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特許7538741部品内蔵配線基板、及び、部品内蔵配線基板の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】部品内蔵配線基板、及び、部品内蔵配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021030850
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131743
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】能登 裕康
(72)【発明者】
【氏名】武仲 徹
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-207958(JP,A)
【文献】特開2016-039214(JP,A)
【文献】特開2020-057733(JP,A)
【文献】特開2015-106610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層及び導体層が交互に積層されてなる積層体を準備することと、
前記積層体上に第1樹脂絶縁層を形成し、前記第1樹脂絶縁層上に第1導体層を形成することと、
前記第1導体層上に第2樹脂絶縁層を形成することと、
前記第2樹脂絶縁層及び前記第1樹脂絶縁層を貫通し底部に前記積層体の一部を露出する凹部を形成することと、
前記凹部内に電子部品を搭載することと、
前記凹部内及び前記第2樹脂絶縁層上に第3樹脂絶縁層を形成し、前記電子部品を前記凹部内に封止することと、
を含む、部品内蔵配線基板の製造方法であって、
前記第2樹脂絶縁層を形成することは、前記第1導体層の上面と前記第2樹脂絶縁層の上面との最短距離が10μm以上、且つ、20μm以下となるように前記第2樹脂絶縁層を形成することを含み、
前記第3樹脂絶縁層を形成することは、前記第3樹脂絶縁層の厚さと前記最短距離との和の0.35倍以上、且つ、0.45倍以下の厚さを有するように、前記第3樹脂絶縁層を形成することを含んでいる。
【請求項2】
請求項1記載の部品内蔵配線基板の製造方法であって、前記第2樹脂絶縁層を形成することは、カバーフィルムが貼着された樹脂フィルムを前記樹脂フィルムが前記第1導体層と接するように積層することと、前記カバーフィルムを前記樹脂フィルムから剥離することを含んでいる。
【請求項3】
請求項1記載の部品内蔵配線基板の製造方法であって、前記第2樹脂絶縁層は、前記第1樹脂絶縁層よりも低いフィラー含有率を有するように形成される。
【請求項4】
請求項3記載の部品内蔵配線基板の製造方法であって、前記第2樹脂絶縁層は、フィラー含有率が75wt%以下であるように形成される。
【請求項5】
請求項1記載の部品内蔵配線基板の製造方法であって、前記積層体を準備することは、前記積層体の表面に導体パッドを備える導体層を形成することを含み、前記凹部を形成することは、前記底部に前記導体パッドを露出させることを含んでいる。
【請求項6】
請求項1記載の部品内蔵配線基板の製造方法であって、前記第2樹脂絶縁層は前記最短距離が略15μmに形成され、前記第3樹脂絶縁層は略10μmの厚さに形成される。
【請求項7】
絶縁層及び導体層が交互に積層されてなる積層体と、
前記積層体上に形成されている第1樹脂絶縁層と、
前記第1樹脂絶縁層上に形成されている第1導体層と、
前記第1導体層上に形成されている第2樹脂絶縁層と、
前記第2樹脂絶縁層及び前記第1樹脂絶縁層を貫通し底部に前記積層体の一部を露出する凹部と、
前記凹部内に収容される電子部品と、
前記凹部内を充填することで前記電子部品を前記凹部内に封止すると共に、前記第2樹脂絶縁層上に形成される第3樹脂絶縁層と、
前記第3樹脂絶縁層上に形成される第2導体層と、
を含む、部品内蔵配線基板であって、
前記第1導体層の上面と前記第2樹脂絶縁層の上面との距離が最も小さい部分において、前記第2樹脂絶縁層の厚さは10μm以上、且つ、20μm以下であり、
