(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】年齢別構造及び物性を有する人工皮膚、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240815BHJP
C12N 5/02 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/02
(21)【出願番号】P 2023500352
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(86)【国際出願番号】 KR2021000716
(87)【国際公開番号】W WO2022114386
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0163297
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519007581
【氏名又は名称】ファウンデーション オブ スンシル ユニバーシティー インダストリー コーオペレイション
【氏名又は名称原語表記】Foundation of Soongsil University-Industry Cooperation
【住所又は居所原語表記】(Sangdo-dong) 369, Sangdo-ro, Dongjak-gu, Seoul 06978, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ジェ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユン ゴン
(72)【発明者】
【氏名】イム、ジュ ヌ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ソン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、サ ラ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ソン ウ
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513724(JP,A)
【文献】国際公開第2017/222065(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2118807(KR,B1)
【文献】特開2009-226207(JP,A)
【文献】特開2019-010089(JP,A)
【文献】Skin Res Technol,2017年,(Epub 2016 Aug 9), vol. 23, no. 2,pp. 131-148
【文献】J Invest Dermatol,Jul, vol. 73, no. 1,1979年,pp. 59-66
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)
表面に凹凸構造を含む真皮層(Dermis layer)に細胞外基質由来物質(ECM derived substances)を導入して機械的物性を調節する段階と、
(2)細胞外基質由来物質を導入した真皮層上に表皮(Human Epidermis)細胞をシーディング(seeding)し、細胞外基質由来物質を導入した真皮層の表面に表皮細胞由来の表皮-真皮接合部(Dermal-Epidermal Junction)が形成されるまで培養させる段階と、
(3)表皮細胞を分化して表皮細胞上に角質層を形成させて年齢別構造及び物性を有する全層の人工皮膚を製造する段階と、を含む
工程を含み、
前記表面に凹凸構造を含む真皮層は、形状変化型延性技法及び立体リソグラフィー(lithography)技法、3Dプリンティング技法からなる群から選ばれる1種以上の方法で製造される形状変化型ハイドロゲルモールドで製造されたものであり、
前記形状変化型ハイドロゲルモールドは、温度に応じて形状が変化して真皮層の凹凸構造を制御し、
前記凹凸構造の凹部及び前記凹部に隣接する他の凹部間の距離が250μm以下であり、
製造しようとする人工皮膚が、20歳以上~40歳未満年齢の人工皮膚の場合、前記凹凸構造の凸部及び凹部の高さの差の平均が100μm以上~200μm以下となるように形成させて、弾性係数が20~30kPaである人工皮膚を製造し、
40歳以上~60歳未満年齢の人工皮膚の場合、前記凹凸構造の凸部及び凹部の高さの差の平均が50μm以上~100μm未満となるように形成させて、弾性係数が10~20kPaである人工皮膚を製造し、
60歳以上年齢の人工皮膚の場合、前記凹凸構造の凸部及び凹部の高さの差の平均が50μm未満となるように形成させて、弾性係数が10kPa以下である人工皮膚を製造する、年齢別構造及び物性を有する人工皮膚の製造方法。
【請求項2】
前記真皮層は、線維芽細胞(Human Dermal Fibroblasts)を含み、
前記細胞外基質由来物質は、GAG(glycosaminoglycan)構造を模写したポリサッカライド及びエラスチン(Elastin)、キトサン(chitosan)、ヒアルロン酸(HA;hyaluronic acid)及びコラーゲン(collagen)からなる群から選ばれるいずれか1つ以上を含む、請求項1に記載の年齢別構造及び物性を有する人工皮膚の製造方法。
【請求項3】
