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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】トロイダル無段変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 15/38 20060101AFI20240815BHJP
   B64D 41/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F16H15/38
B64D41/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020213591
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099667
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 賢司
(72)【発明者】
【氏名】今井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】入江 一彦
(72)【発明者】
【氏名】相部 徹
(72)【発明者】
【氏名】前畑 圭吾
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-228069(JP,A)
【文献】特開2015-007464(JP,A)
【文献】特開2017-161002(JP,A)
【文献】実開平04-095153(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 15/38
B64D 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速面を有する入力ディスクと、
変速面を有する出力ディスクと、
前記入力ディスクの前記変速面と前記出力ディスクの前記変速面との間に傾転可能に挟まれたパワーローラと、
前記入力ディスク及び前記出力ディスクの少なくとも一方である対象ディスクを覆う少なくとも1つのコンテインメント装置と、
前記入力ディスク、前記出力ディスク、前記パワーローラ及び前記コンテインメント装置を収容するハウジングと、を備え、
前記コンテインメント装置は、前記対象ディスクの外周面に対して径方向に隙間をあけて前記外周面を覆うリングを有し、
前記リングの軸線方向の最大寸法は、前記対象ディスクの前記外周面の軸線方向の最大寸法よりも大きい、トロイダル無段変速機。
【請求項2】
前記リングは、軸線方向において、前記対象ディスクの重心位置を含む範囲に配置されている、請求項1に記載のトロイダル無段変速機。
【請求項3】
前記パワーローラは、軸線方向周りの所定の位相領域に配置されており、
前記リングは、前記パワーローラの前記位相領域に対応する第1セクションと、前記第1セクション以外の領域である第2セクションと、を有し、
前記リングの前記第2セクションの軸線方向の最大寸法は、前記リングの前記第1セクションの軸線方向の最大寸法よりも大きい、又は同じである、請求項1又は2に記載のトロイダル無段変速機。
【請求項4】
前記コンテインメント装置は、前記リングの軸線方向の前記パワーローラ側に配置されたガードを更に有し、
前記ガードは、前記リングの前記第2セクションに設けられる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトロイダル無段変速機。
【請求項5】
前記入力ディスク及び前記出力ディスクが軸線方向に互いに最も近接する第1位置と、前記入力ディスク及び前記出力ディスクが軸線方向に互いに最も離反する第2位置と、の間で前記出力ディスクを軸線方向に移動させる押圧装置を更に備え、
前記出力ディスクが前記第1位置にあるとき、前記リングにおける前記パワーローラ側の端は、軸線方向において、前記出力ディスクの前記外周面における前記パワーローラ側の端よりも前記パワーローラ側に配置され、又は、前記対象ディスクの前記外周面における前記パワーローラ側の端と同じ位置に配置され、
前記出力ディスクが前記第2位置にあるとき、前記リングにおける前記パワーローラ側の端は、軸線方向において、前記出力ディスクの前記外周面における前記パワーローラ側の端と同じ位置に配置され、又は、前記出力ディスクの前記外周面における前記パワーローラ側の端よりも前記パワーローラ側に配置される、請求項3又は4に記載のトロイダル無段変速機。
【請求項6】
前記ハウジングに接続された支持部品を更に備え、
前記コンテインメント装置は、前記支持部品を介して前記ハウジングに接続されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のトロイダル無段変速機。
【請求項7】
前記支持部品は、前記対象ディスクの背面に設けられた軸受サポートを含み、
前記コンテインメント装置は、前記軸受サポートを介して前記ハウジングに接続されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のトロイダル無段変速機。
【請求項8】
前記支持部品は、前記パワーローラを傾転させるように構成されたアクチュエータを支持するアクチュエータボディを含み、
前記コンテインメント装置は、前記アクチュエータボディを介して前記ハウジングに接続されている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のトロイダル無段変速機。
【請求項9】
前記コンテインメント装置は、前記対象ディスクの背面に設けられ、前記リングと接続されたリングサポートを含み、
前記コンテインメント装置は、前記リングサポートを介して前記ハウジングに接続されている、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のトロイダル無段変速機。
【請求項10】
前記ハウジングに接続された支持部品を更に備え、
前記コンテインメント装置は、前記対象ディスクの背面に設けられ、前記リングと接続されたリングサポートを含み、
