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特許7538754情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20240815BHJP
   H02S 50/00 20140101ALI20240815BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240815BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02S50/00
H02J3/38 130
H02J13/00 301A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021043909
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143418
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】志賀 慶明
(72)【発明者】
【氏名】進 博正
(72)【発明者】
【氏名】柿元 満
(72)【発明者】
【氏名】愛須 英之
(72)【発明者】
【氏名】林 祐希
(72)【発明者】
【氏名】大場 健史
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-063372(JP,A)
【文献】特開2018-125937(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217466(WO,A1)
【文献】特開2017-220980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L31/04-31/06
H02J3/00-5/00
H02J13/00
H02S10/00-10/40
H02S30/00-99/00
H10K30/00
H10K30/50-30/57
H10K39/00-39/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1パラメータと前記第1パラメータよりも変化頻度が高い第2パラメータとに基づいて、太陽光発電の発電量を含む所定の物理量を予測する予測部と、
前記物理量の実績データに基づいて前記第1パラメータをチューニングする第1チューニング部と、
前記第1チューニング部でチューニングされた前記第1パラメータに基づいて予測された前記物理量の予測値と、前記物理量の実績データとに基づいて、前記予測値に乗じる前記第2パラメータをチューニングする第2チューニング部と、を備え、
前記第1チューニング部は、
前記第1パラメータの値を変更する変更部と、
前記変更部で変更された第1パラメータに基づいて前記物理量の予測値を計算するモデル計算部と、
前記実績データに基づく実績値と前記予測値とを比較して、前記予測値のスコアを計算するスコア計算部と、
前記スコアが所定の基準を満たすまで、前記変更部、前記モデル計算部、及び前記スコア計算部の処理を繰り返して、前記スコアが前記所定の基準を満たしたときの前記第1パラメータを出力する第1パラメータ出力部と、を有し、
前記第1パラメータは、設備に関するパラメータを含み、
前記第2パラメータは、環境条件に関するパラメータを含む、情報処理装置。
【請求項2】
前記予測部は、前記第1チューニング部でチューニングされた第1パラメータと前記第2チューニング部でチューニングされた第2パラメータとに基づく工学モデルを用いて、将来における前記物理量を予測し、
前記モデル計算部は、前記変更部で変更された前記第1パラメータに基づく前記工学モデルを用いて前記物理量の予測値を計算する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記予測部は、前記第1チューニング部でチューニングされた第1パラメータと、前記第2チューニング部でチューニングされた第2パラメータと、気象データと、に基づく前記工学モデルを用いて、将来における前記物理量を予測する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記物理量の実績データのうち、前記第1チューニング部でのチューニングに使用可能な実績データを抽出するデータ抽出部を備え、
前記第1チューニング部は、前記データ抽出部で抽出された実績データに基づいて前記第1パラメータをチューニングする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記予測部で予測された物理量と、前記物理量の実績データと、気象データとを対応づけて記録する記録部を備え、
