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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】土質測定装置及び土質測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20240815BHJP
   G01V 3/04 20060101ALI20240815BHJP
   E02D 1/02 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
G01N27/04 Z
G01V3/04
E02D1/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021035198
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135410
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡碩
(72)【発明者】
【氏名】小林 一三
(72)【発明者】
【氏名】岡本 道孝
(72)【発明者】
【氏名】米丸 佳克
(72)【発明者】
【氏名】福島 陽
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 里衣
(72)【発明者】
【氏名】中本 詩瑶
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-107167(JP,A)
【文献】特開平04-034362(JP,A)
【文献】特開2018-084041(JP,A)
【文献】特表2010-500605(JP,A)
【文献】特開2014-020990(JP,A)
【文献】特開2014-052229(JP,A)
【文献】特開2020-173261(JP,A)
【文献】特開2003-251131(JP,A)
【文献】特開2003-245015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00 - E02D 3/115
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
G01N 33/24
G01V 1/00 - G01V 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に導電性の液体を噴霧する噴霧部と、
前記噴霧部により前記液体を噴霧された前記地面に接触する電極部と、
前記電極部により前記地面の土の電気抵抗を測定する測定部と、
を備え
前記噴霧部は、前記地面に負の電荷を有する前記液体を噴霧し、
前記噴霧部は、前記地面に撥水性物質が混合された前記液体を噴霧し、
前記液体に前記撥水性物質を混合する撥水性物質混合部と、前記液体に負の電荷を帯電させる負電荷帯電部とを備え、
前記噴霧部には、前記撥水性物質混合部及び前記負電荷帯電部を介して噴霧ノズルが接続されている、
土質測定装置。
【請求項2】
前記噴霧部は、
前記噴霧部により前記地面に噴霧された前記液体の量の増加に対する前記測定部により測定された前記地面の土の前記電気抵抗の減少の割合が閾値を超える前記液体の量から、前記液体の量を増加させつつ前記地面に前記液体を噴霧し、
前記噴霧部により前記地面に噴霧された前記液体の量の増加に対する前記測定部により測定される前記地面の土の前記電気抵抗の減少の割合が閾値以下となったときに、前記地面に噴霧する前記液体の量を一定とする、請求項1に記載の土質測定装置
【請求項3】
前記電極部は、先端部が前記地面の下方に到達する突起部を有し、
前記電極部は、前記突起部の基部に前記地面の凹凸に追従する柔軟面部を有する、
請求項1または請求項2に記載の土質測定装置。
【請求項4】
噴霧部により地面に導電性の液体を噴霧する噴霧工程と、
前記噴霧工程により前記液体を噴霧された前記地面に電極部を接触させる電極部接触工程と、
前記電極部接触工程により前記地面に接触させられた前記電極部によって前記地面の土の電気抵抗を測定する測定工程と、
を備え
前記噴霧部は、前記地面に負の電荷を有する前記液体を噴霧し、
前記噴霧部は、前記地面に撥水性物質が混合された前記液体を噴霧し、
前記液体に前記撥水性物質を混合する撥水性物質混合部と、前記液体に負の電荷を帯電させる負電荷帯電部とを備え、
