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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】充放電検査設備の校正装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20240815BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240815BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H02J7/00 Q
H01M10/48 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020076761
(22)【出願日】2020-04-23
(65)【公開番号】P2021174652
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 剛志
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-078576(JP,A)
【文献】国際公開第2012/093652(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42
H02J 7/00
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並んで配置される二次電池の正極及び負極にそれぞれ接続される第1、第2の充放電プローブを多数備え、前記二次電池の充放電試験を行う充放電検査装置を有する充放電検査設備の校正装置であって、
搬送手段によって前記充放電検査装置に搬送可能な搬送トレイと、
前記搬送トレイの凹部内を移動可能に配置され、前記第1、第2の充放電プローブにそれぞれ接続される正極端子及び負極端子を多数備えた校正ユニットと、
前記正極端子及び前記負極端子と前記第1、第2の充放電プローブとの位置決めを行う位置決め手段とを有することを特徴とする充放電検査設備の校正装置。
【請求項2】
請求項1記載の充放電検査設備の校正装置において、前記位置決め手段は、前記充放電検査装置に設けられた位置決めピンと、前記校正ユニットに設けられ、前記位置決めピンの下部が挿入する位置決め用穴とで構成されていることを特徴とする充放電検査設備の校正装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の充放電検査設備の校正装置において、前記校正ユニットにはアイドリング回路が備え付けられていることを特徴とする充放電検査設備の校正装置。
【請求項4】
並んで配置される二次電池の正極及び負極にそれぞれ接続される第1、第2の充放電プローブを多数備え、前記二次電池の充放電試験を行う充放電検査装置を有する充放電検査設備の校正装置であって、
搬送手段によって前記充放電検査装置に搬送可能な搬送トレイと、
前記搬送トレイに固定配置され、前記第1、第2の充放電プローブにそれぞれ接続される正極端子及び負極端子を多数備えた校正ユニットと、
前記正極端子及び前記負極端子と前記第1、第2の充放電プローブとの位置決めを行う位置決め手段とを有し、
前記校正ユニットにはアイドリング回路が備え付けられていることを特徴とする充放電検査設備の校正装置。
【請求項5】
請求項記載の充放電検査設備の校正装置において、前記位置決め手段は、前記充放電検査装置に設けられた位置決めピンと、前記搬送トレイに設けられ、前記位置決めピンの先部が挿入する位置決め用穴とで構成されていることを特徴とする充放電検査設備の校正装置。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の充放電検査設備の校正装置において、前記校正ユニットには複数の電圧測定ブロックが設けられていることを特徴とする充放電検査設備の校正装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の充放電検査設備の校正装置において、前記充放電検査装置を格納する、左右方向、及び、上下方向のいずれか一方又は双方に設けられた複数の検査ステージのうち、少なくとも1つの前記検査ステージを前記搬送トレイの待機場所とし、該待機場所を前記搬送トレイに配置された前記校正ユニットを校正するステーションとすることを特徴とする充放電検査設備の校正装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の充放電検査設備の校正装置において、前記二次電池はSMD型であることを特徴とする充放電検査設備の校正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電可能な二次電池を充放電検査(充放電試験)する充放電検査設備の校正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、充放電可能な二次電池(以下、単に電池とも記載)は、IoT機器等で使用するため小型化されており、その生産数も増加している。
この電池の製造においては、従来の充放電用電池と同様、製造した電池の充放電検査を行い、電池が所定の性能や特性を満たしているか否かを検査してから出荷している。この充放電検査は、充放電検査装置の充放電プローブを二次電池に接触(コンタクト)させることで行われている(例えば、特許文献1参照)。
なお、この充放電検査装置も校正装置を用いて定期的に検査して校正されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-149440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、二次電池を多数同時に充放電検査する場合、二次電池に接触させる充放電プローブも多数必要となるため、この充放電プローブに接続させる校正装置の端子も多数必要となることから、例えば、端子や充放電プローブの配置精度によっては、校正を行う際に端子が充放電プローブに接触しないおそれがある。なお、二次電池が小型で、充放電プローブが更に多数必要となる場合には、端子や充放電プローブの配置精度を更に高める必要がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成で充放電プローブを多数備えた充放電検査装置を校正できる充放電検査設備の校正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る充放電検査設備の校正装置は、並んで配置される二次電池の正極及び負極にそれぞれ接続される第1、第2の充放電プローブを多数備え、前記二次電池の充放電試験を行う充放電検査装置を有する充放電検査設備の校正装置であって、
