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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】ナット構造体
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/12 20060101AFI20240815BHJP
   F16B 39/282 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F16B39/12 Z
F16B39/282 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022004437
(22)【出願日】2022-01-14
(65)【公開番号】P2023103739
(43)【公開日】2023-07-27
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】399117567
【氏名又は名称】堀内 政晴
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】堀内 政晴
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/157338(WO,A1)
【文献】特開昭62-165012(JP,A)
【文献】特開2017-155851(JP,A)
【文献】登録実用新案第3018706(JP,U)
【文献】特開昭58-203210(JP,A)
【文献】実開平01-165318(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトに螺合可能な第1ネジ孔が形成された第1ナットと、前記ボルトに螺合可能な第2ネジ孔が形成された第2ナットと、を備え、前記第1ナットには、前記第1ネジ孔を囲む筒状で且つ外周面が先端に向かって縮径するテーパ状に形成された凸部が設けられており、前記第2ナットには、前記凸部が嵌合可能なように内周面が先端に向かって拡径するテーパ状に形成された凹部が設けられており、前記凸部及び前記凹部のうちの一方が前記第1ネジ孔又は前記第2ネジ孔の軸心に対して偏心しているナット構造体であって、
前記凸部及び前記凹部のうちの一方の先端側には、ストレート部が設けられており、他方の先端側には、前記ストレート部に係止可能なように内側又は外側に向かって突出する突起が円周方向に沿って複数設けられており、
前記ストレート部に対する複数の前記突起の係止により、前記第1ネジ孔の軸心と前記第2ネジ孔の軸心が一致した状態で前記第1ナットと前記第2ナットとが連結されていることを特徴とするナット構造体。
【請求項2】
複数の前記突起は、前記第1ネジ孔の軸心に対して偏心した前記凸部又は前記第2ネジ孔の軸心に対して偏心した前記凹部に設けられているとともに、その各突出端が前記第1ネジ孔又は前記第2ネジ孔の軸心を中心とする円周上に位置するように設けられている請求項1に記載のナット構造体。
【請求項3】
複数の前記突起は、前記第1ネジ孔の軸心と一致する軸心を有する前記凸部又は前記第2ネジ孔の軸心と一致する軸心を有する前記凹部に設けられているとともに、その各突出端が前記第1ネジ孔又は前記第2ネジ孔の軸心に対して偏心した軸心を中心とする円周上に位置するように設けられている請求項1に記載のナット構造体。
【請求項4】
前記突起は、前記凸部又は前記凹部の軸方向の端面に窪み部を設けることで形成されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載のナット構造体。
【請求項5】
ボルトが挿通可能な挿通孔が形成されたワッシャーと、前記ボルトに螺合可能なネジ孔が形成されたナットと、を備え、前記ワッシャーには、前記挿通孔を囲む筒状で且つ先端に向かって縮径するテーパ状に形成された凸部が設けられており、前記ナットには、前記凸部が嵌合可能なように先端に向かって拡径するテーパ状に形成された凹部が設けられており、前記凸部及び前記凹部のうちの一方が前記挿通孔又は前記ネジ孔の軸心に対して偏心しているナット構造体であって、
前記凸部及び前記凹部のうちの一方の先端側には、ストレート部が設けられており、他方の先端側には、前記ストレート部に係止可能なように内側又は外側に向かって突出する突起が円周方向に沿って複数設けられており、
前記ストレート部に対する複数の前記突起の係止により、軸方向からみて前記挿通孔が前記ネジ孔を囲む状態で前記ワッシャーと前記ナットとが連結されていることを特徴とするナット構造体。
【請求項6】
複数の前記突起は、前記挿通孔の軸心に対して偏心した前記凸部又は前記ネジ孔の軸心に対して偏心した前記凹部に設けられているとともに、その各突出端が前記挿通孔又は前記ネジ孔の軸心を中心とする円周上に位置するように設けられている請求項5に記載のナット構造体。
【請求項7】
複数の前記突起は、前記挿通孔の軸心と一致する軸心を有する前記凸部又は前記ネジ孔の軸心と一致する軸心を有する前記凹部に設けられているとともに、その各突出端が前記挿通孔又は前記ネジ孔の軸心に対して偏心した軸心を中心とする円周上に位置するように設けられている請求項5に記載のナット構造体。
【請求項8】