前記(2)段階の培養は、液浸培養(submerged culture)で行われる、請求項1に記載の年齢別構造及び物性を有する人工皮膚の製造方法。
【請求項4】
前記(3)段階で表皮細胞は、空気露出及びALIC(air-liquid interface culture)からなる群から選ばれるいずれか1つ以上により分化される、請求項1に記載の年齢別構造及び物性を有する人工皮膚の製造方法。
【請求項5】
前記表皮細胞は、ケラチノサイト(Keratinocytes)を含む、請求項1に記載の年齢別構造及び物性を有する人工皮膚の製造方法。
【請求項6】
前記形状変化型ハイドロゲルモールドは、第1のアクリル系化合物及び第2のアクリル系化合物を含むアクリル系化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の年齢別構造及び物性を有する人工皮膚の製造方法。
【請求項7】
前記アクリル系化合物は、前記第1のアクリル系化合物及び前記第2のアクリル系化合物を5:5~1:9の重量比で含むことを特徴とする、請求項6に記載の年齢別構造及び物性を有する人工皮膚の製造方法。
【請求項8】
細胞外基質由来物質(ECM derived substances)が導入された真皮層(Dermis layer)と、
順次積層された角質層及び表皮(Human Epidermis)細胞層を含み、前記真皮層の上部に備えられる表皮層(Epidermis layer)と、
前記真皮層及び表皮層の間に備えられる表皮-真皮接合部(Dermal-Epidermal Junction)と、を含
み、
前記真皮層は、表面に凹凸構造を含み、
前記表皮細胞層及び表皮-真皮接合部は、前記真皮層の凹凸構造に対応する形状を有し、
前記凹凸構造の凹部及び前記凹部に隣接する他の凹部間の距離が250μm以下であり、
20歳以上~40歳未満年齢の人工皮膚の場合、前記凹凸構造の凸部及び凹部の高さの差の平均が100μm以上~200μm以下であり、人工皮膚の弾性係数が20~30kPaであり、
40歳以上~60歳未満年齢の人工皮膚の場合、前記凹凸構造の凸部及び凹部の高さの差の平均が50μm以上~100μm未満であり、人工皮膚の弾性係数が10~20kPaであり、
60歳以上年齢の人工皮膚の場合、前記凹凸構造の凸部及び凹部の高さの差の平均が50μm未満であり、人工皮膚の弾性係数が10kPa以下である、
年齢別構造及び物性を有する人工皮膚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、年齢別構造及び物性を有する人工皮膚に関し、より詳細には、内部構造の高さ、幅及び物性などを非常に容易に制御でき、人体皮膚を年齢別に模写できることにより、皮膚年齢による効果的な分析及び適用が可能な年齢別構造及び物性を有する人工皮膚、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全世界的に動物実験が禁止されている傾向を見せている現在、人工皮膚は、従来の動物実験に代わって、ユーザーカスタマイズされた薬学組成物及び化粧品などの市場を先導できる核心技術である。
【0003】
図1a及び
図1bに示すように、Dermal‐epidermal junction(DEJ)は、真皮と表皮の間の連接部として2つの層がよく付着しているように結合されている。実際の人体皮膚ではrete ridge(凹凸構造)の構造を持っているが、この構造は機械的な支持の役割だけでなく、表皮細胞の増殖と分化を助け、代謝物質の移動が容易になり、真皮と表皮の付着力も高める。しかし、現在、人工皮膚にはこの構造がなしに製造されている。
【0004】
このように、従来技術は、実際の皮膚のように真皮-表皮連接部の凹凸構造が模写されていない平らな人工皮膚であり、年齢による機械的物性が変わらないように製造されるという問題点があった。従来、動物代替試験法に使用される人体皮膚モデルは、製造する会社ごとに互いに同じ特性を持ちにくく、年齢別模写は行われていない。
【0005】
人体細胞は、適用される基質(substrates)の種類及び物性によって挙動が異なるため、真皮層の物性の制御による人体皮膚モデルの年齢別模写が重要である。また、年齢による人体皮膚の構造も変わるので、構造による表皮層の挙動も変わる。したがって、年齢別に剤形と有効成分が変わる化粧品研究などでは、物性及び構造が制御された年齢別人工皮膚の開発が必要である。
【0006】
また、単純皮膚の構造を模擬した人工皮膚を第1世代、皮膚全層モデルを具現した人工皮膚を第2世代というと、皮膚年齢による効果的な分析及び適用が可能な第3世代年齢別人工皮膚の開発が必要である。人体皮膚の構造、特に真皮-表皮連接部(DEJ)の凹凸構造は、老化するほど平らになるため、DEJ凹凸構造が模写された年齢別人工皮膚を製造しなければならない。
【0007】
そして、年齢(老化程度)によって皮膚は、細胞外基質の架橋度及び結合力の差を示す。人体内で細胞が付着して成長できる物理的環境を提供する細胞外基質は、単に細胞支持体として構造的な役割だけでなく、細胞が成長、増殖及び分化するのに非常に重要な細胞生理調節因子として役割を果たす。そのため、構造的模写だけでなく、機械的物性が制御されなければならない。
【0008】
