IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シェルタージャパンの特許一覧

<>
  • 特許-シェルター用吸気装置 図1
  • 特許-シェルター用吸気装置 図2
  • 特許-シェルター用吸気装置 図3
  • 特許-シェルター用吸気装置 図4
  • 特許-シェルター用吸気装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】シェルター用吸気装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/10 20060101AFI20240815BHJP
   F24F 7/04 20060101ALI20240815BHJP
   F24F 8/108 20210101ALI20240815BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20240815BHJP
   G21F 7/00 20060101ALI20240815BHJP
   G21F 7/005 20060101ALI20240815BHJP
   F41H 11/02 20060101ALN20240815BHJP
【FI】
F24F13/10 E
F24F7/04 B
F24F8/108 320
B01D53/04 110
G21F7/00 S
G21F7/005
F41H11/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024037454
(22)【出願日】2024-03-11
【審査請求日】2024-03-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196106
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 一直
(72)【発明者】
【氏名】寿福 誠
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-036180(JP,A)
【文献】特開2004-085147(JP,A)
【文献】特開2015-140508(JP,A)
【文献】国際公開第2013/018872(WO,A1)
【文献】特開2014-141876(JP,A)
【文献】登録実用新案第3144746(JP,U)
【文献】特開2014-167379(JP,A)
【文献】特許第7390084(JP,B1)
【文献】特開2015-110896(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2622002(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/10
F24F 7/04
F24F 8/108
B01D 53/04
G21F 7/00
G21F 7/005
F41H 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気をシェルター室内に取り込むためのシェルター用吸気装置であって、
外気を取り込むことができる複数個の外気導入弁と、
複数個の前記外気導入弁を開閉する開閉部と、を備え
前記外気導入弁は、外気を流入させるための外気導入孔を画定する外気導入筒と、前記外気導入孔を開閉する開閉蓋と、を有し、
前記開閉部は、複数個の前記開閉蓋に接続する同期移動部と、前記同期移動部を動作する動作部と、を有し、前記同期移動部は、前記開閉蓋を同期して移動させることで、複数個の前記外気導入孔は同時に開閉されることを特徴とするシェルター用吸気装置。
【請求項2】
前記同期移動部は、前記外気導入筒に設けられた凹部に沿って摺動する摺動リブを有することを特徴とする請求項に記載のシェルター用吸気装置。
【請求項3】
前記摺動リブの一端は前記開閉蓋に接続し、他端は前記開閉蓋が開放される方向の移動を制限するストッパが設けられることを特徴とする請求項に記載のシェルター用吸気装置。
【請求項4】
前記摺動リブ、及び前記凹部は、前記外気導入筒の周方向に、等間隔に複数設けられることを特徴とする請求項又はに記載のシェルター用吸気装置。
【請求項5】
外気をシェルター室内に取り込むためのシェルター用吸気装置であって、
外気を取り込むことができる複数個の外気導入弁と、
複数個の前記外気導入弁を開閉する開閉部と
前記外気導入弁を通過した外気に含まれる汚染物質を除去できるフィルター部と、
前記フィルター部を通過した外気を、シェルター室内に流出させるための流出部と、を備え、
