(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/06 20060101AFI20240815BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20240815BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C09D201/06
C09D133/14
C09D167/00
(21)【出願番号】P 2022208708
(22)【出願日】2022-12-26
【審査請求日】2024-02-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300075348
【氏名又は名称】日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】成久 吉紀
(72)【発明者】
【氏名】小池 里奈
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174947(JP,A)
【文献】特開2018-178082(JP,A)
【文献】特開2022-186298(JP,A)
【文献】特開2009-191284(JP,A)
【文献】特開2018-104669(JP,A)
【文献】特表平08-511054(JP,A)
【文献】特開2020-192516(JP,A)
【文献】国際公開第2020/026743(WO,A1)
【文献】特開2020-026457(JP,A)
【文献】特開2014-088488(JP,A)
【文献】特開2020-094094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤組成物(I)と、硬化剤組成物(II)とを含む塗料組成物であって、
前記主剤組成物(I)及び前記硬化剤組成物(II)の少なくとも一つは、シランカップリング剤(D)、及び/又は、シランカップリング剤の加水分解物若しくは縮合物の少なくとも一つを含み、
前記シランカップリング剤(D)は、アミノ基含有シランカップリング剤(D1)及びエポキシ基含有シランカップリング剤(D2)を含み、
前記主剤組成物(I)は、塗膜形成樹脂(A)
;アミノ基含有シランカップリング剤(D1)、及び/又は、アミノ基含有シランカップリング剤(D1)の加水分解若しくは縮合物の少なくとも一つ;並びに、ベンゾトリアゾール化合物(E)を含み、
前記塗膜形成樹脂(A)は、水酸基を有するアクリル樹脂(A1)及び/又は水酸基を有するポリエステル樹脂(A2)を含み、
前記硬化剤組成物(II)は、ポリイソシアネート化合物(B)
;並びに、エポキシ基含有シランカップリング剤(D2)、及び/又は、エポキシ基含有シランカップリング剤(D2)の加水分解若しくは縮合物の少なくとも一つを
含む、塗料組成物。
【請求項2】
前記シランカップリング剤(D)の含有量は、前記塗料組成物の樹脂固形分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記アミノ基含有シランカップリング剤(D1)と前記エポキシ基含有シランカップリング剤(D2)の含有量の比[(D2)/(D1)]は、0.3以上20以下である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記ベンゾトリアゾール化合物(E)の含有量は、前記塗料組成物の樹脂固形分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記塗膜形成樹脂(A)の水酸基価は、30mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記ポリイソシアネート化合物(B)は、脂肪族ポリイソシアネート化合物;芳香族ポリイソシアネート化合物;脂環式ポリイソシアネート化合物;脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物又は脂環式ポリイソシアネート化合物の多量体;及び、脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物又は脂環ポリイソシアネート化合物の変性物から選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記ポリイソシアネート化合物(B)に含まれるイソシアネート基と、前記塗膜形成樹脂(A)に含まれる水酸基のモル比(NCO/OH)は、0.4以上1.6以下である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項8】
前記主剤組成物(I)及び前記硬化剤組成物(II)の少なくとも一つは、アミン化合物(F)を含み、
前記アミン化合物(F)は、炭素数6以上の脂肪族炭化水素基を有する、請求項1~
7のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項9】
前記アミン化合物(F)の含有量は、前記塗料組成物の樹脂固形分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下である、請求項
8に記載の塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械及び建設機械等は、一般に大型であり、そして強い荷重に耐えうるため、自動車車体等と比較して構成基材(鋼板)の厚みがあるという特徴がある。そのため、このような産業機械、建設機械が被塗物である場合は、被塗物の熱容量が大きく、加熱炉中において被塗物に熱が十分に伝達しないという問題がある。そのため、このような被塗物を塗装する場合は、高温加熱工程を必須とせず、常温でも塗膜形成を行うことができる、常温塗膜形成形塗料組成物が選択されている。
【0003】
産業機械及び建設機械等においては、物理的に過酷な環境下で使用されることも多いため、その表面を保護する塗膜には、一般に、優れた防食性に加えて、優れた耐候性も要求される。
【0004】
防食性及び耐候性の両方の性能を満足する塗膜を形成する方法としては、下塗り塗料組成物として、防食性に優れる塗料組成物を用い、その後に、耐候性に優れた上塗り塗料組成物を用いて、複層塗膜を形成する方法が挙げられる。例えば、特許文献1には、バインダー樹脂成分の全質量を基準にしてエポキシ当量が400~2,000g/eqである変性エポキシ樹脂、アミン樹脂及び反応性希釈剤からなるバインダー樹脂成分を含む弱溶剤型ハイソリッド変性エポキシ樹脂塗料を下塗りし、次いで、水酸基価が10~100mgKOH/gであるポリオール樹脂及びポリイソシアネート化合物からなるバインダー樹脂成分を含む弱溶剤型ハイソリッドポリウレタン樹脂塗料を上塗りすることを特徴とする、厚膜型防食塗膜の形成方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、防食性等の向上を目的として、水酸基含有樹脂、硫酸バリウム、タルク、有機樹脂粒子及び着色顔料並びにポリイソシアネート化合物を含む塗料組成物において、水酸基含有樹脂の固形分合計100質量部を基準として、硫酸バリウムを1~130質量部、タルクを1~50質量部、有機樹脂粒子を0.1~20質量部、着色顔料を1~100質量部、ポリイソシアネート化合物を10~60質量部用いることが記載されている。
【0006】
特許文献3には、防食性等の向上を目的として、アクリル樹脂粒子及び防錆剤を含む水性塗料組成物において、アクリル樹脂粒子の酸価を10~100mgKOH/gとして、アクリル樹脂粒子の全共重合成分の80質量%以上を溶解性パラメータ値が9.5以下の重合性モノマーとすること、前記防錆剤として、アミノシラン、アゾール化合物、並びに、脂肪酸、芳香族酸及び脂肪族アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-188239号公報
【文献】特開2017-52931号公報
【文献】国際公開第2020/026743号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の方法によれば、それぞれ1回の下塗り塗装及び上塗り塗装で従来の各層の多層塗りによる防食効果と同等の防食効果を得ることができると記載されている。しかしながら、この方法は、下塗り塗装後に常温で24時間乾燥させた後に上塗り塗料の塗装が行われており、複層塗膜の形成工程に長時間を要するため、塗装工程の効率(塗装作業性ともいう)が悪いという問題がある。塗膜形成時における塗装ラインの工程短縮、二酸化炭素の削減及び省エネ化の観点から、1回の塗装で耐食性と耐候性を両立できる塗膜が求められている。
