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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/44 20060101AFI20240815BHJP
   B65D 5/20 20060101ALI20240815BHJP
   B65D 21/04 20060101ALI20240815BHJP
   B65D 5/42 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B65D5/44 H
B65D5/20 C
B65D21/04
B65D5/42 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020062902
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160744
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100206195
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(74)【代理人】
【識別番号】100224650
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 晴加
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英明
(72)【発明者】
【氏名】篠原 隆昌
【審査官】二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-207838(JP,A)
【文献】特開2005-59866(JP,A)
【文献】特開2004-67229(JP,A)
【文献】特開2019-85169(JP,A)
【文献】特開2016-16872(JP,A)
【文献】特開2008-87329(JP,A)
【文献】特開平5-105776(JP,A)
【文献】米国特許第5433374(US,A)
【文献】特開2003-181962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/44
B65D 5/20
B65D 21/04
B65D 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙からなる基材層と前記基材層の表面及び裏面に積層された樹脂からなる樹脂層とを備えた複合基材から得られた1枚の原紙が成形され構成される、底部と前記底部の周縁から立ち上がる側壁部と前記側壁部のブランクにおけるコーナー部から延出するコーナー部切片と前記コーナー部切片近傍から延出する2個の接合用切片とを備えた容器であって、
前記側壁部のコーナー部において前記複合基材の一方面及び他方面が高周波溶着により溶着され、
前記複合基材の前記一方面及び前記他方面を溶着したときの密着性が4.0N/cm以上20.0N/cm以下であり、
前記側壁部は、その立ち上がり端部から外方へ延びる平坦なフランジを更に備え、
前記側壁部のコーナー部における前記フランジの裏面に2個の前記接合用切片が配置され、前記フランジの前記一方面と前記接合用切片の前記他方面とが溶着されている、容器。
【請求項2】
紙からなる基材層と前記基材層の表面及び裏面に積層された樹脂からなる樹脂層とを備えた複合基材から得られた1枚の原紙が成形され構成される、底部と前記底部の周縁から立ち上がる側壁部とを備えた容器であって、
前記側壁部のコーナー部において前記複合基材の一方面及び他方面が高周波溶着により溶着され、
前記複合基材の前記一方面及び前記他方面を溶着したときの密着性が4.0N/cm以上20.0N/cm以下であり、
前記樹脂層の前記一方面側はマット調であり、前記他方面側はグロス調である、容器。
【請求項3】
前記側壁部は、その立ち上がり端部から外方へ延びる平坦なフランジを更に備える、請求項記載の容器。
【請求項4】
前記側壁部の前記コーナー部における前記フランジの裏面において、前記複合基材の前記一方面及び前記他方面が溶着されている、請求項記載の容器。
【請求項5】
前記複合基材の前記一方面及び前記他方面を溶着したときの密着性が8.0N/cm以上20.0N/cm以下である、請求項1から請求項4のいずれかに記載の容器。
【請求項6】
前記樹脂層を構成する樹脂は、ポリエチレンテレフタレートである、請求項1から請求項5のいずれかに記載の容器。
【請求項7】
前記複合基材の少なくとも一方面の表面粗さRaは、0.7μm以上3.0μm以下である、請求項1から請求項のいずれかに記載の容器。
【請求項8】
紙からなる基材層と前記基材層の表面及び裏面に積層された樹脂からなる樹脂層とを備えた複合基材から得られた1枚の原紙が成形され構成される、底部と前記底部の周縁から立ち上がる側壁部とを備えた容器であって、
前記側壁部のコーナー部において前記複合基材の一方面及び他方面が高周波溶着により溶着され、
前記複合基材の前記一方面及び前記他方面を溶着したときの密着性が4.0N/cm以上20.0N/cm以下であり、