前記突起は、前記凸部又は前記凹部の軸方向の端面に窪み部を設けることで形成されている請求項5乃至7のいずれか一項に記載のナット構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナット構造体に関し、さらに詳しくは、連結された第1ナット及び第2ナットを備えるナット構造体、並びに連結されたワッシャー及びナットを備えるナット構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のナット構造体として、ボルトに螺合可能なネジ孔が形成された第1ナットと、ボルトに螺合可能なネジ孔が形成された第2ナットと、を備え、第1ナットには、ネジ孔を囲む筒状で且つ先端に向かって縮径するテーパ状に形成された凸部が設けられており、第2ナットには、凸部が嵌合するように先端に向かって拡径するテーパ状に形成された凹部が設けられており、凸部がネジ孔の軸心に対して偏心しているものが一般に知られている(例えば、特許文献1を参照)。このナット構造体によると、ボルトに対して第1ナット及び第2ナットを締め付ける際に、凹部に対して偏心した凸部が嵌合することで、軸直角方向に強力なロック力が発生して優れたゆるみ止め効果が発揮される。
【0003】
また、他の従来のナット構造体として、ボルトが挿通可能な挿通孔が形成されたワッシャーと、ボルトに螺合可能なネジ孔が形成されたナットと、を備え、ワッシャーには、挿通孔を囲む筒状で且つ先端に向かって縮径するテーパ状に形成された凸部が設けられており、ナットには、凸部が嵌合するように先端に向かって拡径するテーパ状に形成された凹部が設けられており、凸部が挿通孔の軸心に対して偏心しているものが知られている(例えば、特許文献2を参照)。このナット構造体によると、ボルトに対してワッシャーを挿通してナットを締め付ける際に、凹部に対して偏心した凸部が嵌合することで、軸直角方向に強力なロック力が発生して優れたゆるみ止め効果が発揮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-244912号公報
【文献】実開昭57-184308号公報
【文献】実開平06-006730号公報
【文献】実開平01-165318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のナット構造体では、第1ナットと第2ナットあるいはワッシャーとナットが別々に取り扱われるため、ボルトに対する取付性や保管性等が低い。
ここで、第1ナットと第2ナットを連結する技術が一般に知られている(例えば、特許文献3、4を参照)。
しかしながら、上記の連結の技術を、凸部及び凹部のうちの一方がネジ孔の軸心に対して偏心したナット構造体に単純に適用しても、第1ナットと第2ナットの連結状態において各ネジ孔の軸心が偏心してしまう。この偏心の程度によっては、ボルトに対してナット構造体を螺合することが困難となる。
また、上記の連結の技術を、凸部及び凹部のうちの一方が挿通孔又はネジ孔の軸心に対して偏心したナット構造体に単純に適用しても、ワッシャーとナットの連結状態において挿通孔とネジ孔の軸心が偏心してしまう。この偏心の程度によっては、ボルトに対してナット構造体を螺合することが困難となる。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、第1ナットと第2ナットあるいはワッシャーとナットを一体物して取り扱うことができ、ボルトに対して円滑に螺合できるとともに、ボルトに対する締付時に優れたゆるみ止め効果を発揮することができるナット構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
1.ボルトに螺合可能な第1ネジ孔が形成された第1ナットと、前記ボルトに螺合可能な第2ネジ孔が形成された第2ナットと、を備え、前記第1ナットには、前記第1ネジ孔を囲む筒状で且つ外周面が先端に向かって縮径するテーパ状に形成された凸部が設けられており、前記第2ナットには、前記凸部が嵌合可能なように内周面が先端に向かって拡径するテーパ状に形成された凹部が設けられており、前記凸部及び前記凹部のうちの一方が前記ネジ孔の軸心に対して偏心しているナット構造体であって、
前記凸部及び前記凹部のうちの一方の先端側には、ストレート部が設けられており、他方の先端側には、前記ストレート部に係止可能なように内側又は外側に向かって突出する突起が円周方向に沿って複数設けられており、
前記ストレート部に対する複数の前記突起の係止により、前記第1ネジ孔の軸心と前記第2ネジ孔の軸心が一致した状態で前記第1ナットと前記第2ナットとが連結されていることを特徴とするナット構造体。
2.複数の前記突起は、前記第1ネジ孔の軸心に対して偏心した前記凸部又は前記第2ネジ孔の軸心に対して偏心した前記凹部に設けられているとともに、その各突出端が前記第1ネジ孔又は前記第2ネジ孔の軸心を中心とする円周上に位置するように設けられている上記1.に記載のナット構造体。
3.複数の前記突起は、前記第1ネジ孔の軸心と一致する軸心を有する前記凸部又は前記第2ネジ孔の軸心と一致する軸心を有する前記凹部に設けられているとともに、その各突出端が前記第1ネジ孔又は前記第2ネジ孔の軸心に対して偏心した軸心を中心とする円周上に位置するように設けられている上記1.に記載のナット構造体。
4.前記突起は、前記凸部又は前記凹部の軸方向の端面に窪み部を設けることで形成されている上記1.乃至3.のいずれか一項に記載のナット構造体。
5.ボルトが挿通可能な挿通孔が形成されたワッシャーと、前記ボルトに螺合可能なネジ孔が形成されたナットと、を備え、前記ワッシャーには、前記挿通孔を囲む筒状で且つ先端に向かって縮径するテーパ状に形成された凸部が設けられており、前記ナットには、前記凸部が嵌合可能なように先端に向かって拡径するテーパ状に形成された凹部が設けられており、前記凸部及び前記凹部のうちの一方が前記挿通孔又は前記ネジ孔の軸心に対して偏心しているナット構造体であって、
