(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】樹脂管用継手付きバルブと樹脂管用継手
(51)【国際特許分類】
F16L 33/22 20060101AFI20240815BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F16L33/22
F16K27/00 C
(21)【出願番号】P 2020125114
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2019137754
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】飯島 陽一
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-066328(JP,A)
【文献】特開2014-088933(JP,A)
【文献】特開2001-153285(JP,A)
【文献】実開昭52-116713(JP,U)
【文献】米国特許第06345431(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/22
F16K 27/00
F16L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ本体に設けた継手部に樹脂管を挿入した状態でこの樹脂管の外周にリングを圧入して前記継手部に前記樹脂管を固定する樹脂管用継手付きバルブにおいて、前記バルブ本体の係合面と前記継手部の軸方向外周との境界部分に凹凸の凸部を配置し、この凸部と凹部を
前記継手部の前記バルブ本体側となる奥側から交互に複数配置すると共に、前記リングの挿入端の内面にテーパ面を形成し、
該テーパ面の境界の位置は前記継手部の前記凹凸の最も奥側の凹部に対向する位置または当該凹部よりも奥側の位置であり、
前記樹脂管の外周に前記リングを圧入した状態で、このリングの内周による前記樹脂管の圧縮体積が、前記凹部の体積と、前記テーパ面と前記係合面とで形成される前記樹脂管が充填される充填スペースの体積との総和に対して同じかそれよりも小さい割合となるようにしたことを特徴とする樹脂管用継手付きバルブ。
【請求項2】
前記係合面は、前記リングの圧入前に前記樹脂管を挿入した状態で前記樹脂管の先端が突き当たる面である請求項1に記載の樹脂管用継手付きバルブ。
【請求項3】
前記バルブ本体の係合面の境界部分に配置した前記凸部は、その一つ外側の凸部と同じかそれよりやや低い高さとした請求項1に記載の樹脂管用継手付きバルブ。
【請求項4】
前記バルブ本体の係合面の境界部分に配置した前記凸部とその一つ外側の凸部との間の凹部の幅を、その一つ外側の凹部の幅と略同一とした請求項1乃至3の何れか1項に記載の樹脂管用継手付きバルブ。
【請求項5】
請求項1における前記割合は、0.8~1.0である樹脂管用継手付きバルブ。
【請求項6】
請求項1において、バルブ本体に設けた前記継手部は、バルブ本体に一体に設けるか、又はバルブ本体に別体の継手部を接続して構成した樹脂管用継手付きバルブ。
【請求項7】
外周に凹凸を有する継手本体に樹脂管を挿入した状態でこの樹脂管の外周にリングを圧入して樹脂管を固定する樹脂管用継手において、前記継手本体の奥部位置の係合面と前記継手本体の軸方向外周との境界部分に前記凹凸の凸部を配置し、この凸部と凹部とを
前記継手本体の前記奥部位置側となる奥側から交互に複数配置すると共に、前記リングの挿入端の内面にテーパ面を形成し、
該テーパ面の境界の位置は前記継手本体の前記凹凸の最も奥側の凹部に対向する位置または当該凹部よりも奥側の位置であり、前記樹脂管の外周に前記リングを圧入した状態で、このリングの内周による前記樹脂管の圧縮体積が、前記凹部の体積と、前記テーパ面と前記係合面とで形成される前記樹脂管が充填される充填スペースの体積との総和に対して同じかそれよりも小さい割合となるようにしたことを特徴とする樹脂管用継手。
【請求項8】
請求項7における前記割合は、0.8~1.0である樹脂管用継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂管用継手付きバルブと樹脂管用継手に関し、特に、優れたシール性能と耐引抜性能を両立させた樹脂管用継手付きバルブと樹脂管用継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるタケノコ溝が外周に環状に配置された樹脂管用継手は、金属で形成されており、ポリエチレンなど所定の樹脂から成る管体を、金属製のバルブ本体など所定の結合対象に結合(固着)させるために用いられている。
【0003】
このような継手の構造としては、例えば、金属製のバルブ本体の一部として一体形成された構造や、管体の結合対象に螺着させるソケット構造など、種々の構造を採り得るが、何れも、樹脂管の先端面を当該継手外周に拡径させながら外嵌挿入した後、樹脂管に備えられたリング状の締付部材を当該継手に向けて樹脂管外周を締め付けながら圧入していくことにより、樹脂管を当該継手にシール性と耐引抜性を備えた状態で結合させることができるように構成されている。このような樹脂管、継手、及び締付部材から成る構成により、樹脂管を、例えば金属製部材に対して確実に結合させることができる。このような樹脂管用継手としては、例えば特許文献1、2が提案されている。
【0004】
特許文献1の継手構造では、接続片の挿し込み領域に周方向に形成された複数のリブのうち、フランジに一番近いリブが、その他のリブに対して高さHだけ高く形成され、この高さHのリブの他のリブに向けて面した外端面が、挿し込まれたホースの端面と係合するストッパとして形成されている。また、移動スリーブを締め付け結合させた際には、少なくともフランジの内端面と、この内端面に当接した移動スリーブの自由端とにより、移動スリーブの押しはめ時に押し出されたホース材料のための受容室が形成される。
