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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】吸着パッド
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20240815BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
H01L21/68 B
B25J15/06 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020111191
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010545
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 政生
(72)【発明者】
【氏名】吉村 哲
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-050484(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0110292(US,A1)
【文献】特開平06-247507(JP,A)
【文献】特開2014-118250(JP,A)
【文献】特開2010-245155(JP,A)
【文献】特開2015-160306(JP,A)
【文献】特開2007-053313(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117095(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0062517(KR,A)
【文献】実開平06-011987(JP,U)
【文献】特開2018-108638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と、該表面の反対側に位置する裏面と、前記表面から前記裏面に向かって伸びる外側面および内側面とを含み、
断面が矩形状を有する環状体で形成されており、
前記表面と前記外側面とは第1傾斜面を介して接続され、前記裏面と前記外側面とは第2傾斜面を介して接続され、
前記第2傾斜面の幅が、前記第1傾斜面の幅よりも広い
吸着パッド。
【請求項2】
前記第2傾斜面の幅が、前記第1傾斜面の幅よりも50μm以上広い請求項に記載の吸着パッド。
【請求項3】
表面と、該表面の反対側に位置する裏面と、前記表面から前記裏面に向かって伸びる外側面および内側面とを含み、
断面が矩形状を有する環状体で形成されており、
前記表面と前記外側面とは第1傾斜面を介して接続され、前記裏面と前記外側面とは第2傾斜面を介して接続され、
前記表面と前記内側面とは第3傾斜面で接続され、前記裏面と前記内側面とは第4傾斜面で接続されており、前記第4傾斜面の幅が、前記第3傾斜面の幅よりも広い
吸着パッド。
【請求項4】
前記第4傾斜面の幅が、前記第3傾斜面の幅よりも50μm以上広い請求項に記載の吸着パッド。
【請求項5】
表面と、該表面の反対側に位置する裏面と、前記表面から前記裏面に向かって伸びる外側面および内側面とを含み、
断面が矩形状を有する環状体で形成されており、
前記表面と前記外側面とは第1傾斜面を介して接続され、前記裏面と前記外側面とは第2傾斜面を介して接続され、
前記環状体が、酸化アルミニウムを主成分とする単結晶体または多結晶体で形成されており、
前記表面には複数の開気孔が存在し、前記表面における開気孔率が2%以下である
吸着パッド。
【請求項6】
表面と、該表面の反対側に位置する裏面と、前記表面から前記裏面に向かって伸びる外側面および内側面とを含み、
断面が矩形状を有する環状体で形成されており、
前記表面と前記外側面とは第1傾斜面を介して接続され、前記裏面と前記外側面とは第2傾斜面を介して接続され、
前記環状体が、酸化アルミニウムを主成分とし、閉気孔を有する多結晶体で形成されており、
隣り合う前記閉気孔の重心間距離の平均値(A)から前記閉気孔の円相当径の平均値(B)を引いた値(C)が、42μm以上85μm以下である
吸着パッド。
【請求項7】
表面と、該表面の反対側に位置する裏面と、前記表面から前記裏面に向かって伸びる外側面および内側面とを含み、
断面が矩形状を有する環状体で形成されており、
前記表面と前記外側面とは第1傾斜面を介して接続され、前記裏面と前記外側面とは第2傾斜面を介して接続され、
前記環状体が、ポリエーテルエテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂およびポリベンゾイミダゾール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂で形成されている
吸着パッド。
【請求項8】
