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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】シート搬送装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20240815BHJP
   B65H 29/62 20060101ALI20240815BHJP
   B65H 7/12 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
G03G15/00 481
B65H29/62 Z
B65H7/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019239875
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107897
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 尚己
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-258063(JP,A)
【文献】実開平03-035965(JP,U)
【文献】特開2009-057208(JP,A)
【文献】実開昭63-162761(JP,U)
【文献】特開2015-229550(JP,A)
【文献】特開2011-042469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
B65H 7/00- 7/20
B65H 43/00- 43/08
B65H 29/54- 29/70
B65H 31/00- 31/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが搬送される搬送経路と、
前記搬送経路を重送される重送シートを収容する収容トレイを有し、前記搬送経路の下方に設けられ重送シート収容部と、
前記搬送経路を搬送されるシートを搬送方向の下流端に向けて案内する第1案内位置から、前記重送シート収容部に向けて案内する第2案内位置に移動する切換部材と、
記切換部材が前記第2案内位置に位置することで案内された重送シートの先端と案内面で当接し、重送シートの先端を前記収容トレイに案内する案内手段と、を備え、
前記切換部材は、前記第2案内位置に位置する場合に重送シートと当接する面が、前記案内面に対して鋭角の角度で傾斜し、
シートが載せられる前記収容トレイの載置面は、前記案内面に対して鋭角の角度で傾斜する、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記載置面は、
前記案内面に対して鋭角の第1角度で傾斜する第1面と、
前記第1面よりも前記案内面に対して離れた位置に設けられ、前記第1面と接続し、前記案内面に対して前記第1角度よりも大きい第2角度を有する第2面と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記切換部材は、
前記切換部材を通過した重送シートの先端を前記案内面に当接させながら前記収容トレイに収容させる第1位置と、
前記切換部材を通過した重送シートの先端を前記案内面に当接させずに、重送シートの先端を前記収容トレイに当接させる第2位置と、に移動可能である、
ことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
重送シートが前記重送シート収容部に収容される収容方向において前記切換部材よりも下流側に設けられ、重送シートの後端を前記案内面から離れる方向に向けて付勢する付勢部材を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記付勢部材は、
前記案内面に対して鋭角な第1付勢角度で傾斜し、重送シートの先端を前記案内面に向けて案内する先端案内位置と、
前記第1付勢角度よりも小さい第2付勢角度の後端付勢位置と、の間で移動可能であり、
重送シートの後端が前記付勢部材に当接している状態において、前記先端案内位置から前記後端付勢位置に向けて移動する、
ことを特徴とする請求項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記付勢部材は、
重送シートの先端と当接することで、前記案内面に対して鋭角な付勢角度で傾斜し、重送シートの先端を前記案内面に向けて案内する先端案内形状に弾性変形し、
重送シートの後端が当接している状態において、前記先端案内形状から復元する際の弾性力によって、重送シートの後端を前記案内面から離れる方向に向けて付勢する、
ことを特徴とする請求項に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のシート搬送装置と、
前記シート搬送装置から搬送されたシートに画像を形成する画像形成装置と、を備える、
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項8】
前記画像形成装置は、
装置内でシートが搬送される装置搬送経路と、
前記画像形成装置において、前記シート搬送装置側の壁に設けられ、開放されることで前記装置搬送経路にアクセス可能となる扉部と、を有し、
前記案内面は、前記扉部の表面である、
ことを特徴とする請求項に記載の画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置、及び、シート搬送装置を備えた画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シートを搬送するシート搬送装置において、搬送されているシートに重送が発生した場合に重送したシートを装置内の収容部に収容する構成が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の構成の場合、搬送経路を搬送方向の下流端に案内する位置から重送したシートを収容する収容部に案内する位置に切り換える切換部材を有し、シートの重送が検出された場合に切換部材の位置を切り換えることで、装置内に設けられた収容部に重送したシートを収容可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-42469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシート給送装置では、シートの搬送経路について、切換部材によって重送されたシートを収容する収容部に向かう方向に切り換えることができる構成となっている。また、特許文献1に記載のシート給送装置では、切換部材と、重送されたシートを収容する収容部と、を結ぶ搬送経路が形成されており、該搬送経路が収容部の内部に接続されている。該搬送経路を搬送されたシートは、搬送経路を搬送された後に、自重によって収容部内に落下する構成となっている。
【0005】
このような構成のシート給送装置では、収容部に収容されるシートについて、自重で落下し整列されることなく収容されていく。このため、例えば、搬送方向の長さが長い長尺のシートが収容部に収容される場合、収容されるシートに折れや曲がりが生じ、収容部に積載されたシート間にシートの折れや曲がりに起因する空間が生じてしまうことで、収容部に収容可能なシートの量が減少する虞がある。
【0006】
本発明は、重送されたシートを収容する際におけるシートの収納可能な量が収納されるシートに起因して減少することを防止できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシート搬送装置は、シートが搬送される搬送経路と、前記搬送経路を重送される重送シートを収容する収容トレイを有し、前記搬送経路の下方に設けられ重送シート収容部と、前記搬送経路を搬送されるシートを搬送方向の下流端に向けて案内する第1案内位置から、前記重送シート収容部に向けて案内する第2案内位置に移動する切換部材と、前記切換部材が前記第2案内位置に位置することで案内された重送シートの先端と案内面で当接し、重送シートの先端を前記収容トレイに案内する案内手段と、を備え、前記切換部材は、前記第2案内位置に位置する場合に重送シートと当接する面が、前記案内面に対して鋭角の角度で傾斜し、シートが載せられる前記収容トレイの載置面は、前記案内面に対して鋭角の角度で傾斜する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、重送されたシートを収容する際におけるシートの収納可能な量が収納されるシートに起因して減少することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る画像形成システムの概略構成断面図。
図2】第1の実施形態に係る多段収納装置の正面図。
図3】第1の実施形態に係る多段収納装置の断面図。
図4】第1の実施形態に係る重送シート収容部の断面図。
図5】(a)は、第1の実施形態に係る退避レバーが形成位置に位置する状態を示す断面図、(b)は、退避レバーが開放位置に位置する状態を示す断面図。
図6】第1の実施形態に係る退避レバーにおいてロック爪とロックピンとが係合した状態を示す斜視図。
図7】第1の実施形態に係る退避レバーにおいてロック爪とロックピンとの係合が解除された状態を示す斜視図。
図8】(a)は、第1の実施形態に係る多段収納装置において、シートの重送が検出された状態を示す断面図、(b)は、(a)に示す状態からシートの搬送が進行した状態を示す断面図。また、(c)は、切換部材が第2案内位置に移動し重送したシートの搬送が開始された状態を示す断面図。