前記リングサポートは、前記支持部品と接続し、
前記コンテインメント装置は、前記支持部品及び前記リングサポートを介して前記ハウジングに接続されている、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のトロイダル無段変速機。
【請求項11】
前記少なくとも1つのコンテインメント装置は、前記入力ディスクを覆う第1コンテインメント装置と、前記出力ディスクを覆う第2コンテインメント装置と、を含み、
前記第1コンテインメント装置と前記第2コンテインメント装置とは、連結体によって互いに接続されている、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のトロイダル無段変速機。
【請求項12】
前記コンテインメント装置を前記ハウジングに接続するジョイントを更に備え、
前記ジョイントは、前記コンテインメント装置の変位を許容するアブソーバを含む、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のトロイダル無段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロイダル無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力ディスク及び出力ディスクの間に挟まれたパワーローラを傾転させて変速を行うトロイダル無段変速機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-158400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トロイダル無段変速機の動作中に万が一にもディスクが破損すると、ディスク破片が遠心力でハウジングに衝突する。しかし、ハウジング内に各部品を封じ込めるために必要なコンテインメント性能を満たすべく、ハウジングの厚肉化や設計変更を行うと、ハウジングの重量や製造コストの増加を招くことになる。
【0005】
そこで本発明は、ハウジングの厚肉化や設計変更を行うことなく、ハウジングのコンテインメント性能を補うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るトロイダル無段変速機は、変速面を有する入力ディスクと、変速面を有する出力ディスクと、前記入力ディスクの前記変速面と前記出力ディスクの前記変速面との間に傾転可能に挟まれたパワーローラと、前記入力ディスク及び前記出力ディスクの少なくとも一方である対象ディスクを覆う少なくとも1つのコンテインメント装置と、前記入力ディスク、前記出力ディスク、前記パワーローラ及び前記コンテインメント装置を収容するハウジングと、を備え、前記コンテインメント装置は、前記対象ディスクの外周面に対して径方向に隙間をあけて前記外周面を覆うリングを有し、前記リングの軸線方向の最大寸法は、前記対象ディスクの前記外周面の軸線方向の最大寸法よりも大きい。
【0007】
前記構成によれば、トロイダル無段変速機の動作中にディスクが破損し、遠心力の作用するディスク破片が軸線方向に対して垂直な方向に飛び出そうとした場合に、コンテインメント装置のリングによってディスク破片がハウジングに直接衝突することを防ぐことができる。そして、リングの軸線方向の最大寸法は、ディスクの外周面の軸線方向の最大寸法よりも大きいため、ディスク破片が軸線方向に対して垂直な方向に飛び出そうとした場合だけでなく、斜め方向に飛び出そうとする場合にも、リングの軸線方向の最大寸法の範囲内で、リングによってディスク破片がハウジングに直接衝突することを防ぐことができる。よって、ハウジングのコンテインメント性能を補うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、ハウジングの厚肉化や設計変更を行うことなく、ハウジングのコンテインメント性能を補うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るトロイダル無段変速機を備える駆動機構一体型発電装置を示す断面図である。
図2図2は、図1のトロイダル無段変速機を示す斜視図である。
図3図3は、図1のトロイダル無段変速機の別の視点から見た斜視図である。
図4図4は、図2のトロイダル無段変速機を示す断面図である。
図5図5は、図4のコンテインメント装置を示す斜視図である。
図6図6は、図5のコンテインメント装置を示す正面図である。
図7図7(A)は、図2の第1コンテインメント装置のリングの第2セクションと入力ディスクとの関係を示す断面図、図7(B)は、図2の第1コンテインメント装置のリングの第1セクションと入力ディスクとの関係を示す断面図である。
図8図8(A)は、図2の第2コンテインメント装置のリングの第2セクションと出力ディスクとの関係を示す断面図、図8(B)は、図2の第2コンテインメント装置のリングの第1セクションと出力ディスクとの関係を示す断面図である。
図9図9は、図5のコンテインメント装置のディスク破断時におけるコンテインメント機能を説明する模式図である。
図10図10(A)は、コンテインメント装置のガードの第1変形例の斜視図、図10(B)は、コンテインメント装置のガードの第2変形例の斜視図である。図10(C)は、コンテインメント装置の第3変形例の斜視図である。
図11図11(A)は、コンテインメント装置におけるリングとリングサポートとの接続構造の第1変形例の斜視図、図11(B)は、コンテインメント装置におけるリングとリングサポートとの接続構造の第2変形例の斜視図、図11(C)は、コンテインメント装置におけるリングとリングサポートとの接続構造の第3変形例の斜視図、図11(D)は、コンテインメント装置におけるリングとリングサポートとの接続構造の第4変形例の斜視図である。
図12図12(A)は、コンテインメント装置の支持構造の第1変形例を示す正面図、図12(B)は、コンテインメント装置の支持構造の第2変形例を示す正面図である。
