IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】管継手および配管システム
(51)【国際特許分類】
   F16L 47/06 20060101AFI20240815BHJP
   F16L 13/10 20060101ALI20240815BHJP
   F16L 47/26 20060101ALI20240815BHJP
   E03C 1/00 20060101ALN20240815BHJP
【FI】
F16L47/06
F16L13/10
F16L47/26
E03C1/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019175040
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2020165528
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2019063863
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 生吹樹
(72)【発明者】
【氏名】志村 吏士
(72)【発明者】
【氏名】松村 豊正
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-125292(JP,U)
【文献】中国実用新案第205606049(CN,U)
【文献】特開2005-337617(JP,A)
【文献】特開2011-127647(JP,A)
【文献】特開2018-169005(JP,A)
【文献】特開平10-103569(JP,A)
【文献】特開2011-002012(JP,A)
【文献】特開2002-071081(JP,A)
【文献】特開昭48-097113(JP,A)
【文献】特開平11-118078(JP,A)
【文献】特開平09-170693(JP,A)
【文献】特開2006-275159(JP,A)
【文献】特開2009-180336(JP,A)
【文献】特開平10-227386(JP,A)
【文献】特開2020-165449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 47/06
F16L 13/10
F16L 47/26
E03C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受口を端部に備える継手本体と、
前記受口の内部に配置される筒状の受口部材とを有する管継手であって、
前記受口の内面に形成される凹凸形状部と、前記受口部材の外面に形成される凹凸形状部とが嵌合することで、前記受口部材は前記受口に固定されており、
前記受口部材は、硬質塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、PC、PET、またはウレタン樹脂から形成され、
前記継手本体は、フッ素系樹脂、PPSU、PPSまたはオレフィン系樹脂から形成され、 前記受口部材の内部に配管を配置したときに、前記管継手の内部に露出する前記受口部材の表面が、前記配管で覆われた状態になり、
前記受口は、前記内面として、前記受口の奥側に形成されて、前記管継手の周方向に延びる環状の段差面と、当該段差面の外周端から前記管継手の軸方向に延びる内周面とを有するものであって、前記継手本体と一体に成形される環状の被覆部材が、前記段差面の内周端から前記管継手の軸方向に突出しており、
前記受口部材は、筒状体と、当該筒状体の一端から前記筒状体の径内側に突出する環状壁とを備えるものであって、前記外面として、前記筒状体の外周面と、前記環状壁の外側面とを有しており、
前記受口の段差面に形成される凹凸形状部と、前記環状壁の外側面に形成される凹凸形状部とが嵌合し、前記受口の内周面に形成される凹凸形状部と、前記筒状体の外周面に形成される凹凸形状部とが嵌合することで、前記受口部材が前記受口に固定されるとともに、前記環状壁の内側面によって少なくとも一部の範囲が構成される前記管継手の段差面が前記被覆部材の外側に形成されて、当該被覆部材が前記管継手の段差面よりも前記管継手の軸方向に突出した状態になり、
前記配管の先端面が前記管継手の段差面に突き当たるように前記受口部材の内部に前記配管を配置したときに、前記配管の先端面と前記管継手の段差面との間が前記被覆部材によって覆われた状態になる管継手。
【請求項2】
前記継手本体が、樹脂の発泡層を有する場合を除く請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記被覆部材は、フッ素系樹脂、PPSU、PPSまたはオレフィン系樹脂から形成されている、請求項1又は2に記載の管接手。
【請求項4】
前記被覆部材は、突出方向に向けて先細るテーパー形状を呈する請求項1乃至3のいずれかに記載の管継手。
【請求項5】
前記継手本体は、前記管継手の周方向に延びる環状の弾性部材を有し、
前記弾性部材は、前記被覆部材の外周面に配置されている請求項乃至のいずれかに記載の管継手。
【請求項6】
前記管継手の段差面は、前記環状壁の内側面と、前記環状壁の内側に位置する前記受口の段差面の範囲とによって構成されるものであり、
前記継手本体は、前記管継手の周方向に延びる環状の弾性部材を有し、
前記弾性部材は、前記環状壁の内側に位置する前記受口の段差面の範囲に配置されている請求項乃至のいずれかに記載の管継手。
【請求項7】
受口を端部に備える継手本体と、前記受口の内部に配置される筒状の受口部材とを有する管継手と、
前記受口部材の内部に配置される配管とを備え、
前記受口の内面に形成される凹凸形状部と、前記受口部材の外面に形成される凹凸形状部とが嵌合することで、前記受口部材は前記受口に固定されており、
前記受口部材は、硬質塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、PC、PET、またはウレタン樹脂から形成され、
前記継手本体は、フッ素系樹脂、PPSU、PPSまたはオレフィン系樹脂から形成され、前記受口部材の内部に配管を配置したときに、前記管継手の内部に露出する前記受口部材の表面が、前記配管で覆われた状態になり、
前記配管は、少なくとも、塩化ビニル系樹脂からなる外層と、 フッ素系樹脂、PPSU、PPS、またはオレフィン系樹脂からなる内層とを備え、
