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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20240815BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/04 A
H01F27/32 130
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020072410
(22)【出願日】2020-04-14
(65)【公開番号】P2021170577
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】杉本 聡
(72)【発明者】
【氏名】殿山 恭平
(72)【発明者】
【氏名】浅井 深雪
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 隆将
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3181451(JP,U)
【文献】特開2003-272922(JP,A)
【文献】特開2002-083732(JP,A)
【文献】特開2011-199080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-17/08
H01F 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粉体と樹脂とを含む素体と、
前記素体の内部に埋設され、絶縁被覆層が形成されたワイヤを巻回してなるコイル部と、を有し、
前記コイル部の周辺部には、前記絶縁被覆層とは別に構成された樹脂リッチ層が形成されており、
前記樹脂リッチ層の厚さは、50~150μmであり、
前記磁性粉体は、第1磁性粉体と、前記第1磁性粉体よりも粒径の小さな第2磁性粉体とを含み、
前記樹脂リッチ層には、前記第1磁性粉体と前記第2磁性粉体とが含まれており、
前記第1磁性粉体の粒径は、20μm~50μmであり、
前記第2磁性粉体の粒径は、5μm~10μmであり、
前記樹脂リッチ層において、前記コイル部に近接した位置では、前記第1磁性粉体よりも前記第2磁性粉体の含有量が多いコイル装置。
【請求項2】
前記絶縁被覆層の表面には、熱融着層が形成されている請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記樹脂リッチ層に含まれる磁性粉体は、軟磁性金属からなる請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記樹脂リッチ層には、前記絶縁被覆層の厚みよりも粒径が大きい前記磁性粉体が含まれている請求項1~3のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項5】
前記樹脂リッチ層に含まれる磁性粉体は、金属磁性粉体であり、
前記樹脂リッチ層には、前記絶縁被覆層の厚みよりも粒径が小さい前記金属磁性粉体が含まれている請求項1~3のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項6】
前記ワイヤは、平角線からなる請求項1~5のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項7】
前記樹脂リッチ層では、前記コイル部に近づくにしたがって、前記第2磁性粉体の含有量が大きくなっており、前記コイル部から離れるにしたがって、前記第1磁性粉体の含有量が大きくなっている請求項1~6のいずれかに記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、素体の内部にコイル部を埋設したコイル装置として、特許文献1に記載のコイル装置が知られている。特許文献1に記載のコイル装置は、絶縁被膜が表面に設けられたコイル部を磁性粉体が充填された成形型内に埋設し、これを圧縮成形することにより得られる。
【0003】
しかしながら、この種のコイル装置では、成形時に成形型内の樹脂を磁性粉体とともに圧縮すると、コイル部の表面に形成された絶縁被覆に磁性粉体の少なくとも一部が入り込む(ささる)場合がある。そのため、コイル部のターン間において、磁性粉体を介してショート不良が生じないよう留意する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-267160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、コイル部のターン間におけるショート不良の発生を防止することが可能なコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
磁性粉体と樹脂とを含む素体と、
前記素体の内部に埋設され、絶縁被覆層が形成されたワイヤを巻回してなるコイル部と、を有し、
前記コイル部の周辺部には樹脂リッチ層が形成されている。
【0007】