前記フィルター部は、第1方向に沿って延びる第1フィルターと、前記第1方向に沿って移動する開口面が設けられるスクリーン部と、を有し、前記第1フィルターは外気に含まれる有害物質を除去できる性能を具備し、前記開口面は平面視で前記第1フィルターの領域内に収容される形状に設定され、前記第1フィルターを通過する外気は、前記開口面を経由することを特徴とするシェルター用吸気装置。
【請求項6】
前記フィルター部は、前記第1フィルターに隣接して並べられて、前記第1方向に沿って延びる第2フィルターを有し、前記第2フィルターは外気に含まれる粉塵を除去できる性能を具備し、前記開口面は平面視で前記第2フィルターの領域内に収容される形状に設定され、前記第2フィルターを通過する外気は、前記開口面を経由することを特徴とする請求項に記載のシェルター用吸気装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェルター室内に外気を取り込むためのシェルター用吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の国際状況は、軍事的な緊張関係が高まっており、ミサイル攻撃による建物破壊や、場合によっては核を使用した攻撃等がなされるリスクがある。諸外国では、このような軍事攻撃等から身を守るために、シェルターが多数設置されている。
【0003】
緊迫する国際状況に鑑みて、我が国においても、戦争や天変地異等の緊急事態が発生した場合に備えて、放射線遮蔽性能を具備するいわゆる核シェルターの設置要望が高まっている。
【0004】
核シェルターは、放射性物質を遮断する必要があるため、極めて高い気密性が求められる。この場合、核シェルター内に避難する人々が生命を維持するために、所定量の酸素の供給が必要となる。避難が長期に及ぶ場合は、屋外からの放射性物質を含んだ空気を取り入れて、浄化した後に室内に取り入れる浄化装置を導入することが考えられる。
【0005】
近年は、大規模地震に起因する津波災害も懸念され、シェルターが水没する事態も想定される。この場合は、屋外からの空気の流入を遮断して、津波によるシェルター内への浸水を防止することを要する。
【0006】
特許文献1、2は送流路中にプレフィルターとHEPAフィルターと活性炭によりなる放射性物質除去部を備える空気清浄装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-219403号公報
【文献】特開2020-126072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2で提案される空気清浄装置は構造が複雑で、大きな設置スペースが必要となる。また、津波によるシェルター内部の浸水を阻止することは困難であると考えられる。
【0009】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、長期に亘り室内空気を良好な状態に維持できて、しかも津波によるシェルター内の浸水を回避できるシェルター用吸気装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための発明は、外気をシェルター室内に取り込むためのシェルター用吸気装置であって、外気を取り込むことができる複数個の外気導入弁と、複数個の外気導入弁を開閉する開閉部と、外気導入弁を通過した外気に含まれる汚染物質を除去できるフィルター部と、フィルター部を通過した外気を、シェルター室内に流出させるための流出部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、外気を取り込むことができる外気導入弁は、複数個で構成されているので、1個で構成される場合と比べて、外気を安定的に取り込むことができる。例えば、何らかの事情で複数個のうちの1つの外気導入弁が支障をきたしたとしても、他の外気導入弁を活用することで吸気機能を維持し得る。また、流量の調整が容易となる。
【0012】
好ましくは、外気導入弁は、外気を流入させるための外気導入孔を画定する外気流入筒と、外気流入孔を開閉する開閉蓋で構成されることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、外気導入弁は、外気を流入させるための外気導入孔を画定する外気導入筒と、外気流入孔を開閉する開閉蓋で構成されるので、外気導入弁を極めて簡単な構造とすることができる。また、開閉蓋は複数個で構成されているので、1個の場合と比べて受圧面積を小さく設定できることから、変形しづらく、かつ所定強度の確保が容易である。
【0014】
