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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】防音材の吸音特性の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/162 20060101AFI20240815BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20240815BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20240815BHJP
   E04B 1/86 20060101ALI20240815BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20240815BHJP
   B60R 13/08 20060101ALN20240815BHJP
【FI】
G10K11/162
G10K11/168
G10K11/172
E04B1/86 D
B32B5/24 101
B60R13/08
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020559186
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2019047055
(87)【国際公開番号】W WO2020116399
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2018227599
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】松本 憲和
(72)【発明者】
【氏名】酒井 章子
(72)【発明者】
【氏名】大谷 憲司
(72)【発明者】
【氏名】宮田 照久
【審査官】鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/013427(WO,A1)
【文献】特開2007-127908(JP,A)
【文献】特開2007-223273(JP,A)
【文献】特開平10-088689(JP,A)
【文献】実開昭63-072033(JP,U)
【文献】特開2004-294619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/162
G10K 11/168
G10K 11/172
E04B 1/86
B32B 5/24
B60R 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材からなる表皮層と、表皮層に積層された、空隙が連通している多孔質材からなる裏面層と、該表皮層と裏面層との間に積層された、接合材からなる一つ以上の接合層とを備え、前記表皮層と前記裏面層との接触面全体に対して100%未満の総接合面積率を有する防音材の吸音特性を制御する方法であって、
該繊維材の繊維は熱可塑性合成繊維からなり、
該接合層は棒状の形状を有し、
前記接合層の個々の面積を増大させることにより防音材の吸音ピークの周波数を低周波数側へシフトさせるか、又は前記接合層の個々の面積を低減させることにより防音材の吸音ピークの周波数を高周波数側へシフトさせる、もしくは、
前記接合層の個々の面積を増大させることにより防音材の吸音ピーク周波数より高周波数側の帯域の吸音率は低減させ、吸音ピーク周波数より低周波数側の帯域の吸音率は増大させるか、又は前記接合層の個々の面積を低減させることにより防音材の吸音ピーク周波数より高周波数側の帯域の吸音率は増大させ、吸音ピーク周波数より低周波数側の帯域の吸音率は低減させる、防音材の吸音特性を制御する方法。
【請求項2】
前記総接合面積率が50~95%の範囲から選択される、請求項1に記載の防音材の吸音特性を制御する方法。
【請求項3】
前記接合材は3粘着剤又は両面粘着テープである、請求項1又は2に記載の防音材の吸音特性を制御する方法。
【請求項4】
前記接合層は前記表皮層と前記裏面層との接触面に複数存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の防音材の吸音特性を制御する方法。
【請求項5】
前記表皮層と前記裏面層との接触面に複数存在する接合層は規則的な配置様式を有する、請求項4に記載の防音材の吸音特性を制御する方法。
【請求項6】
繊維材からなる表皮層と、表皮層に積層された、空隙が連通している多孔質材からなる裏面層と、該表皮層と裏面層との間に積層された、接合材からなる接合層とを備え、前記表皮層と前記裏面層との接触面全体に対して100%未満の総接合面積率を有する防音材の吸音特性を制御する方法であって、
該繊維材の繊維は熱可塑性合成繊維からなり、
該接合層は棒状の形状を有し、
前記表皮層と前記裏面層との接触面の少なくとも一部に、所定の配置様式を有する複数の接合層からなる領域を1領域以上配置することにより防音材の吸音特性を変化させて、
防音材の低~高周波数帯域における吸音率を平準化する、防音材の吸音特性を制御する方法。
【請求項7】
前記表皮層と前記裏面層との接触面に、複数の接合層からなる領域が配置されていない領域が存在する場合に、その領域の少なくとも一部に、該接合層よりも大きな面積を有する一つの接合層からなる領域を配置する、請求項6に記載の防音材の吸音特性を制御する方法。
【請求項8】
前記表皮層の繊維材は、5~300g/mの目付、1~17μmの平均繊維径、5~200cm/cm・secの通気量を有する請求項1~7のいずれか一項に記載の防音材の吸音特性を制御する方法。
【請求項9】
前記裏面層は、0.5×10~3.5×10N・sec/mの単位面積流れ抵抗を有する請求項1~8のいずれか一項に記載の防音材の吸音特性を制御する方法。
【請求項10】
前記裏面層は100~300g/mの目付を有する繊維材からなる請求項1~9のいずれか一項に記載の防音材の吸音特性を制御する方法。
【請求項11】
前記塗工された粘着剤又は両面粘着テープの粘着剤は、1.0×10~1.0×10Paの25℃におけるせん断貯蔵弾性率を有する請求項3~5及び8~10のいずれか一項に記載の防音材の吸音特性を制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防音材に関し、特に、防音材の吸音特性の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市化の進行、又は行政サービスの効率化等のため、近年、人々が狭い地域に密集して生活する傾向が明確になっている。人口密度が高くなると、生活、労働、娯楽等の活動が接近して行われることになり、生活者が騒音に接する頻度及び騒音の種類が増加する。騒音が多い環境下でも快適な生活環境を確保するために、生活の場面で遭遇する生活騒音を全般的に遮断することが可能な防音材が求められている。また、生活騒音の発音体である各種機器等の小型・軽量化に伴い、これらに使用される防音材に対しても薄膜・軽量化が求められている。
【0003】
生活騒音は、例えば、輸送機器、建設機械・機器、電子・電気機器、家電などから発せられ、種類が多様であり、低周波数から高周波数にわたって幅広い周波数の音が含まれる。
【0004】
自動車の場合を例にとると、自動車での走行中に室内に侵入する音域は、エンジン音(63~250Hz程度)の低音域とタイヤ音(500~1500Hz程度)、風切り音(1000~4000Hz程度)などの中高音域にピークを示す特性を持つ。一般的に自動車の防音手法は、車外から侵入する音を遮断するための「遮音」と、車内の音の響きを和らげるための「吸音」の二つがあり、低音域には遮音、中高音域には吸音という手法で、侵入音への対策が講じられている。次世代自動車で問題が顕著化すると懸念されるタイヤ音や風切り音の特性である中高音域の音を和らげるために、防音材には従来品以上の吸音性能が求められている一方で、可能な限り薄さ、軽さを維持した上で、所望の吸音特性を適切かつ容易に設計することができる吸音特性の制御方法も求められている。またさらに、シチェーションに応じた快適な音環境を作り出すために、吸音性能を単に向上させるのではなく、所定の周波数領域の音に対して、その吸音率を適切なレベルに容易に調節したいという要望も今後は増えてくるものと予想される。
【0005】
騒音・異音などを遮断する防音方法の一つの方法として、上記した「吸音」がある。ここで、「吸音」とは、音を吸収することで音の反射を抑える方法のことを指し、吸収によって反射する音の大きさが小さいほど、吸音性が高い。吸音のメカニズムは、一般的にフェルト、グラスウール、ロックウールなどの繊維材料の骨格部分とその間の空隙から構成される材料に音が入射した際に、音波の持つエネルギーの一部が、空隙中で骨格部分の周壁との摩擦や粘性抵抗、さらに骨格の振動などによって、熱エネルギーに交換されることで、吸音するものである。音は、音波の粒子速度が大きい位置で、音エネルギーの消耗が最大になるので、例えば、剛壁から粒子速度の大きいλ/4等の位置まで防音材があると吸音率が高くなる。そのため、例えば、剛壁に貼り付けた材料は、高周波になるほど、吸音率が高く、又、防音材料の厚さが大きい程、低周波側の吸音率を高くすることができる。
【0006】
したがって、従来防音材よりも有効な高いレベルの吸音率を有し、さらに吸音可能な周波数領域が拡大された防音材を設計するためには、例えば、フェルトなどの繊維材料の厚さを厚くすることが有効な手法の一つとなるが、この手法は防音材の厚さ制限がない場合には有効であるが、上述したような薄膜・軽量化を目的とした用途にはそぐわない。そこで、フェルトなどの繊維材料の厚さを厚くするのではなく、比較的厚さの薄いフェルトなどの繊維材料の上に、厚さの薄い特定の表皮材やフィルム状共振材などを熱融着繊維や接着剤を利用して接合・積層した防音材により、可能な限り薄さ、軽さを維持しつつ、吸音特性を向上させる手法が提案されている。
【0007】
特許文献1には自動車のエンジンルームなどの騒音を車室内に伝播しないようにする超軽量な防音材が記載されている。この防音材は、熱可塑性フェルト等の通気性の材質でなる吸音層と、軽量な発泡体または薄いフィルム体等でなる通気性の共振層とが、接着層により所定の接着強度および接着面積となるように接着された積層体からなるものである。
【0008】
特許文献1の防音材は、通気性の共振層と吸音層との間にある接着層の利用によって、通気性の超軽量な共振層と吸音層との界面での共振現象を発現させて吸音しており、接着面積や吸音層の密度によって、バネマス系共振や剛性の調整を行い、界面において吸音する音の周波数や吸音率を制御している。
【0009】
特許文献2には自動車の内装用などに好適な吸音材が記載されている。この吸音材は、部分熱圧着後、更にカレンダー加工されたスパンボンド法による熱可塑性合成繊維不織布からなる表面材と合成繊維不織布からなる裏面材とをホットメルト接着剤等の使用により接合した不織布である。
【0010】
特許文献2の吸音材は、表面材が小さな空隙を有する高密度構成の熱可塑性合成繊維不織布からなるため、音の波長を小さくして不織布の空隙に侵入させ、かつ大きな空隙を有する粗な構成の合成繊維不織布からなる裏面材の繊維単糸に、該侵入した音波を伝達して振動させ、音エネルギーを効率よく熱エネルギーに変換することができ、優れた吸音効果を得ることができる。
