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特許7538655加工作業の支援装置および方法並びに加工作業の訓練方法、加工作業方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】加工作業の支援装置および方法並びに加工作業の訓練方法、加工作業方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20240815BHJP
   G09B 19/24 20060101ALI20240815BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20240815BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20240815BHJP
   B23B 47/24 20060101ALI20240815BHJP
   B23Q 11/04 20060101ALI20240815BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B23Q17/00 E
G09B19/24 Z
G09B19/00 Z
B23Q17/09 H
B23B47/24
B23Q11/04
B23Q17/24 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020141370
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037309
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 浩司
(72)【発明者】
【氏名】片桐 淳
(72)【発明者】
【氏名】松本 秀一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 成臣
(72)【発明者】
【氏名】原 順二
(72)【発明者】
【氏名】野田 修
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0019228(US,A1)
【文献】特開平06-335843(JP,A)
【文献】特開2017-080865(JP,A)
【文献】特開2017-001122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00、09、24
B23B 45/00
B23B 47/24
B23Q 11/04
G05B 19/4069
G09B 19/00、24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工部材と加工用工具との相対位置を検出する位置検出装置と、
作業者が前記加工用工具を前記被加工部材に押し付ける押圧力を検出する押圧力検出装置と、
情報を表示可能な表示装置と、
前記相対位置と前記押圧力とを関係付けて前記表示装置に表示する制御装置と、
を備え、
前記加工用工具は、前記被加工部材に対して貫通する穴あけ作業を行うドリルであり、
前記制御装置は、前記ドリルの加工角度と加工ストロークを前記表示装置の数値表示部に表示すると共に、前記ドリルの水平方向に対する加工角度と鉛直方向に対する加工角度をそれぞれ横軸と縦軸とする領域である前記表示装置の加工状態表示部に加工点をプロットして表示する、
加工作業の支援装置。
【請求項2】
前記制御装置は、加工作業後に前記加工角度と前記加工ストロークと前記押圧力とを前記表示装置に表示する、
請求項1に記載の加工作業の支援装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記加工角度と前記加工ストロークと前記押圧力とを時間軸に沿って前記表示装置に表示する、
請求項1または請求項2に記載の加工作業の支援装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記加工角度と前記加工ストロークと前記押圧力を前記表示装置に表示すると共に、前記加工角度と前記加工ストロークと前記押圧力に対する予め設定された模範データを前記表示装置に表示する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加工作業の支援装置。
【請求項5】
加工作業の開始信号を出力する開始スイッチを有し、前記制御装置は、前記開始信号が入力すると予め設定された所定時間の経過後に少なくとも前記位置検出装置および前記押圧力検出装置による検出を開始する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の加工作業の支援装置。