本発明に係るコイル装置では、コイル部の周辺部に樹脂リッチ層が形成されている。樹脂リッチ層では、相対的に磁性粉体の含有量が少ない(あるいは、相対的に樹脂の含有量が多い)ため、成形型内の樹脂を磁性粉体とともに圧縮したときに、磁性粉体がワイヤの絶縁被覆層の内部に入り込む確率を低減することが可能である。そのため、本発明に係るコイル装置では、従来のコイル装置に比較して、磁性粉体がワイヤの絶縁被覆層に入り込む(ささる)現象が生じ難く、コイル部のターン間において、ショート不良が生じることを防止し、コイル装置の耐圧(ESD)を向上させることができる。
【0008】
好ましくは、前記絶縁被覆層の表面には、熱融着層が形成されている。このような構成とすることにより、熱融着層を樹脂リッチ層として機能させることが可能となり、成形型内の樹脂を磁性粉体とともに圧縮したときに、熱融着層によって、磁性粉体がワイヤの絶縁被覆層に入り込むことを防止することができる。したがって、この場合も、コイル部のターン間において、ショート不良が生じることを防止することができる。
【0009】
好ましくは、前記磁性粉体は、第1磁性粉体と、前記第1磁性粉体よりも粒径の小さな第2磁性粉体とを含み、前記樹脂リッチ層には、前記第1磁性粉体と前記第2磁性粉体とが含まれている。第1磁性粉体は第2磁性粉体よりも粒径が大きいため、第1磁性粉体を樹脂リッチ層に包含させることにより、コイル装置全体としてインダクタンス特性が良好となる。また、第2磁性粉体は、第1磁性粉体よりも粒径が小さいため、成形型内の樹脂を磁性粉体とともに圧縮したときに、第1磁性粉体よりもワイヤの絶縁被覆層に入り込み難い。そのため、第2磁性粉体を樹脂リッチ層に包含させることにより、上述したワイヤの絶縁被覆層に磁性粉体が入り込む現象を効果的に防止することができる。
【0010】
好ましくは、前記樹脂リッチ層において、前記コイル部に近接した位置では、前記第1磁性粉体よりも前記第2磁性粉体の含有量が多い。この場合、ワイヤのターン間に形成される溝の内側に第2磁性粉体が入り込み、あるいは複数の第1磁性粉体の各々の間に第2磁性粉体が配置されるため、素体内部において、磁性粉体の含有割合(密度)を高めることが可能となる。したがって、良好なインダクタンス特性を有するコイル装置を得ることができる。
【0011】
前記樹脂リッチ層に含まれる磁性粉体は、軟磁性金属で構成されていてもよい。このような構成とすることにより、良好な高周波特性を有するコイル装置を得ることができる。
【0012】
前記樹脂リッチ層には、前記絶縁被覆層の厚みよりも粒径が大きい前記磁性粉体が含まれていてもよい。例えばフェライトのように比較的導電性が低い材料を磁性粉体として用いる場合、仮にワイヤの絶縁被覆層に磁性粉体が入り込んだとしても、コイル部のターン間において、ショート不良が生じ難い。また、磁性粉体の粒径を上記のような大きさとすることにより、良好なインダクタンス特性を有するコイル装置を得ることができる。
【0013】
前記樹脂リッチ層に含まれる磁性粉体は、金属磁性粉体であり、前記樹脂リッチ層には、前記絶縁被覆層の厚みよりも粒径が小さい前記金属磁性粉体が含まれていてもよい。金属磁性粉体を磁性粉体として用いることにより、良好なインダクタンス特性を有するコイル装置を得ることができる。また、金属磁性粉体の粒径を上記のような大きさとすることにより、上述したワイヤの絶縁被覆層に磁性粉体が入り込む現象を効果的に防止することができる。
【0014】
前記樹脂リッチ層は、(実質的に)前記樹脂のみで構成されていてもよい。この場合、コイル部の周辺部に磁性粉体が包含されないため、上述したワイヤの絶縁被覆層に磁性粉体が入り込む現象を効果的に防止することができる。
【0015】
前記ワイヤは、平角線で構成されていてもよい。このような構成とすることにより、素体内部において、コイル部の占積率を高めることが可能となり、良好なインダクタンス特性を有するコイル装置を得ることができる。また、コイル部の低抵抗化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本発明の第1実施形態に係るコイル装置の斜視図である。
図2図2図1に示すコイル装置の分解斜視図である。
図3A図3A図1に示すコイル装置のIIIA-IIIA線に沿う断面図である。
図3B図3B図1に示すコイル装置のIIIB-IIIB線に沿う断面図である。
図4図4図3Aの点線で囲った領域の一部拡大図である。
図5図5は本発明の第3実施形態に係るコイル装置のワイヤの構成を示す横断面図である。
図6図6は本発明の第4実施形態に係るコイル装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0018】
第1実施形態
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るコイル装置2は、磁性粉体と樹脂とを含む圧縮成形体としてのコア部(素体)4と、コア部4の内部に埋設され、絶縁被覆層(絶縁被膜)が形成されたワイヤ6aを巻回してなるコイル部6(図3A参照)と、ワイヤ6aのリード部6bに接合部6cで接続される端子電極8とを有する。コイル装置2は、電源用トランス、電源用インダクタ、ノイズ除去用インダクタなどとして、電子機器、電気装置、車載装置などに用いられる。
【0019】
本実施形態では、図面において、コイル部6の巻軸方向をZ軸とし、それに相互に直交する軸をX軸およびY軸とする。本実施形態では、X軸は、一対の端子電極8が向き合う方向に一致するが、特に限定されない。
