(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】駆動回転装置および制御方法並びに水中移動装置
(51)【国際特許分類】
B63C 11/48 20060101AFI20240815BHJP
B63C 11/00 20060101ALI20240815BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B63C11/48 D
B63C11/00 B
B25J5/00 Z
(21)【出願番号】P 2021044560
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 長太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 良光
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-143297(JP,U)
【文献】特開平6-191484(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107636939(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108298053(CN,A)
【文献】特許第6817776(JP,B2)
【文献】特表2004-532159(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111404308(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0079272(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/48
B63C 11/00
B25J 5/00
B63H 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空形状をなすケーシングと、
前記ケーシングの内部に配置されるモータと、
前記ケーシングを内外に貫通して回転自在に支持されると共に前記モータにより駆動回転可能な回転軸と、
前記ケーシングと前記回転軸との間に設けられるメカニカルシールと、
前記ケーシングの内部に流体を供給可能な流体供給装置と、
前記ケーシングの内外の差圧を計測する差圧センサと、
前記差圧センサの計測結果に基づいて前記流体供給装置を作動制御する制御装置と、
を備える駆動回転装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記差圧が予め設定された所定圧力範囲に維持されるように前記流体供給装置を作動制御する、
請求項1に記載の駆動回転装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記差圧が前記所定圧力範囲より低いときに、前記流体供給装置による前記ケーシングの内部への流体の供給圧を上昇させ、
前記差圧が前記所定圧力範囲より高いときに、前記流体供給装置による前記ケーシングの内部への流体の供給圧を低下させる、
請求項2に記載の駆動回転装置。
【請求項4】
前記ケーシングの水深を計測する水深計が設けられ、前記制御装置は、前記差圧センサおよび前記水深計の計測結果に基づいて前記流体供給装置を作動制御する、
請求項1に記載の駆動回転装置。
【請求項5】
中空形状をなすケーシングと、
前記ケーシングの内部に配置されるモータと、
前記ケーシングを内外に貫通して回転自在に支持されると共に前記モータにより駆動回転可能な回転軸と、
前記ケーシングと前記回転軸との間に設けられるメカニカルシールと、
前記ケーシングの内部に流体を供給可能な流体供給装置と、
を備える駆動回転装置において、
前記ケーシングの内外の差圧に基づいて前記流体供給装置を作動制御する、
駆動回転装置の制御方法。
【請求項6】
装置本体と、
前記装置本体に設けられる請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載の駆動回転装置と、
前記駆動回転装置における前記回転軸の他端部に固定されるプロペラと、
前記装置本体に設けられるマニピュレータと、
