(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
A61M25/09 516
(21)【出願番号】P 2021033173
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛田 圭亮
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-152478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシャフトと、
前記コアシャフトの外周を覆うコイル体と、
前記コイル体の先端部と前記コアシャフトの先端部とを接合する先端側接合部と、
を備えるガイドワイヤであって、
前記先端側接合部は、樹脂材料により形成され
、
前記先端側接合部の基端側において、前記コイル体と前記コアシャフトとを接合する固定部を備え、
前記ガイドワイヤの軸方向において、前記先端側接合部と前記固定部との間の間隙は、前記軸方向における前記先端側接合部の長さより小さく、
前記固定部は、金属材料により形成されている、
ガイドワイヤ。
【請求項2】
コアシャフトと、
前記コアシャフトの外周を覆うコイル体と、
前記コイル体の先端部と前記コアシャフトの先端部とを接合する先端側接合部と、
を備えるガイドワイヤであって、
前記先端側接合部は、樹脂材料により形成され、
前記先端側接合部の基端側において、前記コイル体と前記コアシャフトとを接合する固定部を備え、
前記ガイドワイヤの軸方向において、前記先端側接合部と前記固定部とは、連続して配置されており、
前記固定部は、金属材料により形成されている、
ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載のガイドワイヤであって、
前記先端側接合部は
、エラストマー材
料により形成されている、
ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記ガイドワイヤの軸方向において、前記先端側接合部の長さは、前記コイル体の外径の2倍以上、10倍以下である、
ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記先端側接合部の外表面と、前記コイル体の外周面とを被覆し、かつ、1種または2種以上の樹脂材料により形成された樹脂被膜、を備える、
ガイドワイヤ。
【請求項6】
請求項
5に記載のガイドワイヤであって、
前記先端側接合部を形成する前記樹脂材料は、前記樹脂被膜を形成する前記樹脂材料の少なくとも1種である、
ガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、血管内等の体内へ挿入されるガイドワイヤ等には、血管内等への良好な挿入性や、血管内等での良好な操作性が求められる。一般に、ガイドワイヤは、例えば、コアシャフトと、コアシャフトの外周を覆うコイル体と、コイル体の先端部とコアシャフトの先端部とを接合する先端側接合部と、を備える。
【0003】
このようなガイドワイヤにおいて、コイル体の先端部がAu-Sn系はんだにより、コアシャフトに固着されているガイドワイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、血管内等へ挿入されるガイドワイヤには、コイル体とコアシャフトとの強固な接合が求められる一方、良好な挿入性および操作性が求められる。例えば、血管径の太い本管から血管径の細い側枝へとガイドワイヤを進行させる際に、ガイドワイヤの先端が側枝の入口の血管内壁に突き当たることがある。このような場合に、ガイドワイヤの先端部の柔軟性が低い(硬い)と、ガイドワイヤを更に押し込んだ際に、その先端部での抵抗が高くなり、ガイドワイヤを側枝の先端側へと進行させにくくなる傾向がある。
【0006】
なお、このような課題は、ガイドワイヤを本管から側枝へと進行させる場合に限らず、ガイドワイヤを複雑な形状を有する血管内において進行させる場合にも共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示されるガイドワイヤは、コアシャフトと、前記コアシャフトの外周を覆うコイル体と、前記コイル体の先端部と前記コアシャフトの先端部とを接合する先端側接合部と、を備えるガイドワイヤであって、前記先端側接合部は、樹脂材料により形成され、前記先端側接合部の基端側において、前記コイル体と前記コアシャフトとを接合し、かつ、金属材料により形成された固定部、を備える。本ガイドワイヤでは、先端側接合部が、樹脂材料により形成されているため、その先端部における滑り性および柔軟性を向上させることができる。また、本ガイドワイヤでは、上記固定部が、金属材料により形成されているため、コイル体とコアシャフトとを強固に接合することができる。従って、本ガイドワイヤによれば、先端部において、良好な柔軟性を有しつつ、コイル体とコアシャフトとの接合強度が確保されたガイドワイヤを提供することができる。