前記噴霧部には、前記撥水性物質混合部及び前記負電荷帯電部を介して噴霧ノズルが接続されている、
土質測定方法。
【請求項5】
前記噴霧工程では、
前記噴霧工程により前記地面に噴霧された前記液体の量の増加に対する前記測定工程により測定された前記地面の土の前記電気抵抗の減少の割合が閾値を超える前記液体の量から、前記液体の量を増加させつつ前記地面に前記液体を噴霧し、
前記噴霧工程により前記地面に噴霧された前記液体の量の増加に対する前記測定工程により測定される前記地面の土の前記電気抵抗の減少の割合が閾値以下となったときに、前記地面に噴霧する前記液体の量を一定とする、請求項に記載の土質測定方法
【請求項6】
前記電極部接触工程では、
先端部が前記地面の下方に到達する突起部を有する前記電極部の前記突起部の前記先端部を前記地面の下方に到達させる、請求項4または請求項5に記載の土質測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質測定装置及び土質測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地面と接触する電極により地面の土の電気抵抗を測定することによって、土の土質を測定する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、複数の垂直方向に延在する棒状の電極の下端を転圧機による締固めが行われた盛土に圧接して土の電気抵抗を測定することにより、測定された土の電気抵抗と土の乾燥密度との相関に基づいて当該土の締固め度を取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3416908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、盛上の品質管理は、転圧から多少時間が経過した後に行われることが多々あり、その間に表面が乾燥する可能性は十分にある。表面が乾燥した状態の盛土の上で、上記のような技術を用いて測定すると、土の電気抵抗と土の乾燥密度との相関から外れた極めて大きな電気抵抗が出力され、正しく土の乾燥密度を取得できないという問題点がある。
【0005】
そこで本発明は、土の乾燥の影響を低減させつつ地面の土の電気抵抗を測定することができる土質測定装置及び土質測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、地面に導電性の液体を噴霧する噴霧部と、噴霧部により液体を噴霧された地面に接触する電極部と、電極部により地面の土の電気抵抗を測定する測定部とを備え、噴霧部は、地面に負の電荷を有する液体を噴霧し、噴霧部は、地面に撥水性物質が混合された液体を噴霧し、液体に撥水性物質を混合する撥水性物質混合部と、液体に負の電荷を帯電させる負電荷帯電部とを備え、噴霧部には、撥水性物質混合部及び負電荷帯電部を介して噴霧ノズルが接続されている土質測定装置である。
【0007】
表面が乾燥した状態の土の上で正しい電気抵抗が測定されない原因は、土の表面が乾燥することで電極との間に微細な隙間が生じて電流が流れ難くなっているためである可能性がある。盛土の転圧と品質管理との間に乾燥するのは、盛土表面から深さ方向に数十mm程度の範囲であると考えられる。そこで、この構成によれば、地面と接触する電極部と、電極部により地面の土の電気抵抗を測定する測定部とを備えた土質測定装置において、噴霧部により地面に導電性の液体が噴霧され、電極部は噴霧部により液体を噴霧された地面に接触する。これにより、含水している土と電極部とを確実に接触させ、土の乾燥の影響を低減させつつ地面の土の電気抵抗を測定することができる。
【0008】
この場合、噴霧部は、噴霧部により地面に噴霧された液体の量の増加に対する測定部により測定された地面の土の電気抵抗の減少の割合が閾値を超える液体の量から、液体の量を増加させつつ地面に液体を噴霧し、噴霧部により地面に噴霧された液体の量の増加に対する測定部により測定される地面の土の電気抵抗の減少の割合が閾値以下となったときに、地面に噴霧する液体の量を一定とすることが好適である。
【0009】