搬送手段によって前記充放電検査装置に搬送可能な搬送トレイと、
前記搬送トレイの凹部内を移動可能に配置され、前記第1、第2の充放電プローブにそれぞれ接続される正極端子及び負極端子を多数備えた校正ユニットと、
前記正極端子及び前記負極端子と前記第1、第2の充放電プローブとの位置決めを行う位置決め手段とを有する。
【0007】
第1の発明に係る充放電検査設備の校正装置において、前記位置決め手段は、前記充放電検査装置に設けられた位置決めピンと、前記校正ユニットに設けられ、前記位置決めピンの下部が挿入する位置決め用穴とで構成されていることが好ましい。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係る充放電検査設備の校正装置は、並んで配置される二次電池の正極及び負極にそれぞれ接続される第1、第2の充放電プローブを多数備え、前記二次電池の充放電試験を行う充放電検査装置を有する充放電検査設備の校正装置であって、
搬送手段によって前記充放電検査装置に搬送可能な搬送トレイと、
前記搬送トレイに固定配置され、前記第1、第2の充放電プローブにそれぞれ接続される正極端子及び負極端子を多数備えた校正ユニットと、
前記正極端子及び前記負極端子と前記第1、第2の充放電プローブとの位置決めを行う位置決め手段とを有する。
【0009】
第2の発明に係る充放電検査設備の校正装置において、前記位置決め手段は、前記充放電検査装置に設けられた位置決めピンと、前記搬送トレイに設けられ、前記位置決めピンの先部が挿入する位置決め用穴とで構成されていることが好ましい。
【0010】
第1、第2の発明に係る充放電検査設備の校正装置において、前記校正ユニットには複数の電圧測定ブロックが設けられていることが好ましい。これにより、例えば、1つの検査ステージ内で複数の電圧測定ブロックが平行して駆動することで、校正時間の短縮が図れる。
【0011】
第1、第2の発明に係る充放電検査設備の校正装置において、前記校正ユニットにはアイドリング回路が備え付けられていることが好ましい。これにより、例えば、校正ユニットの搬送や電源遮断後に必要なアイドリング時間を短縮でき、校正時間の短縮が図れる。
【0012】
第1、第2の発明に係る充放電検査設備の校正装置において、前記充放電検査装置を格納する、左右方向、及び、上下方向のいずれか一方又は双方に設けられた複数の検査ステージのうち、少なくとも1つの前記検査ステージを前記搬送トレイの待機場所とし、該待機場所を前記搬送トレイに配置された前記校正ユニットを校正するステーションとすることが好ましい。
【0013】
第1、第2の発明に係る充放電検査設備の校正装置において、前記二次電池がSMD型である場合に本発明の効果がより顕著になる。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明に係る充放電検査設備の校正装置は、第1、第2の充放電プローブにそれぞれ接続される正極端子及び負極端子を多数備えた校正ユニットが、搬送トレイの凹部内を移動可能に配置され、位置決め手段により正極端子及び負極端子と第1、第2の充放電プローブとの位置決めを行うので、正極端子及び負極端子と第1、第2の充放電プローブとの位置調整を容易に行うことができる。
第2の発明に係る充放電検査設備の校正装置は、第1、第2の充放電プローブにそれぞれ接続される正極端子及び負極端子を多数備えた校正ユニットが、搬送トレイに固定配置され、位置決め手段により正極端子及び負極端子と第1、第2の充放電プローブとの位置決めを行うので、正極端子及び負極端子と第1、第2の充放電プローブとの位置調整を容易に行うことができる。
従って、簡単な構成で充放電プローブを多数備えた充放電検査装置を校正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態に係る充放電検査設備の校正装置の使用状態の説明図である。
図2】同充放電検査設備の校正装置の校正ユニットと充放電検査装置の充放電プローブとの位置関係を示す斜視図である。
図3】同充放電検査設備の平面図である。
図4】同充放電検査設備の校正装置のブロック図である。
図5】(A)は同校正装置の使用状態の説明図、(B)は同校正装置の校正ユニットの斜視図である。
図6】同校正装置の回路図である。
図7】同校正装置の部分回路図である。
図8】(A)、(B)はそれぞれ同校正装置の部分回路図である。
図9】変形例に係る校正装置の説明図である。
図10】同校正装置の動作説明図である。
図11】(A)、(B)はそれぞれ定電圧動作及び定電流動作を示すグラフである。
図12】同校正装置の動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、図1図5を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る充放電検査設備の校正装置(以下、単に校正装置とも記載)10を適用する充放電検査設備11について説明する。
図3に示すように、充放電検査設備11は、平面視してスタッカクレーン(搬送手段の一例)12を挟んでその両側に配置される2つの検査架台13を有し、各検査架台13には、左右方向及び上下方向(左右方向又は上下方向でもよい)に複数の検査ステージ13aが設けられ、この各検査ステージ13aにそれぞれ充放電検査装置13bが格納されている。なお、二次電池(後述する図9の符号11a)の充放電検査においては、前工程からコンベア13cにより搬送された二次電池が多数収容されたトレイ13dを、スタッカクレーン12によって所定の検査ステージ13aに搬送し、充放電検査装置13bによって所定の充放電検査を行った後、このトレイ13dを、スタッカクレーン12によって検査ステージ13aから搬出し、コンベア13eに載置して、後工程へ送る。
【0017】
充放電検査装置13bで充放電検査する二次電池は、充放電可能なSMD型(表面実装型)の全固体電池であり、直方体状となって、その一辺が、例えば、20mm以下(10mm以下でもよく、更には5mm以下でもよい)程度の小型のものである。この二次電池の形状や種類は特に限定されるものではなく、例えば、その形状は、薄板状、円盤状、立方体状、円柱状等でもよい。