前記凸部及び前記凹部のうちの一方の先端側には、ストレート部が設けられており、他方の先端側には、前記ストレート部に係止可能なように内側又は外側に向かって突出する突起が円周方向に沿って複数設けられており、
前記ストレート部に対する複数の前記突起の係止により、軸方向からみて前記挿通孔が前記ネジ孔を囲む状態で前記ワッシャーと前記ナットとが連結されていることを特徴とするナット構造体。
6.複数の前記突起は、前記挿通孔の軸心に対して偏心した前記凸部又は前記ネジ孔の軸心に対して偏心した前記凹部に設けられているとともに、その各突出端が前記挿通孔又は前記ネジ孔の軸心を中心とする円周上に位置するように設けられている上記5.に記載のナット構造体。
7.複数の前記突起は、前記挿通孔の軸心と一致する軸心を有する前記凸部又は前記ネジ孔の軸心と一致する軸心を有する前記凹部に設けられているとともに、その各突出端が前記挿通孔又は前記ネジ孔の軸心に対して偏心した軸心を中心とする円周上に位置するように設けられている上記5.に記載のナット構造体。
8.前記突起は、前記凸部又は前記凹部の軸方向の端面に窪み部を設けることで形成されている上記5.乃至7.のいずれか一項に記載のナット構造体。
【発明の効果】
【0008】
本発明のナット構造体によると、第1ナットと第2ナットあるいはワッシャーとナットを一体物して取り扱うことができ、ボルトに対して円滑に螺合できるとともに、ボルトに対する締付時に優れたゆるみ止め効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
図1】実施形態1に係るナット構造体の縦断面図である。
図2】ナット構造体の分解斜視図である。
図3】実施形態1に係る第1ナットを説明するための説明図であり、(a)は縦断面図を示し、(b)はb矢視図を示す。
図4】実施形態1に係る第2ナットを説明するための説明図であり、(a)は縦断面図を示し、(b)はb矢視図を示す。
図5】ナット構造体の作用説明図である。
図6】ナット構造体の製造方法を説明するための説明図であり、(a)は第1ナット中間体取得工程を示し、(b)は第2ナット中間体取得工程を示し、(c)は連結工程を示し、(d)はネジ加工工程を示す。
図7】実施形態1の変形例1~3に係るナット構造体を説明するための説明図であり、(a)は変形例1に係るナット構造体を示し、(b)は変形例2に係るナット構造体を示し、(c)は変形例3に係るナット構造体を示す。
図8】実施形態2に係るナット構造体の縦断面図である。
図9】ナット構造体の分解斜視図である。
図10】実施形態2に係るワッシャーを説明するための説明図であり、(a)は縦断面図を示し、(b)はb矢視図を示す。
図11】実施形態2に係るナットを説明するための説明図であり、(a)は縦断面図を示し、(b)はb矢視図を示す。
図12】ナット構造体の作用説明図である。
図13】ナット構造体の製造方法を説明するための説明図であり、(a)はワッシャー取得工程を示し、(b)はナット中間体取得工程を示し、(c)はナット取得工程を示し、(d)は連結工程を示す。
図14】実施形態2の変形例1~3に係るナット構造体を説明するための説明図であり、(a)は変形例1に係るナット構造体を示し、(b)は変形例2に係るナット構造体を示し、(c)は変形例3に係るナット構造体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
以下、図面を用いて実施形態により本発明を具体的に説明する。
【0012】
<実施形態1>
本実施形態1に係るネット構造体Aは、図1及び図2に示すように、ボルト9(図5参照)に螺合可能な第1ネジ孔1aが形成された第1ナット1と、ボルト9に螺合可能な第2ネジ孔2aが形成された第2ナット2と、を備えている。
なお、ボルト9は、被締付部材8を貫通するネジ部9aと、ネジ部9aに螺合されるナット構造体Aとの間で被締付部材8を挟持する頭部9bと、を備えている。
【0013】
第1ナット1には、図3に示すように、第1ネジ孔1aを囲む筒状で且つ外周面が先端に向かって縮径するテーパ状に形成された凸部3が設けられている。この凸部3の先端面は円環状に形成されている。また、凸部3は、第1ネジ孔1aの軸心C1に対して所定間隔(例えば、約0.3mm)で偏心した軸心C3を有している。また、凸部3の外周面は、第1ネジ孔1aの軸心C1に対して所定角度(例えば、約7度)で傾斜している。さらに、凸部3の軸方向長さL1は約3mmとされている。
【0014】
第2ナット2には、図4に示すように、凸部3が嵌合可能なように内周面が先端(開口端)に向かって拡径するテーパ状に形成された凹部4が設けられている。この凹部4の底面は円形に形成されている。また、凹部4は、第2ネジ孔2aの軸心C2と一致する軸心C4を有している。また、凹部4の外周面は、第2ネジ孔2aの軸心C2に対して所定角度(例えば、約7度)で傾斜している。さらに、凹部4の軸方向長さL2は約3mmとされている。
【0015】
第1ナット1は、図2に示すように、図示しない回転工具(例えば、各種のレンチ、スパナ等)が係合する正多角形(具体的に正六角形)の外周部1bを有している。この外周部1bは、その軸心が第1ネジ孔1aの軸心C1と一致いている。また、第1ネジ孔1aは、ボルト9のネジ部9aのピッチと一致するピッチを有している。また、第2ナット2は、図示しない回転工具(例えば、各種のレンチ、スパナ等)が係合する正多角形(具体的に正六角形)の外周部2bを有している。この外周部2bは、その軸心が第2ネジ孔2aの軸心C2と一致している。さらに、第2ネジ孔2aは、ボルト9のネジ部9aのピッチと一致するピッチを有している。