図9】第1の実施形態に係る多段収納装置の制御構成の一部を示すブロック図。
図10】第1の実施形態に係る制御部が実行する重送検出処理を示すフローチャート。
図11】(a)は、第1の実施形態に係る重送検出処理のステップST3で実行される第1重送処理を示すフローチャート、(b)は、重送検出処理のステップST4で実行される第2重送処理を示すフローチャート、(c)は、重送検出処理のステップST6で実行される第3重送処理を示すフローチャート。
図12】(a)~(e)は、第1の実施形態に係る重送シート収容部に収容される重送したシートの挙動を示す断面図。
図13】(a)は、第2の実施形態に係る重送シート収容部を示す断面図、(b)は、重送シート収容部に重送シートが収容される状態を示す断面図。
図14】(a)は、第3の実施形態に係る付勢部材を示す断面図、(b)は、重送シート収容部を示す断面図、(c)は、付勢部材が重送シートを付勢する状態を示す断面図。
図15】(a)は、第4の実施形態に係る重送シート収容部を示す断面図、(b)は、付勢部材が重送シートを付勢する状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を、図1図12を参照しながら詳細に説明する。まず、第1の実施形態の画像形成システムについて、図1を用いて説明する。
【0011】
[画像形成システム]
図1は、第1の実施形態に係る多段収納装置及び画像形成装置を備える画像形成システムの一例を概略的に示す断面図である。以下の説明では、画像形成部を有する画像形成装置として、電子写真方式を用いたレーザプリンタシステム(以下単にプリンタと呼ぶ)を例に挙げて説明する。なお、画像形成システムを構成する画像形成装置は、プリンタ以外に、複写機、ファクシミリ、複合機などであっても良い。また、画像形成装置は、電子写真方式に関らず、インクジェット方式などの他の方式の構成であっても良い。
【0012】
第1の実施形態の画像形成システム1000は、画像形成装置100と、画像形成装置100に接続されたシート給送装置及びシート搬送装置としての多段収納装置200と、給送デッキ5000と、を有している。多段収納装置200は、詳しくは後述するように、それぞれが複数枚のシートを収納可能な複数の収納庫を有しており、各収納庫から画像形成装置100にシートを給送可能である。また、給送デッキ5000も複数枚のシートを収納可能な収納庫を有しており、シート搬送方向に関して、多段収納装置200の上流側に配置されている。また、給送デッキ5000から給送されるシートは、多段収納装置200に設けられた中継搬送装置400を介して画像形成装置100に搬送される。なお、シートとしては、普通紙、薄紙、厚紙などの紙、プラスチックシートなどが挙げられる。
【0013】
画像形成装置100は、画像形成装置本体101に接続された原稿読み取り装置102又は画像形成装置本体101に対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)をシートに形成する。第1の実施形態の場合、原稿読み取り装置102は、画像形成装置本体101の上側に配置されている。
【0014】
原稿読み取り装置102は、原稿を読み取る際には、プラテンガラス103の上に載置された原稿に走査光学系光源によって光を照射すると共に、反射光をCCDに入力することにより原稿画像を読み取るようにしている。また、原稿読み取り装置102は、自動原稿搬送装置(ADF)104を備えており、トレイ105上に載置された原稿をADF104により自動的に原稿読み取り装置102の読み取り部に搬送して、原稿画像を読み取ることも可能である。そして、読み取った原稿画像は電気信号に変換されて、後述する画像形成部110のレーザスキャナ113に伝送される。なお、レーザスキャナ113は、上述したようにパーソナルコンピュータ等から送信されてくる画像データが入力される場合もある。
【0015】
画像形成装置100は、画像形成部110、複数のシート給送装置120、シート搬送装置130等を備える。画像形成装置100は、制御部140により各部が制御される。制御部140は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有している。CPUは、ROMに格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら各部の制御を行う。また、RAMには、作業用データや入力データが格納されており、CPUは、前述のプログラム等に基づいてRAMに収納されたデータを参照して制御を行う。
【0016】
複数のシート給送装置120は、それぞれシートSを収納するカセット121と、ピックアップローラ122と、フィードローラ123及びリタードローラ124から構成される分離搬送ローラ対125とを備えている。カセット121内に収納されたシートSは、所定のタイミングで昇降動作して回転するピックアップローラ122と分離搬送ローラ対125とによって1枚ずつ分離されて給送される。
【0017】
シート搬送装置130は、搬送ローラ対131、レジストローラ対133を備えている。シート給送装置120から給送されたシートSは、搬送ローラ対131により、装置内でシートSが搬送路される装置搬送経路としてのシート搬送経路134を通過させられた後、レジストローラ対133に導かれる。この後、シートSは、レジストローラ対133によって、所定のタイミングで画像形成部110に送り込まれる。
【0018】
画像形成装置100は、装置の下方に設けられたシート給送装置120近傍において、後述する多段収納装置200側(シート搬送装置側)の壁が、開閉可能な扉部300となっている。扉部300は、開放されることでシート搬送経路134にアクセス可能となり、シート搬送経路134内においてシートSが滞留する、いわゆるジャムが発生した際に、ジャムを起こしたシートSを取り除くことができるようになる。
【0019】
扉部300は、開放される場合において、後述する重送シート収容部218に設けられた開口部218aより、重送シート収容部218を形成する空間内に侵入可能に構成されている。扉部300の開放時に侵入する空間を重送シート収容部218と共有することにより、画像形成システム1000は、画像形成装置100と多段収納装置200との間に扉部300を移動可能にする空間を別に形成する必要がなく、省スペース化を実現することができる。
【0020】
なお、後述する多段収納装置200や給送デッキ5000から搬送ローラ対201を介して搬送されるシートは、画像形成装置100との接続経路202を介して画像形成装置100内に搬送される。そして、多段収納装置200や給送デッキ5000から画像形成装置100内に搬送されたシートは、画像形成装置100内のシート給送装置120から搬送されるシートと同様に、レジストローラ対133を介して所定のタイミングで画像形成部110に送り込まれる。
【0021】
画像形成部110は、感光ドラム111、帯電器112、レーザスキャナ113、現像器114、転写装置115、クリーナ117等を備えている。画像形成時には、感光ドラム111が回転駆動され、まず、帯電器112により感光ドラム111の表面が一様に帯電される。そして、画像信号に応じて発光されるレーザスキャナ113からのレーザ光が帯電された感光ドラム111に照射されることで、感光ドラム111上に静電潜像が形成される。さらに、このようにして感光ドラム111上に形成された静電潜像は、この後、現像器114によってトナー像として顕像化される。
【0022】
この後、感光ドラム111上のトナー像は、転写部116において転写装置115によりシートSに転写される。さらに、このようにトナー像が転写されたシートSは、定着装置150に搬送されてトナー像の定着が行われ、この後、排出ローラ151によって機外の排出トレイ152に排出される。
【0023】
シートSの裏面にトナー像を形成する場合には、定着装置150から排出されたシートSを反転搬送路160に搬送する。そして、反転搬送路160により表裏を反転した状態で、シートSを再度、画像形成部110の転写部116に搬送する。裏面にトナー像が転写されたシートSは、定着装置150に搬送され、トナー像の定着が行われた後、排出ローラ151により排出トレイ152に排出される。なお、転写後に感光ドラム111上に残った転写残トナーは、クリーナ117により除去される。
【0024】
[多段収納装置]
図1図12を用いて多段収納装置200の概要について説明する。多段収納装置200は、複数の収納庫210a~210c、中継搬送装置400等を備える。第1の実施形態では、3つの収納庫210a~210cを上下に3段並べており、一番下の収納庫210cと上から2番目の収納庫210bとの間に中継搬送装置400を配置している。
【0025】
一番上の収納庫210aから給送されたシートは、搬送経路212に搬送され、上から2番目の収納庫210bから給送されたシートは、搬送経路213に搬送され、一番下の収納庫210cから給送されたシートは、搬送経路214に搬送される。また、中継搬送装置400から搬送されたシートは、搬送経路215に搬送される。搬送経路213は、途中で搬送経路212に合流している。また、搬送経路212,214,215は、合流点216で合流し、搬送経路217を通って搬送ローラ対201に搬送され、接続経路202を介して画像形成装置100に搬送される。
【0026】
