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特許7538649無機質軽量被覆材および無機質軽量被覆材層の形成方法
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  • 特許-無機質軽量被覆材および無機質軽量被覆材層の形成方法 図1
  • 特許-無機質軽量被覆材および無機質軽量被覆材層の形成方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】無機質軽量被覆材および無機質軽量被覆材層の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/26 20060101AFI20240815BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20240815BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20240815BHJP
   C04B 14/40 20060101ALI20240815BHJP
   B28B 1/32 20060101ALI20240815BHJP
   E04B 1/90 20060101ALI20240815BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20240815BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C04B28/26
C04B22/08 A
C04B18/14 B
C04B14/40
B28B1/32 B
E04B1/90 E
E04B1/94 U
E04B1/80 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020135401
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022031022
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】常藤 光
(72)【発明者】
【氏名】谷辺 徹
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-171995(JP,A)
【文献】特開2019-172489(JP,A)
【文献】特開2005-187275(JP,A)
【文献】特表2007-507579(JP,A)
【文献】特開2018-171601(JP,A)
【文献】特開2019-166492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
B28B 1/32
E04B 1/80
E04B 1/90
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)珪酸アルカリと、セメント及び珪酸アルカリ以外のSiO含有無機粉末と、水とを含有する無機質結合材と、(B)ロックウールとを含有し、前記無機質結合材中の固形分の質量(S)とロックウールの質量(RW)の合計に対する前記無機質結合材中の水分の質量(W)の比率(W/(S+RW))が0.6~1.7、且つロックウールの質量(RW)に対する前記無機質結合材中の水分の質量(W)の比率(W/RW)が0.7~2.3である吹付け無機質軽量被覆材。
【請求項2】
上記無機質結合材中の固形分の質量(S)とロックウールの質量(RW)の合計に対する上記無機質結合材中の水分の質量(W)の比率(W/(S+RW))が0.6~1.3、且つロックウールの質量(RW)に対する前記無機質結合材中の水分の質量(W)の比率(W/RW)が0.7~1.5である請求項1記載の吹付け無機質軽量被覆材。
【請求項3】
(A)珪酸アルカリと、セメント及び珪酸アルカリ以外のSiO含有無機粉末と、水とを含有する無機質結合材と、(B)ロックウールとを別経路で吹付けガンへ圧送し、該吹付けガンに備わるそれぞれの噴射口より噴射し、(A)無機質結合材と(B)ロックウールとを合流混合させた上で、下地に請求項1又は2記載の無機質軽量被覆材からなる層を吹付け形成することを特徴とする無機質軽量被覆材層の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹付け無機質軽量被覆材(以下、単に「無機質軽量被覆材」ということがある。)に関する。詳しくは、天井面に厚く被覆可能且つ被覆時に発生する粉塵が少ない吹付け無機質軽量被覆材に関する。また、本発明は、天井面に厚く被覆可能で、被覆時に発生する粉塵が少なく、且つ壁面への被覆時に液だれが起こり難い、吹付け無機質軽量被覆材に関する。