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特許7538646原油運搬船における燃料供給システム及び燃料供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】原油運搬船における燃料供給システム及び燃料供給方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20240815BHJP
   B63B 25/08 20060101ALI20240815BHJP
   B63B 11/04 20060101ALI20240815BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20240815BHJP
   F02B 43/00 20060101ALI20240815BHJP
   F02M 25/00 20060101ALI20240815BHJP
   F23K 5/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F02M21/02 M
B63B25/08 Z
B63B11/04 B
B63H21/38 C
F02B43/00 A
F02M21/02 L
F02M21/02 301A
F02M25/00 L
F23K5/00 307Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020125811
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2021021396
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0090996
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】ハンファ オーシャン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジョン キ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ナム ス
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョン ヒョン
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/017796(WO,A1)
【文献】特開2016-211378(JP,A)
【文献】特開2015-127510(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0117359(KR,A)
【文献】特開2016-205317(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0042293(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 21/02
F02M 25/00
F02B 43/00
F23K 5/00
B63B 11/04
B63B 25/08
B63H 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原油貯蔵タンクから排出される気体状態のVOC(Volatile Organic Compounds)に含まれる重炭化水素成分を相変化させずにそのまま捕集するVOC捕集タンクと、
エンジンの燃料として使用するLNG(Liquefied Natural Gas)を貯蔵する燃料貯蔵タンクと、
前記燃料貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを、前記エンジンで必要とされる高圧まで圧縮する高圧ポンプと、
前記高圧ポンプによって圧縮されたLNGを天然ガスに気化させる気化器と、
前記気化器によって気化させた高圧の天然ガスと前記VOC捕集タンクから排出される気体状態のVOCとを混合する混合機と
前記混合機と前記エンジンとを連結して、前記混合機で混合された天然ガスとVOCとの混合燃料を前記エンジンに供給する混合燃料供給ラインとを備え、
前記エンジンは2行程ディーゼルサイクルエンジンであり、
前記VOC捕集タンクと前記混合機とを連結して、窒素及び重炭化水素成分を含有するVOCを前記VOC捕集タンクから前記混合機に移送するVOC供給ラインを更に備えることを特徴とする、原油運搬船の燃料供給システム。
【請求項2】
前記VOC供給ラインに設置され、前記VOC捕集タンクから前記混合機に供給されるVOCの窒素含有量に応じて開度量が制御されるVOCバルブを更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の原油運搬船の燃料供給システム。
【請求項3】
前記混合機で混合された混合燃料の窒素含有量が30mol%未満になるように、前記VOCバルブの開度量を制御する制御部を更に備えることを特徴とする、請求項2に記載の原油運搬船の燃料供給システム。
【請求項4】
前記エンジンは、100%のエタンガス、100%の天然ガス、天然ガスとVOCの混合物、及びVOCを燃料として使用できるガスエンジンであることを特徴とする、請求項1に記載の原油運搬船の燃料供給システム。
【請求項5】
前記高圧ポンプは、前記LNGを200bar乃至420barまで圧縮することを特徴とする、請求項1または請求項4に記載の原油運搬船の燃料供給システム。
【請求項6】
