(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】酒粕の処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/04 20060101AFI20240815BHJP
F23G 7/00 20060101ALI20240815BHJP
F26B 17/32 20060101ALI20240815BHJP
F26B 23/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F23G5/04 E
F23G7/00 K
F26B17/32 F
F26B17/32 R
F26B23/00 A
(21)【出願番号】P 2021029619
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】521084079
【氏名又は名称】株式会社神田技術工業
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】吉村 幸人
(72)【発明者】
【氏名】江藤 浩一
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-071832(JP,U)
【文献】特開平08-042830(JP,A)
【文献】登録実用新案第3191989(JP,U)
【文献】特開昭57-204713(JP,A)
【文献】特開平04-026702(JP,A)
【文献】特許第5881886(JP,B1)
【文献】特開2000-240912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G5/04,5/32,7/00
F26B1/00-25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
800℃~900℃の燃焼ガスが導入され、液状物の酒粕を乾燥するロータリーキルンと、ロータリーキルンに設けられた乾燥した酒粕を回収する回収ホッパーと、前記回収ホッパーから導出される乾燥した酒粕を焼却炉に搬送するスクリューコンベアと、スクリューコンベアで搬送された酒粕を焼却炉で焼却する酒粕の処理装置であって、
前記ロータリーキルンは、
前端部側から後端部側に向って下側に傾斜したロータリーキルン本体と、前記ロータリーキルン本体の前端側に設けられた、ロータリーキルン本体内に
液状物の酒粕を導入する導入パイプと、前記ロータリーキルン本体の後端部側からロータリーキルン本体内部に、焼却炉の燃焼ガスを、排ガス管を介して導入する燃焼ガス導入口と、を少なくとも備え、
前記焼却炉は、
焼却炉本体と、前記焼却炉本体の
上部側面に設けられ、前記排ガス管に燃焼ガスを導出する燃焼ガス導出口と、前記ロータリーキルン本体内で乾燥した酒粕を焼却炉内部に投入するために、
前記燃焼ガス導出口よりも上方の焼却炉本体の上部に設けられた酒粕投入口と、前記焼却炉本体内に空気を導入し、焼却炉本体内に下方から上昇する火炎螺旋流を形成する空気放出管と、を少なくとも備え、
前記空気放出管によって、焼却炉本体内の下方から上昇する火炎螺旋流を形成し、焼却炉本体の上部から投入される酒粕を、前記火炎螺旋流で焼却すると共に、
前記焼却炉の燃焼ガスを、
前記焼却炉の上部側面の燃焼ガス導出口から前記排ガス管によって、前記ロータリーキルン本体の後端部側からロータリーキルン本体内部に導入し、前記ロータリーキルン本体内の酒粕を乾燥することを特徴とする酒粕の処理装置。
【請求項2】
前記ロータリーキルン本体の前端部よりも低位置の後端部に設けられた、乾燥した酒粕を回収する回収ホッパーと、
前記回収ホッパーの酒粕導出口よりも上方の位置であって、焼却炉の上部に設けられた焼却炉の酒粕投入口と、
前記回収ホッパーの酒粕導出口と焼却炉の酒粕投入口を結び、回収ホッパーからの乾燥した酒粕を焼却炉に搬送するスクリューコンベアと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の酒粕の処理装置。
【請求項3】
前記排ガス管は、
平面視上円形状の焼却炉本体の内壁面に対して、径方向外側に延設された、燃焼ガス導出口に接続される第1の直線部と、
円筒形状のロータリーキルン本体の軸線の延長線上に延設された、ロータリーキルン本体に接続される第2の直線部と、