【0011】
特許文献3には自動車室内のフロアパネル上に敷設する自動車用フロア敷設材が記載されている。この敷設材は、フロアパネル上に、クッション層、多数の開孔を有する孔あきシート層、通気表層をこの順に積層してなる敷設材である。
【0012】
特許文献3の敷設材は、孔あきシート層の開孔率等の因子を定めることにより、孔あきシート層と通気表層の積層の流れ抵抗値を1000Nsm-3未満に調整して100~3000Hz帯域の吸音性、遮音性を任意に制御している。
【0013】
特許文献4は、繊維系多孔質材料を用いた吸音構造体に関する複合吸音構造体が記載されている。この複合吸音構造体は、単繊維の形状が円形状あるいは扁平上で等価単繊維系が11~35μmの不織布からなる表皮層と高分子繊維系多孔質材料からなる母材層とを、ホットメルト材を介して重ね合わせ、加熱・加圧し、熱融着して一体複合化し、不織布の表皮層が音の入射側に配される複合吸音構造体からなるものである。
【0014】
特許文献4の複合吸音構造体は、表皮層と母材層を複合一体化するための高分子系ホットメルト材の目付けや表皮層を複数枚で構成することにより、複合吸音構造体として流れ抵抗を2×10~3.5×10 N・sec/m に調整し、広い周波数帯域で優れた吸音特性を有するように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2005-208494号公報
【文献】特開2006-28709号公報
【文献】特開2005-1403号公報
【文献】WO2009-125742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記の特許文献1~4の技術では、例えば、「現在検討している防音材の設計仕様において、(1)使用材料は変更したくない、(2)総重量についてはこれ以上重くしたくない、(3)総厚さについてもこれ以上厚くしたくはないが、(A)吸音可能な周波数帯域をもう少しシフトさせたい、(B)ある周波数帯域の吸音率のレベルをもう少し調節したい、(C)当初予定から吸音特性の仕様変更があったので吸音可能な周波数帯域を大きくシフトさせたい」といった吸音特性の調整要望に対して、十分に応えられるものとは言えず、まだ改善の余地があった。すなわち、可能な限り現状設計における防音材の総重量、総厚さや構成材料を維持しながらも、従来技術よりも、吸音特性を大きく変化させることができる新たな制御方法が求められていた。
【0017】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、防音材の構成材料、総厚さ、及び総重量を変化させることなく防音材の吸音特性を変化させる、防音材の吸音特性の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記課題を解決するために、本発明者らがすでに提案した、所定の繊維材からなる表皮層と空隙が連通している多孔質材からなる裏面層とを接合層により所定の総接合面積率となるように部分的に接合した防音材(特願2018-146130号)をベースに、更に詳細に検討した。尚、総接合面積率とは、表皮層と裏面層との接触面全体に対する接合層の合計面積の割合をいう。ここで、接触面とは、表皮層と裏面層が対面している面のことを示す。
【0019】
その結果、接合層の総接合面積率が同一でも、言い換えれば、防音材の重量及び総厚さを変更することなく、個々の接合層の面積を変化させて、接合層を配置した場合に、防音材の吸音特性が実質的に変化する現象を見出し、本発明を成すに至った。
【0020】
本発明における第一の発明は、繊維材からなる表皮層と、表皮層に積層された、空隙が連通している多孔質材からなる裏面層と、該表皮層と裏面層との間に積層された、接合材からなる一つ以上の接合層とを備え、前記表皮層と前記裏面層との接触面全体に対して100%未満の総接合面積率を有する防音材の吸音特性を制御する方法であって、前記接合層の個々の面積を変化させることにより防音材の吸音特性を変化させる、防音材の吸音特性を制御する方法を提供する。
【0021】
第一の発明のある一形態においては、前記総接合面積率は50~95%の範囲から選択される。
【0022】
第一の発明のある一形態においては、前記接合材は塗工された粘着剤又は両面粘着テープである。
【0023】
第一の発明のある一形態においては、前記接合層は前記表皮層と前記裏面層との接触面に複数存在する。
【0024】
第一の発明のある一形態においては、前記複数の接合層は規則的な配置様式を有する。
【0025】
第一の発明のある一形態においては、前記接合層は棒状の形状を有する。
【0026】
第一の発明のある一形態においては、前記接合層の個々の面積を増大させることにより防音材の吸音ピークの周波数を低周波数側へシフトさせるか、又は前記接合層の個々の面積を低減させることにより防音材の吸音ピークの周波数を高周波数側へシフトさせることができる。
【0027】
第一の発明のある一形態においては、前記接合層の個々の面積を増大させることにより防音材の吸音ピーク周波数より高周波数側の帯域の吸音率は低減させ、吸音ピーク周波数より低周波数側の帯域の吸音率は増大させるか、又は前記接合層の個々の面積を低減させることにより防音材の吸音ピーク周波数より高周波数側の帯域の吸音率は増大させ、吸音ピーク周波数より低周波数側の帯域の吸音率は低減させることができる。
【0028】
また、本発明における第二の発明は、繊維材からなる表皮層と、表皮層に積層された、空隙が連通している多孔質材からなる裏面層と、該表皮層と裏面層との間に積層された、接合材からなる接合層とを備え、前記表皮層と前記裏面層との接触面全体に対して100%未満の総接合面積率を有する防音材の吸音特性を制御する方法であって、前記表皮層と前記裏面層との接触面の少なくとも一部に、所定の配置様式を有する複数の接合層からなる領域を1領域以上配置することにより防音材の吸音特性を変化させる、防音材の吸音特性を制御する方法を提供する。
【0029】
第二の発明のある一形態においては、前記表皮層と前記裏面層との接触面に、複数の接合層からなる領域が配置されていない領域が存在する場合に、その領域の少なくとも一部に、該接合層よりも大きな面積を有する一つの接合層からなる領域を配置する。
【0030】
第二の発明のある一形態においては、防音材の低~高周波数帯域における吸音率を平準化することができる。
【0031】
また、本発明の前記表皮層の繊維材は、5~300g/mの目付、1~17μmの平均繊維径、5~200cm/cm・secの通気量を有することが好ましい。
【0032】
また、本発明の前記裏面層は、0.5×10~3.5×10N・sec/mの単位面積流れ抵抗を有することが好ましい。
【0033】
また、さらに本発明の前記裏面層は100~300g/mの目付を有する繊維材からなることが好ましい。
【0034】
また、本発明の前記塗工された粘着剤又は両面粘着テープの粘着剤は、1.0×10~1.0×10Paの25℃におけるせん断貯蔵弾性率を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の吸音特性の制御方法は、防音材の構成材料、総厚さ、及び総重量を変化させることなく防音材の吸音特性を変化させることが可能であり、多様な用途に応じた吸音特性の設計をより容易に提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明の方法で使用する防音材の構成を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施例1及び実施例16で使用した、複数の接合層の配置様式を示す水平断面図である。
図3図3は、本発明の実施例2及び実施例17で使用した、複数の接合層の配置様式を示す水平断面図である。
図4図4は、本発明の実施例3で使用した、複数の接合層の配置様式を示す水平断面図である。
図5図5は、本発明の実施例4及び実施例18で使用した、複数の接合層の配置様式を示す水平断面図である。
図6図6は、本発明の実施例5で使用した、複数の接合層の配置様式を示す水平断面図である。
図7図7は、本発明の実施例6で使用した、複数の接合層の配置様式を示す水平断面図である。
図8図8は、本発明の実施例7で使用した、複数の接合層の配置様式を示す水平断面図である。
図9図9は、本発明の実施例8で使用した、複数の接合層の配置様式を示す水平断面図である。
図10図10は、本発明の実施例9で使用した、複数の接合層の配置様式を示す水平断面図である。
図11図11は、本発明の実施例10で使用した、接合層の配置様式を示す水平断面図である。
図12図12は、本発明の実施例11で使用した、複数の接合層の配置様式を示す水平断面図である。
図13図13は、本発明の実施例12で使用した、複数の接合層の配置様式を示す水平断面図である。
図14図14は、本発明の実施例13で使用した、複数の接合層の配置様式を示す水平断面図である。
図15図15は、本発明の実施例14で使用した、複数の接合層の配置様式を示す水平断面図である。
図16図16は、本発明の実施例15で使用した、複数の接合層の配置様式を示す水平断面図である。
図17図17は、実施例1~3で得られた防音材の吸音率を1/3オクターブバンド中心周波数ごとにプロットしたグラフである。
図18図18は、実施例1、4及び5で得られた防音材の吸音率を1/3オクターブバンド中心周波数ごとにプロットしたグラフである。
図19図19は、実施例6~8で得られた防音材の吸音率を1/3オクターブバンド中心周波数ごとにプロットしたグラフである。
図20図20は、実施例6、9及び10で得られた防音材の吸音率を1/3オクターブバンド中心周波数ごとにプロットしたグラフである。
図21図21は、実施例11~13で得られた防音材の吸音率を1/3オクターブバンド中心周波数ごとにプロットしたグラフである。
図22図22は、実施例11、14及び15で得られた防音材の吸音率を1/3オクターブバンド中心周波数ごとにプロットしたグラフである。
図23図23は、実施例16、17で得られた防音材の吸音率を1/3オクターブバンド中心周波数ごとにプロットしたグラフである。
図24図24は、実施例16、18で得られた防音材の吸音率を1/3オクターブバンド中心周波数ごとにプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[防音材の構成]
図1は、本発明の方法で使用する防音材の構成を模式的に示す斜視図である。防音材10は、繊維材からなる表皮層11と、空隙が連通している多孔質材からなる裏面層13、接合層12、及び通気性の開口部14とを備えた積層構造を有する。防音材10は、例えば、輸送機器、建設機械・機器、電子・電気機器、家電などの発音体から発せられる音を吸音するための部材や公共建造物内、周辺の音場環境を調整するための部材として用いられてよい。
【0038】
<接合層>
接合層12は後述する表皮層11と裏面層13とを接合するための層である。接合層12は表皮層11と裏面層13との接触面(以下、単に「接触面」ということがある。)の一部に形成される。本明細書において接合層とは、集合体ではなく、一つの部材を指して言う。接合層の面積とは上記接触面と実質的に平行な接合層の面積をいう。接合層の個々の面積とは、一つの接合層の面積をいう。接合層12は単数又は複数形成されてよい。
【0039】
