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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
A61B3/16 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020161971
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022002677
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2020108133
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】石倉 靖久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 崇
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-112438(JP,A)
【文献】特開平04-144536(JP,A)
【文献】特表平10-509890(JP,A)
【文献】米国特許第05857969(US,A)
【文献】特開平06-225857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧平した角膜の変形状態に基づいて被検眼の眼圧値を測定する眼科装置であって、
前記角膜に空気を吹き付ける空気吹付ユニットと、
前記被検眼に向けられた一端から前記空気を噴射するノズルを有し、前記空気吹付ユニットに着脱可能なノズルユニットと、
前記ノズルの他端に対向する位置に設けられた透光性を有する光学部材と、
前記ノズル及び前記光学部材が主光軸上に配置されると共に前記角膜の変形状態を検出する測定光学系と、を備え、
前記ノズルユニットは、前記ノズルの軸方向を前記主光軸に一致させる位置決め機構を介して前記空気吹付ユニットに装着されると共に、前記ノズルと、前記ノズルが中心を貫通するノズル保持部材と、を有し、
前記空気吹付ユニットは、前記空気を貯留すると共に前記光学部材が取り付けられたチャンバーと、前記チャンバーに形成されて前記主光軸上に位置するノズル取付開口と、を有し、
前記位置決め機構は、前記ノズル取付開口に装着されると共に軸方向が前記主光軸に一致する筒状のコネクタ部と、軸方向に延びるスリットが形成されたスリーブと、を備え、前記スリーブの一方の開口に前記コネクタ部が挿入され、前記スリーブの他方の開口に前記ノズル保持部材が挿入されることにより、前記ノズルの軸方向を前記主光軸に一致させる
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
請求項1に記載された眼科装置において、
前記ノズル保持部材は、ネジ部材を介して前記空気吹付ユニットに固定される
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
圧平した角膜の変形状態に基づいて被検眼の眼圧値を測定する眼科装置であって、
前記角膜に空気を吹き付ける空気吹付ユニットと、
前記被検眼に向けられた一端から前記空気を噴射するノズルを有し、前記空気吹付ユニットに着脱可能なノズルユニットと、
前記ノズルの他端に対向する位置に設けられた透光性を有する光学部材と、
前記ノズル及び前記光学部材が主光軸上に配置されると共に前記角膜の変形状態を検出する測定光学系と、を備え、
前記ノズルユニットは、前記ノズルの軸方向を前記主光軸に一致させる位置決め機構を介して前記空気吹付ユニットに装着されると共に、前記ノズルと、前記ノズルが中心を貫通するノズル保持部材と、を有し、
前記空気吹付ユニットは、前記空気を貯留すると共に前記光学部材が取り付けられたチャンバーと、前記チャンバーに形成されて中心が前記主光軸上に位置するノズル取付開口と、を有し、
前記位置決め機構は、前記ノズル保持部材の外周面に形成された第1テーパ面と、前記ノズル取付開口の内周面に形成された第2テーパ面とを備え、前記第1テーパ面と前記第2テーパ面とが接触することにより、前記ノズルの軸方向を前記主光軸に一致させる
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項4】
請求項3に記載された眼科装置において、
前記ノズル保持部材は、ネジ部材を介して前記ノズル取付開口に固定される
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項5】
圧平した角膜の変形状態に基づいて被検眼の眼圧値を測定する眼科装置であって、
前記角膜に空気を吹き付ける空気吹付ユニットと、
前記被検眼に向けられた一端から前記空気を噴射するノズルを有し、前記空気吹付ユニットに着脱可能なノズルユニットと、
前記ノズルの他端に対向する位置に設けられた透光性を有する光学部材と、
前記ノズル及び前記光学部材が主光軸上に配置されると共に前記角膜の変形状態を検出する測定光学系と、を備え、
前記ノズルユニットは、前記ノズルの軸方向を前記主光軸に一致させる位置決め機構を介して前記空気吹付ユニットに装着されると共に、前記ノズルと、前記ノズルが中心を貫通するノズル保持部材と、を有し、
前記空気吹付ユニットは、前記空気を貯留すると共に前記光学部材が取り付けられたチャンバーと、前記チャンバーに形成されて前記主光軸上に位置するノズル取付開口と、を有し、
前記位置決め機構は、前記ノズル取付開口に装着されると共に、軸方向が前記主光軸に一致し先端に向かって細くなる通路から複数のチャック爪が出没する把持部材を備え、前記複数のチャック爪によって前記ノズル保持部材の周縁部を把持することにより、前記ノズルの軸方向を前記主光軸に一致させる
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項6】
圧平した角膜の変形状態に基づいて被検眼の眼圧値を測定する眼科装置であって、
前記角膜に空気を吹き付ける空気吹付ユニットと、
前記被検眼に向けられた一端から前記空気を噴射するノズルを有し、前記空気吹付ユニットに着脱可能なノズルユニットと、
前記ノズルの他端に対向する位置に設けられた透光性を有する光学部材と、
