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特許7538642発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子および発泡成形体。
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  • 特許-発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子および発泡成形体。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子および発泡成形体。
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20240815BHJP
   C08J 9/224 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C08J9/16 CET
C08J9/224
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020123369
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2021155692
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2020055440
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】落越 忍
(72)【発明者】
【氏名】木口 太郎
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/111368(WO,A1)
【文献】特開平10-101839(JP,A)
【文献】特開昭55-148134(JP,A)
【文献】特開2011-246655(JP,A)
【文献】特開平04-057837(JP,A)
【文献】特開平10-168217(JP,A)
【文献】特公昭48-040909(JP,B1)
【文献】特開2015-048356(JP,A)
【文献】特開平03-192134(JP,A)
【文献】特開平6-122781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00-9/42
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成単位としてスチレン単位を含む基材樹脂とアクリル系樹脂とを含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の表面に、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体100重量部に対して、融着促進剤0.01~0.2重量部が塗布されてなり、
前記アクリル系樹脂は、平均粒子径0.2μm以下の基本粒子の集合粒子として、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中に分散して存在し、
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の表面に、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体100重量部に対して、ポリエチレンワックス0重量部超0.2重量部以下が更に塗布されており、
前記ポリエチレンワックスの重量平均分子量は、600以上2500以下であることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、高級脂肪酸金属塩の塗布量が、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体100重量部に対して、0.1重量部未満である、請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
前記融着促進剤が、脂肪酸トリグリセライド、脂肪酸ジグリセライド、脂肪酸モノグリセライドのいずれか1種又は複数の混合物であることを特徴とする請求項1~2のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体は、前記基材樹脂100重量部に対して、前記アクリル系樹脂0.01~0.5重量部を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
前記アクリル系樹脂は、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルの単独重合体、及び、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルの共重合体あるいはグラフト共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させてなるポリスチレン系予備発泡粒子。
【請求項7】
セル弦長が40~80μmである、請求項6に記載のポリスチレン系予備発泡粒子。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のポリスチレン系予備発泡粒子を発泡させてなる発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系発泡粒子および発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡成形体の原料であり、水蒸気等の加熱媒体を用いて発泡および成形することができ、比較的安価であるため、一般的に広く利用されている。
【0003】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、例えば、ポリスチレン系樹脂粒子の水性懸濁液中で、当該粒子に発泡剤(例えば、ブタン、ペンタン等の易揮発性の脂肪族炭化水素)を含浸させる方法によって製造することができる。
【0004】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から、所望の形状の発泡成形体を製造する方法として、一般的には、(1)発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、加熱媒体を用いて予備発泡させて、予備発泡粒子とする予備発泡工程、(2)予備発泡粒子を、壁面に多数の小孔が穿設された閉鎖型の金型内に充填する充填工程、(3)金型の小孔から加熱媒体を導入して、予備発泡粒子をその軟化点以上の温度に加熱し、予備発泡粒子を互いに融着させることにより、所望の形状に成形する成形工程、および、(4)冷却した後、金型内から発泡成形体を取り出す取出し工程、を含む方法が用いられている。
【0005】
当該方法により製造される発泡成形体は、所望の形状に成形し易く、軽量であり、かつ断熱性及び緩衝性に優れることから、種々の用途に適用することができ、例えば、食品容器等の包装材料(トレー)、魚函等の輸送用梱包材等として使用されている。
【0006】
上記予備発泡工程において、予備発泡粒子同士が結合(合着ともいう)した状態(ブロッキングともいう)となり、塊を生じる場合がある。ブロッキングが発生すると、予備発泡粒子の生産性が低下する。したがって、ブロッキングを解消するために、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のコアとなる樹脂粒子本体の表面を、特定の物質からなるブロッキング抑制剤等の外添剤で被覆することが知られている。
【0007】
例えば、特許文献1には、樹脂粒子本体の表面を、非イオン界面活性剤およびメチルフェニルポリシロキサンで被覆してなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が開示されている。
【0008】
一方、特許文献2には、成形サイクルを短縮し、かつ、得られる発泡成形体の強度および表面光沢を高めるために、樹脂粒子本体の表面を、25℃での屈折率が1.45以上であるメチルフェニルシリコーンオイル、および高級脂肪酸金属塩で被覆することが開示されている。
【0009】