前記複合基材の少なくとも一方面の表面粗さRaは、0.7μm以上3.0μm以下である、容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は容器に関し、特に、1枚のブランクを成形して得られ、食品や飲料等を収納する紙トレーや紙コップ等として用いられる容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量且つコスト的に有利な食品の収納容器として、例えばポリプロピレン等の合成樹脂からなるプラスチック容器がある。しかし、近年のマイクロプラスチック問題からプラスチック容器の使用が控えられ、プラスチック容器に代えて、主に紙からなる容器の使用が好まれる傾向にある。
【0003】
このような容器として、特許文献1では、1枚の板紙原紙(紙ブランク)に対し外周縁に向かってほぼ放射状に延びる複数の線条を設け、プレス成形によって形成されるものが開示されている。容器のフランジ端部には縁巻が形成されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の容器では、紙の深絞りのような成形方法であるため、容器深さを深くしようとすると成形時に紙の破れが生じる虞があり、深型形状の容器を製造することが難しい。
【0005】
そこで、1枚の紙ブランクから製造される容器深さが深い容器としては、特許文献2において、所定形状のブランクを折り曲げて底部と側面部とを形成すると共にコーナー部を折り込み接着することで深型形状としたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-071656号公報
【文献】特開2000-255546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような容器にあっては、収容物が冷凍食品等の水分を多く含むものとする場合があるため、耐水性や耐油性を付与すべく板紙原紙の少なくとも内面側となる一方面に樹脂層を形成することが好ましい。しかし、特許文献2のようにコーナー部を折り込み接着するような場合は、板紙原紙の両面に樹脂層を設けて当該樹脂層によりコーナー部を熱溶着や高周波溶着することで容器形状を保持しているが、コーナー部の接合が弱いと容器形状を保持することができないことがある。例えば、容器に食品等を収容した状態、即ち、容器内に一定量の荷重がかかった状態で容器を手で持ち上げる場合には、コーナー部あるいはその周辺のみを手指でつかんで持ち上げることがある。特に容器にフランジが設けられている場合において、コーナー部に設けられたフランジをつかんで持ち上げたときには、コーナー部の接合箇所に集中して荷重がかかることになる。このような通常の使用態様においても、接合状態が悪いとコーナー部の接合箇所がその荷重に耐えられずにコーナー部の剥離が生じることがあり、その結果、容器形状を維持できずに収容した食品等がこぼれてしまう等の問題が生じる虞がある。特に、コーナー部で接合している樹脂層同士がその界面で剥離するようなときには、コーナー部の剥離が生じやすくなり、容器としての信頼性が得られなくなる。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、容器のコーナー部における樹脂層界面での剥離を防止することで信頼性の高い容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、紙からなる基材層と基材層の表面及び裏面に積層された樹脂からなる樹脂層と側壁部のブランクにおけるコーナー部から延出するコーナー部切片とコーナー部切片近傍から延出する2個の接合用切片とを備えた容器であって、側壁部のコーナー部において複合基材の一方面及び他方面が高周波溶着により溶着され、複合基材の一方面及び他方面を溶着したときの密着性が4.0N/cm以上20.0N/cm以下であり、側壁部は、その立ち上がり端部から外方へ延びる平坦なフランジを更に備え、側壁部のコーナー部におけるフランジの裏面に2個の接合用切片が配置され、フランジの一方面と接合用切片の他方面とが溶着されているものである。
【0010】
このように構成すると、樹脂層界面での剥離を防止する。
請求項2記載の発明は、紙からなる基材層と基材層の表面及び裏面に積層された樹脂からなる樹脂層とを備えた複合基材から得られた1枚の原紙が成形され構成される、底部と底部の周縁から立ち上がる側壁部とを備えた容器であって、側壁部のコーナー部において複合基材の一方面及び他方面が高周波溶着により溶着され、複合基材の一方面及び他方面を溶着したときの密着性が4.0N/cm以上20.0N/cm以下であり、樹脂層の一方面側はマット調であり、他方面側はグロス調であるものである。
このように構成すると、樹脂層界面での剥離を防止する。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、側壁部は、その立ち上がり端部から外方へ延びる平坦なフランジを更に備えるものである。