前記ノズル及び前記光学部材が主光軸上に配置されると共に前記角膜の変形状態を検出する測定光学系と、を備え、
前記ノズルユニットは、前記ノズルの軸方向を前記主光軸に一致させる位置決め機構を介して前記空気吹付ユニットに装着されると共に、前記ノズルと、前記ノズルが中心を貫通する円筒状のノズル保持部材と、を有し、
前記空気吹付ユニットは、前記空気を貯留すると共に前記光学部材が取り付けられたチャンバーと、前記チャンバーに形成されて前記主光軸上に位置すると共に前記ノズルユニットが差し込まれる円形のノズル取付開口と、を有し、
前記ノズル保持部材は、前記ノズル取付開口に臨む外周面に係合部が形成され、
前記ノズル取付開口は、前記ノズルユニットが差し込まれた際、前記係合部が係合する被係合部が、前記ノズル保持部材に臨む内周面に形成されている
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項7】
請求項1に記載された眼科装置において、
前記空気吹付ユニットの内部と、前記ノズルユニットの表面と、前記ノズルの内周面と、前記光学部材のノズル対向面と、の少なくともいずれかは、抗菌性を有する材質によってコーティングされている
ことを特徴とする眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼の眼圧値を測定する眼科装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検眼の角膜に向けて円筒状のノズルから空気を吹き付け、被検眼の角膜に投影された指標光の反射光を受光して得られた受光信号に基づき、被検眼の眼圧値を測定する眼科装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5179894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被検眼に空気を吹き付けて眼圧値を測定する眼科装置では、吹き付けられた空気によって涙等の分泌物が飛散し、ノズルから空気吹付ユニット内に入り込むことがある。ここで、測定光学系の主光軸上に空気吹付ユニットを配置し、透光性を有する光学部材によって測定光が透過する部分を形成した場合、空気吹付ユニットに入り込んだ分泌物でこの光学部材が汚れて測定に影響を与えることが考えられる。
【0005】
そこで、ノズルを空気吹付ユニットから取り外し、光学部材の内側面を清掃したいという要求がある。しかしながら、ノズルは、空気吹付ユニットに対して、軸方向が測定光学系の主光軸に一致するように取り付けられている。このため、ノズルの着脱に伴ってノズルの軸方向が主光軸からずれるおそれがあり、ノズルを取り外し可能にすることが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ノズルユニットを空気吹付ユニットに対して着脱可能にすると共に、装着時に測定光学系の主光軸からノズルの軸方向がずれることを防止できる眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、圧平した角膜の変形状態に基づいて被検眼の眼圧値を測定する眼科装置であって、前記角膜に空気を吹き付ける空気吹付ユニットと、前記被検眼に向けられた一端から前記空気を噴射するノズルを有し、前記空気吹付ユニットに着脱可能なノズルユニットと、前記ノズルの他端に対向する位置に設けられた透光性を有する光学部材と、前記ノズル及び前記光学部材が主光軸上に配置されると共に前記角膜の変形状態を検出する測定光学系と、を備え、前記ノズルユニットは、前記ノズルの軸方向を前記主光軸に一致させる位置決め機構を介して前記空気吹付ユニットに装着されると共に、前記ノズルと、前記ノズルが中心を貫通するノズル保持部材と、を有するそして、前記空気吹付ユニットは、前記空気を貯留すると共に前記光学部材が取り付けられたチャンバーと、前記チャンバーに形成されて前記主光軸上に位置するノズル取付開口と、を有し、前記位置決め機構は、前記ノズル取付開口に装着されると共に軸方向が前記主光軸に一致する筒状のコネクタ部と、軸方向に延びるスリットが形成されたスリーブと、を備え、前記スリーブの一方の開口に前記コネクタ部が挿入され、前記スリーブの他方の開口に前記ノズル保持部材が挿入されることにより、前記ノズルの軸方向を前記主光軸に一致させる。
【発明の効果】
【0008】
よって、本発明の眼科装置では、ノズルユニットを空気吹付ユニットに対して着脱可能にすると共に、装着時にノズルの軸方向が測定光学系の主光軸からずれることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の眼科装置の構成を模式的に示す説明図である。
図2】実施例1の眼科装置の眼圧測定部の光学的構成を示す説明図である。
図3】実施例1の眼科装置のノズルユニットを示す断面図である。
図4】実施例1の眼科装置のノズルユニットを示す斜視図である。
図5】実施例1の眼科装置のノズルユニットの装着状態を示す断面図である。
図6】実施例1の眼科装置のコネクタ部を示す斜視図である。
図7A】実施例1の眼科装置のスリーブを示す斜視図である。
図7B】実施例1の眼科装置のスリーブの変形例を示す斜視図である。
図8A】実施例1のノズルユニットの固定構造の第1変形例を示す断面図である。
図8B】実施例1のノズルユニットの固定構造の第2変形例を示す断面図である。
図9】実施例1の眼科装置の位置決め機構の第1変形例を示す分解斜視図である。
図10図9に示す第1変形例の位置決め機構を示す分解断面図である。
図11図9に示す第1変形例の位置決め機構を示す断面図である。
図12】実施例1の眼科装置の位置決め機構の第2変形例を示す断面図である。
図13】実施例2の眼科装置の空気吹付ユニットを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の眼科装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【0011】
(実施例1)