図13図13は、コンテインメント装置の支持構造の第3変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るトロイダル無段変速機10を備える駆動機構一体型発電装置1の断面図である。図2は、図1のトロイダル無段変速機10を示す斜視図である。図3は、図1のトロイダル無段変速機10の別の視点から見た斜視図である。図4は、図2のトロイダル無段変速機10を示す断面図である。なお、図4は、パワーローラ18及びトラニオン19が存在しない軸線A1周りの位相における断面図であって、図1とは90度異なる位相での断面図である。また、図2及び3では、1つの入力ディスク13に対応する第1コンテインメント装置50のみが図示されており、他の入力ディスク13に対応する第1コンテインメント装置50と出力ディスク14,15に対応する第2コンテインメント装置60との図示が省略されている。
【0012】
図1に示すように、駆動機構一体型発電装置1(Integrated Drive Generator)は、航空機の交流電源に用いられるものであって、航空機のエンジンに取り付けられるハウジング2を備える。ハウジング2には、入力機構3と、トロイダル無段変速機10(以下、「変速機」という)と、動力伝達機構4と、発電機5とが収容されている。ハウジング2は、例えば、金属材料にて形成されるが、繊維強化樹脂にて形成されてもよい。なお、変速機10は、駆動機構一体型発電装置の一部とした構成でなくてもよく、航空機以外の用途に用いられてもよい。
【0013】
変速機10は、同軸上に配置されて相対回転可能な変速機入力軸11及び変速機出力軸12(回転軸)を備える。変速機入力軸11及び変速機出力軸12の軸線は、変速機入力軸11は、入力機構3を介してエンジン回転軸に接続される。入力機構3は、エンジン回転軸からの回転動力が入力される装置入力軸3aと、装置入力軸3aと一体回転するギヤ3bとを含む。変速機入力軸11には、それと一体回転する入力ギヤ6が設けられている。変速機出力軸12は、動力伝達機構4(例えば、ギア列)を介して発電機5の発電機入力軸5aに接続されている。
【0014】
エンジン回転軸から取り出された回転動力は、入力機構3を介して変速機入力軸11に入力され、変速機入力軸11の回転動力が入力ディスク13に伝達される。変速機10は、変速機入力軸11の回転を変速して変速機出力軸12に出力する。変速機出力軸12の回転動力は、動力伝達機構4を介して発電機入力軸5aに伝達される。発電機入力軸5aが回転駆動されると、発電機5が交流電力を発生する。変速機10の変速比は、エンジン回転軸の回転速度の変動に関わらず発電機入力軸5aの回転速度を適値(例えば、航空機の電装品の作動に適した周波数に対応する値)に保つように連続的に変更される。
【0015】
図1乃至4に示すように、変速機10は、例えば、ハーフトロイダル型かつダブルキャビティ型であり、二組の入力ディスク13,13及び出力ディスク14,15を備える。入力ディスク13,13は、変速機入力軸11と一体回転するよう変速機入力軸11に嵌合されている。出力ディスク14,15は、変速機出力軸12と一体回転するよう変速機出力軸12に嵌合されている。二組のディスク13~15は、その軸線A1回りに回転するように軸線A1方向に隣接配置されている。入力ディスク13,13と出力ディスク14,15とは、変速機10の軸線A1方向に互いに対向配置されている。
【0016】
入力ディスク13,13は、互いに対向する凹状の変速面31aを有する。出力ディスク14,15は、互いに対向する凹状の変速面41aを有する。入力ディスク13,13及び出力ディスク14,15は、変速面31a,41aによって軸線A1回りに円環状のキャビティを形成する。なお、変速機は、ダブルキャビティ型に限定されず、例えば、シングルキャビティ型でもよい。
【0017】
変速機10は、例えば、中央入力型である。変速機出力軸12は、変速機入力軸11内に挿通され、変速機入力軸11から両側に突出する。一対の入力ディスク13,13は、変速機入力軸11上で背中合わせに配置された中央ディスクである。変速機入力軸11と一体回転する入力ギヤ3bは、一対の入力ディスク13,13の間に配置されている。一対の出力ディスク14,15は、一対の入力ディスク13,13の軸線A1方向の外側に配置された外ディスクである。出力ディスク14,15は、押圧装置17を介して動力伝達機構4に回転動力を伝達するように動力伝達機構4に接続されている。
【0018】
出力ディスク14は、変速機出力軸12の径方向に突出した凸部12aによって軸線A1外方に変位することが規制されている。出力ディスク15は、プリロードバネ16によって入力ディスク13に向けて付勢され、かつ、回転駆動時には押圧装置17によって入力ディスク13に向けて付勢される。押圧装置17は、入力ディスク13,13と出力ディスク14,15とが軸線A1方向に互いに最も近接する最近接位置と、入力ディスク13,13と出力ディスク14,15とが軸線A1方向に互いに最も離反する最離反位置と、の間で出力ディスク14,15を軸線A1方向に移動させる。なお、最近接位置は、第1位置と、最離反位置は、第2位置ということができる。
【0019】
押圧装置17は、例えばローディングカムである。押圧装置17は、プリロードバネ16によって出力ディスク15に向けて付勢されたカム板17aと、出力ディスク15とカム板17aとの間に挟まれたカムローラ17bとを有する。出力ディスク15のうちカムローラ17bが摺動する面(背面)と、カム板17aのうちカムローラ17bが摺動する面とは、例えば非平面状のカム面である。
【0020】
変速機10の回転駆動時には、押圧装置17のカム作用によって、出力ディスク15とカム板17とが軸線A1方向において互いに離反する力が発生する。カム板17aが出力ディスク15から離れることで、カム板17aが変速機出力軸12の一端部を押して変速機出力軸12を軸線A1方向の動力伝達機構4側に変位させる。それに伴って、変速機出力軸12の他端部が出力ディスク14を入力ディスク13に近づけるように押圧する。即ち、変速機10の回転駆動時には、入力ディスク13,13は、軸線A1方向に変位せず、出力ディスク14,15は、入力ディスク13,13に近づくように軸線A1方向に変位する。