また、特許文献3には、予備発泡時のブロッキング抑制のために、 樹脂粒子本体の表面を、非イオン系界面活性剤、メチルフェニルポリシロキサンと、脂肪酸金属塩と、脂肪酸グリセライド化合物で被覆することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2018-168265号公報
【文献】特開2007-246705号公報
【文献】特開2019-65074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した従来技術では、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の流動性、予備発泡工程におけるブロッキングの防止、および成形工程における装置の汚染の低減に改善の余地がある。
【0012】
本発明の一実施形態は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、長期にわたり、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の予備発泡工程におけるブロッキングを防止し、成形工程における装置の汚染を低減でき、成形体の実用的強度を有する、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子および発泡成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定粒子径のアクリル系樹脂を含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の表面に、適切な量の融着促進剤を塗布することにより、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の予備発泡工程におけるブロッキングを、長期間にわたって防止しつつ、予備発泡粒子の表面から外添剤が剥離することによる装置の汚染を抑制し、柔軟性があり、かつ実用強度のある発泡成形体
が得られることを確認し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
[1]構成単位としてスチレン単位を含む基材樹脂とアクリル系樹脂とを含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の表面に、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体100重量部に対して、融着促進剤0.01~0.2重量部が塗布されてなり、前記アクリル系樹脂は、平均粒子径0.2μm以下の基本粒子の集合粒子として、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中に分散して存在することを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
[2]前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の表面に、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体100重量部に対して、ポリエチレンワックス0重量部超0.2重量部以下が更に塗布されていることを特徴とする[1]に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
[3]前記融着促進剤が、脂肪酸トリグリセライド、脂肪酸ジグリセライド、脂肪酸モノグリセライドのいずれか1種又は複数の混合物であることを特徴とする[1]~[2]のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
[4]前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体は、前記基材樹脂100重量部に対して、前記アクリル系樹脂0.01~0.5重量部を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
[5]前記アクリル系樹脂は、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルの単独重合体、及び、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルの共重合体あるいはグラフト共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[1]~[4]のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡させてなるポリスチレン系予備発泡粒子。
[7]セル弦長が40~80μmである、[6]に記載のポリスチレン系予備発泡粒子。
[8][6]又は[7]に記載のポリスチレン系予備発泡粒子を発泡させてなる発泡成形体。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を長期保管した場合であっても予備発泡工程におけるブロッキングを防止し、装置の汚染を低減できる、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子および、柔軟性を付与した実用強度を有する発泡成形体を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例1で得た発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中のアクリル系樹脂の、6000倍の電子顕微鏡写真である。
図2】本発明の実施例1で得た発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中のアクリル系樹脂の、40000倍の電子顕微鏡写真である。
図3】本発明の比較例4で得た発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中のポリエチレンワックスの、6000倍の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0017】
本明細書においては、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子そのもの(それ自体)を「発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体」と称し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の表面に外添剤(ブロッキング抑制剤)等が塗布されたものを「発泡性ポリスチレン系樹脂粒子」と称し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなる粒子を「ポリスチレン系予備発泡粒子」と称する。
【0018】
〔1.発泡性ポリスチレン系樹脂粒子〕
〔本発明の一実施形態の概要〕
発泡成形体の成型工程において、予備発泡粒子の表面に付着した外添剤の作用等により、予備発泡粒子間の融着性が低下し、発泡成形体の強度が低下するという問題がある。その一方で、予備発泡粒子間の融着性が高すぎると、取り出し工程において、発泡成形体の冷却に時間がかかり、成形サイクルが長くなるという問題がある。また、温度が十分に下がらないうちに金型から発泡成形体を取り出すと、発泡成形体の変形が生じるという問題がある。
【0019】
外添剤として、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸金属塩を用いると、上記の問題が解消され得るが、当該高級脂肪酸金属塩は、粒子の空気輸送に用いられる装置のフィルター、および、金型の小孔等に付着して目詰まりを起こし易く、装置の汚染による生産性の低下の問題を引き起こすことがある。
【0020】
これに対し、上述の特許文献1に記載される発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、ブロッキング抑制剤として液状のメチルフェニルポリシロキサンを含むことから、粉体による目詰まりの問題が解消されているが、樹脂粒子の流動性が比較的低い。したがって、流動性およびハンドリング性の点において、改善の余地がある。
【0021】
