IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本製鋼所の特許一覧

特許7538744押出装置およびそれに用いられる押出成形用ダイ、監視装置およびプログラム、ストランドの製造方法、ならびに、ストランド径の調整方法
<>
  • 特許-押出装置およびそれに用いられる押出成形用ダイ、監視装置およびプログラム、ストランドの製造方法、ならびに、ストランド径の調整方法 図1
  • 特許-押出装置およびそれに用いられる押出成形用ダイ、監視装置およびプログラム、ストランドの製造方法、ならびに、ストランド径の調整方法 図2
  • 特許-押出装置およびそれに用いられる押出成形用ダイ、監視装置およびプログラム、ストランドの製造方法、ならびに、ストランド径の調整方法 図3
  • 特許-押出装置およびそれに用いられる押出成形用ダイ、監視装置およびプログラム、ストランドの製造方法、ならびに、ストランド径の調整方法 図4
  • 特許-押出装置およびそれに用いられる押出成形用ダイ、監視装置およびプログラム、ストランドの製造方法、ならびに、ストランド径の調整方法 図5
  • 特許-押出装置およびそれに用いられる押出成形用ダイ、監視装置およびプログラム、ストランドの製造方法、ならびに、ストランド径の調整方法 図6
  • 特許-押出装置およびそれに用いられる押出成形用ダイ、監視装置およびプログラム、ストランドの製造方法、ならびに、ストランド径の調整方法 図7
  • 特許-押出装置およびそれに用いられる押出成形用ダイ、監視装置およびプログラム、ストランドの製造方法、ならびに、ストランド径の調整方法 図8
  • 特許-押出装置およびそれに用いられる押出成形用ダイ、監視装置およびプログラム、ストランドの製造方法、ならびに、ストランド径の調整方法 図9
  • 特許-押出装置およびそれに用いられる押出成形用ダイ、監視装置およびプログラム、ストランドの製造方法、ならびに、ストランド径の調整方法 図10
  • 特許-押出装置およびそれに用いられる押出成形用ダイ、監視装置およびプログラム、ストランドの製造方法、ならびに、ストランド径の調整方法 図11
  • 特許-押出装置およびそれに用いられる押出成形用ダイ、監視装置およびプログラム、ストランドの製造方法、ならびに、ストランド径の調整方法 図12
  • 特許-押出装置およびそれに用いられる押出成形用ダイ、監視装置およびプログラム、ストランドの製造方法、ならびに、ストランド径の調整方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】押出装置およびそれに用いられる押出成形用ダイ、監視装置およびプログラム、ストランドの製造方法、ならびに、ストランド径の調整方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/92 20190101AFI20240815BHJP
   B29C 48/345 20190101ALI20240815BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/345
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021033644
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134497
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福澤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】福士 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】小田 智也
(72)【発明者】
【氏名】富山 秀樹
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/140310(WO,A1)
【文献】特開昭57-178727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/92
B29C 48/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に樹脂を含む原料を供給するための原料供給口と、
前記シリンダに内蔵され、前記原料を混練によって溶融可能なスクリュと、
前記シリンダの一端に配置され、前記シリンダから供給される溶融樹脂からなるストランドを吐出するための複数の貫通孔を有するダイと、
前記ダイから吐出中のストランドのストランド径を検出するように構成された監視装置と、
前記監視装置で検出されたストランド径に基づいて、前記複数の貫通孔の各々から吐出されるストランドの吐出量を個別に調整するように構成された調整機構とを備える、押出装置。