前記第1の直線部と第2の直線部とを接続する湾曲部と、
を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酒粕の処理装置。
【請求項4】
前記排ガス管のロータリーキルン近傍に温度センサを備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の酒粕の処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された酒粕の処理装置を用いた酒粕処理方法において、
焼却炉から生じる燃焼ガスがロータリーキルン本体内に導入される工程と、
ロータリーキルン本体内部に酒粕が投入される工程と、
前記焼却炉から生じる燃焼ガスによって、前記ロータリーキルン本体内の酒粕を乾燥する工程と、
前記乾燥した酒粕を焼却炉に搬送する工程と、
前記搬送された、乾燥した酒粕を焼却炉で焼却し、焼却によって生じた燃焼ガスをロータリーキルン本体内部に導入する工程と、
を備えていることを特徴とする酒粕処理方法。
【請求項6】
焼却炉から生じる燃焼ガスがロータリーキルン本体内部に導入される工程において、温度センサによって前記燃焼ガスの温度が測定され、所定温度に達した後に、ロータリーキルン本体内に酒粕が投入される工程が実行され、
前記焼却炉から生じる燃焼ガスによって、前記ロータリーキルン本体内の酒粕を乾燥する工程において、ロータリーキルン本体内部通過後の酒粕の乾燥状態によりロータリーキルンの回転数を制御し、焼却炉で焼却できる状態まで乾燥した後、前記乾燥した酒粕を焼却炉に搬送する工程が実行されることを特徴とする請求項5に記載の酒粕処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒粕の処理装置及び処理方法に関し、例えば、焼酎を製造する工程で生じる固形状の粕、あるいは日本酒の製造方法である高熱液化仕込み等から生じる液化状の粕を処理する、酒粕の処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芋、米又は麦等を原料として焼酎を製造する工程において、焼酎となる液体成分を濾過することによって、もろみから分離する段階で固形状の焼酎粕が生じる。
この焼酎粕は、生物化学的酸素要求量が高く、そのまま水に流すと水中の酸素が減少し、生態系が乱れる。そのため、川や海への廃棄が禁止され、焼酎の生産に伴って大量に生ずる焼酎粕の処理について問題となっている。
近年、この問題を解決する、焼酎粕を処理する方法の一つとして、この焼酎粕を飼料化する方法が提案されている。一方、日本酒の製造工程においても、日本酒が液化仕込み手法により製造される酒粕は食用には適さないため、主に飼料、肥料として処理されている。
【0003】
具体的に一例を示すと、特許文献1には、焼酎粕を乾燥させた焼酎粕飼料を製造する方法が示されている。
この方法にあっては、パルス燃焼装置で燃料を燃焼させて生ずる燃焼ガス中に、焼酎粕スラリーを霧状に分散させて供給することによって、前記焼酎粕を乾燥させ、前記乾燥させた焼酎粕を、前記パルス燃焼装置を冷却するために用いられた熱媒体との間接熱交換によって加熱し、この加熱によって前記乾燥させた焼酎粕を更に乾燥させる。そして、この方法によって乾燥させた焼酎粕に米糠を混合し、その混合物を醗酵させることにより、乾燥焼酎粕を主材とした飼料を得るものである。
【0004】
また、他の処理方法として、この焼酎粕を焼却する方法が提案されている。例えば、特許文献2には、焼酎粕を固液分離する固液分離工程と、前記固液分離した後の焼酎粕の液側を濃縮して焼酎粕濃縮物を製造する濃縮工程と、前記焼酎粕濃縮物を資源化する資源化工程とを有する焼酎粕の資源化方法であって、前記焼酎粕濃縮物のうちの少なくとも一部を焼却する燃焼工程と、前記燃焼工程で得られた燃焼熱を利用して蒸気を回収する蒸気回収工程とを有する焼酎粕の資源化方法が示されている。
【0005】
また特許文献3では、真空乾燥機より排出された焼酎粕乾燥物を、微粉化装置で微粉化し、送風機で一次空気を供給して粉体燃料とし、粉体バーナー付ボイラーで燃焼させ、灰は良質の瓦の原料とする焼酎粕処理法が提案されている。
【0006】