実施例1の眼科装置10は、図1に示すように、被検眼Eの眼圧値を測定する非接触式の眼圧測定部14を備える眼科装置である。この眼科装置10は、ベース11と、ベース11に設けられた駆動部12と、駆動部12によって支持された装置本体部13と、を有している。装置本体部13の内部には眼圧測定部14が設けられ、装置本体部13の外側には表示部15と、顎受部16と、額当部17と、が設けられている。
【0012】
駆動部12は、Y軸駆動部分12aと、Z軸駆動部分12bと、X軸駆動部分12cと、を有している。Y軸駆動部分12aは、装置本体部13を上下方向(Y軸方向)へ移動させる。Z軸駆動部分12bは、装置本体部13を前後方向(Z軸方向(図1を正面視して左右方向))へ移動させる。X軸駆動部分12cは、装置本体部13を左右方向(X軸方向(図1の紙面に直交する方向))へと移動させる。すなわち、装置本体部13は、この駆動部12によって、ベース11に対して上下方向、前後方向、それらに直交する左右方向に移動可能である。
【0013】
表示部15は、液晶ディスプレイ等によって形成され、被検眼Eの前眼部等の画像や眼圧値の測定結果等を表示する。この表示部15は、装置本体部13に回転自在に支持されており、例えば、表示面を被検者側に向ける等、表示面の向きを変更できる。また、表示部15にタッチパネルの機能を搭載し、眼圧測定部14を用いて測定を行うための操作や、手動による装置本体部13の移動操作等を可能としてもよい。なお、測定を行うための操作は、装置本体部13に設けた測定スイッチの操作によって行ってもよい。さらに、装置本体部13を移動するための操作は、ベース11等に設けたコントロールレバーや移動操作スイッチの操作によって行ってもよい。
【0014】
顎受部16及び額当部17は、ベース11に固定され、眼圧値の測定時等に装置本体部13に対して被検者の顔の位置を固定するものである。顎受部16及び額当部17によって被検者の顔を固定した状態で駆動部12を駆動することで、装置本体部13は、被検眼Eに対して移動する。なお、顎受部16は、被検者が顎を載せる箇所となり、額当部17は、被検者が額を宛がう箇所となる。
【0015】
実施例1の眼科装置10では、表示部15と顎受部16及び額当部17が、装置本体部13を挟んだ両側に設けられており、通常の使用時において、表示部15が検者の側となり、顎受部16及び額当部17が被検者の側となる。また、装置本体部13は、駆動部12により、ベース11に対して移動することで、顎受部16と額当部17とにより固定された被検眼E(被検者の顔)に対して移動することになる。
【0016】
さらに、図1では省略しているが、眼科装置10は、ベース11から駆動部12を経て装置本体部13までの部分が、装置全体の外形形状を形作るカバー部材により覆われている。また、図1では、駆動部12において、Y軸駆動部分12aとZ軸駆動部分12bとX軸駆動部分12cとをY軸方向に積層して示している。ここで、各駆動部分(Y軸駆動部分12a、Z軸駆動部分12b、X軸駆動部分12c)は、完全にY軸方向に分割されて構成されているものではなく、Y軸方向に直交する方向で見ると各部が互いに重なり合うように構成されている。
【0017】
眼圧測定部14は、被検眼Eの角膜Ecに空気を吹き付けて圧平し、圧平したときの角膜Ecの変形状態に基づいて被検眼Eの眼圧値を測定する。この眼圧測定部14は、図2に示すように、検出部20と、空気吹付ユニット30と、ノズルユニット40と、演算部14a(図1参照)と、を有している。
【0018】
ここで、空気吹付ユニット30にはノズルユニット40が着脱可能に取り付けられ、検出部20と被検眼Eとの間に配置される。また、検出部20によって得られた各種の検出結果は、演算部14aに入力される。
【0019】
検出部20は、図2に示すように、前眼部観察系21と、XYアライメント視標投影系22と、固視標投影系23と、XYアライメント検出系24と、角膜変形検出系25(測定光学系)と、を有している。なお、検出部20は、スリット光束を角膜Ecに投影するスリット投影系や、角膜表面や角膜裏面で反射した光を受光する受光光学系、検出部20のZ方向のアライメントを行うためのZアライメント視標投影系等を含んでいてもよい。
【0020】
前眼部観察系21は、ハーフミラー21aと、対物レンズ21bと、ハーフミラー21c、21dと、CCDイメージセンサ21eと、図示しない複数の前眼部照明光源と、によって構成されている。前眼部照明光源以外の各部材(ハーフミラー21a、対物レンズ21b、ハーフミラー21c、21d、CCDイメージセンサ21e)は、光軸O1上に配置されている。
【0021】
この前眼部観察系21では、被検眼Eの左右位置に配置された複数の前眼部照明光源によって角膜Ecを直接照明する。角膜Ecによって反射した前眼部照明光源の照明光は、ハーフミラー21aを通過した後、対物レンズ21bにより集束される。この集束光は、ハーフミラー21c、21dを順に透過してCCDイメージセンサ21eの受光面に投影される。演算部14aは、CCDイメージセンサ21eによって検出された投影像に基づいて、被検眼Eの前眼部像を撮影する。なお、角膜Ecによって反射した照明光は、後述するノズルユニット40のノズル41の内外及びガラス板43と、空気吹付ユニット30の光学フィルタ35と、を順に透過する。
【0022】
XYアライメント視標投影系22は、アライメント用光源22aと、集光レンズ22bと、開口絞り22cと、ピンホール板22dと、赤外光を反射させ、可視光を透過させるダイクロイックミラー22eと、投影レンズ22fと、によって構成されている。ここで、ダイクロイックミラー22e及び投影レンズ22fは、ハーフミラー21aにより光軸O1から分岐された光軸上に配置されている。また、アライメント用光源22a、集光レンズ22b、開口絞り22c、ピンホール板22dは、ダイクロイックミラー22eによる反射光の光軸上に配置されている。
【0023】
このXYアライメント視標投影系22では、アライメント用光源22aから赤外光を出力させる。この赤外光は、集光レンズ22bで集光しつつ開口絞り22cを通過し、ピンホール板22dに導かれる。ピンホール板22dを通過した光束は、ダイクロイックミラー22eにより反射され、投影レンズ22fにより平行光束にされ、ハーフミラー21aで反射されて、光軸O1に沿って被検眼Eに照射される。XYアライメント視標投影系22は、この照射光をXY方向のアライメントを行うためのXYアライメント視標光として用いる。
