(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置、モータ駆動制御システム、ファンシステム、及びモータ駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/62 20160101AFI20240815BHJP
H02P 29/68 20160101ALI20240815BHJP
【FI】
H02P29/62
H02P29/68
(21)【出願番号】P 2020196342
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】海津 浩之
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-514134(JP,A)
【文献】特開昭62-203578(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111120380(CN,A)
【文献】特開2011-151931(JP,A)
【文献】特開2003-065102(JP,A)
【文献】国際公開第2013/136627(WO,A1)
【文献】特開2019-180179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/62
H02P 29/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成するモータ制御回路と、
前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路と、
温度を計測する温度センサと、を備え、
前記モータ制御回路は、
駆動指令に基づいて前記駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成部と、
前記温度センサによる前記温度の計測値を含む計測データを生成する計測データ生成部と、
前記計測データに含まれる前記温度の計測値に基づいて、前記モータの再起動を開始する前に前記モータの駆動を停止するための休息期間を設定するとともに、前記休息期間において前記モータの駆動を停止させるように前記駆動制御信号生成部を制御する起動管理部と、
外部と通信を行う通信部とを有し、
前記起動管理部は、前記通信部が前記外部から前記モータの起動を指示する起動要求を受信した場合に、前記休息期間の経過後に、前記駆動制御信号生成部を制御して前記モータを駆動するための前記駆動制御信号の生成を可能にし、
前記起動管理部は、前記通信部が前記外部から前記起動要求を受信した場合に、設定した前記休息期間の長さを示す情報を含む第1応答を、前記通信部を介して前記外部に送信する
モータ駆動制御装置。
【請求項2】
モータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成するモータ制御回路と、
前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路と、
温度を計測する温度センサと、を備え、
前記モータ制御回路は、
駆動指令に基づいて前記駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成部と、
前記温度センサによる前記温度の計測値を含む計測データを生成する計測データ生成部と、
前記計測データに含まれる前記温度の計測値に基づいて、前記モータの再起動を開始する前に前記モータの駆動を停止するための休息期間を設定するとともに、前記休息期間において前記モータの駆動を停止させるように前記駆動制御信号生成部を制御する起動管理部と、
外部と通信を行う通信部とを有し、
前記起動管理部は、前記通信部が前記外部から前記モータの起動を指示する起動要求を受信した場合に、前記休息期間の経過後に、前記駆動制御信号生成部を制御して前記モータを駆動するための前記駆動制御信号の生成を可能にし、
前記起動管理部は、前記温度の計測値が基準値を超えていない場合に、前記休息期間の長さを前記起動要求によって指定された第1の値に設定し、前記温度の計測値が前記基準値を超えている場合に、前記休息期間の長さを前記第1の値よりも大きい第2の値に設定する
モータ駆動制御装置。
【請求項3】
モータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成するモータ制御回路と、
前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路と、
温度を計測する温度センサと、を備え、
前記モータ制御回路は、
駆動指令に基づいて前記駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成部と、
前記温度センサによる前記温度の計測値を含む計測データを生成する計測データ生成部と、
前記計測データに含まれる前記温度の計測値に基づいて、前記モータの再起動を開始する前に前記モータの駆動を停止するための休息期間を設定するとともに、前記休息期間において前記モータの駆動を停止させるように前記駆動制御信号生成部を制御する起動管理部と、
外部と通信を行う通信部とを有し、
前記起動管理部は、前記通信部が前記外部から前記モータの起動を指示する起動要求を受信した場合に、前記休息期間の経過後に、前記駆動制御信号生成部を制御して前記モータを駆動するための前記駆動制御信号の生成を可能にし、
前記起動管理部は、前記モータの再起動が可能か否かを判定し、前記モータの再起動が不可能であると判定した場合には、再起動の中止を要求する情報を、前記通信部を介して前記外部に送信する
モータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1
乃至3の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記起動管理部は、前記温度の計測値が高いほど前記休息期間が長くなるように前記休息期間を設定する
モータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項
1乃至4の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記起動管理部は、前記通信部が前記外部から前記モータの起動状況の送信を指示する起動結果取得要求を受信した場合に、前記モータの起動が成功したか否かを示す情報を含む第2応答を、前記通信部を介して前記外部に送信する
モータ駆動制御装置。
【請求項6】
請求項
1乃至5の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置と、
前記モータ駆動制御装置と通信を行う上位装置と、を備え、
前記上位装置は、前記モータ駆動制御装置に対して、前記駆動指令および前記起動要求を送信する
モータ駆動制御システム。
【請求項7】
請求項
6に記載のモータ駆動制御システムと、
前記モータと、
前記モータの回転力によって回転可能に構成されたインペラと、を備える
ファンシステム。
【請求項8】
モータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成するモータ制御回路と、前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路と、温度を計測する温度センサと、を備えるモータ駆動制御装置によるモータ駆動制御方法であって、
前記モータ制御回路が、駆動指令に基づいて前記駆動制御信号を生成する第1ステップと、
前記モータ制御回路が、前記温度センサによる温度の計測値を含む計測データを取得する第2ステップと、
前記モータ制御回路が、前記計測データに含まれる前記温度の計測値に基づいて、前記モータの再起動を開始する前に前記モータの駆動を停止するための休息期間を設定する第3ステップと、を含み、
前記第1ステップは、
前記モータ制御回路が、前記第3ステップで設定された前記休息期間において、前記モータの駆動を停止させるように前記駆動制御信号の生成を制御するステップと、
前記モータ制御回路が外部から前記モータの起動を指示する起動要求を受信した場合に、前記休息期間の経過後に、前記モータ制御回路による、前記モータを駆動するための前記駆動制御信号の生成が可能になるステップと、
前記モータ制御回路が前記外部から前記起動要求を受信した場合に、
前記モータ制御回路が、前記第3ステップにおいて設定した前記休息期間の長さを示す情報を含む第1応答を前記外部に送信する
ステップと、を含む
モータ駆動制御方法。
【請求項9】
モータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成するモータ制御回路と、前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路と、温度を計測する温度センサと、を備えるモータ駆動制御装置によるモータ駆動制御方法であって、
前記モータ制御回路が、駆動指令に基づいて前記駆動制御信号を生成する第1ステップと、
前記モータ制御回路が、前記温度センサによる温度の計測値を含む計測データを取得する第2ステップと、