【0005】
特許文献2の継手構造では、金属から成り、かつ筒状の樹脂管接続部を有する本体と、樹脂管接続部の外周面から突出して形成され、樹脂管接続部の軸方向に並ぶ複数の環状突起と、樹脂管接続部よりも軸方向の奥側で本体の外周面から突出して形成されるストッパとを有しており、隣接する環状突起同士の間、ならびにストッパとそれに隣接する環状突起との間に形成され、少なくとも、第1深さを有する第1谷とそれより深い第2深さを有する第2谷とを含む複数の谷を有している。また、樹脂管接続部に拡径しながら嵌められストッパに当接している合成樹脂管の外周面にリング部材を嵌めた際、このリング部材の内周面の軸方向の奥側の端部には、ストッパとの間に空間を形成する樹脂逃げ部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公平5-79877号公報
【文献】特開2014-66328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の構造では、ホースを差し込み領域に挿し込んだ際には、移動スリーブを締め付け結合させた、移動スリーブの自由端面はフランジの内端面に係合する一方、ホースの先端面は、この内端面まで届かず、ストッパである最奥側の高さHのリブの外端面に突き当たる。よって、最奥側の高さHのリブと移動スリーブとの間の領域(最奥部領域)は、圧縮変形されたホース材料が逃げ込む容積として予め空隙が確保された構造となっている。
【0008】
この空隙の存在により、最奥部領域に十分にホース材料を充填させようとする場合、圧縮変形により最奥部領域内に逃げ込むホース材料が、フランジの内端面に確実に密着していくように移動スリーブを締め付けねばならない。よって、最奥部リブの高さHが小さい場合は、ホース材料が逃げ込む空隙容積が大きくなり易いために、変形していくホース材料をうまく密着させていくことが難しく、充填が不十分となり易い。実際、移動スリーブを完全に押し嵌めた状態を示した同文献
図2bは、このようにフランジ内端面に密着していない不十分な充填状態となっている。
【0009】
しかも同文献のホースは、比較的小径かつ軟質な素材が挙げられているが、より大径で硬質素材の場合は、樹脂が変形し難いため、最奥部領域に樹脂を充填することがさらに困難となる。このように、最奥部領域へのホース材料の充填が不十分な場合、特に、フランジ内端面にホース材料が確実に密着していない場合には、継手(接続片)に対する樹脂管(ホース)の固着力も不十分となり易く、よって、耐引抜性が確保できなくなるおそれがあると共に、樹脂管と継手との密着性も弱まり、シール性も不十分となり易い。
【0010】
逆に、最奥部リブの高さHが大きい場合は、当該空隙容積が不足し易くなり、圧縮変形により逃げ込むホース材料が、移動スリーブの圧入が完了する前に、受容室の許容を超えて、移動スリーブとフランジ内端面との間からはみ出しやすくなる。移動スリーブの自由端とフランジ内端面との間からホース材料がはみ出すと、このはみ出したホース材料によって当該自由端と内端面との密着性が損なわれ、移動スリーブを正常な位置・姿勢で継手に装着することができなくなる。不完全な装着状態の場合、移動スリーブによるホース材料の締め付け力が弱まり、かつ力の偏りも生じ、よって、継手に結合された樹脂管のシール性や結合性が阻害される。よって、継手のシール性が確保できなくなるおそれがあると共に、樹脂管の耐引抜性も不十分となる。
【0011】
同文献の継手構造においては、最奥部領域にホース材料を十分に充填し、かつ、移動スリーブの自由端とフランジ内端面との間からホース材料がはみ出さないようにするためには、逃げ込むホース材料の体積が最奥部領域の容積と正確に一致するように、極めて小さい許容幅の範囲内に高さH等の形状や寸法を予め高精度に調整しておく必要があるが、そのためには、全ての構造の寸法形状や、樹脂管の特性等まで、多数の要素の複雑な設定が不可避であるから、このような調整は極めて困難である。
【0012】
特許文献2の継手構造は、樹脂管接続部の最奥部には、拡径しながら嵌められる樹脂管が届いて当接できるストッパが面しているが、このストッパと樹脂管接続部との境界には環状突起が設けられておらず、凹状の谷となっている。このため、この最奥側の谷とリング部材との間の領域(最奥部領域)は、圧縮変形された樹脂管が逃げ込む容積として大きな体積となる。
【0013】
このように最奥部領域の体積が大きいと、リング部材を圧着させた際、最奥部領域への樹脂管の充填が不十分なものとなり易い。すなわち、同文献2に示されているように、樹脂管をストッパに突き当てた時点で、最奥部領域の谷と樹脂管内周面との間には必ず環状突起の高さを有する大きな容積の空隙が介在することになるから、この空隙にも十分に樹脂管を充填させようとした場合、リング部材による圧着を極めて強固に行って樹脂管を強く圧縮させつつストッパに突き当てなければならない。この場合、リング部材の圧着が必要以上に困難又は不可能となる上に、圧入の過程で樹脂管やリング部材などの部材の破損、さらにはリング部材の装着不良や継手の結合不良など、様々な不具合の原因となる。
【0014】
特に、樹脂管が大径で硬質な素材から成る場合、樹脂管がストッパに突き当たる先端面付近においては、強く拡径しようとする力が働くので、この状態の樹脂管に向けてリング部材を圧入させていくには極めて強い力が必要となると共に、硬質素材のため、最奥部の谷内に向けて縮径方向に樹脂管素材を圧縮変形させ難い状態となっているので、さらに最奥部領域に樹脂を充填させることが困難となる。
【0015】
したがって、従来技術に係る継手構造では、特に最奥部領域に樹脂管を十分に充填させることにより、樹脂管の確実な耐引抜性を得ることは困難である。
【0016】