を備える水中移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、水中で移動可能な水中移動装置に適用される駆動回転装置および制御方法、駆動回転装置を備える水中移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、水中移動装置は、装置本体と、推進器と、カメラと、多軸マニピュレータとを備える。推進器は、装置本体を水中で移動させるためのものである。推進器は、ケーシングと、モータと、プロペラとを有する。ケーシングは、中空形状をなす。モータは、ケーシングの内部に配置される。プロペラは、ケーシングの外部で回転自在に支持され、モータにより駆動回転可能である。このような水中移動装置としては、例えば、下記特許文献に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
推進器は、ケーシングの外部にプロペラが回転自在に支持され、ケーシングの内部のモータにより駆動回転可能である。従来の推進器は、モータとプロペラを連結する回転軸がケーシングに軸受を介して回転自在に支持されると共に、回転軸とケーシングとの間にシール装置としてのOリングが装着される。ところが、推進器は、プロペラが高回転することからOリングが摩耗する。Oリングが摩耗すると、内部の空気が水中に漏洩し、浸水の可能性がある。そのため、推進器は、Oリングを定期的に交換する必要がある。すると、Oリングの交換作業により水中移動装置による各種の作業の停止することとなり、作業効率が低下してしまうという課題がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、シール性能の低下による部品交換作業の頻度を低くして作業効率の向上を図る駆動回転装置および水中移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の駆動回転装置は、中空形状をなすケーシングと、前記ケーシングの内部に配置されるモータと、前記ケーシングを内外に貫通して回転自在に支持されると共に前記モータにより駆動回転可能な回転軸と、前記ケーシングと前記回転軸との間に設けられるメカニカルシールと、前記ケーシングの内部に流体を供給可能な流体供給装置と、前記ケーシングの内圧に応じて前記流体供給装置を作動制御する制御装置と、を備える。
【0007】
また、本開示の駆動回転装置の制御方法は、中空形状をなすケーシングと、前記ケーシングの内部に配置されるモータと、前記ケーシングを内外に貫通して回転自在に支持されると共に前記モータにより駆動回転可能な回転軸と、前記ケーシングと前記回転軸との間に設けられるメカニカルシールと、前記ケーシングの内部に流体を供給可能な流体供給装置と、を備える駆動回転装置において、前記ケーシングの内圧に応じて前記流体供給装置を作動制御する。
【0008】
また、本開示の水中移動装置は、装置本体と、前記装置本体に設けられる前記駆動回転装置と、前記駆動回転装置における前記回転軸の他端部に固定されるプロペラと、前記装置本体に設けられるマニピュレータと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の駆動回転装置および水中移動装置によれば、シール性能の低下による部品交換作業の頻度を低くして作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態のスラスタの圧力制御系統を表す概略構成図である。
【
図3】
図3は、スラスタにおける内部圧力の制御方法を表すフローチャートである。
【
図4】
図4は、水中移動型検査システムを表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
<水中移動型検査システム>
図4は、水中移動型検査システムを表す概略図である。
【0013】
水中移動型検査システム100は、水中移動装置11を用いて、水中で、且つ、高放射線環境下で原子炉圧力容器101の非破壊検査を実施するものである。水中移動装置11は、原子炉圧力容器101の内部を水中航行し、原子炉圧力容器101の壁面101aを走査して探傷する。
【0014】
原子炉圧力容器101は、キャビティピット102の底壁の下方に配置され、コンクリート製壁体103により取り囲まれる。原子炉圧力容器101やキャビティピット102などは、コンクリート製の原子炉格納容器104で覆われ、原子炉格納容器104が放射線を遮蔽する。原子炉圧力容器101は、上部フランジ101bがキャビティピット102の底壁に支持される。原子炉圧力容器101は、上部フランジ101bの上面に複数のアライメントピン101cが設けられる。原子炉圧力容器101は、水中移動装置11による探傷作業の前に蓋体が取外され、キャビティピット102に水が充填されることで浸漬され、放射線が遮蔽される。
