(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20240815BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20240815BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F27/24 W
H01F27/29 H
(21)【出願番号】P 2020085480
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2023-04-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 晨
(72)【発明者】
【氏名】杉本 聡
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-073523(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0336986(US,A1)
【文献】特開2019-134147(JP,A)
【文献】特開2002-237419(JP,A)
【文献】特開2015-228476(JP,A)
【文献】特開2020-053555(JP,A)
【文献】特開2019-129253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 27/24
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1脚部を有する第1コア部と、
前記第1脚部との間にギャップを形成しつつ配置される第2コア部と、
前記第1コア部と前記第2コア部との間に少なくとも一部が配置され、第1主面と前記第1主面とは反対側の第2主面とを有する板状の導体と、を有し、
前記導体の外周面には、前記ギャップに対応する位置で、切り欠き部が形成されており、
前記切り欠き部は、第1切り欠き部と、前記導体の延在方向に沿って前記第1切り欠き部とは離間している第2切り欠き部とを有するコイル装置。
【請求項2】
前記切り欠き部は、前記導体に隣接する前記第1脚部の縁に沿って、前記導体に形成されている請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記切り欠き部の深さは、前記ギャップの幅よりも大きい請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記第2コア部は、前記第1脚部に対向して配置される第2脚部を有し、
前記切り欠き部は、前記第1脚部と前記第2脚部との間に形成される前記ギャップに対応する位置で、前記導体に形成されている請求項1~3のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項5】
前記切り欠き部は、凹溝からなる請求項4に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記第1脚部は、一対の外脚部と、一対の前記外脚部の各々の間に配置される中脚部とを有し、
前記切り欠き部は、前記外脚部および前記中脚部の少なくとも一方と前記第2コア部との間に形成されるギャップに対応する位置で、前記導体に形成されている請求項1~
5のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項7】
前記導体は、湾曲形状からなり、
前記切り欠き部は、当該導体の内周側および外周側の少なくとも一方に形成されている請求項1~
6のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項8】
前記導体は、外部回路に接続される実装部を有し、
前記実装部には、前記切り欠き部の一部が形成されている請求項1~
7のいずれかに記載のコイル装置。
【請求項9】
前記切り欠き部の延在方向に直交する方向の幅と前記導体の延在方向に直交する方向の幅との比は、0.3~0.5である請求項1~
8のいずれかに記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインダクタ等として用いられるコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタ等として用いられるコイル装置として、例えば特許文献1に記載のコイル装置が知られている。特許文献1に記載のコイル装置は、第1のコア部材と、第1のコア部材に対してギャップを挟んで配置されるコア本体と、ギャップに面するようにコア本体に取り付けられる導体とを有する。特許文献1に記載のコイル装置では、導体の取付位置において、コア本体の形状を変えることにより、導体をギャップから離間した位置に配置させている。これにより、ギャップで発生する漏れ磁束が導体の表面に当たり難くなるため、導体の表面に渦電流が発生し難くなり、渦電流に起因する交流損失の発生を防止することが可能となっている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のコイル装置では、コア本体の形状を変えることにより、コア本体の体積が減少し、インダクタンス特性が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、交流損失の発生を防止することが可能であり、さらに良好なインダクタンス特性を有するコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
第1脚部を有する第1コア部と、
前記第1脚部との間にギャップを形成しつつ配置される第2コア部と、
前記第1コア部と前記第2コア部との間に少なくとも一部が配置される導体と、を有し、
前記導体には、前記ギャップに対応する位置で、切り欠き部が形成されている。
【0007】
本発明に係るコイル装置では、導体にギャップに対応する位置で切り欠き部が形成されている。そのため、ギャップに対応する位置では、導体の表面が切り欠き部の深さに応じた距離だけギャップから離間した位置に配置されることになり、ギャップで発生する漏れ磁束が導体の表面に当たり難くなる。したがって、導体の表面に渦電流が発生し難くなり、渦電流に起因する交流損失の発生を防止することができる。
【0008】
また、本発明に係るコイル装置では、導体にギャップに対応する位置で切り欠き部が形成されているため、従来技術とは異なり、導体の表面にギャップで発生する漏れ磁束が当たることを防止するために、第1コア部あるいは第2コア部の形状を変えなくてもよい。そのため、第1コア部あるいは第2コア部の体積を十分に確保することが可能であり、良好なインダクタンス特性を有するコイル装置を実現することができる。
【0009】
好ましくは、前記切り欠き部は、前記導体に隣接する前記第1脚部の縁に沿って、前記導体に形成されている。このような構成とすることにより、第1脚部の縁に沿って延在するギャップの各部において、ギャップで発生する漏れ磁束が導体の表面に当たり難くなり、導体の表面に渦電流が発生することを効果的に防止することができる。
