(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】金属を蒸着させる方法及びステージ
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
C23C14/24 A
C23C14/24 D
(21)【出願番号】P 2020152938
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】599176344
【氏名又は名称】株式会社アドバンテック
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(74)【代理人】
【識別番号】100220696
【氏名又は名称】廣瀬 一郎
(72)【発明者】
【氏名】荒木 幹雄
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-213403(JP,A)
【文献】特開平05-230631(JP,A)
【文献】特開平11-264069(JP,A)
【文献】特開2012-188692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着装置チャンバ内に設置されたステージ(1)の表面の窪み部(3)における第1の接触部位(5)に金属ワイヤを接触させる金属ワイヤ接触工程と,
前記金属ワイヤが溶融して得られる溶融金属が,蒸発しつつ,前記窪み部(3)内を移動する溶融金属移動工程と
を含む,対象物に金属を蒸着させるための方法であって,
前記ステージ(1)の長手方向の長さをL
S
とし,前記窪み部(3)の長手方向の長さをL
C
としたときに,L
C
/L
S
の値が0.6以上0.82以下であり,
前記窪み部(3)のうち金属ワイヤを接触させる部位を第1の接触部位(5)とし,
前記ステージ(1)の一方の端の幅をW
R
とし,他方の端の幅をW
L
とし,前記ステージ(1)の前記一方の端から第1の接触部位(5)までの距離をL
F
としたときに,
L
F
/L
S
が0.1以上0.4であって,W
R
/W
L
の値が0.2以上0.6以下であり,
前記溶融金属移動工程において,前記溶融金属は,前記窪み部(3)内の低温部から高温部へと移動する方法。
【請求項2】
蒸着装置チャンバ内に設置され,対象物に金属を蒸着させるために溶融金属を蒸発させるためのステージ(1)であって,
前記ステージ(1)の表面は,前記溶融金属を収容するための窪み部(3)を有し,
前記ステージ(1)の長手方向の長さをL
Sとし,前記窪み部(3)の長手方向の長さをL
Cとしたときに,L
C/L
Sの値が0.6以上0.82以下
であり,
前記窪み部(3)のうち金属ワイヤを接触させる部位を第1の接触部位(5)とし,
前記ステージ(1)の一方の端の幅をW
R
とし,他方の端の幅をW
L
とし,前記ステージ(1)の前記一方の端から第1の接触部位(5)までの距離をL
F
としたときに,
L
F
/L
S
が0.1以上0.4であって,W
R
/W
L
の値が0.2以上0.6以下である,ステージ。
【請求項3】
請求項2に記載のステージを含む蒸着システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,金属を蒸着させる方法及び金属膜蒸着のための蒸発器(ステージ)に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2011-510178号公報には,金属膜蒸着のための蒸発器(ステージ)が記載されている。蒸発器は,例えば,ロールツーロール(R2R)の蒸着装置の金属蒸発ステージとして用いられる。金属膜を蒸着する際に,金属ワイヤは一般にロールツーロール(R2R)用の蒸発器に連続的に供給される。そして,蒸発器が高温になると金属ワイヤが溶融して,対象となる基盤への蒸着が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蒸着膜厚が均一となるようにするためには,溶融金属がステージ表面の窪み部において均一な厚さで濡れることが望ましい。そして,溶融金属の均一な濡れ性を確保するためには,溶融金属の温度が均一であることが望まれる。これが実現できれば,スプラッシュ等の発生を防ぎ,対象物に均一な厚さの蒸着膜を形成することができる。