【0015】
水中移動装置11は、ケーブル105の一端部が接続される。ケーブル105は、探傷信号や制御信号などの信号を伝達するためのラインや動力ラインを含む。キャビティピット102の上方にケーブル調節・案内装置106が設置される。ケーブル調節・案内装置106は、ケーブル105を移動可能であり、水中移動装置11の位置に応じて水中に沈めるケーブル105の長さを調節すると共に、ケーブル105を案内する。ケーブル105は、他端部に水中移動制御装置12が接続される。水中移動制御装置12は、ケーブル105を介して水中移動装置11に制御信号などを送信する。また、水中移動制御装置12は、水中移動装置11からケーブル105を介して送信される探傷データを処理する。水中移動制御装置12は、原子炉格納容器104の外部に配置される。
【0016】
水中移動装置11は、位置標定装置13により位置が標定される。位置標定装置13は、アライメントピン101cを介して上部フランジ101bに取付けられる。位置標定装置13は、ケーブル107の一端部が接続される。ケーブル107は、他端部が水中移動制御装置12に接続される。ケーブル107は、位置標定を行なった距離データの信号を伝達するためのラインを含む。
【0017】
<水中移動装置>
図5は、水中移動装置を表す側面図、
図6は、水中移動装置を表す底面図である。
【0018】
図4から
図6に示すように、水中移動装置11は、固定台21と、旋回台22と、走行装置23と、吸着装置24と、推進器25と、多関節型マニピュレータ26と、浮力調整装置27と、標定マーカ28とを備える。
【0019】
固定台21は、シェル型構造をなす。旋回台22は、固定台21に対して旋回可能に支持される。走行装置23は、固定台21に複数(本実施形態では、4個)設けられる。走行装置23は、ステアリング機構23Aと、車輪23Bとを有する。走行装置23は、ステアリング機構23Aにより旋回可能であり、車輪23Bにより移動自在に設けられる。水中移動装置11は、走行装置23により原子炉圧力容器101の壁面101aを走行可能である。
【0020】
吸着装置24は、固定台21に複数(本実施形態では、4個)設けられる。吸着装置24は、シリンダ機構24Aと、吸着盤24Bとを有する。シリンダ機構24Aは、吸着盤24Bを吸着側と非吸着側とに移動可能である。水中移動装置11は、吸着装置24により原子炉圧力容器101の壁面101aに吸着可能である。
【0021】
推進器25は、旋回台22に設けられる。推進器25は、スラスタ25A,25B,25C,25Dを有する。スラスタ25A,25Bは、水中移動装置11を原子炉圧力容器101の内部の水中に対して潜水させることができると共に、浮上させることができる。スラスタ25C,25Dは、原子炉圧力容器101の壁面101aに対して接近させることができると共に、離反させることができる。水中移動装置11は、推進器25により水中を三次元へ方向に航行することができる。
【0022】
多関節型マニピュレータ26は、旋回台22に設けられる。多関節型マニピュレータ26は、例えば、6個の回転軸M1,M2,M3,M4,M5,M6を有する多関節型に構成されたマニピュレータである。多関節型マニピュレータ26は、先端部に接続部26Aが設けられ、接続部26Aに探触子板29が取付けられる。多関節型マニピュレータ26は、探触子板29により原子炉圧力容器101の溶接部を探傷可能である。探触子板29は、多関節型マニピュレータ26の接続部26A対して着脱可能であり、交換が可能である。なお、多関節型マニピュレータ26は、上述した構成に限定されるものではない。
【0023】
浮力調整装置27は、旋回台22の両側に設けられる。浮力調整装置27は、水中移動装置11の水中での浮力を調整可能である。水中移動装置11は、図示しない主浮力調整装置としての浮力タンクを有すると共に、浮力調整ウエイトが着脱可能に設けられる。水中移動装置11は、浮力調整ウエイトによる重量調整により原子炉圧力容器101の水中において浮力が0[N]に調整される。すなわち、水中移動装置11は、水中において浮きも沈みもしないように調整され、推進器25による移動を容易にしている。一方で、探触子板29は、重量が異なる数種類があることから、探触子板29を交換することで浮力が0[N]から増減する。そのため、浮力調整装置27は、副浮力調整装置として、増減した浮力を0[N]に調整する。
【0024】
標定マーカ28は、位置標定装置13の目標として用いられるものであり、二軸の駆動装置28Aを介して旋回台22の上部に装着される。