発明者による知見によれば、地面に噴霧される液体の量が増加するに従い、測定される地面の土の電気抵抗は減少するが、地面に噴霧される液体の量がある程度以上となると、測定される地面の土の電気抵抗は減少しなくなり、飽和値に達する。そこで、この構成では、噴霧部は、噴霧部により地面に噴霧された液体の量の増加に対する測定部により測定された地面の土の電気抵抗の減少の割合が閾値を超える液体の量から、液体の量を増加させつつ地面に液体を噴霧し、噴霧部により地面に噴霧された液体の量の増加に対する測定部により測定された地面の土の電気抵抗の減少の割合が閾値以下となり、測定された土の電気抵抗が飽和値に達したときに、地面に噴霧する液体の量を一定とする。これにより、土の乾燥の影響を低減させるために地面に噴霧する液体の量を最小限に抑えることができる。
【0011】
一般に地面の土は負の電荷を帯びている。そのため、この構成では、噴霧部は、地面に負の電荷を有する液体を噴霧する。これにより、負の電荷を帯びた地面の土と、噴霧部により噴霧された負の電荷を有する液体との間に斥力が生じ、地面の土への液体の浸透が抑制され、土の乾燥の影響を低減させるために地面に噴霧する液体の量を低減できる。
【0013】
この構成によれば、噴霧部は、地面に撥水性物質が混合された液体を噴霧する。これにより、地面の土への液体の浸透が抑制され、土の乾燥の影響を低減させるために地面に噴霧する液体の量を低減できる。
【0014】
また、電極部は、先端部が地面の下方に到達する突起部を有し、電極部は、突起部の基部に地面の凹凸に追従する柔軟面部を有することが好適である。
【0015】
この構成によれば、先端部が地面の下方に到達する突起部を有する。これにより、地面の下方の含水している土と電極部とを確実に接触させ、土の乾燥の影響を低減させつつ地面の土の電気抵抗を測定することができる。
【0016】
一方、本発明は、噴霧部により地面に導電性の液体を噴霧する噴霧工程と、噴霧工程により液体を噴霧された地面に電極部を接触させる電極部接触工程と、電極部接触工程により地面に接触させられた電極部によって地面の土の電気抵抗を測定する測定工程とを備え、噴霧部は、地面に負の電荷を有する液体を噴霧し、噴霧部は、地面に撥水性物質が混合された液体を噴霧し、液体に撥水性物質を混合する撥水性物質混合部と、液体に負の電荷を帯電させる負電荷帯電部とを備え、噴霧部には、撥水性物質混合部及び負電荷帯電部を介して噴霧ノズルが接続されている、土質測定方法である。
【0017】
この場合、噴霧工程では、噴霧工程により地面に噴霧された液体の量の増加に対する測定工程により測定された地面の土の電気抵抗の減少の割合が閾値を超える液体の量から、液体の量を増加させつつ地面に液体を噴霧し、噴霧工程により地面に噴霧された液体の量の増加に対する測定工程により測定される地面の土の電気抵抗の減少の割合が閾値以下となったときに、地面に噴霧する液体の量を一定とすることが好適である。
【0020】
また、電極部接触工程では、先端部が地面の下方に到達する突起部を有する電極部の突起部の先端部を地面の下方に到達させることが好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の土質測定装置及び土質測定方法によれば、土の乾燥の影響を低減させつつ地面の土の電気抵抗を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(A)は第1実施形態の土質測定装置の構成を示す平面図であり、(B)は第1実施形態の土質測定装置の構成を示す側面図である。
図2】第1実施形態の土質測定装置の電極部を示す斜視図である。
図3】第1実施形態の土質測定方法の工程を示すフローチャートである。
図4図3の噴霧工程の詳細を示すフローチャートである。
図5】乾燥密度と電気抵抗との関係を示すグラフである。
図6】(A)は乾燥していない地面の土の電気抵抗を測定する状況を示す図であり、(B)は乾燥した地面の土の電気抵抗を測定する状況を示す図であり、(C)は地面に負の電荷を有する液体を噴霧して地面の土の電気抵抗を測定する状況を示す図である。
図7】地面への液体の噴射回数と乾燥密度との関係を示すグラフである。
図8】地面への液体の噴射量と比抵抗との関係を示すグラフである。
図9】(A)は第2実施形態の土質測定装置の構成を示す平面図であり、(B)は第2実施形態の土質測定装置の構成を示す側面図である。
図10】第2実施形態の土質測定装置の電極部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る土質測定装置及び土質測定方法の実施形態について詳細に説明する。本発明の第1実施形態の土質測定装置及び土質測定方法は、例えば、ロードローラ等の締固め機械により締固められた後の地面の土の電気抵抗を測定し、電気抵抗と相関がある土の乾燥密度等を導出することによって、締固め機械による締固めの効果を確認するためのものである。
