IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニコン エスエルエム ソルーションズ アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7538722マルチビーム照射システムを整列する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】マルチビーム照射システムを整列する方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/34 20140101AFI20240815BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20240815BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20240815BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240815BHJP
   B23K 26/04 20140101ALI20240815BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240815BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20240815BHJP
   B29C 64/282 20170101ALI20240815BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20240815BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240815BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240815BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240815BHJP
【FI】
B23K26/34
B22F3/105
B22F3/16
B23K26/00 M
B23K26/04
B23K26/21 Z
B29C64/153
B29C64/282
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020566874
(86)(22)【出願日】2018-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2018054179
(87)【国際公開番号】W WO2019161886
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-10-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】523394734
【氏名又は名称】ニコン エスエルエム ソルーションズ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ブリュック
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】鈴木 貴雄
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-159361(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0082668(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016200043(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビーム照射システム(20)を備える、電磁又は粒子放射で原料粉末の層を照射することによって三次元加工品を製造するための装置(10)を操作する方法であって、前記方法が、
ビーム放射平面(B)と照射平面(S)との間に一定の距離(D)を維持するために、キャリア(16)上に原料粉末層を塗布するように構成された粉末塗布機器(14)を前記ビーム放射平面(B)に対して適切に位置付けるステップであって、前記照射平面(S)と前記ビーム放射平面(B)との間の前記距離(D)は、前記粉末塗布機器(14)のレベリングスライダ(17)の下面の位置に依存する、ステップと、
前記一定の距離(D)を維持しながら、
i)前記照射システム(20)によって発せられる放射ビーム(24a、24b)で照射される予定の照射平面(S)を画定するように前記キャリア(16)上に第1原料粉末層を塗布するステップと、
ii)前記照射システム(20)の較正済み第1照射ユニット(22a)によって発せられた第1放射ビーム(24a)を使用して前記照射平面(S)の重なりゾーン(18c)において前記第1原料粉末層に第1テスト構造体(34)を製造するステップと、
iii)前記照射システム(20)の較正済み第2照射ユニット(22b)によって発せられた第2放射ビーム(24b)を使用して前記照射平面(S)の前記重なりゾーン(18c)において前記第1原料粉末層に第2テスト構造体(36)を製造するステップと、
iv)前記照射平面(S)における前記第1と前記第2テスト構造体(34、36)の間のオフセット(dxt、dyt)を測定するステップと、
v)前記オフセットが閾値を上回らないように前記第1と前記第2テスト構造体(34、36)の間の測定された前記オフセット(dxt、dyt)に基づいて前記第1及び前記較正済み第2照射ユニット(22a、22b)の少なくとも一方を整列するステップと、
vi)三次元加工品を製造するために、前記キャリア(16)上に更なる原料粉末層を塗布して、前記較正済みかつ整列済み第1及び第2照射ユニット(22a、22b)によって発せられた前記第1及び前記第2放射ビーム(24a、24b)で前記原料粉末層を照射するステップと
を実行するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップi)、並びにステップii)及びiii)の少なくとも一方が、多層の第1テスト構造体(34)及び多層の第2テスト構造体(36)の少なくとも一方を製造するために、ステップiv)及びv)を実行する前に繰り返し実施され、かつ/又は、
複数の第1テスト構造体(34)及び複数の第2テスト構造体(36)が製造される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1テスト構造体(34)及び前記第2テスト構造体(36)が、
-三次元加工品を製造するための前記装置(10)の通常作動とは別個に実施される前記装置(10)の整列作動時に、かつ/又は、
-三次元加工品を製造するための前記装置(10)の通常作動時に、
製造される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1テスト構造体(34)及び前記第2テスト構造体(36)が、
-特に基質板に接続されかつ/又は特に同時に製造される三次元加工品の層の数に合致する数の層を含む塊状コンポーネントの形式で、又は
-特に同時に製造される三次元加工品の層の数より小さい数の層を含む基質板とは別個に形成されたロストコンポーネントの形式で、
製造され、
前記第1テスト構造体(34)及び前記第2テスト構造体(36)が、ロストコンポーネントの形式で製造されるとき、前記第1テスト構造体(34)及び前記第2テスト構造体(36)の少なくとも1つの層が、前記キャリア(16)から所定の距離に造形される前記三次元加工品の中間層と同平面に配列される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1と前記第2テスト構造体(34、36)の間の前記オフセット(dxt、dyt)が、
-前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)の前記製造の完了後に、及び/又は
-前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)の前記製造時に、
測定され、
前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)の間の前記オフセット(dxt、dyt)が光学計測機器(30、32)によって測定され、前記光学計測機器(30)が特にメルトプール監視システム(28)の1構成要素または層制御システム(3)の1構成要素を形成する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記光学計測機器(30)が、熱放射を検出して前記検出された熱放射の強度を示す強度値を出力するように構成される高温検出機器の形式で設計される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1と前記第2テスト構造体(34、36)の間の前記オフセット(dxt、dyt)を測定することが、
-前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)の層の完成後に、前記第1及び前記第2照射ユニット(22a、22b)の少なくとも一方によって発せられたテスト放射ビームで前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)を含む前記照射平面(S)の領域を走査することと、
-前記光学計測機器(30)によって前記テスト放射ビームと前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)かあるいは前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)を取り囲む原料粉末との相互作用を監視することと、