【0009】
また、特許文献2、3の塗料組成物では、得られる塗膜の耐候性が十分に満足できるものではなかった。
【0010】
本開示は、前記事情に鑑みてなされたものであり、1回の塗装で耐食性と耐候性とを両立した塗膜を形成可能な塗料組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、以下を含む。
[1] 主剤組成物(I)と、硬化剤組成物(II)とを含む塗料組成物であって、
前記主剤組成物(I)は、塗膜形成樹脂(A)を含み、
前記塗膜形成樹脂(A)は、水酸基を有し、
前記硬化剤組成物(II)は、ポリイソシアネート化合物(B)を含み、
前記主剤組成物(I)及び前記硬化剤組成物(II)の少なくとも一つは、シランカップリング剤(D)、及び/又は、シランカップリング剤の加水分解物若しくは縮合物の少なくとも一つを含み、
前記シランカップリング剤(D)は、アミノ基含有シランカップリング剤(D1)及びエポキシ基含有シランカップリング剤(D2)を含み、
前記主剤組成物(I)及び前記硬化剤組成物(II)の少なくとも一つは、ベンゾトリアゾール化合物(E)を含む、塗料組成物。
[2] 前記シランカップリング剤(D)の含有量は、前記塗料組成物の樹脂固形分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下である、[1]に記載の塗料組成物。
[3] 前記アミノ基含有シランカップリング剤(D1)と前記エポキシ基含有シランカップリング剤(D2)の含有量の比[(D2)/(D1)]は、0.3以上20以下である、[1]又は[2]に記載の塗料組成物。
[4] 前記ベンゾトリアゾール化合物(E)の含有量は、前記塗料組成物の樹脂固形分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[5] 前記塗膜形成樹脂(A)の水酸基価は、30mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[6] 前記膜形成樹脂(A)は、アクリル樹脂(A1)及び/又はポリエステル樹脂(A2)を含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[7] 前記ポリイソシアネート化合物(B)は、脂肪族ポリイソシアネート化合物;芳香族ポリイソシアネート化合物;脂環式ポリイソシアネート化合物;脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物又は脂環式ポリイソシアネート化合物の多量体;及び、脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物又は脂環ポリイソシアネート化合物の変性物から選ばれる1種以上を含む、[1]~[6]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[8] 前記ポリイソシアネート化合物(B)に含まれるイソシアネート基と、前記塗膜形成樹脂(A)に含まれる水酸基のモル比(NCO/OH)は、0.4以上1.6以下である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[9] 前記主剤組成物(I)及び前記硬化剤組成物(II)の少なくとも一つは、アミン化合物(F)を含み、
前記アミン化合物(F)は、炭素数6以上の脂肪族炭化水素基を有する、[1]~[8]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[10] 前記アミン化合物(F)の含有量は、前記塗料組成物の樹脂固形分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下である、[9]に記載の塗料組成物。
【発明の効果】
【0012】
本開示の塗料組成物によれば、1回の塗装で耐食性と耐候性とを両立した塗膜を形成可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の塗料組成物は、主剤組成物(I)と、硬化剤組成物(II)とを含む塗料組成物であって、
前記主剤組成物(I)は、塗膜形成樹脂(A)を含み、
前記塗膜形成樹脂(A)は、水酸基を有し、
前記硬化剤組成物(II)は、ポリイソシアネート化合物(B)を含み、
前記主剤組成物(I)及び前記硬化剤組成物(II)の少なくとも一つは、シランカップリング剤(D)、及び/又は、シランカップリング剤の加水分解物若しくは縮合物の少なくとも一つを含み、
前記シランカップリング剤(D)は、アミノ基含有シランカップリング剤(D1)及びエポキシ基含有シランカップリング剤(D2)を含み、
前記主剤組成物(I)及び前記硬化剤組成物(II)の少なくとも一つは、ベンゾトリアゾール化合物(E)を含む。
【0014】
本開示によれば、1回の塗装で耐食性と耐候性とを両立した塗膜を形成可能である。
【0015】
本開示は、特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、本開示の塗料組成物が前記効果を奏する理由は以下のように考えられる。すなわち、本開示の塗料組成物は、水酸基を有する塗膜形成樹脂と、その硬化剤としてポリイソシアネート化合物とを含み、シランカップリング剤として、アミノ基含有シランカップリング剤及びエポキシ基含有シランカップリング剤と、ベンゾトリアゾール化合物が更に共存している。そのため、本開示の塗料組成物が被塗物に適用されると、ベンゾトリアゾール化合物は被塗物表面とπ-π相互作用し得、同時に、アミノ基含有シランカップリング剤及びエポキシ基含有シランカップリング剤は被塗物表面と相互作用又は樹脂中に取り込まれると考えられる。その結果、得られる塗膜では、ベンゾトリアゾール化合物が、被塗物表面を覆った状態で固定化され、更に、シランカップリング剤は、塗膜と被塗物表面との密着性を高めるとともに、塗膜自体の耐水性や耐候性、耐熱性を高め得ると考えられる。その結果、本開示の塗料組成物を用いることで、耐食性と耐候性とを両立した塗膜を形成可能になると考えられる。
【0016】
本開示において、塗料組成物を塗装した後、乾燥乃至硬化前の膜を塗装膜ともいい、乾燥乃至硬化した後の膜を塗膜ともいう。
【0017】
(塗料組成物)
前記塗料組成物は、主剤組成物(I)と硬化剤組成物(II)とを含み、代表的には、2液硬化形の塗料組成物であり得る。主剤組成物(I)及び硬化剤組成物(II)は、別々に保管され、塗装直前に混合し、混合物として塗装に供される。前記主剤組成物(I)は、塗膜形成樹脂(A)を含み、前記硬化剤組成物(II)は、ポリイソシアネート化合物(B)を含む。前記主剤組成物(I)及び前記硬化剤組成物(II)の少なくとも一つは、シランカプリング剤(D)、及び/又は、シランカップリング剤の加水分解物若しくは縮合物を含み、前記主剤組成物(I)及び前記硬化剤組成物(II)の少なくとも一つは、ベンゾトリアゾール化合物(E)を含む。前記主剤組成物(I)及び硬化剤組成物(II)の少なくとも一つは、それぞれ、着色顔料、体質顔料及び防錆顔料から選ばれる1種以上を含んでいてもよい。
【0018】
(A)塗膜形成樹脂
前記主剤組成物(I)は、塗膜形成樹脂(A)を含む。前記塗膜形成樹脂(A)は、水酸基を有する。前記塗膜形成樹脂(A)は、好ましくは、アクリル樹脂(A1)及び/又はポリエステル樹脂(A2)を含み、より好ましくは、アクリル樹脂(A1)を含む。
【0019】
(A1)アクリル樹脂
アクリル樹脂(A1)は、エチレン性モノマーを含むモノマー混合物の重合体であり、水酸基を有する。前記主剤組成物(I)がアクリル樹脂(A1)を含むことによって、得られる塗膜に被塗物への密着性が付与され得、塗膜の耐食性及び耐候性が良好になり得る。
【0020】
前記エチレン性モノマーとしては、水酸基含有モノマー及びその他のモノマーが挙げられる。
【0021】
水酸基含有モノマーとしては、前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、前記(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールモノエステル、前記ε-カプロラクトン変性(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0022】