【0010】
好ましくは、前記切り欠き部の深さは、前記ギャップの幅よりも大きい。このような構成とすることにより、ギャップに対応する位置では、導体の表面をギャップから十分に離間した位置に配置することが可能となる。したがって、ギャップで発生する漏れ磁束が導体の表面に当たり難くなり、導体の表面に渦電流が発生することを効果的に防止することができる。
【0011】
前記第2コア部は、前記第1脚部に対向して配置される第2脚部を有し、前記切り欠き部は、前記第1脚部と前記第2脚部との間に形成される前記ギャップに対応する位置で、前記導体に形成されていてもよい。このような構成とすることにより、例えば、いわゆるEE型あるいはUU型等のコアを有するコイル装置において、上述した各種の効果を得ることができる。
【0012】
好ましくは、前記切り欠き部は、凹溝で構成されている。このような構成とすることにより、第1脚部と第2脚部との間にギャップが形成される場合に、当該ギャップに対向する位置に切り欠き部を配置させることが可能となる。そのため、ギャップで発生する漏れ磁束が導体の表面に当たり難くなり、導体の表面に渦電流が発生することを効果的に得ることができる。
【0013】
前記第2コア部は、平板形状からなり、前記切り欠き部は、前記第1脚部と当該第2コア部との間に形成される前記ギャップに対応する位置で、前記導体に形成されていてもよい。このような構成とすることにより、例えば、いわゆるEI型等のコアを有するコイル装置において、上述した各種の効果を得ることができる。
【0014】
好ましくは、前記切り欠き部は、前記導体の側部を面取りした面取部からなる。このような構成とすることにより、第1脚部と平板形状からなる第2コア部との間にギャップが形成される場合に、当該ギャップに対応する位置に切り欠き部を配置させることが可能となる。そのため、ギャップで発生する漏れ磁束が導体の表面に当たり難くなり、導体の表面に渦電流が発生することを効果的に防止することができる。
【0015】
前記第1脚部は、一対の外脚部と、一対の前記外脚部の各々の間に配置される中脚部とを有し、前記切り欠き部は、前記外脚部および前記中脚部の少なくとも一方と前記第2コア部との間に形成されるギャップに対応する位置で、前記導体に形成されていてもよい。このような構成とすることにより、例えば、いわゆるEE型あるいはEI型等のコアを有するコイル装置において、上述した各種の効果を得ることができる。
【0016】
前記導体は、湾曲形状からなり、前記切り欠き部は、当該導体の内周側および外周側の少なくとも一方に形成されていてもよい。例えば、第1脚部が外脚部と中脚部とを有する場合、導体の外周側に切り欠き部が形成されることにより、外脚部と第2コアとの間に形成されるギャップで発生する漏れ磁束が導体の外周側に当たり難くなり、導体の表面に渦電流が発生することを効果的に防止することができる。また、導体の内周側に切り欠き部が形成されることにより、中脚部と第2コアとの間に形成されるギャップで発生する漏れ磁束が導体の内周側に当たり難くなり、導体の表面に渦電流が発生することを効果的に防止することができる。
【0017】
好ましくは、前記導体は、外部回路に接続される実装部を有し、前記実装部には、前記切り欠き部の一部が形成されている。このような構成とすることにより、ギャップで発生する漏れ磁束が実装部の表面に当たり難くなり、導体の表面に渦電流が発生することを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】
図1Aは本発明の第1実施形態に係るコイル装置の斜視図である。
【
図4A】
図4Aはギャップの幅を変化させたときのワイヤ損失(銅損)の変化を示す図である
【
図4B】
図4Bは導体に流れる交流電流の周波数を変化させたときのワイヤ損失(銅損)の変化を示す図である。
【
図4C】
図4Cはコアを構成する材料の比透磁率を変化させたときのワイヤ損失(銅損)の変化を示す図である。
【
図4D】
図4Dは導体に流れる交流電流の電流値(ピークトゥーピーク値)を変化させたときのワイヤ損失(銅損)の変化を示す図である。
【
図4E】
図4Eは導体におけるワイヤ損失(銅損)の分布を示す図である。
【
図5A】
図5Aは本発明の第2実施形態に係るコイル装置の斜視図である。
【
図7A】
図7Aは本発明の第3実施形態に係るコイル装置の斜視図である。
【
図10】
図10は本発明の第4実施形態に係るコイル装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0020】
第1実施形態
図1Aに示すように、コイル装置10は、例えばインダクタであり、第1コア20aと、第2コア20bと、導体30と、を有する。コイル装置10のX軸方向幅は好ましくは3.0~20.0mmであり、Y軸方向幅は好ましくは3.0~20.0mmであり、Z軸方向幅は好ましくは3.0~20.0mmである。
【0021】
図2に示すように、第1コア20aおよび第2コア20bは、それぞれ同一形状を有し、いわゆるE字形状からなる。第1コア20aと第2コア20bとは、Y軸方向に対向するように配置されており、接着剤等を用いて接合される。第1コア20aおよび第2コア20bは、磁性体で構成され、たとえば、比較的透磁率の高い磁性材料、例えばNi-Zn系フェライトや、Mn-Zn系フェライト、あるいは金属磁性体などで構成してある磁性粉体を、成型および焼結することにより作製される。
【0022】
第1コア20aは、第1ベース部21aと、第1溝部24aと、第1側方溝部25a,25aと、第1脚部とを有する。本実施形態では、第1脚部として、一対の第1外脚部22a,22aと、一対の第1外脚部22a,22aの各々の間に配置される第1中脚部23aとが、第1コア20aに具備されている。第1ベース部21aは、略平板形状(略直方体形状)からなる。
【0023】
一対の第1外脚部22a,22は、それぞれ第1ベース部21aのX軸方向の一方側および他方側の端部に、X軸方向に所定の間隔で形成されている。第1外脚部22a,22aは、それぞれ第1ベース部21aのY軸方向の一方側の面から、Y軸方向の一方側に向けて所定長だけ突出している。第1外脚部22a,22aは、それぞれZ軸方向に細長い形状を有し、第1ベース部21aのZ軸方向の上端から下端にかけて延在している。
【0024】
第1中脚部23aは、第1ベース部21aのX軸方向の略中心部に形成されている。第1中脚部23aは、第1ベース部21aのY軸方向の一方側の面から、Y軸方向の一方側に向けて所定長だけ突出している。第1中脚部23aは、Z軸方向に細長い形状を有し、第1ベース部21aのZ軸方向の上部(上端よりも凡そ導体30の厚み分だけ下方の位置)から下端にかけて延在している。第1中脚部23aのY軸方向への突出幅は、第1外脚部22aのY軸方向の突出幅と略等しくなっている。図示の例では、第1中脚部23aのX軸方向幅は、第1外脚部22aのX軸方向幅よりも大きく、略2倍程度となっている。