前記モータ制御回路が、前記計測データに含まれる前記温度の計測値に基づいて、前記モータの再起動を開始する前に前記モータの駆動を停止するための休息期間を設定する第3ステップと、を含み、
前記第1ステップは、
前記モータ制御回路が、前記第3ステップで設定された前記休息期間において、前記モータの駆動を停止させるように前記駆動制御信号の生成を制御するステップと、
前記モータ制御回路が外部から前記モータの起動を指示する起動要求を受信した場合に、前記休息期間の経過後に、前記モータ制御回路による、前記モータを駆動するための前記駆動制御信号の生成が可能となるステップとを含み、
前記第3ステップは、前記温度の計測値が基準値を超えていない場合に、前記休息期間の長さを前記起動要求によって指定された第1の値に設定し、前記温度の計測値が前記基準値を超えている場合に、前記休息期間の長さを前記第1の値よりも大きい第2の値に設定するステップを含む、
モータ駆動制御方法。
【請求項10】
モータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成するモータ制御回路と、前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路と、温度を計測する温度センサと、を備えるモータ駆動制御装置によるモータ駆動制御方法であって、
前記モータ制御回路が、駆動指令に基づいて前記駆動制御信号を生成する第1ステップと、
前記モータ制御回路が、前記温度センサによる温度の計測値を含む計測データを取得する第2ステップと、
前記モータ制御回路が、前記計測データに含まれる前記温度の計測値に基づいて、前記モータの再起動を開始する前に前記モータの駆動を停止するための休息期間を設定する第3ステップと、を含み、
前記第1ステップは、
前記モータ制御回路が、前記第3ステップで設定された前記休息期間において、前記モータの駆動を停止させるように前記駆動制御信号の生成を制御するステップと、
前記モータ制御回路が外部から前記モータの起動を指示する起動要求を受信した場合に、前記休息期間の経過後に、前記モータ制御回路による、前記モータを駆動するための前記駆動制御信号の生成が可能になるステップと、
前記モータ制御回路が、前記モータの再起動が可能か否かを判定し、前記モータの再起動が不可能であると判定した場合には、再起動の中止を要求する情報を前記外部に送信するステップと、を含む、
モータ駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置、モータ駆動制御システム、ファンシステム、及びモータ駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サーバ等の情報処理装置に適用されるファンのモータを駆動するモータ駆動制御システムにおいて、モータのロータの回転位置を検出するためのホール素子等の位置センサの数を削減する傾向がある。位置センサを削減する理由は、位置センサを配置するスペースの縮小や部品コストの削減のためである。
【0003】
しかしながら、位置センサを減らすと、モータの起動に失敗する可能性が高くなる。
モータの起動に失敗した場合、モータを再起動させる処理が必要となる。例えば、特許文献1および特許文献2には、モータの起動が失敗した場合に、モータを再起動させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-74883号公報
【文献】特開2010-213434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータの起動が失敗した場合、できるだけ早くモータが再起動できれば問題は生じない。しかしながら、モータの起動が失敗し、モータの再起動が短い周期で繰り返し実行された場合、モータのコイル(巻線)やモータを駆動するためのインバータ回路を構成するトランジスタ(例えば、FET:Field effect transistor)等の回路部品が発熱し、破壊される虞がある。上述した特許文献1および特許文献2に開示されたモータの再起動技術は、モータや回路部品の発熱を考慮していない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解消するためのものであり、モータ再起動時の発熱に起因するモータや回路部品等の損傷を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置は、モータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成するモータ制御回路と、前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路と、温度を計測する温度センサと、を備え、前記モータ制御回路は、駆動指令に基づいて前記駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成部と、前記温度センサによる前記温度の計測値を含む計測データを生成する計測データ生成部と、前記計測データに含まれる前記温度の計測値に基づいて、前記モータの再起動を開始する前に前記モータの駆動を停止するための休息期間を設定するとともに、前記休息期間において前記モータの駆動を停止させるように前記駆動制御信号生成部を制御する起動管理部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、モータの再起動時の発熱に起因するモータや回路部品等の損傷を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける上位装置およびモータ駆動制御装置の具体的な構成の一例を示す図である。
【
図3A】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおけるモータの再起動に係る処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図3B】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおけるモータの再起動に係る処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図4A】モータを再起動させるときのモータ駆動制御装置側の処理の流れを示すフロー図である。
【
図4B】モータを再起動させるときのモータ駆動制御装置側の処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0011】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(10)は、モータ(50)の駆動を制御するための駆動制御信号(Sd)を生成するモータ制御回路(30)と、前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路(31)と、温度を計測する温度センサ(20)と、を備え、前記モータ制御回路は、駆動指令(Sc)に基づいて前記駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成部(11)と、前記温度センサによる前記温度の計測値を含む計測データ(240)を生成する計測データ生成部(23)と、前記計測データに含まれる前記温度の計測値に基づいて、前記モータの再起動を開始する前に前記モータの駆動を停止するための休息期間(T)を設定するとともに、前記休息期間において前記モータの駆動を停止させるように前記駆動制御信号生成部を制御する起動管理部(25)とを有することを特徴とする。
【0012】
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記起動管理部は、前記温度の計測値が高いほど前記休息期間が長くなるように前記休息期間を設定してもよい。
【0013】
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記モータ制御回路は、外部と通信を行う通信部(15)を更に有し、前記起動管理部は、前記通信部が前記外部から前記モータの起動を指示する起動要求(S6,S12,S20)を受信した場合に、前記休息期間の経過後に、前記駆動制御信号生成部を制御して前記モータを駆動するための前記駆動制御信号の生成を可能にしてもよい。
【0014】
〔4〕上記〔3〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記起動管理部は、前記通信部が前記外部から前記起動要求を受信した場合に、設定した前記休息期間の長さを示す情報を含む第1応答(S8,S14,S22)を、前記通信部を介して前記外部に送信してもよい。
【0015】
〔5〕上記〔4〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記起動管理部は、前記通信部が前記外部から前記モータの起動状況の送信を指示する起動結果取得要求(S4,S10,S16,S24)を受信した場合に、前記モータの起動が成功したか否かを示す情報を含む第2応答(S5,S11,S17,S25)を、前記通信部を介して前記外部に送信してもよい。
【0016】