-前記テスト放射ビームと前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)及び前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)を取り囲む前記原料粉末との前記相互作用に基づいて、前記第1及び第2テスト構造体(34、36)と前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)を取り囲む前記原料粉末との間の境界線の場所を測定することと、
を含む、
請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)を含む前記照射平面(S)の前記領域が、前記照射平面(S)内に延びる第1の複数のスキャンベクトルと、前記第1の複数のスキャンベクトルに対して所定の角度特に直角を成して前記照射平面(S)内に延びる第2の複数のスキャンベクトルとを含むパターンに従って、前記テスト放射ビームで走査される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1及び/又は前記第2の複数のスキャンベクトルの平行のスキャンベクトルが一方向である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)を含む前記照射平面(S)の前記領域が、前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)の製造時の前記第1及び/又は前記第2放射ビーム(24a、24b)のビームパワー及び/又はスキャン速度より低いビームパワー及び/又はスキャン速度の前記テスト放射ビームで走査される、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1と前記第2テスト構造体(34、36)の間の前記オフセット(dxt、dyt)を測定することが、
-前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)の層の完成後に、前記照射平面(S)の画像特に二次元画像を捕捉することと、
-前記照射平面(S)の前記捕捉された画像に基づいて、前記第1及び前記第2テスト構造体と前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)を取り囲む前記原料粉末との間の境界線の場所を測定することと、
を含む、
請求項6~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1及び前記較正済み第2照射ユニット(22a、22b)の少なくとも一方が、
-前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)の前記製造の完了後に、及び/又は
-前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)の前記製造時に、
前記オフセットが閾値を上回らないように前記第1と前記第2テスト構造体(34、36)の間の測定された前記オフセット(dxt、dyt)に基づいて整列され、かつ/又は、
前記第1テスト構造体(34)及び前記第2テスト構造体(36)が、前記第1照射ユニット(22a)と前記第2照射ユニット(22b)が整列されたとき前記第1テスト構造(34)の少なくとも1つの縁(38、42)が前記第2テスト構造体(36)の少なくとも1つの縁(40、44)と同一面に配列される形状及び配列を持つように製造され、かつ/又は、
前記第1テスト構造体(34)が、長方形状を持ち、同様に長方形状を持つ第2テスト構造体(36)に隣接して製造される、
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1及び前記第2テスト構造体(34、36)が線状であり、前記第1照射ユニット(22a)と前記第2照射ユニット(22b)が整列されたとき十字を形成し、または、
前記第1テスト構造体(34)が、前記第1照射ユニット(22a)と前記第2照射ユニット(22b)が整列されたとき、L字形である前記第2テスト構造体(36)に与えられたカットアウトの中に嵌まる長方形状を持つ、
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1と前記第2テスト構造体(34、36)が共通ベース上に製造される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記粉末塗布機器(14)の前記位置付けが、特に、特に±2μm好ましくは±1μmの精度で前記ビーム放射平面(B)に対して前記粉末塗布機器(14)を位置付けできるように構成される位置付けツール(27)によって実施される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射又は粒子放射により原料粉末の層を照射することによって三次元加工品を生産するための装置に使用するためのマルチビーム照射システムを整列する方法に関する。更に、本発明は、マルチビーム照射システムを備える、電磁又は粒子放射により原料粉末の層を照射することによって三次元加工品を生産するための装置を操作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末床溶融は、粉末の特に金属及び/又はセラミック原料を複雑な形状の三次元加工品に加工できる付加積層プロセスである。このために、原料粉末層は、キャリア上に塗布されて、製造予定の加工品の所望の形状に応じて、サイト選択的にレーザー放射を受ける。粉末層に貫入するレーザー放射は、原料粉末粒子の加熱を、したがって融解又は焼結を生じる。その後、加工品が所望の形状及びサイズを持つまで、更なる原料粉末層が、既に照射処理を受けたキャリア上の層に順次塗布される。選択的レーザー融解又はレーザー焼結は、例えば、CADデータに基づく、原型、ツール、交換部品、又は歯科又は整形外科用プロテーゼなどの医療用プロテーゼの製造に使用できる。
【0003】
粉末床溶融プロセスによって粉末原料から鋳造体を製造するための装置は、例えば欧州特許第1793979(B1)号明細書(特許文献1)において説明される。先行技術の装置は製造予定の成形体のための複数のキャリアを収容するプロセス室を備える。粉末層貫通システムは、キャリア上にレーザービームで照射される原料粉末を塗布するためにキャリア全体を前後左右に移動できる粉末容器ホルダを備える。プロセス室は、供給ラインを備える保護ガス回路に接続され、供給ラインを介して、保護ガスは、プロセス室内に保護ガス環境を確立するためにプロセス室へ供給できる。
【0004】
粉末原料を照射することによって三次元加工品を製造するための装置に採用できる代表的照射システムは、欧州特許第2335848(B1)号明細書(特許文献2)において説明される。照射システムは、放射源特にレーザー源と、光学ユニットと、を備える。放射源によって発せられる放射ビームを与えられる光学ユニットは、ビームエクスパンダと、スキャナユニットと、fθレンズの形式で設計される対物レンズと、を備える。
【0005】
照射システム、及び特に粉末原料を照射することによって三次元加工品を生産するための装置に採用される光学ユニットを較正するために、いわゆるバーンオフホイルを、装置の通常作動時に照射対象の原料粉末層を支えるキャリアに塗布できる。その後バーンオフホイルを事前設定されたパターンに従って照射して、ホイル上に照射パターンのバーンオフ画像を展開する。バーンオフ画像は、デジタル化され、照射パターンのデジタル基準画像と比較される。デジタル化バーンオフ画像と基準画像との間の比較の結果に基づいて、照射ユニットは、実際のバーンオフ画像と基準画像との間の偏差を補正するように較正される。又は、照射平面に配列されたセンサ配列体に入射する放射ビームによって生じた照射パターンのデジタル画像を、欧州特許第3241668(A1)号明細書(特許文献3)において説明されるように照射システムを較正するために使用できる。
【0006】
特により大きい物体を製造するために又は生産速度を上げるために、例えば欧州特許第2875897(B1)号明細書(特許文献4)又は欧州特許第2862651(A1)号明細書(特許文献5)において説明されるマルチビーム照射システムを採用できる。このようなマルチビーム照射システムは、複数の放射ビームを発するための複数の照射ユニットを備える。放射ビームの各々は、典型的に、指定される限定的照射ゾーン及び1つ又は複数の重なりゾーンにおいて作動する。
【0007】
マルチビーム照射システムの照射ユニットが例えば上述のように個別に較正されるとしても、照射システムによって発せられた放射ビームは、重なりゾーンにおいて典型的にある程度の不整列を示す。特に、重なりゾーンにおいて同じx-y座標を指向する放射ビームも、やはり相互にオフセットを生じる可能性がある。このオフセットは、製造予定の加工品の品質に影響する可能性がある。
【0008】
欧州特許第3202524(A1)号明細書(特許文献6)は、対の較正済みレーザーが選択的に作動する重なり領域においてレーザー付加製造システムの1対の較正済みレーザーを整列する方法を開示する。この方法において、第1ステップにおいては、テスト構造体の第1の複数の層は、対の較正済みレーザーの第1の較正済みレーザーのみを使用して、重なり領域において形成される。第2ステップにおいて、テスト構造体の第2の複数の層が、対の較正済みレーザーの第2の較正済みレーザーを使用して、重なり領域において形成される。その後、テスト構造体の外面の第1の複数の層と第2の複数の層との間に生じたオフセットステップの寸法が計測されて、対の較正済みレーザーの少なくとも一方に対する整列修正としてオフセットステップの寸法を応用することによって、対の較正済みレーザーが整列される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許第1793979(B1)号明細書