【0010】
(2)上記ガイドワイヤにおいて、前記先端側接合部は、エラストマー材料により形成されている構成としてもよい。本構成が採用されたガイドワイヤによれば、ガイドワイヤの先端部の柔軟性をより高めることができるため、血管等への挿入時に、血管内壁等を傷つけることをより確実に防止することができる。
【0011】
(3)上記ガイドワイヤにおいて、前記ガイドワイヤの軸方向において、前記先端側接合部と前記固定部との間の間隙は、前記軸方向における前記先端側接合部の長さより小さい構成としてもよい。このように、本構成が採用されたガイドワイヤでは、先端側接合部と固定部との間の間隙が、比較的小さい。換言すれば、本構成では、固定部は、ガイドワイヤの先端に近い位置に配置されている。このため、本ガイドワイヤでは、その先端において、コイル体とコアシャフトとの接合強度をより効果的に確保することができる。
【0012】
(4)上記ガイドワイヤにおいて、前記ガイドワイヤの軸方向において、前記先端側接合部と前記固定部とは、連続して配置されている構成としてもよい。換言すれば、本構成が採用されたガイドワイヤでは、固定部は、ガイドワイヤの先端に近い位置に配置されている。このため、本ガイドワイヤでは、その先端において、コイル体とコアシャフトとの接合強度をより効果的に確保することができる。
【0013】
(5)上記ガイドワイヤにおいて、前記ガイドワイヤの軸方向において、前記先端側接合部の長さは、前記コイル体の外径の2倍以上、10倍以下である構成としてもよい。このため、本構成が採用されたガイドワイヤによれば、先端側接合部とコイル体との接合強度をより効果的に確保にすることができる。
【0014】
(6)上記ガイドワイヤにおいて、前記先端側接合部の外表面と、前記コイル体の外周面とを被覆し、かつ、1種または2種以上の樹脂材料により形成された樹脂被膜、を備え、前記先端側接合部を形成する前記樹脂材料は、前記樹脂被膜を形成する前記樹脂材料の少なくとも1種である構成としてもよい。このため、本構成が採用されたガイドワイヤによれば、先端側接合部と樹脂被膜との密着性を向上させることができ、ひいては、樹脂被膜が先端側接合部から剥離することを防止することができる。
【0015】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、ガイドワイヤやその製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態におけるガイドワイヤ100の縦断面の構成を概略的に示す説明図
【
図3】第2実施形態におけるガイドワイヤ100Aの縦断面の構成を概略的に示す説明図
【
図4】第3実施形態におけるガイドワイヤ100Bの縦断面の構成を概略的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.第1実施形態:
A-1.ガイドワイヤ100の構成:
図1は、第1実施形態におけるガイドワイヤ100の構成を概略的に示す説明図である。
図1には、ガイドワイヤ100の縦断面(YZ断面)が示されている。
図1において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。これらの点は、
図2以降の図についても同様である。
図1では、後述するコイル体20、先端側接合部30、基端側接合部40、金属固定部50および樹脂部60については、断面(具体的には、YZ断面)構成が示されている。
図1では、ガイドワイヤ100が全体としてZ軸方向に略平行な直線状となった状態を示しているが、ガイドワイヤ100は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。なお、以下において、ガイドワイヤ100及びガイドワイヤ100の各構成部材について、先端を含み先端から基端側に向かって中途まで延びる部分を「先端部」という。同様に、ガイドワイヤ100及びガイドワイヤ100の各構成部材について、基端を含み基端から先端側に向かって中途まで延びる部分を「基端部」という。
【0018】