上記接合材としては、形状及び寸法を容易、正確に実現することができて、連通した空隙を実質的に有しない材料を使用する。接合材は、例えば、粘着剤、接着剤等を含む材料を使用することができる。具体的には、塗工された粘着剤、塗工された接着剤、又はこれらをテープ状、シート状、粉末状に加工したもの等が挙げられる。中でも、作業性、生産性、寸法精度の観点から、塗工された粘着剤又は両面粘着テープ(基材を有しない基材レス両面粘着テープも含む)により接合層12を形成するのが好ましい。
【0040】
上記の塗工された粘着剤又は両面粘着テープに使用される粘着剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の粘着剤を使用することができる。例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤やエチレン-酢酸ビニル共重合体系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、汎用性、厚さの可変領域の広さ、表皮層と裏面層を過度に拘束しない等の観点から、ゴム系粘着剤又はアクリル系粘着剤が好ましい。上記粘着剤の25℃におけるせん断貯蔵弾性率(G’)は、1.0×10~1.0×10Paの範囲であることが好ましい。上記せん断貯蔵弾性率を、このような範囲とすることにより、表皮層11と裏面層13の音の振動による変形や変位はある程度可能であり、表皮層11と裏面層13の境界部分で音を反射させる硬質部分を生じさせず、音波をある程度通過させることができ、表皮層11、裏面層13および防音材10全体としての吸音機構を問題なく機能させることができる。上記粘着剤の25℃におけるせん断貯蔵弾性率(G’)は、好ましくは5.0×10~8.0×10Paの範囲であり、より好ましくは1.0×10~6.0×10Paの範囲である。
【0041】
上記接合層に関して、本発明者らは、すでに提案した、所定の繊維材からなる表皮層と空隙が連通している多孔質材からなる裏面層とを接合層により所定の総接合面積率となるように部分的に接合した防音材(特願2018-146130号)において、該防音材は、接合界面における共振と表皮層及び裏面層における繊維振動とを連成させ、さらに接合層開口部により、裏面層との共鳴型吸音機構や裏面層の粘性抵抗も活かせる構成としているので、それぞれの吸音メカニズムが相乗的にバランス良く発現し、防音材の総厚さが薄くても実使用において有効な高いレベルの垂直入射吸音率を有し、さらに吸音可能な周波数帯域が拡大するという効果を奏することを示している。本発明では、この提案技術をベースに、より実環境に近い残響室法で測定した吸音率(残響室法吸音率)と接合層の配置様式の関係について、更に詳細に検討した結果、上述したように、総接合面積率が同一であっても、言い換えれば、防音材の重量及び総厚さを変更することなく、個々の接合層の面積を変化させて、接合層を配置した場合に、防音材の吸音特性が実質的に変化する現象を見出した。すなわち、繊維材からなる表皮層と、表皮層に積層された、空隙が連通している多孔質材からなる裏面層と、該表皮層と裏面層との間に積層された、接合材からなる一つ以上の接合層とを備え、上記表皮層と上記裏面層との接触面全体に対して100%未満の総接合面積率を有する防音材において、上記総接合面積率を上記所定の範囲内のある一つの値に設定した際に、第一に、個々の接合層の面積を変化させることにより防音材の吸音特性を変化させることができること、第二に、前記表皮層と前記裏面層との接触面の少なくとも一部に、所定の配置様式を有する複数の接合層からなる領域を1領域以上配置することにより防音材の吸音特性を変化させることができること、を見出した。
【0042】
第一の発明を具体的に説明すると、総接合面積率が同一であっても、個々の接合層の面積を増大させて、該接合層を配置することにより、吸音率が最大となる周波数(吸音ピーク周波数)を、より低周波数側へシフトさせることができる。この場合、吸音ピーク周波数より高周波数側の帯域の吸音率は低減し、吸音ピーク周波数より低周波数側の帯域の吸音率は増大する傾向が認められる。逆に、個々の接合層の面積を低減させて、該接合層を配置することにより、吸音率が最大となる周波数(吸音ピーク周波数)を、より高周波数側へシフトさせることができる。この場合、吸音ピーク周波数より高周波数側の帯域の吸音率は増大し、吸音ピーク周波数より低周波数側の帯域の吸音率は低減する傾向が認められる。また、さらに一定レベルの吸音率を確保した上で、吸音率を全体的に低減させることもできる。
【0043】
上記効果を奏するメカニズムは、以下のように推察される。表皮層11と裏面層13が接合層12により部分的に接合された構造は、いわゆる多孔質型吸音機構(裏面層13)、共鳴型吸音機構(開口部14と裏面層13との積層構造)、及び膜振動型吸音機構(表皮層11と接合層12と裏面層13との接合界面)を兼ね備えた構造を示していると考えられ、個々の接合層の面積を変化させることは、言い換えれば、上記3つの吸音機構のバランスを変化させることを意味する。すなわち、接合層の総接合面積率を変えずに、個々の接合層の面積を増大させることは、上記3つの吸音機構のバランスにおいて、特に膜振動型吸音機構の効果の影響が強くなる方向(開口部の形成個数は低減するため、多孔質型吸音機構及び共鳴型吸音機構の効果の影響は弱くなり、一つの連続面で形成された接合層により拘束される接合界面の面積は増大するため、接合界面における膜振動型吸音機構の効果の影響は強くなる方向)となるため、吸音ピーク周波数をより低周波数側へシフトさせることができるものと考える。逆に、接合層の面積を低減することは、上記3つの吸音機構のバランスにおいて、特に多孔質型吸音機構の効果の影響が強くなる方向(一つの連続面で形成された接合層により拘束される接合界面の面積は低減するため、接合界面における膜振動型吸音機構の効果の影響は弱くなり、開口部の形成個数は増大するため、多孔質型吸音機構及び共鳴型吸音機構の効果の影響は強くなる方向)となるため、吸音ピーク周波数をより高周波数側へシフトさせることができるものと考える。又、接合層の総接合面積率を変えずに、個々の接合面積を増大させることは、接合層と接合層との間の通気性を有する開口部14の形成個数を低減し、開口部14を防音材全体に渡り、満遍なく形成・配置することを困難化する方向となるため、残響室法吸音率試験のようなランダム入射音を想定した測定の場合、表皮層11を通じて斜めから入射した音については、特に、面積の増大した接合層12の真下に配置された裏面層13の上部(接合層に接する側)部分へ進入できる割合が低減し、裏面層13が有する多孔質型吸音機構の効果の一部が抑制される結果、吸音率を全体的に低減させることができるものと考える。逆に、個々の接合層の面積を低減することは、接合層と接合層との間の通気性を有する開口部14の形成個数を増大し、開口部14を防音材全体に渡り、満遍なく形成・配置することを容易化する方向となるため、残響室法吸音率試験のようなランダム入射音を想定した測定の場合、表皮層11を通じて斜めから入射した音については、特に、面積の低減した接合層12の真下に配置された裏面層13の上部(接合層に接する側)部分へ進入できる割合が増大し、裏面層13が有する多孔質型吸音機構の効果の一部が抑制されにくくなる結果、吸音率を全体的に増大させることができるものと考える。なお、上述したように、接合材として、塗工された粘着剤又は両面粘着テープを用いた場合は、接合層12は表皮層11と裏面層13を過度に拘束しないので音波をある程度通過させることができ、上記の多孔質型吸音機構の抑制はより低減されて、一定レベルの吸音率を確保しやすくなるものと考える。
【0044】
第二の発明を具体的に説明すると、総接合面積率が同一であっても、前記表皮層と前記裏面層との接触面の少なくとも一部に、例えば、図5、6、10、15、16に示した様に所定の配置様式を有する複数の接合層からなる領域を1領域以上配置することにより、上記領域以外の領域の接合層の配置様式を多様化し、一定レベルの吸音率を確保した上で、吸音特性を制御することができる。特に、前記表皮層と前記裏面層との接触面に、複数の接合層からなる領域が配置されていない領域が存在する場合に、その領域の少なくとも一部に、該接合層よりも大きな面積を有する一つの接合層からなる領域を配置することにより、該接合層の面積の大きさに応じて、吸音ピーク周波数をシフトさせることができる。例えば、該接合層の面積を増大させることにより、吸音ピーク周波数は、より低周波数側へシフトさせるか、低周波数帯域の吸音率を増大させることができる。また、接合層と接合層の間の開口部14の形成個数、及びその配置バランス、すなわち、開口部14が防音材全体に渡り、満遍なく形成・配置されているか不均一に形成・配置されているか、を調整することにより、主に中~高周波数帯域の吸音率のレベルを制御することができる。例えば、上記接合層の総接合面積率が一定の場合、上記接合層の個々の面積が増大するにつれて、上記開口部14の形成個数は減少、上記開口部14の配置の不均一さは増す(アンバランスとなる)傾向となるため、中~高周波数帯域の吸音率は低減する一方で、低周波数帯域の吸音率はやや増大し、その結果、一定レベルの吸音率を確保した上で、低~高周波数帯域における防音材の吸音率を平準化させることができる。中~高周波数帯域の吸音率をある程度確保したい場合は、上記開口部14の形成個数を増加させ、その配置の不均一さを解消する方向となるように、各領域において接合層の面積と配置様式を調整すれば良い。
【0045】
上記効果を奏するメカニズムは、基本的には第一の発明と同様に推察することができる。すなわち、多孔質型吸音機構、共鳴型吸音機構、及び膜振動型吸音機構を兼ね備えた本発明の防音材構造の表皮層と裏面層との接触面において、領域毎に接合層の配置様式を変化させることは、言い換えれば、上記3つの吸音機構のバランスを変化させることを意味する。接合層の総接合面積率を変えずに、前記表皮層と前記裏面層との接触面の少なくとも一部に、所定の配置様式を有する複数の接合層からなる領域を1領域以上配置することにより、上記領域以外の領域の接合層の配置様式を多様化できるので、第一の発明で説明したメカニズムにより、接合層のトータルの配置様式に応じて、上記3つの吸音機構の効果の影響度合いを調整することができる。例えば、所定の配置様式を有する複数の接合層からなる領域以外の領域に、接合層の面積を大きくした領域を配置した場合は、該接合界面による膜振動型吸音機構の効果の影響が強く付加されるため、防音材全体の吸音ピーク周波数は、より低周波数側へシフトさせることができるか、低周波数帯域の吸音率を増大させることができる。さらに、この場合、表皮層と裏面層との接触面において、トータルの開口部14の形成個数、及びその配置バランスを他の領域の接合層の面積も調整しながら制御することにより、多孔質型吸音機構及び共鳴型吸音機構の効果の影響の度合いを調整できるので、中~高周波数帯域の吸音率のレベルを調整することができる。接合層の総接合面積率を変えずに、前記表皮層と前記裏面層との接触面の少なくとも一部に、所定の配置様式を有する複数の接合層からなる領域を1領域以上配置することは、総じて、接合層と接合層との間の通気性を有する開口部14の形成個数を低減し、開口部14を防音材全体に渡り、満遍なく形成・配置することを困難化する方向となるため、残響室法吸音率試験のようなランダム入射音を想定した測定の場合、表皮層11を通じて斜めから入射した音については、特に、面積の増大した接合層12の真下に配置された裏面層13の上部(接合層に接する側)部分へ進入できる割合が低減し、裏面層13が有する多孔質型吸音機構の効果の一部が抑制される結果、中~高周波数帯域の吸音率を全体的に低減させることができるものと考える。逆に、接合層と接合層との間の通気性を有する開口部14の形成個数を増大し、開口部14を防音材全体に渡り、満遍なく形成・配置することを容易化する方向となるように接合層の配置様式を調整した場合は、裏面層13が有する多孔質型吸音機構の効果の一部が抑制されにくくなる結果、中~高周波数帯域の吸音率を全体的に増大させることができるものと考える。なお、上述したように、接合材として、塗工された粘着剤又は両面粘着テープを用いた場合は、接合層12は表皮層11と裏面層13を過度に拘束しないので音波をある程度通過させることができ、上記の多孔質型吸音機構の抑制はより低減されて、一定レベルの吸音率を確保しやすくなるものと考える。
