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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】創傷治癒を促進するための局所製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/352 20060101AFI20240815BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240815BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20240815BHJP
   A61K 36/23 20060101ALI20240815BHJP
   A61K 36/53 20060101ALI20240815BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20240815BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240815BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240815BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
A61K31/352
A61K9/06
A61K31/704
A61K36/23
A61K36/53
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/28
A61P3/10
A61P9/14
A61P17/00
A61P17/02
A61P17/10
A61P37/08
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019502066
(86)(22)【出願日】2017-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 CN2017093118
(87)【国際公開番号】W WO2018014805
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-07-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】62/363,284
(32)【優先日】2016-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512302005
【氏名又は名称】ワンネス・バイオテック・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ONENESS BIOTECH CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221578
【弁理士】
【氏名又は名称】林 康次郎
(72)【発明者】
【氏名】チェン・ジェン-ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ルー・クン-ミン
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】池上 京子
【審判官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-057361(JP,A)
【文献】特開2013-107888(JP,A)
【文献】特開2013-537888(JP,A)
【文献】KUO, Y.-S., et al.,Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine,2012年,Vol.2012,Article ID:418679,pp.1-9.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/352
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における創傷治癒促進のための局所製剤であって、
(i).5~10%(w/w)の量の活性剤であって、前記活性剤がプレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)抽出物およびセンテラ・アジアチカ(Centella asiatica)抽出物の組み合わせを含み、かつ前記活性剤が約0.0001~0.5%(w/w)の量のサルビゲニンおよび約0.05~5%(w/w)の量のアシアチコシドを含む、活性剤
(ii)セトステアリルアルコールを含む約1.0~10%(w/w)の量の増粘剤;
(iii)液体ワセリンおよび白色ワセリンを含む約5~30%(w/w)の量の軟膏基剤;
(iv)約0.005~0.2%(w/w)の量の抗菌性防腐剤;および
(v)ソルビタンモノステアレートおよびポリソルベート60を含む約0.5~10%(w/w)の量の乳化剤
を含む、局所製剤。
【請求項2】
レクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)抽出物およびセンテラ・アジアチカ(Centella asiatica)抽出物の重量比1:10~1:1である、請求項1に記載の局所製剤。
【請求項3】
活性剤が0.0001~0.1%(w/w)の範囲のサルビゲニンおよび0.05~1%(w/w)の範囲のアシアチコシドを含む、請求項1または2に記載の局所製剤。
【請求項4】
活性剤がさらにシルシマリチン、マデカソサイドまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1~3の何れかに記載の局所製剤。
【請求項5】
局所製剤において、軟膏基剤が約10~30%(w/w)であり、抗菌性防腐剤が約0.01~0.2%(w/w)であり、乳化剤が約0.5~6%(w/w)である、請求項1~4の何れかに記載の局所製剤。
【請求項6】
局所製剤がプレクトランサス・アンボイニクス抽出物およびセンテラ・アジアチカ抽出物の両方を重量比約1:4~1:1で含む、請求項2~5の何れかに記載の局所製剤。
【請求項7】
増粘剤がセトステアリルアルコール、コレステロール、ステアリルアルコール、クロロクレゾール、白色蝋、ステアリン酸、セチルアルコールまたはそれらの組み合わせをさらに含み、抗菌性防腐剤が1以上のパラベン化合物を含む、請求項1~6の何れかに記載の局所製剤。
【請求項8】
軟膏基剤がクリーム基剤である、請求項1~7の何れかに記載の局所製剤。
【請求項9】
製剤がさらに1以上の溶媒を含む、請求項1~8の何れかに記載の局所製剤。
【請求項10】
1以上の溶媒がプロピレングリコールを含む、請求項9に記載の局所製剤。
【請求項11】
プロピレングリコールの量が約2~20%(w/w)である、請求項10に記載の局所製剤。
【請求項12】
局所製剤が1~3%(w/w)の量のプレクトランサス・アンボイニクス抽出物とセンテラ・アジアチカ抽出物の組み合わせ、3~7%(w/w)の量のセトステアリルアルコール、5~15%(w/w)の総量の白色ワセリンと液体ワセリンの組み合わせ、0.005~0.2%(w/w)の総量のメチルパラベンとプロピルパラベンの組み合わせおよび0.5~6%(w/w)の総量のソルビタンモノステアレートとポリソルベート60の組み合わせを含む、請求項1に記載の局所製剤。
【請求項13】
製剤が少なくとも1日1回、好ましくは1日2回局所投与するためのものである、請求項12に記載の局所製剤。
【請求項14】
対象が糖尿病性足部潰瘍を有するヒト糖尿病患者である、請求項12または請求項13に記載の局所製剤。
【請求項15】
対象が、所望により擦過傷、切創、裂傷、刺傷または剥脱創である開放創を有するヒト患者である、請求項12~14の何れかに記載の局所製剤。
【請求項16】
対象が、所望により手術創、外傷性創傷、圧迫潰瘍、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍または癌、熱傷、褥瘡もしくはアトピー性皮膚炎が原因の創傷である慢性創傷を有するヒト患者である、請求項12または請求項13に記載の局所製剤。
【請求項17】
対象がアクネを有するヒト患者である、請求項12または請求項13に記載の局所製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年7月17日出願の米国出願62/363,284の出願日の利益を請求し、その内容を全体として引用により本明細書に包含させる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