そこで、内部構造の高さ、幅及び物性などを非常に容易に制御でき、人体皮膚を年齢別に模写できることにより、皮膚年齢による効果的な分析及び適用が可能な人工皮膚に対する開発が急がれるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するために案出されたもので、内部構造の高さ、幅及び物性などを非常に容易に制御でき、人体皮膚を年齢別に模写できることにより、皮膚年齢による効果的な分析及び適用が可能な年齢別構造及び物性を有する人工皮膚、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、以下のような国家研究開発事業の支援を受けて研究されたもので、国家研究開発事業の具体的な情報は、以下の通りである。
【0011】
[本発明を支援した大韓民国の国家研究開発事業]
[課題固有番号]1465031394
[課題番号]HP20C0210010020
[省庁名]保健福祉部
[課題管理(専門)機関名]韓国保健産業振興院
[研究事業名]皮膚科学応用素材先導技術開発(R&D)
[研究課題名]年齢別人工皮膚の構築及び皮膚改善の効能評価技術の標準化
[寄与率]3/5
[課題遂行機関名]崇実大学校産学協力団
[研究期間]2020.04.01~2022.12.31
【0012】
[課題固有番号]1711118632
[課題番号]2020R1F1A1071004
[省庁名]科学技術情報通信部
[課題管理(専門)機関名]韓国研究財団
[研究事業名]個人基礎研究(科学技術情報通信部)(R&D)
[研究課題名]統合的な人体環境模写が可能なE-オーガノイドモデルの構築及び環境有害因子の生体影響評価
[寄与率]1/5
[課題遂行機関名]崇実大学校
[研究期間]2020.06.01~2023.02.28
【0013】
[課題固有番号]1345321163
[課題番号]2020R1A6A1A03044977
[省庁名]教育部
[課題管理(専門)機関名]韓国研究財団
[研究事業名]理工学学術研究の基盤構築(R&D)
[研究課題名]安全保健融合技術研究所
[寄与率]1/5
[課題遂行機関名]崇実大学校
[研究期間]2020.06.01~2023.02.28
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するため、本発明は、(1)真皮層(Dermis layer)に細胞外基質由来物質(ECM derived substances)を導入して機械的物性を調節する段階、(2)細胞外基質由来物質を導入した真皮層上に表皮(Human Epidermis)細胞をシーディング(seeding)し、細胞外基質由来物質を導入した真皮層の表面に表皮細胞由来の表皮-真皮接合部(Dermal-Epidermal Junction)が形成されるまで培養させる段階、及び(3)表皮細胞を分化して表皮細胞上に角質層を形成させて年齢別構造及び物性を有する人工皮膚を製造する段階を含む年齢別構造及び物性を有する人工皮膚の製造方法を提供する。
【0015】
前記細胞外基質由来物質は、GAG(glycosaminoglycan)構造を模写したポリサッカライド、エラスチン(Elastin)、キトサン(chitosan)、ヒアルロン酸(HA;hyaluronic acid)及びコラーゲン(collagen)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上を含んでもよい。。
【0016】
また、前記真皮層は、表面に凹凸構造を含んでもよい。
【0017】
また、20歳以上~40歳未満年齢の人工皮膚の場合、前記凹凸構造の凸部及び凹部の高さの差の平均が100μm以上~200μm以下であってもよく、40歳以上~60歳未満年齢の人工皮膚の場合、前記凹凸構造の凸部及び凹部の高さの差の平均が50μm以上~100μm未満であってもよく、60歳以上年齢の人工皮膚の場合、前記凹凸構造の凸部及び凹部の高さの差の平均が50μm未満であってもよい。
【0018】
また、前記凹凸構造の凹部及び前記凹部に隣接する他の凹部間の距離が、250μm以下であってもよい。
【0019】
また、20歳以上~40歳未満年齢の人工皮膚の場合、弾性係数が20~30kPaであってもよく、40歳以上~60歳未満年齢の人工皮膚の場合、弾性係数が10~20kPaであってもよく、60歳以上の年齢の人工皮膚の場合、弾性係数が10kPa以下であってもよい。
【0020】
また、前記真皮層の凹凸構造は、形状変化型延性及び立体リソグラフィー(lithography)技法、3Dプリンティングからなる群から選ばれる1種以上の方法で製造される形状変化型ハイドロゲルモールドで製造されてもよい。
【0021】
また、前記(2)段階の培養は、液浸培養(submerged culture)で行われてもよい。
【0022】
また、前記(3)段階において、表皮細胞は、空気露出及びALIC(air-liquid interface culture)からなる群から選ばれるいずれか1つ以上により分化されてもよい。
【0023】
また、前記表皮細胞は、ケラチノサイト(Keratinocytes)を含んでもよい。
【0024】
一方、本発明は、細胞外基質由来物質(ECM derived substances)が導入された真皮層(Dermis layer)、順次積層された角質層及び表皮(Human Epidermis)細胞層を含み、前記真皮層の上部に備えられる表皮層(Epidermis layer)、及び前記真皮層及び表皮層の間に備えられる表皮-真皮接合部(Dermal-Epidermal Junction)を含む年齢別構造及び物性を有する人工皮膚を提供する。
【0025】