【0025】
<スラスタの圧力制御系統>
図1は、本実施形態のスラスタの圧力制御系統を表す概略構成図である。
【0026】
図1に示すように、水中移動装置11は、装置本体としての固定台21および旋回台22と、駆動回転装置およびプロペラとしての推進器25(スラスタ25A,25B,25C,25D)と、多関節型マニピュレータ26とを備える。
【0027】
水中移動装置11は、空気供給装置(流体供給装置)31が接続される。空気供給装置31は、空気供給ラインLを介して水中移動装置11の固定台21および旋回台22の内部に空気(流体)を供給可能である。なお、流体は、空気に限らず、例えば、窒素などの不活性流体などであってもよい。制御装置32は、空気供給装置31と、操作装置33と、表示装置34が接続される。制御装置32は、空気供給装置31を制御可能である。操作装置33は、作業者により操作されることで、制御装置32に対して各種の指令信号を出力可能である。表示装置34は、水中移動装置11における各種の運転データを表示可能である。
【0028】
また、水中移動装置11は、水深計35と、差圧センサ36とを有する。水深計35は、水中移動装置11が移動する水中の水深を計測すると共に、水深に基づいて水圧を計測する。差圧センサ36は、水中移動装置11における内部と外部(水中)との圧力差を計測する。この場合、差圧センサ36は、水中移動装置11の旋回台22における内部と外部との圧力差を計測する。水深計35と差圧センサ36は、計測結果を制御装置32に出力する。制御装置32は、水深計35と差圧センサ36の計測結果に基づいて空気供給装置31の作動を制御する。
【0029】
<スラスタ>
図2は、スラスタを表す断面図である。なお、以下では、スラスタ25Aについて説明するが、他のスラスタ25B,25C,25Dも同様の構成である。
【0030】
ケーシング41は、中空形状をなす。ケーシング41は、内部にモータ42が配置される。モータ42は、駆動軸42aを有する。回転軸43は、ケーシング41の内外を貫通する。回転軸43は、駆動軸42aと同軸上に配置され、軸受44によりケーシング41に回転自在に支持される。モータ42は、駆動軸42aの先端部が回転軸43の一端部にカップリング45を介して一体回転可能に連結される。
【0031】
ケーシング41は、回転軸43との間にメカニカルシール46が設けられる。回転軸43は、一端部がケーシング41の内部に位置し、他端部がケーシング41の外部に位置する。回転軸43は、ケーシング41の外部に位置する他端部にキー47を介してプロペラ48が装着される。プロペラ48は、回転部材49および締結ナット50により回転軸43に固定される。ケーシング41は、回転軸43に対向する端部に円筒形状をなす固定部材51が装着される。ケーシング41は、端部に押え部材52が装着されることで、固定部材51が脱落しないように支持される。そして、回転部材49の端部と固定部材51の端部とが接触する。
【0032】
モータ42により回転軸43が回転すると、回転軸43に固定されたプロペラ48および回転部材49が回転し、ケーシング41に固定された固定部材51に対してプロペラ48と一体の回転部材49が周方向に摺動する。このとき、回転部材49と固定部材51との接触面が、メカニカルシール46におけるシール面となる。そして、ケーシング41の内部の圧力が所定の圧力に維持されることで、メカニカルシール46が機能する。
【0033】
ケーシング41は、押え部材52の外側にカバー56の基端部が嵌合し、固定ボルト57により固定される。カバー56は、先端部が円筒形状をなし、プロペラ48の外側を被覆する。カバー56は、先端部に円板形状をなすネット58が装着され、ナット59により回転軸43の先端部に固定される。
【0034】
図1および
図2に示すように、水中移動装置11は、固定台21および旋回台22が水密構造を有し、内部への浸水が防止されている。また、スラスタ25Aも、同様に、水密構造を有し、内部への浸水が防止されている。スラスタ25Aは、旋回台22に装着され、内部が旋回台22の内部に連通している。そのため、空気供給装置31が空気供給ラインLを介して旋回台22の内部に空気を供給すると、旋回台22の内部の空気は、スラスタ25Aの内部にも供給される。つまり、旋回台22の内部の圧力とスラスタ25Aの内部の圧力がほぼ同圧に維持される。
【0035】
<スラスタの制御方法>
図3は、スラスタにおける内部圧力の制御方法を表すフローチャートである。
【0036】
図1および
図2に示すように、制御装置32は、スラスタ25Aのケーシング41の