【請求項2】
前記調整機構は、前記複数の貫通孔の各々に対して設けられ、対応する貫通孔内に突出するように構成された移動部を含み、
対応する貫通孔への前記移動部の突出量を変化させて当該貫通孔の断面積を調整することによって、当該貫通孔から吐出されるストランドの単位時間当たりの吐出量が調整される、請求項1に記載の押出装置。
【請求項3】
前記移動部は、前記移動部が回転することによって、対応する貫通孔への突出量を変化させるねじ機構を含む、請求項2に記載の押出装置。
【請求項4】
前記調整機構は、前記移動部を駆動するための駆動部をさらに含む、請求項2または3に記載の押出装置。
【請求項5】
前記駆動部は、空圧式、油圧式または電動式のいずれかである、請求項4に記載の押出装置。
【請求項6】
前記調整機構は、前記複数の貫通孔の各々に対して設けられ、対応する貫通孔から吐出されるストランドの温度を調整する温度調整部を含む、請求項1に記載の押出装置。
【請求項7】
前記調整機構は、貫通孔から吐出されるストランドに作用する張力を調整するための張力調整部を含む、請求項1に記載の押出装置。
【請求項8】
前記監視装置によって検出されたストランド径に基づいて前記調整機構を制御する制御装置をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の押出装置。
【請求項9】
前記制御装置は、検出されたストランド径のばらつきが低減されるように、前記調整機構を制御する、請求項に記載の押出装置。
【請求項10】
前記制御装置は、
検出されたストランド径の平均値を算出し、
各ストランド径と前記平均値との差が所定範囲内になるように、前記調整機構を制御する、請求項に記載の押出装置。
【請求項11】
押出装置に用いられる押出成形用ダイであって、
前記押出装置は、溶融樹脂のストランド径が測定可能に構成されており、
前記押出成形用ダイは、
混練された溶融樹脂が供給される流入口と、供給された溶融樹脂のストランドを吐出する複数の貫通孔と、前記流入口から前記複数の貫通孔に至る流路方向に延びる流路部とが形成された本体部と、
測定されたストランド径に基づいて、前記複数の貫通孔の各々から吐出されるストランドの吐出量を個別に調整可能な調整機構とを備えた、押出成形用ダイ。
【請求項12】
押出装置のダイに形成された複数の貫通孔から吐出される溶融樹脂のストランドの監視装置であって、
前記押出装置は、ストランドの吐出量を調整可能に構成されており、
前記監視装置は、
前記複数の貫通孔から吐出されるストランドの画像を取得する撮像部と、
前記撮像部で取得した画像に基づいて、各貫通孔から吐出中のストランド径を検出する検出部と、
検出されたストランド径を出力する出力部とを備え
前記吐出量は、前記監視装置で検出された吐出中のストランド径に基づいて調整される、監視装置。
【請求項13】
押出装置のダイに形成された複数の貫通孔から吐出される溶融樹脂のストランドを監視する処理を監視装置の制御装置に実行させるためのプログラムであって、
前記押出装置は、ストランドの吐出量を調整可能に構成されており、
前記監視装置は、撮像装置および表示装置を含み、
前記プログラムは、
前記撮像装置を用いて、前記複数の貫通孔から吐出中のストランドの画像を取得するステップと、
前記撮像装置で取得した画像に基づいて、各貫通孔から吐出されるストランド径を検出するステップと、
検出されたストランド径を前記表示装置に表示するステップとを含み、
前記吐出量は、前記監視装置で検出された吐出中のストランド径に基づいて調整される、プログラム。
【請求項14】
以下のステップを含む、溶融樹脂からなるストランドの製造方法:
(a)樹脂を含む原料をシリンダ内に供給するステップ;
(b)前記シリンダに内蔵されたスクリュによって前記原料を混練し溶融するステップ;
(c)工程(b)の後、前記シリンダの一端に配置されたダイの複数の貫通孔から溶融樹脂からなる複数のストランドを吐出するステップ;
(d)工程(c)の実行中において、吐出中の前記複数のストランドの径を測定するステップ;および、
(e)測定された前記複数のストランドの径に応じて、前記複数の貫通孔のうちの少なくとも一つからのストランドの吐出量を調整するステップ。
【請求項15】
以下のステップを含む、溶融樹脂からなるストランドのストランド径を調整する方法: (a)押出装置のダイに形成された複数の貫通孔の各々から吐出中の複数のストランドの径を測定するステップ;