また、搬送経路213と合流後の搬送経路212、中継搬送装置400、搬送経路214には、それぞれシートの重送を検出する重送センサDFS1~DFS3(図3参照)が配置されている。そして、重送センサDFS1~DFS3により重送が検出されたシートは、搬送経路217まで搬送される。搬送経路217の下方には、重送が検出されたシートを収容する重送シート収容部(エスケープトレイ)218が配置されている。重送が検出され、搬送経路217に搬送されたシートは、搬送経路217に設けられた切換部材219により搬送経路が切り換えられることで、重送シート収容部に搬送される。重送が検出された場合の詳細については、後述する。
【0027】
図2は、多段収納装置200の正面図である。図2に示すように、多段収納装置200は、それぞれが複数枚のシートを収納可能なシート収納装置としての収納庫210として、複数の収納庫210a~210cを有する。収納庫210a~210cは、鉛直方向に複数段に並べて配置されている。収納庫210a~210cは、それぞれ多段収納装置200の筐体204に対して引き出し及び挿入可能である。
【0028】
ここで、収納庫210a~210cは、収納可能なシートの枚数が異なるだけで基本的な構成は同じであり、以下の記載において、特に区別を要しない場合には、添え字a~cを省略し、収納庫210のように総括的に説明する。なお、収納庫210a~210cは、収納可能なシートの枚数が同じ場合もある。
【0029】
収納庫210a~210cから給送されるシートは、搬送経路212,214,215を経由して接続経路202(図1参照)に搬送される。また、多段収納装置200は、制御部203(図1参照)により各部が制御される。制御部203は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有している。また、制御部203は、画像形成装置100の制御部140と通信可能であり、制御部140と通信することでシートの給送タイミングなどを制御する。
【0030】
多段収納装置200は、収納庫210a~210cの引き出し動作を行うための操作部としてのボタン205a~205cを有する。ボタン205a~205cは、収納庫210a~210cのそれぞれの前面に設けられている。例えば、操作者がボタン205aを押すと、収納庫210aを装着位置にロックしていたロック機構が解除され、不図示のバネにより収納庫210aが筐体204から押し出される。これにより、操作者が収納庫210aを、シートを収納可能な位置まで引き出すことができる。なお、ボタン205a~205cを押すことで、モータなどにより収納庫210a~210cが自動でシートを収納可能な位置まで移動する構成であっても良い。
【0031】
図3は、多段収納装置200に設けられたモータ、センサ、搬送ローラ等の各構成を示す断面図である。図3に示すように、収納庫210aは、シートを収納可能なシート収納部220aと、シート収納部220aから画像形成装置100に向けてシートを給送するシート給送部230aと、を有する。シート収納部220aは、シートが積載される積載トレイ221aを有する。積載トレイ221aは、モータMT15によって駆動される昇降機構240aにより上下方向に昇降可能である。積載トレイ221aは、シートを積載する際には所定位置まで下降し、積載されたシートが給送されると徐々に上昇していく。
【0032】
シート給送部230aは、シート給送手段としてのピックアップローラ231a、搬送ローラ232aとリタードローラ233aから構成される分離搬送ローラ対234a、搬送ローラ対235a等を有する。ピックアップローラ231a及び分離搬送ローラ対234aは、モータMT1によって回転駆動され、搬送ローラ対235aは、モータMT2によって回転駆動される。また、シート給送部230aには、分離搬送ローラ対234aの搬送方向下流側におけるシートの有無を検出するセンサS1と、搬送ローラ対235aの搬送方向上流側におけるシートの有無を検出するセンサS2と、が配設されている。
【0033】
ピックアップローラ231aは、積載トレイ221aの上方に設けられ、上昇した積載トレイ221aに積載されたシートの最上位シートと当接して給送する。このためにピックアップローラ231aは、シート搬送方向に関してシートの先端部近傍に、積載トレイ221a上の最上位シートに適宜の力で圧接可能となるように配置されている。そして、回転することで、最上位シートを送り出す。
【0034】
分離搬送ローラ対234aは、ピックアップローラ231aから2枚以上のシートが重なって給送された場合、つまり2枚以上のシートが重送された場合に、分離して1枚のみのシートを搬送する。即ち、分離搬送ローラ対234aの搬送ローラ232aは、シートを搬送する方向に回転し、ピックアップローラ231aから送られたシートを搬送する。一方、リタードローラ233aは、搬送ローラ232aとは逆方向に回転して、ピックアップローラ231aから送られた2枚以上のシートのうち、最上位シート以外のシートを積載トレイ221a側に押し戻す。なお、リタードローラ233aには不図示のトルクリミッタが内蔵されており、分離搬送ローラ対234aに送られたシートが1枚のみの場合には、搬送ローラ232aにより搬送されるシートによって連れ回るようになっている。
【0035】
分離搬送ローラ対234aに分離搬送されたシートは、搬送ローラ対235aにより搬送経路212に搬送される。搬送経路212には、それぞれモータMT7によって回転駆動される搬送ローラ対236,237と、それぞれモータMT8によって回転駆動される搬送ローラ対238,239と、が配設されている。また、搬送経路212には、搬送ローラ対236の搬送方向下流側におけるシートの有無を検出するセンサS7と、搬送ローラ対238の搬送方向上流側におけるシートの有無を検出するセンサS8が配設されている。また、搬送経路212は、搬送ローラ対237と搬送ローラ対238との間に、搬送経路213と合流する合流点241が設けられている。
【0036】
収納庫210bは、シートを収納可能なシート収納部220bと、シート収納部220bから画像形成装置100に向けてシートを給送するシート給送部230bと、を有する。シート収納部220bは、シートが積載される積載トレイ221bを有する。積載トレイ221bは、モータMT16によって駆動される昇降機構240bにより上下方向に昇降可能である。積載トレイ221bは、シートを積載する際には所定位置まで下降し、積載されたシートが給送されると徐々に上昇していく。
【0037】
シート給送部230bは、シート給送手段としてのピックアップローラ231b、搬送ローラ232bとリタードローラ233bから構成される分離搬送ローラ対234b、搬送ローラ対235b等を有する。ピックアップローラ231b及び分離搬送ローラ対234bは、モータMT3によって回転駆動され、搬送ローラ対235bは、モータMT4によって回転駆動される。また、シート給送部230bには、分離搬送ローラ対234bの搬送方向下流側におけるシートの有無を検出するセンサS3と、搬送ローラ対235bの搬送方向上流側におけるシートの有無を検出するセンサS4と、が配設されている。
【0038】
ピックアップローラ231bは、積載トレイ221bの上方に設けられ、上昇した積載トレイ221bに積載されたシートの最上位シートと当接して給送する。このためにピックアップローラ231bは、シート搬送方向に関してシートの先端部近傍に、積載トレイ221b上の最上位シートに適宜の力で圧接可能となるように配置されている。そして、回転することで、最上位シートを送り出す。
【0039】
分離搬送ローラ対234bは、ピックアップローラ231bから2枚以上のシートが重なって給送された場合、つまり2枚以上のシートが重送された場合に、分離して1枚のみのシートを搬送する。即ち、分離搬送ローラ対234bの搬送ローラ232bは、シートを搬送する方向に回転し、ピックアップローラ231bから送られたシートを搬送する。一方、リタードローラ233bは、搬送ローラ232bとは逆方向に回転して、ピックアップローラ231bから送られた2枚以上のシートのうち、最上位シート以外のシートを積載トレイ221b側に押し戻す。なお、リタードローラ233bには不図示のトルクリミッタが内蔵されており、分離搬送ローラ対234bに送られたシートが1枚のみの場合には、搬送ローラ232bにより搬送されるシートによって連れ回るようになっている。
【0040】
分離搬送ローラ対234bに分離搬送されたシートは、搬送ローラ対235bにより搬送経路213に搬送され、上述した通り、合流点241で搬送経路212と合流する。
【0041】
ここで、搬送経路212には、合流点241よりも搬送方向下流側で、かつ搬送ローラ対239の搬送方向上流側の位置に、2枚以上のシートが重送されているか否かを検出する重送センサDFS1が配設されている。合流点241よりも搬送方向下流側に配設されることで、重送センサDFS1は、収納庫210aから搬送されたシートが重送されている場合と、収納庫210bから搬送されたシートが重送されている場合と、にシートの重送を検出することができる。
【0042】
収納庫210cは、シートを収納可能なシート収納部220cと、シート収納部220cから画像形成装置100に向けてシートを給送するシート給送部230cと、を有する。シート収納部220cは、シートが積載される積載トレイ221cを有する。積載トレイ221cは、モータMT17によって駆動される昇降機構240cにより上下方向に昇降可能である。積載トレイ221cは、シートを積載する際には所定位置まで下降し、積載されたシートが給送されると徐々に上昇していく。
【0043】