プレクトランサス・アンボイニクス(Plectranthus amboinicus)(以前の名称または別称としてコリウス・アンボイニクス・ロウル(Coleus amboinicus Lour.)、コリウス・アロマティクス・ベンス(Coleus aromaticus Benth.)、コリウス・アロマティクス・アウクト(Coleus aromaticus auct.)、プレクトランサス・アロマティクス・ロキシブ(Plectranthus aromaticus Roxb.)、プレクトランサス・アロマティクス・ベンス(Plectranthus aromaticus Benth.)およびプレクトランサス・アンボイニクス(ロウル)スプレング(Plectranthus amboinicus (Lour.) Spreng.))は、アフリカ南部および東部に自生するシソ科(Lamiaceae)(Labiataeとしても知られる)の多年性薬草である。プレクトランサス・アンボイニクスはまたパチョリ、スープミント、インディアン・ボリジ、インディアン・ミント、メキシカン・ミント、メキシカン・オレガノ、カントリー・ボリジおよびスパニッシュ・タイムとしても知られる。
【0003】
センテラ・アジアチカ(Centella asiatica)(以前の名称または別称としてセンテラ・アジアチカ・アーバン(Centella asiatica Urban)、センテラ・アジアチカ(エル)アーバン(Centella asiatica (L.) Urban)、ヒドロコティレ・アジアチカ・エル(Hydrocotyle asiatica L.)およびトリサントス・コチンチネンシス・ロウル(Trisanthus cochinchinensis Lour.)としても知られる)は、アジア、アフリカおよび南米に自生する、セリ科(Apiaceae)(ウンベリフェラエ(Umbelliferae)としても知られる)のマッキンラヤ科またはマッキンラヤ亜科の多年性薬用植物である。センテラ・アジアチカはまたヨーロピアン・ウォーターマーベル、ゴツコラ、コラ、ツボクサ、インディアン・ペニーワート、ウォーターマッシュルーム、ペニーウィード、インドニンジン、ホース・フーフ・グラス、パガガ、マンドゥーカパルニ、タイガー・ハーブ、スペードリーフまたはトノとしても知られる。センテラ・アジアチカの抽出物は、一般にアシアチコシドおよびマデカシン酸の2種の主要な化合物を含む。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
本発明は、少なくとも一部、例えば、糖尿病性足部潰瘍(以下、DFUともいう)を有する糖尿病患者の創傷治癒促進における、サルビゲニンおよび/またはアシアチコシドを含むここに記載するプレクトランサス・アンボイニクス抽出物およびセンテラ・アジアチカ抽出物の組み合わせを含む、局所製剤の優れた治療効果に基づく。例えば、本局所製剤は、糖尿病患者の足部潰瘍の治癒の促進に成功し、有効性は陽性対照のAquacel(登録商標)より遙かに高かった。本局所製剤の局所適用は、DFU患者における少なくともその中の活性成分(サルビゲニンおよび/またはアシアチコシド)の全身への分布が少ないことも示し、患者に安全であることが判明した。
【0005】
従って、ここに提供されるのは、(i)約0.0001~0.5%(w/w)、(例えば、約0.0001~0.1%(w/w))の量のサルビゲニンおよび約0.05~5%(w/w)、(例えば、約0.05~1%(w/w))の量のアシアチコシドを含む活性剤;(ii)約1.0~10%(w/w)の量の増粘剤;(iii)約5~30%(w/w)の量の軟膏基剤;(iv)約0.005~0.2%(w/w)の量の抗菌性防腐剤;および(v)約0.5~10%(w/w)の量の乳化剤を含む、局所製剤である。
【0006】
ある実施態様において、活性剤はプレクトランサス・アンボイニクス(PA)抽出物、センテラ・アジアチカ抽出物(CA)またはPA抽出物とCA抽出物の組み合わせであり、これは(独立してまたは組み合わせで)サルビゲニンおよびアシアチコシドを含む。
【0007】
ある実施態様において、活性剤は、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物とセンテラ・アジアチカ抽出物の組み合わせである。活性剤は約0.1~30%(w/w)であり得て、少なくともサルビゲニンおよびアシアチコシドを含む。ある場合、局所製剤は、約0.0001~0.5%(w/w)、例えば、約0.0001~0.1%(w/w)の範囲のサルビゲニンを含み得る。ある場合、局所製剤は、約0.0001~0.1%(w/w)の範囲のサルビゲニンおよび0.05~1%(w/w)の範囲のアシアチコシドを含み得る。ここに記載するあらゆる局所製剤において、その中の活性剤は、さらにシルシマリチン、マデカソサイドまたはそれらの組み合わせを含み得る。
【0008】
プレクトランサス・アンボイニクス抽出物は、局所製剤中約0.1~5%(w/w)または約0.1~1%(w/w)であり得る。ある実施態様において、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物は、フラボノイド、精油、フェノール類、テルペノイドまたはそれらの組み合わせを含む。
【0009】
プレクトランサス・アンボイニクス抽出物は、プレクトランサス・アンボイニクス全体またはその一部を、7未満(例えば、5未満)の極性指数を有する溶媒と接触させ、溶液とし、該溶液を乾燥させて、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物を取得することにより製造し得る。具体的実施態様において、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物は、(i)プレクトランサス・アンボイニクス全体またはその一部とアルコール(例えば、エタノール)を接触させて、粗製プレクトランサス・アンボイニクス抽出物を取得し;(ii)該粗製抽出物と非イオン性吸着剤樹脂を接触させ;(iii)該非イオン性吸着剤樹脂を7未満(例えば、5未満)の極性指数を有する溶媒で溶出して、溶液を調整し;そして(iv)該溶液を乾燥させて、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物を取得することを含む方法により製造される。
【0010】
これとは別にまたはこれに加えて、センテラ・アジアチカ抽出物アシアチコシド、マデカソサイドまたは両者を含み得る。ある実施態様において、センテラ・アジアチカ抽出物は、局所製剤で約0.1~20%(w/w)または約0.5~5%(w/w)である。
【0011】
ある実施態様において、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物とセンテラ・アジアチカ抽出物の比は約1:10~約10:1、例えば、約1:5~5:1である。
【0012】
局所製剤は、増粘剤を約1.0~10%(w/w)で含み得る。増粘剤の例は、セトステアリルアルコール、コレステロール、ステアリルアルコール、クロロクレゾール、白色蝋、ステアリン酸、セチルアルコールまたはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0013】
局所製剤は、軟膏基剤を約5~30%(w/w)、(例えば、10~30%(w/w))で含み得る。ある場合、軟膏基剤はクリーム基盤であり得る。軟膏基剤の例は、1以上のワセリン化合物(例えば、液体ワセリン、白色ワセリン)を含むが、これらに限定されない。
【0014】
ここに記載する局所製剤における抗菌性防腐剤は、約0.005~0.2%(w/w)、(例えば、0.01~0.2%(w/w))であり得る。それは1以上のパラベン化合物(例えば、メチルパラベンおよび/またはプロピルパラベン)を含み得る。
【0015】
局所製剤中の乳化剤(例えば、Span(登録商標)60および/またはTween(登録商標)60)は約0.5~10%(w/w)(例えば、0.5~6%(w/w))であり得る。
【0016】
ある例において、ここに記載する局所製剤は、軟膏基剤を約10~30%(w/w)、抗菌性防腐剤を約0.01~0.2%(w/w)および乳化剤を約0.5~6%(w/w)含み得る。
【0017】
ここに記載する局所製剤の何れも、所望により1以上の溶媒、例えば、プロピレングリコールをさらに含み得る。
【0018】
一例において、ここに記載する局所製剤は、約0.1~30%(w/w)の量のプレクトランサス・アンボイニクス抽出物とセンテラ・アジアチカ抽出物の組み合わせ、約1.0~10%(w/w)(例えば、約2~8%または約3~7%)の量のセトステアリルアルコール、約5~30%(w/w)(例えば、約5~25%または約5~20%)の総量の白色ワセリンと液体ワセリンの組み合わせ、約0.005~0.2%(w/w)の総量のメチルパラベンとプロピルパラベンの組み合わせおよび約0.5~10%(w/w)(例えば、0.5~8%または0.5~6%)の総量のソルビタンモノステアレートとポリソルベート60の組み合わせを含む。このような局所製剤は、さらに約2~20%(w/w)(例えば、2~10%または4~15%)の量のプロピレングリコールを含み得る。
【0019】
他の態様において、本発明は、処置を必要とする対象の創傷部位にここに記載する局所製剤を投与することを含む、創傷治癒のための方法を提供する。ある実施態様において、局所製剤は少なくとも1日1回、例えば、1日2回投与し得る。
【0020】
