(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】RMP組成物および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/18 20150101AFI20240815BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
A61K35/18
A61P7/04
(21)【出願番号】P 2019529843
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(86)【国際出願番号】 US2017063700
(87)【国際公開番号】W WO2018102409
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-28
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519194467
【氏名又は名称】アールエックスエムピー セラピューティクス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(72)【発明者】
【氏名】アーン、ヨーン、エス.
(72)【発明者】
【氏名】ジー、ヴェンケ
(72)【発明者】
【氏名】ホーストマン、ローレンス、エル.
(72)【発明者】
【氏名】パムック、リファット
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】齋藤 恵
【審判官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-506569(JP,A)
【文献】Blood 128(22) (2016.12.02), 3770
【文献】Blood 74(5) (1989), 1481-1485
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/18
A61P 7/04
CAPlus/EMBASE/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
350pmol/分/10
6粒子/μL未満のアセチルコリンエステラーゼ(AchE)活性を示す赤血球由来微粒子(RMP)を含む組成物
であって、前記RMPが、赤血球を少なくとも25,000psiの圧力でアパーチャーを通して押しやり、破裂した赤血球を生成すること、および当該破裂した赤血球を固体表面上に衝突させることにより更に断片化することにより生成される、組成物。
【請求項2】
前記RMPが、200pmol/分/10
6粒子/μL未満のアセチルコリンエステラーゼ(AchE)活性を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物中の前記RMPの20%~50%が、ホスファチジルセリンを提示する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中の前記RMPの30%~45%が、ホスファチジルセリンを提示する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、全血および血漿のトロンボエラストグラフィー(TEG)で測定した場合、最初の血餅形成までの時間を少なくとも2分短縮する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記RMPの平均直径が、0.40~0.6μmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記RMPの平均直径が、0.40~0.5μmである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記RMPの平均直径が、0.47μmである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記RMPの内部密度が、赤血球全体の内部密度の3.5%未満である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
フローサイトメトリーの側方散乱光シグナルで測定した場合、前記RMPの内部密度が、赤血球全体の内部密度の約0.5~3.0%である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
対象の過剰出血を処置するための、請求項1~
10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記過剰出血が、血小板減少症または血小板機能異常症によって引き起こされる、請求項
11に記載の組成物。
【請求項13】
前記血小板機能異常症が、薬物処置によって引き起こされる、請求項
12に記載の組成物。
【請求項14】
前記過剰出血が、抗凝固剤によって引き起こされる、請求項
11に記載の組成物。
【請求項15】
前記抗凝固剤が、クマジン、低分子ヘパリン、プロトロンビナーゼ複合体阻害剤、FXa阻害剤またはトロンビン阻害剤である、請求項
14に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年11月30日に出願の米国特許仮出願第62/428,155号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、赤血球由来微粒子を含む組成物(RMP)および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
