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特許7538701エレクトロクロミック装置および該装置を制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】エレクトロクロミック装置および該装置を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/15 20190101AFI20240815BHJP
   G02F 1/1524 20190101ALI20240815BHJP
【FI】
G02F1/15
G02F1/15 502
G02F1/15 503
G02F1/1524
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020193818
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022082325
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】福井 理晃
(72)【発明者】
【氏名】牧野 泰憲
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-218431(JP,A)
【文献】特開平01-031131(JP,A)
【文献】特開平10-063216(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0116808(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109375446(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15-1/19
G09G 3/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材と、該第1の基材に隣接する第1の電極と、
第2の基材と、該第2の基材に隣接する第2の電極と、
前記第1の電極に隣接しメモリー性を有する第1のエレクトロクロミック層と、前記第2の電極に隣接しメモリー性を有する第2のエレクトロクロミック層とのうちの少なくとも一方と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に存在し、前記第1のエレクトロクロミック層と前記第2のエレクトロクロミック層とのうちの少なくとも一方と隣接する電解質層と、
前記第1および第2の電極に印加する電圧を制御する制御部と、
を備えたエレクトロクロミック装置であって、
前記制御部は、
前記第1または第2のエレクトロクロミック層における光透過率に対応した電圧であるレベル電圧の目標値である目標レベル電圧値と、前記第1および第2の電極間に生じる素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第1の閾値より大きい場合に、所定の直流電圧を前記第1および第2の電極に印加する直流モードと、
前記目標レベル電圧値と前記素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第1の閾値以下の場合に、前記レベル電圧に対応する、前記第1および第2の電極に印加する連続パルス電圧の電圧値とパルス幅との少なくとも一方により、前記第1および第2の電極に電圧を印加する複数のパルスモードと、
を切り替えて、前記第1および第2の電極に印加する電圧を制御する、
エレクトロクロミック装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレクトロクロミック装置であって、
前記制御部は、
前記直流モードへの移行の後に、
前記素子電圧の現在値と前記目標レベル電圧値とを比較して、前記目標レベル電圧値と前記素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第1の閾値以下の場合に、前記複数のパルスモードに移行して前記第1および第2の電極への電圧印加を行い、
前記複数のパルスモードに移行した後に、前記目標レベル電圧値と前記素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第2の閾値よりも大きい場合には、
前記複数のパルスモードを解除して前記直流モードに移行する、
エレクトロクロミック装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエレクトロクロミック装置であって、
前記制御部は、
前記パルスモードに移行したのち、前記素子電圧の現在値と前記目標レベル電圧値との差を算出して、当該差の絶対値が所定の第3の閾値以下の場合に前記パルスモードを解除して前記第1および第2の電極への電圧の印加を停止するオフモードに移行する、
エレクトロクロミック装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエレクトロクロミック装置であって、
前記制御部は、