【0020】
コイル装置2のサイズは、特に限定されないが、たとえばX軸方向幅が1.0~20mm、Y軸方向幅が1.0~20mm、高さが1.0~10mmである。
【0021】
図2に示すように、コア部4は、Z軸方向の下部に実装側外面4aが形成してあると共に、Z軸方向の上部には、反実装側外面4bが形成してある。実装側外面4aと反実装側外面4bとの間には、側方外面である側面4cが形成してある。
【0022】
本実施形態では、側面4cは、複数の平面と曲面との組合せで構成してあるが、特に限定されず、全体として曲面であっても良く、全体として多角形の側面であっても良い。本実施形態では、コア部4をZ軸方向の上部または下部から見たときに、非対称形状であることが好ましい。コア部4をZ軸方向の上部または下部から見たときに、コイル装置の形状または方向を認識しやすいからである。
【0023】
コア部4の側面4cは、X軸方向に相互に反対側に位置する一対の主取付側面4c1を有する。本実施形態では、主取付側面4c1は、端子電極8の主端子本体80の形状に合わせて平面状に形成してあるが、主端子本体80の内面が曲面状であれば、それに合わせて曲面状にしてもよい。また、コア部4の側面4cは、Z軸方向の上から見て主取付側面4c1の時計回りの隣に、副取付側面4c2を有している。副取付側面4c2からは、リード部6bが飛び出している。
【0024】
さらに、コア部4の側面4cは、Z軸方向の上から見て副取付側面4c2の時計回りの隣に、非取付側面4c3a,4c4aまたは4c3b,4c4bを有している。本実施形態では、相互に反対側に位置する側面4c1,4c1は、相互に同じ形と面積を有し、側面4c2,4c2についても同様である。
【0025】
相互に反対側に位置する非取付側面4c3a,4c3bは、相互に異なるX軸方向幅を有する。また、相互に反対側に位置する非取付側面4c4a,4c4bは、一方が平面で他方が曲面であり、相互に異なる形を有している。すなわち、本実施形態では、相互に反対側に位置する非取付側面4c3aと4c3b(4c4aと4c4b)は、相互に異なる形状またはサイズを有する。このように構成することで、コア部4をZ軸方向の上部または下部から見たときに、非対称形状にすることができる。
【0026】
各端子電極8は、主端子本体80を有する。主端子本体80は、コア体4の主取付側面4c1の形状に合わせて四角形の平板形状であるが、前述したように、主取付側面4c1の形状が変われば、その形状に合わせた形状を有することができる。
【0027】
図3Bに示すように、主端子本体80のZ軸方向の下部には、下弾性片83が主端子本体80から折り曲げられて一体に成形してある。また、主端子本体80のZ軸方向の上部には、上弾性片84が主端子本体80から折り曲げられて一体に成形してある。図2に示すように、下弾性片83は、コア部4の底面である実装側外面4aに形成してある下取付溝4a1に嵌合するようになっている。
【0028】
下取付溝4a1の底部は、コイル部6の中心軸に向けてZ軸方向の上方向に傾斜しており、下弾性片83が下取付溝4a1に嵌合した後には、抜けにくくなっている。上弾性片84は、コア部4の上面である反実装側外面4bに形成してある上取付溝4b1に嵌合するようになっている。上取付溝4b1の底部は、コイル部6の中心軸に向けてZ軸方向の下方向に傾斜しており、上弾性片84が上取付溝4b1に嵌合した後には、抜けにくくなっている。
【0029】
図2に示すように、主端子本体80には、副端子本体82が、一体に成形してある。副端子本体82は、主端子本体80の面に対して、所定の角度で交差するように折曲られている。上記角度は、コア部4の主取付面4c1と副取付面4c2との交差角度に略一致する。
【0030】
副端子本体82は、副取付面4c2の外面形状に合わせた内面形状を有し、本実施形態では平板形状であるが、副取付面4c2の外面形状に合わせて曲面形状にしてもよい。また、副端子本体82は、図3Aに示すように、副取付面4c2の外面に向き合っているが、必ずしも接触していなくてもよい。
【0031】
図2に示すように、副端子本体82のZ軸方向の上部には、リード支持部85が副端子本体82から外側に折り曲げられて一体に成形してある。なお、端子電極8において外側とは、コア部4から離れる側であり、内側とは、コア部4に近づく側である。
【0032】
図3Aおよび図3Bに示すように、コイル部6は、ワイヤ6aがコイル状に巻回してある部分であり、コイル部6からはワイヤ6aの両端である少なくとも一対のリード部6bが、コア部4の外部に引き出される。図示する実施形態では、コイル部6からは、一対のリード部6bがコア部4の副取付側面4c2から当該側面に対し略垂直方向に外部に引き出される。
【0033】
ワイヤ6aは、たとえば、導線60と、導線60の外周を被覆してある絶縁被覆層61とで構成してある。導線60は、たとえばCu、Al、Fe、Ag、Au、リン青銅などで構成してある。絶縁被覆層61は、たとえばポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエステル-イミド、ポリエステル-ナイロンなどで構成してある。本実施形態では、ワイヤ6aの横断面形状は円形となっている。なお、後述するように、絶縁被覆層61は二層(第1絶縁被覆層610および第2絶縁被覆層620)で構成されている。