そこで、本発明は上記問題点を解決するために開発されたものであり、その目的とするところは、継手部に樹脂管を挿入後リングを圧入した際に、このリングと継手部との間の領域、特に継手部の最奥部領域に樹脂が確実に充填されると共に、樹脂のはみ出しも確実に防止することで、従来よりも耐引抜性を著しく向上させた樹脂管用継手付きバルブと樹脂管用継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、バルブ本体に設けた継手部に樹脂管を挿入した状態でこの樹脂管の外周にリングを圧入して継手部に樹脂管を固定する樹脂管用継手付きバルブにおいて、バルブ本体の係合面と継手部の軸方向外周との境界部分に凹凸の凸部を配置し、この凸部と凹部を継手部のバルブ本体側となる奥側から交互に複数配置すると共に、リングの挿入端の内面にテーパ面を形成し、該テーパ面の境界の位置は前記継手部の凹凸の最も奥側の凹部に対応する位置または当該凹部よりも奥側の位置であり、樹脂管の外周にリングを圧入した状態で、このリングの内周による樹脂管の圧縮体積が、凹部の体積と、テーパ面と係合面とで形成される樹脂管が充填される充填スペースの体積との総和に対して同じかそれよりも小さい割合となるようにした樹脂管用継手付きバルブである。
【0018】
請求項2に係る発明は、係合面は、リングの圧入前に樹脂管を挿入した状態で樹脂管の先端が突き当たる面である樹脂管用継手付きバルブである。
【0019】
請求項3に係る発明は、バルブ本体の係合面の境界部分に配置した凸部は、その一つ外側の凸部と同じかそれよりやや低い高さとした樹脂管用継手付きバルブである。
【0020】
請求項4に係る発明は、バルブ本体の係合面の境界部分に配置した凸部とその一つ外側の凸部との間の凹部の幅を、その一つ外側の凹部の幅と略同一とした樹脂管用継手付きバルブである。
【0021】
請求項5に係る発明は、割合は0.8~1.0である樹脂管用継手付きバルブである。
【0022】
請求項6に係る発明は、バルブ本体に設けた継手部は、バルブ本体に一体に設けるか、又はバルブ本体に別体の継手部を接続して構成した樹脂管用継手付きバルブである。
【0023】
請求項7に係る発明は、外周に凹凸を有する継手本体に樹脂管を挿入した状態でこの樹脂管の外周にリングを圧入して樹脂管を固定する樹脂管用継手において、継手本体の奥部位置の係合面と継手本体の軸方向外周との境界部分に凹凸の凸部を配置し、この凸部と凹部とを継手本体の奥部位置側となる奥側から交互に複数配置すると共に、リングの挿入端の内面にテーパ面を形成し、該テーパ面の境界の位置は継手本体の凹凸の最も奥側の凹部に対応する位置または当該凹部よりも奥側の位置であり、樹脂管の外周にリングを圧入した状態で、このリングの内周による樹脂管の圧縮体積が、凹部の体積と、テーパ面と前記係合面とで形成される樹脂管が充填される充填スペースの体積との総和に対して同じかそれよりも小さい割合となるようにした樹脂管用継手である。
【0024】
請求項8に係る発明は、割合は0.8~1.0である樹脂管用継手である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載の発明によると、バルブ本体の係合面と継手部との境界部分に凹凸の凸部を配置したから、この境界部分の凸部と圧入されたリングの内周挿入端側との間の領域(最奥部領域)の容積は、余計に大きくなり過ぎることなく樹脂管の厚み(容積)に応じた適切な容積として確保できる。よって、リングを圧入させる際、当該凸部が存在することにより最奥部領域には余計なスペースが生じないため、この圧縮変形によって、樹脂管素材を最奥部領域内に十分に充填させることができる。また、耐引抜性は、継手部外周に設けた凹凸の凹部に樹脂管素材が十分に充填されることで高い効果が発揮される。本発明では、リングを圧入させる際、凸部により最奥部領域に余分なスペースがないので、通常は充填されにくい最も奥側(最奥部)に凹部にまで樹脂管素材を十分に充填することができ、その結果、高い耐引抜性が得られる。
【0026】
さらに、樹脂管の外周にリングを圧入した状態で、このリングの内周による樹脂管の圧縮体積が、凹部の体積と、テーパ面と係合面とで形成される樹脂管が充填される充填スペースの体積との総和に対して同じかそれよりも小さい割合となるようにしたから、リングを圧入した際、樹脂管内周と継手部外周との間に存在する樹脂管素材が圧縮変形により逃げ込むことができるスペースの容積は、樹脂管の圧縮変形体積よりも同じかそれよりも小さい。樹脂管用継手においては、通常の使用条件下においては樹脂管素材の膨張が生じにくいので、継手部外周とリング内周との間の領域から圧縮変形された樹脂管素材のはみ出しが生じえないことが、容積構造の面から確実に担保されている。
【0027】
したがって、最奥部領域や最奥部の凹部内にまで十分に樹脂管素材を充填させることができるので、樹脂管素材による確実なアンカー効果を得ることができ、樹脂管の耐引抜性を著しく向上させることができる。あわせて、樹脂管素材のはみ出しが生じることもないから、リングを圧入させるだけで、締め付けの偏りや結合不良を生じることなく樹脂管を確実に継手に結合させることができ、高いシール性も発揮し得る。
【0028】
請求項2に記載の発明によると、リングを圧入させる際、樹脂管の先端面を係合面に確実に密着させた状態を保ちながら樹脂管を圧縮変形させることができる。よって、当該最奥部領域に対する樹脂の充填がより確実となり、耐引抜性がさらに向上する。
【0029】
請求項3に記載の発明によると、バルブ本体の係合面の境界部分に配置した凸部は、その一つ外側の凸部と同じかそれよりやや低い高さとしたから、継手部に挿入した樹脂管の先端面は、この凸部に阻害されることなく確実に係合面に係合させることができると共に、最奥部領域のスペースも最小限となり、リングを圧入した際、境界部分付近で樹脂管が過度に拡径方向に圧縮変形することを防ぎ、最奥部領域や最奥部の凹部内にまで十分に樹脂管素材を確実に充填させることができる。
【0030】