また、特許文献4では、米ぬか等の廃棄物の乾燥焼却処理装置として、ロータリーキルンを用いることが提案されている。具体的には、廃棄物を乾燥焼却するためのロータリーキルンと、ロータリーキルン内に高温ガスを供給する焼却炉と、ロータリ-キルン内に廃棄物を供給する廃棄物供給装置と、ロータリーキルン内のガスを外部に排出する排気筒とからなる廃棄物の乾燥焼却処理装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-285633公報
【文献】特開2007-222795公報
【文献】特開平11-63455公報
【文献】実開昭50-3375公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載された焼酎粕等の酒粕を飼料化する方法では、装置が大型化し、また装置の製造コストが嵩むという課題があった。また、このような装置で焼酎粕等の酒粕を飼料化した場合、飼料の発生量も大きく、飼料を多量に販売するのは困難であるという課題があった。
【0009】
また、特許文献2、特許文献3に記載された焼酎粕を焼却する方法では、特許文献1の装置と同様に、装置が大型化し、装置の製造コストが嵩むという課題があった。また、焼酎粕を焼却する場合、焼酎粕には水分が含まれているため、燃焼前に焼酎粕を乾燥する必要がある。特に、日本酒の製造方法である高熱液化仕込み等から生じる液化状の酒粕を焼却する場合には十分な乾燥を行い、水分含有量を減少させなければ、効率的な焼却を行うことができないという課題があった。
【0010】
更に、特許文献4には、米ぬか等の廃棄物の乾燥焼却処理装置として、廃棄物を乾燥焼却するためのロータリーキルンと、ロータリーキルン内に高温ガスを供給する焼却炉を備える乾燥焼却処理装置が提案されているが、ロータリーキルン廃棄物を乾燥焼却するものであり、廃棄物の焼却エネルギーを有効に活用できないという課題があった。
【0011】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために、日本酒、焼酎の酒粕を焼却することを前提に、装置をより簡略化すると共により小型化し、焼却処理に係る費用をより抑制することを検討した。
そして、キルンを乾燥装置として用い、乾燥させた酒粕を焼却炉で焼却することにより、装置をより簡略化、小型化できることを知見した。
更に、キルンで乾燥した酒粕を燃焼して得られた燃焼ガスを導入して、キルン内の酒粕を乾燥させることにより、乾燥コストの低減を図ることができること、また廃油を燃焼装置の主燃料とし酒粕を完全燃焼する為、廃油の処理を実施できると共に、これによって燃焼ガスを得るため、焼却のために使用される燃料を抑制できること、更には、キルンの後端部から導出される乾燥した酒粕を、焼却炉の上部から炉内に投入すること等により、酒粕をより完全燃焼できることを知見した。
本発明者らは、これら知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされた発明であり、酒粕を効率的に焼却でき、また焼却処理にかかるコストを抑制できる酒粕の処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためになされた本発明に係る酒粕の処理装置は、800℃~900℃の燃焼ガスが導入され、液状物の酒粕を乾燥するロータリーキルンと、ロータリーキルンに設けられた乾燥した酒粕を回収する回収ホッパーと、前記回収ホッパーから導出される乾燥した酒粕を焼却炉に搬送するスクリューコンベアと、スクリューコンベアで搬送された酒粕を焼却炉で焼却する酒粕の処理装置であって、
前記ロータリーキルンは、
前端部側から後端部側に向って下側に傾斜したロータリーキルン本体と、前記ロータリーキルン本体の前端側に設けられた、ロータリーキルン本体内に液状物の酒粕を導入する導入パイプと、前記ロータリーキルン本体の後端部側からロータリーキルン本体内部に、焼却炉の燃焼ガスを、排ガス管を介して導入する燃焼ガス導入口と、を少なくとも備え、
前記焼却炉は、
焼却炉本体と、前記焼却炉本体の上部側面に設けられ、前記排ガス管に燃焼ガスを導出する燃焼ガス導出口と、前記ロータリーキルン本体内で乾燥した酒粕を焼却炉内部に投入するために、前記燃焼ガス導出口よりも上方の焼却炉本体の上部に設けられた酒粕投入口と、前記焼却炉本体内に空気を導入し、焼却炉本体内に下方から上昇する火炎螺旋流を形成する空気放出管と、を少なくとも備え、