【0046】
以上の結果、本発明で使用する防音材10は、繊維材からなる表皮層11と空隙が連通している多孔質材からなる裏面層13とを、粘着テープ等の接合材からなる接合層12の総接合面積率を変えることなく、言い換えれば、防音材の重量及び総厚さを変更することなく、表皮層11と裏面層13との接触面において、個々の接合層の面積、通気性を有する開口部14の形成個数、及び開口部14の配置バランスを適宜調整することにより、防音材の吸音特性を制御するという効果を奏したものと推測する。
【0047】
本発明で使用する防音材10において、例えば、シチュエーションに応じて低周波数方向の吸音率を上げる必要がある場合、上記総接合面積率は、表皮層11と裏面層13との接触面全体に対して、100%未満の範囲であり、好ましくは50~95%の範囲である。上記総接合面積率が50%未満であると、膜振動型吸音機構の効果の寄与が低くなるので、低~中周波数方向の吸音率を増大する効果が不十分となるおそれがある。次に、シチュエーションに応じて、吸音率を平準化する場合、上記総接合面積率は、表皮層11と裏面層13との接触面全体に対して、100%未満の範囲であり、好ましくは50~95%の範囲である。上記総接合面積率が50%未満であると、表皮層と裏面層との接触面全体に対して、接合層の開口部14の配置バランスを不均一(アンバランス)にしにくくなる場合があり、この場合、中~高周波数帯域の吸音率を低減しにくくなるので、吸音率の平準化が不十分となるおそれがある。
【0048】
接合層12の形状は特に限定されない。例えば、線状、ドット状、パンチングシート状(シートに穴を開けた形状)等の形状が挙げられる。接合層12は単一であっても良いが、複数形成されてもよい。接合層12が複数形成される場合は、接触面に、規則的な配置様式の領域を形成することが好ましい。
【0049】
作業性、加工性の観点から、好ましい一形態において、接合層12は、例えば、棒状の形状を有する。棒状とは所定の幅を有する直線状の形状をいう。棒状である接合層12を接触面に規則的に形成した場合、複数の棒状層は縞模様を形成する。この場合、接触面には、縞模様という規則的な配置様式の領域が形成される。縞模様とは、直線をおよそ一定間隔で平行に並べた線条文をいう。その結果、接触面上の隣り合った2つの棒状層の間に上記通気性の開口部14が形成される。
【0050】
上記棒状層の幅は、上記総接合面積率及び所望とする吸音特性の他、使用する防音材のサイズ、棒状層の数等を考慮して適宜決定されるが、好ましくは1mm以上である。上記棒状層の幅が1mm未満であると、形状および寸法を正確に維持、加工することが困難となるおそれがある。一方、上記棒状層の幅の上限は、本発明の効果を妨げない限りにおいては、特に限定されるものではない。上記の隣り合った棒状層同士の間隔は、上記総接合面積率及び吸音特性の他、使用する防音材のサイズ、棒状層の数等を考慮して適宜決定される。
【0051】
上記接合層12の厚さは、本発明の効果を妨げない限りにおいては、特に限定されるものではないが、0.025~3mmの範囲であることが好ましい。上記接合層12の厚さが0.025mm未満であると、防音材10の吸音率が全体的に低下するおそれや表皮層11と裏面層13との接合強度が低下するおそれがある。一方、上記接合層の厚さが3mmを超えると、接合面積が大きい場合、高周波数帯域の吸音率が低下するおそれがあり、また、防音材10の厚さや重量が大きくなり、薄型・軽量化にそぐわない。また、上記接合層12の密度は、本発明の効果を妨げない限りにおいては、特に限定されるものではないが、軽量化の観点から、1.0~1.5g/cmの範囲であることが好ましい。
【0052】
<表皮層>
表皮層11は繊維材からなる。繊維材とは、繊維によってその形状が支持されており、繊維と繊維の間に空間を有し、気体がその空間を通過することができる材料をいう。繊維材は複数種類の繊維を有していてよい。繊維材は、好ましくはシート状である。不織布、織布及び編み物はここでいう繊維材に含まれる。反対に、樹脂発泡体又は樹脂フィルム材は、仮に通気性を有する材料であってもここでいう繊維材に含まれない。
【0053】
上記表皮層11の繊維材を構成する繊維の平均繊維径は、1~17μmの範囲であることが好ましく、1~10μmの範囲であることがより好ましい。上記表皮層11を構成する繊維径は、小さな空隙を有する構造とし、中~高周波数帯域の吸音率を増大させるために、小さくすることが好ましい。上記繊維材を構成する繊維の繊維径は同一であっても良いし、異なっていても良い。繊維径が異なる場合は、平均繊維径が1~17μmの範囲となるように、例えば平均繊維径が17μm以上の太い繊維と平均繊維径が1μm未満の細い繊維を混繊したものを繊維材として供しても構わない。上記繊維材を構成する繊維の平均繊維径が1μm未満であると、強度、剛性、取扱性等が低下するおそれがあり、さらに価格面でも不利となるおそれがある。一方、上記平均繊維径が17μmを超えると中~高周波数帯域の吸音率が低下するおそれがある。
【0054】
上記表皮層11の繊維材の通気量は、5~200cm/cm・secの範囲であることが好ましく、10~100cm/cm・secの範囲であることがより好ましい。上記表皮層11の通気量が5cm/cm・sec未満であると、中~高周波数帯域での吸音率が低下するおそれがある。一方、上記表皮層11の通気量が200cm/cm・secを超えると、中周波数以下の帯域での吸音率が低下するおそれがある。
【0055】
上記表皮層11の平均繊維径および通気量をそれぞれ上記範囲とすることにより、上記表皮層11の繊維材は比較的緻密な構造を有しやすくなり、共鳴型吸音機構と多孔質型吸音機構とを複合したような吸音効果、すなわち、中~高周波数帯域の吸音率を増大させる効果を有する。その結果、本発明で使用する防音材10は、厚さが薄くても実使用において吸音可能な周波数帯域が拡大するという効果を奏することができる。上記表皮層11の平均繊維径は小さいほど、より大きな効果を奏することができる。
【0056】
上記表皮層11の厚さは、0.01~5mmの範囲が好ましく、0.05~4mmの範囲がより好ましい。また、上記表皮層11の目付は、5~300g/mの範囲が好ましく、15~100g/mの範囲がより好ましい。またさらに、上記表皮層11の平均みかけ密度は、0.01~1.0g/cmの範囲が好ましく、0.02~1.0g/mの範囲がより好ましい。
【0057】
上記表皮層11の厚さ、平均みかけ密度および目付を、このような構成とすることにより、繊維材を透過する音波の音エネルギーを、空隙入口近傍部での空気摩擦と繊維骨格の内壁との粘性摩擦等により、より効果的に消耗することができる。上記表皮層11の厚さが0.01未満、平均みかけ密度が0.01g/cm未満、また目付が5g/m未満であると、強度、剛性、繊維密度等が低下し、取扱性および吸音効果が低下するおそれがある。一方、上記表皮層11の厚さが5mmを超え、平均みかけ密度が1.0g/mを超え、また、目付が300g/mを超えると、強度、繊維密度は大きくなるが、剛性が大きすぎて裁断性、取扱性が低下するおそれがある。また、薄型・軽量化にそぐわない。
【0058】
本実施の形態において、上記表皮層11の繊維材としては、特に限定されるものではないが、合成繊維からなる不織布を用いることが好ましい。上記不織布を構成する繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミド等のポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、脂肪族ポリエステル等のポリエステル系繊維、アクリル系繊維、アラミド繊維、鞘がポリエチレン、ポリプロピレンまたは共重合ポリエステルで芯がポリプロピレンまたはポリエステルなどで構成された芯鞘構造等の複合繊維、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等の生分解性繊維等の熱可塑性合成繊維を用いることができる。これらの繊維は単独でまたは2種以上を混合して用いることができ、また、扁平糸などの異形断面繊維、捲縮繊維、割繊繊維などを混合または積層して用いることもできる。これらの中でも、特に、汎用性、耐熱性、難燃性等の観点から、ポリエステル系繊維が好ましい。
【0059】
上記表皮層11の繊維材の製造方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の湿式法、乾式法又は紡糸直結(スパンボンド、メルトブロー等)による不織布の製造方法等が挙げられる。これらの中でも、繊維材の強度、取扱性、細孔の均一性の観点から、例えば、経糸と緯糸とがほぼ直交するように配列された経緯直交不織布又は経糸の一方向のみに配列された不織布の製造方法、又は、太い繊維と細い繊維がバインダーにより繊維間結合された不織布の製造方法が好ましいが、これらは一例にすぎず、これらに限定されるものではない。
【0060】
上記経緯直交不織布は、先ず、ポリエステル等上述した原料樹脂から直接紡糸した繊維を、延伸した後、縦、横それぞれの方向に繊維が配列した2種類のウェブに加工・準備し、次いでこの2種のウェブを配列した繊維が直交するように積層し、熱エンボスによるポイント熱融着で接合することで製造される。また、縦・横ウェブを積層する方法として、熱エンボス以外にも、エマルションで含侵接着する方法、ウォータージェットで短繊維を絡めて複合化し一体化する方法が挙げられる。また、同様に縦方向のみに繊維配列した不織布も製造可能であり、この不織布を繊維材として供しても構わない。このような方法により製造された不織布は、従来のスパンボンド法により製造された不織布とは異なり、縦横それぞれの方向又は縦方向に、あらかじめ延伸された平均繊維径が数μmの極細繊維が配列されているので、荷重を掛けた時の変形が小さく、形態を維持できるので、低目付であっても張力を必要とする二次加工(ロール・ツー・ロール加工)等が容易にできる。これらの不織布の引張強度(ASTM D882に準拠)は、MD方向において、20~300N/50mmの範囲であることが好ましい。
【0061】
上記太い繊維と細い繊維がバインダーにより繊維間結合された不織布は、先ず、ポリエステル等上述した原料樹脂から溶融紡糸又は湿式紡糸した繊維径の異なる繊維を、例えば繊維長10mm以下のフロック状にカットし、バインダーとなるポリビニルアルコール系等の繊維とともに混繊、均一分散した懸濁液を作製した後、通常の抄紙法により製造される。繊維径の異なる繊維は、同じ材質であっても良いし、異なる材質であっても良い。シート化に際しては、湿式法である上記抄紙法以外に、短繊維をカード機と空気流によるウエッバー(エアーレイド法)等によりシート化する乾式法を用いても構わない。繊維の配列はクロス、ランダムのいずれであっても良い。