過剰出血は、外傷および出血性合併症における致命的な合併症のうち最も一般的なものの一つである。輸血は、過剰失血の処置の主流である。出血障害の根本原因を標的とする治療法は、病因に応じて異なる。血小板数を増加させる血小板輸血または治療介入は、低血小板数(血小板減少症)に起因する出血を止めるために使用される。凝固障害の場合、通常、血液因子補充物が投与される。血友病Aでは、第VIII因子を対象に投与するが、血友病Bは第IX因子による処置を必要とする。
【0004】
既存の治療法には、重大な欠点がある。例えば、輸血のための献血は、需要の増加、限られた供給およびより厳しい規制のためにますます不足し、かつ高価になってきている。米国赤十字社によると、米国単独で、毎日約36,000単位の赤血球が必要とされている。www.redcrossblood.org/learn-about-blood/blood-facts-and-statisticsを参照のこと。輸血に関連する副作用のための病院経費は、1年当たり100億ドルを超える(Hannon & Gjerde:The contemporary economics of transfusions.In Perioperative Transfusion Medicine;Speiss R D,Spence R K,Shander A (eds.),Lippincott Williams and Wilkins,p.13 (2006))。また輸血は、アナフィラキシー、溶血反応、輸血誘発免疫抑制、移植片対宿主病および輸血関連急性肺障害(TRALI)を含む多数の短期および長期の合併症にも関連する。血小板MP(PMP)および凍結乾燥全血小板(LyoPLT)は、例えば、高いコスト、血小板の供給不足、血栓形成の危険性および免疫反応性などの欠点を有する。血小板は、HLA、ABO、Rhおよび血小板に特異的な抗原(これらは交差適合試験が実用的でない)のために高度に免疫原性であり、それ故に有害反応が頻発する。更に、血小板は、血栓形成性である組織因子(TF)を保有することが知られている。
【0005】
過剰出血が検出された後、安全かつ直ちに、かつ妥当なコストで投与することができる薬剤が当該技術分野において依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、350pmol/分/106粒子未満(例えば、200pmol/分/106粒子未満)のアセチルコリンエステラーゼ(AchE)活性を示す赤血球由来微粒子(RMP)を含む組成物を提供する。各種の態様では、組成物中のRMPの20%~50%は、ホスファチジルセリンを提示する。所望により、組成物は、全血および血漿のトロンボエラストグラフィー(TEG)で測定した場合、最初の血餅形成までの時間を、例えば、少なくとも2分短縮する。また所望により、RMPの平均直径は、約0.40~0.6μmである。更に、対象の過剰出血を処置する方法であって、本明細書に記載されるRMP組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例に記載されるRMP-1、RMP-2およびRMP-3において発現しているアセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性(μM/分/10
6RMP;y軸)を比較する棒グラフである。
【
図2】5μM(左棒)または10μM(右棒)の実施例に記載されるRMP-1、RMP-2およびRMP-3により媒介される凝固時間短縮(分;y軸)を比較する棒グラフである。
【
図3】実施例に記載されるRMP-1、RMP-2およびRMP-3により媒介される血餅強度(TEGにおけるMAの増加;y軸)を比較する棒グラフである。
【
図4】実施例に記載されるRMP-1、RMP-2およびRMP-3によって誘発される抗tPA媒介性繊維素溶解反応(対照からのTGの増加(mm/分);y軸)を比較する棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、赤血球由来微粒子(RMP)の改善された組成物および対象における出血を減少させるための使用方法が提供される。RMPは、生成の容易さおよび経済性ならびに最小限の免疫原性を含む(がこれらに限定されない)、止血剤としての多数の利点を有する。赤血球(RBC)は最も大量に存在する種類の血球であり、RMP生成に本質的に無制限かつ経済的な供給源を保証する。RMPは、室温貯蔵で無期限の貯蔵寿命を有し、血液銀行において保管される必要がない。このことはRMPを緊急事態に特に有利なものにする。更に、O型Rhマイナス赤血球から生成されるRMP(汎用RMP)は、交差適合試験なしで即時投与することが可能である。
【0009】
本開示は、少なくとも部分的には、治療適用に特に有利な特徴を有するRMPの亜集団の驚くべき同定に基づく。本明細書に記載される特徴を示す特定の亜集団は新規であり、例えば、有効性および減少した毒性に関して、RMPの以前に記載された集団を超える技術的利点を提供する。RMPを含むRBC分解産物は、炎症誘発性反応、毒性および重篤な副作用に関連づけられてきた。例えば、Danesh et al.,Blood.2014;123(5):687-696;およびZwicker et al.,Br J Haematol.2013;160(4):530-537を参照のこと。実際、MPの増加は、鎌状赤血球症(Camus et al.,Blood.2012;120(25):5050)および血栓性血小板減少症(TTP)(Galli et al.,Thromb Haemost 1996.75(3):427-31)などの種々の血栓形成性状態に関係づけられ、輸血後の毒性事象に関係づけられてきた(Donadee et al.,Circulation 2011;124:465-476)。以前に記載されたRMP組成物は、有害事象のリスクを有していた。特筆すべきことに、本明細書に記載されるRMPの亜集団は、出血を効率的に減少させると共に毒性および有害な副作用を大幅に最小限にする。