(b)測定された前記複数のストランドの径に応じて、前記複数の貫通孔のうちの少なくとも一つからのストランドの吐出量を調整するステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、押出装置、押出成形用ダイ、監視装置および監視用プログラム、ストランドの製造方法、およびストランド径の調整方法に関し、より特定的には、押出装置から吐出される溶融樹脂(ストランド)の径を均一化させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂成型品を製造する際、樹脂原料からなるペレットが用いられる場合がある。ペレットを成形する方法の1つとして、ストランドカット法が知られている。特開2018-001649号公報(特許文献1)には、ストランドカット法におけるストランド径のばらつきを低減するための手法が開示されている。
【0003】
特開2018-001649号公報(特許文献1)においては、押出機において、ダイとダイホルダとの間に配置されるクラウンについて、流路方向に沿った長さを流路幅方向で異ならせることによってストランド径の均一化を図る構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-001649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された構成においては、樹脂原料が通過する流路部材の形状を変更することによってストランド径の均一化を図っている。一方で、押出装置の運転中においてもストランド径の調整を可能とすることによって、さらなるストランド径の均一化を実現するニーズが高まっている。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、熱可塑性樹脂成型品を製造するために用いられる押出装置において、押出装置の運転中におけるストランド径の調整を可能として、ストランド径の均一化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る押出装置は、調整機構によって、複数の貫通孔の各々から吐出されるストランドの吐出量を個別に調整可能に構成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る押出装置によれば、調整機構により押出装置の運転中でもストランド径の調整ができるので、ストランド径の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態の押出装置を用いるペレット製造装置の概略構成図である。
図2図1の押出装置のダイの斜視図である。
図3図2における線III-IIIに沿った断面図である。
図4図2における線IV-IVに沿った断面図である。
図5】実施の形態の監視装置の構成の第1例を説明するための図である。
図6】実施の形態の監視装置の構成の第2例を説明するための図である。
図7図6の監視装置で用いられる端末装置の表示例である。
図8】監視装置で用いられる監視用プログラムのフローチャートである。
図9】ストランド径の自動調整機能の概要を説明するための図である。
図10】制御装置におけるストランド径調整機能の機能ブロック図である。
図11】制御装置において実行される処理を示すフローチャートである。
図12】変形例1の調整機構の構成を示す図である。
図13】変形例2の調整機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
[ペレット製造装置の構成]
図1は、本実施の形態の押出装置100を用いるペレット製造装置10の概略構成図である。図1を参照して、ペレット製造装置10は、押出装置100に加えて、冷却槽20と、ストランドカッタ30とを備える。ペレット製造装置10は、押出装置100から押し出された溶融樹脂160(以下、「ストランド160」とも称する。)を冷却槽20にて冷却し、ストランドカッタ30で所定の長さに切断する。これによって、ペレット50が形成される。
【0012】
押出装置100は、ストランド160の製造装置である。押出装置100は、駆動部110と、シリンダ120と、フィーダ140と、ダイ150とを含む。なお、図1および以降の説明においては、鉛直方向をZ軸とし、水平方向におけるシリンダ120の延伸方向をX軸とし、X軸およびZ軸に直交する方向をY軸として説明する。
【0013】
駆動部110は、たとえばモータおよび減速機を含んで構成される。駆動部110は、図1においてX軸方向に延伸するシリンダ120の一方端に配置されている。駆動部110は、シリンダ120の内部に配置されたスクリュ130を回転させる。
【0014】
シリンダ120は、内部が空洞の筒状の部材であり、内部には1本あるいは2本のスクリュ130が収容されている。シリンダ120には、フィーダ140から供給されるペレットの原料を内部に投入するための投入口121(原料供給口)が形成されている。また、シリンダ120の外周には、シリンダ120の内部を加熱するためのヒータ122が配置されている。シリンダ120内部に投入された原料は、ヒータ122からの熱とスクリュ130の回転によって混練されることにより溶融する。そして、溶融された原料は、スクリュ130の回転によって、シリンダ120の駆動部110とは反対の他方端へと移送される。
