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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】クッション材及びクッション材組立方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/12 20060101AFI20240815BHJP
   A47C 27/00 20060101ALI20240815BHJP
   D04B 21/10 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
A47C27/12 B
A47C27/12 Z
A47C27/00 K
D04B21/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023215316
(22)【出願日】2023-12-20
【審査請求日】2024-06-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506366345
【氏名又は名称】株式会社ダイコウ
(74)【代理人】
【識別番号】110002055
【氏名又は名称】弁理士法人iRify国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大庭 光二
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-83118(JP,A)
【文献】特開2010-167069(JP,A)
【文献】特開2012-81094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/12
A47C 27/00
D04B 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂繊維によってメッシュ状に形成されると共に、外周部が熱処理によって溶融された長方形状の2枚の繊維層体がその外周部の一部を開口部として残して縫合して形成されると共に、裏返して袋状に形成された立体構造体と、
前記開口部に位置し、縫合して形成された最終縫合部を備えていることを特徴とするクッション材。
【請求項2】
前記メッシュ状は、ラッセル編みによるものであることを特徴とする請求項1に記載のクッション材。
【請求項3】

前記袋状の立体構造体の内部には、機能性を有する機能部材が収容されていることを特徴とする請求項1に記載のクッション材。
【請求項4】
樹脂繊維によってメッシュ状に形成された1枚の長方形状の繊維層体の外周部を熱処理によって溶融し、
前記繊維層体を中央で折り曲げ、
その外周部の一部を開口部として残して縫合し、
前記開口部から、前記繊維層体の内側を引き出して裏返し、
前記開口部を縫合することを特徴とするクッション材組立方法。
【請求項5】
樹脂繊維によってメッシュ状に形成された2枚の長方形状の繊維層体のそれぞれの外周部を熱処理によって溶融し、
前記繊維層体を重ね合わせ、
その外周部の一部を開口部として残して縫合し、
前記開口部から、前記繊維層体の内側を引き出して裏返し、
前記開口部を縫合することを特徴とするクッション材組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂繊維によってメッシュ状に編み込まれて高反発性立体構造体として形成されるクッション材及びクッション材組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
座布団、寝具、各種シート等のクッション材として発泡ポリウレタンやエアクッション材が知られている。これらのクッション材は通気性に劣るため、繊維をメッシュ状に形成して繊維層とし、これらの端部を縫合することで、全体を立体構造体とし、高い通気性を有するクッション材とすることがあった(例えば、特許文献1参照。)。このようなクッション材に用いられる繊維としては、高い反発性を有すると共に、耐久性やコスト、製造の容易性等からポリエステル繊維等の樹脂繊維が用いられている。このようなクッション材は、クッション材自体が使用者に触れることが無いように肌触りの良い袋状のカバー材に収納されている。
【0003】
樹脂繊維をメッシュ状に形成して立体構造体としたクッション材においては、樹脂繊維は、非常に剛直性が高いために、縫合した場合であっても、カバー材を突き抜けて使用者の皮膚を刺激し、使用者に不快感を与える虞があった。このため、クッション材の外周を縁部カバー材で縫製処理することが知られている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4001890号公報