一例において、処置する対象は、糖尿病性足部潰瘍を有するヒト糖尿病患者であり得る。例えば、ヒト糖尿病患者はI型またはII型糖尿病を有し得る。他の例において、対象は、開放創、例えば、擦過傷、切創、裂傷、刺傷または剥脱創を有するヒト患者である。他の例において、対象は、手術創、外傷性創傷、圧迫潰瘍、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍または癌、熱傷、アトピー性皮膚炎、褥瘡が原因の創傷であり得る慢性創傷を有するヒト患者である。ある例において、対象はアクネを有するヒト患者である。
【0021】
また本発明の範囲内であるのは、(i)創傷治癒促進に使用するためのここに記載する局所製剤および(ii)創傷治癒の促進に使用するための医薬の製造におけるプレクトランサス・アンボイニクス抽出物、センテラ・アジアチカ抽出物またはそれらの組み合わせの使用であって、ここで、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物、センテラ・アジアチカ抽出物またはそれらの組み合わせがここに記載する局所製剤に製剤化される、使用である。
【0022】
本発明の1以上の実施態様の詳細を下記にさらに示す。本発明の他の性質または利点は、次の図面およびいくつかの実施態様の詳細な記載からおよびまた添付する特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物の製造工程例を示すフローチャートである。
図2図2は、センテラ・アジアチカ抽出物の製造工程例を示すフローチャートである。
図3図3Aおよび3Bは、MTTアッセイで決定した内皮細胞増殖(図3A)およびスクラッチアッセイで決定した内皮細胞遊走(図3B)に対するプレクトランサス・アンボイニクス(PA)抽出物およびセンテラ・アジアチカ(CA)抽出物の効果を示すチャートを含む。
図4図4Aおよび4Bは、SRBアッセイで決定したケラチン生成細胞増殖(図4A)およびスクラッチアッセイで決定したケラチン生成細胞遊走(図4B)に対するプレクトランサス・アンボイニクス(PA)抽出物およびセンテラ・アジアチカ(CA)抽出物の効果を示すチャートを含む。
図5図5Aおよび5Bは、インビトロ毛細血管形成アッセイにおける創傷治癒促進におけるサルビゲニンの効果を示すチャートおよびケラチン生成細胞の遊走促進におけるアシアチコシドの効果を示すチャートを含む。
図6図6は動物モデルにおける正常の創傷治癒に対するプレクトランサス・アンボイニクス(PA)抽出物およびセンテラ・アジアチカ(CA)抽出物の効果を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な記載
足部潰瘍は皮膚組織破壊および下層露出の結果として糖尿病に付随する一般的合併症である。全ての糖尿病患者は足部潰瘍を発症するリスクにある。糖尿病患者の約15~20%は足部潰瘍を発症する。その中で、患者の約33%が肢切断を必要とする。
【0025】
糖尿病性足部潰瘍(DFU)について現在利用可能な処置は、鶏眼および胼胝を予防するための糖尿病患者用シューズ、ギプス、フットブレース、圧迫包帯ならびに靴の中敷きなどの保護具の装着を含む。このような医療機器は高価であり、しばしば患者の日常生活を不便とする。あるいは、外科手技が創傷郭清と共に足部潰瘍を除くために実施され得る。今日まで、Regranex(登録商標)がDFU処置について食品医薬品局(FDA)で承認されている唯一の医薬である。2008年6月に、FDAはRegranex(登録商標)使用患者群における癌死亡のリスクの5倍増加があったことを通告するために、Regranex(登録商標)の添付文書を変更した。
【0026】
本発明は、少なくとも一部、DFU患者において創傷治癒促進に顕著に高い有効性と低副作用を示す、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物とセンテラ・アジアチカ抽出物の組み合わせを含む局所製剤の開発に基づく。この局所製剤はクリーム製剤であり、活性成分として少なくとも約0.0001~0.5%(w/w)のサルビゲニンを含む。ある実施態様において、局所製剤は、さらなる活性成分として約0.05~5%(w/w)のアシアチコシドをさらに含み得る。局所製剤は、さらに約1.0~10%(w/w)の増粘剤、約5~30%(w/w)の軟膏基剤(例えば、クリーム基剤)、約0.005~0.2%(w/w)の抗菌性防腐剤;および約0.5~10%(w/w)の乳化剤を含む。これら成分全てプロピレングリコールおよび水などの1以上の適当な溶媒に溶解させ得る。
【0027】
上記局所クリーム製剤の薬物動態試験は、DFU患者におけるその安全性を示した。より重要なことに、クリーム製剤の局所投与は、患者の創傷部位への局所適用後、少なくとも2つの活性成分、サルビゲニンおよびアシアチコシドの全身への分布が極めて低く、該局所製剤で局所処置される患者に安全であることが判明した。
【0028】
さらに、慢性糖尿病性足部潰瘍の処置のためのクリーム系局所製剤の有効性を評価するフェーズIII臨床試験が実施された。予想外に、該局所製剤は、対照製品、Aquacel(登録商標)と比較して、糖尿病患者、特に大潰瘍または足底潰瘍を有する患者の潰瘍閉鎖の促進に顕著に高い有効性を示した。
【0029】
従って、ここに提供されるのは、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物およびセンテラ・アジアチカ抽出物の一方または両方を含む局所製剤および処置を必要とする対象における創傷治癒促進のためのその使用方法である。
【0030】
局所製剤
本発明は、サルビゲニンを含むプレクトランサス・アンボイニクス抽出物、アシアチコシドを含むセンテラ・アジアチカ抽出物またはプレクトランサス・アンボイニクス抽出物とセンテラ・アジアチカ抽出物の組み合わせであり得る活性剤を含む、創傷治癒(例えば、糖尿病患者の創傷治癒)を促進するための局所製剤を提供する。ここに記載する局所製剤は、約0.0001%~約0.5%(w/w)の範囲の量のサルビゲニンおよび所望により約0.05%~約5%(w/w)の範囲の量であり得るアシアチコシドを含む。ある実施態様において、局所製剤は、約0.1~30%(w/w)の量でプレクトランサス・アンボイニクス抽出物、センテラ・アジアチカ抽出物または両者を含む。
【0031】
局所製剤は、さらに1以上の増粘剤(例えば、約1.0~10%(w/w))、約5~30%(w/w)の範囲であり得る1以上の軟膏基剤(例えば、1以上のクリーム基剤)、1以上の抗菌性防腐剤(例えば、約0.005~0.2%(w/w))、1以上の乳化剤(約0.5~10%(w/w))またはそれらの組み合わせを含む1以上の担体または添加物を含む。これらの成分を、適当な溶媒に溶解または分散させ得る。
【0032】
(i)活性剤
ここに記載する局所製剤における活性剤は、サルビゲニンおよび所望によりアシアチコシドを含む。ある実施態様において、活性剤はサルビゲニンを含むプレクトランサス・アンボイニクス抽出物もしくはアシアチコシドを含むセンテラ・アジアチカ抽出物単独またはそれらの組み合わせであり得る。局所製剤における活性剤の濃度は約0.1~30%(w/w)の範囲であり得る。例えば、活性剤は、局所製剤の約0.1~5%、0.5~3%、1~2%、1~3%、2~10%、5~10%、5~15%、10~15%、15~20%、10~20%、20~25%、15~30%、20~30%、10~30%または25~30%(w/w)を含有し得る。ここに記載する局所製剤における活性剤の濃度は、局所製剤全体としての総重量に対する乾燥形態の活性剤の総重量のパーセンテージをいう。
【0033】
ここに記載する局所製剤は、約0.0001~0.5%(w/w)のサルビゲニン、例えば、約0.001~0.5%(w/w)、約0.001~0.3%(w/w)、約0.001~0.2%(w/w)、約0.01~0.1%(w/w)、約0.002~0.5%(w/w)、約0.002~0.4%(w/w)、約0.002~0.3%(w/w)、約0.001~0.1%(w/w)、約0.005~0.01%(w/w)、約0.01~0.5%(w/w)、約0.02~0.5%(w/w)および約0.1~0.5%(w/w)を含み得る。これとは別にまたはこれに加えて、ここに記載する局所製剤は、約0.05~約5%(w/w)、例えば、約0.1~2.5%(w/w)、約0.1~2%(w/w)、約0.1~1%(w/w)、約0.25~2.5%(w/w)、約0.5~5%(w/w)、約0.5~2.5%(w/w)または約0.5~1%(w/w)の範囲の量のアシアチコシドを含み得る。
【0034】
ここで使用する用語“約”は、指定されたパラメータに対する厳密な数値境界(上限および下限両方を含む)を意図する。当業者は、特定の状況に関連する“約”の意味を理解する。ある場合、用語“約”は、特定の値±5%(例えば、±3%または±2%)をいう。
【0035】
ある実施態様において、局所製剤における活性剤は、サルビゲニンを含むプレクトランサス・アンボイニクス抽出物とアシアチコシドを含むセンテラ・アジアチカ抽出物の組み合わせである。プレクトランサス・アンボイニクス抽出物とセンテラ・アジアチカ抽出物の比は約1:10~10:1であり得る。例えば、局所製剤におけるプレクトランサス・アンボイニクス抽出物とセンテラ・アジアチカ抽出物の比は、約1:10~1:1、約1:1~10:1、約1:10~1:5、約1:5~1:1、約10:1~5:1、約5:1~1:1、約1:10~1:4、約1:4~1:1、約10:1~4:1または約4:1~1:1であり得る。