前記配管の先端面が前記管継手の段差面に突き当たるように前記配管が前記受口部材の内部に配置されることで、前記管継手の内部に露出する前記受口部材の表面が、前記配管で覆われ、且つ、前記配管の外層の先端面が前記段差面で覆われており、前記配管の外層と前記受口部材とが、接着接合される、配管システム。
【請求項8】
受口を端部に備える継手本体と、前記受口の内部に配置される筒状の受口部材とを有する管継手と、
前記受口部材の内部に配置される配管とを備え、
前記受口の内面に形成される凹凸形状部と、前記受口部材の外面に形成される凹凸形状部とが嵌合することで、前記受口部材は前記受口に固定されており、
前記受口部材は、硬質塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、PC、PET、またはウレタン樹脂から形成され、
前記継手本体は、フッ素系樹脂、PPSU、PPSまたはオレフィン系樹脂から形成され、前記受口部材の内部に配管を配置したときに、前記管継手の内部に露出する前記受口部材の表面が、前記配管で覆われた状態になり、
前記配管は、配管本体と、被覆部材とを備え、
前記配管本体は、少なくとも、塩化ビニル系樹脂からなる外層と、 フッ素系樹脂、PPSU、PPS、またはオレフィン系樹脂からなる内層とを備え、
前記被覆部材は、フッ素系樹脂、PPSU、PPS、またはオレフィン系樹脂から形成されるものであって、筒状体と、当該筒状体から外側に突出する鍔部とを備え、 前記管継手の内部に露出する前記受口部材の表面が前記配管本体及び前記鍔部で覆われ、且つ、前記配管の先端面が前記鍔部で覆われるように、前記配管本体及び前記被覆部材が前記受口部材の内部に配置されており、前記配管本体の外層と前記受口部材とが接着接合される、配管システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管システムの内面の耐薬性や平滑性を高めることが可能な管継手、および当該管継手を備える配管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建築物の廃水設備や給水給湯設備などに使用される管継手が開示されている。図23に示すように、特許文献1の管継手100は、管状の継手本体110と、継手本体110の端部に設けられる受口120とを有しており、受口120の内部に配管200の端部が挿入される。継手本体110は、配管の熱伸縮応力を吸収可能なポリプロピレンやポリエチレンから形成される。受口120は、異種の樹脂材料からなる内層120aと外層120bとから構成される。受口120の内層120aは、塩化ビニルから形成される。配管200の端部は、内層120aに接着接続される。受口120の外層120bは、継手本体110と一体とされるものであって、継手本体110と同様、ポリプロピレンやポリエチレンから形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-002012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1では、図23に示すように管継手100と配管200との接続を行って、配管システムを形成した際に、塩化ビニルから形成される受口110の内層120aが、配管システムの内面を構成するものとなる。したがって配管システムの内面の耐薬性や平滑性が低くなる虞がある。
【0005】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであって、その目的は、配管システムを形成するために配管と共に使用される管継手であって、配管システムの内面の耐薬性や平滑性を高めることの可能な管継手、及び当該管継手を備える配管システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0007】
項1.受口を端部に備える継手本体と、
前記受口の内部に配置される筒状の受口部材とを有する管継手であって、
前記受口の内面に形成される凹凸形状部と、前記受口部材の外面に形成される凹凸形状部とが嵌合することで、前記受口部材は前記受口に固定されており、
前記受口部材は、硬質塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、PC、PET、またはウレタン樹脂から形成され、
前記継手本体は、フッ素系樹脂、PPSU、PPSまたはオレフィン系樹脂から形成され、 前記受口部材の内部に配管を配置したときに、前記管継手の内部に露出する前記受口部材の表面が、前記配管で覆われた状態になる、管継手。
【0008】
項2.前記受口は、前記内面として、前記受口の奥側に形成されて、前記管継手の周方向に延びる環状の段差面と、当該段差面の外周端から前記管継手の軸方向に延びる内周面とを有するものであって、前記継手本体と一体に成形される環状の被覆部材が、前記段差面の内周端から前記管継手の軸方向に突出しており、
前記受口部材は、筒状体と、当該筒状体の一端から前記筒状体の径内側に突出する環状壁とを備えるものであって、前記外面として、前記筒状体の外周面と、前記環状壁の外側面とを有しており、
前記受口の段差面に形成される凹凸形状部と、前記環状壁の外側面に形成される凹凸形状部とが嵌合し、前記受口の内周面に形成される凹凸形状部と、前記筒状体の外周面に形成される凹凸形状部とが嵌合することで、前記受口部材が前記受口に固定されるとともに、前記環状壁の内側面によって少なくとも一部の範囲が構成される前記管継手の段差面が前記被覆部材の外側に形成されて、当該被覆部材が前記管継手の段差面よりも前記管継手の軸方向に突出した状態になり、
前記配管の先端面が前記管継手の段差面に突き当たるように前記受口部材の内部に前記配管を配置したときに、前記配管の先端面と前記管継手の段差面との間が前記被覆部材によって覆われた状態になる項1に記載の管継手。
【0009】
項3.前記被覆部材は、フッ素系樹脂、PPSU、PPSまたはオレフィン系樹脂から形成されている、項1に記載の管接手。
【0010】
項4.前記被覆部材は、突出方向に向けて先細るテーパー形状を呈する項2又は3に記載の管継手。
【0011】
項5.前記継手本体は、前記管継手の周方向に延びる環状の弾性部材を有し、
前記弾性部材は、前記被覆部材の外周面に配置されている項2乃至4のいずれかに記載の管継手。