載置物を載置するための先端部と、該先端部を支持するための基端部とを含み、
前記先端部と前記基端部とが板状体で形成されており、
請求項1~のいずれかに記載の吸着パッドが前記先端部に備えられている、
搬送部材。
【請求項9】
前記吸着パッドは、前記載置物を載置するための載置面が、研削面または研磨面である請求項に記載の搬送部材。
【請求項10】
前記吸着パッドが、ビスフェノールA型樹脂またはビスフェノールF型樹脂を主成分とする接着層を介して、前記先端部に装着されている請求項8または9に記載の搬送部材。
【請求項11】
前記板状体および前記吸着パッドを形成している環状体が、酸化アルミニウムを主成分とする多結晶体または単結晶体で形成されており、
前記環状体を形成している酸化アルミニウムの純度が、前記板状体を形成している酸化アルミニウムの純度よりも高い請求項8~10のいずれかに記載の搬送部材。
【請求項12】
前記先端部が、前記基端部よりも厚みの薄い段差部を備えており、
該段差部が、段差面、先端面および前記段差面と前記先端面とを接続する斜面とを含み、
前記斜面を延長した仮想平面が、前記段差部の前記先端面側に位置する前記吸着パッドと接触しない請求項8~11のいずれかに記載の搬送部材。
【請求項13】
前記吸着パッドの表面と前記仮想平面とが、少なくとも20μm離れている請求項12に記載の搬送部材。
【請求項14】
請求項8~13のいずれかに記載の搬送部材を備える搬送装置。
【請求項15】
請求項14に記載の搬送装置を備える処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着パッド、ならびにこの吸着パッドを備える搬送部材、搬送装置および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハなどの基板を裏面側から吸着保持して搬送する部材として、吸着部を備えた板状の搬送アームが使用されている。このような搬送アームとして、例えば特許文献1には、温度が高い状態で基板を吸着保持して搬送し、基板の脱離を容易にすることが可能な搬送アームが記載されている。特許文献1に記載の搬送アームは、基板を吸着して保持する保持部を備え、保持部が排気口と、排気口の周囲にスクィーズパッキン(squeeze packing)からなる吸着部材とを備える。
【0003】
この特許文献1に記載の搬送アームに備えられる吸着部材は、載置面と外側面との交差部にバリがあると、基板の吸着が不安定になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-118250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の課題は、安定して基板などの載置物を吸着することができ、載置物をほとんど傾けることがない吸着パッド、ならびにこの吸着パッドを備える搬送部材、搬送装置および処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る吸着パッドは、表面と、表面の反対側に位置する裏面と、表面から裏面に向かって伸びる外側面および内側面とを含み、断面が矩形状を有する環状体で形成されている。表面と外側面とは第1傾斜面を介して接続され、裏面と外側面とは第2傾斜面を介して接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、安定して基板などの載置物を吸着することができ、載置物をほとんど傾けることがない吸着パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)は、本開示の一実施形態に係る吸着パッドを備える搬送部材の斜視図を示し、(B)は、本開示の一実施形態に係る吸着パッドを備える搬送部材の平面図を示す。
図2】(A)および(C)は、図1に示す搬送部材に備えられた吸着パッドの平面図を示し、(B)は(A)に示すY-Y線で切断した際の断面を示す断面図し、(D)は(C)に示すY’-Y’線で切断した際の断面を示す断面図を示す。
図3図1に示すX-X線で切断した際の断面を示す断面図を示す。
図4図3に示す領域Zの拡大説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る吸着パッドは、上記のように、表面と、表面の反対側に位置する裏面と、表面から裏面に向かって伸びる外側面および内側面とを含み、断面が矩形状を有する環状体で形成されている。
【0010】
本開示の一実施形態に係る吸着パッドを、図1~4に基づいて説明する。図1(A)は、本開示の一実施形態に係る吸着パッドを備える搬送部材の斜視図を示す。図1(B)は、本開示の一実施形態に係る吸着パッドを備える搬送部材の平面図を示す。搬送部材1に備えられる吸着パッド2は、環状体で形成されている。
【0011】