前記混合機は、前記気化器で気化させた高圧の天然ガスを作動流体とするエダクタであることを特徴とする、請求項1に記載の原油運搬船の燃料供給システム。
【請求項7】
前記原油貯蔵タンクと前記VOC捕集タンクとを連結し、窒素及び重炭化水素成分を含有するVOCを前記原油貯蔵タンクから前記VOC捕集タンクに移送するVOC捕集ラインを更に備え、
前記VOCは、水分と窒素を除去する前処理を行うことなく、前記原油貯蔵タンクから前記VOC捕集タンクに、前記VOC捕集タンクから前記混合機に移送されることを特徴とする、請求項1に記載の原油運搬船の燃料供給システム。
【請求項8】
原油貯蔵タンクから排出させた、窒素及び重炭化水素成分を含有する気体状態のVOC(Volatile Organic Compounds)に含まれる重炭化水素成分相変化させずに気体状態で捕集して貯蔵する工程と、
エンジンの燃料として使用するLNGを前記エンジンで必要とされる高圧まで圧縮する工程と、
前記高圧まで圧縮されたLNGを天然ガスに気化させる工程と、
前記貯蔵されているVOCを排出させて前記気化させた高圧天然ガスと混合する混合工程と、
前記天然ガスとVOCとを混合した気体状態の混合燃料を2行程ディーゼルサイクルエンジンに供給する工程とを含むことを特徴とする、原油運搬船の燃料供給方法。
【請求項9】
前記混合工程にて、前記気化させた高圧の天然ガスを作動流体とし、前記気体状態のVOCを吸入して混合することを特徴とする、請求項8に記載の原油運搬船の燃料供給方法。
【請求項10】
前記混合工程は、前記混合燃料の窒素含有量が30mol%未満になるように、前記天然ガスと混合する気体状態のVOCの流量を調節する工程を含むことを特徴とする、請求項8に記載の原油運搬船の燃料供給方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガスを燃料として使用する原油運搬船の原油貯蔵タンクで発生する揮発性有機化合物をエンジンの燃料として使用することができる、燃料供給システム及び燃料供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原油運搬船には原油(crude oil)を貯蔵する多数の原油貯蔵タンク(cargo tank)が設置される。原油貯蔵タンクでは貯蔵した原油が蒸発し揮発性有機化合物(VOC;Volatile Organic Compounds)が発生する(例えば特許文献1及び2参照)。原油貯蔵タンクの圧力を安全に維持するためには、原油貯蔵タンク内で発生したVOCを外部に排出しなければならない。
【0003】
特に、原油貯蔵タンクに原油を積載(loading)する工程の時、満船運航(laden voyage)中の時、また、原油を需要先に荷役(discharging)した後で原油貯蔵タンクを洗浄(cleaning)する時に、相当量のVOCが発生する。
【0004】
VOCの組成は、原油貯蔵タンクに貯蔵されている原油のほぼすべての成分、すなわち、有機化合物を含んでいる。VOCを大気中に放出する場合、太陽光の作用を受けて窒素酸化物と光化学反応を起こし、オゾンと光化学酸化性物質を発生し、光化学スモッグを誘発したり、オゾン層の破壊、温室効果に影響を与えるなどの環境汚染を起こすことになる。
【0005】
これらのVOCの有害性の問題で、国際海事機関などでは一部の港湾におけるVOC荷役を規制している。それだけでなくVOCの大気放出は結局その分の有効物質が損失されることであるため、VOCを大気中に放出するのではなく、VOCを回収して効率的に処理する方法を講じる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】大韓民国特許出願公開第10-2020-0056824号
【文献】大韓民国特許出願公開第10-2015-0057229号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
VOCを効率的に処理する技術には概ね、貨物の積載時に発生するVOCの量を減らすVOC発生低減技術(VOC reduction technology)と、発生したVOCを大気中に放出せずに回収して処理するVOC回収技術(VOC recovery technology)が実際に適用されている。
【0008】
VOC発生低減技術は、貨物を原油貯蔵タンクに積載するとき、原油貯蔵タンク内における陰圧の発生を減らし、原油の蒸気圧(vapor pressure)以下でタンクの圧力を調節する技術が代表的である。
【0009】
VOC回収技術は、発生したVOCを捕集し液化させて貯蔵するか燃料として供給する技術であり、パッケージで構成される高価なVOC処理システム装備を船舶に搭載して使用する。
【0010】
一方、原油運搬船で発生するVOCは重炭化水素の含有量が高くてガスエンジンのメタン価を充足しないため、改質器を利用してVOCを硬質炭化水素であるメタンに改質して供給しなければならない。
【0011】
しかし、改質器を利用した燃料の供給は、定期的に改質器の性能を維持するための補修管理が必要であり、改質(reforming)のために多量の蒸気などの熱エネルギーが必要となるので、追加の燃料燃焼が必須であるという問題がある。
【0012】