【0024】
図1(A)に示されるように、本発明の第1実施形態の土質測定装置1Aは、中央フレーム部4Aと、中央フレーム部4Aにより牽引される電極部5Aとを備える。土質測定装置1Aは、中央フレーム部4Aに、電極部5Aが通過する前の地面Sに導電性の液体Lを噴霧する噴霧部31を備える。
【0025】
噴霧部31には、撥水性物質混合部32及び負電荷帯電部33を介して噴霧ノズル34が接続されている。噴霧部31は、不図示の液体容器を有し、液体容器内の導電性の液体Lを不図示のポンプにより噴霧ノズル34に供給する。噴霧部31は、噴霧ノズル34に供給する液体Lの量を変更自在である。導電性の液体Lは、例えば、純水ではない水を適用することができる。後述するように、中央フレーム部4Aに配置された測定部11により測定された地面Sの土の電気抵抗に応じて、噴霧部31は噴霧ノズル34に供給する液体Lの量を変更する。
【0026】
撥水性物質混合部32は、液体Lに不図示の液体容器内の撥水性物質を混合する。負電荷帯電部33は、液体Lに負の電荷を帯電させる。噴霧ノズル34は、電極部5Aが通過する前の地面Sに導電性の液体Lを噴霧する。噴霧とは、連続していない複数の液滴の間に空気が存在している状態の液体Lを地面Sに放出することを意味する。以上の構成により、噴霧部31は、地面Sに撥水性物質が混合された液体Lを噴霧する。また、噴霧部31は、地面Sに負の電荷を有する液体Lを噴霧する。
【0027】
土質測定装置1Aは、中央フレーム部4Aに、土質測定装置1Aが地面Sを移動するための駆動輪16を駆動する駆動部15を有する。駆動部15は、駆動輪16を電動機又は内燃機関等により回転駆動させる。これにより、本実施形態の土質測定装置1Aは、地面Sを方向Xに自走可能である。
【0028】
電極部5Aは、噴霧部31により液体Lを噴霧された地面Sに接触する。電極部5Aは、補助輪17を有し、中央フレーム部4Aに牽引される牽引体18を有する。電極部5Aは、牽引体18の後部に4つの車輪状電極19を有する。車輪状電極19の外周面19oは、地面Sと接触する。
【0029】
車輪状電極19の直径は、例えば、100mm~200mmである。車輪状電極19の電極部5Aが地面Sを移動する方向Xに垂直な方向Yの幅は、例えば、10mm~30mmである。車輪状電極19の電極部5Aが地面Sを移動する方向Xの接地長は、例えば、20mm~30mmである。電極部5Aの車輪状電極19のそれぞれの電極部5Dが地面Sを移動する方向Xに垂直な方向Yの間隔は任意に変更自在であり、例えば、200mm、300mm、750mmに変更自在である。
【0030】
各作業現場の土により、測定誤差を小さくできる車輪状電極19と地面Sとの接触面積や接触時間は異なると考えられる。そこで、駆動部15は、車輪状電極19を移動させる速度の調節が可能であり、各作業現場に適切な速度に設定可能である。可能な限り、車輪状電極19の速度は速い方が測定に必要な時間が短くなるため、好ましい。なお、土質測定装置1Aをロードローラ等の自走式の締固め機械や、電動立ち乗り二輪車や、人力等の何らかの手法で牽引することにより、車輪状電極19を移動させてもよい。また、土質測定装置1Aをロードローラ等の自走式の締固め機械と一体化することにより、車輪状電極19を移動させてもよい。
【0031】
以上のような電極部5Aの合計4つの車輪状電極19は、地面Sに沿った方向において、土質測定装置1Aの電極部5Aが地面を移動する方向Xに垂直な方向Yに並列に配置され、例えば、ウェンナー法により土の電気抵抗が測定される。図1(A)に示されるように、中央フレーム部4Aに配置された測定部11は、電極部5Aの4つの車輪状電極19により地面Sの土の電気抵抗を測定する。なお、測定部11が地面Sの土の電気抵抗を測定するとは、必ずしも、土の電気抵抗の数値を算出することのみを意味せず、例えば、電極部5Aにより検出された電流値及び電圧値等に関する情報を出力することも含まれる。
【0032】
以下、本実施形態の電極部5Aの詳細について説明する。図2に示されるように、電極部5Aは、車輪状電極19の外周面19oに、先端部22が地面Sの下方に到達する複数の突起部21を有する。先端部22が地面Sの下方に到達するとは、例えば、電極部5Aが接している範囲の地面Sにおける最も高度が高い地点の高度よりも低い高度の土に突起部21の先端部22が接触することを意味する。突起部21は、先端部22が尖った板状、円錐状又は角錐状の形状を有する。複数の突起部21のそれぞれは、同一の形状を有する。