1つのトレイ13dに収容される二次電池の個数は、特に限定されるものではないが、例えば、100個以上、好ましくは500個以上、更に好ましくは1000個以上である。一方、上限値は、例えば、10000個程度にできる。
【0018】
充放電検査装置13bは、1つのトレイ13dに並んで配置された多数の二次電池を同時に充放電検査するものである。
この充放電検査装置13bは、図1に示すように、平面視して長方形状(又は正方形状)のベース台14と、このベース台14に立設された複数の支柱15と、トレイ13dを載置する昇降台16と、この昇降台16を昇降させる複数の昇降手段17と、支柱15の上端部に設けられた支持プレート18とを有している。なお、図1では、充放電検査装置13bへトレイ13dを搬入する方向、及び、充放電検査装置13bからトレイ13dを搬出する方向を前後方向とし、これと直交する方向を左右方向(幅方向)とする。また、図2では、説明の便宜上、後述する第1、第2の充放電プローブ22、23、カードエッジコネクタ32、充放電電源33、正極端子45、及び、負極端子46の全部を図示することなく、その一部のみを図示している。
以下、詳しく説明する。
【0019】
支柱15は、ベース台14の四隅部に立設配置され、ベース台14に対して支持プレート18の高さ位置を固定するものである。
昇降台16は、ベース台14の左側と右側にそれぞれ配置された対となる昇降板部19、20で構成され、この昇降板部19、20が、トレイ13dをその両側から支持して、昇降台16上にトレイ13dを載置するものである。なお、図1中の符号21は、昇降台16を所定の高さ位置に支持する支持台である。
昇降手段17は、例えば、上下方向に進退駆動するエアシリンダー(油圧シリンダーでもよい)であり、平面視してベース台14の左右方向両側の前後方向中央位置(2つの支柱15の間)に対となって配置されている。この昇降手段17のシリンダチューブ17a(基部:上部)は支持プレート18が下面に固定された電源基板31に取付け固定され、ピストンロッド17b(先部:下部)は昇降板部19、20に取付け固定され、対となる昇降板部19、20を支持プレート18(電源基板31)に対して同時に昇降させることができる(同期駆動させることができる)。
なお、昇降手段17をベース台14上に立設配置し(シリンダチューブ17aをベース台14に取付け固定し)、ピストンロッド17bを昇降板部19、20に取付け固定することもでき、また、昇降台が1つであれば昇降手段は1個でもよい。
【0020】
支持プレート18には、棒状の第1、第2の充放電プローブ22、23が対となって、その両側を突出させた状態で多数設けられている。この第1、第2の充放電プローブ22、23は二次電池を充放電検査するものであり、電圧測定機能も有している。
第1の充放電プローブ22は、その下端部(一端部)が二次電池の正極に当接可能なものであり、第2の充放電プローブ23は、その下端部(一端部)が二次電池の負極に当接可能なものである。このため、1個の支持プレート18に設けられる第1、第2の充放電プローブ22、23の本数は、第1、第2の充放電プローブ22、23を一組として、1個のトレイ13dに収容される二次電池の最大個数と同じにしている。
【0021】
支持プレート18は、図2に示すように、樹脂製の2枚の板材24で構成され、各板材24にザグリ加工を施し、形成された穴の大径部25が向き合うように2枚の板材24を貼り合わせることで、空間部26を形成している。この空間部26には、第1、第2の充放電プローブ22、23の軸心方向中央に設けられた拡径部(拡幅部)27が配置され、第1、第2の充放電プローブ22、23の軸心方向両側が、支持プレート18の小径部28を介してその厚み方向両側に突出した状態となっている。
なお、空間部26内では、第1、第2の充放電プローブ22、23の拡径部27がその軸心方向に隙間29、30を有した状態で配置される。
【0022】
この空間部26内の隙間29、30には、図示しないばね材(弾性部材の一例)がそれぞれ収容配置されている。これにより、第1、第2の充放電プローブ22、23が支持プレート18に対してその軸心方向に往復移動可能になって、二次電池に対する第1、第2の充放電プローブ22、23の接触圧力と、支持プレート18の背面側(トレイ13dとは反対側)に配置される電源基板31に対する第1、第2の充放電プローブ22、23の接触圧力を、それぞれ調整できる。
なお、ばね材は、第1、第2の充放電プローブ22、23の拡径部27の軸心方向片側(上側の隙間29)のみに配置することもできる。
【0023】
電源基板31は、支柱15の上端部に取付け固定されている(支持プレート18は電源基板31を介して支柱15に設けられている)。
この電源基板31の上面には、複数のカードエッジコネクタ32が設けられ、充放電電源33が取付け取外し可能になっているので、メンテナンス性を良好にできる。また、電源基板31の下面には、基板端子34が設けられ、第1、第2の充放電プローブ22、23の上端部(他端部)が当接可能になっている。これにより、第1、第2の充放電プローブ22、23の上端部が充放電電源33に接続されることになる。
このカードエッジコネクタ32と基板端子34は、1個の充放電電源33に複数の二次電池が並列接続されるように、電源基板31に形成した配線で接続されている。
【0024】
電源基板31には、その下方に突出した複数の円柱状の位置決めピン35が設けられ、この位置決めピン35が、支持プレート18に形成された断面円形の位置決めピン用の貫通孔36を貫通し、その下部を下方へ突出させている。なお、支持プレート18は電源基板31の下側に、その相対位置がずれないように取付け固定されている。
これにより、支持プレート18と電源基板31を一体化できると共に、電源基板31の基板端子34と第1、第2の充放電プローブ22、23との接触を確実に実施できる。
なお、第1、第2の充放電プローブ22、23は、電源基板31の基板端子34とは隙間を有した状態で配置され、当接可能となっているが、当接させた状態(接触状態)でもよい。
【0025】
充放電検査設備11には、図1に示すOPCサーバを備えた充放電制御部(充放電PC、管理パソコン)37が設けられ、充放電検査装置13bには、図1に示すように、昇降台16の高さ位置を検出するセンサ38と、昇降手段17を操作する電磁弁39が設けられている。なお、充放電制御部37は、通信線(図示しない)により電源基板31と接続されている。
これにより、充放電制御部37は、センサ38の情報(昇降台16の高さ位置)をPLC40を介して読み取ることができ、また、センサ38の情報を基に、充放電制御部37の指令によってPLC40の信号で電磁弁39(昇降手段17)を操作して、昇降台16を昇降させることができる。
