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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】屈曲操作機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/00 20060101AFI20240815BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20240815BHJP
   B25J 18/06 20060101ALI20240815BHJP
   A61B 1/005 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B25J17/00 K
G02B23/24 A
B25J18/06
A61B1/005 524
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020183191
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022073298
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】保戸田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 正紘
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110269694(CN,A)
【文献】特開2020-026019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
A61B 34/00-90/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性的に屈曲可能な駆動部と、
前記駆動部に対して離間して設けられ弾性的に屈曲可能な従動部と、
前記駆動部及び前記従動部が設けられるベースと、
前記駆動部及び前記従動部間を接続し前記駆動部の屈曲に応じて前記従動部を引張り屈曲させるリンク部と、
を備え、
前記駆動部及び前記従動部は、それぞれ前記ベースに対して基端部が固定され前記基端部に対して先端部が変位可能に構成され、
前記駆動部の屈曲時に前記駆動部の前記基端部に対する前記駆動部の前記先端部の変位に追従して前記従動部の前記基端部に対して前記従動部の前記先端部が変位し、
前記駆動部及び前記従動部のそれぞれは、軸方向に対して屈曲可能な内コイル部及び外コイル部を備え、前記外コイル部の隣接巻部間の隙間に前記内コイル部の対応する巻部が嵌合する、
屈曲操作機構。
【請求項2】
請求項1記載の屈曲操作機構であって、
前記駆動部に対する前記リンク部の接続位置と前記駆動部の基端部までの長さが、前記従動部に対する前記リンク部の接続位置と前記従動部の基端部までの長さと異なる、
屈曲操作機構。
【請求項3】
請求項2記載の屈曲操作機構であって、
前記駆動部と前記従動部は、軸方向長さが異なり、
前記リンク部は、前記駆動部と前記従動部の先端部間を接続する、
屈曲操作機構。
【請求項4】
弾性的に屈曲可能な駆動部と、
前記駆動部に対して離間して設けられ弾性的に屈曲可能な従動部と、
前記駆動部及び前記従動部間を接続し前記駆動部の屈曲に応じて前記従動部を引張り屈曲させるリンク部と、
を備え、
前記駆動部及び前記従動部のそれぞれは、軸方向に対して屈曲可能な内コイル部及び外コイル部を備え、前記外コイル部の隣接巻部間の隙間に前記内コイル部の対応する巻部が嵌合し、
前記リンク部は、前記駆動部及び前記従動部の中心から径方向に変位した位置を接続する索状部材であり、
前記駆動部の屈曲角度をθ1、前記従動部の屈曲角度をθ2、前記索状部材の前記駆動部での変位量をr1、前記索状部材の前記従動部での変位量をr2とした場合、
θ1:θ2=r2:r1の関係を有する、
屈曲操作機構。
【請求項5】
弾性的に屈曲可能な駆動部と、
前記駆動部に対して離間して設けられ弾性的に屈曲可能な従動部と、
前記駆動部及び前記従動部間を接続し前記駆動部の屈曲に応じて前記従動部を引張り屈曲させるリンク部と、
を備え、