【文献】特許第4749757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように樹脂繊維をメッシュ状に形成して立体構造体としたクッション材にあっては、次のような問題があった。すなわち、繊維層の外周部を縫合して立体構造体とした場合に樹脂繊維がカバー材を突き抜けることを防止するため、クッション材の外周を縁部カバー材で縫製処理する必要があり、縁部カバー材の分の余分な部材が必要になると共に、作業が増えることで、製造コストが上昇する。また、縁部カバー材は樹脂繊維の突き抜けを防止するために密閉性が高く、外周側において通気性が劣るという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、通気性及び快適性を維持しつつ、製造コストを低減することができるクッション材及びクッション材組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、樹脂繊維によってメッシュ状に形成されると共に、外周部が熱処理によって溶融された長方形状の2枚の繊維層体がその外周部の一部を開口部として残して縫合して形成されると共に、裏返して袋状に形成された立体構造体と、前記開口部に位置し、縫合して形成された最終縫合部を備えている。
【0008】
本発明は、樹脂繊維によってメッシュ状に形成された1枚の長方形状の繊維層体の外周部を熱処理によって溶融し、前記繊維層体を中央で折り曲げ、その外周部の一部を開口部として残して縫合し、前記開口部から、前記繊維層体の内側を引き出して裏返し、前記開口部を縫合する。
【0009】
樹脂繊維によってメッシュ状に形成された2枚の長方形状の繊維層体のそれぞれの外周部を熱処理によって溶融し、前記繊維層体を重ね合わせ、その外周部の一部を開口部として残して縫合し、前記開口部から、前記繊維層体の内側を引き出して裏返し、前記開口部を縫合する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のクッション材によれば、通気性及び快適性を維持しつつ、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態であるクッション材を示す斜視図である。
図2】本実施形態のクッション材の組立前の繊維層体を示す平面図である。
図3】本実施形態のクッション材の組立工程を示す説明図である。
図4】本実施形態のクッション材における最終縫合部を示す説明図である。
図5】本実施形態のクッション材の組立工程を示す説明図である。
図6】本実施形態のクッション材の組立工程を示す説明図である。
図7】本実施形態のクッション材に用いられるクッション材の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1は本発明の実施形態であるクッション材10を示す斜視図、図2はクッション材10の組立前の繊維層体20を示す平面図、図3はクッション材10の組立工程を示す説明図、図4はクッション材10における最終縫合部を示す説明図、図5はクッション材10の組立工程を示す説明図、図6は本実施形態のクッション材10の組立工程を示す説明図である。
【0014】
図1に示すように、高反発性立体構造体としてのクッション材10は、二つ折り状態の繊維層体20を有しており、長辺側は概ね2m、短辺側は概ね1mである。なお、クッション材10の寸法は必要に応じて変更可能である。クッション材10は折曲部11と、この折曲部11の対辺側に位置する側端部12と、上端部13と、下端部14とを備えている。下端部14には最終縫合部15が形成されている。繊維層体20は、ポリエステル繊維30をラッセル編み等によりメッシュ状に形成されている。
【0015】
このように構成されたクッション材10は、次のように組み立てられる。図2に示すように、組立前の繊維層体20は、長辺側及び短編側がそれぞれ概ね2mの正方形に形成されている。繊維層体20は、部位21~27を有している。すなわち、部位21は左端部、部位22は中央部、部位23は右端部、部位24は上端左部、部位25は上端右部、部位26は下端左部、部位27は下端右部である。
【0016】
部位21~27について、約400℃の熱気を噴出するホットエアガン(ヒートガン)によって熱処理を行う。これにより、ポリエステル繊維30の先端31が溶融される。これによりポリエステル繊維30の先端31は消滅する。
【0017】
次に、図3に示すように、部位21と部位23とが重なるように部位22において折り曲げる。これにより、部位24と部位25、及び、部位26と部位27が重なる。次に、部位21と部位23、部位24と部位25、及び、部位26と部位27をミシンで縫合し、立体構造体とする。なお、部位26と部位27を縫合する際は、前述した最終縫合部15に当たる部分は縫合せず、長さ約30cmの開口部Fとする。なお、図中破線Sは縫合部を示す。これにより、繊維層体20は開口部Fを有する袋状となる。
【0018】
次に、繊維層体20の開口部Fから手を入れて、部位24,25を開口部Fから引き出し、繊維層体20全体を裏返して袋状とする。これにより、図4に示すように、縫合部Sは繊維層体20の内側に位置することとなる。なお、裏返すことで縫合部Sを起点とした立体的構造がより顕著となる。
【0019】
最後に、図5に示すように、開口部Fを手縫いで閉じて最終縫合部15を形成する。
【0020】
このように構成された高反発性立体構造体としてのクッション材10は、予め繊維層体20の周囲を熱処理することで、ポリエステル繊維30の先端31を外側に突出しない構造とすることができる。したがって、使用中にポリエステル繊維30が突出することにより、使用者の快適性を妨げることを防止できる。また、組立時に縁部カバー材で外周部を縫製処理する必要が無く、縁部カバー材の分の余分な部材が必要になると共に、余計な作業を削減できる。したがって、製造コストを抑えることができる。また、密閉性が高い縁部カバー材を用いることが無いので、外周側においても高い通気性を維持することができる。この他、縫合部Sが内側となるため、クッション材10の洗濯時に縫合部Sがほつれ難くなり、耐久性も増す。