このように構成すると、フランジが持ち手となる。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成において、側壁部のコーナー部におけるフランジの裏面において、複合基材の一方面及び他方面が溶着されているものである。
このように構成すると、溶着箇所を大きくとることができる。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の構成において、複合基材の一方面及び他方面を溶着したときの密着性が8.0N/cm以上20.0N/cm以下であるものである。
【0012】
このように構成すると、樹脂層界面での剥離をより防止する。
【0013】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の構成において、樹脂層を構成する樹脂は、ポリエチレンテレフタレートであるものである。
【0014】
このように構成すると、複合基材同士を溶着したときの密着性が向上する。
【0019】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の発明の構成において、複合基材の少なくとも一方面の表面粗さRaは、0.7μm以上3.0μm以下であるものである。
【0020】
このように構成すると、スタッキング性に優れると共に、ブロッキングを抑制できる。
請求項8記載の発明は、紙からなる基材層と基材層の表面及び裏面に積層された樹脂からなる樹脂層とを備えた複合基材から得られた1枚の原紙が成形され構成される、底部と底部の周縁から立ち上がる側壁部とを備えた容器であって、側壁部のコーナー部において複合基材の一方面及び他方面が高周波溶着により溶着され、複合基材の一方面及び他方面を溶着したときの密着性が4.0N/cm以上20.0N/cm以下であり、複合基材の少なくとも一方面の表面粗さRaは、0.7μm以上3.0μm以下であるものである。
このように構成すると、樹脂層界面での剥離を防止する。又、スタッキング性に優れると共に、ブロッキングを抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、樹脂層界面での剥離を防止するため、容器の信頼性が向上する。
請求項2記載の発明は、樹脂層界面での剥離を防止するため、容器の信頼性が向上する。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、フランジが持ち手となるため、内容物が高温となるときの使用に便宜となる。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加えて、溶着箇所を大きくとることができるため、容器の信頼性が向上する。
【0022】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、樹脂層界面での剥離をより防止するため、容器の信頼性が更に向上する。
【0023】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、複合基材同士を溶着したときの密着性が向上するため、容器の信頼性が更に向上する。
【0026】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の発明の効果に加えて、スタッキング性に優れると共に、ブロッキングを抑制できるため、容器の使い勝手が向上する。
請求項8記載の発明は、樹脂層界面での剥離を防止するため、容器の信頼性が向上する。又、スタッキング性に優れると共に、ブロッキングを抑制できるため、容器の使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】この発明の第1の実施の形態の容器の外観を示す斜視図である。
図2図1で示したII-IIラインの拡大端面図である。
図3図1で示した容器を構成するためのブランクを示す平面図である。
図4図1で示した容器の表面構造を示す平面図である。
図5図1で示した容器の裏面構造を示す背面図である。
図6図5で示した“A”部分の拡大図である。
図7】スタッキング性試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1はこの発明の第1の実施の形態の容器の外観を示す斜視図であり、図2図1で示したII-IIラインの拡大端面図である。
【0029】
これらの図を参照して、容器1は、底部2と、底部2の周縁から立ち上がる側壁部3とから主に構成されている。又、側壁部3は、その立ち上がり端部4から外方へ延びる平坦なフランジ5を備える。
【0030】
図2を参照して、底部2は、紙からなる基材層10と、基材層10の表面及び裏面に積層されたポリエチレンテレフタレートからなる樹脂層11a、11bとを備えた複合基材7から構成されている。樹脂層11a、11bは押出ラミネートにより基材層10の両面に積層されている。又、側壁部3も同様に複合基材7から構成されている。
【0031】