本発明は、LNGを燃料として使用しながらも、船舶から発生するVOCをより簡単かつ低費用で、大気に放出することなく効率的にエンジンの燃料として供給するため、改善された原油運搬船の燃料供給システムと燃料供給方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するため、本発明の一実施形態によれば、原油貯蔵タンクから排出される気体状態のVOC(Volatile Organic Compounds)を相変化させずにそのまま捕集するVOC捕集タンクと、エンジンの燃料として使用するLNG(Liquefied Natural Gas)を貯蔵する燃料貯蔵タンクと、前記燃料貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを、前記エンジンで必要とされる高圧まで圧縮する高圧ポンプと、前記高圧ポンプによって圧縮されたLNGを天然ガスに気化させる気化器と、前記気化器によって気化させた高圧の天然ガスと前記VOC捕集タンクから排出される気体状態のVOCとを混合する混合機とを備え、前記エンジンは2行程ディーゼルサイクルエンジンであり、前記VOC捕集タンクと前記混合機とを連結して、窒素及び重炭化水素成分を含有するVOCを前記VOC捕集タンクから前記混合機に移送するVOC供給ラインを更に備えることを特徴とする、原油運搬船の燃料供給システムが提供される。
【0014】
本発明においては、前記VOC供給ラインに設置され、前記VOC捕集タンクから前記混合機に供給されるVOCの窒素含有量に応じて開度量が制御されるVOCバルブを更に備えることが好ましい。
【0015】
また、本発明においては、前記混合機で混合された混合燃料の窒素含有量が30mol%未満になるように、前記VOCバルブの開度量を制御する制御部を更に備えることが好ましい。
【0016】
また、本発明においては、前記エンジンは、100%のエタンガス、100%の天然ガス、天然ガスとVOCの混合物、及びVOCを燃料として使用するガスエンジンであることが好ましい。
【0017】
また、本発明においては、前記高圧ポンプは、前記LNGを200bar乃至420barまで圧縮することが好ましい。
【0018】
また、本発明においては、前記混合機は、前記気化器で気化させた高圧の天然ガスを作動流体とするエダクタであることが好ましい。
【0019】
また、本発明においては、前記原油貯蔵タンクと前記VOC捕集タンクとを連結し、窒素及び重炭化水素成分を含有するVOCを前記原油貯蔵タンクから前記VOC捕集タンクに移送するVOC捕集ラインを更に備え、前記VOCは、水分や窒素を除去する前処理を行うことなく(即ち、水分と窒素を除去する前処理工程なしで)、前記原油貯蔵タンクから前記VOC捕集タンクに、また、前記VOC捕集タンクから前記混合機に夫々移送されることが好ましい。
【0020】
上述した目的を達成するため、本発明の他の一実施形態によれば、原油貯蔵タンクから排出させた、窒素及び重炭化水素成分を含有する気体状態のVOC(Volatile Organic Compounds)を相変化させずに気体状態で捕集して貯蔵する工程と、エンジンの燃料として使用するLNGを前記エンジンで必要とされる高圧まで圧縮する工程と、前記高圧まで圧縮されたLNGを天然ガスに気化させる工程と、前記貯蔵されているVOCを排出させて前記気化させた高圧天然ガスと混合する混合工程と、前記天然ガスとVOCとを混合した気体状態の混合燃料を2行程ディーゼルサイクルエンジンに供給する工程とを含むことを特徴とする、原油運搬船の燃料供給方法が提供される。
【0021】
本発明においては、前記混合工程にて、前記気化させた高圧の天然ガスを作動流体とし、前記気体状態のVOCを吸入(吸引)して混合することが好ましい。
【0022】
また、本発明において、前記混合工程は、前記混合燃料の窒素の含有量が30mol%未満になるように、前記天然ガスと混合する気体状態のVOCの流量を調節する工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の原油運搬船の燃料供給システム及び燃料供給方法によれば、VOCを回収して活用する工程を単純化することができる。
【0024】
また、VOCを回収して活用する工程を単純化することで、原油の荷役と運航の過程で発生するVOCの活用度を最大化することができる。
【0025】
特に、VOCを液化させるための装置、VOCから水分や窒素を除去する前処理装置が必要でないため、追加装置を省略することにより、設置費用、面積、エネルギー費用を低減することができる。
【0026】
また、電力を使用せずにVOCを回収することができ、船舶の電力使用量を節減することができる。
【0027】
回収したVOCをエンジンの燃料として供給することにより、有害なVOCを大気中に放出せず、環境にやさしく処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施形態に係る原油運搬船の燃料供給システムを簡単に図示した構成図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る原油運搬船の燃料供給システムを簡単に図示した構成図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る原油運搬船の燃料供給システムを簡単に図示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の動作上の利点及び本発明の実施形態により達成される目的を十分理解するため、本発明の好適な実施形態を例示する添付図面および添付図面に記載の内容を参照して説明する。
【0030】
以下、添付した図面を参照し、本発明の好適な実施形態に関して構成及び作用を詳細に説明する。各図面の構成要素の参照符号を付加することにおいて、同じ構成要素は、たとえ他の図面上に表示されても、可能な限り同一符号で表記している。また、下記の実施形態は他の様々な形態に変更することができ、本発明の範囲は下記の実施形態によって限定されるものではない。