【0015】
シリンダ120の他方端には、ダイホルダ155を介してダイ150が接続されている。図2で後述するように、ダイ150には、Y軸方向に沿って複数の貫通孔152が形成されている。スクリュ130によって移送された溶融樹脂は、当該貫通孔152から押し出されて紐状のストランド160として吐出される。ダイ150の構成については、図2図4において詳述する。
【0016】
ダイ150から吐出されたストランド160は、冷却槽20に蓄えられた冷却液21に導かれて冷却および固化される。冷却後のストランド160は、ストランドカッタ30に送られる。ストランドカッタ30において、ストランド160は所定の長さにカットされ、これによってペレット50が形成される。
【0017】
[ダイの構成]
次に、図2図4を用いて、ダイ150の詳細構成について説明する。図2は、押出装置100におけるダイホルダ155にダイ150が保持された状態の斜視図である。図3は、図2における線III-IIIに沿った断面図である。また、図4は、図2における線IV-IVに沿った断面図である。
【0018】
図2図4を参照して、ダイホルダ155は、流入部156と、流出部158と、流入部156および流出部158を連通する流路部157とを有する。流入部156は、ダイホルダ155におけるX軸の負方向の端部に形成されている。流入部156は、シリンダ120の端部に接続されており、スクリュ130で混練され移送された溶融樹脂が流入部156に流入する。
【0019】
流出部158は、ダイホルダ155におけるX軸の正方向の端部に形成されている。流出部158には、ダイ150が接続されている。流入部156に流入した溶融樹脂は、流路部157を通ってダイ150の凹部153へと導かれる。
【0020】
ダイ150には、Y軸方向に沿って、凹部153と外部とを連通する複数の貫通孔152が形成されている。ダイホルダ155を通ってダイ150の凹部153に流入した溶融樹脂は、当該貫通孔152から押し出されて、紐状のストランド160として吐出される。
【0021】
また、本実施の形態のダイ150においては、貫通孔152の各々について、貫通孔152における最小断面積を変更することによってストランド径を調整するための調整機構154が設けられている。図2および図3の例においては、調整機構154は、ねじ機構を有するボルト部材として形成されており、ユーザが手動で当該ボルト部材を回転させることによって、貫通孔152内へのボルト部材の突出量を変化させることができる。つまり、貫通孔152の最小断面積とは、ボルト部材の貫通孔152内に突出した部分と貫通孔152の内面とで形成される断面積である。このように、調整機構154を用いて、各貫通孔152からの溶融樹脂の単位時間あたりの吐出量を調整することができるので、ストランド径を個別に調整することが可能となる。なお、図2および図3の例においては、ボルト部材の軸部分が、本開示における「移動部」に対応する。
【0022】
なお、調整機構154は、貫通孔152内への突出量を変更する機構を含む構成であれば、上記の例のようなボルト部材に限られない。調整機構154の他の例としては、たとえば、ピン、スライド機構、またはシリンダなどが含まれる。あるいは、調整機構154は、貫通孔152に取り付けられた流量調節弁、または、バルーンカテーテルのような流路抵抗を変化させる機構であってもよい。
【0023】
上記のような、いわゆるストランドカット法を用いたペレットの製造において、各ストランド径がばらついていると、完成したペレットの1個あたりの重さにばらつきが生じ得る。熱可塑性樹脂成型品の製造において、ペレットの重さがばらついていると、樹脂原料の計量精度が低下し、射出成形機の運転に支障をきたす場合がある。本実施の形態の押出装置においては、ダイに設けられた調整機構によって、押出装置の運転中でも、必要に応じて各ストランド径を個別に調整することができる。したがって、押出装置から吐出されるストランド径の均一化を図ることができる。
【0024】
[監視装置]
次に、押出装置の運転中にストランド径を検出する監視装置について説明する。監視装置を用いて、運転中のストランド径をリアルタイムで検出することによって、たとえば製造条件の変化によってストランド径が変化した場合に、迅速に調整を行なうことができるので、ストランド径のばらつきの防止に役立つ。
【0025】
(第1例:撮像カメラ)