前記データ抽出部は、前記記録部に記録されたデータに基づいて、前記第1チューニング部でのチューニングに使用可能な実績データを抽出する、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記データ抽出部で抽出された実績データを可視化する第1可視化部を備える、請求項4又は5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記データ抽出部は、前記第1可視化部による可視化により、前記データ抽出部で抽出された実績データが適切でないと判断された実績データを除いて、再度実績データを抽出する、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第1チューニング部でチューニングされた前記第1パラメータと、前記第2チューニング部でチューニングされた前記第2パラメータとの少なくとも一方を可視化する第2可視化部を備える、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記第2可視化部は、前記第1チューニング部でチューニングされた前記第1パラメータと、前記第2チューニング部でチューニングされた前記第2パラメータとの少なくとも一方を、時系列で出力する、請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記第2可視化部で可視化された前記第1パラメータ及び前記第2パラメータの少なくとも一方を修正する修正部を備え、
前記予測部は、前記修正部で修正された前記第1パラメータ及び前記第2パラメータの少なくとも一方に基づく工学モデルを用いて、将来における前記物理量を予測する、請求項8又は9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記予測部が前記物理量を予測するのに用いる前記物理量を計算する工学モデルに使用される複数のパラメータを前記第1パラメータと前記第2パラメータとに分類する分類部を備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記第1チューニング部は、前記第1パラメータを第1期間ごとにチューニングし、
前記第2チューニング部は、前記第2パラメータを第2期間ごとにチューニングする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記第1期間は、前記第2期間よりも長い、請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記変更部は、前記実績データに含まれる各時刻での実績値のうち最大値を時刻ごとに抽出し、抽出された最大値に基づいて前記物理量を制御する制御機器の容量を決定する、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記予測部が前記物理量を予測するのに用いる前記物理量を計算する工学モデルは、太陽光発電の発電量を計算するモデルである、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項16】
第1パラメータと前記第1パラメータよりも変化頻度が高い第2パラメータとに基づいて、太陽光発電の発電量を含む所定の物理量を予測するステップと、
前記物理量の実績データに基づいて前記第1パラメータをチューニングするステップと、
チューニングされた前記第1パラメータに基づいて予測された前記物理量の予測値と、前記物理量の実績データとに基づいて、前記予測値に乗じる前記第2パラメータをチューニングするステップと、を備え、
前記第パラメータをチューニングするステップは、
前記第1パラメータの値を変更するステップと、
前記変更された第1パラメータに基づいて前記物理量の予測値を計算するステップと、
前記実績データに基づく実績値と前記予測値とを比較して、前記予測値のスコアを計算するステップと、
前記スコアが所定の基準を満たすまで、前記第1パラメータの値を変更するステップ、前記物理量の予測値を計算するステップ、及び前記予測値のスコアを計算するステップの処理を繰り返して、前記スコアが前記所定の基準を満たしたときの前記第1パラメータを出力するステップと、を有し、
前記第1パラメータは、設備に関するパラメータを含み、
前記第2パラメータは、環境条件に関するパラメータを含む、情報処理方法。
【請求項17】
コンピュータに、
第1パラメータと前記第1パラメータよりも変化頻度が高い第2パラメータとに基づいて、太陽光発電の発電量を含む所定の物理量を予測する手順と、
前記物理量の実績データに基づいて前記第1パラメータをチューニングする手順と、
チューニングされた前記第1パラメータに基づいて予測された前記物理量の予測値と、前記物理量の実績データとに基づいて、前記予測値に乗じる前記第2パラメータをチューニングする手順と、を実行させ、
前記第パラメータをチューニングする手順は、
前記第1パラメータの値を変更する手順と、
前記変更された第1パラメータに基づいて前記物理量の予測値を計算する手順と、
前記実績データに基づく実績値と前記予測値とを比較して、前記予測値のスコアを計算する手順と、