請求項4に記載の発明によると、バルブ本体の係合面の境界部分に配置した凸部とその一つ外側の凸部との間の凹部の幅を、その一つ外側の凹部の幅と略同一としたから、最奥部の凹部に対する樹脂管の充填に偏りが生じることを防ぎ、凹部内への均一な樹脂管素材の充填効果を高めることができる。
【0031】
請求項5に記載の発明によると、樹脂管の圧縮体積が、凹部の体積と、テーパ面と係合面とで形成される樹脂管が充填される充填スペースの体積との総和に対して、1.0以下の割合であるから、リングの圧入の際、容積構造的に樹脂管素材のはみ出しが防止できる。また、当該割合を、0.8以上としているから、樹脂管素材が逃げ込む容積全体に無駄が生じることをなるべく抑えつつも、圧縮変形の偏りによる部分的な樹脂管素材の逃げ込みの集中等にも対応できる程度に容積に許容を持たせることができる。
【0032】
請求項6に記載の発明によると、継手部をバルブ本体に一体に設けた場合には、継手部がバルブ本体と切れ目がなく一体となっているから、バルブ本体と継手部のシール性能を考慮すれば、バルブ全体としての使用の安定性と統一感を図ることができる。
また、バルブ本体に別体の継手部を接続して構成した場合には、樹脂管を接続する継手部をバルブ本体とは別体に設けたので、樹脂管用継手として使用できるとともに、コストの低減化を図ることができる。
【0033】
請求項7に記載の発明によると、リングを圧入させる際に、樹脂管の先端面を係合面に確実に密着させた状態を保ちながら樹脂管を圧縮変形させることができると共に、当該凸部が存在することにより最奥部領域には余計なスペースが生じないため、この圧縮変形によって、樹脂管素材を最奥部領域内や最奥部の凹部内にまで十分に充填させることができる。また、継手部外周とリング内周との間の領域から圧縮変形された樹脂管素材のはみ出しが生じえないことが、容積構造の面から確実に担保されているから、最奥部領域に十分に樹脂管素材を充填させることができるので、特に継手部の最奥部において樹脂管素材による確実なアンカー効果を得ることができ、よって、樹脂管の耐引抜性を著しく向上させることができる。あわせて、樹脂管素材のはみ出しが生じることがないから、リングを圧入させるだけで、締め付けの偏りや結合不良を生じることなく樹脂管を確実に継手に結合させることができ、高いシール性も得ることができる。
【0034】
請求項8に記載の発明によると、樹脂管の圧縮体積が、凹部の体積と、テーパ面と係合面とで形成される樹脂管が充填される充填スペースの体積との総和に対して、1.0以下の割合であるから、リングの圧入の際、容積構造的に樹脂管素材のはみ出しが防止できる。また、当該割合を、0.8以上としているから、樹脂管素材が逃げ込む容積全体に無駄が生じることをなるべく抑えつつも、圧縮変形の偏りによる部分的な樹脂管素材の逃げ込みの集中にも対応できる程度に容積に許容を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本例の樹脂管用継手付きバルブの斜視図である。
【
図2】本例の樹脂管用継手付きバルブの縦断面図である。
【
図3】本例の樹脂管用継手に樹脂管の挿入とリングの圧入が完了した状態における、樹脂管の固着状態を模式的に示した部分拡大断面図である。
【
図4】本例の樹脂管用継手に樹脂管を挿入する作用を示した断面図であり、(イ)は樹脂管を挿入する前の状態、(ロ)は樹脂管を挿入する途中の状態、(ハ)は樹脂管の挿入が完了した状態を、それぞれ示している。
【
図5】本例の樹脂管用継手に樹脂管の挿入が完了した状態で、リングを圧入する作用を示した断面図であり、(イ)はリングを圧入する前の状態、(ロ)はリングを圧入する途中の状態、(ハ)はリングの圧入が完了した状態を、それぞれ示している。
【
図6】他例の樹脂管用継手に樹脂管の挿入とリングの圧入が完了した状態を示した断面図である。
【
図7】他例の樹脂管用継手付きバルブの一部切欠き縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態(本例)を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本例の樹脂管用継手付きバルブの全閉状態の外観を示した斜視図である。同図に示すように、本例は、丸ハンドル10を手動で回動させて弁体を開閉するゲートバルブである。
【0037】
なお、本発明は、ゲートバルブに限らずボールバルブ、グローブバルブ、チャッキバルブ、バタフライバルブ、ダイヤフラムバルブなど各種の手動・自動バルブに用いることができ、更に、バルブに限らず、例えばオネジ・メネジのソケットやカプラなど、樹脂製の管体を対象物に結合するための種々の継手構造に対し、実施に応じて適宜用いることができる。例えば、
図1~5に示した本例の継手構造には、ゲートバルブのバルブ本体1に一体形成した継手部2に適用しているが、後述する
図6に示した他例には、オネジ部32によって例えば金属製の結合対象物へ樹脂管4を結合(変換)できるソケット構造を適用している。
【0038】
図2は、
図1の樹脂管用継手付きバルブの全閉状態を示した縦断面図であり、樹脂管4を固定していない状態のバルブ本体1を示している。本例のバルブ本体1は、ボデー部3と継手部2から成り、ボデー部3内には、流路5の軸心方向の交差方向に昇降動可能にジスク6(弁体)が収容され、ボデー部3の上部には、軸装部を有するボンネット7が接続されている。
【0039】
図2において、ボンネット7内には、その軸心と同心状にステム8が収容され、ボンネット7の内周面の一部には、メネジ7aが設けられ、このメネジ7aには、ステム8のオネジ8aが螺合している。ステム8の下端部には、ジスク6と係合する鍔状の係合部が設けられ、ステム8の上端部には、六角ナット9の締め付けにより丸ハンドル10が同心状かつステム8と供回り可能に固着している。ボンネット7の軸装部の上端部には、グランド11を介してパッキン12を締め付けるパッキンナット13が螺着しており、このパッキンナット13の締め付けにより軸装部の内外がシールされる。