【0062】
<裏面層>
裏面層13は、空隙が連通している多孔質材から成る。空隙が連通している多孔質材としては、吸音材として使用されるものであれば限定されるものではないが、フェルト、合成繊維からなる不織布(ニードルパンチによる合成繊維の混合品又は合成繊維100 %のフェルトを含む)等の繊維材や連続気泡を有するフォーム材等が挙げられる。
【0063】
上記繊維材としては、例えば、綿、羊毛、木毛、クズ繊維等を熱硬化性樹脂でフェルト状に加工したもの(一般名:レジンフェルト);ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維フェルト、ナイロン系繊維フェルト、ポリエチレン系繊維フェルト、ポリプロピレン系繊維フェルト、アクリル系繊維フェルト、鞘がポリエチレン、ポリプロピレンまたは共重合ポリエステルで芯がポリプロピレンまたはポリエステルなどで構成された芯鞘構造を有する複合繊維フェルト、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等の生分解性繊維フェルト等の合成繊維系フェルト;シリカ-アルミナセラミックスファイバーフェルト、シリカ繊維フェルト、グラスウール、ロックウール、岩綿長繊維等の無機繊維系フェルトが挙げられる。また、上記連続気泡を有するフォーム材としては、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、フェノールフォーム、メラミンフォーム;ニトリルブタジエンラバー、クロロプレンラバー、スチレンラバー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、EPDM等のゴムを連通気泡状に発泡させたもの、又はこれらを発泡後にクラッシング加工等を施しフォ-ムセルに孔を明けて連通気泡化したもの等が挙げられる。これらの中でも、汎用性の観点から、合成繊維系フェルトが好ましく、さらに、耐熱性、難燃性等の観点から、ポリエステル系繊維フェルトがより好ましい。
【0064】
裏面層13として繊維材を用いる場合、上記繊維材を構成する繊維の平均繊維径は、10~30μmの範囲が好ましい。また、上記繊維材の厚さは、5~15mmの範囲が好ましい。さらに、上記繊維材の目付は、50~1500g/mの範囲が好ましく、100~300g/mの範囲がより好ましく、200~280g/mの範囲が特に好ましい。またさらに、上記繊維材の平均見かけ密度は、0.01~0.1g/cmの範囲が好ましい。
【0065】
裏面層13として連続気泡を有するフォーム材を用いる場合、上記フォーム材の厚さは、5~15mmの範囲が好ましい。また、上記フォーム材の目付は、50~4500g/mの範囲が好ましく、100~2000g/mの範囲がより好ましく、100~1000g/mの範囲が特に好ましい。また、上記フォーム材の平均見かけ密度は、0.01~0.3g/cmの範囲が好ましい。
【0066】
裏面層13の繊維の平均繊維径、厚さ、平均みかけ密度、及び目付を、このような構成とすることにより、表皮層11の繊維材により吸収されずに透過した音波を、効率よく裏面層13の繊維材又は連続気泡を有するフォーム材に伝達させ、音波のエネルギーの一部を、骨格部分の周壁との摩擦や粘性抵抗、さらに骨格の振動などによって、熱エネルギーに交換・消耗させることができる。裏面層13において、繊維の平均繊維径、厚さ、平均見かけ密度、及び目付が上記範囲未満であると、吸音率が全体的に低下するおそれがある。一方、繊維の平均繊維径、厚さ、平均見かけ密度、及び目付が上記範囲を超えると、薄膜・軽量化にそぐわない。
【0067】
裏面層13の通気量は、特に限定されるものではないが、表皮層11の通気量と同等以上であることが好ましく、具体的には、5~1000cm/cm・secの範囲であることが好ましく、100~300cm/cm・secの範囲であることがより好ましい。裏面層13の通気量が1000cm/cm・secを超えると、取り扱い性や機械的強度が低下するおそれがある。
【0068】
裏面層13の単位面積流れ抵抗は、0.5×10~3.5×10N・sec/mであることが好ましい。上記単位面積流れ抵抗が、上記の範囲であると、多孔質型吸音機構及び共鳴型吸音機構の効果が十分に発現できるので、中~高周波数帯域の吸音率をある一定のレベルに確保しやすい。
【0069】
裏面層13に用いる合成繊維系フェルトの製造方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の製造方法が挙げられる。具体的は、乾式法(カーディング法又はエアーレイド法)により、上述した合成繊維を解繊混合し、フェルト振分機で層上積層されたフェルト状マットに成型し、フェルトの保形性、層状剥離性を防止するため、ニードルパンチ法により層間縫合を施すことにより、合成繊維系フェルトを得ることができる。ニードルパンチ法以外に、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、水流交絡法等を用いて層間縫合、繊維間結合を行っても良い。
【0070】
裏面層13に用いる連続気泡を有するフォーム材の製造方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の製造方法が挙げられる。例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを、触媒、発泡剤、整泡剤等と混合し、泡化反応と樹脂化反応を同時に行うことによりウレタンフォーム材を得ることができる。また、あらかじめ独立気泡タイプのポリオレフィン系フォーム材を製造し、これに対して、異方向に回転する2本のロール間隙を通過させて圧縮する圧縮処理を行うことにより、気泡膜を破裂させて気泡を連通化させる方法により連続気泡ポリオレフィン系フォーム材を得ることもできる。
【0071】
<防音材>
本発明で使用する防音材10は、裏面層13の一方の面に、表皮層11を、接合層12により部分的に接合して得られる。裏面層13と表皮層11との結合方法としては、各々の層を、塗工された粘着剤又は両面粘着テープ(基材を有しない基材レス両面粘着テープも含む)を用いて、所定の総接合面積率となるように貼り合わせる方法が好ましい。具体的には、まず、表皮層11のいずれか一方の面に、あらかた所定の幅にスリットされた両面粘着テープ(基材を有しない基材レス両面テープも含む)、パンチングされた両面テープ又は離型フィルムにストライプ状やドット状に粘着剤を塗工したシート等から成る接合層12を所定の総接合面積率となるように貼り合わせ、又は転写した後、両層を圧着・接合する。表皮層11と裏面層13との圧着は、常温の環境下において、非加熱で行うことができる。しかしながら、必要に応じて加熱しながら圧着を行うこともできる。
【0072】
本発明で使用する防音材10の厚さは、10~30mmの範囲が好ましい。上記防音材10の厚さが10mm未満であると、吸音率が全体的に低下するおそれがある。一方、上記防音材10の厚さが30mmを超えると、薄型・軽量化にそぐわない。
【0073】
<吸音特性の制御>
本発明で使用する防音材は、接合層の個々の面積を増大させた場合に防音材の吸音ピーク周波数が低周波側へシフトする。また、本発明で使用する防音材は、接合層の個々の面積を低減させた場合に防音材の吸音ピーク周波数が高周波側へシフトする。
【0074】
本発明で使用する防音材は、接合層の個々の面積を増大させた場合に防音材の吸音ピーク周波数より高周波数側の帯域の吸音率は低減し、吸音ピーク周波数より低周波数側の帯域の吸音率は増大する。また、本発明で使用する防音材は、接合層の個々の面積を低減させた場合に防音材の吸音ピーク周波数より高周波数側の帯域の吸音率は増大し、吸音ピーク周波数より低周波数側の帯域の吸音率は低減する。
【0075】
本発明で使用する防音材は、吸音ピーク周波数又は吸音率を低減又は増大させるために、総接合面積率又は構成材料を変更する必要はない。防音材の吸音ピーク周波数をシフトさせる場合、又は防音材の吸音率を変化させる場合、例えば、総接合面積率は、100%未満である所定の値、好ましくは50~95%の範囲から選択される一つの値に固定されてよい。
【0076】
しかしながら、防音材の吸音特性を変化させる機能が実質的に阻害されない場合は、本発明で使用する防音材に構成材料を追加し、又は該防音材の構成材料を変更してもよい。
【0077】
本発明で使用する防音材において、例えば、接合層の面積が異なる複数の防音材を並列させた場合に、面積に応じて各防音材の吸音特性が発現し、融合された吸音特性になることが理解される。そうすると、本発明で使用する防音材は、例えば、接触面に、接合層を部分的に形成すること、複数の接合層からなる領域を全体的に又は部分的に形成すること、又は複数の接合層からなる領域を複数組み合わせて、全体的に又は部分的に形成すること等により、所望の周波数帯域における吸音率を変化させることができる。
【0078】
その結果、本発明で使用する防音材は、低~高周波数帯域において最適な吸音率を防音材の様々な用途に応じて容易に設計し、実現することができる。
【実施例
【0079】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例および比較例の各特性値については、下記の方法により測定した。
【0080】
(1)残響室法吸音率
ISO354に準拠したインパルス応答を用いた残響室法吸音率試験を実施した。残響室法吸音率とは、残響室内の試験体有・無の状態において、放射音源の残響音の減衰曲線から求めた各々の残響時間から算出される吸音率のことで、下記の式(1)により算出する。

α=(55.3V/(c・S))・(1/T-1/T) (1)

なお、Vは残響室の容積[m]であり、本評価試験では8.9mである。cは音速[m/s]である。Sは試験体表面積[m]であり、本評価試験では1m(1m×1m)とした。Tは、試験体設置前の残響室の残響時間であり、Tは、試験体設置後の残響室の残響時間である。算出される吸音率αは、試験体に入射した音のエネルギーに対する、反射しなかった音のエネルギーの割合を示すものであって、αが大きいほど音を吸収しやすい。
【0081】
(2)平均繊維径
顕微鏡で500倍の拡大写真を取り、100本の繊維を任意に選び出し、その平均値を求め、小数点以下1桁を四捨五入し、平均繊維径を求めた。
【0082】
(3)通気量
JIS L 1096に準拠したフラジール形通気性試験機により測定した。フラジール形通気性試験機は、大栄科学精器製作所社製のDAP-360(製品型番)を使用した。測定条件は、差圧125Pa、測定孔径70mmとし、3箇所以上を測定し、その平均値で求めた。
【0083】
(4)表皮層、裏面層の厚さ
JIS-L-1913-B法に準じて測定した。荷重に関しては、表皮層の場合は20kPa、裏面層の場合は0.02kPaの荷重とし、3箇所以上測定し、その平均値で求めた。
【0084】
(5)表皮層、裏面層の目付
JIS-L-1913に準じて測定した。
【0085】
(6)接合層の厚さ
ダイヤルゲージにて、測定子の径10mm、終圧0.8Nで3箇所以上測定し、その平均値で求めた。
【0086】
(7)接合材の貯蔵弾性率(G’)