〔6〕上記〔3〕乃至〔5〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置において、前記起動管理部は、前記温度の計測値が基準値(th1)を超えていない場合に、前記休息期間の長さを前記起動要求によって指定された第1の値(Ti)に設定し、前記温度の計測値が前記基準値(th1)を超えている場合に、前記休息期間の長さを前記第1の値よりも大きい第2の値(Ts,Ts1~Ts3)に設定してもよい。
【0017】
〔7〕上記〔3〕乃至〔6〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置において、前記起動管理部は、前記モータの再起動が可能か否かを判定し、前記モータの再起動が不可能であると判定した場合には、再起動の中止を要求する情報(S25)を、前記通信部を介して前記外部に送信してもよい。
【0018】
〔8〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御システム(2)は、上記〔3〕乃至〔7〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置(10)と、前記モータ駆動制御装置と通信を行う上位装置(4)と、を備え、前記上位装置は、前記モータ駆動制御装置に対して、前記駆動指令(Sc)および前記起動要求を送信することを特徴とする。
【0019】
〔9〕本発明の代表的な実施の形態に係るファンシステム(1)は、上記〔8〕に記載のモータ駆動制御システム(2)と、前記モータ(50)と、前記モータの回転力によって回転可能に構成されたインペラ(51)と、を備えることを特徴とする。
【0020】
〔10〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御方法は、モータ(50)の駆動を制御するための駆動制御信号(Sd)を生成するモータ制御回路(30)と、前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路(31)と、温度を計測する温度センサ(20)と、を備えるモータ駆動制御装置(10)によるモータ駆動制御方法である。本モータ駆動制御方法は、前記モータ制御回路が、駆動指令に基づいて前記駆動制御信号を生成する第1ステップ(S53)と、前記モータ制御回路が、前記温度センサによる温度の計測値を含む計測データを取得する第2ステップ(S61)と、前記モータ制御回路が、前記計測データに含まれる前記温度の計測値に基づいて、前記モータの再起動を開始する前に前記モータの駆動を停止するための休息期間を設定する第3ステップ(S63,S64)とを含み、前記第1ステップは、前記モータ制御回路が、前記第3ステップで設定された前記休息期間において、前記モータの駆動を停止させるように前記駆動制御信号の生成を制御するステップ(S66)を含むことを特徴とする。
【0021】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0022】
≪実施の形態≫
図1は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムの構成の一例を示す図である。
図1に示されるモータ駆動制御システム2は、制御装置である1つの上位装置(外部の一例)4と1つ以上のモータ駆動制御装置10とを備え、上位装置4が各モータ駆動制御装置10を制御することにより、各モータ駆動制御装置10に接続されたモータ50を駆動するシステムである。
【0023】
モータ駆動制御システム2は、例えば、電気機器に用いられ、複数のファンの動作を1つの制御装置によって制御して、複数の冷却対象のそれぞれに対して送風するファンシステム1を構成している。本実施の形態に係るファンシステム1は、例えば、サーバ内の閉ざされた空間に配置されて、当該サーバを構成する各種の電子部品等を冷却する冷却システムを構成しているものとする。
【0024】
ファンシステム1は、例えば、4つの冷却対象A、B、C、Dに対応して設けられた4つのファン装置3a~3dと、各ファン装置3a~3d内のモータ50を駆動するための各種指令を各ファン装置3a~3dに対して送信する上位装置(制御装置の一例)4とを備えている。
【0025】
以下の説明において、各ファン装置3a~3dを区別しない場合には、「ファン装置3」とも称する。なお、本実施の形態では、ファンシステム1が4つのファン装置3a~3dを有する場合を例に挙げて説明するが、ファンシステム1が備えるファン装置3は1つ以上であればよく、その数は制限されない。また、
図1において、上位装置4と各ファン装置3とを接続する通信線路が有線である場合が例示されているが、各ファン装置3a~3dと上位装置4との間の通信は無線通信であってもよい。
【0026】
上位装置4は、各ファン装置3の駆動を制御する制御装置である。例えば、ファンシステム1がサーバ用の冷却システムを構成している場合、上位装置4は、サーバとしての主たる機能を実現するためのプログラム処理装置である。
【0027】
例えば、上位装置4は、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、および入出力I/F回路等の周辺回路とが、バスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ)が、ファン装置3とともに一つの筐体内に収容されることによって実現されている。
【0028】
上位装置4は、例えば、ファンシステム1の環境変化(処理負荷の変化やサーバ内部の温度の変化など)あるいは制御するファン装置の状況(制御するファン装置の個数の変化、一部のファン装置が故障するなど)に応じてファン(モータ)の風量が適切になるように、各ファン装置3を制御する。
【0029】
各ファン装置3は、モータ50と、インペラ51と、上位装置4からの指令に応じてモータ50の駆動を制御するモータ駆動制御装置10とを備えている。
【0030】
モータ50は、例えば、3相のブラシレスモータである。なお、モータ50の種類は特に限定されず、相数も3相に限定されない。
【0031】
インペラ(羽根車)51は、風を発生させる部品であり、モータ50の回転力によって回転可能に構成されている。例えば、インペラ51の回転軸は、モータ50の出力軸に同軸に連結されている。本実施の形態では、例えば、インペラ51とモータ50とが一つのファン(ファンモータ)5を構成しているものとする。
【0032】
図2は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システム2における上位装置4およびモータ駆動制御装置10の具体的な構成の一例を示す図である。
【0033】
図2に示すように、上位装置4は、例えば、サーバとしての主たる機能を実現するためのデータ処理制御部41と、各ファン装置3と通信を行うための通信部42とを備えている。
【0034】
上位装置4(通信部42)と各ファン装置3(モータ駆動制御装置10)との間の通信は、例えば、シリアル通信によって実現される。
【0035】
データ処理制御部41および通信部42は、例えば、上位装置4を構成するプログラム処理装置において、プロセッサが、メモリに記憶されたプログラムに従って各種演算処理を実行するとともに、カウンタやA/D変換回路等の周辺回路を制御することによって実現される。
【0036】
データ処理制御部41は、各ファン装置3に対して、モータ50(ファン装置3)の起動を指示する起動要求を出力する。例えば、上位装置4としてのサーバの電源が投入された時やサーバの再起動時に、データ処理制御部41は、起動要求として、モータ50(ファン)の起動の開始を指示する起動開始要求を、通信部42を介して各ファン装置3に送信する。
【0037】
また、ファン装置3においてモータ50の起動が失敗した場合には、データ処理制御部41は、起動要求として、モータ50(ファン)の再起動を指示する再起動要求を、通信部42を介してモータ50の起動が失敗したファン装置3に送信する。
【0038】
このとき、再起動要求には、モータ50の再起動を開始する前にモータ50の駆動を停止するための休息期間Tの長さを指定する情報(以下、「指定時間Ti」とも称する。)が含まれていてもよい。なお、休息期間Tの詳細については後述する。
【0039】
また、データ処理制御部41は、例えば、サーバ内に配置された各ファン装置3から供給される風量を調整するために、各ファン装置3に対して、モータ50の駆動に関する目標値を指示する駆動指令信号Scを出力する。例えば、データ処理制御部41は、各ファン装置3のモータ50の目標となる回転速度(目標回転速度)を指定する速度指令信号を、駆動指令信号Scとして通信部42を介して各ファン装置3に送信する。
【0040】
なお、駆動指令信号Scの送受信は、上述したシリアル通信ではなく、例えば、上位装置4と各ファン装置3とを接続する専用線を用いて実現されてもよい。この場合、駆動指令信号Scとしての速度指令信号は、例えば、目標回転速度に応じたデューティ比を有するPWM信号としてもよい。また、駆動指令信号Scは、上述した速度指令信号に限られず、例えば、モータ50のトルクの目標値を示すトルク指令信号であってもよい。
【0041】