【0040】
図2において、本例の樹脂管用継手付きバルブは、丸ハンドル10を手動で回動させることにより、パッキン12により軸装部のシールが維持されたまま、オネジ8aとメネジ7aとの間の螺進に応じて、ステム8がバルブストロークの範囲内で昇降動する。この昇降動に応じて、ステム8下端部の係合部で係合しているジスク6もボデー部3内で昇降動し、このジスク6の昇降動により流路5が閉塞又は開放され、バルブの開閉が行われる。
【0041】
また、同図において、継手部2は、ボデー部3の両側面から直線状に突出する流路5に沿って、金属製(例えば銅製)のボデー部3と一体的に形成されている。
図1に示すように、この継手部2に樹脂管4をリング14によって固定することで、バルブ本体1に流体制御を適用することができる。本例の継手部2は、ボデー部3と一体形成しているが、後述する
図7のように、継手部2をボデー部102と別体に形成して、ボデー部102に着脱自在な構造としてもよく、少なくとも継手構造としての機能を備えていれば、本発明の樹脂管用継手の構造は実施に応じて任意に選択できる。なお、本発明の継手部を備えた構造を樹脂管用継手と称する。
【0042】
以下、
図3を参照して、継手部2の構造の詳細を説明する。
図3は、本例の継手部2の部分拡大断面図である。また、継手部2のボデー部3側を奥側と称し、その反対側(先端側)を外側と称する。なお、同図は継手部2に挿入された樹脂管4に対しリング14が圧入されているが、この作用は
図4、5を用いて後述する。具体的には、
図3は、リング14の圧入が完了して樹脂管4を固定した状態を示した
図5(ハ)の部分拡大図である。
【0043】
図3において、継手部2は、ボデー部3の側面から略垂直方向に向けて、ボデー部3と一体的に略筒状に突出形成されており、継手部2内の略円柱状の空間は流路5となっている。継手部2の外側には、外側に向けてテーパ状に縮径する傾斜面15が形成され、この傾斜角度は、継手部2軸心方向(
図3横方向)に対し、模式的には同図にθ
3で示した角度(例えば約30度)に等しい。この傾斜面15は、最も外側の凸部16の上面部に連続的に繋がり、この凸部16に続いて、最も外側の凹部21が配置されている。また、この凸部16の上面部と傾斜面15との間の境界部分の位置と、係合面25の位置との距離(同図横方向長さ)をL
1で示している。特に、傾斜角度θ
3が15~30度の範囲であれば、樹脂管4の挿入が容易となるため、好ましい。
【0044】
図3において、凹部21の奥側には、凸部17が配置される。本例の継手部2には、これら凸部と凹部とが互いに凹凸状に複数ずつ配置されている。同図に示すように、凸部は、外側から順に凸部16、17、18、19、20の5つが配置され、これら5つの凸部の間には、外側から順に凹部21、22、23、24の4つが配置されている。何れの凹部・凸部も、継手部2の軸心方向に交差する方向に向けて外周面に環状に設けられ、本例では、何れの凹部(凸部)の断面形状も、略同一となるように設けられる。なお、継手部2の長さや径、凹凸部の数や断面形状は、本例の構造に限らず、実施に応じて任意に選択できる。
【0045】
図3において、各凹部21、22、23、24における奥側の各側面は、外周側が奥側に傾斜するテーパ状の傾斜面17a、18a、19a、20aとなっており、これらの傾斜角度は、継手部2軸心方向(
図3横方向)に対して角度θ
1(例えば約60度)である。一方、これら傾斜面17a、18a、19a、20aに対向した外側の各側面は、継手部2の軸心方向の交差方向に向いた垂直面となっている。また、同図に点線で示すように、各凹部21、22、23、24内の環状の空間領域の体積を、それぞれA
1、A
2、A
3、A
4で示している。また、各凹部の円筒面状の底面部の幅(
図3横方向の長さ)をm、各底面部の径をφd
1で示すと共に、各傾斜面17a、18a、19a、20aの幅(
図3横方向の長さ)にmを加えた値をnで示している。本例では、このnを凹部の幅と称する。さらに、各凸部16、17、18、19、20の円筒面状の上面部の径をφD
1、各凸部の高さをhとすると、この凸部の高さhはφD
1-φd
1に略等しい。また、φD
1は、継手部2の外径に等しい。
【0046】
これらの各傾斜面17a、18a、19a、20aは、樹脂管4の挿入時には、ガイドとして機能し、また、リング14の圧入時には、樹脂管素材が各凹部21、22、23、24内に入り込んでいくことを促進できる。このような機能を発揮する範囲で、これら傾斜面の全部又は一部の傾斜角度を設定すれば好適である。なお、各傾斜面17a、18a、19a、20aは、必ずしも各凹部21、22、23、24にそれぞれ届いている必要はないが、前記機能を効果的に発揮させるためには、各凹部の底部まで、各傾斜面が届いていれば好適である。
【0047】
図3において、本例ではボデー部3の側面の一部である、継手部2の付根部位は、後述するようにリング14の挿入端26が当接して圧入が完了すると共に、リング14の圧入前には樹脂管4の先端(先端面27)が突き当たる係合面25となっている。この係合面25と継手部2との間の境界部分28には、最も奥側の凸部20が配置されている。この凸部20の上面部の幅・高さは、他の凸部16~19の上面部の幅・高さと略同一である。
【0048】
図3において、リング14は、所定の厚みで環状に金属で一体形成された締付部材であり、一方の端面が係合面25に当接する挿入端26となっている。このリング14には、少なくとも奥側(挿入端26側)の内周に、外方に向けて拡径するテーパ面29が形成されている。本例では、このテーパ面29の反対側にも、同様の形状のテーパ面30が形成されている。これらテーパ面29、30の
図3横方向に対して角度θ
2(例えば約30度)で傾斜している。なお、図示していないが、リング14は、固定前の状態において、樹脂管4に予め遊嵌状態に配備されている。
【0049】
