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特許7538721抗インターロイキン17A抗体、医薬組成物、およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】抗インターロイキン17A抗体、医薬組成物、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/24 20060101AFI20240815BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240815BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240815BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20240815BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240815BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240815BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240815BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240815BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240815BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240815BHJP
   C12N 5/12 20060101ALI20240815BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240815BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240815BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
A61K39/395 N
A61K39/395 Y
A61K47/68
A61K49/00
A61K51/10 200
A61P17/06
A61P19/02
A61P25/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 105
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12P21/08
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020566731
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 CN2019088344
(87)【国際公開番号】W WO2019228266
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】201810539405.0
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CCTCC  CCTCC C2017165
【微生物の受託番号】CCTCC  CCTCC C2017102
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520404676
【氏名又は名称】アケソ バイオファーマ カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】パイヨン リー
(72)【発明者】
【氏名】ユイ シア
(72)【発明者】
【氏名】チョンミン マクスウエル ワン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ポン
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/082193(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0327571(US,A1)
【文献】特表2017-508463(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107488227(CN,A)
【文献】国際公開第2014/001368(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/221174(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
A61K
A61P
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-17Aに結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合部分であって、
モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の重鎖可変領域は、それぞれ配列番号:31~33に記載のアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む、および
モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号:34~36に記載のアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む、または
モノクローナル抗体の重鎖可変領域またはその抗原結合断片は、それぞれ配列番号:37~39に記載のアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む、および
モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号:40~42に記載のアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む、
モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の前記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号:31~33に記載のアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む、および前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の前記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号:34~36に記載のアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の前記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号:37~39に記載のアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む、および前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片の前記軽鎖可変領域はそれぞれ配列番号:40~42に記載のアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む、
請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号:2、配列番号:6、配列番号:10、および配列番号:14から選択される、および前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号:4、配列番号:8、および配列番号:12から選択される、または
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号:16、配列番号:20、配列番号:24、および配列番号28から選択される、および前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号:18、配列番号:22、配列番号:26、および配列番号:30から選択される、
請求項1~3のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域は、以下の(1)~(8):
(1) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(2) 配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(3) 配列番号:10に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:12に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(4) 配列番号:14に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:12に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(5) 配列番号:16に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:18に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(6) 配列番号:20に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:22に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(7) 配列番号:24に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:26に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(8) 配列番号:28に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:30に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
のいずれか一つから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、相補性決定領域断片、単鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、および二重特異性抗体から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、100nM未満のEC50でヒトIL-17Aに結合する、請求項1~6のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片はマウス以外の種の非CDR領域を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、受託番号CCTCC NO: C2017102で中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託された、ハイブリドーマ細胞株LT006によって産生されるモノクローナル抗体である;または
前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、受託番号CCTCC NO: C2017165で中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託された、ハイブリドーマ細胞株LT007によって産生されるモノクローナル抗体である、
請求項1~8のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片の前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域をコードする核酸を含む、単離された核酸分子。
【請求項11】
前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域をコードする前記核酸は、以下の(1)~(8):
(1) 配列番号:1、配列番号:3;
(2) 配列番号:5、配列番号:7;
(3) 配列番号:9、配列番号:11;
(4) 配列番号:13、配列番号:11;
(5) 配列番号:15、配列番号:17;
(6) 配列番号:19、配列番号:21;
(7) 配列番号:23、配列番号:25;および
(8) 配列番号:27、配列番号:29
のいずれか一つから選択される、請求項10に記載の単離された核酸分子。
【請求項12】
請求項10または11に記載の単離された核酸分子を含む組換えベクター。
【請求項13】
請求項12に記載の前記組換えベクターを含む宿主細胞。
【請求項14】
請求項13に記載の宿主細胞を適切な条件下で培養すること、および前記モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を細胞培養物から単離することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を製造する方法。
【請求項15】
受託番号CCTCC NO: C2017102で中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託された、ハイブリドーマ細胞株LT006;および
受託番号CCTCC NO: C2017165で中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託された、ハイブリドーマ細胞株LT007
から選択される、ハイブリドーマ細胞株。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片とコンジュゲート部分とを含み、当該コンジュゲート部分は検出可能な標識である、コンジュゲート。
【請求項17】
請求項1~9のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片または請求項16に記載のコンジュゲートを含むキット。
【請求項18】
IL-17Aの定性的または定量的な検出のためのキットの製造における、請求項1~9のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片、または請求項16に記載のコンジュゲートの使用。
【請求項19】