データ処理制御部41は、各ファン装置3から出力されるモータ50の実際の回転速度(回転数)を表す回転速度信号So(例えば、FG(Frequency Generator)信号)を、通信部42を介して受信することにより、各ファン装置3のモータ50の回転状態を監視する。なお、回転速度信号Soの送受信は、例えば、上位装置4と各ファン装置3とを接続する専用線を用いて実現してもよいし、上述のシリアル通信によって実現してもよい。
【0042】
データ処理制御部41は、例えば、モータ50の起動の可否、モータ50の駆動電流や温度、モータ50の累積動作時間、異常発生の有無等のモータ50の動作に関する情報を送信するように通信部42を介して各ファン装置3に要求し、要求に応じて各ファン装置3から送信された情報を、通信部42を介して受信する。これにより、上位装置4は、各ファン装置3におけるモータ50の駆動状態をより詳細に知ることができる。
【0043】
例えば、データ処理制御部41は、モータ50の再起動要求をファン装置3に送信した後に、モータ50の再起動の実行が可能であるか否かを示す情報を含む第1応答を、当該ファン装置3から通信部42を介して受信する。ここで、第1応答には、必要な休息期間Tの長さを示す情報が含まれていてもよい。
【0044】
また、データ処理制御部41は、上位装置4がモータ50の起動状況を取得するために、モータ50の起動状況の送信を指示する起動結果取得要求を、起動要求を送信したファン装置3に対して送信する。そして、データ処理制御部41は、起動結果取得要求を受信したファン装置3から、モータ50の起動が成功したか否かを示す情報を含む第2応答を、通信部42を介して受信する。
【0045】
モータ駆動制御装置10は、主たる機能として、モータの回転を制御するモータ駆動制御機能と、上位装置4との間で通信を行う通信機能と、モータ50の再起動を管理する再起動管理機能とを備えている。
【0046】
モータ駆動制御装置10は、モータ駆動制御機能として、上位装置4からの駆動指令(速度指令信号)Scに応じて駆動制御信号Sdを生成し、モータ50の各相(例えば、3相)のコイルに周期的に正弦波状の駆動電流を流してモータ50を回転させる。
【0047】
モータ駆動制御装置10は、通信機能として、上位装置4との間でデータの送受信(例えば、シリアル通信により)を行うことにより、上位装置4から各種指令を受信するとともに、受信した指令に対する応答等を上位装置4に送信する。
【0048】
モータ駆動制御装置10は、再起動管理機能として、モータ50の起動が失敗した場合に、モータ50の再起動の実行を管理する。
上述したように、モータの再起動を繰り返し行った場合、モータのコイルやインバータ回路を構成するトランジスタ等の回路部品が発熱し、破壊される虞がある。そこで、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置10は、上位装置4からの起動指令に応じてモータ50を再起動させるとき、モータ50周辺の温度を計測し、温度の計測結果に基づいてモータ50の休息期間Tを設定し、休息期間Tの経過後にモータ50の再起動を実行する再起動管理機能を有している。
【0049】
ここで、休息期間Tとは、モータ50の再起動を開始する前にモータ50の駆動を停止するための期間である。換言すれば、休息期間Tは、モータ50の再起動を実行するまでの待機時間である。休息期間Tの長さは、発熱したモータ50や回路部品等を放熱させるために十分な時間が設定される。
なお、本実施の形態では、一例として、「駆動を停止する」とはロック通電制御によるロック保護動作を行うことを意味し、「休息期間」はロック保護動作による停止期間を意味するものとする。
【0050】
以下、上述した各機能を実現するためのモータ駆動制御装置10の構成について詳細に説明する。
【0051】
図2に示すように、モータ駆動制御装置10は、上述した各機能を実現するための機能部として、例えば、モータ制御回路30、モータ駆動回路31、温度センサ20、および位置センサ21を備えている。モータ制御回路30は、駆動制御信号生成部11、通信部15、回転速度計測部22、計測データ生成部23、計測データ記憶部24、起動管理部25、休息期間記憶部26、およびFG信号生成部27を有している。
【0052】
ここで、モータ制御回路30を構成する機能部のうち、駆動制御信号生成部11、回転速度計測部22、計測データ生成部23、計測データ記憶部24、起動管理部25、および休息期間記憶部26は、例えば、プログラム処理装置によって実現されている。より具体的には、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、および入出力I/F回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ)において、CPUがメモリに記憶されているプログラムに従って各種演算処理を実行し、その処理結果に基づいてA/D変換回路や入出力インターフェース回路等の周辺回路を制御することによって、上述した機能ブロックが実現される。
【0053】
なお、モータ駆動制御装置10は、モータ駆動回路31とその他の機能部の少なくとも一部とが一つの集積回路装置(IC)としてパッケージ化された構成であってもよいし、モータ駆動回路31とその他の機能部がそれぞれ個別の集積回路装置として夫々パッケージ化された構成であってもよい。
【0054】
以下、モータ駆動制御装置10を構成する各機能部について詳細に説明する。
【0055】
駆動制御信号生成部11は、モータ50の駆動を制御するための駆動制御信号Sdを生成するための機能部である。駆動制御信号生成部11は、例えば、上位装置4から駆動指令として出力された駆動指令信号(速度指令信号)Scを受信した場合に、モータ50の回転速度が駆動指令信号Scによって指定された目標回転速度と一致するように、駆動制御信号Sdを生成する。
【0056】
駆動制御信号Sdは、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。
【0057】
図2に示すように、駆動制御信号生成部11は、例えば、速度指令解析部12、デューティ比決定部13、および通電制御部14を備えている。
【0058】
速度指令解析部12は、上位装置4から出力された駆動指令信号(速度指令信号)Scを受信し、駆動指令信号Scによって指定された目標回転速度を解析する。例えば、駆動指令信号Scが目標回転速度に対応するデューティ比を有するPWM信号である場合、速度指令解析部12は、駆動指令信号Scのデューティ比を解析し、そのデューティ比に対応する回転速度の情報を目標回転速度として出力する。
【0059】
デューティ比決定部13は、速度指令解析部12から出力された目標回転速度と後述する回転速度計測部22によって計測されたモータ50の回転速度の計測値と、起動管理部25からの制御信号とに基づいて、駆動制御信号SdとしてのPWM信号のデューティ比を決定する。
【0060】
具体的には、デューティ比決定部13は、目標回転速度とモータ50の回転速度の計測値との差が小さくなるようにモータ50の制御量を算出し、その制御量に応じたPWM信号のデューティ比を決定する。
【0061】
デューティ比決定部13は、起動管理部25からモータ50の駆動の停止を指示する制御信号(ロック保護制御信号)が入力された場合には、駆動指令信号Sc(目標回転速度)に関わらず、モータ50の駆動を停止させるようにPWM信号のデューティ比(例えば、デューティ比=0%)を決定する。
【0062】
通電制御部14は、デューティ比決定部13によって決定したデューティ比を有するPMW信号を生成し、駆動制御信号Sdとして出力する。また、通電制御部14は、デューティ比決定部13から入力した信号がモータ50の駆動を停止させるデューティ比であった場合は、モータ駆動回路31の動作を停止させる駆動制御信号Sdを出力する。
【0063】
モータ駆動回路31は、駆動制御信号生成部11によって生成された駆動制御信号Sdに基づいてモータ50を駆動する。モータ駆動回路31は、例えば、インバータ回路及びプリドライブ回路(不図示)を有している。
【0064】
インバータ回路は、プリドライブ回路から出力された出力信号に基づいてモータ50に駆動信号を出力し、モータ50が備えるコイルに通電する。インバータ回路は、例えば、直流電源の両端に設けられた2つのスイッチ素子(例えば、FET等のトランジスタ)の直列回路の対が、各相のコイルに対してそれぞれ配置されて構成されている。2つのスイッチ素子の各対において、スイッチ素子同士の接続点に、モータ50の各相の端子が接続されている。
【0065】
プリドライブ回路は、駆動制御信号Sdに基づいて、インバータ回路を駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路に出力する。プリドライブ回路は、例えば、駆動制御信号Sdに基づいて、インバータ回路の各スイッチ素子を駆動する駆動信号を生成して出力する。この駆動信号がインバータ回路を構成する各スイッチ素子をオン/オフさせることにより、モータ50の各相に電力が供給されてモータ50のロータが回転する。
【0066】