なお、第1ナット1の外周部1bと第2ナット2の外周部2bは略同じ大きさの形状に形成されている。
【0016】
凹部4の先端側(開口端側)には、図4に示すように、軸心方向にストレート状に延びるストレート部11が設けられている。このストレート部11の内周面は、凹部4の軸方向からみて真円をなしている。また、ストレート部11の軸方向長さL3は約1mmとされている。さらに、ストレート部11の深さFは約0.1mmとされている。
なお、ストレート部11の軸方向の長さL3としては、例えば、0.5~3mm(好ましくは2mm以下)を採用できる。また、ストレート部11の深さFとしては、0.05~2mm(好ましくは1mm以下)を採用できる。
【0017】
凸部3の先端側には、図3に示すように、ストレート部11に係止可能なように外側に向かって突出する突起12が円周方向に沿って所定のピッチ間隔(具体的に等ピッチ間隔)で複数(図中3つ)設けられている。これら各突起12は、凸部3の軸方向端面に窪み部13(具体的に楔状の傷部13)を設けることで形成されている(図1参照)。また、各突起12は、ストレート部11に係止する部分がR状に形成されている。これにより、突起12がストレート部11から凹部4のテーパ面に円滑に変位できる。また、各突起12は、その突出端が第1ネジ孔1aの軸心C1を中心とする円周14上に位置するように突出量を調整して設けられている。そして、ストレート部11に対する複数の突起12の係止により、第1ネジ孔1aの軸心C1と第2ネジ孔2aの軸心C2が一致した状態で第1ナット1と第2ナット2とが連結されている(図1参照)。
【0018】
突起12の軸方向長さL4は約1mmとされている。また、突起12の横幅Wは約1mmとされている。
なお、突起12の軸方向の長さL4としては、例えば、0.5~3mm(好ましくは2mm以下)を採用できる。また、突起12の横幅Wとしては、例えば、0.5~3mm(好ましくは2mm以下)を採用できる。
【0019】
次に、上記構成のナット構造体Aの製造方法について説明する。本製法は、第1ナット中間体取得工程、第2ナット中間体取得工程、連結工程及びネジ加工工程を備えている。
【0020】
第1ナット中間体取得工程は、冷間鍛造により、第1ネジ孔1aとなる予定の第1中心孔21aと凸部3とを有する第1ナット中間体21を得る工程である(図6(a)参照)。この第1ナット中間体取得工程では、例えば、冷間鍛造後に突起12を形成してもよいが、生産性等の観点から、冷間鍛造により突起12を形成することが好ましい。
【0021】
第2ナット中間体取得工程は、冷間鍛造により、第2ネジ孔2aとなる予定の第2中心孔22aと凹部4とを有する第2ナット中間体22を得る工程である(図6(b)参照)。この第2ナット中間体取得工程では、例えば、冷間鍛造後にストレート部11を形成してもよいが、生産性等の観点から、冷間鍛造によりストレート部11を形成することが好ましい。
【0022】
連結工程は、ストレート部11に対する複数の突起12の係止によって、第1中心孔21aの軸心C1と第2中心孔22aの軸心C2が一致した状態で第1ナット中間体21と第2ナット中間体22とを連結(一体化)する工程である(図6(c)参照)。この連結工程は、専用機等により自動で行われてもよいし、人手により行われてもよい。
なお、連結工程では、位置合わせ用のマーキングを必ずしも必要とせず各中間体を連結できる。これに対して、凸部3及び凹部4が各ネジ孔1a、2aに対して偏心したナット構造体では、各中間体21、22にマーキングを設け、各中間体21、22を連結する際に位置合わせする必要がある。
【0023】
ネジ加工工程は、連結された第1ナット中間体21及び第2ナット中間体22の各中心孔21a、22aを各ネジ孔1a、2aに加工する工程である。このネジ加工工程では、連結された第1ナット中間体21及び第2ナット中間体22をホルダ(図示省略)に保持した状態で、タッピング装置(図示省略)により、第1中心孔21aを第1ネジ孔1aに加工するとともに、第2中心孔22aを第2ネジ孔2aに加工する。これら各ナット中間体21、22のホルダへの保持は、専用機等により自動で行われてもよいし、人手により行われてもよい。さらに、第1ネジ孔1a及び第2ネジ孔2aの形成順序は特に問わない。
【0024】
次に、上記構成のナット構造体Aの作用効果について説明する。ボルト9に対してナット構造体Aを締め付ける際に、図5に示すように、凹部4に対して偏心した凸部3が嵌合することで、各ネジ孔1a、2aの軸心C1、C2が所定間隔(例えば、約0.3mm)で偏心する。これにより、軸直角方向に強力なロック力が発生して優れたゆるみ止め効果が発揮される。
なお、凹部4に対して凸部3が嵌合する際には、突起12が押圧されて凸部3の一部となる。
【0025】
以上より、本実施形態1のナット構造体Aによると、凹部4の先端側には、ストレート部11が設けられており、凸部3の先端側には、ストレート部11に係止可能なように外側に向かって突出する突起12が円周方向に沿って複数設けられており、ストレート部11に対する複数の突起12の係止により、第1ネジ孔1aの軸心C1と第2ネジ孔2aの軸心C2が一致した状態で第1ナット1と第2ナット2とが連結されている。これにより、第1ナット1と第2ナット2を一体物して取り扱うことができ、ボルト9に対して円滑に螺合できるとともに、ボルト9に対する締付時に優れたゆるみ止め効果を発揮することができる。