(1)請求項1~9のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片または請求項16に記載のコンジュゲートと、(2)薬学的に許容される担体または賦形剤と、を含む医薬組成物。
【請求項20】
腫瘍または自己免疫疾患の予防および/または治療のための薬剤の製造における、または自己免疫疾患の診断のための薬剤の製造における、請求項1~9のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片または請求項16に記載のコンジュゲートの使用。
【請求項21】
IL-17AのIL17RAへの結合を遮断するための薬剤、IL-17Aの活性またはレベルを制御するための薬剤、または細胞内のIL-6の発現を阻害するための薬剤の製造における、請求項1~9のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片、または請求項16に記載のコンジュゲートの使用。
【請求項22】
IL-17AのIL17RAへの結合を遮断するための方法、IL-17Aの活性またはレベルを制御するための方法、または線維芽細胞内のIL-6の発現を阻害するための方法から選択される方法であって、有効量の請求項1~9のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片または請求項16に記載のコンジュゲートを細胞または必要とする対象に投与することを含む、in vitroの方法。
【請求項23】
有効量の請求項1~9のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片または請求項16に記載のコンジュゲートを含む、腫瘍または自己免疫疾患の治療および/または予防のための医薬組成物。
【請求項24】
腫瘍または自己免疫疾患の予防および/または治療のため、または自己免疫疾患の診断のために使用される、請求項1~9のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項25】
IL-17AのIL17RAへの結合の遮断、IL-17Aの活性またはレベルの制御、または細胞内のIL-6の発現の阻害のために使用される、請求項1~9のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項26】
有効量の請求項1~9のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片または請求項16に記載のコンジュゲートを含む、自己免疫疾患の診断のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子免疫学の分野に属し、抗インターロイキン17A抗体、その医薬組成物およびその使用に関する。具体的には、本発明は、抗インターロイキン17Aモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン17A(IL-17AまたはIL 17Aと略される)は、6つのメンバー、すなわちIL-17A(IL-17Aは最初に見出され、IL-17とも呼ばれる)、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E(IL-25とも命名される)、およびIL-17F(Shi Peiqing et al., Chinese Journal of Cell Biology 33: 345-357 (2011))を有するIL-17サイトカインファミリーのメンバーである。IL-17FはIL-17Aと約50%の相同性を有し、それらのコーディング遺伝子は染色体6p12(Gaffen et al., NAT Rev Immunol 9:556-67 (2009))の同一セグメントに位置する。IL-17AおよびIL-17Fはホモ二量体、たとえばIL-17A/IL-17AおよびIL-17F/IL-17F、ならびにヘテロ二量体IL-17A/IL-17Fの形で存在しうる。IL-17AおよびIL-17Fは、受容体に結合することによって生物学的効果を示す(Wright et al., J Immunol 181: 2799-805 (2008))。
【0003】
IL-17受容体(IL-17R)ファミリーは5つのメンバー、すなわちIL-17RA、IL-17RB、IL-17RC、IL-17RD、およびIL-17REからなる。IL-17受容体ファミリーのメンバーは、様々な受容体複合体を形成することができる。中でもIL-17RAは、このファミリーでこれまでに見出された最大の分子であり、少なくとも4つのリガンドのシグナルを伝達する共通サブユニットであり、主要な生物学的効果を示す(Gaffen et al., NAT Rev Immunol 9: 556-67 (2009))。IL-17RAおよびIL-17RC複合体は、IL-17AおよびIL-17Fに対する細胞応答を媒介する(Toy et al., J Immunol 177: 36-9 (2006))。
【0004】
自己免疫炎症反応において、IL-17AはIL-17Fよりもより重要であり、主な理由は、IL17RAはIL-17Aに対して、IL-17Fに対する親和性と比較して100倍大きな親和性を有すること(Ely et al., NAT Immunol 10 1245-51 (2009))、細胞のIL-17Aに対する応答は、細胞のIL-17Fに対する応答と比較して10倍強いこと(Dubin et al., Immunity 30: 9-11 (2009))である。抗IL-17A抗体または抗IL-17受容体抗体は、IL-17Aのその受容体に対する結合を遮断し、それによってIL-17Aの生物活性を遮断するために使用することができる。
【0005】
IL-17Aはいくつかの自己免疫疾患(たとえば、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス等)において重要な役割を果たす。抗IL-17Aモノクローナル抗体セクキヌマブは、中等症から重症の尋常性乾癬、乾癬性関節炎、および強直性脊椎炎の治療薬として、食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)によって承認されている。
【0006】
乾癬(psoraとしても知られている)は、慢性自己免疫性皮膚疾患である。その皮膚の組織学的特徴は、表皮ケラチノサイトの過剰増殖、血管新生、ならびに樹状細胞、マクロファージ、好中球、およびT細胞浸潤である(Nestle et al., N Engl J Med, 361: 496-509 (2009))。乾癬は、様々な症状を有し、中でも尋常性乾癬は最も一般的なタイプであり、乾癬に罹患しているすべての患者の90%を超える割合を占める。乾癬性関節炎(PsA)は特殊なタイプの乾癬であり、乾癬発疹(psoriasis rash)ならびに関節および周りの軟組織における疼痛、腫脹、圧痛、こわばり感、およびジスキネジアを引き起こす。一部の患者は、長期の経過、容易な再発、および後期の関節硬直(joint stiffness)を伴う仙腸骨炎および(または)脊椎炎に罹患しており、障害につながる可能性がある。乾癬の存在は乾癬性関節炎と他の炎症性関節疾患の重要な差異であり、皮膚病変の重症度は関節の炎症の程度とは直接関係していない(Tan Zhen et al., Chinese Journal of Rheumatology 20:354-357(2016))。IL-17Aの発現は乾癬の病原性皮膚組織(pathogenic skin tissue)で有意に増加しており、この増加は乾癬の疾患活動性と密接に関連している(Johansen et al., Brit J Dermatol, 160:319-24 (2009); Lowes et al. J Invest Dermatol 128:1207-11 (2008))。乾癬患者の中で、抗IL-17Aモノクローナル抗体セクキヌマブは優れた有効性を示しており、乾癬患者の疾患活動性を有意に軽減し、乾癬プラークの面積を減らすことができる(Langley et al., N Engl J Med, 371:326-38(2014));セクキヌマブはまた、関節炎の症状を有意に軽減し、乾癬性関節炎の患者の関節機能を有意に改善することができる(Gottlieb et al., J Drugs Dermatol, 14821-33(2015))。セクキヌマブは、中等症から重症の尋常性乾癬および乾癬性関節炎の治療薬としてFDAによって承認されている。
【0007】
関節リウマチ(RA)は主に、炎症性関節滑膜線維芽細胞の増殖、関節および軟骨の損傷、CD4+ヘルパーT細胞の浸潤、および自己抗体を産生する形質細胞を特徴とする。IL-17Aは、関節リウマチの炎症および骨損傷の両方を引き起こす可能性がある。IL-17Aは、健康なヒトや変形性関節症の患者と比較して、関節リウマチ患者のリウマチ滑膜単球で高度に発現しており(Sarkar et al., ”Clinical and experimental immunology.” 177:652-61(2014))、細胞学的研究はIL-17Aが骨吸収およびコラーゲン破壊を刺激することができることを示唆する(Kitami et al., Biochimie. 92:398-404(2010))。IL-17Aは、軟骨、滑膜細胞、マクロファージ、および骨芽細胞を誘導して、TNFa、IL-1b、IL-6等の炎症誘発性サイトカインを分泌し、生物学的効果を発揮する。これらの炎症誘発性サイトカインは、関節リウマチの突然の発症を引き起こし、IL-17A誘導IL-6を介してTH17細胞の数を維持できるため、正のフィードバックを形成し、相乗的に作用して炎症効果を増幅し、慢性炎症状態を確立する(Ogura et al., Immunity 29: 628-36(2008))。IL-17Aを拮抗すると、関節リウマチの症状を効果的に軽減できる。コラーゲン誘発関節炎のマウスモデルでは、IL-17Aまたはその受容体を中和することで、関節リウマチの症状を消散できる(Chao et al., Autoimmunity. 2011 May;44(3):243-52); IL-17欠損症は、コラーゲン誘発関節炎から宿主マウスを保護することができるが(Nakae et al., J Immunol, 171:6173-7(2003))、IL-17Aの過剰発現はそのような状態を悪化させる可能性がある(Lubberts et al., Inflamm Res 51:102-4(2002))。
【0008】
強直性脊椎炎(AS)は慢性自己免疫疾患である。ASの初期の病理学的特徴は、仙腸関節、腱、および靭帯の骨付着点での急性または慢性の炎症であり、後の段階で椎間板炎および椎間関節炎に発展する可能性がある;および、ASのすべての患者で骨密度が低下する現象がある。研究によると、末梢血でIL-17Aを分泌するTh17細胞の数と、AS患者のIL-17Aの濃度の両方が、健康なヒトよりも有意に高いことが示されている(Gracey et al., Arthritis Rheumatol. 68:679-89.(2016))。IL-17Aは、マクロファージ、樹状細胞、内皮細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、および骨芽細胞等の様々な細胞を活性化することができ、これらは多数の炎症性破壊因子を産生する可能性がある(Ogura et al., Immunity 29:628-36(2008))。骨組織では、IL-17Aは、骨芽細胞に核因子-κBリガンド(RANKL)の受容体活性化因子を発現させ、破骨細胞を活性化し、骨吸収を誘発し、累積的に骨量減少を悪化させ、直接的または間接的に骨破壊を引き起こす(Gaffen, Curr Rheumatol Rep 11:365-370(2009))。AS患者の中で、抗IL-17Aモノクローナル抗体セクキヌマブは優れた有効性を示しており、強直性脊椎炎の症状および徴候を有意に軽減することができる(Gaffen, Curr Rheumatol Rep 11:365-370(2009))。これらの結果に基づいて、セクキヌマブは強直性脊椎炎の治療薬としてFDAによって承認されている。
【0009】
全身性エリテマトーデス(SLE)は、複数のシステムに影響を与える自己免疫疾患である。具体的には、自己抗原に対する抗体が患者の体に現れ、様々な組織や臓器を直接的または間接的に攻撃する。最も一般的に影響を受ける領域は、皮膚、関節、および腎臓を含む。研究は、IL-17AはSLEにおいて役割を果たすことが示している。SLE患者の末梢血でIL-17Aを産生する細胞の比率が増加し、患者の血清中のIL-17Aのレベルが異常に高くなっている(Chen et al., J Clin Immunol, 30:221-5 (2010))。腎障害を伴うSLE患者の末梢血単核細胞は、IL-17とともに培養すると、より多くの総IgG、抗dsDNA IgG、およびIL-6を産生する可能性があり、IL-17がB細胞の活性化に関与できることを示している(Dong Et al., Chin Med J (Engl), 116:543-8(2003))。IL-17AがBAFF(B細胞活性化因子)と協働してB細胞をアポトーシスから保護し、それによって自己抗体を産生する細胞数を増やすことができることも最近見出された(Onishi et al., Immunology 129:311-21(2010))
【発明の概要】
【0010】
徹底的な研究と創造的な努力の後、本発明者らは、哺乳動物細胞発現システムを使用して、マウスを免疫するための抗原として組換えIL-17A(24-155)を発現させ、マウス脾臓細胞と骨髄腫細胞の融合によって多数のハイブリドーマ細胞サンプルを得た。本発明者らは、多数のサンプルをスクリーニングすることにより、以下の2つのハイブリドーマ細胞株を別々に入手した:
2017年9月12日に受託番号CCTCC NO: C2017102で中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託された、ハイブリドーマ細胞株LT006(IL-17A-13E9);および
2017年9月12日に受託番号CCTCC NO: C2017165で中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託された、ハイブリドーマ細胞株LT007(IL-17A-2G2)。
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、以下を見出した:
ハイブリドーマ細胞株LT006は、IL-17Aに特異的に結合する特異的モノクローナル抗体(13E9と命名)を分泌および産生することができ、該モノクローナル抗体はIL-17AのIL-17RAへの結合を非常に効果的に遮断することができること;