【0036】
プレクトランサス・アンボイニクス抽出物は、プレクトランサス・アンボイニクス植物から1以上の適当な溶媒を使用して得た抽出物をいう。ある例において、抽出物の製造に使用する溶媒の少なくとも一つは7未満の極性指数(例えば、5未満)を有する。後記の表1参照。ここで使用する溶媒は、他のものを溶解して溶液を形成する物質または複数物質の混合物をいう。ここに記載するプレクトランサス・アンボイニクス抽出物は、1溶媒を使用して製造し得る。ここに記載する抽出物(プレクトランサス・アンボイニクス抽出物およびセンテラ・アジアチカ抽出物の両者を含む)の製造のための各抽出工程で使用する溶媒は、単一溶媒であり得る。あるいは、2以上の溶媒の混合物であり得る。
【0037】
ここに記載するプレクトランサス・アンボイニクス抽出物は、テルペノイド(例えば、モノテルペノイド、ジテルペノイド、トリテルペノイドおよび/またはセスキテルペノイド)、フラボノイド、フェノール類、精油またはそれらの組み合わせを含み得る。プレクトランサス・アンボイニクス抽出物は、該局所製剤中に約0.1~5%(w/w)の濃度で存在し得る。例えば、局所製剤はプレクトランサス・アンボイニクス抽出物を約0.1~0.5%、0.5~1%、1~1.5%、1.5~2%、2~2.5%、2.5~3%、3~3.5%、3.5~4%、4~4.5%または4.5~5%(w/w)含み得る。あるいは、局所製剤は、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物を約0.1~1%、0.1~2%、0.1~3%、0.1~4%または0.1~5%(w/w)含み得る。具体的実施態様において、局所製剤はプレクトランサス・アンボイニクス抽出物を約0.1~1%または0.1~0.5%含み得る。
【0038】
ここに記載するプレクトランサス・アンボイニクス抽出物は、プレクトランサス・アンボイニクス全体植物またはその一部を1以上の適当な溶媒で抽出して溶液を得て、次いで該溶液を乾燥させて、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物を得ることにより製造し得る。プレクトランサス・アンボイニクス抽出物が、非極性分子であるフラボノイド、テルペノイド(例えば、モノテルペノイド、ジテルペノイド、トリテルペノイドおよび/またはセスキテルペノイド)、フェノール類または精油を含むため、抽出溶媒の少なくとも一つは、非極性分子の溶解を促進するために比較的低極性(例えば、7未満の極性指数を有する)を有し得る。“抽出”は、プレクトランサス・アンボイニクス材料を直接適当な溶媒と接触させるかまたはプレクトランサス・アンボイニクスの活性成分を、活性成分が結合した樹脂から溶出させることにより実施し得る。
【0039】
下記表1は、一般に使用される溶媒およびその極性指数(Snyder極性指数)を記載する。
【表1-1】
【表1-2】
【0040】
ある例において、7未満の極性指数を有する溶媒を、プレクトランサス・アンボイニクスからの活性成分抽出に使用して、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物を製造し得る。このような溶媒は酢酸エチル、酢酸メチル、プロパノール、ブタノールまたはクロロホルムであり得る。あるいは、溶媒は、種々の極性指数を有する1以上の溶媒の混合物であり得る。例は、エタノールと酢酸エチル、酢酸エチルとブタノール、エタノールとプロパノール、酢酸メチルとブタノールの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0041】
ある実施態様において、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物を、7未満の極性指数を有する溶媒(例えば、<約6.5、<約6.0、<約5.5、<約5.0、<4.9、<4.8、<4.7、<4.6または<4.5)などの1個の溶媒の使用を含む方法により製造し得る。例は、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ブタノール、ジクロロメタンまたはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0042】
プレクトランサス・アンボイニクス抽出物の製造工程例を下に示す。図1も参照。
【0043】
プレクトランサス・アンボイニクス全体またはその一部(例えば、葉)であり得るプレクトランサス・アンボイニクス材料を、常套の方法により製造し得る。プレクトランサス・アンボイニクス材料は新鮮植物またはその一部であり得る。あるいは、プレクトランサス・アンボイニクス材料は乾燥形態であり得る。プレクトランサス・アンボイニクスは所望により乾燥させて粉末を作ることができ、これをプレクトランサス・アンボイニクス抽出物製造のためのプレクトランサス・アンボイニクス材料として使用し得る。
【0044】
ここに記載するプレクトランサス・アンボイニクス材料の何れも、適当な溶媒で1回以上抽出して、粗製抽出物を取得し得る。粗製抽出物製造に使用する溶媒は、例えば、5を超えかつ好ましくは7未満(例えば、>5.2、>5.5、>5.8、>6またはそれを超えかつ好ましくは7未満)の極性指数を有する、高極性溶媒であり得る。例は、エタノール、アセトン、メタノール、水またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。必要であれば、粗製抽出物を慣用法で濃縮して、濃縮粗製抽出物を取得し得る。
【0045】
次いで粗製抽出物を適当な樹脂(例えば、非イオン性吸収剤樹脂)と、粗製抽出物中の活性成分の樹脂への結合を可能にする条件下に接触させ得る。プレクトランサス・アンボイニクス抽出物の製造に使用する樹脂の例は、DIAION(登録商標)HP20、DIAION(登録商標)HP20SS、Sepabeads(登録商標)SP207、AmberliteTM XAD-2またはAmberliteTM XAD-4を含むが、これらに限定されない。
【0046】
その後、樹脂を1回以上洗浄し、適当な溶媒、例えば、7未満の極性指数を有する溶媒で抽出して、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物を取得でき、次いでそれを慣用法で乾燥させて(例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥または濃縮乾燥)、乾燥プレクトランサス・アンボイニクス抽出物を取得でき、これは半固体またはペースト形態であり得る。
【0047】
ある実施態様において、樹脂吸収工程を、コンテナで粗製抽出物と樹脂を混合することにより実施し得る。他の実施態様において、樹脂分離工程をクロマトグラフィーカラム設定により実施し得る。
【0048】
ここに記載するセンテラ・アジアチカ抽出物は、センテラ・アジアチカ植物全体またはその一部から得た抽出物をいう。センテラ・アジアチカ抽出物はアシアチコシド、マデカシン酸またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0049】
センテラ・アジアチカ抽出物は、局所製剤に約0.1~20%(w/w)の濃度で存在し得る。例えば、局所製剤は、センテラ・アジアチカ抽出物を約0.1~0.5%、0.5~1%、1~1.5%、1.5~2%、2~2.5%、2.5~3%、3~3.5%、3.5~4%、4~4.5%、4.5~5%、5~5.5%、5.5~6%、6~6.5%、6.5~7%、7~7.5%、7.5~8%、8~8.5%、8.5~9%、9~9.5%、9.5~10%、10~10.5%、10.5~11%、11~11.5%、11.5~12%、12~12.5%、12.5~13%、13~13.5%、13.5~14%、14~14.5%、14.5~15%、15~15.5%、15.5~16%、16~16.5%、16.5~17%、17~17.5%、17.5~18%、18~18.5%、18.5~19%、19~19.5%または19.5~20%(w/w)含み得る。あるいは、局所製剤は、センテラ・アジアチカ抽出物を約0.1~5%、0.1~10%、0.1~15%、0.1~20%、0.5~5%、0.5~10%、0.5~15%または0.5~20%(w/w)含み得る。特定の例において、局所製剤はセンテラ・アジアチカ抽出物を約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%(w/w)含み得る。
【0050】
センテラ・アジアチカ抽出物は慣用法、例えば、米国特許5,834,437、6,417,349、6,475,536および6,267,996、CN1313124、CN1089497およびCN1194154に記載のものに従い製造し得る。下記は一例である。
【0051】