前記駆動部及び前記従動部のそれぞれは、軸方向に対して屈曲可能な内コイル部及び外コイル部を備え、前記外コイル部の隣接巻部間の隙間に前記内コイル部の対応する巻部が嵌合し、
前記リンク部は、1以上の索状部材からなり、
各索状部材は、前記駆動部と前記従動部とを周方向で180度異なる位置で接続する、
屈曲操作機構。
【請求項6】
請求項5記載の屈曲操作機構であって、
前記各索状部材は、前記駆動部及び前記従動部間で螺旋状に形成され、該駆動部及び前記従動部間での螺旋状により前記180度異なる位置での接続に対応して180度変位する、
屈曲操作機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットやマニピュレーター等の関節機能部に供される屈曲操作機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット、マニピュレーター、或いはアクチュエーター等には、屈曲・伸展を可能とする関節機能部を備えたものがある。このような関節機能部を操作するための屈曲操作機構としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1の屈曲操作機構は、駆動部である第1部分及び従動部である第2部分を有し、第1部分及び第2部分は、複数のケーブルの両端部が同様に張られることで構成された弾性構造を有する。
【0004】
この屈曲操作機構では、第1部分を屈曲させることでケーブルを引張り、第2部分を従動により屈曲させる。従って、第1部分に第2部分を従動、追従させ、直感的な操作が可能となる。
【0005】
しかし、かかる屈曲操作機構では、第1部分が軸方向に押込み可能になっているため、第1部分を押し込んだ状態で屈曲させると、第2部分の追従性が低下し、直感性や操作精度が落ちる等のおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2015/105421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、駆動部に対する従動部の追従性が低下する点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、弾性的に屈曲可能な駆動部と、前記駆動部に対して離間して設けられ弾性的に屈曲可能な従動部と、前記駆動部及び前記従動部が設けられるベースと、前記駆動部及び前記従動部間を接続し前記駆動部の屈曲に応じて前記従動部を引張り屈曲させるリンク部と、を備え、前記駆動部及び前記従動部は、それぞれ前記ベースに対して基端部が固定され前記基端部に対して先端部が変位可能に構成され、前記駆動部の屈曲時に前記駆動部の前記基端部に対する前記駆動部の前記先端部の変位に追従して前記従動部の前記基端部に対して前記従動部の前記先端部が変位し、前記駆動部及び前記従動部のそれぞれは、軸方向に対して屈曲可能な内コイル部及び外コイル部を備え、前記外コイル部の隣接巻部間の隙間に前記内コイル部の対応する巻部が嵌合することを屈曲操作機構の最も主な特徴とする。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、屈曲時及び非屈曲時において駆動部及び従動部が外コイル部の隣接巻部間の隙間に内コイル部の対応する巻部が嵌合することで軸方向に押込み不能となり、駆動部に対する従動部の追従性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施例1に係る屈曲操作機構を示す斜視図である。
図2図2は、図1の屈曲操作機構の駆動部の拡大斜視図である。
図3図3は、図2の駆動部の一部を断面にした斜視断面図である。
図4図4(A)及び(B)は、図2の駆動部に用いられる内筒を示す断面図であり、図4(A)は平常時、図4(B)は屈曲時である。
図5図5(A)及び(B)は、図1の屈曲操作機構の概略断面図であり、図5(A)は、平常時、図5(B)は、屈曲時を示す。
図6図6は、図1の屈曲操作機構の駆動ワイヤーの状態を示す斜視図である。
図7図7(A)及び(B)は、本発明の実施例2に係る屈曲操作機構の概略断面図であり、図7(A)は、平常時、図7(B)は、屈曲時を示す。
図8図8は、図7の屈曲操作機構の駆動ワイヤーの状態を示す斜視図である。
図9図9は、本発明の実施例3に係る屈曲操作機構を示す屈曲時の概略断面図である。