前記スコアが所定の基準を満たすまで、前記第1パラメータの値を変更する手順、前記物理量の予測値を計算する手順、及び前記予測値のスコアを計算する手順の処理を繰り返して、前記スコアが前記所定の基準を満たしたときの前記第1パラメータを出力する手順と、を有し、
前記第1パラメータは、設備に関するパラメータを含み、
前記第2パラメータは、環境条件に関するパラメータを含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光パネルの発電量を予測するモデルには、種々のパラメータがある。ユーザが指定したパラメータでは、実際の発電量実績と合わないことがある。また、回帰分析等の機械学習を用いてモデルを学習する手法では、所定の期間内に学習させたモデルを使用して発電量を予測するが、太陽光パネルの発電量は時間帯や季節によって大きく変化するため、日々の環境変化に追随できるモデルが得られないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-173657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の一実施形態では、信頼性の高い工学モデルを用いて物理量を精度よく予測可能な情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態によれば、第1パラメータと前記第1パラメータよりも変化頻度が高い第2パラメータとに基づいて所定の物理量を予測する予測部と、
前記物理量の実績データに基づいて前記第1パラメータをチューニングする第1チューニング部と、
前記物理量の実績データに基づいて前記第2パラメータをチューニングする第2チューニング部と、を備える、情報処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態による情報処理装置1の概略構成を示すブロック図。
図2】太陽光パネルの発電量を計算する工学モデルのパラメータの一例を示す図。
図3】第1チューニング部3が行う処理手順の一例を示すフローチャート。
図4A】時刻ごとに発電量予測値をプロットした図。
図4B】時刻ごとに発電量予測値の最大値をプロットした図。
図5】第2チューニング部4が行う処理手順の一例を示すフローチャート。
図6図1の情報処理装置1の処理動作の一例を示すフローチャート。
図7A】第1パラメータが時刻に応じて変化する様子を模式的に示す図。
図7B】第2パラメータが時刻に応じて変化する様子を模式的に示す図。
図7C】発電量が時刻に応じて変化する様子を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムの実施形態について説明する。以下では、情報処理装置の主要な構成部分を中心に説明するが、情報処理装置には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0008】
図1は一実施形態による情報処理装置1の概略構成を示すブロック図である。図1の情報処理装置1は、工学モデルを用いて物理量を予測するものである。工学モデルとは、パラメータを含む関数式によって物理量を計算することができる計算モデルである。以下では、一例として、太陽光パネルの発電量を計算する工学モデルを主に説明する。この場合、物理量は発電量である。
【0009】
図1の情報処理装置1は、モデル予測部2と、第1チューニング部3と、第2チューニング部4とを備えている。
【0010】
モデル予測部2は、第1パラメータと第1パラメータよりも変化頻度が高い第2パラメータとに基づいて所定の物理量をを予測する。より詳細には、モデル予測部2は、第1パラメータと第2パラメータに基づいて、物理量を計算する工学モデルを用いて、将来における物理量を予測する。第1パラメータは、設備パラメータと呼ばれることもあり、工学モデルに含まれる複数のパラメータのうち、主に太陽光パネルの設備に関するパラメータである。第1パラメータの値は、短期間(例えば1週間)ではほとんど変化しないという特徴を有する。第2パラメータは、環境パラメータと呼ばれることもあり、気象条件等によって頻繁に値が変化する。本実施形態では、第1パラメータと第2パラメータがそれぞれ複数個ずつ存在する例を説明するが、第1パラメータと第2パラメータの数(種類)は問わない。
【0011】
第1チューニング部3は、物理量の実績データに基づいて第1パラメータをチューニングする。上述したように、第1パラメータは短期間ではほとんど値が変化しないため、第1チューニング部3は年単位等の第1期間ごとに第1パラメータをチューニングする。ここで、チューニングとは、物理量を精度よく予測できるように、対象となるパラメータ(この場合は第1パラメータ)を調整することである。より具体的には、チューニングとは、物理量を計算する工学モデルが現実の物理量を精度よく予測できるように、物理量のパラメータ(この場合は第1パラメータ)を調整することである。
【0012】