【文献】欧州特許第2335848(B1)号明細書
【文献】欧州特許第3241668(A1)号明細書
【文献】欧州特許第2875897(B1)号明細書
【文献】欧州特許第2862651(A1)号明細書
【文献】欧州特許第3202524(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、電磁又は粒子放射で原料粉末の層を照射することによって三次元加工品を製造するための装置に使用するためのマルチビーム照射システムを整列するための確実で効率の良い方法を提供することを目的とする。更に、本発明は、前記の確実で効率の良い整列方法に従って整列されたマルチビーム照射システムを備える、電磁又は粒子放射で原料粉末の層を照射することによって三次元加工品を製造するための装置を作動する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的は、請求項1において規定されるマルチビーム照射システムを整列する方法及び請求項19において規定される三次元加工品を製造するための装置を作動する方法によって、果たされる。
【0012】
電磁又は粒子放射で原料粉末の層を照射することによって三次元加工品を製造するための装置に使用するためのマルチ照射システムを整列する方法において、第1の原料粉末層は、マルチビーム照射システムによって発せられた放射ビームで照射される照射平面を画定するように、キャリア上に塗布される。キャリアは、プロセス室内に制御された環境特に不活性環境を維持できるようにするために、周囲環境に対して密閉可能にできるプロセス室内に配置できる。原料粉末は、金属粉末とすることができるが、セラミック粉末又はプラスチック材料粉末又は異なる材料を含有する粉末とすることもできる。粉末は、任意の適切な粒度又は粒子サイズ分布を持つことができる。但し、粒度<100μmの粉末を処理することが好ましい。
【0013】
照射平面は、マルチビーム照射システムによって発せられた放射ビームを受ける原料粉末層の平面である。典型的に、照射平面は、原料粉末層の上面平面に一致する。キャリアの表面に対する原料粉末層の上面平面の位置は、キャリア上に原料粉末層を塗布するための粉末塗布機器の位置付けに、特に原料粉末層の上面を均して円滑化するために役立つ粉末塗布機器のレベリングスライダの位置付けに依存する可能性がある。
【0014】
マルチビーム照射システムは、放射源特にレーザー源例えばダイオード励起イッテルビウムファイバレーザーを備えることができる。マルチビーム照射システムは、放射源を1つだけ備えることができる。但し、マルチビーム照射システムは、複数の放射源を備えることも想定できる。更に、マルチビーム照射システムは、2つ又はこれを超える照射ユニットを備えることができる。照射ユニットの各々は、例えば放射源によって発せられた放射ビームを拡大するためのビームエクスパンダとスキャナと対物レンズとを含む複数の光学要素を備えることができる。又は、照射ユニットの各々に与えられる複数の光学要素は、集束レンズを含むビームエクスパンダとスキャナユニットとを備えることができる。スキャナユニットによって、ビーム経路の方向もおいて並びにビーム経路に対して直角を成す平面において、放射ビームの焦点の位置は、変更でき適合化できる。スキャナユニットは、検流計スキャナの形式で設計でき、対物レンズはfθ対物レンズとすることができる。
【0015】
マルチビーム照射システムを整列する方法の更なるステップにおいて、第1テスト構造体は、較正済み第1照射ユニットによって発せられた第1放射ビームを使用して照射平面の重なりゾーンにおいて第1原料粉末層に製造される。更に、第2テスト構造体が、較正済み第2照射ユニットによって発せられた第2放射ビームを使用して照射平面の重なりゾーンにおいて第1原料粉末層に製造される。「重なりゾーン」は、本明細書において、第1及び第2照射ユニットの両方の放射ビームで照射できる照射平面の領域を指す。したがって、第1及び第2テスト構造体は、第1照射ユニットによって発せられた第1放射ビーム及び第2照射ユニットによって発せられた第2放射ビームの両方がアクセス可能な照射平面の領域に製造される。
【0016】
マルチビーム照射システムの第1及び第2照射ユニットは、マルチビーム照射システムを整列する方法を実施する前に較正できる。更に、個別の照射ユニットの較正は、同時に又は順次実施できる。照射ユニットを較正するために、照射平面における設定座標又は基準パターンに対する照射ユニットによって発せられた放射ビームのオフセットを実質的に排除するのに適する限り、任意の較正方法、例えばバーンオフホイルを使用する較正方法又は欧州特許第3241668(A1)号明細書(特許文献3)において説明される較正方法を使用できる。
【0017】
次にステップにおいて、照射平面における第1と第2テスト構造体の間のオフセットが測定される。基本的に、照射平面内で一方向のみに第1と第2テスト構造体の間のオフセットを測定することが想定される。但し、照射平面内の2方向において第1と第2テスト構造体の間のオフセットが測定されることが好ましい。必要であれば、例えば照射平面内で2方向において第1と第2テスト構造体の間のオフセットを測定すべきとき又はマルチビーム照射システムが2つ超えの照射ユニットを備える場合、複数の対の第1及び第2テスト構造体を製造できる。
【0018】
その後、第1及び第2照射ユニットの少なくとも一方は、照射平面における第1と第2テスト構造体の間の測定オフセットに基づいて整列される。特に、第1及び第2照射ユニットの少なくとも一方は、照射平面における第1と第2テスト構造体の間のオフセットが閾値を上回らないように特に閾値より低く抑えられるように、整列される。好ましくは、第1及び第2テスト構造体は、照射平面における第1と第2テスト構造体の間の測定オフセットが第1及び第2照射ユニットの少なくとも一方の整列に直接使用できるような形状及び配列を持つ。
【0019】
マルチビーム照射システムを整列する方法において、第1テスト構造体と第2テスト構造体の両方は、第1原料粉末層に製造される。即ち、第1及び第2テスト構造体は、同じ原料粉末層に製造される。その結果、第1及び第2テスト構造体は、同時に製造できるので、テスト構造体を造形するために必要な時間を削減する。更に、テスト構造体は、第1と第2照射ユニットが整列していないとき照射平面に生じる第1と第2テスト構造体の間のオフセットを確実に測定できるようにしながら、低い造形高さで造形できる。
【0020】
マルチビーム照射システムを整列する方法において、キャリア上に原料粉末層を塗布するステップ、及び塗布された粉末層に第1テスト構造体を製造するステップ及び塗布された粉末層に第2テスト構造体を製造するステップの少なくとも一方は、第1と第2テスト構造体の間のオフセットを測定する前に及び第1及び第2の較正済み照射ユニットの少なくとも一方を整列する前に、繰り返し実施できる。このようにして、多層の第1テスト構造体及び/又は多層の第2テスト構造体を製造できる。
【0021】
マルチビーム照射システムを整列する方法において、1つのみの第1テスト構造体及び1つのみの第2テスト構造体を製造できる。但し、方法は、複数の第1テスト構造体及び複数の第2テスト構造体の製造を含むことも想定される。テスト構造体は、対で製造でき、テスト構造体の各対は、例えば照射平面内で2方向に第1と第2テスト構造体の間のオフセットを測定する及び/又は平均化できる複数のオフセット値を測定するために、第1及び第2テスト構造体を含む。
【0022】
第1テスト構造体及び第2テスト構造体は、三次元加工品を製造するための装置の整列作動時に製造できる。装置の整列作動は、三次元加工品を製造するための装置の通常作動とは別個に実施でき、例えば、マルチビーム照射システムの個々の照射ユニットの較正後に、但し、三次元加工品を製造するための装置の通常作動の開始前に、実施できる。言い換えると、装置の較正/整列と装置の通常作動は分離でき、三次元加工品を製造するための装置の通常作動は、較正/整列プロセスの完了後に限り開始できる。それに代えて又はそれに加えて、第1テスト構造体及び第2テスト構造体は三次元加工品を製造するための装置の通常作動時に製造されることが想定できる。即ち、第1及び第2テスト構造体と三次元加工品は、単一の造形プロセスで同時に製造できる。
【0023】
第1テスト構造体及び第2テスト構造体は、塊状コンポーネント(massive component)の形式で製造できる。塊状コンポーネントの形式で製造されたテスト構造体は、キャリア上に配置される基質板に接続でき、基質板上にテスト構造体を造形するためにその後の原料粉末層で被覆できる。更に、塊状の形式で製造されたテスト構造体は、同時に製造される三次元加工品の層の数に合致する数の層を含むことができる。したがって、塊状コンポーネントの形式のテスト構造体は、三次元加工品の造形高さに合致する造形高さで製造できる。但し、塊状コンポーネントの形式で製造されたテスト構造体は、同時に製造される三次元加工品の層の数より小さい数の層を含むことも想定できる。又、単一層のテスト構造体も想定できる。第1及び第2テスト構造体が塊状コンポーネントの形式で製造される場合、テスト構造体の寸法及び形状は、第1と第2テスト構造体の間のオフセットを測定するために計測でき、その間、第1と第2テスト構造体の間のオフセットを測定するためにテスト構造体は、キャリア又は基質板に接続したままにするか、又はキャリア又は基質板から引き離せる。