好ましくは、開閉部は、複数個の開閉蓋に接続する同期移動部と、同期移動部を動作する動作部とを有し、同期移動部は、開閉蓋を同期して移動させることで、複数個の外気導入孔は同時に開閉されることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、複数の開閉蓋は同時に開閉されるので、複数の外気導入筒から同時に外気を取り入れることができ、あるいは外気の導入を同時に遮断できる。
【0016】
好ましくは、同期移動部は、外気導入筒に設けられた凹部に沿って摺動する摺動リブを有することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、同期移動部は、外気導入筒に設けられた凹部に沿って摺動する摺動リブを有するので、開閉蓋の円滑な移動変位が可能となる。
【0018】
摺動リブの一端は開閉蓋に接続し、他端は開閉蓋が開放される方向の移動を制限するストッパが設けられることを特徴とする。
【0019】
この構成によれは、摺動リブの一端は開閉蓋に接続するので、開閉蓋は摺動リブによって補剛される状態とすることができる。また、摺動リブの他端は開閉蓋が開放される方向の移動を制限するストッパが設けられるので、開閉蓋の開放される方向の移動は自ずと制限される。
【0020】
好ましくは、摺動リブ、及び凹部は、外気導入筒の周方向に、等間隔に複数設けられることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、摺動リブ、及び凹部は、外気導入筒の周方向に、等間隔に複数設けられるので、開閉蓋のより円滑な移動変位が可能となるとともに、摺動リブによる開閉蓋の効率的な補剛が可能となる。
【0022】
好ましくは、外気導入弁を通過した外気に含まれる汚染物質を除去できるフィルター部と、フィルター部を通過した外気を、シェルター室内に流出させるための流出部と、を備え、フィルター部は、第1方向に沿って延びる第1フィルターと、第1方向に沿って移動する開口面が設けられるスクリーン部とを有し、第1フィルターは外気に含まれる有害物質を除去できる性能を具備し、開口面は平面視で第1フィルターの領域内に収容される形状に設定され、第1フィルター部を通過する外気は、前記開口面を経由することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、開口部を第1方向に移動することで、外気が通過する第1フィルターの位置を移動することにより、第1フィルターの外気に含まれる有害物質を除去できる性能を長期間に渡って持続できる。
【0024】
好ましくは、フィルター部は、第1フィルターに隣接して並べられて、第1方向に沿って延びる第2フィルターを有し、第2フィルターは外気に含まれる粉塵を除去できる性能を具備し、開口面は平面視で第2フィルターの領域内に収容される形状に設定され、第2フィルター部を通過する外気は、開口面を経由することを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、フィルター部は、第1フィルターに隣接して並べられて、第1方向に沿って延びる第2フィルターを有するので、開口部を第1方向に移動することで、外気を、第1フィルター、あるいは第2フィルターを適宜に通過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】シェルター用吸気装置の正面断面図である。
図2】水没した状態のシェルター用吸気装置の正面断面図である。
図3】外気流入弁の平面断面図である。
図4】フィルター部の平面図である。
図5】開閉蓋の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1~5を参照して本発明のシェルター用吸気装置1(以後、吸気装置1と称する。)の実施形態を詳述する。
【0028】
図1、2に示す通り、吸気装置1は、外殻50に取り付けられており、複数個の外気導入弁10、並びに開閉部20、及びフィルター部30を有している。外殻50は、一面が開口する箱であり、底板51、側板52、及び天板53から構成されている。底板51、側板52、及び天板53の端部はシェルター100の側壁105に接続している。本実施形態で例示するシェルター100は、室内が地下110に埋設されている、いわゆる地下シェルターであるが、これに限るものではない。室内の半分程度が地下110に埋設されている、半地下構造であってもよいし、室内を地上111に設ける構造であってもよい。また、本実施形態では、外殻50は地下110に埋設されている状態を例示しているが、地上に設けてもよい。
【0029】