又、特許文献2、3に記載される発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、高級脂肪酸金属塩(特に、ステアリン酸亜鉛)を含んでいるため、装置の汚染が進行し易いという問題がある。
【0022】
本発明の一実施形態では、上述した技術課題を解決するものである。すなわち、特定粒子径のアクリル系樹脂を含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の表面に、融着促進剤が塗布されてなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を長期保管したとしても、予備発泡工程におけるブロッキングを防止しつつ、予備発泡粒子の表面から外添剤が剥離することによる装置の汚染を抑制し、さらに、成形体の実用的な強度を有し得る。
【0023】
〔1-1.発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体〕
本発明の一実施形態に係る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、特定粒子径のアクリル系樹脂を特定量含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体を有する。本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体は、構成単位としてスチレン単位を含む基材樹脂と、セル弦長調整剤(造核剤)としての特定粒子径のアクリル系樹脂と、発泡剤とを含む発泡性樹脂からなる粒子である。
【0024】
(基材樹脂)
本明細書において、基材樹脂は、構成単位としてスチレン単位を含む。基材樹脂を構成する「スチレン単位」とは、スチレン単量体に由来する構成単位である。基材樹脂は、基材樹脂が含む全構成単位の質量を100重量%としたとき、スチレン単位の質量が60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。
【0025】
基材樹脂は、スチレンの単独重合体であってもよい。また、基材樹脂は、スチレン単量体と、スチレン単量体以外の単量体との共重合体であってもよい。スチレン単量体以外の単量体としては、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン系誘導体、アクリル酸エステル等が挙げられる。上記スチレン系誘導体としては、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、t-ブチルスチレンおよびクロルスチレン等が挙げられる。上記アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらのスチレン単量体以外の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記共重合体の具体例としては、スチレン-エチレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-αメチルスチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル系共重合体等が挙げられる。
【0027】
(アクリル系樹脂)
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体は、基材樹脂100重量部に対して、アクリル系樹脂0.01~0.5重量部を含有することが好ましい。アクリル系樹脂は、セル弦長調整剤(造核剤)として機能する。アクリル系樹脂としては、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルの単独重合体、及び、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルの共重合体あるいはグラフト共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。例えば、アクリル系樹脂としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2エチルヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル:の単独重合、2種以上の共重合体あるいはグラフト共重合体のアクリル系樹脂である。アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルと共重合可能なスチレン単量体を加えてもかまわない。
【0028】
このようなアクリル系樹脂は、例えば、特許第2515014号に記載されているような乳化重合法により得ることができ、例えば、(株)カネカ社製のカネエースPA-20等を使用することができる。製品としてのアクリル系樹脂は、アクリル系樹脂(一次粒子)が分散しているラテックスを塩凝固、乾燥することによって、取り扱いやすい粒径の粉末(二次粒子)とされていることがある。すなわち、基本粒子の平均粒子径が0.2μm以下のアクリル系樹脂とは、一次粒子の平均粒子径ともいえる。ラテックス中の粒子径は、乳化重合時の乳化剤等の分散剤量によって調整することができる。ラテックス中における体積平均粒子径は、例えば、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)を用いることにより測定することができる。
【0029】
本発明のアクリル系樹脂は、平均粒子径0.2μm以下の基本粒子の集合粒子として、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中に分散していることを特徴とする。なお、「アクリル系樹脂は、平均粒子径0.2μm以下の基本粒子の集合粒子として発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中に分散して存在する」とは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中に存在するアクリル系樹脂が、主に(例えば、基本粒子の60%以上が)集合粒子として存在していることを意味するものであり、アクリル系樹脂の一部が基本粒子として存在することを否定するものではない。すなわち、「アクリル系樹脂が、平均粒子径0.2μm以下の基本粒子の集合粒子として発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中に分散して存在する」とは、言い換えると、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中に分散して存在するアクリル系樹脂には、平均粒子径0.2μm以下の基本粒子が集合した集合粒子が含まれる、と表現される。
【0030】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中に存在するアクリル系樹脂の基本粒子の平均粒子径は、ラテックス中のアクリル系樹脂の一次粒子の体積平均粒子径と同等となり、0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下であり、更に好ましくは0.07μm以下である。また、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中に存在するアクリル系樹脂の基本粒子の平均粒子径は、0.04μm以上であることが好ましい。平均粒子径が細かいほど表面積が広くなり、発泡剤を、基本粒子表面や粒子間の隙間に、安定的に局在化し、予備発泡粒子のセル弦長が、製造後から長期にわたって均一に安定すると推測される。一方で、0.04μm未満の粒子を乳化重合で製造するには、ラテックスの粘度上昇で、製造が困難な傾向にある。
【0031】
又、この基本粒子が集合し、集合粒子として発泡性ポリスチレン系樹脂本体中に均一分散している。集合粒子の平均粒子径は、1~5μmであることが好ましい。集合粒子の平均粒子径が1μm未満であれば、セル弦長が小さくなり、型内発泡成形時のサイクル時間が長く、生産性に劣る傾向にある。集合粒子の平均粒子径が5μmを超えると、セル弦長が大きくなり、予発発泡時のブロッキングが増加する傾向にある。
【0032】