【0024】
又は、第1テスト構造体及び第2テスト構造体は、基質板及びキャリアとは別個に形成されるロストコンポーネント(lost component)の形式で製造できる。好ましくは、ロストコンポーネントの形式で製造されたテスト構造体は、同時に製造される三次元加工物の層の数より少ない数の層を含む。単一層のテスト構造体も想定できる。
【0025】
第1及び第2テスト構造体がロストコンポーネントの形式で製造される場合、第1テスト構造体及び第2テスト構造体の少なくとも1つの層は、キャリアから所定距離で造形される同時に製造される三次元加工品の中間層と同平面に配列できる。更に、テスト構造体の層は、規則的に又はランダムに又はアルゴリズムに基づいて製造されることが想定される。例えば、5つのテスト構造体の層は、加工品の20層ごとに5つの加工品層と同平面に製造できる。
【0026】
第1と第2テスト構造体の間のオフセットは、第1及び第2テスト構造体の製造の完了後に測定できる。例えば、テスト構造体の少なくとも1つの寸法及び/又は形状は、適切な手動計測ツールの助けでテスト構造体の製造の完了後に手で計測できる。これに代えて又はこれに加えて、第1と第2テスト構造体の間のオフセットは、第1及び第2テスト構造体の製造時に、例えば第1及び第2テスト構造体の1つの層の完成後でかつ第1及び第2テスト構造体の更なる層の製造を開始する前に、測定できる。
【0027】
第1と第2テスト構造体の間のオフセットを測定するために、光学計測機器例えばカメラ又は光学センサを使用できる。マルチビーム照射システムを整列する方法の特に好ましい実施形態において、第1と第2テスト構造体の間のオフセットは、メルトプール監視システム即ち原料粉末の中へ放射エネルギーを導入する過程で生成されるメルトプールを観察するためのシステムの構成要素を形成する光学計測機器によって測定される。又は、第1と第2テスト構造体の間のオフセットを測定するために使用される光学計測機器は、層制御システム即ち原料粉末層の中の欠損又は不規則性を検出するためにキャリア上に塗布された原料粉末層を監視するためのシステムの構成要素によって構成できる。光学計測機器の使用は、第1及び第2テスト構造体の製造時に第1と第2テスト構造体の間のオフセットを測定できるようにする。但し、第1及び第2テスト構造体の製造の完了後に第1と第2テスト構造体の間のオフセットを手動又は自動で測定するために光学計測機器を使用することも想定できる。
【0028】
第1と第2テスト構造体の間のオフセットを測定するために使用される光学計測機器は、熱放射を検出して検出された熱放射の強さを示す強度値を出力するように構成される高温検出機器の形式で設計できる。典型的には、以前に固化されたテスト構造体表面から発せられる熱放射の強さは、固化されたテスト構造体を取り囲む非固化原材料粉末から発せられる熱放射とは異なる。したがって、テスト構造体とテスト構造体を取り囲む原料粉末との間の境界線の場所は、高温検出機器によって検出された熱放射に基づいて測定できる。
【0029】
第1と第2テスト構造体の間のオフセットを測定するために、第1及び第2テスト構造体の1つの層の完成後、第1及び第2テスト構造体を含む照射平面の領域は、第1及び第2照射ユニットの少なくとも一方によって発せられたテスト放射ビームで走査できる。メルトプール監視システムの構成要素を形成する光学計測機器が、第1及び第2照射ユニットの一方に結合される場合、光学計測機器に結合される照射ユニットのみを、第1及び第2テスト構造体を含む照射平面の領域を走査するために使用できる。走査対象の照射平面の領域は、完璧に整列された第1と第2照射ユニットによって製造された第1及び第2テスト構造体が配置されると予想される領域のみでなく、照射対象の領域が第1と第2照射ユニットの不整列のせいで相互にオフセットする第1及び第2テスト構造体も含むようにするためにその周囲領域も含むように、設定される。
【0030】
第1及び第2テスト構造体を含む照射平面の領域を走査するとき、第1及び第2テスト放射ビームの少なくとも一方と、第1及び第2テスト構造体かあるいは照射平面内の第1及び第2テスト構造体を取り囲む原料粉末との相互作用は、光学計測機器によって監視される。第1及び第2テスト放射ビームの少なくとも一方が非固化原料粉末に入射するとき、光学計測機器によって検出される強度値は、典型的に、第1及び第2テスト放射ビームの少なくとも一方が以前に固化したテスト構造体表面に入射するときに光学計測機器によって検出される強度値より高い。
【0031】
その結果、第1及び第2テスト構造体と第1及び第2テスト構造体を取り囲む原料粉末との間の境界線の場所は、第1及び第2テスト放射ビームの少なくとも一方と第1及び第2テスト構造体及び第1及び第2テスト構造体を含む照射平面の領域において第1及び第2テスト構造体を取り囲む原料粉末との間の相互作用に基づいて、測定できる。このようにして、第1と第2テスト構造体の間のオフセットも検出できる。
【0032】
好ましくは、第1及び第2テスト構造体を含む照射平面の領域は、照射平面内に延びる第1の複数のスキャンベクトル及び第1の複数のスキャンベクトルに対して所定の角度特に直角を成して照射平面内に延びる第2の複数のスキャンベクトルを含むパターンに従って走査される。スキャンパターンの平行のスキャンベクトルの間の間隔は、第1及び第2テスト構造体と第1及び第2テスト構造体を取り囲む原料粉末との間の境界線の場所を正確に測定できるようにするのに充分な小ささに維持されなければならない。
【0033】
好ましくは、第1及び/又は第2の複数のスキャンベクトルの平行のスキャンベクトルは一方向である。原料粉末から以前に固化されたテスト構造体表面への移行領域において光学計測機器特にメルトプール監視システムの高温計測機器によって検出される信号は、以前に固化したテスト構造体表面から原料粉末への移行領域において光学計測機器によって検出される信号と異なる。このような信号の差異は、第1及び第2テスト構造体を含む照射平面の領域を走査するとき一方向走査ステラテジーが採用される場合には無視できる。
【0034】
第1及び第2テスト構造体を含む照射平面の領域は、好ましくは、第1及び第2テスト構造体の製造時の第1又は第2放射ビームのビームパワー及び/又はスキャン速度より低いビームパワー及び/又はスキャン速度のテスト放射ビームで走査される。ビームパワー及びスキャン速度を低くすることによって、テスト放射ビームと以前に固化されたテスト構造体表面との相互作用を示す信号とテスト放射ビームと非固化原料粉末との相互作用との間を区別する助けとなる。更に、スキャン速度を低くすることによって、信号ノイズを減少し、検出されるデータの量を増大する。その結果、検出精度を向上できる。テスト放射ビームのビームパワーは、ゼロでも良く、これは、第1及び第2テスト構造体を含む照射平面の領域を、正のビームパワーを持つテスト放射ビームで照射することなく走査できることを意味する。但し、第1及び第2テスト構造体を含む照射平面の領域をゼロより高いビームパワーのテスト放射ビームで照射することは、検出される熱放射信号が増幅されるのでバックグラウンドノイズから容易に区別できると言う利点を持つ。
【0035】
第1及び第2テスト構造体及びその周囲の原料粉末によって発せられた熱放射を検出するように構成される光学計測機器の使用に加えて又はその代わりに、照射平面の画像を捕捉するように作られた光学計測機器の助けで第1と第2テスト構造体の間のオフセットを測定することが想定できる。例えば、三次元加工品を製造するための装置の層制御システムの画像ピックアップ機器をこの目的に使用できる。
【0036】
特に、第1と第2テスト構造体の間のオフセットを測定するステップは、第1及び第2テスト構造体の1つの層の完成後に照射平面の画像特に二次元画像を捕捉するステップを含むことができる。捕捉される画像は、照射平面の全体又は第1及び第2テスト構造体を含む照射平面の領域のみを含むことができる。更に、第1及び第2テスト構造体と第1及び第2テスト構造体を取り囲む原料粉末との間の境界線の場所は、自動画像処理によって又は手動で即ち捕捉された画像を目視検査することによって、照射平面の捕捉された画像に基づいて測定できる。したがって、層制御システムの画像ピックアップ機器は、カメラ及び任意の画像処理システムを備えることができる。
【0037】
第1及び第2の較正済み照射ユニットの少なくとも一方は、第1及び第2テスト構造体の製造の完了後に、オフセットが閾値を上回らないように、第1と第2テスト構造体の間の測定オフセットに基づいて整列できる。言い換えると、第1及び第2テスト構造体を製造できる。次のステップにおいて、照射平面における第1と第2テスト構造体の間のオフセットが測定されて、その後に、第1と第2照射ユニットは測定オフセットに応じて整列できる。
【0038】
その代わりに又はそれに加えて、第1及び第2の較正済み照射ユニットの少なくとも一方は、第1及び第2テスト構造体の製造時に、オフセットが閾値を上回らないように第1と第2テスト構造体の間の測定オフセットに基づいて整列されることも、想定できる。例えば、第1及び第2照射ユニットの少なくとも一方を整列するための整列手順は、第1及び第2テスト構造体の1つの層の完成後に、但し第1及び第2テスト構造体の更なる層の生成前に、実施できる。第1及び第2テスト構造体の製造過程において第1と第2テスト構造体の間のオフセットを補正するために第1及び第2照射ユニットの少なくとも一方を整列することは、特に、オフセット測定も第1及び第2テスト構造体の製造過程で実施される場合に有利である。
【0039】