【0024】
固視標投影系23は、固視標用光源23aと、ピンホール板23bと、ダイクロイックミラー22eと、投影レンズ22fと、によって構成されている。これら各部材(固視標用光源23a、ピンホール板23b、ダイクロイックミラー22e、投影レンズ22f)は、ハーフミラー21aにより光軸O1から分岐された光軸上に配置されている。
【0025】
固視標投影系23では、固視標用光源23aから可視光を出力させる。この可視光は、ピンホール板23bとダイクロイックミラー22eを通過し、投影レンズ22fにより平行光束にされ、ハーフミラー21aで反射されて、光軸O1に沿って被検眼Eの眼底に投射される。固視標投影系23は、この投射光を固視標として用いる。
【0026】
XYアライメント検出系24は、ハーフミラー21dと、光センサ24aと、によって構成されている。光センサ24aは、たとえばPSD(Position Sensitive Detector)のように位置検出が可能なセンサである。また、光センサ24aは、ハーフミラー21dにより光軸O1から分岐された光軸上に配置されている。
【0027】
XYアライメント検出系24では、角膜Ec(の表面)で反射したXYアライメント視標光のうち、ハーフミラー21dで分割して反射された成分を光センサ24aで受光し、光センサ24aの受光面に輝点像T1を形成する。また、角膜Ec(の表面)で反射したXYアライメント視標光のうち、ハーフミラー21dを透過した成分は、CCDイメージセンサ21eの受光面に輝点像T2を形成する。
【0028】
演算部14aは、光センサ24aによる輝点像T1の検出結果に基づいて、角膜Ecに対する検出部20のXY方向のズレを演算する。また、この演算部14aは、CCDイメージセンサ21eによる輝点像T2の検出結果を、被検眼Eの前眼部像と共に表示部15に表示する。それにより、検者は、XY方向のアライメントの状態を目視で確認できる。
【0029】
角膜変形検出系25は、ハーフミラー21cと、ピンホール板25aと、光センサ25bと、によって構成されている。ピンホール板25a及び光センサ25bは、ハーフミラー21cにより光軸O1から分岐された光軸上に配置されている。
【0030】
角膜変形検出系25では、ハーフミラー21cにより反射された光束を、ピンホール板25aを介して光センサ25bにより検出する。光センサ25bは、フォトダイオード等の光量検出が可能なセンサである。光センサ25bは、ノズル41から噴射された空気により圧平された状態の角膜Ecによる反射光の光量を検出する。演算部14aは、この光センサ25bの検出結果から角膜Ecの変形量を求めることにより被検眼Eの眼圧値を求める。
【0031】
このように、角膜変形検出系25は、圧平された状態の角膜Ecによる反射光を検出する光学系であるため、角膜Ecの反射光の光軸が角膜変形検出系25の主光軸となり、前眼部観察系21の光軸O1に一致する。そのため、以下では「角膜変形検出系25の主光軸O1」という。
【0032】
そして、圧平された状態の角膜Ecによる反射光は、ノズルユニット40のノズル41の内部を透過し、空気吹付ユニット30の光学フィルタ35を透過する。つまり、角膜変形検出系25では、角膜Ecの変形状態を検出するための主光軸O1上にノズル41及び光学フィルタ35が配置されている。
【0033】
空気吹付ユニット30は、図2に拡大して示すように、空気を貯留する空気圧縮室31(チャンバー)と、圧力センサ32と、空気圧縮駆動部33(図1参照)と、図示しない制御部と、を有している。この空気吹付ユニット30では、空気圧縮室31内の圧力を圧力センサ32によって検出する。圧力センサ32は、検出した圧力に応じた信号を制御部に出力する。そして、空気吹付ユニット30は、制御部の制御下で、空気圧縮駆動部33によって空気圧縮室31内の空気を圧縮することにより、ノズル41から被検眼Eの角膜Ecに向けて空気を吹き付ける。
【0034】
なお、空気圧縮駆動部33は、空気圧縮室31に接続されたシリンダの内部で、コネクティングロッドを介して駆動機構に連結されたピストンを移動させ、空気圧縮室31内の空気を圧縮する。また、空気吹付ユニット30は、圧力センサ32で空気圧縮室31内の圧力を検出することにより、ノズル41から空気を吹き付けた際の圧力を取得することが可能とされている。なお、空気吹付ユニット30は、圧力センサ32を設けることに替えて、吹き付ける空気において、時間に対する圧力の変化が予め定められた特性とするものとしてもよい。
【0035】
そして、空気圧縮室31には、ノズル取付開口34が形成されている。ノズル取付開口34は、位置決め機構50を介してノズルユニット40が着脱可能に取り付けられる円形の開口である。このノズル取付開口34は、角膜変形検出系25の主光軸O1上に位置している。
【0036】
さらに、この空気圧縮室31には、ノズル取付開口34に取り付けられたノズルユニット40のノズル41の吸込口41b(他端)に対向する位置に光学フィルタ35(光学部材)が設けられている。ここで、ノズル取付開口34が角膜変形検出系25の主光軸O1上に配置されているため、この光学フィルタ35も、角膜変形検出系25の主光軸O1上に位置する。また、光学フィルタ35は、透光性を有する透明なガラスによって形成されている。そのため、角膜変形検出系25によって角膜Ecの変形状態を検出する際、角膜Ecによる反射光が透過する。
【0037】
ノズルユニット40は、図3に示すように、両端が開放した筒状のノズル41と、ノズル41を保持するノズル保持部材42と、を有している。ノズル41は、吸込口41bが空気圧縮室31内に連通し、被検眼Eに向けられた吐出口41a(一端)から空気を噴射する。また、ノズル保持部材42は、ノズル41が貫通する透明なガラス製のガラス板43と、ガラス板43が嵌め込まれる金属製の筒状のホルダー44と、ホルダー44からガラス板43の脱落を規制する金属製の押さえ部材45と、を有している。
【0038】