一般的に造核剤として使用されるポリエチレンワックスを造核剤とした場合は、平均粒径1~4μmの粒子(基本粒子)が、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中に分散した状態で存在している一方で、アクリル系樹脂のように基本粒子が集合体を形成していない。この場合、予備発泡粒子のセル弦長は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の製造後から経過で徐々に肥大化し、予発発泡時のブロッキングが増加する。
【0033】
このように、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中に分散して存在する造核剤の平均粒子径が同程度であっても、驚くべきことに、本発明のアクリル系樹脂のように集合粒子の状態で存在する場合には、経時的なセル弦長の肥大化が生じず、これにより予備発泡時のブロッキングを抑制できる。
【0034】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中の造核剤としてのアクリル系樹脂及びポリエチレンワックスの分散状態は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の薄片を作製後、RuO蒸気により染色を行い、透過型電子顕微鏡(日立製:H-7650、加速電圧100kV)で、観察することができる。図1は6000倍で、図2は40000倍で、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中のアクリル系樹脂の分散状態を観察したものである。図3は、6000倍で、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中のポリエチレンワックスの分散状態を観察したものである。図1に示されるように、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂の中には、平均粒子径0.2μm以下の基本粒子が集合した、平均粒子径1~5μmの集合粒子として、アクリル系樹脂が分散している。一方で、図3に示されるように、ポリエチレンワックスを造核剤とした場合は、平均粒子径1~4μmの粒子(基本粒子)が、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中に分散した状態で存在しており、造核剤としてのアクリル系樹脂のように基本粒子が集合体を形成していない。
【0035】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中の造核剤の基本粒子や集合粒子の平均粒子径は、分散状態を観察した写真から、読み取ることができる。
【0036】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体におけるアクリル系樹脂の含有量は、基材樹脂100重量部に対し、0.01~0.5重量部であることが好ましい。0.1重量部以上であることがより好ましく、また、0.3重量部以下であることがより好ましい。この範囲であれば、予備発泡粒子のセル弦長は40~80μmで調整され、滑らかな表面凹凸をもち、予備発泡工程でのブロッキング量が抑制される。
【0037】
アクリル系樹脂の含有量が0.01重量部未満であれば、予備発泡粒子(以下、予発粒子と記載することがある)のセル弦長が不均一、粗大化し、予備発泡工程においてブロッキング量が増加する。一方、0.5重量部を越えても、セル弦長は40μmより細かくならない傾向があり、造核剤としての働きが少なくなる。造核剤は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の製造時に添加され、発泡性樹脂粒子本体中に造核剤が良分散していれば、その添加方法は限定されないが、発泡成形体のセル弦長を均一にするためには、スチレン単量体の仕込み以前に添加し、スチレン単量体と均一に混合溶解することがより好ましい。
【0038】
例えば、造核剤として、発泡性スチレン系樹脂粒子の一般的に使用されるポリエチレンワックス(粒径40μm)を用いると、重合終了1週間経過したセル弦長は40~80μmで、予発工程でのブロッキング量は少ないが、経日とともに増加し、重合終了1カ月後は100μmを超え、ブロッキング量が増加する。一方、アクリル系樹脂の場合、長期保管しても、セル弦長は40~80μmを維持し、ブロッキング量が少ないままで安定している。
【0039】
(発泡剤)
発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素;メチルクロライド、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素;等が挙げられる。その中でも、発泡力が良好である点から、ブタンがより好ましい。これら発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体における発泡剤の含有量は、最終製品である発泡成形体の所望する倍率で適時選定されるが、基材樹脂100重量部に対し、3.0重量部以上であることが好ましく、3.5重量部以上であることがより好ましく、また、5.0重量部以下であることが好ましく、4.5重量部以下であることがより好ましい。発泡剤の含有量が上記範囲であれば、予備発泡工程において加熱時間が長くなることを防ぎ、ブロッキングを抑制すると共に、発泡成形体の製造にかかる時間を短縮し、成形工程の成形サイクルを短くすることができる。
【0041】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の製造方法)
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の製造方法としては、懸濁重合法およびシード重合法等、公知の方法を用いることができ、特に限定されない。
【0042】
上記懸濁重合法は、例えば、以下(1)~(4)を含む方法である:(1)水、スチレン単量体を含む単量体、分散剤、重合開始剤、および任意でその他の添加剤(可塑剤、造核剤、難燃剤および難燃助剤等)を混合し、水性懸濁液を作製する;(2)次に、水性懸濁液を所定の温度まで昇温する;(3)次に、所定の温度にて所定の時間、水性懸濁液を反応させて重合反応を行うことにより、添加剤を含む基材樹脂(基材樹脂組成物とも称する)を得る;(4)上記(3)の途中、または上記(3)の後に、上記基材樹脂組成物に発泡剤を含浸させる。
【0043】
上記シード重合法は、例えば、以下(1)~(4)を含む方法である:(1)水、シードとなるポリスチレン系樹脂粒子(ポリスチレン系樹脂種粒子とも称する)、分散剤、重合開始剤、および任意でその他の添加剤(可塑剤、造核剤、難燃剤および難燃助剤等)を混合し、水性懸濁液を作製する;(2)次に、水性懸濁液を所定の温度まで昇温する;(3)次に、所定の温度にて、水性懸濁液に所定の時間を掛けてスチレン単量体を含む単量体を添加すると同時に、水性懸濁液を反応させて重合反応を行うことにより、添加剤を含む基材樹脂(基材樹脂組成物とも称する)を得る;(4)上記懸濁重合法と同じである。ポリスチレン系樹脂種粒子の構成単位も、基材樹脂の構成単位に包含される。
【0044】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の体積平均粒子径)
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の体積平均粒子径(測定:画像処理方式マイクロトラックJPA)は、発泡成形体の用途等に応じて適宜に設定することができるが、成形性の観点から、0.5mm以上であることが好ましく、0.8mm以上であることがより好ましく、1.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましい。
【0045】
〔1-2.発泡性ポリスチレン系樹脂粒子〕
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の表面に、特定量の融着促進剤が塗布されたものである。融着促進剤は、成形工程での予備発泡粒子同士の固着剤として作用する。また、本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の表面に、特定量のポリエチレンワックスが更に塗布されていることが好ましい。ポリエチレンワックスは、予備発泡工程でのブロッキング抑制剤として作用する。