【0025】
第1溝部24aは、導体30の形状に対応する形状(略U字形状)を有しており、第1中脚部23aの周囲に沿うように延在している。第1溝部24aには、導体30を配置させることが可能となっている。第1溝部24aは、第1側方部241と、第2側方部242と、上方部243とを有する。
【0026】
第1側方部241および第2側方部242は、それぞれZ軸方向に沿って略直線状に延在しており、第1ベース部21aのZ軸方向の上端部から下端部にかけて延在している。第1側方部241はX軸方向の一方側に位置する第1外脚部22aと第1中脚部23aとの間に形成されており、第2側方部242はX軸方向の他方側に位置する第1外脚部22aと第1中脚部23aとの間に形成されている。第1側方部241および第2側方部242の各々のX軸方向幅は、導体30の厚み(板厚)と同程度、あるいはそれよりも大きくなっている。後述するように、第1側方部241には導体30の第1導体側部31が配置され、第2側方部242には導体30の第2導体側部32が配置される。
【0027】
上方部243は、第1ベース部21aの上方に形成されており、X軸方向に沿って延在している。上方部243は、第1側方部241の上端部と第2側方部242の上端部とを接続している。上方部243のZ軸方向幅は、導体30の厚み(板厚)と同程度、あるいはそれよりも大きくなっている。後述するように、上方部243には、導体30の導体上部33が配置される。
【0028】
一対の第1側方溝部25a,25aは、それぞれX軸方向の一方側および他方側に位置する第1外脚部22a,22aの下方に形成されており、X軸方向に沿って、第1ベース部21aのX軸方向の一端側および他端側に向かって延びている。第1側方溝部25a,25aは、それぞれ側方部241,242の下端部に接続されており、側方部241,242と第1側方溝部25a,25aとで略L字状の溝部が形成されている。第1側方溝部25a,25aの各々のZ軸方向幅は、導体30の厚み(板厚)と同程度、あるいはそれよりも大きくなっている。後述するように、第1側方溝部25a,25aには、それぞれ導体30の実装部34,35が配置される。
【0029】
第1溝部24aの内部に導体30を配置させたとき、導体30の内側には第1中脚部23aが配置され、導体30の外側には第1外脚部22a,22aが配置される。
【0030】
第2コア20bは、第2ベース部21bと、第2溝部24bと、第2側方溝部25b,25bと、第2脚部とを有する。本実施形態では、第2脚部として、一対の第2外脚部22b,22bと、一対の第2外脚部22b,22bの各々の間に配置される第2中脚部23b(
図1Bおよび
図1C)とが、第2コア20bに具備されている。第2脚部(第2外脚部22b,22bおよび第2中脚部23b)は、第1脚部(第1外脚部22a,22aおよび第1中脚部23a)に対向して配置される。第2コア20bの形状は第1コア20aの形状と同様であるため、第2コア20bにおける上記各部の形状の説明については省略する。
【0031】
図1Bに示すように、第1コア20aと第2コア20bとの組み合わせは、第1ベース部21aとはY軸方向の反対側に位置する第1コア20aの一方側の面と、第2ベース部21bとはY軸方向の反対側に位置する第2コア20bの一方側の面とを接着剤等(図示略)を介して接合することにより可能となっている。より詳細には、コア20a,20bの外脚部22a,22b同士および/または中脚部23a,23b同士が接合される。
【0032】
第1コア20aと第2コア20bとをY軸方向に対向させつつ組み合わせると、第1コア20aと第2コア20bとの間に、外脚部22a,22bが形成された位置でY軸方向に所定幅を有するギャップG1,G2が形成され、中脚部23a,23bが形成された位置でY軸方向に所定幅を有するギャップG3が形成される。
【0033】
ギャップG1は、X軸方向に所定の長さを有し、X軸方向の一方側に位置する第1外脚部22aおよび第2外脚部22bの各々の間に形成されている。ギャップG2は、X軸方向に所定の長さを有し、X軸方向の他方側に位置する第1外脚部22aおよび第2外脚部22bの各々の間に形成されている。ギャップG1,G2のX軸方向の長さは、外脚部22a,22bのX軸方向の長さと等しくなっている。また、ギャップG1,G2は、Z軸方向にも所定の長さを有し、その長さは外脚部22a,22bのZ軸方向の長さと等しくなっている。
【0034】
ギャップG3は、X軸方向に所定の長さを有し、第1中脚部23aと第2中脚部23bとの間に形成されている。ギャップG3のX軸方向の長さは、中脚部23a,23bのX軸方向の長さと等しくなっている。図示の例では、ギャップG3のX軸方向の長さは、ギャップG1,G2のX軸方向の長さよりも長くなっている。また、ギャップG3はZ軸方向にも所定の長さを有し、その長さは第1中脚部23a,23bのZ軸方向の長さと等しくなっている。ギャップG1~G3は、第1コア20aと第2コア20bとの境界部に沿って同一直線状に形成されている。
【0035】
ギャップG1のY軸方向幅W1は、好ましくは0.1~1.0mmであり、さらに好ましくは0.1~0.5mmである。ギャップG2およびG3のY軸方向幅についても同様である。なお、ギャップG1~G3の各々のY軸方向幅は異なっていてもよい。
【0036】
図2に示すように、導体30は、導体板からなり、湾曲形状(略U字形状)を有する。導体30は、第1コア20aと第2コア20bとの間に配置される。導体30を構成する材料としては、例えば、銅および銅合金、銀、ニッケルなどの金属の良導体が挙げられるが、導体材料であれば特に限定されない。導体30は、例えば、金属の板材を機械加工して形成されるが、導体30の形成方法はこれに限定されるものではない。図示の例では、導体30は縦長形状を有しており、導体30のZ軸方向の高さは、そのX軸方向の長さよりも長くなっている。
【0037】
導体30は、第1導体側部31と、第2導体側部32と、導体上部33と、第1実装部34と、第2実装部35とを有する。第1導体側部31および第2導体側部32は、それぞれZ軸方向に沿って延びている。導体30のうち、第1導体側部31が配置されている側が入力端子(あるいは、出力端子)となり、第2導体側部32が配置されている側が出力端子(あるいは、入力端子)として機能する。導体上部33は、X軸方向に沿って延びており、第1導体側部31および第2導体側部32の各々を接続している。
【0038】
第1実装部34および第2実装部35は、それぞれ導体30の一端部および他端部、すなわち第1導体側部31および第2導体側部32の下端部に連続して(一体に)形成されている。これらの実装部34,35を介して、導体30を実装基板の外部回路(図示略)に接続することが可能となっている。実装部34,35は、導体側部31,32に対して略垂直方向に屈曲しており、X軸方向の外側に向かって延びている。導体30の外部回路(図示略)への接合は、例えばはんだや導電性接着剤等の接続部材を介して行われる。