【0010】
本明細書において本開示は、組成物中に提供されるRMP亜集団の各種の態様を表現する。本明細書に記載される特徴のいずれか、任意の組み合わせまたは全てを示すRMPを含む組成物は、本発明によって意図され、包含される。
【0011】
一つの態様では、本開示は、著しく減少したアセチルコリンエステラーゼ(AchE)活性を示す赤血球由来のRMPを含む組成物を提供する。AchE活性の減少は、生体内でのRMPの毒性減少と相関する。各種の実施形態では、組成物中のRMPは、20,000pmol/分/106粒子未満(例えば、20,000pmol/分/106粒子~50pmol/分/106粒子の間であって、50pmol/分/106粒子または25pmol/分/106粒子が、本明細書に記載される範囲のいずれかにおける任意選択的な下限である)のAchE活性を示す。好ましい実施形態では、RMPは、10,000pmol/分/106粒子未満、5,000pmol/分/106粒子未満、2,500pmol/分/106粒子未満、1,000pmol/分/106粒子未満、500pmol/分/106粒子未満、350pmol/分/106粒子未満、250pmol/分/106粒子未満、200pmol/分/106粒子未満または150pmol/分/106粒子未満のAchE活性を示す。例示的な態様において、RMPは、350pmol/分/106粒子未満のAchE活性を示す。AchE活性を検出する方法は、当技術分野において公知であり(例えば、Ellman et al.,Biochemical Pharmacology 1961;7(2):88-95;Xie et al.,J.Biol.Chem.2007;282:11765-11775;Wolkmer et al.,Experimental Parasitology 2014;132(4):546-549を参照のこと)、本明細書において提供される実施例に記載されている。
【0012】
あるいはまたは加えて、RMPは、以前に記載されたRMP集団と比較して著しく減少したレベルの脂質ラフトまたはその成分を含む。「界面活性剤不溶性膜画分」(DRM)とも称される脂質ラフトは、コレステロールおよびスフィンゴ脂質が豊富な膜マイクロドメインである。本質的に、全ての天然の細胞由来微粒子(MP)は、主に脂質ラフトからなる。特筆すべきことに、各種の実施形態では、本開示の組成物は、以前に達成されているものより少ない脂質ラフト含有量(インタクトな脂質ラフトに限定されず、脂質ラフトの成分を含む)を含む。単に本開示のこの態様の説明の便宜のためだけに、RMPの脂質ラフト含有量を、赤血球全体(すなわち断片でない赤血球)の脂質ラフト含有量と比較してもよい。各種の態様では、組成物のRMPの脂質ラフト含有量は、赤血球全体の脂質含有量のそれの10%以下(例えば、5%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下(例えば0.1%または0.05%))である。特定の理論に拘束されるつもりはないが、AChEは、膜貫通タンパク質であるPRiMA(プロリンリッチ膜アンカー)によって細胞膜にアンカーされ、脂質ラフトマイクロドメインに集積されるため、当該タンパク質は、脂質ラフトの代替的測定法として役立ち得る。例えば、同様に生体試料の脂質ラフト含有量を決定するための材料および方法を提供するXie at al.,J.Biol.Chem.2010;285(15):11537-11546を参照されたい。脂質ラフトの代替マーカーとしては、ストマチン、フロチリンおよびカベオラが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また脂質ラフトは、プロテオミクス法を使用して特徴づけることもできる。例えば、Foster and Chan,Subcell Biochem.2007;43:35-47を参照のこと。
【0013】
あるいはまたは加えて、組成物中のRMPの20%~50%は、ホスファチジルセリンを提示する。例えば、所望により、組成物中のRMPの30%~45%は、ホスファチジルセリンを提示する。この点について、組成物は、止血を促進する(例えば、凝固を促進する、出血を減少させる)と共に血栓形成の可能性を最小限にするのに最適なレベルのホスファチジルセリン活性を有するRMPの亜集団を提供する。ホスファチジルセリンは、種々の方法で測定することができる。例えば、ホスファチジルセリンの代替的測定法としては、フローサイトメトリーによりアネキシンVの結合を検出することが挙げられる。例えば、Koopman et al.,"Annexin V for flow cytometric detection of phosphatidylserine expression on B cells undergoing apoptosis".Blood 1994;84(5):1415-20を参照のこと。1つの例示的な方法では、アネキシンV結合+の細胞とCD235a+(RMPの一般的なマーカー)の細胞の比率が決定される。各種の態様では、AnV+/CD235a+の比率は、0.2~0.5、例えば0.3~0.4である。
【0014】