外気導入弁10は、外気導入筒11、及び開閉蓋15を有している。2個の外気導入筒11が、天板53を貫通して取り付けられている。外気導入筒11の内部空間によって、円筒形状の外気導入孔11aが画定されている。外気導入孔11aは外気OAを外殻50に取り入れるための孔であり、プレフィルター60によって覆われている。プレフィルター60は、塵や埃を除去できる性能を具備している。
【0030】
開閉蓋15は、外気導入孔11aを開閉するためのものである。外気導入孔11aを開放することで、外気導入孔11aは外気OAを取り込むことができる。また、閉鎖することで、外気導入孔11aからの外気OAの流入を遮断することができる。
【0031】
開閉蓋15は、図5に示すように、ドーム形状のドーム本体16と、ドーム本体16の外縁から天板の方向に向かって延びるドーム脚部17を有している。開閉部20を動作することで、ドーム脚部17が上下方向D2(外気導入筒11が延びる方向)に沿って移動する。また、ドーム脚部17が図示下方に移動して天板53に接触することで、外気導入孔11aは閉鎖される。ドーム脚部17の縁端部はパッキン18が装着されている。パッキン18は、開閉蓋15が外気導入孔11aを塞ぐときの遮断性能を向上させるためのものである。本実施形態では、2個の外気導入弁10を例示しているが、これに限るものではない。3個以上であってもよい。また、外気導入孔11aの形状は円筒内部に形成されるものに限らず、三角筒部、四角筒部あるいは多角筒部内に形成されるものでもよい。
【0032】
開閉部20は、開閉蓋15を同期して上下方向D2の方向に移動させるための同期移動部21と、同期移動部21を動作する動作部27を有している。同期移動部21は、2個の開閉蓋15の周方向、及び径方向の移動を制限するとともに、開閉蓋15のそれぞれを同期して移動させるための装置である。
【0033】
同期移動部21は、摺動リブ22、ベース材24、支持材25、雄ネジ部材26を有している。支持材25は上下方向D2に延びる棒部材であって、一端が開閉蓋15の中心に接続し、他端がベース材24の端部に接続している。ベース材24は中央部で雄ネジ部材26と螺合している。雄ネジ部材26は、外表面に雄ネジが設けられ、上下方向D2に延びる棒部材であり、モータ(動作部27)によって棒部材の軸周りに回動する構成となっている。
【0034】
摺動リブ22は支持材25に接合されている。摺動リブ22の上下方向D2の一端は開閉蓋15に接合し、他端はストッパ23が装着されている。ストッパ23は、開閉蓋15の上方への移動を制限するためのものである。
【0035】
フィルター部30は、第1フィルター31及び第2フィルター32とからなるフィルター群35、及びスクリーン部Sを有している。フィルター群35は、第1フィルター31と第2フィルターが第1方向D1に列状に並べられて、第1封止部材71、及び第2封止部材72で矜持される構造である。第1封止部材71は側板52に接触しており、第2封止部材72はシェルター100の側壁105を貫通するフィルター開口部105aを塞いでいる。フィルター群35の上面は、スクリーン部Sで覆われている。スクリーン部Sには開口面OPが設けられている。スクリーン部S上で、図示左右に置かれたドラム38、38aを回動させることで開口面OPは、第1方向D1に沿って図示左右に移動する。すなわち、ドラム38、38aは、後述するようにスクリーン部Sを繰り出し(巻き戻し)可能に巻き取るように構成されている。ドラム38、38aの駆動については、例えば正逆回転可能な同期型モータにより行われてもよい。
【0036】
フィルター群35は、支持レール36に支持されており、支持レール36を摺動移動することで、シェルター100の側壁105に設けられたフィルター開口部105aを経由してシェルター室内101に取り出すことができる。
【0037】
第1フィルター31は、外気OAに含まれる有害物質を除去できる性能を具備している。ここでいう有害物質は、具体的には、放射性物質、有毒ガス、炭疽菌等の有害微生物などである。本実施形態で例示する第1フィルター31は、HEPAフィルターであるが、これに限るものではない。例えば、活性炭素繊維フィルターを用いてもよいし、HEPAフィルターと活性炭素繊維フィルターを重層して用いてもよい。フィルターの種類は、外気OAの汚染の程度を想定したうえで、適宜に定めればよい。また、第2フィルター32は、花粉等の微細な物質を除去できる性能を具備している。
【0038】
フィルター部30の下方に流出部41が設けられている。流出部41はフィルター群35を通過した外気OAをシェルター室内101に流出させるための空間である。フィルター群35を通過した外気OAはシェルター室内101の側に取り付けられる調整バルブBから、シェルター室内101に流入する。