接合層に用いた材料について、厚さ500μmの試料を準備し、株式会社日立ハイテクサイエンス社製の粘弾性測定装置DMA6100(製品名)を用いて、動的粘弾性を測定し、貯蔵弾性率を求めた。測定条件は、周波数1Hzのせん断ひずみを与えながら、昇温速度5℃/分とし、-80℃から80℃まで温度を変化させ、貯蔵弾性率(G’)を測定し、25℃における値を求めた。
【0087】
<実施例1>
(表皮層)
表皮層として、3μmの平均繊維径、21cm/cm・secの通気量、20g/mの目付、0.33g/cmの平均見かけ密度及び0.06mmの厚さを有するポリエステル繊維材を準備した(大きさ1000mm×1000mm)。このポリエステル繊維材は、繊維が縦方向に配列している。
【0088】
(裏面層)
裏面層として、19μmの平均繊維径、165cm/cm・secの通気量、200g/mの目付、0.02g/cmの平均見かけ密度、1.0×10N・sec/mの単位面積流れ抵抗及び10mmの厚さを有するポリエステル繊維フェルトを準備した(大きさ1000mm×1000mm)。
【0089】
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅10mmの棒状に裁断した。表皮層を広げその表面に、棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペースと交互になるように並行に配置・貼り合せた。なお、その詳細な配置方法については、図2の通りとする。表皮層の左端から、ライン/スペース=10mm/4mmの接合パターンが6本、次いでライン/スペース=10mm/6mmの接合パターンが1本となるようにした接合基本パターンを10回繰り返して接合層を形成した。尚、パターンとは、規則的な配置様式と同意義である。
【0090】
この接合パターンを本願発明では幅方向設定値:[(ライン幅10mm/スペース幅4mm)×6回+(ライン幅10mm/スペース幅6mm)×1回]×10回=1000mmと表現する。
【0091】
次いで、表皮層に配置・貼合された粘着テープの離型紙を剥がした後、その上に、裏面層を広げて載せ、常温環境下で圧着して、両層を接合させることにより防音材を得た(1000mm×1000mm)。なお、残響室法吸音率試験は、1000mm×1000mmのサイズで測定を行った。
【0092】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は表皮層と裏面層が対面している面の面積(1m)を100%とした場合に70%であった。
【0093】
<実施例2>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
【0094】
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅50mmの棒状に裁断した。表皮層を広げその表面に、棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペースと交互になるように並行に配置・貼り合せた。なお、その詳細な配置方法については、図3の通りとする。表皮層の左端から、ライン/スペース=50mm/22mmの接合パターンが5本、次いでライン/スペース=50mm/20mmの接合パターンが2本となるようにした接合基本パターンを2回繰り返して接合層を形成した。
この接合パターンを本願発明では幅方向設定値:[(ライン幅50mm/スペース幅22mm)×5回+(ライン幅50mm/スペース幅20mm)×2回]×2回=1000mmと表現する。
【0095】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は70%であった。
【0096】
<実施例3>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
【0097】
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅100mmの棒状に裁断した。表皮層を広げその表面に、棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペースと交互になるように並行に配置・貼り合せた。なお、その詳細な配置方法については、図4の通りとする。表皮層の左端から、ライン/スペース=100mm/43mmの接合パターンが6本、次いでライン/スペース=100mm/42mmの接合パターンが1本となるようにした接合基本パターンを1回繰り返して接合層を形成した。
この接合パターンを本願発明では幅方向設定値:[(ライン幅100mm/スペース幅43mm)×6回+(ライン幅100mm/スペース幅42mm)×1回]×1回=1000mmと表現する。
【0098】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は70%であった。
【0099】
<実施例4>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
【0100】
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅10mm、250mmの棒状に裁断した。表皮層を広げその表面に、棒状の粘着テープを、各々エリアごとに、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペースと交互になるように並行に配置・貼り合せた。なお、その詳細な配置方法については、図5の通りとする。表皮層を幅方向に4等分し、左端から、1/4エリア(1)、1/4エリア(2)、1/4エリア(3)、1/4エリア(4)とした。まず、1/4エリア(1)において、左端から、ライン/スペース=10mm/15mmの接合基本パターンを10回繰り返して接合層を形成した。次いで,1/4エリア(2)において、左端から、ライン/スペース=250mm/0mmの接合基本パターンを1回繰り返して接合層を形成した。次いで、1/4エリア(3)において、左端から、ライン/スペース=10mm/6mmの接合パターンが2本、次いでライン/スペース=10mm/8mmの接合パターンが1本となるようにした接合基本パターンを5回繰り返して接合層を形成した。最後に、1/4エリア(4)において、左端から、ライン/スペース=10mm/2mmの接合パターンが3本、次いでライン/スペース=10mm/4mmの接合パターンが1本となるようにした接合基本パターンを5回繰り返して接合層を形成した。
【0101】
この接合パターンを本願発明では幅方向設定値:
1/4エリア(1)(ライン幅10mm/スペース幅15mm)×10回=250mm
1/4エリア(2)(ライン幅250mm/スペース幅0mm)×1回=250mm
1/4エリア(3)[(ライン幅10mm/スペース幅6mm)×2回+(ライン幅10mm/スペース幅8mm)×1回]×5回=250mm
1/4エリア(4)[(ライン幅10mm/スペース幅2mm)×3回+(ライン幅10mm/スペース幅4mm)×1回]×5回=250mm
と表現する。
【0102】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は70%であった。
【0103】
<実施例5>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
【0104】
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅10mm、500mmの棒状に裁断した。表皮層を広げその表面に、棒状の粘着テープを、各々エリアごとに、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペースと交互になるように並行に配置・貼り合せた。なお、その詳細な配置方法については、図6の通りとする。表皮層を幅方向に2等分し、左端から、1/2エリア(1)、1/2エリア(2)とした。まず、1/2エリア(1)において、左端から、ライン/スペース=10mm/15mmの接合基本パターンを20回繰り返して接合層を形成した。次いで,1/2エリア(2)において、左端から、ライン/スペース=500mm/0mmの接合基本パターンを1回繰り返して接合層を形成した。
【0105】
この接合パターンを本願発明では幅方向設定値:
1/2エリア(1)(ライン幅10mm/スペース幅15mm)×20回=500mm
1/2エリア(2)(ライン幅500mm/スペース幅0mm)×1回=500mm
と表現する。
【0106】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は70%であった。
【0107】
<実施例6>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
【0108】
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅10mmの棒状に裁断した。表皮層を広げその表面に、棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペースと交互になるように並行に配置・貼り合せた。なお、その詳細な配置方法については、図7の通りとする。表皮層の左端から、ライン/スペース=10mm/10mmの接合基本パターンを50回繰り返して接合層を形成した。
【0109】
この接合パターンを本願発明では幅方向設定値:(ライン幅10mm/スペース幅10mm)×50回=1000mmと表現する。
【0110】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は50%であった。
【0111】
<実施例7>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
【0112】
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅50mmの棒状に裁断した。表皮層を広げその表面に、棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペースと交互になるように並行に配置・貼り合せた。なお、その詳細な配置方法については、図8の通りとする。表皮層の左端から、ライン/スペース=50mm/50mmの接合パターンを10回繰り返して接合層を形成した。
【0113】
この接合パターンを本願発明では幅方向設定値:(ライン幅50mm/スペース幅50mm)×10回=1000mmと表現する。
【0114】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は50%であった。
【0115】
<実施例8>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
【0116】
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅100mmの棒状に裁断した。表皮層を広げその表面に、棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペースと交互になるように並行に配置・貼り合せた。なお、その詳細な配置方法については、図9の通りとする。表皮層の左端から、ライン/スペース=100mm/100mmの接合基本パターンを5回繰り返して接合層を形成した。