好ましくは、第1テスト構造体及び第2テスト構造体は、第1照射ユニットと第2照射ユニットが整列されたとき第1テスト構造体の少なくとも1つの縁が第2テスト構造体の少なくとも1つの縁と同一面に配列されるような形状及び配列を持つように製造される。第1と第2テスト構造体の縁の間のオフセットは、第1照射ユニットによって発せられ第1テスト構造体を製造するために使用される第1放射ビームと第2照射ユニットによって発せられ第2テスト構造体を製造するために使用される第2放射ビームとの間のオフセットに合致する。
【0040】
第1照射ユニットと第2照射ユニットが整列されたとき相互に同一面に配列される第1と第2テスト構造体の縁は、例えば、照射平面内でx方向に対して平行に延びることができる。縁の間のオフセットは、照射平面内におけるy方向の即ち照射平面においてx方向に対して直角を成す方向の第1と第2放射ビームの間のオフセットを示す。逆に、第1照射ユニットと第2照射ユニットが整列されたとき相互に同一面に配列される第1と第2テスト構造体の縁が、照射平面内でy方向に対して平行に延びる場合、縁の間のオフセットは、照射平面内における第1と第2放射ビームの間のx方向のオフセットを示す。x方向及びy方向の両方の第1と第2放射ビームの間のオフセットを測定するために、x方向及びy方向に対して平行の縁を持つテスト構造体又は相互に90度回転させた対のテスト構造体を製造できる。
【0041】
1つの実施形態において、第1テスト構造体は長方形状を持つことができ、同様に長方形状を有する第2テスト構造体に隣接して製造できる。特に、第1と第2テスト構造体は、合同の長方形状を持つことができ、第1照射ユニットと第2照射ユニットが整列されたとき第1テスト構造体の縁が照射平面内でx方向又はy方向に対して平行にかつ第2テスト構造体に縁と同一面に配列されるように、並べて配列できる。これらのテスト構造体は、容易に製造できる。更に、テスト構造体の間のオフセットは、容易に測定できる。但し、照射平面内における2つの方向のオフセットを測定しなければならない場合、2対のテスト構造体を造形しなければならない。
【0042】
又は、第1及び第2テスト構造体は、実質的に線状とすることができ、第1照射ユニットと第2照射ユニットが整列されたとき十字を形成できる。このようなテスト構造体の設計は、単一対のテスト構造体の助けで照射平面内における2方向の照射ユニットの放射ビームのオフセットを測定できるようにする。但し、線状のテスト構造体は構造体の造形の完了後にテスト構造体の間のオフセットを手動で計測するために取り扱うのが難しい。したがって、線状テスト構造体は、上述のように、第1及び第2テスト構造体の製造時に実施されるオフセット計測に採用されることが好ましい。
【0043】
別の実施形態において、第1テスト構造体は、第1照射ユニットと第2照射ユニットが整列されたとき実質的にL字形の第2テスト構造体に与えられたカットアウトの中に嵌る長方形状を有する。第1と第2テスト構造体は、相互に接触するように配列できる。但し、照射ユニットの不整列のせいで原料粉末領域が第1及び第2放射ビームの両方によって照射されることを避けるために、第1と第2テスト構造体を相互から距離を置いて配列することも想定できる。第1テスト構造体が実質的にL字形の第2テスト構造体に与えられたカットアウトの中へ嵌まるテスト構造体の設計は、特に、マルチビーム照射システムの2つを超える例えば4つの照射ユニットを整列するために有利である。例えば、L字形の第2テスト構造体は、後に他の照射システムを整列するための基準システムとして使用される照射システムの助けで製造できる。
【0044】
マルチビーム照射システムを整列する方法ための更に好ましい実施形態において、第1と第2テスト構造体は、共通ベース上に製造される。テスト構造体は、その後、基質プラットフォームから及び/又は共通ベースと一緒にキャリアから分離して、例えば手動計測ツールの助けでオフセットを計測する際に容易に扱うことができる。
【0045】
マルチビーム照射システムを備える電磁又は粒子放射で原料粉末の層を照射すすることによって三次元加工品を製造するための装置を作動する方法は、上述のように方法に従って装置のマルチビーム照射システムを整列するステップを含む。その後、更なる原料粉末層が、キャリア上に塗布され、ビーム放射平面と照射平面との間に定距離を維持しながら、三次元加工品を製造するために較正され整列された第1及び第2照射ユニットによって発せられた第1及び第2放射ビームで照射される。その結果、第1と第2照射ユニットの整列は、単一の加工品の製造時だけでなく、その後の製造プロセスにおいても、確実に維持できる。これによって重なりゾーンにおいても高品質の加工品を製造できるようにする。
【0046】
三次元加工品を製造するための装置を作動する方法の好ましい実施形態において、ビーム放射平面と照射平面との間に定距離を維持するために、キャリア上に原料粉末層を塗布するために使用される粉末塗布機器は、ビーム放射平面に対して適切に位置付けられる。特に、キャリア上に塗布された原料粉末を均すのに役立つ粉末塗布機器のレベリングスライダは、粉末塗布機器のレベリングスライダの交換を伴う粉末塗布機器の保守後にも、ビーム放射平面と照射平面との間の定距離が維持されるようにするためにビーム放射平面に対して適切に位置付けできる。
【0047】
ビーム放射平面と照射平面との間の距離は、出来る限り正確に設定されなければならない。したがって、粉末塗布機器は、キャリアに対して粉末塗布機器を位置付けできるようにし、特に±2μm好ましくは±1μmの精度でビーム放射平面と照射平面との間の距離を設定できるようにする位置付けツールの助けで、ビーム放射平面に対して位置付けできる。
【0048】
本発明の好ましい実施形態について、下記の添付図面を参照して更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、原料粉末上に電磁又は粒子放射を選択的に照射することによって三次元加工品を製造するための装置を示す。
図2a図2aは、ビーム放射平面と照射平面との間の距離に対する、図1に示す装置の第1照射ユニットによって発せられた第1放射ビームと第2照射ユニットによって発せられた第2放射ビームとの間のオフセットの依存性を示す。
図2b図2bは、ビーム放射平面と照射平面との間の距離に対する、図1に示す装置の第1照射ユニットによって発せられた第1放射ビームと第2照射ユニットによって発せられた第2放射ビームとの間のオフセットの依存性を示す。
図2c図2cは、ビーム放射平面と照射平面との間の距離に対する、図1に示す装置の第1照射ユニットによって発せられた第1放射ビームと第2照射ユニットによって発せられた第2放射ビームとの間のオフセットの依存性を示す。
図2d図2dは、ビーム放射平面と照射平面との間の距離に対する、図1に示す装置の第1照射ユニットによって発せられた第1放射ビームと第2照射ユニットによって発せられた第2放射ビームとの間のオフセットの依存性を示す。
図2e図2eは、ビーム放射平面と照射平面との間の距離に対する、図1に示す装置の第1照射ユニットによって発せられた第1放射ビームと第2照射ユニットによって発せられた第2放射ビームとの間のオフセットの依存性を示す。
図3a図3aは、テスト構造体設計の第1実施形態を示す。
図3b図3bは、テスト構造体設計の第1実施形態を示す。
図4a図4aは、テスト構造体設計の第2実施形態を示す。
図4b図4bは、テスト構造体設計の第2実施形態を示す。
図5a図5aは、テスト構造体設計の第3実施形態を示す。
図5b図5bは、テスト構造体設計の第3実施形態を示す。
図6a図6aは、テスト構造体設計の第3実施形態の修正を示す。
図6b図6bは、テスト構造体設計の第3実施形態の修正を示す。
図7a図7aは、図6aに従ったテスト構造体設計の第1と第2テスト構造体の間のオフセットの手動測定を示す。
図7b図7bは、図6bに従ったテスト構造体設計の第1と第2テスト構造体の間のオフセットの手動測定を示す。
図8図8は、装置のビルド室の中に位置付けられた状態の、図1に示す装置の粉末塗布機器を位置付けるための位置付けツールを示す。
図9図9は、図8に示す位置付けツールを使用する粉末塗布機器14の位置付けを示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、三次元加工品を製造するための装置10を示す。装置10は、プロセス室12を備える。プロセス室12内に配置される粉末塗布機器14は、キャリア16上に原料粉末を塗布するのに役立つ。図1の配列において、原料粉末層15がキャリア16上に塗布される。矢印Aで示すように、キャリア16は、キャリア16上の原料粉末から層に積み重ねられるとき加工品の構成高さが増すにつれて、キャリア16が垂直方向に下向きに移動できるように、ビルド室19の中へ垂直方向に移動可能である。粉末塗布機器14は、キャリア16上に塗布された原料粉末層15を均して滑らかにするのに役立つレベリングスライダ17を備える。
【0051】
第1及び第2照射ゾーン18a、18bは、それぞれ原料粉末層15の表面及びキャリア16上に並置配列で画定される。即ち、図1に示す装置10において、原料粉末層15及びキャリア16上の左半分はそれぞれ第1照射ゾーン18aを画定し、原料粉末層15及びキャリア16の右半分はそれぞれ第2照射ゾーン18bを画定する。第1と第2照射ゾーン18a、18bの間の境界領域には、重なりゾーン18cが画定される。
【0052】
装置10は、キャリア16上に塗布された原料粉末を選択的に照射するための照射システム20を備える。照射システム20の作動は、制御機器21によって制御される。照射システム20によって、キャリア16上に塗布された原料粉末は、製造予定の加工品の所望の形状に応じてサイト選択的に放射を受けることができる。照射システム20は、第1及び第2照射ユニット22a、22bを備える。第1照射ユニット22aは、原料粉末層15の表面に画定された第1照射ゾーン18a及び重なりゾーン18cを第1放射ビーム24aで照射する。第2照射ユニット22bは、原料粉末層15の表面に画定された第2照射ゾーン18b及び重なりゾーン18cを第2放射ビーム24bで照射する。