前記空気放出管によって、焼却炉本体内の下方から上昇する火炎螺旋流を形成し、焼却炉本体の上部から投入される酒粕を、前記火炎螺旋流で焼却すると共に、
前記焼却炉の燃焼ガスを、前記焼却炉の上部側面の燃焼ガス導出口から前記排ガス管によって、前記ロータリーキルン本体の後端部側からロータリーキルン本体内部に導入し、前記ロータリーキルン本体内の酒粕を乾燥することを特徴としている。
【0014】
特に、前記したように、ロータリーキルンは、前端部側から後端部側に向って下側に傾斜したロータリーキルン本体と、前記ロータリーキルン本体の前端側に設けられた、ロータリーキルン本体内に酒粕を導入する導入パイプと、前記ロータリーキルン本体の後端部側からロータリーキルン本体内部に、焼却炉の燃焼ガスを、排ガス管を介して導入する燃焼ガス導入口とを備えている。
また、前記焼却炉は、焼却炉本体と、前記焼却炉本体の上部に設けられ、前記排ガス管に燃焼ガスを導出する燃焼ガス導出口と、前記ロータリーキルン本体内で乾燥した酒粕を焼却炉内部に投入するために、焼却炉本体の上部に設けられた酒粕投入口と、前記焼却炉本体内に空気を導入し、焼却炉本体内に下方から上昇する火炎螺旋流を形成する空気放出管とを備えている。
本発明に係る酒粕の処理装置にあっては、前記空気放出管によって、焼却炉本体内の下方から上昇する火炎螺旋流を形成し、焼却炉本体の上部から投入される酒粕を、前記火炎螺旋流で焼却すると共に、前記焼却炉の燃焼ガスを、前記排ガス管によって前記焼却炉の上部から前記ロータリーキルン本体の後端部側からロータリーキルン本体内部に導入し、前記ロータリーキルン本体内の酒粕を乾燥する。
このように、本発明に係る酒粕の処理装置は、酒粕をロータリーキルンで乾燥し、乾燥した酒粕を焼却炉に搬送し、焼却する酒粕の処理装置であるため、装置を簡略化、小型化できる。
また、乾燥した酒粕は焼却炉の上部から炉内に投入され、焼却炉本体内に形成される、焼却炉本体内の下方から上昇する火炎螺旋流の火炎によって焼却されるため、より完全に焼却される。
また、ロータリーキルンで乾燥した酒粕を燃焼して得られた燃焼ガスをロータリーキルン内に導入して、ロータリーキルン内の酒粕を乾燥させるため、乾燥コストの低減を図ることができる。また乾燥した酒粕を焼却し、燃焼ガスを得るため、焼却のために用いられる燃料を抑制できる。
尚、酒粕とは、固形状、液状であるかを問わず、焼酎粕、日本酒粕あるいは焼酎粕と日本酒粕の混合物等をいう。
【0015】
ここで、前記キルンの前端部よりも低位置の後端部に設けられた、乾燥した酒粕を回収する回収ホッパーと、前記回収ホッパーの酒粕導出口よりも上方の位置であって、焼却炉の上部に設けられた焼却炉の酒粕投入口と、前記回収ホッパーの酒粕導出口と焼却炉の酒粕投入口を結び、回収ホッパーからの乾燥した酒粕を焼却炉に搬送するスクリューコンベアと、を備えることが望ましい。
このように、スクリューコンベアが回収ホッパーの酒粕導出口と焼却炉の酒粕投入口を結ぶように設けられるため、酒粕導出口から導出される乾燥した酒粕を、焼却炉の上部から炉内に投入することができ、酒粕を効率的に焼却することができ、より完全燃焼させることができる。
【0017】
また、前記排ガス管は、平面視上円形状の焼却炉本体の内壁面に対して、径方向外側に延設された、燃焼ガス導出口に接続される第1の直線部と、円筒形状のロータリーキルン本体の軸線の延長線上に延設された、ロータリーキルン本体に接続される第2の直線部と、前記第1の直線部と第2の直線部とを接続する湾曲部と、を備えていることが望ましい。
このように、排ガス管が第1の直線部を有するため、焼却炉内の火炎が排ガス管内に侵入するのを抑制できる。また、焼却炉本体とロータリーキルン本体を直線状に結ぶ排ガス管に比べ、排ガス管が第1の直線部、第2の直線部、湾曲部を備えているため管長が長く、仮に、焼却炉内の火炎が排ガス管内に侵入しても、焼却炉内の火炎がロータリーキルン本体内に侵入するのを抑制できる。
【0018】
また、前記排ガス管のキルン近傍に温度センサを備えていることが望ましい。
この温度センサによって排気ガスの温度が測定され、所定温度に達した後に、キルン内に酒粕が投入されることにより、酒粕の乾燥を効率的に行うことができる。
【0019】