前記オフモードに移行した後に、上記差の絶対値が所定の第4の閾値を超えた場合にパルスモードもしくは直流モードへと移行する、
エレクトロクロミック装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック装置であって、
1つの前記光透過率に対して前記レベル電圧を複数設定している、
エレクトロクロミック装置。
【請求項6】
第1の基材と、該第1の基材に隣接する第1の電極と、
第2の基材と、該第2の基材に隣接する第2の電極と、
前記第1の電極に隣接しメモリー性を有する第1のエレクトロクロミック層と、前記第2の電極に隣接しメモリー性を有する第2のエレクトロクロミック層とのうちの少なくとも一方と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に存在し、前記第1のエレクトロクロミック層と前記第2のエレクトロクロミック層とのうちの少なくとも一方と隣接する電解質層と、
を備えたエレクトロクロミック装置を制御する方法であって、
前記第1または第2のエレクトロクロミック層における光透過率に対応した電圧であるレベル電圧の目標値である目標レベル電圧値と、前記第1および第2の電極間に生じる素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第1の閾値より大きい場合に、所定の直流電圧を前記第1および第2の電極に印加する直流モードと、
前記目標レベル電圧値と前記素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第1の閾値以下の場合に、前記レベル電圧に対応する、前記第1および第2の電極に印加する連続パルス電圧の電圧値とパルス幅との少なくとも一方により、前記第1および第2の電極に電圧を印加する複数のパルスモードと、
を切り替えて、前記第1および第2の電極に印加する電圧を制御する機能を有し、
前記素子電圧の現在値を測定する第1ステップと、
前記素子電圧の現在値と前記目標レベル電圧値とを比較して、前記透過率を減少させる着色動作か、前記透過率を増加させる消色動作かを判定する第2ステップと、
前記目標レベル電圧値と前記素子電圧の現在値との差の絶対値に応じて、前記直流モードまたは前記パルスモードで前記第1および第2の電極に電圧を印加する第3ステップと、
を含む、
エレクトロクロミック装置を制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の透過率が変更可能でメモリー性を有するエレクトロクロミック材料を使用したエレクトロクロミック装置および該装置を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エレクトロクロミック(以下、EC[Electro-Chromic])材料を使用したEC素子を有する例えばECガラスからなり、該EC素子に電圧等による電気信号を印加することで、その光の透過率(以下、光透過率、または、単に透過率とも呼ぶ)を変化させることができる表示装置等のEC装置が知られている。EC装置の用途は、例えば、カムフラージュ目的、日よけ目的等の、建築物の窓、乗り物のミラー、ルーフおよび窓、眼鏡類やゴーグル、光伝送における光フィルタおよび変調器などが挙げられ、また広告用途等の情報ディスプレイなどが挙げられる。
【0003】
EC素子(EC材料)には、電圧印加を停止しても現状の透過率が維持される、所謂メモリー性を有するものが知られている。こうしたEC装置のEC素子の従来の制御方法として、連続したパルス電圧のみを使用して、その印加時間、電圧値を制御するものが知られている(例えば、特許文献1 参照) 。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2010-529488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうしたEC装置では、高速で所定の透過率に達することが要求される。しかし、高速性を追求するために高い電圧をEC素子に印加すると、EC素子が劣化または素子破壊されうる。そこで、EC素子を保護しつつ高速性を求めて、上記従来の制御方法のような、パルス電圧を印加する等の制御法が提案されている。しかし、メモリー性を有するEC素子であっても、素子によって、電圧印加を停止した当初はその透過率が維持されても、時間と共に自己放電により電圧が変動し、その透過率が変化する場合がある。例えば、PID(Proportional Integral Differential)制御で制御を行った場合には、所定の透過率に到達しても、その後、時間と共に電圧が変動して透過率が変化し、透過率の安定性に課題があることが知られている。上記従来の制御方法では、高速性に寄与する可能性はあっても、安定性については何ら検討されていない。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべく、高速で所定の透過率に達することができ、かつ安定的に透過率を維持しうる、エレクトロクロミック装置および該装置を制御する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明にかかるエレクトロクロミック装置は、