特に、この角度θ2は、15~30度の範囲が好ましい。この角度が小さ過ぎると樹脂管4の挿入は行い易くなる反面、抜け易くなるおそれがあり、逆に角度が大き過ぎると、挿入時に樹脂管4に応力が加わり挿入し難くなる傾向がある。角度θ2は、継手部2の傾斜面15の角度θ3と同程度であると、樹脂管4の挿入が一層容易となるため好ましい。また、テーパ面29は、ある程度の表面粗さを有していると、樹脂管4の継手部2に対する耐引抜性を向上させることができる。さらに、テーパ面29の境界29aや挿入端26との境界は、アール形状であれば、樹脂管4に損傷が生じ難くなり、固定状態において樹脂管4の破断等を防止し易くなるため、好ましい。
【0050】
また、同図において、リング14の内周径をφd2、テーパ面29と挿入端26との外方の境界部分の径をφD3でそれぞれ示すと共に、反対側のテーパ面30と円筒面状の内周面との境界部分の位置と、挿入端26の位置との距離(同図横方向長さ)をL2で示している。
【0051】
図3において、リング14の挿入端26が係合面25に当接して樹脂管4の固定が完了した状態においては、テーパ面29、係合面25、及び、2点鎖線で仮想的に示した樹脂管4の外周面との間に包囲された領域として、同図にA
5で示した断面略三角形となる環状の空間が形成される。この空間領域を、充填スペースと称する。後述のように、この充填スペースは、リング14の圧入により圧縮変形された樹脂管4素材が逃げ込むスペースとなる。
【0052】
図3において、樹脂管4は、少なくとも樹脂素材を主成分として構成され圧縮変形性を備えた管体であり、例えば比較的大径硬質素材の水道用ポリエチレン管に適用することができる。同図にクロスハッチングで示した環状の空間領域は、リング14の内周と樹脂管4が交差する領域を仮想的に示している。
【0053】
すなわち、後述する
図4(ハ)に模式的に示したように、樹脂管4が、その厚みが変わることなく継手部2の外周に拡径しながら嵌り込んだ状態に対し、この状態の樹脂管4の外周に圧入完了位置のリング14内周を重ねた状態を仮想すると、このリング14内周と樹脂管4外周との間には、交差領域が生じる。同図にクロスハッチングで示した環状の空間領域とは、この交差領域を示している。また、樹脂管4の厚みは模式的には同図のφD
2-φD
1に略等しくなる。
【0054】
続いて、
図4、5において、本例の作用を説明する。
図4(イ)から
図5(ハ)へ向けて、本例の樹脂管4を継手部2に固定する作用を示している。先ず、
図4(イ)~(ハ)は、継手部2に樹脂管4を挿入する過程を模式的に示したものである。
【0055】
先ず、
図4(イ)において、継手部2に対して樹脂管4の内周を嵌め込むように近付けている。本例では、樹脂管4が拡径して継手部2に挿入されるので、樹脂管4の内径は、継手部2の外径より所定の割合だけ小さい。同図(イ)に示すように、縮径テーパ状の傾斜面15が外側に向けて突出しているので、先端面27の内側を全周に亘って容易に傾斜面15に調心させながら被せることができ、樹脂管4の確実な挿入が容易に行えるようになっている。
【0056】
図4(ロ)は、樹脂管4が継手部2に挿入された途中の状態を模式的に示している。樹脂管4を継手部2の軸心方向奥側へ向けて挿し込むと、傾斜面15が樹脂管4を拡径させながら内周面に滑り込んでいく。
図4(ハ)は、先端面27が係合面25に全周に亘って偏りなく当接し、樹脂管4の挿入が正常に完了した状態を模式的に示している。この状態において、本発明では、同図に示すように、樹脂管4の先端面27内周付近が最も奥側の凸部20の上面部を全周に亘って偏りなく被覆させた状態にすることができる。
【0057】
次いで、
図5(イ)~(ハ)は、継手部2に挿入が完了した樹脂管4に向けて、リング14を圧入させて樹脂管4の固定を完了させる過程を模式的に示したものである。
【0058】
先ず、
図5(イ)は、樹脂管4の挿入完了状態において、リング14のテーパ面29を係合面25に向けて近付けている。
図5(ロ)は、このテーパ面29が、継手部2に嵌り込んで拡径している部分に位置した状態を示している。同図に示すように、テーパ面29は、同様にテーパ状に拡径している樹脂管4外周の形状に適合しているので、テーパ面29の全周に亘って偏りなく調心されながらリング14を圧入していくことができる。
図5(ハ)は、挿入端26が係合面25に全周に亘って偏りなく当接し、リング14の圧入が正常に完了した状態を模式的に示している。
【0059】
そして、
図3に符号A
6で示した領域には、リング14の内周と樹脂管4の外周との間には交差領域が生じるので、
図5(ロ)から同図(ハ)に示したリング14の樹脂管4拡径部分への圧入過程において、当該交差領域に相当する樹脂管4素材の体積分が、圧縮変形によって押し出されることになる。このようにして押し出される樹脂素材の体積分をA
6とする。樹脂素材の圧縮や膨張がない場合、これは当該交差領域の体積にほぼ等しい。この押し出しにより樹脂管4の素材が凹部21~24や充填スペースの内部に逃げ込んで容積を充填し、この充填により樹脂管4が継手部2に対してシール性と耐引抜性を発揮する固着状態となることができる。特に、この充填の際、最奥部領域においては、外側からのリング14の圧入に伴う押し付け力が働き、樹脂管4の先端面27付近が係合面25に押し潰されるように変形していく。
【0060】
本発明では、係合面25と継手部2との境界部分28に、最も奥側となる凸部20が配置されているので、このように係合面25に向けて先端面27付近が圧縮変形していくと、最奥部領域を直ちに樹脂素材で充填させることができる。最奥部領域において十分に樹脂素材が充填されていれば、特に係合面25に対する固着力が良好となり、よって、樹脂管4に高い耐引抜性とシール性を持たせることができる。
【0061】