【0021】
変速機10は、キャビティ内に配置された複数のパワーローラ18と、複数のパワーローラ18をそれぞれ傾転可能に支持する複数のトラニオン19とを備える。トラニオン19は、軸線A2周りに傾転可能かつ軸線A2方向に変位可能な状態でハウジング2に支持されている。軸線A2は、軸線A1とねじれの位置にある。パワーローラ18は、軸線A2に対して垂直な軸線A3回りに回転自在にトラニオン19に支持されている。
【0022】
パワーローラ18は、軸線A1周りの所定の位相領域に配置されている。入力ディスク及び出力ディスクの1組(入力ディスク13及び出力ディスク14の組または入力ディスク13及び出力ディスク15の組)に対して、パワーローラ18は2つ設けられている。トラニオン19は、直動式のアクチュエータ22に接続されており、そのアクチュエータ22がトラニオン19をパワーローラ18とともに軸線A2方向に往復変位させる。アクチュエータ22は、例えば、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)である。
【0023】
入力ディスク13,13が回転駆動されると、パワーローラ18を介して出力ディスク14,15が回転駆動され、変速機出力軸12が回転駆動される。トラニオン19及びパワーローラ18が軸線A2方向に変位すると、パワーローラ18の軸線A2周りの傾転角が変更され、変速機10の変速比が傾転角に応じて連続的に変更される。
【0024】
パワーローラ18は、軸線A2回りに傾転可能な状態で、入力ディスク13,13の変速面31aと出力ディスク14,15の変速面41aとの間に挟まれ、入力ディスク13の回転動力を傾転角に応じた変速比で変速して出力ディスク14,15に伝達する。出力ディスク14の回転トルクが増加すると、押圧装置17によって出力ディスク15が入力ディスク13に近づく向きに押圧され、入力ディスク13,13及び出力ディスク14,15がパワーローラ18を挟む圧力が増加する。
【0025】
図2乃至4に示すように、トラニオン19の一端部は、トラニオンヨーク20によって回転自在に支持されている。トラニオンヨーク20は、例えば四角枠形状を有する。トラニオンヨーク20は、ヨークサポート21によってハウジング2に接続されている。トラニオン19の他端部は、アクチュエータ22に接続されている。アクチュエータ22は、傾転軸線A2方向にトラニオン19を変位させるように構成されている。アクチュエータ22は、アクチュエータボディ23によって支持されている。アクチュエータボディ23は、固定具(例えば、ボルト)によってハウジング2に固定されている。
【0026】
図4に示すように、入力ディスク13は、パワーローラ18に対向する変速面31aを有するディスク本体部31と、ディスク本体部31から軸線A1に沿ってパワーローラ18とは反対側に突出した円筒部32とを有する。ディスク本体部31は、円弧形状の断面を有する。入力ディスク13は、円筒部32において軸受24に回転自在に支持されており、軸受24は軸受サポート25に回転自在に支持されている。軸受サポート25は、ディスク13~15の背面に設けられ、固定具B(例えば、ボルト)によってハウジング2に固定されている。なお、軸受サポート25は、入力ギヤ6をギヤ3bに噛み合わせるために入力ギヤ6の一部を露出させる開口を有する。
【0027】
軸受サポート25は、環状部25a及びアーム部25bを有する。環状部25aは、一対の入力ディスク13,13の円筒部32にそれぞれ外嵌された一対の軸受24に外嵌される。アーム部25bは、環状部25aから径方向外方に突出している。アーム部25bは、固定具Bによってハウジング2に固定されている。なお、図4では、環状部25aは、一体物として図示しているが、複数部品を組み合わせてなるものとしてもよい。
【0028】
変速機10は、一対の入力ディスク13,13をそれぞれ覆う一対の第1コンテインメント装置50と、一対の出力ディスク14,15をそれぞれ覆う一対の第2コンテインメント装置60と、を備える。コンテインメント装置50,60は、変速機10の動作中にディスク13~15が破損したときに、遠心力の作用するディスク破片がハウジングに直接衝突することを防ぐことができる。
【0029】
図5は、図4の第1コンテインメント装置50を示す斜視図である。図6は、図5の第1コンテインメント装置50を示す正面図である。第1コンテインメント装置50及び第2コンテインメント装置60の基本構造は、互いに共通しているため、当該基本構造について第1コンテインメント装置50を代表的に用いて説明する。図4乃至6に示すように、第1コンテインメント装置50(第2コンテインメント装置60)は、リング51(リング61)を備え、更にガード52(ガード62)及びリングサポート53(リングサポート63)を備えていてもよい。第1コンテインメント装置50は、金属製であるが、樹脂製(例えば、繊維強化樹脂)、その他の材料製、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0030】
リング51は、入力ディスク13の回転軸線と一致する軸線A1を有する円筒形状を有する。リング51は、入力ディスク13の外周面31bに対して径方向に隙間をあけて外周面31bを覆っている。リング51の内周面と入力ディスク13の外周面31bとの間の隙間の寸法は、例えば、1mm~5mm、好ましくは1.2mm~3mm、更に好ましくは1.3mm~2mmである。
【0031】
ガード52は、リング51の軸線A1方向の一方側(パワーローラ18側)に配置されており、リング51に一体的に接続されている。なお、ガード52は、リング51に別体で接続されていてもよい。ガード52は、リング51の軸線A1方向から内径側に突出している。ガード52は、例えば、その厚み方向が軸線A1に向いた板形状を有する。ガード52は、例えば、帯板部52a及び凸板部52bを有するが、帯板部52aのみを有していてもよい。
【0032】