上記目的を達成するためになされた本発明に係る酒粕処理方法は、上記酒粕の処理装置を用いた酒粕処理方法において、焼却炉から生じる燃焼ガスがキルン内に導入される工程と、キルン内に酒粕が投入される工程と、前記焼却炉から生じる燃焼ガスによって、前記キルン内の酒粕を乾燥する工程と、前記乾燥した酒粕を焼却炉に搬送する工程と、前記搬送された、乾燥した酒粕を焼却炉で焼却し、焼却によって生じた燃焼ガスをキルン内に導入する工程と、を備えていることを特徴としている。
【0020】
このように、乾燥装置としてキルンを用い、キルンで乾燥した酒粕を焼却して得られた燃焼ガスをキルン内に導入して、キルン内の酒粕を乾燥させるため、乾燥コストの低減を図ることができる。また乾燥した酒粕を焼却し、燃焼ガスを得るため、焼却のために使用される燃料を抑制できる。
【0021】
ここで、焼却炉から生じる燃焼ガスがロータリーキルン内に導入される工程において、焼却炉から生じる燃焼ガスがロータリーキルン本体内部に導入される工程において、温度センサによって前記燃焼ガスの温度が測定され、所定温度に達した後に、ロータリーキルン本体内に酒粕が投入される工程が実行され、前記焼却炉から生じる燃焼ガスによって、前記ロータリーキルン本体内の酒粕を乾燥する工程において、ロータリーキルン本体内部通過後の酒粕の乾燥状態によりロータリーキルンの回転数を制御し、焼却炉で焼却できる状態まで乾燥した後、前記乾燥した酒粕を焼却炉に搬送する工程が実行されることが望ましい。
【0022】
このように、焼却炉から生じる燃焼ガスがキルン内に導入される工程において、温度センサによって排気ガスの温度が測定され、所定温度に達した後に、キルン内に酒粕が投入される工程が実行されるため、酒粕の乾燥を効率的に行うことができる。
また、焼却炉から生じる燃焼ガスによって、前記キルン内の酒粕を乾燥する工程において、キルン通過後の酒粕の乾燥状態によりキルンの回転数を制御し、焼却炉で焼却できる状態まで乾燥した後、前記乾燥した酒粕を焼却炉に搬送する工程が実行されるため、酒粕をより完全に焼却することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、装置を簡略化、小型化でき、また酒粕を効率的に焼却でき、更に焼却処理にかかるコストを抑制できる酒粕の処理装置及び処理方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る酒粕の処理装置の概略を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す酒粕の処理装置のI-I矢視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す酒粕の処理装置のII-II矢視図である。
【
図5】
図5は、酒粕の処理装置の要部拡大平面図である。
【
図6】
図6は、酒粕の処理装置の要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る酒粕の処理装置及び処理方法について、図面に基づいて説明する。ただし、本発明の実施形態に係る酒粕の処理装置及び処理方法は、以下で説明する実施形態に限定されるものではない。添付の図面は模式的なものである。
【0026】
(酒粕の処理装置の概要)
図1、
図2に示すように、この酒粕の処理装置1は、酒粕を乾燥するキルン2と、キルン2の後端側に設けられた乾燥した酒粕Sを回収する回収ホッパー3と、前記回収ホッパー3から導出される乾燥した酒粕を焼却炉4に搬送するスクリューコンベア5を備えている。
また、キルン2の前端側には、キルン内の水蒸気等を外部に排出する排気部6と、キルン内に酒粕を導入するために導入パイプ7が設けられている。
【0027】
ここで、キルン2内に投入される酒粕は、固形状、液状であっても良く、また焼酎粕、日本酒粕であっても良く、焼酎粕と日本酒粕の混合物であっても良い。
この実施形態では、酒粕として、焼酎粕と日本酒粕が混合された液状物(泥漿物)を例にとって説明する。このように酒粕が、焼酎粕と日本酒粕が混合された液状物(泥漿物)である場合には、貯蔵タンク8からポンプ9を介して、導入パイプ7からキルン2内に酒粕を導入が導入される。
【0028】
(キルン2の構成)
図1乃至
図3に示すように、前記キルン2は、前端部側から後端部側に向って下側に傾斜したキルン本体2aを備えている。このキルン本体部2aは、前端部に形成された前端開口部2bと、後端部に形成された後端開口部2cとを備えている。