所望により、組成物のRMPの内部密度は、インタクトな赤血球の内部密度の3.5%未満である。一部の態様では、RMPは、赤血球全体の内部密度の約0.1%~3.5%(例えば、約0.5%~3%、約0.5%~2.5%または約1%~2%)の内部密度を有する。RMPの内部密度は、本明細書に記載される通り、フローサイトメトリーの側方散乱光シグナルを含むがこれに限定されない種々の技術を使用して決定することができる。特定の理論に拘束されるつもりはないが、内部密度の減少は、ヘモグロビン含量の減少と関連すると考えられている。遊離ヘモグロビンは生体内で有毒であり得、例えば、腎不全を引き起こす。例えば、Gladwin et al.,J Clin Invest.2012;122(4):1205-1208を参照のこと。本開示の組成物のRMPは、減少した毒性を示す。
【0015】
各種の実施形態では、組成物は、全血および血漿のトロンボエラストグラフィー(TEG)で測定した場合、最初の血餅形成までの時間を短縮する。この点について組成物は、所望により、トロンボエラストグラフィーで測定した場合、最初の血餅形成までの時間を少なくとも2分(例えば、少なくとも3分または少なくとも4分)短縮する。各種の実施形態では、組成物は、全血および血漿のトロンボエラストグラフィー(TEG)で測定した場合、最初の血餅形成までの時間を約2~約5分短縮する。実際、各種の実施形態では、組成物は、全血および血漿のTEGまたはローテーショントロンボエラストメトリー(ROTEM)で測定した場合、凝固時間の短縮、より迅速な血餅形成またはより安定した血餅成長によって示されるように、正常な凝固を回復させる。
【0016】
あるいはまたは加えて、組成物中のRMPは、約0.40~0.70μm、例えば、約0.40~0.60μmまたは約0.40~0.50μmの平均直径を示す。所望により、RMPの平均直径は、約0.45~0.50μmである。RMPのサイズは、実施例に記載される方法を含む種々の常例的な実験技術のいずれかを使用して決定することができる。
【0017】
RMPは、RBCの分解産物である。RMPは、新鮮なRBC(すなわち、RMP生成の24時間以内に血液サンプルから単離されたRBC)または貯蔵されたRBCから生成してもよい。この点について、RBCは、所望によりRMP生成の前に凍結されている。例えば、各種の態様では、RBCは最高1ヶ月、最高2ヶ月、最高3ヶ月、最高4ヶ月またはより長期間凍結されている。RMPは、超音波破砕、遠心分離、加熱およびイオノフォアによる処理を含む、赤血球膜を破壊するための多数の技術のいずれかを使用して生じさせることができる。各種の実施形態では、RMPは、赤血球をアパーチャーを通して押しやり、破裂した赤血球を生成すること、および当該破裂した赤血球を固体表面上に衝突させることにより更に断片化することにより生成される。RBCを、例えば、少なくとも25,000psiの圧力(例えば、約35,000psiの圧力)でアパーチャーを通して押しやることによって生じる剪断応力はRBCを剪断し、その後の衝突工程は、RBCを更に断片化して本明細書に記載される特徴を有するRMP集団を生成する。組成物中のRMPは、新鮮である(すなわち、対象への投与の24時間以内にRBCから作製される)か、または保存されている場合がある。RMPは、長期の貯蔵寿命を有するため、組成物は長期間貯蔵してもよい。有効期限切れの血液から生成されたRMPは、非常に新鮮な血液からのRMPと同様の効果がある。したがって、本開示は、別の方法では臨床用途に不適当であり得る献血を利用する手段を提供する。
【0018】
また、対象の過剰出血を処置する方法も提供される。当該方法は、対象に本明細書に記載されるRMPを含む組成物を投与することを含む。例えば、当該方法は、350pmol/分/106粒子未満のアセチルコリンエステラーゼ(AchE)活性を示し、且つ/または約0.40~0.6μmの平均直径を有するRMPを含む組成物であって、且つ/または当該組成物中の当該RMPの20%~50%がホスファチジルセリンを提示し、且つ/または全血および血漿のトロンボエラストグラフィー(TEG)で測定した場合、最初の血餅形成までの時間を(例えば、少なくとも2分)短縮する組成物を投与することを含む。
【0019】
本明細書で使用する場合、「処置する」および「処置」は、対象における出血の任意の減少を指す。「処置する」および「処置」は、治療および予防手段を含む。当業者は、任意の程度の過剰出血からの保護または過剰出血の改善がヒト患者などの対象に有益であることを理解するであろう。したがって、一態様において本発明の方法は、対象に異常な失血の危険があることが確認された後、可能な限り早く(例えば、凝固障害または血小板障害に罹患しているまたは罹患する危険がある対象の手術の前に)、または出血症状の発生の後、可能な限り早く実行される。
【0020】
過剰出血は、種々の障害または状態によって引き起こされてもよく、先天性または後天性(例えば、他の治療薬により誘発される)であってもよい。対象は、例えば、血小板障害または凝固障害(すなわち、血小板障害または凝固障害により引き起こされる過剰出血)に罹患していてもよい。凝固障害は、欠損した血液凝固因子活性によって引き起こされる出血障害を含む。血液凝固因子としては、第V因子(FV)、FVII、FVIII、FIX、FX、FXI、FXIII、(低プロトロンビン血症の原因となる)FIIおよびフォンウィルブランド因子が挙げられるが、これらに限定されない。対象は、慢性肝疾患に罹患していてもよい。血小板障害は、欠損した血小板機能または循環している血小板数が異常に低いことによって引き起こされる。低血小板数は、例えば、過少生産、血小板喪失または制御されない血小板破壊に起因してもよい。血小板減少症(血小板欠乏)は、化学療法および他の薬物療法、放射線療法、手術、偶発的な失血ならびに他の疾患状態を含む各種の理由により存在してもよい。例えば、血小板減少症は、所望により骨髄不全、無形成性貧血、骨髄異形成症候群または白血病に付随する。また血小板障害としては、フォンウィルブランド病、腫瘍随伴血小板機能異常症、グランツマン血小板無力症およびベルナール・スーリエ病も挙げられるが、これらに限定されない。また過剰出血は、外傷;FXI、FXII、カリクレイン前駆体および高分子量キニノーゲン(HMWK)などの1つ以上の接触因子の欠乏;ビタミンK欠乏;無フィブリノゲン血症、低フィブリノゲン血症、およびフィブリノゲン異常症を含むフィブリノゲン障害;およびアルファ2-抗プラスミン欠乏症によって誘発された易出血性状態によって引き起こされてもよい。各種の実施形態では、過剰出血は、手術、外傷、脳内出血、肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能異常症、血腫、内出血、出血性関節症、低体温、月経、妊娠、およびデング出血熱によって引き起こされる。