図5に示すように、帯板部52aは、一方向に延びた帯板状であり、リング51の外周の異なる二点を接続する。帯板部52aとリング51との間には、開口Pが形成されている。なお、帯板部52aとリング51との間に、開口Pを形成しなくてもよい。凸板部52bは、リング51から径方向内方に突出した突起である。凸板部52bの径方向の突出量は、例えば、リング51の内周面の半径の10%~30%の範囲内の値である。なお、ガード52は、帯板部52a又は凸板部52bの一方のみであってもよい。
【0033】
リングサポート53は、ディスク13~15の背面に設けられている。リングサポート53は、軸線方向において、リング51と、軸受サポート25(軸受24)との間に配置され、これらを接続する。リングサポート53は、軸受サポート25及び軸受24の一方と接続することができ、両方と接続することもできる。リングサポート53は、リング51に別体で接続されているが、一体的に接続されてもよい。リングサポート53は、例えば、環状板である。リングサポート53には、排油口53aを形成してもよい。この場合、排油口53aは、軸線A1周りの周方向においてリングサポート53に部分的に設けることができる。
【0034】
リング51に対するリングサポート53の固定手段は、種々の方法を採用し得る。例えば、圧入嵌合による固定方法(例えば、リテーナ)、固定具を用いる固定方法(例えば、ボルト)などを採用し得る。リングサポート53は、リング51に内嵌された状態でリテーナ54(図4参照)によってリング51に対して位置決め固定されてもよい。リテーナ54は、例えば環状体である。
【0035】
図6に示すように、パワーローラ18は、変速比が「1」(即ち、等速)の状態でリング51の軸線A1周りの所定の位相領域に配置されている。リング51は、パワーローラ18の当該位相領域に対応する第1セクションS1と、それ以外の領域である第2セクションS2と、を有する。例えば、リング51のうちパワーローラ18が軸線A3方向に投影される領域を第1セクションS1とし、それ以外の領域を第2セクションS2とし得る。
【0036】
ガード52は、リング51の第2セクションS2に設けられ、リング51の第1セクションS1には設けられていない。ガード52は、第2セクションS2に配置されている。なお、ガード52は、パワーローラ18の動作を制約しない限りにおいて、第2セクションS2だけでなく、第1セクションS1にも配置してよい。
【0037】
図4に示すように、ガード52は、入力ディスク13の変速面31aに隙間をあけて対向している。同様に、ガード62は、出力ディスク14の変速面41aに隙間をあけて対向している。リングサポート53は、入力ディスク13の背面に隙間をあけて対向している。同様に、リングサポート63は、出力ディスク14,15の背面に隙間をあけて対向している。リングサポート53,63は、後述する支持部品を介してハウジング2に接続されている。ガード52と入力ディスク13の変速面31aとの間の隙間の最小値は、例えば、0.5mm~5mmである。ガード52と入力ディスク13の変速面31aとの間の隙間の最大値は、例えば、1mm~8mmである。ガード62と出力ディスク14の変速面41aとの間の隙間の最小値は、例えば、0.5mm~8mmである。ガード62と出力ディスク14の変速面41aとの間の隙間の最大値は、例えば、1mm~11mmである。
【0038】
第1コンテインメント装置50のリング51の軸線A1方向の最大寸法は、入力ディスク13の外周面31bの軸線A1方向の最大寸法よりも大きい。同様に、第2コンテインメント装置60のリング61の軸線A1方向の最大寸法は、出力ディスク14,15の外周面41bの軸線A1方向の最大寸法よりも大きい。なお、入力ディスク13及び出力ディスク14,15の外周面31b,41bの軸線A1方向の寸法は、軸線A1周りに一定である。
【0039】
第1コンテインメント装置50は、ハウジング2に接続された支持部品によって支持されている。第1コンテインメント装置50は、第1コンテインメント装置50の支持とは別の機能(例えば、軸受24の支持)を有する支持部品を介してハウジング2に接続されている。支持部品は、例えば、ハウジング2に接続された軸受サポート25、後述するアクチュエータボディ23等とし得る。軸受サポート25は、入力ディスク13に対して軸線A1方向に並べられ、その軸受サポート25に、軸受24、リングサポート53、リング51が接続されている。第1コンテインメント装置50は、ハウジング2に直接的に接続されるのではなく、支持部品(軸受サポート25)を介してハウジング2に間接的に接続されている。なお、第2コンテインメント装置60も、同様にハウジング2に接続された支持部品を介してハウジング2に間接的に接続され得る。
【0040】
図7(A)は、図2の第1コンテインメント装置50のリング51の第2セクションS2と入力ディスク13との関係を示す断面図である。図7(B)は、図2の第1コンテインメント装置50のリング51の第1セクションS1と入力ディスク13との関係を示す断面図である。図7(A)(B)に示すように、第1コンテインメント装置50は、固定的に配置されており、かつ、入力ディスク13は、軸線A1周りに回転するが軸線A1方向には変位しない。即ち、第1コンテインメント装置50と入力ディスク13とは、互いに軸線A1方向に相対変位しない。
【0041】
図7(A)に示すように、軸線A1方向において、リング51の第2セクションS2のパワーローラ18側の端は、入力ディスク13の外周面31bのパワーローラ18側の端よりもパワーローラ18側に突出している。なお、軸線A1方向において、リング51の第2セクションS2のパワーローラ18側の端は、入力ディスク13の外周面31bのパワーローラ18側の端と同じ位置でもよい。
【0042】
図7(B)に示すように、軸線A1方向において、リング51の第1セクションS1のパワーローラ18側の端は、入力ディスク13の外周面31bのパワーローラ18側の端と同じ位置にある。なお、軸線A1方向において、リング51の第1セクションS1のパワーローラ18側の端は、入力ディスク13の外周面31bのパワーローラ18側の端よりもパワーローラ18側に突出していてもよい。なお、図7(A)(B)において、同じ位置は、概略同じ位置である場合を含む。