前記第2樹脂絶縁層の厚さは、前記第3樹脂絶縁層の厚さと前記第2樹脂絶縁層の厚さとの和の0.55倍以上、且つ、0.65倍以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品内蔵配線基板及び部品内蔵配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子部品内蔵基板、及び、電子部品内蔵基板の製造方法が開示されている。開示されている電子部品内蔵基板の製造方法では、第2樹脂絶縁層上に形成される第2導体配線層を被覆する第3樹脂絶縁層を形成し、レーザー光によって第3及び第2樹脂絶縁層を貫通し、内部に電子部品を収容するキャビティを形成することが開示されている。キャビティ内に収容される電子部品は、キャビティ内及び第3樹脂絶縁層上に延在する第4樹脂絶縁層で埋設され、第4樹脂絶縁層上には第3導体配線層が形成される。第2導体配線層と第3導体配線層との間に介在する樹脂絶縁層は2層の樹脂絶縁層(第3樹脂絶縁層及び第4樹脂絶縁層)によって構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-106610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている電子部品内蔵基板では、第2導体配線層と第3導体配線層との間に、第3樹脂絶縁層と第4樹脂絶縁層とからなる2層構造の樹脂絶縁層が介在している。第2導体配線層と第3導体配線層との間の距離、すなわち第3樹脂絶縁層と第4樹脂絶縁層とからなる2層構造の樹脂絶縁層の厚さに制限がある場合には、第3樹脂絶縁層は比較的薄く形成される必要があると考えられる。第3樹脂絶縁層を第2導体配線層上に積層する際に、第2導体配線層が第3樹脂絶縁層から突出する虞があると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の部品内蔵配線基板の製造方法は、絶縁層及び導体層が交互に積層されてなる積層体を準備することと、前記積層体上に第1樹脂絶縁層を形成し、前記第1樹脂絶縁層上に第1導体層を形成することと、前記第1導体層上に第2樹脂絶縁層を形成することと、前記第2樹脂絶縁層及び前記第1樹脂絶縁層を貫通し底部に前記積層体の一部を露出する凹部を形成することと、前記凹部内に電子部品を搭載することと、前記凹部内及び前記第2樹脂絶縁層上に第3樹脂絶縁層を形成し、前記電子部品を前記凹部内に封止することと、を含んでいる。前記第2樹脂絶縁層を形成することは、前記第1導体層の上面と前記第2樹脂絶縁層の上面との最短距離が10μm以上、且つ、20μm以下となるように前記第2樹脂絶縁層を形成することを含み、前記第3樹脂絶縁層を形成することは、前記第3樹脂絶縁層の厚さと前記最短距離との和の0.35倍以上、且つ、0.45倍以下の厚さを有するように、前記第3樹脂絶縁層を形成することを含んでいる。
【0006】
本発明の部品内蔵配線基板は、絶縁層及び導体層が交互に積層されてなる積層体と、前記積層体上に形成されている第1樹脂絶縁層と、前記第1樹脂絶縁層上に形成されている第1導体層と、前記第1導体層上に形成されている第2樹脂絶縁層と、前記第2樹脂絶縁層及び前記第1樹脂絶縁層を貫通し底部に前記積層体の一部を露出する凹部と、前記凹部内に収容される電子部品と、前記凹部内を充填することで前記電子部品を前記凹部内に封止すると共に、前記第2樹脂絶縁層上に形成される第3樹脂絶縁層と、前記第3樹脂絶縁層上に形成される第2導体層と、を含んでいる。前記第1導体層の上面と前記第2樹脂絶縁層の上面との距離が最も小さい部分において、前記第2樹脂絶縁層の厚さは10μm以上、且つ、20μm以下であり、前記第2樹脂絶縁層の厚さは、前記第3樹脂絶縁層の厚さと前記第2樹脂絶縁層の厚さとの和の0.55倍以上、且つ、0.65倍以下である。
【0007】
本発明の実施形態によれば、第2樹脂絶縁層と第3樹脂絶縁層との界面における、異物の残留や層間剥離などの不良の発生が抑制され得る部品内蔵配線基板、及び、部品内蔵配線基板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の部品内蔵配線基板の一例を示す断面図。
図2図1の部品内蔵配線基板の部分拡大図。