内部と外部との圧力差に応じて空気供給装置31を作動制御する。このとき、制御装置32は、ケーシング41の
内部と外部との圧力差が予め設定された所定圧力範囲に維持されるように空気供給装置31を作動制御する。そして、制御装置32は、
圧力差が所定圧力範囲より低いときに、空気供給装置31によるケーシング41の内部への空気の供給圧を上昇させる。一方、
圧力差が所定圧力範囲より高いときに、空気供給装置31によるケーシング41の内部への空気の供給圧を低下させる。
【0037】
このとき、制御装置32は、差圧センサ36の計測結果に基づいて空気供給装置31を作動制御する。具体的に、制御装置32は、差圧センサ36だけでなく水深計35の計測結果に基づいて空気供給装置31を作動制御する。
【0038】
以下、スラスタ25Aにおける内部圧力の制御方法について、
図3のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0039】
図1および
図3に示すように、ステップS11にて、制御装置32は、水深計35の計測結果に基づいて水中移動装置11(推進器25)の水圧WPを取得する。ステップS12にて、制御装置32は、差圧センサ36の計測結果に基づいて水中移動装置11(推進器25)の差圧DPを取得する。
【0040】
ステップS13にて、制御装置32は、差圧DPが予め設定された所定圧力範囲にあるかどうかを判定する。ここで、差圧DPの所定圧力範囲とは、25kPa以上で、且つ、35kPa以下の範囲である。推進器25(スラスタ25A,25B,25C,25D)は、最適な内部圧力が30kPa程度であり、余裕分を考慮して所定圧力範囲を設定した。なお、差圧DPの所定圧力範囲は、一例であり、水中移動装置11や推進器25などの構造や大きさなどに応じて変動するものである。そのため、水中移動装置11や推進器25などに応じて差圧DPの所定圧力範囲を適宜設定することが好ましい。
【0041】
ステップS13で、差圧DPが所定圧力範囲にあると判定(Yes)されると、ステップS14にて、制御装置32は、推進器25(スラスタ25A,25B,25C,25D)への空気供給圧APが水圧WP+30kPaになるように、空気供給装置31を作動制御する。また、差圧DPが所定圧力範囲にないと判定(No)されると、ステップS154にて、制御装置32は、差圧DPが25kPa未満であるかどうかを判定する。ここで、差圧DPが25kPa未満であると判定(Yes)されると、ステップS16にて、制御装置32は、推進器25(スラスタ25A,25B,25C,25D)への空気供給圧APが水圧WP+55kPaになるように、空気供給装置31を作動制御する。一方、差圧DPが25kPa未満でないと判定(No)されると、ステップS17にて、制御装置32は、推進器25(スラスタ25A,25B,25C,25D)への空気供給圧APが水圧WP+5kPaになるように、空気供給装置31を作動制御する。
【0042】
そのため、水中移動装置11は、水中を移動して水深(水圧)が変動しても、推進器25(スラスタ25A,25B,25C,25D)の内部と外部との圧力差が所望の圧力に維持されることとなる。すると、推進器25(スラスタ25A,25B,25C,25D)は、メカニカルシール46の機能を十分に発揮させることができ、浸水を抑制することができる。
【0043】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る駆動回転装置は、中空形状をなすケーシング41と、ケーシング41の内部に配置されるモータ42と、ケーシング41を内外に貫通して回転自在に支持されると共にモータ42により駆動回転可能な回転軸43と、ケーシング41と回転軸43との間に設けられるメカニカルシール46と、ケーシング41の内部に空気(流体)を供給可能な空気供給装置(流体供給装置)31と、ケーシング41の内外の差圧に応じて空気供給装置31を作動制御する制御装置32とを備える。
【0044】
第1の態様に係る駆動回転装置によれば、制御装置32がケーシング41の内外の差圧に応じて空気供給装置31を作動制御することで、ケーシング41の内部圧力を所望の圧力に維持されることとなり、メカニカルシール46によりケーシング41内部への浸水を抑制することができる。そのため、Oリングなどのシール部材を不要としてシール性能の低下による部品交換作業の頻度を低くすることができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0045】