【0005】
この明細書に記載されるある発明は,溶融金属の温度分布が均一となり,対象物に均一な厚さの蒸着膜を形成できる金属蒸着方法,及び金属膜蒸着のための蒸発器(ステージ)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ステージ上で金属が溶融する際に,金属が溶融した部位の温度が下がる。そして,溶融した金属が広がっていく際には,金属に触れて温度が下がってしまった部位より,広がる先の方が,わずかに温度が高い。この温度差を調整することで,溶融金属の温度分布を均一にすることができる。
【0007】
この明細書の第1の発明は,対象物に金属を蒸着させるための方法に関する。
この方法は,金属ワイヤ接触工程と,溶融金属移動工程とを含む。
金属ワイヤ接触工程は,蒸着装置チャンバ内に設置されたステージ1の表面の窪み部3における第1の接触部位5に金属ワイヤを接触させる工程である。
溶融金属移動工程は,金属ワイヤが溶融して得られる溶融金属が,蒸発しつつ,窪み部3内を移動する工程である。溶融金属移動工程において,溶融金属は,窪み部3内の低温部から高温部へと移動する。
【0008】
上記の方法の好ましい例は,ステージ1の長手方向の長さをLSとし,窪み部3の長手方向の長さをLCとしたときに,LC/LSの値が0.6以上0.82以下の方法である。
【0009】
上記の方法の好ましい例は,ステージ1の一方の端の幅をWRとし,他方の端の幅をWLとし,ステージ1の一方の端から第1の接触部位5までの距離をLFとしたときに,LF/LSが0.1以上0.4であって,WR/WLの値が0.2以上0.6以下の方法である。
【0010】
上記の方法の好ましい例は,ステージ1の一方の端の幅をWRとし,他方の端の幅をWLとし,ステージ1の一方の端から第1の接触部位5までの距離をLFとしたときに,LF/LSが0.4以上0.6であって,WR/WLの値が0.8以上1.2以下の方法である。
【0011】
この明細書の第2の発明は,蒸着装置チャンバ内に設置され,対象物に金属を蒸着させるために溶融金属を蒸発させるためのステージ1に関する。ステージ1の表面は,溶融金属を収容するための窪み部3を有し,ステージ1の長手方向の長さをLSとし,窪み部3の長手方向の長さをLCとしたときに,LC/LSの値が0.6以上0.82以下である,ステージ。
【0012】
このステージ1の好ましい例は,ステージ1の一方の端の幅をWRとし,他方の端の幅をWLとし,ステージ1の一方の端から第1の接触部位5までの距離をLFとしたときに, LF/LSが0.1以上0.4であって,WR/WLの値が0.2以上0.6以下である。
【0013】
このステージ1の好ましい例は,ステージ1の一方の端の幅をWRとし,他方の端の幅をWLとし,ステージ1の一方の端から第1の接触部位5までの距離をLFとしたときに, LF/LSが0.4以上0.6であって,WR/WLの値が0.8以上1.2以下である。
【0014】
この明細書は,上記したいずれかのステージを含む蒸着システムをも提供する。
【発明の効果】
【0015】
この明細書に記載される発明によれば,溶融金属の温度分布が均一となり,対象物に均一な厚さの蒸着膜を形成できる金属蒸着方法,及び金属膜蒸着のための蒸発器(ステージ)を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は,本発明のステージを説明するための概念図である。
【
図2】
図2は,ステージの
図1とは別の例を示す概念図である。
【
図3】
図3は,裏面に粗面化部を有するステージを説明するための概念図である。
【
図4】
図4は,裏面に放熱材層を有するステージを説明するための概念図である。
【
図5】
図5は,溶融金属蒸発システムを説明するための概念図である。
【
図6】
図6は,蒸着装置を説明するための概念図である。
【
図7】
図7は,従来の蒸着装置を用いた際の溶融金属の様子を示す図面に代わる写真である。
【
図8】
