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特許7538630送電装置、送電装置の制御方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】送電装置、送電装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/60 20160101AFI20240815BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20240815BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20240815BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20240815BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240815BHJP
   H01M 10/46 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/10
H02J50/40
H02J50/80
H02J7/00 301D
H01M10/46
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020101076
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021197768
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】七野 隆広
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-520630(JP,A)
【文献】特開2017-070074(JP,A)
【文献】特開2019-187070(JP,A)
【文献】特開2018-068008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/60
H02J 50/10
H02J 50/40
H02J 50/80
H02J 7/00
H01M 10/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の受電装置へ無線で送電を行う第一の送電手段と、
第二の受電装置へ無線で送電を行う第二の送電手段と、
前記第一の送電手段を用いて前記第一の受電装置へ送電した場合の、前記第一の送電手段の送電電力と前記第一の受電装置の受電電力との間の関係を示す第一のデータを取得する第一の取得手段と、
前記第二の送電手段を用いて前記第二の受電装置へ送電した場合の、前記第二の送電手段の送電電力と前記第二の受電装置の受電電力との間の関係を示す第二のデータを取得する第二の取得手段と、
前記第一の送電手段と前記第二の送電手段を同時に用いて、それぞれ前記第一の受電装置と前記第二の受電装置へ送電した場合の、前記第一の送電手段と前記第二の送電手段の送電電力と、前記第一の受電装置と前記第二の受電装置の受電電力との間の関係を示す第三のデータを取得する第三の取得手段と、
前記第一のデータ、前記第二のデータ、および前記第三のデータを用いて、前記第一の受電装置と前記第二の受電装置とは異なる物体の検出を行う検出手段と、
を有することを特徴とする送電装置。
【請求項2】
前記第一の送電手段における前記物体を検出するために、当該物体を検出する際の前記第二の送電手段の送電電力と、前記第一のデータおよび前記第三のデータを用いて、前記物体を検出するための情報を作成する作成手段を更に有し、
前記検出手段は、前記情報を用いて前記物体の検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記作成手段は、前記第一のデータと前記第三のデータから、前記第二の送電手段の送電電力の値を用いて第四のデータを作成し、
前記検出手段は、前記第四のデータを用いて、前記物体の検出を行うことを特徴とする請求項2に記載の送電装置。
【請求項4】
前記第二の送電手段における前記物体を検出するために、当該物体を検出する際の前記第一の送電手段の送電電力と、前記第二のデータおよび前記第三のデータを用いて、前記物体を検出するための情報を作成する作成手段を更に有し、
前記検出手段は、前記情報を用いて前記物体の検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の送電装置。
【請求項5】
前記作成手段は、前記第二のデータと前記第三のデータから、前記第一の送電手段の送電電力の値を用いて第四のデータを作成し、
前記検出手段は、前記第四のデータを用いて前記物体の検出を行うことを特徴とする請求項4に記載の送電装置。
【請求項6】
複数の送電手段を有し、前記複数の送電手段を用いて複数の受電装置へ無線で送電することが可能な送電装置であって、
前記複数の送電手段のそれぞれを用いて、前記複数の送電手段のそれぞれの送電対象である前記複数の受電装置のいずれかへ送電した場合の、前記複数の送電手段のそれぞれの送電電力と前記送電対象の受電装置の受電電力との間の関係を示す第一のデータを取得する第一の取得手段と、
前記複数の送電手段を同時に用いて、前記複数の受電装置へ送電した場合の、前記複数の送電手段のそれぞれの送電電力と、前記複数の受電装置のそれぞれとの間の関係を示す第二のデータを取得する第二の取得手段と、
前記第一のデータおよび前記第二のデータを用いて、前記複数の受電装置のいずれとも異なる物体の検出を行う検出手段と、
を有することを特徴とする送電装置。
【請求項7】
前記検出手段は、WPC(Wireless Power Consortium)規格で規定されているパワーロス手法に基づいた物体の検出を行うことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項8】
送電装置であって、
BLE(Bluetooth Low Energy)に対応した通信を行う通信手段と、
受電装置へ無線で送電を行う送電手段と、
前記通信手段により受信された、第一の受電装置により生成された前記第一の受電装置のBLEに対する識別情報である第一の識別情報と、当該第一の識別情報の受信の後に受信された、第二の受電装置により生成された前記第二の受電装置のBLEに対する識別情報である第二の識別情報が同じか否かを判定する判定手段と、を有し、
前記通信手段は、前記第一の識別情報と前記第二の識別情報が同じである場合に、前記第二の受電装置に対して前記識別情報が同じであることを示す信号、または前記第二の識別情報を再生成することを要求することを示す信号、または再生成した前記第二の識別情報を前記送電装置へ通知するための要求を示す信号を送信し、
前記送電手段を介して前記第一の識別情報と前記第二の識別情報が異なる場合に、前記送電手段は、前記第一の受電装置と前記第二の受電装置へ無線で送電を行うことを特徴とする送電装置。
【請求項9】
送電装置であって、
BLE(Bluetooth Low Energy)に対応した通信を行う通信手段と、
受電装置へ無線で送電を行う送電手段と、を有し、
前記通信手段は、前記送電手段による送電対象である第一の受電装置により生成された前記第一の受電装置のBLEに対する識別情報である第一の識別情報を受信し、
前記通信手段は、前記第一の識別情報の受信の後に、BLEによる通信接続を確立した第二の受電装置から、クロスコネクション通知を受信した場合に、前記第一の受電装置に対して、前記第一の識別情報を再生成するための要求を示す信号、または前記再生成した第一の識別情報を送電装置に通知するための要求を示す信号を送信することを特徴とする送電装置。
【請求項10】
第一の送電手段と第二の送電手段を有し、前記第一の送電手段と前記第二の送電手段を用いて第一の受電装置と第二の受電装置へ送電することが可能な送電装置の制御方法であって、
前記第一の送電手段を用いて前記第一の受電装置へ送電した場合の、前記第一の送電手段の送電電力と前記第一の受電装置の受電電力との間の関係を示す第一のデータを取得する第一の取得工程と、
前記第二の送電手段を用いて前記第二の受電装置へ送電した場合の、前記第二の送電手段の送電電力と前記第二の受電装置の受電電力との間の関係を示す第二のデータを取得する第二の取得工程と、
前記第一の送電手段と前記第二の送電手段を同時に用いて、それぞれ前記第一の受電装置と前記第二の受電装置へ送電した場合の、前記第一の送電手段と前記第二の送電手段の送電電力と、前記第一の受電装置と前記第二の受電装置の受電電力との間の関係を示す第三のデータを取得する第三の取得工程と、
前記第一のデータ、前記第二のデータ、および前記第三のデータを用いて、前記第一の受電装置と前記第二の受電装置とは異なる物体の検出を行う検出工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
複数の送電手段を有し、前記複数の送電手段を用いて複数の受電装置へ送電することが可能な送電装置の制御方法であって、
前記複数の送電手段のそれぞれを用いて、前記複数の送電手段のそれぞれの送電対象である前記複数の受電装置のいずれかへ送電した場合の、前記複数の送電手段のそれぞれの送電電力と前記送電対象の受電装置の受電電力との間の関係を示す第一のデータを取得する第一の取得工程と、
前記複数の送電手段を同時に用いて、前記複数の受電装置へ送電した場合の、前記複数の送電手段のそれぞれの送電電力と、前記複数の受電装置のそれぞれとの間の関係を示す第二のデータを取得する第二の取得工程と、
前記第一のデータおよび前記第二のデータを用いて、前記複数の受電装置のいずれとも異なる物体の検出を行う検出工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
BLE(Bluetooth Low Energy)に対応した通信を行う通信手段と、受電装置へ送電を行う送電手段とを有する送電装置の制御方法であって、
前記通信手段により受信された、第一の受電装置により生成された前記第一の受電装置のBLEに対する識別情報である第一の識別情報と、当該第一の識別情報の受信の後に受信された、第二の受電装置により生成された前記第二の受電装置のBLEに対する識別情報である第二の識別情報が同じか否かを判定する判定工程と、
前記第一の識別情報と前記第二の識別情報が同じである場合に、前記通信手段によって、前記第二の受電装置に対して前記識別情報が同じであることを示す信号、または前記第二の識別情報を再生成することを要求することを示す信号、または再生成した前記第二の識別情報を前記送電装置へ通知するための要求を示す信号を送信する通信工程と、
前記第一の識別情報と前記第二の識別情報が異なる場合に、前記送電手段によって、前記第一の受電装置と前記第二の受電装置へ送電を行う送電制御工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項13】
BLE(Bluetooth Low Energy)に対応した通信を行う通信手段と、受電装置へ送電を行う送電手段とを有する送電装置の制御方法であって、
前記通信手段によって、前記送電手段による送電対象である第一の受電装置により生成された前記第一の受電装置のBLEに対する識別情報である第一の識別情報を受信する第一の通信工程と、
前記第一の識別情報の受信の後に、BLEによる通信接続を確立した第二の受電装置から、クロスコネクション通知を受信した場合に、前記通信手段によって、前記第一の受電装置に対して前記第一の識別情報を再生成するための要求を示す信号、または前記再生成した第一の識別情報を前記送電装置に通知するための要求を示す信号を送信する第二の通信工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