第1の基材と、該第1の基材に隣接する第1の電極と、
第2の基材と、該第2の基材に隣接する第2の電極と、
前記第1の電極に隣接しメモリー性を有する第1のエレクトロクロミック層と、前記第2の電極に隣接しメモリー性を有する第2のエレクトロクロミック層とのうちの少なくとも一方と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に存在し、前記第1のエレクトロクロミック層と前記第2のエレクトロクロミック層とのうちの少なくとも一方と隣接する電解質層と、
前記第1および第2の電極に印加する電圧を制御する制御部と、
を備えたエレクトロクロミック装置であって、
前記制御部は、
前記第1または第2のエレクトロクロミック層における光透過率に対応した電圧であるレベル電圧の目標値である目標レベル電圧値と、前記第1および第2の電極間に生じる素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第1の閾値より大きい場合に、所定の直流電圧を前記第1および第2の電極に印加する直流モードと、
前記目標レベル電圧値と前記素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第1の閾値以下の場合に、前記レベル電圧に対応する、前記第1および第2の電極に印加する連続パルス電圧の電圧値とパルス幅との少なくとも一方により、前記第1および第2の電極に電圧を印加する複数のパルスモードと、
を切り替えて、前記第1および第2の電極に印加する電圧を制御する。
【0009】
この構成によれば、上記構成の第1のエレクトロクロミック層または前記第2のエレクトロクロミック層を有し、前記制御部が、前記直流モードと前記複数のパルスモードとを切り替えて、前記第1および第2の電極に印加する電圧を制御するので、例えばPID制御のように所定の透過率に到達してもその後時間と共に電圧が変動して透過率が変化して安定性に課題が生じるということがなく、高速で所定の透過率に達することができ、かつ安定的に透過率を維持しうる。
【0010】
上記構成において、
前記制御部は、
前記直流モード移行の後に、
前記素子電圧の現在値と前記目標レベル電圧値とを比較して、前記目標レベル電圧値と前記素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第1の閾値以下の場合に、前記複数のパルスモードに移行して前記第1および第2の電極への電圧印加を行い、
前記複数のパルスモードに移行した後に、前記目標レベル電圧値と前記素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第2の閾値よりも大きい場合には、
前記複数のパルスモードを解除して前記直流モードに移行してもよい。
これにより、前記複数のパルスモードに移行した後に、素子電圧が所望のレベル電圧に対して差が大きい場合に、パルスモードを解除して前記直流モードへ戻ることができる。
【0011】
上記構成において、前記制御部は、前記パルスモードに移行したのち、前記素子電圧の現在値と前記目標電圧値との差を算出して、当該差の絶対値が所定の第3の閾値以下の場合に前記パルスモードを解除して前記第1および第2の電極への電圧の印加を停止するオフモードに移行してもよい。これにより、第1のエレクトロクロミック層および/または第2のエレクトロクロミック層が、前記第1および第2の電極への電圧の印加を停止しても、メモリー性によってその透過率を維持するオフモードに移行できる。加えて、前記制御部は、前記オフモードに移行した後に、上記差の絶対値が所定の第4の閾値を超えた場合にパルスモードもしくは直流モードへと移行してもよい。これにより、上記差の絶対値が大きい場合に、前記パルスモードもしくは直流モードへと移行して、素子電圧が所定の透過率に応じたレベル電圧になるように制御を再開できる。
【0012】
上記構成において、1つの前記光透過率に対して前記レベル電圧を複数設定してもよい。これにより、第1のエレクトロクロミック層および/または第2のエレクトロクロミック層が、素子電圧上昇時(着色時)と、下降時(消色時)とで、透過率の変化に速度差がある場合に、着色時であっても消色時であっても透過率を同程度に変化させるまでの時間を短縮することが可能となる。
【0013】
本発明にかかるエレクトロクロミック装置を制御する方法は、
第1の基材と、該第1の基材に隣接する第1の電極と、
第2の基材と、該第2の基材に隣接する第2の電極と、
前記第1の電極に隣接しメモリー性を有する第1のエレクトロクロミック層と、前記第2の電極に隣接しメモリー性を有する第2のエレクトロクロミック層とのうちの少なくとも一方と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に存在し、前記第1のエレクトロクロミック層と前記第2のエレクトロクロミック層とのうちの少なくとも一方と隣接する電解質層と、
を備えたエレクトロクロミック装置を制御する方法であって、