センテラ・アジアチカ材料を、常套の操作を経て製造し得る。このような材料は新鮮センテラ・アジアチカ植物またはその一部または乾燥センテラ・アジアチカであり得る。センテラ・アジアチカ材料を、適当な水、エタノールまたはそれらの混合物などの溶媒で抽出して、粗製抽出物を取得し得る。所望により濃縮し得る粗製抽出物を適当な樹脂と混合するかまたは該樹脂を充填したカラムに負荷する。1回以上洗浄後、樹脂を適当な溶媒で溶出し得る。得られた溶離物を濃縮してペーストを形成でき、これを慣用法、例えば、真空乾燥で乾燥させてセンテラ・アジアチカ抽出物の粉末を取得し得る。必要なとき、センテラ・アジアチカ粉末を篩過(例えば、100番ふるい)により粉砕し得る。図2も参照のこと。
【0052】
一例において、プレクトランサス・アンボイニクスの抽出物を次のとおり製造し得る。プレクトランサス・アンボイニクスの葉および/または幹を含む地上部分(約1.5g)を採取し、室温で30分~6時間、7未満の極性を有する溶媒(例えば、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ブタノール、ジクロロメタンまたはそれらの組み合わせ)で抽出し得る。あるいは、この抽出工程を約50~80℃の温度で実施し得る。得られた粗製抽出物を非イオン性吸着剤樹脂カラムに直接負荷し、6未満の極性を有する溶媒(例えば、エタノール、酢酸エチル、ブタノール、ジクロロメタン、ヘキサン、トルエンまたはそれらの組み合わせ)で溶出し得る。溶出成分を集め、6未満の極性を有する溶媒(例えば、ここに記載のもの)での抽出により精製し得る。得られた濾液を集めて、PA抽出物を製造し得る。
【0053】
センテラ・アジアチカの抽出物を、上記と同一または類似の方法で製造し得る。PA抽出物および/またはCA抽出物を減圧ロータリー・エバポレーターを使用して濃縮し得る。
【0054】
(ii)担体および添加物
局所製剤は、増粘剤、軟膏基剤(例えば、クリーム基剤)、抗菌性防腐剤、乳化剤および/または溶媒を含む1以上の担体および添加物をさらに含む。
【0055】
“増粘剤”は、製剤を濃厚化するのに使用する添加物である。増粘剤の例は、例えば、セトステアリルアルコール、コレステロール、ステアリルアルコール、クロロクレゾール、白色蝋、ステアリン酸、セチルアルコールまたはそれらの組み合わせを含み得る。増粘剤は、局所製剤に約1.0~10%(w/w)の濃度で存在し得る。例えば、局所製剤は、増粘剤を約1~1.5%、1.5~2%、2~2.5%、2.5~3%、3~3.5%、3.5~4%、4~4.5%、4.5~5%、5~5.5%、5.5~6%、6~6.5%、6.5~7%、7~7.5%、7.5~8%、8~8.5%、8.5~9%、9~9.5%または9.5~10%(w/w)含み得る。あるいは、局所製剤は増粘剤を約1~5%、2.5~7.5%または5~10%(w/w)含み得る。
【0056】
“軟膏基剤”は活性剤が混合され得るあらゆる半固体基剤または媒体であり得る。軟膏基剤の例は、油性軟膏基剤(例えば、白色ワセリンまたは白色軟膏)、吸水軟膏基剤(例えば、親水性ワセリン、無水ラノリン、AquabaseTM、Aquaphor(登録商標)およびPolysorb(登録商標))、水/油エマルジョン軟膏基剤(例えば、コールドクリーム、含水ラノリン、バラ水軟膏、HydrocreamTM、Eucerin(登録商標)およびNivea(登録商標))、油/水エマルジョン軟膏基剤(例えば、親水性軟膏、DermabaseTM、Velvachol(登録商標)およびUnibase(登録商標))および水混和性軟膏基剤(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)軟膏およびPolybaseTM)を含むが、これらに限定されない。軟膏基剤は薬理学的に不活性であるが、皮膚軟化保護フィルムを提供するために水を捕捉する。具体的実施態様において、軟膏基剤は任意のワセリン化合物(例えば、ワセリン、白色ワセリン、白色軟パラフィン、液体ワセリン、液体パラフィン)であり得る。さらに具体的実施態様において、軟膏基剤は白色ワセリン(CAS number 8009-03-8)である。軟膏基剤は局所製剤に約5~30%(w/w)、例えば、10~30%(w/w)の濃度で存在し得る。例えば、局所製剤は軟膏基剤を約5~25%、5~20%、5~15%、5~15%、10~15%、15~20%、20~25%または25~30%(w/w)含み得る。特に、局所製剤は軟膏基剤を約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%または30%(w/w)含み得る。
【0057】
ある実施態様において、ここに記載する“軟膏基剤”は媒体として20%未満の水および揮発物および50%を超える炭化水素、蝋またはポリオールを含む。
【0058】
ある実施態様において、ここに記載する“軟膏基剤”は“クリーム基剤”であり、これは、薬物原体の媒体として20%を超える水および揮発物を含むおよび/または一般に50%未満の炭化水素、蝋またはポリオールを含む。クリーム基剤は、親油相および水相を含む多相製剤であり得る。ある場合、クリーム基剤は親油性クリーム基剤であり、これは連続相として親油相を有する。このようなクリーム基剤は、通常羊毛アルコール、ソルビタンエステルおよびモノグリセリドなどの油中水型乳化剤を含む。他の例では、クリーム基剤は親水性クリーム基剤であり、これは連続相として水相を有する。このようなクリーム基剤は、一般にナトリウム石鹸またはトリエタノールアミン石鹸、硫酸化脂肪アルコール、ポリソルベートならびにポリオキシル脂肪酸および脂肪アルコールエステルなどの水中油型乳化剤を含み、これは、必要であれば、油中水型乳化剤と組み合わせ得る。
【0059】
“抗菌性防腐剤”は、微生物の破壊、微生物の繁殖もしくは増殖の阻止または微生物の病原活性の阻止が可能なあらゆる化合物であり得る。抗菌性防腐剤の例は、パラベン化合物(パラ-ヒドロキシ安息香酸のエステル;例えば、パラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ヘプチルパラベン、ベンジルパラベン、イソブチルパラベン、イソプロピルパラベン、ベンジルパラベンまたはそのナトリウム塩)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ホウ酸、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコールおよびチメロサールを含むが、これらに限定されない。抗菌性防腐剤は、局所製剤に約0.005~0.2%、例えば、約0.01~0.2%(w/w)の濃度で存在し得る。例えば、局所製剤は、抗菌性防腐剤を約0.005~0.01%、0.01~0.05%、0.05~0.1%、0.1~0.15%または0.15~0.2%(w/w)含み得る。特に、局所製剤は抗菌性防腐剤を約0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19または0.2%(w/w)含み得る。
【0060】
“乳化剤”は、通常非混和性(混合不能またはブレンド不能)である2以上の液体の混合物について安定剤として働く化合物または物質をいう。乳化剤の例は、天然乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、chondrux、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、蝋およびレシチン)、コロイド粘土(例えば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]およびVeegum[ケイ酸アルミニウム・マグネシウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、モノステアリン酸トリアセチン、二ステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸プロピレングリコールおよびポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマーおよびカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびメチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート[Tween(登録商標)20]、ポリオキシエチレンソルビタン[Tween(登録商標)60]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート[Tween(登録商標)80]、モノパルミチン酸ソルビタン[Span(登録商標)40]、モノステアリン酸ソルビタン[Span(登録商標)60]、トリステアリン酸ソルビタン[Span(登録商標)65]、モノオレイン酸グリセリルおよびモノオレイン酸ソルビタン[Span(登録商標)80])、ポリオキシエチレンエステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート[Myrj(登録商標)45]、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリエトキシ化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレートおよびSolutol)、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、Cremophor(登録商標))、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[Brij(登録商標)30])およびポリ(ビニル-ピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、トリエタノールアミンオレアート、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、Pluronic F 68、Poloxamer 188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウムおよびドクサートナトリウムおよび/またはこれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。