【0012】
項6.前記管継手の段差面は、前記環状壁の内側面と、前記環状壁の内側に位置する前記受口の段差面の範囲とによって構成されるものであり、
前記継手本体は、前記管継手の周方向に延びる環状の弾性部材を有し、
前記弾性部材は、前記環状壁の内側に位置する前記受口の段差面の範囲に配置されている項2乃至4のいずれかに記載の管継手。
【0013】
項7.項1乃至6のいずれかに記載の管継手と、
前記受口部材の内部に配置される配管とを備え、
前記配管は、少なくとも、塩化ビニル系樹脂からなる外層と、 フッ素系樹脂、PPSU、PPS、またはオレフィン系樹脂からなる内層とを備え、
前記配管の先端面が前記管継手の段差面に突き当たるように前記配管が前記受口部材の内部に配置されることで、前記管継手の内部に露出する前記受口部材の表面が、前記配管で覆われ、且つ、前記配管の外層の先端面が前記段差面で覆われており、前記配管の外層と前記受口部材とが、接着接合される、配管システム。
【0014】
項8.項1に記載の管継手と、
前記受口部材の内部に配置される配管とを備え、
前記配管は、配管本体と、被覆部材とを備え、
前記配管本体は、少なくとも、塩化ビニル系樹脂からなる外層と、 フッ素系樹脂、PPSU、PPS、またはオレフィン系樹脂からなる内層とを備え、
前記被覆部材は、フッ素系樹脂、PPSU、PPS、またはオレフィン系樹脂から形成されるものであって、筒状体と、当該筒状体から外側に突出する鍔部とを備え、
前記管継手の内部に露出する前記受口部材の表面が前記配管本体及び前記鍔部で覆われ、且つ、前記配管の先端面が前記鍔部で覆われるように、前記配管本体及び前記被覆部材が前記受口部材の内部に配置されており、前記配管本体の外層と前記受口部材とが接着接合される、配管システム。
【発明の効果】
【0015】
本発明の管継手によれば、耐薬性や平滑性に優れる樹脂からなる継手本体と、耐薬性や平滑性に劣る樹脂からなる受口部材とを備えるところ、受口部材の内部に配管が配置されたときに、管継手の内部に露出する受口部材の表面が、配管で覆われる。これにより耐薬性や平滑性に優れる継手本体の表面のみが、管継手の内部に露出した状態になる。したがって本発明の管継手を用いて配管システムを形成すれば、配管システムの内面の耐薬性や平滑性を高めることができる。
【0016】
本発明の配管システムによれば、その内面が、耐薬性や平滑性に優れる樹脂から構成される。したがって、配管システムは、内面の耐薬性や平滑性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る管継手Tを示す斜視図である。
図2】管継手が備える受口部材を示す斜視図である。
図3】管継手Tに配管Hが接続された状態を示す斜視図である。
図4図3のA-A線に沿って管継手及び配管を切断した状態を示す断面図である。
図5】(a)は図4に示す継手本体2の断面を抽出した図であり、図5(b)は図4に示す受口部材3の断面を抽出した図である。
図6図4に示す管継手の断面を抽出した図である。
図7】(a)は本発明の変形例の管継手Tに配管Hが接続された状態を示す断面図であり、(b)は(a)に示す管継手の断面を抽出した図である。
図8】(a)は本発明の変形例の管継手Tに配管Hが接続された状態を示す断面図であり、(b)は(a)に示す管継手の断面を抽出した図である。
図9】(a)は本発明の変形例の管継手Tに配管Hが接続された状態を示す断面図であり、(b)は(a)に示す管継手の断面を抽出した図である。
図10】本発明の実施形態に係る配管システムを示す概略斜視図である。
図11】配管システムの内部に配管Hの外層Haの端面や受口部材3の端部3aが露出した状態を示す断面図である。
図12】被覆部材を示す斜視図である。
図13図12に示す被覆部材を用いる場合に形成される本発明の変形例の配管システムを示す断面図である。
図14図12に示す被覆部材を用いる場合に形成される本発明の変形例の配管システムを示す断面図である。
図15】被覆部材を示す斜視図である。
図16図15に示す被覆部材を用いる場合に形成される本発明の変形例の配管システムを示す断面図である。
図17図15に示す被覆部材を用いる場合に形成される本発明の変形例の配管システムを示す断面図である。
図18】被覆部材付きの管継手を用いて形成される配管システムの断面図である。
図19】(a)は図18に示す継手本体2の断面を抽出した図であり、(b)は図18に示す受口部材3の断面を抽出した図である。
図20】被覆部材付きの管継手を用いて形成される配管システムの断面図である。
図21】被覆部材付きの管継手を用いて形成される配管システムの断面図である。
図22】被覆部材付きの管継手を用いて形成される配管システムの断面図である。
図23】従来の配管システムを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る管継手Tを示す斜視図である。図2は、管継手Tが備える受口部材3を示す斜視図である。図3は、管継手Tに配管Hが接続された状態を示す斜視図である。図4は、図3のA-A線に沿って管継手T及び配管Hを切断した状態を示す断面図である(なお図3のB-B線に沿って切断する場合や、図3のC-C線に沿って切断する場合も、管継手T及び配管Hは、図4と同様の断面を有する)。
【0019】
本実施形態に係る管継手Tは、樹脂製の配管H(図3図4)を接続可能なものであり、配管Hと共に、建築物の排水設備や給水給湯設備等の配管システムを構成する。
【0020】
管継手Tは、継手本体2と、受口部材3とを有している。
【0021】
継手本体2は、主管4と、主管4に連なる受口5とを備えており、受口5によって継手本体2の端部が構成される。
【0022】
図2及び図4に示すように、受口部材3は、筒状体30と、環状壁31とを有する。環状壁31は、筒状体30の一端から筒状体30の径内側に突出するものであり、筒状体30の周方向に延びる。図1図3図4に示すように、受口部材3は、受口5の内部に配置されるものであって、図4に示すように、受口部材3の環状壁31は、受口5の奥側に配置される。
【0023】
図3及び図4に示すように、受口部材3の内部には配管Hの端部が挿入される。この挿入によって配管Hが管継手Tに接続される。主管4の内径は、配管Hの内径とほぼ等しくされる(図4)。受口5の外径は、主管4の外径よりも大きくされる。受口5の内径は、主管4の内径よりも大きく、受口部材3の外径(筒状体30の外径)とほぼ等しくされる。筒状体30の内径は、配管Hの外径とほぼ等しくされる。