本発明の一実施例によれば、前記真皮層は、表面に凹凸構造を含み、前記表皮細胞層及び表皮-真皮接合部は、前記真皮層の凹凸構造に対応する形状を有してもよい。
【0026】
本発明の一実施例によれば、前記形状変化型ハイドロゲルモールドは、第1のアクリル系化合物及び第2のアクリル系化合物を含むアクリル系化合物を含んでもよい。
【0027】
本発明の一実施例によれば、前記アクリル系化合物は、前記第1のアクリル系化合物及び前記第2のアクリル系化合物を5:5~1:9の重量比で含んでもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の年齢別構造及び物性を有する人工皮膚、及びその製造方法は、内部構造の高さ、幅及び物性などを非常に容易に制御でき、人体皮膚を年齢別に模写できることにより、皮膚年齢による効果的な分析及び適用が可能な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1aは、皮膚において凹凸構造を示す模式図、
図1bは、ヒト皮膚組織染色写真と従来の人工皮膚染色写真である。
【
図2】
図2の(a)~(c)は、本発明の一実施例による年齢別構造及び物性を有する人工皮膚の凹凸構造を示す写真である。
【
図3-4】
図3及び
図4は、本発明の一実施例による年齢別構造及び物性を有する人工皮膚を製造するフローチャートである。
【
図5】
図5aは、年齢別皮膚凹凸の直径、間隔及び深さ、
図5bは、本発明の一実施例による年齢別皮膚凹凸の直径、深さ及び間隔によるシミュレーショングラフ、
図5cは、本発明の一実施例による年齢別構造及び物性を有する人工皮膚の製造方法図式である。
【
図6】
図6の(a)~(b)は、本発明の一実施例による年齢別人工皮膚の物性による強度及び凹凸構造結果値を示すグラフである。
【
図7】
図7は、本発明の一実施例による年齢別構造及び物性を有する人工皮膚の年齢別構造及び物性挙動を示すグラフである。
【
図8】
図8の(a)は、本発明の一実施例による年齢別人工皮膚のstereoscopeイメージ、
図8の(b)は、本発明の一実施例による年齢別構造及び物性を有する人工皮膚に傷をつける前後に発現されたpro-collagen量を示すグラフ、
図8の(c)は、DEJ Marker Level結果値に関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施例について、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態で具現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0031】
図3及び
図4に示すように、本発明による年齢別構造及び物性を有する人工皮膚は、(1)真皮層(Dermis layer)に細胞外基質由来物質(ECM derived substances)を導入して機械的物性を調節する段階、(2)細胞外基質由来物質を導入した真皮層上に表皮(Human Epidermis)細胞をシーディング(seeding)し、細胞外基質由来物質を導入した真皮層の表面に表皮細胞由来の表皮-真皮接合部(Dermal-Epidermal Junction)が形成されるまで培養させる段階、及び(3)表皮細胞を分化して表皮細胞上に角質層を形成させて年齢別構造及び物性を有する人工皮膚を製造する段階を含んで製造してもよい。
【0032】
まず、前記真皮層(Dermis layer)の細胞外基質由来物質(ECM derived substances)を導入して機械的物性を調節する(1)段階について説明する。
【0033】
前記真皮層は、当業界で通常、人工皮膚の真皮層を形成するのに使用可能な物質であれば制限なく使用してもよく、好ましくは、線維芽細胞(Human Dermal Fibroblasts)を含んで具現されてもよい。
【0034】
一方、前記細胞外基質由来物質は、人工皮膚の機械的特性を調節する機能を果たす。
【0035】
年齢(老化程度)によって皮膚は、細胞外基質の架橋度及び結合力の差を示す。人体内で細胞が付着して成長できる物理的環境を提供する細胞外基質は、単に細胞支持体として構造的な役割だけでなく、細胞が成長、増殖及び分化するのに非常に重要な細胞生理調節因子として役割を果たす。そのため、構造的模写だけでなく機械的物性が制御されなけれればならず、これは細胞外基質由来物質の導入によって達成できる。
【0036】
前記細胞外基質由来物質は、当業界で通常、人工皮膚の真皮層に導入できる細胞外基質由来物質を形成するのに使用可能な物質であれば、制限なく使用されてもよく、好ましくは、GAG(glycosaminoglycan)構造を模写したポリサッカライド、エラスチン(Elastin)、キトサン(chitosan)、ヒアルロン酸(HA;hyaluronic acid)、メタクリリックアルジネート(Methacrylated alginate)及びコラーゲン(collagen)からなる群から選ばれるいずれか1つ以上を含んでもよく、より好ましくは、コラーゲンを含んで具現されてもよい。
【0037】
一方、前記細胞外基質由来物質は、好ましくは、コラーゲンを含むか、またはコラーゲン及びメタクリリックアルジネートを含んでもよく、前記コラーゲン及びメタクリリックアルジネートを含む場合、前記コラーゲン及びメタクリリックアルジネートを1:0.2~2.0濃度比で含んでもよく、好ましくは、1:0.5~1.5濃度比で含んでもよい。
【0038】