図3A】本発明の一実施形態の部品内蔵配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3B】本発明の一実施形態の部品内蔵配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3C】本発明の一実施形態の部品内蔵配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3D】本発明の一実施形態の部品内蔵配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3E】本発明の一実施形態の部品内蔵配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3F】本発明の一実施形態の部品内蔵配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3G】本発明の一実施形態の部品内蔵配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の部品内蔵配線基板が図面を参照しながら説明される。図1は一実施形態の部品内蔵配線基板の一例である部品内蔵配線基板100を示す断面図である。図2には、図1における一点鎖線で囲まれた領域IIの拡大図が示されている。
【0010】
図1に示される例の、部品内蔵配線基板100はコア基板1を有している。コア基板1は、絶縁層3を有しており、その厚さ方向において対向する一方の面及び他方の面の上には、導体層2が形成されている。なお、コア基板1を構成する絶縁層3はコア絶縁層3とも称され、コア基板1を構成する導体層2はコア導体層2とも称される。
【0011】
コア基板1の厚さ方向における一方の面及び他方の面の上には、絶縁層11及び導体層12が交互に積層されている。図示の例では、コア基板1の一方の面及び他方の面の上に、それぞれ4層の絶縁層11及び導体層12が積層され、コア基板1と共に積層体10を構成している。積層体10は、その最外の表面として、導体層12及び導体層12から露出する絶縁層11によって構成される第1面10Aと、第1面10Aと厚さ方向における反対側の第2面10Bとを有している。
【0012】
なお、本明細書における各実施形態の説明では、部品内蔵配線基板100の厚さ方向においてコア基板1から遠い側は「上側」、「外側」、もしくは「上方」、又は単に「上」、「外」とも称され、コア基板1に近い側は「下側」、「内側」もしくは「下方」、又は単に「下」、「内」とも称される。さらに、配線基板100の各構成要素において、コア基板1と反対側を向く表面は「上面」とも称され、コア基板1側を向く表面は「下面」とも称される。
【0013】
積層体10の第1面10A上、及び、第2面10B上には、それぞれ3層の樹脂絶縁層101、102、103、及び2層の導体層111、112が形成されている。第1面10Aの上に形成される樹脂絶縁層101、102には、その厚さ方向を貫通して、第1面10Aに達する貫通孔RTが形成され、貫通孔RT内に露出する第1面10Aには電子部品ECが載置されている。具体的には、図示の例では、貫通孔RT内には、導体層12が有する導体パッド12Pが露出し、この導体パッド12P上に電子部品ECが接続部材BEを介して載置されている。貫通孔RT内には樹脂絶縁層103を構成する樹脂が充填され、電子部品ECは貫通孔RT内に封止されている。
【0014】
図示される例の部品内蔵配線基板100は、樹脂絶縁層103及び導体層112を覆うソルダーレジスト層SRを含んでおり、ソルダーレジスト層SRに形成される開口からは、部品内蔵配線基板100の最も外側の導体層112が露出する。なお、積層体10上に接して形成される樹脂絶縁層101は第1樹脂絶縁層101とも称され、樹脂絶縁層102は第2樹脂絶縁層102とも称され、樹脂絶縁層103は第3樹脂絶縁層103とも称される。導体層111は第1導体層111とも称され、導体層112は第2導体層112とも称される。樹脂絶縁層101、102、103、導体層111、112はソルダーレジスト層SRと共に、部品内蔵配線基板100の表層部を構成する。また、本明細書の説明においては、部品内蔵配線基板100は単に配線基板100とも称され、絶縁層101、102によって構成されている貫通孔RTの内壁及び第1面10Aで構成されている電子部品ECが収容される部分は、凹部RCと称される。
【0015】