前記第1または第2のエレクトロクロミック層における光透過率に対応した電圧であるレベル電圧の目標値である目標レベル電圧値と、前記第1および第2の電極間に生じる素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第1の閾値より大きい場合に、所定の直流電圧を前記第1および第2の電極に印加する直流モードと、
前記目標レベル電圧値と前記素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第1の閾値以下の場合に、前記レベル電圧に対応する、前記第1および第2の電極に印加する連続パルス電圧の電圧値とパルス幅との少なくとも一方により、前記第1および第2の電極に電圧を印加する複数のパルスモードと、
を切り替えて、前記第1および第2の電極に印加する電圧を制御する機能を有し、
前記素子電圧の現在値を測定する第1ステップと、
前記素子電圧の現在値と前記目標レベル電圧値とを比較して、前記透過率を減少させる着色動作か、前記透過率を増加させる消色動作かを判定する第2ステップと、
前記目標レベル電圧値と前記素子電圧の現在値との差の絶対値に応じて、前記直流モードまたは前記パルスモードで前記第1および第2の電極に電圧を印加する第3ステップと、
を含む。
【0014】
この構成によれば、上記の特徴および作用効果を有するいずれかのエレクトロクロミック装置を制御することができるので、例えばPID制御のように、所定の透過率に到達しても、その後、時間と共に電圧が変動して透過率が変化し、安定性に課題が生じることなく、高速で所定の透過率に達することができ、かつ安定的に透過率を維持しうる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るエレクトロクロミック装置および該装置を制御する方法は、高速で所定の透過率に達することができ、かつ安定的に透過率を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るEC素子の概略横断面図および制御部の概略説明図である。
図2】同EC装置で使用されるEC素子の素子特性を説明する図である。
図3】同EC装置を制御する際に使用する制御量を説明する図である。
図4】同EC装置の制御方法を説明する図である。
図5】同EC装置を制御するフロー図である(メイン)。
図6】同EC装置を制御するフロー図である(着色時等)。
図7】同EC装置を制御するフロー図である(消色時)。
図8】同EC装置のパルスモードを説明する際に使用する図である(着色時)。
図9】同EC装置のパルスモードを説明する際に使用する図である(消色時)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号は、同一または相当部分を示し、特段変更等の説明がない限り、適宜その説明を省略する。
【0018】
図1に、一実施形態に係るエレクトロクロミック(EC[Electro-Chromic])装置900を示す。EC装置900は、メモリー性を有するEC材料を使用したEC素子100および該EC素子の光の透過率を変化させる制御部300とからなる。EC素子100は、ガラス板等の第1の基材110と、該第1の基材110に隣接するITO(英: Indium Tin Oxide)等からなる第1の電極120(カソード側)と、ガラス板等の第2の基材150と、該第2の基材150に隣接するITO等からなる第2の電極140(アノード側)とを備える。
【0019】
EC素子100は、さらに、第1の電極120に隣接しメモリー性を有するEC材料を含む第1のエレクトロクロミック層EC1と、第2の電極140に隣接しメモリー性を有するEC材料を含む第2のエレクトロクロミック層EC2とのうちの少なくとも一方と、前記第1の電極120と第2の電極140との間に存在し第1のエレクトロクロミック(EC)層EC1と第2のエレクトロクロミック(EC)層EC2とのうちの少なくとも一方と隣接する電解質層130とを備える。なお、本実施形態では、EC素子100が、異なるEC材料からなる第1のEC層EC1と第2のEC層EC2の両方のEC層を備えた例で説明をおこなう。よって、本実施形態では、電解質層130は、第1のEC層EC1と第2のEC層EC2の両方に隣接して挟まれている。本実施形態のEC素子100では、第1の基材110、第1の電極120、(第1の)EC層EC1、電解質層130、(第2の)EC層EC2、第2の電極140、および第2の基材150が、図1の左方から右方に向けて、この順に、互いに隣接して、並んでいる。第1のEC層EC1および第2のEC層EC2のEC材料の材質は、プルシアンブルー型錯体や水和酸化ニッケルなどのアノーディック材料および酸化モリブデンや酸化チタンなど金属酸化物によるカソーディック材料が用いられ、例えば、フェロシアン化鉄や酸化タングステン等が使用しうる。
【0020】