アクリル樹脂(A1)に用いられるその他のモノマーとしては、前記カルボキシル基含有モノマー;前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリルモノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ブチルアミノエチル等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;アミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル等のシアン化ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の飽和脂肪族カルボン酸ビニルエステルモノマー;前記スチレン系モノマー等を挙げることができる。
前記エチレン性モノマーは、1種のみを用いてもよく、2種又はそれ以上を併用してもよい。
【0023】
前記アクリル樹脂(A1)に用いられるその他のモノマーとしては、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、前記脂環式(メタ)アクリルモノマーが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等がより好ましい。
【0024】
前記アクリル樹脂(A1)の水酸基価は、好ましくは30mgKOH/g以上300mgKOH/g以下、より好ましくは50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である。アクリル樹脂(A1)の水酸基価が前記範囲にあることで、得られる塗膜の耐食性及び耐候性が良好になり得る。
【0025】
前記アクリル樹脂(A1)の酸価は、好ましくは0mgKOH/g以上20mgKOH/g以下、より好ましくは0mgKOH/g以上15mgKOH/gである。
【0026】
なお、本開示において、酸価及び水酸基価は、いずれも固形分換算値を示し、JIS K 0070に準拠した方法により測定され得る。
【0027】
前記アクリル樹脂(A1)の数平均分子量は、好ましくは3,000~20,000、より好ましくは3,000~15,000、更に好ましくは3,500~12,000である。アクリル樹脂(A1)の数平均分子量が前記範囲にあることで、得られる塗膜の外観、耐食性及び耐候性が良好になり得る。
なお、本開示において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算した値である。
【0028】
前記アクリル樹脂(A1)は、無溶媒又は適当な有機溶媒の存在下において前記モノマー混合物を重合することにより製造できる。重合方法としては、例えば、ラジカル重合法が挙げられ、ラジカル重合開始剤を用いて実施できる。具体的に、前記重合は、塊状重合法、溶液重合法、塊状重合後に懸濁重合を行う塊状-懸濁二段重合法等であってよい。これらの中でも、溶液重合法が特に好ましく、例えば、前記モノマー混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下、例えば80~200℃の温度でかくはんしながら加熱する方法等が挙げられる。
【0029】
アクリル樹脂(A1)として、市販のものを使用してもよい。市販のものとしては特に限定されず、例えば、アクリディックA-428等のアクリディックシリーズ(DIC社製)、ダイヤナールLC-2657等のダイヤナールシリーズ(三菱ケミカル社製)、ヒタロイドシリーズ(昭和電工マテリアルズ社製)が挙げられる。
【0030】
前記アクリル樹脂(A1)の固形分の含有率は、塗膜形成樹脂(A)の固形分の合計100質量部中、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、更に好ましくは90質量%以上100質量%以下であり得る。
【0031】
なお、本開示において、ある成分の固形分とは、該成分を105℃で1時間加熱した場合の加熱残分を意味する。
【0032】
(A2)ポリエステル樹脂
前記ポリエステル樹脂(A2)は、ポリオールと多塩基酸との縮合物、及び/又は、該縮合物の変性物であり得、水酸基を有する。
【0033】
前記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール又は1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ヒドロキシアルキル化ビスフェノールA、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル-2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオネート(BASHPN)、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)ジメチルヒダントイン、ポリカプロラクトンポリオール、グリセリン、ソルビトール、アンニトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-(ヒドロキシエチル)イソシアネート等が挙げられる。ポリオールは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記多塩基酸としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、無水コハク酸、乳酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、無水エンド酸等が挙げられる。塩基酸は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記変性物としては、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、シリコーン変性ポリエステル樹脂等の変性ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0036】
前記ポリエステル樹脂(A2)の水酸基価は、好ましくは50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下、より好ましくは60mgKOH/g以上180mgKOH/g以下、更に好ましくは70mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である。ポリエステル樹脂(A2)の水酸基価が前記範囲にあることで、得られる塗膜の耐食性及び耐候性が良好になり得る。
【0037】
前記ポリエステル樹脂(A2)の酸価は、好ましくは0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下、より好ましくは0mgKOH/g以上30mgKOH/g以下、更に好ましくは0mgKOH/g以上25mgKOH/g以下である。
【0038】
前記ポリエステル樹脂(A2)の数平均分子量は、好ましくは1,000以上5,000以下、より好ましくは1,200以上4,000以下、更に好ましくは1,500以上3,500以下である。ポリエステル樹脂(A2)の数平均分子量が前記範囲にあることで、得られる塗膜の外観、耐食性及び耐候性が良好になり得る。
【0039】
前記ポリエステル樹脂(A2)の固形分の含有率は、塗膜形成樹脂(A)の固形分の合計100質量部中、好ましくは0質量%以上50質量%以下、より好ましくは0質量%以上30質量%以下、更に好ましくは0質量%以上10質量%以下であり得る。
【0040】
前記塗膜形成樹脂(A)は、アクリル樹脂(A1)及び/又はポリエステル樹脂(A2)に加えて、必要に応じ、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等のその他の樹脂を含んでいてもよい。
【0041】
前記塗膜形成樹脂(A)の水酸基価は、好ましくは30mgKOH/g以上300mgKOH/g以下、より好ましくは50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である。塗膜形成樹脂樹脂(A)の水酸基価が前記範囲にあることで、得られる塗膜の耐食性及び耐候性が良好になり得る。
【0042】
前記塗膜形成樹脂(A)の酸価は、好ましくは0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下、より好ましくは0mgKOH/g以上30mgKOH/g以下、更に好ましくは0mgKOH/g以上20mgKOH/g以下である。
【0043】