人体皮膚の構造、特に真皮-表皮連接部(DEJ)の凹凸構造は、老化するほど平らになるため、DEJ凹凸構造が模写された年齢別人工皮膚を製造しなければならない。
【0039】
したがって、本発明の一実施例による年齢別構造及び物性を有する人工皮膚の前記真皮層は、
図2(a)~(c)に示すように、表面に凹凸構造を含んでもよい。
【0040】
また、前記真皮層の凹凸構造は、延性及び立体リソグラフィー(lithography)技法、3Dプリンティングからなる群から選ばれる1種以上の方法で製造される形状変化型ハイドロゲルモールドで製造されてもよく、好ましくは、温度に応じて形状が変化して真皮層のコラーゲンゲルの凹凸構造を制御できる形状変化型ハイドロゲルモールドで製造されてもよい。
【0041】
一方、前記形状変化型ハイドロゲルモールドは、第1のアクリル系化合物及び第2のアクリル系化合物を含むアクリル系化合物を備える形状変化型ハイドロゲルモールド組成物により製造されてもよい。
【0042】
前記アクリル系化合物は形状変化型ハイドロゲルモールドの製造時、ランダムコポリマーを構成するもので、前記のように第1のアクリル系化合物及び第2のアクリル系化合物を含んでもよい。
【0043】
前記第1のアクリル系化合物は、形状変化型ハイドロゲルモールドの主要構造体機能を果たすもので、当業界で通常使用できる重合が可能で、高分子鎖構造を有する第1のアクリル系化合物であれば、制限なく使用してもよく、好ましくは、アクリルアミド(acrylamide)、ポリエチレングリコールジアクリルレート(poly(ethylene glycol)diacrylate)、メタクリリックアルジネート(methacrylated alginate、methacrylic alginate)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、ポリエチレングリコール(poly(ethylene glycol))、メタアクリレート(methacrylate)、ポリアクリル酸ナトリウム(sodium polyacrylate)、ポリアクリレート(polyacrylate)、グリセリルアクリレート/アクリリックアシッドコポリマー、スチレン/アクリレートコポリマー、アクリル酸ナトリウム(sodium acrylate)、クロスポリマー-2、メチルアクリレート(methyl acrylate)、エチルアクリレート(ethyl acrylate)及びノルマルブチルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルメタアクリレート(2‐hydroxyethyl methacrylate)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含んでもよく、好ましくは、アクリルアミドを使用してもよい。
【0044】
また、前記第2のアクリル系化合物は、形状変化型ハイドロゲルモールド感応性を発現する機能を果たすもので、当業界で通常、外部刺激による感応性を発現できる第2のアクリル系化合物であれば制限なく使用してもよく、好ましくは、N-イソプロピルアクリルアミド(N-isopropylacrylamide、NIPAM)、アクリル酸(acrylic acid)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリN-イソプロピルアクリルアミド(poly N-isopropylacrylamide、pNIPAM)、ポリ2-ジメチルアミノエチルメタクリレート(poly2-(dimethylamino)ethyl methacrylate、pDMAEMA)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropylcellulose、HPC)、ポリビニルカプロラクタム(polyvinylcaprolactame)、ポリビニルメチルエーテル(polyvinyl methyl ether)、ポリN,N-ジメチルアクリルアミド(poly(N,N-dimethylacrylamide))メタクリル酸-メチルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸-メチルアクリレートコポリマー、メタクリル酸-メチルアクリレート-メチルメタクリレート及びポリ2,2-ジメトキシニトロベンジルメタクリレート-r-メチルメタクリレート-r-ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(poly(2,2-dimethoxy nitrobenzyl methacrylate-r-methyl methacrylate-r-poly(ethylene glycol)methacrylate,PDMP)からなる群から選ばれる1種以上を含んでもよく、好ましくは、N‐イソプロピルアクリルアミドを使用してもよい。
【0045】
このとき、前記第1のアクリル系化合物としてアクリルアミドを使用し、前記第2のアクリル系化合物としてN-イソプロピルアクリルアミドを使用する場合、モールドの直径及び深さの調節が容易であるため、製造する構造体の形状及びサイズの調節が容易であり、モールドの直径及び深さの変化率が大きいので、強度の低い構造体の製造時にも優れた分離性を発現するのにさらに有利になりうる。
【0046】