【0117】
この接合パターンを本願発明では幅方向設定値:(ライン幅100mm/スペース幅100mm)×5回=1000mmと表現する。
【0118】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は50%であった。
【0119】
<実施例9>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
【0120】
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅10mm、250mmの棒状に裁断した。表皮層を広げその表面に、棒状の粘着テープを、各々エリアごとに、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペースと交互になるように並行に配置・貼り合せた。なお、その詳細な配置方法については、図10の通りとする。表皮層を幅方向に4等分し、左端から、1/4エリア(1)、1/4エリア(2)、1/4エリア(3)、1/4エリア(4)とした。まず、1/4エリア(1)において、左端から、ライン/スペース=0mm/250mmの接合基本パターンを1回繰り返して接合層を形成した。次いで,1/4エリア(2)において、左端から、ライン/スペース=250mm/0mmの接合基本パターンを1回繰り返して接合層を形成した。次いで、1/4エリア(3)において、左端から、ライン/スペース=10mm/15mmの接合基本パターンを10回繰り返して接合層を形成した。最後に、1/4エリア(4)において、左端から、ライン/スペース=10mm/6mmの接合パターンが2本、次いでライン/スペース=10mm/8mmの接合パターンが1本となるようにした接合基本パターンを5回繰り返して接合層を形成した。
【0121】
この接合パターンを本願発明では幅方向設定値:
1/4エリア(1)(ライン幅0mm/スペース幅250mm)×1回=250mm
1/4エリア(2)(ライン幅250mm/スペース幅0mm)×1回=250mm
1/4エリア(3)(ライン幅10mm/スペース幅15mm)×10回=250mm
1/4エリア(4)[(ライン幅10mm/スペース幅6mm)×2回+(ライン幅10mm/スペース幅8mm)×1回]×5回=250mm
と表現する。
【0122】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は50%であった。
【0123】
<実施例10>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
【0124】
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅500mmの棒状に裁断した。表皮層を広げその表面に、棒状の粘着テープを、各々エリアごとに、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペースと交互になるように並行に配置・貼り合せた。なお、その詳細な配置方法については、図11の通りとする。表皮層を幅方向に2等分し、左端から、1/2エリア(1)、1/2エリア(2)とした。まず、1/2エリア(1)において、左端から、ライン/スペース=0mm/500mmの接合基本パターンを1回繰り返して接合層を形成した。次いで,1/2エリア(2)において、左端から、ライン/スペース=500mm/0mmの接合基本パターンを1回繰り返して接合層を形成した。
【0125】
この接合パターンを本願発明では幅方向設定値:
1/2エリア(1)(ライン幅0mm/スペース幅500mm)×1回=500mm
1/2エリア(2)(ライン幅500mm/スペース幅0mm)×1回=500mm
と表現する。
【0126】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は50%であった。
【0127】
<実施例11>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
【0128】
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅10mmの棒状に裁断した。表皮層を広げその表面に、棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペースと交互になるように並行に配置・貼り合せた。なお、その詳細な配置方法については、図12の通りとする。表皮層の左端から、ライン/スペース=10mm/1mmの接合パターンが8本、次いでライン/スペース=10mm/2mmの接合パターンが1本となるようにした接合基本パターンを10回繰り返して接合層を形成した。
【0129】
この接合パターンを本願発明では幅方向設定値:[(ライン幅10mm/スペース幅1mm)×8回+(ライン幅10mm/スペース幅2mm)×1回]×10回=1000mmと表現する。
【0130】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は90%であった。
【0131】
<実施例12>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
【0132】
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅50mmの棒状に裁断した。表皮層を広げその表面に、棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペースと交互になるように並行に配置・貼り合せた。なお、その詳細な配置方法については、図13の通りとする。表皮層の左端から、ライン/スペース=50mm/6mmの接合パターンが5本、次いでライン/スペース=50mm/5mmの接合パターンが4本となるようにした接合基本パターンを2回繰り返して接合層を形成した。
【0133】
この接合パターンを本願発明では幅方向設定値:[(ライン幅50mm/スペース幅6mm)×5回+(ライン幅50mm/スペース幅5mm)×4回]×2回=1000mmと表現する。
【0134】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は90%であった。
【0135】
<実施例13>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
【0136】
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅100mmの棒状に裁断した。表皮層を広げその表面に、棒状の粘着テープを、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペースと交互になるように並行に配置・貼り合せた。なお、その詳細な配置方法については、図14の通りとする。表皮層の左端から、ライン/スペース=100mm/11mmの接合パターンが8本、次いでライン/スペース=100mm/12mmの接合パターンが1本となるようにした接合基本パターンを1回繰り返して接合層を形成した。
【0137】
この接合パターンを本願発明では幅方向設定値:[(ライン幅100mm/スペース幅11mm)×8回+(ライン幅100mm/スペース幅12mm)×1回]×1回=1000mmと表現する。
【0138】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は90%であった。
【0139】
<実施例14>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
【0140】
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅10mm、250mmの棒状に裁断した。表皮層を広げその表面に、棒状の粘着テープを、各々エリアごとに、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペースと交互になるように並行に配置・貼り合せた。なお、その詳細な配置方法については、図15の通りとする。表皮層を幅方向に4等分し、左端から、1/4エリア(1)、1/4エリア(2)、1/4エリア(3)、1/4エリア(4)とした。まず、1/4エリア(1)において、左端から、ライン/スペース=10mm/2mmの接合パターンを3回繰り返して、次いでライン/スペース=10mm/4mmの接合パターンが1本となるようにした接合基本パターンを5回繰り返して接合層を形成した。次いで,1/4エリア(2)において、左端から、ライン/スペース=250mm/0mmの接合基本パターンを1回繰り返して接合層を形成した。次いで、1/4エリア(3)において、左端から、ライン/スペース=10mm/1.8mmの接合パターンを15回繰り返して、次いでライン/スペース=7.5mm/1.5mmの接合パターンを3回繰り返して、次いでライン/スペース=10mm/1.5mmの接合パターンを4回繰り返した接合基本パターンを1回繰り返して接合層を形成した。最後に、1/4エリア(4)において、左端から、ライン/スペース=10mm/0.5mmの接合パターンが10本、次いでライン/スペース=9.5mm/0.6mmの接合パターンが5本、次いでライン/スペース=10mm/0.5mmの接合パターンが9本となるようにした接合基本パターンを1回繰り返して接合層を形成した。
【0141】
この接合パターンを本願発明では幅方向設定値:
1/4エリア(1)[(ライン幅10mm/スペース幅2mm)×3回+(ライン幅10mm/スペース幅4mm)]×5回=250mm
1/4エリア(2)(ライン幅250mm/スペース幅0mm)×1回=250mm
1/4エリア(3)[(ライン幅10mm/スペース幅1.8mm)×15回+(ライン幅7.5mm/スペース幅1.5mm)×3回+(ライン幅10mm/スペース幅1.5mm)×4回]×1回=250mm
1/4エリア(4)[(ライン幅10mm/スペース幅0.5mm)×10回+(ライン幅9.5mm/スペース幅0.6mm)×5回+(ライン幅10mm/スペース幅0.5mm)×9回]×1回=250mm
と表現する。
【0142】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は90%であった。
【0143】
<実施例15>
接合方法を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
【0144】
(接合方法)
ブチルゴム系粘着剤を使用したマクセル社製両面粘着テープ「No.5938スーパーブチルテープ」(商品名、基材:ポリエチレンネット、粘着テープ厚さ:0.5mm、片面セパ、粘着剤の貯蔵弾性率:3.5×10Pa)を幅10mm、500mmの棒状に裁断した。表皮層を広げその表面に、棒状の粘着テープを、各々エリアごとに、ライン(粘着テープ接合部)/スペース(開口部)/ライン/スペースと交互になるように並行に配置・貼り合せた。なお、その詳細な配置方法については、図16の通りとする。表皮層を幅方向に2等分し、左端から、1/2エリア(1)、1/2エリア(2)とした。まず、1/2エリア(1)において、左端から、ライン/スペース=10mm/2.5mmの接合基本パターンを40回繰り返して接合層を形成した。次いで,1/2エリア(2)において、左端から、ライン/スペース=500mm/0mmの接合基本パターンを1回繰り返して接合層を形成した。