【0029】
この前端開口部2bは排気部6の排気筒本体部6aで覆われ、キルン2内部の排ガス(燃焼ガス)が排気筒本体部6a、排気筒6bを介して、外部に放出されるように構成されている。また、前記導入パイプ7の先端は、排気筒本体部6aを貫通し、キルン本体部2a内に延設され、酒粕Sをキルン本体部2a内に投入できるように構成される。
即ち、前端開口部2bは、排気部6にキルン本体部2a内の排気ガスを排気筒本体部6aに排出する共に、前記導入パイプ7から導入される酒粕Sをキルン本体部2a内に投入する、排気口と酒粕の投入口としての機能を有する。
尚、排気筒6bには、
図2に示すように、第2の温度センサ21が設けられ、排気筒6bを通過する排ガスの温度を測定できるように構成されている。
【0030】
一方、後端開口部2cには、キルン2で乾燥した酒粕Sを回収する回収ホッパー3が取り付けられている。また、焼却炉4に排ガス管13の先端は、
図2に示すように、前記回収ホッパー3を貫通し、キルン本体部2a内に延設され、焼却炉4の燃焼ガスをキルン本体部2a内に導入できるように構成される。
即ち、後端開口部2cは、キルン本体部2a内の焼却炉4の燃焼ガスGを導入する共に、前記乾燥した酒粕Sをキルン本体部2aから回収ホッパー3に導出する、燃焼ガス導入口と酒粕の導出口としての機能を有する。
【0031】
また、キルン本体2aの中央部外周面には歯車2dが設けられ、モータ10の歯車10aと噛合している。また、キルン本体2aの前端部側及び後端部側には、ローラ受部2eが設けられている。更に、載置台12にはキルン本体2aを回転可能に支持するローラ11と、前記モータ10が載置されている。
そして、前記モータ10によって、キルン本体2aはローラ11に支持されながら、回転するように構成されている。
【0032】
前記モータ10は、図示しない制御手段により、回転数制御が行えるように構成されている。即ち、酒粕の乾燥状態が不十分である場合には、キルンの回転数を下げることにより、酒粕のキルン内滞留時間を長くし、乾燥度合いを上げる。一方、酒粕の乾燥状態が進み、酒粕が燃焼するあるいは炭化する場合には、キルンの回転数を上げることにより、酒粕のキルン内滞留時間を短くし、燃焼あるいは炭化を防止する。
【0033】
(焼却炉4の構成)
次に、
図1、
図2、
図5~
図7に基づいて、焼却炉について詳細に説明する。
焼却炉4は、耐火物4a1が内張された焼却炉本体4aと、焼却炉内部の燃焼ガスGを排ガス管13に導出する、焼却炉本体4aの上部に設けられた燃焼ガス導出口4bとを備えている。
また、焼却炉4は、乾燥した酒粕Sを焼却炉本体4aの内部に投入する、焼却炉本体4aの上部に設けられた酒粕投入口4cと、を備えている。
【0034】
また、焼却炉本体4aには廃油供給管15が接続され、廃油タンク14から廃油が供給され、炉内の燃焼ガスの生成に用いられる。更に、焼却炉本体4aには着火バーナー16が設けられ、供給された廃油に着火し、燃焼ガスを生成する。
尚、本発明にあっては、廃油を燃焼させて燃焼ガスを生成することにより、酒粕の処理コストの低減を図ることができるが、本発明は廃油に限定されるものではなく、新規な油を用いて燃焼ガスを生成しても良い。
【0035】
また、
図5、
図6に示すように、焼却炉本体4aには、焼却炉本体内に螺旋流Fを形成する空気放出管19が設けられている。この空気放出管19は、送風機17からの空気Aを、空気供給管18を介して供給される。
前記空気放出管19は、焼却炉本体4aの天井部(上部)から下方に延設され、その先端部は、焼却炉本体4aの底部(下部)に位置している。
【0036】
この前記空気放出管19は、
図7に示すように、有底円筒状の胴部19aと、前記胴部19aの先端の設けられた脚部19bを備えている。
図7には、4本の脚部19bを図示したが、これに限定されるものではない。
但し、焼却炉本体4aの内部に火炎の螺旋流Fを生成するため、脚部19bは3本以上であることが好ましい。
【0037】
前記胴部19aには複数の空気噴出口19cが設けられ、前記空気噴出口19cからほぼ水平に空気Aを噴出する。
また、脚部19bには複数の空気噴出口19dが設けられている。この空気噴出口19dは、斜め上方に向けて開口し、この空気噴出口19dからは、空気Aが斜め上方に向けて噴出する。