特に、ストレート部11に複数の突起12を係止させるようにしたので、各ナット1、2を強固に連結することができる。これに対して、テーパ状の凹部4の内周面に複数の突起12を係止させる形態では、突起12を係止し難く且つ外れ易い。
【0026】
また、本実施形態1では、複数の突起12は、第1ネジ孔1aの軸心C1に対して偏心した凸部3に設けられているとともに、その各突出端が第1ネジ孔1aの軸心C1を中心とする円周14上に位置するように設けられている。これにより、各ネジ孔1a、2aの軸心C1、C2が一致した状態で各ナット1、2を容易に連結することができる。
【0027】
さらに、本実施形態1では、突起12は、凸部3の軸方向の端面に窪み部13を設けることで形成されている。これにより、突起12を容易に形成することができる。
【0028】
さらに、本実施形態1に係るナット構造体Aの製造方法によると、冷間鍛造により、第1ネジ孔1aとなる予定の第1中心孔21aと凸部3とを有する第1ナット中間体21を得る第1ナット中間体取得工程と、冷間鍛造により、第2ネジ孔2aとなる予定の第2中心孔22aと凹部4とを有する第2ナット中間体22を得る第2ナット中間体取得工程と、ストレート部11に対する複数の突起12の係止によって、第1中心孔21aの軸心C1と第2中心孔22aの軸心C2が一致した状態で第1ナット中間体21と第2ナット中間体22とを連結する連結工程と、連結された第1ナット中間体21及び第2ナット中間体22の各中心孔21a、22aを各ネジ孔1a、2aに加工するネジ加工工程と、を備える。これにより、ナット構造体Aを好適に得ることができる。
【0029】
次に、上記実施形態1に係るナット構造体Aの変形例1~3について説明する。なお、本変形例1~3では、実施形態1と略同じ構成には同符号を付けて詳説を省略する。
【0030】
<変形例1>
本変形例1に係るナット構造体Bは、図7(a)に示すように、第1ナット1と第2ナット2とを備えている。第1ナット1には、凸部3が設けられている。この凸部3は、第1ネジ孔1aの軸心C1に対して偏心した軸心C3を有している。第2ナット2には、凹部4が設けられている。この凹部4は、第2ネジ孔2aの軸心C2と一致する軸心C4を有している。
【0031】
凸部3の先端側には、軸心方向にストレート状に延びるストレート部11が設けられている。また、凹部4の先端側(開口端側)には、ストレート部11に係止可能なように内側に向かって突出する突起12が円周方向に沿って複数設けられている。これら各突起12は、凹部4の軸方向端面に窪み部13(具体的に楔状の傷部13)を設けることで形成されている。また、各突起12は、その突出端が第2ネジ孔2aの軸心C2に対して偏心した軸心C3(凸部3の軸心C3)を中心とする円周上に位置するように突出量を調整して設けられている。
【0032】
本変形例1のナット構造体Bによると、実施形態1のナット構造体Aと略同様の作用効果を奏するとともに、複数の突起12は、第2ネジ孔2aの軸心C2と一致する軸心C4を有する凹部4に設けられているとともに、その各突出端が第2ネジ孔2aの軸心C2に対して偏心した軸心C3を中心とする円周上に位置するように設けられているので、各ネジ孔1a、1bの軸心C1、C2が一致した状態で各ナット1、2を容易に連結することができる。
【0033】
<変形例2>
本変形例2に係るナット構造体Cは、図7(b)に示すように、第1ナット1と第2ナット2とを備えている。第1ナット1には、凸部3が設けられている。この凸部3は、第1ネジ孔1aの軸心C1と一致する軸心C3を有している。第2ナット2には、凹部4が設けられている。この凹部4は、第2ネジ孔2aの軸心C2に対して偏心した軸心C4を有している。
【0034】
凹部4の先端側(開口端側)には、軸心方向にストレート状に延びるストレート部11が設けられている。また、凸部3の先端側には、ストレート部11に係止可能なように外側に向かって突出する突起12が円周方向に沿って複数設けられている。これら各突起12は、凸部3の軸方向端面に窪み部13(具体的に楔状の傷部13)を設けることで形成されている。また、各突起12は、その突出端が第1ネジ孔1aの軸心C1に対して偏心した軸心C4(凹部4の軸心C4)を中心とする円周上に位置するように突出量を調整して設けられている。
【0035】
本変形例2のナット構造体Cによると、実施形態1のナット構造体Aと略同様の作用効果を奏するとともに、複数の突起12は、第1ネジ孔1aの軸心C1と一致する軸心C3を有する凸部3に設けられているとともに、その各突出端が第1ネジ孔1aの軸心C1に対して偏心した軸心C4を中心とする円周上に位置するように設けられているので、各ネジ孔1a、2aの軸心C1、C2が一致した状態で各ナット1、2を容易に連結することができる。
【0036】
<変形例3>
本変形例3に係るナット構造体Dは、図7(c)に示すように、第1ナット1と第2ナット2とを備えている。第1ナット1には、凸部3が設けられている。この凸部3は、第1ネジ孔1aの軸心C1と一致する軸心C3を有している。第2ナット2には、凹部4が設けられている。この凹部4は、第2ネジ孔2aの軸心C2に対して偏心した軸心C4を有している。
【0037】