コンピュータを、請求項1から9のいずれか1項に記載の送電装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送システムの技術開発が広く行われている。特許文献1には、無線充電規格の標準化団体Wireless Power Consortium(WPC)が策定する規格(WPC規格)に準拠した送電装置および受電装置が開示されている。また、特許文献2には、Qi規格における、異物検出(Foreign Object Detection)の方法が開示されている。ここで異物とは、金属片などの導電性の物体である。WPC規格ではまず、送電装置における送電電力と受電装置における受電電力との差分から、送電装置-受電装置間の異物がない状態の電力損失量を事前に算出し、当該算出値を送電処理中の通常状態(異物がない状態)における電力損失量であるとする。そのうえで、その後の送電中に算出した送電装置-受電装置間の電力損失量が、基準となる前記通常状態の電力損失量から閾値以上離れた場合に“異物あり”と判定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-56959号公報
【文献】特開2017―70074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の受電装置に同時に充電が可能な送電装置において、送電装置上に第一の受電装置と第二の受電装置が載置された場合、送電装置と第一の受電装置間の電力損失量は、第二の受電装置の影響を受ける可能性がある。また同様に、送電装置と第二の受電装置間の電力損失量は、第一の受電装置の影響を受ける可能性がある。よって、送電装置上に載置される受電装置の状態(受電装置の台数等)に変化があった場合、事前に算出した通常状態の送電-受電装置間の電力損失量にも変化が生じ、異物検出精度が低下するという課題があった。
また、送電装置と複数の受電装置がBluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)による通信機能を有する場合、送電装置及び受電装置が送受電対象でない機器と接続を確立する、いわゆるクロスコネクションの問題が発生しうる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、送電装置から複数の受電装置へ適切に送電することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための一手段として本発明の送電装置は以下の構成を有する。すなわち、
第一の受電装置へ無線で送電を行う第一の送電手段と、
第二の受電装置へ無線で送電を行う第二の送電手段と、
前記第一の送電手段を用いて前記第一の受電装置へ送電した場合の、前記第一の送電手段の送電電力と前記第一の受電装置の受電電力との間の関係を示す第一のデータを取得する第一の取得手段と、
前記第二の送電手段を用いて前記第二の受電装置へ送電した場合の、前記第二の送電手段の送電電力と前記第二の受電装置の受電電力との間の関係を示す第二のデータを取得する第二の取得手段と、
前記第一の送電手段と前記第二の送電手段を同時に用いて、それぞれ前記第一の受電装置と前記第二の受電装置へ送電した場合の、前記第一の送電手段と前記第二の送電手段の送電電力と、前記第一の受電装置と前記第二の受電装置の受電電力との間の関係を示す第三のデータを取得する第三の取得手段と、
前記第一のデータ、前記第二のデータ、および前記第三のデータを用いて、前記第一の受電装置と前記第二の受電装置とは異なる物体の検出を行う検出手段と、
を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、送電装置から複数の受電装置へ適切に送電することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1による送電装置の構成例を示すブロック図である。
図2】実施形態1による無線電力伝送システムの構成例を示す。
図3】異物検出方法を説明する図である。
図4】Calibrationデータ取得のための条件の概念図を示す。
図5】実施形態1による送電装置の処理フローである。
図6】パワーロス手法に基づく異物検出方法を説明する図である。
図7】実施形態2による送電装置の構成例を示すブロック図である。
図8】実施形態2による受電装置の構成例を示すブロック図である。
図9】実施形態2による無線電力伝送システムの構成例を示す。
図10A】実施形態2における無線電力伝送システムの動作シーケンス図である。
図10B】実施形態2における無線電力伝送システムの動作シーケンス図である。
図10C】実施形態2における無線電力伝送システムの動作シーケンス図である。
図10D】実施形態2における無線電力伝送システムの動作シーケンス図である。
図11】実施形態2による送電装置の処理フローである。
図12】実施形態2による受電装置の処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
[パワーロス手法に基づく異物検出方法]
はじめに、WPC規格で規定されているパワーロス手法に基づく異物検出方法について、図6を用いて説明する。図6は、パワーロス手法に基づく異物検出方法を説明する図である。図6において、横軸は送電装置の送電電力、縦軸は受電装置の受電電力を示す。異物とは、金属片などの導電性の物体であり、受電装置とは異なる物体である。
【0011】
まず、送電装置が受電装置に対して送電を行い、送電装置は、受電装置が受電した受電電力値Pr1(Light Loadという)を、受電装置から受信する。このとき、受電装置は、受電した電力を負荷(充電回路とバッテリなど)に供給しない。そして送電装置はその時の送電電力値Pt1を記憶する(点600)。この時送電装置は、送電電力としてPt1を送電したときの、送電装置と受電装置間の電力損失量はPt1-Pr1(Ploss1)である、として認識することができる。次に、送電装置は、受電装置が受電した受電電力値Pr2(Connected Loadという)の値を受電装置から受信する。このとき、受電装置は、受電した電力を負荷に供給する。そして送電装置はその時の送電電力値Pt2を記憶する(点601)。この時送電装置は、送電電力としてPt2を送電したときの、送電装置と受電装置間の電力損失量はPt2-Pr2(Ploss2)である、として認識することができる。そして送電装置は、点600と点601を直線補間し直線602を作成する。直線602は送電装置と受電装置の周辺に異物が存在しない状態における送電電力と受電電力の関係を示している。よって、送電装置は送電電力値と直線602から異物がない状態における受電電力を予想することができる。例えば、送電電力値がPt3の場合は、送電電力値がPt3を示す直線602上の点603から、受電電力値はPr3であると予想することができる。
【0012】
ここで、送電装置がPt3の送電電力で受電装置に対して送電した場合に、送電装置が受電装置から受電電力値Pr3’という値を受信したとする。送電装置は当該異物が存在しない状態における受電電力値Pr3から実際に受電装置から受電した受電電力値Pr3’を引いた値Pr3-Pr3’(=Ploss_FO)を算出する。このPloss_FOは、送電装置と受電装置間に異物が存在する場合に、その異物で消費される電力損失と考えることができる。よって、異物で消費されたであろう電力Ploss_FOがあらかじめ決められた閾値を超えた場合に、異物が存在すると判断する。
【0013】
あるいは送電装置は、事前に、当該異物が存在しない状態における受電電力値Pr3から、送電装置と受電装置間の電力損失量Pt3-Pr3(Ploss3)を求めておく。そして次に、異物が存在する状態において受電装置から受電した受電電力値Pr3’から、異物が存在する状態での送電装置と受電装置間の電力損失量Pt3-Pr3’(Ploss3‘)を求める。そして、Ploss3’-Ploss3 (=Ploss_FO)で、異物で消費されたであろう電力Ploss_FOを求めてもよい。
【0014】
以上述べたように、異物で消費されたであろう電力Ploss_FOの求め方としては、Pr3-Pr3’(=Ploss_FO)として求めてもよいし、Ploss3’-Ploss3 (=Ploss_FO)として求めてもよい。以下の本明細書中においては、基本的にPloss3’-Ploss3 (=Ploss_FO)として求める方法について述べるが、Pr3-Pr3’(=Ploss_FO)として求める方法においても適用可能である。以上がパワーロス手法に基づく異物検出の説明である。
【0015】
≪実施形態1≫
上記の異物検出方法(特許文献1)は、送電装置および受電装置が1対1の場合における異物検出方法である。以下、実施形態1として、1台の送電装置が複数の受電装置を同時に充電する際のパワーロスに基づく異物検出方法について説明する。
【0016】
[システムの構成]
図2に、本実施形態に係る非接触充電システム(無線電力伝送システム)の構成例を示す。送電装置200は、送電アンテナ201(後述する第一送電アンテナ105に対応)、202(後述する第二送電アンテナ108に対応)、および受電装置が有する受電アンテナ(不図示)を介して、送電装置200が有する送電アンテナ201、202上に載置された受電装置204、205に対して送電を行う。
【0017】
以下では、送電装置をTXと呼び、受電装置をRXと呼ぶ場合がある。TX200とRX204、205は、WPC規格に準拠している。RX204、205は、TX200より電力を受電し、バッテリへの充電を可能とする。TX200は、TX200上(TX200の充電台上)に載置されたRX204、205に対して無線で送電する電子機器である。以下では、RX204、205が送電装置上に載置された場合を例にして説明を行う。ただし、TX200がRX204、205に送電するうえで、RX204、205はTX200の送電可能範囲の中に存在していれば、TX200上(TX200の充電台上)に載置されなくてもよい。
【0018】
また、RX204、205とTX200は、非接触充電以外のアプリケーションを実行する機能を有しうる。RX204、205の一例はスマートフォンであり、TX200の一例はそのスマートフォンを充電するためのアクセサリ機器である。RX204、205及びTX200は、タブレットや、ハードディスク装置やメモリ装置などの記憶装置であってもよいし、パーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置であってもよい。また、RX204、205及びTX200は、例えば、撮像装置(カメラやビデオカメラ等)やスキャナ等の画像入力装置であってもよいし、プリンタやコピー機、プロジェクタ等の画像出力装置であってもよい。また、TX200がスマートフォンであってもよい。この場合、RX204、205は、別のスマートフォンでもよいし、無線イヤホンであってもよい。また、TX200は、自動車内のコンソール等に設置される充電器であってもよい。
【0019】