【0026】
なお、充放電検査装置13bには、充放電検査を行う際に発生する熱エネルギーが二次電池に干渉することを抑制、更には防止するための送風ファン(図示しない)が設けられている。
この送風ファンは、例えば、充放電検査装置13bの奥側(後ろ側)に配置して、支持プレート18とトレイ13dの間を奥側から手前側(前側)へかけて送風することができ、また、充放電検査装置13bの左右方向の両側又は片側に配置して、左側から右側又は右側から左側へかけて送風することもできる。なお、送風ファンの設置台数は、特に限定されるものではなく、1台又は2台以上の複数台でもよい。
【0027】
本発明の一実施の形態に係る充放電検査設備の校正装置10は、図1図5に示すように、充放電検査設備11が備えた充放電検査装置13bを校正する装置であり、搬送トレイ41と、この搬送トレイ41上に配置される複数(ここでは4個)の校正ユニット42とを有している。この校正ユニット42が載置された搬送トレイ41は、前記した各検査架台13の左右方向及び上下方向(左右方向又は上下方向でもよい)に設けられた複数の検査ステージ13aのうち、少なくとも1つの検査ステージ13a(図3においては、下側の検査架台13の右端の検査ステージ13a)を待機場所とし、しかも、この待機場所を校正ユニット42を校正するステーションとしている。
以下、詳しく説明する。
【0028】
搬送トレイ41は、図2に示すように、平面視して正方形状又は長方形状となって、その下側には、下方へ向けて開口した断面凹状の挿入部43が形成され、スタッカクレーン12のフォーク(爪部)を挿入部43に差し込むことで、搬送トレイ41を検査対象となる充放電検査装置13bまで搬送可能な構成となっている。なお、搬送トレイ41の搬送手段として、二次電池を収容するトレイ13dを搬送するスタッカクレーン12を用いたが、スタッカクレーン12とは異なる他の搬送手段(例えば、スタッカクレーンやローダーでもよい)を使用することもでき、また、挿入部の形成位置や数は、例えば、搬送トレイの大きさや使用するスタッカクレーンの種類等に応じて種々変更できる。
搬送トレイ41の上側には、平面視して正方形状又は長方形状の凹部44が複数(ここでは、校正ユニット42の個数と同じ4個)形成され、この凹部44内に校正ユニット42がそれぞれ配置されている。このため、校正ユニット42同士は干渉しない構造となっている。
【0029】
凹部44の底面と校正ユニット42の裏面とは互いに接触し、校正ユニット42が、凹部44の底面に沿って凹部44内を移動可能(摺動可能)になっている。なお、校正ユニット42の移動をスムーズに行うため、凹部44の底部及び/又は校正ユニット42の裏面部を、潤滑性のある材料で構成してもよく、また、凹部44の底面と校正ユニット42の裏面との間に潤滑材を配置してもよい。
この凹部44の内幅は、校正ユニット42の移動範囲に応じて設定できるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、校正ユニット42の外幅よりも20mm以下、好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下の範囲で広くする(あそびを設ける)のがよい。
【0030】
校正ユニット42は、トレイ13dに一列、複数列、又は、多種多様に並べて配置された二次電池の配置位置に対応して、二次電池の正極及び負極に接続可能な第1、第2の充放電プローブ22、23にそれぞれ接続される正極端子45及び負極端子46を多数備えている。
図4図5に示すように、正極端子45は、プラス側パワー端子(+Pa)45aとプラス側電圧センシング端子(+Sa)45bで構成され、負極端子46は、マイナス側パワー端子(-Pa)46aとマイナス側電圧センシング端子(-Sa)46bで構成されている。この1つの校正ユニット42に設けられた正極端子45及び負極端子46の数は、正極端子45及び負極端子46を一組として、一組の第1、第2の充放電プローブ22、23の個数に対応し、特に限定されるものではないが、例えば、50個以上、好ましくは150個以上、更に好ましくは300個以上にすることができる。一方、上限値は、例えば、1000個程度にできる。
【0031】
これに対応して電源基板31には、支持プレート18を介して、それぞれのプラス側パワー端子45a、マイナス側パワー端子46a、プラス側電圧センシング端子45b、マイナス側電圧センシング端子46bに接続されるパワー端子a、c及び電圧センシング端子b、dが接続されている。このパワー端子aと電圧センシング端子bが第1の充放電プローブ22を構成し、パワー端子cと電圧センシング端子dが第2の充放電プローブ23を構成する。
そして、搬送トレイ41が上昇することによって、これらパワー端子a、c及び電圧センシング端子b、dが、対応するプラス側パワー端子45a、マイナス側パワー端子46a、プラス側電圧センシング端子45b、マイナス側電圧センシング端子46bに、それぞれ電気的に接続される。
なお、第1、第2の充放電プローブ22、23は、図1図2に示すように、充放電電源33に線を用いることなく電源基板31を介して直接接続されるが、図4図5においては、便宜上、前記した電源基板31に形成した配線を、パワー線47と電圧センシング線48として記載している。
【0032】
図6に校正ユニット42の概略構成を示すが、パワー端子a(+P)、c(-P)及び電圧センシング端子b(+S)、d(-S)にそれぞれ接続されるプラス側パワー端子45a、マイナス側パワー端子46a、プラス側電圧センシング端子45b、マイナス側電圧センシング端子46bの端子群は、リレー(即ち、スイッチ群)49、49a、49b、49cを介して負荷回路ブロック50に接続されている。
この負荷回路ブロック50は、+Pa端子が充放電電源33のプラス側パワー端子aに、-Pa端子が充放電電源33のマイナス側パワー端子cに、+Sa端子が充放電電源33のプラス側電圧センシング端子bに、-Sa端子が充放電電源33のマイナス側電圧センシング端子dに、それぞれ接続される。
【0033】