ここで、樹脂層11aの樹脂層表面13(複合基材7の少なくとも一方面)の表面粗さRa(JIS B 0601によって求められる算術平均高さRa)は、0.7μm以上3.0μm以下の範囲内に構成されていることが好ましい。又、樹脂層表面13及び樹脂層表面14(複合基材7の一方面及び他方面)の表面粗さRaの合計(両面合計表面粗さ)は、1.5μm以上3.5μm以下の範囲内に構成されていることが好ましい。このように構成することで、スタッキング性に優れると共に、ブロッキングを抑制できるため、容器の使い勝手が向上する。容器1のスタッキングの際には、複合基材7において一方面だけでなく両面合計表面粗さも所定数値範囲内であればスタッキング性及びブロッキング抑制が好適となることを見出したものである。
【0032】
又、複合基材7の少なくとも一方面の表面粗さRaが1.8μm以上2.9μm以下であることがより好ましく、複合基材7の両面合計表面粗さが2.2μm以上3.5μm以下であることがより好ましい。このように構成することで、スタッキング性により優れた容器となる。
【0033】
次に、このような容器1を構成する方法について説明する。
【0034】
まず、紙基材の両面に対し、押出ラミネートにより樹脂層を積層し、複合基材7を構成する。そして複合基材7を所定形状に打ち抜き、ブランクを形成する。
【0035】
図3図1で示した容器を構成するためのブランクを示す平面図である。
【0036】
同図を参照して、ブランク17は、容器1(図1等を参照)の底部2に当たる底部ブランク18と、底部ブランク18の周縁から外方に延びる側壁部ブランク19と、側壁部ブランク19の周縁の一部から延出する側方舌片20と、側壁部ブランク19のコーナー部から延出するコーナー部舌片21と、側壁部ブランク19のコーナー部舌片21近傍から延出する接合用舌片22とから構成されている。
【0037】
ブランク17を、同図に破線で示す山折り線24に沿って山折りに折り曲げると共に、同図に二点鎖線で示す谷折り線25に沿って谷折りに折り曲げることで、容器形状を構成する。
【0038】
図4図1で示した容器の表面構造を示す平面図であり、図5図1で示した容器の裏面構造を示す背面図であり、図6図5で示した“A”部分の拡大図である。
【0039】
図3図6を併せて参照して、ブランク17の底部ブランク18は容器1の底部2を構成し、側壁部ブランク19は側壁部3を構成し、側方舌片20は側方のフランジ5aを構成し、コーナー部舌片21は側壁部3のコーナー部におけるフランジ5bを構成する。
【0040】
又、側壁部3のコーナー部におけるフランジ5bの裏面に接合用舌片22a、22bは配置される。そして、フランジ5bの一方面(裏面)と、接合用舌片22a、22bの他方面(表面)及びフランジ5aの他方面(表面)とをそれぞれ高周波溶着により溶着することで、耐水性や耐油性に優れた容器1が構成される。
【0041】
容器1はコーナー部において複合基材7の一方面(表面)及び他方面(裏面)が高周波溶着により溶着されていることで、容器の成形の安定性が向上するため、信頼性が向上する。
【0042】
又、側壁部3の立ち上がり端部4から外方へ延びる平坦なフランジ5を備えることで、フランジが持ち手となるため、内容物が高温となるときの使用に便宜となる。
【0043】
更に、溶着はフランジ5bの裏面においてなされていることで、意匠性を損なわず溶着箇所を大きくとることができるため、容器の信頼性が向上する。
【0044】
尚、本発明の実施の形態による容器にあっては、容器が特定形状であったが、形状は特に限定されない。例えば容器開口上方から見た形状が多角形、円形、略楕円形のもの等が挙げられるが、成形の簡便さから四角形から八角形の多角形であることが好ましい。又、容器の大きさも特に限定されない。
【0045】
又、本発明の実施の形態による容器にあっては、基材層を構成する紙の種類は特に限定されない。所望の用途に応じて、純白ロール紙、クラフト紙、パーチメント紙、アイボリー紙、マニラ紙、カード紙、カップ紙、グラシン紙等を用いることができる。又、紙の厚さは特に限定されないが、0.2mm~0.5mm(坪量150g/m~500g/m)程度であることが好ましい。このように構成することで、容器の成形が容易となると共に容器のコストを抑制することができる。
【0046】
更に、本発明の実施の形態による容器にあっては、樹脂層を構成する樹脂が特定のものであったが、樹脂の種類は特に限定されない。ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、アクリル(メタクリル)系樹脂、ポリブタジエン等のジエン系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂のような熱可塑性樹脂が挙げられる。又、より環境対応に適した紙容器とする場合には、例えば、ポリ乳酸(PLA)などの生分解性樹脂を用いることもできる。尚、好ましい樹脂種類としては、後述するようにポリエチレンテレフタレート樹脂を用いることが、複合基材同士を溶着したときの密着性が優れ、容器の強度が向上するため好ましい。
【0047】