ハイブリドーマ細胞株LT007は、IL-17Aに特異的に結合する特異的モノクローナル抗体(2G2と命名)を分泌および産生することができ、該モノクローナル抗体はIL-17AのIL-17RAへの結合を非常に効果的に遮断することができること;
さらに、本発明者らは、抗IL-17Aヒト化抗体(それぞれ、13E9 H1L1、13E9 H2L2、13E9 H3L2;および2G2 H1L1、2G2 H2L2、2G2 H3L3と命名)を創造的に調製し、これらはすべてヒトIL-17Aに効果的に結合し、IL-17AのIL-17RAへの結合を遮断し、およびIL-17A受容体の下流シグナル伝達経路の活性化を阻害することができること;
本発明の抗体は、自己免疫疾患、たとえば乾癬、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、および全身性エリテマトーデスの予防および/または治療のための薬剤を作り出す可能性がある。
【0012】
したがって、以下の発明が提供される:
本発明の一つの態様は、
モノクローナル抗体の重鎖可変領域(VH)は、それぞれ配列番号:31~33に記載のアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3、またはそれぞれ配列番号:37~39に記載のアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む、および
モノクローナル抗体の軽鎖可変領域(VL)は、それぞれ配列番号:34~36に記載のアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3、または、それぞれ配列番号:40~42に記載のアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む、
モノクローナル抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0013】
軽鎖および重鎖の可変領域が抗原の結合を決定する;各鎖の可変領域は、3つの超可変領域、すなわち相補性決定領域(CDR)(重鎖(H)のCDRは、HCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、軽鎖(L)のCDRは、LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む;Kabat et al.によって定義されている、Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition(1991), Volumes 1-3, NIH Publication 91-3242, Bethesda Mdを参照のこと)を含む。
【0014】
上記(1)から(2)のモノクローナル抗体のCDR領域のアミノ酸配列は、当業者に周知の技術的手段、たとえばVBASE2データベースによって分析される:
本発明の抗体13E9、13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2は、同一のCDRを有する:
重鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は次の通りである:
HCDR1: SYSFTSDYA (配列番号:31)、
HCDR2: ITYSGVT (配列番号:32)、
HCDR3: ARADYDSYYTMDY (配列番号:33);および
軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は次の通りである:
LCDR1: QSLVHSNGNTY (配列番号:34)、
LCDR2: KVS (配列番号:35)、
LCDR3: SQSTHFWT (配列番号:36)。
【0015】
本発明の抗体2G2、2G2 H1L1、2G2 H2L2、および2G2 H3L3は、同一のCDRを有する:
重鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は次の通りである:
HCDR1: SEVFPIAD (配列番号:37)、
HCDR2: ILPSFGRT (配列番号:38)、
HCDR3: ARGNYGFAY (配列番号:39);および
軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は次の通りである:
LCDR1: QSLLNSDGKTY (配列番号:40)、
LCDR2: LVS (配列番号:41)、
LCDR3: WQGSHFPQT (配列番号: 42)。
【0016】
本発明の一つまたは複数の実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、ここで
モノクローナル抗体の重鎖可変領域(VH)は、それぞれ配列番号:31~33に記載のアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む、および
モノクローナル抗体の軽鎖可変領域(VL)は、それぞれ配列番号:34~36に記載のアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む。
【0017】
本発明の一つまたは複数の実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、ここで
モノクローナル抗体の重鎖可変領域(VH)は、それぞれ配列番号:37~39に記載のアミノ酸配列を有するHCDR1~HCDR3を含む、およびそれぞれ配列番号:40~42に記載のアミノ酸配列を有するLCDR1~LCDR3を含む。
【0018】
本発明の一つまたは複数の実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、ここで
重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号:2、配列番号:6、配列番号:10、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:20、配列番号:24、および配列番号28から選択される、および
軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号:4、配列番号:8、配列番号:12、配列番号:18、配列番号:22、配列番号:26、および配列番号:30から選択される。
【0019】
本発明の一つまたは複数の実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、
重鎖可変領域のアミノ酸配列は、
配列番号:2、配列番号:6、配列番号:10、および配列番号:14から選択される、および軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号:4、配列番号:8、および配列番号:12から選択される、または
重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号:16、配列番号:20、配列番号:24、および配列番号28から選択される、および軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号:18、配列番号:22、配列番号:26、および配列番号:30から選択される。
【0020】
本発明の一つまたは複数の実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、ここで
重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、以下の(1)~(8):
(1) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(2) 配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(3) 配列番号:10に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:12に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(4) 配列番号:14に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:12に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(5) 配列番号:16に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:18に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(6) 配列番号:20に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:22に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(7) 配列番号:24に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:26に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
(8) 配列番号:28に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号:30に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;
のいずれか一つから選択される。
【0021】
本発明の一つまたは複数の実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、ここで該モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域断片、単鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、および二重特異性抗体から選択される。
【0022】
本発明の一つまたは複数の実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、ここで該モノクローナル抗体は、約100 nM未満、たとえば約10 nM、5 nM、4 nM、3 nM、2.5 nM、2 nM以下のEC50でIL-17Aタンパク質に結合する;好ましくはEC50は競合ELISAによって測定される。
【0023】
本発明の一部の実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、ここで該モノクローナル抗体は、約10-5 M未満、たとえば約10-6 M、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M以下のKDでIL-17Aタンパク質に結合する;好ましくはKDはFortebio分子相互作用装置によって測定される。
【0024】
本発明の一部の実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、ここで該モノクローナル抗体は、約100 nM未満、たとえば約10 nM、1 nM、0.9 nM、0.8 nM、0.7 nM、0.6 nM、0.5 nM、0.4 nM、0.3 nM、0.2 nM、0.1 nM以下のEC50でIL-17Aタンパク質に結合する;具体的には、EC50は間接ELISA法によって測定される。
【0025】
本発明の一つまたは複数の実施形態では、モノクローナル抗体は、非CDR領域を含む、および該非CDR領域は、マウス以外の種、たとえばヒト抗体由来である。
【0026】
本発明の一部の実施形態では、免疫グロブリンの定常領域はヒト化されている、たとえば、重鎖定常領域はIgγ-1鎖C領域(受託番号:P01857)を使用する;および軽鎖定常領域はIgΚ鎖C領域(受託番号:P01834)を使用する。
【0027】
本発明の一つまたは複数の実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、ここで
モノクローナル抗体は、受託番号CCTCC NO: C2017102で中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託された、ハイブリドーマ細胞株LT006によって産生される;またはモノクローナル抗体は、受託番号CCTCC NO: C2017165で中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託された、ハイブリドーマ細胞株LT007によって産生される。
【0028】
本発明の一つまたは複数の実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を使用して、腫瘍または自己免疫疾患を予防および/または治療する、または自己免疫疾患を診断する;好ましくは、自己免疫疾患は、乾癬、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、および全身性エリテマトーデスから選択される;好ましくは、乾癬は中等症から重症の尋常性乾癬である。
【0029】
本発明の一つまたは複数の実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を使用して:
IL-17AのIL-17RAへの結合を遮断する、
IL-17A活性またはレベルを制御(たとえば、下方制御)する、または
細胞内のIL-6発現を阻害する。
【0030】
本発明の別の態様は、本発明に記載するモノクローナル抗体のいずれか一つの重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子に関する。
【0031】
本発明の一つまたは複数の実施形態では、単離された核酸分子は、以下の(1)~(8):
(1) 配列番号:1、配列番号:3;
(2) 配列番号:5、配列番号:7;
(3) 配列番号:9、配列番号:11;
(4) 配列番号:13、配列番号:11;
(5) 配列番号:15、配列番号:17;
(6) 配列番号:19、配列番号:21;
(7) 配列番号:23、配列番号:25;および
(8) 配列番号:27、配列番号:29
のいずれか一つから選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0032】
本発明の別の態様は、本発明の単離された核酸分子を含む組換えベクターに関する。好ましくは、組換えベクターは、組換え原核生物発現ベクターまたは組換え真核生物発現ベクター等の組換え発現ベクターである。
【0033】
本発明の別の態様は、本発明の組換えベクターを含む宿主細胞に関する。
【0034】