第2の態様に係る駆動回転装置は、制御装置32は、ケーシング41の内圧が予め設定された所定圧力範囲に維持されるように空気供給装置31を作動制御する。これにより、ケーシング41の内部圧力を所定圧力範囲に維持されることとなり、メカニカルシール46によりケーシング41内部への浸水を抑制することができる。
【0046】
第3の態様に係る駆動回転装置は、制御装置32は、ケーシング41の内圧が所定圧力範囲より低いときに、空気供給装置31によるケーシング41の内部への空気の供給圧を上昇させ、ケーシング41の内圧が所定圧力範囲より高いときに、空気供給装置31によるケーシングの41内部への空気の供給圧を低下させる。これにより、ケーシング41の内圧の変動に応じて空気供給装置31によるケーシングの41内部への空気の供給圧を調整することで、圧力の低下によるケーシング41の内部への浸水を抑制することができると共に、圧力の上昇によるケーシング41および内部の構成部材への負荷を抑制することができる。
【0047】
第4の態様に係る駆動回転装置は、ケーシング41の内外の差圧を計測する差圧センサ36を設け、制御装置32は、差圧センサ36の計測結果に基づいて空気供給装置31を作動制御する。これにより、ケーシング41の内外の差圧を用いて空気供給装置31を作動制御することで、ケーシング41の内部圧力を高精度に調整することができる。
【0048】
第5の態様に係る駆動回転装置は、ケーシング41の水深を計測する水深計35を設け、制御装置32は、差圧センサ36および水深計35の計測結果に基づいて空気供給装置31を作動制御する。これにより、ケーシング41の内外の差圧とケーシング41の水深を用いて空気供給装置31を作動制御することで、ケーシング41の内部圧力を高精度に調整することができる。
【0049】
第6の態様に係る駆動回転装置の制御方法は、スラスタ25A,25B,25C,25Dのケーシング41の内圧に応じて空気供給装置31を作動制御する。これにより、Oリングなどのシール部材を不要としてシール性能の低下による部品交換作業の頻度を低くすることができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0050】
第7の態様に係る水中移動装置は、装置本体としての固定台21および旋回台22と、駆動回転装置およびプロペラとしての推進器25(スラスタ25A,25B,25C,25D)と、多関節型マニピュレータ26とを備える。これにより、Oリングなどのシール部材を不要としてシール性能の低下による部品交換作業の頻度を低くすることができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0051】
なお、上述した実施形態では、制御装置32による空気供給装置31の作動制御に、水深計35および差圧センサ36の計測結果を用いたが、この構成に限定されるものではない。例えば、制御装置32は、差圧センサ36の計測結果だけに基づいて空気供給装置31を作動制御してもよい。また、推進器25(スラスタ25A,25B,25C,25D)の内部圧力を計測する圧力センサと外部圧力を計測する圧力センサを設け、制御装置32は、各圧力センサの計測結果だけに基づいて空気供給装置31を作動制御してもよい。水深や差圧などを計測するセンサは、水中移動装置11ではなく、推進器25に設けてもよい。
【0052】
また、上述した実施形態では、スラスタ25Aにメカニカルシール46を設けたが、このメカニカルシール46の構造は、実施形態に記載された構造に限定されるものではなく、スラスタの構造に応じて適宜設定すればよいものである。
【0053】
また、上述した実施形態では、駆動回転装置を推進器25に適用して説明したが、例えば、駆動車輪などに適用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
11 水中移動装置
21 固定台
22 旋回台
23 走行装置
24 吸着装置
25 推進器
25A,25B,25C,25D スラスタ(駆動回転装置)
26 多関節型マニピュレータ
27 浮力調整装置
28 標定マーカ
29 探触子板
31 空気供給装置(流体供給装置)
32 制御装置
33 操作装置
34 表示装置
35 水深計
36 差圧センサ
41 ケーシング
42 モータ
43 回転軸
46 メカニカルシール
48 プロペラ
100 水中移動型検査システム
101 原子炉圧力容器
102 キャビティピット
103 コンクリート製壁体
104 原子炉格納容器
105 ケーブル
106 ケーブル調節・案内装置
107 ケーブル