図10図10は、本発明の実施例4に係る屈曲操作機構を示す屈曲時の概略断面図である。
図11図11は、本発明の実施例5に係る屈曲操作機構の駆動ワイヤーの状態を示す概略図である。
図12図12は、本発明の実施例5の変形例に係る屈曲操作機構の駆動ワイヤーの状態を示す概略図である。
図13図13は、図12の屈曲操作機構の駆動ワイヤーの接続位置関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
駆動部に対する従動部の追従性を向上させるという目的を、駆動部及び可動部に二重コイルを用いることで実現した。
【0012】
すなわち、屈曲操作機構(1)は、駆動部(5)と、従動部(7)と、リンク部(9)とを備える。駆動部(5)は、弾性的に屈曲可能であり、従動部(7)は、駆動部(5)に対して離間して設けられ、弾性的に屈曲可能となっている。リンク部(9)は、駆動部(5)及び従動部(7)間を接続し駆動部(5)の屈曲に応じて従動部(7)を引張り屈曲させる。
【0013】
駆動部(5)及び従動部(7)のそれぞれは、軸方向に対して屈曲可能な内コイル部(19)及び外コイル部(21)を備え、外コイル部(21)の隣接巻部(21a)間の隙間(21b)に内コイル部(19)の対応する巻部(19a)が嵌合する。
【0014】
駆動部(5)に対するリンク部(9)の接続位置と駆動部(5)の基端部(11)までの長さ(L1)は、従動部(7)に対するリンク部(9)の接続位置と従動部(7)の基端部(11)までの長さ(L2)と異なる構成としてもよい。
【0015】
この場合、駆動部(5)と従動部(7)は、軸方向長さが異なり、リンク部(9)は、駆動部(5)と従動部(7)の先端部(13)間を接続する構成としてもよい。
【0016】
リンク部(9)は、駆動部(5)及び従動部(7)の中心から径方向に変位した位置を接続する索状部材(25)であり、駆動部(5)の屈曲角度をθ1、従動部(7)の屈曲角度をθ2、索状部材(25)の駆動部(5)での変位量をr1、索状部材(25)の従動部(7)での変位量をr2とした場合、θ1:θ2=r2:r1の関係を有する。
【0017】
リンク部(9)は、1以上の索状部材(25)からなり、各索状部材(25)は、駆動部(5)と従動部(7)とを周方向で180度異なる位置で接続してもよい。
【0018】
各索状部材(25)は、駆動部(5)及び従動部(7)間で螺旋状に形成され、この駆動部(5)及び従動部(7)間での螺旋状により、180度異なる位置での接続に対応して180度変位する構成としてもよい。
【実施例1】
【0019】
[屈曲操作機構]
図1は、本発明の実施例1に係る屈曲操作機構を示す斜視図、図2は、屈曲操作機構の駆動部の拡大斜視図、図3は、駆動部の一部を断面にした斜視断面図である。図4は、駆動部に用いられる内筒を示す断面図であり、図4(A)は平常時、図4(B)は屈曲時である。図5(A)及び(B)は、屈曲操作機構の概略断面図であり、図5(A)は平常時、図5(B)は屈曲時を示す。図6は、屈曲操作機構の駆動ワイヤーの状態を示す斜視図である。
【0020】
屈曲操作機構1は、マニピュレーター、ロボット、アクチュエーターのような医療用や産業用等の各種の機器の関節機能部に適用されるものである。関節機能部は、屈曲・伸展する関節としての機能を有する装置、機構、デバイス等である。
【0021】
本実施例の屈曲操作機構1は、シャフト3と、駆動部5と、従動部7と、リンク部9と、可撓部材としての可撓チューブ10及びプッシュプルケーブル12とを備えて構成されている。
【0022】
シャフト3は、金属等によって中空筒状、例えば円筒状に形成されている。シャフト3の両端には、駆動部5及び従動部7がそれぞれ設けられている。従って、シャフト3は、駆動部5及び従動部7が設けられるベースとして機能している。なお、駆動部5及び従動部7のベースは、屈曲操作機構1が適用される機器に応じ、シャフト3に代えて適宜の部材を用いればよい。
【0023】
駆動部5は、シャフト3の一端に同軸に設けられ、軸方向に対して弾性的に屈曲可能に構成されている。なお、軸方向とは、屈曲操作機構1の軸心に沿った方向を意味し、厳密に軸心に平行な方向の他、僅かに傾斜した方向も含まれる。
【0024】
この駆動部5は、操作者によって直接又は間接的に操作される部分であり、操作に応じて屈曲動作を行う。本実施例の駆動部5は、基部11と、可動部13と、内筒15と、外筒17とを備えている。