図5は、実施の形態の押出装置100に適用可能な監視装置の第1例の構成を示す図である。第1例における監視装置60は、撮像装置200と、制御装置300と、表示装置305とを含む。撮像装置200は、たとえば固定型のCCDカメラである。撮像装置200は、ダイ150から吐出されるストランド160が視野内に入るように設置されている。撮像装置200によって検出された画像は、制御装置300に伝達される。なお、撮像装置200によって撮像される画像は、静止画に限られず動画であってもよい。また、撮像装置200は、画像が取得できる装置であればCCDカメラに限られず、たとえばイメージセンサなどであってもよい。
【0026】
制御装置300は、典型的にはパーソナルコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)301およびメモリ302を内蔵している。CPU301およびメモリ302は、共通のバス303に接続されており、メモリ302に記憶されたプログラムをCPU301が実行することによって、各種処理が実現される。制御装置300は、撮像装置200から取得した画像を二値化処理し、各ストランド160のストランド径(ストランド幅)を算出する。なお、制御装置300は、PLC(Programmable Logic Controller)、マイコン、あるいはマイコンボードなどであってもよい。
【0027】
表示装置305は、たとえば液晶(Liquid Cristal Diode:LCD)パネルあるいは有機EL(Electronic Luminescence)パネルによって構成されており、撮像装置200で取得した画像、および、制御装置300で演算されたストランド径を表示する。図5の例においては、表示装置305の上部には、5本のストランド160の画像が表示されている。また、表示装置305の下部には、上部の画像内の領域306内の輝度差がグラフ形式で表示されている。たとえば、検出された輝度差がしきい値TH以上の部分がストランドとして検出され、当該しきい値THにおけるストランド160の幅がストランド径として検出される。さらに、表示装置305には、各ストランド160の平均値からの偏差、および、全体の標準偏差が数値で表示されている。なお、平均値からの偏差および標準偏差に加えて、各ストランド160の吐出速度、ストランド径の平均値および分散、ならびに、当該ばらつきが所定範囲内であるか否かの判定結果を表示するようにしてもよい。
【0028】
ユーザは、表示装置305に表示されたストランド径の平均値からの偏差、および、標準偏差もしくは分散に基づいて、ストランド径のばらつき度合いを判定し、ばらつきが大きい場合には、平均値からの偏差が大きいストランド径のダイ150の調整機構154を調整し、ストランド径のばらつきが所定範囲内となるように調整する。
【0029】
このような監視装置を設けることによって、押出装置運転中のストランド径をユーザが容易に検出することができるので、ストランド径のばらつきが大きくなった場合でも、迅速なストランド径の調整が可能となる。
【0030】
なお、第1例において、「撮像装置200」、「制御装置300」および「表示装置305」は、本開示における「撮像部」、「検出部」および「出力部」にそれぞれ対応する。
【0031】
(第2例:携帯端末)
次に図6および図7を用いて、実施の形態の押出装置100に適用可能な監視装置の第2例の構成について説明する。図6は、第2例の監視装置60Aを用いてストランド160の監視を行なっている状態を示したものである。また、図7は、監視装置60Aにおける表示例である。
【0032】
図6および図7を参照して、第2例における監視装置60Aは、撮像機能および表示機能を有する携帯端末250である。携帯端末250は、たとえば、タブレット、スマートフォン、携帯電話、ならびに、スマートウオッチおよびスマートグラスのようなウェアラブル端末が含まれる。携帯端末250には、ストランド監視用のアプリがインストールされている。当該監視用アプリは、携帯端末250に内蔵されたCPU、もしくは、クラウド上にあるCPUによって実行される。
【0033】
ユーザが携帯端末250のストランド監視用アプリを実行すると、携帯端末250に内蔵されたカメラが起動される。ユーザが、カメラの視野内にストランド160が入るように携帯端末250を配置すると、図7に示されるように、携帯端末250のディスプレイ251に、カメラで撮像されたストランド160が表示される。その状態で、ディスプレイ251に表示された矩形状の領域252をストランド160の画像に重ね合わせると、領域252内の各ストランド160のストランド径がディスプレイ251に表示される。なお、携帯端末250が、撮像画像内における溶融樹脂160を自動で検出し、検出された溶融樹脂160の径を測定して表示するようにしてもよい。
【0034】
第2例のように、ユーザが所有する携帯端末に監視用アプリをインストールすることによって、第1例のような専用の機器を用いることなく、運転中のストランド径を検出することができる。そして、検出されたストランド径に基づいて、必要に応じて調整機構を調整することによって、ストランド径のばらつきを低減することができる。