【0039】
図1Aおよび
図1Cに示すように、実装部34,35の端部は、第1コア20aおよび第2コア20bのX軸方向の側方から外部に露出している。また、
図1Cに示すように、実装部34,35の下面についても同様に、第1コア20aおよび第2コア20bの下方から外部に露出している。このように実装部34,35を外部に露出させることにより、実装部34,35の周辺に生じる熱を効率的にコア20a,20bの外部に放熱することが可能となっている。
【0040】
図2および
図3Aに示すように、本実施形態では、導体30には、切り欠き部が形成されている。より詳細には、導体30の外周側(表面)には第1外側切り欠き部36および第2外側切り欠き部37が形成されており、導体30の内周側(裏面)には内側切り欠き部38が形成されている。
【0041】
第1外側切り欠き部36は、第1導体側部31および第1実装部34の表面に形成されており、第1導体側部31および第1実装部34の延在方向(長手方向)に沿って延びている。第1外側切り欠き部36は、凹溝からなり、その内側にはテーパ面が形成されている。第1外側切り欠き部36の形状は、第1導体側部31および第1実装部34が為す形状に等しく、略L字状となっている。第1外側切り欠き部36は、第1導体側部31および第1実装部34のY軸方向の略中心部に形成されており、第1導体側部31の上端から第1実装部34の端部まで連続的に延びている。
【0042】
第2外側切り欠き部37は、第2導体側部32および第2実装部35の表面に形成されており、第2導体側部32および第2実装部35の延在方向(長手方向)に沿って延びている。第2外側切り欠き部37は、凹溝からなり、その内側にはテーパ面が形成されている。第2外側切り欠き部37の形状は、第2導体側部32および第2実装部35が為す形状に等しく、略L字状となっている。第2外側切り欠き部37は、第2導体側部32および第2実装部35のY軸方向の略中心部に形成されており、第2導体側部32の上端から第2実装部35の端部まで連続的に延びている。
【0043】
外側切り欠き部36,37は、その深さ方向に向かうに従って、そのY軸方向幅が狭くなるように形成されている。なお、外側切り欠き部36,37の形状はこれに限定されるものではなく、例えばテーパ面を省略するなど適宜変更してもよい。
【0044】
図1Bおよび
図2に示すように、外側切り欠き部36,37は、ギャップG1,G2に対応する位置(ギャップG1,G2に近接した位置)で、導体30に形成されている。より詳細には、外側切り欠き部36,37は、導体30に隣接する外脚部22a,22bの外脚縁部22a1,22b1に沿って、Z軸方向に延びるように、導体側部31,32に形成されている。また、外側切り欠き部36,37は、外脚部22a,22bの下端部に沿って、X軸方向に延びるように、実装部34,35に形成されている。
【0045】
第1外側切り欠き部36はギャップG1のX軸方向の他端側と対向しており(面しており)、ギャップG1に対応する位置では、導体30の表面とギャップG1のX軸方向の他端側との距離は、第1外側切り欠き部36の深さDに応じた距離だけ離れている。第2外側切り欠き部37はギャップG2のX軸方向の一端側と対向しており(面しており)、ギャップG2に対応する位置では、導体30の表面とギャップG2のX軸方向の一端側との距離は、第2外側切り欠き部37の深さに応じた距離だけ離れている。
【0046】
外側切り欠き部36,37のY軸方向幅は、ギャップG1,G2のY軸方向幅よりも大きくなっている。第1外側切り欠き部36のY軸方向幅W2とギャップG1のY軸方向幅W1との比W2/W1は、好ましくは0.5~10であり、さらに好ましくは1~7であり、特に好ましくは3~5である。第2外側切り欠き部37のY軸方向幅とギャップG2のY軸方向幅との比についても同様である。
【0047】
第1外側切り欠き部36のY軸方向幅W2と、導体30のY軸方向幅W3との比W2/W3は、好ましくは0.2~0.8であり、さらに好ましくは0.3~0.5である。第2外側切り欠き部37のY軸方向幅と導体30のY軸方向幅との比についても同様である。
【0048】
第1外側切り欠き部36の深さDと導体30の厚みT1との比D/T1は、好ましくは0.1~0.5であり、さらに好ましくは0.2~0.4である。第2外側切り欠き部37の深さと導体30の厚みT1との比についても同様である。
【0049】
第1外側切り欠き部36の深さDとギャップG1のY軸方向幅W1との関係は、D>W1であることが好ましいが、これに限定されるものではない。上記深さDと上記幅W1との比D/W1は、好ましくは0.5~5であり、さらに好ましくは1~3である。第2外側切り欠き部37の深さとギャップG2のY軸方向幅との関係についても同様である。
【0050】
本実施形態では、上記のようにW2/W1、W2/W3、D/T1またはD/W1の各値を決定し、あるいはD>W1とすることにより、ギャップG1,G2に対応する位置において、ギャップG1,G2で発生する漏れ磁束が、導体側部31,32および実装部34,35に当たることを防止することが可能となっている。
【0051】
図2、
図3Aおよび
図3Bに示すように、内側切り欠き部38は、第1導体側部31、第2導体側部32および導体上部33の裏面に形成されており、第1導体側部31、第2導体側部32および導体上部33の延在方向(長手方向)に沿って延びている。内側切り欠き部38は、凹溝からなり、その内側にはテーパ面が形成されている。内側切り欠き部38の形状は、第1導体側部31、第2導体側部32および導体上部33が為す形状に等しく、略U字状となっている。内側切り欠き部38は、第1導体側部31、第2導体側部32および導体上部33のY軸方向の略中心部に形成されており、第1導体側部31の下端から第2導体側部32の下端まで連続的に延びている。
【0052】
図1Cおよび
図2に示すように、内側切り欠き部38は、ギャップG3に対応する位置(ギャップG3に近接した位置)で、導体30に形成されている。より詳細には、内側切り欠き部38は、導体30に隣接する中脚部23a,23bの中脚縁部23a1,23b1に沿って、Z軸方向に延びるように、導体側部31,32に形成されている。また、内側切り欠き部38は、中脚部23a,23bの上端部に沿って、X軸方向に延びるように、導体上部33に形成されている。すなわち、内側切り欠き部38は、中脚部23a,23bの周縁に沿って、延在している。
【0053】
内側切り欠き部38はギャップG3のX軸方向の一端側と対向しており(面しており)、ギャップG3に対応する位置では、導体30の表面とギャップG3のX軸方向の一端側との距離は、内側切り欠き部38の深さに応じた距離だけ離れている。また、内側切り欠き部38はギャップG3のX軸方向の他端側と対向しており(面しており)、ギャップG3に対応する位置では、導体30の表面とギャップG3のX軸方向の他端側との距離は、内側切り欠き部38の深さに応じた距離だけ離れている。