本発明の別の態様は、本発明の宿主細胞を適切な条件下で培養する工程、およびモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を細胞培養物から単離する工程を含む、本発明に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片のいずれか一つを製造する方法に関する。
【0035】
本発明の別の態様は、
受託番号CCTCC NO: C2017102で中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託された、ハイブリドーマ細胞株LT006;および
受託番号CCTCC NO: C2017165で中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託された、ハイブリドーマ細胞株LT007
から選択される。
【0036】
本発明の別の態様は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片およびコンジュゲート部分を含むコンジュゲートに関し、ここでモノクローナル抗体は本発明に記載されるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片のいずれか一つであり、コンジュゲート部分は検出可能な標識である;好ましくは、該検出可能な標識は、放射性同位体、蛍光物質等の発光物質、着色物質、または酵素である。
【0037】
本発明の別の態様は、本発明に記載されるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片のいずれか一つを含む、または本発明のコンジュゲートを含むキットに関する;
好ましくは、該キットはモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を特異的に認識する第二の抗体さらに含む;任意選択で第二の抗体は検出可能な標識をさらに含む;好ましくは、検出可能な標識は、放射性同位体、蛍光物質等の発光物質、着色物質、または酵素である。
【0038】
本発明の別の態様は、IL-17Aの定性的または定量的な検出のためのキットの製造における本発明に記載されるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片のいずれか一つ、または本発明のコンジュゲートの使用に関する。定性的検出は、試験されるサンプル中のIL-17Aの存在の検出を指し、定量的検出は、試験されるサンプル中のIL-17Aの濃度または量の検出を指す。
【0039】
本発明の別の態様は、本発明に記載されるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片のいずれか一つ、または本発明のコンジュゲートを含む医薬組成物に関する;任意選択で、医薬組成物は薬学的に許容される担体、または賦形剤をさらに含む。
【0040】
本発明の別の態様は、自己免疫疾患の予防および/または治療のための薬剤の製造、または自己免疫疾患の診断のための薬剤の製造における、本発明に記載されるモノクローナル抗体またはその抗原結合断片のいずれか一つ、または本発明のコンジュゲートに関する;好ましくは、自己免疫疾患は乾癬、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、および全身性エリテマトーデスから選択される;好ましくは、乾癬は中等症から重症の尋常性乾癬である。
【0041】
特に、本発明者らは、動物実験(実施例11)から、13E9H3L2は乾癬に罹患しているC57BL/6マウスモデルの表皮の厚さの増加を効果的に阻害できることを見出した。これは、抗体医薬13E9H3L2がIL-17Aおよび皮下注射によって引き起こされた表皮の厚さの増加を有意に阻害できること、同じ標的に対して市販されているモノクローナル抗体薬セクキヌマブと同等の有効性を有することを示している。
【0042】
本発明の一部の実施形態では、自己免疫疾患(たとえば、中等症から重症の尋常性乾癬等の乾癬、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、または全身性エリテマトーデス)はIL-17Aの発現レベルの上昇によって引き起こされる。本明細書に記載の発現レベルの上昇は、健常者の発現レベルより高く、発症レベルに達している発現レベルを指す。
【0043】
本発明の別の実施形態は、以下の薬剤の調製における、本発明に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片のいずれか一つまたは本発明のコンジュゲートの使用に関する:
IL-17AのIL-17RAへの結合を遮断する薬剤、
IL-17A活性またはレベルを制御(たとえば、下方制御)する薬剤、または
細胞内のIL-6発現を阻害する薬剤。
【0044】
本発明の別の態様は、細胞または必要とする対象に有効量の本発明に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片のいずれか一つまたは本発明のコンジュゲートを投与する工程を含むin vivoまたはin vitroの方法に関し、該方法は以下から選択される:
IL-17AのIL-17RAへの結合を遮断する方法、
IL-17A活性またはレベルを制御(たとえば、下方制御)する方法、または
線維芽細胞内のIL-6発現を阻害する方法。
【0045】
本発明の特定の実施形態では、in vitro法は非治療的(non-therapeutic)および/または非診断的(non-diagnostic)である。
【0046】
インターロイキン6(IL-6またはIL6と略される)は線維芽細胞、単核球/マクロファージ、Tリンパ球、Bリンパ球、上皮細胞、ケラチノサイト、および様々な腫瘍細胞によって産生される。インターロイキン6は免疫応答を制御する重要な因子であり、IL-6およびIL-1は相乗的にT細胞増殖を促進し、B細胞分化を刺激し、身体の炎症応答に関与する(Schoenborn et al. Advances in Immunology 96: 41-101 (2007))。本発明のin vitro実験(実施例10)は、抗IL-17A抗体は有意にIL-6の分泌を減少させ、IL-6が媒介する免疫応答を阻害することを示す。
【0047】
本発明の別の態様は、腫瘍または自己免疫疾患を治療および/または予防する方法に関し、該方法は必要とする対象に有効量の本発明に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片のいずれか一つまたは本発明のコンジュゲートを投与する工程を含む;好ましくは、該自己免疫疾患は、乾癬、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、および全身性エリテマトーデスから選択される;好ましくは、乾癬は中等症から重症の尋常性乾癬である。
【0048】
本発明の別の態様は、自己免疫疾患を診断するための方法に関し、該方法は、試験するサンプル(たとえば、組織サンプル、細胞サンプル、または血液サンプル)を適用する工程、または必要とする対象に有効量の本発明に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片のいずれか一つまたは本発明のコンジュゲートを投与する工程を含む;好ましくは、該自己免疫疾患は、乾癬、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、および全身性エリテマトーデスから選択される;好ましくは、乾癬は中等症から重症の尋常性乾癬である。
【0049】
本発明の一部の実施形態では、自己免疫疾患(たとえば、中等症から重症の尋常性乾癬等の乾癬、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、または全身性エリテマトーデス)はIL-17Aの発現レベルの上昇によっておこることを考慮し、したがって診断は、本発明に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片のいずれか一つまたは本発明のコンジュゲートを使用してIL-17Aの発現レベルの検出によって行うことができる。IL-17Aの発現レベルが健常者の発現レベルより高く、発症レベルに達している場合、診断は陽性結果となる;そうでなければ陰性結果となる。
【0050】
本発明では、別段の定義がない限り、本明細書で使用する科学用語および技術用語は当業者に一般に理解される意味を有する。さらに、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、および免疫学の実験室操作は、対応する分野で広く使用される定常操作である。一方で、本発明をよりよく理解するために、関連用語の定義および説明を下記に提供する。
【0051】
本明細書で使用する場合、IL-17A(インターロイキン-17A)タンパク質のアミノ酸配列に言及する場合、IL-17Aタンパク質の全長;また、IL-17Aの融合タンパク質、たとえばマウスまたはヒトIgG Fcタンパク質断片(mFcまたはhFc)に融合された断片を含む。しかしながら、当業者は、IL-17Aタンパク質のアミノ酸配列において変異(mutation)または変異(variation)(置換、欠失、および/または付加を含むが、これらに限定されない)は自然発生しうる、またはそれ自体の生物学的機能に影響することなく人工的に導入されうることを理解するであろう。さらに、IL-17Aタンパク質の配列断片が記載される場合、IL-17Aタンパク質はまた、その天然または人口のバリアントの対応する配列断片を含む。
【0052】
IL-17Aの全長配列(155aa)は下記の通りであり、ここでシグナルペプチド配列(23aa)に下線を付している。
【0053】
【化1】
【0054】
本明細書で使用する場合、別段の定義がない限り、IL-17RはIL-17RAである;その特定のタンパク質配列は、先行技術において知られている配列であり、既存文献またはGenBankにおいて開示されている配列を参照することができる。たとえば、IL-17RA(CD217, NCBI Gene ID: NP_055154.3)である。
【0055】
本明細書で使用する場合、用語EC50は、最大効果の50%の濃度、すなわち最大効果の50%の効果を引き起こす濃度を指す。
【0056】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、一般に二組のポリペプチド鎖(一つの「軽」(L)鎖および一つの「重」(H)鎖の各ペア)からなる免疫グロブリン分子を指す。一般的な意味で、重鎖は抗体内のより大きい分子量を有するポリペプチド鎖と解することができる、および軽鎖は抗体内のより小さい分子量を有するポリペプチド鎖を指す。軽さ派Κおよびλ軽鎖として分類される。重鎖は一般にμ、δ、γ、α、またはεとして分類され、抗体のアイソタイプはIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとしてそれぞれ定義される。軽鎖および重鎖において、可変領域および定常領域は約12個またはそれ以上のアミノ酸の「J」領域によって接続されており、重鎖はまた約3個またはそれ以上のアミノ酸の「D」領域を含む。各重鎖は重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域は3つのドメイン(CH1、CH2、およびCH3)からなる。各軽鎖は軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は1つのドメインCLである。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(たとえば、エフェクター細胞)の典型的な補体系の第一の成分(C1q)に対する結合を含む、宿主組織または因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介する。VHおよびVL領域は、高可変領域(highly variable region)(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)にさらに細分することができ、およびそれらの間にフレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存領域が分布している。各VHおよびVLは、アミノ末端からジカルボキシル末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置された3つのCDRおよび4つのFRからなる。各重鎖/軽鎖ペアの可変領域(VHおよびVL)はそれぞれ抗体結合部位を形成する。各領域またはドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991))、またはChothia & Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917; Chothia et al. (1989) Nature 342:878-883の定義に従う。特に、重鎖はまた、3つを超える、たとえば6、9、12個のCDRを含んでもよい。たとえば、本発明の二重特異性抗体において、重鎖は別の抗体に接続したIgG抗体の重鎖のC末端を有するScFvであってもよい。そしてこの場合、重鎖は9個のCDRを含む。用語「抗体」は抗体産生のための特定の方法によって制限されない。たとえば、抗体は、具体的には、組換え抗体、モノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体を含む。抗体は異なるアイソタイプ、たとえば抗体IgG(たとえば、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)、IgA1、IgA2、IgD、IgE、またはIgMであってもよい。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「抗体結合断片」は全長抗体が結合するのと同じ抗原に特異的に結合する、および/または抗原への特異的結合について全長抗体と競合する能力を維持する、全長抗体の断片を含むポリペプチドを指し、「抗原結合部分」としても知られている。一般に、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれるFundamental Immunology, Ch. 7 (Paul, W., ed., 2nd edition, Raven Press, N.Y. (1989)を参照されたい。抗体の抗原結合断片は、組換えDNA技術またはインタクトな抗体の酵素的切断または化学的切断によって生成することができる。場合によっては、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域(CDR)断片、単鎖抗体断片(たとえば、scFv)、キメラ抗体、二重抗体、およびポリペプチドに特異的な抗原結合能力を付与するのに十分な抗体の少なくとも一部を含むそのようなポリペプチドを含む。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「Fd断片」は、VHおよびCH1ドメインからなる抗体断片を指す;用語「Fv断片」は、抗体の一本鎖(single arm)のVLおよびVHドメインからなる抗体断片を指す;用語「dAb断片」は、VHドメイン(Ward et al., Nature 341:544-546 (1989))からなる抗体断片を指す;用語「Fab断片」は、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる抗体断片を指す;および用語「F(ab’)2断片」は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合された2つのFab断片を含む抗体断片を指す。