図7に示すように、+Pa端子と-Pa端子には、直流用電流センサーである電流/電圧(I/V)変換器52が接続されて電圧変換される。変換された電圧は増幅回路53で所定の大きさに増幅され、充放電電流校正回路を作動させるスイッチ54を通じて電圧信号となって、図8(A)に示すADコンバータ55に入力され、デジタル信号となってMPU56に入力される。このMPU56はデジタル表示器57を有し、増幅回路53の利得を調整して、+Pa端子と-Pa端子に流れる電流が校正後、実際の電流(計測値)Irとして正確に表示される。なお、充放電電源33内に別の電流/電圧変換器が設けられ、その出力が充電電流のモニター値Imとなり、コントローラ(電源コントローラ)58(又は充放電制御部37)は、充放電電源33からの充電電流の設定値Isが、実際の電流Irとモニター値Imに一致するように制御手段1によって補正している。なお、コントローラ58は、例えば、充放電制御部(充放電PC)37と充放電電源33との間にある。
【0034】
補正の方法は、設定値Isを変えて、実際の電流Irとモニター値Imを監視し、例えば一次関数(y=ax+b)を設定し、係数a、bを決めて、設定値Is、実際の電流Ir及びモニター値Imが常時一致するように校正用コンピュータ72内に設けられた制御手段1によって実行されている。
なお、この方法は、以下に説明する充放電電源33の充電電圧の校正、放電電圧の校正においても制御手段2、3によって実行されている。
【0035】
また、図7に示すように、電流/電圧変換器52の出力は、位相補償回路59、増幅回路60、及び、充電電圧校正回路を作動させるスイッチ61を通じて、図8(A)のADコンバータ55に入力され、MPU56で処理されて、デジタル表示器57に充放電電源33の実際の充電電圧(即ち、計測値Vr)が表示される。一方、プラス側電圧センシング端子45b、マイナス側電圧センシング端子46bには、充放電電源33に接続され充放電電源33に備えられたモニター測定回路を介して校正用コンピュータ72にモニター電圧Vmとして記憶される。また、充放電電源33の制御を行うコントローラ58(又は充放電制御部37)には、充放電電源33への充電電圧の設定値Vsが入力できる構造となっている。
なお、デジタル表示器57は、校正ユニット42に設けられていてもよいし、外付けであってもよい。
【0036】
そして、図7に示すように、位相補償回路59の出力を出力電圧より高電圧の基準電圧63と比較して、充放電電源33のデジタル表示器57に示される放電電圧Crを得て、充放電電源33の放電電圧の設定値Cs及びモニター値Cmの校正を行っている。なお、62は差分回路を、64は増幅回路を、65はスイッチを示す。
以上のことを、更に詳細かつ具体的に説明すると、放電定電圧の位相補償回路59の出力電圧は、図7の+Pa、-Pa間に流れる電流の方向性の関係から、充電定電圧時に発生する電圧が正極性に対して、反対の負極性の電圧が発生する。最終的に+Sa、-Sa間に発生する電圧(4)は、放電定電圧設定値で指定された正極性の電圧を出力する必要があるため、(基準電圧63)≧|(位相補償回路59の最小出力電圧値)|となる基準電圧を選択する。
動作を纏めると、図7の-Pa⇒+Pa間に流れる電流値に応じて位相補償回路59の出力電圧は、負極方向に電圧が降下して行き、|(位相補償回路59の最小出力電圧値)|より大きい基準電圧62と差分をとることで、+Sa、-Sa間に発生する電圧(4)も降下していく。
+Sa、-Sa間に発生する電圧(4)と放電定電圧の設定値が等しくなったところで、充放電電源33は、放電定電圧状態となるため、その時の放電電圧Crを得て、設定値Cs、モニター値Cmの校正を行っている。但し、そのときに、-Pa⇒+Pa間に流れる電流は、放電定電流設定値を超えないようにする必要がある。
【0037】
図8(A)に示すように、MPU56には、デジタル温度センサー67の信号が入力され、機器に温度変化があってもその誤差を修正し、常時正確な計測値(電流、電圧)を表示する。なお、MPU56に接続される不揮発性メモリ68にはデジタル温度センサー67と、実測で計測した温度に対する修正データ(補正値)が記憶されている。
これによって、デジタル温度センサー67を補正し、更に、使用にあっては、デジタル温度センサー67を使用して、装置内の温度上昇に伴う測定値も補正している。
【0038】
ここで、図8(A)に示すADコンバータ55、MPU56、デジタル温度センサー67、及びMPU56に内蔵、又は、外付けされる不揮発性メモリ68を有して、図6に示す高確度電圧測定ブロック(デジタルマルチメータ)70を構成している。この高確度電圧測定ブロック(電圧測定ブロック)を校正ユニット内に複数設けることで、校正時間の短縮を図ることができる。
なお、不揮発性メモリ68は高確度電圧測定ブロックに配置することもできる。また、コントローラ58に設けられているメモリと不揮発性メモリとは別で、コントローラ58のメモリには、充放電電源33の補正値を格納し、MPU56付属の不揮発性メモリは、実際の電流Ir、計測値Vr、Crを正確に表示するための補正値が格納されている。
【0039】
図6に示す高確度電圧測定ブロック70は、内蔵又は外部接続された無線ユニット(無線器)71を備え、本実施の形態に係る校正装置10の処理を行うプログラム(制御手段1~3も含む)が入力された校正用コンピュータ(PC)72(図4参照)に連結されている。校正用コンピュータ72の出力は、充放電制御部37と連携し、コントローラ58を介して充放電電源33を制御している。
校正用コンピュータ72は所定の作業者が行う特定の信号(例えば、校正開始信号)によって、充放電電源33に接続される一組のリレー(接点)49、49a、49b、49cを択一的に切り換えている。これらの信号は無線で行うことが好ましいが、有線であってもよい。
【0040】
校正ユニット42は、図6図8(B)に示すように、充電回路75を通じて充電される電池(電池)76、この電池76の電圧を所定電圧にする昇圧回路77、接点Aを備えて作動時間を設定するタイマー回路78を有するアイドリング回路(バックアップ電源回路)79を有している。これによって、図5に示すように、校正ユニット42を一つの検査ステージ13aに格納された充放電検査装置13bから、他の検査ステージ13aに格納された充放電検査装置13bに変える場合の電源供給を確保できる。
【0041】
校正ユニット42の4隅部のうち、その対角位置となる2つの隅部に位置決め用穴80(有底の穴であるが貫通した孔でもよい)が設けられている。
この位置決め用穴80は断面円形となって、前記した貫通孔36を貫通した位置決めピン35の下部が挿通されるものであり、この位置決め用穴80に位置決めピン35の下部が挿通されることで、支持プレート18に対する校正ユニット42の位置、即ち、第1、第2の充放電プローブ22、23に対する正極端子45及び負極端子46の位置を調整(位置決め)できる(平面視して、第1、第2の充放電プローブ22、23が正極端子45及び負極端子46に重なるように調整できる)。従って、位置決め用穴の個数や配置位置は、この位置調整ができる構成であれば、特に限定されるものではない。