前記塗膜形成樹脂(A)の数平均分子量は、好ましくは1,000以上15,000以下、より好ましくは1,200以上12,000以下でありる。塗膜形成樹脂(A)の数平均分子量が前記範囲にあることで、得られる塗膜の耐食性及び耐候性が良好になり得る。
【0044】
前記塗膜形成樹脂(A)の固形分の含有量は、前記塗料組成物の固形分100質量部中、好ましくは20質量部以上70質量部以下、より好ましくは25質量部以上60質量部以下、更に好ましくは30質量部以上53質量部以下であり得る。
【0045】
ポリイソシアネート化合物(B)
ポリイソシアネート化合物(B)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を表す。
【0046】
前記ポリイソシアネート化合物(B)は、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物;脂環式ポリイソシアネート化合物;芳香族ポリイソシアネート;脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物又は脂環式ポリイソシアネート化合物の多量体;及び、脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物又は脂環ポリイソシアネート化合物の変性物から選ばれる1種以上を含む。前記脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物及び脂環式ポリイソシアネート化合物は、単量体であってもよく、多量体であってもよい。前記ポリイソシアネート化合物(B)は、いわゆるアシンメトリー型のものであってもよい。ポリイソシアネート化合物(B)の炭素原子数は、好ましくは5~24、より好ましくは6~18である。
【0047】
前記脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルへキサンジイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート-(1,11)、リジンエステルジイソシアネート、ジエチレングリコールジイソシアネート、ジプロピレングリコールジイソシアネート、トリエチレングリコールジイソシアネート、チオジプロピルジイソシアネート等が挙げられる。
【0048】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、1,5-ジメチル-2,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,5-トリメチル-2,4-ビス(ω-イソシアナトエチル)-ベンゼン、1,3,5-トリメチル-2,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリエチル‐2,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、2,4-及び/又は2,6-トルエンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0049】
前記脂環式ポリイソシアネート化合物としては、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0050】
前記多量体としては、前記脂肪族ポリイソシアネート化合物、前記芳香族ポリイソシアネート化合物及び前記脂環式ポリイソシアネート化合物のアロファネート体、ウレトジオン体、ビュレット体、イソシアヌレート体、トリメチロールプロパン(TMP)アダクト体等が挙げられる。
【0051】
前記変性物としては、前記脂肪族ポリイソシアネート化合物、前記芳香族ポリイソシアネート化合物及び前記脂環式ポリイソシアネート化合物の自己重合によるカルボジイミド化合物、ウレトンイミン化合物;前記脂肪族ポリイソシアネート、前記芳香族ポリイソシアネート及び前記脂環式ポリイソシアネートに、水酸基を有する化合物、アミン化合物及びエポキシ化合物から選ばれる1種以上を変性することにより、ウレタン基、ウレア基及びオキサゾリドン基を形成した化合物等が挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物(B)は、1種のみを用いてもよく、2種又はそれ以上を併用してもよい。
【0052】
前記ポリイソシアネート化合物(B)は、前記脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート及び芳香族ポリイソシアネートから選ばれる1種以上の多量体を含むことが好ましく、前記脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート及び芳香族ポリイソシアネートから選ばれる1種以上のイソシアヌレート体を少なくとも含むことがより好ましく、前記脂肪族ポリイソシアネートのイソシヌレート体を含むことが更に好ましい。前記ポリイソシアネート化合物(B)が、前記脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート及び芳香族ポリイソシアネートから選ばれる1種以上のイソシアヌレート体を含む場合、該イソシアヌレート体の含有率は、前記ポリイソシアネート化合物(B)中、好ましくは60質量%以上100質量%以下である。
【0053】
前記塗料組成物において、前記ポリイソシアネート化合物(B)が有するイソシアネート基と、前記塗膜形成樹脂(A)が有する水酸基とのモル比(NCO/OH)は、好ましくは0.4以上1.6以下、より好ましくは0.8以上1.3以下である。前記モル比(NCO/OH)がかかる範囲にあることにより、塗料組成物が十分に硬化し、得られる塗膜の耐食性及び耐候性がより良好になり得る。
【0054】
(C)溶剤
前記塗料組成物は、分散媒体として溶剤(C)を含むことが好ましい。具体的には、主剤組成物(I)及び硬化剤組成物(II)の少なくとも一つは、分散媒体として有機溶剤を含むことが好ましく、主剤組成物(I)及び硬化剤組成物(II)は、分散媒体として有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶剤(C)としては、溶剤型塗料において通常用いられるものを含むことができ、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、2-メトキシプロパノール(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルジグリコール、2-ブトキシプロパノール等のエーテル系溶剤;メトキシブチルアセテート、メチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(セロソルブアセテート)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ブチルセロソルブアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテルアセテート系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤;石油エーテル;石油ナフサ等が挙げられる。
【0055】
前記溶剤(C)としては、市販品を用いてもよい。該市販品としては、例えば、ソルベッソ100(エクソン化学社製)等が挙げられる。
【0056】
(D)シランカップリング剤
本開示の製造方法において、塗料組成物における主剤(I)及び硬化剤(II)の少なくとも一つは、シランカップリング剤(D)、及び/又は、シランカップリング剤(D)の加水分解物若しくは縮合物の少なくとも一つを含む。前記縮合物は、例えば、シランカップリング剤(D)の2量体~4量体であってよい。
【0057】
本開示において、前記シランカップリング剤(D)は、加水分解性シリル基と、該加水分解性シリル基のケイ素原子に結合する有機基とを有する化合物を表す。前記シランカップリング剤(D)は、アミノ基含有シランカップリング剤(D1)及びエポキシ基含有シランカップリング剤(D2)を含む。
【0058】
前記アミノ基含有シランカップリング剤(D1)は、アミノ基を有するシランカップリング剤を表す。前記アミノ基は、第1級及び/又は第2級アミノ基であり得る。
【0059】
前記アミノ基含有シランカップリング剤(D1)は、好ましくは、以下の式(1):
X1-SiR1
n(OR1)3-n (1)
[式(1)中、