温度センサ20は、ファン装置3内の温度を測定する装置である。温度センサ20は、例えば、サーミスタである。温度センサは、特に、モータ50の周辺の温度を検出する。例えば、温度センサ20は、モータ50のコイルの温度およびモータ駆動回路19のインバータ回路を構成する各トランジスタの温度が適切に計測できるように、ファン装置3内の所定の箇所に配置されている。また、温度センサ20は、モータ制御回路30に内蔵するように構成してもよい。なお、モータ駆動制御装置10内に設けられる温度センサ20の数は特に限定されず、1つであってもよいし、測定対象毎に複数設けられていてもよい。
【0067】
位置センサ21は、モータ50のロータの回転位置を検出する装置である。位置センサ21は、ホール素子である。位置センサ21としてのホール素子は、ロータの磁極を検出し、ロータの回転に応じて電圧が変化するホール信号を出力する。
【0068】
なお、位置センサ21は、ホール素子に限定されない。位置センサ21は、モータのロータの回転位置を検出することができる装置であればよく、例えば、エンコーダ等であってもよい。この場合、位置センサ21は、モータ駆動制御装置10の構成要素の一つとしてではなく、モータ駆動制御装置10とは互いに独立した装置として、モータ駆動制御装置10の外部に設けられていてもよい。上述した温度センサ20についても同様である。
【0069】
また、モータ駆動制御装置10は、上述した温度センサ20および位置センサ21に加えて、モータ50のコイルに流れる電流を検出する電流検出器(例えば、シャント抵抗)やモータ50の振動を検出する振動センサ等の各種センサを有していてもよい。
【0070】
回転速度計測部22は、モータ50の回転速度を計測する機能部である。回転速度計測部22は、例えば、位置センサ21としてのホール素子の検出信号(ホール信号)に基づいて、モータ50の回転速度を計測し、その計測結果を出力する。
【0071】
FG(Frequency Generator)信号生成部27は、モータ50の回転速度を示す回転速度信号SoとしてのFG信号を生成する。FG信号生成部27は、例えば、位置センサ21としてのホール素子から出力された検出信号(ホール信号)に基づいて、モータ50の回転速度に比例する周期(周波数)を有する信号(FG信号)を生成する。FG信号生成部27から出力されたFG信号は、回転速度信号Soとして上位装置4に入力する。なお、FG信号生成部27は、例えば、モータ50が搭載される基板(プリント基板)上に形成されたFGパターンによって実現してもよい。
【0072】
通信部15は、外部と通信を行うための機能部である。具体的に、通信部15は、制御装置としての上位装置4との間でデータの送受信を行う。通信部15は、例えば、送信部16、受信部17、および通信制御部18を有する。
【0073】
送信部16は、外部(例えば、上位装置4等の外部装置)に信号を送信する。受信部17は、外部(例えば、上位装置4等の外部装置)から信号を受信する。送信部16および受信部17は、例えば、通信制御部18に制御されて、所定のシリアル信号を生成して通信線路に送信し、通信線路からシリアル信号を受信するシリアル通信用インターフェース回路である。
【0074】
通信制御部18は、送信部16にエンコードしたデータを送り、また、受信部17からのデータをデコードすることで、上位装置4との間でデータの送受信を実現する。通信制御部18は、例えば、上述したモータ駆動制御装置10を構成するプロセッサによるプログラム処理によって実現される。
【0075】
通信制御部18は、受信部17を介して受信した上位装置4からの要求指令を起動管理部25に与えるとともに、起動管理部25から与えられた上記要求指令に対する応答を、送信部16を介して上位装置4の通信部42に送信する。
【0076】
例えば、上位装置4から送信された、モータ50の起動要求を受信部17が受信したとき、通信制御部18は、その起動要求を起動管理部25に与えるとともに、起動管理部25から与えられた上記起動要求に対する第1応答を、送信部16を介して上位装置4の通信部42に送信する。
【0077】
また、上位装置4から送信された、モータ50の起動状況(モータ50の起動が成功したか否か)の送信を指示する起動結果取得要求を受信部17が受信したとき、通信制御部18は、当該起動結果取得要求を起動管理部25に与えるとともに、起動管理部25から与えられた上記起動結果取得要求に対する第2応答を、送信部16を介して上位装置4の通信部42に送信する。
【0078】
計測データ生成部23は、モータ50の動作に関連する計測データ240を生成するための機能部である。例えば、計測データ生成部23は、温度センサ20から出力される電気信号に基づいて、温度の計測値(デジタル値)を算出し、その計測値を計測データ240として計測データ記憶部24に記憶する。
【0079】
例えば、計測データ生成部23は、単位時間毎に、温度センサ20による温度の計測結果を計測データ240として計測データ記憶部24に記憶する。また、計測データ生成部23は、例えば、回転速度計測部22によって計測されたモータ50の単位時間当たりの回転数(回転速度)を計測データ240として計測データ記憶部24に記憶する。
【0080】
また、計測データ生成部23は、例えば、デューティ比決定部13によって決定したデューティ比の情報や通電制御部14から出力される駆動制御信号SdとしてのPWM信号の立ち上がりタイミング等の情報も計測データ240として計測データ記憶部24に記憶してもよい。
【0081】
なお、温度センサ20に加えて、上述した電流センサや振動センサが設けられている場合には、計測データ生成部23は、例えば、単位時間毎に、電流センサによるモータ50の駆動電流の検出値を計測データ240として計測データ記憶部24に記憶してもよいし、単位時間毎に、振動センサからの検出信号に基づいて振動の大きさを算出し、計測データ240として計測データ記憶部24に記憶してもよい。
【0082】
なお、計測データ生成部23による計測データ240の取得は、上位装置4からの指令に応じて行われてもよい。
【0083】
起動管理部25は、モータ50の起動の実行を管理する機能部である。起動管理部25は、計測データ240に含まれる温度の計測値に基づいて、休息期間Tを設定するとともに、休息期間Tにおいてモータ50の駆動を停止させるように駆動制御信号生成部11を制御する。
【0084】
具体的には、起動管理部25は、通信部15がモータ50の起動を指示する起動要求(再起動要求)を受信した場合に、休息期間Tにおいてモータ50の駆動を停止させるように駆動制御信号生成部11を制御し、休息期間Tの経過後に、駆動制御信号生成部11を制御してモータ50を駆動するための駆動制御信号Sdの生成を可能にする。
【0085】
起動管理部25は、温度の計測値が高いほど休息期間Tが長くなるように、休息期間Tを設定する。具体的に、起動管理部25は、温度の計測値が所定の基準値を超えていない場合に、休息期間Tの長さを第1の値に設定し、温度の計測値が所定の基準値を超えている場合に、休息期間Tの長さを第1の値よりも大きい第2の値Tsに設定する。
【0086】
ここで、第1の値は、例えば、通信部15が受信した、上位装置4からの起動要求(再起動要求)によって指定された指定時間Tiである。第2の値Tsは、例えば、計測された温度に応じて算出される時間である。
【0087】
より具体的には、起動管理部25は、温度の計測値が基準値を超えていない場合に、上位装置4からの起動要求(再起動要求)によって指定された指定時間(第1の値)Tiを休息期間Tの長さとして設定する。一方、温度の計測値が基準値を超えている場合に、温度の計測値に応じて第2の値Tsを算出し、第2の値Tsを休息期間Tの長さとして設定する。
【0088】
例えば、上述した温度に関する複数の閾値(基準値)を予めモータ駆動制御装置10内の記憶装置に記憶しておき、起動管理部25は、その記憶されている閾値と温度の計測値tとの比較結果に基づいて、第2の値Tsを決定してもよい。
【0089】
本実施の形態では、一例として、温度に関する3つの閾値(基準値)th1,th2,th3(th1<th2<th3)を設定した場合を考える。
例えば、温度の計測値t<th1であるとき、起動管理部25は、上述したように、第1の値としての上位装置4から指定された指定時間Ti(例えば、1秒)を、休息期間Tの長さとして設定する(T=Ti=1秒)。
【0090】
一方、温度の計測値tが閾値th1以上であるとき、起動管理部25は、第2の値Tsを休息期間Tの長さとして設定する。
例えば、th1≦t<th2であるとき、起動管理部25は、第2の値Ts1(例えば、10秒)を休息期間Tの長さとして設定する(T=Ts1=10秒)。th2≦t<th3であるとき、起動管理部25は、第2の値Ts2(例えば、15秒)を休息期間Tの長さとして設定する(T=Ts2=15秒)。th3≦t<th4であるとき、起動管理部25は、第2の値Ts3(例えば、20秒)を休息期間Tの長さとして設定する(T=Ts3=20秒)。
【0091】
このように、起動管理部25は、モータ50の再起動のための休息期間Tの長さを、温度の計測値に応じて決定する。なお、上述した閾値(基準値)th1,th2,th3によって定まる温度範囲と各温度範囲に対応する第2の値Tsとの関係を示す情報は、例えば対応関係テーブルとして、予めモータ駆動制御装置10内の記憶装置に記憶されていてもよい。
【0092】