【0042】
この位置調整がなされた状態では、位置決めピン35の下面は位置決め用穴80内の高さ方向の途中に位置する(搬送トレイ41の凹部44の底面に接触しない位置)。
この位置調整は、支持プレート18に対して搬送トレイ41を上昇させる際に、位置決め用穴80に位置決めピン35が進入することで実施できるため、位置決めピン35の先部(下部)を先細り形状にするのがよく、また、位置決め用穴80の上側を上方に向けて拡径するテーパ状にするのがよい。
なお、上記した位置決め用穴80と、充放電検査装置13bに設けられた貫通孔36及び位置決めピン35とで位置決め手段が構成されているが、第1、第2の充放電プローブ22、23に対する正極端子45及び負極端子46の位置を調整できれば、位置決め手段の構成は特に限定されるものではなく、例えば、支持プレート(充放電検査装置)に設けられた位置決めピンと校正ユニットに設けられた位置決め用穴で構成することもできる。
【0043】
上記した搬送トレイ41と校正ユニット42の代わりに、搬送トレイ上に1個又は2個以上の複数個の校正ユニットが固定配置されたものを使用することもできる。なお、搬送トレイの下側の構造は搬送トレイ41と同一であり、校正ユニットの機能は校正ユニット42と略同様であり、この校正ユニットに設けられ、第1、第2の充放電プローブ22、23にそれぞれ接続される正極端子及び負極端子を一組とした個数は、例えば、100個以上、好ましくは500個以上、更に好ましくは1000個以上にできる。一方、上限値は、例えば、1000個程度にできる。
この搬送トレイと校正ユニットは、例えば、個別に製造して一体化したものであるが、搬送トレイと校正ユニットとを樹脂等を用いて一体的に製造したものでもよい。
【0044】
この場合、位置決め手段は、充放電検査装置に設けられた位置決めピンと、搬送トレイに設けられ、位置決めピンの先部が挿入する位置決め用穴とで構成する。
例えば、位置決めピンを昇降台の昇降板部(充放電検査装置の下部)に設け、位置決め用穴を、搬送トレイの4隅部のうち、その対角位置となる2つの隅部に設け、使用にあっては、位置決め用穴に位置決めピンの上部(先部)が挿入されることで、支持プレートに対する校正ユニットの位置、即ち、第1、第2の充放電プローブに対する正極端子及び負極端子の位置を調整(位置決め)できる(平面視して、第1、第2の充放電プローブが正極端子及び負極端子に重なるように調整できる)。従って、位置決め用穴の個数や配置位置は、この位置調整ができる構成であれば、特に限定されるものではない。
【0045】
なお、上記した第1、第2の充放電プローブ22、23はそれぞれ、前記したトレイ13dに多数収容された二次電池の正極と負極に直接当接して接続されるように配置(即ち、平面視して、第1の充放電プローブ22と二次電池の正極が、第2の充放電プローブ23と二次電池の負極が、それぞれ重なるように配置)されているが、例えば、図9に示すように、二次電池11aの正極と負極に間接的に接続されるような位置に配置される場合もある。
第1、第2の充放電プローブ22、23の二次電池11への接触領域が狭い場合(二次電池11が特に小型の場合)、第1、第2の充放電プローブ22、23を二次電池11aの正極と負極に直接当接させにくい場合がある。この場合、第1、第2の充放電プローブ22、23は、例えば、図9に示す位置に配置することが好ましい。
【0046】
トレイ13dには、二次電池を収容するための固定穴(図示しない)が多数形成され、この固定穴の底面となる端子基板90の表面に、二次電池11aの正極及び負極がそれぞれ当接可能な正極当接部91及び負極当接部92が、金メッキにより形成されている。この正極当接部91と負極当接部92は離れて、絶縁状態になっている。
また、固定穴とは異なる領域(固定穴の近傍)の端子基板90の表面に、第1、第2の充放電プローブ22、23の先部(先端)がそれぞれ当接可能な正極端子部93及び負極端子部94が、金メッキにより形成されている。この正極端子部93と負極端子部94は、二次電池11aの正極及び負極の最小幅よりも幅広に形成されている。なお、第1の充放電プローブ22は、プラス側パワーピン22aとプラス側電圧センシングピン22bとで構成され、第2の充放電プローブ23は、マイナス側パワーピン23aとマイナス側電圧センシングピン23bとで構成されている。
この正極当接部91と正極端子部93は第1の導通部95で、負極当接部92と負極端子部94は第2の導通部96で、それぞれ接続されている。
【0047】
上記した正極当接部91、正極端子部93、及び、第1の導通部95で正極側の拡張端子部が構成され、負極当接部92、負極端子部94、及び、第2の導通部96で負極側の拡張端子部が構成されている。
これにより、正極当接部91と正極端子部93は第1の導通部95によって通電可能となり、負極当接部92と負極端子部94は第2の導通部96によって通電可能となる。
上記した構成により、第1、第2の充放電プローブ22、23を二次電池11の正極及び負極に直接接触させることなく、正極側と負極側の拡張端子部を介して間接的に充放電検査を実施できる。このため、第1、第2の充放電プローブ22、23の二次電池11への接触領域が狭くても(二次電池11が特に小型の場合でも)、充放電検査を確実に実施できる。
【0048】
このように、第1、第2の充放電プローブ22、23がそれぞれ、平面視して、二次電池11aの正極と負極に重ならないように配置される場合、校正ユニットに設けられ、第1、第2の充放電プローブ22、23にそれぞれ接続される正極端子と負極端子も、上記した正極端子部93と負極端子部94(正極側と負極側の拡張端子部)の形成位置に対応した位置に配置する。
この正極端子と負極端子も、正極端子部93と負極端子部94のように、二次電池11aの正極及び負極の最小幅よりも幅広に形成することが好ましい。
なお、図9中の符号97は、第1、第2の充放電プローブ22、23が設けられた支持プレート18に、その下方に突出した状態で設けられ、二次電池11aの絶縁部分を上方から押圧し、二次電池11aを端子基板90に抑え付ける抑えピン(押圧部)である。
【0049】
続いて、充放電検査設備の校正方法について説明する。
まず、図3に示すように、下側の検査架台13の右端の検査ステージ13a(待機場所)に格納した搬送トレイ41を、スタッカクレーン12によって、校正対象となる検査ステージ13aの充放電検査装置13bに自動で搬入し、昇降台16上に載置する。