コア絶縁層3は、コア絶縁層3の厚さ方向を貫通し、コア絶縁層3の両面に形成されているコア導体層2同士を接続するスルーホール導体4を含んでいる。積層体10は、各絶縁層11を貫通し、絶縁層11を介して隣接する導体層(導体層12同士、又は、導体層12と導体層2)を接続するビア導体13を含んでいる。そして配線基板100の表層部も、第1樹脂絶縁層101を貫通し第1導体層111と積層体10の第1面10Aを構成する導体層12とを接続するビア導体113、及び、第2樹脂絶縁層102及び第3樹脂絶縁層103を貫通し第2導体層112と第1導体層111とを接続するビア導体123を有している。電子部品ECの上面に形成されている電極パッドepは、第3樹脂絶縁層103の一部を貫通するビア導体123eを介して第2導体層112と接続されている。
【0016】
絶縁層3、11、101、102、103は、任意の絶縁性樹脂によって形成され得る。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)又はフェノール樹脂などが例示される。図1の例では、絶縁層3は、ガラス繊維やアラミド繊維で形成される芯材(補強材)を含んでおり、絶縁層11、101、102、103は芯材を有していない。しかしながら、任意の絶縁層11、101、102、103がガラス繊維などからなる芯材を含む場合がある。絶縁層3、11、101、102、103は、さらに、無機フィラーを含み得る。各樹脂絶縁層に含まれる無機フィラーとしては、シリカ(SiO2)、アルミナ、又はムライトなどからなる微粒子が例示される。
【0017】
導体層2、12、111、112、スルーホール導体4、及びビア導体13、113、123、123eは、銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成される。図1の例において、コア導体層2は、金属箔21、金属膜22、及びめっき膜23を含む3層構造を有している。スルーホール導体4は、金属膜22及びめっき膜23によって構成され、コア導体層2と一体的に形成されている。また、導体層12、111、112及びビア導体13、113、123、123eは、金属膜22及びめっき膜23を含む2層構造を有している。金属箔21としては、銅箔又はニッケル箔が例示される。めっき膜23は、例えば電解銅めっき膜である。金属膜22は、例えば無電解銅めっき膜であり、めっき膜23を電解めっきで形成する際の給電層として機能する。
【0018】
各導体層2、12、111、112は、任意の導体パターンを有するように形成され得る。図示の例では、積層体10の第1面10Aを構成する導体層12は、凹部RCの底面に対応する導体パッド12pを有するように形成される。配線基板100の表層部における最も外側の導体層(第2導体層)112は、例えば外部の回路と接続され得る導体パッド112pを有するように形成される。コア基板1に関して凹部RCが形成される側の表層部における第2導体層112には、凹部RC内に搭載されている電子部品ECの電極パッドepとビア導体123eを介して接続される導体パッド112peが形成されている。ソルダーレジスト層SRは、接続パッド112pを露出させる開口を有している。ソルダーレジスト層SRの開口から露出する導体パッド112p、112peは、例えば、はんだなどの接続部材を介して外部回路との接続に用いられる。
【0019】
配線基板100を構成する導体層2、12、111、112のそれぞれは、同一の層内で、厚さにおいて設計値からの偏差を有する場合がある。すなわち、同一の導体層内で厚さがバラつく場合がある。具体的には、設計値に対して±20%程度の偏差が生じる場合がある。各導体層2、12、111上に接して形成される絶縁層11、101、102は、各導体層2、12、111の最大の厚さを有する部分が絶縁層11、101、102を貫通しない程度の厚さを有するように形成される。すなわち、各導体層2、12、111上に接して形成される絶縁層11、101、102は、少なくとも、導体層2、12、111の最大厚さよりも大きい厚さを有するように形成される。特に、本実施形態の部品内蔵配線基板においては、第1導体層111上に接して形成される第2樹脂絶縁層102は、第1導体層111の最大厚さより10μm以上大きい厚さを有する。
【0020】