R1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-4アルキル基を表し、
X1は、アミノ基を含む有機基を表し、
nは、0~2の整数を表す。]
で表される化合物を含む。
【0060】
前記アミノ基を含む有機基は、好ましくは、第1級及び/又は第2級アミノ基を含む有機基であり得る。前記アミノ基を含む有機基としては、好ましくは、以下の式:
-R12-NR11-R12-NR11
2
-R12-NR11
2
[式中、
R11は、各出現においてそれぞれ独立して、置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC6-10芳香族炭化水素基又は水素原子を表し、
R12は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-10アルキレン基を表し、好ましくはC1-6アルキレン基、より好ましくはC1-4アルキレン基を表す。]
で表される基が挙げられる。
【0061】
R12で表されるC1-10アルキレン基及びR12で表されるC6-10芳香族炭化水素基が有していても良い置換基としては、ビニル基及びC6-10芳香族炭化水素基が挙げられる。R11で表されるC6-10芳香族炭化水素基及び前記置換基であるC6-10芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビニルフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0062】
前記アミノ基含有シランカップリング剤(D1)としては、例えば、例えば、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等が挙げられる。
【0063】
前記アミノ基含有シランカップリング剤(D1)及びその加水分解物若しくはその縮合物としては、市販品を用いてもよい。該市販品としては、KBM-602、KBM-603、KBE-603、KBM-903、KBM-6803、KBM-573、KBP-90(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。
前記アミノ基含有シランカップリング剤(D1)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
前記アミノ基含有シランカップリング剤(D1)の含有量は、塗料組成物の樹脂固形分の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、更に好ましくは0.3質量部以上5質量部以下、より更に好ましくは0.5質量部以上2質量部以下であり得る。アミノ基含有シランカップリング剤(D1)の含有量が前記範囲にあることで、得られる塗料組成物の貯蔵安定性が良好となり、且つ得られる塗膜の耐食性及び耐候性が良好となり得る。
【0065】
なお、本開示において、アミノ基含有シランカップリング剤(D)の含有量は、塗料組成物に含まれるシランカップリング剤(D)そのものの量及びシランカップリング剤(D)の加水分解物又は縮合物の量を未反応のシランカップリング剤(D)の量に換算した量の合計を表し、例えば、塗料組成物の調製に用いるシランカップリング剤(D)の量としてよい。アミノ基含有シランカップリング剤(D1)及びエポキシ基含有シランカップリング剤(D2)の含有量についても同様である。
【0066】
また、本開示において、塗料組成物の樹脂固形分は、主剤組成物(I)及び硬化剤組成物(II)に含まれ得る樹脂成分の固形分の合計量を意味し、具体的には、塗膜形成樹脂(A)の固形分と、ポリイソシアネート化合物(B)の固形分の合計量を意味する。
【0067】
前記エポキシ基含有シランカップリング剤(D2)は、エポキシ基を有するシランカップリング剤を表す。
【0068】
前記エポキシ基含有シランカプリング剤(D2)は、好ましくは、以下の式(2):
X2-R2-SiR1
n(OR1)3-n (2)
[式(2)中、
R1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-4アルキル基を表し、
R2は、C1-6アルキレン基を表し、
X2は、エポキシ基、エポキシシクロアルキル基及びグリシドキシ基から選ばれる1種を表し、
nは、0~2の整数を表す。]
で表される化合物を含む。
【0069】
エポキシ基含有シランカップリング剤(D2)としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0070】
前記エポキシ基含有シランカップリング剤(D2)及びその加水分解物若しくはその縮合物としては、市販品を用いてもよい。かかる市販品としては、KBM-403、KBE-403、KBE-402、KBM-303(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。
前記エポキシ基含有シランカップリング剤(D2)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
前記エポキシ基含有シランカップリング剤(D2)の含有量は、樹脂固形分の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上20質量部以下、更に好ましくは0.3質量部以上15質量部以下、より更に好ましくは0.3質量部以上12質量部以下であり得る。エポキシ基含有シランカップリング剤(D2)の含有量が前記範囲にあることで、塗料の貯蔵安定性が良好かつ、得られる塗膜の耐食性及び耐候性が良好となり得る。
【0072】
前記アミノ基含有シランカップリング剤(D1)と前記エポキシ基含有シランカップリング剤(D2)の含有量の比[(D2)/(D1)]は、好ましくは0.3以上30以下、より好ましくは0.3以上20以下、更に好ましくは1以上17以下、より更に好ましくは3以上17以下である。前記範囲にあることで、得られる塗膜の耐食性及び耐候性が良好となり得る。
【0073】
前記アミノ基含有シランカップリング剤(D1)及び前記エポキシ基含有シランカップリング剤(D2)の合計の含有量は、シランカップリング剤(D)の合計100質量部中、好ましくは50質量部以上100質量部以下、より好ましくは70質量部以上100質量部以下、更に好ましくは80質量部以上100質量部以下であり得る。
【0074】
前記シランカップリング剤(D)の含有量は、塗料組成物の樹脂固形分の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上40質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上30質量部以下、更に好ましくは0.7質量部以上20質量部以下、より更に好ましくは1質量部以上15質量部以下であり得る。
【0075】
前記シランカップリング剤(D)は、アミノ基含有シランカップリング剤(D1)及びエポキシ基含有シランカップリング剤(D2)以外に、その他のシランカップリング剤を含んでいてもよい。
【0076】
前記シランカップリング剤(D)は、主剤組成物(I)及び硬化剤組成物(II)の少なくとも一つに含まれていればよく、主剤組成物(I)のみに含まれていてもよく、硬化剤組成物(II)のみに含まれていてもよく、主剤組成物(I)及び硬化剤組成物(II)の両方に含まれていてもよい。一態様において、前記アミノ基含有シランカップリング剤(D1)は、主剤組成物(I)に含まれることが好ましく、前記エポキシ基含有シランカップリング剤(D2)は、硬化剤組成物(II)に含まれることが好ましい。
【0077】
(E)ベンゾトリアゾール化合物
前記主剤組成物(I)及び前記硬化剤(II)組成物の少なくとも一つは、ベンゾトリアゾール化合物(E)を含む。ベンゾトリアゾール化合物(E)を含むことで、得られる塗膜の耐食性が良好である。
【0078】
前記ベンゾトリアゾール化合物(E)は、代表的には、紫外線吸収機能を有しないベンゾトリアゾール化合物であることが好ましく、例えば、ベンゾトリアゾール骨格の2位の窒素原子にアルキルフェノール基が結合しているベンゾトリアゾール化合物を含まないことが好ましい。
【0079】
前記ベンゾトリアゾール化合物(E)は、好ましくは、以下の式(3):
【0080】
【化1】
[式(3)中、
R
4は、C
1-4アルキル基、カルボキシル基又は水素原子を表し、
R
5は、置換又は非置換のアミノアルキル基、ホスホニウム塩基、ナトリウム原子又は水素原子を表す。]
で表され得る。前記ベンゾトリアゾール化合物(E)は、式(3)で表される化合物の互変異性体であってもよい。