そして、空気噴出口19cと空気噴出口19dから空気Aが噴出すると、焼却炉4aの内部には下方から上昇する螺旋流Fが形成される。
このように下方から上昇する螺旋流Fが形成され、火炎が螺旋流Fとして生成されることにより、焼却炉の上部から炉内に投入される酒粕Sは、より完全に燃焼される。
【0038】
(排ガス管13)
前記排ガス管13は、
図5に示すように、焼却炉本体4aの内壁面に対して径方向外側に延設された、排ガス導出口4bに接続される第1の直線部13aと、キルン本体2aの軸線の延長線上に延設された、キルン本体2aに接続される第2の直線部13bと、前記第1の直線部13aと第2の直線部13bとを接続する湾曲部13cとを備えている。
【0039】
このように、排ガス管13に、内壁面に対して径方向外側に延設された第1の直線部13bが設けられているため、焼却炉内の螺旋流Fの火炎が排ガス管13内に直接侵入するのを抑制でき、燃焼ガスGのみをキルン2の導出することができる。
また、焼却炉本体4aとキルン本体2aを直線状に結ぶ排ガス管に比べ、排ガス管が第1の直線部、第2の直線部、湾曲部を備えているため管長が長く、仮に、焼却炉内の火炎が排ガス管内に侵入しても、焼却炉内の火炎がキルン本体内に到達するのを抑制できる。
【0040】
尚、排ガス管13のキルン本体2a側には、第1の温度センサ20が設けられ、排ガス管13を通過する燃焼ガスGの温度を測定できるように構成されている。
【0041】
(スクリューコンベア5)
キルン2で乾燥した酒粕を焼却炉に搬送するスクリューコンベア5は、酒粕回収ホッパー3からの乾燥した酒粕Sを焼却炉4に搬送する。
スクリューコンベア5としては、管状の筐体内部にスクリューが収容された、一般的なものを用いることができ、一端部が酒粕回収ホッパー3の酒粕導出口3aと、他端部が焼却炉4の酒粕投入口4cとに接続されている。
【0042】
このとき、乾燥した酒粕Sを回収する酒粕回収ホッパー3は、キルン2の長手方向の下側端部(後端部)に設けられている。
そして、
図4に示すように、前記酒粕回収ホッパー3の下部に設けられた酒粕導出口3aよりも低い位置に、スクリューコンベア5の投入口5aが設けられている。
また、
図6に示すように、酒粕回収ホッパー部3の下部に設けられた酒粕導出口3aよりも上方の位置に設けられた焼却炉4の酒粕投入口4cよりも高い位置に、スクリューコンベア5の排出口5bが設けられている。
【0043】
このように、スクリューコンベア5が、酒粕回収ホッパー3の酒粕導出口3aと焼却炉4の酒粕投入口4cを結ぶように設けられため、酒粕導出口か3aら導出される乾燥した酒粕Sを、焼却炉の上部から炉内に投入することができる。酒粕Sが焼却炉の上部から炉内に投入されることにより、前記したように、螺旋流Fの火炎によって、より完全に焼却することができる。
【0044】
(処理方法)
次に、本発明の実施形態に係る、上記酒粕の処理装置を用いた酒粕の処理方法について、
図5、
図6に基づいて説明する。
まず、送風機17によって空気供給管18を介して、燃焼炉内の空気放出管19に空気Aを供給し、炉内に空気Aを放出する。
その後、廃油タンク14から廃油供給管15を介して、焼却炉内に廃油を送り込み、着火バーナー16にて着火し、火炎の螺旋流Fを起こし、燃焼ガス(排ガス)Gを、排ガス管13を介してキルン2内に導出する。
この導入される燃焼ガス(排ガス)は、第1の温度センサ20で800℃~900℃の温度である。
【0045】
そして、前記キルン内の温度を、前記燃焼ガスGによって所定の温度以上に上昇させる。例えば、第2の温度センサ21が略200℃になるまで、キルンを加熱する。
【0046】
その後、キルン2内に酒粕が投入される。
即ち、焼却炉4から生じる燃焼ガスがキルン2内に導入される工程において、第1、第2の温度センサ20,21によって排気ガスの温度が測定され、所定温度に達した後に、キルン内に酒粕が投入される工程が実行される。
このように、焼却炉4から生じる燃焼ガスがキルン2内に導入される工程において、第1、第2の温度センサ20,21によって排気ガスの温度が測定され、所定温度に達した後に、キルン2内に酒粕が投入される工程が実行されるため、酒粕の乾燥を効率的に行うことができる。
【0047】
この酒粕は、焼酎粕と日本酒粕が混合された液状物(泥漿物)であるため、
図1、
図2に示すように、貯蔵タンク8からポンプ9を介して、導入パイプ7からキルン2内に酒粕が導入される。