【0059】
場合によっては、抗体の抗原結合断片は一本鎖抗体(たとえば、scFv)であり、VLおよびVHドメインがペアになってリンカーを介した一価分子を形成し、単一ポリペプチド鎖を精製することを可能にする(たとえば、Bird et al., Science 242:423-426(1988)、およびHuston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883(1988)を参照のこと)。そのようなscFv分子は一般構造:
【0060】
【化2】
【0061】
を有する。適切な穿孔技術リンカーは繰り返しGGGSアミノ酸配列またはそのバリアントからなる。たとえば、アミノ酸配列(GGGS)4を有するリンカーを使用することができるが、そのバリアントも使用することができる(Holliger et al. (1993), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448)。本発明で使用することができる他のリンカーは、Alfthan et al. (1995), Protein Eng. 8:725-731, Choi et al. (2001), Eur. J. Immunol. 31:94-106, Hu et al. (1996), Cancer Res. 56:3055-3061, Kipriyanov et al. (1999), J. Mol. Biol. 293:41-56、およびRoovers et al. (2001), Cancer Immunol.によって記載されている。
【0062】
場合によっては、抗体の抗原結合断片は二重特異性抗体、つまり二価の抗体であり、VHおよびVLドメインが単一ポリペプチド鎖に発現されている。しかしながら、使用されるリンカーが短すぎて、同一の鎖上の2つのドメインのペアリングができないため、ドメインは他の鎖上の相補的ドメインとペアリングされ、2つの抗原結合部位が生成される(たとえば、Holliger P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448(1993)、およびPoljak RJ et al., Structure 2:1121-1123(1994)を参照のこと。)。
【0063】
抗体の抗原結合断片(たとえば、上記の抗体断片)は、所与の抗体から、当業者に知られている従来技術(たとえば、組換えDNA技術または酵素的切断または化学的切断)によって得ることができ、抗体の抗原結合断片はインタクトな抗体の場合と同じ方法で特異性についてスクリーニングされる。
【0064】
本明細書で使用する場合、文脈で明確に定義されていない限り、用語「抗体」に言及する場合、インタクトな抗体だけでなく、抗体の抗原結合断片も含む。
【0065】
本明細書で使用する場合、用語「mAb」および「モノクローナル抗体」は、抗体、または高度に相同的な抗体の群、すなわち偶発的に起こりうる自然変異を除く同一の抗体分子の群に由来する抗体または抗体の断片を指す。モノクローナル抗体は、抗原上の単一エピトープに対する高い特異性を有する。ポリクローナル抗体は、モノクローナル抗体と比較して、一般に、抗原上の異なるエピトープを認識する少なくとも二つ以上の異なる抗体を含む。モノクローナル抗体は、一般にKohler et al. (Nature, 256:495, 1975)によって初めて報告されたハイブリドーマ技術によって得ることができるが、組換えDNA技術によっても得ることができる(たとえば、米国薬局方4,816,567)。
【0066】
本明細書で使用する場合、用語「キメラ抗体」は、軽鎖または/および重鎖の一部が抗体に由来する抗体(特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属していてもよい)を指す。およびおよび軽鎖または/および重鎖の他の部分は、別の抗体に由来する(これは、同じまたは異なる種に由来するか、または同じまたは異なる抗体クラスまたはサブクラスに属していてもよい)。しかし、いずれの場合も、それは標的抗原への結合活性を保持している(米国薬局方4,816,567からCabilly et al.; Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851 6855(1984))
【0067】
本明細書で使用する場合、用語「ヒト化抗体」はヒト免疫グロブリン(受容体抗体)のCDR領域の全部または一部を非ヒト抗体(ドナー抗体)のCDR領域で置換して得られる抗体または抗体断片を指し、ここでドナー抗体は、予想される特異性、親和性、または反応性を有する非ヒト(たとえば、マウス、ラット、またはウサギ)抗体であってもよい。さらに、受容体抗体のフレームワーク領域(FR)中の一部のアミノ酸残基もまた、対応する非ヒト抗体のアミノ酸残基または他の抗体のアミノ酸残基で置換することもでき、抗体の性能をさらに改善または最適化することもできる。ヒト化抗体に関するより詳細については、たとえばJones et al., Nature, 321:522 525(1986); Reichmann et al., Nature, 332:323 329(1988); Presta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593 596(1992);およびClark, Immunol. Today 21: 397 402(2000)を参照されたい。本明細書で使用する場合、用語「エピトープ」は、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原上の部位を指す。「エピトープ」は当技術分野で「抗原決定基」とも呼ばれる。エピトープまたは抗原決定基は一般にアミノ酸、炭水化物、または糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、固有の三次元構造特性および固有の電荷特性を有する。たとえば、エピトープは一般に少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の連続した、または非連続のアミノ酸を「線形」または「立体配座」でありうる固有の空間立体配座中に含む。たとえば、Epitope Mapping Protocols (Methods in Molecular Biology, Vol. 66, G.E. Morris, Ed. (1996))を参照されたい。直線状エピトープでは、タンパク質と相互作用する分子(たとえば、抗体)との間のすべての相互作用点は、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線的に存在する。立体構造エピトープでは、相互作用点は、互いに分離されたタンパク質アミノ酸残基全体に存在する。
【0068】
本明細書で使用する場合、用語「単離された」は、自然状態から人工的な手段によって得られることを指す。特定の「隔離された」物質または成分が自然界に現れる場合、それはその自然環境の変化によるものか、自然環境から隔離されているか、またはその両方でありうる。たとえば、特定の非単離ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、特定の生きている動物に自然に存在し、そのような自然状態から単離された高純度の同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと呼ばれる。用語「単離された」は、その物質の活性に影響を及ぼさない人工または合成物質または他の不純物の存在を排除するものではない。
【0069】
本明細書で使用する場合、用語「大腸菌(E.coli)発現系」は大腸菌(E.coli)(株)およびベクターからなる発現系を指し、ここで大腸菌(E.coli)(株)は市販の株由来であり、たとえばGI698、ER2566、BL21(DE3)、B834(DE3)、およびBLR(DE3)であるが、これらに限定されない。
【0070】
本明細書で使用する場合、用語「ベクター」は、ポリヌクレオチドを挿入することができる核酸媒体を指す。ベクターが、挿入されたポリヌクレオチドによってコードされたタンパク質の発現を許容する場合、ベクターは発現ベクターと呼ばれる。ベクターは形質転換、軽質導入、またはトランスフェクションによって宿主細胞に導入して、ベクターによって運搬された遺伝子物質因子を宿主細胞において発現させることが可能である。
【0071】
ベクターは当業者に周知であり、プラスミド;ファージミド;コスミド;人工染色体、たとえば酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC);λファージまたはM13ファージ等のファージ、および動物ウイルス等を含むが、これらに限定されない。ベクターとして使用できる動物ウイルスは、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(たとえば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、およびパポバウイルス(たとえば、SV40)を含むが、これらに限定されない。ベクターはプロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択配列(selection element)、およびレポーター遺伝子を含むがこれらに限定されない、発現を制御する様々な配列を含んでもよい。さらに、ベクターは複製開始点をさらに含んでもよい。
【0072】
本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」はベクターを導入できる細胞を指し、大腸菌(E.coli)またはバチルス・サブティリス(bacillus subtilis)等の原核生物、酵母細胞またはアスペルギルス等の真菌細胞、S2ショウジョウバエ細胞またはSf9等の昆虫細胞、または線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞、またはヒト細胞等を含むが、これらに限定されない。
【0073】
本明細書で使用する場合、用語「KD」は特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指し、抗体と抗原の間の結合親和性を記述するのに使用される。平衡解離定数が小さくなるほど、抗体-抗原結合は堅固になり、抗体と抗原の間の親和性が高くなる。一般に、抗体は抗原に約10-5 M未満、たとえば約10-6 M、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M以下の解離平衡定数(KD)で結合し、解離平衡定数は、たとえば、Fortebio分子相互作用装置によって測定される。
【0074】
本明細書で使用する場合、用語「モノクローナル抗体」および「mAb」は同一の意味を有し、互換的に使用することができる;用語「ポリクローナル抗体」および「PcAb」は同一の意味を有し、互換的に使用することができる;用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は同一の意味を有し、互換的に使用することができる。および本発明において、アミノ酸はほとんどの場合、当分野で知られている一文字および三文字の略号で表される。たとえば、アラニンはAまたはAlaで表すことができる。
【0075】
本明細書で使用する場合、用語「ハイブリドーマ」および「ハイブリドーマ細胞株」は互換的に使用することができ、用語「ハイブリドーマ」および「ハイブリドーマ細胞株」を指す場合、それらはまたハイブリドーマのサブクローンおよび子孫細胞を含む。たとえば、ハイブリドーマ細胞株LT006またはLT007を指す場合、それらはまたハイブリドーマ細胞株LT006またはLT007のサブクローンおよび子孫細胞も指す。
【0076】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される担体および/または賦形剤」は、薬理学的および/または生理学的に対象および活性成分に適合性である担体および/または賦形剤を指し、当技術分野で周知であり(Remington’s Pharmaceutical Sciences. Edited by Gennaro AR, 19th ed. Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1995を参照のこと)、pH調節剤、界面活性剤、アジュバント、およびイオン強度強化剤(ionic strength enhancer)を含むが、これらに限定されない。たとえば、pH調節剤は、リン酸バッファーを含むがこれに限定されない;界面活性剤はカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、または非イオン界面活性剤、たとえばTween-80を含むが、これに限定されない;およびイオン強度強化剤は塩化ナトリウムを含むが、これに限定されない。
【0077】
本明細書で使用する場合、用語「アジュバント」は非特異的免疫強化剤(immune enhancer)を指し、これは抗原に対する身体の免疫応答を増強するか、または抗原と一緒に体内に送達されるか、もしくはあらかじめ体内に送達されるときに、免疫応答のタイプを変更することができる。アルミニウムアジュバント(たとえば、水酸化アルミニウム)、フロイントアジュバント(たとえば、完全フロイントアジュバントおよび不完全フロイントアジュバント)、コリネバクテリウム・パルバム、リポ多糖、サイトカイン等を含むがこれらに限定されない、様々なアジュバントが存在する。フロイントアジュバントが最も一般的に動物実験で使用される。水酸化アルミニウムアジュバントは、臨床試験でより多く使用されている。
【0078】