図8は,従来の蒸着装置を使用し続けた後の蒸着装置を示す図面に代わる写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0018】
図1は,本発明のステージを説明するための概念図である。ステージ1は,蒸着装置チャンバ内に設置され,溶融金属を蒸発させるために用いられる。蒸着装置チャンバは,通常内部を真空にひいた状態で,対象物の表面に金属薄膜を蒸着させるために用いられる。ステージ1の(上方)表面には,溶融金属を収容するための窪み部3が設けられる。窪み部3は,周囲に比べて低くなっている箇所を意味する。ステージ1の表面には窪み部3が設けられるので,窪み部3の周囲には壁4が形成されている。
【0019】
窪み部3の(中央領域の)幅をWCとすると,WCの例は,15mm以上60mm以下であり,20mm以上40mm以下でもよいし,25mm以上36mm以下でもよい。窪み部3の深さは一定であることが好ましい。深さの例は,0.5mm以上4mm以下であり,0.5mm以上3mm以下でもよいし,1mm以上2mm以下でもよい。
【0020】
ステージ1の長手方向の長さをLSとし,窪み部3の長手方向の長さをLCとしたときに,LC/LSの値が0.6以上0.82以下である。ステージの両端には通常電極が存在し,この部分は冷却される。すると,電極付近は温度が下がってしまう。この電極付近の温度が低下するという現象と,金属ワイヤや溶融金属と接触した部分の温度が下がるという現象を考慮し,窪み部の大きさや位置を制御すると,溶融金属の温度を均一に維持できることとなる。この例では,従来のステージに比べてキャビティ(窪み部)の長さが短いので,低温の電極部位による影響を軽減できる。このLC/LSの値が小さいほど,ステージの幅が大きいので,電極付近による温度低下を抑えることができる。一方,この値が小さいと窪み部3の表面積が小さくなるので,ステージを大きくする必要が生ずる。このような観点から,LC/LSの値は,0.6以上0.8以下でもよいし,0.6以上0.7.5以下でもよいし,0.6以上0.7以下でもよいし,0.65以上0.8以下でもよいし,0.7以上0.8以下でもよいし,0.75以上0.8以下でもよいし,0.65以上0.75以下でもよい。
【0021】
LSの例は,65mm以上260mm以下であり,100mm以上160mm以下でもよいし,110mm以上150mm以下でもよいし,120mm以上140mm以下でもよい。
【0022】
このステージ1の好ましい例は,ステージ1の一方の端の幅(ステージ1の長手方向の幅)をWRとし,他方の端の幅(ステージ1の長手方向の幅)をWLとし,ステージ1の一方の端から第1の接触部位5までの距離をLFとしたときに, LF/LSが0.1以上0.4以下であって,WR/WLの値が0.2以上0.6以下のものである。WR及びWLは,ステージ1の端部と窪み部との間の距離ともいえる。WR/WLの値は0.2以上0.6以下であり,0.2以上0.55以下でもよいし,0.2以上0.5以下でもよいし,0.2以上0.4以下でもよいし,0.3以上0.6以下でもよいし,0.4以上0.6以下でもよいし,0.5以上0.6以下でもよいし,0.3以上0.5以下でもよいし,0.35以上0.45以下でもよい。
LF/LSの値は0.1以上0.4以下であり,0.1以上0.35以下でもよいし,0.1以上0.3以下でもよいし,0.1以上0.25以下でもよいし,0.2以上0.4以下でもよいし,0.25以上0.4以下でもよいし,0.3以上0.4以下でもよいし,0.25以上0.35以下でもよいし,0.3以上0.35以下でもよい。
第1の接触部位5は,窪み部3のうち金属ワイヤを接触させる部位である。この第1の接触部位5は通常同一箇所である。一方,窪み部3及び溶融金属の温度を求めて,その求めた温度に基づいて,接触部位を第2の接触部位へ移動させてもよい。第1の接触部位5は,窪み部3に溶融金属が存在しない状態で最初に金属ワイヤが接触する部位である。金属ワイヤの金属は,対象物の表面に蒸着させたい金属であればよい。そのような金属の例は,アルミニウム,金,プラチナ,銀,及び銅である。金属ワイヤは通常線状のものであり,ステージ1外から供給され,第1の接触部位5において窪み部3(又は溶融金属)と接触することで,接触した部分が溶解し,溶融金属となる。この例は,WRとWLとが異なる態様のものである。