【0021】
所望により、過剰出血は、薬物処置によって引き起こされる。例えば、各種の実施形態では、過剰出血は、抗凝固剤、例えば、クマジン(ビタミンKアンタゴニストでもあるワルファリン)、ヘパリン(例えば、エノキサパリンまたはダルテパリンなどの低分子ヘパリン)、プロトロンビナーゼ複合体阻害剤(例えば、フォンダパリヌクスまたはリバロキサバン)、FXa阻害剤(例えば、アピキサバン(エリキュース))、またはトロンビン阻害剤(例えば、ダビガトラン)などの凝血防止剤によって引き起こされる。過剰出血は、アスピリン(血小板機能を阻害して、特に他の障害または薬物との組み合わせで重篤な出血をもたらし得る)、クロピドグレル(プラビックス)などによって引き起こされてもよい。これらの抗凝固剤には解毒剤がなく、これらの抗凝固剤から生じる出血性の合併症は患者にとって危険になる。本開示の組成物は、これらの状況において過剰出血を処置および/又予防するのに効果的である。
【0022】
各種の実施形態では、対象は、凝血防止剤による治療を受けている(または凝血防止剤による処置は、凝血防止剤の生体影響が残るような期間内に中断されている)。本発明の組成物の1つの利点は、本組成物のRMPが、凝血防止剤が存在する場合であっても、凝血防止剤によって誘発される止血異常を治すことである。本開示の組成物は、汎用的な止血活性を示し、複数の止血異常に罹患している患者の出血を処置するのに好適である。
【0023】
本発明の組成物(例えば、医薬組成物)には、生理学的に許容される(すなわち、薬理学的に許容される)担体、緩衝剤、賦形剤または希釈剤が配合されている。使用される特定の担体は、溶解性およびRMPに対する反応性の欠如などの物理化学的条件によって、および投与経路によってのみ限定される。生理学的に許容される担体は、当該技術分野において周知である。注射用途に適した例示的剤型としては、限定せずに述べると、無菌水溶液または分散体が挙げられる。注射可能な剤型は、例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Co.,Philadelphia.Pa.,Banker and Chalmers.eds.,pages 238-250 (1982),およびASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,4th ed.,pages 622-630 (1986)に更に記載されている。本明細書において提供されるRMPを含む医薬組成物は、所望により、このような医薬組成物の使用に関する使用説明書を提供するパッケージ材料と一緒に容器内に配置される。一般に、このような使用説明書は、試薬濃度に加えて、ある種の実施形態では、薬学的組成物を希釈するのに必要であり得る、賦形剤成分または希釈剤の相対量を記載する明白な表現を含む。
【0024】
必要に応じて、組成物は、1つ以上の更なる薬学的に有効な薬剤を含む。あるいはまたは加えて、組成物は、他の薬学的に有効な薬剤を(同時にまたは時間を隔てて)投与することを含む最適治療計画として提供される。組成物は、追加のまたは増強された生体影響を達成するために他の物質および/または他の治療法と組み合わせて投与することができる。共処置としては、血漿由来の凝固因子または組換え凝固因子、血友病予防処置、免疫抑制薬、血漿因子遮断抗体アンタゴニスト(すなわち、抗阻害剤)、抗繊維素溶解薬、抗生物質、ホルモン療法、抗炎症剤(例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)またはステロイド性抗炎症物質)、凝血促進剤、凝血防止剤および鎮痛剤が挙げられるが、これらに限定されない。一つの態様では、組成物の投与は、所望の生物学的反応を達成するために必要とされる補治療剤の投与量の減少を可能にする。
【0025】
したがって、本発明は、本開示の組成物を1つ以上の更に適切な物質(複数可)と組み合わせて対象に投与することを含み、各々はその薬剤に好適な投薬計画にしたがって投与される。投与戦略は、本発明のRMP組成物および1つ以上の更に適切な薬剤(複数可)の同時投与(すなわち、実質的に同時の投与)および非同時投与(すなわち、異なる時間で、任意の順序で、重複しているかしていないかを問わない投与)を含む。異なる構成成分は、所望により、同じまたは別々の組成物で、かつ同じまたは異なる投与経路によって、投与されることが理解されるだろう。
【0026】
特定の対象のための特定の投与計画は、部分的に、投与する組成物の量、投与経路、治療されている特定の病気、レシピエントに関連する考慮事項ならびに任意の副作用の原因および程度に依存する。対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与する組成物の量および投与条件(例えば、投与タイミング、投与経路、投与計画)は、合理的な時間枠にわたって所望の生物学的反応に影響を及ぼすのに十分である。単に例証として、一態様では、本発明の方法は、例えば、約1×1010RMP/kg~約3×1011RMP/kg(例えば、約5×1010RMP/kg~約2×1011RMP/kg)を対象に投与することを含む。