【0081】
前記ベンゾトリアゾール化合物(E)としては、具体的には、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’-[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1,2,3-ベンゾトリアゾール・ナトリウム塩水溶液、トリルトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、N,N-ビス(2-エチルヘキシル)(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチルアミン、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]-4or5-メチルベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0082】
前記ベンゾトリアゾール化合物(E)としては、市販品を用いてもよい。該市販品としては、BT-120、BT-120SG、BT-LX、CBT-1、CBT-SG、TT-LX、JCL-400、TT-130F、TT-LYX(以上、城北化学工業社製)、VENZONE N-BTA、VENZONE OA-372、VENZONE OA-386(以上、大和化成社製)等が挙げられる。
【0083】
前記ベンゾトリアゾール化合物(E)の含有量は、塗料組成物の樹脂固形分の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.2質量部以上5質量部以下、更に好ましくは0.4質量部以上3質量部以下である。ベンゾトリアゾール化合物(E)の含有量が前記範囲にあることで、得られる塗膜の耐食性及び耐候性が良好となり得る。
【0084】
前記ベンゾトリアゾール化合物(E)は、主剤組成物(I)及び硬化剤組成物(II)のいずれに含まれていてもよく、主剤組成物(I)に含まれることが好ましい。
【0085】
(F)アミン化合物
前記主剤組成物(I)及び前記硬化剤(II)組成物の少なくとも一つは、アミン化合物(F)を含むことが好ましい。アミン化合物(F)を含むことで、得られる塗膜の耐食性がより良好になり得る。
【0086】
前記アミン化合物(F)は、炭素原子数6以上の脂肪族炭化水素基を有することが好ましい。該脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり得、該脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは8~20である。該脂肪族炭化水素基は、代表的には、アミン化合物(F)の窒素原子に結合していることが好ましい。
【0087】
前記アミン化合物(F)は、前記脂肪族炭化水素基の他に、C1-4アルキル基、C1-4ヒドロキシアルキル基及びポリオキシアルキレン基から選ばれる1種を有することが好ましく、ポリオキシアルキレン基を有することがより好ましい。前記ポリオキシアルキレン基は、好ましくはポリオキシエチレン基及び/又はポリオキシプロピレン基であり得、より好ましくはポリオキシアルキレン基であり得る。
【0088】
前記アミン化合物(F)としては、具体的には、アルキルアミン、牛脂アルキルアミン、ビス(2-ヒドロキシエチル)アルキル(ヤシ)アミン、ポリオキシエチレンアルキル(ヤシ)アミン、ポリオキシエチレンアルキル(ヤシ)アミン、ビス(2-ヒドロキシエチル)アルキル(オレイル)アミン、ポリオキシエチレンアルキル(オレイル)アミン、ポリオキシエチレンアルキル(オレイル)アミン、ビス(2-ヒドロキシエチル)アルキル(牛脂)アミン、ポリオキシエチレンアルキル(牛脂)アミン、ポリオキシエチレンアルキル(牛脂)アミン、ビス(2-ヒドロキシエチル)アルキル(硬化牛脂)アミン、ポリオキシエチレンアルキル(硬化牛脂)アミン、ヤシアルキルジメチルアミン、牛脂アルキルジメチルアミン、ドデシルジメチルアミン等が挙げられる。
【0089】
前記アミン化合物(F)としては、市販品を用いてもよい。該市販品としては、リポノール C/12、リポノール C/15、リポノール C/25、リポノール O/12、リポノール O/15、リポノール O/25、リポノール T/12、リポノール T/15、リポノール T/25、リポノール HT/12、リポノール HT/14、リポミン DMMCD、リポミン DMTD、リポミン DM12D(ライオンスペシャリティケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0090】
前記アミン化合物(F)の含有量は、塗料組成物の樹脂固形分の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.2質量部以上5質量部以下、更に好ましくは0.4質量部以上3質量部以下である。アミン化合物(F)の含有量が前記範囲にあることで、得られる塗膜の耐食性がより良好になり得る。
【0091】
前記塗料組成物は、顔料を更に含んでいてもよい。前記顔料としては、着色顔料、体質顔料及び防錆顔料が挙げられ、着色顔料及び体質顔料から選ばれる1種又はそれ以上を含むことが好ましい。
【0092】
前記着色顔料としては、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、金属錯体顔料等の有機系着色顔料;及び黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタン等の無機系着色顔料等が挙げられる。
【0093】
前記着色顔料の含有量は、塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上55質量部以下、より好ましくは10質量部以上50質量部以下、更に好ましくは15質量部以上50質量部以下であり得る。
【0094】
前記体質顔料としては、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ケイ酸、ケイ酸塩、酸化アルミニウム水和物、硫酸カルシウム、石膏、雲母状酸化鉄(MIO)、ガラスフレーク、スゾライト・マイカ、クラライト・マイカ等が挙げられる。
ある態様において、体質顔料としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルクからなる群から選択されるものである。例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム及び表面処理タルク等を用いることができる。このような体質顔料を単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0095】
前記体質顔料の含有量は、塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは0質量部以上100質量部以下、より好ましくは0質量部以上70質量部以下、更に好ましくは10質量部以上50質量部以下であり得る。
【0096】
前記防錆顔料としては、リン酸系防錆顔料が好ましい。前記リン酸系防錆顔料としては、リン酸類の金属塩が挙げられる。前記リン酸類としては、オルトリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、メタリン酸等が挙げられ、前記金属塩に含まれ得る金属としては、鉄、アルミニウム、カルシウム、モリブデン、亜鉛等が挙げられる。前記リン酸系防錆顔料としては、具体的には、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、トリポリリン酸アルミニウム、及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛等が挙げられる。
【0097】
一態様において、前記防錆顔料の含有量は、塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは0質量部以上100質量部以下、より好ましくは5質量部以上50質量部以下、更に好ましくは10質量部以上40質量部以下である。
【0098】
別の態様において、本開示の塗料組成物は、防錆顔料を含まない場合でも、得られる塗膜の耐食性及び耐候性を両立し得る。かかる観点から、防錆顔料の含有量は、塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0質量部以上30質量部以下であってよく、更に0質量部以上20質量部以下であってよく、特に0質量部以上5質量部以下であってよい。