【0033】
電極部5Aの地面Sに沿った方向、つまり、車輪状電極19の外周面19oにおいて、電極部5Aが地面Sを移動する方向Xに複数の突起部21が配列され、電極部5Aが地面Sを移動する方向Xに垂直な方向Yに複数の突起部21が配列されている。本実施形態では、電極部5Aが地面Sを移動する方向Xに垂直な方向Yに3個の突起部21が配列されている。突起部21の基部23、つまり、車輪状電極19の外周面19oからの突出長は、例えば、5mm~200mmである。なお、突起部21は、例えば、スプロケットの歯のように図2よりも互いに狭い間隔で隣接しつつ外周面19oから突出していてもよい。
【0034】
電極部5Aは、突起部21の基部23に地面Sの凹凸に追従する柔軟面部24を有する。柔軟面部24は、車輪状電極19の外周面19oの全面を層状に被覆している。柔軟面部24は、例えば、導電性スポンジ及び導電性ゲルのいずれかにより構成されている。
【0035】
図1(A)に示されるように、土質測定装置1Aは、中央フレーム部4Aに、車輪状電極19の位置を取得する測位部12を備える。測定部11は、測位部12により取得された車輪状電極19の位置と関連付けた地面Sの土の電気抵抗を測定する。中央フレーム部4A等の土質測定装置1Aの位置が車輪状電極19の位置とみなされてもよい。測位部12は、例えば、GNSS(GlobalNavigation Satellite System)測量により車輪状電極19の位置を測位する。GNSS測量では、3個以上の衛星から信号を受信することにより、車輪状電極19の位置(例えば車輪状電極19の緯度及び経度)を測位する。GNSS測量に替えて、光学測量機能による自動追尾TS(TotalStation)により車輪状電極19の位置が測位されてもよい。
【0036】
土質測定装置1Aは、中央フレーム部4Aに、測定部11、駆動部15及び噴霧部31への指令信号を受信する受信部である通信部13を備える。これにより、測定部11、駆動部15及び噴霧部31の動作は通信部13により受信された指令信号による遠隔操作によって制御される。通信部13は、測定部11により測定された地面Sの土の電気抵抗に関する情報を送信する。なお、土質測定装置1Aに搭載された記録装置に測定部11による測定結果が記録されてもよい。
【0037】
また、土質測定装置1Aは、中央フレーム部4Aに、測定部11、駆動部15及び噴霧部31の動作を制御する制御部14を備える。また、制御部14により、例えば、ロードローラ等の自走式の締固め機械の後方を土質測定装置1Aが追随して移動するように制御されてもよい。また、制御部14により作業現場の任意の経路を土質測定装置1Aが移動するように制御されてもよい。
【0038】
以下、本実施形態の土質測定装置1Aを用いた土質測定方法について説明する。本実施形態の土質測定装置1Aを用いた土質測定方法では、例えば、土質測定装置1Aがロードローラ等の締固め機械により締固められた後の地面Sの上で移動させられつつ、作業現場の任意の場所の土の電気抵抗が測定される。
【0039】
図3に示されるように、噴霧部31により噴霧ノズル34から地面Sに導電性の液体Lを噴霧する噴霧工程が実行される(S1)。噴霧工程により液体Lを噴霧された地面Sに電極部5Aの車輪状電極19を接触させる電極部接触工程が実行される(S2)。電極部接触工程により地面Sに接触させられた電極部5Aによって、測定部11により地面Sの土の電気抵抗を測定する測定工程が実行される(S3)。電極部接触工程では、先端部22が地面Sの下方に到達する突起部21を有する電極部5Aの突起部21の先端部22が地面Sの下方に到達させられる。
【0040】
噴霧工程では、地面Sに撥水性物質混合部32により撥水性物質が混合された液体Lが噴霧される。また、噴霧工程では、地面Sに負の電荷を有する液体Lが噴霧される。さらに、図4に示されるように、噴霧工程では、噴霧工程で噴霧部31により地面Sに噴霧された液体Lの量の増加に対する測定工程で測定部11により測定された地面Sの土の電気抵抗の減少の割合が閾値を超える液体Lの量から、液体Lの量を増加させつつ噴霧部31により地面Sに液体Lが噴霧される(S11)。
【0041】