電子部品ECは、凹部RC内に収容され、接続部材BEを用いて導体パッド(部品実装パッド)12pに接合されている。電子部品ECは、電子部品ECと外部回路との接続に用いられ得る電極パッドepを含んでいる。電子部品ECとしては、半導体装置などの能動部品や、抵抗体のような受動部品が例示される。電子部品ECは、半導体基板上に形成された微細配線を含む配線材であってもよい。接続部材BEには、任意の材料が用いられ得る。接続部材BEとしては、はんだ、銀などの任意の導電性粒子を含む導電性接着剤、並びに、単にエポキシ樹脂などで構成される絶縁性接着剤などが例示される。
【0021】
導体パッド12pは、電子部品ECを安定して配線基板100に搭載するための実装パッドとして機能する。また、部品実装パッド12pは、電子部品ECの裏面(部品実装パッド12pに対向する面)を所定の電位に設定するための電極としても機能し得る。図示される例の部品実装パッド12pは、第1面10Aの所定の範囲に亘って連続的に延在する所謂ベタパターンである。
【0022】
続いて、図1において一点鎖線で囲われる領域IIの拡大図である図2を参照して、部品内蔵配線基板100の表層部における層構造が詳述される。配線基板100の積層体10の上側の表層部における第1樹脂絶縁層101及び第2樹脂絶縁層102には凹部RCを構成する貫通孔RTが形成される。貫通孔RTは、凹部RCの形成箇所に対応した位置に、例えば炭酸ガスレーザー、又はYAGレーザーなどのレーザー光を第2樹脂絶縁層102の上側から照射することで形成され得る。第2樹脂絶縁層102は、貫通孔RTの穿孔後の前述の導体パッド12pの表面のソフトエッチング処理において、エッチング液から第1導体層111を保護する保護層として機能し得る。貫通孔RTの穿孔の後に第2樹脂絶縁層102上に積層される第3樹脂絶縁層103は、第2樹脂絶縁層102と共に、第1導体層111と第2導体層112との間の層間絶縁層を構成する。
【0023】
先述したように、第1導体層111は、その層内で導体の厚さにバラつきを有し得る。従って、レーザー光から第1導体層111を保護する観点から、第2樹脂絶縁層102は、第1導体層111の最も厚い部分において第1導体層111が第2樹脂絶縁層102の上面から突出しない程度の厚さに形成される。具体的には、第1導体層111の最も厚い部分、すなわち、第2樹脂絶縁層102の上面と第1導体層111の上面との距離が最も小さい部分において、その距離(すなわち第2樹脂絶縁層102の厚さ)tは、10μm以上とされる。また、距離tは、第1導体層111と第2導体層112との間の層間絶縁層の厚さの粗大化を抑制する観点から、20μm以下とされる。
【0024】
上述の第2樹脂絶縁層の厚さに関する構成によって、詳しくは配線基板100の製造方法の説明において後述されるように、第2樹脂絶縁層102と第3樹脂絶縁層103との密着性が向上することがある。加えて、第1導体層111の最も厚い部分(すなわち距離tが最も地裁部分)における、第3樹脂絶縁層103の厚さは、第1導体層111と第2導体層112との距離(すなわち、第3樹脂絶縁層103の厚さと第2樹脂絶縁層102の厚さの和)Tの0.35倍以上である。この構成により、第1導体層111と第2導体層112との極端な近接が抑制され短絡などの不良の発生が抑制され得る。また、第1導体層111の最も厚い部分における、第3樹脂絶縁層103の厚さは、第1導体層111と第2導体層112との間の層間絶縁層の厚さの粗大化を抑制する観点から、距離Tの0.45倍以下とされる。すなわち、距離tは距離Tの0.65倍以下、且つ、0.55倍以上とされる。一例として、第3樹脂絶縁層が略10μmに形成され、第1導体層111の最も厚い部分における第2樹脂絶縁層102の厚さtが略15μmとなるように形成され得る。
【0025】
配線基板100の表層部を構成する樹脂絶縁層101、102、103は、積層体10を構成する絶縁層11と同様の材料を用いて形成され得るが、第2樹脂絶縁層102のフィラー含有率は、他の絶縁層11、101、103のフィラー含有率よりも低くされる場合がある。具体的には、第2樹脂絶縁層102は、75wt%以下のフィラー含有率を有し得る。
【0026】
次に、一実施形態の部品内蔵配線基板の製造方法が、図1の部品内蔵配線基板100を例に用いて図3A図3Gを参照して説明される。
【0027】