【0031】
後述する本発明の一実施形態において、液化ガスは、メタンおよび/またはエタンを含む液化ガスであり、例えば、LNG(Liquefied Natural Gas)、LEG(Liquefied Ethane Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、液化エチレンガス(Liquefied Ethylene Gas)であり得る。
【0032】
ただし、後述する実施形態では、代表的な液化ガスであるLNGに適用される場合を例に説明する。LNGは、メタンを主成分とし、エタン、プロパン、ブタンなどを含めて、その組成は生産地によって異なる。
【0033】
また、後述する本発明の一実施形態に係る原油運搬船の燃料供給システム及び燃料供給方法は、船舶に適用される場合を例に説明するが、陸上のものに適用することもできる。
【0034】
また、後述する実施形態の船舶は、生産された原油を貨物として輸送する原油運搬船(crude oil carrierまたはcrude oil tanker)を例にして説明するが、本発明は、海上での原油を生産する浮体式原油生産貯蔵積出設備(FPSO;Floating Production Storage and Offloading Unit)、生産された原油を運搬する原油製品運搬船(product carrier)、生産された原油を貯蔵する浮体式貯蔵設備(FSU;Floating and Storage Unit)などの原油貯蔵タンクが設けられ、相当量のVOCが発生して環境的危険性が潜在し、エンジンに燃料を供給する必要があるすべての船舶または海上浮遊構造物に適用することができる。
【0035】
また、後述する本発明の一実施形態の船舶は、LNGを燃料として使用するLFS(LNG Fuelled Ship)であり得る。
【0036】
また、後述する本発明の一実施形態において、液化ガス及び液化ガスの蒸発ガスはエンジン、特に船舶のエンジンの燃料として使用することができる。
【0037】
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る原油運搬船の燃料供給システムの燃料供給方法を説明する。
【0038】
本発明の第1の実施形態に係る原油運搬船の燃料供給システムは、原油を貯蔵する1つ以上の原油貯蔵タンク(cargo tank、100)と、原油貯蔵タンク(100)から原油が蒸発して生成された揮発性有機化合物(VOC;Volatile Organic Compounds)を相変化させずにそのまま捕集するVOC捕集タンク(200)と、船舶のエンジン(1000)の燃料として使用する液化天然ガス(LNG)を貯蔵する燃料貯蔵タンク(300)と、燃料貯蔵タンク(300)に貯蔵されたLNGを加圧して燃料貯蔵タンク(300)から外部に排出させる燃料ポンプ(400)と、燃料ポンプ(400)によって移送されたLNGをエンジン(1000)で必要とされる圧力範囲まで圧縮する高圧ポンプ(501)と、高圧ポンプ(501)によって圧縮されたLNGを天然ガスに気化させる気化器(601)と、気化器(601)によって気化させた高圧の天然ガスを作動(driving)流体として、VOC捕集タンク(200)から移送された低圧のVOCを吸入して天然ガスとVOCとを混合し、エンジン(1000)の燃料として供給する混合機(701)と、燃料貯蔵タンク(300)に貯蔵されたLNGを気化器(601)を利用して気化させた天然ガス、VOC捕集タンク(200)に捕集されたVOC、または混合機(701)によって混合された天然ガスとVOCとの混合燃料を燃料として使用するエンジン(1000)とを備える。
【0039】
VOC捕集ライン(VL1)は、原油貯蔵タンク(100)とVOC捕集タンク(200)とを連結し、原油貯蔵タンク(100)から排出されたVOCはVOC捕集ライン(VL1)を介してVOC捕集タンク(200)に移送される。
【0040】
原油貯蔵タンク(100)から排出された気体状態のVOCは気体状態のまま、VOC捕集ライン(VL1)を介して移送され、VOC捕集タンク(200)に気体状態で貯蔵される。
【0041】
すなわち、本実施形態において、VOC捕集タンク(200)で貯蔵されているVOCは、原油貯蔵タンク(100)からVOC捕集タンク(200)まで移送される間、VOC捕集タンク(200)に貯蔵されている間、また、VOC捕集タンク(200)からVOC供給ライン(VL2)を介して混合機(701)に移送される間に、相変化が起こらない。
【0042】
また、本実施形態のVOC捕集タンク(200)は、1つの原油貯蔵タンク(100)の容量より小さい容量で設けられる。
【0043】
原油貯蔵タンク(100)から排出されるVOCは、様々な炭素数の炭化水素成分だけでなく、水分や窒素などの不純物が含まれる。
【0044】
原油貯蔵タンク(100)から排出されるVOCの組成は原油の組成によって異なるが、一般的にプロパン、ブタン(特に、ノーマルブタン)が主成分であり、その外にエタン、イソブタン、ノーマルペンタンおよびイソペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどが含まれる。
【0045】
また、原油貯蔵タンク(100)に原油を積載(loading)したり、原油貯蔵タンク(100)から原油を荷役(discharging)するとき円滑な工程を実施するための役割または、ブランケットガス(blanket gas)の役割をさせるため、原油貯蔵タンク(100)に窒素ガスを供給する。窒素の液化温度はVOCに含まれる様々な炭化水素のうち液化温度が最も低いメタンの液化温度より低いため、その含量は異なるが原油貯蔵タンク(100)から排出されるVOCには必ず窒素が含まれている。