【0050】
次に、充放電制御部37の指令によってPLC40の信号で電磁弁39(昇降手段17)を操作して、搬送トレイ41を上昇させる。このとき、電源基板31に設けられた位置決めピン35が貫通孔36を介して位置決め用穴80に挿入され、位置決めピン35に対する校正ユニット42の正極端子45及び負極端子46の配列が、前後左右で正確な位置に決定される。
更に搬送トレイ41が上昇すると、位置決めピン35に対して正確な位置に配列された第1、第2の充放電プローブ22、23と、校正ユニット42の正極端子45及び負極端子46とがそれぞれコンタクトされ(各パワー端子a、cと電圧センシング端子b、dに校正ユニット42が接続され(図12(1)、以下図12の括弧付き数字のみを記載する)、昇降手段17は、第1、第2の充放電プローブ22、23のストローク(ばね圧)と、二次電池の正極及び負極との接触圧力の関係から決定した上昇位置で停止する。これにより、第1、第2の充放電プローブ22、23と校正ユニット42の正極端子45及び負極端子46とは、最適な接圧条件となる。
【0051】
第1、第2の充放電プローブ22、23と校正ユニット42の正極端子45及び負極端子46とのコンタクト完了通知を、PLC40から充放電制御部37が読み取ると、予め設定した校正のフローに従って充放電検査装置13bの校正を完了させる。
以下、充電定電圧校正を行う場合の、処理工程(制御手段2を含む)について、図4図12を参照しながら詳細に説明する。
まず、校正ユニット42のアイドリング回路79の接点Aをオフにして(図8(B)参照)、校正ユニット42のアイドリングを中止する。これによって、充電回路75が作動し、電池76が一定電圧まで充電される(2)。この状態では、校正ユニット42は外部電源に接続されて駆動状態となっている。
【0052】
充放電制御部37(図4参照)から校正ユニット42に設定データを送信する(3)。これによって、一組のリレー(接点)49、49a、49b、49cを介して、充放電電源33のプラス側パワー端子45a、マイナス側パワー端子46a、プラス側電圧センシング端子45b、マイナス側電圧センシング端子46bが負荷回路ブロック50に接続される(4)。ここで、校正ユニット42内のスイッチ54、61、65(図7参照)が切り替わり、充放電電源33の充放電電流、充電電圧、及び、放電電圧の校正を行うことができる。
【0053】
この後、校正ユニット42から充放電制御部37に確認用のデータを送信する(5)。そして、充放電制御部37からコントローラ58に設定データを送信する(6)。ここで、設定データには、充電設定電流(但し、定電流に入らない大きな値)と充電設定電圧の設定値を含む。
【0054】
充放電制御部37の設定データに応じて充放電電源33が作動する。この充電設定電圧は、図7のスイッチ61の出力側の電圧となり、充電設定電流は図7の+Paと-Pa間を流れる電流より大きくしている(7)。
この後、充放電制御部37から校正ユニット42の読み値測定要求を行う、更にコントローラ58へモニター値測定要求を行う(8)。
【0055】
校正ユニット42は読み値を測定し、充放電制御部37に送信する(9)。即ち、図8のVin値をADコンバータ55で読み取り、MPU56で演算後、無線ユニット71を通じて、実際の電圧Vr、電流Ir等を充放電制御部37に送信する。
コントローラ58はモニター値(Vm、Im)を測定し、充放電制御部37に送信する。即ち、充放電電源33の+Sa、-Sa間の電圧をコントローラ58で読み取り、通信線経由で充放電制御部37に送信する(10)。
【0056】
充放電電源33の校正を終了する場合は、充放電制御部37からコントローラ58に停止要求を行う(11)。
なお、設定電圧、設定電流を変更する場合は、(6)の設定データ(設定値Vs、Isも同じ)を変更して(6)~(11)の処理を行う。また、定電圧、定電流等のモードを変更する場合は、(3)の設定データを変更し、(3)~(11)を実施する。
【0057】
ここで、更に図6を参照しながら、充電(定)電圧校正について具体的に説明する。なお、充電電流校正、放電電圧校正、並びに放電電流校正についても同様の処理を行う(即ち、設定値、計測値及びモニター値については同様の処理を行う)。
校正用コンピュータ72から充放電制御部37を介してコントローラ58に充電電圧に対応する設定値Yn即ち(Vs)を入力し、その時のデジタルマルチメータ(電圧計)の実測電圧値Xn(Vr)を読み込み、Yn=a1Xn+b1(基本式という)の関数に対する係数a1、b1の値を、X1、X2、Y1、Y2の値を基本式に代入して求める。
このa1、b1の値を使って、図10の(a)、(b)に示すように、設定値Ynを設定値Yanに補正して、設定値に対する充放電電源33の出力値を補正することができる。
【0058】
デジタルマルチメータ70を含む校正ユニット42は、実際の二次電池の試験中には、使用していないので、充放電電源33におけるモニター値と充放電電源33の実際の電圧を一致させておく必要がある。
そこで、デジタルマルチメータ70における実測値は、実際の電圧値を表示するようにしているので、このデジタルマルチメータ70の実測値と充放電電源33におけるモニター値(Vm)が一致するように補正する。
【0059】
この補正は、Zn=a2Xn+b2の式を用い、図10(a)の値からa2、b2を求める(図10(c))。以上の補正は、校正用コンピュータ72で行い、充放電制御部37を通じてコントローラ58に入力される。その結果、図10(d)に示すように、補正後の設定値Y、実測電圧(充電電圧)X、及びモニター値Zを一致させることができ、実際の操業においては、設定値を変えるとこれに応じて充電電圧が変わり、その値とモニター値が一致する。
【0060】
充放電電源33の充電電圧の測定においては、図11(A)に示すように、電圧設定値と、図7の+Saと-Sa間の電圧が等しくなったときに、定電圧制御として充放電電源33が動作する。そのため、定電圧動作未満の場合は、電圧設定値と出力電圧(+Sa、-Sa)間電圧が等しくなるまで、+Pa、-Pa間の電流が上昇することとなる。
即ち、定電圧制御状態となった出力電圧(+Sa、-Sa)間電圧をADコンバータ55に入力することによって、電圧校正が成り立つ。なお、定電圧制御状態となったタイミングは、図12(8)の待ち時間で調整を行っている。
【0061】