本実施形態のEC素子100では、例えば、図2に示すように、透明状態に対する5つの異なる光の透過率(以下、光透過率、または、単に透過率とも呼ぶ)である透過レベルL1~L5を設定可能である。透過レベルL1~L5には、それぞれ透過率T1~T5が対応し、T1>T2>T3>T4>T5である。また、EC素子100が透過レベルL1を達成するためのレベル電圧は、V1u,V1dであり、透過レベルL2は、V2u,V2dであり、透過レベルL3は、V3u,V3dであり、透過レベルL4は、V4u,V4dであり、透過レベルL5は、V5u,V5dである。ここで、本実施形態のEC素子100では、素子電圧上昇時(着色制御時)と下降時(消色制御時)とで色の変化速度が異なるため、レベル電圧を異ならせる所謂ヒステリシス特性にて制御しており、素子電圧上昇時のレベル電圧をVnu(n=1~5)と表し、素子電圧下降時のレベル電圧をVnd(n=1~5)と表している。レベルL1に到達する場合とは消色時のみであるため、V1uは設定されなくてもよい。また、レベルL5に到達する場合とは着色時のみであるため、V5dは設定されなくてもよい。なお、本実施形態では、V1u=V1d、V5u=V5dである。これにより、着色時と、消色時とで、透過率の変化に速度差がある場合に、着色時であっても消色時であっても透過率を同程度に変化させるまでの時間を短縮することが可能となる。
【0021】
図1を再度参照して、制御部300は、第1および第2の電極120,140に印加する電圧(以下、「印加電圧」とも称する)を制御する。制御部300は、ユーザからの入力を受け付けかつ透過率/透明度等の諸情報を出力するUI(User Interface)310と、制御部300における演算および制御を司る演算部320、第1および第2の電極120,140間に生じる素子電圧の現在値を測定する電圧測定部331、電圧測定部331への電圧入力のオンオフを切り替えるスイッチング素子333、後述のDC(直流)電圧および連続パルス電圧を変化させるための可変電圧出力である第1の電源351、第1の電源351からの電圧出力のオンオフ切り替えや連続パルスを発生させるためのスイッチング素子353、印加電圧を定めるための固定電圧出力である第2の電源371とを少なくとも含む。
【0022】
本実施形態の制御部300は、例えば演算部320において、第1および第2のEC層EC1,EC2における光透過率に対応した電圧であるレベル電圧の目標値である目標レベル電圧値(後述)をセットする。なお、透過率すなわちレベル電圧が複数存在する場合は、それらの中からユーザが選択する。本実施形態の制御部300は、高速で所定の透過率に達するためにかつ安定的に透過率を維持するために、まず、この目標レベル電圧値と、第1および第2の電極120,140の間に生じる上記素子電圧の現在値との差を算出し、当該差の絶対値が所定の第1の閾値より大きい場合に、所定の直流電圧を第1および第2の電極120,140に印加する直流モードを有する(以下、第1および第2の電極120,140への電圧印加を、単に「電圧印加」とも称する)。加えて、本実施形態の制御部300は、目標レベル電圧値と素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第1の閾値以下の場合に、レベル電圧に対応する、第1および第2の電極に印加する連続パルス電圧の電圧値とパルス幅との少なくとも一方により(本実施形態では、両方とにより)、第1および第2の電極120,140に電圧を印加する複数のパルスモードを有する。制御部300は、直流モードと複数のパルスモードとを切り替えて、印加電圧を制御する。なお、上記の第1の閾値や、後述の第2の閾値~第4の閾値は、実験結果やシミュレーション結果等から決定される。これらのレベル電圧、連続パルス電圧の電圧値とパルス幅、および各閾値等は、例えば演算部320に記憶されている。
【0023】
制御部300は、図1のスイッチング素子353をオンして、第1および第2の電極120,140に印加する各電圧を出力するが、現在の素子電圧に対して第1の電極の電圧を上げるとEC素子100の着色動作を行い、現在の素子電圧に対して第1の電極の電圧を下げるとEC素子100の消色動作を行いうる。ここで、EC素子100の着色動作とは、EC素子100の光の透過率を低下させ、EC素子100を例えば曇らせる動作のことを言う。また、EC素子100の消色動作とは、EC素子100の光の透過率を上昇させ、EC素子100の透明度を高める動作のことを言う。第2の電源371がDC電圧を出力し、第1の電源351がDC電圧を出力して印加電圧を所定のDC電圧とでき、また、第1の電源351がDC電圧を出力しつつスイッチング素子353が連続してオンオフされることで、所定の電圧値、パルス幅、およびデューティー比からなる上記連続パルス電圧を印加しうる。
【0024】
本実施形態では、例えば、所定のDC電圧は、着色制御時はVdu[v](本実施形態では1.5[v])であり、消色制御時はVdd[v](本実施形態では-1.8[v])である。ここで所定のDC電圧は、EC素子100が高速で所定の透過率に達するべく、その絶対値を大きくとることが考えられるが、大きすぎると、素子の劣化や素子破壊の可能性が高まるため、本実施形態では上記のような値としている。なお、着色制御時のVduに対し消色制御時のVddの絶対値が大きいのは、消色時の方が素子の反応が遅く、素子の反応を促進するためであり、VduをVddの絶対値と同じにしないのは、高い電圧印加による劣化や素子破壊の可能性を少しでも低減させるためである。
【0025】