本システムは、WPC規格に基づいて、非接触充電のための電磁誘導方式を用いた無線電力伝送を行う。すなわち、RX204、205とTX200は、RX204、205の受電アンテナとTX200の送電アンテナとの間で、WPC規格に基づく非接触充電のための無線電力伝送を行う。なお、本システムに適用される無線電力伝送方式(非接触電力伝送方式)は、WPC規格で規定された方式に限られず、他の電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界共鳴方式、マイクロ波方式、レーザー等を利用した方式であってもよい。また、本実施形態では、無線電力伝送が非接触充電に用いられるものとするが、非接触充電以外の用途で無線電力伝送が行われてもよい。
【0020】
WPC規格では、RX204、205がTX200から受電する際に保証される電力の大きさが、Guaranteed Power(以下、「GP」と呼ぶ)と呼ばれる値によって規定される。GPは、例えばRX204、205とTX200の位置関係が変動して受電アンテナと送電アンテナとの間の送電効率が低下したとしても、RX204、205の負荷(例えば、充電用の回路、バッテリー等)への出力が保証される電力値を示す。例えばGPが5ワットの場合、受電アンテナと送電アンテナの位置関係が変動して送電効率が低下したとしても、TX200は、RX204、205内の負荷へ5ワットを出力することができるように制御して送電を行う。
【0021】
またWPC規格では、TX200が、TX200の周囲に(受電アンテナ近傍に)受電装置ではない物体(異物)が存在することを検出する手法が規定されている。より詳細には、TX200における送電電力とRX204、205における受電電力の差分により異物を検出するパワーロス手法と、TX200における送電アンテナ(送電コイル)の品質係数(Q値)の変化により異物を検出するQ値計測手法が規定されている。パワーロス手法による異物検出は、電力伝送(送電)中(後述のPower Transferフェーズ)に実施される。また、Q値計測手法による異物検出は、電力伝送前(後述のNegotiationフェーズまたはRenegotiationフェーズ)に実施される。
【0022】
本実施形態によるRX204、205とTX200は、WPC規格に基づく送受電制御のための通信を行う。WPC規格では、電力伝送が実行されるPower Transferフェーズと実際の電力伝送が行われる前の1以上のフェーズとを含んだ、複数のフェーズが規定され、各フェーズにおいて必要な送受電制御のための通信が行われる。電力伝送前のフェーズは、Selectionフェーズ、Pingフェーズ、Identification and Configurationフェーズ、Negotiationフェーズ、Calibrationフェーズを含みうる。なお、以下では、Identification and ConfigurationフェーズをI&Cフェーズと呼ぶ。
【0023】
Selectionフェーズでは、TX200が、Analog Pingを間欠的に送信し、物体がTX200に載置されたこと(例えばTX200の充電台にRX204、205や導体片等が載置されたこと)を検出する。TX200は、Analog Pingを送信した時の送電アンテナの電圧値と電流値の少なくともいずれか一方を検出し、電圧値がある閾値を下回る場合又は電流値がある閾値を超える場合に物体が存在すると判断し、Pingフェーズに遷移する。
【0024】
Pingフェーズでは、TX200が、Analog Pingより大きい電力が大きいDigital Pingを送信する。Digital Pingの大きさは、TX200の上に載置されたRX204、205の制御部が起動するのに十分な電力である。RX204、205は、受電電圧の大きさをTX200へ通知する。このように、TX200は、そのDigital Pingを受信したRX204、205からの応答を受信することにより、Selectionフェーズにおいて検出された物体がRX204、205であることを認識する。TX200は、受電電圧値の通知を受けると、I&Cフェーズに遷移する。
【0025】
I&Cフェーズでは、TX200は、RX204、205を識別し、RX204、205から機器構成情報(能力情報)を取得する。そのため、RX204、205は、ID Packet及びConfiguration PacketをTX200に送信する。ID PacketにはRX204、205の識別子情報が含まれ、Configuration Packetには、RX204、205の機器構成情報(能力情報)が含まれる。ID Packet及びConfiguration Packetを受信したTX200は、アクノリッジ(ACK、肯定応答)で応答する。そして、I&Cフェーズが終了する。
【0026】
Negotiationフェーズでは、RX204、205が要求するGPの値やTX200の送電能力等に基づいてGPの値が決定される。またTX200は、RX204、205からの要求に従って、Q値計測手法を用いた異物検出処理を実行する。また、WPC規格では、一旦Power Transferフェーズに移行した後、RX204、205の要求によって再度Negotiationフェーズと同様の処理を行う方法が規定されている。Power Transferフェーズから移行してこれらの処理を行うフェーズのことをRenegotiationフェーズと呼ぶ。
【0027】
Calibrationフェーズでは、WPC規格に基づいて、RX204、205が所定の受電電力値(軽負荷状態における受信電力値/最大負荷状態における受信電力値)をTX200へ通知し、TX200が、効率よく送電するための調整を行う。TX200へ通知された受信電力値は、パワーロス手法による異物検出処理のために使用されうる。
【0028】
Power Transferフェーズでは、送電の開始、継続、及びエラーや満充電による送電停止等のための制御が行われる。TX200とRX204、205は、これらの送受電制御のために、WPC規格に基づいて無線電力伝送を行う際に使用するものと同じ送電アンテナ(送電コイル)、受電アンテナ(受電コイル)を用いて、送電アンテナあるいは受電アンテナから送信される電磁波に信号を重畳する通信を行う。なお、TX200とRX204、205との間で、WPC規格に基づく通信が可能な範囲は、TX200の送電可能範囲とほぼ同様である。
【0029】
[送電装置の構成]
続いて、本実施形態による送電装置の構成について図1を用いて説明する。図1は、本実施形態によるTX(送電装置)100の構成例を示すブロック図である。なお、以下で説明する構成は一例に過ぎず、説明される構成の一部(場合によっては全部が)他の同様の機能を果たす他の構成と置き換えられ又は省略されてもよく、さらなる構成が説明される構成に追加されてもよい。さらに、以下の説明で示される1つのブロックが複数のブロックに分割されてもよいし、複数のブロックが1つのブロックに統合されてもよい。また、以下に示す各機能ブロックは、ソフトウェアプログラムとして機能が実施されるものとするが、本機能ブロックに含まれる一部または全部がハードウェア化されていてもよい。
【0030】
制御部101は、例えばメモリ106に記憶されている制御プログラムを実行することにより、TX100全体を制御する。また、制御部101は、TX100における機器認証のための通信を含む送電制御に関する制御を行う。さらに、制御部101は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はMPU(MicroProcessor Unit)等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部101は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理に専用のハードウェアで構成されてもよい。また、制御部101は、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA(Field Programmable Gate Array)等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部101は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ106に記憶させる。また、制御部101は、タイマ(不図示)を用いて時間を計測しうる。
【0031】
電源部102は、各機能ブロックに電源を供給する。電源部102は、例えば、商用電源又はバッテリである。バッテリには、商用電源から供給される電力が蓄電される。
【0032】
第一送電部103および第二送電部104は、電源部102から入力される直流又は交流電力を、無線電力伝送に用いる周波数帯の交流周波数電力に変換し、その交流周波数電力をそれぞれ第一送電アンテナ105および第二送電アンテナ108へ入力することによって、RXに受電させるための電磁波を発生させる。例えば、第一送電部103および第二送電部104は、電源部102が供給する直流電圧を、FET(Field Effect Transister)を使用したハーフブリッジ又はフルブリッジ構成のスイッチング回路で交流電圧に変換する。この場合、第一送電部103および第二送電部104、FETのON/OFFを制御するゲ-トドライバを含む。
【0033】
第一送電部103および第二送電部104は、第一送電アンテナ105および第二送電アンテナ108に入力する電圧(送電電圧)又は電流(送電電流)、又はその両方または周波数を調節することにより、出力させる電磁波の強度を制御する。送電電圧又は送電電流を大きくすると電磁波の強度が強くなり、送電電圧又は送電電流を小さくすると電磁波の強度が弱くなる。また、第一送電部103および第二送電部104は、制御部101の指示に基づいて、第一送電アンテナ105および第二送電アンテナ108からの送電が開始又は停止されるように、交流周波数電力の出力制御を行う。また、第一送電部103および第二送電部104は、WPC規格に対応したRXの充電部にそれぞれ15ワット(W)の電力を出力するだけの電力を供給する能力があるものとする。
【0034】
第一送電部103および第二送電部104はそれぞれ、図示しない通信部を持つ。第一送電部103および第二送電部104は当該通信部を介して、RXとの間で、上述のようなWPC規格に基づく送電制御のための通信を行う。通信部は、第一送電アンテナ105および第二送電アンテナ108から出力される電磁波を変調し、RXへ情報を伝送して、通信を行う。また、通信部は、第一送電アンテナ105および第二送電アンテナ108から出力されてRXにおいて変調された電磁波を復調してRXが送信した情報を取得する。すなわち、通信部で行う通信は、第一送電部103および第二送電部104から送信される電磁波に信号が重畳されて行われる。また、通信部は、第一送電アンテナ105および第二送電アンテナ108とは異なるアンテナを用いたWPC規格とは異なる規格による通信でRXと通信を行ってもよいし、複数の通信を選択的に用いてRXと通信を行ってもよい。
【0035】
メモリ106は、制御プログラムを記憶するほかに、TX100及びRX(RX204、205)の状態(受信電力値等)なども記憶しうる。例えば、TX100の状態は制御部101により取得され、RXの状態はRXの制御部により取得され、通信部を介して受信されうる。
【0036】
第一送電アンテナ105および第二送電アンテナ108は、それぞれ複数のアンテナ(コイル)を有していてもよい。選択部107は、第一送電部103および第二送電部104を排他的に選択できる、もしくは両方を選択することも可能である。選択された送電部は電源部102から電源供給を受け、送電アンテナを介して電力を送電できるものとする。一方で、選択されなかった送電部は、電源部102から電源供給を受けず、送電アンテナを介して電力を送電できないものとする。なお、図1には2つの送電部と2つの送電アンテナを示しているが、これら構成要素の数は2に限定されない。