【0025】
基部11は、樹脂や金属等によって形成された柱状体、例えば円柱状体である。この基部11は、シャフト3の一端に取り付けられ、駆動部5の基端部を構成する。なお、基部11は、柱状体に限られず、屈曲操作機構1が適用される機器に応じて適宜の形態とする。
【0026】
可動部13は、基部11と同様、樹脂や金属等によって形成された柱状体、例えば円柱状体である。この可動部13は、駆動部5の先端部を構成する。なお、可動部13も、屈曲操作機構1が適用される機器に応じて適宜の形態とされ、柱状体に限られない。
【0027】
かかる可動部13は、内筒15及び外筒17によって軸方向に対して変位可能に基部11に支持されている。
【0028】
内筒15は、駆動部5の軸方向に沿って配置されている。この内筒15は、軸方向に対して弾性的に屈曲及び復元が可能な二重コイルであり、内コイル部19と、外コイル部21とを備えている。
【0029】
内コイル部19及び外コイル部21は、それぞれ金属や樹脂等からなり、軸方向に対して屈曲可能な弾性を有するコイルばねである。内コイル部19及び外コイル部21の素線の断面形状は、円形となっている。ただし、この断面形状は、円形に限られるものではなく、半円や楕円等とすることも可能である。
【0030】
内コイル部19は、外コイル部21よりも小さい中心径を有し、外コイル部21内に螺合されている。内コイル部19及び外コイル部21の中心径は、軸方向の一端から他端に至るまで一定となっている。ただし、この外コイル部21の中心径は、軸方向で変化させることも可能である。
【0031】
外コイル部21は、軸方向で隣接する巻部21a(隣接巻部21a)間を軸方向で離間させた複数の隙間であるピッチ21bを有している。この複数のピッチ21bには、内コイル部19の対応する巻部19aが内側から嵌合している。この嵌合により、内コイル部19の巻部19aは、隣接する外コイル部21の巻部21aの双方に接触する。
【0032】
一方、内コイル部19は、軸方向で隣接する巻部19a間(隣接巻部19a間)を軸方向で離間させた複数の隙間としてのピッチ19bを有している。この複数のピッチ19bには、外コイル部21の対応する巻部21aが外側から嵌合している。この嵌合により、外コイル部21の巻部21aは、隣接する内コイル部19の巻部19aの双方に接触する。
【0033】
かかる構成により、内筒15は、軸方向の圧縮が規制されている。
【0034】
外筒17は、内筒15と同心に配置され、内筒15の外周を覆う筒体である。本実施例の外筒17は、複数のウェーブワッシャー23を軸方向で積層して構成されている。軸方向で隣接するウェーブワッシャー23は、相互間が接合されている。この外筒17は、ウェーブワッシャー23の弾性変形により屈曲可能となっている。
【0035】
各ウェーブワッシャー23は、金属や樹脂等によって閉環状に形成されている。軸方向で隣接するウェーブワッシャー23間では、一方のウェーブワッシャー23の山部23aが他方のウェーブワッシャー23の谷部23bに当接し、これら当接する山部23a及び谷部23b間が溶接や接着等の適宜の手段によって接合されている。
【0036】
外筒17の軸方向の両端部には、ウェーブワッシャー23よりも変形量が小さい複数の平ワッシャー24が取り付けられている。この平ワッシャー24を介し、外筒17の両端部には、基部11及び可動部13が結合されている。この結合は、溶接等の適宜の手段によって行われている。なお、平ワッシャー24は省略することも可能である。
【0037】
かかる外筒17には、各ウェーブワッシャー23の山部23aと谷部23bとの間及びこれに対応する平ワッシャー24の部位において、軸方向に連通する挿通孔23c,24aが設けられている。本実施例の挿通孔23c,24aは、周方向で90度毎に設けられている。
【0038】
挿通孔23c,24aは、リンク部9の駆動ワイヤー25を軸方向に挿通する。これにより、外筒17は、駆動ワイヤー25を所定位置に保持するガイドとして機能する。
【0039】
なお、外筒17は、ウェーブワッシャー23を積層したものに限られず、他の可撓性部材によって構成することが可能である。例えば、外筒17は、断面波形状の管体からなるベローズや内筒15と同様の二重コイルによって構成すること等が可能である。