【0053】
放射ビーム24a、24bは、ビーム放射平面Bにおいて第1及び第2照射ユニット22a、22bから発する。原料粉末層15の上面は照射平面Sを画定し、照射平面において、照射ユニット22a、22bによって発せられた放射ビーム24a、24bは、原料粉末へ入射する。照射平面Sとビーム放射平面Bとの間の距離は、Dで示される。更に下で詳細に説明するように、ビーム放射平面Bに対する照射平面Sの位置、したがって照射平面Sとビーム放射平面Bとの間の距離Dは、ビーム放射平面Bに対する粉末塗布機器14特にレベリングスライダ17の下面の位置に依存する。粉末塗布装置14を所望通りに正確に位置付けるために、装置10は、ビーム放射平面Bに対して粉末塗布装置14したがってレベリングスライダ17の下側レベリング面を±2μm特に±1μmの精度で位置付けるように構成される位置付けツール27を備える。位置付けツール27は、装置10から分離して設置して、必要な場合にのみ、装置10のプロセス室12の中へ挿入できる。
【0054】
図8に示すように、位置付けツール27は、照射平面Sに配列される2つのレベリングプレート40、42を備える。照射平面Sにおいてレベリングプレート40、42を位置付けるために、位置付けツール27は、装置10のビルド室19に架かる支持構造体44を備える。レベリングプレート40、42の各々は、それぞれのレベリングプレート40、42までの対象物の距離を計測するための距離計測機器46、48に接続される。レバー50は、上側位置と下側位置との間の固定距離でレベリングプレート40、42を昇降するのに役立つ。
【0055】
位置付けツール27を使用する際、位置付けツール27は、プロセス室12の中に配置され、レベリングプレート40、42の位置は、レベリングプレート40、42が照射平面Sに配列されるように設定される。その後、レベリングプレート40、42は、粉末塗布装置14がレベリングプレート40、42に衝突することなくその上方に位置付けられるようにするためにレバー50を起動することによって降下される。粉末塗布装置14が所望の場所に達した後、レベリングプレート40、42はレベリングプレート40、42が図9に示すようにレベリングスライダ17の下側レベリング面に当接するように、再び照射平面Sまで上昇される。その後、レベリングスライダ17は、その下側レベリング面がレベリングプレート40、42から所望の距離例えば200μm±10μmに配置されるまで、粉末塗布機器14に設置されたマイクロメータースクリュー52の助けで上昇される。レベリングスライダ17の位置が設定されたら、レベリングプレート40、42は、レバー50を起動することによって再び降下でき、粉末塗布機器14を移動でき、位置付けツール27は、プロセス室12から取り出すことができる。
【0056】
両方の照射ユニット22a、22bは、レーザービーム源26例えば約1070~1080nmの波長のレーザー光を発するダイオード励起イッテルビウムファイバレーザーと結合される。第1及び第2照射ユニット22a、22bの各々は、例えば放射ビームを拡大するためのビームエクスパンダとスキャナと対物レンズとを含むことができるレーザービーム源26によって発せられた放射ビームを案内及び/又は処理するための光学ユニットを備える。又は、照射ユニット22a、22bの光学ユニットは、集束レンズを含むビームエクスパンダとスキャナユニットとを備えることができる。スキャナユニットによって、ビーム経路の方向及びビーム経路に対して直角を成す平面の両方における放射ビームの焦点位置は、変更し適合化できる。スキャナユニットは、検流計スキャナの形式で設計でき、対物レンズは、fθ対物レンズとすることができる。図1に示す装置10の実施形態において、照射ユニット22a、22bによって発せられる放射ビーム24a、24bは、レーザービームである。
【0057】
装置10は、更に、放射ビーム24a、24bと原料粉末の相互作用によって生じるメルトプールを監視するためのメルトプール監視システム28を備える。メルトプール監視システム28は光学計測機器30を備え、図1に示す装置10の実施形態において光学計測機器は高温検出機器の形式で設計される。光学計測機器30は、熱放射を受けてこれを検出するように構成される。熱放射は、原料粉末が加熱され溶融されるメルトプールの温度に応じて固有の波長の最大強度を有する可視及び/又は赤外線波長範囲の電磁放射とすることができる。検出された熱放射に応じて、光学計測機器30は、検出された放射強度を示す強度値を出力する。
【0058】
更に、装置10は、原料粉末層15の欠損又は不規則性を検出するためにキャリア16上に塗布された原料粉末層15を監視するのに役立つ層制御システム31を備える。層制御システム31は、光学計測機器32を備える。光学計測機器は、図1に示す装置10の実施形態において、カメラと画像処理システムを備える画像ピックアップ機器の形式で設計される。光学計測機器32、特に光学計測機器32のカメラは、照射平面Sの二次元画像を捕捉するように構成される。更に、光学計測装置32の画像処理システムは、欠損又は不規則性を検出するために原料粉末層15の上面の二次元画像を自動的に処理するように構成される。又は、画像処理システムは、省略でき、光学計測機器32によって捕捉された画像は、装置10のオペレータによって目視検査できる。
【0059】
図2において、図2a、2b及び2cは、それぞれ、照射ユニット22a、22b及び第1及び第2照射ユニット22a、22bの較正に使用される走査野プレート33の平面概略図、前面概略図及び側面概略図である。走査野プレート33の上面は、ビーム放射平面Bから規定の距離に配置される較正照射平面Cを画定する。照射平面Sと同様、較正照射平面Cも、第1照射ユニット22aによって照射できる第1照射ゾーン18aと、第2照射ユニット22bによって照射できる第2照射ゾーン18bと、第1及び第2照射ユニット22a、22bの両方によって照射できる重なりゾーン18cと、を備える。
【0060】
照射システム20の第1照射ユニット22aは、較正照射平面Cにおいて第1照射ユニット22aによって発せられた第1放射ビーム24aの基準パターンに対するオフセットが閾値を上回らないように、例えば欧州特許第3241668(A1)号明細書(特許文献3)において説明されるように、較正される。更に、照射システム20の第2照射ユニット22bも、較正照射平面Cにおいて第2照射ユニット22aによって発せられた第2放射ビーム24bの基準パターンに対するオフセットが閾値を上回らないように、例えば欧州特許第3241668(A1)号明細書(特許文献3)において説明されるように、較正される。
【0061】
第1及び第2照射ユニット22a、22bの較正後、較正照射平面Cの重なりゾーン18における第1と第2放射ビーム24a、24bの間のオフセットは、無視できる。即ち、第1及び第2照射ユニット22a、22bは、指定される較正照射平面Cの重なりゾーン18cにおける第1放射ビーム24aの入射点が、較正照射平面Cの重なりゾーン18cにおける第2放射ビーム24bの入射点と一致するように、制御機器21によって制御できる(図2a~2c)。
【0062】
図2d及び2eに示すように、装置10の通常作動時に三次元加工品を製造するために、第1及び第2照射ユニット22a、22bによって発せられた第1及び第2放射ビーム24a、24bで照射される予定の粉末層15は、粉末塗布機器14によってキャリア16上に塗布される。その結果、原料粉末層15の表面によって画定され装置10の作動時に照射ユニット22a、22bによって発せられた放射ビーム24a、24bを受ける原料粉末層15の照射平面Sは、較正照射平面Cに対して実質的に平行でかつ較正照射平面Cから距離dに配置される。距離dは、ビーム放射平面Bに対する粉末塗布機器14特に粉末塗布機器14のレベリングスライダ17の位置に依存する。
【0063】
図2d及び2eに示すように、較正照射平面Cと照射平面Sとの間に存在するz方向のオフセットは、不可避的に、照射ユニット22a、22bによって発せられた放射ビーム24a、24bの照射平面S内におけるx方向及びy方向のオフセットdx、dyを生じる。図2dから明らかなように、照射平面S内におけるx方向の放射ビーム24a、24bのオフセットdxは、照射平面Sにおける放射ビーム24a、24bの両方の入射点が同じ量dxだけシフトするので、あまり重要ではない。これに対して、照射平面Sにおけるy方向の放射ビーム24a、24bのオフセットdyは、照射平面Sにおける放射ビーム24a、24bの入射点をy方向において相互に2dyだけ離間させる。
【0064】
照射ユニット22a、22bによって発せられた放射ビーム24a、24bの入射点の間のオフセットを補正するために、較正済み第1照射ユニット22aを使用して照射平面Sの重なりゾーン18cに第1テスト構造体34が製造される。更に、較正済み第2照射ユニット22bを使用して照射平面Sの重なりゾーン18cに第2テスト構造体36が製造される。第1及び第2テスト構造体34、36の様々な実施形態を図3~6に示す。但し、全ての対のテスト構造体34、36は、同じ原料粉末層に相互に隣接して製造される点が共通している。
【0065】