図3に示す本実施形態のパルスモードは、例えば、モード1(M1)~モード5(M5)の5つからなる。モード1(M1)~モード5(M5)の各モードでは、例えば所定の電圧値Vpnとパルス幅Tnxy(n=1~5、xy=11,12,13,21,22,23)とが事前に設定されている。電圧値Vpn、パルス幅Tnxyについては後述する。本実施形態では、透過レベル1つにつき、パルスモードが複数設定される。
【0026】
上記のような制御部300の制御では、PID制御とは異なり直流モードと複数のパルスモードとを切り替えて印加電圧を制御し、本実施形態のEC素子100が高速で所定の透過率に達しつつかつ安定的に透過率を維持されうるが、具体的には、図4の電圧特性図に示すような電圧印加の制御を行う。例えば、透過率を低下させる場合において(着色)、所望するEC素子100の光の透過具合(すなわち透過率)または曇り具合を複数ある中からユーザが選択することで、対応するレベル電圧が後述の目標レベル電圧値として設定される。目標レベル電圧値と現在の素子電圧との比較により、直流モードかパルスモードかが決定されるが、EC素子100の制御開始当初は、目標レベル電圧値と素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第1の閾値より大きいため、モードは直流モードとなり、図4の時刻t1に素子への電圧印加が開始され、所定のDC電圧Vdu[v]が印加される。
【0027】
素子電圧が上昇して、目標レベル電圧値と現在の素子電圧との差が所定の第1の閾値以下となった時刻t2に、モードがパルスモードへと遷移する。本願の発明者らは、このとき、素子電圧は安定的にそのままの値を維持せず変動することを見出した。そこで、素子電圧すなわち透過率が安定化するように、その素子電圧の変動量に対応したパルスモードにおける所定の電圧値、パルス幅、およびデューティー比からなる連続パルス電圧を、時刻t3、t4…tkにおいて1パルスずつ印加する(kは自然数)。これにより、図4に示すように、素子電圧が、所望のレベル電圧に漸近して同値近傍に落ち着く。以上により、ユーザが所望するEC素子100の曇り具合/光の透過具合(すなわち透過率)が達成される。なお、透過率を上昇させる(透明度が増す)場合、すなわち消色制御の場合は、上記の図4を用いた着色制御の説明と同様であるが、所定のDC電圧の印加はVdd[v]であり、パルスモードにおける所定の電圧値、パルス幅、およびデューティー比も、素子電圧の変動量に対応した値となる。
【0028】
以下において、図5図7のフロー図を用いて、さらに具体的なEC素子100の制御について説明する。ここで、制御の当初は、目標レベル電圧値は、光透過率に対応したレベル電圧の目標値がセットされるが(「当初値」と称する)、本実施形態では、EC素子100の透過率を、着色時でも消色時でもより早く同じ目標レベルに到達させるため、具体的には当初値にオフセット値で補正した目標レベル電圧値(表2)を使用し、目標レベル電圧値と素子電圧の現在値との差の絶対値の算出を行い、その差が所定の第1の閾値以下の場合に、直流モードから所定のパルスモードへ移行する。さらに、パルスモードへ移行した後は、後述する表1の境界値に基づいて区間が設定され、素子電圧が例えば区間(a)~区間(f)または区間(g)~区間(l)のいずれにあるかに従って、直流モード、他のパルスモードまたはオフモードへと移行する(図8図9)。なお、各パルスモードでは、素子電圧がどの区間にあるかに従って、異なるパルス(表3)が使用される。
【0029】
EC装置900の電源投入後に(START)、図5のステップS100において、ユーザが所望のEC素子100の透過率を選択することで、透過率変更動作が開始され、ステップS200に移行する。この際、ユーザ選択の透過率に対応した電圧であるレベル電圧を目標レベル電圧値(当初値)としてセットする。ステップS200で現在の素子電圧が測定され(本発明の制御方法の第1ステップ)、ステップS300で目標レベル電圧値の当初値と測定された素子電圧とが比較される。素子電圧が目標レベル電圧値の当初値よりも小さい場合には着色制御が確定して、各種パラメータがセットされ(ステップS310)、素子電圧が目標レベル電圧値の当初値以上の場合には消色制御が確定して、各種パラメータがセットされ(ステップS330)(以上、本発明の制御方法の第2ステップ)、ステップS400へ移行する。ここで、素子電圧が目標レベル電圧値の当初値にほぼ等しい場合には、後述のように出力オフと判定され、後段(ステップS600)で出力を停止する。
【0030】