【0037】
[複数の受電装置に同時に送電を行う場合のCalibrationの手順]
以降では、1つの送電装置が複数の送電部および送電アンテナを介して複数の受電装置に同時に送電を行う場合のCalibrationの手順について、図3図5を用いて説明する。図3は、本実施形態による異物検出方法を説明する図であり、図4は、Calibrationデータ取得のための条件の概念図であり、図5は、本実施形態による送電装置(TX100)の処理フローである。以下の説明において、図2に示した無線電力伝送システムの構成を想定する。
【0038】
<S500:複数の送電部から1つの送電部を排他的に選択し、対応するRXのCalibrationデータを取得する>
図3(a)に、第一送電部103がRX204に送電する際のCalibrationデータを示す。横軸は第一送電部103の送電電力である。縦軸はRX204の受電電力である。図3(b)に、第二送電部104がRX205に送電する際のCalibrationデータを示す。横軸は第二送電部の送電電力である。縦軸はRX205の受電電力である。本実施形態では、パワーロス手法に基づく異物検出手法で使用する直線(例えば、図6における直線602)をCalibrationデータという。また、本実施形態では、RX204のLight Load時の電力は1ワット、Connected Load時の電力は5ワットとする。また、RX205のLight Load時の電力は1ワット、Connected Load時の電力は10ワットとする。
【0039】
まず、選択部107は、第一送電部103のみを選択する。選択された第一送電部103はDigital Pingを送電し、RX204を起動させる。ここで、第二送電部104は選択されないので、RX205は起動しない。そして制御部101は、RX204がLight Load時の送電電力値を取得してメモリ106に記憶する(点300)。続いて制御部101は、RX204がConnected Load時の送電電力値を取得してメモリ106に記憶する(点301)。これにより、TX100は、複数の送電部から第一送電部103を排他的に選択し、対応するRX204に対するCalibrationデータ(点300と点301を結ぶ直線)を取得する。
【0040】
続いて、選択部107は、第二送電部104のみを選択する。選択された第二送電部はDigital Pingを送電し、RX205を起動させる。ここで、第一送電部103は選択されないので、RX204は起動しない。そして制御部101は、RX205がLight Load時の送電電力値を取得してメモリ106に記憶する(点306)。続いて制御部101は、RX205がConnected Load時の送電電力値を取得してメモリ106に記憶する(点307)。これにより、TX100は、複数の送電部から第二送電部104を排他的に選択し、対応するRX205に対するCalibrationデータ(点306と点307を結ぶ直線)を取得する。
【0041】
<S501:複数の送電部を選択し、対応するRXのCalibrationデータを取得する>
複数の送電部から1つの送電部を排他的に選択した場合のCalibrationデータの取得が終了すると、制御部101は複数の送電部を選択し、対応するそれぞれのRXのCalibrationデータを取得する。
【0042】
ここで、第一送電部103が送電する電力は大部分がRX204で受電されるが、多少はRX205が受電する。よって、複数の送電部(第一送電部103と第二送電部104)が同時に送電を行う場合は、制御部101はS500で取得したCalibrationデータ(点300と点301を結ぶ直線)を補正する必要がある。同様に、第二送電部104が送電する電力は大部分がRX205で受電されるが、多少はRX204が受電する。よって、複数の送電部が同時に送電を行う場合は、制御部101はS500で取得したCalibrationデータ(点306と点307を結ぶ直線)を補正する必要がある。
【0043】
当該補正を行うために必要なCalibrationデータ取得の条件の概念図を図4に示す。図4は、すべてのRXに対するLight LoadおよびConnected Loadの組み合わせを示す。具体的には、RXはRX204とRX205の2個なので、4通りの組み合わせがある。
【0044】
まず選択部107は、受電装置(つまりRX204およびRX205)に送電を行うすべての送電部(この場合、第一送電部103および第二送電部104)を選択する。そして、制御部101は、RX204の受電電力が1ワット(Light Load)で、RX205の受電電力が10ワット(Connected Load)時(条件1)の第一送電部103の送電電力値を取得してメモリ106に記憶する(点305)。ここで、点300と点305を比較すると、両点はともにRX204の受電電力は1ワットであるが、第一送電部103の送電電力値に差があることがわかる。これは、RX204が1ワットを受電した際に、第一送電部103と隣接する第二送電部104からも幾分か受電しているためである。すなわち、RX204が第二送電部104から受電している分だけ、点300を取得したときに比べて点305を取得したときの第一送電部103の送電電力は小さい。
【0045】
続いて、制御部101は、RX204の受電電力が1ワット(Light Load)で、RX205の受電電力が10ワット(Connected Load)時(条件1)の第二送電部104の送電電力値を取得してメモリ106に記憶する(点308)。RX205が10ワットを受電する際に、第二送電部104と隣接する第一送電部103からも幾分か受電しているため、点307を取得したときに比べて点308を取得したときの第二送電部104の送電電力は小さい。
【0046】
次に、制御部101は、RX204の受電電力が5ワット(Connected Load)で、RX205の受電電力が1ワット(Light Load)時(条件3)の第一送電部103の送電電力値を取得してメモリ106に記憶する(点302)。続いて、制御部101は、RX204の受電電力5ワット(Connected Load)で、RX205の受電電力が1ワット(Light Load)時(条件3)の第二送電部104の送電電力値を取得してメモリ106に記憶する(点311)。
【0047】
次に、制御部101は、RX204の受電電力が1ワット(Light Load)で、RX205の受電電力が1ワット(Light Load)時(条件4)の第一送電部103の送電電力値を取得してメモリ106に記憶する(点304)。続いて、制御部101は、RX204の受電電力が1ワット(Light Load)で、RX205の受電電力が1ワット(Light Load)時(条件4)の第二送電部104の送電電力値を取得してメモリ106に記憶する(点310)。
【0048】
最後に、制御部101は、RX204の受電電力が5ワット(Connected Load)で、RX205の受電電力が10ワット(Connected Load)時(条件2)の第一送電部103の送電電力値を取得してメモリ106に記憶する(点303)。続いて、制御部101は、RX204の受電電力が5ワット(Connected Load)で、RX205の受電電力が10ワット(Connected Load)時(条件2)の第二送電部104の送電電力値を取得してメモリ106に記憶する(点309)。
【0049】
以上で、S500で取得したCalibrationデータを補正するために必要なCalibrationデータの取得は終了する。具体的には、図3(a)において点305と点303を結んだ直線は、第二送電部104の送電電力が10ワットの時の第一送電部103のCalibrationデータに相当し、点304と点302を結んだ直線は、第二送電部104の送電電力が1ワットの時の第一送電部103のCalibrationデータに相当する。同様に、図3(b)において点311と点309を結んだ直線は、第一送電部103の送電電力が5ワットの時の第二送電部104のCalibrationデータに相当し、点310と点308を結んだ直線は、第一送電部103の送電電力が1ワットの時の第二送電部104のCalibrationデータに相当する。
【0050】
<S502:隣接する送電部の送電電力に基づいて異物検出を実施する>
S501において、補正を行うために必要なCalibrationデータ取得が終了したので、制御部101は、取得したCalibrationデータに基づいて異物検出を行う。
【0051】
(第一送電部における異物検出)
第一送電部103における(第一送電部103に対する)異物検出について、図3(c)に基づいて説明する。第一送電部103における異物検出を行う際に、まず制御部101は、その時点の第二送電部104の送電電力値を取得する。なお、この時の第二送電部の送電電力を6ワットとする。次に、制御部101は、第二送電部104の送電電力が6ワットの時のCalibrationデータを取得する。具体的には、第一送電部103の送電電力が1ワット(Light Load)の時に、第二送電部104の送電電力が10ワット(点305)、1ワット(点304)、0ワット(点300)であった場合のデータを補間する。ここで、制御部101は、点304(第二送電部104の送電電力が1ワット)と点305(同10ワット)の2点を線形補間し、第二送電部104の送電電力が6ワットの時の第一送電部103の送電電力値として点400を取得する。同様に、制御部101は、第一送電部103の送電電力が5ワット(Connected Load)の時の、点302(第二送電部104の送電電力が1ワット)と点303(同10ワット)の2点を線形補間し、第二送電部104の送電電力が6ワットの時の第一送電部103の送電電力値として点401を取得する。点400と点401を結んだ直線が、第二送電部104の送電電力が6ワットの時の、第一送電部103のCalibrationデータである。制御部101は、取得したCalibrationデータを用いて、前述したようなパワーロス手法に基づく異物検出を実施する。
【0052】
(第二送電部における異物検出)
第二送電部104における(第二送電部104に対する)異物検出について、図3(d)に基づいて説明する。第一送電部103における異物検出と同様に、制御部101は、第一送電部103の送電電力に基づいて第二送電部104のCalibrationデータを取得する。なお、第一送電部103の送電電力が4ワットとする。制御部は点310(第一送電部103の送電電力が1ワット)と点311(同5ワット)の2点を線形補間し、第一送電部103の送電電力が4ワットの時の第二送電部104の送電電力値として点402を取得する。同様に、制御部101は、第二送電部104の送電電力が10ワット(Connected Load)の時の、点308(第一送電部103の送電電力が1ワット)と点309(同5ワット)の2点を線形補間し、第一送電部103の送電電力が6ワットの時の第二送電部104の送電電力値として点403を取得する。点402と点403を結んだ直線が、第一送電部103の送電電力が4ワットの時の、第二送電部104のCalibrationデータである。制御部101は、取得したCalibrationデータを用いて、前述したようなパワーロス手法に基づく異物検出を実施する。
【0053】
以上のように、本実施形態に示す送電装置は、複数の受電装置に同時に送電する場合においても、異物検出精度を高めることが可能となる。
【0054】