凸部3の先端側には、軸心方向にストレート状に延びるストレート部11が設けられている。また、凹部4の先端側(開口端側)には、ストレート部11に係止可能なように内側に向かって突出する突起12が円周方向に沿って複数設けられている。これら各突起12は、凹部4の軸方向端面に窪み部13(具体的に楔状の傷部13)を設けることで形成されている。また、各突起12は、その突出端が第2ネジ孔2aの軸心C2を中心とする円周上に位置するように突出量を調整して設けられている。
【0038】
本変形例3のナット構造体Dによると、実施形態1のナット構造体Aと略同様の作用効果を奏するとともに、複数の突起12は、第2ネジ孔2aの軸心C2に対して偏心した凹部4に設けられているとともに、その各突出端が第2ネジ孔2aの軸心C2を中心とする円周上に位置するように設けられているので、各ネジ孔1a、2aの軸心C1、C2が一致した状態で各ナット1、2を容易に連結することができる。
【0039】
<実施形態2>
本実施形態2に係るネット構造体Eは、図8及び図9に示すように、ボルト39(図12参照)が挿通可能な挿通孔31aが形成されたワッシャー31と、ボルト39に螺合可能なネジ孔32aが形成されたナット32と、を備えている。この挿通孔31aの内径は、ネジ孔32aを構成するネジ山の谷の径以上の値に設定されている。
なお、ボルト39は、被締付部材38を貫通するネジ部39aと、ネジ部39aに螺合されるナット構造体Eとの間で被締付部材38を挟持する頭部39bと、を備えている。
【0040】
ワッシャー31には、図10に示すように、挿通孔31aを囲む筒状で且つ外周面が先端に向かって縮径するテーパ状に形成された凸部33が設けられている。この凸部33の先端面は円環状に形成されている。また、凸部33は、挿通孔31aの軸心C1に対して所定間隔(例えば、約0.3mm)で偏心した軸心C3を有している。また、凸部33の外周面は、挿通孔31aの軸心C3に対して所定角度(例えば、約7度)で傾斜している。さらに、凸部33の軸方向長さL1は約3mmとされている。
【0041】
ナット32には、図11に示すように、凸部33が嵌合可能なように内周面が先端(開口端)に向かって拡径するテーパ状に形成された凹部34が設けられている。この凹部34の底面は円形に形成されている。また、凹部34は、ネジ孔32aの軸心C2と一致する軸心C4を有している。また、凹部34の外周面は、ネジ孔32aの軸心C2に対して所定角度(例えば、約7度)で傾斜している。さらに、凹部34の軸方向長さL2は約3mmとされている。
【0042】
ワッシャー31は、図9に示すように、ナット32の軸方向の端面が当接するフランジ31bを有している。また、ナット32は、図示しない回転工具(例えば、各種のレンチ、スパナ等)が係合する正多角形(具体的に正六角形)の外周部32bを有している。この外周部32bは、その軸心がネジ孔32aの軸心と一致している。さらに、ネジ孔32aは、ボルト39のネジ部39aのピッチと一致するピッチを有している。
【0043】
凹部34の先端側(開口端側)には、図11に示すように、軸心方向にストレート状に延びるストレート部41が設けられている。このストレート部41の内周面は、凹部34の軸方向からみて真円をなしている。また、ストレート部41の軸方向長さL3は約1mmとされている。さらに、ストレート部41の深さFは約0.1mmとされている。
なお、ストレート部41の軸方向の長さL3としては、例えば、0.5~3mm(好ましくは2mm以下)を採用できる。また、ストレート部41の深さFとしては、0.05~2mm(好ましくは1mm以下)を採用できる。
【0044】
凸部33の先端側には、図10に示すように、ストレート部41に係止可能なように外側に向かって突出する突起42が円周方向に沿って所定のピッチ間隔(具体的に等ピッチ間隔)で複数(図中3つ)設けられている(図10参照)。これら各突起42は、凸部33の軸方向端面に窪み部43(具体的に楔状の傷部43)を設けることで形成されている(図8参照)。また、各突起42は、ストレート部41に係止する部分がR状に形成されている。これにより、突起42がストレート部41から凹部34のテーパ面に円滑に変位できる。また、各突起42は、その突出端が挿通孔31aの軸心C1を中心とする円周44上に位置するように突出量を調整して設けられている。そして、ストレート部41に対する複数の突起42の係止により、軸方向からみて挿通孔31aがネジ孔32aを構成するネジ山を囲む状態(具体的に、挿通孔31aの軸心C1とネジ孔32aの軸心C2が一致した状態)でワッシャー31とナット32とが連結されている(図1参照)。
なお、上記「軸方向からみて挿通孔31aがネジ孔32aを囲む状態」とは、軸方向からみて挿通孔31aの内周がネジ孔32aを構成するネジ山に重ならず外側に位置する状態を意図する。
【0045】
突起42の軸方向長さL4は約1mmとされている。また、突起42の横幅Wは約1mmとされている。
なお、突起42の軸方向の長さL4としては、例えば、0.5~3mm(好ましくは2mm以下)を採用できる。また、突起42の横幅Wとしては、例えば、0.5~3mm(好ましくは2mm以下)を採用できる。
【0046】
次に、上記構成のナット構造体Eの製造方法について説明する。本製法は、ワッシャー取得工程、ナット中間体取得工程、ナット取得工程及び連結工程を備えている。
【0047】
ワッシャー取得工程は、冷間鍛造によりワッシャー31を得る工程である(図13(a)参照)。このワッシャー取得工程では、例えば、冷間鍛造後に突起42を形成してもよいが、生産性等の観点から、冷間鍛造により突起42を形成することが好ましい。
【0048】