更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いる場合、ポリエチレンテレフタレート樹脂が共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であって、該共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、イソフタル酸との共重合により得られた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であり、該共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂中におけるイソフタル酸の共重合割合は、1モル%以上10モル%未満であり、融点が235℃以上250℃以下であることが好ましい。このように構成することで、基材層と樹脂層との密着性が高く、且つ、耐熱性が高い容器となるため、容器の成形不良を防止できると共に、内容物が高温となる場合や焼成工程を経る場合の使用にも好適となる。
【0048】
更に、本発明におけるポリエチレンテレフタレート樹脂は、バイオベース炭素含有率が5%以上の、生物由来(バイオマス資源由来)のバイオマスポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレート樹脂は、エチレングリコール及びテレフタル酸を主成分とし、これらを重縮合して得られる樹脂であるが、その大半は化石資源に由来するものである。これをサトウキビ等の生物由来原料から得られたバイオマスポリエチレンテレフタレート樹脂とすることで、化石資源由来の使用量を削減でき、カーボンニュートラル性が向上するため、持続可能性が向上し環境保全に役立つ。
【0049】
本発明において、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂中の生物由来原料の占める割合を示す指標であるバイオベース炭素含有率は、5%以上であることが好ましく、15%以上であることが更に好ましい。バイオベース炭素含有率が高いほど、化石資源由来原料の割合が少なくなるため環境保全に役立つ容器となる。他方でバイオベース炭素含有率の割合が高くなるとコストも増加するため、適正な範囲内であることがより好ましい。尚、バイオベース炭素含有率は、ISO-16620-2(ASTM-D6866標準規格と同等)に準拠した放射性炭素(C14)測定法によって得られたC14含有量の値で示すことができる。即ち、化石資源中にはC14がほとんど含まれず、一方で生物資源中にはC14が一定割合(105.5pMC)で含まれるため、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂中のC14の含有量をPC14とすると、下記式でバイオベース炭素含有率を算出することができる。
【0050】
バイオベース炭素含有率(%)=PC14/105.5×100
更に、本発明の実施の形態による容器にあっては、樹脂層の厚さは特に限定されないが、例えば厚さ10μm~50μmのものが挙げられる。特に20μm~30μmの範囲内であることが、溶着の安定性及び容器の耐水性や耐油性確保の観点から好ましい。
【0051】
更に、本発明の実施の形態による容器にあっては、基材層への樹脂層の積層方法は特に限定されず、押出ラミネート、ドライラミネート、ウェットラミネート、樹脂溶液のコーティング等が例示できる。尚、本発明では押出ラミネートを用いることが、樹脂層形成と所望の表面粗さを備えた樹脂層表面の形成を一度に行うことができるので好ましい。樹脂の積層により、成形後の容器に耐熱性、耐水性、耐気液透過性等の特性を付与することができる。又、押出ラミネートの際に紙へ事前にアンカーコート層を形成しても良い。更に、複合基材の表面に印刷が施されていても良い。更に、基材層の紙にコロナ処理が施されていても良い。
【0052】
更に、本発明の実施の形態による容器にあっては、複合基材の一方面及び他方面を溶着したときの密着性が4.0N/cm以上20.0N/cm以下であることが好ましい。このように構成することで、食品収納容器としての通常の使用条件下において樹脂層界面での剥離を防止するため、容器の信頼性が向上する。又、上記上限値以下であることで、容器として使用した後のゴミの減容化のために容器を分解や解体することも容易となる。又、上記の密着性が5.0N/cm以上20.0N/cm以下であることがより好ましく、8.0N/cm以上20.0N/cm以下であることがより更に好ましい。このように構成することで、樹脂層界面での剥離をより防止するため、容器の信頼性が更に向上する。
【0053】
更に、本発明の実施の形態による容器にあっては、種々の用途に用いることができ、その用途は限定されるものではないが、例えば食品の収納用途に用いることができる。又、特に収納容積を増加させた深型形状の容器として好適である。
【0054】
更に、本発明の実施の形態による容器にあっては、特定の製造方法により製造されたものであったが、他の方法で製造しても良い。
【0055】
更に、本発明の実施の形態による容器にあっては、複合基材の一方面及び他方面が高周波溶着により溶着されていたが、超音波溶着等の他の溶着方法であっても良い。
【0056】