【0034】
絶縁被覆層61の厚みは、好ましくは100~300μmであり、さらに好ましくは200~300μmである。
【0035】
コア部4は、磁性粉体(磁性粉末)と樹脂とを含む複合材料からなり、磁性粉体および樹脂(バインダ樹脂)を含む顆粒を圧縮成形または射出成形して形成してある。磁性粉体としては、特に限定されないが、センダスト(Fe-Si-Al;鉄-シリコン-アルミニウム)、Fe-Si-Cr(鉄-シリコン-クロム)、パーマロイ(Fe-Ni)、カルボニル鉄系、カルボニルNi系、アモルファス粉、ナノクリスタル粉などの金属磁性粉体(軟磁性金属磁性粉体)が好ましく用いられる。
【0036】
磁性粉体の粒径は、好ましくは0.5~50μmである。本実施形態では、磁性粉体は、金属磁性粉体であり、その粒子外周は、絶縁被膜してあることが好ましい。絶縁被膜としては、金属酸化物被膜、樹脂被膜、リンや亜鉛などの化成膜などが例示される。
【0037】
ただし、磁性粉体としては、Mn-Zn、Ni-Cu-Znなどのフェライト磁性粉体であってもよい。バインダ樹脂としては、特に限定されないが、たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、シリコン樹脂、これらを組み合わせたものなどが例示される。
【0038】
本実施形態では、コイル部6の周辺部に位置するコア部4には絶縁処理が施されており、コイル部6の周辺部には樹脂リッチ層40が形成されている。樹脂リッチ層40は、コア部4の一部を為し、磁性粉体と樹脂の両方を含んでいる。
【0039】
以下において、図4に示すように、コア部4に含まれる磁性粉体を「磁性粉体41」と表記し、コア部4に含まれる樹脂を「樹脂42」と表記する。本実施形態では、樹脂リッチ層40には、磁性粉体41と樹脂42とが含まれている。樹脂リッチ層40に含まれる磁性粉体41および樹脂42の種別は、樹脂リッチ層40以外の部分に含まれる磁性粉体41および樹脂42の種別と同様となっているが、異なっていてもよい。例えば、樹脂リッチ層40に含まれる磁性粉体40をフェライト等とし、樹脂リッチ層40以外の部分に含まれる磁性粉体40を金属磁性粉体等としてもよい。
【0040】
本実施形態では、コア部4における磁性粉体41および樹脂42の各々の含有量に差異(勾配)が設けられおり、樹脂リッチ層40において樹脂リッチとなるよう、樹脂リッチ層40では樹脂成分が多くなっている。なお、樹脂リッチ層40における磁性粉体41および樹脂42の各々の含有量は、断面EDSによる簡易定量分析により求めることができる。この場合、樹脂リッチ層40では、それ以外の部分(例えば、コア部4の中心部)に比べて、磁性粉体41を構成する金属元素(例えば、Fe)の重量の割合(あるいは、原子数の割合)が少なくなっており、樹脂42を構成する元素(例えば、C)の重量の割合(あるいは、原子数の割合)が多くなっている。
【0041】
樹脂リッチ層40に含まれる磁性粉体41は、軟磁性金属で構成されていることが好ましい。この場合、良好な高周波特性を有するコイル装置2を得ることができる。
【0042】
本実施形態では、樹脂リッチ層40は磁性粉体41と樹脂42の両方で構成されているが、樹脂リッチ層40の構成はこれに限定されるものではなく、樹脂42のみで構成されていてもよい。あるいは、磁性粉体41の含有量に比べて、樹脂42の含有量が極めて大きくてもよい(実質的に、樹脂リッチ層40が樹脂のみで構成されていてもよい)。なお、コイル部6を構成するワイヤ6aには樹脂のみからなる絶縁被覆層61が形成されているが、樹脂リッチ層40は絶縁被覆層61とは別に構成されている。
【0043】
樹脂リッチ層40では、例えばコア部4の中心部(図3Aに示すコイル部6の巻回軸Cの周辺部)に比べて、樹脂42の含有量が多くなっている。あるいは、樹脂リッチ層40では、例えばコア部4の中心部(図3Aに示すコイル部6の巻回軸Cの周辺部)に比べて、磁性粉体41の含有量が少なくなっている。なお、樹脂リッチ層40における樹脂42(あるいは、磁性粉体41)の含有量は、コア部4の中心部以外の部分に比べて、多くてもよい(少なくてもよい)。
【0044】
図3Aおよび図3Bに示すように、樹脂リッチ層40は、所定の厚みを有し、コイル部6の周囲(外周面)を取り囲むように形成されている。より詳細には、樹脂リッチ層40は、コイル部6の外周面形状に沿うように、ワイヤ6aの絶縁被覆層61(図4参照)の外表面上に所定の厚みで形成されている。樹脂リッチ層40は、絶縁被覆層61に磁性粉体41(特に、後述する第1磁性粉体41a)が入り込む(突き刺さる)ことを防止する機能を有する。
【0045】
樹脂リッチ層40の形状は、図示の例に限定されるものではなく、例えば樹脂リッチ層40は、コイル部6の周辺部に加えて、コイル部6から離間した位置にも形成されていてもよい。例えば、樹脂リッチ層40の一部が、ワイヤ6aのリード部6bの周辺部に形成されていてもよい。あるいは、樹脂リッチ層40は、コイル部6の周辺部に局所的に形成されていてもよい。例えば、樹脂リッチ層40は、成形時において、成形型内の樹脂を磁性粉体とともに圧縮するときに、その圧力が高くなる位置に選択的に形成されていてもよい。
【0046】