【請求項6】
被加工部材と加工用工具との相対位置を検出する工程と、
作業者が前記加工用工具を前記被加工部材に押し付ける押圧力を検出する工程と、
前記相対位置と前記押圧力とを関係付けて表示する工程と、
を有し、
前記加工用工具は、前記被加工部材に対して貫通する穴あけ作業を行うドリルであり、
前記ドリルの加工角度と加工ストロークを数値表示部に表示すると共に、前記ドリルの水平方向に対する加工角度と鉛直方向に対する加工角度をそれぞれ横軸と縦軸とする領域である加工状態表示部に加工点をプロットして表示する、
加工作業の支援方法。
【請求項7】
請求項6に記載の加工作業の支援方法を作業者による加工作業の訓練時に実施する加工作業の訓練方法。
【請求項8】
請求項6に記載の加工作業の支援方法を作業者による加工作業時に実施する加工作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加工用工具による加工作業を支援する加工作業の支援装置および方法並びに加工作業の訓練方法、加工作業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、作業者が加工用工具としてのドリルにより被加工部材としての板材に穴あけ加工を行う加工作業がある。この穴あけ作業は、板材における所定の位置に、且つ、所定の方向に沿って穴を形成する。この場合、初心者は、穴あけ作業を高精度に行うことが困難であることから、熟練者などが講師となり、穴あけ作業の訓練を実施する必要がある。ところが、講師の指導による訓練作業は、作業者にとって分かりにくく、理解に長時間を要していた。このような問題を解決する技術して、下記特許文献に記載されたものがある。この特許文献に記載されたものは、初心者である作業者の加工動作をモーションキャプチャにより取得し、取得した動作を模範的な加工動作と比較することで、作業者による加工作業を評価するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-333826号公報
【文献】特開2006-171184号公報
【文献】特開2019-200241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、モーションキャプチャにより取得した作業者の加工動作と模範的な加工動作とを比較して評価するだけでは、加工を高精度に実施することができない要因を把握することが難しい。作業者が加工用工具を持って加工作業を行うとき、加工用工具をどのタイミングで押圧するのか、また、押圧力をどのタイミングで減少させるのかを理解することが困難である。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、作業者による加工用工具を用いた加工作業に対する的確な支援を可能とする加工作業の支援装置および方法並びに加工作業の訓練方法、加工作業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の加工作業の支援装置は、被加工部材と加工用工具との相対位置を検出する位置検出装置と、作業者が前記加工用工具を前記被加工部材に押し付ける押圧力を検出する押圧力検出装置と、情報を表示可能な表示装置と、前記相対位置と前記押圧力とを関係付けて前記表示装置に表示する制御装置と、を備える。
【0007】
また、本開示の加工作業の支援方法は、被加工部材と加工用工具との相対位置を検出する工程と、作業者が前記加工用工具を前記被加工部材に押し付ける押圧力を検出する工程と、前記相対位置と前記押圧力とを関係付けて表示する工程と、を有する。
【0008】
また、本開示の加工作業の訓練方法は、前記加工作業の支援方法を作業者による加工作業の訓練時に実施する。
【0009】
また、本開示の加工作業方法は、前記加工作業の支援方法を作業者による加工作業時に実施する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の加工作業の支援装置および方法並びに加工作業の訓練方法、加工作業方法によれば、作業者による加工用工具を用いた加工作業に対する的確な支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態の加工作業の支援装置を表す概略構成図である。
図2図2は、加工用工具を表す側面図である。
図3図3は、加工用工具を表す平面図である。
図4図4は、本実施形態の加工作業の支援方法を表すフローチャートである。