【0046】
(ポリエチレンワックス)
ポリエチレンワックスは、エチレンの重合、ポリエチレンの分解等により得られるポリエチレンであり、予発工程でのブロッキング抑制剤として作用する。ポリエチレンワックスは、ポリエチレンワックス粒子、例えば、ポリエチレンワックスを粒状に微粉末化した粉体を好適に使用できる。
【0047】
ポリエチレンワックスの重量平均分子量は、600以上であることが好ましく、800以上であることがより好ましく、また、2500以下であることが好ましく、2200以下であることがより好ましい。ポリエチレンワックスの重量平均分子量が2500を超える場合は、ブロッキング抑制作用が高まるが、実用的強度がでなくなる傾向がある。また、ポリエチレンワックスの重量平均分子量が600未満である場合は、融着促進作用が高まり、発泡成形体が良好な融着性を示すが、ブロッキングが多くなる傾向がある。ワックスの重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)法にしたがって測定される数値である。
【0048】
ポリエチレンワックスの融点は、ブロッキング抑制作用および融着促進作用を向上させる観点から、90℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、また、130℃以下であることが好ましく、126℃以下であることがより好ましい。ワックスの融点は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定される数値である。
【0049】
ポリエチレンワックスは、単独で用いてもよく、異なる重量平均分子量および融点を有する2種以上のポリエチレンワックスを組み合わせて用いてもよい。
【0050】
ポリエチレンワックスの塗布量は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対して、0重量部以上で、0.01重量部以上であることがより好ましく、また、0.2重量部以下であることが好ましく、0.1重量部以下であることがより好ましい。ポリエチレンワックスの塗布量が0重量部でも、予発工程でのブロッキング量が増加することはないが、吹き込み加熱蒸圧が高い予備発泡機を用いた場合、ブロッキング量が増加する傾向である。ポリエチレンワックスの塗布量が0.2重量部を超えると、最終製品である発泡成形体の融着性が悪化し、発泡成形体の強度が低下する。
【0051】
(融着促進剤)
本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を構成する融着促進剤は、成形工程で、予備発泡粒子同士を固着させて、成形体を手で押し当てたときに、柔軟性を付与させる作用がある。
本発明の融着促進剤は、脂肪酸トリグリセライド、脂肪酸ジグリセライド、脂肪酸モノグリセライドのいずれか1種又は複数の混合物である。融着促進剤とは、例えば、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、リノール酸トリグリセライド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドなどの脂肪酸トリグリセライド;ラウリン酸ジグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、リノール酸ジグリセライドなどの脂肪酸ジグリセライド;ラウリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、リノール酸モノグリセライドなどの脂肪酸モノグリセライド;ヒマシ硬化油(ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド)などの植物油などが挙げられる。これら外添剤は単独で用いても良いし、2種以上を混合しても良い。中でも、ステアリン酸トリグリセライド及びヒマシ硬化油は発泡体の融着を促進し、実用強度を確保するために好ましい。
【0052】
本発明における融着促進剤の添加量(塗布量)は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体100重量部に対して0.01重量部以上0.2重量部以下が好ましく、0.03重量部以上0.1重量部以下がより好ましい。添加量が0.01重量部未満であると融着促進の効果が少なく、成形体の実用強度が得られず、0.2重量部超であると表面が外添剤により侵食され表面美麗性を損なう傾向がある。
【0053】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の表面に、特定量の融着促進剤を塗布する工程を有する。すなわち、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法としては、上述した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の製造方法(1)~(4)の工程に加えて、(5)発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の表面に、融着促進剤を塗布する工程を有する。
【0054】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、融着促進剤の他に、ポリエチレンワックスが特定量塗布されていてもよい。また、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、融着促進剤及びポリエチレンワックスの他に、帯電防止剤等の外添剤(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の表面に塗布(付着)する添付剤)が塗布されていてもよい。
【0055】
ポリエチレンワックス、融着促進剤、帯電防止剤等の外添剤を発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体に塗布する方法としては、塗布ムラを生じずに、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の表面に均一に塗布することができる方法であればよく、特に限定されない。
【0056】
これら外添剤は発泡剤含浸時に水系に添加してもよいし、脱水後に若しくは乾燥後に添加し被覆してもよく、被覆方法によらない。好ましい被覆方法は、乾燥後に添付し、混合撹拌することにより被覆する方法である。例えば、袋の中に発泡性ポリスチレン系樹脂粒子と外添剤を加え手で振ることでブレンドする方法や、リボンミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、パムアペックスミキサー等のブレンド機を使用する方法などが挙げられる。 融着促進剤の融点としては40℃以上が好ましい。融点が40℃未満であると常温で液状化するものがあり、成形時の融着性を損なう傾向がある。また、外添剤の融点の上限値は150℃以下であり、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。融点が上限値を越えると成形加工時に溶融せず、融着促進効果を損なう傾向がある。
【0057】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、添加物として残留する単量体成分、溶剤、可塑剤、発泡剤、難燃剤、難燃助剤等を、本発明の効果を阻害しない範囲で含有してもよい。
【0058】
(添加剤等)
本発明の一実施形態に係る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、本発明の効果を阻害しない範囲で、残留する単量体成分、または、添加剤、例えば、溶剤、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、撥水剤等を含有していてもよい。
【0059】
これらの添加剤の添加時期および添加方法は、それぞれの作用に応じて適宜に選択される。これらの添加剤は、その作用に応じて、例えば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の製造において、基材樹脂の重合時に添加されてもよく、ポリエチレンワックスおよび融着促進剤が塗布される前の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体に添加されてもよく、またはポリエチレンワックスおよび融着促進剤の塗布が終了した後の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に対して添加されてもよい。