【0043】
リング51の第2セクションS2は、リング51の第1セクションS1よりも、軸線A1方向において入力ディスク13側からパワーローラ18側に向けて突出してもよいし、軸線A1方向において入力ディスク13側からパワーローラ18側に向けて突出しなくてもよい。すなわち、軸線A1方向において、リング51の第2セクションS2の最大寸法は、リング51の第1セクションS1の最大寸法より大きくしてもよいし、同じにしてもよい。リング51は、軸線A1方向において、入力ディスク13の重心位置Gを含む範囲に配置されていてもよい。この場合、入力ディスク13の重心位置Gを通過して径方向(軸線A1に直交する方向)に延びる仮想線V1は、リング51に交差する。
【0044】
図8(A)は、図2の第2コンテインメント装置60のリング61の第2セクションS2と出力ディスク14との関係を示す断面図である。図8(B)は、図2の第2コンテインメント装置60のリング61の第1セクションS1と出力ディスク14との関係を示す断面図である。図8(A)(B)に示すように、第2コンテインメント装置60は、固定的に配置されているが、出力ディスク14は、押圧装置17(図4参照)の押圧力によって軸線A1方向に変位可能である。出力ディスク14は、入力ディスク13に対して軸線A1方向に最も近接する最近接位置と、入力ディスク13に対して軸線A1方向に互いに最も離反する最離反位置と、の間で軸線A1方向に移動し得る。
【0045】
即ち、第2コンテインメント装置60と出力ディスク14とは、互いに軸線A1方向に相対変位する。図8(A)では、前記最近接位置にある出力ディスク14が実線で表され、前記最離反位置にある出力ディスク14が破線で表されている。図8(B)では、前記最離反位置にある出力ディスク14が実線で表され、前記最近接位置にある出力ディスク14が破線で表されている。なお、出力ディスク14だけでなく出力ディスク15について同様であるが、ここでは出力ディスク14について代表的に説明する。
【0046】
図8(A)に示すように、出力ディスク14が前記最近接位置(図8(A)の実線)にあるとき、軸線A1方向において、第2コンテインメント装置60のリング61の第2セクションS2におけるパワーローラ18側の端は、出力ディスク14の外周面41bにおけるパワーローラ18側の端よりもパワーローラ18側に突出してもよい。なお、出力ディスク14が前記最近接位置にあるとき、軸線A1方向において、リング61の第2セクションS2におけるパワーローラ18側の端は、出力ディスク14の外周面41bにおけるパワーローラ18側の端と同じ位置に配置されてもよい。
【0047】
図8(B)に示すように、出力ディスク14が前記最離反位置(図8(B)の実線)にあるとき、軸線A1方向において、リング61の第1セクションS1におけるパワーローラ18側の端は、出力ディスク14の外周面41bにおけるパワーローラ18側の端と同じ位置に配置される。なお、出力ディスク14が前記最離反位置にあるとき、軸線A1方向において、リング61の第1セクションS1におけるパワーローラ18側の端は、出力ディスク14の外周面41bにおけるパワーローラ18側の端よりもパワーローラ18側に突出してもよい。なお、図8(A)(B)において、同じ位置は、概略同じ位置である場合を含む。
【0048】
図8(A)(B)に示すように、リング61の第2セクションS2は、リング61の第1セクションS1よりも、軸線A1方向において出力ディスク14側からパワーローラ18側に向けて突出している。出力ディスク14が軸線A1方向に変位した位置において、リング61を軸線A1方向において、出力ディスク14の重心位置Gを含む範囲に配置されていてもよい。この場合、重心位置Gを通過して径方向(軸線A1に直交する方向)に延びる仮想線V2は、リング61に交差する。
【0049】
リング51,61の第1セクションS1における軸線A1方向の寸法、及び、リング51,61の第2セクションS2における軸線A1方向の寸法は、対応するディスク13,14の外周面31b,41bの軸線A1方向の寸法よりも大きい。
【0050】
以上に説明した構成によれば、以下のような効果を奏する。図9に示すように、変速機10の回転中において、入力ディスク13(または出力ディスク14、15)が破断してしまった場合、ディスク破片B1~B4は、回転慣性によって軸線A1周りに動きながら、遠心力によって径方向外方に飛び出そうとする。しかし、ディスク破片B1~B4は、第1コンテインメント装置50のリング51によって、リングの軸線方向の最大寸法の範囲内で、ハウジング2に直接衝突することが防がれる。また、図示していないが、リング51にガード52(図5参照)を設けた場合には、第1コンテインメント装置50のガード52によって、軸線A1方向に対して垂直な方向だけでなく、斜め方向に飛び出そうとうするディスク破片B1~B4がハウジング2に直接衝突することを防ぐことができる。よって、ハウジング2の厚肉化や設計変更を行うことなく、ハウジング2のコンテインメント性能を補うことができる。
【0051】
入力ディスク13(または出力ディスク14、15)とリング51との間の隙間を小さく設定することができるため、遠心力の作用するディスク破片B1~B4がリング51に衝突する際に、ディスク破片B1~B4の径方向加速度を小さくできると共に、リング51に対するディスク破片B1~B4の衝突角度を小さくできる。それにより、リング51に生じる衝撃荷重を小さくできる。
【0052】
また、ディスク破片B1~B4が軸線A1方向に変位したとしても、リング51及びガード52によってディスク破片B1~B4がハウジング2(図1参照)に直接衝突することを防ぐことができる。
【0053】
ディスク破片B1~B4が軸線A1方向に変位したとしても、リング51の軸線A1方向の最大寸法は、ディスク13の外周面31bの軸線A1方向の最大寸法よりも大きいため(図4参照)、ディスク破片が軸線A1方向に対して垂直な方向に飛び出そうとする場合だけでなく斜め方向に飛び出そうとする場合にも、リング51によってディスク破片B1~B4がハウジング2に直接衝突することを防ぐことができる。なお、このようなコンテインメント原理は、第2コンテインメント装置60についても同様である。