図示していないが、多くの従来技術のように、最も奥側に凸部20に相当する部位が存在せず凹状に設けられている場合、係合面に相当する部位に対する樹脂素材の密着が不十分となり易く、樹脂管の固定が完了しても最奥部領域に樹脂素材が充填されない空隙が生じやすい。このように充填が不十分であれば、継手部の根元部分における固着が不十分となり、例えば地震時や流体衝撃など瞬間的な強い力の作用に必要な耐引抜性が長期間安定して確保できなくなる。
【0062】
一方、本発明では、樹脂管4の圧縮変形に伴い、特に、最奥部領域付近の樹脂素材は、直近に位置している空隙である充填スペース内に押し出されて充填させる。また、樹脂管4の内周部位の素材は、空隙である各凹部21~24内に押し出されて充填させる。この際、樹脂素材は、外側から奥側へ向かうリング14の動きに伴って、凹部内に外側から奥側へ向けて侵入しようとするので、この侵入に対向する傾斜面17a~20aが樹脂素材を受け流して凹部内に樹脂素材を充満させる効果が得られる。
【0063】
このように、凹部内に外側から奥側に向けて樹脂素材が変形しようとする際に、本例では、樹脂管4の先端面27が当接している係合面25と最も奥側の凹部24との間の境界部分28には、凸部20が設けられており、係合面25と凹部24とは離れている。この点、図示していない従来技術のように、継手部の最奥部が凹状であれば、樹脂素材の量が不十分であったり、リングの圧入に伴い樹脂素材が継手部の外側へ向けて逃げたりすることで、最奥部の凹状の内部に向けた樹脂素材の充填が不十分となり易いが、本発明の場合には、最奥部(境界部分28)には係合面25から外側に向けて突設された凸部20が有効に機能して、樹脂素材を凹部24内に確実に充填させることができる。
【0064】
ところで、このような押し出しにより樹脂素材が逃げ込むことが可能な領域は、リング14によって圧縮される領域より外側へ向かう樹脂素材の変形や逃げ出しは考慮しないものとすると、本例の場合、全ての凹部21~24内の容積、及び充填スペースの容積となる。よって、これら全ての凹部21~24の容積と充填スペースの容積を総和した容積が、当該交差領域の容積に対して同じかそれより小さい割合であれば、圧縮変形による樹脂素材の逃げ出し容積を、最大限でも受容することができる。したがって、リング14の圧入に伴って、リング14の奥側、すなわち挿入端26と係合面25との間から、圧縮変形された樹脂素材がはみ出してくることは、樹脂が膨張しない限り起こり得ない。
【0065】
これに対し、上記A1~A4は、それぞれ凹部21~24内の体積であり、上記A5は充填スペースの容積である。また、上記A6は、押し出される樹脂素材の体積分であり、当該交差領域の体積にほぼ等しいから、このA6がA1~A5の和と同じかそれより小さい(1.0以下)割合であれば、少なくとも、容積的に最大限、樹脂管4素材の圧縮変形を受容できるから、樹脂素材のはみ出し防止が確実なものとなる。
【0066】
一方で、樹脂管4の変形を許容できる容積を過度に確保してしまうと、逆に樹脂が充填されない空隙が生じやすくなり充填が不十分となるおそれがあるため、当該割合には、適宜下限値を設定しておくことが好ましい。ただし、この下限値は1.0に近過ぎても、樹脂の変形を許容する容積として不十分となる可能性がある。例えば、硬質の樹脂が偏りのある圧縮変形を受けた場合、部分的に許容容積を超えた変形が生じて樹脂のはみ出し等が生じる可能性も考えられる。また、樹脂管4の種類に応じて、異なる樹脂素材にもある程度共通して許容できる下限値の設定が好ましい。このような下限値として例えば0.8を挙げることができる。以上をまとめると、以下の関係となる。
【0067】
【0068】
ただし、樹脂素材は、実際にはリング14の圧入によって、ある程度は体積に圧縮が生じる場合もある。この場合、実際にリング14の圧入によって押し出される樹脂素材の体積A
6は、
図3に示している交差領域の体積よりも小さくなる。
【0069】
なお、図示していないが、本例の構造に限らず、一般的な継手部、樹脂管、リングに対しても本発明を用いることができる。継手部に挿入完了状態の樹脂管に対して、圧入完了位置のリングを仮想すると、リング内周と樹脂管の外周との間には、交差領域が生じる。この交差領域の体積V1がリングに押し出される樹脂素材の体積に略等しい。また、この仮想状態において、リング内周と樹脂管外周との間の空隙の体積の総和をV2、継手部外周と樹脂管内周との間の空隙の体積の総和をV3とすると、少なくともV2+V3>V1であれば、樹脂素材のはみ出し防止を容積構造的に担保できる。
【0070】
図3に示すように、本例では、境界部分28に配置した凸部20は、その一つ外側の凸部19と略同じ高さhに設定しているが、これ以外にも例えば、この凸部19の高さをhよりやや低くしても良い。この場合は、例えば継手部2に挿入し切った位置で、樹脂管4の先端面27が拡径していなくても、この先端面27が凸部20に引っ掛からずに確実に先端面27が係合面25に到達できる。また、この挿入完了状態で、先端面27付近の内周と凸部20の上面部との間には僅かに空隙が確保できるから、圧縮変形される樹脂の逃げ込むスペースが確保され、樹脂素材のはみ出しの防止もより確実となる。
【0071】
また、同図において、本例では、境界部分28に配置した凸部20と、その一つ外側の凸部19との間の凹部24の幅を、その一つ外側の凹部23の幅と略同一としている。このため、少なくとも凹部24と、その隣の凹部23との間に、逃げ込む樹脂の量に偏りが生じ難く、充填される樹脂の量にも差が生じないため、特に樹脂管4の奥側において、均等なアンカー効果を得ることができ、よって、確実な耐引抜性が得られる。
【0072】