次のステップにおいて、照射平面Sにおける第1と第2テスト構造体34、36の間のオフセットdx、dyが測定される。その後、第1及び第2照射ユニット22a、22bの少なくとも一方は、照射平面Sにおける第1と第2テスト構造体34、36の間のオフセットdx、dyが小さくなり、最終的に閾値を上回らないように、照射平面Sにおける第1と第2テスト構造体34、36の間に測定されたオフセットdx、dyに基づいて、整列される。
【0066】
図3~6に示す代表的なテスト構造体34、36(下でさらに詳しく説明する)は、照射平面Sにおいて第1と第2テスト構造体34、36の間で測定されたオフセットdx、dyが第1及び第2照射ユニット22a、22bの少なくとも一方を整列するために直接使用できるような形状及び配列を持つ。テスト構造体34、36の測定オフセットdx、dyを補正するために、照射平面Sにおける第1放射ビーム24aの入射点をシフトするために第1照射ユニット22aのみを修正するか、又は第2照射ユニット22bは照射平面Sにおける第2放射ビーム24bの入射点を-dx及び-dyだけシフトするために修正するか、又は第1及び第2放射ビーム24a、24bの入射点を整列させるために両方の照射ユニット22a、22bを修正できる。例えば、これは、照射ユニット22a、22bの一方を-dx、-dyだけシフトすることによって、又はオフセットdx、dyを補正するために適切な量だけ両方の照射ユニット22a、22bをシフトすることによって可能である。
【0067】
第1及び第2テスト構造体34、36は、三次元加工品を製造するための装置10の通常作動とは別個に実施される装置10の整列作動時に製造できる。例えば、第1及び第2テスト構造体34、36は、造形プロセスの完了後で新しい造形プロセスの開始前に実施される装置10の整列作動の過程で製造できる。但し、第1及び第2テスト構造体34、36を装置10の通常作動時に製造することも可能である。即ち第1及び第2テスト構造体34、36及び三次元加工品は、単一の造形プロセスにおいて同時に製造できる。
【0068】
第1及び第2テスト構造体34、36は、テスト構造体34、36及び任意に三次元加工品を上に造形するためにキャリア16上に配置された基質板に接続される塊状コンポーネントの形式で製造できる。テスト構造体34、36が装置10の通常作動時に製造される場合、テスト構造体34、36は、同時に製造される三次元加工品の層の数に合致する層の数で形成できる。塊状コンポーネントの形式のテスト構造体34、36は、造形プロセス完了後に、第1と第2テスト構造体34、36の間のオフセットdx、dyを測定するために、例えば図7に示すマイクロメータースクリューの助けで計測できる。第1と第2テスト構造体34、36の間のオフセットdx、dyを計測するために、テスト構造体34、36は、キャリア16又は基質板に接続したままにするか、又はキャリア16又は基質板から外すことができる。キャリ16からテスト構造体34、36を外す際及びテスト構造34、36の間のオフセットdx、dyを計測する際のテスト構造体34、36の取り扱いを改良するために、テスト構造体34、36は共通ベース上に製造できる。
【0069】
又は、第1テスト構造体34及び第2テスト構造体36は、基質板とは別個に形成されるロストコンポーネントの形式で製造できる。特に、ロストコンポーネントの形式で製造されたテスト構造体34、36は、同時に製造される三次元加工品の層の数より少ない層の数で製造できる。第1テスト構造体34及び第2テスト構造体36の少なくとも1つの層は、キャリア16から所定の距離で造形される同時に製造される三次元加工品の中間層と同一面に配列できる。更に、テスト構造体の層は、規則的に又はランダムに又はアルゴリズムに基づいて製造されることが想定できる。例えば、5つのテスト構造体の層は、加工品20層ごとの5つの加工品層と同平面に製造できる。
【0070】
第1と第2テスト構造体34、36の間のオフセットdx、dyは、第1及び第2テスト構造体34、36の製造の完了後のみに測定できる。その代わりに又はそれに加えて、第1と第2テスト構造体34、36の間のオフセットdx、dyは、第1及び第2テスト構造体34、36の製造時に、例えば第1及び第2テスト構造体34、36の1つの層の完成後で第1及び第2テスト構造体34、36の更なる層の製造開始前に、測定できる。
【0071】
図1に示す装置10において、第1と第2テスト構造体34、36の間のオフセットdx、dyは、メルトプール監視システム28の光学計測機器30の助けでかつ/又は層制御システム31の光学計測機器32の助けで、測定できる。メルトプール監視システム28の光学計測機器30の助けで第1と第2テスト構造体34、36の間のオフセットdx、dyを計測するために、第1及び第2テスト構造体34、36の1つの層の完成後に、第1及び第2テスト構造体34、36を含む照射平面Sの領域は、第1及び第2照射ユニット22a、22bの少なくとも一方によって発せられたテスト放射ビームで走査される。テスト放射ビームで走査される照射平面Sの領域は、完璧に整列された第1と第2照射ユニット22a、22bによって製造された第1及び第2テスト構造体34、36が位置すると予想される領域だけでなく、走査予定の領域が第1と第2照射ユニット22a、22bの不整列のせいで相互にオフセットする第1及び第2テスト構造体34、36を含むようにするために周囲の領域も含むように、設定される。
【0072】
特に、第1及び第2テスト構造体34、36を含む照射平面Sの領域は、照射平面S内に延びる第1の複数のスキャンベクトル及び第1の複数のスキャンベクトルに対して所定の角度特に直角を成して照射平面S内に延びる第2の複数のスキャンベクトルを含むパターンに従って、テスト放射ビームで走査される。第1及び第2の複数のスキャンベクトルの平行のスキャンベクトルは、一方向である。更に、第1及び第2テスト構造体34、36を含む照射平面Sの領域は、第1及び第2テスト構造体34、36の製造時の第1及び第2放射ビーム24a、24bのビームパワー及びスキャン速度より低いビームパワー及びスキャン速度のテスト放射ビームで走査される。又、第1及び第2テスト構造体34、36を含む照射平面Sの領域は一方向に照射される。
【0073】
第1及び第2テスト構造体34、36を含む照射平面Sの領域の走査時に、テスト放射ビームと第1及び第2テスト構造体34、36かあるいは照射平面S内で第1及び第2テスト構造体34、36を取り囲む原料粉末との相互作用は、光学計測機器30によって監視される。テスト放射ビームが非固化原料粉末に入射するとき、光学計測機器30によって検出される強度値は、テスト放射ビームが以前に固化したテスト構造体表面に入射するとき光学計測機器30によって検出される強度値より高い。その結果、第1及び第2テスト構造体34、36と第1及び第2テスト構造体34、36を取り囲む原料粉末との間の境界線の場所、したがって第1と第2テスト構造体34、36の間のオフセットdx、dyを測定できる。
【0074】
層制御システム31の光学計測機器32が第1と第2テスト構造体34、36の間のオフセットdx、dyを測定するために使用される場合、第1及び第2テスト構造体34、36の1つの層の完成後の照射平面Sの画像特に二次元画像を捕捉できる。捕捉された画像は、照射平面S全体の又は第1及び第2テスト構造体34、36を含む照射平面Sの領域のみを含むことができる。第1及び第2テスト構造体34、36と第1及び第2テスト構造体34、36を取り囲む原料粉末との間の境界線の場所は、自動画像処理によって又は手動で即ち捕捉画像を目視検査することによって、照射平面Sの捕捉画像に基づいて測定できる。
【0075】
照射ユニット22a、22bは、第1及び第2テスト構造体34、36の製造完了後にオフセットdx、dyが閾値を上回らないように第1と第2テスト構造体34、36の間に測定されたオフセットdx、dyに基づいて整列できる。その代わりに又はそれに加えて、オフセットdx、dyが第1及び第2テスト構造体34、36の製造中にも閾値を上回らないように、第1と第2テスト構造体34、36の間の測定オフセットdx、dyに基づいて照射ユニット22a、22bを整列することも想定できる。例えば、照射ユニット22a、22bを整列するための整列手順は、第1及び第2テスト構造体34、36の1つの層の完成後に、但し第1及び第2テスト構造体34、36のその後の層の生成前に、実施できる。第1と第2テスト構造体34、36の間のオフセットdx、dyの測定と同様、照射ユニット22a、22bの整列も、手動又は例えば制御機器21の制御の下で自動的に実施できる。
【0076】
図3~6にテスト構造体の様々な代表的設計を示す。これらの図から明らかになるように、テスト構造体34、36の設計は、第1と第2テスト構造体34、36が同じ原料粉末層において即ちキャリア16の表面に対して実質的に平行の同じ平面において、相互に隣接できるようにする。その結果、第1と第2テスト構造体34、36は、同時にかつ低い造形高さで製造できる。更に、図3~6に従った様々なテスト構造体設計は、第1照射ユニット22aと第2照射ユニット22bが整列されたとき、第1テスト構造体34及び第2テスト構造体36が、第1テスト構造体34の少なくとも1つの縁が第2テスト構造体36の少なくとも1つの縁と同一面に配列される形状および配列を持つ点で共通である。言い換えると、テスト構造体34、36は、第1及び第2照射ユニット22a、22bによって発せられた放射ビーム24a、24b間のオフセットdx、dyが、照射ユニット22a、22bが整列されたとき相互に対して同一面に延びる第1と第2テスト構造体34、36の縁の間に対応するオフセットdx、dyを生じるような形状および配列を持つ。
【0077】