ここで、ノズル41は、スペーサ41cを介して円盤状のガラス板43の中心に形成された貫通孔43aに差し込まれ、嵌合接着により固定されている。また、ホルダー44は、一方の端部の周縁から中心に向かって突出し、ガラス板43の一端面43bに接する内向きフランジ44bと、他方の端部の内周面に形成されたネジ溝44cと、を有している。さらに、押さえ部材45は、一部に切欠き45b(図4参照)を有するリング形状の金属板であり、ネジ溝44cに螺合するネジ溝45cが外周面に形成されている。
【0039】
そして、ガラス板43は、ホルダー44の内側に差し込まれ、一端面43bが内向きフランジ44bに突き当てられる。このとき、ガラス板43は、ホルダー44に嵌合接着される。一方、押さえ部材45は、ガラス板43が差し込まれたホルダー44にねじ込まれ、ガラス板43の他端面43cに接触させられる。なお、ここでは、図示しない治具等を切欠き45bに差し込み、この治具等を用いて押さえ部材45を回転させることで、押さえ部材45をねじ込んでいく。
【0040】
すなわち、このノズルユニット40では、円盤状のガラス板43の中心にノズル41が貫通し、このガラス板43の周縁部をホルダー44及び押さえ部材45によって挟持している。これにより、ノズル41がノズル保持部材42の中心を貫通し、ノズル41の軸方向αがノズル保持部材42の中心に一致する。
【0041】
そして、このノズルユニット40は、ノズル41の軸方向αを角膜変形検出系25の主光軸O1の方向に一致させる位置決め機構50を介して、空気吹付ユニット30に装着される。
【0042】
実施例1では、位置決め機構50は、図5に示すように、ノズル取付開口34に装着されるコネクタ部51と、ノズルユニット40と空気吹付ユニット30との間に配置されたスリーブ52と、を備えている。
【0043】
コネクタ部51は、図6に示すように、両端が開放すると共に、中間部の外周面にフランジ部51aが形成された金属製の円筒状部材である。このコネクタ部51は、図5に示すように、一端部51bからノズル取付開口34に差し込まれることで、ノズル取付開口34に装着される。また、コネクタ部51は、フランジ部51aがノズル取付開口34の内側に形成された段差部34aに干渉することで、軸方向(Z方向)の位置決めがなされる。さらに、このコネクタ部51は、ノズル取付開口34に装着した際、偏心調整機構等を用いて径方向の位置が調整され、軸方向βが角膜変形検出系25の主光軸O1に一致される。
【0044】
スリーブ52は、図7Aに示すように、両端が開放した円筒形状を呈すると共に、軸方向に延びるスリット52aが形成されている。このスリーブ52は、セラミックスや金属等の弾性変形可能な材質によって形成され、スリット52aの幅が拡縮することで弾性変形して内径寸法が変動する。ここで、スリット52aは、スリーブ52の一方の開口52bから他方の開口52cまでスリーブ52の全長にわたって形成されて、スリーブ52の周面を切断する切れ目である。しかしながら、スリット52aの形状はこれに限らない。例えば、図7Bに示すスリット52xように、スリーブ52の内周面52dに形成された軸方向に延びるへこみであってもよい。このとき、へこみ形状のスリット52xをスリーブ52の中心を挟んで対称となる位置に二つ以上形成することで、コネクタ部51に挿入したときの偏心を抑制することができる。
【0045】
そして、この位置決め機構50では、スリーブ52の一方の開口52bに、コネクタ部51の他端部51cが挿入され、スリーブ52の他方の開口52cに、ノズルユニット40のノズル保持部材42が挿入される。
【0046】
次に、実施例1の眼科装置10における作用を説明する。
【0047】
実施例1の眼科装置10では、被検眼Eの角膜Ecに対し、空気吹付ユニット30からノズルユニット40のノズル41を介して空気を吹き付ける。そして、角膜変形検出系25によって、空気が吹き付けられたときの角膜Ecによる反射光の光量を検出し、演算部14aによって、検出結果から角膜Ecの変形量を求めることにより被検眼Eの眼圧値を求める。
【0048】
ここで、角膜Ecへの空気の吹き付けにより、涙等の飛散した分泌物の一部がノズル41の吐出口41aから空気圧縮室31内に流入し、光学フィルタ35のノズル対向面35aに付着することがある。なお、ノズル対向面35aとは、光学フィルタ35の両側面のうち、ノズル41の吐出口41aに対向する面、つまり、空気圧縮室31の内部に臨む面(内側面)である。光学フィルタ35に分泌物が付着すると、この光学フィルタ35の光透過率を下げ、測定に支障をきたすおそれがある。そのため、空気吹付ユニット30からノズルユニット40を取り外し、光学フィルタ35のノズル対向面35aを清掃したいという要求がある。
【0049】
一方、ノズル41及び空気吹付ユニット30の光学フィルタ35は、角膜変形検出系25の主光軸O1上に配置されており、角膜Ecによる反射光は、ノズル41の内部を通過し、空気吹付ユニット30の光学フィルタ35を透過した後、ハーフミラー21cにより反射されて光センサ25bへと導かれる。そのため、ノズルユニット40を装着したときには、ノズル41の軸方向αを角膜変形検出系25の主光軸O1に一致させる必要がある。
【0050】
これに対し、実施例1の眼科装置10では、ノズル41の軸方向αを角膜変形検出系25の主光軸O1に一致させる位置決め機構50を介して、ノズルユニット40が空気吹付ユニット30に着脱可能に装着されている。
【0051】
これにより、ノズルユニット40を引っ張る等して空気吹付ユニット30から取り外したときには、ノズル取付開口34を開放することができる。このため、ノズル取付開口34を介して光学フィルタ35のノズル対向面35aにアクセスすることができ、光学フィルタ35のノズル対向面35aを容易に清掃することが可能である。また、光学フィルタ35の清掃後に再びノズルユニット40をノズル取付開口34に装着するときには、位置決め機構50によって、ノズル41の軸方向αが角膜変形検出系25の主光軸O1に一致するように調整される。
【0052】
これにより、ノズルユニット40を空気吹付ユニット30に対して着脱可能にすると共に、ノズル41の軸方向αが角膜変形検出系25の主光軸O1からずれることを防止できる。そして、ノズルユニット40の着脱が、角膜変形検出系25による角膜Ecの反射光の検出に影響を与えることを防止できる。すなわち、実施例1の眼科装置10では、光学フィルタ35の清掃を容易に行うことができると共に、適切な眼圧値の測定を担保することができる。