【0046】
しかし、本実施形態に係る燃料供給システムでは、原油貯蔵タンク(100)からVOC捕集タンク(200)に移送されるVOCから水分や窒素などの不純物を除去する前処理装置が設置されない。
【0047】
すなわち、原油貯蔵タンク(100)からVOC捕集タンク(200)に移送されるVOCは前処理工程を経由しない。また、VOC捕集タンク(200)から混合機(701)に移送されるVOCも前処理工程を経由しない。このように水分、窒素を除去する前処理を行うことなく、VOCが、原油貯蔵タンク(100)からVOC捕集タンク(200)に、VOC捕集タンク(200)から混合機(701)に夫々移送される。
【0048】
VOC捕集タンク(200)に捕集された気体状態のVOCはVOC捕集タンク(200)と混合機(701)とを連結するVOC供給ライン(VL2)を介して相変化されず混合機(701)に移送される。
【0049】
VOC供給ライン(VL2)には、VOC捕集タンク(200)から混合機(701)に移送されるVOCの流量を調節するVOCバルブ(CV)が設置される。
【0050】
VOCバルブ(CV)は、VOC捕集タンク(200)から混合機(701)に移送されるVOCの組成に基づいて制御することができる。
【0051】
例えば、VOC捕集タンク(200)から混合機(701)に移送されるVOCの窒素含有量が基準値を超えた場合、VOCバルブ(CV)の開度量を制御して、VOC捕集タンク(200)から混合機(701)に供給するVOCの流量を減少させる。
【0052】
VOC捕集タンク(200)から混合機(701)に移送されるVOCの窒素含有量の基準値は、混合機(701)で混合された混合燃料の窒素含有量がエンジンで必要とされる窒素含有量、例えば、20mol%未満、または30mol%未満である。
【0053】
例えば、VOC捕集タンク(200)から混合機(701)に移送されるVOCの重炭化水素の含有量、特に炭素数が10以上の重炭化水素の含有量が基準値を超えた場合、VOCバルブ(CV)の開度量を調節し、VOC捕集タンク(200)から混合機(701)に供給するVOCの流量を減少させる。
【0054】
VOC捕集タンク(200)から混合機(701)に移送されるVOCの重炭化水素の基準値は、混合機(701)で混合される混合燃料が多相(multi-phase)にならない値であり得る。例えば、混合燃料が多相にならない基準値は、VOCに含まれている炭素数が10以上の重炭化水素の濃度が1mol%未満である。
【0055】
本実施形態のエンジン(1000)は、2行程(2-stroke)サイクルエンジンであり得る。また、本実施形態のエンジン(1000)は、高圧のガス燃料をピストンの上死点付近で燃焼室に直接噴射するディーゼルサイクル(diesel cycle)を基準に動作する物であり得る。
【0056】
また、本実施形態のエンジン(1000)で必要とされるガス燃料の圧力条件は、約200bar乃至420bar、または約250bar乃至380barであり、好ましくは約380bargの高圧ガス燃料を燃焼することができる。
【0057】
また、本実施形態のエンジン(1000)で必要とされるガス燃料の温度条件は、約35℃~45℃であり、好ましくは約45℃である。
【0058】
また、本実施形態のエンジン(1000)は、100%のエタンガス、100%の天然ガス、天然ガスとVOCとの混合物、及びVOCを燃料として使用する、ガスエンジンであり得る。
【0059】
例えば、本実施形態のエンジン(1000)は、MAN ES社のME-GIE(MAN Electronic Gas Injection Ethane)エンジンである。
【0060】
また、本実施形態のエンジン(1000)は、LNGを主燃料として使用し、VOCの発生量に応じてLNG(または天然ガス)とVOCの混合燃料またはVOCをエンジンの燃料として使用する。
【0061】
すなわち、本実施形態の船舶は、平常時にLNGを燃料として使用する天然ガス燃料船を基準とする。
【0062】
燃料貯蔵タンク(300)で貯蔵されたLNGは、燃料ポンプ(400)によって加圧されて燃料ポンプ(400)と高圧ポンプ(501)とを連結する燃料供給ライン(FL)を介して高圧ポンプ(501)に移送される。
【0063】
燃料ポンプ(400)は、燃料貯蔵タンク(300)に貯蔵されたLNGを約10barまで加圧することができる。しかし、これに限定されるものではない。
【0064】
高圧ポンプ(501)は、燃料ポンプ(400)によって加圧されたLNGをエンジン(1000)で必要とされるガス燃料の圧力、すなわち本実施形態では、約380bar以上の高圧まで圧縮して気化器(601)に供給する。
【0065】
高圧ポンプ(501)によって高圧まで圧縮されたLNGは、高圧ポンプ(501)と気化器(601)とを連結する燃料供給ライン(FL)を介して気化器(601)に移送される。
【0066】
気化器(601)は、高圧ポンプ(501)によってエンジン(1000)で必要とされる高圧まで、すなわち本実施形態では、約380barまで圧縮されたLNGを天然ガス(気体状態または超臨界状態)に気化させる。
【0067】
気化器(601)で気化させた天然ガスは、気化器(601)と混合機(701)とを連結する燃料供給ライン(FL)を介して混合機(701)に供給される。
【0068】