また、本発明は、無機質軽量被覆材層の形成方法に関する。詳しくは、無機質軽量被覆材を天井面に厚く被覆可能且つ被覆時に発生する粉塵が少ない無機質軽量被覆材層の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の部材に耐火性、防火性、吸音性又は断熱性等を付与する目的で、ロックウール等の繊維、及びセメントペースト等の結合材からなるロックウール吹付け材等の吹付け材が吹付けられている。この吹付け材の代表的なものであるロックウール吹付け材は、ロックウール、セメント及び水からなり、耐火性、施工性等の点で優れていることから広く使用されている(例えば特許文献1参照)。セメントは安価で優れた無機質結合材であるが、原料の石灰岩を高温で分解し更に二酸化珪素原料、酸化アルミニウム原料、酸化鉄原料等と高温で反応させ製造するため、製造時に温室効果ガスの代表である二酸化炭素を多く発生させてしまう。このため、セメントを主成分としない無機質結合材を用いた吹付け材及びそのための無機質結合材が望まれる。
【0003】
特定組成の岩綿繊維(ロックウール)の結合材として、リンケイ酸塩、アルカリケイ酸塩(例えば、水ガラス)、ジオポリマー類、コロイドシリカ又はコロイドアルミナを用いることができることの開示がされている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
ところで、結合材を繊維に噴射し合流させ吹付け材として吹付け材層を形成するときに、結合材を加圧した空気とともに噴射させる技術がある(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-348978号公報
【文献】特表2012-532830号公報
【文献】実公昭55-054755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、珪酸アルカリを主成分とする無機質スラリーをロックウールの結合材として、ロックウール吹付け材の半乾式工法による吹付工法に汎用的に用いられている装置を用いて、吹付け材層(ロックウール組成物からなる無機質軽量被覆材層)を製造しようと試みたところ、天井面に吹付け被覆したときに厚く被覆できない場合や粉塵が多く発生してしまう場合があることが判明した。また、壁面に吹付け被覆したときに、無機質軽量被覆材層に含まれる水分が垂れてしまう場合があることが判明した。本発明は、天井面に厚く被覆可能且つ被覆時に発生する粉塵が少ない無機質軽量被覆材を提供することを目的とする。また、本発明は、天井面に厚く被覆可能で、被覆時に発生する粉塵が少なく、且つ壁面への被覆時に液だれが起こり難い、無機質軽量被覆材を提供することを目的とする。また、本発明は、無機質軽量被覆材を天井面に厚く被覆可能且つ被覆時に発生する粉塵が少ない無機質軽量被覆材層の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、ロックウールと珪酸アルカリを含有する結合材の固形分との合計に対する当該結合材中の水との質量比、及び、ロックウールと珪酸アルカリを含有する結合材中の水との質量比を、それぞれ特定の範囲とすることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の(1)又は(2)で表す吹付け無機質軽量被覆材、及び(3)で表す無機質軽量被覆材層の形成方法である。
(1)(A)珪酸アルカリと、セメント及び珪酸アルカリ以外のSiO含有無機粉末と、水とを含有する無機質結合材と、(B)ロックウールとを含有し、前記無機質結合材中の固形分の質量(S)とロックウールの質量(RW)の合計に対する前記無機質結合材中の水分の質量(W)の比率(W/(S+RW))が0.6~1.7、且つロックウールの質量(RW)に対する前記無機質結合材中の水分の質量(W)の比率(W/RW)が0.7~2.3である吹付け無機質軽量被覆材。
(2)上記無機質結合材中の固形分の質量(S)とロックウールの質量(RW)の合計に対する上記無機質結合材中の水分の質量(W)の比率(W/(S+RW))が0.6~1.3、且つロックウールの質量(RW)に対する前記無機質結合材中の水分の質量(W)の比率(W/RW)が0.7~1.5である上記(1)の吹付け無機質軽量被覆材。
(3)(A)珪酸アルカリと、セメント及び珪酸アルカリ以外のSiO 含有無機粉末と、水とを含有する無機質結合材と、(B)ロックウールとを別経路で吹付けガンへ圧送し、該吹付けガンに備わるそれぞれの噴射口より噴射し、(A)無機質結合材と(B)ロックウールとを合流混合させた上で、下地に上記(1)又は(2)の無機質軽量被覆材からなる層を吹付け形成することを特徴とする無機質軽量被覆材層の形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、天井面に厚く被覆可能且つ被覆時に発生する粉塵が少ない吹付け無機質軽量被覆材が得られる。また、本発明によれば、天井面に厚く被覆可能で、被覆時に発生する粉塵が少なく、且つ壁面への被覆時に液だれが起こり難い、吹付け無機質軽量被覆材が得られる。