ガイドワイヤ100は、例えば血管等における病変部(狭窄部や閉塞部)にカテーテル(図示しない)を案内するために、血管等に挿入される医療用デバイスである。
【0019】
図1に示すように、ガイドワイヤ100は、コアシャフト10と、コイル体20と、先端側接合部30と、基端側接合部40と、金属固定部50と、樹脂部60とを備える。金属固定部50は、特許請求の範囲における固定部の一例である。
【0020】
コアシャフト10は、先端側が細径であり、基端側が太径である長尺状の部材である。本実施形態において、コアシャフト10は、細径部11と、太径部12と、テーパ部13とを有している。なお、
図1では、太径部12の一部の図示が省略されている。細径部11は、コアシャフト10の先端を含む部分である。細径部11は、横断面が円形である棒状をなしている。横断面とは、コアシャフト10の軸方向(本実施形態では、Z軸方向)に直交する断面(本実施形態では、XY断面)である(第2実施形態以降においても同様)。なお、本実施形態では、コアシャフト10の軸方向は、ガイドワイヤ100の軸方向と一致している。太径部12は、細径部11に対してコアシャフト10の基端側に位置し、横断面が細径部11より外径が大きい円形である棒状をなしている。テーパ部13は、細径部11と太径部12との間に位置している。テーパ部13は、細径部11との境界位置から太径部12との境界位置に向けて外径が徐々に大きくなっている。細径部11の外径は、例えば0.03mm~0.085mm程度であり、太径部12の外径は、例えば0.2~0.9mm程度である。なお、コアシャフト10の各部の横断面の形状は、特に限定されるものではなく、例えば三角形や四角形などの多角形であってもよい。
【0021】
コアシャフト10を形成する材料としては、公知の材料が使用され、例えば、金属材料、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等が使用される。コアシャフト10は、全体が同じ材料により構成されていてもよいし、部分毎に互いに異なる材料により構成されていてもよい。
【0022】
図1に示すように、コイル体20は、1本の素線を螺旋状に巻回することにより中空円筒状に形成したコイル状の部材である。本実施形態において、コイル体20は、コアシャフト10の先端部(具体的には、細径部11と、テーパ部13と、太径部12の一部)の外周を取り囲むように配置されている。コアシャフト10とコイル体20との間には、内腔Hが形成されている。コイル体20の全長は、例えば10mm~500mm程度であり、コイル体20の外径D20(
図2参照)は、例えば0.2mm~0.9mm程度である。
【0023】
コイル体20を構成する形成材料としては、公知の材料が使用され、例えば金属材料、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等が使用される。
【0024】
先端側接合部30は、コアシャフト10の先端部とコイル体20の先端部とを接合している。先端側接合部30の内部に、コアシャフト10の先端とコイル体20の先端とが埋め込まれるようにして固着されている。先端側接合部30の先端側の外周面は、滑らかな面(例えば、略半球面および円柱面)となっている。先端側接合部30は、弾性および柔軟性を有していることが好ましく、樹脂材料により形成されている。このような樹脂材料としては、例えば、熱硬化性エラストマー樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂等のエラストマー材料が使用される。熱硬化性エラストマー樹脂としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が使用される。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が使用される。先端側接合部30は、より好ましくは、後述の樹脂部60を形成する樹脂材料のうちの少なくとも1種を含んでいる。このような樹脂として、例えば、親水性樹脂等を用いることができ、より好ましくは、ポリウレタン樹脂等が用いられる。先端側接合部30は、1種の樹脂材料から形成されていてもよく、また、2種以上の樹脂材料から形成されていてもよい。コアシャフト10に対して先端側に柔軟性を有する先端側接合部30が配置されていることによって、血管壁を傷つけることが防止される。また、樹脂部60の存在によって、ガイドワイヤ100の先端部の滑り性を向上させることができる。先端側接合部30の詳細構成については、後述する。
【0025】