【0054】
内側切り欠き部38の深さおよびY軸方向幅は、外側切り欠き部36,37の深さおよびY軸方向幅と同様である。したがって、内側切り欠き部38についても、上述した外側切り欠き部36,37について述べた関係性(W2/W1、W2/W3、D/T1またはD/W1の各値の範囲あるいはD>W1)を適用することにより、ギャップG3に対応する位置で、ギャップG3で発生する漏れ磁束が、導体側部31,32および導体上部33に当たることを防止することが可能となっている。
【0055】
コイル装置10の製造では、
図2に示す第1コア20aと第2コア20bと導体30とを準備する。次いで、導体30のY軸方向の一方側を第1コア20a(第2コア20b)の第1溝部24a(第2溝部24b)の内部に収容するとともに、導体30のY軸方向の他方側を第2コア20b(第1コア20a)の第2溝部24b(第1溝部24a)の内部に収容し、第1コア20aと第2コア20bとで導体30を挟み込む。
【0056】
このとき、
図1Bに示すように、X軸方向の一方側に位置する第1外脚部22aおよび第2外脚部22bの各々の間にギャップG1が形成され、X軸方向の他方側に位置する第1外脚部22aおよび第2外脚部22bの各々の間にギャップG2が形成され、第1中脚部23aおよび第2中脚部23bの各々の間にギャップG3が形成されるように、Y軸方向に所定の間隔を設けた状態で、第1コア20aと第2コア20bとを組み合わせる。
【0057】
これにより、
図1Bおよび
図1Cに示すように、外側切り欠き部36,37がギャップG1,G2と向かい合い、内側切り欠き部38がギャップG3と向かい合うように配置される。その後、第1コア20aと第2コア20bとを接着剤等で接合することにより、
図1Aに示すコイル装置10が得られる。
【0058】
本実施形態に係るコイル装置10では、導体30にギャップG1~G3に対応する位置で切り欠き部36~38が形成されている。そのため、ギャップG1~G3に対応する位置では、導体30の表面が切り欠き部36~38の深さに応じた距離だけギャップG1~G3から離間した位置に配置されることになり、ギャップG1~G3で発生する漏れ磁束が導体30の表面に当たり難くなる。したがって、導体30の表面に渦電流が発生し難くなり、渦電流に起因する交流損失の発生を防止することができる。
【0059】
図4Aは、導体30に流れる交流電流の周波数を750kHz、当該交流電流の電流値(ピークトゥーピーク値)を20A、コア20a,20bを構成する材料の比透磁率を1400とした場合において、ギャップG1~G3の幅を変化させたときのワイヤ損失(銅損)の変化を示す図である。図中において、丸印は導体30に切り欠き部36~38を設けたときのワイヤ損失を示し、三角印は導体30に切り欠き部36~38を設けなかったときのワイヤ損失を示す。同図に示すように、ギャップG1~G3の幅を0<Gap<250の範囲内で変化させたとき、いずれの値においても、導体30に切り欠き部36~38を設けた場合では、導体30に切り欠き部36~38を設けなかった場合に比べて、ワイヤ損失の値が小さくなっていることが分かる。
【0060】
図4Bは、ギャップG1~G3の幅を225μm、導体30に流れる交流電流の電流値(ピークトゥーピーク値)を20A、コア20a,20bを構成する材料の比透磁率を1400とした場合において、導体30に流れる交流電流の周波数を変化させたときのワイヤ損失の変化を示す図である。同図に示すように、周波数を500≦Fsw≦2000の範囲内で変化させたとき、いずれの値においても、導体30に切り欠き部36~38を設けた場合では、導体30に切り欠き部36~38を設けなかった場合に比べて、ワイヤ損失の値が小さくなっていることが分かる。
【0061】
図4Cは、ギャップG1~G3の幅を225μm、導体30に流れる交流電流の電流値(ピークトゥーピーク値)を20A、当該交流電流の周波数を750kHzとした場合において、コア20a,20bを構成する材料の比透磁率を変化させたときのワイヤ損失の変化を示す図である。同図に示すように、比透磁率を0<μ≦1400の範囲内で変化させたとき、いずれの値においても、導体30に切り欠き部36~38を設けた場合では、導体30に切り欠き部36~38を設けなかった場合に比べて、ワイヤ損失の値が小さくなっていることが分かる。なお、コア20a,20bを構成する材料としては、フェライトが好ましく用いられる。
【0062】
図4Dは、ギャップG1~G3の幅を225μm、コア20a,20bを構成する材料の比透磁率を1400、導体30に流れる交流電流の周波数を750kHzとした場合において、当該交流電流の電流値(ピークトゥーピーク値)を変化させたときのワイヤ損失の変化を示す図である。同図に示すように、当該交流電流の電流値(ピークトゥーピーク値)を10≦Ap-p≦40の範囲内で変化させたとき、いずれの値においても、導体30に切り欠き部36~38を設けた場合では、導体30に切り欠き部36~38を設けなかった場合に比べて、ワイヤ損失の値が小さくなっていることが分かる。
【0063】
図4Eは、導体30におけるワイヤ損失の分布を示す図である。
図4E(a)は切り欠き部36~38を具備する導体30のワイヤ損失の分布を示しており、
図4E(b)は切り欠き部36~38を具備しない導体30’のワイヤ損失の分布を示している。ワイヤ損失の大きさは図中に示すドットの数によって表されており、ドットの数が大きい位置ほどワイヤ損失が大きくなっている。
図4E(a)および(b)を対比すれば明らかなように、切り欠き部36~38を具備する導体30では、切り欠き部36~38を具備しない導体30’に比べて、ギャップG1~G3に対応する位置において、ワイヤ損失が小さくなっている。
【0064】
本実施形態に係るコイル装置10では、導体30にギャップG1~G3に対応する位置で切り欠き部36~38が形成されているため、従来技術とは異なり、導体30の表面にギャップG1~G3で発生する漏れ磁束が当たることを防止するために、第1コア20aあるいは第2コア20bの形状を変えなくてもよい。そのため、第1コア20aあるいは第2コア20bの体積を十分に確保することが可能であり、良好なインダクタンス特性を有するコイル装置10を実現することができる。
【0065】
図4Fはコア20a,20bにおける磁束の分布を示す図である。
図4F(a)は切り欠き部36~38を具備する導体30の周囲のコア20a,20bにおける磁束の分布を示しており、
図4F(b)は切り欠き部36~38を具備しない導体30’の周囲のコア20a,20bにおける磁束の分布を示している。磁束の大きさは色の濃淡によって表されてり、色の濃い位置ほど磁束が大きくなっている。
図4F(a)および(b)を対比すれば明らかなように、いずれの場合においても、コア20a,20bにおける磁束の分布はほとんど変わっていない。このことから、導体30に切り欠き部36~38を設けても、コア20a,20bにおける磁束が過度に減少することはなく、良好なインダクタンス特性を得ることができることが分かる。