更に、本発明の実施の形態による容器にあっては、フランジの裏面において溶着されていたが、他の箇所を含めた広範囲や、フランジの裏面以外の箇所で溶着されていても良い。
【0057】
更に、本発明の実施の形態による容器にあっては、フランジを備えていたが、フランジを備えていなくとも良い。
【実施例
【0058】
以下、実施例に基づいて本発明について具体的に説明する。尚、本発明の実施の形態は実施例に限定されるものではない。
【0059】
(試験体の作製)
まず、坪量260g/mの紙基材を準備し、その両面に押出ラミネートにてポリエチレンテレフタレート樹脂による樹脂層を形成することで複合基材を調整した。尚、樹脂層は両面共に25μmの厚さであった。そして、樹脂の押出ラミネート時に使用する冷却ロールの表面の性状(表面の粗さ)を変えることで、後述する表1に示す、実施例1から実施例10の表面粗さRaを有する樹脂層を形成した複合基材をそれぞれ調整した。即ち、実施例1から実施例3は樹脂層を内面側グロス調、外面側マット調としたものであり、実施例4から実施例6は樹脂層を内面側セミマット調、外面側セミマット調としたものであり、実施例7から実施例9は樹脂層を内面側マット調、外面側マット調としたものであり、実施例10は樹脂層を内面側グロス調、外面側グロス調としたものである。
【0060】
これらの試験体(実施例1から実施例10)の複合基材を、上述した図3に示す形状のブランクに切断すると共に、ブランクを折り曲げて容器形状に保持した状態で加圧プレスしながら、容器コーナー部の複合基材同士が重なる箇所を高周波溶着に供することで、上述した図1に示す形状の容器を得た。
【0061】
【表1】
尚、各樹脂層における表面粗さRaの値の単位はμmであり、両面が同一種類の場合はその算術平均値を記載している。
【0062】
(スタッキング性試験)
実施例1、実施例4及び実施例7の容器を各50個準備し、それぞれ容器開口が下向きになるようにして50個積み重ねた状態でスタッキング状態を観察した。
【0063】
結果は図7に示す通りである。図7はスタッキング性試験の結果を示す図である。
【0064】
同図を参照して、スタッキング高さは、実施例7が最も高くなっており、次に実施例4が低く、最も低いのが実施例1となった。
【0065】
(ブロッキング試験)
実施例1、実施例4、実施例7及び実施例10の容器を各50個準備し、それぞれ紙容器開口が下向きになるようにして50個積み重ねた状態で24時間放置した。その後、そのスタッキング状態を維持したまま、容器開口が上向きになるようひっくり返し、最上位の容器のフランジ部を片手でつまんで上方に向けて上げたときのブロッキング状態を調べた。このとき、下に位置する容器が引っ付くことなく最上位の容器のみが持ち上がったものを○(好適)と評価し、下に位置する容器が引っ付いたままで、最上位の容器とその下の容器が引っ付いた状態で持ち上がったものを×(不適)と評価した。
【0066】
下記表2にて、スタッキング性試験及びブロッキング試験の結果を示す。
【0067】
【表2】
表2を参照して、実施例1が最もスタッキング性に優れ、次に実施例4がスタッキング性に優れることを確認した。又、実施例1及び実施例4はブロッキングも抑制できることを確認した。
【0068】
(密着性試験)
上記の複合基材において、樹脂層を構成する樹脂をポリプロピレン(PP)としたもの(実施例11)、ポリエチレンテレフタレート(PET)としたもの(上述した実施例1)、高密度ポリエチレン(HDPE)としたもの(比較例1)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)としたもの(比較例2)を準備し、上記同様の方法で各5個の容器を作製した。
【0069】
溶着については、容器の側壁部のコーナー部のフランジの裏面において、40MHzのトランジスタ式高周波発振器にて出力800W、時間1.5秒で高周波溶着を行った。
【0070】
試験体の各容器から、上述した図6において“B”部分として示したように、フランジ裏面における溶着されている箇所(接合用舌片及びフランジの一部)及びこれと連続した側壁部における溶着されていない箇所を試験片として切り出し、引張試験機(島津製作所製、品名:オートグラフ、型番:AGS-X)を用いて溶着されていない箇所の端部2箇所を持たせ、180°剥離、引張速度100mm/minで剥離試験を行うことで、複合基材の一方面及び他方面の密着性を試験した。
【0071】
結果を下記の表3に示す。
【0072】
【表3】
表3を参照して、実施例11(PP)の密着性は4.0N/cm以上あり、好適な密着性が得られた。又、実施例1(PET)の密着性は最も高く、より安定した結果が得られた。比較例1及び比較例2の樹脂では、溶着面で界面剥離し、溶着による一体化が見られない結果となった。したがって、本発明の容器では、樹脂層を構成する樹脂としてPETが最も好適であることを確認した。
【符号の説明】
【0073】
1…容器
2…底部
3…側壁部
4…立ち上がり端部
5…フランジ
7…複合基材
10…基材層
11…樹脂層
13…樹脂層表面
14…樹脂層表面
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7