燃料ポンプ(400)と高圧ポンプ(501)との間、高圧ポンプ(501)と気化器(601)との間、および気化器(601)と混合機(701)との間のいずれか一箇所以上に、燃料貯蔵タンク(300)から混合機(701)に移送されるLNGの流量を制御するLNGバルブ(図示せず)を設置することができる。
【0069】
LNGバルブは、エンジン(1000)で必要とされる燃料量、VOC捕集タンク(200)から混合機(701)に移送されるVOCの重炭化水素または窒素含有量に応じて制御することができる。
【0070】
本実施形態の混合機(701)は、ベルヌーイ効果を利用したエダクタ(eductor)であり得る。エダクタ(701)は、エンジン(1000)で必要とされる高圧まで、すなわち本実施形態では、約380barまで圧縮された高圧の天然ガスを作動(driving)流体として使用することにより、電力などの外部動力を使用せず無動力でVOC捕集タンク(200)からエダクタ(701)に移送されるVOCを吸入して混合することができる。混合機(701)では、高圧の天然ガスとVOCが単一相で混合されて拡散噴射される。
【0071】
本実施形態のように混合機(701)としてエダクタを用いる場合、エダクタ内部に拡散噴射された流体が曲線形の過流を形成しながら混合を促進するので、電力を使用せず天然ガスとVOCとを容易に均一混合することができる。
【0072】
エダクタ(701)で天然ガスとVOCとが混合された混合燃料は、エダクタ(701)とエンジン(1000)とを連結する混合燃料供給ライン(ML1)を介してエンジン(1000)の燃料として供給される。
【0073】
次に、図2を参照して、本発明の第2の実施形態に係る原油運搬船の燃料供給システム及び燃料供給方法を説明する。本実施形態は、上述した第1の実施形態の変形例であって、混合機(701)が高圧ポンプ(501)の下流に設置される第1の実施形態とは異なり、本実施形態では、混合機(702)が高圧ポンプ(502)の上流に設置される点で相違する。以下、この相違点を中心に説明し、同じ部材に関しては具体的な説明を省略する。具体的な言及や説明が省略されても同じ部材については、上述した第1の実施形態と同様のものを適用することができる。
【0074】
本実施形態に係る原油運搬船の燃料供給システムは、原油を貯蔵する1つ以上の原油貯蔵タンク(cargo tank、100)と、原油貯蔵タンク(100)で原油が蒸発して生成された揮発性有機化合物(VOC;Volatile Organic Compounds)を相変化させずにそのまま捕集するVOC捕集タンク(200)と、船舶のエンジン(1000)の燃料として使用する液化天然ガス(LNG)を貯蔵する燃料貯蔵タンク(300)と、燃料貯蔵タンク(300)に貯蔵されたLNGを加圧して燃料貯蔵タンク(300)から外部に排出させる燃料ポンプ(400)と、燃料ポンプ(400)によって加圧された液体状態のLNGを動作(driving)流体とし、VOC捕集タンク(200)から移送された気体状態のVOCを吸入してLNGとVOCを混合する混合機(702)と、前記混合機(702)で混合された液体状態の混合燃料をエンジン(1000)で必要とされる圧力範囲まで圧縮する高圧ポンプ(502)と、高圧ポンプ(502)によって圧縮された混合燃料を気化させる気化器(602)と、燃料貯蔵タンク(300)に貯蔵されたLNGを気化器(602)を利用して気化させた天然ガス、VOC捕集タンク(200)に捕集されたVOCまたは気化器(602)によって気化させた混合燃料を燃料として使用するエンジン(1000)とを備える。
【0075】
VOC捕集ライン(VL1)は、原油貯蔵タンク(100)とVOC捕集タンク(200)とを連結し、原油貯蔵タンク(100)から排出されたVOCはVOC捕集ライン(VL1)を介してVOC捕集タンク(200)に移送される。
【0076】
原油貯蔵タンク(100)から原油が蒸発して生成されたVOCは気体状態であり、気体状態でVOC捕集ライン(VL1)を介して移送され、VOC捕集タンク(200)に気体状態で貯蔵される。
【0077】
同様に、本実施形態においてVOC捕集タンク(200)に貯蔵されるVOCは、原油貯蔵タンク(100)からVOC捕集タンク(200)に移送される間、VOC捕集タンク(200)に貯蔵される間、VOC捕集タンク(200)からVOC供給ライン(VL2)を介して混合機(702)に移送される間に相変化が起こらない。
【0078】
また、本実施形態に係る燃料供給システムにおいて、原油貯蔵タンク(100)からVOC捕集タンク(200)に移送されるVOCは水分や窒素などの不純物を除去する前処理装置が設置されない。
【0079】
VOC捕集タンク(200)に捕集された気体状態のVOCは、VOC捕集タンク(200)と混合機(702)とを連結するVOC供給ライン(VL2)を介して相変化せず混合機(702)に移送される。
【0080】
VOC供給ライン(VL2)には、VOC捕集タンク(200)から混合機(702)に移送されるVOCの流量を調節するVOCバルブ(CV)が設置される。
【0081】
VOCバルブ(CV)は、VOC捕集タンク(200)から混合機(702)に移送されるVOCの組成に基づいて制御することができる。その制御方法は、第1の実施形態と同様の方法を適用することができる。
【0082】
本実施形態のエンジン(1000)は、2行程(2-stroke)サイクルエンジンであって、ディーゼルサイクル(diesel cycle)を基準に動作することができる。
【0083】
燃料貯蔵タンク(300)で貯蔵されたLNGは、燃料ポンプ(400)によって加圧されて燃料ポンプ(400)と混合機(702)とを連結する燃料供給ライン(FL)を介して混合機(702)に移送される。