【0066】
本実施形態では、外側切り欠き部36,37(内側切り欠き部38)が、導体30に隣接する外脚部22a,22bの外脚縁部22a1,22b1(中脚部23a,23bの中脚縁部23a1,23b1)に沿って、導体30に形成されている。そのため、外脚部22a,22bの外脚縁部22a1,22b1(中脚部23a,23bの中脚縁部23a1,23b1)に沿って延在するギャップG1,G2(ギャップG3)の各部において、ギャップG1,G2(ギャップG3)で発生する漏れ磁束が導体30の表面に当たり難くなり、導体30の表面に渦電流が発生することを効果的に防止することができる。また、いわゆるEE型のコアを有するコイル装置10において、上記効果を得ることができる。
【0067】
また、本実施形態では、切り欠き部36~38の深さが、ギャップG1~G3の幅よりも大きい。そのため、ギャップG1~G3に対応する位置では、導体30の表面をギャップG1~G3から十分に離間した位置に配置することが可能となる。したがって、ギャップG1~G3で発生する漏れ磁束が導体30の表面に当たり難くなり、導体30の表面に渦電流が発生することを効果的に防止することができる。
【0068】
また、本実施形態では、切り欠き部36~38が、凹溝で構成されている。そのため、第1外脚部22aと第2外脚部22bとの間あるいは第1中脚部23aと第2中脚部23bとの間にギャップG1~G3が形成されているような場合に、当該ギャップG1~G3に対向する位置に切り欠き部G1~G3を配置させることが可能となる。そのため、ギャップG1~G3で発生する漏れ磁束が導体30の表面に当たり難くなり、導体30の表面に渦電流が発生することを効果的に得ることができる。
【0069】
また、本実施形態では、導体30が湾曲形状からなり、切り欠き部36~38が当該導体30の内周側および外周側に形成されている。導体30の外周側に外側切り欠き部36,37が形成されることにより、第1外脚部22aと第2外脚部22bとの間に形成されるギャップG1,G2で発生する漏れ磁束が導体30の外周側に当たり難くなり、導体30の表面に渦電流が発生することを効果的に防止することができる。また、導体30の内周側に内側切り欠き部38が形成されることにより、第1中脚部23aと第2中脚部23bとの間に形成されるギャップG3で発生する漏れ磁束が導体30の内周側に当たり難くなり、導体30の表面に渦電流が発生することを効果的に防止することができる。
【0070】
また、本実施形態では、導体30が、外部回路に接続される実装部34,35を有し、実装部34,35には、外側切り欠き部36,37の一部が形成されている。そのため、ギャップG1,G2で発生する漏れ磁束が実装部34,35の表面に当たり難くなり、導体30の表面に渦電流が発生することを効果的に防止することができる。
【0071】
第2実施形態
本発明の第2実施形態に係るコイル装置110は、以下の点が相違するのみであり、その他の構成は、前述した第1実施形態と同様であり、同様な作用効果を奏する。図面において、第1実施形態と共通する部材には、共通する符号を付し、重複する部分の説明については省略する。
【0072】
図5Aに示すように、コイル装置110は、第1コア120aと、第2コア120bと、導体130とを有する。コイル装置110は、第1コア120aと第2コア120bとで導体130を上下方向に挟み込んだ構成を有する。
図6に示すように、第1コア120aは、一対の第1外脚部122a,122aと、第1溝部124aとを有する。
【0073】
一対の第1外脚部122a,122aの各々は、略直方体形状を有し、Y軸方向に所定の間隔で配置されている。第1外脚部122aのX軸方向幅は、そのY軸方向幅よりも大きくなっており、第1外脚部122aはX軸方向に細長くなるように形成されている。
【0074】
第1外脚部122a,122aには、第1段差部26a,26aが形成されている。より詳細には、第1段差部26a,26aは、それぞれ第1外脚部122a,122aの下端部に形成されており、第1外脚部122a,122aのY軸方向の内側に位置する。第1段差部26a,26aの各々は、Y軸方向に対向しており、X軸方向に沿って連続的に延びている。
【0075】
第1溝部124aは、一対の第1外脚部122a,122aの各々の間に形成されている。第1溝部124aには、導体130を配置させることが可能となっている。第1溝部124aは、第1コア120aのY軸方向の略中心部において、第1コア120aの周囲をX軸方向およびZ軸方向に沿って周回するように延びている。第1溝部124aの深さは、導体130の厚みと同程度かそれよりも大きくなっている。
【0076】
第1溝部124aは、第1側方部241と第2側方部242と上方部243とに加えて、下方部244を有する。上方部243と下方部244とは、Z軸方向に沿って互いに対向する位置に形成されており、X軸方向に沿って延在している。後述するように、上方部243には導体130の導体上部33が配置され、下方部244のY軸方向の各端部には導体130の実装部134,135が配置される。
【0077】
第1側方部241と第2側方部242とは、X軸方向に沿って互いに対向する位置に形成されており、Z軸方向に沿って延在している。後述するように、第1側方部241には導体130の第1導体側部31が配置され、第2側方部242には導体130の第2導体側部32が配置される。
【0078】
第2コア120bは、平板形状からなる。
図5Bに示すように、Y軸方向の一方側に位置する第1外脚部122aと第2コア120bとの間にはギャップG4が形成され、Y軸方向の他方側に位置する第1外脚部122aと第2コア120bとの間にはギャップG5が形成されている。ギャップG4,G5の各々は、第1外脚部122aの上端に沿って、X軸方向およびY軸方向に延びている。
【0079】
図6に示すように、導体130は、第1導体側部31と第2導体側部32と導体上部33とに加えて、第1実装部134と第2実装部135とを有する。第1実装部134および第2実装部135の各々は、導体130の一端部および他端部、すなわち第1導体側部31および第2導体側部32の各々の下端部に連続して(一体に)形成されている。実装部134,135は、導体側部31,32に対して略垂直方向に屈曲しており、X軸方向の内側に向かって延びている。
【0080】
導体130の外周側(表面)には、第1外側切り欠き部136および第2外側切り欠き部137が形成されている。外側切り欠き部136,137は、導体上部33の表面に形成されており、導体上部33の延在方向(長手方向)に沿ってX軸方向に連続的に延びている。
【0081】
第1外側切り欠き部136は、導体上部33のY軸方向の一方側の側部(上側角部)を面取りした面取部からなる。第2外側切り欠き部137は、導体上部33のY軸方向の他方側の側部(上側角部)を面取りした面取部からなる。外側切り欠き部136,137が形成された位置では、導体上部33の側部(上側角部)は傾斜面(C面)となっており、導体上部33のY軸方向幅は、上方に向かうにしたがって幅狭となっている。