【0035】
なお、第2例において、携帯端末250に搭載された「カメラ」、「CPU」および「ディスプレイ251」は、本開示における「撮像部」、「検出部」および「出力部」にそれぞれ対応する。
【0036】
(監視用プログラム)
図8は、上記の監視装置60,60Aにおいて実行される監視用プログラム(アプリ)の処理を示すフローチャートである。図8に示すフローチャートは、図5における制御装置300のCPU301、あるいは、図6における携帯端末250に内蔵されたCPUによって実行される。
【0037】
図8を参照して、CPUは、ステップ(以下、ステップをSと略す)10にて、撮像装置(カメラ)によって撮像された、押出装置100の運転中においてダイ150から吐出する吐出樹脂(ストランド)の画像を取得する。次に、CPUは、S20にて、取得された画像を処理することによって、各ストランド160のストランド径を算出するとともに、S30にてストランド径のばらつきを示すパラメータ(分散、標準偏差など)もしくは平均値を算出する。そして、CPUは、S40にて算出された各ストランド160のストランド径、もしくは、ばらつきを示すパラメータの少なくとも1つを表示装置に表示する。
【0038】
このような処理を実行することによって、ユーザは、押出装置の運転中におけるストランド径、および、ストランド径のばらつきを容易に検出することができる。検出したストランド径のばらつきが大きい場合に、押出装置の運転中にユーザがダイ150の調整機構154を調整することによって、ストランド径のばらつきを低減して、ストランド径の均一化を図ることができる。
【0039】
なお、上記の例においては、撮像装置で撮像した画像を処理することによってストランド径を検出する例について説明したが、ストランド径は他の手法により検出してもよい。たとえば、撮像装置に代えて、光電センサ、分光・光干渉式厚み計、赤外線膜厚計、レーザ厚み計、超音波膜厚計、蛍光X線膜厚計、渦電流式膜厚計、電磁式膜厚計、電気抵抗式膜厚計などの非接触型のセンサを用いて各ストランドのストランド径を検出するようにしてもよい。
【0040】
[自動調整システム]
上述の例においては、ストランド径の調整は、ユーザによる手動操作で行なう場合について説明した。しかしながら図5の第1例で示したような監視装置を用いることによって、検出したストランド径に基づいて調整機構を自動で調整する構成としてもよい。
【0041】
図9は、ストランド径の自動調整機能を有するシステムを説明するための図である。図9のシステムにおいては、図5で示した監視装置60に加えて、ダイ150に調整機構154Aが設けられている。調整機構154Aは、図2で説明した調整機構154であるボルト部材の部分に配置された移動部410と、当該移動部410を駆動するための駆動部(アクチュエータ)400とを含む。
【0042】
移動部410は、図2におけるボルト部材と同様に、ダイ150の貫通孔152内に突出するように構成されている。移動部410は、ボルト部材のように、回転することによって図9中の矢印AR1の方向に移動する構成であってもよいし、スライド機構のように直動式に矢印AR1の方向に移動する構成であってもよい。あるいは、調整機構154は、貫通孔152の出口に取り付けられ、開度を調整することによって溶融樹脂の吐出量を調整することが可能なバルブであってもよい。
【0043】
駆動部400は、空圧式、油圧式または電動式のアクチュエータであり、たとえば、シリンダ、モータ、またはボールねじなどにより構成される。駆動部400は、制御装置300からの信号に基づいて移動部410を駆動する。
【0044】
次に、制御装置300における自動調整機能について、図10および図11を用いて説明する。図10は、制御装置300におけるストランド径調整機能の機能ブロック図である。図10を参照して、制御装置300は、画像取得部310と、画像処理部320と、ストランド径演算部330と、ばらつき判定部340と、駆動制御部350とを含む。
【0045】
画像取得部310は、撮像装置200で撮像された画像データを受ける。画像処理部320は、画像取得部310で取得した画像を処理して、画像データ内におけるストランド160を特定する。ストランド径演算部330は、特定されたストランドの画像から、各ストランド160のストランド径を演算する。
【0046】
ばらつき判定部340は、算出されたストランド径のデータを用いて、ストランド径の平均値あるいはばらつきを示すパラメータ(分散、標準偏差など)を演算してばらつきの有無を判定し、判定結果を駆動制御部350に出力する。駆動制御部350は、ばらつき判定部340からの判定結果に基づいて各ストランド160に対応する駆動用の制御信号を生成し、当該駆動信号に従って駆動部400を制御する。
【0047】