【0024】
なお図示例では、管継手Tの継手本体2が、3つの端部に受口5が設けられるLT型とされているが(主管4が直線部分4a及び分岐部分4bから構成されて、直線部分4aの両端や分岐部分4bの先端に受口5が設けられているが)、継手本体2の形状は、上記のLT型に限定されない。例えば、継手本体2は、JIS K 6739等に記載のL字型或いは直線型や、JISK6743等に記載の形状を呈するものであってもよい。或いは、継手本体2は、金属製である一部の受口に鋼管の接続が可能なバルブソケットとされてもよい(例えば、金属製の受口が1箇所設けられるバルブソケットとされてもよい)。或いは、継手本体2は、ゴム輪によって配管Hとの接続が可能な差込ソケット或いはやり取りソケット等とされてもよい。
【0025】
本実施形態では、止水性の確保や強度の保持等を目的として、図4に示すように、「受口5の内面」に形成された凹凸形状部10と、「受口部材3の外面」に形成された凹凸形状部20とを嵌合させることで、受口部材3が受口5に固定される。
【0026】
図5(a)は図4に示す継手本体2の断面を抽出した図であり、図5(b)は図4に示す受口部材3の断面を抽出した図である。
【0027】
上記の「受口5の内面」は、図5(a)に示す「受口5の段差面50及び内周面51」に相当する。受口5の段差面50は、受口5の奥側に形成されるものであって、管継手Tの周方向(図1)に延びる環状を呈している(受口5の段差面50は、受口5と主管4との内径差によって形成される環状の段差面である)。管継手Tの周方向とは、管継手Tを構成する管状体(主管4や受口5)の周に沿った方向を意味する。図示例のように管継手Tの継手本体2がLT型とされる場合には、主管4の直線部分4aの周方向、直線部分4aの端部に設けられる受口5の周方向、主管4の分岐部分4bの周方向、及び分岐部分4bの端部に設けられる受口5の周方向が、それぞれ管継手Tの周方向に該当する。受口5の内周面51は、段差面50の外周端から管継手Tの軸方向に延びる。管継手Tの軸方向とは、管継手Tの中心軸線に沿う方向を意味する。図示例のように管継手Tの継手本体2がLT型とされる場合には、主管4の直線部分4aの中心軸線に沿う方向、直線部分4aの端部に設けられる受口5の中心軸線に沿う方向、主管4の分岐部分4bの中心軸線に沿う方向、及び分岐部分4bの端部に設けられる受口5の中心軸線に沿う方向が、それぞれ管継手Tの軸方向に該当する。
【0028】
受口5の段差面50には凹凸形状部10aが形成され、受口5の内周面51には凹凸形状部10bが形成される。上記の「受口部材3の外面」は、図2図5(b)に示す「環状壁31の外側面32及び筒状体30の外周面33」に相当する。環状壁31の外側面32には凹凸形状部20aが形成され、筒状体30の外周面33には凹凸形状部20bが形成される。
【0029】
受口5の凹凸形状部10aと、受口部材3の凹凸形状部20aとは、管継手Tの径方向(図1図4)に凹部と凸部とが交互に並んだものである。これら凹凸形状部10a,20aが嵌合することで、受口部材3は径方向に固定される。なお管継手Tの径方向とは、管継手Tを構成する管状体(主管4や受口5)の径方向を意味する。図示例のように管継手Tの継手本体2がLT型とされる場合には、主管4の直線部分4aの径方向、直線部分4aの端部に設けられる受口5の径方向、主管4の分岐部分4bの径方向、及び分岐部分4bの端部に設けられる受口5の径方向が、それぞれ管継手Tの径方向に該当する。受口5の凹凸形状部10bと、受口部材3の凹凸形状部20bとは、管継手Tの軸方向(図1図4)に凹部と凸部とが交互に並んだものである。これら凹凸形状部10b,20bが嵌合することで、受口部材3は軸方向に固定される。
【0030】
上述した凹凸形状部10,20の嵌合によれば、受口5と受口部材3との間に一体的強度を保持できるとともに、受口5と受口部材3との間の止水性を確保できる。また凹凸形状部10a,20aが嵌合することで、止水性を向上させることができるとともに、後述の射出成型を行う際に受口部材3の位置あわせが容易となる。
【0031】
なお、凹凸形状部10,20における凹部及び凸部の寸法や数等は特に限定されないが、凹凸形状部10と凹凸形状部20とは、少なくとも熱伸縮で受口部材3の抜けが生じない強度をもって物理的に嵌合する必要がある。
【0032】
継手本体2は、フッ素系樹脂、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)またはオレフィン系樹脂から形成される。オレフィン樹脂として、ポリプロピレンやポリエチレンが挙げられる。ポリプロピレン、ポリエチレン及びPPSU、PPSによれば、一般排水用途及び厨房排水において、十分な耐薬性を付与することができる。プラント用途等や耐薬性を得る場合は、フッ素系樹脂としてPVDFやPTFEが使用されてもよい。
【0033】
継手本体2の平滑性を向上させることを目的として、オレフィン系樹脂の一種である高分子量高密度ポリエチレンを用いて、継手本体2が形成されてもよい。高分子量高密度ポリエチレンによれば、塩化ビニルを使用する場合に比して継手本体2の内面の粗度をよりも下げることができるともに、排水の流下性を向上させ、内面の細菌の繁殖、油分の固化による滞留を抑制できる。精密機器からの排水、医療機器からの排水において効果が期待される。
【0034】
受口部材3は、硬質塩化ビニル系樹脂から形成される。当該硬質塩化ビニル系樹脂として、塩化ビニル単量体の単独重合体の他、例えば、塩化ビニル単量体と塩化ビニル単量体以外の重合性単量体との共重合体、塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニル単量体をグラフトさせたグラフト共重合体等を使用できる。
【0035】
なお耐衝撃性を向上させるために、上記の硬質塩化ビニル系樹脂に、超微粒子のゴム成分を含有させてもよい。当該超微粒子のゴム成分は、塩化ビニル系樹脂に物理的または化学的に結合していてよい。
【0036】