【0082】
図5Bに示すように、外側切り欠き部136,137は、ギャップG4,G5に対応する位置(ギャップG4,G5に近接した位置)で、導体130に形成されている。より詳細には、外側切り欠き部136,137は、導体130に隣接する外脚部122a,122bの外脚縁部122a1,122b1に沿って、X軸方向に延びるように、導体130に形成されている。
【0083】
第1外側切り欠き部136はギャップG4のY軸方向の他端側に対して斜め方向に面しており、ギャップG4に対応する位置では、導体130の表面とギャップG4のY軸方向の他端側との距離は、第1外側切り欠き部136のY軸方向幅W5あるいはZ軸方向幅W6に応じた距離だけ離れている。第2外側切り欠き部137はギャップG5のY軸方向の一端側に対して斜め方向に面しており、ギャップG5に対応する位置では、導体130の表面とギャップG5のY軸方向の一端側との距離は、第2外側切り欠き部137のY軸方向幅あるいはZ軸方向幅に応じた距離だけ離れている。
【0084】
外側切り欠き部136,137のY軸方向幅は、ギャップG4,G5のZ軸方向幅よりも大きいことが好ましいが、これに限定されるものではない。第1外側切り欠き部136のY軸方向幅W5とギャップG4のZ軸方向幅W4との比W5/W4は、好ましくは0.5~6であり、さらに好ましくは1~5であり、特に好ましくは2~4である。第2外側切り欠き部137のY軸方向幅とギャップG5のZ軸方向幅との比についても同様である。
【0085】
外側切り欠き部136,137のZ軸方向幅は、ギャップG4,G5のZ軸方向幅よりも大きいことが好ましいが、これに限定されるものではない。第1外側切り欠き部136のZ軸方向幅W6とギャップG4のZ軸方向幅W4との比W6/W4は、好ましくは0.5~6であり、さらに好ましくは1~5であり、特に好ましくは2~4である。第2外側切り欠き部137のZ軸方向幅とギャップG5のZ軸方向幅との比についても同様である。
【0086】
第1外側切り欠き部136のY軸方向幅W5と、導体130のY軸方向幅W7(
図6)との比W5/W7は、好ましくは0.1~0.5であり、さらに好ましくは0.2~0.3である。第2外側切り欠き部137のY軸方向幅と導体130のY軸方向幅W7との比についても同様である。
【0087】
第1外側切り欠き部136のZ軸方向幅W6と導体130の厚みT2(
図6)との比W6/T2は、好ましくは0.1~0.9であり、さらに好ましくは0.3~0.7である。第2外側切り欠き部137のZ軸方向幅と導体130の厚みT2との比についても同様である。
【0088】
本実施形態では、上記のようにW5/W4、W6/W4、W5/W7またはW6/T2の各値を決定し、あるいはW5>W4またはW6/W4とすることにより、ギャップG4,G5に対応する位置において、ギャップG4,G5で発生する漏れ磁束が、導体上部33に当たることを防止することが可能となっている。
【0089】
本実施形態では、第2コア120bが、平板形状からなり、第1外側切り欠き部136,137が、第1脚部122a,122aと第2コア120bとの間に形成されるギャップG4,G5に対応する位置で、導体130に形成されている。そのため、いわゆるEI型等のコアを有するコイル装置110において、第1実施形態と同様の各種の効果を得ることができる。
【0090】
また、本実施形態では、第1外側切り欠き部136,137が、導体130の側部を面取りした面取部からなる。そのため、第1脚部122a,122aと平板形状からなる第2コア120bとの間に形成されるギャップG4,G5に対応する位置に、切り欠き部136,137を配置させることが可能となる。それ故、ギャップG4,G5で発生する漏れ磁束が導体130(特に導体上部33)の表面に当たり難くなり、導体130の表面に渦電流が発生することを効果的に防止することができる。
【0091】
第3実施形態
本発明の第3実施形態に係るコイル装置210は、以下の点が相違するのみであり、その他の構成は、前述した第2実施形態と同様であり、同様な作用効果を奏する。図面において、第2実施形態と共通する部材には、共通する符号を付し、重複する部分の説明については省略する。
【0092】
図7Aに示すように、コイル装置210は、第1コア220aと、第2コア220bと、導体230とを有する。
図8と
図6とを対比すれば明らかなように、第2コア220bは、Z軸方向の厚みが薄くなっているという点において、第2実施形態における第2コア120bとは異なる。
【0093】
図8に示すように、第1コア220aは、一対の第1外脚部222a,222aと、第1中脚部223aと、一対の第1溝部224a,224aとを有する。一対の第1外脚部222a,222aの各々には、第2実施形態における第1外脚部122aとは異なり、段差部26a(
図6)が形成されていない。
【0094】
第1中脚部223aは、一対の第1外脚部222a,222aの各々の間に位置している。第1中脚部223aは、第1外脚部222aと同様の形状を有している。なお、第1中脚部223aのY軸方向幅は、第1外脚部222aのY軸方向幅よりも大きくなっている。
【0095】
Y軸方向の一方側に位置する第1溝部224aは、Y軸方向の一方側に位置する第1外脚部222aと第1中脚部223aとの間に形成されている。Y軸方向の他方側に位置する第1溝部224aは、Y軸方向の他方側に位置する第1外脚部222aと第1中脚部223aとの間に形成されている。
【0096】
一対の第1溝部224a,224aの各々は、
図6に示す下方部244に相当する構成を具備していないという点において、第2実施形態における第1溝部124aとは異なる。第1溝部224a,224aには、それぞれ導体230の導体上部33,33を配置させることが可能となっている。
【0097】
導体230は、一対の導体上部33,33と、一対の導体上部33,33のX軸方向の一端に接続された一対の第1導体側部31,31と、一対の導体上部33,33のX軸方向の他端に接続され、一対の導体上部33,33の各々を接続する第2導体側部232とを有する。
【0098】
一対の導体上部33,33の各々は、Y軸方向に所定の間隔で配置されている。第2導体側部232は、Y軸方向に延在しており、第2導体側部232を介して、一対の導体上上部33,33の各々を連結することが可能となっている。なお、
図9に示すように、各導体上部33,33を第2導体側部232で接続するのではなく、導体上部33,33にそれぞれ第2導体側部32,32を具備させ、これにより構成される2つの導体230’,230’をコイル装置210に具備させてもよい。
【0099】
図7Bに示すように、Y軸方向の一方側に位置する第1外脚部222aと第2コア220bとの間にはギャップG6が形成され、Y軸方向の他方側に位置する第1外脚部222aと第2コア220bとの間にはギャップG7が形成されている。ギャップG6,G7の各々は、第1外脚部222aの上端に沿って、X軸方向およびY軸方向に延びている。