【0053】
なお、位置決め機構50による「ノズル41の軸方向αを角膜変形検出系25の主光軸O1に一致させる」状態は、角膜変形検出系25による角膜Ecの反射光の検出に影響を与えない程度のずれを許容する。つまり、位置決め機構50は、ノズル41の軸方向αを角膜変形検出系25の主光軸O1に対して完全に一致させてもよいし、角膜変形検出系25による角膜Ecの反射光の検出に影響を与えない程度(例えば数μm程度)ずれた状態としてもよい。
【0054】
そして、実施例1の位置決め機構50は、空気吹付ユニット30の空気圧縮室31に形成されたノズル取付開口34に装着されるコネクタ部51と、スリーブ52と、を備えている。ここで、コネクタ部51は、軸方向βが角膜変形検出系25の主光軸O1に一致した状態でノズル取付開口34に装着された円筒状部材である。一方、スリーブ52は、両端が開放した円筒形状を呈し、軸方向に延びるスリット52aが形成されている。
【0055】
そして、この位置決め機構50では、まず、コネクタ部51の一端部51bをノズル取付開口34に差し込み、ノズル取付開口34にコネクタ部51を装着する。このとき、予め空気吹付ユニット30の取付位置を調整し、ノズル取付開口34を角膜変形検出系25の主光軸O1上に位置させる。そして、コネクタ部51は、軸方向βが角膜変形検出系25の主光軸O1に一致するように、偏心調整機構等を用いて径方向の位置が調整される。
【0056】
次に、スリーブ52を、一方の開口52b側からノズル取付開口34に差し込み、この一方の開口52bを、ノズル取付開口34に装着されているコネクタ部51の他端部51cの奥まで挿入する。これにより、スリーブ52がノズル取付開口34に取り付けられる。
【0057】
そして、スリーブ52をノズル取付開口34に取り付けてから、ノズルユニット40をノズル取付開口34内に差し込み、スリーブ52の他方の開口52cにノズルユニット40のノズル保持部材42を挿入する。このとき、スリーブ52が弾性変形し、コネクタ部51の外周面とノズル保持部材42の外周面とが押さえつけられ、コネクタ部51の軸方向βとノズル保持部材42の中心とが一致する。
【0058】
ここで、コネクタ部51は、軸方向βが角膜変形検出系25の主光軸O1に一致するように位置調整がなされている。これに対し、ノズル41は、円盤状のノズル保持部材42の中心を貫通し、ノズル41の軸方向αがノズル保持部材42の中心に一致している。そのため、位置決め機構50において、スリーブ52を利用してコネクタ部51の軸方向βとノズル保持部材42の中心とを一致させることで、ノズル41の軸方向αを角膜変形検出系25の主光軸O1に一致させることができる。これにより、位置決め機構50は、簡易的な構造で、ノズル41の軸方向αを角膜変形検出系25の主光軸O1に一致させることができる。
【0059】
また、図5に示す実施例1では、ノズル保持部材42がスリーブ52に対して圧入嵌合(若しくは嵌合)され、この嵌合力によって抜け止めがなされている。しかしながら、これ限らない。例えば、図8Aに示すように、押しビスN1及び引きビスN2(ネジ部材)を介してノズル保持部材42を空気吹付ユニット30に固定してもよい。
【0060】
この場合、図8Aに示すように、ノズルユニット40のホルダー44の外周面には、径方向外側に延びる外向きフランジ44dが形成される。この外向きフランジ44dは、ノズル保持部材42をスリーブ52に差し込んだ際、ノズル取付開口34の開口端面34αに突き当てられる。
【0061】
そして、この外向きフランジ44dには、複数(例えば3カ所)のねじ穴44eと、複数(例えば3カ所)の貫通孔44fと、が形成される。ねじ穴44e及び貫通孔44fは、いずれも外向きフランジ44dを貫通しており、ねじ穴44eの内周面にはネジ溝が形成されている。一方、ノズル取付開口34の開口端面34αには、ねじ穴44eに対向する複数(例えば3カ所)の凹部34eと、貫通孔44fに対向する複数(例えば3カ所)のねじ凹部34fが形成される。ねじ凹部34fの内周面にはネジ溝が形成されている。なお、ねじ穴44e及び貫通孔44fと、凹部34e及びねじ凹部34fは、それぞれ等間隔を開けて交互に配置されることが好ましい。
【0062】
さらに、押しビスN1は、外向きフランジ44dに形成されたねじ穴44eとねじ嵌合すると共に、先端が凹部34eの底面に当接している。また、引きビスN2は、外向きフランジ44dに形成された貫通孔44fを貫通し、先端部がねじ凹部34fにねじ嵌合する。
【0063】
ここで、引きビスN2をねじ込むことで、ノズルユニット40をスリーブ52に圧入できる。また、押しビスN1をねじ込むことで、ノズルユニット40をスリーブ52から引き抜くことができる。つまり、押しビスN1及び引きビスN2(ネジ部材)を介してノズル保持部材42をスリーブ52に固定した場合では、ノズルユニット40の着脱を容易に行うことができ、光学フィルタ35の清掃作業の作業効率の向上を図ることができる。
【0064】
さらに、図8Bに示すように、ノズル取付開口34の外側に取り付けられる押さえ部材55によってノズル保持部材42を空気吹付ユニット30に固定してもよい。
【0065】
ここで、押さえ部材55は、空気吹付ユニット30のノズル取付開口34が形成された部分を挿入可能な円筒部材であり、内周面にネジ溝55aが形成されると共に、一方の端部に内向きフランジ55bが形成されている。この押さえ部材55を用いてノズル保持部材42を固定するには、まず、ノズル保持部材42がコネクタ部51の他端部51cに突き当たるまで、ノズルユニット40をスリーブ52に挿入する。このとき、ノズル保持部材42がノズル取付開口34から突出するように空気吹付ユニット30の形状が調整される。
【0066】