【0054】
リング51,61は、軸線A1方向において、入力ディスク13及び出力ディスク14,15の重心位置Gを含む範囲に配置されていてもよい。この場合、遠心力の作用するディスク破片B1~B4がリング51,61によってハウジング2に直接衝突することを防ぐことができる。
【0055】
リング51,61において、第2セクションS2は、第1セクションS1よりも、軸線A1方向においてディスク13~15側からパワーローラ18側に向けて突出していてもよい。この場合、リング51,61がパワーローラ18(及びトラニオン19)の傾動範囲を制限することを防止しながらも、リング51,61によってディスク破片B1~B4がハウジング2に直接衝突することを防ぐことができる。
【0056】
リング51,61の第1セクションS1及び第2セクションS2と、ディスク13~15の外周面31a,41aとの間の軸線A1方向の相対位置が、図7(A)(B)及び図8(A)(B)を参照して前述したように設定することできるため、リング51,61がパワーローラ18の可動範囲を制限することを防止しながら、リング51,61によってディスク破片B1~B4がハウジング2に直接衝突することを防ぐことができる。
【0057】
コンテインメント装置50は、ハウジング2に接続された軸受サポート25に接続されている。そのため、コンテインメント装置50とハウジング2との間に他の部品(軸受サポート25)が介在する。これにより、コンテインメント装置50からハウジング2に伝わる衝撃荷重が低減され、ハウジング2のコンテインメント性能を補うことができる。その際、コンテインメント装置50とハウジング2との間に介在する部品として、トロイダル無段変速機の他の機能を有する構成部品(例えば、軸受サポート25は、本来、軸受24を支持する部品である)が用いられるので、部品点数の増加を防ぐことができる。
【0058】
コンテインメント装置50,60がガード52,62を有する場合には、ガード52,62によってディスク破片B1~B4が飛び出すことを防止できる。また、ガード52,62がリング51,61に一体化されている場合は、リング51,61の部品点数を増やさずに、リング51,61の剛性を高めることができる。
【0059】
リングサポート53,63がリング51,61に一体化されている場合は、リング51,61の部品点数を増やさずに、リング51,61の剛性を高めることができる。
【0060】
リングサポート53,63は、径方向外方に開口した排油口53aを有していてもよい。この場合、リング51,61とリングサポート53,63とで囲まれた空間に進入したオイルを、ディスク13~15に撹拌される前に排油口53aから径方向外方に排出することができる。
【0061】
図10(A)は、コンテインメント装置のガードの第1変形例の斜視図である。図10(A)に示すように、第1変形例のガード152は、リング151に対して別体である。ガード152は、リング151に対して固定具155(例えば、ボルト)によって着脱自在に固定されている。これにより、変速機10への組付け時において、リング151からガード152を外すことができ、組付け時の作業性が向上する。
【0062】
図10(B)は、コンテインメント装置のガードの第2変形例の斜視図である。図10(B)に示すように、第2変形例のガード252は、リング251から径方向内方に突出した突起である。ガード252の径方向の突出量は、例えば、リング251の内周面の半径の10%~30%の範囲内の値である。なお、図10(C)は、コンテインメント装置の第3変形例の斜視図であり、第3変形例のようにコンテインメント装置においてリング251Aに対してガードを設けないようにしてもよい。図10(C)の場合、コンテインメント装置の部品点数を増やさずに、ハウジング2のコンテインメント性能を補うことができる。
【0063】
図11(A)は、コンテインメント装置におけるリングとリングサポートとの接続構造の第1変形例の斜視図である。第1変形例の接続構造では、リングサポート353は、リング351に対して固定具355(例えば、ボルト)によって着脱可能に固定されている。これにより、変速機10への組付け時において、リング351からリングサポート353を外すことができ、組付け時の作業性が向上する。
【0064】
図11(B)は、コンテインメント装置におけるリングとリングサポートとの接続構造の第2変形例の斜視図である。第2変形例の接続構造では、リングサポート453とリング451とが、一体物として形成されている。なお、リングサポート453と軸受サポート25(図4参照)とが、別体として形成されるようにしてもよい。
【0065】
図11(C)は、コンテインメント装置におけるリングとリングサポートとの接続構造の第3変形例の斜視図である。第3変形例の接続構造では、リング551の軸線A1方向の端には、周方向に互いに間隔をあけて並んだ複数の切欠551aが形成されている。リングサポート553の外周端には、周方向に互いに間隔をあけて並んだ複数の突起553aが形成されている。軸線A1方向において、切欠551aの寸法は、突起553aの寸法よりも大きい。
【0066】
突起553aが切欠551aに嵌められることで、リングサポート553がリング551に係止される。そして、リテーナ554がリング551に取り付けられることで、リングサポート553がリテーナ554によってリング551に接続される。リテーナ554は環状であり、その外周端には、周方向に互いに間隔をあけて並んだ複数の突起554aが形成されている。リテーナ554の突起554aがリングサポート553の突起553aを軸線A1方向から押さえ付けるようにリング551の切欠551aに嵌められる。
【0067】