また、上記の硬質塩化ビニル系樹脂は、塩素化塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。また必要に応じて、ポリ塩化ビニル樹脂、アルキル錫メルカプト化合物やアルキル錫マレート等の熱安定剤、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)、アジピン酸-2-エチルヘキシル(DOA)等の可塑剤;ポリエチレン系ワックス、エステル系ワックス、ステアリン酸、モンタン酸系ワックス、カルシウムステアレート等の滑剤;アクリル系、塩素化ポリエチレン系などの耐衝撃性強化剤;顔料;帯電防止剤;難燃剤;炭酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ等の無機充填剤、メタクリル酸エステル系樹脂等の加工助剤などが硬質塩化ビニル系樹脂に添加されてもよい。
【0037】
また上記の硬質塩化ビニル系樹脂の他に、ABS樹脂(ABS:Acrylonitrile Butadiene Styrene)、アクリル樹脂、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、またはウレタン樹脂等の接着可能な樹脂を用いて、受口部材3が形成されてもよい。
【0038】
上述した樹脂を用いて受口部材3を形成すれば、配管Hを受口部材3に接着でき、且つ、受口部材3の機械的強度を高めることができる。その一方で、上述した受口部材3に使用される樹脂は、耐薬性や平滑性に乏しい。そこで本実施形態の管継手Tでは、受口部材3の内部に配管Hを配置したときに、「管継手Tの内部に露出する受口部材3の表面34」が配管Hで覆われた状態になる。以下、具体的に説明する。
【0039】
本実施形態の管継手Tでは、図4に示すように、凹凸形状部10,20が嵌合するように受口5の内部に受口部材3を配置することで、図6に示すように、筒状体30の内周面34Aと、環状壁31の内側面34Bとが、上記の「管継手Tの内部に露出する受口部材3の表面34」を構成するものとなる。さらに段差面50(図5)の内周端に形成された凸部52(図4図6)によって、環状壁31の内周面35(図2図6)が覆われた状態になる。そして図4に示すように、配管Hの先端が管継手Tの段差面(凸部52や環状壁31によって構成される面)に突き当たるまで、受口部材3の内部に配管Hが挿入されることで、筒状体30の内周面34Aと、環状壁31の内側面34Bとが、配管Hによって覆われる。その結果、耐薬性や平滑性に優れる樹脂(フッ素系樹脂、PPSU、PPSまたはオレフィン系樹脂)からなる継手本体2の表面のみが、管継手Tの内部に露出した状態になる。
【0040】
上述した管継手Tを構成する継手本体2と受口部材3とは、それぞれ射出成形によって成形できる。この場合、継手本体2及び受口部材3を備える管継手Tを、インサート成形によって成形できる。インサート成形の場合には、予め射出成形された受口部材3を金型にセットしてから、金型に伸縮性樹脂材料を注入して継手本体2を射出成形する。
【0041】
また、管継手Tは、二色成形(多色成形)によって成形することができる。二色成形(多色成形)を行う場合には、一種類の金型に対し、別々に樹脂を射出可能な複数の射出ノズルを用いて、継手本体2と受口部材3とを同時に射出成形する。
【0042】
或いは、継手本体2と受口部材3とを別々に射出成形しておき、後工程で両者を嵌合または強制嵌合するなどにより組合せて固定し、管継手Tを構成することなども可能である。
【0043】
なお、管継手Tを、上記したインサート成形や二色成形(多色成形)で製造する場合には、継手本体2の凹凸形状部10と、受口部材3の凹凸形状部20とが、熱接着されることになる。また、管継手Tを上記した嵌合または強制嵌合で製造する場合には、凹凸形状部10,20を接着剤で接着するようにしても良い。なお、上記したインサート成形の場合には、受口部材3に接着剤を塗布しておくことも可能である。
【0044】
本実施形態の管継手Tによれば、耐薬性や平滑性に優れる樹脂からなる継手本体2と、耐薬性や平滑性に劣る樹脂からなる受口部材3とを備えるところ、受口部材3の内部に配管Hが配置されることで、「管継手Tの内部に露出する受口部材3の表面」が、配管Hで覆われる。これにより耐薬性や平滑性に優れる樹脂(フッ素系樹脂、PPSU、PPSまたはオレフィン系樹脂)からなる継手本体2の表面のみが、管継手Tの内部に露出した状態になる。したがって本実施形態の管継手Tを用いて配管システムを形成すれば、配管システムの内面の耐薬性や平滑性を高めることができる。
【0045】
なお上記の「受口部材3の表面」を配管Hで覆うことの可能な管継手Tの構造は、図1図6に示した構造に限定されず、管継手Tの構造は図7図9に示すように変更され得る。以下、図7図9に示す管継手Tの変形例について説明する。
【0046】
図7に示す管継手Tでは、図2図4図6に示した環状壁31が受口部材3に設けられておらず、受口部材3は筒状体30のみから構成されている(図7)。図7に示す管継手Tでは、受口5の内周面に形成された凹凸形状部10bと筒状体30の外周面に形成された凹凸形状部20bとが嵌合するように、受口5の内部に受口部材3が配置されることで、筒状体30の内周面34Cが、上記の「管継手Tの内部に露出する受口部材3の表面34」を構成するものとなる。そして図7(a)に示すように、配管Hの先端が継手本体2の段差面50に突き当たるまで、受口部材3の内部に配管Hが挿入されることで、筒状体30の内周面34Cが配管Hによって覆われる。これにより耐薬性や平滑性に優れる樹脂(フッ素系樹脂、PPSU、PPSまたはオレフィン系樹脂)からなる継手本体2の表面のみが、管継手Tの内部に露出した状態になる。
【0047】
図8図9に示す管継手Tでは、環状壁31と筒状体30の一端部36とが継手本体2の内部に埋設されており、一端部36を除く筒状体30の範囲の内周面34Dが上記の「管継手Tの内部に露出する受口部材3の表面34」を構成する。そして配管Hの先端が継手本体2の段差面50に突き当たるまで、受口部材3の内部に配管Hが挿入されることで、筒状体30の内周面34Dが配管Hによって覆われる。
【0048】