樹脂リッチ層40の厚みは、好ましくは5~200μmであり、さらに好ましくは50~150μmであり、特に好ましくは80~120μmである。また、樹脂リッチ層40の厚みは、導線60の表面に形成された絶縁被覆層61の厚みよりも厚くなっている。樹脂リッチ層40の厚みは、断面SEM画像等を基に求めることが可能である。
【0047】
図4に示すように、磁性粉体41は、第1磁性粉体(大粒子あるいは粗粉)41aと、第1磁性粉体41aよりも粒径の小さな第2磁性粉体(小粒子あるいは微粉)41bとを含む。第1磁性粉体41aは主としてコア部4のインダクタンス値を高めるためにコア部4に具備されており、第2磁性粉体41bは主としてコア部4における磁性粉体41の充填密度を高めるためにコア部4に具備されている。第1磁性粉体41aと第2磁性粉体41bとは同じ組成でもよく、あるいは異なる組成でもよい。
【0048】
樹脂リッチ層40には、第1磁性粉体41aと第2磁性粉体41bとが含まれている。樹脂リッチ層40には、例えば、粒径が20~50μmである第1磁性粉体41aが存在し、粒径が5~10μmである第2磁性粉体41bが存在していてもよい。
【0049】
なお、第1磁性粉体41aと第2磁性粉体41bとは、コア部4のうち、樹脂リッチ層40以外の領域(コア部4の中心部等)にも含まれている。当該領域に含まれる第1磁性粉体41aおよび第2磁性粉体41bの各々の粒径は、樹脂リッチ層40に含まれる第1磁性粉体41aおよび第2磁性粉体41bの各々の粒径と同様であってもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
第2磁性粉体41bは、複数の第1磁性粉体41aの各々の間に位置するように(あるいは、複数の第1磁性粉体41aの各々の間を埋めるように)配置されている。樹脂リッチ層40において、コイル部6に近接した位置では、第1磁性粉体41aよりも第2磁性粉体41bの含有量が多くなっている。すなわち、樹脂リッチ層40では、コイル部6に近づくにしたがって、第2磁性粉体41bの含有量が大きくなっており、コイル部6から離れるにしたがって、第1磁性粉体41aの含有量が大きくなっている。ただし、樹脂リッチ層40における磁性粉体41および樹脂42の含有量の分布は、これに限定されるものではなく、樹脂リッチ層40全域において一定であってもよい。
【0051】
ワイヤ6aの隣接ターン間に形成される略V字状の溝には、第2磁性粉体41bが入り込んでいる(充填されている)。一方で、第1磁性粉体41aは、上記溝には入り込んではおらず、比較的コイル部6から離間した位置に配置されていることが好ましい。
【0052】
樹脂リッチ層40には、導線60の表面に形成された絶縁被覆層61の厚みよりも粒径が大きい磁性粉体41(第1磁性粉体41a)が含まれている。このように、樹脂リッチ層40に、絶縁被覆層61の厚みよりも粒径が大きい第1磁性粉体41aを包含させる場合、当該磁性粉体41を構成する材料は導電性が低い材料(例えば、Ni-Zn系のフェライト)であることが好ましい。この場合、第2磁性粉体41bを構成する材料は、第1磁性粉体41aと同様に導電性が低い材料であってもよい。あるいは、第2磁性粉体41bの粒径が絶縁被覆層61の厚みよりも小さい場合には、第2磁性粉体41bを構成する材料は、導電性が高い材料であってもよい。
【0053】
次に、図1に示すコイル装置2の製造方法について説明する。まず、図3Aおよび図3Bに示すように、ワイヤ6aがコイル状に巻回してあるコイル部6を準備する。コイル部6は、たとえば空芯コイルなどで構成される。ワイヤ6aは、導線60の表面に絶縁被覆層61が形成されたワイヤを用いる。
【0054】
次に、コイル部6を樹脂液に浸漬し、コイル部6の表面に樹脂を付着させる。樹脂液としては、樹脂リッチ層40を構成する樹脂42(図4参照)を用いる。このとき、コイル部6を樹脂液に浸漬させる時間等を適宜調整することにより、コイル部6の表面に厚みが5~200μmの樹脂層を形成することができる。
【0055】
次に、コイル部6の表面に形成された樹脂層が硬化した状態で、該コイル部6の内部も含む全体を、コア部4(素体)で覆い、コア部4の外面から、コイル部6を構成するワイヤ6aのリード部6bを露出させる。コア部4の成形は、たとえば金型のキャビティ内に、コイル部6をインサートした状態で、金型の内部に、磁性粉体とバインダ樹脂とを含む混合物をキャビティ内に充填し、全体を圧縮(加熱加圧)することにより行う。磁性粉体としては、樹脂リッチ層40を構成する磁性粉体41(図4参照)を用いる。また、磁性粉体41としては、第1磁性粉体41aと第2磁性粉体41bとを含む磁性粉体を用いる。圧縮成形するための方法としては、金型を用いてもよいし、油圧や水圧を利用してもよい。
【0056】
金型内の樹脂を磁性粉体とともに圧縮すると、コイル部6の表面に形成された樹脂層の内部に金型内の磁性粉体の一部が入り込み、当該磁性粉体を含む樹脂層がコイル部6の表面に形成される。前述の通り、上記磁性粉体は樹脂リッチ層40を構成する磁性粉体41で構成され、上記樹脂層は樹脂リッチ層40を構成する樹脂42で構成される。そのため、コイル部6の表面に形成された樹脂層の内部に金型内の磁性粉体が入り込むことにより、磁性粉体41と樹脂42とを含む樹脂リッチ層40が得られる。
【0057】