【0084】
本実施形態の混合機(702)は、ベルヌーイ効果を利用したエダクタ(eductor)であり得る。エダクタ(702)は、燃料ポンプ(400)によって加圧された液体状態のLNGを作動流体とし、VOC捕集タンク(200)からエダクタ(702)に移送される気体状態のVOCを吸入することができる。
【0085】
燃料ポンプ(400)によって加圧されたLNGは、約10bargまたはそれ以上にすることができる。しかし、これに限定されるものではない。燃料ポンプ(400)は、LNGを混合機(702)でVOCを凝縮できるほどの圧力まで圧縮する。
【0086】
混合機(702)では、LNGとVOCとが単一相で混合されて拡散噴射される。気体状態のVOCは圧縮された液体状態のLNGで拡散噴射されて凝縮され、LNGと液体状態で混合される。
【0087】
エダクタ(702)でLNGとVOCとが混合された混合燃料は、エダクタ(702)と高圧ポンプ(502)とを連結する混合燃料供給ライン(ML2)を介して高圧ポンプ(502)に移送される。
【0088】
高圧ポンプ(502)は、混合機(702)で混合されたLNGとVOCとの混合燃料をエンジン(1000)で必要とされるガス燃料の圧力まで、すなわち約380bar以上の高圧まで圧縮して気化器(602)に供給する。
【0089】
高圧ポンプ(502)によって高圧まで圧縮された混合燃料は、高圧ポンプ(502)と気化器(602)とを連結する混合燃料供給ライン(ML2)を介して気化器(602)に移送される。
【0090】
気化器(602)は、高圧ポンプ(502)によってエンジン(1000)で必要とされる高圧まで、すなわち本実施形態では、約380barまで圧縮された混合燃料を気体状態または超臨界状態に気化させる。
【0091】
気化器(602)で気化させた混合燃料ガスは、気化器(602)とエンジン(1000)とを連結する混合燃料供給ライン(ML2)を介してエンジン(1000)に供給される。
【0092】
燃料ポンプ(400)と混合機(702)との間には、燃料貯蔵タンク(300)から混合機(702)に移送されるLNGの流量を制御するLNGバルブ(図示せず)を設置することができる。
【0093】
次に、図3を参照して、本発明の第3の実施形態に係る原油運搬船の燃料供給システム及び燃料供給方法を説明する。本実施形態は、上述した第2実施形態の変更例であって、混合機(702)としてエダクタを備える第2の実施形態とは異なり、混合機(900)として凝縮器を備え、VOC圧縮機(800)を更に備える点で相違する。以下、この相違点を中心に説明し、同じ部材に関しては具体的な説明を省略する。具体的な言及や説明が省略されても同じ部材については、上述した第2の実施形態と同様のものを適用することができる。
【0094】
本実施形態に係る原油運搬船の燃料供給システムは、原油を貯蔵する1つ以上の原油貯蔵タンク(cargo tank、100)と、原油貯蔵タンク(100)で原油が蒸発して生成された揮発性有機化合物(VOC;Volatile Organic Compounds)を相変化させずにそのまま捕集するVOC捕集タンク(200)と、船舶のエンジン(1000)の燃料として使用する液化天然ガス(LNG)を貯蔵する燃料貯蔵タンク(300)と、燃料貯蔵タンク(300)で貯蔵されたLNGを加圧して燃料貯蔵タンク(300)から外部に排出させる燃料ポンプ(400)と、燃料ポンプ(400)によって加圧されたLNGとVOC捕集タンク(200)から移送されたVOCとを混合する混合機(900)と、VOC捕集タンク(200)から混合機(900)に供給するVOCを圧縮するVOC圧縮機(800)と、前記混合機(900)で混合された液体状態の混合燃料をエンジン(1000)で必要とされる圧力範囲まで圧縮する高圧ポンプ(503)と、高圧ポンプ(503)によって圧縮された混合燃料を気化させる気化器(603)と、燃料貯蔵タンク(300)に貯蔵されたLNGを気化器(603)を利用して気化させた天然ガス、VOC捕集タンク(200)に捕集されたVOCまたは気化器(603)によって気化させた混合燃料を燃料として使用するエンジン(1000)とを備える。
【0095】
VOC捕集ライン(VL1)は、原油貯蔵タンク(100)とVOC捕集タンク(200)とを連結し、原油貯蔵タンク(100)から排出されたVOCはVOC捕集ライン(VL1)を介してVOC捕集タンク(200)に移送される。
【0096】
原油貯蔵タンク(100)で原油が蒸発して生成されたVOCは気体状態であり、気体状態でVOC捕集ライン(VL1)を介して移送され、VOC捕集タンク(200)に気体状態で貯蔵される。
【0097】
同様に、本実施形態において、VOC捕集タンク(200)に貯蔵されるVOCは、原油貯蔵タンク(100)からVOC捕集タンク(200)に移送される間、VOC捕集タンク(200)に貯蔵される間、混合機(900)に移送される間に相変化が起こらない。
【0098】
また、本実施形態に係る燃料供給システムは、原油貯蔵タンク(100)からVOC捕集タンク(200)に移送されるVOCとVOC捕集タンク(200)から混合機(900)に移送される水分や窒素などの不純物を除去する前処理装置が設置されない。
【0099】
VOC捕集タンク(200)に捕集された気体状態のVOCはVOC捕集タンク(200)とVOC圧縮機(800)とを連結するVOC供給ライン(VL3)を介してVOC圧縮機(800)に移送される。
【0100】
VOC供給ライン(VL3)には、VOC捕集タンク(200)からVOC圧縮機(800)に移送されるVOCの流量を調節するVOCバルブ(CV)が設置される。