ノズルユニット40をスリーブ52に挿入したら、押さえ部材55に空気吹付ユニット30のノズル取付開口34が形成された部分を差し込み、押さえ部材55を回転させて内周面に形成されたネジ溝55aを空気吹付ユニット30の外周面に螺合させる。そして、内向きフランジ55bがノズル保持部材42に突き当たるまで押さえ部材55をねじ込む。これにより、ノズル保持部材42は、コネクタ部51と押さえ部材55の間に挟み込まれ、固定される。また、押さえ部材55は、ねじ込み時と逆回転させれば簡単に外すことができ、押さえ部材55を外すことで、ノズルユニット40をノズル取付開口34から引き出すことが可能である。この結果、ノズルユニット40の着脱を容易に行うことができ、光学フィルタ35の清掃作業の作業効率の向上を図ることができる。
【0067】
なお、押さえ部材55を複数のビスによって空気吹付ユニット30に固定してもよい。この場合、押さえ部材55の内向きフランジ55bに複数(例えば三カ所)のビス貫通孔を形成し、ノズル取付開口34の開口端に複数(例えば三カ所)のネジ穴を形成する。そして、ビス貫通孔を貫通する複数のビスを、ノズル取付開口34の開口端のネジ穴に螺合させることで、押さえ部材55を固定する。
【0068】
なお、実施例1では、位置決め機構50がノズル取付開口34に装着されるコネクタ部51と、軸方向に延びるスリット52aが形成されたスリーブ52と、を備え、スリーブ52にコネクタ部51及びノズル保持部材42を挿入することでノズル41の軸方向αを角膜変形検出系25の主光軸O1に一致させる例を示した。しかしながら、これに限らない。
【0069】
例えば、図9に示す位置決め機構60のように、ノズル保持部材42に形成された第1テーパ面42xと、ノズル取付開口34に形成された第2テーパ面34xと、を備えていてもよい。この場合、空気吹付ユニット30の空気圧縮室31に形成された円形のノズル取付開口34と、角膜変形検出系25の主光軸O1との相対的な位置関係を調整し、ノズル取付開口34の中心を角膜変形検出系25の主光軸O1上に位置させる。また、第1テーパ面42xは、ホルダー44の外周面に形成され、ホルダー44は円錐状に形成されている。そして、第2テーパ面34xが、少なくとも第1テーパ面42xよりも広がるように設定され、ノズル取付開口34にノズル保持部材42を差し込み可能とする。
【0070】
この位置決め機構60では、図10及び図11に示すように、ノズル取付開口34にノズル保持部材42を差し込み、第1テーパ面42xと第2テーパ面34xとが接触することにより、ノズル41の軸方向αを角膜変形検出系25の主光軸O1に一致させる。
【0071】
また、この場合、図9等に示すように、ノズル保持部材42のホルダー44に複数のネジ貫通孔46aを形成し、ノズル取付開口34に内側にネジ溝を有するネジ挿入孔46bを形成する。そして、ネジ貫通孔46aを貫通し、先端がネジ挿入孔46bに螺合する取付ネジ46(ネジ部材)を介して、ノズル保持部材42がノズル取付開口34に固定される。このため、取付ネジ46を外すことでノズルユニット40をノズル取付開口34から簡単に取り外すことができる。つまり、ノズルユニット40の着脱を容易に行うことができ、光学フィルタ35の清掃作業の作業効率の向上を図ることができる。
【0072】
さらに、このとき、図9に示すように、ノズル保持部材42のホルダー44の外周面に、ノズルユニット40の差し込み方向に延びる凸条47(係合部)を形成し、ノズル取付開口34の内周面に凸条47が係合する溝部37(被係合部)を形成してもよい。
【0073】
この場合、ノズル取付開口34にノズルユニット40が差し込まれたときに、凸条47が溝部37に係合する。これにより、ノズルユニット40の周方向の回転を規制することができる。なお、凸条47と溝部37との間の隙間の大きさは、第1テーパ面42xと第2テーパ面34xとの接触によるノズル41の軸方向αの位置合わせを阻害しない寸法に設定される。
【0074】
さらに、図12に示す位置決め機構70のように、ノズル取付開口34に装着されてノズルユニット40のノズル保持部材42を把持する把持部材71を備えるものであってもよい。この把持部材71は、両端が開放し、先端に向かって細くなる通路72aが内部に形成された筒状の本体部72と、通路72aの内周面に沿って本体部72から出没する複数のチャック爪73と、回転することでチャック爪73を出没移動させるナット部74と、を有している。すなわち、把持部材71は、いわゆるドリルチャックと同様の構成を有している。
【0075】
そして、この把持部材71は、チャック爪73によってノズル保持部材42の周縁部を把持する。ここで、ノズル取付開口34に対する把持部材71の位置調整がなされ、通路72aの中心が角膜変形検出系25の主光軸O1に一致している。そのため、チャック爪73によって把持された物体は、中心が角膜変形検出系25の主光軸O1上に位置することになる。この結果、位置決め機構70においても、簡易的な構造で、ノズル41の軸方向αを角膜変形検出系25の主光軸O1に一致させることができる。
【0076】
また、実施例1では、ノズルユニット40のノズル保持部材42において、ガラス板43の厚みとホルダー44の厚みとをほぼ同じ寸法とする例を示した。しかしながら、これに限らない。例えば、押さえ部材45が挿入されるホルダー44の端部を、ノズル41の吐出口41a付近まで延長してもよい。この場合、ホルダー44の厚みが拡大し、ノズル保持部材42とスリーブ52との軸方向の接触面積が増加する。このため、ノズルユニット40が傾きにくくなり、ノズル41の軸方向αと角膜変形検出系25の主光軸O1との一致精度を向上させることができる。
【0077】
(実施例2)
図13に示す空気吹付ユニット30Aを有する実施例2の眼科装置10Aは、角膜Ecに空気を吹き付けて圧平して被検眼Eの眼圧値を測定する非接触式の眼圧測定部を備えており、その基本的な構成は実施例1の眼科装置10と同一である。すなわち、実施例2の眼科装置10Aは、角膜Ecに空気を吹き付ける空気吹付ユニット30Aと、被検眼Eに向けられた一端から空気を噴射するノズル41を有し、空気吹付ユニット30Aに着脱可能なノズルユニット40Aと、ノズル41の吸込口(他端)41bに対向する位置に設けられた透光性を有する光学フィルタ35(光学部材)と、ノズル41及び光学フィルタ35が主光軸O1上に配置されると共に角膜Ecの変形状態を検出する角膜変形検出系25(測定光学系)と、ノズル41の軸方向αを主光軸O1に一致させた状態で空気吹付ユニット30Aにノズルユニット40Aを装着可能とする位置決め機構50と、を備えている。