ナット中間体取得工程は、冷間鍛造により、ネジ孔32aとなる予定の中心孔51aと凹部34とを有するナット中間体51を得る工程である(図13(b)参照)。このナット中間体取得工程では、例えば、冷間鍛造後にストレート部41を形成してもよいが、生産性等の観点から、冷間鍛造によりストレート部41を形成することが好ましい。
【0049】
ナット取得工程は、中心孔51aをネジ孔32aに加工してナット32を得る工程である(図13(c)参照)。このナット取得工程では、ナット中間体51をホルダ(図示省略)に保持した状態で、タッピング装置(図示省略)により、中心孔51aをネジ孔32aに加工してナット32が得られる。このナット中間体51のホルダへの保持は、専用機等により自動で行われてもよいし、人手により行われてもよい。
【0050】
連結工程は、ストレート部41に対する複数の突起42の係止によって、挿通孔31aの軸心C1とネジ孔32aの軸心C2が一致した状態でワッシャー31とナット32を連結(一体化)する工程である(図13(d)参照)。この連結工程では、位置合わせ用のマーキングを必ずしも必要とせずワッシャー31とナット32を連結できる。さらに、連結工程は、専用機等により自動で行われてもよいし、人手により行われてもよい。
【0051】
次に、上記構成のナット構造体Eの作用効果について説明する。ボルト39に対してナット構造体Eを締め付ける際に、図12に示すように、凹部34に対して偏心した凸部33が嵌合することで、挿通孔31aとネジ孔32aの軸心C1、C2が所定間隔(例えば、約0.3mm)で偏心する。これにより、軸直角方向に強力なロック力が発生して優れたゆるみ止め効果が発揮される。
なお、凹部34に対して凸部33が嵌合する際には、窪み部43が消滅又は減少して突起42が凸部33の一部となる。
【0052】
以上より、本実施形態2のナット構造体Eによると、凹部34の先端側には、ストレート部41が設けられており、凸部33の先端側には、ストレート部41に係止可能なように外側に向かって突出する突起42が円周方向に沿って複数設けられており、ストレート部41に対する複数の突起42の係止により、軸方向からみて挿通孔31aがネジ孔32aを囲む状態でワッシャー31とナット32とが連結されている。これにより、ワッシャー31とナット32を一体物して取り扱うことができ、ボルト39に対して円滑に螺合できるとともに、ボルト39に対する締付時に優れたゆるみ止め効果を発揮することができる。
特に、ストレート部41に複数の突起42を係止させるようにしたので、ワッシャー31とナット32を強固に連結することができる。これに対して、テーパ状の凹部34の内周面に複数の突起42を係止させる形態では、突起42を係止し難く且つ外れ易い。
【0053】
また、本実施形態2では、複数の突起42は、挿通孔31aの軸心C1に対して偏心した凸部33に設けられているとともに、その各突出端が挿通孔31aの軸心C1を中心とする円周44上に位置するように設けられている。これにより、軸方向からみて挿通孔31aがネジ孔32aを囲む状態でワッシャー31とナット32を容易に連結することができる。
【0054】
さらに、本実施形態2では、突起42は、凸部33の軸方向の端面に窪み部43を設けることで形成されている。これにより、突起42を容易に形成することができる。
【0055】
さらに、本実施形態2に係るナット構造体Eの製造方法によると、冷間鍛造によりワッシャー31を得るワッシャー取得工程と、冷間鍛造により、ネジ孔32aとなる予定の中心孔51aと凹部34とを有するナット中間体51を得るナット中間体取得工程と、中心孔51aをネジ孔32aに加工してナット32を得るナット取得工程と、ストレート部41に対する複数の突起42の係止によって、挿通孔31aとネジ孔32aの軸心C1、C2が一致した状態でナット31とワッシャー32とを連結する連結工程と、を備える。これにより、ナット構造体Eを好適に得ることができる。
【0056】
次に、上記実施形態2に係るナット構造体Eの変形例1~3について説明する。なお、本変形例1~3では、実施形態2と略同じ構成には同符号を付けて詳説を省略する。
【0057】
<変形例1>
本変形例1に係るナット構造体Fは、図14(a)に示すように、ワッシャー31とナット32とを備えている。ワッシャー31には、凸部33が設けられている。この凸部33は、挿通孔31aの軸心C1に対して偏心した軸心C3を有している。ナット32には、凹部34が設けられている。この凹部34は、ネジ孔32aの軸心C2と一致した軸心C4を有している。
【0058】
凸部33の先端側には、軸心方向にストレート状に延びるストレート部41が設けられている。また、凹部34の先端側(開口端側)には、ストレート部41に係止可能なように内側に向かって突出する突起42が円周方向に沿って複数設けられている。これら各突起42は、凹部34の軸方向端面に窪み部43(具体的に楔状の傷部43)を設けることで形成されている。また、各突起42は、その突出端がネジ孔32aの軸心C2に対して偏心した軸心C3(凸部33の軸心C3)を中心とする円周上に位置するように突出量を調整して設けられている。
【0059】
本変形例1のナット構造体Fによると、実施形態2のナット構造体Eと略同様の作用効果を奏するとともに、複数の突起42は、ネジ孔32aの軸心C2と一致する軸心C4を有する凹部34に設けられているとともに、その各突出端がネジ孔32aの軸心C2に対して偏心した軸心C3を中心とする円周上に位置するように設けられているので、軸方向からみて挿通孔31aがネジ孔32aを囲む状態でワッシャー31とナット32を容易に連結することができる。