第2チューニング部4は、物理量の実績データに基づいて第2パラメータをチューニングする。上述したように、第2パラメータは頻繁に値が変化するため、第2チューニング部4は日単位等の第2期間ごとに第2パラメータをチューニングする。第2期間は、第1期間よりも短い期間である。
【0013】
モデル予測部2は、第1チューニング部3でチューニングされた第1パラメータと第2チューニング部4でチューニングされた第2パラメータとに基づく工学モデルを用いて、将来における発電量を予測する。モデル予測部2は、工学モデルの初期パラメータを図1の情報処理装置1の外部から取得してもよい。この場合、モデル予測部2は、初期パラメータを用いて生成された工学モデルを用いて物理量を計算し、その計算結果と実績データとを比較して、工学モデルのパラメータを更新する学習を開始する。その後は、学習期間の間、チューニングされた第1パラメータ及び第2パラメータを含む工学モデルにて計算された発電量の予測値と過去の実績データとを比較して、第1パラメータ及び第2パラメータの少なくとも一方をチューニングする処理を繰り返す。
【0014】
図1の情報処理装置1は、データ抽出部5を備えていてもよい。データ抽出部5は、物理量の実績データのうち、第1チューニング部3でのチューニングに使用可能な実績データを抽出する。実績データの中には、第1パラメータのチューニングに用いるのに適さないデータもありうることから、データ抽出部5は、第1パラメータのチューニングに用いるのに適した実績データを抽出して第1チューニング部3に供給する。第1チューニング部3は、データ抽出部5で抽出された実績データに基づいて第1パラメータをチューニングする。
【0015】
図1の情報処理装置1は、実績データ取得部6と、全球予報データ取得部7と、気象予測部8と、記録部9とを備えていてもよい。
【0016】
実績データ取得部6は、図1の情報処理装置1の外部から供給される物理量の実績データを取得する。例えば、実績データ取得部6は、発電業者等が提供する発電量の実績データを、ネットワークを介して取得する。
【0017】
全球予報データ取得部7は、図1の情報処理装置1の外部から供給される全球予報データを取得する。全球予報データは、米国のNCEP(National Centers for Environmental Prediction)のGFS(Global Forecast System)、欧州気象機関ECMWF(European Centre for Medium-Range Weather Forecasts)のHRES(High Resolution forecast)等から供給されるデータである。
【0018】
気象予測部8は、全球予報データに基づいて対象地域の領域気象予測データを生成する。例えば、気象予測部8は、全球予報データに基づいて、太陽光パネルが設置された対象地域の気象予測データを生成する。
【0019】
記録部9は、モデル予測部2で予測された物理量(例えば発電量)と、実績データ取得部6で取得された実績データと、気象予測部8で予測された対象地域の気象予測データとを対応づけて記録する。記録部9がこれらのデータを記録する時間間隔は任意であり、予め定められた時間間隔でもよいし、不定期な時間間隔でもよい。
【0020】
例えば、データ抽出部5は、記録部9に記録されたデータに基づいて、第1チューニング部3でのチューニングに使用可能な実績データを抽出する。
【0021】
図1の情報処理装置1は、可視化部(第1可視化部と第2可視化部)10を備えていてもよい。可視化部10が可視化するデータには複数通りの候補がある。例えば、可視化部(第1可視化部)10は、データ抽出部5が抽出したデータを可視化してもよい。データを可視化することで、データ抽出部5が抽出したデータが適切か否かを人間が判断でき、人間が不適切であると判断した場合は、そのデータを削除したり、再度データ抽出部5にデータの抽出を指示することができる。可視化部10は、図1の情報処理装置1に接続された不図示の表示装置の表示画面に、可視化対象のデータを表示することができる。あるいは、可視化部10は、図1の情報処理装置1に接続された不図示のプリンタにて可視化対象データを印字出力してもよい。あるいは、可視化部10は、可視化対象のデータをネットワークを介して送信してもよい。
【0022】
さらに、可視化部(第2可視化部)10は、第1チューニング部3でチューニングされた第1パラメータと、第2チューニング部4でチューニングされた第2パラメータとの少なくとも一方を可視化してもよい。例えば、可視化部10は、図1の情報処理装置1に接続された表示装置の表示画面に、チューニングされた第1パラメータ及び第2パラメータの少なくとも一方を時系列で表示してもよい。
【0023】