【0009】
また、本発明によれば、無機質軽量被覆材を天井面に厚く被覆可能且つ被覆時に発生する粉塵が少ない無機質軽量被覆材層の形成方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】半乾式ロックウール吹付け工法に用いる吹付け装置の一例を示す概略図である。
図2】ロックウール粒状綿の一例の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の無機質軽量被覆材は、(A)珪酸アルカリと、セメント及び珪酸アルカリ以外のSiO含有無機粉末と、水とを含有する無機質結合材と、(B)ロックウールとを含有し、前記無機質結合材中の固形分の質量(S)とロックウールの質量(RW)の合計に対する前記無機質結合材中の水分の質量(W)の比率(W/(S+RW))が0.6~1.7、且つロックウールの質量(RW)に対する前記無機質結合材中の水分の質量(W)の比率(W/RW)が0.7~2.3である。W/(S+RW)が0.6~1.7且つW/RWが0.7~2.3であると、天井面に吹付け無機質軽量被覆材層を形成するときに、厚み(吹付け厚)が70mm以上とすることができる。
【0012】
前記無機質結合材中の固形分の質量(S)とロックウールの質量(RW)の合計に対する前記無機質結合材中の水分の質量(W)の比率(W/(S+RW))が、0.6未満であると、天井面に吹付け無機質軽量被覆材層を形成するときに、厚み(吹付け厚)が不足するとともに、粉塵が多く発生する。また、W/(S+RW)が1.7を超えても、天井面に吹付け無機質軽量被覆材層を形成するときに、厚み(吹付け厚)が不足する。また、W/(S+RW)が、1.3より大きいと、壁面へ吹付け無機質軽量被覆材層を形成するときに、無機質軽量被覆材層に含まれる水分が垂れてしまう、即ち、液だれが発生する。W/(S+RW)が、1.3以下であると、壁面へ吹付け無機質軽量被覆材層を形成するときに液だれが発生しないことから好ましい。W/(S+RW)は、好ましくは、0.7~1.3、より好ましくは、0.75~1.3とする。この範囲では、天井面に吹付けたときに吹付け厚が90~120mm且つ壁面へ吹付けたときに液だれが生じない。更に好ましいW/(S+RW)は、0.8~1.2とする。この範囲では、天井面に吹付けたときに吹付け厚が100~120mm、壁面へ吹付けたときに液だれがより生じ難く且つ粉塵の発生がより少ない。
【0013】
ロックウールの質量(RW)に対する前記無機質結合材中の水分の質量(W)の比率(W/RW)が0.7未満であると、天井面に吹付け無機質軽量被覆材層を形成するときに、吹付け厚が不足する。また、W/RWが2.3を超えても、吹付け厚が不足する。W/RWは、好ましくは、0.7~1.5、より好ましくは0.8~1.4とする。この範囲では、W/(S+RW)が0.7~1.3であれば、天井面に吹付けたときに吹付け厚が90~120mm且つ壁面へ吹付けたときに液だれが生じない。更に好ましいW/RWは、天井面に吹付けたときに吹付け厚をより厚くできることから、0.88~1.35とする。最も好ましい、W/RWは、1.1~1.33とする。
【0014】
本発明において、ロックウールの質量(RW)に対する無機質結合材中の固形分の質量(S)比率(S/RW)が0.05~0.6であると、無機質軽量被覆材層の絶乾嵩密度が、0.09~0.5g/cmであることから好ましい。S/RWを0.09~0.35とすることがより好ましい。この範囲とすると、無機質軽量被覆材層の絶乾嵩密度が、0.14~0.20g/cmとすることができる。
【0015】
本発明に用いる珪酸アルカリとしては、メタ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸ナトリウム、水ガラス等の珪酸ナトリウム又は珪酸ナトリウム水溶液、珪酸リチウム又は珪酸リチウム水溶液、珪酸カリウム又は珪酸カリウム水溶液から選ばれる1種或いはこれらの2種以上を用いることが好ましい。更に、本発明に用いる珪酸アルカリとしては、メタ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸ナトリウム、水ガラス等の珪酸ナトリウム又は珪酸ナトリウム水溶液から選ばれる1種或いはこれらの2種以上を用いることが、入手し易く且つ結合材の反応性が高いことからより好ましい。本発明に用いる無機質結合材に含まれる珪酸アルカリ(固形分)の含有量は、無機質結合材の硬化性の観点から、無機質結合材の固形分中10~45質量%とすることが好ましく、15~45質量%とすることがより好ましく、更には、16~44質量%とすることが最も好ましい。