シート給送部230cは、シート給送手段としてのピックアップローラ231c、搬送ローラ232cとリタードローラ233cから構成される分離搬送ローラ対234c、搬送ローラ対235c等を有する。ピックアップローラ231c及び分離搬送ローラ対234cは、モータMT5によって回転駆動され、搬送ローラ対235cは、モータMT6によって回転駆動される。また、シート給送部230cには、分離搬送ローラ対234cの搬送方向下流側におけるシートの有無を検出するセンサS5と、搬送ローラ対235cの搬送方向上流側におけるシートの有無を検出するセンサS6と、が配設されている。
【0044】
ピックアップローラ231cは、積載トレイ221cの上方に設けられ、上昇した積載トレイ221cに積載されたシートの最上位シートと当接して給送する。このためにピックアップローラ231cは、シート搬送方向に関してシートの先端部近傍に、積載トレイ221c上の最上位シートに適宜の力で圧接可能となるように配置されている。そして、回転することで、最上位シートを送り出す。
【0045】
分離搬送ローラ対234cは、ピックアップローラ231cから2枚以上のシートが重なって給送された場合、つまり2枚以上のシートが重送された場合に、分離して1枚のみのシートを搬送する。即ち、分離搬送ローラ対234cの搬送ローラ232cは、シートを搬送する方向に回転し、ピックアップローラ231cから送られたシートを搬送する。一方、リタードローラ233cは、搬送ローラ232cとは逆方向に回転して、ピックアップローラ231cから送られた2枚以上のシートのうち、最上位シート以外のシートを積載トレイ221c側に押し戻す。なお、リタードローラ233cには不図示のトルクリミッタが内蔵されており、分離搬送ローラ対234cに送られたシートが1枚のみの場合には、搬送ローラ232cにより搬送されるシートによって連れ回るようになっている。
【0046】
分離搬送ローラ対234cに分離搬送されたシートは、搬送ローラ対235cにより搬送経路214に搬送される。搬送経路214には、モータMT9によって回転駆動される搬送ローラ対242が配設されている。また、搬送経路214には、搬送ローラ対235cの搬送方向下流側におけるシートの有無を検出するセンサS9が配設されている。また、搬送経路214には、搬送ローラ対242よりも搬送方向上流側に、搬送経路214に2枚以上のシートが重送されているか否かを検出する重送センサDFS2が配設されている。
【0047】
中継搬送装置400では、モータMT14によって回転駆動されるコンベア243によってシートが装置内を搬送される。また、中継搬送装置400には、コンベア243よりも搬送方向上流側に、中継搬送装置400に2枚以上のシートが重送されているか否かを検出する重送センサDFS3が配設されている。
【0048】
コンベア243によって搬送されたシートは、モータMT12によって回転駆動される搬送ローラ対244と、モータMT13によって回転駆動される搬送ローラ対245と、によって搬送経路215内を搬送される。
【0049】
搬送経路215には、搬送ローラ対244の搬送方向下流側におけるシートの有無を検出するセンサS12と、搬送ローラ対245の搬送方向下流側におけるシートの有無を検出するセンサS13と、が配設されている。
【0050】
搬送経路212と、搬送経路214と、搬送経路215と、は、合流点216で合流し、搬送経路217に接続される。搬送経路217には、モータMT10によって回転駆動される搬送ローラ対246と、モータMT11によって回転駆動される搬送ローラ対201と、が配設されており、搬送ローラ対201から搬送されたシートが、接続経路202を介して画像形成装置100に搬送される。
【0051】
また、搬送経路217には、搬送ローラ対246の搬送方向下流側におけるシートの有無を検出するセンサS10と、搬送ローラ対201の搬送方向上流側におけるシートの有無を検出するセンサS11と、が配設されている。そして、搬送経路217には、ソレノイドSOLによって駆動し、搬送経路217に搬送されたシートを接続経路202に搬送する経路から重送シート収容部218に搬送する経路に切換可能な切換部材219が配設されている。
【0052】
[重送シート収容部]
重送シート収容部218は、収納庫210cからのシートを画像形成装置100に搬送するための搬送経路214,217と、接続経路202の下方及び搬送経路212,213と搬送経路214との合流点216の下方に配置されている。重送シート収容部214は、図3に示すように、搬送経路214,217を搬送されるシートの搬送方向における重送されたシートの収納領域が、画像形成装置100に隣り合う位置から収納庫210cに隣り合う位置までの広い範囲となっている。つまり、重送シート収容部218のうち搬送経路214,217を搬送されるシートの搬送方向の長さは、搬送経路214から合流点216、切換部材219を介して接続経路202に至るまでの長さとなっている。また、重送シート収容部218は、その高さ方向において、搬送経路214の位置、つまり切換部材219の位置から多段収納装置200の底面200aよりも低い位置までを重送されたシートの収納領域としている。
【0053】
このように、多段収納装置200は、重送シート収容部218の重送されたシートを収容する収容領域を、装置内において大きく形成していることで、大量のシートを重送シート収容部218に収容することができる。
【0054】
図4は、重送シート収容部218の詳細を示す断面図である。重送シート収容部218は、重送したシートが収容される収容トレイ302を有する。また、重送シート収容部218は、開口部218a(図1参照)に隣接した扉部300(図1参照)の表面を構成する案内面301と隣接している。案内面301には、切換部材219によって搬送経路が切り換えられたシートの先端が当接し、当接したシートの先端を収容トレイ302に向けて案内する。開口部218a(図1参照)によって扉部300の案内面301と当接可能にし、シートの先端を案内する構成が、第1の実施形態における案内手段310を構成する。
【0055】
また、重送シート収容部218の上方には、搬送経路214を構成するとともに、搬送経路214内にジャムが発生した際において、搬送経路214,217を開放する開放位置にユーザによって移動可能に構成された移動部材としてのガイドユニット500が設けられている。ガイドユニット500は、中心を重送シート収容部218内に有する第1の曲率半径の湾曲ガイド501が搬送経路214を形成しており、垂直方向の位置が異なるシート給送部230cと接続経路202とを接続している。
【0056】
ここで、湾曲ガイド501の曲率半径は、搬送経路212に設けられた湾曲部212a(図3参照)や搬送経路213に設けられた湾曲部213a(図3参照)よりも大きい曲率半径となっている。つまり、湾曲部212aの曲率半径(第2の曲率半径)は、第1の曲率半径よりも小さい曲率半径となっている。
【0057】
このような構成により、多段収納装置200では、湾曲ガイド501のうち合流点216の近傍において、湾曲ガイド501の傾斜が水平に近い傾斜となっており、湾曲ガイド501の下方に設けられた重送シート収容部218の空間を広く形成することができる。
【0058】
この、接続経路202よりも鉛直方向下方に設けられた収納庫210cが、第1の実施形態における第1シート収納部を構成し、接続経路202よりも鉛直方向上方に設けられた収納庫210aが、第1の実施形態における第2シート収納部を構成する。また、搬送経路214,217が、第1の実施形態における搬送経路及び第1搬送経路を構成し、搬送経路212が、第1の実施形態における第2搬送経路を構成する。
【0059】
[退避レバー]
図5(a)は、ガイドユニット500が搬送経路214,217を形成する形成位置に位置する場合を示す概略断面図、図5(b)は、ガイドユニット500が形成位置から退避し搬送経路214,217を開放する開放位置に位置した場合を示す概略断面図である。また、図6は、ガイドユニット500に設けられたロック爪503が多段収納装置200の側壁251に設けられたロックピン502に係合した状態を示す図であり、図7は、ロック爪503とロックピン502との係合が解除された状態を示す図である。
【0060】
図5(a)に示すように、ガイドユニット500は、回動軸504に軸支され、搬送経路217を形成するガイド505が湾曲ガイド501に接続されている。ガイド505には、切換部材219が配設されている。また、湾曲ガイド501には、搬送ローラ対242のうちモータMT6(図3参照)によって駆動される駆動ローラ242aによって従動回転される従動ローラ242bと、搬送ローラ対246のうちモータMT7(図3参照)によって駆動される駆動ローラ246aによって従動回転される従動ローラ246bと、が配設されている。
【0061】
図5(a)、図6に示すように、ガイドユニット500は、湾曲ガイド501に軸507が軸支されている。軸507には、ロック爪503と、ユーザによって操作される操作レバー508と、が固定されている。ガイドユニット500は、操作レバー508が操作されることで、軸507とロック爪503とが操作レバー508と一体に回転する。操作レバー508と一体に回転することで、ロック爪503は、図5(b)、図7に示すように、ロックピン502との係合が解除される。
【0062】
また、軸507には、湾曲ガイド501と係合可能な係合部材509が固定されている。係合部材509は、図6に示すように、ロック爪503がロックピン502と係合した状態において、湾曲ガイド501に設けられた穴510の一方側の壁部510aからわずかに離間した位置に位置する。また、係合部材509は、図7に示すように、ロック爪503とロックピン502との係合が解除された状態において、穴510の他方側の壁部510bと係合した位置に位置する。