本明細書で使用する場合、用語「有効量」は所望の効果を得る、または少なくとも部分的に得るために十分な量を指す。たとえば、疾患(たとえば、IL-17AのIL-17A受容体への結合、または過剰なIL-17A活性に関連する疾患、たとえば自己免疫疾患)を予防するための有効量は、疾患(たとえば、IL-17AのIL-17A受容体への結合、または過剰なIL-17A活性に関連する疾患、たとえば自己免疫疾患)の発症を予防、停止、または遅延させるために十分な量である;治療的有効量は、既に疾患に罹患している患者の疾患およびその合併症を治癒させる、または少なくとも部分的に停止するために十分な量である。そのような有効量を決定することは、当業者の能力の範囲内である。たとえば、治療的使用の有効量は、治療される疾患の重症度、患者自身の免疫系の全体的な状態、年齢、体重、および性別等の患者の全身状態、薬物投与の方法、および同時に行われる他の治療に依存する。
【0079】
本発明の有益な効果
本発明は以下の技術的効果の少なくとも一つを達成する:
(1) 本発明のモノクローナル抗体、たとえば13E9 H1L1、13E9 H2L2、13E9 H3L2、および2G2 H1L1、2G2 H2L2、2G2 H3L3は、すべてIL-17Aにとてもよく特異的に結合することができ、IL-17AのIL-17Aリガンドへの結合を効果的に遮断することができ、およびIL-17A媒介性の線維芽細胞においてIL-6の分泌を特異的に減少させる;
(2) 本発明のモノクローナル抗体、特に13E9 H2L2は、IL-6の分泌を阻害することにおいて、同じ標的に対して市販されている薬剤セクキヌマブと同じ効果を有する;
(3) 本発明のモノクローナル抗体は、乾癬、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、または全身性エリテマトーデス等の抗自己免疫疾患の治療および/または予防に適用される将来性がある。
【0080】
生物材料の保存に関する注記:
2017年9月12日に武漢大学、武漢、中国、430072で、受託番号CCTCC NO: C2017102で中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託された、ハイブリドーマ細胞株LT006(IL-17A-13E9);および
2017年9月12日に武漢大学、武漢、中国、430072で、受託番号CCTCC NO: C2017165で中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託された、ハイブリドーマ細胞株LT007(IL-17A-2G2)。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1】マウスモノクローナル抗体13E9のSDS-PAGE検出結果。左から右への4つのレーンのサンプルとそれぞれのローディング量は次のとおりである: 非還元タンパク質電気泳動ローディングバッファー中の抗体、1 μg; 還元タンパク質電気泳動ローディングバッファー中の抗体、1 μg; マーカー、5 μL; BSA、1 μg。
図2】マウスモノクローナル抗体2G2のSDS-PAGE検出結果。左から右への4つのレーンのサンプルとそれぞれのローディング量は次のとおりである: 非還元タンパク質電気泳動ローディングバッファー中の抗体、1 μg; 還元タンパク質電気泳動ローディングバッファー中の抗体、1 μg; マーカー、5 μL; BSA、1 μg。
図3】ヒト化モノクローナル抗体13E9 H3L2のSDS-PAGE検出結果。左から右への3つのレーンのサンプルとそれぞれのローディングは次のとおりである: BSA、1 μg; マーカー、5 μL;還元タンパク質電気泳動ローディングバッファー中の抗体、1 μg; 非還元タンパク質電気泳動ローディングバッファー中の抗体、1 μg。
図4】抗体13E9 H1L1の速度論的特性パラメーターの検出結果。図中の縦軸はnmを単位とした信号値である;横軸は秒を単位とした時間である。
図5】抗体13E9 H2L2の速度論的特性パラメーターの検出結果。図中の縦軸はnmを単位とした信号値である;横軸は秒を単位とした時間である。
図6】抗体13E9 H3L2の速度論的特性パラメーターの検出結果。図中の縦軸はnmを単位とした信号値である;横軸は秒を単位とした時間である。
図7】抗体セクキヌマブの速度論的特性パラメーターの検出結果。図中の縦軸はnmを単位とした信号値である;横軸は秒を単位とした時間である。
図8】抗体2G2 H1L1の速度論的特性パラメーターの検出結果。図中の縦軸はnmを単位とした信号値である;横軸は秒を単位とした時間である。
図9】抗体2G2 H2L2の速度論的特性パラメーターの検出結果。図中の縦軸はnmを単位とした信号値である;横軸は秒を単位とした時間である。
図10】抗体2G2 H3L3の速度論的特性パラメーターの検出結果。図中の縦軸はnmを単位とした信号値である;横軸は秒を単位とした時間である。
図11】抗体セクキヌマブの速度論的特性パラメーターの検出結果。図中の縦軸はnmを単位とした信号値である;横軸は秒を単位とした時間である。
図12】間接ELISA法による抗原IL17A-Hisに対する抗体13E9 H1L1および13E9 H2L2の結合活性の検出。市販薬のセクキヌマブを陽性対照として使用している。
図13】間接ELISA法による抗原IL17A-Hisに対する抗体13E9 H3L2の結合活性の検出。市販薬のセクキヌマブを陽性対照として使用している。
図14】競合ELISA法による結合について受容体IL17RA-His(ビオチン)と競合する抗体13E9 H1L1および13E9 H2L2の活性の検出。市販薬のセクキヌマブを陽性対照として使用している。
図15】競合ELISA法による結合について受容体IL17RA-His(ビオチン)と競合する抗体13E9 H3L2の活性の検出。市販薬のセクキヌマブを陽性対照として使用している。
図16】間接ELISA法による抗原IL17A-Hisに対する抗体2G2 H1L1、2G2 H2L2、および2G2H3L3の結合活性の検出。市販薬のセクキヌマブを陽性対照として使用している。
図17】競合ELISA法による抗原IL17A-Hisへの結合について受容体IL17RA-His(ビオチン)と競合する抗体2G2 H1L1、2G2 H2L2、および2G2 H3L3の活性の検出。市販薬のセクキヌマブを陽性対照として使用している。
図18】混合リンパ球によるサイトカインIL-6の分泌に対する抗体13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2、ならびに2G2 H1L1、2G2 H2L2、および2G2 H3L3の効果。
図19】乾癬を伴うC57BL/6マウスモデルの表皮の厚さに対する抗体医薬13E9 H3L2の効果。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明の実施形態は、実施例を参照していかに詳細に説明する。当業者は、以下の実施例は本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解するであろう。実施例は、当技術分野の文献に記載されている技術または条件に従って実施される(たとえば、J.Sambrookらによって執筆され、Huang Peitangらによって翻訳された分子クローニング実験ガイド、第3版、Science Pressを参照のこと)、または本明細書で特定の技術もしくは条件が指定されていない場合は、製品マニュアルに従って実施される。使用する試薬や器具は、メーカーが特定されていない限り、すべて市販の従来型製品である。
【0083】
以下の実施例において、使用したBALB/CマウスはGuangdong Medical Laboratory Animal Centerから購入した。使用したC57BL/6マウスは、Nanjing Galaxy Biopharma Co., Ltd.から購入した。使用したMRC5細胞は、Shanghai Fudan IBS Cell Centerからのものである。使用したモノクローナル抗体セクキヌマブ(Cosentyx(登録商標))は、ノバルティスコーポレーションから購入した。
【実施例
【0084】
実施例1: 抗IL-17A抗体13Eおよび2G2の調製
1. ハイブリドーマ細胞株LT006およびLT007の調製
抗IL-17A抗体を産生するために使用した抗原IL17A(24-155)-Hisは、ヒトIL-17A(GenBank ID: Q16552)成熟ペプチドおよびHisタグの融合タンパク質である。免疫したBALB/Cマウス(Guangdong Medical Laboratory Animal Centerから購入した)由来の脾臓細胞とマウス骨髄腫細胞をハイブリドーマ細胞に融合し、樹立方法(たとえば、“Monoclonal Antibody Production”, in Basic Methods in Antibody Production and Characterization, Eds. G.C. Howard and D.R. Bethell, Boca Raton: CRC Press,2000)を特定操作のために参照した。
【0085】
融合タンパク質IL17A-HisをTEVプロテアーゼで酵素消化し、カラムで精製してIL-17A(24-155)タンパク質を得た。間接ELISAスクリーニングは、IL-17A(24-155)に特異的に結合する新規の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を得るために、抗原としてIL-17A(24-155)タンパク質をコーティングしたマイクロプレートで実施した。
【0086】
間接ELISAスクリーニングによって得られたハイブリドーマ細胞を競合ELISAによってスクリーニングして、IL-17Aへの結合について受容体IL-17RA(CD217、NCBI GENE ID:NP_055154.3)と競合するモノクローナル抗体を分泌することができるハイブリドーマ細胞株を得て、2つの安定したハイブリドーマ細胞株を限定希釈によって得た。
【0087】
ハイブリドーマ細胞株LT006(IL-17A-13E9)は、2015年9月12日に武漢大学、武漢、中国、430072で、受託番号CCTCC NO: C2017102で中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託された。ハイブリドーマ細胞株LT006によって分泌されたモノクローナル抗体を13E9と命名した。
【0088】
ハイブリドーマ細胞株LT007(IL-17A-2G2)は、2017年9月12日に武漢大学、武漢、中国、430072で、受託番号CCTCC NO: C2017165で中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託された。ハイブリドーマ細胞株LT007によって分泌されたモノクローナル抗体を2G2と命名した。
【0089】
2. 抗IL-17A抗体13E9の調製
上記で調製したLT006細胞株をハイブリドーマ無血清培地(1%ペニシリン-ストレプトマイシンおよび4%Glutamaxを含み、37℃、5%CO2のインキュベーターで培養)で培養し(ウェルあたり1×105細胞)、細胞培養上清を、培養7日後の生存率が約20%になった時点で回収し、高速遠心分離、微孔膜による真空濾過、およびHiTrapプロテインA HPカラムによる精製に供し、抗体13E9を得た。精製した13E9サンプルをSDS-PAGE電気泳動で検出し、結果を図1に示す。
【0090】
3. 抗IL-17A抗体2G2の調製
上記で調製したLT007細胞株をハイブリドーマ無血清培地(1%ペニシリン-ストレプトマイシンおよび4%Glutamaxを含み、37℃、5%CO2のインキュベーターで培養)で培養し(ウェルあたり1×105細胞)、細胞培養上清を、培養7日後の生存率が約20%になった時点で回収し、高速遠心分離、微孔膜による真空濾過、およびHiTrapプロテインA HPカラムによる精製に供し、抗体2G2を得た。精製した2G2サンプルをSDS-PAGE電気泳動で検出し、結果を図2に示す。
【0091】
実施例2: 抗体13E9の配列解析
LT006細胞を実施例1の工程2の方法に従って培養した。
【0092】
cell/bacterial total RNA extraction kit (Tiangen、商品番号 DP430)を使用して、培養したLT006細胞からキットのマニュアルの方法に従ってmRNAを抽出した。
【0093】
cDNAをInvitrogen SuperScript(登録商標) III First-Strand Synthesis System for RT-PCRのキットマニュアルに従って合成し、PCRによって増幅した。
【0094】
PCR増幅産物を直接TAクローニングし、pEASY-T1 Cloning Kit (Transgen CT101)のキットマニュアルを特定操作のために参照した。
【0095】
TAクローニング産物を直接シーケンシングし、シーケンシング結果は下記の通りである:
重鎖可変領域のヌクレオチド配列: (360 bp)
【0096】
【化3】
【0097】
そのコードされたアミノ酸配列: (120 aa)
【0098】
【化4】
【0099】
軽鎖可変領域のヌクレオチド配列: (333 bp)
【0100】
【化5】
【0101】
そのコードされたアミノ酸配列: (111 aa)
【0102】
【化6】
【0103】
下線を付した領域はCDR領域である。
【0104】
実施例3: ヒト化抗IL-17A抗体13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2の設計、調製、および検出
1. 抗IL-17A抗体13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2の軽鎖および重鎖の設計
IL-17Aタンパク質の三次元結晶構造(EMBO J. (2001) 20p: 5332-41)および実施例2で得られた抗体13E9の配列に基づいて、抗体モデルをコンピューターでシミュレートし、変異は抗体13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2の可変領域を取得するために、モデルに従って設計した(抗体定常領域配列はNCBIデータベース由来のものであり、重鎖定常領域はIgγ-1鎖C領域、ACCESSION: P01857、および軽鎖定常領域はIgΚ鎖C領域ACCESSION: P01834である)。
【0105】
設計した可変領域配列は下記のとおりである:
(1) ヒト化モノクローナル抗体13E9 H1L1の重鎖および軽鎖の配列
重鎖可変領域のヌクレオチド配列: (360 bp)
【0106】
【化7】
【0107】
そのコードされたアミノ酸配列: (120 aa)