【0060】
上記残留する単量体成分は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体100重量部に対して、0.3重量部未満であることが好ましく、0.1重量部未満であることがより好ましく、0.01重量部未満であれば更に好ましい。残留する単量体成分は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡し、成形して得られる発泡成形体から揮発する傾向がある。このため、残留する単量体成分が0.3重量部未満である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、医療分野、食品に直接接触する食品容器等の包装材料分野、自動車分野および建築分野に好適に使用することができる。
【0061】
上記溶剤および可塑剤の具体例としては、へキサン、ヘプタン等の炭素数6以上の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロオクタン等の炭素数6以上の脂環族炭化水素、ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、グリセリントリステアレート、グリセリントリカプリレート、ヤシ油、パーム油、菜種油;等が挙げられる。これら溶剤および可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶剤および可塑剤の含有量は、発泡性樹脂粒子本体100重量部に対して、0.01重量部以上、2重量部以下であることが好ましい。溶剤および可塑剤の量が当該範囲であることにより、発泡成形体の強度、耐熱性を損なわずに、溶剤および可塑剤としての効果を発揮することができる。
【0062】
上記難燃剤としては、公知の難燃剤を使用することができる。具体例としては、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモブタン、ヘキサブロモシクロヘキサン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系化合物;テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、2,4,6-トリブロモフェノール等の臭素化フェノール類;テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス[4’-(2”,3”-ジブロモアルコキシ)-3’,5’-ジブロモフェニル]-プロパン等の臭素化フェノール誘導体;臭素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、臭素化ランダムスチレン-ブタジエン共重合体、臭素化スチレン-ブタジエングラフト共重合体等の臭素化ブタジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体(例えば、Chemtura社製のEMERALD3000、若しくは、特表2009-516019号公報に記載されている共重合体);等が挙げられる。これら難燃剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
上記難燃助剤としては、公知の難燃助剤を使用することができる。具体例としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等が挙げられる。これら難燃助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
上記帯電防止剤の具体例としては、N-ヒドロキシエチル-N-2-ヒドロキシヘキサデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ドデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)ヘキサデシルアミン、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン、N-ヒドロキシエチル-N-2-ヒドロキシテトラデシルアミン、N-ヒドロキシエチル-N-2-ヒドロキシヘキサデシルアミン、N-ヒドロキシエチル-N-2-ヒドロキシオクタデシルアミン、N-ヒドロキシプロピル-N-2-ヒドロキシテトラデシルアミン、N-ヒドロキシブチル-N-2-ヒドロキシテトラデシルアミン、N-ヒドロキシペンチル-N-2-ヒドロキシテトラデシルアミン、N-ヒドロキシペンチル-N-2-ヒドロキシヘキサデシルアミン、N-ヒドロキシペンチル-N-2-ヒドロキシオクタデシルアミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)ドデシルアミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)テトラデシルアミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)ヘキサデシルアミン、N,N-ビス(2―ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン等の1アミノ2ヒドロキシ化合物等が挙げられる。
【0065】
なお、装置の汚染を低減する観点から、本発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、高級脂肪酸金属塩の塗布量が、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体100重量部に対して、0.1重量部未満であることが好ましく、塗布されていないことが更に好ましい。
【0066】
〔2.ポリスチレン系予備発泡粒子〕
本発明の一実施形態に係るポリスチレン系予備発泡粒子は、上述した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡(一次発泡)させることによって得られる。
【0067】
予備発泡させる方法としては、例えば、円筒形の予備発泡装置を使用し、水蒸気等の加熱媒体を用いて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱して発泡させる等の、通常の方法を採用することができる。
【0068】
予備発泡装置、および予備発泡工程の条件は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の組成、所望する予備発泡倍率等に応じて適宜に設定すればよく、特に限定されない。
【0069】
〔3.発泡成形〕
本発明の一実施形態に係る発泡成形体は、上述したポリスチレン系予備発泡粒子を加熱発泡(二次発泡)させて、成形することによって得られる。
【0070】
ポリスチレン系予備発泡粒子を加熱発泡させて、成形する方法としては、例えば、金型内にポリスチレン系予備発泡粒子を充填し、水蒸気等の加熱媒体を吹き込んで加熱する型内発泡成形法等の、通常の方法を採用することができる。
【0071】
具体的な型内発泡成形方法としては、閉鎖し得るが密閉し得ない金型内に、ポリスチレン系予備発泡粒子を充填し、加熱媒体によりポリスチレン系予備発泡粒子を加熱および融着することで型内発泡成形体とする方法が挙げられる。
【0072】
加熱発泡に使用する装置、および加熱発泡の条件は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の組成、所望する発泡倍率等に応じて適宜に設定すればよく、特に限定されない。
【0073】
上記発泡成形体、特に型内発泡成形体は、所望の形状の成形体を作製し易い等の利点から、例えば、食品容器等の包装材料(トレー)、魚函等の輸送用梱包材等として好適である。
【実施例
【0074】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0075】