ステップS400で現在の素子電圧が測定され、ステップS500で現在の素子電圧により各モードへの移行判定が行われ、移行するモードが決定する。ステップS600では、ステップS500で決定されたモードに従って、所定のDC電圧の印加(直流モード)または所定の連続パルス電圧の印加(パルスモード)、または後述のように素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第3の閾値以下の場合にパルスモードを解除して第1および第2の電極への電圧の印加を停止する出力停止(オフモード)が実行される(以上、本発明の制御方法の第3ステップ)。ステップS700では、ユーザが出力停止を操作した場合、上記電圧出力の終了となり、一連の制御を停止してステップS800へ移行し、ステップS700で出力停止とされなかった場合には、ステップS400へ移行し、上記フローがループとなり繰り返される。ステップS800でユーザが電源オフを選択していない場合、ステップS100へ移行し、ユーザの透過率の選択待ちとなる。ステップS800で電源オフを選択した場合、制御部の電源オフとなる(END)。当該ループは、本実施形態では500msecのループ時間毎に実行される。ループ時間がこれよりも長いと、制御が遅くなりEC素子100に色のちらつきが発生し易くなり、これよりも短いと、セル電圧を正確に測定できない傾向となる。
【0031】
ここで、ステップS500により出力停止(オフモード)と判定され、ステップS600で出力停止が実行されても、上記ループを抜けることなく、ループ時間毎に素子電圧を測定し、素子電圧が後述の区間(a)、区間(b)、区間(e)、もしくは区間(f)、または、区間(g)、区間(h)、区間(k)、もしくは区間(l)に至った場合、すなわち、素子電圧の現在値と目標電圧値との絶対値が、所定の第4の閾値を超えた場合にパルスモードもしくは直流モードへと移行する。
【0032】
ステップS500での詳細動作を、図6および図7を用いて説明する。図6のステップT100において、目標レベル電圧値と素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第1の閾値より大きいか比較されてモードが判断され、大きい場合には直流モードとされ(ステップT200)、第1の閾値以下の場合にはパルスモードとされる(ステップT300)。ここで、目標レベル電圧値と素子電圧の現在値との比較(減算動作)において、直ちにステップT300に移行することをせず、当該差が第1の閾値以下の状態が所定の複数回または所定の時間継続してはじめてステップT300に移行してもよい。なお、本実施形態では、素子電圧を500msec毎に測定するため、所定の複数回を3回、所定の時間を1秒としている。これは、実際のEC素子内部の電圧は測定した素子電圧と比較して不均一であることに起因して直流モードからパルスモードへ移行した際に素子電圧が戻る現象を見越したもので、これにより、パルスモードへ移行した直後に、素子電圧を目標レベル電圧値により近づけることができる(図4)。直流モードの場合(ステップT200)、次に、上記の目標レベル電圧値と素子電圧の現在値との比較結果に基づき、着色制御か消色制御か判断される(ステップT230)、着色制御時はステップT250で印加電圧がVdu[v]とされ、消色制御時はステップT270で印加電圧がVdd[v]とされる。
【0033】
パルスモードの場合(ステップT300)、次に、上記の目標レベル電圧値と素子電圧の現在値との比較結果に基づき、着色制御か消色制御か判断される(ステップT330)、着色制御時はステップT400へ移行し、消色制御時はステップU400(図7)へ移行する。ステップT400で、着色制御において、現在の素子電圧が、次の区間(a)~区間(f)のどこに含まれるか判断される。
【0034】
区間(a)~区間(f)は、目標レベル電圧値に所定の複数の値を加算したそれぞれの電圧値(境界値)によって区分された区間である。境界値は、例えば、下記表に記載されているような値である。境界値H11~H14は、着色制御で使用され、境界値H21~H24は、消色制御で使用される。着色制御では、境界値H11未満の区間(a)と、境界値H11、境界値H12、目標レベル電圧値、境界値H13、および境界値H14で区切られた各区間(b)~(e)と、境界値H14以上の区間(f)との6つに区分される(図8)。消色制御では、境界値H21以上の区間(g)と、境界値H21、境界値H22、目標レベル電圧値、境界値H23、および境界値H24で区切られた各区間(h)~(k)と、境界値H24未満の区間(l)との6つに区分される(図9)。
【表1】
【0035】
ステップT400で、現在の素子電圧が、区間(a)に含まれると判断された場合、前記目標レベル電圧値と前記素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第2の閾値(上記境界値H11に相当)よりも大きいと判断され、ステップT410に移行し、パルスモードが解除されて直流モードに変更され、ステップS600へ移行する。ステップT400で、現在の素子電圧が、区間(b),(e),(f)に含まれると判断された場合、各々、ステップT420、ステップT450、ステップT460に移行し、対応するパルスP11、パルスP12、パルスP13を出力するよう設定され、ステップS600へ移行する。ここで、パルスP11、パルスP12、パルスP13は、着色制御で用いられる連続パルス電圧の種類の例であり、例えば後述の表3のような所定の電圧値とパルス幅が割り当てられている。なお、消色制御で用いられる連続パルス電圧の種類の例として、パルスP21、パルスP22、パルスP23があり、例えば表3のような所定の電圧値とパルス幅が割り当てられている。
【0036】