先ず、図3Aに示されるように、例えば、コア基板1の樹脂絶縁層3となる樹脂絶縁層と、この樹脂絶縁層の両表面にそれぞれ積層された金属箔21を含む出発基板(例えば両面銅張積層板)が用意され、コア基板1の導体層2及びスルーホール導体4が形成される。例えばドリル加工又は炭酸ガスレーザー光の照射によってスルーホール導体4の形成位置に貫通孔4tが穿孔され、貫通孔4t内及び金属箔21上に無電解めっき又はスパッタリングなどによって金属膜22が形成される。そしてこの金属膜22を給電層として用いる電解めっきによってめっき膜23が形成される。その結果、3層構造の導体層2、及び、2層構造のスルーホール導体4が形成される。その後、サブトラクティブ法によって導体層2をパターニングすることによって所定の導体パターンを備えるコア基板1が得られる。
【0028】
次いで、図3Bに示されるように、コア基板1の厚さ方向において対向する一方の面及び他方の面上に、絶縁層11及び導体層12が交互に形成され、積層体10が形成される。図示の例では、コア基板1の厚さ方向における一方及び他方の面にそれぞれ4層の絶縁層11及び4層の導体層12が形成される。
【0029】
絶縁層11の形成では、例えばフィルム状のエポキシ樹脂が、コア基板1の上、又は先に形成された絶縁層11及び導体層12の上に積層され、加熱及び加圧される。その結果、各絶縁層11が形成される。各絶縁層11には、ビア導体13を形成するための貫通孔が、例えば炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。各導体層12は、それぞれ、例えばセミアディティブ法によって形成される。すなわち、各導体層12の下地となる絶縁層11上の全面及びその絶縁層11に穿孔された貫通孔内に無電解めっきやスパッタリングによって金属膜が形成される。その金属膜を給電層として用いる電解めっきを含むパターンめっきによってめっき膜が形成される。各絶縁層11に穿孔された貫通孔内にはビア導体13が形成される。その後、金属膜の不要部分が例えばエッチングなどで除去される。その結果、所定の導体パターンを含む2層構造の各導体層12が形成される。各導体層12は、銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成される。積層体10の第1面10Aを構成する導体層12は、所定の領域に亘って広がる導体パッド12pを含むように形成される。
【0030】
次いで図3Cに示されるように、積層体10の第1面10A及び第2面10Bにおいて導体層12上に第1樹脂絶縁層101及び第1導体層111が形成される。第1導体層111及び第1導体層111のパターンから露出する第1樹脂絶縁層101上には第2樹脂絶縁層102が形成される。
【0031】
第2樹脂絶縁層102の形成においては、図示されるように、第2樹脂絶縁層102となるフィルム状の樹脂絶縁層(樹脂フィルム)が、その片面にカバーフィルムCFが貼着された状態で、第1導体層111及び第1導体層111のパターンから露出する第1樹脂絶縁層101の上に積層される。片面にカバーフィルムCFが貼着された樹脂絶縁層102は、例えば、その一方にカバーフィルムが貼着され、他方にベースフィルムが貼着された樹脂絶縁層で構成される、3層構造の樹脂フィルムのベースフィルムを剥離したものである。カバーフィルムCFは、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)を主成分としており、離型剤(図示せず)を介して樹脂絶縁層102に貼着されている。
【0032】
配線基板100の説明において上述したように、配線基板100を構成する導体層はその厚さにおいて、設計値からの偏差を有し得る。第1導体層111においても、第1導体層111内で導体厚さが比較的厚い部分が存在し得る。従って、第2樹脂絶縁層102の積層において、第2樹脂絶縁層102の厚さが比較的薄いと、第1導体層111の比較的厚い部分が第2樹脂絶縁層102の上面から上側に突出し、カバーフィルムCFと接触する場合がある。また、第1導体層111とカバーフィルムCFとが接触せずとも、導体層111の厚さの偏差に追従して第2樹脂絶縁層102が隆起して、カバーフィルムCFと第2樹脂絶縁層102との間に介在する離型剤を押し除け、第2樹脂絶縁層102の隆起部がカバーフィルムCFと接触する場合もある。その結果、続くカバーフィルムCFの剥離の工程において、カバーフィルムCFの一部が第2樹脂絶縁層102の上面に残留する場合がある。