実施例および比較例における、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子、および発泡成形体の、各種測定方法並びに評価方法は、以下の通りである。
<発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中の基本粒子、集合粒子の平均粒子径の測定方法>
アクリル系樹脂の基本粒子の平均粒子径の測定は、以下の手順にて測定する。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の中心付近が含まれるように薄片を作製し、作成した薄片をRuO蒸気により染色し、透過型電子顕微鏡(日立製:H-7650、加速電圧100kV)にて40000倍で観察した写真を準備する。40000倍の写真で観察されるアクリル系樹脂の集合粒子の断面図の中心部に直線を引き、一直線上の支点間(1μm)にかかる基本粒子数(n)を読み取り、以下の式に基づき算出した。尚、図に示す写真の中で、白く球形で観察される部位は、薄片を作成する際に、基本粒子が剥がれた部位である。
式:基本粒子の平均粒子径(μm)=1(μm)/粒子数(n)
アクリル系樹脂の集合粒子の平均粒子径の測定は、上述の平均粒子径の測定と同様にして得た6000倍で観察した透過型電子顕微鏡の写真から、3個の集合粒子を選び、集合粒子の長軸径と短軸径を読み取り、その平均値を算出した。
【0076】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中のポリエチレンワックスは、基本粒子で分散しており、集合粒子は観察されない。そこで、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中のポリエチレンワックスについては、上述のアクリル系樹脂の集合粒子の平均粒子径の測定と、同方法にて測定し、基本粒子の平均粒子径とした。
【0077】
<ポリスチレン系予備発泡粒子の製造方法>
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、撹拌機を備えた予備発泡機(大開工業(株)製、小型発泡機)に、投入した。加熱媒体として水蒸気(吹き込み蒸気圧0.1MPa)を用い、予備発泡機内の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱することによって予備発泡(一次発泡)させ、嵩倍率(見掛け倍率)が25倍のポリスチレン系予備発泡粒子を得た。
【0078】
<予備発泡時のブロッキング率の評価>
重合終了から1週間フレコンに保管した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、又は、1カ月間フレコンに保管した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いた。上記ポリスチレン系予備発泡粒子の製造方法により嵩倍率(見掛け倍率)が25倍のポリスチレン系予備発泡粒子を得た。次いで、予備発泡機からポリスチレン系予備発泡粒子を取り出すときに、当該予備発泡粒子を目開きが1cmの網に通過させ、網を通過しなかったポリスチレン系予備発泡粒子を回収した。網を通過しなかったポリスチレン系予備発泡粒子の重量を計量してブロッキング量とした。下記算出式に基づいてブロッキング率を算出した。
【0079】
ブロッキング率[重量%]=ブロッキング量[g]/ポリスチレン系予備発泡粒子の全量[g]×100
ブロッキング率が1.0重量%以下であるポリスチレン系予備発泡粒子を合格と評価した。
【0080】
<予備発泡粒子(予発粒子)のセル弦長測定>
重合終了から1週間フレコンに保管した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、又は、重合終了から1カ月間フレコンに保管した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて、上記ポリスチレン系予備発泡粒子の製造方法で25倍の予発粒子を作製した。
作製した25倍の予発粒子のセル弦長は、ASTM-D-2842-97に準じて、中心を通るように予発粒子を切断し、該予発粒子の切断面を投影した写真を準備し、該予発粒子の断面図の中心部に直線を引き、一直線上の支点間(1000μm)にかかる気泡数(n)を読み取り、以下の式に基づき算出した。
式:セル弦長(μm)=1000(μm)/気泡数(n)
【0081】
<予発粒子の表面性評価>
重合終了から1週間フレコンに保管した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、又は、重合終了から1カ月間フレコンに保管した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて、上記ポリスチレン系予備発泡粒子の製造方法で25倍の予発粒子を作製した。
作製した25倍の予発粒子の表面の凹凸状態(平滑性)を、マイクロスコープで観察して、下記3段階で評価した。数値の大きい方が、凹凸が滑らかである。「3」以上を合格と判定した。
3:表面の凹凸が滑らかである。
2:表面の凹凸があきらかに観察できる
1:表面の凹凸が激しい。
【0082】
<発泡成形体の製造方法(型内発泡成形)>
重合終了から1カ月間フレコンに保管した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、上記ポリスチレン系予備発泡粒子の製造方法で25倍に予備発泡し、得られたポリスチレン系予備発泡粒子を室温で24時間放置して養生乾燥したものを、発泡成形体の製造に用いた。
成形機((株)ダイセン製、KR-57)を使用して、縦450mm×横300mm×厚み10mmの大きさの金型内に、ポリスチレン系予備発泡粒子を充填した。次いで、金型内を減圧(-0.05Mpa)後、加熱媒体として水蒸気(吹き込み蒸気圧0.05MPa)を用い、金型内のポリスチレン系予備発泡粒子を8秒間加熱し、真空放冷10秒後、金型から成形体を取り出して、発泡成形体を得た。吹き込み蒸気圧を高めると、下記の評価項目の融着率、曲げ特性値が良くなり、各実験水準の差を検知し難くなるので、吹き込み蒸気圧を0.05MPaとした。
【0083】
<発泡成形体の融着率>
上記発泡成形体の製造方法にて得られた発泡成形体を破断してその破断面を観察し、発泡粒子界面ではなく発泡粒子が破断している割合(融着率)を求めた。融着率が30%以上である場合、実用的な使用で問題なく、合格と評価した。
【0084】
<発泡成形体の曲げ特性>
上記発泡成形体の製造方法にて得られた発泡成形体を、室温にて一昼夜静置保管し、縦300mm×横75mm×厚み10mmに切削した。JIS-7171に準じ、強度試験機(TG-50kN、ミネベア(株)製)を用いて、支点間距離200mm、試験速度20mm/minで、最大曲げ強度、破断時の変位を測定した。
最大曲げ強度が、破断時の変位の範囲の場合、成形体は柔軟性があり、実用に耐える合格レベルであるが、それ以下の場合、成形体は、小さい変位で弱い応力で割れ、実用で使用できない。
最大曲げ強度が0.4kPa以上、破断時の変位(曲げ破断変位)が30%以上である成形体を合格と評価した。
【0085】
<使用造核剤>
アクリル系樹脂:カネエースPA-20(一次粒子の平均粒子径0.07μm(株)カネカ製))
一次粒子の平均粒子径の測定;1L丸底フラスコ中に、ラテックス1ccを入れ、純水で均一希釈した後、石英ガラス容器に入れ、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)を用いて、希釈溶液の光透過率から、粒径換算した。
ポリエチレン:ポリワックス1000-80M 分子量1000、融点113℃、粒径40μm(東洋アドレ(株)製)
<使用ポリエチレンワックス>
PW-655: 分子量655、融点99℃(東洋アドレ(株)製)
ポリワックス850-80M: 分子量850、融点107℃(東洋アドレ(株)製)
ポリワックス1000-80M: 分子量1000、融点113℃、(東洋アドレ(株)製)
<使用融着促進剤>
ひまし硬化油、融点84度(カスターワックス、日本油脂(株)、ヒドロキシステアリン酸トリグリセラリド)
〔実施例1〕
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の製造)