ステップT400で、現在の素子電圧が、区間(c)に含まれると判断され、かつパルスP11が出力中の場合(ステップT430)、現在の出力状態を維持し、ステップS600へ移行する。そして次の素子電圧の判定において、区間(d)に含まれると判断された場合、パルスP11が出力中であるためパルスP12は出力中ではないと判断され(ステップT440)、出力オフ(オフモード)への移行が確定となり(ステップT443)、ステップS600へ移行する。また、素子電圧が、区間(c)に含まれると判断され、かつパルスP11が出力中ではない場合、つまり現在の出力状態が、直流またはパルスP12またはパルスP13またはオフの場合(ステップT430)、出力オフ(オフモード)への移行または出力オフの継続が確定となり(ステップT433)、ステップS600へ移行する。
【0037】
ステップT400で、現在の素子電圧が、区間(d)に含まれると判断され、かつパルスP12が出力中の場合(ステップT440)、現在の出力状態を維持し、ステップS600へ移行する。そして次の素子電圧の判定において、区間(c)に含まれると判断された場合、パルスP12が出力中であるためパルスP11は出力中ではないと判断され(ステップT430)、出力オフ(オフモード)への移行が確定となり(ステップT433)、ステップS600へ移行する。また、素子電圧が、区間(d)に含まれると判断され、かつパルスP12が出力中ではない場合、つまり現在の出力状態が、直流またはパルスP11またはパルスP13またはオフの場合(ステップT440)、出力オフ(オフモード)への移行または出力オフの継続が確定となり(ステップT443)、ステップS600へ移行する。
【0038】
図7のステップU400で、消色制御において、現在の素子電圧が、次の区間(g)~区間(l)のどこに含まれるか判断される。
【0039】
ステップU400で、現在の素子電圧が、区間(g)に含まれると判断された場合、前記目標レベル電圧値と前記素子電圧の現在値との差の絶対値が所定の第2の閾値(上記境界値H21に相当)よりも大きいと判断され、ステップU410に移行し、パルスモードが解除され直流モードに変更され、ステップS600へ移行する。ステップU400で、現在の素子電圧が、区間(h),(k),(l)に含まれると判断された場合、各々、ステップU420、ステップU450、ステップU460に移行し、対応するパルスP21、パルスP22、パルスP23を出力するよう設定され、ステップS600へ移行する。
【0040】
ステップU400で、現在の素子電圧が、区間(i)に含まれると判断され、かつパルスP21が出力中の場合(ステップU430)、現在の出力状態を維持し、ステップS600へ移行する。そして次の素子電圧の判定において、区間(j)に含まれると判断された場合、パルスP21が出力中であるためパルスP22は出力中ではないと判断され(ステップU440)、出力オフ(オフモード)への移行が確定となり(ステップU443)、ステップS600へ移行する。また、素子電圧が、区間(i)に含まれると判断され、かつパルスP21が出力中ではない場合、つまり現在の出力状態が、直流またはパルスP22またはパルスP23またはオフの場合(ステップU430)、出力オフ(オフモード)への移行または出力オフの継続が確定となり(ステップU433)、ステップS600へ移行する。
【0041】
ステップU400で、現在の素子電圧が、区間(j)に含まれると判断され、かつパルスP22が出力中の場合(ステップU440)、現在の出力状態を維持し、ステップS600へ移行する。そして次の素子電圧の判定において、区間(i)に含まれると判断された場合、パルスP22が出力中であるためパルスP21は出力中ではないと判断され(ステップU430)、出力オフ(オフモード)への移行が確定となり(ステップU433)、ステップS600へ移行する。また、素子電圧が、区間(j)に含まれると判断され、かつパルスP22が出力中ではない場合、つまり現在の出力状態が、直流またはパルスP21またはパルスP23またはオフの場合(ステップU440)、出力オフ(オフモード)への移行または出力オフの継続が確定となり(ステップU443)、ステップS600へ移行する。
【実施例
【0042】
例えば、本実施形態において、以下のような特性値を使用して制御しうる。なお、図3の連続パルス電圧の電圧値Vpn(n=1~5)は、表3の各パルスP11~P23の電圧値の値となっている。また、図3のTn11~Tn23(n=1~5)は、各パルスP11~P23のパルス幅の値となっている。なお、パルス幅は、本実施例では、n(=1~5)に依存していない。ここで、連続パルスの周期は上述の500msecである。
【表2】
【表3】
【0043】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
100 エレクトロクロミック素子
110,150 第1の基材、第2の基材
120、140 第1の電極、第2の電極
130 電解質層
300 制御部
EC1,EC2 第1のエレクトロクロミック層、第2のエレクトロクロミック層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9