乳化剤は、局所製剤に約0.5~10%(w/w)、例えば、0.5~6%(w/w)の濃度で存在し得る。例えば、局所製剤は、乳化剤を約0.5~1%、1~1.5%、1.5~2%、2~2.5%、2.5~3%、3~3.5%、3.5~4%、4~4.5%、4.5~5%、5~5.5%、5.5~6%、5~10%、6~10%または8~10%(w/w)含み得る。特に、局所製剤は乳化剤を約0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%または10%(w/w)含み得る。
【0061】
本発明の局所製剤は、1以上の溶媒(例えば、非水溶媒または水)を含み得る。非水溶媒の例は、プロピレングリコール、グリコールおよびそれらの混合物を含むあらゆる既知の溶媒を含み得るが、これらに限定されない。非水溶媒は、局所製剤に約2~65%(w/w)の濃度で存在し得る。例えば、局所製剤は、溶媒を約2~15%、15~30%、30~45%または45~65%(w/w)含み得る。ある実施態様において、本発明の局所製剤は水も含み得る。
【0062】
ある実施態様において、本発明の局所製剤はさらに1以上の皮膚軟化剤、芳香剤または色素を含み得る。局所製剤はまた創傷ドレッシング材(例えば、接着剤を伴うバンデージ、軟膏パッチなど)と組み合わせても使用し得る。
溶媒の非限定的例としては、シクロヘキサン、n-ヘキサン、n-デカン、i-オクタン、オクタン、ブチルエーテル、四塩化炭素、トリエチルアミン、i-プロピルエーテル、トルエン、p-キシレン、t-ブチルメチルエーテル、ベンゼン、ベンジルエーテル、ジクロロメタン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、二塩化エチレン、1-ブタノール、i-ブチルアルコール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、1-2-プロパノールプロパノール、酢酸メチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン(MEK)、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル、1,4-ジオキサンまたはp-ジオキサンが挙げられる。
【0063】
創傷治癒を促進する方法
ここに記載する局所製剤の何れも、処置を必要とする対象における創傷治癒の促進に使用し得る。局所製剤を、適当な用量および処置レジメンに従い創傷部位に適用し得る。本方法のための用量および処置レジメンは、処置する創傷の性質および状態、患者の年齢および症状および先行または併行する処置如何による。ある場合、局所製剤は、週に1回、1日おきに1回、1日1回、1日2回、1日3回または1日4回、適当な期間適用し得る。処置は、創傷が治癒したとき終了し得る。必要なとき、例えば、創傷が再発したら、処置を再開し得る。
【0064】
用語“創傷”は、切断、殴打または他の衝撃が原因(例えば、皮膚障害などの医学的状態が原因)の、生存組織への傷害であり、一般に皮膚が切れるかまたは裂けるものである。創傷は、医学的状態、例えば、皮膚障害と関係し得る。用語“創傷治癒”は、失活または欠損細胞構造および/または組織層の入替えの動的および複合的過程をいう。用語“創傷治癒促進”または“創傷治癒を促進する”は、失活または欠損細胞構造および/または組織層の入替えのレベルまたは速度の増加の誘発をいう。一例として、創傷治癒促進は、部分的または完全な潰瘍閉鎖または潰瘍治癒速度増加(プラセボで処置された対照潰瘍と比較して、潰瘍サイズ、面積または重症度のより迅速な変化、より迅速な潰瘍の閉鎖および/または潰瘍サイズ、面積または重症度のベースラインからのパーセント変化の加速を含む)により示され得る。
【0065】
局所製剤により処置する対象はヒトまたは非ヒト哺乳動物であり得る。ある実施態様において、対象は、生体構造の正常な連続性の破壊をもたらす生存組織(例えば、皮膚)への傷害または損傷である開放創を有するヒト患者である。開放創は、擦過傷、切創、裂傷、刺傷、剥脱創、切断または他の類似傷害を含み得るが、これらに限定されない。
【0066】
他の実施態様において、対象は、生体構造の正常な連続性を破壊し、規則正しい一連の段階および/または予測どおりの時間で治癒しない、生存組織(例えば、皮膚)への傷害または損傷であり得る慢性創傷を有するヒト患者である。慢性創傷は、手術創、外傷性創傷、圧迫潰瘍、静脈性潰瘍または糖尿病性潰瘍を含み得るが、これらに限定されない。他の例において、慢性創傷は、疾患または障害、例えば、癌、熱傷、褥瘡、アトピー性皮膚炎などの皮膚障害と関係し得る。
【0067】
一例において、対象は、糖尿病(例えば、I型またはII型)と関係する足部潰瘍を有するヒト患者である。糖尿病は、長期間にわたり高血糖をもたらす代謝疾患の一群である。糖尿病は、インスリンを十分に産生しない膵臓または産生されたインスリンに適切に応答しない体細胞に起因し得る。主要3タイプの糖尿病は、I型(“インスリン依存性糖尿病”(IDDM)または“若年性糖尿病”としても知られる;膵臓が十分なインスリンを産生しないことに起因)、II型(“非インスリン依存性糖尿病”(NIDDM)または“成人発症糖尿病”としても知られる;産生されたインスリンに体の細胞が適切に応答しないことに起因)および妊娠糖尿病(糖尿病の既往病歴がなく、高血糖が観察される妊娠中に見られる)である。糖尿病性足部潰瘍(糖尿病性潰瘍としても知られる)などの慢性創傷を含むが、これに限定されない多くの重度な合併症が糖尿病患者で見られる。
【0068】
ある実施態様において、ここに記載する方法により処置する対象は、例えば、2cmより大きい(例えば、3cm、4cmまたは5cm)面積の潰瘍である、重度創傷を有する。ある例において、対象は1以上の足底潰瘍を有する。
【0069】
創傷治癒促進に使用するためのキット
本発明はまた、創傷治癒促進に使用するためのキットも提供する。このようなキットは、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物、センテラ・アジアチカ抽出物またはプレクトランサス・アンボイニクス抽出物とセンテラ・アジアチカ抽出物の組み合わせを含む、ここに記載する局所製剤を含む1以上のコンテナを含み得る。
【0070】
ある実施態様において、キットは、ここに記載する方法の何れかにより使用するための指示を含み得る。包含される指示は、ここに記載する方法の何れかにより創傷治癒を促進するための局所製剤の投与の説明を含み得る。キットは、さらに、個体が処置を必要とする創傷を有するか否かの特定に基づく、処置に適する個体の選択に係る説明を含み得る。
【0071】
局所製剤の使用に関する指示は、一般に意図する処置のための投与量、投与スケジュールおよび投与経路についての情報を含む。コンテナは、単位用量、大量包装(例えば、複数用量包装)または副単位用量であり得る。本発明のキットに備えられる指示は、一般にラベルまたは添付文書(例えば、キットに包含される文書)であるが、機器読み取り可能指示(例えば、磁気または光記憶ディスクに含まれる指示)も許容される。
【0072】
ラベルまたは添付文書は、組成物が創傷治癒を促進するために使用することを示す。指示は、ここに記載する方法の何れかの実施のために提供され得る。
【0073】
本発明のキットは、適当な梱包材料で梱包される。適当な梱包材料は、バイアル、ボトル、ジャー、柔軟性梱包材料(例えば、密閉マイラーまたはビニール袋)などを含むが、これらに限定されない。組成物中の少なくとも1個の活性剤は、プレクトランサス・アンボイニクス抽出物、センテラ・アジアチカ抽出物およびプレクトランサス・アンボイニクス抽出物とセンテラ・アジアチカ抽出物の組み合わせからなる群から選択される活性剤である。
【0074】
キットは、所望により解釈情報などのさらなる要素を備えてよい。通常、キットは、コンテナおよび該コンテナ上にまたは付随してラベルまたは添付文書を含む。ある実施態様において、本発明は、上記キットの内容物を含む、製品を提供する。
【0075】