撹拌機付属の1500Lの耐圧容器に、純水100重量部、リン酸三カルシウム0.2重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.01重量部、および、開始剤として過酸化ベンゾイル(日油(株)製)0.25重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(日油(株)製)0.29重量部、および、造核剤としてアクリル系樹脂(PA-20、カネカ(株)製)0.2重量部を投入した。次いで、60回転/分で撹拌しながら、スチレン単量体100重量部を投入後、98℃まで昇温し、4時間重合反応を行った。この重合反応の重合転化率は92%であった。次いで、発泡剤としてペンタン(ノルマル/イソ=80/20、エスケイ産業(株)製)4重量部を耐圧容器中に圧入し、120℃まで昇温させた。次いで、120℃にて3時間保持した後、室温まで冷却して、耐圧容器から重合スラリーを取り出した。取り出した重合スラリーを洗浄、脱水し、気流乾燥器を使用して乾燥させて、体積平均粒子径0.9mmの発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体を得た。
【0086】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造)
上記で得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体100重量部をスーパーミキサー((株)カワタ製、SMV-20)に投入し、ポリエチレンワックス(ポリワックス850-80M(東洋アドレ(株)製)0.05重量部、融着促進剤(ヒマシ硬化油、カスターワックス、日油社製)0.05重量部を60秒間かけて投入し、さらに120秒間撹拌することにより、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0087】
ポリスチレン系予備発泡粒子及び発泡成形体については、上述のポリスチレン系予備発泡粒子の製造方法及び発泡成形体の製造方法に準じて製造した。
上記で得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子、発泡成形体について、評価試験を行った。又、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中のアクリル系樹脂の基本粒子の平均粒子径は0.07μm、集合粒子の平均粒子径は2.5μmであった。評価結果を以下の表1に示す。
【0088】
〔実施例2~7、比較例1~3〕
実施例1で製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体を用い、融着促進剤とポリエチレンワックスの種類や量を変更した以外は、実施例1の方法と同様の方法を用いて、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子および発泡成形体を得た。
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子、発泡成形体について、評価試験を行った。評価結果を以下の表1および表2に示す。
【0089】
〔実施例8、9〕
造核剤PA-20の添加部数を変更した以外は、実施例1と同様の方法で発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体を作製した。上記で得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体を用い、実施例1の方法と同様の方法を用いて、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子および発泡成形体を得た。
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子、発泡成形体について、評価試験を行った。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体中のアクリル系樹脂の基本粒子の平均粒子径は0.07μm、集合粒子の平均粒子径は2.5μmであった。評価結果を以下の表2に示す
〔比較例4、5〕
造核剤PA-20を使用せず、造核剤ポリエチレンワックス(ポリワックス1000-80M(粒径40μm、東洋アドレ(株)製)の添加部数を変更した以外は、実施例1と同様の方法で、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体を作製した。上記で得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体を用い、実施例1の方法と同様の方法を用いて、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子および発泡成形体を得た。
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子、発泡成形体について、評価試験を行った。又、樹脂粒子本体中のポリエチレンワックスの基本粒子の平均粒子径は2μmであり、基本粒子が集まった集合粒子は観察されない。評価結果を以下の表2に示す。
【0090】
〔比較例6〕
造核剤を使用せず、実施例1と同様の方法で、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体を作製した。上記で得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体を用い、実施例1の方法と同様の方法を用いて、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子および発泡成形体を得た。
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子、発泡成形体について、評価試験を行った。評価結果を以下の表2に示す。
【0091】
表1および表2に示されるとおり、実施例1~10の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、重合から1カ月経過した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡粒子であっても、該予備発泡粒子のセル弦長に変化がなく、かつ、予発粒子の表面凹凸は滑らかであり、予備発泡工程におけるブロッキング率に優れるものであった。また、当該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から得られる発泡成形体は、実用に耐えうる良好な曲げ特性(柔軟性)を有するものであった。
【0092】
これに対し、造核剤としてポリエチレンワックスを用いた比較例5~6は、重合から1カ月経過した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡すると、予備発泡粒子のセル弦長は肥大化し、表面凹凸は激しくなり、予備発泡工程におけるブロッキング率が増加する。
【0093】
又、外添剤として融着促進剤を添加しない比較例1、2は、成形工程での予発粒子同士の固着がなく、融着率が低く、曲げ特性は、低い変位、応力で割れてしまい、実用に耐えられない。ポリエチレンワックスが過剰である比較例3は、融着率は低くなり、曲げ特性は低い。ポリエチレンワックス、融着促進剤の両方の量が過剰である比較例4は、予備発泡工程におけるブロッキング率が高くなり、実施例に比べて劣るものであった。
【0094】
これらの結果から、アクリル系樹脂を含有する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体の表面に、適切な量の融着促進剤を塗布し、好ましくはポリエチレンワックスを更に塗布することにより、重合終了から期間が経過した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であっても、安定したセル弦長を維持し、予発発泡時のブロッキングを抑制し、適度な融着性、曲げ特性を有する発泡成形体を得られることが分かる。又、樹脂粒子本体の表面に、高級脂肪酸金属塩を使用しないため、装置の汚染が抑制される。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
図1
図2
図3