図11は、制御装置300におけるCPU301で実行される処理を示すフローチャートである。図11に示すフローチャートは、所定の条件が成立した場合に、図示しないメインルーチンから呼び出されて実行される。たとえば、当該処理は、始業時間の際に実行されてもよいし、所定時間毎に定期的に実行されてもよい。あるいは、当該処理は、押出装置100運転中に継続して実行されてもよいし、ユーザからの指示がなされた場合に実行されてもよい。さらに、システム起動時あるいは装置の稼働準備完了時などの、装置状態に応じて実行されてもよい。
【0048】
図11を参照して、CPU301は、S100において、図5で説明したように、撮像装置200によって撮像された、ダイ150から吐出するストランド160の画像を取得する。そして、S110にて、CPU301は、撮像装置200から取得した画像を処理して、画像データ内におけるストランド160を検出する。
【0049】
次に、CPU301は、検出した各ストランド160のストランド径を算出するとともに(S120)、算出されたストランド径のばらつきを示すパラメータ(分散、標準偏差など)を演算する(S130)。
【0050】
S140にて、CPU301は、得られた標準偏差が所定のしきい値αよりも大きいか否かを判定する。標準偏差が所定のしきい値α以下の場合、すなわち、ストランド径のばらつきが小さい場合(S140にてNO)は、以降のステップS150,S160がスキップされて、処理がメインルーチンに戻される。
【0051】
一方、標準偏差が所定のしきい値αを上回った場合、すなわち、ストランド径のばらつきが大きい場合(S140にてYES)には、処理がS150に進められて、CPU301は、平均値からの偏差が大きい貫通孔152に対応する駆動部400の駆動量を演算する。その後、CPU301は、S160にて、対象の駆動部400に対して制御指令を出力することによって当該駆動部を駆動して、当該貫通孔152から吐出されるストランド径を平均値に近づけるように調整する。
【0052】
具体的には、ストランド径が平均値より大きい場合には、CPU301は、ダイ150における対応する貫通孔152の断面積が小さくなるように駆動部400を駆動する。逆に、ストランド径が平均値より小さい場合には、CPU301は、対応する貫通孔152の断面積が大きくなるように駆動部400を駆動する。このように、図9で示したシステムにおいては、ダイ150から吐出されるストランド160の画像データに基づいて、駆動部400を駆動して移動部410のストロークを調整することによって、ストランド径のばらつきを低減することができる。
【0053】
[調整機構の変形例]
上記の実施の形態においては、ダイの貫通孔の断面積を変更することによってストランド径を調整する調整機構の構成例について説明した。以下の変形例においては、上記とは異なる手法を用いてストランド径を調整する調整機構の例について説明する。
【0054】
(変形例1:温度制御)
図12は、変形例1の調整機構154Aの構成を示す図である。変形例1においては、ダイ150から吐出されたストランド160の温度を調整することによって、ストランド径を調整する構成について説明する。
【0055】
図12を参照して、変形例1の調整機構154Aは、ブロア450および/またはヒータ460を含む。ブロア450およびヒータ460は、各貫通孔152ごとに配置されている。
【0056】
ブロア450は、制御装置300からの制御信号によって制御され、吐出されたストランド160に対して熱風あるいは冷風を吹きかけることによって、ストランド160の温度を調整する。ブロア450は、熱風および冷風を切換えて使用することが可能な構成であってもよいし、熱風あるいは冷風の一方のみが使用可能な構成であってもよい。
【0057】
ヒータ460は、たとえば、貫通孔152の吐出口の部分に取付けられている。ヒータ460は、制御装置300からの制御信号によって制御され、吐出されたストランド160を加熱する。
【0058】
ストランド160は加熱されて温度が高くなると軟化するため、ストランドカッタ30の巻き取り効果によってストランド径は細くなる。逆に、ストランド160が冷却されると硬化が促進されるため、ストランド径は太くなる。
【0059】
なお、ストランド160の加熱/冷却機構は、図12に示されるような吐出口の外側に配置された構成に限られず、ダイ150の内部に配置され、ダイ150本体を加熱あるいは冷却する構成であってもよい。この場合、ダイ150の部分的な加熱または冷却によりダイ150内部のストランド160の流動状態(流速等)を部分的に変化させることによって、所望の貫通孔から吐出されるストランド径が変化する。
【0060】
したがって、検出されたストランド径のばらつきが大きい場合に、制御装置300からの制御指令によって、ブロア450および/またはヒータ460を用いて対象のストランドの加熱/冷却を行なうことによって、ストランド径のばらつきを低減することができる。