【0027】
各種の態様では、本発明の方法は、急性の状態(例えば、手術または外傷によって引き起こされる出血)を処置するために、相対的に短い処置期間、例えば1~14日間、本発明の組成物の投与をすることを含む。患者の状態の性質により長期にわたる処置が必要とされるならば、組成物は、より長い処置過程(例えば、数週間または数ヶ月続く)にわたって投与され得ることもまた意図される。各種の実施形態では、本発明の方法は、対象への組成物の複数回(例えば、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回またはそれ以上)の投与を含む。
【0028】
本明細書に記載されるRMPを含む組成物などの生理学的に許容される組成物を投与する好適な方法は、当該技術分野において周知である。2つ以上の経路を使用して組成物を投与することができるが、特定の経路は、別の経路よりも、より即時のかつより効果的な反応を提供することができる。一つの態様では、本開示の組成物は、血行中にRMPを導入するために、静脈内に、動脈内に、または、腹膜内に投与される。非静脈内投与もまた、特に低分子量治療薬に関しては適している。特定の状況では、本明細書に記載されるRMPを含む医薬組成物を経膣に、直腸に、肺に;大脳内の(実質内の)、脳室内の、筋肉内の、眼内の、門脈内の、病巣内の、髄内の、髄腔内の、心室内の、経皮的な、皮下の、鼻腔内の、尿道の、または腸内の手段による注入を通して;徐放システムによって;または植え込み装置によって、送達することが望ましい。必要に応じて、組成物は、例えば、脚への送達のために大腿動脈経由でというように、対象部分への供給を行う動脈内または静脈内投与によって局所的に投与される。植え込み装置が使用される場合、一態様における装置は、任意の適切な組織に植え込まれ、各種の態様における組成物の送達は、拡散、徐放性巨丸剤、または連続投与によって行われる。他の態様では、本発明の組成物は、外科的処置または傷害の処置の間に露出している組織に直接投与されるか、または輸血処置によって投与される。
【0029】
上記を考慮して、本発明は、RMPが有益である障害を処置する方法などの、対象を処置する方法に使用するための本明細書に記載される組成物を提供する。一つの態様では、本開示は、処置の必要がある対象の過剰出血または失血を処置するのに使用するための本明細書に記載される組成物を提供する。本発明の方法は、過剰失血を全体的にまたは部分的に処置または予防するのに効果的な量および条件下で本発明の組成物を対象に投与することを含む。本発明は、薬剤の製造に使用するための、本明細書に記載される特徴の一つ以上(または全て)を有するRMPを更に提供する。例えば、本発明のRMPは、処置の必要がある対象の過剰出血または失血を処置するための薬剤(例えば、組成物)の製造に使用することができる。
【実施例】
【0030】
細胞由来微粒子(MP)は、細胞活性化またはアポトーシスにおいて放出される小胞(<1um)である。刺激に応じてMPは、止血性、血栓形成性および炎症誘発性などの表現型および機能活性において不均一であり得る。この研究において、RMPの3つの集団が生成され、それらは構造的および機能的特徴の異なる組み合わせを示した。研究された特徴としては、PCA(止血活性の代用(proxy of hemostatic activity))、アセチルコリンエステラーゼ(AchE)活性および毒性が挙げられる。
【0031】
他のRMP組成物を苦しませる改善された有効性および減少した毒性に関連づけられる特に有利な特徴を示すRMPの亜集団が同定された。
【0032】
RMP集団の1つは、(Constant System社のCell Disruptorを使用して)RBCをアパーチャーを通して3回押しやることで(35,000psi)破裂した赤血球を生成し、当該破裂した赤血球を固体表面上に衝突させることによって更に断片化することによって生成した(RMP-1)。得られたRMPを洗浄し、遠心分離によって収集した。2つ目のRMP集団は、RBCのカルシウムイオノフォア処理によって生成した(RMP-2)。RMPを収集するために、Ca2+/イオノフォア(A23187)(10μM)に30分間暴露した新鮮なRBCの上澄みを遠心分離した。3つ目の集団は、最長42日間保管された後の濃厚赤血球(PC)から放出された(RMP-3)。当該RBCを、最長42日間(4℃で保管)の間隔で、保管したPCから得て、RMPを回収するために遠心分離した。
【0033】
フローサイトメトリーによるカウント値は、CD235a(グリコフォリンA)およびアネキシンV(AnV)結合によるものであった。RMPのCD235aの標識は、20μLのRMP試料を4μLの蛍光標識mAbへ添加し、軌道振盪しながら室温にて20分間インキュベートすることによって実行された。次いで、混合物を1000μLの低温HEPES/食塩水(pH 7.4)で希釈して、フローサイトメトリーの準備ができるまで氷上に維持した。アネキシンVマーカーについては、20μLのRMP試料を3μLの0.2MCaCl2溶液および2μLのアネキシンV-FITC(10μg/mL)と共に20分間インキュベートし、500μLのHEPES/食塩水で希釈し、次いで上記の通り処理した。Megamixビーズによってキャリブレーションを行い、FS、SS、FL1およびFL2について適切な増幅する電圧を設定し、MPについて適切なゲーティングを設定したBeckman Coulter社のFC-500フローサイトメーター上で、上記試料をMPについて分析した。実行時間は30秒であり、流速は以前に記載された通りに調整された(Jy et al.,Thromb Haemost.2013;110(4):751-60)。イベントの計数は前方散乱光(FS)によってではなく、蛍光シグナル(FL1またはFL2)によって引き起こされ、これにより検出効率が改善した。MPのゲートは、<1umのサイズに設定した。mAbの非特異的結合は、蛍光標識されたIgGアイソタイプによって評価された。