【0023】
図2は,ステージの
図1とは別の例を示す概念図である。この例では,左右の壁の厚さ(W
R,W
L)に大きな隔たりがないものである。L
F/L
Sが0.4以上0.6以下であって,W
R/W
Lの値が0.8以上1.2以下である。この例では,L
F/L
Sが0.4以上0.6以下であり,0.4以上0.6以下でもよく,0.4以上0.55以下でもよく,0.4以上0.5以下でもよく,0.45以上0.6以下でもよく,0.5以上0.6以下でもよく,0.45以上0.55以下でもよく,0.45以上0.5以下でもよく,0.5以上0.55以下でもよい。この例では,W
R/W
Lの値が0.8以上1.2以下であり,0.8以上1.1以下でもよく,0.8以上1以下でもよく,0.8以上0.9以下でもよく,0.9以上1.2以下でもよく,1以上1.2以下でもよく,1.1以上1.2以下でもよく,0.95以上1.15以下でもよく,0.9以上1.1以下でもよい。
【0024】
蒸発器(ステージ)は,例えば2つの電極6a,6b(
図5を参照)により左右から支えられている。そして,2つの電極は,通常液体により冷却されている。このため,電極を通じて熱損失がおこり、蒸発器端部の温度が低下する。電極6a,6bは,6~8kW/hの電力を消費し,これにより高温となる。
【0025】
図3は,裏面に粗面化部を有するステージを説明するための概念図である。
図3に示す例では,ステージの裏面のうち中央部領域11に,粗面化部13を有する。中央領域は,裏面の重心部分を含む領域であり,裏面全体の10%以上80%以下(20%以上70%以下,30%以上60%以下,40%以上50%以下,又は20%以上50%以下)の面積を占める部位である。粗面化部は,表面積を大きくし,これにより熱の放出を大きくするために設けられる。粗面化部とは,周囲に比べて表面粗さが粗い部分を意味する。粗面化部は,例えば粗面化部以外をマスクしたサンドブラストにより表面を荒くしてもよいし,化学的なエッチングにより表面を荒くすることにより得てもよい。例えば,粗面化しない部分をマスクした状態で,粗面化処理を施せばよい。粗面化部13は表面粗さの値であるRz値が8以上14以下(好ましくは,9以上13以下,又は9.5以上12.5以下,又は10以上12以下)であり,Ra値が0.65以上1.5以下(好ましくは0.7以上1.4以下,又は0.8以上1.3以下)であってもよい。これらの値は,JIS B 0601-2001に準拠して求めればよい。
【0026】
図4は,裏面に放熱材層を有するステージを説明するための概念図である。
図4に示す例では,ステージの裏面のうち中央部領域11に,放熱材層15を有する。そして,放熱材層15は輻射率が0.01以上0.4以下であるものが好ましい。所定の輻射率を有する放熱体は,例えば特許6266162号公報,特許6196078号公報に記載される通り,公知である。放熱材層は,ステージの他の部位に比べて輻射率が高い層を意味する。
【0027】
次に,溶融金属蒸発システムについて説明する。
図5は,溶融金属蒸発システムを説明するための概念図である。
図5に示される通り,この溶融金属蒸発システム19は,複数のステージ1を有する。そして,複数のステージのそれぞれは,中央部領域7に短軸21を有する形状を有し,複数のステージは,それぞれの長軸23が平行となるように隣接して設置される。換言すると,
図5に示される例では,複数のステージが横一列になるように配置される。そして,複数のステージの間隔W
Sは,窪み部3の(中央領域の)幅をW
Cとすると,W
C/10以上W
C/4以下であり,W
C/8以上W
C/6以下でもよいし,W
C/10以上W
C/5以下でもよいし,W
C/5以上W
C/4以下でもよい。
図5のステージは,多角形状の窪み部を有している。窪み部の形状は四角形に限定されず,多角形や楕円形状であってもよい。
【0028】
次に,溶融金属蒸発システムの使用方法について説明する。ステージ1は,溶融金属蒸発システムの一部をなす。
溶融金属蒸発システムを使用することで,対象物に金属を蒸着させることができる。