【0108】
【化8】
【0109】
下線を付した領域はCDR領域である。
【0110】
軽鎖可変領域のヌクレオチド配列: (333 bp)
【0111】
【化9】
【0112】
そのコードされたアミノ酸配列: (111 aa)
【0113】
【化10】
【0114】
下線を付した領域はCDR領域である。
【0115】
(2) ヒト化モノクローナル抗体13E9 H2L2の重鎖および軽鎖の配列
重鎖可変領域のヌクレオチド配列: (360 bp)
【0116】
【化11】
【0117】
そのコードされたアミノ酸配列: (120 aa)
【0118】
【化12】
【0119】
下線を付した領域はCDR領域である。
【0120】
軽鎖可変領域のヌクレオチド配列: (333 bp)
【0121】
【化13】
【0122】
そのコードされたアミノ酸配列: (111 aa)
【0123】
【化14】
【0124】
下線を付した領域はCDR領域である。
【0125】
(3) ヒト化モノクローナル抗体13E9 H3L2の重鎖および軽鎖の配列
重鎖可変領域のヌクレオチド配列: (360 bp)
【0126】
【化15】
【0127】
そのコードされたアミノ酸配列: (120 aa)
【0128】
【化16】
【0129】
下線を付した領域はCDR領域である。
【0130】
軽鎖可変領域のヌクレオチド配列は、配列番号11に示されるように、13E9 H2L2の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列と同じである。
【0131】
そのコードされたアミノ酸配列はまた、配列番号12に示されるように、13E9 H2L2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列と同じである。
【0132】
2. ヒト化抗体13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2の調製
重鎖定常領域はすべてIgγ-1鎖C領域(ACCESSION: P01857)を使用する;軽鎖定常領域はIgΚ鎖C領域(ACCESSION: P01834)を使用する。
【0133】
13E9 H1L1の重鎖cDNAおよび軽鎖cDNA、13E9 H2L2の重鎖cDNAおよび軽鎖cDNA、および13E9 H3L2の重鎖cDNAおよび軽鎖cDNAをpUC57 Simple(Genscriptによって提供される)ベクターにそれぞれクローニングし、pUC57simple-13E9H1、pUC57simple-13E9L1、pUC57simple-13E9H2、pUC57simple-13E9L2、およびpUC57simple-13E9H3をそれぞれ得、ならびに対応する重鎖を含む断片および対応する軽鎖を含む断片をpcDNA3.1ベクターにそれぞれサブクローニングし、組換えプラスミドpcDNA3.1-13E9H1、pcDNA3.1-13E9L1、pcDNA3.1-13E9H2、pcDNA3.1-13E9L2、pcDNA3.1-13E9H3およびpcDNA3.1-13E9L2を得た。次に、対応する軽鎖組換えプラスミドおよび重鎖組換えプラスミド(pcDNA3.1-13E9H1およびpcDNA3.1-13E9L1; pcDNA3.1-13E9H2およびpcDNA3.1-13E9L2; pcDNA3.1-13E9H3およびpcDNA3.1-13E9L2)を293F細胞に同時導入し、細胞培養物を回収して精製し、ヒト化抗体13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2をそれぞれ得た。精製した13E9 H3L2サンプルをSDS-PAGE電気泳動で検出し、結果を図3に示す。
【0134】
実施例4: 抗体2G2の配列解析
LT007細胞を実施例1の工程3の方法に従って培養した。
【0135】
細胞/細菌total RNA extraction kit(Tiangen、商品番号DP430)を使用して、キットマニュアルの方法に従ってmRNAを培養したLT007細胞から抽出した。
【0136】
Invitrogen SuperScript(登録商標) III First-Strand Synthesis System for RT-PCRのキットマニュアルに従ってcDNAを合成し、PCRによって増幅した。
【0137】
PCR増幅した生成物を直接TAクローニングし、pEASY-T1 Cloning Kit (Transgen CT101)のキットマニュアルを特定操作のために参照した。
【0138】
TAクローニングした生成物を直接シーケンシングし、シーケンシング結果は下記のとおりである:
重鎖可変領域のヌクレオチド配列: (351 bp)
【0139】
【化17】
【0140】
そのコードされたアミノ酸配列: (117 aa)
【0141】
【化18】
【0142】
下線を付した領域はCDR領域である。
【0143】
軽鎖可変領域のヌクレオチド配列: (336 bp)
【0144】
【化19】
【0145】
そのコードされたアミノ酸配列: (112 aa)
【0146】
【化20】
【0147】
下線を付した領域はCDR領域である。
【0148】
実施例5: 抗IL-17A抗体13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2の設計、調製、および検出
(1) ヒト化モノクローナル抗体2G2 H1L1の重鎖および軽鎖の配列
重鎖可変領域のヌクレオチド配列: (348 bp)
【0149】
【化21】
【0150】
そのコードされたアミノ酸配列: (116 aa)
【0151】
【化22】
【0152】
下線を付した領域はCDR領域である。
【0153】
軽鎖可変領域のヌクレオチド配列: (336 bp)
【0154】
【化23】
【0155】
そのコードされたアミノ酸配列: (112 aa)
【0156】
【化24】
【0157】
下線を付した領域はCDR領域である。
【0158】
(2) ヒト化モノクローナル抗体2G2 H2L2の重鎖および軽鎖の配列
重鎖可変領域のヌクレオチド配列: (348 bp)
【0159】
【化25】
【0160】
そのコードされたアミノ酸配列: (116 aa)
【0161】
【化26】
【0162】
下線を付した領域はCDR領域である。
【0163】
軽鎖可変領域のヌクレオチド配列: (336 bp)
【0164】
【化27】
【0165】
そのコードされたアミノ酸配列: (112 aa)
【0166】
【化28】
【0167】
下線を付した領域はCDR領域である。
【0168】
(3) ヒト化モノクローナル抗体2G2 H3L3の重鎖および軽鎖の配列
重鎖可変領域のヌクレオチド配列: (348 bp)
【0169】
【化29】
【0170】
そのコードされたアミノ酸配列: (116 aa)
【0171】
【化30】
【0172】
下線を付した領域はCDR領域である。
【0173】
軽鎖可変領域のヌクレオチド配列: (336 bp)
【0174】
【化31】
【0175】
そのコードされたアミノ酸配列: (112 aa)
【0176】
【化32】
【0177】
下線を付した領域はCDR領域である。
【0178】
2. ヒト化抗体2G H1L1、2G2 H2L2、および2G2 H3L3の調製およびSDS-PAGE電気泳動検出
重鎖定常領域はIgγ-1鎖C領域(ACCESSION: P01857)を使用した;軽鎖定常領域はIgΚ鎖C領域(ACCESSION: P01834)を使用した。
【0179】
2G2 H1L1の重鎖cDNAおよび軽鎖cDNA、2G2 H2L2の重鎖cDNAおよび軽鎖cDNA、および2G2 H3L3の重鎖cDNAおよび軽鎖cDNAをpUC57simple(Genscriptによって提供される)ベクターにそれぞれクローニングし、pUC57simple-2G2H1、pUC57simple-2G2L1;pUC57simple-2G2H2、pUC57simple-2G2L2;およびpUC57simple-2G2H3、pUC57simple-2G2L3をそれぞれ得た。次に、対応する重鎖を含むヌクレオチド断片および対応する軽鎖を含むヌクレオチド断片をpcDNA3.1ベクターにそれぞれサブクローニングし、組換えプラスミドpcDNA3.1-2G2H1、pcDNA3.1-2G2L1、pcDNA3.1-2G2H2、pcDNA3.1-2G2L2、pcDNA3.1-2G2H3、およびpcDNA3.1-2G2L3を得た。次に、対応する軽鎖組換えプラスミドおよび重鎖組換えプラスミド(pcDNA3.1-2G2H1およびpcDNA3.1-2G2L1;pcDNA3.1-2G2H2およびpcDNA3.1-2G2L2; pcDNA3.1-2G2H3およびpcDNA3.1-2G2L3)を293F細胞に同時導入し、細胞培養物を回収して精製し、ヒト化抗体2G H1L1、2G2 H2L2、および2G2 H3L3をそれぞれ得た。精製したサンプルをSDS-PAGE電気泳動で検出した。
【0180】
実施例6: 抗原IL-17A(24-155)タンパク質に対する13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2の結合の速度論的パラメーターの測定
抗原IL-17A(24-155)タンパク質に対するヒト化抗体13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2の結合の速度論的パラメーターを、Fortebio分子相互作用装置によって測定した。
【0181】
AR2GセンサーをEDC/NHSによって活性化し、抗体をアミンカップリングによって、活性化されたAR2Gセンサーに固定し、センサーを1 Mエタノールアミン(pH8.5)でブロックした。センサーをPBSTで300秒間平衡化した後、センサーに固定された抗体を、抗原IL-17A(24-155)タンパク質(実施例1で使用した抗原と同じ)に結合した。ここで、抗原濃度が6.25-400 nM(二重勾配希釈)であった、および結合時間は420秒であり、抗原および抗体はPBSTで600秒間解離された。
【0182】
抗体13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2、ならびにセクキヌマブの速度論的パラメーターを表1に示し、ならびに速度論的特性パラメーターの検出結果を図4図5図6、および図7にそれぞれ示す。
【0183】
【表1】
【0184】
Dは親和定数である;Konは抗原および抗体の結合率である;Kdisは抗原および抗体の解離速度である;KD=Kdis/Kon。
【0185】
結果は、13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2のすべては抗原IL-17A(24-155)に対して、よい親和性を有し、親和性は対照抗体セクキヌマブの親和性と同等である。
【0186】
実施例7:抗原IL-17A(24-155)に対する2G2 H1L1、2G2 H2L2、および2G2 H3L3の結合の速度論的パラメーターの測定
抗原IL-17A(24-155)に対する、ヒト化抗体2G2 H1L1、2G2 H2L2、および2G2 H3L3の速度論的パラメーターを、Fortebio分子相互作用装置によって測定した。
【0187】
AR2GセンサーをEDC/NHSによって活性化し、抗体をアミンカップリングによって、活性化されたAR2Gセンサーに固定し、センサーを1 Mエタノールアミン(pH8.5)でブロックした。センサーをPBSTで300秒間平衡化した後、センサーに固定された抗体を、抗原IL-17A(24-155)に結合した。ここで、抗原濃度が6.25-400 nM(二重勾配希釈)であった、および結合時間は420秒であり、抗原および抗体はPBSTで600秒間解離された。
【0188】
抗体2G2 H1L1、2G2 H2L2、および2G2 H3L3、ならびにセクキヌマブの速度論的パラメーターを表2に示し、ならびに速度論的特性パラメーターの検出結果を図8図9図10、および図11にそれぞれ示す。
【0189】
【表2】
【0190】
Dは親和定数である;Konは抗原および抗体の結合率である;Kdisは抗原および抗体の解離速度である;KD=Kdis/Kon。
【0191】
結果は、対照抗体セクキヌマブと比較して、2G2 H2L2は抗原IL-17A(24-155)に対して高い親和性を有すること;2G H1L1および2G2 H3L3の親和性は対照抗体セクキヌマブの親和性と同様であることを示す。
【0192】
実施例8: ELISA法による、抗体13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2の抗原に対する結合能の検出
1. 抗体13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2の抗原IL-17A-Hisに対する結合能を非直接ELISAで検出し、同一の標的に対する市販の薬剤セクキヌマブと比較した。
【0193】
IL-17A-Hisは公表された配列および当技術分野の従来的技術手段を参照すること、または以下の工程を参照することで調製することができる:
IL17A-Hisの調製: ヒトIL-17Aの全長タンパク質配列をNCBIタンパク質データベースで見出し、His*6精製タグと融合させた。南京のGenscriptに融合タンパク質をコードする核酸の合成を委託し、Guide to Molecular Cloning Experiments (Second Edition)で紹介された標準技術を参照し、PCR、酵素消化、ゲル回収、ライゲーション形質転換、コロニーPCRまたは酵素消化同定、等の標準的な分子クローニング技術を使用した。標的遺伝子を哺乳動物細胞発現ベクターにサブクローニングし、標的遺伝子を含む組換え発現ベクターをさらに配列決定して分析した。配列が正しいことを確認した後、中および大量のエンドトキシンフリーの発現プラスミドを調製し、タンパク質発現のためにHEK293細胞を一過性にトランスフェクトした。7日間の培養後、細胞培養液を収集し、Niセファロースカラム(GE)を使用してアフィニティー精製し、SDS-PAGEおよびSEC-HPLC標準分析技術を使用して得られたタンパク質サンプルの品質を標準に達するように測定した。
ELISA: IL17A-Hisをマイクロプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートした;PBS中の1%BSAで37℃で2時間ブロッキングした後、抗体をそれぞれ添加し、37℃で30分間インキュベートした;およびヤギ抗ヒトIgG(H+L)-HRP(Jackson, 109-035-088)を添加し、37℃で30分間インキュベートした;および次にTMB(Neogen,308177)を使用して5分間呈色反応を行い、マイクロプレートリーダーで450 nmの吸光度を検出した。得られた実験データをSoftMaxPro 6.2.1ソフトウェアで分析・処理し、横軸に抗体濃度、縦軸に吸光度値を用いて4-パラメーター近似曲線をプロットした。