圧縮成型時における圧力を調整することにより、コイル部6の表面に形成された樹脂層の内部に入り込む磁性粉体の量を調整することが可能であり、樹脂リッチ層40における磁性粉体41の含有量を所望の値とすることができる。成形後には、リード部6bは成形体と共に取り出される。コア部4の外表面には、ガラスコーティングや絶縁樹脂コーティングなどが施してあってもよい。
【0058】
コア部4の成形と同時に、あるいはその前後に、図2に示す端子電極8を準備する。端子電極8は、好ましくはCuおよびリン青銅などの金属(合金含む)で構成してある。端子電極8は、均一な厚みの単一金属板、あるいはクラッド材などの複合金属板をプレス加工などにより切り抜いて折曲成形することで得られる。端子電極8の表面には、ハンダとの密着性を向上させるメッキ膜などが形成してあっても良い。端子電極8には、必要に応じて、下弾性片83および上弾性片84が形成される。
【0059】
その後に、リード支持部85の先端部にリード部6bとの接合部6cを形成する。接合部6cでは、リード部6bとリード支持部85の先端部とが、たとえばレーザ溶接により接合される。なお、接続部6cを形成するための方法としては、レーザ溶接に限らず、アーク溶接、超音波接合、熱圧着接合およびハンダ接合などが例示される。
【0060】
接合部6cを形成する前に、リード部6bの樹脂皮膜は除去しておくことが好ましい。さらに好ましくは、リード部6bの樹脂皮膜の除去は、端子電極8をコア部4の外面に取り付ける前に行う。以上のようにして、図1に示すコイル装置2を得ることができる。
【0061】
本実施形態に係るコイル装置2では、コイル部6の周辺部に樹脂リッチ層40が形成されている。樹脂リッチ層40では、相対的に磁性粉体41の含有量が少ない(あるいは、相対的に樹脂42の含有量が多い)ため、成形型内の樹脂を磁性粉体41とともに圧縮したときに、磁性粉体41がワイヤ6aの絶縁被覆層61の内部に入り込む確率を低減することが可能である。そのため、本実施形態に係るコイル装置2では、従来のコイル装置に比較して、磁性粉体41がワイヤ6aの絶縁被覆層61に入り込む(ささる)現象が生じ難く、コイル部6のターン間において、ショート不良が生じることを防止し、コイル装置2の耐圧(ESD)を向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態では、磁性粉体41は、第1磁性粉体41aと、第1磁性粉体41aよりも粒径の小さな第2磁性粉体41bとを含み、樹脂リッチ層40には、第1磁性粉体41aと第2磁性粉体41bとが含まれている。第1磁性粉体41aは第2磁性粉体41bよりも粒径が大きいため、第1磁性粉体41aを樹脂リッチ層40に包含させることにより、コイル装置2全体としてインダクタンス特性が良好となる。また、第2磁性粉体41bは、第1磁性粉体41aよりも粒径が小さいため、成形型内の樹脂を磁性粉体41とともに圧縮したときに、第1磁性粉体41aよりもワイヤ6aの絶縁被覆層61に入り込み難い。そのため、第2磁性粉体41bを樹脂リッチ層40に包含させることにより、上述したワイヤ6aの絶縁被覆層61に磁性粉体41が入り込む現象を効果的に防止することができる。
【0063】
また、本実施形態では、樹脂リッチ層40において、コイル部6に近接した位置では、第1磁性粉体41aよりも第2磁性粉体41bの含有量が多い。この場合、ワイヤ6aのターン間に形成される溝の内側に第2磁性粉体41bが入り込む。また、複数の第1磁性粉体41aの各々の間に、第2磁性粉体41bが配置される。そのため、コア部4(素体)内部において、磁性粉体41の含有割合(密度)を高めることが可能となる。したがって、良好なインダクタンス特性を有するコイル装置2を得ることができる。
【0064】
また、本実施形態では、樹脂リッチ層40には、絶縁被覆層61の厚みよりも粒径が大きい磁性粉体41(第1磁性粉体41a)が含まれている。例えばフェライトのように比較的導電性が低い材料を第1磁性粉体41aとして用いる場合、仮にワイヤ6aの絶縁被覆層61に第1磁性粉体41aが入り込んだとしても、コイル部6のターン間において、ショート不良が生じ難い。また、第1磁性粉体41aの粒径を上記のような大きさとすることにより、良好なインダクタンス特性を有するコイル装置2を得ることができる。
【0065】
第2実施形態
本発明の第2実施形態に係るコイル装置は、その製造方法が相違するのみであり、その構成については、前述した第1実施形態と同様である。以下において、第1実施形態と共通する部分については、その詳細な説明は省略する。
【0066】
本実施形態におけるコイル装置の製造方法では、樹脂リッチ層40の形成方法のみが異なる。すなわち、本実施形態では、まずワイヤ6aがコイル状に巻回してあるコイル部6を準備し、該コイル部6の内部も含む全体を、コア部4(素体)で覆い、コア部4の外面から、ワイヤ6aのリード部6bを露出させる。そして、この状態で、コア部4を予備成形する。コア部4の予備成形は、たとえば金型のキャビティ内に、コイル部6をインサートした状態で、金型の内部に、磁性粉体とバインダ樹脂とを含む混合物をキャビティ内に充填し、全体を圧縮(加熱加圧)することにより行う。予備成形では、後述する本成形よりも小さい圧力で、コア部4の圧縮を行う。磁性粉体としては、図4に示す第1磁性粉体41aと第2磁性粉体41bとを含む磁性粉体41を用いる。
【0067】