【0040】
従動部7は、シャフト3の他端に同軸に設けられ、駆動部5に対して離間して設けられた構成となっている。この従動部7は、屈曲操作機構1が適用される機器の関節機能部を構成するものであり、軸方向に対して弾性的に屈曲可能に構成されている。従動部7の屈曲は、駆動部5の屈曲に従動することで行われる。
【0041】
本実施例の従動部7は、駆動部5と同一構成であり、基部11と、可動部13と、内筒15と、外筒17とで構成されている。このため、従動部7の各部については、駆動部5の説明を従動部7と読み替えることで参照する。
【0042】
なお、従動部7は、駆動部5と逆向きに構成されている。このため、従動部7の屈曲方向が、駆動部5の屈曲方向とは逆向きとなる。この従動部7の可動部13は、従動部7の先端部を構成し、屈曲操作機構1が適用される機器に応じて、エンドエフェクタ等が取り付けられる。
【0043】
リンク部9は、駆動部5及び従動部7間を接続し、駆動部5の屈曲に応じて従動部7を引張り屈曲させる。このリンク部9は、一以上の索状部材として相互に平行な複数の駆動ワイヤー25からなる。本実施例では、4本の駆動ワイヤー25が設けられている。
【0044】
各駆動ワイヤー25は、金属等からなる索状部材である。駆動ワイヤー25は、屈曲操作機構1の駆動部5及び従動部7の屈曲及び復元を妨げない程度の柔軟性を有している。
【0045】
駆動ワイヤー25の断面形状は、外筒17の挿通孔23c,24aと同様の円形とする他、楕円形や矩形等の異なる形状としてもよい。また、駆動ワイヤー25は、索状部材であれば、撚り線、NiTi(ニッケルチタン)単線、ピアノ線、多関節ロッド、鎖、紐、糸、縄等とすることが可能である。
【0046】
かかる駆動ワイヤー25は、シャフト3、駆動部5、及び従動部7を軸方向に沿って挿通している。駆動部5及び従動部7において、駆動ワイヤー25は、外筒17の挿通孔23c,24aを挿通してガイドされている。シャフト3内では、図示しないガイド部材によってガイドされる。ガイド部材は、シャフト3内に固定したプレート等であり、駆動ワイヤー25を挿通する挿通孔やスリット等を有するものとすればよい。
【0047】
このガイドに応じ、駆動ワイヤー25は、屈曲操作機構1の直状時(伸展時)において、駆動ワイヤー25が駆動部5、従動部7、及びシャフト3の中心から径方向に変位した位置において軸方向に延びている。
【0048】
駆動ワイヤー25の両端部は、駆動ワイヤー25のガイドに応じ、駆動部5及び従動部7の先端部としての可動部13の中心から径方向に変位した位置に接続される。これにより、リンク部9としての駆動ワイヤー25は、駆動部5及び従動部7の中心から径方向に変位した位置を接続する構成となっている。
【0049】
なお、本実施例では、駆動ワイヤー25の駆動部5での変位量r1は、駆動ワイヤー25の従動部7での変位量r2と等しい。駆動ワイヤー25は、張力のかかった状態で駆動部5及び従動部7の可動部13間を接続するが、駆動ワイヤー25の張力は、屈曲操作機構1の特性等に応じて適宜設定することができる。
【0050】
かかる駆動ワイヤー25の両端部は、可動部13に設けられた接続孔13a内に位置し、端部処理等によって可動部13に係合することで抜け止めされている。これによって、駆動ワイヤー25の両端部は、駆動部5及び従動部7に接続される。
【0051】
従って、本実施例の駆動ワイヤー25では、両側の可動部13への係合位置がリンク部9の駆動部5及び従動部7に対する接続位置となる。接続位置は、相互に対応する軸方向位置であり、本実施例において屈曲操作機構1の軸方向の中心を通る径方向に沿った線に対して対称な位置をいう。なお、接続は、溶接や接着等の適宜の手法によって行えばよく、接続位置は、接続手法に応じて設定すればよい。
【0052】
駆動部5に対するリンク部9の接続位置と駆動部5の基端部としての基部11までの長さL1は、従動部7に対するリンク部9の接続位置と従動部7の基端部としての基部11までの長さL2と同一になっている。
【0053】
長さL1は、駆動部5に対するリンク部9の接続位置と駆動部5の基部11の任意の軸方向位置までの長さをいい、同様に、長さL2は、従動部7に対するリンク部9の接続位置と従動部7の基部11の任意の軸方向位置までの長さをいう。ここで、基部11の任意の軸方向位置は、相互に対応する軸方向位置であり、本実施例において屈曲操作機構1の軸方向の中心を通る径方向に沿った線に対して対称な位置をいう。