【0078】
ここで、被検眼Eに空気を吹き付けて眼圧値を測定する非接触式の眼科装置10Aでは、被検眼Eを圧平したときに涙等の分泌物が飛散し、飛散した分泌物がノズルユニット40Aの表面やノズル41の内周面41dに付着したり、ノズル41を介して空気吹付ユニット30Aの内部に入り込んだりすることがある。分泌物には微生物が含まれていることがあり、分泌物が空気吹付ユニット30Aやノズルユニット40Aに付着することで、眼科装置10Aが微生物によって汚染されるという問題が生じる。
【0079】
なお、微生物は、狭義の細菌(ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、緑膿菌、コレラ菌、赤痢菌、炭疽菌、結核菌、ボツリヌス菌、破傷風菌、レンサ球菌等)、真菌又はカビ(白癬菌、カンジダ、アスペルギルス等)だけでなく、ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス等)を含む。
【0080】
これに対し、実施例2の眼科装置10Aでは、飛散した分泌物が付着する可能性がある部分となる空気吹付ユニット30Aの内部と、ノズルユニット40Aの表面と、ノズル41の内周面41cと、光学フィルタ35(光学部材)のノズル対向面35aと、の少なくともいずれかに、抗菌性を有する材質によってコーティングを施している。ここで、「抗菌性」とは、微生物に対する防除作用(すなわち、微生物の増殖抑制、除去、不活性化作用)を示すことを意味する。
【0081】
実施例2の眼科装置10Aでは、具体的に、少なくとも下記に列挙する部分のいずれかに対し、抗菌性を有する材質によるコーティング処理を施す。
・ノズル41の吐出口41aに取り付けられるキャップ48に設けられた前眼部窓ガラス48aの被検眼対向面48b
・ノズル41の内周面41d
・ノズル41が貫通するガラス板43の他端面43c
・ノズル保持部材42の表面
・光学フィルタ35のノズル対向面35a
・空気圧縮駆動部33のシリンダ33aの内周面33b
・空気圧縮駆動部33のシリンダ33aと空気圧縮室31とを接続するチューブ33cの内周面33d
【0082】
なお、「前眼部窓ガラス48a」とは、ノズル41の吐出口41aが貫通するガラス製の板であり、「被検眼対向面48b」は、前眼部窓ガラス48aの被検眼Eに対向する面である。ノズル41の吐出口41aは、前眼部窓ガラス48aに形成された貫通孔に差し込まれて固定される。また、「ガラス板43の他端面43c」は、吐出口41a側に向いた面である。また、「ノズル保持部材42の表面」とは、例えばガラス板43を保持するホルダー44の表面(内周面及び外周面、端面)や、押さえ部材45の表面である。また、シリンダ33aの内部で移動するピストン33eの表面に抗菌性を有する材質によるコーティング処理を施してもよい。なお、ピストン33eは、コネクティングロッド33fを介して図示しない駆動機構(例えば、ロータリーソレノイド等)に接続されている。
【0083】
さらに、コーティング処理は、コーティングを施す対象物(例えば、前眼部窓ガラス48a等)の素材に応じて、撥水撥油性の高い防汚コーティングと、殺菌剤を含有させた親水コーティングと、殺菌剤を含有させた粘着コーティングと、のいずれかから選択して行う。すなわち、対象物がポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂素材で形成されている場合には、粘着コーティングを選択する。また、対象物がガラス素材で形成されている場合には、防汚コーティング又は親水コーティングのいずれかを選択する。さらに、対象物がステンレス鋼等の金属素材で形成されている場合には、防汚コーティングと親水コーティングと粘着コーティングのいずれかを選択する。
【0084】
なお、「防汚コーティング」は、対象物の表面に付着した水や油を弾くことで微生物の付着を防止するものである。防汚コーティングのためのコーティング材料は、例えば、シリコーン、シラン、フルオロアルキルシラン、フッ素樹脂等を使用することができる。また、「親水コーティング」は、水との親和性が高く、対象物の表面を水に濡れた状態にして微生物を捕捉するものである。親水コーティングのためのコーティング材料は、例えば、ポリビニルアルコール、ガラス、酸化チタン等の光触媒物質、ベタイン等の界面活性剤、アクリル等を使用することができる。さらに、「粘着コーティング」は、対象物の表面に粘着性を持たせて微生物を捕捉するものである。粘着コーティングのためのコーティング材料は、例えば、アクリル、ウレタン、ゴム、シリコーン、エラストマー等を使用することができる。そして、親水コーティング及び粘着コーティングは、殺菌剤を含有させることで捕捉した微生物を死滅或いは減少させることが可能となる。殺菌剤は、例えば銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)やこれらの化合物等の無機材料や、カテキン等の有機材料を使用することができる。
【0085】
このように、眼科装置10Aのうち、飛散した分泌物が付着する可能性のある部分(空気吹付ユニット30Aの内部、ノズルユニット40Aの表面、ノズル41の内周面41d、光学フィルタ35のノズル対向面35aの少なくともいずれか)を、抗菌性を有する材質によってコーティングすることで、眼科装置10Aに分泌物が付着しても、微生物の増殖を抑制したり、微生物を除去したりできる。この結果、眼科装置10Aの汚れを低減し、汚染を防止することができる。
【符号の説明】
【0086】
10、10A 眼科装置
25 角膜変形検出系(測定光学系)
30、30A 空気吹付ユニット
31 空気圧縮室(チャンバー)
34 ノズル取付開口
35 光学フィルタ(光学部材)
35a ノズル対向面
40、40A ノズルユニット
41 ノズル
41a 吐出口(一端)
41b 吸込口(他端)
42 ノズル保持部材
43 ガラス板
44 ホルダー
45 押さえ部材
50 位置決め機構
51 コネクタ部
52 スリーブ
52a スリット
E 被検眼
Ec 角膜
O1 主光軸
α ノズルの軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13