【0063】
係合部材509が壁部510bと係合することで、ガイドユニット500は、操作レバー508がロック爪503とロックピン502との係合を解除する方向に操作された際に、過度に操作されてしまうことが防止される。
【0064】
ロック爪503とロックピン502との係合が解除されることで、ガイドユニット500は、回動軸504を中心に回動可能となる。多段収納装置200では、ガイドユニット500が回動軸504を中心に、形成位置から退避し搬送経路214,217を開放する開放位置に向けて回動することで、ガイドユニット500に配設された切換部材219、従動ローラ242b,246bも開放位置に向けて移動する。これにより、多段収納装置200では、搬送経路214,217からガイドユニット500が退避し、搬送経路214,217を形成していた箇所に空間506が形成される。
【0065】
ここで、ガイドユニット500は、搬送経路217の下方に設けられた回動軸504を中心に、図5(a)、(b)中下方に向けて回動することで、形成位置から開放位置に移動するように構成されている。つまり、ガイドユニット500は、搬送経路217の下方に設けられた重送シート収容部218内(重送シート収容部内)に退避するように構成されている。
【0066】
このように、多段収納装置200は、搬送経路214,217に発生したシートの詰まり(ジャム)を取り除く場合において、搬送経路214,217の下方を形成しているガイドユニット500を移動して搬送経路214,217を開放させるための空間について、重送シート収容部218を構成する空間と共有するように構成されている。この構成により、多段収納装置200は、ガイドユニット500を退避させるための空間を重送シート収容部218とは別に設けることなくガイドユニット500を形成位置から開放位置に移動可能となり、装置を大型化することなく重送シート収容部218のための空間を広く形成することができる。このため、多段収納装置200は、重送シート収容部218に多くのシートを収容することができる。
【0067】
なお、第1の実施形態の多段収納装置200では、搬送経路214,217においてジャムが発生し、かつ重送シート収容部218に多量のシートが収容されていることで、ガイドユニット500を開放位置に移動できない場合、ユーザに重送シート収容部218に収容されているシートを除去することを報知する。多段収納装置200では、重送シート収容部218にシートが収容されていてガイドユニット500を退避できない可能性がある場合について、重送センサDFS1~DFS3の状態や、切換部材219の動作の有無から、判定可能に構成されている。
【0068】
[切換部材の動作]
図8は、収納庫210cから搬送されたシートが重送されていた場合における切換部材219の動作を示す図である。図8(a)に示すように、多段収納装置200では、搬送経路217内のシートを搬送ローラ対201,246によって搬送しており、切換部材219が、シートの下方に位置し搬送経路217内のシートを搬送方向の下流端の接続経路202に案内している状態となっている。この状態において、多段収納装置200では、重送センサDFS2によって収納庫210cから搬送されたシートが重送していることが検出される。
【0069】
図8(b)に示すように、多段収納装置200では、センサS10によって搬送ローラ対246の搬送方向下流側の切換部材219上にシートがあると検出されている間、切換部材219の位置が搬送経路217を形成する位置に維持される。また、多段収納装置200では、重送センサDFS2によってシートの重送が検出されたことから、モータMT5、MT6,MT9(図3参照)の駆動を停止し、ピックアップローラ231c、搬送ローラ232c、搬送ローラ対235c,242の回転駆動を停止する。これにより、多段収納装置200では、重送が検出されたシートの搬送が、搬送経路214内で一時的に停止される。
【0070】
図8(c)に示すように、多段収納装置200では、センサS10によって切換部材219上にシートがないと検出されたことに基づき、ソレノイドSOL(図3参照)が駆動され、切換部材219の位置が第1案内位置から、重送シート収容部218にシートを案内する第2案内位置に移動される。多段収納装置200では、切換部材219が第2案内位置に移動したことに基づき、モータMT5、MT6,MT9(図3参照)の駆動が再開され、ピックアップローラ231c、搬送ローラ232c、搬送ローラ対235c,242が回転駆動を再開する。そして、多段収納装置200では、搬送ローラ対242から搬送された重送したシートが、搬送ローラ対246によって切換部材219まで搬送され、重送したシートのすべてが切換部材219によって重送シート収容部218に案内される。
【0071】
[制御構成]
図9は、多段収納装置200の制御構成を示すブロック図である。図9に示すように、多段収納装置200を制御する制御部203には、センサS1~S13と、重送センサDFS1~DFS3と、モータMT1~MT17と、ソレノイドSOLと、が電気的に接続されている。制御部203は、センサS1~S13と、重送センサDFS1~DFS3と、から出力されるON/OFFの信号と、シートの搬送に係るプログラムと、に基づき、モータMT1~MT17とソレノイドSOLとの駆動を制御する。また、制御部203は、後述する重送発生時に行う制御処理において、経過した時間を計るために用いるタイマT1を有している。
【0072】
[重送発生時の制御フロー]
図10は、制御部203が実行する重送検出処理を示すフローチャートである。なお、以下の記載において、符号が付された各構成は、図1図9に記載されている。
【0073】
図10に示すように、制御部203は、まず、重送センサDFS1がON状態か否かを判定する(ST1)。この処理において、制御部203は、重送センサDFS1から出力され、制御部203に入力された信号が、シートが重送されている場合に出力される信号であるON状態の信号であるか否かを判定している。
【0074】
ステップST1において、重送センサDFS1がON状態であると判定した場合(Yes)、制御部203は、現在作動している収納庫が多段収納装置200の上段に設けられた収納庫210aか否かを判定する(ST2)。
【0075】
上述した通り、多段収納装置200は、搬送経路212のうち搬送経路212と搬送経路213とが合流する合流点241よりも搬送方向下流に重送センサDFS1が設けられている。このため、制御部203は、重送センサDFS1がON状態であることから、多段収納装置200の上段に設けられた収納庫210aから搬送されたシートと、多段収納装置200の中段に設けられた収納庫210bから搬送されたシートと、のいずれにおいて重送が発生したかを判定するために、現在作動している収納庫が収納庫210aであるか否かを、ステップST2の処理で判定する。
【0076】
ステップST2の処理において、収納庫210aが作動していると判定した場合(Yes)、制御部203は、収納庫210aで重送が発生した場合における処理である第1重送処理を実行し(ST3)、重送検出処理を終了する。一方、ステップST2の処理において、収納庫210aが作動していないと判定した場合(No)、制御部203は、収納庫210bで重送が発生したと判定し、収納庫210bで重送が発生した場合における処理である第2重送処理を実行し(ST4)、重送検出処理を終了する。
【0077】
ステップST1の処理において、重送センサDFS1がOFF状態であると判定した場合(No)、制御部203は、重送センサDFS2がON状態か否かを判定する(ST5)。この処理において、制御部203は、重送センサDFS2から出力され、制御部203に入力された信号が、シートが重送されている場合に出力される信号であるON状態の信号であるか否かを判定している。
【0078】
ステップST5において、重送センサDFS2がON状態であると判定した場合(Yes)、制御部203は、収納庫210cで重送が発生したと判定し、収納庫210cで重送が発生した場合における処理である第3重送処理を実行し(ST6)、重送検出処理を終了する。
【0079】
ステップST5の処理において、重送センサDFS2がOFF状態であると判定した場合(No)、制御部203は、重送センサDFS3がON状態か否かを判定する(ST7)。この処理において、制御部203は、重送センサDFS3から出力され、制御部203に入力された信号が、シートが重送されている場合に出力される信号であるON状態の信号であるか否かを判定している。
【0080】
ステップST7において、重送センサDFS3がON状態であると判定した場合(Yes)、制御部203は、中継搬送装置400で重送が発生したと判定し、中継搬送装置400で重送が発生した場合における処理である第4重送処理を実行し(ST8)、重送検出処理を終了する。一方、ステップST7において、重送センサDFS3がOFF状態であると判定した場合(No)、制御部203は、多段収納装置200において重送が発生していないと判定し、重送検出処理を終了する。
【0081】
図11(a)は重送検出処理のステップST3で実行される第1重送処理を示すフローチャートである。第1重送処理において、制御部203は、まず、モータMT1,MT2,MT7,MT8,MT10,MT11の駆動を停止する(ST11)。この処理において、制御部203は、搬送経路212,217において駆動している各モータを停止し、シートの搬送を停止する。なお、多段収納装置200では、ステップST11の時点において、重送センサDFS1が検出可能な範囲内に重送したシートが存在しており、ステップST11の処理が実行されることで、重送センサDFS1が検出可能な範囲内に重送したシートが維持された状態となる。