図5図5は、加工中の取得データを表示する画面を表す概略図である。
図6図6は、加工後の取得データを表示する画面を表す概略図である。
図7図7は、加工後における加工作業の評価画面を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0013】
本実施形態の加工作業の支援装置は、作業者がドリル(加工用工具)により板材(被加工部材)に対して穴あけ作業を行うとき、この穴あけ作業(加工作業)を支援するものである。但し、加工用工具の種類、被加工部材の材質や形状、加工作業の種類は、上述したものに限定されるものではない。
【0014】
[加工用工具の構成]
図2は、加工用工具を表す側面図、図3は、加工用工具を表す平面図である。
【0015】
ドリル50は、エアドリルである。但し、電動ドリルであってもよい。ドリル50は、ドリル本体51と、チャック53と、刃先工具54と、スイッチ55とを備える。ドリル本体51は、グリップ52が一体に設けられる。以下、ドリル50に装着された刃先工具54を板材60に押し付ける方向を前方、刃先工具54を板材60から離間させる方向を後方として説明する。
【0016】
ドリル本体51は、後方(図2および図3の左方)側にグリップ52が一体に設けられる。モータは、ドリル本体51の内部に配置される。ドリル本体51は、前方側にチャック53が設けられる。チャック53は、刃先工具54を着脱可能である。チャック53に刃先工具54が装着された状態でモータを駆動すると、チャック53を介して刃先工具54を回転可能となる。スイッチ55は、グリップ52に設けられる。作業者がスイッチ55を操作すると、モータに対して電力の供給が可能となる。一方、板材60は、例えば、アルミなどの金属板であって、所定の厚さTを有する。
【0017】
[加工作業の支援装置の構成]
図1は、本実施形態の加工作業の支援装置を表す概略構成図である。
【0018】
本実施形態において、図1に示すように、加工作業の支援装置10は、作業者がドリル50により板材60に対して行う穴あけ作業を支援するものである。加工作業の支援装置10は、光学式センサ(位置検出装置)11と、面圧センサ(押圧力検出装置)12と、モニタ(表示装置)13と、制御装置14と、開始スイッチ15と、データベース16と、記録部17と、電源18とを備える。
【0019】
光学式センサ11は、例えば、複数(本実施形態では、3個)のカメラ21,22,23を有する。カメラ21,22,23に限るものではない。カメラ21,22,23は、支持部材24に所定距離を空けて配置される。光学式センサ11は、ドリル50と板材60との相対位置を検出する。光学式センサ11は、モーショントラッキング技術を用いてドリル50と板材60との相対位置を検出する。ドリル50は、所定距離だけ離れた位置にマーク(例えば、反射体)M1,M2,M3が設けられる。板材60は、複数の支持部材61により支持される。支持部材61は、所定距離だけ離れた位置にマーク(例えば、反射体)M11,M12,M13が設けられる。なお、板材60に直接マークM11,M12,M13を設けてもよい。マークM1,M2,M3,M11,M12,M13の数は、それぞれ3個に限定されるものではない。光学式センサ11は、有線または無線により制御装置14に接続される。光学式センサ11(カメラ21,22,23)は、取得したドリル50のマークM1,M2,M3の位置情報と、板材60のマークM11,M12,M13の位置情報を制御装置14に出力する。
【0020】
なお、上述の説明では、光学式センサ11として複数のカメラ21,22,23を適用し、ドリル50に複数のマーク(反射体)M1,M2,M3を設け、支持部材61に複数のマーク(反射体)M11,M12,M13を設けたが、この構成に限定されるものではない。例えば、光学式センサ11として単眼カメラを適用し、ドリル50や支持部材61に1つのLED発光体を設けてもよい。すなわち、複数の反射体を1つのLED発光体とし、1台のカメラでリアルタイムに3D位置座標を算出してもよい。
【0021】
面圧センサ12は、作業者がドリル50を板材60に押し付ける押圧力を検出する。面圧センサ12は、ドリル50のグリップ52に設けられる。面圧センサ12は、グリップ52における後方側で、刃先工具54の回転中心軸上に配置される。作業者がドリル50を使用するとき、グリップ52を握る。作業者は、グリップ52を握った状態でドリル50を前方に移動することで、刃先工具54を板材60に押し付けることができる。このとき、作業者は、手でグリップ52の面圧センサ12を押圧するため、面圧センサ12は、作業者がドリル50を板材60に押し付ける押圧力を検出することができる。面圧センサ12は、有線または無線により制御装置14に接続される。面圧センサ12は、検出した押圧力を制御装置14に出力する。