また、第2の値Tsの算出方法は、上述の閾値を用いた方法に限定されない。例えば、温度と休息期間としての第2の値Tsとの関係を示す関数を予めモータ駆動制御装置10内の記憶装置に記憶しておき、起動管理部25が、その記憶されている関数を用いて、温度の計測値から第2の値Tsを算出してもよい。ここで、上記関数は、温度が高くなるほど第2の値Tsが大きくなるように設定されている。
【0093】
起動管理部25は、休息期間Tを設定した場合、休息期間Tにおいてモータ50の駆動を停止させるように駆動制御信号生成部11を制御する。例えば、起動管理部25は、休息期間Tに相当する値をカウンタ(不図示)に設定して計時を開始し、休息期間Tが経過するまで、モータ50の駆動の停止を指示する制御信号(ロック保護指示信号)をデューティ比決定部13に出力する。ロック保護動作による休息期間Tの経過後、起動管理部25は、モータ50の駆動の停止を指示する制御信号(ロック保護指示信号)を停止することにより、駆動制御信号生成部11による駆動指令信号Scに基づく駆動制御信号Sdの生成を可能にする。
【0094】
また、起動管理部25は、モータ50の起動が成功したか否かを判定する。例えば、起動管理部25は、計測データ240に含まれる回転速度の計測値を監視することにより、モータ50の起動が成功したか否かを判定する。
【0095】
更に、起動管理部25は、外部(上位装置4)から再起動指令が入力された場合に、モータ50の再起動が可能であるか否かを判定する。例えば、起動管理部25は、モータ50の再起動が失敗した回数(以下、「起動失敗回数」とも称する。)をカウントし、カウント値が閾値を超えていない場合には、モータ50の再起動が可能であると判定し、カウント値が閾値を超えている場合には、モータ50の再起動が不可能である判定する。起動管理部25は、モータ50の再起動が不可能であると判定した場合、モータ50の再起動を中止する。例えば、モータ50の駆動の停止を指示する制御信号(ロック保護指示信号)をデューティ比決定部13に出力する。
【0096】
なお、起動失敗回数は、例えば、モータ50の再起動が連続して失敗した回数であり、モータ50の起動が成功した場合には、起動失敗回数の値がリセットされるようにしてもよい。
【0097】
起動管理部25は、通信部15を介して外部(上位装置4)との間で、モータ50の起動に関する通信を行う。具体的には、通信部15が起動要求(再起動要求)を受信した場合、起動管理部25は、上述した方法によって設定した休息期間Tの長さを示す情報(Ti,Ts1,Ts2等)を含む第1応答を、通信部15を介して外部(上位装置4)に送信する。
【0098】
このとき、再起動要求に対する第1応答には、モータ50の再起動が可能か否かを示す情報が含まれていてもよい。例えば、モータ50の再起動が可能である場合には、起動管理部25は、モータ50の再起動が可能であることを示す情報と休息期間Tの長さを示す情報(Ti,Ts1,Ts2等)とを含む第1応答を送信してもよい。一方、モータ50の再起動が不可能である場合には、起動管理部25は、例えば、モータ50の再起動が不可能であることを示す情報(例えば、後述するモータ50の再起動の中止を要求する情報)を含む第1応答を送信してもよい。
【0099】
また、起動管理部25は、通信部15が起動結果取得要求を受信した場合、モータ50の起動が成功したか否かを示す情報を含む第2応答を、通信部15を介して外部(上位装置)に送信する。例えば、起動管理部25は、モータ50の起動が失敗し、起動失敗回数が閾値を超えたとき、モータ50の再起動が不可能であると判定する。この場合には、起動結果取得要求に対する第2応答に、モータ50の起動が失敗したことを示す情報に加えて、モータ50の再起動の中止を要求する情報を含めて送信してもよい。
【0100】
休息期間記憶部26は、休息期間Tに関するデータを記憶するための機能部である。休息期間記憶部26には、例えば、上位装置4から指定された指定時間(第1の値)Tiの情報、起動管理部25が算出した第2の値Ts1,Ts2等の情報、起動管理部25によって設定された休息期間Tの情報等が記憶される。また、休息期間記憶部26には、モータ50の再起動が失敗した回数の情報が記憶される。
【0101】
なお、休息期間記憶部26には、起動管理部25が第2の値Tsを算出するための上記関数や、所定の基準値th1,th2,th3等の情報が記憶されていてもよい。
【0102】
以下、モータ駆動制御装置10の再起動管理機能に関する具体的な処理の流れについて説明する。
【0103】
図3Aおよび
図3Bは、本実施の形態に係るモータ駆動制御システム2におけるモータ50の再起動に係る処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図3Aおよび
図3Bには、複数のファン装置3のうち一つのファン装置3(モータ駆動制御装置10)と上位装置4との間の通信の一例が示されている。
【0104】
例えば、上位装置4としてのサーバが起動し、上位装置4内のデータ処理制御部41とファン装置3のモータ駆動制御装置10とが通信可能になった状態を初期状態とする。
【0105】
初期状態において、先ず、上位装置4のデータ処理制御部41が、モータ50(ファン)の起動の開始を指示する起動開始要求を、通信部42を介してファン装置3のモータ駆動制御装置10に送信する(ステップS1)。
【0106】
起動開始要求を受け取ったモータ駆動制御装置10は、起動管理部25によって、モータ50が起動可能であることを示す情報を含む第1応答を上位装置4に対して送信する(ステップS2)。
【0107】
次に、各ファン装置3のモータ駆動制御装置10は、モータ50を起動させる(ステップS3)。例えば、起動管理部25が駆動制御信号生成部11(デューティ比決定部13)を制御して、駆動指令信号Scに基づく駆動制御信号Sdの生成を可能にする。
【0108】
図3Aおよび
図3Bの例において、ステップS3の時点で、モータ50の起動が失敗し、且つ温度の計測値が基準値(閾値)th1を超えていなかったとする。このとき、モータ駆動制御装置10は、モータ50の起動が失敗した回数を“1”として記憶する。また、モータ駆動制御装置10は、温度の計測値が基準値th1を超えていないため、発熱の問題が発生していないと判定する。
【0109】
次に、上位装置4のデータ処理制御部41が、モータ50(ファン)の起動結果取得要求を、通信部42を介してモータ駆動制御装置10に送信する(ステップS4)。
【0110】
起動結果取得要求を受け取ったモータ駆動制御装置10は、起動管理部25によって、モータ50の起動が失敗したことを示す情報を含む第2応答を上位装置4に対して送信する(ステップS5)。このとき、モータ駆動制御装置10は、第2応答に、発熱の問題が発生していないことを示す情報を加えて送信してもよい。
【0111】
次に、上位装置4のデータ処理制御部41が、モータ50の再起動を指示する再起動要求を、通信部42を介してファン装置3のモータ駆動制御装置10に送信する(ステップS6)。このとき、データ処理制御部41は、再起動のためのモータ50の休息期間Tを指定する指定時間Ti(例えば、1秒)を再起動要求に含めて送信する。
【0112】
再起動要求を受け取ったモータ駆動制御装置10は、モータ50の再起動が可能であるか否かを判定するとともに、モータ50の再起動に必要な休息期間Tを設定する(ステップS7)。
【0113】
図3Aおよび
図3Bの例では、ステップS7の時点で、モータ50の起動失敗回数が閾値(例えば、8回)を超えておらず、モータ50の再起動の実行が可能であり、且つ、温度の計測値tが基準値th1を超えていなかったとする。この場合、モータ駆動制御装置10は、ステップS6で上位装置4から指定された指定時間Ti(例えば、1秒)を休息期間Tに設定する(T=Ti)。
【0114】
次に、モータ駆動制御装置10は、モータの再起動が可能であることを示す情報と休息期間T=Ti(=1秒)の情報を含む第1応答を、上位装置4に対して送信する(ステップS8)。
【0115】
次に、モータ駆動制御装置10は、休息期間T(=Ti=1秒)の経過後に、モータ50を再起動させる(ステップS9)。例えば、起動管理部25が駆動制御信号生成部11(デューティ比決定部13)を制御して、休息期間T(=Ti=1秒)が経過するまで、駆動指令信号Scに基づく駆動制御信号Sdの生成を停止させ、ロック保護制御信号に基づく駆動制御信号Sdを生成させてロック保護動作を行わせ、休息期間Tの経過後にロック保護動作を解除して、駆動指令信号Scに基づく駆動制御信号Sdの生成を可能にする。
【0116】
図3Aおよび
図3Bの例では、ステップS9の時点で、モータ50の再起動が失敗し、且つ温度の計測値が所定の基準値th1を超えていなかったとする。このとき、モータ駆動制御装置10は、モータ50の起動が失敗した回数を“2”として記憶する。また、モータ駆動制御装置10は、温度の計測値が基準値th1を超えていないため、発熱の問題が発生していないと判定する。
【0117】
次に、上位装置4のデータ処理制御部41が、モータ50(ファン)の起動結果取得要求を、通信部42を介してモータ駆動制御装置10に送信する(ステップS10)。
【0118】
ステップS10において起動結果取得要求を受け取ったモータ駆動制御装置10は、起動管理部25によって、モータ50の起動が失敗したことを示す情報を含む第2応答を上位装置4に対して送信する(ステップS11)。このとき、モータ駆動制御装置10は、第2応答に、発熱の問題が発生していないことを示す情報を加えて送信してもよい。