【0082】
次に、制御部203は、センサS10がOFF状態か否かを判定する(ST12)。この処理において、制御部203は、センサS10から出力され、制御部203に入力された信号が、切換部材219の上方に設けられたセンサS10の検出範囲内にシートが存在していない場合に出力される信号であるOFF状態の信号であるか否かを判定している。
【0083】
ステップST12の処理において、センサS10がON状態であると判定した場合(No)、制御部203は、切換部材219上にシートが存在していると判定し、シートを接続経路202から画像形成装置100に搬送するために、搬送経路217に設けられた搬送ローラ対201,246を駆動させるモータMT10,MT11を駆動する(ST13)。次に、制御部203は、センサS10がOFF状態か否かを判定する(ST14)。この処理において、センサS10がON状態であると判定した場合(No)、制御部203は、センサS10がOFF状態であると判定されるまで、つまり、切換部材219上のシートの搬送が完了するまで、ステップST14の処理を繰り返す。
【0084】
ステップST12、ST14の処理において、センサS10がOFF状態であると判定した場合(Yes)、制御部203は、ソレノイドSOLをON状態にする(ST15)。この処理において、制御部203は、ソレノイドSOLをON状態にすることで、切換部材219を搬送経路217を接続経路202に案内する第1案内位置から、搬送ローラ対246によって搬送されたシートを重送シート収容部218に案内する第2案内位置に移動させる。
【0085】
次に、制御部203は、モータMT2,MT7,MT8,MT10の駆動を開始する(ST16)。この処理において、制御部203は、搬送経路212に設けられた搬送ローラ対235a,236~239を駆動させるモータMT2,MT7,MT8と、搬送経路217において切換部材219よりも搬送方向上流側の搬送ローラ対246を駆動させるモータMT10と、を駆動し、搬送経路212に維持されていた重送したシートの搬送を開始する。なお、ステップST13の処理を実行していた場合、制御部203は、モータMT10を駆動した状態を継続する。
【0086】
次に、制御部203は、センサS2,S7,S8がOFF状態か否かを判定する(ST17)。この処理において、制御部203は、センサS2,S7,S8から出力され、制御部203に入力された信号が、シートが各センサの検出可能な範囲内の存在していない場合に出力される信号であるOFF状態の信号であるか否かを判定し、搬送経路212から搬送経路217へ重送したシートの搬送が完了したか否かを判定している。制御部203は、センサS2,S7,S8のいずれかがON状態であると判定した場合(No)、センサS2,S7,S8のすべてがOFF状態となるまでステップST17の処理を繰り返す。
【0087】
ステップST17の処理において、センサS2,S7,S8のすべてがOFF状態であると判定した場合(Yes)、制御部203は、タイマT1に初期値となる所定時間を設定し、値「0」に向けてカウントダウンする更新を開始する。そして、制御部203は、タイマT1が値「0」になったか否か、つまりステップST16の処理が終了してから所定時間が経過したか否かを判定する(ST18)。この処理において、タイマT1の値が値「0」ではないと判定した場合(No)、制御部203は、まだ所定時間が経過していないと判定し、ステップST18の処理を繰り返す。ここで、所定時間は、重送センサDFS1~DFS3で検出された重送したシートが重送シート収容部218に搬送、収容されるのに十分な時間となっている。
【0088】
一方、タイマT1の値が値「0」であると判定した場合(Yes)、制御部203は、重送センサDFS1で検出された重送したシートが重送シート収容部218に搬送、収容されたと判定し、モータMT2,MT7,MT8,MT10,MT11の駆動を停止する(ST19)。そして、制御部203は、ソレノイドSOLをOFF状態にセットし(ST20)、切換部材219を第2案内位置から第1案内位置に移動させた後に、第1重送処理を終了する。
【0089】
図11(b)は重送検出処理のステップST4で実行される第2重送処理を示すフローチャートである。第2重送処理は、第1重送処理と一部の処理が重複しており、重複している処理について、同様のステップ番号を付すことで、説明を省略する。
【0090】
第2重送処理において、制御部203は、まず、モータMT3,MT4,MT8,MT10,MT11の駆動を停止する(ST31)。この処理において、制御部203は、搬送経路212,213,217において駆動している各モータを停止し、シートの搬送を停止する。なお、多段収納装置200では、ステップST31の時点において、重送センサDFS1が検出可能な範囲内に重送したシートが存在しており、ステップST31の処理が実行されることで、重送センサDFS1が検出可能な範囲内に重送したシートが維持された状態となる。
【0091】
ステップST12~ST15の処理を実行した後、制御部203は、モータMT4,MT8,MT10の駆動を開始する(ST36)。この処理において、制御部203は、搬送経路213に設けられた搬送ローラ対235bを駆動させるモータMT4と、搬送経路212に設けられた搬送ローラ対238,239を駆動させるモータMT8と、搬送経路217において切換部材219よりも搬送方向上流側の搬送ローラ対246を駆動させるモータMT10と、を駆動し、搬送経路212,213に維持されていた重送したシートの搬送を開始する。なお、ステップST13の処理を実行していた場合、制御部203は、モータMT10を駆動した状態を継続する。
【0092】
次に、制御部203は、センサS4,S8がOFF状態か否かを判定する(ST37)。この処理において、制御部203は、センサS4,S8から出力され、制御部203に入力された信号が、シートが各センサの検出可能な範囲内の存在していない場合に出力される信号であるOFF状態の信号であるか否かを判定し、搬送経路212,213から搬送経路217へ重送したシートの搬送が完了したか否かを判定している。制御部203は、センサS4,S8のいずれかがON状態であると判定した場合(No)、センサS4,S8のすべてがOFF状態となるまでステップST37の処理を繰り返す。
【0093】
ステップST18の処理において、タイマT1の値が値「0」であると判定した場合(Yes)、制御部203は、重送センサDFS1で検出された重送したシートが重送シート収容部218に搬送、収容されたと判定し、モータMT4,MT8,MT10,MT11の駆動を停止する(ST39)。そして、制御部203は、ソレノイドSOLをOFF状態にセットし(ST20)、切換部材219を第2案内位置から第1案内位置に移動させた後に、第2重送処理を終了する。
【0094】
図11(c)は重送検出処理のステップST6で実行される第3重送処理を示すフローチャートである。第3重送処理は、第1重送処理、第2重送処理と一部の処理が重複しており、重複している処理について、同様のステップ番号を付すことで、説明を省略する。
【0095】
第3重送処理において、制御部203は、まず、モータMT5,MT6,MT9~MT11の駆動を停止する(ST51)。この処理において、制御部203は、搬送経路214,217において駆動している各モータを停止し、シートの搬送を停止する。なお、多段収納装置200では、ステップST51の時点において、重送センサDFS2が検出可能な範囲内に重送したシートが存在しており、ステップST51の処理が実行されることで、重送センサDFS2が検出可能な範囲内に重送したシートが維持された状態となる。
【0096】
ステップST12~ST15の処理を実行した後、制御部203は、モータMT6,MT9,MT10の駆動を開始する(ST56)。この処理において、制御部203は、搬送経路214に設けられた搬送ローラ対235c,242を駆動させるモータMT6,MT9と、搬送経路217において切換部材219よりも搬送方向上流側の搬送ローラ対246を駆動させるモータMT10と、を駆動し、搬送経路214に維持されていた重送したシートの搬送を開始する。なお、ステップST13の処理を実行していた場合、制御部203は、モータMT10を駆動した状態を継続する。
【0097】
次に、制御部203は、センサS6,S9がOFF状態か否かを判定する(ST57)。この処理において、制御部203は、センサS6,S9から出力され、制御部203に入力された信号が、シートが各センサの検出可能な範囲内の存在していない場合に出力される信号であるOFF状態の信号であるか否かを判定し、搬送経路214から搬送経路217へ重送したシートの搬送が完了したか否かを判定している。制御部203は、センサS6,S9のいずれかがON状態であると判定した場合(No)、センサS6,S9のすべてがOFF状態となるまでステップST57の処理を繰り返す。
【0098】
ステップST18の処理において、タイマT1の値が値「0」であると判定した場合(Yes)、制御部203は、重送センサDFS2で検出された重送したシートが重送シート収容部218に搬送、収容されたと判定し、モータMT6,MT9~MT11の駆動を停止する(ST59)。そして、制御部203は、ソレノイドSOLをOFF状態にセットし(ST20)、切換部材219を第2案内位置から第1案内位置に移動させた後に、第3重送処理を終了する。
【0099】
[重送シートの挙動]