【0100】
また、第1中脚部223aと第2コア220bとの間には、ギャップG8が形成されている。ギャップG8は、第1中脚部223aの上端に沿って、X軸方向およびY軸方向に延びている。
【0101】
導体上部33,33の各々の外周側(表面)には、第1外側切り欠き部236および第2外側切り欠き部237が形成されている。外側切り欠き部236,237は、導体上部33の延在方向(長手方向)に沿って連続的に延びている。外側切り欠き部236,237の形状は、第2実施形態における外側切り欠き部136,137の形状と同様となっている。
【0102】
Y軸方向の一方側に位置する導体上部33において、外側切り欠き部236,237は、ギャップG6,G8に対応する位置(ギャップG6,G8に近接した位置)で、導体230に形成されている。より詳細には、第1外側切り欠き部236は、ギャップG6のY軸方向の他端側に対して斜め方向に面しており、導体230に隣接する第1外脚部222aの第1外脚縁部222a1に沿って、X軸方向に延びるように、導体230に形成されている。第2外側切り欠き部237は、ギャップG8のY軸方向の一端側に対して斜め方向に面しており、導体230に隣接する第1中脚部223aの第1中脚縁部223a1に沿って、X軸方向に延びるように、導体230に形成されている。
【0103】
Y軸方向の他方側に位置する導体上部33において、外側切り欠き部236,237は、ギャップG8,G7に対応する位置(ギャップG8,G7に近接した位置)で、導体230に形成されている。より詳細には、第1外側切り欠き部236は、ギャップG8のY軸方向の他端側に対して斜め方向に面しており、導体230に隣接する第1中脚部223aの第1中脚縁部223a1に沿って、X軸方向に延びるように、導体230に形成されている。第2外側切り欠き部237は、ギャップG7のY軸方向の一端側に対して斜め方向に面しており、導体230に隣接する第1外脚部222aの第1外脚縁部222a1に沿って、X軸方向に延びるように、導体230に形成されている。
【0104】
本実施形態では、いわゆるEI型のコアを有するコイル装置210において、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
第4実施形態
本発明の第4実施形態に係るコイル装置310は、以下の点が相違するのみであり、その他の構成は、前述した第1実施形態と同様であり、同様な作用効果を奏する。図面において、第1実施形態と共通する部材には、共通する符号を付し、重複する部分の説明については省略する。
【0106】
図10に示すように、本実施形態におけるコイル装置310は、導体330と導体40とを有する。導体330,40のいずれか一方は一次コイルとして機能し、他方は二次コイルとして機能する。すなわち、本実施形態におけるコイル装置310は、これら2つの導体330,40により、結合コイルとして機能する。
【0107】
導体40は、略U字形状を有し、第1導体側部41と、第2導体側部42と、導体上部43と、第1実装部44と、第2実装部45とを有する。第1導体側部41と第2導体側部42とはX軸方向に対向して配置されており、導体上部43は導体側部41,42の各々の上端部を接続している。実装部44,45は、それぞれ導体側部41,42の下端部に連続して(一体に)接続されている。実装部44,45は、導体側部41,42に対して略垂直方向に屈曲しており、X軸方向の内側に向かって延びている。図示の例では、導体40の厚みは、導体330の厚みよりも小さくなっている。
【0108】
図11に示すように、導体40は導体330の内側(内周側)に配置される。導体40は第1中脚部23a,23bの周囲を取り囲むように、第1中脚部23a,23bの周縁に配置され、導体330は導体40の周囲を取り囲むように、導体40の外側(外周側)に配置される。
【0109】
図10に示すように、導体330は、その裏面に内側切り欠き部38が形成されていないという点において、
図2に示す導体30とは異なる。本実施形態では、導体330とギャップG3(
図1B)との間には導体40が介在しているため、導体330はギャップG3と面することがなく、導体330はギャップG3で発生する漏れ磁束の影響を受け難いからである。
【0110】
本実施形態では、2つの導体330,40を有する結合コイルにおいて、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0111】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0112】
上記第1実施形態において、外側切り欠き部36,37および内側切り欠き部38のいずれか一方を省略してもよい。
【0113】
上記第1実施形態において、切り欠き部36~38のY軸方向の位置は、ギャップG1~G3のY軸方向の位置に応じて適宜変更してもよい。
【0114】
上記第1実施形態では、第1コア20aと第2コア20bとは、それぞれ別体で構成されていたが、これらを一体で構成し、第1コア20aを第1コア部として機能させ、第2コア20bを第2コア部として機能させてもよい。上記第2実施形態~第4実施形態についても同様である。
【0115】
上記第1実施形態において、実装部34,35は第1コア20aと第2コア20bとの間に配置されていたが、コア20a,20bの外側に実装部34,35の少なくとも一部が配置されていてもよい。上記第4実施形態についても同様である。
【0116】
上記第1実施形態において、切り欠き部36~38は導体30の延在方向に沿って連続的に延びていたが断続的に延びていてもよい。上記第4実施形態についても同様である。また、上記第2実施形態において、切り欠き部136,137は導体130の延在方向に沿って連続的に延びていたが断続的に延びていてもよい。上記第3実施形態についても同様である。
【符号の説明】
【0117】
10,110,210,310…コイル装置
20a,120a,220a…第1コア
20b,120b,220b…第2コア
21a…第1ベース部
21b…第2ベース部
22a,122a,222a…第1外脚部
22a1,122a1,222a1…第1外脚縁部
22b…第2外脚部
22b1,122b1…第2外脚縁部
23a,223a…第1中脚部
23a1,223a1…第1中脚縁部
23b…第2中脚部
23b1…第2中脚縁部
24a,124a…第1溝部
24b…第2溝部
241…第1側方部
242…第2側方部
243…上方部
244…下方部
25a…第1側方溝部
25b…第2側方溝部
26a…段差部
30,30’,130,230,230’,330,40…導体
31,41…第1導体側部
32,232,42…第2導体側部
33,43…導体上部
34,134,44…第1実装部
35,135,45…第2実装部
36,136,236…第1外側切り欠き部
37,137,237…第2外側切り欠き部
38…内側切り欠き部