吸着パッド2の形状は、環状体であれば限定されず、例えば、平面視した場合に、図2(A)に示すようなレーストラック形状を有する吸着パッド21、図2(C)に示すような円形状を有する吸着パッド22などが挙げられる。レーストラック形状を有する環状体を採用すると、得られる吸着パッド2は、搬送アームなどの搬送部材の先端部側の幅が狭くても、基板などの載置物の裏面に対する真実接触面積を増やすことができる。その結果、載置物の静止摩擦力を、より向上させることができる。
【0012】
吸着パッド2を形成している環状体は、図3に示すように、表面2aと、表面2aの反対側に位置する裏面2bと、表面2aから裏面2bに向かって伸びる外側面2cおよび内側面2dとを含む。環状体の断面は、図3に示すように矩形状を有している。図3は、図1に示すX-X線で切断した際の断面図を示す。
【0013】
環状体の材質は限定されず、例えば、樹脂、セラミックスなどが挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエーテルエテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
これらの樹脂の中でも、ポリエーテルエテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂およびポリベンゾイミダゾール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂であるのがよい。これらの樹脂は、比較的高い荷重たわみ温度を有しており、得られる吸着パッド2の耐熱性をより向上させることができる。
【0015】
セラミックスとしては、例えば、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、イットリウムアルミニウム複合酸化物、酸化マグネシウム、炭化珪素、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、サイアロンなどを主成分とするセラミックスが挙げられる。これらのセラミックスは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本明細書において「セラミックスにおける主成分」とは、セラミックスを構成する成分の合計100質量%のうち、90質量%以上を占める成分を意味する。セラミックスを構成する成分は、CuKα線を用いたX線回折装置(XRD)を用いて同定した後、蛍光X線分析装置(XRF)またはICP発光分光分析装置(ICP)を用いて、元素の含有量を求める。その後、同定された成分に応じて、酸化物、炭化物または窒化物等に換算すればよい。
【0017】
これらのセラミックスの中でも、酸化アルミニウムを主成分とする単結晶体(サファイア)または多結晶体であるのがよい。酸化アルミニウムを主成分とする単結晶体または多結晶体で形成された環状体(吸着パッド2)は、表面に複数の開気孔が存在し、表面における開気孔率が2%以下である。このような酸化アルミニウムを主成分とする単結晶体または多結晶体で形成された環状体(吸着パッド2)は、表面から発生する可能性のあるパーティクルの量および個数が低減される。開気孔率は、例えばJIS R 1634:1998(アルキメデス法)などによって測定される。
【0018】
単結晶体や多結晶体が酸化アルミニウムを主成分とするセラミックスである場合、ナトリウムや珪素の酸化物を含んでいてもよい。
【0019】
さらに、セラミックスとして、酸化アルミニウムを主成分として閉気孔を有する多結晶体を使用してもよい。この場合、隣り合う閉気孔の重心間距離の平均値(A)から閉気孔の円相当径の平均値(B)を引いた値(C)が、42μm以上85μm以下であるのがよい。値(C)が42μm以上であると、閉気孔が相対的に少なくなり、剛性の高い多結晶体となる。一方、値(C)が85μm以下であると、隣り合う閉気孔の間隔が比較的狭くなるため、加熱および冷却が繰り返される環境下で使用しても、残留応力が緩和されやすい。その結果、値(C)が42μm以上85μm以下であると、載置面の平面度が損なわれにくく、載置物を安定して載置することができる。
【0020】
閉気孔の重心間距離は、次の方法で求めることができる。まず、表面2aから深さ方向に、平均粒径D50が3μmのダイヤモンド砥粒を用いて銅盤にて研磨する。その後、平均粒径D50が0.5μmのダイヤモンド砥粒を用いて錫盤にて研磨することにより研磨面を得る。研磨面の算術平均粗さRaは、0.01μm以上0.2μm以下である。研磨面の算術平均粗さRaは、JIS B 0601:1994に準拠して求めることができる。測定条件としては、例えば、触針の半径を5μm、触針の材質をダイヤモンド、測定長さを1.25mm、カットオフ値を0.25mmとすればよい。
【0021】
研摩面を200倍の倍率で観察し、平均的な範囲を選択して、例えば、面積が0.105mm(横方向の長さが374μm、縦方向の長さが280μm)となる範囲をCCDカメラで撮影して、観察像を得る。この観察像を対象として、画像解析ソフト「A像くん(ver2.52)」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)を用いて分散度計測の重心間距離法という手法で開気孔の重心間距離を求めればよい。