【0145】
この接合パターンを本願発明では幅方向設定値:
1/2エリア(1)(ライン幅10mm/スペース幅2.5mm)×40回=500mm、
1/2エリア(2)(ライン幅500mm/スペース幅0mm)×1回=500mm
と表現する。
【0146】
得られた防音材の総厚さは、10.6mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は90%であった。
【0147】
<実施例16>
表皮層を下記とした以外は、実施例1と同様にして防音材を得た。
【0148】
(表皮層)
表皮層として、17μmの平均繊維径、197cm/cm・secの通気量、85g/mの目付、0.14g/cmの平均見かけ密度及び0.6mmの厚さを有するポリエステル繊維材を準備した(大きさ1000mm×1000mm)。このポリエステル繊維材は、繊維がランダムである。
【0149】
得られた防音材の総厚さは、11.1mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は70%であった。
【0150】
<実施例17>
表皮層を下記とした以外は、実施例2と同様にして防音材を得た。
【0151】
(表皮層)
表皮層として、17μmの平均繊維径、197cm/cm・secの通気量、85g/mの目付、0.14g/cmの平均見かけ密度及び0.6mmの厚さを有するポリエステル繊維材を準備した(大きさ1000mm×1000mm)。このポリエステル繊維材は、繊維がランダムである。
【0152】
得られた防音材の総厚さは、11.1mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は70%であった。
【0153】
<実施例18>
表皮層を下記とした以外は、実施例4と同様にして防音材を得た。
【0154】
(表皮層)
表皮層として、17μmの平均繊維径、197cm/cm・secの通気量、85g/mの目付、0.14g/cmの平均見かけ密度及び0.6mmの厚さを有するポリエステル繊維材を準備した(大きさ1000mm×1000mm)。このポリエステル繊維材は、繊維がランダムである。
【0155】
得られた防音材の総厚さは、11.1mmであった。また、1000mm×1000mmの残響室法吸音率の測定試料において、粘着テープにより形成された接合層の総接合面積率は70%であった。
【0156】
接合層の接合パターンを表1~4に示す。
【0157】
得られた防音材の1/3オクターブバンド中心周波数ごとの吸音率を表5~8に示す。実施例1~18の吸音率の値は残響室法吸音率試験を実施した結果に基づく実測値である。
【0158】
【表1】
【0159】
【表2】
【0160】
【表3】
【0161】
【表4】
【0162】
【表5】
【0163】
【表6】
【0164】
【表7】
【0165】
【表8】
【0166】
図17は、実施例1~3で得られた防音材の吸音率を1/3オクターブバンド中心周波数ごとにプロットしたグラフである。図17から明らかなように、接合層のライン幅が10mm→50mm→100mmと増大するに従って、言い換えれば、接合層の面積が100cm→500cm→1000cmと増大するに従って、防音材の吸音ピーク周波数は、より低周波数側へシフトしていることが分かる。また、この場合、同様に接合層のライン幅が増大するに従って、吸音ピーク周波数より高周波数側の帯域で吸音率が低減し、吸音ピーク周波数より低周波数側の帯域で、吸音率が増大していることが分かる。また、接合層のライン幅が増大するに従って、1/3オクターブバンド中心周波数400~5000Hzの平均吸音率が低下する傾向が認められた。
【0167】
図18は、実施例1、4及び5で得られた防音材の吸音率を1/3オクターブバンド中心周波数ごとにプロットしたグラフである。実施例4の防音材の接合層の配置様式は、4等分されたエリア(領域)の内、3つのエリアは複数の接合層からなるエリアであり、一つのエリアが一つの接合層からなる。実施例5の防音材の接合層の配置様式は、2等分されたエリア(領域)の内、一つのエリアは複数の接合層からなるエリアであり、一つのエリアが一つの接合層からなる。実施例4と実施例5の接合層の配置様式を比較した場合、接合層の面積がより大きく、開口部の配置がよりアンバランスなのは実施例5である。防音材の接合層の配置様式において、接合層の個々の面積が小さく、開口部が防音材全体に渡り比較的均一に形成・配置されている実施例1と比較して、実施例4は、1250Hz以上の周波数帯域で吸音率が低減し、1250Hz未満の周波数帯域で吸音率が増大していることが分かる。又、実施例5は、1000Hz以上の周波数帯域で吸音率が低減し、1000Hz未満の周波数帯域で吸音率が増大していることが分かる。その結果、実施例4と実施例5は、実施例1と比較して、防音材の低~高周波数帯域における吸音率がより平準化した。
【0168】
図19は、実施例6~8で得られた防音材の吸音率を1/3オクターブバンド中心周波数ごとにプロットしたグラフである。図19から明らかなように、接合層のライン幅が10mm→50mm→100mmと増大するに従って、言い換えれば、接合層の面積が100cm→500cm→1000cmと増大するに従って、防音材の吸音ピーク周波数は、より低周波数側へシフトしていることが分かる。また、この場合、同様に接合層のライン幅が増大するに従って、吸音ピーク周波数より高周波数側の帯域で吸音率が低減し、吸音ピーク周波数より低周波数側の帯域で、吸音率が増大していることが分かる。また、接合層のライン幅が増大するに従って、1/3オクターブバンド中心周波数400~5000Hzの平均吸音率が低下する傾向が認められた。
【0169】
図20は、実施例6、9及び10で得られた防音材の吸音率を1/3オクターブバンド中心周波数ごとにプロットしたグラフである。実施例9の防音材の接合層の配置様式は、4等分されたエリア(領域)の内、2つのエリアは複数の接合層からなるエリアであり、一つのエリアが一つの接合層からなり、一つのエリアは接合層がない。実施例10の防音材の接合層の配置様式は、2等分されたエリア(領域)の内、一つのエリアは一つの接合層からなるエリアであり、一つのエリアは接合層がない。実施例9と実施例10の接合層の配置様式を比較した場合、接合層の面積がより大きく、開口部の配置がよりアンバランスなのは実施例10である。防音材の接合層の配置様式において、接合層の個々の面積が小さく、開口部が防音材全体に渡り比較的均一に形成・配置されている実施例6と比較して、実施例9は、1600Hz以上の周波数帯域で吸音率が低減し、1250Hz以下の周波数帯域で吸音率が増大していることが分かる。又、実施例10は、1250Hz以上の周波数帯域で吸音率が低減し、1000Hz以下の周波数帯域で吸音率が増大していることが分かる。その結果、実施例9と実施例10は、実施例6と比較して、防音材の低~高周波数帯域における吸音率がより平準化した。
【0170】
図21は、実施例11~13で得られた防音材の吸音率を1/3オクターブバンド中心周波数ごとにプロットしたグラフである。図21から明らかなように、接合層のライン幅が10mm→50mm→100mmと増大するに従って、言い換えれば、接合層の面積が100cm→500cm→1000cmと増大するに従って、防音材の吸音ピーク周波数は、より低周波数側へシフトしていることが分かる。また、この場合、同様に接合層のライン幅が増大するに従って、吸音ピーク周波数より高周波数側の帯域で吸音率が低減し、吸音ピーク周波数より低周波数側の帯域で、吸音率が増大していることが分かる。また、接合層のライン幅が増大するに従って、1/3オクターブバンド中心周波数400~5000Hzの平均吸音率が低下する傾向が認められた。
【0171】
図22は、実施例11、14及び15で得られた防音材の吸音率を1/3オクターブバンド中心周波数ごとにプロットしたグラフである。実施例14の防音材の接合層の配置様式は、4等分されたエリア(領域)の内、3つのエリアは複数の接合層からなるエリアであり、一つのエリアが一つの接合層からなる。実施例15の防音材の接合層の配置様式は、2等分されたエリア(領域)の内、一つのエリアは複数の接合層からなるエリアであり、一つのエリアは一つの接合層からなる。実施例14と実施例15の接合層の配置様式を比較した場合、接合層の面積がより大きく、開口部の配置がよりアンバランスなのは実施例15である。防音材の接合層の配置様式において、接合層の個々の面積が小さく、開口部が防音材全体に渡り比較的均一に形成・配置されている実施例11と比較して、実施例14は、1000Hz以上の周波数帯域で吸音率が低減し、1000Hz未満の周波数帯域で吸音率が増大していることが分かる。又、実施例15は、1000Hz以上の周波数帯域で吸音率が低減し、800Hz以下の周波数帯域で吸音率が増大していることが分かる。その結果、実施例14と実施例15は、実施例11と比較して、防音材の低~高周波数帯域における吸音率がより平準化した。
【0172】
図23は、実施例16、17で得られた防音材の吸音率を1/3オクターブバンド中心周波数ごとにプロットしたグラフである。実施例17の防音材では、接合層のライン幅が50mm(接合層の面積500cm)であり、実施例16の10mm(接合層の面積100cm)と比較して増大している。その結果、吸音ピーク周波数が実施例16よりも低周波数側へシフトした。また、この場合、同様に接合層のライン幅が増大するに従って、吸音ピーク周波数より高周波数側の帯域で吸音率が低下し、吸音ピーク周波数より低周波数側の帯域で、吸音率が増大していることが分かる。また、接合層のライン幅が増大するに従って、1/3オクターブバンド中心周波数400~5000Hzの平均吸音率が低下する傾向が認められた。なお、表皮材の平均繊維径が3μmである実施例1、2と比較して、表皮材の平均繊維径が17μmである実施例16、17は、接合層の配置様式が同じであるが、吸音率は全体的に低いことが分かる。
【0173】
図24は、実施例16、18で得られた防音材の吸音率を1/3オクターブバンド中心周波数ごとにプロットしたグラフである。実施例18の防音材の接合層の配置様式は、4等分されたエリア(領域)の内、3つのエリアは複数の接合層からなるエリアであり、一つのエリアが一つの接合層からなる。実施例16と実施例18の接合層の配置様式を比較した場合、接合層の面積がより大きく、開口部の配置がよりアンバランスなのは実施例18である。防音材の接合層の配置様式において、接合層の個々の面積が小さく、開口部が防音材全体に渡り比較的均一に形成・配置されている実施例16と比較して、実施例18は、1600Hz以上の周波数帯域で吸音率が低減し、1250Hz以下の周波数帯域で吸音率が増大していることが分かる。その結果、実施例18は、実施例16と比較して、防音材の低~高周波数帯域における吸音率がより平準化した。なお、表皮材の平均繊維径が3μmである実施例1、4と比較して、表皮材の平均繊維径が17μmである実施例16、18は、接合層の配置様式が同じであるが、吸音率は全体的に低いことが分かる。
【符号の説明】
【0174】
10…防音材
11…表皮層
12…接合層
13…裏面層
14…通気性の開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図22
図23
図24