【0101】
VOCバルブ(CV)は、VOC捕集タンク(200)から混合機(900)に移送されるVOCの組成に基づいて制御することができる。その制御方法は、上述した第1の実施形態と同様の方法を適用することができる。
【0102】
本実施形態のエンジン(1000)は2行程(2-stroke)サイクルエンジンであって、ディーゼルサイクル(diesel cycle)を基準に動作することができる。
【0103】
燃料貯蔵タンク(300)に貯蔵されたLNGは、燃料ポンプ(400)によって加圧されて燃料ポンプ(400)と混合機(900)とを連結する燃料供給ライン(FL)を介して混合機(900)に移送される。
【0104】
本実施形態の混合機(900)は、燃料ポンプ(400)によって加圧されたLNGとVOC圧縮機(800)によって圧縮されたVOCとを混合して圧縮VOCを凝縮させる凝縮器(condensor)であり得る。
【0105】
燃料ポンプ(400)によって加圧されたLNGは、約10bargまたはそれ以上にすることができる。しかし、これに限定されるものではない。燃料ポンプ(400)は、LNGを混合機(900)でVOCを凝縮できるほどの圧力まで圧縮する。
【0106】
また、VOC圧縮機(800)は、圧縮ポンプ(400)がLNGを圧縮する圧力とほぼ同じ圧力(同等圧力)でVOCを圧縮することができる。
【0107】
混合機(900)でLNGとVOCとが混合された液体状態の混合燃料は、混合機(900)と高圧ポンプ(503)とを連結する混合燃料供給ライン(ML3)を介して高圧ポンプ(503)に移送される。
【0108】
高圧ポンプ(503)は、混合機(900)で混合されたLNGとVOCとの混合燃料をエンジン(1000)で必要とされるガス燃料の圧力まで、すなわち約380bar以上の高圧まで圧縮して気化器(603)に供給する。
【0109】
高圧ポンプ(503)によって高圧まで圧縮された混合燃料は、高圧ポンプ(503)と気化器(603)とを連結する混合燃料供給ライン(ML3)を介して気化器(603)に移送される。
【0110】
気化器(603)は、高圧ポンプ(503)によってエンジン(1000)で必要とされる高圧まで、すなわち本実施形態では、約380barまで圧縮された混合燃料を気体状態または超臨界状態で気化させる。
【0111】
気化器(603)で気化させた混合燃料ガスは、気化器(603)とエンジン(1000)とを連結する混合燃料供給ライン(ML3)を介してエンジン(1000)に供給される。
【0112】
燃料ポンプ(400)と混合機(900)との間には、燃料貯蔵タンク(300)から混合機(900)に移送されるLNGの流量を制御するLNGバルブ(図示せず)を設置することができる。
【0113】
従来のVOC処理システムは、冷凍サイクルを備えてVOCを液化させた後に貯蔵タンクで貯蔵したり、液化させたVOC、すなわち、LVOCを気化させてVOCを燃料として使用することができる一部のエンジンに供給していた。LVOCはVOCを液化させた物であるため、液化させる前に比べて相対的に高濃度の重炭化水素が含まれ、特に炭素数が多い重炭化水素が主に含まれている。
【0114】
一方、VOCを液化させる過程で液化されなかった沸点が非常に低い気体、例えば窒素、メタンやエタンなどの低炭素数の炭化水素などを含むSVOCは別に分離して、ボイラーやガスタービンの燃料として使用していた。
【0115】
従って、従来のVOC処理システムは、冷凍サイクル等に消費される消費電力が非常に高く、多くの空間が必要であり、高価なパッケージで構成されることで、費用が高かった。更に、VOCの成分は、原油貯蔵タンクでの滞留時間に応じて変化し、滞留時間が長いほど重炭化水素成分の含有量が高くなり、そのため燃料の供給が円滑でないという問題点もあった。
【0116】
また、ほとんどのエンジンは、窒素含有量の高いSVOCはもちろん重炭化水素の含有量が高いLVOCの燃焼ができないため、VOCをメタンに改質反応させて燃料で供給する方法も提案されている。しかし、改質反応自体が大量の熱源を必要とし、改質反応システム設備はその体積が大きく、船舶への適用において安全性が保証されないため、船舶で設置することは多くの負担があった。
【0117】
しかし、本発明では、VOCの前処理工程、VOCの改質工程、VOCの液化工程を省略し、VOCとLNGとを混合してエンジンの燃料として供給することにより、電力消費、設置空間(設置面積)による費用や物理的な空間の負担を大幅に低減することができる。また、有害なVOCを大気中に放出することなく、すべて回収して燃料として使用することができるため環境にも優しい。
【0118】
以上のように本発明に係る実施形態を説明した。先に説明した実施形態以外にも、本発明はその趣旨またはカテゴリを逸脱することなく、他の特定の形態で具体化できるという事実は、当該技術に通常の知識を有する者にとって自明である。したがって、上述した実施形態は、限定的なものではなく例示的なものであると考慮されるべきであり、そのため本発明は上述した説明に限定されず、添付された請求項のカテゴリとその均等の範囲内で変更することができる。
【符号の説明】
【0119】
100:原油貯蔵タンク
200:VOC捕集タンク
300:燃料貯蔵タンク
400:燃料ポンプ
501、502、503:高圧ポンプ
601、602、603:気化器
701、702、900:混合機
800:VOC圧縮機
1000:エンジン
VL1:VOC捕集ライン
VL2、VL3:VOC供給ライン
FL:燃料供給ライン
ML1、ML2、ML3:混合燃料の供給ライン

図1
図2
図3