なお図8に示す管継手Tでは、筒状体30の一端部36が、段差面50の位置Xから、継手本体2の内部に埋設される。これにより図8に示す管継手Tは、段差面50の位置Xで、耐薬性や平滑性に優れる継手本体2の樹脂(フッ素系樹脂、PPSU、PPSまたはオレフィン系樹脂)が、配管Hの先端に接するものとなっている。一方、図9に示す管継手Tでは、段差面50の位置Xよりも受口5の開口側(図9の右側)の位置Yから、筒状体30の一端部36が、継手本体2の内部に埋設されるようになっている(つまり位置Xと位置Yとの間では、筒状体30の内側に継手本体2の樹脂が存在している)。これにより図9に示す管継手Tは、段差面50よりも受口5の開口側の位置Yから、段差面50の位置Xまで、耐薬性や平滑性に優れる継手本体2の樹脂(フッ素系樹脂、PPSU、PPSまたはオレフィン系樹脂)が、配管Hの先端部に接するものとなっている。
【0049】
次に本発明の実施形態に係る配管システムについて説明する。図10は、本発明の実施形態に係る配管システムSの一例を示す概略斜視図である。
【0050】
配管システムSは、上述した管継手Tと、 当該管継手Tが有する受口部材3の内部に挿入される配管Hとを備える。
【0051】
具体的には、配管システムSは、地上に配置される機器M(オートクレーブ等)で発生した蒸気排水を、地中に配置される排水溝Dに流す流路を構成するものであり、上記の管継手Tとして管継手T1,T2,T3,T4を備え、上記の配管Hとして配管H1,H2,H3,H4を備えている。
【0052】
管継手T1は、バルブソケットである継手本体2を備えるものである。管継手T1の一端部T1aは、金属製の受口とされており、当該一端部T1a(金属製の受口)には、機器Mから延びる鋼管Kが接続される。管継手Tの他端部T1bは、図4図7図9のいずれかに示すものと同様の構造を有しており、他端部T1bに設けられる受口部材3の内部に、配管H1の一端が挿入される。
【0053】
管継手T2は、継手本体2がL型を呈するものである。管継手Tの一端部T2a及び他端部T2bは、図4図7図9のいずれかに示すものと同様の構造を有している。一端部T2aに設けられる受口部材3の内部には、配管H1の他端が挿入される。他端部T2bに設けられる受口部材3の内部には、配管H2の一端が挿入される。
【0054】
管継手T3は、継手本体2が直線型を呈するものである。管継手T3の一端部T3a及び他端部T3bは、図4図7図9のいずれかに示すものと同様の構造を有している。一端部T3aに設けられる受口部材3の内部には、配管H2の他端が挿入される。他端部T3bに設けられる受口部材3の内部には、配管H3の一端が挿入される。
【0055】
管継手T4は、継手本体2がL型を呈するものである。管継手T4の一端部T4a及び他端部T4bは、図4図7図9のいずれかに示すものと同様の構造を有している。一端部T4aに設けられる受口部材3の内部には、配管H3の他端が挿入される。他端部T4bに設けられる受口部材3の内部には、配管H4の一端が挿入される。配管H4の他端は、排水溝Dに接続される。
【0056】
配管H1,H2,H3,H4は、図3図4図7図9に示すものと同様、外層Haと内層Hbとを備えており、外層Haが受口部材3に接着接合される。
【0057】
(配管Hの外層Ha)
配管Hの外層Haは、塩素化塩化ビニルから形成される。塩素化塩化ビニル樹脂は、単独で用いられてもよいし、必要に応じて、ポリ塩化ビニル樹脂、アルキル錫メルカプト化合物やアルキル錫マレート等の熱安定剤、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)、アジピン酸-2-エチルヘキシル(DOA)等の可塑剤;ポリエチレン系ワックス、エステル系ワックス、ステアリン酸、モンタン酸系ワックス、カルシウムステアレート等の滑剤;アクリル系、塩素化ポリエチレン系などの耐衝撃性強化剤;顔料;帯電防止剤;難燃剤;炭酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ等の無機充填剤、メタクリル酸エステル系樹脂等の加工助剤などが塩素化塩化ビニル樹脂に添加されてもよい。また塩素含有量が60~71重量%であって、塩素化塩化ビニルの平均重合度が600~1400である塩素化塩化ビニル樹脂を使用して、外層Haを形成することが好ましい。塩素含有量が60重量%未満である場合には、十分な耐熱性が得られない。塩素含有量が71重量%を超える場合には、成形が困難になるおそれがある。なお、塩素含有量は、JIS K7229に準拠して酸素フラスコ燃焼法による中和適定により決定される。外層Haの厚みは特に限定されないが、成型性等を考慮すると、外層Haの厚みを少なくとも1mm以上とすることが望ましい。管厚み方向の層比率を塩化ビニル優位にすることで、汎用されている塩化ビニル配管と同等の扱い易さ・施工性を得ることができる。 なお本発明は、配管Hの外層Haを、塩素化塩化ビニル以外の樹脂から形成することを除外するものではない。例えば、外層Haは、塩化ビニル系樹脂、ナイロン系樹脂、エポキシ系樹脂、ABS樹脂等から形成することもできる。
【0058】
以上に示す樹脂を用いて配管Hの外層Haを形成すれば、外層Haを受口部材3に接着することが可能である。
【0059】
(配管Hの内層Hb)
配管Hの内層Hbは、耐薬性能を有する樹脂であれば特に限定されないが、汎用樹脂であるPP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)などのオレフィン系樹脂を用いて内層Hbを形成することが好ましい。さらに耐薬性能を有するフッ素系樹脂やPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂を用いて配管Hの内層Hbが形成されてもよい。
【0060】
内層Hbの平滑性を向上させることを目的として、オレフィン系樹脂の一種である高分子量高密度ポリエチレンを用いて、内層Hbが形成されてもよい。高分子量高密度ポリエチレンによれば、塩化ビニルを使用する場合に比して内層Hbの内面の粗度をよりも下げることができるともに、排水の流下性を向上させ、内面の細菌の繁殖、油分の固化による滞留を抑制できる。精密機器からの排水、医療機器からの排水において効果が期待される。なお内層Hbの厚みは特に限定されない。
【0061】
本実施形態の配管システムSでは、図4図7図9に示すように、配管Hの先端面が管継手Tの段差面に突き当たるように配管Hが受口部材3の内部に配置されたときに、管継手Tの内部に露出する受口部材3の表面が配管Hで覆われ、且つ、配管Hの外層Haの先端面が管継手Tの段差面で覆われる。
【0062】