【0099】
その他の成分等
前記溶剤系上塗り塗料組成物は、必要に応じて、公知の各種添加剤を含んでもよい。各種添加剤としては、塗料組成物に用いられる添加剤を適宜使用でき、例えば、樹脂粒子、その他の樹脂成分、タレ止め・沈降防止剤、硬化触媒(有機金属触媒)、色分れ防止剤、分散剤、消泡・ワキ防止剤、粘性調整剤、レベリング剤、ツヤ消し剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、ピンホール防止剤、可塑剤、造膜助剤等を挙げることができる。これらの構成要素の配合量は、本開示の効果を損なわない範囲で、適宜調整される。
【0100】
前記塗料組成物において、固形分の合計の含有率は、好ましくは20質量%以上75質量%以下、より好ましくは30質量%以上70質量%以下である。
【0101】
<塗料組成物の調製>
前記塗料組成物の主剤組成物(I)及び硬化剤組成物(II)は、前記各種成分を、それぞれ当業者に知られた方法によって混合することによって調製することができる。塗料組成物の調製方法は、当業者において通常用いられる方法を用いることができる。例えば、ニーダー又はロール等を用いた混練混合手段、又は、サンドグラインドミル又はディスパー等を用いた分散混合手段等の、当業者において通常用いられる方法を用いることができる。
【0102】
前記塗料組成物における、主剤組成物(I)及び硬化剤組成物(II)の混合のタイミングは、使用直前であってよく、例えば、使用前に主剤組成物(I)及び硬化剤組成物(II)を混合して、通常の塗装方法により塗装してもよい。また、2液混合ガンでそれぞれの液をガンまで送液し、ガン先で混合する方法で塗装してもよい。
【0103】
(塗装膜形成工程)
前記塗装膜形成工程では、塗料組成物を被塗物上に塗装する。これにより、塗装膜が形成される。
【0104】
かかる塗料組成物の塗装方法は、特に限定されないが、浸漬、刷毛、ローラー、ロールコーター、エアスプレー、エアレススプレー、カーテンフローコーター、ローラーカーテンコーター、ダイコーター等の一般に用いられている塗装方法等を挙げることができる。前記スプレー塗装においては、必要に応じて2液混合ガンを用いてもよい。これらは被塗物に応じて適宜選択することができる。
【0105】
前記塗料組成物の塗装は、塗装膜の乾燥膜厚(以下、「塗装膜の乾燥膜」を「塗膜」又は「乾燥塗膜」ともいい、「塗装膜の乾燥膜厚」を「塗膜の膜厚」又は「乾燥塗膜の膜厚」ともいう)が30~200μm、好ましくは40~150μmとなるように実施され得る。一態様において、前記塗料組成物の塗装は、乾燥塗膜の膜厚が、50~120μm、更に60~110μmとなるように実施され得る。前記塗料組成物を用いることで、厚膜に塗装した場合でも、平滑で欠陥のない塗膜を得ることができる。また、塗膜を30μm以上とすることで、基材を十分に保護することが容易となり、100μm以下とすることで、塗膜におけるワキ等の不具合の発生を抑制することが容易となる。
【0106】
前記被塗物としては、例えば、鉄、亜鉛、錫、銅、チタン、ブリキトタン等の金属基材が挙げられる。これらの金属基材には、亜鉛、銅、クロム等のメッキが施されていてもよく、また、クロム酸、リン酸亜鉛又はジルコニウム塩等の表面処理剤を用いた表面処理が施されていてもよい。
【0107】
本開示の塗料組成物は、熱容量が大きい被塗物、例えば、金属基材等のように、加熱炉中で熱が十分に伝達し難い被塗物に対しても好適に用いることができる。このような被塗物として、具体的には、建設機械(例えば、ブルドーザー、スクレイパー、油圧ショベル、堀削機、運搬機械(トラック、トレーラー等)、クレーン・荷役機械、基礎工事用機械(ディーゼルハンマー、油圧ハンマー等)、トンネル工事用機械(ボーリングマシーン等)、ロードローラー等);一般工業用と呼ばれる弱電・重電機器、農業機械、鋼製家具、工作機械及び大型車両等の産業機械;その他熱容量が大きく加熱しても昇温し難い被塗物等が挙げられる。本開示における複層塗膜の製造方法は、熱容量が大きく加熱しても昇温し難い被塗物である建設機械又は産業機械の塗装に好適に用いることができる。
【0108】
(乾燥工程)
乾燥工程では、前記塗装膜を乾燥させる。これにより、塗膜が形成される。
【0109】
一態様において、乾燥温度は、5~35℃であってよく、乾燥時間は1~10日であってよい。別の態様において、乾燥温度は、例えば50~100℃、更に60~80℃であってよく、この場合の乾燥時間は、15~60分であってよい。
【0110】
本開示の塗料組成物は、1回の塗装で、耐食性及び耐候性が良好な塗膜を形成可能である。したがって、本開示の塗料組成物は、熱容量が大きい被塗物、例えば、建設機械又は産業機械の塗装に好適に用いることができる。
【実施例】
【0111】
以下の実施例により本開示を更に具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されない。実施例中「部」及び「%」は、ことわりのない限り質量基準による。
【0112】
<樹脂の製造>
(製造例1) 塗膜形成樹脂(A1-1)の調製
かくはん機、温度調節機、滴下ロート、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を取り付けた1Lの反応容器に酢酸ブチル60質量部を仕込み、温度を120℃にした。次に、アクリルモノマーとして、スチレン25.0質量部、メタクリル酸0.6質量部、メタクリル酸メチル8.7質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル19.7質量部、アクリル酸n-ブチル1.0質量部、メタクリル酸n-ブチル45.0質量部及び反応開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート4部を滴下ロートに仕込みモノマー溶液とした。反応容器内を120℃に保持しながら3時間かけてこのモノマー溶液を滴下した。滴下後更に1時間120℃で保持し、塗膜形成樹脂(A1-1)(数平均分子量:3,000、固形分水酸基価:85mgKOH/g、固形分酸価:4mgKOH/g、固形分濃度:60質量%)を得た。
【0113】
(製造例2~5) 塗膜形成樹脂(A1-2)~(A1-5)の製造
モノマー種、量を表1のとおり変更した以外は、前記と同様にして、塗膜形成樹脂(A1-2)~(A1-5)を調製した。各塗膜形成樹脂における数平均分子量等の特数値を表1に示す。
【0114】
【0115】
(製造例6) 塗膜形成樹脂(A2-1)の調製
かくはん機、温度調整器、還流冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応容器に、イソフタル酸51.6質量部、アジピン酸6.2質量部、ネオペンチルグリコール15.4質量部、トリメチロールプロパン8.2質量部、1,6-ヘキサンジオール18.6質量部、ジ-n-ブチル錫オキサイド0.05質量部及びキシレン3質量部を混合し、窒素雰囲気下で220℃まで徐々に昇温し、生成する水を留去しながら、エステル化反応を行った。反応物の酸価が40になるまで反応を進行させ、その後、酢酸イソブチル55質量部を加えて、塗膜形成樹脂(A2-1)(数平均分子量:1,200、固形分酸価:40mgKOH/g、固形分水酸基価:100mgKOH/g、固形分濃度:60質量%)を得た。
【0116】
(製造例7~10) 塗膜形成樹脂(A2-2)~(A2-4)の調製
モノマー種、量を表2のとおり変更した以外は、前記と同様にして、塗膜形成樹脂(A2-2)~(A2-4)を調製した。各塗膜形成樹脂における数平均分子量等の特数値を表2に示す。
【0117】
【0118】
(実施例1)
<塗料組成物1の製造>
分散容器に、塗膜形成樹脂(A1-1) 48質量部(固形分として、28.80質量部)、体質顔料として重質炭酸カルシウムスーパー#2000 16.75質量部、着色顔料としてTAROX合成酸化鉄LL-XLO 12.55部、分散剤としてBYK-161 2.0質量部及び有機溶剤(C-1)として酢酸ブチル 10質量部を添加し、ガラスビーズを入れて分散し、粒度が12μm以下になるまで分散を行った。その後、ベンゾトリアゾール化合物(E-1)としてBT-120 0.33質量部、アミノ基含有シランカップリング剤(D1-1)としてKBE-903 0.33質量部、光安定剤としてTINUVIN292 2.00質量部及び紫外線吸収剤としてTINUVIN384-2 1.00質量部を添加し、かくはん、混合し、主剤組成物1を調製した。なお、ベンゾトリアゾール化合物(E-1)は、BT-120 0.33質量部を、有機溶剤(C-2)としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル1.0質量部に溶解させて使用した。