さらに詳細化することなく、当業者は、上記に基づき、本発明をその完全な程度で実施できると考える。次の具体的実施態様は、それ故に、単はる説明であり、他の記載を、如何なる意味においても限定しないと解釈されるべきである。ここに引用する全ての刊行物は、ここに記載する目的または主題のために、引用により本明細書に包含させる。
【実施例
【0076】
実施例1:内皮細胞増殖および遊走に対するプレクトランサス・アンボイニクス抽出物およびセンテラ・アジアチカ抽出物の効果
(i)MTTアッセイ-増殖
プレクトランサス・アンボイニクス(PA)抽出物およびセンテラ・アジアチカ(CA)抽出物を、ここに提供する記載に従い製造した。EA.hy926内皮細胞株を本試験で使用した。細胞を96ウェルプレートで4×10細胞/ウェル密度で1日培養し、次いでPAまたはCA抽出物で無血清培地中70時間処理した。処理後、細胞をMTT色素で2時間染色した。
図3Aに示すとおり、PA抽出物は細胞増殖を増強したが、細胞増殖に対するCAの効果はPA抽出物ほど良好ではなかった。
【0077】
(ii)スクラッチアッセイ-遊走
EA.hy926内皮細胞を、48ウェルプレートで8×10細胞/ウェル密度で24時間培養した。こうして形成させたコンフルエント細胞単層をスクラッチし、PAまたはCA抽出物で無血清培地中72時間処理した。
この試験から得られた結果は、PA抽出物が、創傷治癒に必須である内皮細胞遊走を有意に増強することを示した。CA抽出物で処理した細胞も遊走の徴候を示したが、結果はPA抽出物ほど有意ではなかった。図3B
【0078】
実施例2:ケラチン生成細胞増殖および遊走に対するプレクトランサス・アンボイニクス抽出物およびセンテラ・アジアチカ抽出物の効果
(i)SRBアッセイ-増殖
ケラチン生成細胞株、HaCaT細胞を本試験で使用した。細胞を96ウェルプレートで4×10細胞/mLの密度で1日培養し、次いで上記実施例1のPAまたはCA抽出物で24時間処理した。処理後、細胞を固定し、SRB色素で染色した。
図4Aに示すとおり、PAおよびCAの両方ケラチン生成細胞の細胞増殖を増加させる。
【0079】
(ii)スクラッチアッセイ-遊走
HaCaTケラチン生成細胞を48ウェルプレートで8×10細胞/ウェル密度で1日培養した。こうして形成させたコンフルエント細胞単層をスクラッチし、PAまたはCA抽出物で24時間処理した。創傷治癒の面積を定量した。
この試験から得られた結果は、PA抽出物がケラチン生成細胞で用量依存性に細胞遊走(創傷治癒効果)を誘発したことを示した。CA抽出物も、ケラチン生成細胞遊走を比較的高濃度(例えば、30μg/mL)で誘発した。
【0080】
実施例3:サルビゲニンおよびアシアチコシドの創傷治癒効果
ヒト臍静脈細胞(HUVEC)を使用するインビトロ毛細血管形成アッセイを実施して、ここに開示するPA抽出物の活性剤であるサルビゲニンの創傷治癒効果を試験した。
簡潔には、96ウェルNunclonプレートをMatrigel(50μL/ウェル)で被覆し、37℃で30分インキュベートして、ゲル化を促進させた。HUVECをM200培地で培養し、2~4継代の細胞を、Matrigel被覆ウェルの各々に播種した(100μLの培地に3×10細胞)。図5Aに示す試験化合物の一連の希釈(陽性対照として塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)およびサルビゲニンを含む)を培養培地に添加して、管構造に対する生物学的効果を試験した。37℃で5%CO加湿雰囲気中、6時間のインキュベーション後、HUVECを培地から吸引し、固定し、低倍率(10倍)場の指定領域内の完全毛細管ネットワークを撮像し、コンピュータ画像ソフトウェア、ImagePro Plus V.4.5の助けを借りて計数した。試験データを、同じ条件下でインキュベートした未処理HUVEC対照培養に対する完全毛細血管形成のパーセンテージとして表した。
図5Aに示すとおり、サルビゲニンはHUVEC細胞による管構造を有意に増加させた。
アシアチコシドの創傷治癒効果を試験するために、スクラッチ遊走アッセイを次のとおり実施した。HaCaTケラチン生成細胞を、48ウェルプレートに8×10細胞/ウェル密度で1日培養した。こうして形成させたコンフルエント細胞単層をスクラッチし、アシアチコシドで24時間処理した。創傷治癒の面積を定量した。
この試験から得られた結果は、アシアチコシドがケラチン生成細胞において細胞遊走(創傷治癒効果)を誘発したことを示した。
図5Bに示すとおり、アシアチコシドは、HaCaT細胞遊走を有意に促進し、これは創傷治癒に貢献する。
【0081】
実施例4:プレクトランサス・アンボイニクスの抽出物は正常の創傷治癒を促進した
本試験を、動物モデルにおける正常の創傷閉鎖に対するPA抽出物を含む種々のクリーム系局所製剤の効果を調べるために実施した。
Sprague-Dawleyラットを4群に無作為に割り当てた。ラットをペントバルビタールで麻酔し、手術領域を除毛した。各ラットの背部中央領域の皮膚を、外科用ナイフ(2cm×2cm)を使用して切開した(全層)。
4群のラットを、ここに記載する方法により製造した次のクリーム製剤で処置した。
- G1:ブランク対照としてのクリーム、
- G2:対照薬製剤としてのWinsolve-b軟膏(Yungshin Pharma, Co. LTD.、台湾から)
- G3:製剤I(1.25%PA抽出物)および
- G4:製剤II(0.25%PA抽出物)。
これら製剤を各創傷部位に1日2回適用し、創傷を寒冷紗で覆った。動物が創傷を引っ掻くことを阻止するために、Sprague-Dawleyラット(n=6;12週齢)にフードを装着した。創傷閉鎖測定について、創傷画像を4日目、6日目、8日目、10日目、12日目、14日目および16日目に撮った。撮像時、標準ものさしを創傷の横に置いた。Image pro(Media cybernetics)で創傷を分析する前に、撮像距離の差異による誤差を避けるために、画像内の標準ものさしで長さを標準化した。
この試験から得られた結果は、製剤IおよびIIが全てラットにおける創傷閉鎖促進の有望な効果を示したことを示した。表2および図6
【表2】
*CT50:50%創傷閉鎖までの時間(日)
【0082】
実施例5:プレクトランサス・アンボイニクス抽出物およびセンテラ・アジアチカ抽出物を含む局所クリームのインビボ薬物動態試験
プレクトランサス・アンボイニクスおよびセンテラ・アジアチカの抽出物(0.0001~0.1%(w/w)サルビゲニンおよび重量で0.05~1%(w/w)アシアチコシドを含む計1.25%(w/w))を含む局所製剤の薬物動態性質を、慢性糖尿病性足部潰瘍(DFU)を有するヒト患者で評価した。局所製剤中のPA抽出物およびCA抽出物を、ここに記載する方法により製造した。局所製剤はクリーム系であり、セトステアリルアルコール(約1.0~10%(w/w)、例えば、約3.5~6.5%(w/w))、白色ワセリンおよび液体ワセリン350cps(計約5~30%(w/w)、例えば、計約5~15%(w/w))、メチルパラベンおよびプロピルパラベン(計約0.005~0.2%(w/w)、例えば、計0.005~0.2%(w/w))、Span(登録商標)60およびTween(登録商標)60などの乳化剤(計約0.5~10%(w/w)、例えば、計約0.5~5%(w/w))およびプロピレングリコールなどの1以上の溶媒(約2~20%(w/w)、例えば、約4~10%(w/w))をさらに含んだ。本抽出物を、液体ワセリン、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール、白色ワセリン、Span(登録商標)60、Tween(登録商標)60、プロピルパラベン、メチルパラベンおよび水をさらに含むクリーム系局所製剤に製剤した。
計12患者が治験を終了した。各対象は、1日目にクリーム製剤を1回適用され、採血し、次いで2日目から13日目まで1日2回適用され、さらなる採血が14日目の最終投与後に計画された。血液サンプルを、本クリームの2つの活性成分であるサルビゲニンおよびアシアチコシドの血漿濃度を、検証済みLC/MS/MS法により測定するために分析した。1日目に得た結果は、12患者中、2患者がサルビゲニンの≦12.403pg/mLの検出可能血漿濃度を有し、5患者がアシアチコシドの≦9.276ng/mLの検出可能血漿濃度を有したことを示した。
14日目に得た結果は、12患者中4名がサルビゲニンの≦16.972pg/mLの検出可能血漿濃度を有し、12患者中5名がアシアチコシドの≦6.154ng/mLの検出可能血漿濃度を有したことを示した。
総合すると、この試験から得られた結果は、この臨床試験で使用した局所製剤の局所適用は、サルビゲニンおよびアシアチコシドの両方の限定的な全身への分布をもたらしたことを示した。
合計で6つの有害事象(AE)が3患者で報告された。全AEは軽度であり、これらのAEは、治験医により、治験処置と“無関係”または“無関係の可能性”とされた。終了時、4つのAEは改善し、2つのAEは無変化であった。顕著なAE、死亡または重度AEの報告はなかった。
結論:この14日間治験は、本治験に使用した局所製剤の局所適用が、少なくとも活性成分サルビゲニンおよびアシアチコシドの限定的な全身への分布をもたらし、DFU患者に安全であることを明らかにした。