図1の情報処理装置1は、パラメータ制御部11を備えていてもよい。パラメータ制御部11は、工学モデルのパラメータを第1パラメータと第2パラメータに分類する。分類の仕方は予め定めてもよいし、人間が任意に設定変更できるようにしてもよい。また、パラメータ制御部11は、第1チューニング部3が第1パラメータをチューニングする更新間隔である第1期間と、第2チューニング部4が第2パラメータをチューニングする更新間隔である第2期間との少なくとも一方を設定変更できるようにしてもよい。この場合、人間が第1期間と第2期間の少なくとも一方を指定できるようにしてもよい。また、パラメータ制御部11は、第1パラメータをチューニングするタイミングと第2パラメータをチューニングするタイミングとの少なくとも一方を設定変更できるようにしてもよい。この場合、人間が第1パラメータをチューニングするタイミングと第2パラメータをチューニングするタイミングとの少なくとも一方を指定できるようにしてもよい。さらに、パラメータ制御部11は、第1チューニング部3によるチューニング手法と、第2チューニング部4によるチューニング手法との少なくとも一方を選択できるようにしてもよい。この場合、人間が第1チューニング部3によるチューニング手法と、第2チューニング部4によるチューニング手法との少なくとも一方を指定できるようにしてもよい。
【0024】
図1の情報処理装置1は、修正部12を備えていてもよい。図1では、パラメータ制御部11の内部に修正部12を含めているが、パラメータ制御部11とは別個に修正部12を設けてもよい。修正部12は、可視化部10で可視化された第1パラメータ及び第2パラメータの少なくとも一方を修正する。例えば、第1パラメータに含まれる太陽光パネルの方位角が実際にはありえないような角度の場合は、人間が手動で変更できるようにする。このように、修正部12は、第1チューニング部3と第2チューニング部4による第1パラメータと第2パラメータのチューニングが適切に行われなかった場合に、人間が手動で修正を行えるようにするために設けられている。
【0025】
図1の情報処理装置1は、出力部13を備えていてもよい。出力部13は、モデル予測部2で予測された工学モデルの物理量(例えば発電量)の予測値を出力する。出力部13は、表示装置に予測値を表示してもよいし、プリンタで予測値を紙媒体に印字出力してもよいし、ネットワークを介して予測値を送信してもよい。
【0026】
(太陽光パネルの発電量の予測)
以下、太陽光パネルの発電量の予測手法の概略について説明する。図2は太陽光パネルの発電量を計算する工学モデルのパラメータの一例を示す図である。図2に示すように、工学パラメータには第1パラメータと第2パラメータが存在する。第1パラメータには、太陽光パネルの設置場所を示す緯度lat及び経度lonと、太陽光パネルの傾斜角til及び方位角aziと、太陽光パネルの容量CAPと、太陽光パネルを制御するパワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning Subsystem)の容量PCSなどがある。第2パラメータは、環境パラメータであり、環境に依存する種々の係数やパラメータを一つのパラメータKdに統合している。図2には、各パラメータの初期値、更新間隔、更新タイミング、及び更新手法が一例として示されているが、これらは任意に設定変更することができる。
【0027】
例えば、図2の更新間隔では、第1パラメータは1年、第2パラメータは1週間としているが、第1パラメータの種類ごとに更新間隔を変えてもよい。また、図2の更新手法において、グリッドサーチとは、第1パラメータの値の組合せを総当たりで検索することを意味する。フィッティングとは、発電量の実績値と予測値が一致するように第1パラメータの値を調整することを意味する。
【0028】
次に、工学モデルに種々の係数を入力する。入力される係数には、気象予測から得られる日射強度solar、入射光に対する反射光の割合を示すアルベドalbedo、気温temp、風速windなどがある。全天日射量から太陽光パネルの傾斜面日射量G1への変換関数は、以下の式(1)で表される。
G1=変換関数(solar, albedo, time, lat, lon, til, azi) …(1)
【0029】
式(1)のTimeは、気象予測のタイムスタンプであり、全天日射量を傾斜面日射量に変換する際に太陽高度を算出するために使用される。次に、気温や風速による太陽光パネルの変換効率の補正係数Ktを計算する。これらの係数を用いて、以下の式(2)に基づいて、太陽光パネルの発電量powerを予測する。
power=Kd×CAP×G1×Kt …(2)
【0030】
式(2)で予測される発電量powerに対して、式(3)に示すように、パワーコンディショナの容量PCSで制限をかけた値が発電量の最終的な予測値outputとなる。
output=power(power≦PCS),pcs(power>pcs) …(3)
【0031】
(第1パラメータのチューニング)
以下、第1パラメータのチューニング手法の一例を説明する。図3は第1チューニング部3が行う処理手順の一例を示すフローチャートである。図3のフローチャートは、複数種類の第1パラメータの値の組み合わせを変更しながら、発電量の予測値を計算し、計算された予測値を過去の発電量実績値と比較した結果に基づいて、最適な第1パラメータの値の組み合わせを選択するものである。