上記の「管継手Tの段差面」は、受口5の奥側(主管4側)に形成されて、管継手Tの周方向(図1)に延びる環状の段差面である。図4の例では、上記の「管継手Tの段差面」は、受口部材3の環状壁31の内側面34Bと継手本体2の凸部52の先端面とから構成される面である。図7図9の例では、上記の「管継手Tの段差面」は、継手本体2の段差面50によって構成される。そして配管Hの外層Haと受口部材3とが接着接合される。
【0063】
上述した本実施形態の配管システムSによれば、耐薬性や平滑性に優れる樹脂からなる継手本体2や配管Hの内層Hbによって、配管システムの内面が構成される。したがって配管システムSは、内面の耐薬性や平滑性が高いものとなる。
【0064】
なお配管Hの外層Haと内層Hbの間には接着層が設けられてもよい。このようにすれば、内層Hbと外層Haとが固定されるため、より施工性が向上する。接着層の材質は、特に限定されないが、施工時の切断及び熱伸縮により発生する外力に対して、十分な耐久性を有するものが好ましい。
【0065】
(配管システムの変形例)
ところで配管Hの挿入不足・斜め切れが生じた場合は、図11に示すように、配管システムの内部に配管Hの外層Haの端面や受口部材3の端部3aが露出して、当該露出部分の樹脂(硬質塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、PC、PET、またはウレタン樹脂)に、液体Wが接することになる。したがって劣化進行が促進され、漏水が生じ得る。そこで本発明では、上記の配管Hの挿入不足・斜め切れを補うために、図12に示す被覆部材Cが使用され得る。
【0066】
図12に示す被覆部材Cは、フッ素系樹脂、PPSU、PPS、またはオレフィン系樹脂から形成されるものであって、筒状体Caと、当該筒状体Caから外側に突出する鍔部Cbとを備える。鍔部Cbは、筒状体Caの周回りに延びるものであって、筒状体Caの幅中央に形成される。
【0067】
図13図14は、被覆部材C(図12)を用いる場合に形成される配管システムの断面を示す。
【0068】
図13図14に示す配管システムは、上述した管継手Tと、受口部材3の内部に挿入される配管Iとを備える。配管Iは、配管本体Jと、上記の被覆部材C(図12)とを備える。
【0069】
配管本体Jは、図4図7図9に示す配管Hと同様の構造を有するものであり、少なくとも、塩化ビニル系樹脂からなる外層Jaと、 フッ素系樹脂、PPSU、PPS、またはオレフィン系樹脂からなる内層Jbとを備える。
【0070】
図13に示す配管システムでは、管継手Tの内部に露出する受口部材3の表面34が配管本体Jで覆われ、配管本体Jの先端面Jcが鍔部Cbで覆われるように、被覆部材C及び配管本体Jが受口部材3の内部に配置される。そして配管本体Jの外層Jaと受口部材3とが接着接合される。
【0071】
図14に示す配管システムでは、管継手Tの内部に露出する受口部材3の表面34のうち、受口部材3の端部の表面34Eが鍔部Cbで覆われ、受口部材3の残りの部分の表面34Fが配管本体Jで覆われ、さらに配管本体Jの先端面Jcが鍔部Cbで覆われるように、被覆部材C及び配管本体Jが受口部材3の内部に配置される(上記の「受口部材3の端部」は、配管本体Jの挿入不足・斜め切れによって、配管本体Jの先端から延び出る受口部材3の部分である)。そして配管本体Jの外層Jaと上記の受口部材3の残りの部分とが接着接合される。
【0072】
図13図14に示す配管システムによれば、配管本体Jの挿入不足・斜め切れが生じた状況で、配管システムの内面を、耐薬性や平滑性に優れる継手本体2・配管本体Jの内層Ja・被覆部材Cによって構成できる。したがって配管システムの内面は耐薬性や平滑性が高いものとなる。
【0073】
また図12図14に示す被覆部材Cの代わりに、図15に示す被覆部材Dが使用されてもよい。
【0074】
図15に示す被覆部材Dは、筒状体Daと、当該筒状体Daから外側に突出する鍔部Dbとを備える。鍔部Dbは、筒状体Daの周回りに延びるものであって、筒状体Daの幅一端に形成される。被覆部材Dも、被覆部材C(図12)と同様、フッ素系樹脂、PPSU、PPS、またはオレフィン系樹脂から形成される。
【0075】
図16図17は、被覆部材D(図15)を用いる場合に形成される配管システムの断面を示す。
【0076】
図16に示す配管システムでは、管継手Tの内部に露出する受口部材3の表面34が配管本体Jで覆われ、配管本体Jの先端面Jcが鍔部Dbで覆われるように、被覆部材D及び配管本体Jが受口部材3の内部に配置される。そして配管本体Jの外層Jaと受口部材3とが接着接合される。
【0077】
図17に示す配管システムでは、管継手Tの内部に露出する受口部材3の表面34のうち、受口部材3の端部の表面34Gが被覆部材Dの鍔部Dbで覆われ、残りの受口部材3の部分の表面34Hが配管本体Jで覆われ、さらに配管本体Jの先端面Jcが鍔部Dbで覆われるように、被覆部材D及び配管本体Jが受口部材3の内部に配置される(上記の「受口部材3の端部」は、配管本体Jの挿入不足・斜め切れによって、配管本体Jの先端から延び出る受口部材3の部分である)。そして配管本体Jの外層Jaと受口部材3とが接着接合される。
【0078】
図16図17に示す配管システムによれば、配管本体Jの挿入不足・斜め切れが生じた状況で、配管システムの内面を、耐薬性や平滑性に優れる継手本体2・配管本体Jの内層Ja・被覆部材Dによって構成できる。したがって配管システムの内面は耐薬性や平滑性が高いものとなる。
【0079】
なお上記の被覆部材C(図12図14)や被覆部材D(図15図17)は、予め、配管本体Jもしくは継手本体2に接着等で固定されていてもよいが、必ずしも被覆部材C,Dを配管本体Jもしくは継手本体2に固定する必要はない。
【0080】
また図13図14図16図17に示した管継手では、被覆部材C,Dが継手本体2と別部材となっていたが、図18に示すように、管継手は、継手本体2と一体成形された被覆部材Eを備えるものに変更され得る。以下、図18に示す変形例の管継手Tについて説明する。
【0081】
図18は、被覆部材E付きの管継手Tを用いて形成される配管システムの断面図である。図19(a)は、図18に示す継手本体2の断面を抽出した図であり、図19(b)は、図18に示す受口部材3の断面を抽出した図である。
【0082】