噴霧工程で噴霧部31により地面Sに噴霧された液体Lの量の増加に対する測定工程で測定部11により測定された地面Sの土の電気抵抗の減少の割合とは、横軸が地面Sに噴霧された液体Lの量であり、縦軸が地面Sの土の電気抵抗であるグラフにおける曲線の接線の勾配を意味する。
【0042】
噴霧工程で噴霧部31により地面Sに噴霧された液体Lの量の増加に対する測定工程で測定部11により測定された地面Sの土の電気抵抗の減少の割合が閾値を超える液体Lの量とは、例えば、噴霧部31が液体Lを噴霧しない状態である0に設定できる。この場合、噴霧部31は、噴霧部31が液体Lを噴霧しない状態である0から次第に噴霧ノズル34から地面Sに噴霧する液体Lの量を増加させる。閾値には、例えば、横軸が地面Sに噴霧された液体Lの量であり、縦軸が地面Sの土の電気抵抗であるグラフにおける曲線の接線の勾配が0に近い値を設定することができる。
【0043】
噴霧工程で噴霧部31の噴霧ノズルから地面Sに噴霧された液体Lの量の増加に対する測定工程で測定部11によって測定された地面Sの土の電気抵抗の減少の割合が閾値を超えているときは(S12)、噴霧部31は液体Lの量を増加させつつ噴霧ノズル34から地面Sに噴霧する(S13)。噴霧工程で噴霧部31の噴霧ノズルから地面Sに噴霧された液体Lの量の増加に対する測定工程で測定部11によって測定された地面Sの土の電気抵抗の減少の割合が閾値以下であるときは(S12)、噴霧部31は噴霧ノズル34から地面Sに噴霧する液体Lの量を一定とする(S14)。
【0044】
以下、本実施形態の土質測定装置及び土質測定方法の作用及び効果について説明する。図5に示されるように、土の電気抵抗と土の乾燥密度とは相関関係があることが知られているため、土の電気抵抗に基づいて土の乾燥密度を導出することができる。導出された土の乾燥密度により、締固め機械による締固めの効果を確認することができる。
【0045】
測定部11は、測定された土の電気抵抗に基づいて土の乾燥密度を導出し、通信部13は導出された土の乾燥密度を送信してもよい。また、測定部11は、電極部5Aにより検出された電流値及び電圧値等に関する情報や土の電気抵抗に関する情報を出力し、通信部13は当該情報を送信し、土の乾燥密度の導出は土質測定装置1Aの外部の携帯通信端末で行われてもよい。
【0046】
図6(A)に示されるように、土Eの地面Sに水Wが存在するときは、電極部5Aと土Eとの間に電流Cが流れ、電極部5Aにより正しい電気抵抗が測定される。しかし、図6(B)に示されるように、地面Sが乾燥した状態の土Eの上で正しい電気抵抗が測定されない原因は、土Eの地面Sが乾燥することで電極部5Aとの間に微細な隙間が生じて電流Cが流れ難くなっているためである可能性がある。盛土の転圧と品質管理との間に乾燥するのは、盛土表面から深さ方向に数十mm程度の範囲であると考えられる。
【0047】
そこで、本実施形態では、図6(C)に示されるように、地面Sと接触する電極部5Aと、電極部5Aにより地面Sの土Eの電気抵抗を測定する測定部11とを備えた土質測定装置1Aにおいて、噴霧部31により地面Sに導電性の液体Lが噴霧され、電極部5Aは噴霧部31により液体Lを噴霧された地面Sに接触する。これにより、含水している土Eと電極部5Aとを確実に接触させ、土Eの乾燥の影響を低減させつつ地面Sの土Eの電気抵抗を測定することができる。
【0048】
また、図6(C)に示されるように、一般に地面Sの土Eは負の電荷を帯びている。そのため、本実施形態では、噴霧部31は、地面Sに負の電荷を有する液体Lを噴霧する。これにより、負の電荷を帯びた地面Sの土Eと、噴霧部31により噴霧された負の電荷を有する液体Lとの間に斥力が生じ、地面Sの土Eへの液体Lの浸透が抑制され、土Eの乾燥の影響を低減させるために地面Sに噴霧する液体Lの量を低減できる。また、本実施形態では、噴霧部31は、地面Sに撥水性物質が混合された液体Lを噴霧する。これにより、地面Sの土Eへの液体Lの浸透が抑制され、土Eの乾燥の影響を低減させるために地面Sに噴霧する液体Lの量を低減できる。
【0049】
図7に示されるように、地面Sの土Eが乾燥しており、測点6~8の地面Sの表層で測定された土Eの電気抵抗に基づいて導出される土の乾燥密度が砂置換法で測定される地面Sの土Eの乾燥密度と大きく異なる状況においては、液体Lの噴射回数、つまり地面Sに噴霧された液体Lの量が少ないときは、砂置換法で測定される地面Sの土Eの乾燥密度に比べて、測点1~5で測定された土Eの電気抵抗に基づいて導出される土の乾燥密度は極めて小さい値となる。つまり、地面Sに噴霧された液体Lの量が少ないときは、土Eの電気抵抗は極めて大きな値に測定される。