【0119】
その後、モータ50の起動が連続して失敗し、ステップS6~S11までの再起動処理が複数回行われることにより、温度の計測値が基準値th1を超え、発熱の問題が発生した場合を考える。
【0120】
この場合において、先ず、上位装置4のデータ処理制御部41が、ステップS6と同様に、モータ50の再起動を指示する再起動要求を指定時間Ti(例えば、1秒)とともに、モータ駆動制御装置10に送信する(ステップS12)。
【0121】
再起動要求を受け取ったモータ駆動制御装置10は、モータ50の再起動が可能であるか否かを判定するとともに、モータ50の再起動に必要な休息期間Tを設定する(ステップS13)。
【0122】
図3Aおよび
図3Bの例では、ステップS13の時点で、モータ50の起動失敗回数が閾値(例えば、8回)を超えておらず、モータ50の再起動が可能であり、且つ温度の計測値tがth1≦t<th2の範囲にあったとする。この場合、モータ駆動制御装置10は、休息期間Tの長さを第1の値Ts1(例えば、10秒)に設定する(T=Ts1)。
【0123】
次に、モータ駆動制御装置10は、モータの再起動が可能であることを示す情報と休息期間T=Ts1(=10秒)の情報を含む第1応答を、上位装置4に対して送信する(ステップS14)。
【0124】
次に、モータ駆動制御装置10は、休息期間T(=Ts1=10秒)の経過後に、モータ50を再起動させる(ステップS15)。例えば、起動管理部25が駆動制御信号生成部11(デューティ比決定部13)を制御して、休息期間T(=Ts1=10秒)が経過するまで、駆動指令信号Scに基づく駆動制御信号Sdの生成を停止させ、ロック保護制御信号に基づく駆動制御信号Sdを生成させてロック保護動作を行わせ、休息期間Tの経過後にロック保護動作を解除して、駆動指令信号Scに基づく駆動制御信号Sdの生成を可能にする。
【0125】
図3Aおよび
図3Bの例では、ステップS15の時点で、モータ50の再起動が失敗し、且つ温度の計測値が基準値th1を超えていたとする。このとき、モータ駆動制御装置10は、モータ50の起動が失敗した回数を例えば“8”として記憶する。また、モータ駆動制御装置10は、温度の計測値が所定の基準値th1を超えているため、発熱の問題が発生していると判定する。
【0126】
次に、上位装置4のデータ処理制御部41が、モータ50(ファン)の起動結果取得要求を、通信部42を介してモータ駆動制御装置10に送信する(ステップS16)。
【0127】
ステップS16において起動結果取得要求を受け取ったモータ駆動制御装置10は、モータ50の起動が失敗したことを示す情報を含む第2応答を上位装置4に対して送信する(ステップS17)。このとき、モータ駆動制御装置10は、第2応答に、発熱の問題が発生していることを示す情報を加えて送信してもよい。
【0128】
その後、
図3Bに示すように、上位装置4が、ステップS6と同様に、モータ50の再起動を指示する再起動要求を指定時間Ti(例えば、1秒)とともにモータ駆動制御装置10に送信する(ステップS20)。
【0129】
再起動要求を受け取ったモータ駆動制御装置10は、モータ50の再起動が可能であるか否かを判定するとともに、モータ50の再起動に必要な休息期間Tを設定する(ステップS21)。
【0130】
図3Aおよび
図3Bにおいては、ステップS21の時点で、モータ50の起動失敗回数(=8回)が閾値を超えておらず、モータ50の再起動が可能であり、且つ温度の計測値tがth2≦t<th3の範囲にあったとする。この場合、モータ駆動制御装置10は、休息期間Tの長さを第2の値Ts2(例えば、15秒)に設定する(T=Ts2)。
【0131】
次に、モータ駆動制御装置10は、モータの再起動が可能であることを示す情報と休息期間T=Ts2(=15秒)の情報を含む第1応答を、上位装置4に対して送信する(ステップS22)。
【0132】
次に、モータ駆動制御装置10は、休息期間T(=Ts2=15秒)の経過後に、モータ50を再起動させる(ステップS23)。例えば、起動管理部25が駆動制御信号生成部11(デューティ比決定部13)を制御して、休息期間T(=Ts2=15秒)の経過するまで、駆動指令信号Scに基づく駆動制御信号Sdの生成を停止させ、ロック保護制御信号に基づく駆動制御信号Sdを生成させてロック保護動作を行わせ、休息期間T(15秒)の経過後にロック保護動作を解除させて、駆動指令信号Scに基づく駆動制御信号Sdの生成を可能にする。
【0133】
図3Aおよび
図3Bの例において、ステップS23によってモータ50の再起動が失敗し、起動失敗回数が“9回”となったとする。このとき、モータ駆動制御装置10は、モータ50の起動失敗回数が閾値(8回)を超えているため、モータ50の再起動が不可能であると判定する。
また、温度の計測値が所定の基準値th2(>th1)を超えているため、起動管理部25は、発熱の問題が発生していると判定する。
【0134】
次に、上位装置4のデータ処理制御部41が、休息期間T(=Ts2=15秒)の経過後に、モータ50(ファン)の起動結果取得要求を、通信部42を介してモータ駆動制御装置10に送信する(ステップS24)。
【0135】
ステップS24において起動結果取得要求を受け取ったモータ駆動制御装置10は、モータ50の起動が失敗したことを示す情報に加えて、モータ50の再起動の中止を要求する情報を含む第2応答を、上位装置4に対して送信する(ステップS25)。このとき、モータ駆動制御装置10は、第2応答に、発熱の問題が発生していることを示す情報を加えて送信してもよい。
【0136】
ステップS25においてモータ50の再起動の中止を要求する情報を含む第2応答を受信した上位装置4は、例えば、一定の期間、モータ50の再起動要求を送信することを停止する(ステップS26)。
【0137】
次に、本実施の形態に係る再起動処理におけるモータ駆動制御装置10側の処理手順について説明する。
【0138】
図4Aおよび
図4Bは、モータを再起動させるときのモータ駆動制御装置側の処理の流れを示すフロー図である。
例えば、上位装置4としてのサーバが起動し、ファン装置3に電源が供給されると、モータ駆動制御装置10が起動する。モータ駆動制御装置10は、起動後、上位装置4からの起動開始要求を受信したか否かを判定する(ステップS51)。起動開始要求を受信していない場合(ステップS51:NO)、モータ駆動制御装置10は起動開始要求を受信するまで待機する。
【0139】
モータ駆動制御装置10が起動開始要求を受信した場合(ステップS51:YES)、モータ駆動制御装置10の起動管理部25が、モータ50の起動が可能であることを示す情報を含む第1応答を上位装置4に送信する(ステップS52)。なお、サーバの起動時において、既に何等かの原因でモータ50が起動できないことをモータ駆動制御装置10が検知している場合には、ステップS52において、モータ駆動制御装置10は、モータ50の起動が不可能であることを示す情報を含む第1応答を送信してもよい。
【0140】
次に、モータ駆動制御装置10は、モータ50を起動させる(ステップS53)。具体的には、上述したように、起動管理部25が、駆動制御信号生成部11(デューティ比決定部13)を制御して、駆動指令信号Scに基づく駆動制御信号Sdの生成を可能にし、駆動制御信号生成部11が駆動指令信号Scで指定された回転速度でモータ50が回転するように駆動制御信号Sdを生成する。
【0141】
次に、モータ駆動制御装置10の起動管理部25が、上述した手法により、モータ50の起動が成功したか否かを判定する(ステップS54)。モータ50の起動が成功した場合(ステップS54:YES)、起動管理部25が、上位装置4からの起動結果取得要求の受信後に、モータ50の起動が成功したことを示す情報を含む第2応答を上位装置4に送信する(ステップS55)。このとき、起動管理部25は、記憶している起動失敗回数をリセットしてもよい。その後、モータ駆動制御装置10は、駆動指令信号Scにしたがったモータ駆動制御(定常運転)を継続する(ステップS56)。
【0142】
一方、モータ50の起動が失敗した場合(ステップS54:NO)、起動管理部25が、モータ50の起動失敗回数を記憶(インクリメント)する(ステップS57)。
【0143】
ステップS57の後、モータ駆動制御装置10は、モータの再起動が可能であるか否かを判定する(ステップS58)。具体的には、起動管理部25が、モータ50の起動失敗回数が予め設定された閾値以下であるか否かを判定する。
【0144】
起動失敗回数が閾値を超えている場合(ステップS58:NO)には、起動管理部25は、モータ50の再起動が不可能であると判定し、上位装置4からの起動結果取得要求の受信後に、モータ50の起動が失敗したことを示す情報とともに、モータ50の再起動の中止を要求する情報を第2応答として上位装置4に送信する(ステップS69)。
【0145】
一方、起動失敗回数が閾値以下である場合(ステップS58:YES)には、起動管理部25は、モータ50の再起動が可能であると判定し、上位装置4からの起動結果取得要求の受信後に、モータ50の起動が失敗したことを示す情報を第2応答として上位装置4に送信する(ステップS59)。
【0146】