【0022】
モニタ13は、制御装置14に接続される。制御装置14は、後述する各種の情報をモニタ13に表示可能である。なお、表示装置は、モニタ13に限定されるものではなく、グラスディスプレイ等の他の表示装置であってもよい。
【0023】
制御装置14は、光学式センサ11が取得したドリル50のマークM1,M2,M3の位置情報および板材60のマークM11,M12,M13の位置情報と、面圧センサ12が検出した押圧力とを関係付けてモニタ13に表示する。すなわち、制御装置14は、ドリル50のマークM1,M2,M3の位置情報と、板材60のマークM11,M12,M13の位置情報とに基づいて、板材60に対するドリル50の加工角度A,Bと、板材60に対するドリル50の加工ストロークSを算出する。そして、制御装置14は、ドリル50の加工角度A,Bと加工ストロークSとを関係付けてモニタ13に表示する。
【0024】
このとき、制御装置14は、穴あけ加工作業中に、ドリル50の加工角度A,Bと加工ストロークSをモニタ13に表示する。また、制御装置14は、穴あけ加工作業後に、ドリル50の加工角度A,Bと加工ストロークSと押圧力をモニタ13に表示する。このとき、制御装置14は、ドリル50の加工角度A,Bと加工ストロークSと押圧力を時間軸に沿ってモニタ13に表示する。
【0025】
すなわち、制御装置14は、ドリル50の3次元形状に対するマークM1,M2,M3の位置(3次元座標)と、板材60の3次元形状に対するマークM11,M12,M13の位置(3次元座標)とが入力される。光学式センサ11は、異なる位置に配置されたカメラ21,22,23)が、ドリル50のマークM1,M2,M3と板材60のマークM11,M12,M13を3次元計測する。制御装置14は、ドリル50のマークM1,M2,M3と板材60のマークM11,M12,M13の位置を基準点が同じである座標データに変換して3次元データを生成する。制御装置14は、ドリル50および板材60の3次元データに基づいてドリル50の加工角度A,Bと加工ストロークSを算出する。
【0026】
なお、図2および図3に示すように、ドリル50の加工角度Aとは、板材60における正規の穴あけ方向とドリル50の刃先工具54の進入方向との水平方向に対する誤差角度である。ドリル50の加工角度Bとは、板材60における正規の穴あけ方向とドリル50の刃先工具54の進入方向との鉛直方向に対する誤差角度である。ここで、板材60における正規の穴あけ方向とは、板材60の表面60aに対して90度(直角)をなす方向であるが、90度に限定されるものではない。また、加工ストロークSとは、ドリル50の刃先工具54の先端が板材60の表面60aから進入して裏面60bを突き抜けたとき、板材60の表面60aから裏面60bを突き抜けた刃先工具54の先端までの距離である。
【0027】
また、グリップ52を持った作業者が穴あけ作業を実施するとき、制御装置14は、面圧センサ12が検出した電圧をAD変換して作業者の押圧力として取得する。すなわち、この押圧力Pとは、作業者がドリル50を板材60に押し付ける押圧力Pである。このとき、作業者は、板材60から押圧力Pと同等の反力Paを受ける。
【0028】
そして、制御装置14は、作業者がドリル50を用いた穴あけ作業時における加工角度A,Bと加工ストロークSと押圧力の作業データをモニタ13に表示すると共に、加工角度A,Bと加工ストロークSと押圧力における予め設定された模範データをモニタ13に表示する。この加工角度A,Bと加工ストロークSと押圧力の模範データは、例えば、事前に熟練者がドリル50を用いた穴あけ作業時に取得した加工角度A,Bと加工ストロークSと押圧力である。また、ドリル50を用いた穴あけ作業をシミュレーションして模範データを作成してもよい。
【0029】
開始スイッチ15は、作業者により操作可能である。開始スイッチ15は、制御装置14に接続される。作業者が開始スイッチ15を操作すると、制御装置14に加工作業の開始信号が出力される。制御装置14は、開始スイッチ15から開始信号が入力されると、予め設定された所定時間(例えば、2~5秒)の経過後に光学式センサ11および面圧センサ12による検出を開始する。
【0030】