図12は、収納庫210cから搬送されたシートが重送していた場合における重送したシートである重送シートDSの挙動を説明する図である。図12に示す例では、制御部203によって図11(c)に示した第3重送処理が実行されている。
【0100】
図12(a)は、搬送経路214から搬送された重送シートDSが切換部材219によって重送シート収容部218に案内開始された状態を示している。図12(a)に示すように、重送シートDSは、搬送ローラ対242,246と、搬送ローラ対235c(図3参照)と、によって切換部材219と当接しながら重送シート収容部218に向けて搬送されていく。ここで、切換部材219のうちシートと当接する面は、第2案内位置に位置する状態において、重送シート収容部218の案内面301に対して、鋭角の角度α1の傾きを有するように構成されている。重送シートDSは、案内面301に対して角度α1の傾きを有して重送シート収容部218内に搬送開始され、自重により案内面301と平行に近づく傾きを変化させながら、案内面301に近づく方向に搬送されていく。
【0101】
図12(b)は、重送シートDSが案内面301と当接した状態を示す図である。上述した通り、重送シートDSは、案内面301に対して角度α1よりも平行に近い傾きに変化しながら案内面301に近づくように搬送されている。このため、重送シートDSは、案内面301と当接した際において、案内面301との間に過度な抵抗が生じず、屈曲することなく案内面301に沿って重送シート収容部218内に搬送されていく。
【0102】
図12(c)は、重送シートDSの先端が収容トレイ302の搬送方向下流側の第1面302aに当接した状態を示す図である。図12(c)に示すように、重送シートDSは、案内面301と収容トレイ302の第1面302aとの交点に先端が当接し、重送シートDSの先端が整合される。なお、収容トレイ302に既にシートが収容されている場合、重送シートDSは、案内面301と収容トレイ302に収容されたシートとの交点に先端が当接し、重送シートDSの先端が整合される。
【0103】
ここで、第1面302aは、案内面301に対して鋭角の角度β1(第1角度)の傾斜を有するように構成されている。また、第1面302aよりも案内面301から離れた位置に設けられた第2面302bは、案内面301に対して角度β1よりも大きい角度β2(第2角度)を有するように構成されている。第1の実施形態において、第1面302aの角度β1は、シートが自重により案内面301と第1面302aとの交点に向けて移動可能な角度に設定されている。
【0104】
このような構成により、重送シート収容部218は、収容トレイ302の搬送方向上流側に位置し、重送シートDSの先端と当接しない第2面302bを、角度β1よりも大きく案内面301に対して垂直に近づく角度β2にすることで、重送シート収容部218の空間を広く形成することができる。なお、角度β2は、例えば、案内面301に対して垂直である90度に構成されていてもよく、第2面302bが案内面301に対して垂直に構成されていてもよい。
【0105】
図12(d)は、収容トレイ302に先端が当接した重送シートDSにおいて、自重により後端が収容トレイ302に向けて倒れ始めた状態を示す図である。また、図12(e)は、自重により倒れた重送シートDSの後端が、重送シート収容部218の搬送方向上流側の壁部303と当接し、重送シート収容部218への重送シートDSの収容が完了した状態を示す図である。
【0106】
図12(d)、(e)に示すように、収容トレイ302は、案内面301に対して鋭角な角度β1を有しており、案内面301側が壁部303側よりも上下方向において下方に位置するように傾斜している。このため、重送シート収容部218では、収容された重送シートDSの先端が、自重によって収容トレイ302の傾斜に沿って案内面301側に移動し、案内面301と収容トレイ302との交点で整合された状態が維持される。また、重送シート収容部218では、重送シートDSの後端が、壁部303に立てかけられた状態で収容されることで、重送シートDSの搬送方向の長さが長い場合でも、シートが折れ曲がり空間のロスが発生することなく、シートを収容することができる。
【0107】
以上のように、第1の実施形態の多段収納装置200は、搬送経路212~215においてシートの重送が発生した場合に、接続経路202に向けてシートを案内する第1案内位置から重送シート収容部218に向けてシートを案内する第2案内位置に切換部材219が移動する。そして、多段収納装置200は、切換部材219が第2案内位置に位置した状態で重送シートDSが搬送された場合に、重送シートDSの先端が案内面301と当接し、重送シートDSの先端が案内面301に当接した状態で収容トレイ302に案内される。
【0108】
このような構成により、第1の実施形態の多段収納装置200は、重送シートDSが重送シート収容部218に収容される場合において、重送シートDSの先端を案内面301に当接させた状態で収容トレイ302に収容できる。このため、多段収納装置200では、重送シート収容部218に収容される重送シートDSの先端に折れや曲がりが生じることを防止でき、重送シートDSを収容する際におけるシートの収納可能な量が収納されるシートに起因して減少することを防止できる。
【0109】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る多段収納装置200について説明する。第2の実施形態の多段収納装置200は、切換部材619について、搬送経路217の下方側のガイドユニット500ではなく搬送経路217の上方側に設けられている。また、第2の実施形態の切換部材619は、第1案内位置と第2案内位置とに加え、所定の位置に姿勢を維持可能に構成されている。この点において、第2の実施形態の多段収納装置200は、上述した第1の実施形態とは異なっている。その他の構成は、第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態と共通する構成要素には同符号を付して説明を省略する。
【0110】
[切換部材]
第2の実施形態において、切換部材619は、図13(a)に示すように、回動軸619aを中心にモータMT18によって図中矢印r方向に回動可能に構成されている。制御部203は、画像形成装置100に設けられた不図示の入力部から入力されたシートの種別、性質に関する情報に基づき、モータMT18を回転駆動し、切換部材619を、搬送経路217の搬送方向の下流端である接続経路202に案内する第1案内位置から、回動可能な範囲で回動する。切換部材619は、第1案内位置から回動されることで、先端が重送シート収容部218の方を向く姿勢となる。これにより、多段収納装置200では、搬送経路217に搬送されたシートが切換部材219によって重送シート収容部218に案内される。
【0111】
[剛性の低い重送シートの搬送時]
図13(b)は、収納庫210cから搬送された重送シートDSの剛性が低い場合における切換部材619の状態を示す図である。多段収納装置200では、重送シートDSの剛性が低い場合、重送シートDSの先端を案内面301に当接させることで、シートの先端が破損する虞や、めくれ上がることで屈曲する虞がある。このため、第2の実施形態の多段収納装置200では、第1の実施形態の切換部材219のシートと当接する面が案内面301に対して有していた鋭角の角度α1(図12参照)よりも鋭角であり、案内面301に対して平行に近い鋭角の角度α2の傾きを有するように切換部材619を回動させる。
【0112】
切換部材619が角度α2の傾きを有する角度まで回動した場合、切換部材619によって重送シート収容部218に案内される重送シートDSは、先端が案内面301に当接することなく収容トレイ302に搬送される。そして、重送シートDSは、先端が収容トレイ302に当接し、収容トレイ302が有する角度β1の傾斜により、案内面301と収容トレイ302の交点に向けて、先端が自重によって移動する。
【0113】
この、重送シート収容部218にシートを収容する際における切換部材619のシートと当接する面が角度α1の傾きを有し、シートの先端が案内面301と当接する場合の切換部材619の位置が、第1位置を構成する。また、重送シート収容部218にシートを収容する際における切換部材619のシートと当接する面が角度α2の傾きを有する位置が、第2の実施形態置ける第2位置を構成する。
【0114】
以上のように、第2の実施形態の多段収納装置200は、切換部材619を通過した重送シートDSの先端を案内面301に当接させながら収容トレイ302に収容させる第1位置と、切換部材619を通過した重送シートDSの先端を案内面301に当接させずに、重送シートDSの先端を収容トレイ302に当接させる第2位置と、に切換部材619を移動可能に構成されている。
【0115】
この構成により、第2の実施形態の多段収納装置200は、剛性の低いシートが重送された場合において、重送シートDSの先端が案内面301に当接することで、重送シートDSの先端が破損したりめくれ上がって屈曲したりすることを防止できる。このため、多段収納装置200では、シートの剛性に応じて適切な方法で重送シートDSを重送シート収容部218に収容し、重送シート収容部218に収容される重送シートDSの先端に折れや曲がりが生じることを防止でき、重送シートDSを収容する際におけるシートの収納可能な量が収納されるシートに起因して減少することを防止できる。