【0054】
上記のように変位量r1及びr2が等しいので、本実施例では、駆動部5を屈曲させたときの屈曲角度θ1とこれに従動して屈曲した従動部7の屈曲角度θ2が等しくなっている。この長さ屈曲角度θ1及びθ2並びに変位量r1及びr2の関係は、θ1:θ2=r2:r1となる。なお、屈曲角度とは、屈曲動作を担う内筒15及び外筒17の軸心の中心角をいう。
【0055】
可撓チューブ10は、屈曲操作機構1の軸心部に位置し、樹脂等によって形成された筒状部材となっている。可撓チューブ10の両端部は、駆動部3及び従動部5の内筒15内を挿通している。この可撓チューブ10は、駆動部5及び従動部5の屈曲及び復元を妨げない程度の柔軟性を有している。
【0056】
可撓チューブ10内には、プッシュプルケーブル12が挿通している。プッシュプルケーブル12は、進退動作によってエンドエフェクタ等を動作させるものである。
【0057】
なお、機器に応じて、プッシュプルケーブル12以外のエアチューブ等の駆動部材や他の可撓性を有する部材等とすることが可能である。また、機器によっては、可撓チューブ10やプッシュプルケーブル12の可撓部材の何れか一方又は双方を省略することも可能である。
【0058】
[動作]
本実施例の屈曲操作機構1は、図4(A)及び図5(A)のように、駆動部5及び従動部7を屈曲していない直状時(伸展時)において、駆動部5及び従動部7において内筒15の外コイル部21の隣接巻部21a間に内コイル部19の対応する巻部19aが嵌合している。
【0059】
このため、屈曲操作機構1は、駆動部5又は従動部7に軸方向での圧縮力が作用しても、内筒15の内外コイル部19及び21が圧縮されない。結果、駆動部5及び従動部7が押し込まれずに中心部の長さを維持することができる。
【0060】
従って、操作者が駆動部5を屈曲させる前において、不用意に駆動部5及び従動部7が押し込まれることを抑制し、駆動部5及び従動部7の中心部の長さが変動することを抑制できる。
【0061】
この屈曲操作機構1では、従動部7を屈曲させる際、操作者が駆動部5を360度全方位の何れかに向けて屈曲させる。これにより、何れか一つ又は複数の駆動ワイヤー25が引かれ、従動部7を引張り従動させて屈曲させることになる。従って、屈曲操作機構1が適用された機器のエンドエフェクタ等を所望の方向に指向させることができる。
【0062】
駆動ワイヤー25が引かれると、図4(B)及び図5(B)のように、屈曲の内側では、内筒15の外コイル部21の隣接巻部21a間のピッチ21bが小さくなり、屈曲の外側では、内筒15の外コイル部21の隣接巻部21a間のピッチ21bが大きくなる。これにより、内筒15の中心部の長さは屈曲時も変わらずに姿勢が安定する。
【0063】
このとき、内筒15の内コイル部19が屈曲の外側へ向けて押し出される。この内コイル部19の押出しは、屈曲外側部分で内筒15の外コイル部21の隣接巻部21a間の大きくなったピッチ21bにより許容される。このため、円滑に屈曲動作を行わせることができる。
【0064】
しかも、屈曲時には、内筒15の外コイル部21の隣接巻部21a間に内コイル部19の対応する巻部19aが嵌合し続けている。
【0065】
このため、直状時と同様に、駆動部5及び従動部7は、軸方向の圧縮による不用意な押込みが抑制され、中心部の長さが変動することを抑制できる。従って、従動部7は、駆動部5の屈曲に対してリニアに従動し、追従性良く屈曲する。
【0066】
[実施例1の効果]
以上説明したように、本実施例では、弾性的に屈曲可能な駆動部5と、駆動部5に対して離間して設けられ弾性的に屈曲可能な従動部7と、駆動部5及び従動部7間を接続し、駆動部5の屈曲に応じて従動部7を引張り屈曲させるリンク部9とを備える。
【0067】
駆動部5及び従動部7のそれぞれは、軸方向に対して屈曲可能な内コイル部19及び外コイル部21を備え、外コイル部21の隣接巻部21a間のピッチ21bに内コイル部19の対応する巻部19aが嵌合する。
【0068】
従って、本実施例では、屈曲時及び屈曲前後の非屈曲時において、駆動部5及び従動部7の軸方向への押込みが抑制され、駆動部5に対する従動部7の追従性を向上することができ、直観的な操作を可能とする。