【0016】
本発明に用いる「セメント及び珪酸アルカリ以外のSiO含有無機粉末」としては、セメント及び珪酸アルカリ以外で主な化学組成としてSiOを含有する無機質粉末であり、例えば、高炉スラグ粉末,銅スラグ粉末,フェロニッケルスラグ粉末等の金属精錬におけるスラグ粉末,下水汚泥スラグ焼成物の粉末,都市ごみ溶融スラグの粉末,フライアッシュ,パルプスラッジ焼却灰,バイオマスボイラー焼却灰,下水汚泥焼却灰,籾殻灰,シリカフューム,廃ガラス粉砕物,廃陶磁器の粉砕物,タイルセルベン等の各産業から副生する主な化学組成としてSiOを含有する無機質粉末、珪石粉,珪藻土粉末,タルク粉末,カオリンやベントナト等の粘土鉱物の粉末,火山灰,火成岩粉末等のSiOを含有する鉱物(SiO含有鉱物)の粉末、火成岩焼成物の粉末やメタカオリン等のSiO含有鉱物の焼成物の粉末、コロイダルシリカ,合成シリカガラス,ホワイトカーボン,シリカゲル,沈降シリカ等のSiOを含有する無機質工業製品(SiO含有工業製品)の粉末が好ましい例として挙げられる。当該SiO含有無機粉末としては、ブレーン比表面積が2000cm/g以上のものが、結合材の硬化が早いことから好ましく、2500cm/g以上のものがより好ましい。また、本発明に用いるSiO含有無機粉末のブレーン比表面積の上限値としては、結合材の流動性を保持できる時間を長く取れることから、12000cm/g以下が好ましく、10000cm/g以下がより好ましい。本発明に用いる無機質結合材に含まれる「セメント及び珪酸アルカリ以外のSiO含有無機粉末」の含有量は、無機質結合材の硬化性の観点から、無機質結合材の固形分中55~90質量%とすることが好ましく、55~85質量%とすることがより好ましく、更には、56~84質量%とすることが最も好ましい。
【0017】
本発明における無機質結合材は、水、珪酸アルカリ、並びに、「セメント及び珪酸アルカリ以外のSiO含有無機粉末」を含有するものである。当該無機結合材は、これら成分以外に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ;酸化ナトリウム、酸化カリウム等のアルカリ酸化物;粘度調整剤や反応促進剤等の添加剤、フィラーや骨材等の増量材などから選ばれる1種又は2種以上のものを、本発明の効果を損なわない範囲で、含有していてもよい。また、当該無機質結合材には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポルトランドセメントやアルミナセメント等のセメントを含有していてもよい。
【0018】
本発明における無機質結合材は、含まれる固形分の質量(S)が無機結合材の質量に対し、2~60質量%、即ち固形分濃度が2~60質量%であることが、該無機質結合材を吹付けガンに備わる無機質結合材用の噴射口より噴射したときに、霧化し易いことから好ましい。より好ましい無機質結合材の固形分濃度は、液だれ抑止性及び低粉塵性の点から、9~35質量%とする。
【0019】
本発明に用いるロックウールとは、溶融炉で溶融された岩石や高炉スラグ等を主体とする材料が、急冷されながら、繊維化された素材(鉱物繊維)である。例えば、高炉スラグを主体とする材料より製造されたスラグウールなども含まれる。本発明に用いるロックウールとしては、好ましくは、繊維化された鉱物繊維を集めただけの原綿を解綿機等で細かくした粒状ロックウール(粒状綿)である。原綿を用いる場合は、圧送前に、解綿機等で細かくして用いられる。粒状ロックウールは、ロックウールの原綿を解砕、解綿、切断、分級(例えば、篩い分け)、造粒などの工程の一種又は二種以上の組み合わせを経て得られる。本発明におけるロックウールとして、粒状ロックウール(粒状綿)を用いる場合も、解綿機等で解した上で圧送することが、無機結合材と接触面が増すことから好ましい。図2に、粒状ロックウール(ロックウール粒状綿)の一例を示した。
【0020】
本発明の無機質軽量被覆材は、(A)珪酸アルカリと、セメント及び珪酸アルカリ以外のSiO含有無機粉末と、水とを含有する無機質結合材と、(B)ロックウールとを別経路で吹付けガンへ圧送し、該吹付けガンに備わるそれぞれの噴射口より噴射し、(A)無機質結合材と(B)ロックウールとを合流混合させることで製造することができる。
【0021】