【0194】
実験結果を以下の図12図13、表3および表4に示す。
【0195】
【表3】
【0196】
【表4】
【0197】
実験結果は、13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2のすべては抗原IL17A-Hisに効果的に結合することができること、およびそれらの結合効率は用量依存であることを示す。同一の実験条件下では、13E9 H1L1の結合EC50は0.044 nMである、13E9 H2L2の結合EC50は0.048 nMである、および同一の標的に対するセクキヌマブの結合EC50は0.082 nM(図12、表3)である;同一の実験条件下では、13E9 H3L2の結合EC50は0.043 nMである、および同一の標的に対するセクキヌマブの結合EC50は0.078 nMである(図13、表4)。
【0198】
上記の実験結果は、同一の実験条件下では、13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2のEC50値はすべて、同一標的に対する陽性対照薬剤セクキヌマブより小さく、これはIL17A-Hisに対する13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2の結合活性は、同一標的に対する市販の対照薬剤セクキヌマブの結合活性よりもよいことを示す。
【0199】
2. 抗体13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2の、抗原IL17A-Hisに対するIL17RA-His(ビオチン)の結合を遮断する活性を競合ELISAで検出した。
【0200】
IL17RA-His(ビオチン)は公表された配列および当技術分野の従来的技術手段を参照すること、または以下の工程を参照することで調製することができる:
IL17RA-His(ビオチン)の調製: ヒトIL-17RAの細胞外ドメイン配列をNCBIタンパク質データベースで見出し、His*6精製タグと融合させた。南京のGenscriptに融合タンパク質をコードする核酸の合成を委託し、Guide to Molecular Cloning Experiments (Second Edition)で紹介された標準技術を参照し、PCR、酵素消化、ゲル回収、ライゲーション形質転換、コロニーPCRまたは酵素消化同定、等の標準的な分子クローニング技術を使用した。標的遺伝子を哺乳動物細胞発現ベクターにサブクローニングし、標的遺伝子を含む組換え発現ベクターをさらに配列決定して分析した。配列が正しいことを確認した後、中および大量のエンドトキシンフリーの発現プラスミドを調製し、タンパク質発現のためにHEK293細胞を一過性にトランスフェクトした。7日間の培養後、細胞培養液を収集し、Niセファロースカラム(GE)を使用してアフィニティー精製し、SDS-PAGEおよびSEC-HPLC標準分析技術を使用して得られたタンパク質サンプルの品質を標準に達するように測定した。品質決定が完了した後、ビオチン化ヒトIL-17RA-Hisタンパク質サンプルを、Thermo scientificの市販のキットEZ-Link(登録商標)Sulfo-NHS-LC-Biotinylationで標識および取得し、特定の調製方法をキットマニュアルに従って実施した。
ELISA: IL17A-Hisをマイクロプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートした;PBST中の1%BSAで37℃で2時間ブロッキングした後、抗体をそれぞれ添加し、抗原と抗体を室温で10分間反応させた;次に、受容体IL17RA-His(ビオチン)を添加し、これを抗体と1:1の体積比で十分に混合し、37℃で30分間インキュベートした;およびSA-HRP(KPL,14-30-00)を添加し、37℃で30分間インキュベートした;および次に次にTMB(Neogen,308177)を使用して5分間呈色反応を行い、マイクロプレートリーダーで450 nmの吸光度を検出した。得られた実験データをSoftMaxPro 6.2.1ソフトウェアで分析・処理し、横軸に抗体濃度、縦軸に吸光度値を用いて4-パラメーター近似曲線をプロットした。実験結果を以下の図14図15、および表5、および表6に示す。
【0201】
【表5】
【0202】
【表6】
【0203】
実験結果は、抗体13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2はすべて受容体IL17RA-His(ビオチン)の抗原IL17A-Hisへの結合を効果的に遮断でき、遮断効率は用量依存的であることを示している。同一の実験条件下で、IL17A-Hisへの結合についてIL17RA-His(ビオチン)と競合する13E9 H1L1のEC50は1.437 nMであり、IL17A-Hisへの結合についてIL17RA-His(ビオチン)と競合する13E9 H2L2のEC50は1.281 nMであり、およびIL17A-Hisへの結合についてIL17RA-His(ビオチン)と競合する同一の標的に対する陽性対照薬剤セクキヌマブのEC50は1.807 nM(表5、図14)である;IL17A-Hisへの結合についてIL17RA-His(ビオチン)と競合する13E9 H3L2のEC50は0.805 nMである、およびIL17A-Hisへの結合についてIL17RA-His(ビオチン)と競合する同一の標的に対する市販薬セクキヌマブのEC50は1.580 nMである(表6、図15)。
【0204】
上記の実験結果は、同一の実験条件下では、IL17A-Hisへの結合についてIL17RA-His(ビオチン)と競合する13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2のEC50はすべて、同一の標的に対する市販の対照薬剤セクキヌマブのEC50より小さく、これはIL17A-Hisへの結合についてIL17RA-His(ビオチン)と競合する13E9 H1L1、13E9 H2L2、および13E9 H3L2の活性は同一の標的に対する市販の対照薬剤セクキヌマブの活性より良いことを示唆している。
【0205】
実施例9: ELISA法を用いた、抗体に対する抗体2G2 H1L1、2G2 H2L2、および2G2 H3L3の結合活性の検出
1. 抗原IL17A-Hisに対する抗体2G2 H1L1、2G2 H2L2、および2G2 H3L3の結合活性
実験工程: IL17A-Hisをマイクロプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートした;PBS中の1%BSAで37℃で2時間ブロッキングした後、抗体をそれぞれ添加し、37℃で30分間インキュベートした;およびヤギ抗ヒトIgG(H+L)-HRP(Jackson, 109-035-088)を添加し、37℃で30分間インキュベートした;および次にTMB(Neogen,308177)を使用して5分間呈色反応を行い、マイクロプレートリーダーで450 nmの吸光度を検出した。得られた実験データをSoftMaxPro 6.2.1ソフトウェアで分析・処理し、横軸に抗体濃度、縦軸に吸光度値を用いて4-パラメーター近似曲線をプロットした。
【0206】
実験結果を以下の図16および表7に示す。ここで、2G2 H1L1の結合EC50は0.177 nMであり、2G2 H2L2の結合EC50は0.372 nMであり、および2G2 H3L3の結合EC50は0.421 nMである。
【0207】
【表7】
【0208】
実験結果は、抗体2G2 H1L1、2G2 H2L2、および2G2 H3L3はすべて抗原IL17A-Hisに対して効果的に結合することができ、それらの結合効率は用量依存的であることを示している。
【0209】
2. IL17A-Hisへの結合についてIL17RA-His(ビオチン)と競合する抗体2G2 H1L1、2G2 H2L2、および2G2 H3L3の活性は競合ELISAによって検出された。実験工程: IL17A-Hisをマイクロプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートした;PBST中の1%BSAで37℃で2時間ブロッキングした後、抗体をそれぞれ添加し、抗原と抗体を室温で10分間反応させた;次に、受容体IL17RA-His(ビオチン)を添加し、これを抗体と1:1の体積比で十分に混合し、37℃で30分間インキュベートした;およびSA-HRP(KPL,14-30-00)を添加し、37℃で30分間インキュベートした;および次に次にTMB(Neogen,308177)を使用して5分間呈色反応を行い、マイクロプレートリーダーで450 nmの吸光度を検出した。得られた実験データをSoftMaxPro 6.2.1ソフトウェアで分析・処理し、横軸に抗体濃度、縦軸に吸光度値を用いて4-パラメーター近似曲線をプロットした。
【0210】
実験結果を以下の図17、および表8に示す。ここで、2G2 H1L1の結合EC50は2.264 nMであり、2G2 H2L2の結合EC50は5.408 nMであり、および2G2 H3L3の結合EC50は5.911 nMである(図17、表8)。
【0211】
【表8】
【0212】
実験結果は、抗体2G2 H1L1、2G2 H2L2、および2G2 H3L3はすべて、抗原IL17A-Hisへの結合について受容体IL17RA-His(ビオチン)の結合を効果的に遮断することができ、遮断効率は用量依存的であることを示している。
【0213】
実施例10: 混合ヒト胚性線維芽細胞反応:サイトカインIL-6の分泌
MRC5(中国科学院の細胞センターから購入)細胞を5000細胞/ウェルの96ウェルプレートにプレーティングし、一晩培養した。37℃で20分間インキュベートしたIL-17および抗体(対照としてhIgG)の混合物をMRC5細胞に添加し、48時間培養した。48時間の培養後、細胞上清を回収し、分泌されたIL-6の量をELISAキット(Dakewe Corporationから購入)によって検出した。
【0214】
MRC5細胞は、それぞれ13E9 H1L1、13E9 H2L2、13E9 H3L2、2G2 H1L1、2G2 H2L2、または2G2 H3L3(1 nM、10 nM、100 nM)、およびセクキヌマブ(1 nM、10 nM、100 nM)と混合および培養した。分泌されたIL-6の検出結果を図18に示す。
【0215】
図18から、13E9 H1L1、13E9 H2L2、13E9 H3L2、および2G2 H2L2はすべて、IL-17によって誘導されるMRC5細胞のIL-6分泌を効果的に減少させることができることがわかる、ここで:
100 nMの濃度でのIL-6の分泌の阻害に対する13E9 H1L1の効果は、同じ用量の対照抗体セクキヌマブの効果より優れており、10 nMの濃度でのIL-6の分泌の阻害効果は100 nMの濃度の対照抗体セクキヌマブの阻害効果と同等である;
1 nM、10 nM、および100 nMの濃度でのIL-6の分泌の阻害に対する13E9 H2L2の効果はすべて、同じ用量の対照抗体セクキヌマブの効果と同等である;
10 nM、および100 nMの濃度でのIL-6の分泌に対する13E9 H3L2の阻害効果はすべて、同じ用量の対照抗体セクキヌマブの阻害効果より優れており、1 nMの濃度での効果は対照抗体セクキヌマブの1 nMの濃度での効果と同等である;
1 nMおよび100 nMの濃度でのIL-6の分泌の阻害に対する2G2 H2L2の効果は、対照抗体セクキヌマブの1 nMおよび100 nMの濃度での効果と同等である;
1 nMの濃度でのIL-6の分泌の阻害に対する2G2 H3L3の効果は、同じ用量の対照抗体セクキヌマブの効果より優れている。
【0216】
上記の結果は、in vitroでの混合ヒト胚性線維芽細胞反応において、IL-17A媒介性IL-6の分泌の遮断における本発明の抗体の生物学的活性が、同じ標的のための市販薬セクキヌマブの生物学的活性よりもよいか、または少なくとも同等であることを示している。
【0217】
実施例11: C57BL/6マウスの乾癬モデルの表皮の厚さに対する抗体薬13E9 H3L2の効果
C57BL/6マウスを5つのグループに分け、それぞれに8匹のマウスを入れた。
(1)モデリング:
正常群のC57BL/6マウスに、1日目から6日目の連続6日間、25 μL/マウスで滑らかな背中に通常の生理食塩水を皮内注射した;
マウスの残りの群には、1日目から4日目まで2 μg/25 μL/マウスで組換えヒトIL-17Aを皮内注射し、5日目から6日目まで5 μg/25 μL/マウスで組換えヒトIL-17Aを皮内注射した。
(2)特定の群化および投与:
正常群: 通常の生理食塩水、0 mg/kgの用量で、週に3回、合計3回投与した;
モデル群: ネガティブアイソタイプコントロール、50 mg/kgの用量で、週に3回、合計3回投与した;
セクキヌマブ群: セクキヌマブ、50 mg/kgの用量で、週に3回、合計3回投与した;
13E9 H3L2高用量群: 50 mg/kgの用量で、週に3回、合計3回投与した;
13E9 H3L2低用量群: 10 mg/kgの用量で、週に3回、合計3回投与した。
【0218】
各群に3回、すなわちモデリングの1日前、モデリング3日目、およびモデリング6日目にそれぞれ皮下投与した。
【0219】
7日目に、マウスの背中の注射部位の皮膚を固定し、病理学的切片を作成し、表皮の厚さを測定した。
【0220】
実験結果を図19に示す。
【0221】
結果は、統計学的に、セクキヌマブ群(50 mg/kg)、13E9 H3L2高用量群(50 mg/kg)、および13E9 H3L2低用量群(10 mg/kg)の表皮の厚さは、モデル群の表皮の厚さより優位に小さかったことを示している(P<0.01)。
【0222】
結果は、抗体13E9 H3L2(50 mg/kg)C57BL/6マウスの乾癬モデルの表皮の厚さに対する統計学的に有意な阻害効果を示し、セクキヌマブ(50 mg/kg)と同じ活性を有すること;表皮の厚さに対する13E9 H3L2(10 mg/kg)の阻害効果もまた統計学的に有意であることを示している。
【0223】
本発明の特定の実施形態が詳細に説明されてきたが、当業者は理解するであろう。開示されたすべての教示に従って、それらの詳細に様々な改変および置換を行うことができ、これらの変更はすべて、本発明の保護範囲内にある。本発明の全範囲は、添付の特許請求の範囲およびその任意の同等物によって与えられる。
図1
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【配列表】
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