【0039】
図3に示す通り、2個の外気導入弁10が第1方向D1に沿って列状に並べられている。外気導入弁10を並べる方向は任意の方向でよく、第1方向D1に限るものではない。外気導入孔11aは、天板53に貫入される円筒体である外気導入筒11によって画定される円筒形状の孔である。外気導入筒11の内部は、周方向に対して等間隔となるように4つの凹部12が設けられている。
【0040】
摺動リブ22は、支持材25に接合する板部材であり、摺動リブ22の外側端部は凹部12に挿入されている。これにより摺動リブ22の支持材25回りでもある外気導入筒11の周方向の変位は拘束制限される。
【0041】
図1~3を参照して開閉蓋15が昇降変位するメカニズムについて説明する。
【0042】
モータ(動作部27)を動作して雄ネジ部材26を回動すると、その回動に伴ってベース材24は上下方向に移動する。同時に雄ネジ部材26を中心として、雄ネジ部材26と反対方向に回動しようとする。しかし、ベース材24の回動は摺動リブ22が凹部12と接触することで抑制される。結果として、ベース材24は上下方向にのみ変位移動する。
【0043】
ベース材24の端部に接続する2つの支持材25は摺動リブ22の凹部12での摺動を伴って上下方向D2に同期して変位移動する。これにより、支持材25の上下方向の同期移動が確保される。
【0044】
ストッパ23が天板53に接触することで開閉蓋15の上昇は停止する。この状態で全ての摺動リブ22は凹部12の全長に亘って挿入される状態となる。すなわち、支持材25が天板53から突出した状態においても、開閉蓋15の不規則な変位は拘束されて、安定的な状態が保たれ得る。
【0045】
図4に示す通り、フィルター部30は、平面視で外殻50と側壁105で画定される領域を隙間なく覆っている。スクリーン部Sは、フィルター群35を覆うように設けられている。一対のドラム38、38aを正逆方向に交互に回動することで、スクリーン部Sは一端部から一方のドラムで巻き取られ、他方のドラムで巻き戻しされることで、第1方向D1に沿って図示左右に移動する構造となっている。スクリーン部Sに、開口面OPが設けられており、この開口面OPは、平面視で第1フィルター31、第2フィルター32のそれぞれの内部領域に収容できる形状に設定されている。スクリーン部Sを移動させて開口面OPを第1方向D1に移動させることで、開口面OPの位置を適宜設定できる。これにより、開口面OPは平面視で任意の1つフィルターのみの内部領域に収容される。すなわち、外気OAは、第1フィルター31、あるいは第2フィルター32のいずれかのフィルターのうち、任意の一つのフィルターのみを通過できる。
【0046】
少なくとも第1フィルター31の第1方向D1の長さである第1フィルター長L1は、開口面OPの第1方向の長さである開口面長LOPの2倍以上に設定することが好ましい(L1≧2LOP)。これにより、開口面OPに位置する第1フィルター31が使用限度を超えて目詰まりを起こしたとしても、開口面OPを移動することにより、開口面OPを経由して、外気OAが通過していない第1フィルター31の部分を、新たなフィルターとして利用できる。これにより、第1フィルター31の取り替え期間の長期化を図り得る。
【0047】
より好ましくは、第2フィルター32の第1方向D1の長さである第2フィルター長L2についても、開口面長LOPの2倍以上に設定することが好ましい(L2≧2LOP)。上述した理由と同様の理由によって、第2フィルター32の取り替え期間の長期化を図り得る。
【0048】
図1、2を参照して、吸気装置1の操作手順について説明する。
【0049】
緊急事態の発生等により、シェルター室内101に避難したとき、シェルター100に設けられる排気装置(図示略)を動作すると同時に、開閉蓋15を開放する。排気装置を作動することで、シェルター室内101の圧力が低下して、外気OAは自然と外気導入孔11aから取り込まれる。
【0050】
緊急事態が、核の脅威や生物化学兵器による脅威ではないと考えられる状態、例えば地震火災が発生した状態においては、開口面OPを第2フィルター32の内部領域にセットする。そうすると、外気OAは、プレフィルター60、第2フィルター32を通過してシェルター室内101に取り込まれる。この過程で、外気OAに含まれる塵や埃はプレフィルター60で除去される。さらに塵や埃に比べて微細な物質、例えば花粉などは第2フィルター32で除去される。これにより、塵や埃、花粉などが取り除かれた外気OAがシェルター室内101に流入する。