【0022】
この手法の設定条件としては、例えば、画像の明暗を示す指標であるしきい値を86、明度を暗、小図形除去面積を1μm、雑音除去フィルタを有とすればよい。観察像の明るさに応じて、しきい値は調整すればよく、明度を暗、2値化の方法を手動とし、小図形除去面積を1μm2および雑音除去フィルタを有とした上で、観察像に現れるマーカーが閉気孔の形状と一致するように、しきい値を調整すればよい。
【0023】
閉気孔の円相当径は、以下の方法で求めることができる。上記観察像を対象として、粒子解析という手法で閉気孔の円相当径を求めればよい。この手法の設定条件も分散度計測の重心間距離法で用いた設定条件と同じにすればよい。
【0024】
吸着パッド2を形成している環状体において、載置物を載置するための載置面である表面2aと外側面2cとは、第1傾斜面2a’を介して接続されている。表面2aと外側面2cとが第1傾斜面2a’を介して接続されることによって、表面2aと外側面2cとの交線部近傍で生じていたバリがなくなる。その結果、安定して載置物を吸着することができる。
【0025】
載置物を載置するための載置面(表面2a)は、研削された研削面または研磨された研磨面であるのがよい。載置面が研削面または研磨面であると、載置面の平面度をより向上させることができる。その結果、より安定して載置物を吸着することができる。特に、載置面は、吸着パッド2を後述する板状体の溝部(凹部)に装着、接着した後、研削または研磨するとよい。
【0026】
図4に示すように、吸着パッド2を形成している環状体において、表面2aの反対側に位置する裏面2bと外側面2cとは、第2傾斜面2b’を介して接続されている。裏面2bと外側面2cとは、第2傾斜面2b’を介して接続されることによって、裏面2bと外側面2cとの交線部近傍で生じていたバリが存在しない状態で吸着パッド2を装着することができる。さらに、搬送部材1において吸着パッド2を装着する部分に形成される内壁面から底面にかけて生じる曲面の影響を受けにくくなる。その結果、表面2aが傾きにくくなり、安定して載置物を吸着することができる。図4は、図3に示す領域Zの拡大説明図を示す。
【0027】
第1傾斜面2a’と第2傾斜面2b’とは同じ幅(同じ傾き)であってもよく、異なる幅(異なる傾き)であってもよい。第1傾斜面2a’と第2傾斜面2b’とが異なる幅を有する場合、第2傾斜面2b’の幅w2が第1傾斜面2a’の幅w1よりも広い方がよい。第2傾斜面2b’の幅w2を広くすることによって、吸着パッド2と先端部11とを接着剤を介して接着したときに、吸着パッド2と接着剤との接触面積を大きくして接着力を向上することができる。第1傾斜面2a’の幅w1を狭くすることによって、載置物の載置面を広くすることができ、載置物と載置面との隙間から空気が漏れにくくなり、載置物に対する吸引力が高い状態で維持される。第2傾斜面2b’の幅w2と第1傾斜面2a’の幅w1との差は限定されず、例えば50μm以上にするのがよい。
【0028】
表面2aと第1傾斜面2a’とがなす角度は限定されず、例えば130~140°程度であるのがよい。裏面2bと第2傾斜面2b’とがなす角度についても限定されず、例えば130~140°程度であるのがよい。
【0029】
吸着パッド2を形成している環状体において、表面2aと内側面2dとの間には傾斜面が存在していなくてもよいし、表面2aと内側面2dとが第3傾斜面を介して接続されていてもよい。例えば、表面2aと内側面2dとが第3傾斜面を介して接続されていると、上述の第1傾斜面2a’を設ける理由と同様、表面2aと内側面2dとの交線部近傍で生じていたバリのない状態で吸着パッド2を装着することができる。その結果、表面2aが傾きにくくなり、安定して載置物を吸着することができる。
【0030】
吸着パッド2を形成している環状体において、裏面2bと内側面2dとの間には傾斜面が存在していなくてもよいし、裏面2bと内側面2dとが第4傾斜面を介して接続されていてもよい。例えば、裏面2bと内側面2dとが第4傾斜面を介して接続されていると、上述の第2傾斜面2b’を設ける理由と同様、表面2aが傾きにくくなり、安定して載置物を吸着することができる。
【0031】
第3傾斜面と第4傾斜面とは同じ幅(同じ傾き)であってもよく、異なる幅(異なる傾き)であってもよい。第3傾斜面と第4傾斜面とが異なる幅を有する場合、第4傾斜面の幅が第3傾斜面の幅よりも広い方がよい。第4傾斜面の幅を広くすることによって、吸着パッド2と先端部11とを接着剤を介して接着したときに、吸着パッド2と接着剤との接触面積を大きくして接着力を向上することができる。また、第3傾斜面の幅を狭くすることによって、載置物の載置面を広くすることができ、載置物と載置面との隙間から空気が漏れにくくなり、載置物に対する吸引力が高い状態で維持される。第4傾斜面の幅と第3傾斜面の幅との差は限定されず、例えば50μm以上にするのがよい。