前記アクリル系化合物は、第1のアクリル系化合物及び第2のアクリル系化合物を5:5~1:9の重量比で含み、好ましくは、第1のアクリル系化合物及び第2のアクリル系化合物を3:7~1:9の重量比で含んでもよい。もし、前記アクリル系化合物に含まれる第1のアクリル系化合物及び第2のアクリル系化合物の重量比が5:5未満であると、モールドの直径及び深さの調節が容易ではないので、所定の構造体の製造時に形状及びサイズの調節が容易ではなく、モールドの直径及び深さの変化率が小さくなるという問題が発生することがあり、重量比が1:9を超えると、急激な収縮及び膨張による形状の制御において問題が発生することがある。
【0047】
一方、前記ハイドロゲルモールドに対する上述した説明以外の具体的な説明は、本出願と同じ出願人及び発明者により出願された出願番号第10‐2018‐0147510号が参照として挿入されることにより、これに対する詳細な説明は、省略する。
【0048】
一方、ターゲットとする人工皮膚の年齢が20歳以上~40歳未満の場合、前記凹凸構造の凸部及び凹部の高さの差の平均が100μm以上~200μm以下であってもよく、好ましくは、110μm以上~190μm以下であってもよく、ターゲットとする人工皮膚の年齢が40歳以上~60歳未満の場合、前記凹凸構造の凸部及び凹部の高さの差の平均が50μm以上~100μm未満であってもよく、好ましくは、60μm以上~90μm以下であってもよく、ターゲットとする人工皮膚の年齢が60歳以上の場合、前記凹凸構造の凸部及び凹部の高さの差の平均が50μm未満であってもよく、好ましくは、40μm未満であってもよい。
【0049】
また、凹凸構造の凹部及び前記凹部に隣接する他の凹部間の距離が250μm以下であってもよく、好ましくは、220μm以下であってもよく、これらを満たすことにより、実際の年齢別ヒト皮膚の内部構造と類似した年齢別人工皮膚を具現しうる。このように、凹凸構造を年齢に応じてこのように具現したとき、
図8のDEJ marker levelで確認できるのと同じ効果及び機能を示す。
【0050】
次に、細胞外基質由来物質を導入した真皮層上に表皮(Human Epidermis)細胞をシーディング(seeding)し、細胞外基質由来物質を導入した真皮層の表面に表皮細胞由来の表皮-真皮接合部(Dermal-Epidermal Junction)が形成されるまで培養させる(2)段階について説明する。
【0051】
前記表皮細胞は、当業界で通常、人工皮膚の表皮細胞として使用できる物質であれば制限なく使用してもよく、好ましくは、ケラチノサイト(Keratinocytes)を含んで具現されてもよい。
【0052】
また、前記(2)段階において培養は、当業界で通常、細胞培養に使用できる方法であれば、制限なく使用してもよく、好ましくは、液浸培養(submerged culture)で行われてもよく、より好ましくは、DMEM培養メディアを含む液浸培養(submerged culture)で行われてもよい。
【0053】
一方、前記(2)段階は、細胞外基質由来物質を導入した真皮層の表面に表皮細胞由来の表皮-真皮接合部(Dermal-Epidermal Junction)が形成されるまで前記表皮細胞を培養させるが、このとき、前記表皮-真皮接合部(DEJ)は、機械的な支持役割だけでなく、前記表皮細胞の増殖と分化を助け、代謝物質の移動が容易になり、真皮と表皮の付着力を向上させる機能を果たすことができる。
【0054】
次に、表皮細胞を分化して表皮細胞上に角質層を形成させて、年齢別構造及び物性を有する人工皮膚を製造する(3)段階について説明する。
【0055】
前記(3)段階において、前記表皮細胞は、空気露出及びALIC(air-liquid interface culture)の中から選ばれるいずれか1つ以上の方法によって分化されてもよく、好ましくは、一定量のCa2+が含まれた表皮細胞の分化を誘導する培地を使用して、ALIC(air-liquid interface culture)を通じて分化されてもよい。
【0056】
前記分化を通じて表皮細胞層上に角質層を形成させることにより、最終的に年齢別構造及び物性を有する人工皮膚を具現しうる。
【0057】
一方、ターゲットとする人工皮膚の年齢が20歳以上~40歳未満の場合、人工皮膚の弾性係数は20~30kPaであってもよく、好ましくは、22~28kPaであってもよく、ターゲットとする人工皮膚の年齢が40歳以上~60歳未満の場合、人工皮膚の弾性係数が10~20kPaであってもよく、好ましくは、12~18kPaであってもよく、ターゲットとする人工皮膚の年齢が60歳以上の場合、人工皮膚の弾性係数が10kPa以下であってもよく、好ましくは、8kPa以下であってもよい。これらを満たすことにより、実際の年齢別ヒトの皮膚の物性と類似した年齢別人工皮膚を具現しうる。
【0058】
本発明による年齢別構造及び物性を有する人工皮膚は、細胞外基質由来物質(ECM derived substances)が導入された真皮層(Dermis layer)、順次積層された角質層及び表皮(Human Epidermis)細胞層を含み、前記真皮層の上部に備えられる表皮層(Epidermis layer)、及び前記真皮層及び表皮層の間に備えられる表皮-真皮接合部(Dermal-Epidermal Junction)を含んで具現しうる
【0059】
このとき、上述したように、前記真皮層は、表面に凹凸構造を含んでもよく、前記表皮細胞層及び表皮-真皮接合部は、前記真皮層の凹凸構造に対応する形状を有してもよい。
【0060】