【0119】
別途、イソシアヌレート型のポリイソシアネート化合物としてデュラネートTKA-100の酢酸ブチル溶液(固形分濃度:50質量%)16.8質量部と、エポキシ基含有シランカップリング剤(D2-1)としてKBM403 3質量部を加えてかくはん、混合し、硬化剤組成物1を得た。
【0120】
<塗膜を有する試験片の調製>
大きさ0.8×70×150mmのJIS G 3141(SPCC-SB)冷間圧延鋼板を研磨し、キシレンで脱脂した。次いで、硬化剤組成物1に含まれるポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と、前記主剤組成物1中の塗膜形成樹脂であるアクリル樹脂の水酸基とのモル比(NCO/OH)が1.0となるようにディスパーを用いて混合し(塗料組成物(1))、前記鋼板上に、70μmの乾燥膜厚になるようにエアスプレーを用いて塗装して、未乾燥の塗装膜を形成した。10分間室温(23℃)で放置した後、80℃で30分間乾燥させて(強制乾燥)、塗膜とし、試験片を得た。
【0121】
<実施例2~39及び比較例1~7>
各成分の種類及び/又は量を、表3~6に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、塗料組成物を製造した。
【0122】
(使用した材料の詳細)
ポリイソシアネート化合物(B)
(B-1)デュラネートTKA-100(旭化成社製、イソシアヌレート型ポリイソシアネート)、NCO含有率:21.7質量%、固形分濃度:100質量%
(B-2)デュラネートD201(旭化成社製、2官能型ポリイソシアネート)、NCO含有率:15.8質量%、固形分濃度:100質量%
(B-3)デスモジュールN31100(住化コベストロウレタン社製、アロファネート型ポリイソシアネート)、NCO含有率:19.5質量%、固形分濃度、100質量%
有機溶剤(C)
(C-1)酢酸ブチル(協和発酵ケミカル社製)
(C-2)ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(ダウ・ケミカル社製)
シランカップリング剤(D)
(D1-1)KBE-903(信越化学工業社製、3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、有効成分濃度:100質量%
(D1-2)KBM-603(信越化学工業社製、N-2-(アミノエチル) -3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、有効成分濃度:100質量%
(D2-1)KBM-403(信越化学工業社製、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、有効成分濃度:100質量%
(D2-2)KBE-403(信越化学工業社製、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)、有効成分濃度:100質量%
(D2-3)KBM-4803(信越化学工業社製、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン)、有効成分濃度:100質量%
(d-1)KBM-3033(信越化学工業社製、n-プロピルトリメトキシシラン)、有効成分濃度:100質量%
ベンゾトリアゾール化合物(E)
(E-1)BT-120(城北化学工業社製、1,2,3-ベンゾトリアゾール)、有効成分濃度:100質量%
(E-2)BT-LX(城北化学工業社製、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール)、有効成分濃度:100質量%
(E-3)、TINUVIN99-2(BASFジャパン社製、C7-C9-アルキル-3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオンエーテル、紫外線吸収剤)、有効成分濃度:95質量%
アミン化合物(F)
(F-1)リポノールT/15(ライオンスペシャリティケミカルズ社製、ポリオキシエチレンアルキル(牛脂)アミン)、有効成分濃度:100質量%
(F-2)リポノールT/25(ライオンスペシャリティケミカルズ社製、ポリオキシエチレンアルキル(牛脂)アミン)、有効成分濃度:100質量%
その他の材料
スーパー#2000(丸尾カルシウム社製、重質炭酸カルシウム;体質顔料)
TAROX合成酸化鉄LL-XLO(チタン工業社製、合成酸化鉄;着色顔料)
LFボウセイZP-DL(キクチカラー社製、リン酸亜鉛、防錆顔料)
BYK-161(ビックケミー・ジャパン社製、分散剤)
TINUVIN292(BASFジャパン社製、光安定剤))
TINUVIN384-2(BASFジャパン社製、紫外線吸収剤)
【0123】
<評価項目>
1)耐食性
実施例及び比較例で得られた試験板の塗膜に、基材に達するようにカッターナイフで長さ10cmのクロスカット傷を入れ、JIS K 5600-7-1(JIS Z 2371)記載の耐中性塩水噴霧性試験法に従い、塩水噴霧試験機ST-11L(スガ試験機社製)で120時間、塩水噴霧試験(SST)を行った。試験終了後、クロスカット部からの錆及びフクレの発生状態より、塗膜の耐食性を、以下の基準により目視で評価した。
○:発生した錆又はフクレの最大幅がクロスカット部より1mm未満である
○△:発生した錆又はフクレの最大幅がクロスカット部より1mm以上2mm未満である
△:発生した錆又はフクレの最大幅がクロスカット部より2mm以上3mm未満である
×:発生した錆又はフクレの最大幅がクロスカット部より3mm以上である
【0124】
2)耐候性
実施例及び比較例で得られた試験板を、JIS K 5600-7-7記載のキセノンランプ法に従い、スーパーキセノンウェザーメーターSX2-75(スガ試験機社製)で促進耐候性試験を実施した。試験時間1,000時間後の塗膜の60°光沢値を、多角度光沢計GS-4K(スガ試験機社製)により測定し、試験前の60°光沢値に対する変化率(光沢保持率)より、塗膜の耐候性を以下の基準により評価した。
○:光沢保持率が80%以上
○△:光沢保持率が70%以上80%未満
△:光沢保持率が60%以上70%未満
×:光沢保持率が60%未満
【0125】
いずれの評価項目も△以上を合格とした。但し、耐食性及び耐候性の両方共に△の場合は不合格とした。
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
実施例1~38は、本発明の実施例であり、1回の塗装で、耐食性及び耐候性が良好な塗膜を形成できることが確認された。
【0131】
比較例1は、アミノ基含有シランカップリング剤(D1)を用いない例であり、得られた塗膜の防食性及び耐候性が十分に満足できるものではなかった。
比較例2は、アミノ基含有シランカップリング剤(D1)及びベンゾトリアゾール化合物(E)を用いない例であり、得られた塗膜の防食性及び耐候性が十分に満足できるものではなかった。
比較例3は、ベンゾトリアゾール化合物(E)を用いない例であり、得られた塗膜の防食性が十分に満足できるものではなかった。
比較例4は、エポキシ基含有シランカップリング剤(D2)を用いない例であり、得られた塗膜の防食性及び耐候性が十分に満足できるものではなかった。
比較例5は、エポキシ基含有シランカップリング剤(D2)及びベンゾトリアゾール化合物(E)を用いない例であり、得られた塗膜の防食性及び耐候性が十分に満足できるものではなかった。
比較例6は、アミノ基含有シランカップリング剤(D1)及びエポキシ基含有シランカップリング剤(D2)を用いない例であり、得られた塗膜は、耐候性に劣り、防食性が十分に満足できるものではなかった。
比較例7は、アミノ基含有シランカップリング剤(D1)及びエポキシ基含有シランカップリング剤(D2)以外のシランカップリング剤を用いた例であり、得られた塗膜の防食性及び耐候性が十分に満足できるものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本開示の塗料組成物は、1回の塗装で、耐食性及び耐候性が良好な塗膜を形成可能である。したがって、本開示の塗料組成物は、熱容量が大きい被塗物、例えば、建設機械又は産業機械の塗装に好適に用いることができる。