【0069】
また、リンク部9は、駆動部5及び従動部7の中心から径方向に変位した位置を接続する索状部材としての駆動ワイヤー25であり、屈曲操作機構1は、駆動部5の屈曲角度をθ1、従動部7の屈曲角度をθ2、駆動ワイヤー25の駆動部5での変位量をr1、駆動ワイヤー25の従動部7での変位量をr2とした場合に、θ1:θ2=r2:r1の関係を有する。
【0070】
本実施例では、駆動部5及び従動部7の軸方向への押込みが抑制されるため、駆動部5及び従動部7の長さL1及びL2の関係を維持し、θ1:θ2=r2:r1の関係を確実に得ることができる。従って、駆動部5及び従動部7の屈曲角度θ1及びθ2を駆動ワイヤー25の変位量に応じて正確に設定することができる。
【0071】
本実施例では、変位量r1及びr2が等しく、屈曲角度θ1及びθ2が等しく設定されているので、駆動部5を屈曲させた分だけ従動部7を確実に屈曲させることができ、より直観的な動作が可能となる。
【実施例2】
【0072】
図7(A)及び(B)は、本発明の実施例2に係る屈曲操作機構の概略断面図であり、図7(A)は、平常時、図7(B)は、屈曲時を示す。図8は、図7の屈曲操作機構の駆動ワイヤーの状態を示す斜視図である。なお、実施例2では、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0073】
実施例2では、各索状部材としての駆動ワイヤー25が駆動部5と従動部7とを周方向で180度異なる位置で接続する。その他は実施例1と同一である。
【0074】
すなわち、各駆動ワイヤー25は、螺旋状になるように周方向に漸次変位して設けられ、駆動部5の可動部13に対する接続位置から従動部7の可動部13に対する接続位置までの間に周方向に180度変位する。なお、駆動ワイヤー35は、変位量を180度に限らず他の任意の角度とし、この角度に応じて駆動部5と従動部7とを周方向で異なる位置を接続する構成としてもよい。
【0075】
本実施例の駆動ワイヤー25は、駆動部5及び従動部7巻であるシャフト3内で螺旋状に形成され、このシャフト3内での螺旋状により180度異なる位置での接続に対応して周方向に180度変位する。つまり、駆動部5及び従動部7内では、駆動ワイヤー25は螺旋状ではなく平行となっている。ただし、駆動ワイヤー25は、駆動部5の可動部13から従動部7の可動部13まで全体として螺旋状に構成してもよい。
【0076】
シャフト3内では、軸方向に複数配置された保持部材等に漸次周方向に変位した保持用の孔を形成し、この保持用の孔に駆動ワイヤー25を挿通することで螺旋形状が保持される。駆動部5及び従動部7では、実施例1と同様にして駆動ワイヤー25を挿通する。
【0077】
かかる実施例2では、駆動部5を屈曲させた方向に従動部7を屈曲させることができ、より直観的な操作を行うことができる。また、本実施例では、シャフト3内でのみ駆動ワイヤー25が螺旋状になっているため、駆動部5及び従動部7の構造の複雑化を防止し、動作の安定化を図り、且つ汎用性を向上できる。その他、実施例2でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例3】
【0078】
図9は、本発明の実施例3に係る屈曲操作機構を示す屈曲時の概略断面図である。なお、実施例3では、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0079】
実施例3では、駆動部5に対するリンク部9の接続位置と駆動部5の基端部としての基部11までの長さL1を、従動部7に対するリンク部9の接続位置と従動部7の基端部としての基部11までの長さL2よりも長くしたものである。その他は実施例1と同一である。
【0080】
本実施例では、駆動部5の長さを従動部7の長さよりも軸方向に長くし、リンク部9の駆動ワイヤー25が実施例1と同様に駆動部5と従動部7の可動部13間を接続する。
【0081】
なお、長さL1を長さL2よりも短く形成してもよい。この場合、駆動部5の長さを従動部7の長さよりも軸方向に短くし、リンク部9の駆動ワイヤー25が実施例1と同様に駆動部5と従動部7の可動部13間を接続すればよい。従って、本実施例では、長さL1が長さL2とは異なればよい。
【0082】