【0034】
機能試験は、トロンボエラストグラフィー(TEG)を含んだ。CD235aに基づいて等しいカウント値の各試料種を比較し、必要に応じて、粒子を含まないプールされた血漿(PFP)で希釈した。TEGは、試料カップに浸っている中央ピンに伝達されるトルクの増加をモニタリングすることで血餅成長を測定する。当該カップは、周期的に+/-4.5°に振動する。本研究のために記録されたパラメータは、以下の通りであった:R(フィブリン形成までのタイムラグ)、MA(最大振幅(血小板機能を反映している))およびTTG(血栓生成総量)。各々の試験について、330μLのPFPを5または10μLのRMP(2×109粒子/mL)と5分間混合し、次いで、20μLのカルシウム(100mM)を加えて凝固を開始した。
【0035】
赤血球細胞膜の脂質ラフトに対するマーカーであるアセチルコリンエステラーゼ(AchE)活性を、比色法(EllmanのAChEアッセイの適応されたバージョン)によって分析した。上記RMPを、リン酸緩衝液(pH 7.5、0.1M)を使用して希釈した。10.6μLの0.01MのDTNBおよび10.6μLの12.5mMのヨウ化アセチルチオコリンを添加し、150μLの希釈されたRMPと混合した。試料を、405nmで1分、3分および6分間隔で読み取った。
【0036】
RMPの毒性は、雄のニュージーランドホワイトウサギ(平均3.8kg)および雄のスプラーグドーリーラット(平均280g)において評価された。全ての動物は、2%のイソフルランを用いて麻酔をかけた。大腿動脈および静脈にカニューレを挿入して、維持生理食塩水(maintenance saline)を3mL/時間で投与した。RMP試料をカニューレを挿入した大腿静脈を介して注入し、血液をカニューレを挿入した大腿動脈を介して異なる時間間隔で採取した。血圧、心拍数、呼吸数、血中O2およびCO2レベルを含む生命徴候を、継続的にモニタリングした。何匹かの動物を、病理検査用に主要器官を得るために、RMP注入の4時間後に屠殺した。何匹かの動物は、縫合して長期追跡調査のために実験動物飼育施設に戻した。当該動物の行動、運動性、餌および水摂取、体温等を、最初の1週間は毎日、残りの5数週間は週一回モニタリングした。
【0037】
RMP-1は治療用産物の最も高い収量に関連し、RMP-3の約3倍以上の治療用産物を生成したRMP-2がそれに続いた。
【0038】
AnV結合は、AnV+/CD235+比として表現され、凝血促進性リン脂質のマーカーである。この比率は、RMP-1(0.28)において最小であり、RMP-2(0.48)およびRMP-3(0.98)がそれに続いた。
【0039】
前方散乱光(FS)によって検出されたRMPのサイズ(平均直径)は、RMP-3において0.57μmであった。この値は、RMP-1(0.42μm)およびRMP-2(0.45μm)より幾分大きかった。側方散乱光によって測定されたRBCに対するRMPの内部密度パーセントは、RMP-1(1.5%)で最も低く、RMP-2(4.8%)およびRMP-3(10.3%)がそれに続いた。
【0040】
アセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性は、RMP-2の106粒子当たり3,362pmoles/分およびRMP-3の106粒子当たり149pmoles/分に対して、RMP-3(106粒子当たり15,643pmoles/分)において飛び抜けて最も高かった。代替的方法でデータを掲示すると、AChE活性はRMP-1(106粒子当たり149pmoles/分)で最も低く、これは、RMP-2(106粒子当たり3,362pmoles/分)およびRMP-3(106粒子当たり15,643pmoles/分)のそれよりそれぞれ22倍および104倍低い。
【0041】
凝血促進活性は、TEGを使用して推定した。凝固時間(R時間)は、RMP-3(10.2分)で最大の短縮を示し、それにRMP-2(6.7分)およびRMP-1(3.6分)が続いた。
【0042】
抗繊維素溶解活性は、0.4μg/mLの組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)の存在下で試験した。全3種のRMPは、MA、Ly30およびTTG(血栓形成総量)を含むTEGのパラメータで測定されるt-PA媒介性の繊維素溶解反応を効果的に阻害した。RMP-3は、最も効果的であり、それにRMP-2およびRMP-1が続いた。
【0043】
1×1010~1.2×1012RMP/kgの投与量でのウサギおよびラットに対するRMP-1の投与は、6週間の投与後観察中に何らの有害事象も引き起こさなかった。心拍数、血圧、呼吸数、血中酸素濃度および体温を含む生命徴候は、RMP注入後の1時間、正常なままだった。長期の追跡調査(6週間)では、正常な行動、食欲および運動性を示した。最高投与量(1.2×1012RMP/kg)では、全ての試験されたラットは、6週間の観察期間中および終了時に生きており、体重が増加した。これらの投与量では、3つの異なる動物出血モデルにおいて出血時間が大幅に短縮し、総失血量が減少した。
【0044】