基端側接合部40は、コアシャフト10の基端側とコイル体20の基端側とを接合する部材である。基端側接合部40を構成する材料としては、公知の材料が使用され、例えば、ロウ材(アルミニウム合金ロウ、銀ロウ、金ロウ等)、金属ハンダ(Ag-Sn合金、Au-Sn合金等)、接着剤(エポキシ系接着剤等)等が使用される。本実施形態では、基端側接合部40を構成する材料として、ロウ材が使用されている。
【0026】
金属固定部50は、先端側接合部30の基端側において、コイル体20とコアシャフト10とを接合する部材である。本実施形態において、金属固定部50の内部に、コアシャフト10の一部とコイル体20の一部が埋め込まれるようにして接合されている。より具体的には、本実施形態では、
図2の部分拡大図に示すように、金属固定部50が、コイル体20の上記一部(すなわち、金属固定部50が配置されている部分)の外表面を略一定の厚さで覆うように形成されている。金属固定部50を形成する材料としては、例えば、金属ハンダ(Au-Sn合金、Sn-Ag合金、Sn-Pb合金、Pb-Ag合金等)、ロウ材(アルミニウム合金ロウ、銀ロウ、金ロウ等)等の金属材料が用いられる。金属固定部50および基端側接合部40を形成する材料は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。金属固定部50の詳細構成については、後述する。
【0027】
樹脂部60は、1種または2種以上の樹脂材料により形成され、コイル体20の外周面と、先端側接合部30および基端側接合部40の外表面を覆うコート部材である。樹脂部60を構成する樹脂材料としては、公知の材料が使用され、例えば、シリコーン樹脂等が使用される。樹脂部60を構成する樹脂材料は、親水性樹脂であることが好ましく、より好ましくは、ヒアルロン酸系、PVA樹脂等が使用される。樹脂部60の厚みは、例えば0.002~0.1mm程度である。樹脂部60は、特許請求の範囲における樹脂被膜の一例である。
【0028】
A-2.先端側接合部30および金属固定部50の詳細構成:
図2は、先端側接合部30および金属固定部50の構成を示す説明図であり、その縦断面(YZ断面)を拡大して示している。
【0029】
先端側接合部30は、固着部31と、最先端部33とを有する。固着部31は、先端側接合部30において最基端側に位置し、コイル体20の先端部分とコアシャフト10の先端部分とを固着する部分である。最先端部33は、先端側接合部30において固着部31の先端に設けられ、先端方向に向かって外径が小さくなっていく略球欠形状の部分である。固着部31の先端の外径と最先端部33の基端の外径とは同一である。すなわち、固着部31の外表面と最先端部33の外表面とは、連続している。また、本実施形態において、固着部31および最先端部33の横断面(XY断面)の形状は、略円形である。
【0030】
Z軸方向(コアシャフト10の軸方向)における、先端側接合部30の長さL30は、例えば、0.5mm~5mm程度である。先端側接合部30の長さL30は、例えば、コイル体20の外径D20の2倍以上、10倍以下程度、より具体的には、3倍程度とすることができる。最先端部33の長さL33は、例えば、0.45mm~1mm程度である。本実施形態において、先端側接合部30の長さL30は、4mm程度である。また、縦断面において、コイル体20のうちの少なくとも4巻分以上が、先端側接合部30に埋め込まれていることが好ましい。
【0031】
Z軸方向における、金属固定部50の長さL50は、コイル体20とコアシャフト10との接合強度を確保する観点から、例えば、0.5mm~1.5mm程度であり、より具体的には、0.5mm~1mm程度である。金属固定部50は、ガイドワイヤ100の先端におけるコイル体20とコアシャフト10との接合強度を確保する観点から、例えば、ガイドワイヤ100の最先端から5mm以内に位置している。
【0032】
本実施形態のガイドワイヤ100では、先端側接合部30(具体的には、固着部31)の基端側の端面S30と、金属固定部50の先端側の端面S50とは、全体に亘って互いに接触している。換言すれば、Z軸方向において、先端側接合部30と、金属固定部50とは、連続して配置されている。なお、
図1および
図2では、便宜上、先端側接合部30の端面S30と、金属固定部50の端面S50とは、それぞれ、Z軸方向に直交する表面として描かれているが、これに限定されない。以降の図についても同様である。
【0033】
A-3.ガイドワイヤ100の製造方法:
本実施形態のガイドワイヤ100は、例えば以下の方法により製造することができる。まず、機械研磨等によって形状を加工したコアシャフト10と、コイル素線を巻回して作製したコイル体20とを準備する。コアシャフト10をコイル体20の中空部に挿入し、コイル体20とコアシャフト10とを接合する先端側接合部30、基端側接合部40および金属固定部50を形成する。なお、先端側接合部30は、例えば先端側接合部30の形状を形成可能な金型内に溶融樹脂を注入し、その中に、コアシャフト10およびコイル体20の先端部分を浸漬して、冷却することにより形成する。次いで、金属固定部50の形成は、金属固定部50を形成する位置において、コイル体20の隙間から、溶融したロウ材を注入して、冷却することにより実施する。また、基端側接合部40は、コイル体20の基端側において、コアシャフト10とロウ付けすることにより形成する。その後、樹脂部60を形成する溶融樹脂にディッピングすることにより、樹脂部60を形成する。例えば以上のような方法により、上述した構成のガイドワイヤ100を製造することができる。
【0034】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態のガイドワイヤ100は、コアシャフト10と、コイル体20と、先端側接合部30と、備える。先端側接合部30は、樹脂材料により形成されている。ガイドワイヤ100は、更に、金属固定部50を備える。金属固定部50は、先端側接合部30の基端側において、コイル体20とコアシャフト10とを接合し、かつ、金属材料により形成されている。本実施形態のガイドワイヤ100では、先端側接合部30が、樹脂材料により形成されているため、その先端部における滑り性および柔軟性を向上させることができる。また、本実施形態のガイドワイヤ100では、金属固定部50が、金属材料により形成されているため、コイル体20とコアシャフト10とを強固に接合することができる。従って、本実施形態のガイドワイヤ100によれば、先端部において、良好な柔軟性を有しつつ、コイル体20とコアシャフト10との接合強度が確保されたガイドワイヤ100を提供することができる。
【0035】
また、本実施形態のガイドワイヤ100では、先端側接合部30は、エラストマー材料により形成されている。本実施形態のガイドワイヤ100によれば、ガイドワイヤ100の先端部の柔軟性をより高めることができるため、血管等への挿入時に、血管内壁等を傷つけることをより確実に防止することができる。
【0036】
また、本実施形態のガイドワイヤ100では、ガイドワイヤ100の軸方向において、先端側接合部30と金属固定部50とは、連続して配置されている。換言すれば、本実施形態のガイドワイヤ100によれば、金属固定部50は、ガイドワイヤ100の先端に近い位置に配置されている。このため、本実施形態のガイドワイヤ100では、その先端において、コイル体20とコアシャフト10との接合強度をより効果的に確保することができる。
【0037】
また、本実施形態のガイドワイヤ100では、ガイドワイヤ100の軸方向において、先端側接合部30の長さは、コイル体20の外径D20の2倍以上、10倍以下である。このため、本実施形態のガイドワイヤ100によれば、先端側接合部30とコイル体20との接合強度をより効果的に確保にすることができる。
【0038】
また、本実施形態のガイドワイヤ100では、更に、樹脂部60を備え、先端側接合部30を形成する樹脂材料は、樹脂部60を形成する樹脂材料の少なくとも1種である。このため、本実施形態のガイドワイヤ100によれば、先端側接合部30と樹脂部60との密着性を向上させることができ、ひいては、樹脂部60が先端側接合部30から剥離することを防止することができる。
【0039】
B.第2実施形態:
図3は、第2実施形態におけるガイドワイヤ100Aの縦断面(YZ断面)の構成を概略的に示す説明図である。以下では、第2実施形態のガイドワイヤ100Aの構成のうち、第1実施形態のガイドワイヤ100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0040】
第2実施形態のガイドワイヤ100Aは、第1実施形態のガイドワイヤ100の金属固定部50に代えて、金属固定部50Aを備えている。金属固定部50Aは、金属固定部50と同様に、先端側接合部30の基端側において、コイル体20とコアシャフト10とを接合する部材であり、上述の金属材料により形成されている。本実施形態において、金属固定部50Aは、先端側接合部30から離れて配置されている。すなわち、先端側接合部30の端面S30と、金属固定部50Aの端面S50とは、全体に亘って互いに接触していない。より具体的には、先端側接合部30と金属固定部50Aとの間の間隙Ldは、先端側接合部30の長さL30より小さく、例えば、0.5mm~1mm程度である。なお、金属固定部50Aの長さL50は、金属固定部50の長さL50と同等であり、例えば、0.5mm~1.5mm程度であり、より具体的には、0.5mm~1mm程度である。また、金属固定部50Aは、ガイドワイヤ100の先端におけるコイル体20とコアシャフト10との接合強度を確保する観点から、例えば、ガイドワイヤ100の最先端から5mm以内に位置している。