本発明の年齢別構造及び物性を有する人工皮膚、及びその製造方法は、内部構造の高さ、幅及び物性などを非常に容易に制御でき、人体皮膚を年齢別に模写できることにより、皮膚年齢による効果的な分析及び適用が可能な効果がある。
【0061】
下記実施例を通じて本発明をより具体的に説明するが、下記の実施例が本発明の範囲を制限するものではなく、これは本発明の理解を助けるためのものと解釈されなければならない。
【0062】
[実施例]
<準備例1~準備例3:形状変化型ハイドロゲルモールドの製造>
まず、第1のアクリル系化合物としてアクリルアミド及び第2のアクリル系化合物としてN‐イソプロピルアクリルアミドを2:8の重量比で含むアクリル系化合物、前記アクリル系化合物100重量部に対して架橋剤としてN,N’‐メチレンビスアクリルアミド(N,N’-methylenebisacrylamide)を0.1重量部、開始剤として過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate)を1重量部、触媒としてテトラメチルエチレンジアミン(Tetramethylethylenediamine)を0.1重量部及び溶媒として水を88.8重量部含む形状変化型ハイドロゲルモールド組成物を通じてラジカル重合反応方法で形状変化型ハイドロゲルモールドを製造した。
【0063】
このとき、前記形状変化型ハイドロゲルモールドは、年齢別人工皮膚の凹凸構造によって準備例1~準備例3をそれぞれ製造した。
【0064】
このとき、前記準備例1は、直径及び間隔を100以上~200μm以下、凹凸構造の凸部及び凹部の高さの差の平均が150μmのホールを有するように製造した。
【0065】
そして、前記準備例2は、直径及び間隔を50μm以上~100μm以下、凹凸構造の凸部及び凹部の高さの差の平均が50μmのホールを有するように製造した。
【0066】
そして、前記準備例3は、直径及び間隔を0~50μm未満、凹凸構造の凸部及び凹部の高さの差の平均が0μmのホールを有するように製造した。
【0067】
<実験例1:形状変化型ハイドロゲルモールドのシミュレーション>
前記準備例1~準備例3で製造した形状変化型ハイドロゲルモールドを
図5a、
図5b及び下記関係式1及び関係式2により、膨潤比に応じて面の平均直径及び平均深さの変化程度をシミュレーション評価した。
【0068】
【0069】
前記関係式1において、Rは、変化した凹凸構造の半径、Riは、製造された直後の凹凸構造の半径、Rvは、凹凸構造の中心から最も近い凹凸構造までの長さ、Sは、ハイドロゲルの膨張比を意味する。
【0070】
【0071】
ここで、Dは、変化した凹凸構造の深さ、Diは、製造された直後の凹凸構造の深さ、Sは、ハイドロゲルの膨張比を意味する。
【0072】
前記形状変化型モールドは、運転温度が高くなると、バルクゲルは、収縮しながら凹凸構造の半径は増加し、深さは小さくなる。逆に運転温度が低くなると、ゲルは膨張しながら凹凸構造の半径は減少し、深さは増加することになる。
【0073】
かなり低い真皮層の物性にもかかわらず、自動的に深さを制御できるだけでなく、凹凸構造が制御された真皮層が製造された後、最終的にモールド構造の深さが低くなるので、外部の力がなくても真皮層がモールドから自然に分離されるようになる。
【0074】
<実施例1:20歳以上~40歳未満年齢の人工皮膚の製造、E-SKIN1>
図3のような方法を通じて年齢別構造及び物性を有する人工皮膚を製造した。
【0075】
具体的に、まず、真皮層の形成細胞として線維芽細胞(Human Dermal Fibroblasts)を使用して真皮層を形成し、凹凸構造を導入し、細胞外基質由来物質としてコラーゲン(collagen)を導入した。
【0076】
また、強度を調節するための細胞外基質由来物質としては、AlginateにMethacrylate官能基が導入されたメタクリリックアルジネート(Methacrylic Alginate、MA)を適用させ、コラーゲン(collagen)4.8mg/ml濃度基準で4.8mg/mlを使用した。
【0077】
このとき、機械的強度は、25(±5)kPaで形成されるように製造し、凹凸構造の導入は、粗度を大きくするために直径及び間隔を100~200μm、深さ100μmのホールを有する前記準備例1で製造したモールドを真皮層の製造時に使用した。(
図5c)
【0078】
そして、凹凸構造が導入された真皮層上に表皮(Human Epidermis)細胞としてケラチノサイト(Keratinocytes)をシーディング(seeding)し、真皮層の表面に表皮細胞由来の表皮-真皮接合部(Dermal-Epidermal Junction)が形成されるまで液浸培養(submerged culture)を通じて培養した。
【0079】
その後、ALIC(air-liquid interface culture)を通じて表皮細胞を分化して表皮細胞上に角質層を形成させて、最終的に細胞外基質由来物質(ECM derived substances)が導入された真皮層(Dermis layer)、順次積層された角質層及び表皮(Human Epidermis)細胞層を含み、前記真皮層の上部に備えられる表皮層(Epidermis layer)及び、前記真皮層及び表皮層の間に備えられる表皮-真皮接合部(Dermal-Epidermal Junction)を含む年齢別構造及び物性を有する人工皮膚を製造した。
【0080】