そして、キルン2内に導入された酒粕は、焼却炉4から生じる燃焼ガス(排ガス)によって乾燥される。
酒粕の乾燥時間は、焼酎粕と日本酒粕が混合された液状物(泥漿物)の水分量と粘度によって異なり、おおよそ3分から15分である。
【0048】
キルン4から導出される酒粕の乾燥状態の調整は、第1の温度計の温度800℃~900℃、第2の温度計が略200℃を維持しつつ、キルンから導出される酒粕の状態をみて、キルンの回転数を調整することによってなされる。
即ち、キルン2から導出される酒粕の乾燥状態が不十分である場合には、キルンの回転数を下げて、キルン2内に滞留する時間を長くし、十分な乾燥を行う。一方、酒粕の乾燥状態が進み、酒粕が燃焼あるいは炭化する場合には、キルンの回転数を上げることにより、酒粕のキルン内滞留時間を短くし、燃焼あるいは炭化を防止する。
【0049】
また、キルン2から導出される酒粕の乾燥状態の調整は、キルン2内に投入する酒粕の量を少なくすることによって行うこともできる。
即ち、キルン2から導出される酒粕の乾燥状態が不十分である場合には、キルン2内に投入する酒粕の量を少なくし、燃焼ガスを当てる酒粕量を少なくすることにより、十分な乾燥を行う。一方、キルン2から導出される酒粕の乾燥状態が進み、酒粕が燃焼あるいは炭化する場合には、キルン2内に投入する酒粕の量を多くし、燃焼ガスを当てる酒粕量を多くすることにより、燃焼あるいは炭化を防止する。
尚、乾燥の調整は、キルン2内に投入する酒粕の量の調整とキルン2の回転数の調整を行うのが好ましい。
【0050】
このように、前記焼却炉4から生じる燃焼ガスGによって、前記キルン2内の酒粕Sを乾燥する工程において、キルン2通過後の酒粕の乾燥状態によりキルン2の回転数を制御して、焼却炉4で焼却できる状態まで乾燥した後、前記乾燥した酒粕Sを焼却炉に搬送する工程が実行される。
このように、キルン2通過後の酒粕の乾燥状態によりキルン2の回転数を制御し、焼却炉で焼却できる状態まで乾燥した後、前記乾燥した酒粕Sを焼却炉4に搬送する工程が実行されるため、酒粕をより完全に焼却することができる。
【0051】
前記乾燥した酒粕Sは、キルン2の後端に設けられた回収ホッパー3によって集められ、スクリューコンベア5の一端部の投入口5aからスクリューコンベア5内に導入される。
そして、前記乾燥した酒粕Sはスクリューコンベア5によって搬送され、スクリューコンベア5の他端部の排出口5bから焼却炉4内に導入される。
即ち、乾燥した酒粕Sはスクリューコンベア5によって焼却炉4に搬送される。
【0052】
前記乾燥した酒粕Sは、焼却炉4の上部の酒粕投入口4cから投入され、焼却される。
このとき、炉内の温度は略1200℃であり、火炎が螺旋流Fに形成されているため、酒粕は略完全燃焼となり、焼却灰は略ゼロとなる。
そして、焼却によって生じた燃焼ガスGを、排ガス管13を介して、キルン2内に導入し、キルン2内の酒粕Sを乾燥する。
【0053】
このように、乾燥装置としてキルン2を用い、キルンで乾燥した酒粕Sを焼却炉で燃焼して得られた燃焼ガスGを、前記キルン2内に導入して、酒粕Sを乾燥させるため、乾燥コストの低減を図ることができる。また乾燥した酒粕を焼却し、燃焼ガスを得るため、焼却のために使用される燃料を抑制できる。
【0054】
尚、上記実施形態では、排気筒6bから外部に排気ガス(燃焼ガス)を放出しているが、排気ガスは高温であるため、この排気ガスによって水を加熱し、熱交換を行い、エネルギーの有効活用を図っても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 酒粕の処理装置
2 キルン
2a キルン本体部
2b 前端開口部
2c 後端開口部
3 回収ホッパー
4 焼却炉
4a 焼却炉本体
4b 燃焼ガス導出口
4c 酒粕投入口
5 スクリューコンベア
5a 投入口
5b 排出口
6 排気部
6a 排気筒本体部
6b 排気筒
7 導入パイプ
8 貯蔵タンク
9 ポンプ
10 モータ
11 ローラ
12 載置台
13 排ガス管
13a 第1の直線部
13b 第2の直線部
13c 湾曲部
14 廃油タンク
16 廃油供給管
17 着火バーナー
18 送風機
19 空気放出管
20 第1の温度センサ
21 第2の温度センサ
A 空気
F 螺旋流
G 燃焼ガス
S (乾燥した)酒粕