【0032】
まず、複数種類の第1パラメータのうち、グリッドサーチで探索する第1パラメータの値の組み合わせを変更して(ステップS1、変更部)、変更された第1パラメータの値の組み合わせを工学モデルに入力して発電量の予測値の計算を繰り返す(ステップS2、モデル計算部)。例えば、グリッドサーチにより、太陽光パネルの方位角と傾斜角の値の組み合わせについて、発電量の予測値を計算する。
【0033】
次に、計算された予測値と太陽光パネルの過去の発電量実績値とを最小二乗法でフィッティングすることで、第1パラメータの値を最適化する(ステップS3)。フィッティングした第1パラメータの値を用いて計算された予測値と過去の発電量実績値とに基づいてスコアを計算する(ステップS4、スコア計算部)。スコアは、小さいほど予測値と発電量実績値との誤差が少ないことを示している。
【0034】
次に、グリッドサーチにより第1パラメータの値の組み合わせを再度変化させて、上述したステップS1~S4の処理を繰り返して、スコアが最小になる第1パラメータの値の組み合わせを最適な設備パラメータとする(ステップS5、第1パラメータ出力部)。その後、過去の発電量実績値に基づいて、パワーコンディショナの容量PCSを計算する(ステップS6)。
【0035】
図4A及び図4B図2のステップS6の処理を説明する図である。図4A及び図4Bの横軸は時間、縦軸は発電量である。図4Aには、発電量予測値のプロットが示されている。本来的には、時刻に対して線形に発電量が変化し、その傾きが容量PCSとなる。ところが、図4Aに示すように、プロットは広い範囲に分布している。プロットの分布範囲の中央を通過するように近似直線を引いて、この近似直線の傾きから容量PCSを計算する手法が考えられるが、この手法では正確に容量PCSを計算することはできない。
【0036】
一方、図4Bは、各時刻の発電量予測値の最大値をプロットした図である。この場合、プロットの分布範囲の幅が図4Aに比べて狭いため、プロットの分布範囲に沿って近似直線を引くことが容易になり、この近似直線の傾きに従って容量PCSを求めることで、正確に容量PCSを計算できる。
【0037】
(第2パラメータのチューニング)
以下、第2パラメータのチューニング手法の一例を説明する。図5は第2チューニング部4が行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0038】
まず、第2パラメータKdを初期化する(ステップS11)。次に、第2パラメータKdの初期値に基づいて発電量予測値を計算する(ステップS12)。次に、発電量予測値と発電量実績値とを比較して、回帰分析等により第2パラメータKdを更新する(ステップS13)。
【0039】
ステップS13の処理が終了すると、ステップS12~S13の処理を予め定めた更新間隔ごとに繰り返して、第2パラメータKdをチューニングする。
【0040】
また、第2パラメータKd以外に、降雪による発電量低下を考慮に入れるための係数Ksを設けてもよい。係数Ksは、例えば以下の式(4)に基づいてチューニングすることができる。
Ks=0(snow>Th)or1(snow≦Th) …(4)
もしくは、Ks=f(snow)のような滑らかな関数としても良い。関数fは過去に降雪があった実績データから学習する。
【0041】
式(4)のThは、着雪による発電量の出力低下を考慮に入れる閾値であり、着雪量snowが閾値Thより大きければ係数Ks=0、着雪量snowが閾値Th以下であれば係数Ks=1である。
【0042】
発電量の出力値outputは、以下の式(5)に示すように、予測値predictに係数Ksを乗じることにより計算される。
output=Ks×predict …(5)
【0043】
図6図1の情報処理装置1の処理動作の一例を示すフローチャートである。まず、実績データ取得部6にて、太陽光パネルの発電実績データを取得する(ステップS21)。ステップS21の処理に前後して、全球予報データ取得部7にて、全球予報データを取得する(ステップS22)。次に、気象予測部8にて、対象となる太陽光パネルが設置された地域の気象予測を行い、気象予測データを生成する(ステップS23)。気象予測データは、図1の情報処理装置1の外部から提供されてもよい。
【0044】
次に、ユーザが設定したパラメータ、又は予め定めたパラメータを用いて、所定の工学モデルにより発電量の予測値を計算する(ステップS24)。
【0045】
次に、データ抽出部5にて、ステップS21で取得した実績データと、ステップS23で得られる気象予測データとに基づいて、第1パラメータをチューニングするのに使用するデータを抽出する(ステップS25)。
【0046】
次に、可視化部10にて、ステップS24で抽出したデータを可視化する(ステップS26)。可視化する理由は、チューニングに適していないデータが抽出された可能性もありうるためである。そこで、データを可視化して、抽出したデータがチューニングに適しているか否かを人間に確認させる(ステップS27)。