例えば,真空チャンバ(蒸着装置チャンバ)内に,対象物とステージとを設置する。またステージの所定の位置に金属ワイヤを供給できるようにする。そして,蒸着装置チャンバ内を真空にひく。ステージの両端の電極に通電し,ステージを加熱する。ステージの温度がある値となった後に,蒸着装置チャンバ内に設置されたステージ1の表面の窪み部3における第1の接触部位5に金属ワイヤを接触させる。この工程は,金属ワイヤの供給装置を用いて,金属ワイヤを窪み部方向に押し出すことで,実現できる。
すると,窪み部に接触した金属ワイヤは溶解し,溶融金属となる。さらに,金属ワイヤを窪み部に供給する。すると,金属ワイヤは溶融金属や窪み部と接触し,溶解する。すると,溶融金属が次第に多くなる。多くなった溶融金属は,少しずつ蒸発し,対象物表面に蒸着する。一方,多くなった溶融金属は,窪み部3内を移動する。溶融金属は,窪み部3内の低温部から高温部へと移動する。低温部とは,窪み部のうち金属ワイヤや溶融金属と接触することで温度が下がった部分である。この発明では,電極側の冷却機構により窪み部の温度が下がっても,溶融金属が広がる場合,温度が高い方向に溶融金属が移動するように,ステージや金属ワイヤの供給場所を制御するものである。溶融金属が,窪み部の低温部から高温部へと移動するのは,窪み部全体に溶融金属がいきわたる期間中継続されることが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下,実施例を用いて本発明を具体的に説明する。本発明は,上記の実施の態様及び以下の実施例に限定されるものではなく,公知の要素を適宜含めたものも本発明に含まれる。
【0030】
[比較例1]
図6は,蒸着装置を説明するための概念図である。蒸着装置は,例えば矩形の窪み部の中心にワイヤを送り込む。送り込み速度の例は,1500mm/分であり,アルミニウムワイヤーを用いる場合は,蒸発装置1つあたり約10g/分である。ステージの大きさは,例えば,およそ130mm×35mm×10mmの四角柱であり,表面部分に
図6に示されるように長方形の窪み部を有する。窪み部は,例えば120mm×31mm×1mmであった。
【0031】
図7は,従来の蒸着装置を用いた際の溶融金属の様子を示す図面に代わる写真である。
図7に示されるように,従来の蒸着装置を用いると,濡れ性が一様ではなく,両端に溶融金属が偏っている。このように溶融金属が偏っているので,対象物に均一な蒸着膜を形成することは困難であった。
【0032】
図8は,従来の蒸着装置を使用し続けた後の蒸着装置を示す図面に代わる写真である。
図8に示されるように,従来の蒸着装置を用い続けると,中央部分が摩耗してすり減ることが分かる。
【0033】
[実施例1]
図1に示されるタイプのステージを作製した。ステージの大きさは,およそ130mm×35mm×10mmの四角柱であった。窪み部は,94mm×31mm×1mmであった。WR及びWLはそれぞれ10mm及び26mmであった。
【0034】
[実施例2]
図2に示されるタイプのステージを作製した。ステージの大きさは,およそ130mm×35mm×10mmの四角柱であった。窪み部は,94mm×31mm×1mmであった。WR及びWLはともに18mmであった。
【0035】
コンピュータシミュレーションを用いて,実施例1及び実施例2のステージを利用した際の溶融金属の濡れ性評価を行った。また,コンピュータシミュレーションを用いて,溶融金属及び窪み部の各部位の温度変化を求めた。その結果,本発明のステージを用いることで,溶融金属の濡れ性が均一化し,ステージ全体に溶融金属がいきわたることが分かった。また,溶融金属は,常に窪み部内の低温部(溶融金属が存在する窪み部の部位)から高温部(溶融金属が移動する窪み部の部位)へと移動しつつ,窪み部を充填することが分かった。このため,この発明のステージを用いれば,溶融金属の温度が均一となり,対象物に均一な蒸着膜を形成できると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は,金属蒸着の分野で利用されうる。
【符号の説明】
【0037】
1 ステージ
3 窪み部
4 壁
5 第1の接触部位
7 金属ワイヤ
11 裏面の中央部領域
13 粗面化部
15 放熱材層
21 短軸
23 長軸