【0116】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態に係る多段収納装置200について説明する。第3の実施形態の多段収納装置200は、切換部材219によって重送シート収容部218に案内された重送シートDSの後端近傍を、案内面301から離れる方向に向けて付勢する付勢部材700を、重送シートDSの収容方向において切換部材219よりも下流側に有している。この点において、第3の実施形態の多段収納装置200は、上述した第1の実施形態、第2の実施形態とは異なっている。その他の構成は、第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態と共通する構成要素には同符号を付して説明を省略する。
【0117】
[付勢部材]
図14(a)は、搬送経路217を示す概略断面図である。図14(a)に示すように、第3の実施形態の多段収納装置200には、ガイドユニット500(図5参照)のガイド505に付勢部材700が配設されている。
【0118】
付勢部材700は、回動軸700aを中心に回動可能に構成されており、ソレノイドSOL2によって、重送シートDSの先端を案内面301に向けて案内する先端案内位置と、重送シートDSの後端を付勢する後端付勢位置と、の間で移動可能となっている。
【0119】
図14(b)は、切換部材219が第2案内位置に位置し、付勢部材700が先端案内位置に位置する状態で、重送シートDSを重送シート収容部218に搬送している状態を示す図である。付勢部材700は、先端案内位置に位置する状態において、第2案内位置に位置する切換部材219のシートと当接する面が案内面301に対して有する鋭角の角度α1と略同様の傾きで傾斜するように構成されている。
【0120】
このような構成により、多段収納装置200では、重送シートDSを重送シート収容部218に向けて搬送する場合に、付勢部材700と当接した重送シートDSの先端と、付勢部材700との間に過度な抵抗が生じ、重送シートDSの先端が屈曲してしまうことを防ぐことができる。この、鋭角な角度α1が、第3の実施形態における第1付勢角度を構成する。
【0121】
図14(c)は、付勢部材700が先端案内位置から後端付勢位置に移動した状態を示す図である。多段収納装置200では、付勢部材700が先端案内位置から案内面301に対して平行に近く角度α1よりも小さい角度α3の傾きを有する後端付勢位置まで回動することにより、重送シートDSの後端が案内面301から離れる方向に向けて付勢される。これにより、多段収納装置200では、剛性が高い重送シートDSである場合においても、付勢部材700によってシートの後端を案内面301から離れる方向に付勢することで、シートの自重によって壁部303に向けて倒し、重送シート収容部218に収容することができる。
【0122】
第3の実施形態において、制御部203は、重送シートDSを搬送経路212~215から搬送開始した時点から、重送シートDSの長さに対応して設定された設定時間が経過したことを不図示のタイマを用いて計時し、設定時間が経過したことに基づき、ソレノイドSOL2をON状態にするように構成されている。ここで、設定時間は、重送シートDSの長さと、重送シートDSの搬送速度と、から算出される時間である。設定時間が経過した状態において、多段収納装置200では、重送シートDSの先端が案内面301と収容トレイ302との交点に当接し、重送シートDSの後端が付勢部材700と当接している状態となっており、ソレノイドSOL2をON状態にして付勢部材700を後端付勢位置に向けて回動させることで、重送シートDSの後端を案内面301から離れる方向に向けて付勢することができる。
【0123】
なお、多段収納装置200は、タイマを用いてソレノイドSOL2を駆動する構成に限らず、重送シートDSの先端が案内面301と収容トレイ302との交点に当接したことを検出するセンサ等、重送シートDSの位置を検出するセンサを別に設け、該センサからの信号の入力に基づきソレノイドSOL2を駆動するように構成されていてもよい。
【0124】
以上のように、第3の実施形態の多段収納装置200は、重送シートDSの収容方向において切換部材219よりも下流側において、切換部材219によって重送シート収容部218に案内された重送シートDSの後端近傍を、案内面301から離れる方向に向けて付勢する付勢部材700を備えている。
【0125】
この構成により、第3の実施形態の多段収納装置200は、剛性の高いシートが重送された場合において、重送シートDSの先端が案内面301と収容トレイ302との交点と当接した姿勢から変形せず、自重によって壁部303に向かって倒れない姿勢が維持される虞がある場合にも、付勢部材700によってシートの後端近傍を付勢することで、重送シートDSを壁部303に向けて倒すことができる。このため、多段収納装置200では、シートの剛性が高い場合であっても重送シートDSを重送シート収容部218に収容することができ、重送シートDSを収容する際におけるシートの収納可能な量が収納されるシートに起因して減少することを防止できる。
【0126】
また、第3の実施形態の多段収納装置200は、ソレノイドSOL2によって先端案内位置と後端付勢位置との間で移動可能な付勢部材700を用いることで、重送シートDSの後端近傍を確実に付勢することができ、安定した動作を実現することができる。
【0127】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態に係る多段収納装置200について説明する。第4の実施形態の多段収納装置200は、付勢部材800が弾性変形する部材から構成されており、付勢部材800を駆動する制御構成を有していない。この点において、第4の実施形態の多段収納装置200は、上述した第1の実施形態~第3の実施形態とは異なっている。その他の構成は、第3の実施形態と同様であるため、第3の実施形態と共通する構成要素には同符号を付して説明を省略する。
【0128】
[付勢部材]
図15(a)は、切換部材219が第2案内位置に位置し、付勢部材800が重送シートDSと当接している状態を示す図である。付勢部材800は、重送シートDSの剛性により弾性変形することで、切換部材219のシートと当接する面が案内面301に対して有する鋭角の角度α1と略同様の傾きで傾斜する先端案内形状となる。この、鋭角な角度α1が、第4の実施形態における付勢角度を構成する。
【0129】
図15(b)は、付勢部材800が先端案内形状から復元した状態を示す図である。重送シート収容部218では、重送シートDSの後端近傍が付勢部材800と当接する状態において、重送シートDSの剛性が低い状態となる。このため、付勢部材800は、重送シートDSの剛性よりも先端案内形状から復元する際の弾性力が上回り、先端案内形状から復元する際の弾性力によって重送シートDSの後端を案内面301から離れる方向に向けて付勢する。
【0130】
これにより、多段収納装置200では、剛性が高い重送シートDSである場合においても、付勢部材800の弾性力によってシートの後端を案内面301から離れる方向に付勢することで、シートの自重によって壁部303に向けて倒し、重送シート収容部218に収容することができる。
【0131】
以上のように、第4の実施形態の多段収納装置200は、弾性変形することで先端案内形状となり、先端案内形状から復元する際の弾性力によって重送シートDSの後端近傍を付勢する付勢部材800を備えている。
【0132】
この構成により、第4の実施形態の多段収納装置200は、制御構成を用いることなく廉価な弾性部材から構成される付勢部材800によって重送シートDSの後端近傍を付勢し、シートの剛性が高い場合であっても重送シートDSを重送シート収容部218に収容することができる。このため、多段収納装置200は、重送シートDSを収容する際におけるシートの収納可能な量が収納されるシートに起因して減少することを防止できる。
【0133】
<他の実施形態>
なお、第1~第4実施形態において、多段収納装置200は、画像形成装置100の扉部300を案内手段として有しているが、これに限定されない。多段収納装置200は、重送シート収容部218の画像形成装置100側に、重送シート収容部218を覆う案内壁を案内手段及び案内面として有していてもよい。
【0134】
また、第1~第4実施形態において、収容トレイ302は、案内面301に対して角度β1で傾斜する第1面302aと、案内面301に対して角度β1よりも大きい角度β2を有する第2面302bと、を有しているが、これに限定されない。収容トレイ30は、案内面301から壁部303までにおいて、屈曲せずに角度β1で傾斜した傾斜面を有するように構成されていてもよい。
【0135】
また、第1~第4実施形態において、シート搬送装置は、複数のシート収納部を有する多段収納装置200から構成されているが、これに限定されない。シート搬送装置は、1段のデッキから構成されていてもよい。また、シート収納部を有さず、シートを搬送する構成と、重送シート収容部と、切換部材と、案内手段と、を有する構成であっても、本発明を適用し得る。
【符号の説明】
【0136】
100・・・画像形成装置/134・・・シート搬送経路(装置搬送経路)/200・・・多段収納装置(シート搬送装置)/212,213,214,215,217・・・搬送経路/218・・・重送シート収容部/218a・・・開口部/219,619・・・切換部材/300・・・扉部/301・・・案内面/302・・・収容トレイ/302a・・・第1面/302b・・・第2面/310・・・案内手段/700,800・・・付勢部材/α1・・・角度(第1付勢角度、付勢角度)/α3・・・角度(第2付勢角度)/β1・・・角度(第1角度)/β2・・・角度(第2角度)/DS・・・重送シート/S・・・シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15