なお、図5のフローチャ-トで示される処理の少なくとも一部は、ハードウェアにより実現されてもよい。ハードウェアにより実現する場合、例えば、所定のコンパイラを用いることで、各ステップを実現するためのプログラムからFPGA上に自動的に専用回路を生成すればよい。FPGAとは、Field Programmable Gate Arrayの略である。また、FPGAと同様にしてGate Array回路を形成し、ハードウェアとして実現するようにしてもよい。
【0055】
≪実施形態2≫
次に、実施形態2として、送電装置と受電装置がBluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)による通信機能を有する場合について説明する。
【0056】
[システムの構成]
図9に、本実施形態による無線電力伝送システムの構成例を示す。本無線電力伝送システムは、送電装置(第一送電装置900、第二送電装置903)及び受電装置(第一受電装置901及び第二受電装置902)を含んで構成される。なお、これらの送電装置及び受電装置は、それぞれBLEによる通信機能を有するものとする。以下では、BLEの通信部(アンテナや通信回路等によって構成されるユニット)を「BLE部」と呼ぶ場合がある。
【0057】
ここで、第一送電装置900と第二送電装置903は、BLEのCentralとして機能し、第一受電装置901と第二受電装置902は、BLEのPeripheralとして機能する。「Central」は、BLEの制御局であることを示し、「Peripheral」は、BLEの端末局であることを示している。BLEのCentralは、BLEのPeripheralとの間で通信を行い、他のCentralとの通信を行わない。また、BLEのPeripheralは、BLEのCentralとの間では通信を行うが、他のPeripheralとの間では通信を行わない。すなわち、BLEでは、Central同士又はPeripheral同士の通信は行われない。また、Centralは複数のPeripheralと接続状態(BLEのCONNECT_State)となることができ、複数のPeripheralとの間でデータを送受信することができる。一方、Peripheralは、1台のCentralとしか接続状態になることができず、複数のCentralと並行して通信することはない。
【0058】
図9(a)の第一送電装置900は、送電回路を少なくとも2個備え、第一受電装置901と第二受電装置902を同時に充電できる。図9(b)は、第一送電装置900が第一受電装置901を充電し、第一送電装置900と同じ構成を持つ第二送電装置903が第二受電装置902を充電していることを示す。第一送電装置900と第二受電装置902は隣接しており、第一送電装置900は第一受電装置901および第二受電装置902とBLEによる通信を行うことができる。また、第二送電装置903は、第一受電装置901および第二受電装置902とBLEによる通信を行うことができる。
【0059】
第一受電装置901のBLE部(Peripheral)は、1つのCentralとのみ接続可能である。このため、第一送電装置900と第一受電装置901との間の電力伝送のための制御通信をBLEで行うためには、第一受電装置901のBLE部(Peripheral)が、第一送電装置900のBLE部(Central)とのみ接続状態である必要がある。第一受電装置901のBLE部(Peripheral)は、第二送電装置903などの他のCentralと接続状態となると、第一送電装置900のBLE部(Central)と制御通信を行うことができなくなるからである。同様に、第二送電装置903と第二受電装置902との間の電力伝送のための制御通信をBLEで行うためには、第二受電装置902のBLE部(Peripheral)は第二送電装置903のBLE部(Central)とのみ接続状態でなければならない。したがって、第二受電装置902のBLE部(Peripheral)は、第一送電装置900等の他のCentralと接続状態であるべきでない。
【0060】
このように、制御通信は送受電が実行される送電装置及び受電装置(例えば第一送電装置900と第一受電装置901)の間で行われるべきである。しかしながら、アウトバンド通信の通信範囲がインバンド通信の通信範囲より広い場合、送電装置及び受電装置は送受電対象でない機器とアウトバンド通信のための接続を確立してしまう場合がある。このような送受電対象でない機器とアウトバンド通信のための接続を確立することをクロスコネクションと呼ぶ。例えば、図9(b)において、第一受電装置901と第二送電装置903がBLE接続される状態がクロスコネクションである。
【0061】
図9(b)において、第一送電装置900は、制御通信としてBLE(アウトバンド通信)を使用する時は、送受電範囲内にある(すなわち、送電対象の)第一受電装置901とBLE接続がなされているという確証がなければ、第一受電装置901のバッテリを充電する電力の送電や電力に関する交渉等を行うべきでない。第一送電装置900は、第一受電装置901を送電対象としながら、第二受電装置902とのBLE接続を確立して制御通信を行うと、送電対象(第一受電装置901)と制御通信の相手装置(第二受電装置902)とが異なってしまいうるからである。この場合、第一送電装置900が、第一受電装置901に対する適切な制御通信を行うことができなくなる。同様に、第一受電装置901も、BLE(アウトバンド通信)による制御通信を用いる場合は、送受電範囲内にある第一送電装置900とBLE接続がなされているという確証がなければ、第一送電装置900からのバッテリを充電するための電力の受電や電力に関する交渉等を行うべきでない。第一受電装置901は、第一送電装置900を受電元としながら、第二送電装置903とのBLE接続を確立して制御通信を行うと、受電元(第一送電装置900)と制御通信の相手装置(第二送電装置903)とが異なってしまいうるからである。この場合、第一受電装置901は、第一送電装置900との間で適切な制御通信を行うことができなくなる。
【0062】
図9の無線電力伝送システムでは、送電装置及び受電装置の両方が、バッテリを充電する電力の送受電に先立って、送受電範囲内にある相手装置とBLEによる制御通信が可能であるという確証を得ることが重要となる。このため、本実施形態では、送電装置と受電装置が無線電力伝送の相手装置との間でBLEによる接続を確立することができるようにする。なお、BLEは一例であり、無線電力伝送におけるアウトバンド通信に利用可能な任意の無線通信方式が利用可能である。また、以下では、実行される無線電力伝送はWPC規格に準拠しているものとし、ここでのWPC規格は、バージョン1.2.2に規定された機能を含みうる。なお、本実施形態では送電装置と受電装置とがWPC規格に準拠しているものとして説明するが、これに限られず、他の無線電力伝送規格であってもよい。以下では、送電装置及び受電装置の構成例と、実行される処理の流れの例について説明する。
【0063】
[装置構成]
図7は、本実施形態による送電装置700(例えば第一送電装置900及び第二送電装置903)の構成例を示すブロック図である。送電装置700は、例えば、制御部701、電源部702、送電部703、第一通信部704、送電コイル705、第二通信部706、及びメモリ707を有する。
【0064】
制御部701は、送電装置700の全体を制御する。制御部701は、一例として、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部701は、後述の処理を実行するように構成された、特定用途向け集積回路(ASIC)やフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等を含んでもよい。
【0065】
電源部702は、少なくとも制御部701及び送電部703が動作する際の電力を供給する電源である。電源部702は、例えば、商用電源から電力の供給を受ける有線受電回路やバッテリ等でありうる。送電部703は、送電コイル705を介して受電装置へ電力を伝送するために、送電コイル705に交流電圧および交流電流を発生させる。送電部703は、例えば、電源部702が供給する直流電圧を、FETを使用したハーフブリッジ又はフルブリッジ構成のスイッチング回路を用いて交流電圧に変換する。この場合、送電部703は、FETのON/OFFを制御するゲ-トドライバを含む。
【0066】
第一通信部704は、受電装置の通信部(図8に示す第一通信部804)との間で、WPC規格に基づいた無線電力伝送の制御通信を行う。本実施形態では、第一通信部704が実行する通信は、送電部703が発生する交流電圧または電流を変調し、無線電力に通信対象データを重畳する、いわゆるインバンド通信である。
【0067】
第二通信部706は、受電装置の通信部(図8に示す第二通信部802)との間で、WPC規格に基づいた無線電力伝送の制御通信を行う。第二通信部706は、送電部703の周波数と異なる周波数を使用し、送電コイル705と異なる不図示のアンテナを使用して、いわゆるアウトバンド通信を行う。本実施形態では、第二通信部706がBLEに対応しているものとするが、これに代えて、NFCやWiFi等の他の無線通信方式に対応する通信部が用いられてもよい。メモリ707は、送電装置や無線電力伝送システムの各要素および全体の状態を記憶する。
【0068】
図7では、制御部701、電源部702、送電部703、第一通信部704、メモリ707、第二通信部706が、それぞれ別個のブロックとして記載されているが、これらのうちの2つ以上のブロックが1つのチップ等によってまとめられてもよい。また、1つのブロックが複数のブロックに分割されてもよい。
【0069】
図8は、本実施形態による受電装置800(例えば第一受電装置901及び第二受電装置902)の構成例を示すブロック図である。受電装置は、例えば、制御部801、受電部803、第一通信部804、第二通信部802、受電コイル805、充電部806、バッテリ807、及びメモリ808を有する。
【0070】
制御部801は、受電装置800の全体を制御する。制御部801は、一例として、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部701は、後述の処理を実行するように構成された、特定用途向け集積回路(ASIC)やフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等を含んでもよい。
【0071】
受電部803は、送電コイル705からの送電によって受電コイル805に生じた交流電圧および交流電流を取得して、受電した電力を制御部801及び充電部806等が動作するための直流電圧および直流電流に変換する。第一通信部804は、送電装置の第一通信部704との間で、WPC規格に基づいた無線電力伝送のための制御通信を行う。この制御通信は、受電コイル805で受電した電磁波を負荷変調するインバンド通信によって行われる。
【0072】
第二通信部802は、送電装置の第二通信部706との間で、WPC規格に基づいた無線電力伝送の制御通信を行う。第二通信部802は、受電部803が受電する電磁波の周波数と異なる周波数を使用し、受電コイル805とは異なる不図示のアンテナを使用してアウトバンド通信を行う。本実施形態では、第二通信部802がBLEに対応しているものとする。第二通信部802が送信するデータは、第二通信部802の識別子であるBluetooth Device Address(以下BD_ADDRと呼ぶ)とともに送信される。ここで、BD_ADDRには、通信部固有の識別子であるPublic Addressと乱数で構成されるRandom AddressがBLE規格で規定されている。本実施形態では、第二通信部802はRandom Addressを使用するものとして説明する。同様に送電装置の第二通信部706もRandom Addressを使用するものとする。