本明細書に記載される各種RMP亜集団の特徴の一覧を表1に示す。1行目は、PCのmL当たりのRMP収量である。2行目は、フローサイトメーターにおいて抗グリコフォリン(CD235a)によって検出されたRMPカウント値とアネキシンV結合によって検出されたRMPカウント値との間の比率である。3行目は、3つの異なるサイズのビーズを用いてキャリブレーションしたフローサイトメトリー分析の前方散乱光から算出されたRMPのサイズである。最後の行は、フローサイトメトリー分析の側方散乱光(SS)から算出された、RBCに対するRMPの内部密度のパーセントである。全ての値は、平均値±標準誤差である。
【0045】
【0046】
本明細書における結果は、本明細書において特徴づけられる固有の種類のRMPの利点を実証する。この種のRMPは、特徴的な表面特性および機能活性を示す。本結果は、比較された3種の機能的、表現型および毒物学的特性の明白かつ決定的な差を実証する。RMP-2およびRMP-3は、RMP-1と比較して、サイズがより大きく、AnnV結合がより多く、かつAChE発現が高い。RMP-2およびRMP-3は、RMP-1より高い凝血促進活性を示したが、RMP-1は凝血促進活性を示した。RMP-2およびRMP-3の活性は、この点に関してはより高かった。RMP-1は、濃厚RBCのmL当たりに生成される、より多数の治療用産物に関連した。
【0047】
比較された全てのパラメータのうち、これら3種のRMPの間で最も顕著な差は、AchE活性である。RMP-1のAchE活性は、RMP-2およびRMP-3のそれより、それぞれ約25倍および150倍低い。AchEは、脂質ラフトに共有結合すると考えられており、したがって、脂質ラフトの代替マーカーとして役立つ。AchEのデータに基づくと、RMP-3は、例えば、細胞活性化のための付着因子およびリガンド、炎症誘発性脂質および炎症性サイトカイン、補体、免疫複合体など多数の炎症誘発性メディエーターから成る脂質ラフトを実質的に欠いている。
【0048】
本開示以前では、止血能および毒性は、不可分に関連づけられると考えられていた。上記の結果は、本明細書において同定された固有の種類のRMPが、驚くべきことに、識別可能な毒性を示さないが、強い止血能を保持することを示した。
【0049】
また、予め凍結させたRBCから生成したRMPの特徴も調査した。白血球を除去したO(+)型濃厚RBCを、OneBlood.orgから購入した。濃厚RBCの各々のバッグは、4つの等しい部分(70~75mL)に分割した。RBCの1つの部分を4℃で保存し、積荷受け取り後の7日以内に使用してRMPを生成した。残りの3つの部分は、-20℃にて凍結させ、最初の凍結後の1、2または3ヶ月時点で解凍してRMPを生成した。RMPは、本明細書に記載される通り、Constant System社のCell Disruptorを使用して35,000psiでの高圧押出法により生成した。RMPカウント値(収量)は、マーカーとしてPE標識抗グリコフォリンAモノクローナル抗体を使用してフローサイトメトリーにより測定された。RMPの凝血促進活性は、トロンボエラストグラム(TEG)によって決定された。表2に示すように、非凍結RBCおよび凍結RBCから生成されたRMPの得られた組成物には、収量、凝血促進活性およびアネキシンV結合に関して著しい差はみられなかった。予め凍結させたRBC使用は、RMP生成のスケールアップを可能にする。
【0050】
【0051】
本明細書において援用される、刊行物、特許出願および特許を含む、全ての参考文献は、各々の参考文献が参照により組み入れられるように個々にかつ具体的に示されかつその全体が本明細書に記載されているのと同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
本開示を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)使用される用語「ある(a)」および「ある(an)」および「その(the)」ならびに同様の指示物は、本明細書に別の記述がなければ、または明らかに文脈と矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。用語「含む」、「有する」、「包含する」および「含有する」は、別途注記のない限り、オープンエンドな用語として解釈されるべきである(すなわち、「~を含むがこれらに限定されない」を意味する)。配合物は成分または材料を含むものとして説明している本明細書全体にわたって、本発明の配合物はまた、別途注記のない限り、記載した成分または材料の任意の組み合わせから本質的になるかまたは記載した成分または材料の任意の組み合わせからなることができると考えられる。同様に、方法が特定の工程を含むと説明している場合、本発明の方法はまた、別途注記のない限り、記載した工程の任意の組み合わせから本質的になるかまたは記載した工程の任意の組み合わせからなることができることが意図される。本明細書において例示的に開示された本発明は、本明細書において特に開示しなかった要素または工程のいずれがない場合も、好適に実施できる。更に、本明細書において特に指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、全ての可能な変形における上記要素の任意の組み合わせは本開示に包含される。
【0053】
本明細書において特に指定のない限り、本明細書中の値の範囲の記載は、その範囲および各端点に入る各々の別個の値を個々に指す略記方法として役立つことを意図したものであるにすぎず、各々の別個の値および各端点は、それが本明細書中に個々に記載されているかのように本明細書に組み入れられる。特に要求されない限り、本明細書中に提供されるあらゆる例、または例示的な言葉(例えば「など」)の使用は、本開示をより上手く説明することを意図したものにすぎず、本開示の範囲に限定をもたらすものではない。本明細書における言葉は、本開示の実施に不可欠な任意の非請求要素を示すと解釈されるべきではない。