データベース16は、ドリル50の3次元形状に対するマークM1,M2,M3の位置(3次元座標)のデータ、板材60の3次元形状に対するマークM11,M12,M13の位置(3次元座標)のデータを格納する。また、データベース16は、加工角度A,Bと加工ストロークSと押圧力の模範データを格納する。その他、データベース16は、加工作業の支援装置10が実施する支援方法などのプログラムを格納する。記録部17は、光学式センサ11および面圧センサ12による検出結果を記録する。制御装置14は、記録部17に記録された光学式センサ11および面圧センサ12による検出結果をモニタ13に表示可能である。電源18は、制御装置14に接続され、電力を光学式センサ11、面圧センサ12、モニタ13と、制御装置14、開始スイッチ15などに供給する。
【0031】
[加工作業の支援装置による支援方法]
図4は、本実施形態の加工作業の支援方法を表すフローチャート、図5は、加工中の取得データを表示する画面を表す概略図、図6は、加工後の取得データを表示する画面を表す概略図、図7は、加工後における加工作業の支援画面を表す概略図である。
【0032】
本実施形態の加工作業の支援方法は、板材60とドリル50との相対位置を検出する工程と、作業者がドリル50を板材60に押し付ける押圧力を検出する工程と、相対位置と押圧力とを関係付けて表示する工程とを有する。
【0033】
なお、本実施形態の加工作業の支援方法は、未熟な作業者による加工作業の訓練時に実施する加工作業の訓練方法として適用することができる。また、本実施形態の加工作業の支援方法は、作業者による実際の加工作業時に実施する加工作業方法として適用することができる。
【0034】
本実施形態の加工作業の支援方法において、図1および図4に示すように、作業者は、手でドリル50を持ち、板材60の前で加工作業の準備作業を行い、加工作業の準備作業が整うと、開始スイッチ15を操作(ON)する。ステップS11にて、制御装置14は、作業者が開始スイッチ15を操作したかどうか、つまり、開始スイッチ15から開始信号が入力したかどうかを判定する。ここで、開始信号が入力していないと判定(No)されると、何もしないでルーチンを抜ける。一方、開始信号が入力したと判定(Yes)されると、ステップS12に移行する。
【0035】
ステップS12にて、作業者が開始スイッチ15を操作してから、つまり、開始スイッチ15から開始信号が入力してから所定時間が経過したかどうかを判定する。ここで、所定時間が経過していないと判定(No)されると、このまま待機する。一方、所定時間が経過したと判定(Yes)されると、ステップS13に移行する。ステップS13にて、制御装置14は、光学式センサ11および面圧センサ12による検出を開始し、検出結果を記録部17に記録する。そして、ステップS14にて、制御装置14は、検出結果をモニタ13に表示する。
【0036】
図5に示すように、制御装置14は、穴あけ加工作業中に、ドリル50のマークM1,M2,M3の位置情報と、板材60のマークM11,M12,M13の位置情報とに基づいて、板材60に対するドリル50の加工角度A,Bを算出する。制御装置14は、ドリル50の加工角度A,Bと、板材60に対するドリル50の加工ストロークSをモニタ13に表示する。ここで、穴あけ加工作業におけるドリル50の加工角度A,Bと加工ストロークSが数値表示部31,32,33に表示される。また、ドリル50の加工角度A,Bが加工状態表示部34に加工点35として表示される。さらに、穴あけ加工作業中のドリル50の姿勢(傾き)がアニメーションによりリアルタイムで画像表示部36に表示される。
【0037】
図1および図4に戻り、ステップS15にて、制御装置14は、ドリル50の刃先工具54が所定量(例えば、3~10cm)後退したかどうかを判定する。作業者は、ドリル50の刃先工具54を前進させ、先端が板材60を貫通すると、穴あけ作業が完了するため、ドリル50の刃先工具54を後退させ、先端を板材60から抜き取る。制御装置14は、ドリル50の刃先工具54が所定量後退することで、穴あけ作業の完了を推定する。ここで、ドリル50の刃先工具54が所定量後退していないと判定(No)されると、処理を継続する。一方、ドリル50の刃先工具54が所定量後退したと判定(Yes)されると、ステップS16にて、光学式センサ11および面圧センサ12による検出を終了し、記録部17への検出結果の記録を終了する。そして、ステップS17にて、制御装置14は、検出結果をモニタ13に表示する。
【0038】
図6に示すように、制御装置14は、ドリル50の加工角度A,Bと、ドリル50の加工ストロークSと、押圧力を記録部17に記録している。制御装置14は、穴あけ加工作業後に、記録部17に記録されたドリル50の加工角度A,Bと加工ストロークSと押圧力をモニタ13に表示する。このとき、制御装置14は、ドリル50の加工角度A,Bと加工ストロークSと押圧力をモニタ13のグラフ表示部41に時間軸に沿って表示する。