【0051】
第2フィルター32の目詰まりが確認されるときは、ドラム38を動作してフィルター群35をシェルター室内101に移動して、目詰まりを起こした第2フィルター32を、新しい第2フィルター32に取り替えて、フィルター群35を再度セットすればよい。
【0052】
緊急事態が、核の脅威や生物化学兵器による脅威であると考えられる場合、例えば第三国から核攻撃や生物化学兵器による攻撃を受けた状態においては、開口面OPを第1フィルター31の内部領域内にセットする。そうすると、外気OAは、プレフィルター60、第1フィルター31を通過してシェルター室内101に取り込まれる。この過程で、外気OAに含まれる塵や埃はプレフィルター60で除去される。さらに核物質や有害な細菌などは第1フィルター31で除去される。これにより、汚染された外気OAが浄化された状態でシェルター室内101に供給流入する。
【0053】
第1フィルター31の目詰まりが確認されるときは、ドラム38、38aを回動してスクリーン部Sを移動して開口面OPを新た第1フィルター31の領域内にセットする。さらに、第1フィルター31の全ての範囲での目詰まりが確認されるときは、開閉蓋15を閉じた後に、フィルター群35をシェルター室内101に移動して、目詰まりを起こした第1フィルター31を、新しい第1フィルター31に取り替えて、フィルター群35を再セットした後に、開閉蓋15で塞がれていた外気導入孔11aを開放する。
【0054】
なお、第1フィルター31を取り換えるときは、第1フィルター31に付着している有害物質に汚染されないように、十分な対策を講じたうえで行うことが好ましい。
【0055】
緊急事態が、津波災害であると考えられる場合、開放していた外気導入孔11aを開閉蓋15で閉じる。これにより、外気導入孔11aからの浸水を回避できる。
【0056】
しかし、大規模な津波が襲来した場合は、水没深さが深くなり開閉蓋15に大きな水圧が付加されて変形する可能性がある。この変形に起因して開閉蓋15と外気導入孔11aとの間から浸水する可能性は否定できない。
【0057】
本実施形態では、開閉蓋15は2個で構成されているので、1個の場合と比べて受圧面積を小さく設定できることから、変形しづらく、かつ所定強度の確保が容易である。また、開閉蓋15は摺動リブで補剛されている状態、すなわち強度に優れ変形しづらい構造であるとも考えられるので、浸水の可能性はさらに低下する。
【0058】
水位の低下を確認したうえで、開閉蓋15で塞がれていた外気導入孔11aを開放し、状況に応じてシェルター100から脱出すればよい。
【0059】
本実施形態は例示であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。例えば、本実施形態では、動作部27をモータとしているが、ジャッキとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る吸気装置1をシェルター100に用いることで、水害、津波、核、火災のときに避難できる多用途シェルターとしての活用が可能となることから産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0061】
1 :シェルター用吸気装置
10 :外気導入弁
11 :外気導入筒
11a :外気導入孔
12 :凹部
15 :開閉蓋
20 :開閉部
21 :同期移動部
22 :摺動リブ
23 :ストッパ
27 :動作部
30 :フィルター部
31 :第1フィルター
32 :第2フィルター
41 :流出部
101 :シェルター室内
D1 :第1方向
OA :外気
OP :開口面
S :スクリーン部
【要約】
【課題】長期に亘り室内空気を良好な状態に維持できて、津波によるシェルター内の浸水を回避できるシェルター用吸気装置を提供する。
【解決手段】シェルター用吸気装置1は、複数個の外気導入弁10、並びに開閉部20、及びフィルター部30を有している。外気導入弁10は、外気導入筒11、および開閉蓋15を有している。2個の外気導入筒11が、天板53を貫通して取り付けられている。開閉部20を動作することで、開閉蓋15は同期して上下方向D2に移動して、外気導入孔11aを開閉する。フィルター部30は、第1フィルター31及び第2フィルター32とからなるフィルター群35、及びスクリーン部Sを有している。スクリーン部30を移動することで、開口面OPを通過する外気0Aは、第1フィルター31、あるいは第2フィルター32を経由してシェルター室内105に流入する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5