本発明の無機質軽量被覆材層の形成方法は、(A)珪酸アルカリと、セメント及び珪酸アルカリ以外のSiO含有無機粉末と、水とを含有する無機質結合材と、(B)ロックウールとを別経路で吹付けガンへ圧送し、該吹付けガンに備わるそれぞれの噴射口より噴射し、(A)無機質結合材と(B)ロックウールとを合流混合させた上で、下地に上記の無機質軽量被覆材からなる層を吹付け形成することを特徴とする。本発明に使用する吹付けガン、無機質結合材の圧送装置、ロックウールの圧送装置は、半乾式工法のロックウール吹付け工法に使用する装置を好適に使用することができる。半乾式工法のロックウール吹付け工法におけるセメントスラリー(セメントペースト)の代わりに、(A)無機質結合材を用いる。
【0022】
図1に、半乾式ロックウール吹付け工法に用いる吹付け装置の一例の概略図を示した。この吹付け装置を用いる場合について、説明する。吹付け装置10は、吹付ガン1と、ロックウール圧送用ホース9と、解綿機20と、ブロワ14と、セメントスラリー圧送用ホース6と、セメントスラリー用圧送ポンプ7と、セメントスラリー用貯留槽8と、セメントスラリー用吸引ホース15とを具備する。解綿機20は、第一解綿部21と、第二解綿部22と、スクリューフィーダ24と、ホッパ23と、ロックウール圧送管26と、ロータリフィーダ(定量供給装置)25とを具備する。ロックウール11は、解綿機20のホッパ23に投入される。投入されたロックウール11は、第一解綿部21で解された後に、スクリューフィーダ24により第二解綿部22に送られ、この第二解綿部22で更に細かく解された後に、自重でロータリフィーダ25に落ち、ロータリフィーダ25内部の仕切りが回転することで、ロックウール圧送管26に定量供給される。ロックウール圧送管26に定量供給されたロックウールは、ブロワ14から送られてきた空気の流れにより、ロックウール圧送管26に連結してあるロックウール圧送用ホース9を通って、吹付ガン1のロックウール用の噴射口2より下地13に向かって噴射(吐出)する。セメントスラリー用貯留槽8に、セメントペースト4の代わりに、無機質結合材を貯留しておく。セメントスラリー用圧送ポンプ7の吸引口に接続した吸引ホース15の先をセメントスラリー用貯留槽8に貯留してある無機質結合材に挿しておく。セメントスラリー用圧送ポンプ7を稼働させると、セメントスラリー用吸引ホース15の先から吸われ、セメントスラリー圧送用ホース6を通り、接続してある吹付ガン1のセメントスラリー用通路を通って、その先端のセメントスラリー用の噴射口3から噴射(吐出)させる。噴射した無機質結合材は、図1におけるセメントスラリー4と同様に、霧化して、ロックウール用の噴射口2より噴射したロックール5と合流混合することで無機質軽量被覆材となり、下地13に吹付けられ、ロックウールとセメントスラリーとの合流混合物からなる無機質軽量被覆材層12と同様に、無機質軽量被覆材層が形成される。図1の半乾式ロックウール吹付け工法に用いる吹付け装置に用いられている吹付ガン1は、ロックウール用の噴射口2の中央付近にセメントスラリー用の噴射口3が配置されたセンターガンと呼ばれるものであるが、ロックウール用の噴射口2の周縁に複数のセメントスラリー用の噴射口3が配置されたリングガンと呼ばれる吹付けガンを、本発明の無機質軽量被覆材層の形成方法に使用することもできる。
【実施例
【0023】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0024】
[実施例1]
<無機質軽量被覆材層の形成>
以下の材料を用いて、無機質結合材を作製し、ロックウールとともに、半乾式工法のロックウール吹付け工法に使用する装置を使用して、セメントスラリーの代わりに作製した無機質結合材を用いて、天井面及び壁面の下地に吹付け、無機質軽量被覆材層を形成した。無機質結合材の配合、無機質軽量被覆材の組成割合(S/RW、W/RW、W/(S+RW))、を表1に示した。
<使用材料>
・珪酸アルカリ : 3号水ガラス(SiO2;29.03質量%,Na2O;9.47質量%,H2O;61.50質量%),記号;WG3
・セメント及び珪酸アルカリ以外のSiO含有無機粉末 : 高炉スラグ粉末(高炉スラグ微粉末4000,ブレーン比表面積;4130cm/g),記号;BSF
・水 : 千葉県佐倉市上水
・ロックウール : ロックウール粒状綿(太平洋マテリアル社製)
<無機質軽量被覆材の組成割合>
・S/RW : ロックウールの質量(RW)に対する無機質結合材中の固形分の質量(S)比率
・W/RW : ロックウールの質量(RW)に対する無機質結合材中の水分の質量(W)の比率
・W/(S+RW) : 無機質結合材中の固形分の質量(S)とロックウールの質量(RW)の合計に対する無機質結合材中の水分の質量(W)の比率
【0025】
<無機質軽量被覆材の評価>
下地に吹付けた無機質軽量被覆材について、以下の項目で評価した。その結果を表1に示した。
・絶乾嵩密度