【0039】
その後、ステップS18にて、図1および図4に戻り、作業者による穴あけ作業の評価をモニタ13に表示する。図7は、ドリル50の刃先工具54の先端位置に対する加工角度A,Bと加工ストロークSと押圧力の関係を表している。ここで、図7の実線が作業者データであり、図7の点線が模範データである。
【0040】
図7に示すように、作業者がドリル50による板材60の穴あけ作業を開始した時間t0から、時間t1を超えてドリル50の刃先工具54の先端が板材60を貫通した時間t2まで、作業者における加工角度A,Bは、適正範囲α,β内にある。しかし、ドリル50の刃先工具54の先端が板材60を貫通した時間t2以降で、作業者における加工角度A,Bが適正範囲α,βから外れてしまう。また、時間t0から時間t2まで、作業者における加工ストロークSは、上限値Sa以下である。しかし、ドリル50の刃先工具54の先端が板材60を貫通した時間t2以降で、作業者における加工ストロークSが上限値Saを大きく超えてしまう。
【0041】
そして、時間t0から時間t2までの押圧力の模範データを見ると、ドリル50の刃先工具54の先端が板材60を貫通する時間t2の直前の加工期間taでは、押圧力が徐々に減少していることがわかる。一方、時間t0から時間t2までの押圧力の作業者データを見ると、ドリル50の刃先工具54の先端が板材60を貫通する時間t2の直前の加工期間taでは、押圧力が徐々に上昇していることがわかる。例えば、板材60の裏面60bの近傍に配線などの構造物が存在していることがある。この場合、ドリル50の刃先工具54の先端が板材60を貫通した後の刃先工具54の突き出し量が大きいと、刃先工具54により構造物を損傷させてしまうおそれがある。そのため、板材60を貫通した後の刃先工具54の突き出し量を上限値Sa以下に抑える必要がある。
【0042】
押圧力の模範データでは、ドリル50の刃先工具54の先端が板材60を貫通する時間t2の直前の加工期間taで押圧力を徐々に減少させるため、時間t2以降の加工ストロークSの模範データが上限値Sa以下に抑えられる。一方、押圧力の作業者データでは、ドリル50の刃先工具54の先端が板材60を貫通する時間t2の直前の加工期間taで押圧力を徐々に上昇させているため、時間t2以降の加工ストロークSの作業者データが上限値Saを超えてしまっている。作業者は、ドリル50の刃先工具54の先端を高い押圧力で板材60に押し付けていたため、ドリル50の刃先工具54の先端が板材60を貫通したとき、板材60からの反力Paがなくなり、加工ストロークSが上限値Saを超えてしまったものと推測できる。
【0043】
このように作業者による穴あけ作業後に、ドリル50の加工角度A,Bと加工ストロークSと押圧力の作業者データと模範データとを比較表示することで、作業者による穴あけ作業を評価することができる。
【0044】
このように説明した本実施形態の加工作業の支援方法は、作業者による加工作業の訓練の合否判定や加工された板材60の品質の合否判定として利用することができる。訓練の合否判定としては、以下の項目の少なくとも一つが規定範囲を超えたら不合格とする。
1.加工角度A≦α
2.加工角度B≦β
3.加工ストローク≦Sa
4.押圧力≦Sa(加工期間taにて)
また、加工品質の合否判定としては、以下の項目の少なくとも一つが規定範囲を超えたら不合格とする。
1.加工角度A≦α
2.加工角度B≦β
3.加工ストローク≦Sa
【0045】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る加工作業の支援装置は、板材(被加工部材)60とドリル(加工用工具)50との相対位置を検出する光学式センサ(位置検出装置)11と、作業者がドリル50を板材60に押し付ける押圧力を検出する面圧センサ(押圧力検出装置)12と、情報を表示可能なモニタ(表示装置)13と、相対位置と押圧力とを関係付けてモニタ13に表示する制御装置14とを備える。
【0046】
第1の態様に係る加工作業の支援装置は、板材60とドリル50との相対位置と、ドリル50を板材60に押し付ける押圧力とを関係付けてモニタ13に表示することで、作業者がドリル50を用いた加工作業の状態を把握することができる。そのため、作業者によるドリル50を用いた加工作業に対する的確な支援を行うことができる。
【0047】
第2の態様に係る加工作業の支援装置は、光学式センサ11は、板材60に対するドリル50の加工角度A,Bと、板材60に対するドリル50の加工ストロークSを検出する。これにより、作業者がドリル50を用いて加工作業を行う場合、ドリル50の加工角度A,Bと加工ストロークSを表示することができ、加工作業に対する的確な支援を行うことができる。