さらに、圧入完了位置にあるリング14のテーパ面29の境界29aの位置は、最も奥側の凹部24に対向する位置(凹部24の幅n内、好ましくは底面部の幅m内の外周位置)にあることが好ましい。このようにすれば、リング14の円筒状の内周面によって凹部24内に確実に樹脂素材が押し込まれるため、凹部24への樹脂の充填を良好に行うことができる。また、図示していないが、この境界29aの位置を、最も奥側の凹部24より奥側に位置するように設定しても良い。この状態において、リング14の両側のテーパ面29、30以外の円筒状の内周面が、凹部21~24を覆う位置となるように設定しても良い。この場合、少なくとも凹部21~24の対向位置は、リング14の内周面(つまりテーパ面29、30以外の縮径部分)が位置するので、各凹部21~24への樹脂管4素材の充填がさらに促進される。
【0073】
続いて、
図6は、他例の樹脂管用継手に樹脂管4の挿入とリング14の圧入が完了した状態を示した断面図である。なお、継手部2、樹脂管4、リング14の構造は、上記本例の継手と同様であり、同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0074】
図6において、他例の係合面25は、鍔部31の一側面であり、この一側面に継手部2が突出形成されている。鍔部31に対し継手部2の反対側には、オネジ部32が設けられ、このオネジ部32内と継手部2内が流路として連続的に繋がることで、他例は、短管状のソケット構造となっている。例えば鍔部31の外周を六角ナット状に設けて、この六角ナットを回動させることで、オネジ部32を、図示しない樹脂管4の結合対象部材に設けられているメネジ部に螺着させて、樹脂管4を結合させることができる。樹脂管4を継手部2に固定させる作用は、上記本例と同様である。なお、樹脂管用継手における継手部の構造は、ユニオンナット型の継手にも適用可能であり、樹脂管を固定させる作用も同様である。
【0075】
図7は、他例の樹脂管用継手付きバルブである。
図7において、樹脂管4の挿入とリング14の圧入が完了した状態を示している。継手部をバルブ本体とは別体に設けた以外は、概ね、上記の樹脂管用継手付きバルブと同様であり、継手部の構造も同様であるため、同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0076】
本例では、バルブ本体100においてボデー部102と継手部2を別体に構成しており、鍔部51に対し継手部2の反対側には、オネジ部52が設けられ、このオネジ部52をボデー部102のメネジ部101に螺着し、接続して構成した樹脂管用継手付きバルブである。
鍔部51の外周には、継手部2をバルブ本体100に装着するための治具が係止可能な二面幅53を形成している。また、この二面幅53は、樹脂管4の挿入後、リング14を圧入するときに用いる治具にも係止可能である。なお、二面幅に変えて、鍔部51の外周を六角ナット形状としてもよい。
また、本例では、ボデー部102には、六角ナット部103を形成しており、継手部2を装着する際、又は樹脂管4の挿入する際、或いはリング14の圧入する際に治具が係止可能である。
【0077】
継手部2を別体としたことにより、樹脂管用継手としての継手部2をボデー部102に着脱可能であり、バルブのボデー部102を他のタイプのバルブと共通化できることから、コストの低減を図ることができる。
すなわち、継手部をバルブ本体と一体に形成したときは、継手部が樹脂管用となってしまうが、継手部を別体にして構成すれば、配管をねじ込みにより固定するタイプのバルブに樹脂管用継手を装着することで、樹脂管用継手付きバルブとすることができるので、ねじ込みにより配管を固定するタイプと樹脂管用継手付きのタイプとでバルブ本体部を共通のものを使用することができるので、別々にバルブ本体部を準備するよりもスケールメリットが生じ、コストの低減を図ることができる。
【0078】
また、コスト面以外でも、ねじ込み継手部を有するバルブであれば、どのようなバルブであっても樹脂管用継手付きバルブとすることができるので、幅広い種類のバルブに適用することが可能となり、バルブ選択の自由度が広がる。
樹脂管部分が先に破損してしまった場合などには、樹脂管用継手部分でバルブを取り外すなど、必要に応じて交換対応を行うことも可能となる。
【0079】
さらに、継手部を別体としたことによって、必要に応じて、先に継手部に樹脂管を挿入し、さらにリングで固定した後に、継手部をバルブ本体に固定することもできる。継手部への樹脂管の挿入やリングの圧入の際には、バルブ本体をクランプ等で固定する必要があるが、バルブ本体に不要な力が加わることが好ましくない場合もある。そのような場合には、上記のように継手部への樹脂管の固定を行った後に継手部をバルブ本体に固定するようにすることで、樹脂管の固定の際にバルブ本体に力が加わることを防止することが可能となる。
【0080】
なお、継手部は、専用治具でバルブ本体に螺着して、使用者が不容易に樹脂管用継手付きバルブから樹脂管用継手を分離できないようにしてもよい。
【0081】
上記のように、本発明の継手又はバルブは、最奥部領域内や、最も奥側の凹部24内に、効率よく樹脂管素材を充填させて高い耐引抜性を確保できるので、継手部2に設ける凹部と凸部から成る凹凸の数を少なくでき、よって、小型化、特に面間寸法の短面化に寄与する。本発明の構造を、バルブや継手に適用する場合、サイズは限定されないが、例えば20A~100Aのサイズが特に好適である。
【0082】
ところで、数式としては示していないが、上記体積A
1~A
5は、何れも、
図3に示した各符号を用いて具体的に計算できることは自明であると共に、体積A
6も、樹脂素材に圧縮や膨張が生じない場合は交差領域にほぼ等しく、この交差領域の体積も具体的に計算できることは自明である。
【0083】
更に、本発明は、前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0084】
1 バルブ本体
2 継手部
4 樹脂管
14 リング
16 17 18 19 20 凸部
21 22 23 24 凹部
25 係合面
26 挿入端
27 先端面
28 境界部分
29 30 テーパ面
A1 A2 A3 A4 凹部の体積
A5 充填スペースの体積
A6 リングの内周による樹脂管の圧縮体積
h 凸部の高さ
n 凹部の幅