図11(D)は、コンテインメント装置におけるリングとリングサポートとの接続構造の第4変形例の斜視図である。第4変形例の接続構造では、リング651に対してリングサポート653及びリテーナ654が、パワーローラ18側(図4参照)から挿入されて嵌合されている。リングサポート653は、隣接する部材(例えば、軸受サポート25)に対して固定具(例えば、ボルト)で固定されてもよいし、リテーナ654を用いて圧入嵌合によって固定されてもよい。
【0068】
図12(A)は、コンテインメント装置の支持構造の第1変形例を示す正面図である。図12(A)に示すように、第1変形例の支持構造は、コンテインメント装置50をハウジング2(図1参照)に接続するジョイント600を備える。ジョイント600は、コンテインメント装置50のリング51から突出したブラケット601と、ブラケット601をハウジング2に固定する固定具602(例えば、ボルト)とを備える。
【0069】
ブラケット601は、固定具602が挿通される固定穴601aを有する。固定穴601aは、固定具602のうち固定穴601aに配置される部分よりも十分に大径の穴である。例えば、固定穴601aの内径は、固定具602のうち固定穴601aに配置される部分の外径の1.3~2.0倍である。
【0070】
コンテインメント装置50に衝撃が発生した場合には、その衝撃がブラケット601に伝達されることで固定穴601aの範囲内においてブラケット601が固定具602に対して相対変位し得る。即ち、ブラケット601の固定穴601aは、衝撃によるコンテインメント装置50の変位を許容するアブソーバ603の役目を果たす。これにより、コンテインメント装置50からハウジング2に伝わる衝撃荷重が低減され、ハウジング2のコンテインメント性能を補うことができる。
【0071】
図12(B)は、コンテインメント装置の支持構造の第2変形例を示す正面図である。図12(B)に示すように、第2変形例の支持構造は、コンテインメント装置50をハウジング2に接続するジョイント700を備える。ジョイント700は、コンテインメント装置50のリング51から突出したブラケット701と、ブラケット701をハウジング2に固定する固定具702(例えば、ボルト)とを備える。
【0072】
ブラケット701は、固定具702が挿通される固定穴701aと、アブソーバ701bとを有する。アブソーバ701bは、ブラケット701のうちハウジング2に接続される部分とブラケット701のうちコンテインメント装置50に接続される部分とを結ぶ直線の延在方向(ブラケット701の主方向)と異なる方向に向けて湾曲した迂回形状を有する。
【0073】
即ち、アブソーバ701bは、ブラケット701がその主方向において弾性的に伸縮することを許容する。例えば、アブソーバ701bは、ブラケット701の主方向に直交する方向に突出した逆U形状を有する。コンテインメント装置50に衝撃が発生した場合には、その衝撃がブラケット701に伝達されることでアブソーバ701bが弾性変形し得る。これにより、コンテインメント装置50の変位が許容され、コンテインメント装置50からハウジング2に伝わる衝撃荷重が低減されるので、ハウジング2のコンテインメント性能を補うことできる。なお、コンテインメント装置の支持構造の第2変形例は、コンテインメント装置の支持構造の第1変形例と組み合わせることもできる。例えば、4つの支持箇所のうち、2か所をジョイント600、残り2か所をジョイント700とすることができる。
【0074】
図13は、コンテインメント装置の支持構造の第3変形例を示す斜視図である。図13に示すように、第3変形例の支持構造では、第1コンテインメント装置50と第2コンテインメント装置60とは、連結体800によって互いに接続されている。連結体800は、例えば、バー形状を有する。
【0075】
連結体800の一端部は、固定具801(例えば、ボルト)によって第1コンテインメント装置50(例えば、リング51)に着脱可能に固定されている。連結体800の他端部は、固定具802(例えば、ボルト)によって第2コンテインメント装置60に着脱可能に固定されている。
【0076】
このようにして、連結体800が第1コンテインメント装置50と第2コンテインメント装置60とを支持できる。なお、図13では、連結体800を1つだけ図示しているが、第1コンテインメント装置50と第2コンテインメント装置60とは、複数の連結体800によって互いに接続されていると好適である。
【0077】
第2コンテインメント装置60(例えば、リング61)には、ブラケット803が一体的に接続されている。また、ブラケット803は、第2コンテインメント装置60に別体で接続することもできる。ブラケット803は、固定具804(例えば、ボルト)によってアクチュエータボディ23に固定されている。即ち、第2コンテインメント装置60は、ブラケット803及びアクチュエータボディ23(支持部品)を介してアクチュエータ22、ハウジング2に接続されている。このようにトロイダル無段変速機の他の機能を有する構成部品に接続することで、部品点数の増加を防ぎながらコンテインメント装置50,60を支持できる。
【0078】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができ、例えば、1つの変形例中の一部の構成は、その変形例中の他の構成から分離して任意に抽出して他の実施形態又は変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0079】
2 ハウジング
10 トロイダル無段変速機
13 入力ディスク
14,15 出力ディスク
17 押圧装置
18 パワーローラ
23 アクチュエータボディ(支持部品)
25 軸受サポート(支持部品)
31a,41a 変速面
31b,41b 外周面
50 第1コンテインメント装置
51,61 リング
52,62 ガード
53,63 リングサポート
53a 排油口
60 第2コンテインメント装置
600,700 ジョイント
603 アブソーバ
701b アブソーバ
800 連結体
A1 軸線
B1~B4 ディスク破片
G 重心
S1 第1セクション
S2 第2セクション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13