【0083】
実施例6:プレクトランサス・アンボイニクス抽出物およびセンテラ・アジアチカ抽出物を含む局所クリームを使用するフェーズIII臨床試験
中間解析において、DFUを有する計124患者が、上記実施例5の局所クリーム製剤の創傷治癒効果を評価する多施設治験において無作為化された。治験参加者の組み入れ基準および除外基準を下に挙げる。Aquacel(登録商標)Hydrofiber(登録商標)ドレッシング材(ConvaTec, Princeton, NJ, USA)を対照処置として使用した。
【0084】
選択基準
患者組み入れ基準
次の全基準を満たすならば、患者は参加に適格であった。
1. 最初の治験評価前に同意書に署名した;
2. 少なくとも20歳かつ80歳未満;
3. スクリーニング中または無作為化前3か月以内に測定してHbA1c<12.0%を有する糖尿病(I型またはII型);
4. スクリーニング中または無作為化前3か月以内に測定して標的肢の足関節・上腕血圧指数少なくとも0.8;
5. 次の特徴を有する標的潰瘍:
a. ワグナー潰瘍分類系によりグレード1または2;
b. 足首より高くない;
c. 活動性感染無し;
d. 創傷郭清後1~25cmの断面積;および
e. 無作為化前少なくとも4週間存在;
6. 出産可能な人は妊娠検査陰性であり、スクリーニング来院時授乳していなかった;および
7. 計画された通院に参加することが可能であり、かつその意思があり、治験法に従う。
【0085】
除外基準
次の何れかが当てはまれば、患者を参加から除外した。
1. 創傷郭清により除去不可能な壊死、化膿または洞管の存在;
2. 臨床検査的および/または放射線検査により確定される急性シャルコー神経障害性関節症;
3. 無作為化前<4週間の処置標的肢における血流増加を目的とした血行再建術を経験;
4. アルブミン<2.5g/dLにより改訂される低栄養状態;
5. 正常上限の>3倍のASTおよび/またはALT;
6. 正常上限の>2倍の血清クレアチニン;
7. 無作為化前4週間以内の免疫抑制性または化学療法剤、放射線療法または全身性コルチコステロイドでの処置;
8. 無作為化前4週間以内の何らかの治験薬または治療の使用;
9. 遵守を危うくすることが懸念される精神状態(例えば、自殺念慮)、現在のまたは慢性のアルコールまたは薬物濫用問題;または
10. 何らかの他の理由で治験医により治験に適しないと判断。
【0086】
個々の患者の中断基準
患者は理由を述べる必要なく、罰または不利益を被ることなく、あらゆる理由でいつでも治験を自由に止められた。
さらに、患者は、次の何れかが適用されるならば、治験を中止した。
1. 治験プロトコール違反および/または著しい逸脱;
2. 満足な有効性がないとき(ワグナーグレードの3レベルの悪化と定義);
3. 安全性懸念;
4. 追跡不能;
5. 同意撤回;
6. 患者の最良の利益と考えられたならば;または
7. スポンサーによる治験終了。
【0087】
治験目的および結果
本治験の主要目的は、DFUを有するヒト患者における創傷治癒に対するクリーム系局所製剤の使用を評価することであった。
主要変数は、各群で16週間以内に治癒した標的潰瘍数であった。主要有効性結果は、処置終了時の2処置群間の標的潰瘍の完全治癒率の比較であった。
この治験の目的で、完全治癒は、少なくとも2週間排膿せずに維持され、盲検化された評価者により確認された完全上皮化として規定された。
副次有効性結果は、完全潰瘍治癒までの時間(元々の治癒の時間を、治癒までの時間としてとった);ベースラインからの潰瘍表面積のパーセンテージ変化;潰瘍表面積が50%減少した対象のパーセンテージ;および標的潰瘍の感染発症率であった。
安全性結果は、治療により発現した有害事象、臨床検査値およびバイタルサインを含んだ。
探索的エンドポイントは、比較期間の終了時に完全創傷治癒が確認された対象において評価された、フォローアップ期間内の標的潰瘍再発であった。
【0088】
結果
実施例5に記載の局所クリーム製剤またはAquacel(登録商標)で処置した糖尿病患者の創傷治癒有効性を、最大の解析対象集団(FAS)および修飾された治療意図に基づく解析(mITT)集団において解析した。全体的FASおよびmITT集団において、表3に示す結果は、局所製剤で処置した患者で、Aquacel(登録商標)で処置した患者と比較して、高いパーセンテージが完全潰瘍治癒を達成したことを示す。この結果は、この治験で使用した局所製剤が、創傷治癒の既存製品であるAquacel(登録商標)より、少なくとも治験の主要評価項目である完全潰瘍治癒で優れていることを示した。
さらに、サブグループ解析を、ベースライン潰瘍面積>5cmおよび足底潰瘍を有する患者集団で実施した。この種の潰瘍は、当分野で回復が困難であることが知られている。表3における結果は、本局所製剤で処置した患者の完全治癒率が、Aquacel(登録商標)で処置した患者の完全治癒率より高かったことを示した。
【表3】
*:カイ二乗検定
それ故に、このフェーズIII臨床試験からの中間結果は、ここで試験したPAおよびCAの両方抽出物を含む局所クリーム製剤が、対照薬Aquacel(登録商標)Hydrofiber(登録商標)と比較して、DFUを有する患者における創傷治癒促進に優れた治療効果を有することを示す。
【0089】
他の実施態様
本明細書に開示した全ての性質を、あらゆる方法で共に組み合わせ得る。本明細書に開示した各性質を、同一、均等または類似の目的で働く他の性質に置き換え得る。それ故に、特に断らない限り、記載する各性質は、均等または類似性質の一般的な系列の一例に過ぎない。
【0090】
上記記載から、当業者は本発明の必須特徴を容易に確認でき、その精神および範囲から逸脱することなく、種々の使用および条件に合わせるために、本発明に種々の変更および修飾をなし得る。それ故に、他の実施態様も特許請求の範囲の範囲内である。
【0091】
均等物および範囲
特許請求の範囲において、単数表現は、特に反する記載がない限りまたは文脈から他に明らかでない限り、1または1を超えることを意味し得る。1以上の群のメンバーの間に“または”を含む特許請求の範囲または本明細書の記載は、特に反する記載がない限りまたは文脈から他に明らかでない限り、群のメンバーの1、1超または全てが存在する、用いられるまたは所定の製品もしくは工程と他に関係するならば、満たされる。本発明は、群の厳密に1メンバーが存在する、用いられるまたは所定の製品もしくは工程と他に関係する実施態様を含む。本発明は、群の1を超えるまたは全てのメンバーが存在する、用いられるまたは所定の製品もしくは工程と他に関係する実施態様を含む。
【0092】
さらに、本発明は、1以上の列記された請求項からの1以上の限定、要素、条項および記述用語が他の請求項に導入される、全ての変形、組み合わせおよび並び替えを包含する。例えば、他の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基本請求項に従属する任意の他の請求項に見られる1以上の限定を含むように修飾され得る。要素が一覧で、例えば、マーカッシュ構造形式で提示されるとき、要素の各サブグループも開示され、任意のサブグループが該サブグループから除かれ得る。一般に、本発明または本発明の態様が特定の要素および/または性質を含むとして記載されるとき、ある本発明の実施態様または本発明の態様は、このような要素および/または性質からなるかまたはこれらを本質的に含む。簡潔にする目的で、これらの実施態様は、それらの文言ではここに具体的に示していない。用語“含む”および“包含する”は開かれており、さらなる要素または工程の包含を許容するとして解釈されることも注意すべきである。範囲が示されるとき、終点が含まれる。さらに、特に断らない限りまたは文脈からおよび当業者の理解から明らかではない限り、範囲として示す値は、文脈に明らかに反しない限り、本発明の種々の実施態様に述べられている範囲内のあらゆる特定の値および下位範囲を、その範囲の下限の1/10まで仮定し得る。
【0093】
この発明は、種々の登録特許および公開特許出願を参照しており、これら全て引用により本明細書に包含させる。包含させた引用文献と本明細書で矛盾があるならば、本明細書が支配する。さらに、先行技術の範囲内に入る本発明の何らかの特定の実施態様は、任意の1以上の請求項から明示的に除外される。このような実施態様が当業者に知られているため、除外が本明細書に明示されていなくても、除外し得る。先行文献の存在と関係するか否かにかかわらず、任意の理由で、本発明の任意の特定の実施態様を任意の請求項から除外し得る。
【0094】
当業者は、日常的なものを超える実験を使用することなく、ここに記載する特定の実施態様の多くの均等物を認識し、または確認することができる。ここに記載する本実施態様の範囲は、上記記載により限定されることを意図せず、むしろ、添付する特許請求の範囲のとおりである。当業者は、添付する特許請求の範囲に規定する本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本記載に種々の変更および修飾を付し得る。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6