【0021】
なお、クッション材10は袋状であるため、開口部Fを縫合する前に内部に追加のクッション材や消臭剤、芳香剤、調温湿度材等を収容しても良い。
【0022】
図7は本実施形態のクッション材10に用いられる繊維層体20A,20Bを示す平面図である。なお、図7において図2と同一機能部分については同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0023】
繊維層体20と繊維層体20A,20Bとは1枚を折曲して立体構造体とするか、2枚を重ね合わせて立体構造体にするかの違いがある。
【0024】
図7に示すように、高反発性立体構造体としてのクッション材10は、一組の繊維層体20A,20Bを有しており、繊維層体20A,20Bはいずれも長辺側は概ね2m、短辺側は概ね1mの長方形である。繊維層体20A,20Bは、ポリエステル繊維30をラッセル編み等によりメッシュ状に形成されている。
【0025】
したがって、繊維層体20Aは、部位21,22a,24,26が設けられている。部位22aは図2における部位22に相当する。同様に、繊維層体20Bは、部位22b,23,25,27が設けられている。部位22bは図2における部位22に相当する。
【0026】
繊維層体20A,20Bを用いる場合には、次のようにしてクッション材10を組み立てる。すなわち、繊維層体20Aの部位21,22a,24,26及び繊維層体20Bの部位22b,23,25,27について、約400℃の熱気を噴出するホットエアガンによって熱処理を行う。これにより、ポリエステル繊維30の先端31が溶融される。これによりポリエステル繊維30の先端31は消滅する。
【0027】
次に、部位21と部位23と、部位22aと部位22b、部位24と部位25、及び、部位26と部位27とが重なるように配置する。次に、部位21と部位23、部位22aと部位22b、部位24と部位25、及び、部位26と部位27をミシンで縫合し、立体構造体とする。なお、部位26と部位27を縫合する際は、前述した最終縫合部15に当たる部分は縫合せず、長さ約30cmの開口部Fとする。
【0028】
次に、繊維層体20A,20Bの開口部Fから手を入れて、部位24,25を開口部Fから引き出し、繊維層体20A,20B全体を裏返して袋状とする。これにより、縫合部Sは繊維層体20A,20Bの内側に位置することとなる。
【0029】
最後に、開口部Fを手縫いで閉じて最終縫合部15を形成する。
【0030】
このように構成された高反発性立体構造体としてのクッション材10は、予め繊維層体20A,20Bの周囲を熱処理することで、ポリエステル繊維30の先端31を外側に突出しない構造とすることができる。したがって、使用中にポリエステル繊維30が突出することにより、使用者の快適性を妨げることを防止できる。また、組立時に縁部カバー材で外周部を縫製処理する必要が無く、縁部カバー材の分の余分な部材が必要になると共に、余計な作業を削減できる。したがって、製造コストを抑えることができる。この他、縫合部Sが内側となるため、クッション材10の洗濯時に縫合部Sがほつれ難くなり、耐久性も増す。
【0031】
なお、クッション材10は袋状であるため、開口部Fを縫合する前に内部に追加のクッション材や消臭剤、芳香剤、調温湿度材等を収容しても良い。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなくその趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能であることは勿論である。
【0033】
例えば、上述した例では樹脂繊維としてポリエステル繊維を例示したが、その他の樹脂繊維を用いても良い。また、縫合手段としてミシン縫いや手縫いを例示したが、これらに限られるものではない。さらに、ポリエステル繊維の先端の熱処理はホットエアガンの他、スチーム処理等も適用できる。この他、編み方や繊維層体の数や形状、寸法等は必要に応じて変形しうるものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、樹脂繊維によってメッシュ状に編み込まれて高反発性立体構造体として形成されるクッション材として有効である。
【符号の説明】
【0035】
10…クッション材、11…折曲部、12…側端部、13…上端部、14…下端部、15…最終縫合部、20,20A,20B…繊維層体、21,22…部位、22a,22b…部位、23~27…部位、30…ポリエステル繊維、31…先端、F…開口部、S…縫合部。
【要約】
【課題】通気性及び快適性を維持しつつ、製造コストを低減することができるクッション材を提供することにある。
【解決手段】ポリエステル繊維30によってメッシュ状に形成されると共に、外周部が400℃の熱気を噴出するホットエアガンによって熱処理によって溶融された長方形状の繊維層体20が外周部の一部を開口部Fとして残して縫合して形成されると共に、裏返して袋状に形成された立体構造体と、開口部Fに位置し、縫合して形成された最終縫合部15を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7