【0061】
変形例1における「ブロア450」および「ヒータ460」は、本開示における「温度調整部」に対応する。
【0062】
(変形例2:張力制御)
図13は、変形例2の調整機構154Bの構成を示す図である。変形例2においては、ダイ150から吐出されたストランド160の張力を調整することによって、ストランド径を調整する構成について説明する。
【0063】
図13を参照して、変形例2の調整機構154Bは、ダイ150から吐出されたストランド160にかかる張力を変更するためのテンショナー470を含む。図13の例においては、Y軸に沿って並列した複数のストランド160における、Y軸方向の両端部のストランド160に対してテンショナー470が配置されている例が示されているが、各ストランド160ごとにテンショナー470が設けられる構成であってもよい。
【0064】
テンショナー470は、たとえばY軸方向に移動可能な棒状の部材で形成されており、テンショナー470を外側に移動させることによって、ストランド160の張力を増加することができる。なお、テンショナー470によって張力をかける方向はY軸方向でなくてもよく、たとえば、Z軸方向にストランド160を移動させて張力を増加するようにしてもよい。また、テンショナー470は、全てのストランド160に対して適用してもよい。
【0065】
ストランド160にかかる張力を増加させると、体積変化によってストランド径が減少する。一般的に、ダイ150から吐出される溶融樹脂は、ダイ150のY軸方向の中央部を頂点とした放物線状の速度分布を有する。そのため、ダイ150のY軸方向の端部に近い貫通孔においては、Y軸方向の中央部の貫通孔に比べると溶融樹脂が吐出しにくくなる。これを解消するために、ダイ150の内部の流路形状を変更して、溶融樹脂がY軸方向の端部側へ流れやすくなるようにする対策が採用される場合がある。この場合には、Y軸方向の中央部に比べて端部のストランド径が大きくなりやすいため、Y軸方向の端部側にテンショナー470を配置することよって、ストランド径のばらつきを低減することができる。
【0066】
一方で、ダイ150の内部の流路形状を変更しない場合には、上記のように、Y軸方向の端部に比べて中央部の吐出量が多くなり、ストランド径も大きくなる傾向にある。そのため、テンショナー470を中央部に配置して、中央部のストランドに張力を増加することによって、ストランド径のばらつきを低減することができる。
【0067】
変形例2における「テンショナー470」は、本開示における「張力調整部」に対応する。
【0068】
なお、図2あるいは図5のようなダイ150の貫通孔152の断面積を変更する構成の調整機構、および、変形例1のような温度を変更する構成の調整機構についても、全てのストランドに対してではなく、一部の貫通孔152のみに調整機構が配置される構成であってもよい。
【0069】
以上説明したように、押出装置において、ダイから吐出されるストランドのストランド径を個別に調整可能な調整機構を設けることによって、押出装置の運転中でもストランド径の調整が可能となる。これにより、ストランド径を均一化を図ることができる。また、撮像装置あるいは変位センサを用いた監視装置を設けることによって、押出装置の運転中にストランド径をリアルタイムで検出することができる。これにより、運転中にストランド径が変化した場合であっても迅速な調整が可能となる。さらに、監視装置によって検出されたストランド径のデータを用いて調整機構を自動制御する構成を採用することによって、ユーザによる調整の手間を省略し、ストランド径のばらつきをより一層低減することが可能となる。
【0070】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
【符号の説明】
【0071】
10 ペレット製造装置、20 冷却槽、21 冷却液、30 ストランドカッタ、50 ペレット、60,60A 監視装置、100 押出装置、110,400 駆動部、120 シリンダ、121 投入口、122,460 ヒータ、130 スクリュ、140 フィーダ、150 ダイ、152 貫通孔、153 凹部、154,154A,154B 調整機構、155 ダイホルダ、156 流入部、157 流路部、158 流出部、160 ストランド、200 撮像装置、250 携帯端末、251 ディスプレイ、252,306,307 領域、300 制御装置、301 CPU、302 メモリ、303 バス、305 表示装置、310 画像取得部、320 画像処理部、330 ストランド径演算部、340 ばらつき判定部、350 駆動制御部、410 移動部、450 ブロア、470 テンショナー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13