【0050】
一方、地面Sに噴霧された液体Lの量が多くなるにつれて、測点1~5で測定された土Eの電気抵抗に基づいて導出される土の乾燥密度は増大する。つまり、地面Sに噴霧された液体Lの量が多くなるにつれて、土Eの電気抵抗は減少する。地面Sに噴霧された液体Lの量がある程度以上の量になると、測点1~5で測定された土Eの電気抵抗に基づいて導出される土の乾燥密度は砂置換法で測定される地面Sの土Eの乾燥密度と略同じ値となる。つまり、地面Sに噴霧された液体Lの量がある程度以上の量になると、土Eの電気抵抗は略一定の値となる。図8に示される噴射量に対する電気抵抗のグラフでも同様の傾向が見られる。
【0051】
以上のように、発明者による知見によれば、地面Sに噴霧される液体Lの量が増加するに従い、測定される地面Sの土Eの電気抵抗は減少するが、地面Sに噴霧される液体Lの量がある程度以上となると、測定される地面Sの土Eの電気抵抗は減少しなくなり、飽和値に達する。
【0052】
そこで、本実施形態では、噴霧部31は、噴霧部31により地面Sに噴霧された液体Lの量の増加に対する測定部11により測定された地面Sの土Eの電気抵抗の減少の割合が閾値を超える液体の量から、液体Lの量を増加させつつ地面Sに液体Lを噴霧し、噴霧部31により地面Sに噴霧された液体Lの量の増加に対する測定部11により測定された地面Sの土Eの電気抵抗の減少の割合が閾値以下となり、測定された土Eの電気抵抗が飽和値に達したときに、地面Sに噴霧する液体Lの量を一定とする。これにより、土Eの乾燥の影響を低減させるために地面Sに噴霧する液体Lの量を最小限に抑えることができる。
【0053】
例えば、作業現場の土Eがベントナイトである場合は、土Eは含水による膨潤を生じ易い。つまり、締固め機械により締固められた土Eの含水による変質が懸念される場合がある。したがって、土Eの乾燥の影響を低減させるために地面Sに噴霧する液体Lの量は最小限の量とし、土Eの電気抵抗の測定後は速やかに地面Sに噴霧された液体Lが蒸発することが望ましい。しかし、本実施形態では、このような場合であっても、土Eの乾燥の影響を低減させるために地面Sに噴霧する液体Lの量及び地面Sの下方に浸透する液体Lの量を低減できる。したがって、本実施形態では、土Eがベントナイトであるような場合でも、地面Sの土Eの改質を抑制できる。
【0054】
また、図7に示されるように、液体Lの噴射回数、つまり地面Sに噴霧された液体Lの量が少ないときであっても、測点9~11の地面Sの下方で測定された土Eの電気抵抗に基づいて導出される土の乾燥密度は砂置換法で測定される地面Sの土Eの乾燥密度に近い値となる。そこで本実施形態では、電極部5Aは、先端部22が地面Sの下方に到達する突起部21を有する。これにより、地面Sの下方の含水している土Eと電極部5Aとを確実に接触させ、土Eの乾燥の影響を低減させつつ地面Sの土Eの電気抵抗を測定することができる。
【0055】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。図9(A)に示されるように、本発明の第2実施形態の土質測定装置1Bは、左側の左フレーム部2と、右側の右フレーム部3と、左フレーム部2と右フレーム部3とを連結する中央フレーム部4Bとを備える。
【0056】
左フレーム部2及び右側の右フレーム部3の全長は、例えば、500~1000mm程度である。左フレーム部2及び右側の右フレーム部3の全幅は、例えば、100~400mm程度である。中央フレーム部4Bの全長は、例えば、200~500mm程度である。中央フレーム部4Bの全幅は、例えば、100~400mm程度である。本実施形態の土質測定装置1Bは、地面を自走可能である。本実施形態の土質測定装置1Bは、例えば、模型自動車のような形態を有する。
【0057】
土質測定装置1Bは、中央フレーム部4Bに、地面Sに導電性の液体Lを噴霧する噴霧部31を備える。また、土質測定装置1Bは、左フレーム部2及び右側の右フレーム部3のそれぞれの左右の両端に、噴霧部31により液体Lを噴霧された地面Sに接触する合計4つの電極部5Bを備える。土質測定装置1Bは、中央フレーム部4Bに、電極部5Bにより地面の土の電気抵抗を測定する測定部11を備える。
【0058】