【0073】
また、第二通信部802はBLEに準拠したものとして説明するが、これに代えて、NFCやWiFi等の他の無線通信方式に対応する通信部が用いられてもよい。また、第二通信部802は、バッテリ807から電力供給を受けてもよいし、受電部803から直接電力供給を受けてもよい。
【0074】
充電部806は、受電部803から供給される直流電圧と直流電流を利用して、バッテリ807を充電する。メモリ808は、受電装置および無線電力伝送システムの各要素および全体の状態を記憶する。
【0075】
図8では制御部801、受電部803、第一通信部804、第二通信部802、充電部806、及びメモリ808が、それぞれ別個のブロックとして記載されているが、これらのうちの2つ以上のブロックが1つのチップ等によってまとめられてもよい。また、1つのブロックが複数のブロックに分割されてもよい。
【0076】
[処理の流れ]
続いて、本実施形態におけるシステム全体の基本的な処理の流れの例について説明し、次に各装置において実行される処理の流れの例について説明する。その後、本実施形態に特徴的なシステム全体の処理の流れの例について説明する。
【0077】
(システム全体の基本的な処理の流れ)
図10Aは、本実施形態における無線電力伝送システムの動作シーケンスとして、システム全体の基本的な処理の流れの例を示す。ここでは、第一送電装置900と第一受電装置901を例に説明する。図10Aにおいて、第一送電装置900は、まず、上述したSelectionフェーズ及びPingフェーズの処理を実行する。第一送電装置900は、Selectionフェーズにおいて、送電コイル705を介してAnalog Pingを送電する(F1000)。Analog Pingは、送電コイル705の近傍に存在する物体を検出するための微小な電力である。第一送電装置900は、Analog Pingを送電した時の送電コイルの電圧値または電流値を検出し、電圧がある閾値を下回る場合または電流値がある閾値を超える場合に物体が近傍に存在すると判断し、Pingフェーズに移行する。そして、Pingフェーズにおいて、第一送電装置900は、Analog Pingより大きいDigital Pingを送電する(F1001)。ここで、Digital Pingは、送電コイル705の近傍に存在する第一受電装置901の制御部801、第一通信部804、及び第二通信部802が起動するのに十分な電力を有する。第一受電装置901の制御部801及び第一通信部804は、受電コイル805を介して受電したDigital Pingにより起動すると、第一通信部804によるインバンド通信で受電電圧の大きさを第一送電装置900へ通知する(F1002)。第一送電装置900は、第一通信部704を介して受電電圧値の通知を受けると、Pingフェーズの処理を終了し、I&Cフェーズに移行する。第一送電装置900は、I&Cフェーズにおいて、第一受電装置901によって送信されたIdentification Packet(ID Packet)を受信する(F1003)。このときに、第一送電装置900は、少なくとも第一受電装置901の個体識別情報(以下、IDという)を取得しうる。一例において、第一送電装置900は、ID Packetにおいて、第一受電装置901がWPC規格で使用する識別情報を取得すると共に、追加のID情報があることを示すEXTビットが「1」となっているか否かを確認する。そして、第一送電装置900は、EXTビットが「1」である場合、続いてWPC規格に従って送信されてくるExtended Identification(ID) Packetによって、追加のID情報を取得する(F1004)。
【0078】
また、第一送電装置900は、I&Cフェーズにおいて、第一受電装置901によって送信されたConfiguration Packetをも受信する(F1005)。本実施形態では、Configuration Packet内の1ビットを用いて、このパケットの送信元である第一受電装置901がBLEによるアウトバンド制御通信に対応しているか否かを示すBLE bitが送信される。
【0079】
第一送電装置900は、このビット(BLE bit)を監視することにより、第一受電装置901がBLEを用いた制御通信機能を有するか否かを判定することができる。また、本実施形態では、Configuration Packet内の別の1ビットを用いて、第一受電装置901がその時点でBLEを制御通信に使用可能であるかを示すBLE Enable bitを送信する。
【0080】
そして、第一送電装置900は、Configuration Packetを受信したことに応答して、インバンド通信によってアクノリッジ(ACK)を送信する(F1006)。第一送電装置900は、ACKを送信したことに応じて、Negotiationフェーズへ移行する。
【0081】
続いて第一受電装置901は、第一送電装置900に何等かの要求を行うときに送信するパケットとしてWPC規格で規定されているGeneral Requestパケットを用いて、第一送電装置900の能力情報を取得するためのGeneral Request(Capability)パケットを送信する(F1007)。
【0082】
第一送電装置900は、General Request(Capability)を受信すると、自身の能力情報であるTx Capabilityを第一受電装置901に送信する(F1008)。Tx Capabilityには、第一送電装置900の個体識別情報とBLEによるアウトバンド制御通信に対応しているかを示す情報を含むものとする。第一受電装置901はTx Capabilityを受信することで、第一送電装置900がBLEによるアウトバンド制御通信に対応していることがわかる。
【0083】
次に、第一受電装置901は、送電装置に対する要求を送信するパケットとして、WPC規格で規定されているSpecific Requestパケットを用いて、受電電力の大きさの交渉を行う(F1009)。当該受電電力の大きさを、WPC規格ではGuaranteed Power(以下、GPと呼ぶ)と呼ぶ。本実施形態では、当該交渉に用いられるパケットをSpecific Request(GP)と呼ぶ。第一送電装置900は、第一受電装置901が送信するSpecific Request(GP)を第一送電装置900が許容できる場合は、ACKを送信する(F1010)。続いて第一受電装置901は、BLEのRandom Addressとして使用する乱数を生成し、生成したRandom AddressをBD_ADDRとして第一受電装置901に送信する(F1011)。ここで、BD_ADDRは乱数であるため、Random Addressを使用する他のBLE対応機器のBD_ADDRと重複する可能性がある。
【0084】
第一送電装置900は、詳細は後述するが、第二通信部706を介して受信した他のBLE対応機器のBD_ADDRと重複しているかを判断する。そして第一送電装置900は、重複していなければACK送信し、そうでなければNAKを第一受電装置901に送信する。
なお、後述するが第一受電装置901も同様に、第二通信部802を介して受信した他のBLE対応機器のBD_ADDRと第一送電装置900のBD_ADDRが重複しているかを判断する。そして第一受電装置901は、重複していなければACK送信し、そうでなければNAKを第一送電装置900に送信する。
第一送電装置900は、重複はなかったものとしてACKを送信する(F1012)。この時点で、第一送電装置900は、ID Packetで取得した第一受電装置901の個体識別情報とBD_ADDRを対応付けて記憶することができる。
【0085】
続いて第一受電装置901は、第一送電装置900のBD_ADDRを要求する。このでは、第一受電装置901は当該要求のために、General RequestパケットのうちBD_ADDRを要求するものとして、General Request(BD_ADDR)を送信する(F1013)。第一送電装置900はGeneral Request(BD_ADDR)を受信すると、自身のBD_ADDRを生成し、BD_ADDRを第一受電装置901に送信する(F1014)。
【0086】
第一受電装置901は、第一送電装置900のBD_ADDRが第二通信部802を介して受信した他のBLE対応機器のBD_ADDRと重複しているかを判断する。そして第一受電装置901は、重複していなければACKを送信し、そうでなければNAKを第一送電装置900に送信する。第一受電装置901は、重複はなかったものとしてACKを送信する(F1015)。この時点で第一受電装置901は、Tx Capability(F1008)で取得した第一送電装置900の個体識別情報と、BD_ADDRとを対応付けて記憶することができる。
【0087】
BD_ADDRの交換が終了すると、第一送電装置900は、第一受電装置901とのBLEによる制御通信を試行するために、自装置のBLE通信機能を、Scannerとして起動する。なお、Scannerは、BLE規格で定義されている状態の1つであり、第一受電装置901がブロードキャストするADVERTISE_INDICATIONを受信して、その送信元のBLEデバイス(またはサービス)を発見する。以下では、ADVERTISE_INDICATIONをADV_INDと呼ぶ。ADV_INDは、BLE規格で定義されているAdvertiserの状態のデバイスによってブロードキャストされ、そのデバイスのBD_ADDRや対応しているサービス情報を報知するための信号である。
【0088】
第一受電装置901は、第一通信部804をAdvertiserとして起動する。そして第一受電装置901は、BD_ADDRとWPC規格に基づく無線電力伝送サービスに対応している旨を示す情報を格納したADV_INDをブロードキャストする(F1016)。第一送電装置900は、ADV_INDを受信すると、BLEによる接続要求メッセージを、受信したBD_ADDRに宛てて送信する。この接続要求メッセージは、BLE規格で規定されたCONNECT_REQ(以下、「CONNECT」と呼ぶ)である(F1017)。
【0089】
BLEによる接続が確立されたので、以後第一送電装置900と第一受電装置901はBLEによるアウトバンド制御通信を用いてWPC規格に準拠した無線電力伝送の制御を行う。詳細な説明は省略するが、第一送電装置900と第一受電装置901は、例えば上述したような、送受電装置に近接する金属異物の検出(異物検出)に必要なCalibration処理を実施する(F1018)。
【0090】
Calibration処理が終了すると、第一送電装置900と第一受電装置901はPower Transferフェーズに遷移し、バッテリ807を充電するために送受電する電力の制御を行う(F1019)。充電が終了すると、第一受電装置901は送電を停止させるためのパケットであり、WPC規格で規定されているEnd Power Transferパケット(EPT)を第一受電装置901に送信する(F1020)。そして、第一受電装置901は、CONNECTで接続したBLE接続を切断することを示すパケットで、BLE規格で定義されているLL_TERMINATE_INDを、CONNECTの送信元である第一送電装置900に送信する(F1021)。以下では、LL_TERMINATE_INDを、「TERMINATE」と呼ぶ。以上がシステム全体の基本的な処理の流れである。
【0091】
[送電装置の動作]