【0047】
確認させた結果、適していないと人間が判断した場合は、ステップS25のデータ抽出処理をやり直す。この場合、データ抽出部5は、適していないと判断されたデータを除外して、再度データを抽出する。
【0048】
ステップS26で適していると人間が判断した場合は、第1チューニング部3にて、第1パラメータ(設備パラメータ)をチューニングする(ステップS28)。ここでは、図3の処理を実行する。
【0049】
次に、第2チューニング部4にて、第2パラメータ(環境パラメータ)をチューニングする(ステップS29)。ここでは、図5の処理を実行する。
【0050】
次に、可視化部10にて、ステップS28とS29でチューニングした第1パラメータと第2パラメータを可視化する(ステップS30)。次に、人間は、可視化された第1パラメータと第2パラメータの少なくとも一方が適切か否かを確認する(ステップS31)。その確認の結果、適切でなければ、修正部12にて、適切でないパラメータを修正する(ステップS32)。
【0051】
ステップS31の確認の結果、適切であると判断されるか、あるいはステップS32で修正された第1パラメータと第2パラメータを含む工学モデルにて、発電量の予測値を出力する(ステップS33)。
【0052】
図7A図7B及び図7Cは、図6のフローチャートの処理を行う過程で、第1パラメータ(設備パラメータ)、第2パラメータ(環境パラメータ)、及び発電量が時刻に応じて変化する様子を模式的に示す図である。各グラフの横軸は時刻である。図7Aの縦軸は第1パラメータの値、図7Bの縦軸は第2パラメータの値、図7Cの縦軸は発電量である。
【0053】
図7Aには、太陽光パネルの容量CAPとパワーコンディショナの容量PCSのチューニング後の値w1、w2が図示されている。第1パラメータの更新周期は第2パラメータの更新周期よりも長いため、階段状に緩やかに値が変化する。
【0054】
図7Bには、第2パラメータKdの値w3が図示されている。図示のように、第2パラメータKdは日々微調整されるため、細かい周期で値が変化している。
【0055】
図7Cには、発電量の実績値w4と予測値w5が図示されている。太陽光パネルの発電量は、昼間しか生じないため、波形w4、w5に示すようにパルス状の波形になる。図7Cの波形w4、w5に示すように、本実施形態による情報処理装置では、おおむね発電量の実績値w4に近い波形の予測値w5を得ることができる。
【0056】
このように、本実施形態では、工学モデルのパラメータを、変化頻度の小さい第1パラメータと、変化頻度の高い第2パラメータとに分類し、第1パラメータと第2パラメータに分けてチューニングするため、工学モデルのパラメータのチューニングを効率よく行うことができ、工学モデルにより計算される物理量の予測値の精度を向上できる。
【0057】
特に本実施形態によれば、物理量の過去の実績データのみに基づいて、第1パラメータのチューニングを精度よく行うことができる。
【0058】
第1パラメータのチューニングを行う更新間隔及びタイミングと、第2パラメータのチューニングを行う更新間隔及びタイミングとを別個に設定することで、効率よく、かつ的確にチューニングを行うことができる。
【0059】
設備に関連する第1パラメータについては、短期間には値が変動しないことから、長い期間をかけてチューニングを行うことで、一時的な値の変動に捕らわれずに、信頼性の高いチューニングを行うことができる。また、第1パラメータのチューニングに使用するデータの中で、チューニングに適するデータを抽出して第1パラメータのチューニングを行うため、実績データの中に含まれる不適切データに影響されずに第1パラメータのチューニングを行うことができる。
【0060】
環境条件に左右されやすい第2パラメータについては、短期間に頻繁にチューニングを繰り返すことで、環境条件の変化に即応させたチューニングを行うことができる。
【0061】
上述した実施形態で説明した情報処理装置1の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、情報処理装置1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0062】
また、情報処理装置1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0063】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 情報処理装置、2 モデル予測部、3 第1チューニング部、4 第2チューニング部、5 データ抽出部、6 実績データ取得部、7 全球予報データ取得部、8 気象予測部、9 記録部、10 可視化部、11 パラメータ制御部、12 修正部、13 出力部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C