図9(B)に示されるように、電極部5Bは、前輪6と、後輪7と、前輪6と後輪7とをその内周面8iにより囲繞しつつ一帯をなし、前輪6と後輪7との間でその外周面8oにより地面Sと接触する履帯状電極8とを有する。履帯状電極8が前輪6及び後輪7の周囲で回転することにより、電極部5Bは、前輪6と後輪7との間で履帯状電極8の外周面8oにより地面Sと接触しつつ地面Sを方向Xへと移動する。
【0059】
履帯状電極8は、金属の電極が埋め込まれたゴム等の合成樹脂製の切れ目のない帯状体や、その全体が電極である金属製の切れ目のない帯状体である。電極部5Bは、履帯状電極8の外周面8oが地面Sと接触する範囲における履帯状電極8の内周面8iを支持する補助輪9をさらに有する。前輪6、後輪7及び補助輪9は懸架装置により懸架され、履帯状電極8の外周面8oが地面Sと接触する範囲において地面Sの不陸や剛性に関わらず地面Sと常に密着するようにされている。
【0060】
電極部5Bは、履帯状電極8を前輪6及び後輪7の周囲で回転させることにより、履帯状電極8に地面Sを移動させる駆動部10を有する。駆動部10は、例えば、前輪6及び後輪7のいずれかを電動機又は内燃機関等により回転駆動させることにより、履帯状電極8を前輪6及び後輪7の周囲で回転させる。これにより、本実施形態の土質測定装置1Bは、地面Sを方向Xに自走可能である。また、左フレーム部2及び右フレーム部3から方向Xに垂直な方向Yへの履帯状電極8のそれぞれの突出長を変更することにより、電極部5Bの履帯状電極8のそれぞれの電極部5Bが地面Sを移動する方向Xに垂直な方向Yの間隔は任意に変更自在である。
【0061】
図10に示されるように、電極部5Bは、履帯状電極8の外周面8oにおいて、先端部22が地面Sの下方に到達する複数の突起部21を有する。その他は、上記第1実施形態と同様である。本実施形態のように、履帯状電極8を備えた土質測定装置1Bにおいても、上記第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、上記実施形態の土質測定装置及び土質測定方法により電気抵抗を測定される土Eには、一般の土Eのみならず、CSG(CementedSand and Gravel)工法における建設現場で得られた砂礫等にセメントが添加及び混合された物及びRCD(Roller CompactedDam-Concrete)工法におけるセメントの量を少なくした超硬練りのコンクリートが敷均されて振動ローラ等で締め固められた物も含まれる。
【0063】
また、例えば、上記実施形態では、測定された地面Sの土Eの電気抵抗に基づいて土Eの乾燥密度が導出され、導出された土Eの乾燥密度により、締固め機械による締固めの効果を確認する態様について説明したが、例えば、締固め機械による締固めの効果の確認は、他の手法と本実施形態の手法とを併用して行われてもよい。また、本実施形態による土Eの電気抵抗の測定は、土Eの乾燥密度の導出だけではなく、乾燥密度以外の他の要素に関する土Eの土質測定のために行われてもよい。
【0064】
また、狭い範囲において、土Eの真の抵抗率が得られる液体Lの量を予め測定しておき、噴霧部31は当該測定で得られた一定の量の液体Lを地面Sに噴霧してもよい。また、噴霧部31は、液体Lを連続的に噴霧してもよく、電極部5A,5Bの移動速度に応じて間欠的に噴霧してもよい。また、噴霧部31は、タンクに蓄圧された気体の圧力等により液体Lを地面Sに噴霧してもよい。また、地面Sの土Eに液体Lが浸透し難い場合には、噴霧部31は、微量の界面活性剤が混入された液体Lを地面Sに噴霧してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1A,1B…土質測定装置、2…左フレーム部、3…右フレーム部、4A,4B…中央フレーム部、5A,5B…電極部、6…前輪、7…後輪、8…履帯状電極、8i…内周面、8o…外周面、9…補助輪、10…駆動部、11…測定部、12…測位部、13…通信部、14…制御部、15…駆動部、16…駆動輪、17…補助輪、18…牽引体、19…車輪状電極、19o…外周面、21…突起部、22…先端部、23…基部、24…柔軟面部、31…噴霧部、32…撥水性物質混合部、33…負電荷帯電部、34…噴霧ノズル、S…地面、E…土、W…水、L…液体、C…電流、X,Y…方向。
図1
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