充放電電源33の充電電流の測定においては、図11(B)に示すように、電流設定値と図7の(+Pa、-Pa)の電流が等しくなったときに定電流制御として充放電電源33が動作する。そのため、定電流動作未満の状態では、(+Pa、-Pa)間の電流を上昇させるように動作する。即ち、定電流制御状態となった図7のスイッチ54の出力電圧をADコンバータ55に入力することで、電流校正が成り立つ。
【0062】
なお、以上のスイッチ54、61、65は充放電電源33の充電/放電電流校正、充電電圧校正、放電電圧校正を択一するものである。また、位相補償回路59はフィードバック制御が行われている充放電電源33を発振させないためのもので、条件によっては必須のものではない。
【0063】
なお、充電電流及び放電電流は、充放電電源から出力する電流の向きが異なるのみであり、図6図7において、a)充電電流:+P→-Pの方向、b)放電電流:-P→+Pの方向となり、校正ユニットは、a)、b)の方向に流れる電流を測定する能力が必要である。この実施の形態においては、図8(A)で±Voを読み取っている。
また、この実施の形態に説明した充放電電源33は、電池等の電力供給源がない場合であっても、a)、b)の双方向に電流を流せる能力(機能)を有していることを前提にしているが、充放電電源に双方向に電流を流せる能力がない場合で、放電電流及び放電電圧の校正を行う場合は、b)の方向に電流を流すための電源供給源を必要とする。
【0064】
上記した充放電検査装置13bの校正が終了した後は、搬送トレイ41が降下する。
そして、搬送トレイ41は、スタッカクレーン12によって、充放電検査装置13bから自動で搬出され、下側の検査架台13の右端の検査ステージ13a(待機場所)へ搬送されて待機状態となる。
以上の操作を、予め設定されたプログラムに基づいて、各検査ステージ13aに格納された充放電検査装置13bに対し順次行う。これにより、簡単な構成で充放電プローブを多数備えた充放電検査装置を校正できる。
【0065】
なお、上記した充放電検査装置13bの校正は、他の充放電検査装置13bで二次電池の充放電試験を行いながら(並行して)行うことが好ましい。また、検査架台13に校正装置の搬送トレイが複数配置されている場合は、これらを独立して又は同時並行して使用することもできる。そして、校正装置の搬送トレイは、一つの充放電検査装置13bの校正が完了した後、上記した待機場所に戻ることなく、他の充放電検査装置13bの校正を行う(複数の充放電検査装置13bを連続して校正する)こともできる。
上記した待機場所は、校正ユニットを校正するためのステーションでもあるため、待機中に校正用コンピュータによる予め設定したフローに従って、校正ユニットの校正を行うことが好ましい。
【0066】
更に、二次電池の検査ラインでは、校正時間を可能な限り短縮し、電池検査を優先して行いたいため、特に、個数が膨大となるSMD型の二次電池の場合は、搬送トレイに設けられた複数の校正ユニットを同時に駆動する(多数の二次電池の校正を並行して行う)ことが好ましく、これにより、校正時間の短縮が図れる。
また、校正ユニット内でも、複数の負荷回路ブロック、電圧測定ブロック、及び、無線ユニットのいずれか1又は2以上を設けることで、更なる校正時間の短縮が図れる。
【0067】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の充放電検査設備の校正装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施の形態においては、充放電検査設備が複数の充放電検査装置を備えている場合について説明したが、充放電検査装置は1台でもよく、特に限定されない。なお、充放電検査装置は、搬送トレイを支持プレートに対して昇降させているが、支持プレートを搬送トレイに対して昇降させることもできる。
【0068】
また、前記実施の形態においては、校正装置の搬送トレイの待機場所を、検査架台に設けられた複数の検査ステージのうちの1箇所に設けた場合について説明したが、2箇所以上の複数箇所に設けることもでき、また、検査架台とは異なる場所に設けることもできる(校正ステーションも同様)。
更に、校正ユニットの構成は、充放電可能な二次電池の充放電検査装置を校正できるものであれば、前記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではない。例えば、前記実施の形態においては、電流/電圧変換器として、ホール素子を用いた直流用電流センサーを用いたが、低抵抗のシャントを使用することもできる。
【符号の説明】
【0069】
10:充放電検査設備の校正装置、11:充放電検査設備、11a:二次電池、12:スタッカクレーン(搬送手段)、13:検査架台、13a:検査ステージ、13b:充放電検査装置、13c:コンベア、13d:トレイ、13e:コンベア、14:ベース台、15:支柱、16:昇降台、17:昇降手段、17a:シリンダチューブ、17b:ピストンロッド、18:支持プレート、19、20:昇降板部、21:支持台、22:第1の充放電プローブ、22a:プラス側パワーピン、22b:プラス側電圧センシングピン、23:第2の充放電プローブ、23a:マイナス側パワーピン、23b:マイナス側電圧センシングピン、24:板材、25:大径部、26:空間部、27:拡径部、28:小径部、29、30:隙間、31:電源基板、32:カードエッジコネクタ、33:充放電電源、34:基板端子、35:位置決めピン、36:貫通孔、37:充放電制御部、38:センサ、39:電磁弁、40:PLC、41:搬送トレイ、42:校正ユニット、43:挿入部、44:凹部、45:正極端子、45a:プラス側パワー端子、45b:プラス側電圧センシング端子、46:負極端子、46a:マイナス側パワー端子、46b:マイナス側電圧センシング端子、47:パワー線、48:電圧センシング線、49、49a、49b、49c:リレー、50:負荷回路ブロック、52:電流/電圧変換器、53:増幅回路、54:スイッチ、55:ADコンバータ、56:MPU、57:デジタル表示器、58:コントローラ、59:位相補償回路、60:増幅回路、61:スイッチ、62:差分回路、63:基準電圧、64:増幅回路、65:スイッチ、67:デジタル温度センサー、68:不揮発性メモリ、70:高確度電圧測定ブロック、71:無線ユニット、72:校正用コンピュータ、75:充電回路、76:電池、77:昇圧回路、78:タイマー回路、79:アイドリング回路、80:位置決め用穴、90:端子基板、91:正極当接部、92:負極当接部、93:正極端子部、94:負極端子部、95:第1の導通部、96:第2の導通部、97:抑えピン
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