図3は、テスト構造体設計の第1実施形態を示す。図3aは、整列済み照射ユニット22a、22bによって製造されたテスト構造体配列の外観を示し、図3bは、照射平面内でx方向及びy方向の両方において相互にオフセットする放射ビーム24a、24bを発する照射ユニット22a、22bによって製造されるテスト構造体配列の外観を示す。テスト構造体配列は、2対の第1及び第2テスト構造体34、36を含む。両方の第1テスト構造体34は、長方形状を持ち、同じ原料粉末層において第2テスト構造体36に隣接して製造され配列される。第2テスト構造体36も、第1テスト構造体34の長方形状と合同の長方形状を有する。テスト構造体34、36の対の各々において、第1と第2テスト構造体34、36は、並んで配列される。
【0078】
図3において左側に示される第1対のテスト構造体34、36において、第1テスト構造体34の下縁38は、第1照射ユニット22aと第2照射ユニット22bが整列されたとき照射平面S内でx方向に対して平行にかつ第2テスト構造体36の下縁40と同一面に配列される(図3a)。これに対して、第1照射ユニット22aと第2照射ユニット22bが整列されないとき、照射平面S内でy方向のオフセットdyが、第1テスト構造体34の下縁38と第2構造体36の下縁40との間に生じ、これは、照射ユニット22a、22bによって発せられた放射ビーム24a、24bの間のオフセットdyに合致する。
【0079】
図3において右側に示され第1対のテスト構造体34、36に対して90°回転された第2対のテスト構造体34、36において、第1テスト構造体34の左縁42は、第1照射ユニット22aと第2照射ユニット22bが整列されたとき、照射平面S内でy方向に対して平行にかつ第2テスト構造体36の左縁44と同一面に配列される(図3a)。これに対して、第1照射ユニット22aと第2照射ユニット22bが整列されないとき、照射平面S内でx方向のオフセットdxが第1テスト構造体34の左縁42と第2テスト構造体36の左縁44との間に生じる。これは、照射ユニット22a、22bによって発せられた放射ビーム24a、24bの間のオフセットdxに合致する。
【0080】
図3に従ったテスト構造体配列は、容易に製造できる。更に、テスト構造体34、36の間のオフセットは、例えば上述のように手動計測ツールによって又は光学計測機器30、32によって、容易に計測できる。但し、照射平面S内でx方向及びy方向の両方向のオフセットを測定しなければならない場合、2対のテスト構造体34、36を製造し計測する必要がある。
【0081】
別のテスト構造体配列を図4に示す。図4aは、整列済み照射ユニット22a、22bによって製造されたテスト構造体配列の外観を示し、図4bは、照射平面S内でx方向及びy方向の両方において相互にオフセットする放射ビーム24a、24bを発する照射ユニット22a、22bによって製造されたテスト構造体配列の外観を示す。第1及び第2テスト構造体34、36の各々は、実質的に線状である。第1テスト構造体34は、十字の左上部分を形成し、第2テスト構造体36は、十字の右下部分を形成する。
【0082】
図4bから明らかになるように、照射ユニット22a、22bによって発せられた放射ビーム24a、24bの間のオフセットdx、dyは、テスト構造体34、36の間のオフセットdx、dyを生じるので、照射平面S内での両方向における放射ビーム24a、24bのオフセットdx、dyは単一対のテスト構造体34、36の助けで測定できる。但し、線状テスト構造体34、36の間のオフセットdx、dyの手動測定は、可能ではないか又は少なくとも非常に困難なので、図4に従ったテスト構造体列は、第1及び第2テスト構造体34、36の製造時に実施されるオフセット測定プロセスに特に有利である。
【0083】
2つ超えの照射ユニット特に4つの照射ユニットを整列するためのプロセスに使用するのに特に適する別のテスト構造体配列を図5に示す。図5aは、整列済み照射ユニットによって製造されたテスト構造体配列の外観を示し、図5bは、照射平面S内でx方向及びy方向の両方において相互に対してオフセットする放射ビームを発する照射ユニットによって製造されたテスト構造体配列の外観を示す。図5の上部分は、第3及び第4照射ユニットによって照射できる重なりゾーン18c34に造形されるテスト構造物34、36を示す。図5の中央部分は、第2及び第3照射ユニットによって照射できる重なりゾーン18c23に造形されるテスト構造体34、36を示す。図5の下部分は、第1及び第2照射ユニットによって照射できる重なり部分18c12に造形されるテスト構造体34、36を示す。
【0084】
第1テスト構造体34の各々は、テスト構造体34、36を製造するために使用される照射ユニットが整列されたとき、対応する実質的にL字形の第2テスト構造体36に与えられたカットアウトの中に嵌まる長方形状を有する(図5a)。これに対して、それぞれのテスト構造体34、36を製造するために使用される照射ユニットによって発せられる放射ビームの間のオフセットは、テスト構造体34、36の間のオフセットを生じる(図5b)。したがって、図5bの上部分に示すテスト構造体34、36のオフセットdxt43、dyt43を計測することによって、照射平面S内でのx方向及びy方向の両方における第3及び第4照射ユニットによって発せられた放射ビームの間のオフセットの測定が可能になる。図5bの中央部分に示すテスト構造体34、36のオフセットdxt32、dyt32を計測することによって、照射平面S内でのx方向及びy方向の両方における第2及び第3照射ユニットによって発せられた放射ビームの間のオフセットの測定が可能になる。又、図5bの下部分に示すテスト構造体34、36のオフセットdxt12、dyt12を計測することによって、照射平面S内でのx方向及びy方向の両方における第1及び第2照射ユニットによって発せられた放射ビームの間のオフセットの測定が可能になる。
【0085】
第1と第2テスト構造体34、36は、図5に示すように相互に接触するように配列できる。但し、図6に示すように、第1と第2テスト構造体34、36は相互に所定の距離で配列することも想定できる。図6aは、整列済み照射ユニットよって製造されたテスト構造体配列の外観を示し、図6bは、照射平面S内でx方向及びy方向の両方において相互に対してオフセットする放射ビームを発する照射ユニットによって製造されたテスト構造体配列の外観を示す。図6に従った配列は、テスト構造体34、36の製造に使用される照射ユニットの非整列のせいによる原料粉末領域の二重照射の危険を最小限に抑える。
【0086】
図7に示すように、テスト構造体34、36は、例えばマイクロメータースクリューの助けで計測できる。図7aに示すように、第1ステップにおいて、x方向の設定寸法(set extension)は、x方向における第2テスト構造体36のソリッド(図7において上)部分の寸法を計測することによって測定できる。第2ステップにおいて、x方向における第1及び第2テスト構造体34、36の組合せの寸法が、x方向の実寸法を測定するために、図7bに示すように計測できる。第1と第2テスト構造体34、36の間のオフセットdxは、図7aに従って計測したx方向の設定寸法と図7bに従って計測したx方向の実寸法との間の差を形成することによって測定できる。y方向における第1と第2テスト構造体34、36の間のオフセットdyの測定も同様に実施できる。
【0087】
図5に従ったテスト構造体配列を使用するオフセット測定に基づいて4つの照射ユニットを整列するために、第1ステップにおいて、第3照射ユニットは、例えば、第1照射ユニットによって発せられた照射ビームを-dxr32及び-dyr32だけシフトするために第3照射ユニットを-dxt32及び-dyt32だけシフトすることによって、計測オフセットdxt32、dyt32を補正するために整列できる。第1照射ユニットは、第1照射ユニットによって発せられた放射ビームを-dxr12及び-dyr12だけシフトするために-dxt12及び-dyt12だけシフトされる。その後、第4照射ユニットは、第3照射ユニットの以前のシフトを考慮しながら、第4照射ユニットによって発せられた放射ビームを(-dxt43-dxt32)及び(dyt43-dyt32)だけシフトするために、(-dxt43-dxt32)及び(dyt43-dyt32)だけシフトされる。第2照射ユニットの位置は、一定に維持される。したがって、第2照射ユニットは、一種の基準照射ユニットとして使用される。但し、他の照射ユニット例えば第3照射ユニットを固定位置基準照射ユニットして使用することも想定できる。
【0088】
照射ユニット22a、22bの整列後、装置10の通常作動時に、三次元加工品を製造するために、ビーム放射平面Bと照射平面Dとの間の定距離Dを維持しながら、複数の原料粉末層15がキャリア16上に塗布され、較正及び整列済み第1及び第2照射ユニット22a、22bによって発せられた第1及び第2照射ビーム24a、24bで照射される。その結果、照射ユニット22a、22bの較正及び整列状態が維持されて、三次元加工品の継続的な高品質が得られる。ビーム放射平面Bと照射平面Sとの間の距離Dは、単一の加工品の製造時だけでなくその後の加工品製造プロセスにおいても、一定に維持されなければならない。その結果、その後の加工品製造プロセスの間の付加的な較正及び/又は整列手順を省くことができる。
【0089】
ビーム放射平面Bと照射平面Sとの間に定距離Dを維持するために、粉末塗布機器14特に粉末塗布機器14のレベリングスライダ17は、位置付けツール27によってビーム放射平面Bに対して適切に位置付けされる。特に、位置付けツール27は、ビーム放射平面Bと照射平面Sとの間の定距離Dがレベリングスライダ17の交換後も維持されるように粉末塗布機器14を位置付けるために使用される。
図1
図2a)】
図2b)】
図2c)】
図2d)】
図2e)】
図3a)】
図3b)】
図4a)】
図4b)】
図5a)】
図5b)】
図6a)】
図6b)】
図7a)】
図7b)】
図8
図9