以下、送電装置(第一送電装置900)が実行する処理の流れのうち、クロスコネクションを検出し解決する処理例について、図11を用いて説明する。図11は、本実施形態による送電装置の処理フローである。なお、本処理は、送電部703が電源部702から電源供給を受ける等によって電源が投入されて起動したことに応じて開始されうる。また、本処理は、制御部701が、メモリ707に記憶されたプログラムを実行することによって実現されうる。ただし、これらに限られず、例えばユーザによる送電装置における所定のボタンの押下等の操作によって電力伝送機能が起動されたことに応じて、本処理が実行されてもよい。また、図11に示される処理の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。少なくとも一部の処理がハードウェアによって実現される場合、例えば、その処理ステップを実現するためのプログラムから、所定のコンパイラを用いてFPGA上に自動的に生成された専用回路が用いられうる。また、FPGAと同様に、Gate Array回路によって、所定の処理ステップを実行するためのハードウェアが実現されてもよい。
【0092】
第一送電装置900は、第一受電装置901からBD_ADDRを受信すると(S1100)、メモリ707にすでに記憶しているBD_ADDRと重複しているかを確認する(S1101)。ここで、メモリ707には、第一送電装置900が取得した受電装置のIDとBD_ADDRが対応づけて記憶されている。例えばIDが“A”である受電装置のBD_ADDRが“X”であり、IDが“B”である別の受電装置のBD_ADDRも“X”である場合に、第一送電装置900はBD_ADDRが重複しており、クロスコネクションの危険性があると判断する。
【0093】
BD_ADDRが重複していれば(S1101でYes)、第一送電装置900は第一受電装置901にNAKを送信する(S1111)。NAKの意味は、BD_ADDRが重複していることを示す。すなわち、NAKは、BD_ADDRが重複していることの通知、またはBD_ADDRを再生成する要求、または再生成したBD_ADDRを第一送電装置900に通知するための要求に相当する。その後、第一送電装置900は、第一受電装置901が再生成したBD_ADDRを受信する(S1101)。
BD_ADDRが重複していなければ(S1101でNo)、第一送電装置900は第一受電装置901にACKを送信する(S1102)ACKの意味は、BD_ADDRが重複していないことを示す。そして、第一送電装置900は、図10AのF1005のConfigurationPacketで受信したIDと関連づけてBD_ADDRをメモリ707に保持する(S1103)。
【0094】
第一送電装置900は第一受電装置901からGeneral Request(BD_ADDR)を受信すると(S1104)、自身のBD_ADDRを生成し、第一受電装置901に送信する(S1105)。そして第一送電装置900は、ACKを受信したか判定する(S1106)。ACKを受信せずに(S1106でNo)、NAKを受信した場合は(S1112)、第一送電装置900はBD_ADDRを再生成し(S1113)、再びBD_ADDRを送信する(S1105)。ACK受信すれば(S1106でYes)、第一送電装置900はBLEをScannerとして起動する(S1107)。BLEを起動後、ADV_INDを受信し(S1108でYes)、受信したADV_INDがメモリ707に保持したBD_ADDRであり、ADV_INDにWPC規格に基づく無線電力伝送サービスに対応していることを示す情報が含まれていれば(S1109でYes)、第一送電装置900はADV_INDに対してCONNECTを送信する(S1110)。
【0095】
ここで、受信したADV_INDがメモリ707に保持したBD_ADDRであるということは、ADV_INDの送信元は第一通信部704を介したインバンド通信でBD_ADDRを交換した受電装置である可能性が高いことを意味する。“可能性が高い”とは、BD_ADDRはRandom Addressである為、BD_ADDRにRandom Addressを使用する他の受電装置とBD_ADDRが重複する可能性はあるが、乱数は重複しない可能性が高いことに起因する。
【0096】
ADV_INDを受信しない(S1108でNo)もしくはADV_INDで受信したBD_ADDRがメモリ707に保持したBD_ADDRと異なっていれば(S1109でNo)、第一送電装置900はタイマがタイムアウトしたか確認する。ここでタイマは、BLEをScannerとして起動した時点、もしくはS1105でBD_ADDRを送信した時点、もしくはS1106でACKを受信した時点でスタートするタイマで、メモリ707に保持しているBD_ADDRを含むADV_INDを受信するまでの時間を規定している。タイムアウトしていなければ(S1114でNo)、第一送電装置900はAADV_INDの受信を試みる(S1108)。タイムアウトしていれば(S1114でYes)、第一送電装置900はScannerとしての動作を終了し、S1100の処理に戻る。
【0097】
CONNECT送信後、第一送電装置900は、第二通信部706を介してBLEでクロスコネクション通知を受電装置から受信したかを判断する(S1115)。ここで、クロスコネクション通知とは、CONNECTを受信し第一送電装置900とBLEによる通信接続を確立した受電装置が送受電の対象でない場合に、当該受電装置が第一送電装置900に行う通知であり、当該確立したBLE接続は制御通信には不適切であることを示す。第一送電装置900は第二通信部706を介してクロスコネクション通知を受信しうる。クロスコネクション通知を受信する(S1115でYes)ということは、第一送電装置900が本来BLE接続をすべき電力の送受電対象となる受電装置とBLE接続を行えていないことを示す。詳細には、受信したADV_INDの送信元のBD_ADDR(Random Address)は、メモリ707に保持しているBD_ADDRであるが、インバンド通信で通信している送電対象の受電装置とは異なることを意味している。これはBD_ADDRがRandom Addressを使う場合に起こりうる事象である。
【0098】
そこで第一送電装置900は、第一通信部704を介して、インバンド通信で本来BLE接続をすべき受電装置(第一受電装置901)に対して、クロスコネクション通知を送信し(S1116)、BD_ADDRを再度生成して通知することを要求するBD_ADDR通知要求を第一受電装置901に送信する(S1117)。その後、再生成され異なる値となったBD_ADDRを第一受電装置901から受信する(S1100)。また、クロスコネクション通知を受信しない(S1115でNo)ということは、第一送電装置900は本来BLE接続すべき受電装置(第一受電装置901)とBLE接続をしたことを意味する。この場合、処理を終了する。
【0099】
[受電装置の動作]
以下、受電装置(第一受電装置901)が実行する処理の流れのうち、クロスコネクションを検出し解決する処理例について、図12を用いて説明する。図12は本実施形態による受電装置の処理フローである。なお、本処理は、制御部801が受電部803から電源供給を受ける等によって電源が投入されて起動したことに応じて開始されうる。また、本処理は、制御部801が、メモリ808に記憶されたプログラムを実行することによって実現されうる。ただし、これらに限られず、例えばユーザによる受電装置における所定のボタンの押下等の操作によって電力伝送機能が起動されたことに応じて、本処理が実行されてもよい。また、図12に示される処理の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。少なくとも一部の処理がハードウェアによって実現される場合、例えば、その処理ステップを実現するためのプログラムから、所定のコンパイラを用いてFPGA上に自動的に生成された専用回路が用いられうる。また、FPGAと同様に、Gate Array回路によって、所定の処理ステップを実行するためのハードウェアが実現されてもよい。
【0100】
第一受電装置901は、第一通信部804を介して第一送電装置900にBD_ADDRを送信する(S1201)。第一受電装置901は、第一送電装置900から第一通信部804を介してACKを受信せず(S1202でNo)、NAKを受信すると(S1213)、BD_ADDRを再生成し(S1214)、再生成したBD_ADDRを送信する(S1201)。
【0101】
ACKを受信すれば(S1202でYes)、第一受電装置901は、第一受電装置901に対し第一通信部804を介してGeneral Request(BD_ADDR)を送信する(S1203)。そして、第一受電装置901は、第一送電装置900からBD_ADDRを受信し(S1204)、メモリ808に保持しているBD_ADDRと重複しているか確認する。BD_ADDRが重複していれば(S1205でYes)、第一受電装置901は、第一送電装置900に第一通信部804を介してNAKを送信し(S1215)、第一送電装置900が再生成したBD_ADDRを受信する(S1204)。すなわち、NAKは、BD_ADDRを再生成して第一受電装置901に通知するための要求に相当する。
【0102】
BD_ADDRが重複していなければ(S1205でNo)、第一受電装置901は、第一送電装置900にACKを送信し(S1206)、受信したBD_ADDRを図10AのF1008で受信した第一送電装置900の個体識別情報(ID)と関連付けてメモリ808に保持する(S1207)。
【0103】
第一受電装置901は、S1201で送信したBD_ADDRを送信元アドレスとして格納したADV_INDを、ブロードキャストで送信する(S1208)。CONNECTを受信すると(S1209)、第一受電装置901はCONNECTの送信元アドレスがS1207でメモリ808に保持したBD_ADDRか確認する(S1210)。CONNECTの送信元アドレスがメモリ808に保持したBD_ADDRであれば(S1210でYes)、第一受電装置901は電力を送受する対象である第一送電装置900とBLE接続したことを意味する為、処理を終了する。そうでなければ(S1210でNo)、第一受電装置901は電力を送受する対象である第一送電装置900以外とBLE接続したことを意味する為、クロスコネクション通知を第二通信部802を介して送信し(S1200)、TERMINATEを送信した後(S1212)、S1201の処理に戻る。
【0104】
また、CONNECTを受信しなければ(S1209でNo)、第一受電装置901は、タイマがタイムアウトしたか確認する(S1211)。ここでタイマは、S1204でBD_ADDRを受信した時点、もしくはS1206でACKを送信した時点でスタートするタイマで、メモリ808に保持しているBD_ADDRを含むCONNECTを受信するまでの時間を規定している。タイムアウトしていなければ(S1211でNo)、第一受電装置901はCONNECTの受信を試みる(S1209)。タイムアウトしていれば(S1211でYes)、第一送電装置900はAdvertiserとしての動作を終了し、S1201の処理に戻る。
【0105】
[本実施形態に特徴的なシステム全体の処理の流れ]
(1つの送電装置に置かれた複数の受電装置間のクロスコネクション)