次に、予備成形により得られたコア部4(予備成形体)を樹脂液に浸漬する。樹脂液としては、樹脂リッチ層40を構成する樹脂42を用いる。このとき、毛細管現象により、樹脂液がワイヤ6aのリード部6bの周囲に形成された僅かな隙間を通ってコア部4の内部に流入し、コイル部6の周辺部まで到達する。その結果、樹脂液がコイル部の周囲を覆うように(取り巻くように)コイル部6の表面に付着し、コイル部6の表面に樹脂層が形成される。コア部4を樹脂液に浸漬させる時間等を適宜調整することにより、コイル部6の表面に厚みが5~200μmの樹脂層を形成することができる。
【0068】
次に、コア部4を本成形する。本成形では、予備成形よりも大きな圧力でコア部4の圧縮(加熱加圧)を行う。コア部4を圧縮すると、コイル部6の表面に形成された樹脂層の内部に金型内の磁性粉体の一部が入り込み、当該磁性粉体を含む樹脂層がコイル部6の表面に形成される。前述の通り、上記磁性粉体は樹脂リッチ層40を構成する磁性粉体41で構成され、上記樹脂層は樹脂リッチ層40を構成する樹脂42で構成される。そのため、コイル部6の表面に形成された樹脂層の内部に金型内の磁性粉体が入り込むことにより、磁性粉体41と樹脂42とを含む樹脂リッチ層40が得られる(図3Aおよび図3B参照)。
【0069】
本実施形態では、コイル部6の周辺部だけでなく、ワイヤ6aのリード部6bの周辺部にも樹脂液が充填されるため、該周辺部にも樹脂層が形成される。そのため、コア部4の圧縮時(本成形時)には、リード部6bの周辺部に形成される樹脂層にも、金型内の磁性粉体が入り込み、樹脂リッチ層40が形成される。なお、リード部6bの周辺部以外の部分にも樹脂リッチ層40が形成されていてもよい。
【0070】
本実施形態においても、第1実施形態と同様のコイル装置2が得られ、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0071】
第3実施形態
本発明の第3実施形態に係るコイル装置は、その製造方法が相違するのみであり、その構成については、前述した第1実施形態と同様である。以下において、第1実施形態と共通する部分については、その詳細な説明は省略する。
【0072】
本実施形態では、樹脂リッチ層40の形成方法のみが異なる。すなわち、本実施形態では、まず、図3Aおよび図3Bに示すように、ワイヤ6aがコイル状に巻回してあるコイル部6aを準備する。コイル部6は、たとえば空芯コイルなどで構成される。図5に示すように、導線60の表面に形成された絶縁被覆層61は、第1絶縁被覆層610と第2絶縁被覆層620とを有する。第1絶縁被覆層610は導線60の表面に形成され、第2絶縁被覆層620は第1絶縁被覆層610の表面に形成されている。
【0073】
第2絶縁被覆層620を構成する樹脂としては、第1絶縁被覆層610を構成する樹脂よりも溶融しやすい樹脂が用いられる。本実施形態では、第2絶縁被覆層620を構成する樹脂として、樹脂リッチ層40を構成する樹脂42を用いる。例えば、第1絶縁被覆層610はポリアミドイミドで構成され、第2絶縁被覆層620はポリアミドイミドに添加物を加えた材料で構成される。
【0074】
本実施形態では、コイル部6の形成段階において、例えば空芯コイルを加熱することにより、第2絶縁被覆層620を溶融させ、熱融着層(自己融着層)を形成する。これにより、第1絶縁被覆層610の表面は、熱融着層で全体的に覆われ、コイル部6の隣接する各ターン同士は熱融着層によって接続(接着)される。その結果、コイル部6aの隣接する各ターン同士は、熱融着層を介して一体化されることになる。なお、後述するように加熱雰囲気中で金型内の樹脂を磁性粉体とともに圧縮(加熱加圧)させるときに、第2絶縁被覆層620を溶融させ、第1絶縁被覆層610の表面に熱融着層を形成してもよい。
【0075】
次に、コイル部6の内部も含む全体を、コア部4(素体)で覆い、コア部4の外面から、コイル部6を構成するワイヤ6aのリード部6bを露出させる。コア部4の成形は、たとえば金型のキャビティ内に、コイル部6をインサートした状態で、金型の内部に、磁性粉体とバインダ樹脂とを含む混合物をキャビティ内に充填し、全体を圧縮することにより行う。磁性粉体としては、図4に示す第1磁性粉体41aと第2磁性粉体41bとを含む磁性粉体41を用いる。
【0076】
加熱雰囲気中で金型内の樹脂を磁性粉体とともに圧縮(加熱加圧)すると、第1絶縁被覆層610の表面に形成された熱融着層の一部が溶融し、コイル部6の周辺部に位置するコア部4の内部に滲み出す。その結果、コイル部6の周辺部は、溶融した熱融着層の分だけ樹脂リッチとなる。前述の通り、上記磁性粉体は樹脂リッチ層40を構成する磁性粉体41で構成され、上記熱融着層は樹脂リッチ層40を構成する樹脂42で構成される。そのため、第1絶縁被覆層610の表面に形成された熱融着層をコイル部6の周辺部に滲み出させることにより、磁性粉体41と樹脂42とを含む樹脂リッチ層40が得られる(図3Aおよび図3B参照)。
【0077】
なお、圧縮成型時における加熱温度を調整することにより、コア部4の内部に滲み出す熱融着層の量を調整することが可能であり、コイル部6の表面に厚みが5~200μmの熱融着層を形成することができる。また、樹脂リッチ層40における樹脂42の含有量を所望の値とすることができる。
【0078】