【0041】
本実施形態のガイドワイヤ100Aでは、ガイドワイヤ100Aの軸方向において、先端側接合部30と金属固定部50Aとの間の間隙Ldは、軸方向における先端側接合部30の長さL30より小さい。このように、本実施形態のガイドワイヤ100Aでは、先端側接合部30と金属固定部50Aとの間の間隙Ldが、比較的小さい。換言すれば、ガイドワイヤ100Aでは、金属固定部50Aは、ガイドワイヤ100Aの先端に近い位置に配置されている。このため、本実施形態のガイドワイヤ100Aでは、その先端において、コイル体20とコアシャフト10との接合強度をより効果的に確保することができる。
【0042】
C.第3実施形態:
図4は、第3実施形態におけるガイドワイヤ100Bの縦断面(YZ断面)の構成を概略的に示す説明図である。以下では、第3実施形態のガイドワイヤ100Bのうち、第1実施形態のガイドワイヤ100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0043】
第3実施形態のガイドワイヤ100Bは、第1実施形態のガイドワイヤ100のうち、樹脂部60を備えていない。本実施形態のガイドワイヤ100Bによれば、第1実施形態のガイドワイヤ100の効果のうち、樹脂部60を備えることによる効果を除く効果を奏する。
【0044】
D.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0045】
第1実施形態では、コイル体20の外表面が金属固定部50に埋め込まれた構成を採用したが、この構成に限定されない。すなわち、コイル体20の外表面の一部分が金属固定部50に埋め込まれることなく、金属固定部50が配置されている部分において、コイル体20の外表面が樹脂部60と接触している構成としてもよい。第2実施形態および第3実施形態においても同様である。第3実施形態においては、コイル体20の外表面が露出している構成としてもよい。
【0046】
第1実施形態では、先端側接合部30の端面S30と、金属固定部50の端面S50とが、全体に亘って互いに接触している構成としたが、この構成に限定されない。すなわち、端面S30と端面S50とが、少なくとも一部分において互いに接触していない構成としてもよい。
【0047】
第2実施形態において、先端側接合部30と金属固定部50との間の間隙Ldは、先端側接合部30の長さL30以上であってもよい。
【0048】
上記実施形態において、先端側接合部30の長さL30は、コイル体20の外径D20の2倍未満、10倍超であってもよい。
【0049】
第1および第2実施形態において、樹脂部60は、先端側接合部30および金属固定部50における外表面の少なくとも一部分を被覆する構成であってもよい。また、樹脂部60を備えるガイドワイヤ100,100Aにおいて、先端側接合部30は、樹脂部60を形成する樹脂材料と異なる樹脂材料により形成されていてもよい。
【0050】
上記実施形態における各部材の材料は、あくまで一例であり、種々変形可能である。また、上記実施形態におけるガイドワイヤの製造方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、先端側接合部30を形成した後に、金属固定部50を形成しているが、金属固定部50を形成した後に、先端側接合部30を形成してもよい。また、上記実施形態では、先端側接合部30の最先端部33が、略球欠形状であるとしたが、これに限定されず、他の形状としてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10:コアシャフト 11:細径部 12:太径部 13:テーパ部 20:コイル体 30:先端側接合部 31:固着部 33:最先端部 40:基端側接合部 50:金属固定部 50A:金属固定部 60:樹脂部 100:ガイドワイヤ 100A:ガイドワイヤ 100B:ガイドワイヤ D20:外径 H:内腔 L30:長さ L31:長さ L33:長さ L50:長さ Ld:間隙 S30:端面 S50:端面