【0033】
第2樹脂絶縁層102上にカバーフィルムCFが異物として残留すると、第2樹脂絶縁層102と第2樹脂絶縁層102上に積層される構成要素との剥離が生じ得る。従って、本実施形態の製造方法では、導体層111の最も導体厚さが大きい部分における、第1導体層111の上面と第2樹脂絶縁層102の上面との距離(すなわち第2樹脂絶縁層102の厚さ)が10μm以上となるように第2樹脂絶縁層102が形成される。これにより、第2樹脂絶縁層102の形成においてカバーフィルムCFが異物として残留する虞が低減され、続く第2樹脂絶縁層102上側の構成要素の形成における層間剥離などの不良の発生が抑制され得る。また、導体層111の最も導体厚さが大きい部分における第2樹脂絶縁層102の厚さは、配線基板100の厚さ方向における粗大化を避けるために20μm以下とされている。
【0034】
第1導体層111上に積層される第2樹脂絶縁層102は、そのフィラー含有率において比較的低いことが好ましく、第1導体層111下側の第1樹脂絶縁層101のフィラー含有率よりも低いことが好ましい。第2樹脂絶縁層102を構成する材料のうち、エポキシなどの樹脂とフィラーとでは、一般的に、エポキシなどの樹脂の方が無機フィラーよりも高い流動性を有している。フィラー含有率が低いことで、第1導体層111上への積層工程における第2樹脂絶縁層102の流動性が向上し、上述した、導体層111の形状に追従した第2樹脂絶縁層102の隆起が抑制される場合がある。具体的には、第2樹脂絶縁層102のフィラー含有率は75wt%以下とされることが好ましい。
【0035】
次いで、図3Dに示されるように、カバーフィルムCFが樹脂絶縁層102から除去される。
【0036】
次いで、図3Eに示されるように、積層体10の第1面10A側の表層部において、第2樹脂絶縁層102及び第1樹脂絶縁層101を貫通して、積層体10の一部を露出させる貫通孔RT(凹部RC)が形成される。凹部RCは、例えば、第2樹脂絶縁層102の上側から凹部RCの形成領域全体に渡ってレーザー光をピッチ送りしながら照射することによって形成され得る。レーザー光としては、炭酸ガスレーザー光が例示される。図示の例では、第1面10Aを構成する導体層12が含む部品実装パッド12pは、平面視で、凹部RCの底面全体を含む領域に形成されている。従って、部品実装パッド12pは、凹部RCの形成時のレーザー光のストッパとして機能し得る。
【0037】
凹部RCを形成する方法は、レーザー光の照射に限定されず、例えば、ドリル加工によって凹部RCが形成されてもよい。また、凹部RCの底面となるべき導体層12(導体パッド12p)への剥離膜(図示せず)の配置、及びこの剥離膜上に積層された樹脂絶縁層及び導体層の除去などによって凹部RCが形成される場合がある。凹部RCの形成後、凹部RC内に残存する樹脂残渣(スミア)が、例えば、過マンガン酸塩などを含む薬液を用いた処理によって除去(デスミア処理)され得る。デスミア処理に続いて、導体パッド12pの表面は、エッチング液を使用するソフトエッチング処理により所望の表面粗さに粗化され得る。第1導体層111は第2樹脂絶縁層102で被覆されており、従って、貫通孔RTの穿孔後の導体パッド12pの表面のソフトエッチング処理において、導体層111の導体パターンはエッチング液から保護され得る。
【0038】
続いて、図3Fに示されるように、凹部RC内に露出する導体パッド12pに電子部品ECが載置される。例えば、導電性もしくは絶縁性のペーストが、マウンタやディスペンサを用いて接続部材BEとして部品実装パッド12p上に供給され、さらに、電子部品ECがダイボンダなどによって載置される。電子部品ECは、例えば、半導体装置などの能動部品、抵抗体のような受動部品、又は、微細配線を含む配線材などである。電子部品ECは接続部材BEが硬化することで部品実装パッド12pに接合される。
【0039】
続いて、凹部RC内に載置された電子部品EC及び第2樹脂絶縁層102を覆う第3樹脂絶縁層103が形成され、第3樹脂絶縁層103の材料で凹部RCが充填される。第3樹脂絶縁層103の形成時に、第3樹脂絶縁層103を構成すべく積層される、例えばフィルム状のエポキシ樹脂などが、加圧によって凹部RC内に流入する。凹部RC内が、第3樹脂絶縁層103を構成する材料(例えばエポキシ樹脂)で充填され、電子部品ECが、樹脂絶縁層103を構成する材料で凹部RC内に封止される。積層体10に関して凹部RCと反対側の、すなわち第2面10B側の絶縁層102上にも樹脂絶縁層103が形成される。