図18に示す管継手Tでは、受口5の奥側に形成される環状の段差面50(図19(a))に、凹凸形状部10aが形成されている。また、段差面50の外周端から管継手Tの軸方向に延びる受口5の内周面51に、凹凸形状部10bが形成されている。そして継手本体2と一体に成形される被覆部材Eが、受口5の段差面50の内周端から管継手Tの軸方向に突出している。被覆部材Eは、管継手Tの周方向(図1参照)に延びる環状を呈するものであり、フッ素系樹脂、PPSU、PPSまたはオレフィン系樹脂から形成される。
【0083】
受口部材3は、図4図6に示したものと同様、筒状体30と、当該筒状体30の一端から筒状体30の径内側に突出する環状壁31とを備えている。環状壁31の外側面32(図19(b))には凹凸形状部20aが形成されている。筒状体30の外周面33には凹凸形状部20bが形成されている。
【0084】
上記の管継手Tでは、凹凸形状部10aと凹凸形状部20aとが嵌合し、凹凸形状部10bと凹凸形状部20bとが嵌合することで、受口部材3が受口5に固定されるとともに、管継手Tの段差面Taが被覆部材Eの外側に形成されて、被覆部材Eが段差面Taよりも管継手Tの軸方向に突出した状態になる。上記の管継手Tの段差面Taは、環状壁31の内側面34Bによって少なくとも一部の範囲が構成される段差面である。図示例では、管継手Tの段差面Taは、環状壁31の内側面34Bと、環状壁31の内側に延び出た受口5の段差面50の範囲50aとから構成されている。なお、管継手Tの段差面Taの全体が環状壁31の内側面34Bによって構成されてもよい(つまり環状壁31の内側面34Bが、被覆部材Eの基端の位置まで延びていてもよい)。
【0085】
そして図18に示すように、配管Hの先端面が管継手Tの段差面Taに突き当たるように受口部材3の内部に配管Hを配置したときには、「配管Hの先端面と管継手Tの段差面Taとの間P」が被覆部材Eによって覆われた状態になる。配管Hは、図3図4図7図9に示すものと同様、外層Haと内層Hbとを備えたものであり、配管Hの外層Haは受口部材3に接着接合される。
【0086】
図18に示す管継手Tによれば、被覆部材Eによって、上記の「配管Hの先端面と管継手Tの段差面Taとの間P」に液体Wが進入することを防止できる。このため、液体Wが配管Hの外層Haの端面や受口部材3の内面に接することを防止できるので、配管システムの耐薬性や平滑性を高めることができる。
【0087】
また被覆部材Eが継手本体2と一体に成形されるため、被覆部材が継手本体2と別部材とされる場合のように、生産時や施工時の被覆部材の入れ忘れを原因として、被覆部材が存在しない状況で配管システムに液体Wが流される事態が生じない。このため、液体Wが配管Hの外層Haの端面や受口部材3の内面に接することを確実に防止できる。
【0088】
なお図20に示すように、被覆部材Eは、突出方向に向けて先細るテーパー形状を呈していてもよい(上記の突出方向は、管継手Tの軸方向に相当する)。このようにすれば、施工の際に、配管Hの内周面Hdと被覆部材Eの外周面Eaとの密着度が高くなるので、液体Wの止水性を向上させることができる。なお上記の密着度を高めるために、図20に示すように、被覆部材Eの先端側になるほど被覆部材Eの外径が小さくなるように、被覆部材Eの外周面Eaを傾斜させることが好ましい。
【0089】
また液体Wの止水性を向上させるために、図21図22に示すように、継手本体2が環状の弾性部材Dを有するものとしてよい。弾性部材Dは、管継手Tの周方向(図1参照)に延びるものである。図21に示す例では、弾性部材Dは、被覆部材Eの外周面Eaに配置されている。図22に示す例では、弾性部材Dは、環状壁31の内側に位置する「受口5の段差面50の範囲50a」に配置されている。「受口5の段差面50の範囲50a」は、「環状壁31の内側面31a」とともに、管継手Tの段差面Taを構成するものである(受口5の段差面50については図19(A)参照)。
【0090】
弾性部材Dの材質は、NBR(ニトリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、EPDM(エチレンブタジエンゴム)又はこれに順ずる弾性を有するゴム材料が好ましいが、止水が十分可能な弾性部材であれば特に規定されない。弾性部材Dは、例えば、上記の被覆部材Eの外周面Ea或いは段差面50の範囲50aに形成される凹みに配置されることで、継手本体2に固定される。この場合、弾性部材Dの一部が、上記の凹みから突出して、配管Hに接するものとされる。また、接着剤を用いて、弾性部材Dを、上記の被覆部材Eの外周面Ea或いは段差面50の範囲50aに接着してもよい。
【0091】
上述した図21及び図22に示す例によれば、施工時に配管Hによる弾性部材Dの変形で面圧が生じることで、止水性を向上させることができる。
【0092】
なお、弾性部材Dは、図21及び図22に示すような断面形状が円形のリング(o-リング)が好ましいが、面圧による止水を十分実現できるのであれば、弾性部材Dは、断面形状が三角形や四角形のリングであってもよい。
【0093】
上述した本発明の配管システムSを構成する管継手T及び配管Hの数や管継手Tの種類等は上記に示したものに限定されない。すなわち、配管システムSを構成する管継手Tや配管Tの数は、1以上の任意の数とすることができ、また配管システムSを構成するために、継手本体2がLT型・L字型・直線型・バルブソケット・差込ソケット・やり取りソケット等である管継手Tを使用できる。
【符号の説明】
【0094】
2 継手本体
3 受口部材
5 受口
10,10a,10b 受口の内面に形成される凹凸形状部
20,20a,20b 受口部材の外面に形成される凹凸形状部
30 筒状体
31 環状壁
32 環状壁の外側面
33 筒状体の外周面
34B 環状壁の内側面
50 受口の段差面
50a 環状壁の内側に位置する受口の段差面の範囲
51 受口の内周面
34 管継手の内部に露出する受口部材の表面
C,D,E 被覆部材
Ea 被覆部材の外周面
T,T1,T2,T3,T4 管継手
H,H1,H2,H3,H4,I 配管
Ha 配管の外層
Hb 配管の内層
J 配管本体
Ja 配管本体の外層
Jb 配管本体の内層
S 配管システム
T 管継手
Ta 管継手の段差面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23