<実施例2:40歳以上~60歳未満年齢の人工皮膚の製造、E-SKIN2>
実施例1と同様の方法で人工皮膚を製造するが、メタクリリックアルジネート(Methacrylic Alginate、MA)をcollagen4.8mg/ml濃度基準で2.4mg/mlを使用し、機械的強度は、15(±5)kPaの濃度で形成されるように製造し、準備例2で製造したモールドを使用して実施例2を行った。
【0081】
<実施例3:60歳以上年齢の人工皮膚の製造、E-SKIN3>
実施例1と同様の方法で人工皮膚を製造するが、メタクリリックアルジネート(Methacrylic Alginate、MA)をcollagen4.8mg/ml濃度基準で0mg/mlを使用し、機械的強度は、5(±5)kPaの濃度で形成されるように製造し、調製例3で製造したモールドを使用して実施例3を行った。
【0082】
<実験例2:年齢別構造及び物性を有する人工皮膚の凹凸構造評価>
実施例1により製造した年齢別構造及び物性を有する人工皮膚に対して人工皮膚の凹凸構造を評価した。
【0083】
その結果、
図2に示すように、肉眼で見たとき、小さな点のように見え、立体鏡(stereoscope)及び光学顕微鏡(optical microscope)で拡大してみると、rete ridge構造が形成され、よく維持されていることが確認できた。また、H&E stainingをして断面を見たとき、Rete ridge構造が設計した規格で高さと幅が正しく形成されていることが確認できた。そして、14日間培養をしてもコラーゲンの弱い構造が崩れずに維持されたことが確認できた。
【0084】
また、
図6の(a)~(b)のように、特性年齢別強度と凹凸構造を有する物性が確保されたことが確認できた。
【0085】
また、
図8の(a)は、実施例1(E-SKIN1)、実施例2(E-SKIN2)及び実施例3(E-SKIN3)をstereoscope撮影したイメージであり、60歳以上の皮膚であるE-SKIN3は、E-SKIN1と比較したとき、相対的に平らな皮膚であり、凹凸が多くないことが確認できた。
【0086】
<実験例3:年齢別構造及び物性を有する人工皮膚の年齢別構造及び物性挙動評価>
実施例1~実施例3によって製造した年齢別構造及び物性を有する人工皮膚について、年齢別構造及び物性挙動を評価した。
【0087】
その結果、
図7に示すように、相対的に老いた皮膚を模写した実施例3になるほど、表皮-真皮接合部(Dermal-Epidermal Junction)の凹凸構造の凸部及び凹部の高さの差の平均が低くなり、細胞外基質由来物質の量が減少することにより、強度(弾性係数)も減少することが確認できる。
【0088】
また、表皮-真皮接合部(Dermal-Epidermal Junction)の凹凸構造は、表皮細胞の増殖と分化に役立つことで、相対的に老いた皮膚を模写した実施例3になるほど表皮細胞の増殖と分化の程度が減少することが確認できる。
【0089】
そして、実施例1~実施例3による年齢別構造及び物性を有する人工皮膚のそれぞれにおける標識物質の生合成量(procollagen)を比較すると、
図8(b)に示すように、実施例1では合成量が少なく、実施例3では合成量が多いことが確認できる。これは、実施例3が実施例1に比べて細胞外基質の量が少なくて起こる現象である。しかし、傷をつけたとき、実施例1が実施例3に比べて合成量が多く出たことから、年齢による細胞の挙動がよく現れたことが分かる。これは実際の若い皮膚で回復がより良くなることと符合するので、年齢別人工皮膚が成功的に具現されたことが分かる。
【0090】
また、
図8(c)から分かるように、さらにDEJ marker levelを確認すると、凹凸構造がよく形成されている実施例1でその発現量が多いことが確認できる。
【0091】
<実験例4:年齢別構造及び物性を有する人工皮膚で発現されたpro-collagen type Iの量評価>
実施例1~実施例3によって製造した年齢別構造及び物性を有する人工皮膚について、傷をつける前、後に発現したpro-collagen type Iの量を評価した。
【0092】
その結果、年齢別に具現された人工皮膚の製造後のpro-collagen type Iの発現量は、細胞外基質がより少ない実施例3(E-SKIN3)で、すなわち、年齢がより高く具現された人工皮膚でより高く出ることが確認できる。これは、細胞外基質がないため、これを作り出すための線維芽細胞の活発な代謝作用が起こったことが分かる。しかし、各年齢別人工皮膚に傷をつけたときは、実施例1(E-SKIN1)、すなわち、若い皮膚においてpro-collagen type Iの発現がはるかに多く増加することが確認できた。逆に老いた皮膚である実施例3(E-SKIN3)の場合、製造後と発現量の差は、あまりなかった。したがって、実際の皮膚のように年齢別人工皮膚の中で若い皮膚を模写したものが、老いた皮膚を模写したものより回復力がより良いことをPro-collagen type Iの発現量で立証できる。
【0093】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明の思想は、本明細書に提示される実施例に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は、同じ思想の範囲内で、構成要素の追加、変更、削除、追加などによって他の実施例を容易に提案できるが、これも本発明の思想範囲内に入ると言えるだろう。