【0060】
<変形例2>
本変形例2に係るナット構造体Gは、図14(b)に示すように、ワッシャー31とナット32とを備えている。ワッシャー31には、凸部33が設けられている。この凸部33は、挿通孔31aの軸心C1と一致する軸心C3を有している。ナット32には、凹部34が設けられている。この凹部34は、ネジ孔32aの軸心C2に対して偏心した軸心C4を有している。
【0061】
凹部34の先端側(開口端側)には、軸心方向にストレート状に延びるストレート部41が設けられている。また、凸部33の先端側には、ストレート部41に係止可能なように外側に向かって突出する突起42が円周方向に沿って複数設けられている。これら各突起42は、凸部33の軸方向端面に窪み部43(具体的に楔状の傷部43)を設けることで形成されている。また、各突起42は、その突出端が挿通孔31aの軸心C1に対して偏心した軸心C4(凹部34の軸心C4)を中心とする円周上に位置するように突出量を調整して設けられている。
【0062】
本変形例2のナット構造体Gによると、実施形態1のナット構造体Eと略同様の作用効果を奏するとともに、複数の突起42は、挿通孔31aの軸心C1と一致する軸心C3を有する凸部33に設けられているとともに、その各突出端が挿通孔31aの軸心C1に対して偏心した軸心C4を中心とする円周上に位置するように設けられているので、軸方向からみて挿通孔31aがネジ孔32aを囲む状態でワッシャー31とナット32を容易に連結することができる。
【0063】
<変形例3>
本変形例3に係るナット構造体Hは、図14(c)に示すように、ワッシャー31とナット32とを備えている。ワッシャー31には、凸部33が設けられている。この凸部33は、挿通孔31aの軸心C1と一致する軸心C3を有している。ナット32には、凹部34が設けられている。この凹部34は、ネジ孔32aの軸心C2に対して偏心した軸心C4を有している。
【0064】
凸部33の先端側には、軸心方向にストレート状に延びるストレート部41が設けられている。また、凹部34の先端側(開口端側)には、ストレート部41に係止可能なように内側に向かって突出する突起42が円周方向に沿って複数設けられている。これら各突起42は、凹部34の軸方向端面に窪み部43(具体的に楔状の傷部43)を設けることで形成されている。また、各突起42は、その突出端がネジ孔32aの軸心C2を中心とする円周上に位置するように突出量を調整して設けられている。
【0065】
本変形例3のナット構造体Hによると、実施形態1のナット構造体Eと略同様の作用効果を奏するとともに、複数の突起42は、ネジ孔32aの軸心C2に対して偏心した凹部34に設けられているとともに、その各突出端がネジ孔32aの軸心を中心とする円周上に位置するように設けられているので、軸方向からみて挿通孔31aがネジ孔32aを囲む状態でワッシャー31とナット32を容易に連結することができる。
【0066】
尚、本発明においては、上記実施形態1、2に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施形態とすることができる。すなわち、上記実施形態1、2では、凸部3、33又は凹部4、34の軸方向の端面に窪み部13、43を設けることで形成される突起12、42を例示したが、これに限定されず、例えば、凸部3、33の外周面又は凹部4、34の内周面に窪み部13、43を設けることで形成される突起12、42としてもよい。
【0067】
また、上記実施形態1、2では、3つの突起42を備えるナット構造体A~Hを例示したが、これに限定されず、例えば、2つ又は4つ以上の突起12、42を備えるナット構造体A~Hとしてもよい。なお、突起12、42の加工性等の観点から、3~6個の突起12、42を設けることが好ましい。
【0068】
さらに、上記実施形態2では、挿通孔31aとネジ孔32aの軸心C1、C2が一致した状態でワッシャー31とナット32が連結されたナット構造体E~Hを例示したが、これに限定されず、例えば、軸方向からみて挿通孔31aがネジ孔32aを囲む状態である限り、挿通孔31aとネジ孔32aの軸心C1、C2が多少偏心した状態でワッシャー31とナット32が連結されたナット構造体E~Hとしてもよい。
【0069】
さらに、上記実施形態1、2では、凸部3、33又は凹部4、34の先端側のテーパ面に対して段差状に接続されるストレート部11、41を例示したが、これに限定されず、例えば、凸部3、33又は凹部4、34の先端側のテーパ面に対して段差なく接続されるストレート部11、41としてもよい。
【0070】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、ボルトに締結されるナット構造体に関する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0072】
A~H;ナット構造体、1;第1ナット、1a;第1ネジ孔、2;第2ナット、2a;第2ネジ孔、3;凸部、4;凹部、9;ボルト、11;ストレート部、12;突起、13;窪み部、31;ワッシャー、31a;挿通孔、32;ナット、32a;ネジ孔、33;凸部、34;凹部、39;ボルト、41;ストレート部、42;突起、43;窪み部、C1;第1ネジ孔又は挿通孔の軸心、C2;第2ネジ孔又はネジ孔の軸心。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14