【0048】
第3の態様に係る加工作業の支援装置は、制御装置14は、加工作業中にドリル50の加工角度A,Bと加工ストロークSをモニタ13に表示する。これにより、加工作業中に加工角度A,Bを修正することが可能となる。
【0049】
第4の態様に係る加工作業の支援装置は、制御装置14は、加工作業後にドリル50の加工角度A,Bと加工ストロークSと押圧力をモニタ13に表示する。これにより、加工作業後に作業者による加工作業を評価することができると共に、不具合などの要因を定量的に特定することができ、また、作業者による加工作業の習熟度の経過を把握することができる。
【0050】
第5の態様に係る加工作業の支援装置は、制御装置14は、ドリル50の加工角度A,Bと加工ストロークSと押圧力を時間軸に沿ってモニタ13に表示する。これにより、加工作業時の所定の経過における加工角度A,Bと加工ストロークSと押圧力との関係を把握することができ、作業者による加工作業での不具合などの要因を定量的に特定することができる。
【0051】
第6の態様に係る加工作業の支援装置は、制御装置14は、ドリル50の加工角度A,Bと加工ストロークSと押圧力をモニタ13に表示すると共に、加工角度A,Bと加工ストロークSと押圧力に対する予め設定された模範データをモニタ13に表示する。これにより、作業者による加工データと模範データとを比較することで、作業者による加工作業での不具合などの要因を的確に特定することができる。
【0052】
第7の態様に係る加工作業の支援装置は、加工作業の開始信号を出力する開始スイッチ15を有し、制御装置14は、開始信号が入力すると予め設定された所定時間の経過後に少なくとも光学式センサ11および面圧センサ12による検出を開始する。これにより、作業者による加工作業のデータを適正に記録することができると共に、所定時間を確保することで、作業者が開始スイッチ15を操作することによる作業姿勢の乱れを抑制することができる。
【0053】
第8の態様に係る加工作業の支援方法は、板材60とドリル50との相対位置を検出する工程と、作業者がドリル50を板材60に押し付ける押圧力を検出する工程と、相対位置と押圧力とを関係付けて表示する工程とを有する。これにより、作業者がドリル50を用いた加工作業の状態を把握することができる。そのため、作業者によるドリル50を用いた加工作業に対する的確な支援を行うことができる。
【0054】
第9の態様に係る加工作業の訓練方法は、加工作業の支援方法を作業者による加工作業の訓練時に実施する。これにより、作業者によるドリル50を用いた加工作業に対する的確な支援を行うことができ。作業者による加工作業の早期の習熟を可能とすることができる。
【0055】
第10の態様に係る加工作業方法は、加工作業の支援方法を作業者による加工作業時に実施する。これにより、作業者がドリル50を用いた加工作業の状態を把握することができる。そのため、作業者によるドリル50を用いた加工作業に対する的確な支援を行うことができ、加工作業における加工精度を向上することができる。
【0056】
なお、上述した実施形態では、作業者が開始スイッチ15を操作してから所定時間の経過後に光学式センサ11および面圧センサ12による検出を開始するように構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、作業者が所定の作業姿勢をとったら、自動的に光学式センサ11および面圧センサ12による検出を開始するように構成してもよい。この場合、カメラにより作業者の作業姿勢を検出したりしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 加工作業の支援装置
11 光学式センサ(位置検出装置)
12 面圧センサ(押圧力検出装置)
13 モニタ(表示装置)
14 制御装置
15 開始スイッチ
16 データベース
17 記録部
18 電源
21,22,23 カメラ
24 支持部材
31,32,33 数値表示部
34 加工状態表示部
35 加工点
41 グラフ表示部
50 ドリル
51 ドリル本体
52 グリップ
53 チャック
54 刃先工具
55 スイッチ
60 板材
60a 表面
60b 裏面
A,B 加工角度
S 加工ストローク
Sa 上限値
P 押圧力
Pa 反力
M1,M2,M3,M11,M12,M13 マーク
t1,t2 時間
ta 加工期間
α,β 適正範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7