本実施形態においても、第1実施形態と同様のコイル装置が得られ、第1実施形態と同様の効果が得られる。特に、本実施形態では、絶縁被覆層61の表面には、熱融着層(第2絶縁被覆層620を基に形成された熱融着層)が形成されている。そのため、熱融着層を樹脂リッチ層40として機能させることが可能となり、成形型内の樹脂42を磁性粉体41とともに圧縮したときに、熱融着層によって、磁性粉体41がワイヤ6の絶縁被覆層61に入り込むことを防止することができる。したがって、本実施形態においても、コイル部6のターン間において、ショート不良が生じることを防止することができる。
【0079】
第4実施形態
図6に示す本発明の第4実施形態に係るコイル装置102は、以下の点が相違するのみであり、その他の構成は、前述した第1実施形態と同様である。図面において、第1実施形態と共通する部材には、共通する符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0080】
図6に示すように、コイル装置110は、コイル部106と樹脂リッチ層140とを有する。コイル部106はワイヤ106aを有し、ワイヤ106aは、平角線ワイヤで構成されているという点において、第1実施形態におけるワイヤ6aとは異なる。
【0081】
ワイヤ106aは、一般的なノーマルワイズにより巻回されている。ただし、ワイヤ106aの巻回方式はこれに限定されるものではなく、例えばエッジワイズあるいはα巻きにより巻回されていてもよい。
【0082】
図示の例では、コイル部106はZ軸方向(巻回軸方向)に2層で形成されているが、2層以外であってもよい。また、コイル部106はX軸方向あるいはY軸方向に4層で形成されているが、4層以外であってもよい。
【0083】
樹脂リッチ層140は、コイル部106の周辺部に形成されており、平角線ワイヤを巻回してなるコイル部106の周辺部を覆っている(取り巻いている)。
【0084】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。特に、本実施形態では、ワイヤ106aが、平角線で構成されている。そのため、コア部4(素体)内部において、コイル部106の占積率を高めることが可能となり、良好なインダクタンス特性を有するコイル装置102を得ることができる。また、コイル部6の低抵抗化を図ることができる。
【0085】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0086】
上記各実施形態において、樹脂リッチ層40には、導線60の表面に形成された絶縁被覆層61の厚みよりも粒径が小さい磁性粉体41(第1磁性粉体41a)が含まれていてもよい。このように、樹脂リッチ層40に、絶縁被覆層61の厚みよりも粒径が小さい第1磁性粉体41aを包含させる場合、当該第1磁性粉体41aを構成する材料として、導電性の高い材料(金属磁性粉体)を用いてもよい。金属磁性粉体を第1磁性粉体41aとして用いることにより、良好なインダクタンス特性を有するコイル装置2を得ることができる。また、第1磁性粉体41a(金属磁性粉体)の粒径を上記のような大きさとすることにより、上述したワイヤ6aの絶縁被覆層61に第1磁性粉体41aが入り込む現象を効果的に防止することができる。
【0087】
上記各実施形態において、樹脂リッチ層40は、(実質的に)樹脂42のみで構成されていてもよい。この場合、コイル部6の周辺部に磁性粉体42が包含されないため、上述したワイヤ6aの絶縁被覆層61に磁性粉体41が入り込む現象を効果的に防止することができる。
【0088】
上記各実施形態において、樹脂リッチ層40は第2磁性粉体(小粒子)41bのみで構成されていてもよい。この場合、第2磁性粉体41bの粒径は、絶縁被覆層61の厚みと同等、あるいはそれ以下であることが好ましい。
【0089】
上記各実施形態において、図2に示す相互に反対側に位置する側面4c1,4c1は、相互に同じ形と面積を有するが、異ならせても良い。側面4c2,4c2についても同様である。
【0090】
上記各実施形態において、コイル部6は、円形コイル状であるが、特に限定されず、四角コイル状、多角コイル状、楕円コイル状、その他のコイル状でもよい。さらに、コア部4の形状は、特に限定されず、円柱形、楕円柱、多角柱などであっても良い。
【0091】
上記各実施形態において、樹脂リッチ層40に含まれる磁性粉体41の種別は必要に応じて適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0092】
2,102…コイル装置
4,104…コア部
4a…実装側外面
4a1,4b1…取付溝
4b…反実装側外面
4c…側面(側方外面)
4c1…主取付側面
4c2…副取付側面
4c3a,4c3b、4c4a,4c4b…非取付側面
40,140…樹脂リッチ層
41…磁性粉体
41a…第1磁性粉体
41b…第2磁性粉体
42…樹脂
6,106…コイル部
6a,106a…ワイヤ
60…導線
61…絶縁被覆層
610…第1絶縁被覆層
620…第2絶縁被覆層(熱融着層)
6b…リード部
6c…接合部
8…端子電極
80…主端子本体
82…副端子本体
83,84…弾性片
85…リード支持部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6