【0040】
第3樹脂絶縁層103は、第1導体層111の導体厚さの最も大きい部分における第2樹脂絶縁層102の厚さ(すなわち第2樹脂絶縁層102の上面と第1導体層111の上面との最短距離)と第3樹脂絶縁層103の厚さの和の、0.35倍以上の厚さを有するように形成される。第3樹脂絶縁層103がこのような厚さを有するように形成されることで、第3樹脂絶縁層103を構成する材料による凹部RCの充填は確実に実現され得る。電子部品ECがより確実に凹部RC内に封止され得る。また、第3樹脂絶縁層103は、第1導体層111の導体厚さの最も大きい部分における第2樹脂絶縁層102の厚さと第3樹脂絶縁層103の厚さの和の0.45倍以下であるように形成される。配線基板100における厚さの粗大化が抑制され得る。例えば、第1導体層111の導体厚さの最も大きい部分における第3樹脂絶縁層103の厚さは略10μmであり、第2樹脂絶縁層102の厚さは略15μmである。
【0041】
次いで、図3Gに示されるように、積層体10の第1面10A側の表層部において、ビア導体123、123e及び第2導体層112が形成され、積層体10の第2面10B側においてもビア導体123及び第2導体層112が形成される。ビア導体123は第3樹脂絶縁層103及び第2樹脂絶縁層102を貫通して第2導体層112と第1導体層111とを接続するように形成される。ビア導体123eは、電子部品EC上の電極パッドep上に形成され、電極パッドepと第2導体層112とを接続するように形成される。第2導体層112はパターニングにより導体パッド112pを有するように形成される。特に、凹部RC上側の第2導体層112は、導体パッド112peを有するパターンに形成される。なお、表層部における樹脂絶縁層101、102、103、導体層111、112、及びビア導体113、123の形成は、積層体10の形成における、導体層11及びビア導体15の形成方法と同様の方法及び同様の材料を用いて形成され得る。
【0042】
次いで、第2導体層112及び樹脂絶縁層103上にソルダーレジスト層SRが形成されると共に、ソルダーレジスト層SRに導体パッド112p、112peを露出させる開口が形成され、部品内蔵配線基板100の形成が完了する(図1)。ソルダーレジスト層SR、及び各ソルダーレジスト層SRの開口は、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを含む樹脂層の形成と、適切な開口パターンを有するマスクを用いた露光及び現像とによって形成され得る。ソルダーレジスト層SRの開口に露出する接続パッド112p、112pe上には、無電解めっき、半田レベラ、又はスプレーコーティングなどによって、Au、Ni/Au、Ni/Pd/Au、はんだ、又は耐熱性プリフラックスなどからなる表面保護膜(図示せず)が形成されてもよい。
【0043】
実施形態の部品内蔵配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。実施形態の部品内蔵配線基板は、任意の層数の導体層及び絶縁層を有し得る。実施形態では積層体10は、コア基板1を中心に対称な層構造を有するものが示されたが、積層体10はコア基板1を有する形態に限定されない。
【0044】
本実施形態の部品内蔵配線基板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されず、その条件や順序等は適宜変更されてよい。現に製造される配線基板の構造に応じて、一部の工程が省略されてもよく、別の工程が追加されてもよい。
【符号の説明】
【0045】
100 部品内蔵配線基板
1 コア基板
2 コア導体層
3 コア絶縁層
4 スルーホール導体
10 積層体
10A 第1面
10B 第2面
11 絶縁層
12 導体層
101 第1樹脂絶縁層
111 第1導体層
102 第2樹脂絶縁層
112 第2導体層
103 第3樹脂絶縁層
RC 凹部
RT 貫通孔
EC 電子部品
SR ソルダーレジスト層
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G