先端(図の左右方向端部)までの距離は、大径部310の外径より大きくなっている。従って、図1及び図4に示すように、バルブ部材300がバルブボディ200内に挿入されている状態では、肩部340と腕部350との弾性により、流体入口通路210及び流体出口通路220側に押圧されている。
【0026】
上述の流体切替弁100の組付けは、Oリング保持溝312内にOリング500をその弾力性を用いて取り付け、その状態で、バルブ部材300を、バルブボディ200の回動支持部230の上側開口部より挿入する。中心軸部330の下端がバルブ室240の底部の軸受部に対向する位置で、抜け止め凸部311が抜け止め凹部231と嵌合し、その状態で、バルブ部材300はバルブボディ200に対して、回動が可能で、軸方向には変移不能に組付けられる。
【0027】
流体切替弁100の切り替え動作は、作業者がバルブ部材300の上部に形成された摘み部335を手動で回動させることで行う。図1が流体入口通路210及び流体出口通路220を閉じた状態で、シール部360は、流体入口通路210の開口部212及び流体出口通路220の開口部222内に嵌り込んでいる。シール部360は半球形状をしており、入口通路穴211及び出口通路穴221はいずれも円管であるので、シール部360の外面により、流体入口通路210の開口部212及び流体出口通路220の開口部222を確実に塞いでいる。
【0028】
作業者が摘み部335を回動させると、肩部340及び腕部350の弾力性でシール部360がバルブ部材300の中心軸A側に変移して、流体入口通路210の開口部212及び流体出口通路220の開口部222より抜け出る。シール部360が、流体入口通路210の開口部212及び流体出口通路220の開口部222より抜け出ると、燃料は流体入口通路210よりバルブ室240に流入し、次いで流体出口通路220からエンジン910側に流れる。
【0029】
なお、バルブ部材300の回動動作に伴って肩部340及び腕部350が弾性変形するが、この変形はシール部360の半球形状に沿って徐々に行われる。即ち、肩部340及び腕部350の弾性変形は緩やかであり、弾性変形によるバルブ部材300の疲労を少なくしている。また、バルブ部材300の回動角度は、シール部360が流体入口通路210の開口部212及び流体出口通路220の開口部222より抜け出るまででよい。従って、バルブ部材300の回動角度も10度程度で良く、回動に要する力も少なくなる。
【0030】
燃料の供給を止めるには、作業者が再度摘み部335を逆方向に回して、図1の状態とする。その際には、上述のように、肩部340及び腕部350の弾力性によって、シール部360が流体入口通路210の開口部212及び流体出口通路220の開口部222内に嵌り込み、確実にシールすることができる。燃料の供給を止める際のバルブ部材300の回動動作には、肩部340及び腕部350の弾力性を利用できるので、燃料の供給を始める際のバルブ部材300の回動動作に比べて小さい力で回動させることができる。
【0031】
以上説明した例は望ましい開示であるが、他に種々の変形例がある。例えば、エンジン910の容量に応じて燃料パイプ930、931の径も変更される。そのため、エンジン910の容量に応じ、流体切替弁100の大きさも変更される。即ち、上述した各寸法は、小型エンジン910において、流体切替弁100の望ましい大きさであるが、寸法は変更可能である。
【0032】
上述の実施形態では、シール部材400が流体入口通路210の開口部212と流体出口通路220の開口部222の双方を閉じるようにしていたが、流体入口通路210の開口部212と流体出口通路220の開口部222のいずれか一方のみを閉じても燃料の供給を遮断することができる。構造としては、図5に示すように、片方の肩部340、腕部350及びシール部360を廃止する構造である。
【0033】
この場合には、肩部340及び腕部350の弾性変形が片側のみとなり、バルブ部材300の回動動作に要する力も少なくて済む。片側のみの場合、流体入口通路210を用いて流路の遮断を行う例と、流体出口通路220を用いて流路の遮断を行う例が考えられる。ただ、流体出口通路220を用いて流路の遮断を行う際には、流体が常時バルブ室240に流入することとなる。従って、いずれかの片方を選択するのであれば、流体入口通路210の開口部212で流体流れを遮断する方が望ましい。
【0034】
上述の実施形態では、流体入口通路210と流体出口通路220とを180度対向配置したが、燃料パイプ930、931の取り回しによっては、流体入口通路210と流体出口通路220との間の角度を変更してもよい。例えば、流体入口通路210と流体出口通路220との間の角度を120度に設定しても良い。
【0035】
上述の実施形態では、バルブ部材300の肩部340及び腕部350の弾力性のみで、シール部360を流体入口通路210の開口部212と流体出口通路220の開口部222に嵌り込むようにしたが、図6に示すように、小径部320と腕部350との間に補助弾性部材345を介在させてもよい。補助弾性部材345としては、Oリングを用いても良い。
【0036】
上述の実施形態では、バルブボディ200をポリアセタールPOM製とたが、他の材料としてもよい。亜鉛、鉄やアルミニウム合金等の金属製としてもよく、他の樹脂製としてもよい。また、バルブ部材300は、弾力性のある樹脂製であればよく、ナイロン樹脂以外の樹脂素材も利用できる。
【0037】
上述の実施形態では、作業者が摘み部335を操作してバルブ部材300を回動させていたが、モータを用いて電動動作するようにしてもよい。
【0038】
上述の実施形態では、エンジン910の用途を発電機940や高圧洗浄機の駆動用としているが、本件の流体切替弁100は各種のエンジン910に使用可能である。例えば、オートバイ用エンジン910に使用してもよい。更に、エンジン910の燃料の切り替えに限らず、水やアルコール等の他の液体の流路切り替えに使用することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
100・・・流体切替弁
200・・・バルブボディ
210・・・流体入口通路
220・・・流体出口通路
230・・・回動支持部
240・・・バルブ室
300・・・バルブ部材
310・・・大径部
320・・・小径部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7