かかる実施例3では、実施例1と同様に駆動部5の屈曲角度θ1と従動部7の屈曲角度θ2とが等しいため、屈曲角度θ1とするまでの駆動部5の可動部13の変位量が屈曲角度θ2となるまでの従動部7の可動部13の変位量よりも大きくなる。
【0083】
この結果、駆動部5の可動部13の大きな変位によって従動部7の可動部13の小さな変位を制御することができる。駆動部5を小さくすることなく従動部7の繊細な動作を可能にでき、繊細な動作の操作性を向上することができると共に操作ミス等を抑制することができる。
【0084】
逆に、長さL1を長さL2よりも短く形成した場合は、駆動部5の可動部13の小さな変位によって従動部7の可動部13の大きな変位を制御することができ、駆動部5を大きくすることなく従動部7に大きな変位を行わせることができる。
【0085】
その他、本実施例でも、実施例2と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例4】
【0086】
図10は、本発明の実施例4に係る屈曲操作機構を示す屈曲時の概略断面図である。なお、実施例4では、実施例2と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0087】
実施例4では、駆動部5での駆動ワイヤー25の変位量r1を従動部7での駆動ワイヤー25の変位量r2よりも大きくしたものである。その他は、実施例1と同一である。
【0088】
すなわち、駆動部5の外筒17を従動部7の外筒17よりも大径にし、これに応じて駆動部5の挿通孔23cを従動部7の挿通孔23cよりも径方向の外側に配置している。この挿通穴23cに駆動ワイヤー25を挿通することで、変位量r1を変位量r2よりも大きくしている。
【0089】
このため、θ1:θ2=r2:r1の関係より、駆動部5の屈曲角度θ1が従動部7の屈曲角度θ2よりも小さくなる。なお、変位量r1を変位量r2よりも小さくしてもよい。
【0090】
かかる実施例4では、駆動部5の屈曲角度θ1が小さい屈曲動作によって、従動部7に屈曲角度θ2が大きい屈曲動作を行わせることができる。このため、本実施例では、少ない操作力で従動部7を大きく屈曲させることができる。しかも、駆動部5の径を大きくして操作しやすくでき、より小さな操作力での屈曲が可能となる。
【0091】
逆に、変位量r1を変位量r2よりも小さくした場合は、駆動部5の屈曲角度θ1が大きい屈曲動作によって、従動部7に屈曲角度θ2が小さい屈曲動作を行わせることができる。従って、従動部7の繊細な動作を可能にでき、繊細な動作の操作性を向上することができると共に操作ミス等を抑制することができる。
【0092】
その他、実施例4でも、実施例2と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例5】
【0093】
図11は、本発明の実施例5に係る屈曲操作機構の駆動ワイヤーの状態を示す概略図である。なお、実施例4では、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0094】
本実施例では、駆動ワイヤー25を3本にしている。その他は、実施例1と同一である。3本の駆動ワイヤー25は、周方向に所定間隔毎に配置され、それぞれ駆動部5と従動部7とを軸方向で対向した位置で接続する。
【0095】
かかる実施例5でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0096】
図12は、実施例5の変形例に係る屈曲操作機構の駆動ワイヤーの状態を示す概略図である。図13は、図12の屈曲操作機構の駆動ワイヤーの接続位置を示す概念図である。
【0097】
変形例では、実施例5において、実施例2と同様に、駆動ワイヤー25が駆動部5と従動部7とを周方向で180度異なる位置で接続している。
【0098】
かかる変形例では、実施例2と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 屈曲操作機構
5 駆動部
7 従動部
9 リンク部
11 基部(先端部)
13 可動部(基端部)
19 内コイル部
19a 巻部
21 外コイル部
21a 巻部
25 駆動ワイヤー(索状部材)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13