【0032】
表面2aと第3傾斜面とがなす角度は限定されず、例えば130~140°程度であるのがよい。裏面2bと第4傾斜面とがなす角度についても限定されず、例えば130~140°程度であるのがよい。
【0033】
一実施形態に係る吸着パッド2は、例えば図1(A)および(B)に示すように、搬送部材1に備えられる。一実施形態に係る搬送部材1は、載置物を載置するための先端部11と、先端部11を支持するための基端部12とを含む。
【0034】
先端部11および基端部12を形成している板状体の材質は限定されず、例えば、セラミックスなどが挙げられる。セラミックスとしては、例えば、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、イットリウムアルミニウム複合酸化物、酸化マグネシウム、炭化珪素、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、サイアロンなどを主成分とするセラミックスが挙げられる。これらのセラミックスは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
例えば、吸着パッド2を形成している環状体と先端部11および基端部12を形成している板状体とが、酸化アルミニウムを主成分とする単結晶体(サファイア)または多結晶体で形成されている場合、酸化アルミニウムの純度は、板状体よりも環状体の方が高いのがよい。環状体の純度が高いと、吸着パッド2の載置面に含まれる不純物が少なくなり、載置物を汚染しにくくすることができる。
【0036】
酸化アルミニウムの純度は、セラミックスにおける酸化アルミニウムの含有量である。例えば、板状体の酸化アルミニウムの純度は99.4質量%以上99.6質量%未満であるのがよい。環状体の酸化アルミニウムの純度は99.6質量%以上であるのがよい。板状体および環状体において、酸化アルミニウムの純度の差は、例えば0.1質量%以上であるのがよい。
【0037】
先端部11は、基端部12よりも薄い厚みを有する段差部11aを備えていてもよい。段差部11aの厚みは、基端部12の厚みよりも1.5mm以上2mm以下程度薄いのがよい。段差部11aの厚みが基端部12の厚みより薄いと、搬送部材1の自重を軽くすることができる。その結果、載置物を搬送する際に発生する振動の影響を低減することができる。
【0038】
段差部11aは、段差面11b、先端面11c、および段差面11bと先端面11cとを接続する斜面11dとを含む。段差面11bの表面には、吸着パッド2を装着するための溝部(凹部)が形成されている。吸着パッド2は、例えば樹脂で形成された接着層3を介して、この溝部に装着されている。接着層3を形成している樹脂は限定されず、例えば、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂などが挙げられる。これらの樹脂の中でも、ビスフェノールA型樹脂またはビスフェノールF型樹脂を主成分とする接着層3がよい。ビスフェノールA型樹脂およびビスフェノールF型樹脂は低粘性であり、装着された各吸着パッド2の厚みのばらつきが抑制されやすい。さらに、これらの樹脂は、アルカリに対して優れた耐性を有している。そのため、搬送部材1をアルカリ溶液で繰り返し洗浄しても劣化しにくい。
【0039】
斜面11dの傾きは限定されない。例えば、斜面11dを延長した仮想平面Pが、段差部11aの先端面11c側に位置する吸着パッド2と接触しないような傾きであるのがよい。仮想平面Pと吸着パッド2とが接触しない状態、すなわち、吸着パッド2の表面2a(載置面)が段差面11bの表面に近い位置に存在していると、載置物が基板の場合、基板を厚み方向に収納するカセット内の基板同士の間隔を狭くすることができる。その結果、基板の収納率を高めることができる。
【0040】
吸着パッド2の表面2a(載置面)と仮想平面Pとの間隔は限定されない。例えば、吸着パッド2の表面2aと仮想平面Pとは少なくとも20μm離れているのがよい。
【0041】
一実施形態に係る吸着パッド2を備える搬送部材1は、例えば、吸着パッド2に吸着させて搬送するために使用する搬送装置に備えられる。搬送装置としては、基板を搬送するために使用される基板搬送装置などが挙げられる。このような搬送装置は、例えば、処理装置に備えられる。処理装置としては、基板に各種処理を施すために使用される基板処理装置などが挙げられる。基板処理装置によって、基板を製造する際に、例えば、印刷、露光、現像、洗浄など一連の工程が行われる。
【符号の説明】
【0042】
1 搬送部材
11 先端部
11a 段差部
11b 段差面
11c 先端面
11d 斜面
12 基端部
2 吸着パッド
2a 表面
2b 裏面
2c 外側面
2d 内側面
2a’ 第1傾斜面
2b’ 第2傾斜面
3 接着層
図1
図2
図3
図4