図9(a)のように第一送電装置900に第一送電装置900と第二受電装置902が置かれた場合のクロスコネクションの解決方法について、図10Bを用いて説明する。図10Bは、本実施形態における無線電力伝送システムの動作シーケンス図である。ここでは、第一送電装置900と第一受電装置901と第二受電装置902を例に説明する。図10Bの例では、第一受電装置901のBD_ADDRと第二受電装置902のBD_ADDRが重複した場合について説明する。この場合、第一送電装置900は、図示しない第一送電回路で第一受電装置901を充電し、図示しない第二送電回路で第二受電装置902を充電するものとする。なお、図10Aにおいてすでに説明した構成については同じ符号を付与することにより説明を省略する。
【0106】
第二受電装置902は、第一通信部804を介して第一送電装置900に自身のBD_ADDRを通知する(F1022)。第一送電装置900は、第二受電装置902のBD_ADDRはF1011で受信した第一受電装置901と同じである為、第二受電装置902に対してNAKを送信する(F1023)。NAKを受信した後、第二受電装置902は、再生成したBD_ADDRを第一送電装置900に送信する(F1024)。BD_ADDRを再生成したので、第一送電装置900は、第二受電装置902にACKを送信する(F1025)。
【0107】
このように、1つの送電装置に置かれた複数の受電装置のBD_ADDRが重複する場合に、送受電装置は、クロスコネクションを回避することができる。さらには本例の動作によれば、クロスコネクションを未然に防ぐことができる。
【0108】
(近接する送電装置に置かれた受電装置とのクロスコネクション)
図9(b)のように隣接する送電装置に置かれた受電装置とのクロスコネクションの回避方法について、図10Cを用いて説明する。図10Cは、本実施形態における無線電力伝送システムの動作シーケンス図である。ここでは、第一送電装置900と第一受電装置901と第二受電装置902を例に説明する。図10Cの例では、図9(b)に示すように、第一送電装置900に第一受電装置901が置かれ、第二送電装置903に第二受電装置902が置かれ、第一受電装置901と第二受電装置902のBD_ADDRが重複しているとする。なお、図10Aにおいてすでに説明した構成については同じ符号を付与することにより説明を省略する。
【0109】
第二受電装置902は、図示しない第二送電装置903のBD_ADDRを第一通信部804を介して受信すると、ADV_INDをブロードキャストする(F1028)。ここで、第一送電装置900が第二送電装置903より先に当該ADV_INDに対してCONNECTを送信する(F1029)。第二受電装置902は、CONNECTを受信すると、第二通信部706を介してクロスコネクション通知(F1030)とTERMINATE(F1031)を第一送電装置900に送信する。
【0110】
第一送電装置900は、クロスコネクション通知とTERMINATEを受信すると、第一受電装置901に対して第一通信部704を介してクロスコネクション通知(F1032)、および、BD_ADDR通知要求(F1033)を送信する。その後、第一送電装置900および第一受電装置901は、すでに説明したF1011からF1017の処理に従いBLE接続を確立する。また、図示はしないが、第二受電装置902は、図12のフローに従い、TERMINATE送信後(図12のS1212、F1031)、再びBD_ADDRを第一通信部804を介して第二送電装置903に送信する(S1201)。
【0111】
また、前述のように、第二送電装置903がADV_INDに対してCONNECTを送信する前に、第一送電装置900がCONNECTを送信し、第二受電装置902はADV_INDの送信を停止した。よって第二送電装置903は、ADV_INDを受信しないままタイマがタイムアウトする(S1114でYes)ので、再びBD_ADDRを第一通信部704を介して第二受電装置902から受信する。第一受電装置901のBD_ADDRは再生成されたため変更されているので、もはやクロスコネクションは発生しない。よって第二送電装置903および第二受電装置902は、すでに説明したF1011からF1017の処理に従いBLE接続を確立する。
【0112】
(変形例1)
図10Cは、CONNECTに含まれる送電装置のBD_ADDRと、受電装置が第一通信部804を介して受信したBD_ADDRに基づいて受電装置がクロスコネクションを判断した。これに替えて、ADV_INDに含まれる受電装置のBD_ADDRと他の識別情報により送電装置が判断してもよい。その判断の例を、図10Dを用いて説明する図10Dは、本変形例における無線電力伝送システムの動作シーケンス図である。ここでは、第一送電装置900と第一受電装置901と第二受電装置902を例に説明する。なお、図10Aにおいてすでに説明した構成については同じ符号を付与することにより説明を省略する。
【0113】
変形例1の受電装置は、ADV_INDに、第一通信部804を介して受信した送電装置のBD_ADDRを情報要素として入れる。例えば、第二受電装置902はADV_INDに第二送電装置903のBD_ADDRを情報要素として格納して送信する(F1028)これを本変形例ではADV_IND(+BD_ADDR)と呼ぶ。
【0114】
第一送電装置900は、第二受電装置902からADV_IND(+BD_ADDR)をブロードキャストで受信するが、送電装置のBD_ADDRが第二送電装置903のものであり、第一送電装置900のBD_ADDRと異なる。よって、第一送電装置900はCONNECTを送信しない。そして、第一送電装置900は、第一受電装置901が送信したADV_IND(+BD_ADDR)を受信すると(F1029)、送電装置のBD_ADDRが第一送電装置900のものなので、CONNECTを送信する(F1017)。
【0115】
このように、ADV_INDに送受電の対象となる相手機器のBD_ADDRを格納することで、クロスコネクションを回避することができる。なお、ADV_INDに接続を許可するCentralのアドレスを格納するパケットは、BLE規格では、ADV_DIRECT_INDと定義されている。
【0116】
また、ADV_INDに追加で格納する識別情報は、送電装置が把握している識別情報であれば同等の効果が得られる。例えば、送電装置のIDでもよい。受電装置は、第一通信部804を介して受信した送電装置のIDをADV_INDの追加情報として格納する。送電装置は追加情報として格納された送電装置のIDが自身のIDと一致したADV_INDに対してCONNECTを送信すればよい。そして、格納された送電装置のIDが自身のIDと一致しないADV_INDに対してCONNECTを送信しないようにすることで同様の効果を得ることができる。
【0117】
また、ADV_INDに追加で格納する識別情報は、ADV_INDの送信元の受電装置のIDであってもよい。送電装置は、追加情報として格納された受電装置のIDが第一通信部704を介して受信した受電装置のIDと一致したADV_INDに対してCONNECTを送信すればよい。そして、格納された受電装置のIDが第一通信部704を介して受信した受電装置のIDと一致しないADV_INDに対してCONNECTを送信しないようにすることで同様の効果を得ることができる。
【0118】
このように、本実施形態によれば、送電装置および受電装置は、クロスコネクションを検出し解決することが可能となる。なお、実施形態1を、本実施形態による送電装置および受電装置に適用することにより、実施形態1で説明した異物検出処理がおこなわれてもよい。
【0119】
≪その他の実施形態≫
図10Bでは第一受電装置901と第二受電装置902が第一送電装置900とBLEで接続(Connectを受信)する前に第一送電装置900はBD_ADDRの重複を検出する構成について説明した。しかしこれは、第一受電装置901が第一送電装置900からCONNECTを受信しBLEによる制御通信を実施している時に、第二受電装置902が第一送電装置900に第一受電装置901と同じBD_ADDRを送信し、第一送電装置900が当該重複を検出する場合であってもよい。
【0120】
また、第一受電装置901は第一送電装置900にBD_ADDRの送信を要求を行うときに送信するパケットとしてGeneral Requestパケットを用いたが、同じく要求を行うときに送信するパケットとしてWPC規格で規定されているSpecific Requestパケットを用いてもよい。
【0121】
また、図10Cでは第二受電装置902がクロスコネクション通知を送信した後TERMINATEを第一送電装置900に送信した。しかしこれは、第一送電装置900がクロスコネクション通知を受信した後に、TERMINATEを第二受電装置902に送信してもよい。
【0122】
また、第二受電装置902からクロスコネクション通知を受信した第一送電装置900は第一受電装置901にクロスコネクション通知およびBD_ADDR通知要求を送信したことに応じて第一受電装置901にTERMINATEを送信してもよい。また受電装置901は、当該TERMINATEを受信後に、生成したBD_ADDRを送電装置900に送信してもよい。
【0123】
また、当該Random Addressは送受電装置がインバンド通信でBD_ADDRを送信する際に生成するものとして説明した。しかしこれは、BLEの接続処理を終了し送受電の制御通信を実施しているときにRandom Addressを定期的に生成し変更してもよい。
【0124】
また、送電装置はBD_ADDRに対するNAKをインバンド通信で送信するようにし、受電装置はそれをインバンド通信で受信するようにした。しかしこれはBLEを使ったアウトバンド通信でもよい。
【0125】
また、送電装置は受電装置が通知するBD_ADDRに対して、NAKを送信することで、Random Addressが重複していることを受電装置に通知するようにした。しかしこれは、Random Addressが重複していることおよび異なるRandom Addressを生成し当該Random Addressを送信することを示すデータであれば他のデータでもよい。例えば、BD_ADDRの重複通知、BD_ADDRの再生成要求乃至再送要求を送信する、もしくはそれらの組み合わせを送信する構成であってもよく、当該通知を受信した受電装置は異なるRandom Addressを再生成し送電装置に送信してもよい。
【0126】
また、受電装置はBD_ADDRに対するNAKをインバンド通信で送信するようにし、送電装置はそれをインバンド通信で受信するようにした。しかしこれはBLEを使ったアウトバンド通信でもよい。
【0127】
また、受電装置は送電装置が通知するBD_ADDRに対して、NAKを送信することで、Random Addressが重複していることを送電装置に通知するようにした。しかしこれは、Random Addressが重複していることおよび異なるRandom Addressを生成し当該Random Addressを送信することを示すデータであれば他のデータでもよい。例えば、BD_ADDRの重複通知、BD_ADDRの再生成要求乃至再送要求の送信する、もしくはそれらの組み合わせを送信する構成であってもよく、当該通知を受信した送電装置は異なるRandom Addressを再生成し送電装置に送信してもよい。
【0128】
また、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0129】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0130】
101:制御部、102:電源部、103:第一送電部、104:第二送電部、105:第一送電アンテナ、106:メモリ、107:選択部、108:第二送電アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12