なお、ステップS59およびステップS69において、起動管理部25は、発熱の問題が発生しているか否かを判定し、発熱の問題が発生しているか否かを示す情報(例えば、温度の計測値と基準値th1,th2,th3等と比較結果)を第2応答に加えて送信してもよい。
【0147】
ステップS59の後、モータ駆動制御装置10は、上位装置4からの再起動要求を受信したか否かを判定する(ステップS60)。再起動要求を受信していない場合(ステップS60:NO)、モータ駆動制御装置10は再起動要求を受信するまで待機する。
【0148】
モータ駆動制御装置10が再起動要求を受信した場合(ステップS60:YES)、モータ駆動制御装置10は、発熱の問題があるか否かを判定する(ステップS61)。具体的には、上述したように、起動管理部25が、温度の計測値と基準値(閾値)th1とを比較し、温度の計測値が基準値th1を超えているか否かを判定する。
【0149】
温度の計測値が基準値th1を超えていない場合(ステップS61:NO)には、起動管理部25は、発熱の問題がないと判定し、ステップS60で受信した再起動要求に含まれる指定時間Tiを休息期間Tとして設定する(ステップS64)。
【0150】
一方、温度の計測値が基準値th1を超えている場合(ステップS61:YES)には、起動管理部25は、発熱の問題があると判定し、休息期間Tの長さとして設定すべき第2の値Tsを算出する(ステップS62)。具体的には、上述したように、起動管理部25が、温度の計測値と複数の閾値th1,th2,th3とを比較し、比較結果に基づいて適切な第2の値Ts(Ts1/Ts2/Ts3)を決定する。
【0151】
次に、モータ駆動制御装置10は、モータ50の再起動が可能であることを示す情報と、ステップS63またはステップS64において設定した休息期間Tの情報とを含む第1応答を、上位装置4に送信する(ステップS65)。
【0152】
次に、起動管理部25は、ステップS63またはステップS64において設定した休息期間Tの計時を開始するとともに、駆動制御信号生成部11を制御してモータ50の駆動を停止させて、ロック保護動作を行う(ステップS66)。
【0153】
次に、起動管理部25は、休息期間Tが経過したか否かを判定する(ステップS67)。休息期間Tが経過していない場合(ステップS67:NO)には、起動管理部25は、モータ50の駆動を引き続き停止させる(ロック保護動作を継続する)。
【0154】
休息期間Tが経過した場合(ステップS67:YES)には、起動管理部25は、モータ50を再起動させる(ステップS68)。具体的には、ステップS53と同様に、起動管理部25が、駆動制御信号生成部11を制御して、駆動指令信号Scに基づく駆動制御信号Sdの生成を可能にする。これにより、駆動制御信号生成部11は、駆動指令信号Scで指定された回転速度でモータ50が回転するように駆動制御信号Sdを生成する。
【0155】
その後、モータ駆動制御装置10は、ステップS54に移行し、上述したステップS54~S69の処理を繰り返し行う。
【0156】
以上、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置10は、温度センサ20によってモータ50の周辺の温度を計測し、その温度の計測値に基づいて、モータ50の再起動を開始する前にモータ50の駆動を停止する(ロック保護動作を行う)ための休息期間Tを設定する。
【0157】
これによれば、モータ50の再起動を繰り返すことによるモータ50のコイルやインバータ回路等を構成するトランジスタ等の回路部品の発熱を抑えることが可能となり、モータ50や回路部品の発熱に起因する損傷を抑制することが可能となる。
また、モータ駆動制御装置10が自ら、モータ50等の発熱状態を監視してモータ50の休息期間Tを決定するので、例えば、上位装置4側で休息期間Tを一律に設定する場合に比べて、モータ50等の発熱状況に応じた適切な再起動タイミングを設定することが可能になるとともに、上位装置4側で温度に応じた再起動タイミングを決定する処理が不要となり、上位装置4の処理の負担を減らすことが可能となる。
【0158】
また、モータ駆動制御装置10は、温度の計測値が高いほど休息期間Tが長くなるように休息期間Tを設定するので、モータ50やモータ駆動制御装置10を構成する回路部品等の発熱状態に応じて、放熱に必要な休息期間Tを適切に設定することが可能となり、モータ50の再起動時におけるモータ50や回路部品等の発熱による破壊を、より確実に防止することが可能となる。
【0159】
また、モータ駆動制御装置10は、モータ50の起動を指示する起動要求(再起動要求)を受信した場合に、休息期間Tの経過後に、駆動制御信号生成部11を制御してモータ50を駆動するための駆動制御信号Sdの生成を可能にする。これによれば、上位装置4からの再起動要求に応じて、モータ50や回路部品等の発熱状態に応じた適切なタイミングでモータ50を再起動させることが可能となる。
【0160】
また、モータ駆動制御装置10は、起動要求を受信した場合に、必要な休息期間Tの長さを示す情報を含む第1応答を、外部(上位装置4)に送信する。これによれば、上位装置4は、モータ50の再起動が実行されるまでの時間を知ることができるので、その後の処理のための適切なスケジューリングが可能となる。例えば、上位装置4は、モータ駆動制御装置10に対して、モータ50の起動状況の送信を指示する起動結果取得要求を送信するタイミングを、通知された休息期間Tに応じて調整することができるので、モータ駆動制御装置10側から応答が得られるまで起動結果取得要求を何度も繰り返し送信するような無駄な処理を減らすことが可能となる。
【0161】
また、モータ駆動制御装置10は、温度の計測値が所定の基準値(th1)を超えていない場合に、休息期間Tの長さを起動要求によって指定された指定時間Ti(第1の値)に設定し、温度の計測値が所定の基準値を超えている場合に、休息期間Tの長さを指定時間Ti(第1の値)よりも大きい第2の値Tsに設定する。
これによれば、モータ50や回路部品等の発熱の問題がない場合には、上位装置4から指定されたタイミングでモータ50の再起動が行われるので、速やかなモータ50の再起動が可能となる。
【0162】
更に、モータ駆動制御装置10は、モータ50の再起動が可能か否かを判定し、モータ50の再起動が不可能であると判定した場合には、再起動の中止を要求する情報を含む第1応答を、外部(上位装置4)に送信する。
これによれば、上位装置4は、モータ50の起動が不可能な状態であることを知ることができるので、例えば、上位装置4とモータ駆動制御装置10との間の再起動処理のための通信が無駄に繰り返されることを回避することができる。
【0163】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0164】
例えば、上記実施の形態において、モータ50の起動失敗回数が閾値を超えた場合に、モータ駆動制御装置10がモータ50の再起動の中止を要求する情報を上位装置4に送信する場合を例示したが、これに限られない。例えば、温度の計測値が予め規定した上限値(例えば、閾値th3以上の値)を超えた場合に、モータ駆動制御装置10がモータ50の再起動の中止を要求する情報を上位装置4に送信してもよい。
【0165】
また、上記実施の形態において、上位装置4は、モータ駆動制御装置10からモータ50の発熱の問題があることを示す情報を受信した場合には、休息期間Tを指定する指定時間Tiを初期値(例えば、1秒)よりも大きい値(例えば、5秒)に変更して、再起動要求とともにモータ駆動制御装置10に送信してもよい。
これによれば、上位装置4側においても、モータ側の発熱状況を考慮したモータの起動制御が可能となる。
【0166】
上述の実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータの相数は、3相に限られない。また、ホール素子の数は、3個に限られない。
【0167】
モータの回転速度の検出方法は特に限定されない。例えば、ホール素子などの位置検出器を用いず、モータコイルに誘起する逆起電圧を用いて回転速度を検出する位置センサレス方式によって回転速度を検出してもよい。
【0168】
上述のシーケンス図およびフロー図は具体例であって、上述のシーケンス図およびフロー図に限定されるものではなく、例えば、各ステップ間に他の処理が挿入されていてもよいし、処理が並列化されていてもよい。
【符号の説明】
【0169】
1…ファンシステム、2…モータ駆動制御システム、3,3a~3d…ファン装置、4…上位装置(外部の一例)、5…ファン、10…モータ駆動制御装置、11…駆動制御信号生成部、12…速度指令解析部、13…デューティ比決定部、14…通電制御部、15…通信部、16…送信部、17…受信部、18…通信制御部、20…温度センサ、21…位置センサ、22…回転速度計測部、23…計測データ生成部、24…計測データ記憶部、25…起動管理部、26…休息期間記憶部、27…FG信号生成部、30…モータ制御回路、31…モータ駆動回路、41…データ処理制御部、42…通信部、50…モータ、51…インペラ(羽根車)、240…計測データ、A~D…冷却対象、Sc…駆動指令信号、Sd…駆動制御信号、So…回転速度信号、T…休息期間、Ti…指定時間(第1の値;休息期間の長さ)、Ts,Ts1~Ts3…第2の値(休息期間の長さ)。