天井面に吹付け形成した無機質軽量被覆材層から、内径80mmのロックウール専用切り抜き器で円柱状に切り抜き、乾燥機を用いて恒量になるまで105℃で乾燥させた。乾燥後の無機質軽量被覆材の質量(MDRY(g))と試料高さ(H(cm))を測定し、絶乾嵩密度(ρ(g/cm))を次式(1)により求めた。
ρ(g/cm)=MDRY(g)÷(4(cm)×4(cm)×π×H(cm)) ・・・・ (1)
絶乾嵩密度の評価は、0.21g/cm以上0.30g/cm以下を良好(記号;○)、0.20g/cm以下を最良(記号;◎)、0.31g/cm以上を不良(記号;×)とした。

・吹付け厚
天井面に吹付け形成した無機質軽量被覆材層に、ロックウール用の厚さ測定器(可動式の円盤の付いた針)の針を針先が下地に到達するまで刺し、無機質軽量被覆材層に刺さった針の長さを無機質軽量被覆材層の厚さ(吹付け厚)として求めた。
吹付け厚の評価は、70mm以上90mm未満を良好(記号;○)、90mm以上を最良(記号;◎)、70mm未満を不良(記号;×)とした。

・液だれ抑止性
壁面へ吹付け無機質軽量被覆材層を形成するときに、無機質軽量被覆材層に含まれる水分が垂れてしまう、即ち、液だれが発生したか否かで、液だれ抑止性を評価した。液だれ抑止性の評価は、液だれが生じなかった場合を良好(記号;○)、液だれが生じた場合を不良(記号;×)とした。

・低粉塵性
無機質軽量被覆材を天井面及び壁面に吹付けた時に、目視により粉塵発生量を確認し、セメントペーストを用いて吹付ける半乾式ロックウール吹付け工法と比べて、同程度の粉塵が発生している場合を良好(記号;○)、明らかに粉塵発生量が少ない場合を最良(記号;◎)、明らかに粉塵発生量が多い場合を不良(記号;×)と評価した。

・総合評価
絶乾嵩密度、吹付け厚、液だれ抑止性、低粉塵性の評価が、何れも良好(記号;○)又は最良(記号;◎)の場合、即ち何れか1つの評価でも不良(記号;×)の評価ではない場合を最良(記号;◎)、液だれ抑止性の評価のみ不良(記号;×)の評価の場合を良好(記号;○)、絶乾嵩密度、吹付け厚又は低粉塵性の評価のうち1つの評価でも不良(記号;×)の評価がある場合を不良(記号;×)と評価した。
【0026】
【表1】
【0027】
本発明の実施例に当たる試験No.1~19で製造される無機質軽量被覆材は、W/(S+RW)が0.6~1.7且つW/RWが0.7~2.3であり、天井面に吹付け無機質軽量被覆材層を形成したときに、厚み(吹付け厚)が70mm以上とすることができた。特に、W/(S+RW)が0.7~1.3且つW/RWが0.8~1.4であるものは、天井面に吹付け無機質軽量被覆材層を形成したときに、厚み(吹付け厚)が90~120mm以上とすることができ、且つ壁面へ吹付けたときに液だれが生じなかった。更に、W/(S+RW)が0.79~1.2且つW/RWが0.88~1.35であるものは、天井面に吹付けたときに吹付け厚が95~120mm、壁面へ吹付けたときに液だれが生じず且つ粉塵の発生が少なかった。特に、W/(S+RW)が0.8~1.2且つW/RWが1.1~1.33であるものは、天井面に吹付けたときに吹付け厚が100~120mm、壁面へ吹付けたときに液だれが生じず且つ粉塵の発生が少なかった。
【0028】
本発明の実施例に当たる試験No.1~19で製造される無機質軽量被覆材は、何れもS/RWが0.05~0.6であり、無機質軽量被覆材層の絶乾嵩密度が、0.1~0.3g/cmであった。更に、S/RWが0.09~0.5であるものは、無機質軽量被覆材層の絶乾嵩密度が、0.14~0.27g/cmであった。特に、S/RWが0.09~0.35であるものは、無機質軽量被覆材層の絶乾嵩密度が、0.14~0.20g/cmであった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、例えば、構造物の部材に防火性、吸音性又は断熱性等を付与する目的で、好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 吹付けガン(センターガン)
2 ロックウール用の噴射口
3 セメントスラリー用の噴射口
4 セメントスラリー
5 解されたロックウール
6 セメントスラリー圧送用ホース
7 セメントスラリー用圧送ポンプ
8 セメントスラリー用貯留槽
9 ロックウール圧送用ホース
10 吹付け装置(吹付けシステム)
11 ロックウール
12 ロックウールとセメントスラリーとの合流混合物からなる無機質軽量被覆材層
13 下地(壁)
14 ブロワ(送風機)
15 セメントスラリー用吸引ホース
20 解綿機
21 第一解綿部
22 第二解綿部
23 ホッパ
24 スクリューフィーダ
25 ロータリフィーダ(定量供給装置)
26 ロックウール圧送管
図1
図2